説明

下水汚泥処理システム

【課題】臭気の問題等を生じさせずに下水汚泥を効率良く処理することができ、又、その水分をガス化剤として有効活用でき、更にはタール分の発生を低減する下水汚泥処理システムを提供する。
【解決手段】燃料と下水汚泥をガス化するガス化炉7と、ガス化炉7より排出されたガス化ガスにより空気を予熱してガス化炉7に送給する再熱器8と、再熱器8より排出されたガス化ガスにより水を加熱して水蒸気をガス化炉7に送給する排熱ボイラ9とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水汚泥処理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、下水汚泥は増加の一途を辿っており、その処理が社会的な問題となっているが、下水汚泥の処理の主なものとしては、例えば、汚泥焼却炉による焼却処理が挙げられる。
【0003】
図2は従来の下水汚泥処理システムの一例を示すものであって、1は汚泥焼却炉、2は再熱器、3は冷却塔、4はバグフィルタ、5は排煙処理器である。
【0004】
図2に示される下水汚泥処理システムにおいては、水分をおよそ70〜80[%]程度含有する下水汚泥が汚泥焼却炉1に供給され、該汚泥焼却炉1において都市ガス、或いは灯油や重油等の助燃料と一緒に下水汚泥の混焼が行われ、その排ガスが再熱器2を通過する際に燃焼用空気と熱交換し、予熱された燃焼用空気が前記汚泥焼却炉1へ導入され、前記再熱器2を通過した排ガスは、冷却塔3において噴霧される水により冷却され、続いて、バグフィルタ4で焼却灰が分離除去された後、排煙処理器5において噴霧される水により前記バグフィルタ4で分離除去しきれなかった灰が除去され、クリーンなガスとして大気放出されるようになっている。
【0005】
又、図3は従来の下水汚泥処理システムの他の例を示すものであって、図中、図2と同一の符号を付した部分は同一物を表わしており、下水汚泥を乾燥させて汚泥焼却炉1へ供給する乾燥機6を追加装備したものである。
【0006】
図3に示される下水汚泥処理システムにおいては、水分をおよそ70〜80[%]程度含有する下水汚泥が乾燥機6で乾燥され、含有する水分がおよそ30〜50[%]程度まで低減された後、乾燥汚泥が汚泥焼却炉1に供給され、該汚泥焼却炉1において乾燥汚泥の自燃が行われ、その排ガスが再熱器2を通過する際に燃焼用空気と熱交換し、予熱された燃焼用空気が前記汚泥焼却炉1へ導入される一方、前記汚泥焼却炉1から排出される排ガスの一部が前記乾燥機6へ導かれてその廃熱が下水汚泥の乾燥に供され、前記再熱器2を通過した排ガスは、図2に示される例の場合と同様に、冷却塔3において噴霧される水により冷却され、続いて、バグフィルタ4で焼却灰が分離除去された後、排煙処理器5において噴霧される水により前記バグフィルタ4で分離除去しきれなかった灰が除去され、クリーンなガスとして大気放出されるようになっている。
【0007】
尚、下水汚泥を焼却処理する一般的技術水準を示すものとしては、例えば、特許文献1がある。
【特許文献1】特開2004−51745号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、図2に示されるような従来の下水汚泥処理システムでは、水分をおよそ70〜80[%]程度含有する下水汚泥を汚泥焼却炉1で燃焼させるために、都市ガス、或いは灯油や重油等の助燃料が大量に必要となり、省エネ上、好ましくないと共に、コストアップにもつながるという欠点を有していた。
【0009】
又、図3に示されるような従来の下水汚泥処理システムでは、水分をおよそ70〜80[%]程度含有する下水汚泥を乾燥機6で乾燥させ、含有する水分がおよそ30〜50[%]程度まで低減された乾燥汚泥を汚泥焼却炉1で自燃させるようになっているため、都市ガス、或いは灯油や重油等の助燃料は不要となるものの、乾燥汚泥は、ポンプで圧送することが困難となり、乾燥機6から汚泥焼却炉1への搬送は、ベルトコンベヤ等を使用せざるを得ないため、臭気の発生が避けられず、実用化する上で大きな問題となっていた。
【0010】
