説明

下水用採水装置及び下水用採水・捕集装置

【課題】 公道の地下に設けられた下水路を流れる下水の採水及び/又は下水の上方にあるガスを捕集する下水用採水装置、下水用採水・捕集装置及び下水用ガス捕集装置において、渋滞を引き起こすといった交通への影響を与えることのないように、採水作業を迅速に行なうことができるようにする。
【解決手段】 下水路100に沿って設けられたマンホール102の蓋104に形成されたガス抜き孔104aを挿通可能となり、伸縮可能なノズル12と、ノズル12を通して下水を汲み上げて採水容器40に輸送する真空ポンプと、ノズル12の先端の下水への着水を確認する着水確認手段34と、を備え、作業の際には、マンホール102の蓋104を開けずに、該蓋104のガス抜き穴104aにノズル12を挿通させて、作業時間を短縮する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水路を流れる下水の採水及び/又は下水の上方にあるガスを捕集するのに使用される可搬性の下水用採水装置、下水用採水・捕集装置及び下水用ガス捕集装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下水に重金属等有害物質が混入されているかを検出し、その発生源を特定することを目的として、下水路に沿って所定間隔毎に設けられたマンホールから下水を採水し、そのサンプルを集めて分析し、どの地点から重金属等有害物質が混入されているかを特定することが行われている。
【0003】
かかる下水の採水に当たっては、可搬性の下水用採水装置を車両で搬送し、マンホール毎に車両を駐停車して、マンホールの蓋を開けて、ペッテンコーヘル型採水用具を用いた手汲み採水や、真空ポンプや吸い上げポンプなどを用いた吸引による採水が行われている。
【0004】
例えば、吸い上げポンプを用いて、下水、工場廃水等の物性を調べるために、採水を行う装置としては、特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1に記載された採水装置は、測定対象液を汲み上げるポンプと、ポンプより採水した液を測定するために貯留する水槽とを備え、水槽の上部と下部にそれぞれ排出管を設けると共に、水槽内の液面レベルの変動に応じて、液面レベルが一定になるようにポンプの回転数を制御する制御装置を備えている。
【0005】
また、真空ポンプを用いて、所定の水深の地下水を採水する装置としては、特許文献2に記載されたものが知られている。特許文献2に記載された採水器は、貯水容器と、貯水容器の空気を吸引するための空気吸引手段と、採水用ホースと、を備えている。
【0006】
【特許文献1】実願昭61−92258号(実開平62−203438号)のマイクロフィルム
【特許文献2】特開平7−225178号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、下水路のマンホールは、通常、公道の地下に設けられているために、渋滞を引き起こすといった交通への影響を与えることのないように、採水作業は迅速に行われる必要があるが、従来の装置では、作業に要する時間が迅速であるとは言い難いという問題がある。また、マンホールの蓋を取り外すと人・物の落下防止に配慮する必要があるといった安全性の問題も発生する。
【0008】
本発明はかかる課題に鑑みなされたもので、その目的は、下水路を流れる下水の採水及び/又は下水の上方にあるガスの捕集を迅速に行うことができ、作業時間を短縮することができる下水用採水装置、下水用採水・捕集装置及び下水用ガス捕集装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、下水路を流れる下水の採水を行うための可搬性の下水用採水装置であって、
下水路に沿って設けられたマンホールの蓋に形成されたガス抜き孔を挿通可能なノズルと、
該ノズルの先端部に設けられた開口からノズルを通して下水を汲み上げて地上に配置された採水容器に輸送する汲み上げ手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のものにおいて、ノズルの先端部の下水への着水を検出する着水検出手段をさらに備えることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の前記着水検出手段が、ノズルの先端部において離間された2点の電気伝導度を検出するものであることを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項2記載の前記着水検出手段が、ノズルと並列に設けられてノズルの先端部の撮影を行なうカメラ付きファイバスコープを有することを特徴とする。
