説明

下水汚泥処理システム

【課題】汚泥を焼却ヤードの焼却炉まで配管輸送するための動力費を大幅に削減し、エネルギ消費量を抑制することができる下水汚泥処理システムを提供する。
【解決手段】焼却ヤード10内の各焼却炉11に付設された汚泥フィーダ12の近傍に、各焼却炉専用の脱水機15を配置する。また焼却ヤード10から離れた建屋20内に汚泥タンク21と汚泥ポンプ22とを配置し、この建屋20から焼却ヤード10まで配管23を通じて汚泥のまま配管輸送する。各脱水機15で脱水した汚泥は各焼却炉11で直ちに焼却される。汚泥は含水率が高く配管抵抗が小さいので、同一距離を輸送するために必要な動力費は従来の脱水汚泥の配管輸送に比較して数分の一になり、エネルギ消費量を大幅に抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水処理場から発生する下水汚泥を脱水したうえ焼却処理する下水汚泥処理システムの改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下水処理場から発生する下水汚泥の処理方法としては、焼却処理方法が一般的である。大規模な処理場では焼却ヤード内に複数の焼却炉を備え、焼却ヤードから離れた場所に設置された建屋内に配置された複数台の脱水機により汚泥を脱水し、脱水汚泥を各焼却炉まで配管輸送している(例えば特許文献1)。
【0003】
図1はそのような従来の下水汚泥処理システムを概念的に示すブロック図であり、1は焼却ヤードであって複数の焼却炉2が配置されている。3は焼却ヤード1から離れた場所に設置された建屋であって、その内部には汚泥タンク4と、ネジポンプ5と、脱水機6とが配置されている。汚泥タンク4内の汚泥はネジポンプ5によって脱水機6に打ち込まれ、脱水汚泥となる。各脱水機6から出た脱水汚泥は集合され、ピストンポンプ7により脱水汚泥輸送管8の内部を焼却ヤード1まで配管輸送される。このような下水汚泥処理システムは、脱水汚泥をベルトコンベヤ輸送していた旧来のシステムに比較して臭気の問題を回避できる利点がある。
【0004】
ところが、脱水汚泥の含水率が低下するに連れて粘度が大きくなるため、配管輸送時の配管抵抗も増加し、配管輸送に要する動力費が非常にかかるという問題あった。特に大規模な下水処理場では脱水機6がある建屋3から焼却ヤード1までの距離が100m以上離れていることもあるため、膨大な電力エネルギを消費することとなり、省エネルギ、地球温暖化防止の観点からも好ましくない状況にあった。なお、脱水汚泥を焼却処理する際の燃費の点で、脱水汚泥の含水率はより低いことが望ましいが、配管輸送においては、配管抵抗増加の問題から脱水汚泥の含水率を低くできないため、結果として焼却炉で補助燃料を消費することとなり、電力エネルギと同様、省エネルギ、および地球温暖化防止の観点から好ましくない状況にあった。
【特許文献1】特開2000−254691号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって本発明の目的は、汚泥を焼却ヤードの焼却炉まで配管輸送するための動力費を大幅に削減し、脱水機がある建屋から焼却ヤードまでの距離が長い処理場においても、エネルギ消費量を抑制することができる下水汚泥処理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するためになされた本発明は、下水処理場において発生した汚泥を脱水し複数の焼却炉により焼却する下水汚泥処理システムにおいて、焼却ヤード内の各焼却炉に付設された汚泥貯留槽に各焼却炉専用の脱水機を設けるとともに、焼却ヤードから離れた建屋内に汚泥タンクと汚泥ポンプとを配置し、この建屋から焼却ヤードまで汚泥のまま配管輸送し、各脱水機で脱水した汚泥を各焼却炉で焼却することを特徴とするものである。
【0007】