本発明は、斯かる実情に鑑み、都市ガス、或いは灯油や重油等の助燃料を使用することなく且つ臭気の問題等を生じさせずに下水汚泥を効率良く処理することができ、又、その水分をガス化剤として有効活用でき、更にはタール分の発生を低減する下水汚泥処理システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、燃料と下水汚泥をガス化するガス化炉と、該ガス化炉より排出されたガス化ガスにより空気を予熱して前記ガス化炉に送給する再熱器と、該再熱器より排出されたガス化ガスにより水を加熱して水蒸気を前記ガス化炉に送給する排熱ボイラとを備えたことを特徴とする下水汚泥処理システムにかかるものである。
【0012】
又、前記下水汚泥処理システムにおいては、燃料を廃棄物とすることができる。
【0013】
更に、排熱ボイラから送給された水蒸気によりガス化炉内のタール分を低減するよう構成されることが有効となる。
【0014】
更に又、排熱ボイラから排出されたガスにより発電する発電手段を備えることが有効となる。
【0015】
ガス化炉は、炉内下部に、流動用空気によりバブリングされ且つ燃料及び水蒸気が供給される流動層を形成すると共に、該流動層の上方から下水汚泥を供給するよう構成されることが有効となる。
【0016】
上記手段によれば、以下のような作用が得られる。
【0017】
本発明の下水汚泥処理システムにおいては、先ず、ガス化炉の炉内下部において、廃棄物と一緒に流動用空気によりバブリングさせて燃焼させ、流動層を形成した状態で、該流動層の上に水分をおよそ70〜80[%]程度含有する下水汚泥をそのまま落下させると、該下水汚泥に含まれる水分が蒸発して蒸気が発生しつつ、下水汚泥の乾燥が行われる。
【0018】
前記下水汚泥は、乾燥すると揮発性が高いため、揮発分がすぐに放出され、前記流動層で燃料を燃焼させることによって生じたCO2と、前記下水汚泥から蒸発して発生した蒸気及び排熱ボイラから供給した水蒸気とがガス化剤として、前記流動層上方のガス化領域で前記揮発分と反応し、COやH2等の可燃性ガスを多く含むガス化ガスが生成される。
【0019】
ガス化ガスは、再熱器及び排熱ボイラを流下しており、再熱器では、ガス化ガスにより空気を予熱してガス化炉に送給すると共に、排熱ボイラでは、ガス化ガスにより水を加熱して水蒸気をガス化炉に送給する。
【0020】
これにより、水分をおよそ70〜80[%]程度含有する下水汚泥を汚泥焼却炉で燃焼させる従来の下水汚泥処理システムとは異なり、都市ガス、或いは灯油や重油等の助燃料が必要とならず、廃棄物をその処理も兼ねて有効に活用可能となり、省エネに役立つと共に、コストアップも避けられる。
【0021】
又、水分をおよそ70〜80[%]程度含有する下水汚泥を乾燥機で乾燥させ、含有する水分がおよそ30〜50[%]程度まで低減された乾燥汚泥を汚泥焼却炉で自燃させる従来の下水汚泥処理システムとは異なり、水分をおよそ70〜80[%]程度含有する下水汚泥をポンプで圧送して流動層の上にそのまま落下させるだけで良いため、臭気が発生する心配も全くない。
【0022】
更に、ガス化ガスにより空気を予熱してガス化炉に送給するので、下水汚泥のガス化を促進できると共に、ガス化ガスにより水を加熱して水蒸気をガス化炉に送給するので、ガス化炉内で水性ガス化反応を行ってタール分を低減することができる。
【0023】
更に又、排熱ボイラから排出されたガスにより発電する発電手段を備えるので、ガスを発電設備による発電に利用することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の下水汚泥処理システムによれば、都市ガス、或いは灯油や重油等の助燃料を使用することなく且つ臭気の問題等を生じさせずに下水汚泥を効率良く処理することができ、又、その水分をガス化剤として有効活用でき、更にはタール分の発生を低減し得るという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0026】
図1は本発明を実施する形態の一例であり、一例は、燃料と下水汚泥をガス化するガス化炉7を備えており、ガス化炉7は炉内の下部には、流動用空気によりバブリングされ且つ燃料及び水蒸気が供給される流動層7bを形成すると共に、ガス化炉7内の上部には、流動層7bの上方から下水汚泥を供給するようフリーボード7aを設けている。