【0013】
請求項5記載の発明は、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のものにおいて、ノズル内へ洗浄水を供給する洗浄水供給手段をさらに備えることを特徴とする。
【0014】
請求項6記載の発明は、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のものにおいて、前記ノズルは、導電性フレキシブル管を有することを特徴とする。
【0015】
請求項7記載の発明は、請求項1ないし6のいずれか1項に記載のものにおいて、地上に配置されたガス検出センサと、ガス検出センサを選択的に切り替えてノズルに連通させる手段と、をさらに備え、該連通手段により前記ガス検出センサは、前記ノズルを介してマンホールの蓋の下方の空間と連通されて、該空間内に存在するガスを検出するものであり、ガス捕集装置を兼用した下水用採水装置であることを特徴とする。
【0016】
請求項8記載の発明は、請求項1ないし7のいずれか1項に記載のものにおいて、前記汲み上げ手段は、前記ノズルを通してマンホールの蓋の下方の気体をも汲み上げるものであり、ガス捕集装置を兼用した下水用採水装置であることを特徴とする。
【0017】
請求項9記載の発明は、下水路に沿って設けられたマンホールの蓋の下方の液体の採水または気体の捕集を行う可搬性の下水用採水・捕集装置であって、
マンホールの蓋に形成されたガス抜き孔を挿通可能なノズルと、
該ノズルの先端部に設けられた開口からノズルを通してマンホールの蓋の下方の液体または気体を汲み上げて地上に配置された容器またはセンサに輸送する汲み上げ手段と、を備えることを特徴とする。
【0018】
請求項10記載の発明は、下水路を流れる下水の上方のガスの捕集を行うための可搬性の下水用ガス捕集装置であって、下水路に沿って設けられたマンホールの蓋に形成されたガス抜き孔を挿通可能なノズルと、該ノズルの先端部に設けられた開口からノズルを通してガスを汲み上げて地上に配置された捕集容器に輸送する汲み上げ手段と、を備えることを特徴とする。
【0019】
請求項11記載の発明は、下水路を流れる下水の上方のガスの検出を行うための可搬性の下水用ガス捕集装置であって、
下水路に沿って設けられたマンホールの蓋に形成されたガス抜き孔を挿通可能なノズルと、地上に配置され、該ノズルの先端部に設けられた開口からノズルを通してガスを汲み上げて下水の上方のガスの検出を行なうガス検出センサと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1記載の発明によれば、マンホールの蓋に形成されたガス抜き孔にノズルを挿通させて、ノズルの先端を下水へと着水させ、その開口から下水を汲み上げて、地上に配置された採水容器に輸送するために、マンホールの蓋の取り外し、及び取付が一切不要となる。そのため、一連の作業を迅速に且つ短時間で終了させることができ、公道で行なう作業であっても交通への影響を小さく安全に作業をすることができる。
【0021】
請求項2記載の発明によれば、着水検出手段が着水を検出するので、マンホールの蓋の下方にあるノズルの先端を目視で確認できない状況であっても、確実に、ノズルの先端を下水へ着水させて、下水を汲み上げることができる。
【0022】
請求項3及び4記載の発明によれば、着水検出手段として、マンホールのガス抜き孔を通過する簡単なものとすることができる。
【0023】
請求項5記載の発明によれば、1回の採水毎に、洗浄水によってノズルが洗浄されるために、次のノズルによる汲み上げ時に、前回のサンプルの混入を防ぐことができる。
【0024】
請求項6記載の発明によれば、ノズルがフレキシブル管であるために、収納時には折り曲げておくことができる。また、フレキシブル管によってノズルの主要部を構成することにより、ノズルの気密性を高めることができる。
【0025】
請求項7記載の発明によれば、連通手段によって、ノズルをガス検出センサに連通させることにより、マンホールの蓋の下方の空間とガス検出センサとを連通させることができ、マンホールの蓋の下方の空間内に存在するガスを検出することができるようになる。
【0026】
請求項8記載の発明によれば、同じ汲み上げ手段を用いて、マンホールの蓋の下方の空間内に存在するガスをも捕集することができる。