なお、各焼却炉専用の脱水機により、各焼却炉の特性に合わせて、焼却処理時に補助燃料が不要となるまで脱水機出口の脱水汚泥水分含有率を調整することができる。また、焼却ヤードで凝集操作を行うことが好ましい。脱水機としては、種類を限定するものではないが、例えば、出願人会社製の回転加圧脱水機を用いることができる。また、搬送動力削減の観点から、脱水機を各焼却炉に付設された汚泥貯留槽の上方に設置することが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明においては、焼却ヤードから離れた建屋内の汚泥ポンプによって、汚泥を焼却ヤードまで汚泥のまま配管輸送し、各焼却炉に付設された汚泥フィーダの近傍の各焼却炉専用の脱水機で脱水した汚泥を各焼却炉で焼却する。汚泥は脱水汚泥に比較して配管抵抗が非常に小さいので、このため配管輸送の距離が長くても輸送に要する動力費が数分の一になり、エネルギ消費量を抑制することができる。しかも従来はどの焼却炉にも同一の脱水汚泥が投入されていたのであるが、本発明によれば各焼却炉専用の脱水機を配置したので、配管輸送時の抵抗増加の制約がなく、各焼却炉の特性に合わせて脱水機の条件を設定し、焼却処理時に補助燃料が不要となるよう、脱水汚泥の性状を調整することも可能である。
【0009】
また請求項2のように、各焼却炉専用の脱水機により、各焼却炉の特性に合わせて脱水機出口の脱水汚泥水分含有率を調整することができる。また請求項3のように、焼却ヤードで凝集操作を行うようにすれば、脱水機の近傍の最適位置で凝集剤を汚泥に注入することができ、配管輸送中にフロックが破壊されることを防止することができる。
【0010】
また請求項4のように、脱水機として回転加圧脱水機を用いるようにすれば、含水率の低い脱水汚泥を連続的に得ることができ、焼却炉で連続焼却するのに適しているうえ、建屋のない屋外に設置しても支障がない。
【0011】
また請求項5のように脱水機を、各焼却炉に付設された汚泥貯留槽の上方に設置すれば、脱水汚泥を他の輸送手段を用いることなく直接汚泥貯留槽に落下させることができる。なお、本発明においては必ずしも脱水機と焼却炉の汚泥貯留槽とを直結させる必要はなく、それらの間に水切り用コンベヤを配置することも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明の好ましい実施形態を示す。
図2は本発明の下水汚泥処理システムを図1と対比させて示すブロック図であり、10は焼却ヤードであってその内部には複数台の焼却炉11が設置されている。各焼却炉11には図3に示すような汚泥フィーダ12が付設されており、ホッパ13の下部の定量供給手段14によって脱水汚泥を焼却炉11に投入している。本発明においては焼却炉1の形式は特に限定されるものではないが、ダイオキシンが発生せず、焼却能力の高い流動焼却炉が適している。
【0013】
各焼却炉11に付設された汚泥フィーダ12の近傍には、各焼却炉専用の脱水機15が配置されている。脱水機15は各焼却炉11に1台であってもよいが、実設備では予備機を含む複数台の脱水機15を設置し、脱水機15のトラブルにより焼却炉11が停止することのないように配慮することが好ましい。脱水機15の種類も特に限定されるものではないが、本実施形態では出願人会社製の回転加圧脱水機を用いている。なお、脱水機15は図3に示すように汚泥フィーダ12のホッパ13の上方に設置すれば、脱水汚泥を他の輸送手段を用いることなく直接落下させることができる。また、各焼却炉専用の脱水機15により、各焼却炉11の特性に合わせて、焼却処理時に補助燃料が不要となるまで脱水機出口の脱水汚泥水分含有率を調整することができる。
【0014】
上記した焼却ヤード10から離れた位置に建屋20が設置されている。前記したように、大型の下水処理場ではその距離は100mを越えることがある。この建屋20は従来は脱水機を収納していたのであるが、本発明では脱水機15を焼却ヤード10に移動させたので脱水機はなく、その内部には汚泥タンク21と汚泥ポンプ22とを配置してある。汚泥ポンプ22は例えばネジポンプであり、汚泥タンク21内の汚泥(含水率約97%程度)を、建屋20から焼却ヤード10まで延びる配管23を通じて汚泥のまま配管輸送する。この汚泥は含水率が高く配管抵抗が小さいので、同一距離を輸送するために必要な動力費は従来の脱水汚泥の配管輸送に比較して数分の一になり、エネルギ消費量を大幅に抑制することができる。
【0015】