【0027】
ここで、燃料としては、廃プラスチック、廃木材等の廃棄物を用いることができ、ガス化炉7内では、これらの燃料を砂等のベッド材と一緒に流動用空気によりバブリングさせて燃焼させ、この流動層7bの上に水分をおよそ70〜80[%]程度含有する下水汚泥をそのまま落下させるようにしてある。
【0028】
ガス化炉7の下流側には再熱器8を備えており、再熱器8は、フリーボード7aで下水汚泥をガス化させて生成されるガス化ガスの廃熱の一部により、流動層7bへ供給される流動用空気を573〜1073[k]、好ましくは723[k]以上に予熱するようにしてある。
【0029】
再熱器8の下流側には排熱ボイラ9を備えており、排熱ボイラ9は、再熱器8を通過したガス化ガスの廃熱の一部により、水を373〜873[k]、好ましくは573[k]以上で水蒸気として発生させ、ガス化炉7の炉内下部へ送給するようにしてある。
【0030】
排熱ボイラ9の下流側にはスクラバ10を設けており、スクラバ10は、排熱ボイラ9を通過したガス化ガスに対して水を噴霧し、アンモニアやタールの処理並びに脱硫、脱硝、灰処理等を行うと共に、ガス化ガス中の蒸気を凝縮させ、COやH2等の可燃性ガスを含むドライなガスにするようにしてある。
【0031】
スクラバ10の下流側には、ガスエンジンやガスタービン等の発電手段11とを設けており、発電手段11は、スクラバ10で生成された可燃性ガスが導入されて発電を行うようにしてある。ここで、発電手段11は、ガスエンジンやガスタービンに限定されるものではなく、可燃ガスにより発電し得るならば特に限定されるものではない。
【0032】
次に、上記図示例の作用を説明する。
【0033】
先ず、ガス化炉7内の下部において、廃棄物を砂等のベッド材と一緒に流動用空気によりバブリングさせて燃焼させ、流動層7bを形成した状態で、流動層7bの上に水分をおよそ70〜80[%]程度含有する下水汚泥をそのまま落下させると、下水汚泥に含まれる水分が蒸発して蒸気が発生しつつ、下水汚泥の乾燥が行われる。
【0034】
下水汚泥は、乾燥すると揮発性が高いため、揮発分がすぐに放出され、流動層7bで燃料を燃焼させることによって生じたCO2と、前記下水汚泥から蒸発して発生した蒸気とがガス化剤として、流動層7b上方のフリーボード7aのガス化領域で揮発分と反応し、COやH2等の可燃性ガスを多く含むガス化ガスが生成される。
【0035】
ガス化ガスは、再熱器8を介して排熱ボイラ9を流下し、再熱器8では、ガス化ガスにより流動層用空気を所定の温度に予熱してガス化炉7に送給し、排熱ボイラ9では、ガス化ガスにより水を加熱して水蒸気をガス化炉7に送給し、水蒸気は、ガス化炉7内で水性ガス化反応を行ってタールを低減する。ここで、ガス化炉7内はS/C(蒸気/燃料中の炭素のモル比)は、理論値の1以上、特に好ましくは1.5以上、炉内の空気比は0.4以下、好ましくは0.3以下、温度は973〜1173[k]、好ましくは1073[k]以上の条件に設定される。
【0036】
排熱ボイラ9を通過したガス化ガスは、スクラバ10において水が噴霧され、アンモニアやタールの処理並びに脱硫、脱硝、灰処理等が行われると共に、ガス化ガス中の蒸気が凝縮され、COやH2等の可燃性ガスを含むドライなガスとなる。
【0037】
スクラバ10で生成された可燃性ガスは、ガスエンジンやガスタービン等の発電手段11へ導入され発電が行われる。
【0038】
これにより、図2に示されるような従来の下水汚泥処理システムとは異なり、水分をおよそ70〜80[%]程度含有する下水汚泥を汚泥焼却炉1で燃焼させるのではないため、都市ガス、或いは灯油や重油等の助燃料が必要とならず、廃プラスチック、廃木材等の廃棄物をその処理も兼ねて有効に活用可能となり、省エネに役立つと共に、コストアップも避けられる。
【0039】
又、図3に示されるような従来の下水汚泥処理システムとは異なり、水分をおよそ70〜80[%]程度含有する下水汚泥を乾燥機6で乾燥させ、含有する水分がおよそ30〜50[%]程度まで低減された乾燥汚泥を汚泥焼却炉1で自燃させるのではないため、乾燥機6が余分に必要とならず設置スペースも広く取らなくて済み、しかも、水分をおよそ70〜80[%]程度含有する下水汚泥をポンプで圧送して流動層7bの上にそのまま落下させるだけで良いため、臭気が発生する心配も全くない。