【0027】
請求項9記載の発明によれば、マンホールの蓋に形成されたガス抜き孔にノズルを挿通させて、ノズルの先端をマンホールの蓋へと挿入して、その開口からマンホールの蓋の下方の液体または気体を汲み上げて、地上に配置された容器またはセンサに輸送するために、マンホールの蓋の取り外し、及び取付が一切不要となる。そのため、一連の作業を迅速に且つ短時間で終了させることができ、公道で行なう作業であっても交通への影響を小さく安全に作業をすることができる。
【0028】
請求項10または11記載の発明によれば、マンホールの蓋に形成されたガス抜き孔にノズルを挿通させて、ノズルの先端をマンホールの蓋へと挿入して、その開口から下水路を流れる下水の上方のガスを汲み上げまたはガスの検出を行なうために、マンホールの蓋の取り外し、及び取付が一切不要となる。そのため、一連の作業を迅速に且つ短時間で終了させることができ、公道で行なう作業であっても交通への影響を小さく安全に作業をすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0030】
図1は本発明の第1実施形態に係る下水用採水装置の全体図である。図においては、下水用採水装置10は、主として、ノズル12と、装置本体14と、ノズル12と装置本体14とを連結する連結管路16と、を有している。
【0031】
ノズル12は、図2に示すように、テレスコピックに構成されるべく、管径が段階的に小さくなった複数の管20、21、22、23、24が連結されたものからなっている。隣り合う管21と22、22と23、23と24とは、それぞれOリング25を介して摺動可能となっており、これによって、ノズル12は、伸縮性を有すると共に、管内に気密性を有する。
【0032】
このノズル12を構成する管は、基部の管20を除き、その管21、22、23、24の外径は、すべて、マンホール102の蓋104に形成されたガス抜き孔104a(通常14mm程度)の内径よりも小さく設定されている。
【0033】
ノズル12を構成する先頭の管24の先端部の側面には、周方向に離間して複数の開口24aが形成されており、該開口24aが下水を吸引する入口となる。
【0034】
先頭の管24の管孔の端部には、先端錘26が着脱可能に嵌め込み可能となっている。先端錘26は、先頭の管24と接触する円錐部分26aが塩化ビニール樹脂等の絶縁体から構成され、管24よりも先方に離間される円柱部分の検出部26bがステンレス等の金属から構成される。そして、検出部26bには、ケーブル27の下端が接続され、ケーブル27は、管20〜24内を挿通している。また、ノズル12を構成する管のうち少なくとも先頭の管24はステンレス等の金属管からなっており、先頭の管24の上端には、ケーブル28の下端が接続され、ケーブル28は、管20〜23内を挿通している。
【0035】
ケーブル27、28の他方の端部は、図3に示すように、装置本体14内のコントロール部30に設けられた電気伝導度計測部32に接続される。電気伝導度計測部32は、先端錘26の検出部26bと、先頭の管24との間の電気伝導度を測定するものである。これらの先端錘26の検出部26b、ノズル12の先頭の管24及び電気伝導度計測部32によって、着水検出手段34が構成される。
【0036】
ノズル12は、耐圧ホースからなる連結管路16を介して装置本体14内に配設される採水容器40内へと連結される。採水容器40は、各マンホール102において採水したサンプルを貯留するもので、マンホール102毎に交換され、その容量としては、500cc〜1000cc程度のものとすることができる。
【0037】
採水容器40の上側には、密閉蓋42が配設されており、該密閉蓋42が装置本体14の容器設置位置にセットされた採水容器40の上部開口を気密性をもって閉塞可能となっている。装置本体14には、密閉蓋42を採水容器40へと押し付けるための取付金具43が枢着されている。
【0038】
密閉蓋42を通り抜けて、前記連結管路16が採水容器40内へと進入し、同様に、真空管路44が採水容器40内へと進入している。また、密閉蓋42には、採水容器40のサンプルが満水レベルに達したか否かを検出する満水センサ46が取り付けられており、満水センサ46からの検出信号を取り出すケーブル48は、密閉蓋42を抜けて、コントロール部30へと接続される。
【0039】