本発明の要旨は上記のとおりであるが、実設備では図4に示すように、建屋20内に凝集剤溶解タンク24と凝集剤ポンプ25とを配置し、配管26を通じて凝集剤も焼却ヤード10まで配管輸送し、脱水機15の近傍で汚泥中に凝集剤を注入する。このようにすれば、焼却ヤード10内の脱水機15の近傍の最適位置で凝集剤を汚泥に注入することができ、配管輸送中にフロックが破壊されることを防止することができる。なお使用される凝集剤の種類としては、高分子凝集剤または、無機系の凝集剤または両者の組合せとなる。
【0016】
以下に本発明の作用効果を、具体的な数値を挙げて説明する。
ここでは焼却炉11に投入される脱水汚泥量を100トン/日、配管搬送距離を100mと設定し、図1に示した従来システムと図2に示した本発明のシステムとで汚泥搬送に必要な動力費を比較した。従来システムでは、流量×揚程が25m3/h×0.25MPaの1軸ネジポンプ2台(電動機容量7.5kW×2)と、流量×揚程が5m3×6MPaのピストンポンプ(電動機容量45kW)とを必要とする。
【0017】
これに対して本発明のシステムでは、流量×揚程が25m3/h×0.3MPaの1軸ネジポンプ2台(電動機容量7.5kW×2)のみでよい。なお何れのシステムでも、流量×揚程が3.8m3×0.25MPaの凝集剤を送るための1軸ネジポンプ(電動機容量1.5kW×2)を必要とする。電動機容量の合計は従来システムでは63kW、本発明のシステムでは18kWであり、年間の使用電力量は従来は399MWhとなり、本発明では114MWhと1/3以下となった。
【0018】
またこれを温室効果ガスの排出量に換算すると、従来システムの221トン−CO/年が本発明のシステムでは63トン−CO/年となり、大幅な削減が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】従来の下水汚泥処理システムを概念的に示すブロック図である。
【図2】本発明の下水汚泥処理システムを示すブロック図である。
【図3】汚泥フィーダ部分の説明図である。
【図4】実設備における配管の説明図である。
【符号の説明】
【0020】
1 従来技術における焼却ヤード
2 焼却炉
3 建屋
4 汚泥タンク
5 ネジポンプ
6 脱水機
7 ピストンポンプ
8 脱水汚泥輸送管
10 本発明における焼却ヤード
11 焼却炉
12 汚泥フィーダ
13 ホッパ
14 定量供給手段
15 脱水機
20 建屋
21 汚泥タンク
22 汚泥ポンプ
23 配管
24 凝集剤溶解タンク
25 凝集剤ポンプ
26 配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下水処理場において発生した汚泥を脱水し複数の焼却炉により焼却する下水汚泥処理システムにおいて、焼却ヤード内の各焼却炉に付設された汚泥貯留槽に各焼却炉専用の脱水機を設けるとともに、焼却ヤードから離れた建屋内に汚泥タンクと汚泥ポンプとを配置し、この建屋から焼却ヤードまで汚泥のまま配管輸送し、各脱水機で脱水した汚泥を各焼却炉で焼却することを特徴とする下水汚泥処理システム。
【請求項2】
各焼却炉専用の脱水機により、各焼却炉の特性に合わせて、焼却処理時に補助燃料が不要となるまで脱水機出口の脱水汚泥水分含有率を調整することを特徴とする請求項1記載の下水汚泥処理システム。
【請求項3】
焼却ヤードで凝集操作を行うことを特徴とする請求項1記載の下水汚泥処理システム。
【請求項4】
脱水機が回転加圧脱水機であることを特徴とする請求項1記載の下水汚泥処理システム。
【請求項5】
脱水機を各焼却炉に付設された汚泥貯留槽の上方に設置することを特徴とする請求項1記載の下水汚泥処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−214088(P2009−214088A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−63584(P2008−63584)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(507214083)メタウォーター株式会社 (277)
【Fターム(参考)】