【0040】
更に、ガス化ガスにより再熱器8で流動用空気を予熱してガス化炉7に送給するので、ガス化炉7内に水蒸気を導入しても温度低下を抑制し、結果的にガス化の温度を維持して下水汚泥のガス化を促進できる。ここで、再熱器8による流動用空気が573〜1073[k]の範囲にない時には、炉内の温度を973〜1173[k]に維持できず、再熱器8による流動用空気が723[k]以上である場合には、炉内の温度を好適に973〜1173[k]に維持することができる。
【0041】
更に又、ガス化ガスにより排熱ボイラ9で水を加熱して水蒸気にし、ガス化炉7に送給するので、ガス化炉7内で水性ガス化反応を行ってタール分を低減することができる。又、ガス化炉7内でタール分を低減するので、タール分を処理するための他の処理手段を不要にし、コストを低減することができる。ここで、ガス化炉7内の条件において、S/Cが理論値の1未満の場合にはタール分を低減しがたい。一方、ガス化炉7内の条件において、S/Cが1.5以上の場合には、好適にタール分を水性ガス化反応により低減し易い。又、排熱ボイラ9による水蒸気の温度が373[k]未満の場合には、炉内の温度を著しく低下させる問題があり、排熱ボイラ9では、ガス化ガスの熱量によって水蒸気の温度を873[k]より大きくすることができない。排熱ボイラ9による水蒸気の温度が573[k]以上である場合には、炉内の温度を好適に973〜1173[k]に維持することができる。
【0042】
更に又、排熱ボイラから排出されたガスにより発電する発電手段11を備えるので、ガスを発電設備による発電に利用することができる。
【0043】
尚、本発明の下水汚泥処理システムは、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明を実施する形態の一例としての下水汚泥処理システムを示す全体概要構成図である。
【図2】従来の下水汚泥処理システムの一例を示す全体概要構成図である。
【図3】従来の下水汚泥処理システムの他の例を示す全体概要構成図である。
【符号の説明】
【0045】
7 ガス化炉
7b 流動層
8 再熱器
9 排熱ボイラ
11 発電手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料と下水汚泥をガス化するガス化炉と、該ガス化炉より排出されたガス化ガスにより空気を予熱して前記ガス化炉に送給する再熱器と、該再熱器より排出されたガス化ガスにより水を加熱して水蒸気を前記ガス化炉に送給する排熱ボイラとを備えたことを特徴とする下水汚泥処理システム。
【請求項2】
燃料を廃棄物とした請求項1記載の下水汚泥処理システム。
【請求項3】
排熱ボイラから送給された水蒸気によりガス化炉内のタール分を低減するよう構成された請求項1記載の下水汚泥処理システム。
【請求項4】
排熱ボイラから排出されたガスにより発電する発電手段を備えた請求項1記載の下水汚泥処理システム。
【請求項5】
ガス化炉は、炉内下部に、流動用空気によりバブリングされ且つ燃料及び水蒸気が供給される流動層を形成すると共に、該流動層の上方から下水汚泥を供給するよう構成された請求項1記載の下水汚泥処理システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−811(P2006−811A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−182415(P2004−182415)
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成15年度 新エネルギー・産業技術総合開発機構 「国際共同研究提案公募事業 廃棄物の共ガス化による次世代環境調和型サーマルリサイクル発電技術開発」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)
【Fターム(参考)】