図4に示すように、装置本体14には、前記コントロール部30のほかに、汲み上げ手段としての真空ポンプ50、エアバルブ52、リレー54、が内蔵され、その上面に操作ボタン、ランプからなる操作部58が配設されている。外部電源として車両に設けられたシガレットライター用ソケットまたは電源ソケット(DC12V程度)から電力を供給することができる。または、人力で持ち運ぶ場合に備えて、バッテリー56を装置本体14に内蔵することが可能である。
【0040】
前記密閉蓋42を貫通する真空管路44は、エアバルブ52に連結され、エアバルブ52は、真空ポンプ50に連結される。エアバルブ52は、三方バルブとなっており、真空管路44を大気圧に解放するか、真空管路44を真空ポンプ50へと連通させるかを、リレー54の励磁により選択的に切り替えることができるようになっている。常時は、真空管路44を大気圧に解放し、採水時に真空管路44を真空ポンプ50へと連通させる。
【0041】
また、図3に示すように、連結管路16の途中には、洗浄用の分岐管路60が設けられており、分岐管路60は、コック62を介して洗浄タンク64に連結されている。洗浄タンク64内には洗浄水が貯留されている。これらの分岐管路60、コック62及び洗浄タンク64は洗浄水供給手段66を構成する。
【0042】
以上のように構成される下水用採水装置10は、可搬性を有しており、車両に搭載され、または作業員が担いで運搬することができるようになっている。
【0043】
採水作業は、図5に示すように、下水路100に沿って適宜間隔で設けられたマンホール102へと順次、移動する。マンホール102に達すると、車両の場合は駐停車して、車両内から、主としてノズル12を取出して伸張させながら、マンホール102の蓋104に設けられたガス抜き孔104aにノズル12の先端を挿入して、下降させる。
【0044】
通常、マンホール102の蓋104には、図6に示すように、複数のガス抜き孔104aが形成されているが、蓋104の中心部には形成されていないことが多く、偏心した位置に形成されている。この中から任意のガス抜き孔104aを選択して該ガス抜き穴104aからノズル12を挿入する。
【0045】
マンホール102の下方には、下水路100が配設されているが、マンホール102の蓋104を開けないために、ノズル12の先端の目視は困難であり、下水に到達したかどうかを目視で確認することはできないが、ノズル12の先端の先端錘26と先頭の管24の先端が着水すると、下水を介して先端錘26の検出部26aと管24との間が電気的に導通し、両者の間の電気伝導度は大きくなる。電気伝導度計測部32は、計測された電気伝導度と所定閾値とを比較して、所定閾値よりも大きくなると、操作部58の着水確認ランプ58aを点灯し、作業員に採水の用意が整ったことを知らしめる。
【0046】
マンホール102の下方は下水路100であるが、前述のように、ガス抜き孔104aの選択の仕方によっては、下水に着水が困難なこともあり、そのような場合には、ノズル12を最大限下方まで下降しても着水確認ランプ58aが点灯しないこともある。その場合には、ノズル12を引き上げて、別のガス抜き孔104aから挿入する。通常、下水路100は道路に沿って形成されているので、道路に沿うようなガス抜き孔104aを選択すれば、確実にノズル12を下水に着水させることができる。
【0047】
着水確認ランプ58aが点灯した後、作業員が採水ボタン58bを押圧すると、リレー54がONとなり、エアバルブ52が真空ポンプ50と真空管路44とを連通し、採水容器40を負圧にするために、ノズル12の先頭の管24の開口24aから下水が吸引されて採水容器40へと汲み上げられる。この開口24aは、管24の端部の開口とすることもできるが、管24の先端部の側面に形成した開口とすることにより、下水路100の底部に溜まっている汚泥などを吸い込むことなく、その上側の液体のみを汲み上げることができる。
【0048】
採水容器40で満水センサ46が満水レベルを検出するか、または停止ボタン58cが押圧されるかすると、リレー54がOFFとなり、エアバルブ52が真空管路44を大気圧に解放し、吸引は停止する。
【0049】
こうしてサンプルが貯留された採水容器40は、取付金具43を緩めることにより、装置本体14から取り外される。
【0050】
次に、コック62を開くと、洗浄タンク64から洗浄液が、ノズル12及び連結管路16を流れるために、下水による汚れを洗い流すことができる。
【0051】
その後、新しい空の採水容器40を装置本体14にセットして、次のマンホール102へと移動して、同じ動作を繰り返す。
【0052】
以上のようにこの実施形態では、マンホール102の蓋104を取り外す必要がないために、作業を迅速に且つ安全に行なうことができる。一例として、具体的数値を挙げると、500ccの液体を採水するのに、2〜3分以内で行なうことができる。これによって、道路上で車両を駐停車させて行なう作業を短時間で終わらせることができ、交通への影響を小さくすることができる。
【0053】
図7は、第2の実施形態を表す装置本体と連結管路の付近を表す要部図であり、前実施形態と同一の部材は、同一の符号を付して、その詳細説明を省略する。
【0054】
この例では、汲み上げ手段として真空ポンプを使用する代わりに、吸い上げポンプを利用した例であり、ノズル12と、採水容器40がセットされる装置本体14との間の連結管路16に、渦巻きポンプなどで構成される吸い上げポンプ70と、開閉コック72とが設けられている。この場合には、採水容器40内を密閉的に閉塞する必要はない。
【0055】
この例においても、前実施形態と同様に着水確認が行なわれると、吸い上げポンプ70を作動して、ノズル12から吸引した液体を採水容器40へと汲み上げることができるようになる。
【0056】
尚、この例の場合には、洗浄作業の場合に、吸い上げポンプ70も洗浄することが望ましいので、洗浄用の分岐管路60による連結管路16の分岐点は、吸い上げポンプ70よりも上流側に設けられている。
この実施形態においても、前実施形態と同様の作用・効果が得られる。
【0057】
次に、図8は、本発明の第3実施形態を表す図1相当図である。この例では、着水確認手段を、着水することによる電気伝導度の変化を利用した手段とするのではなく、CCDカメラ付きファイバスコープ80と、モニタ82とから構成した例である。
【0058】
CCDカメラ付きファイバスコープ80を、ノズル12と平行に、マンホール102の蓋104のノズル12が挿入されたガス抜き孔104aとは別のガス抜き孔104aからマンホール102に挿入して、ノズル12の先端の撮影を行い、その画像をモニタ82に表示する。作業員がモニタ82を見ることによって、ノズル12の先端が着水したかどうかを確認することができる。
【0059】
また、この実施形態では、CCDカメラ付きファイバスコープ80を操作するにより、着水を確認するのみならず、マンホール102内の状態も視認することができるようになる。
こうして、本実施形態においても前実施形態と同様の作用・効果が得られる。
【0060】
次に、図9は、他の実施形態を表す図である。この例では、ノズル12−1として、導電性のフレキシブルチューブを用いている点で、異なっており、他の部分は前実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0061】
ノズル12−1は、導電性のフレキシブル管90と、該フレキシブル管90の外側に遊嵌された複数の直状の外側管92と、フレキシブル管90の先端に取り付けられたストレーナ94と、フレキシブル管90の基端に取り付けられて連結管路16に接続される接続管96と、先端錘26と、を有する。
【0062】
導電性のフレキシブル管90は、例えば、螺旋状に巻回させた金属帯を備え、自在に折り曲げが可能であると共に、導電性・気密性を有する。
【0063】
外側管92の外径は、マンホール102の蓋104に形成されたガス抜き孔104aの内径よりも小さく設定されている。そして、各外側管92の長さは取り扱い易い長さ(300〜600mm程度)とすることができる。
【0064】
ストレーナ94の側面には、周方向に離間して複数の開口94aが形成されており、該開口94aが下水を吸引する入口となる。
【0065】
フレキシブル管90及び外側管92は、伸縮可能となっており、即ち、不使用時には、外側管92毎に折り曲げて、まとめて収納しておくことができ、コンパクトに納めることができる。そして、使用時には、外側管92ごとに折り曲げを解消させて、マンホール102の蓋104のガス抜き孔104a内に挿入していく。フレキシブル管90は折り曲げ自在であるために、それ自体では直線性が悪いが、外側管92のウエイト及びガイドとしての機能により、蓋104から直線的に降下させることができる。
【0066】
フレキシブル管90が導電性を持つために、着水検出手段34のためのケーブル28は、フレキシブル管90内を挿通させる必要はなく、フレキシブル管90の基部または接続管96に接続することができる。このため、フレキシブル管90内を配索されるのは、先端錘26に接続されたケーブル27だけとなり、1本のケーブルとすることにより、ケーブル同士の撚りなどを防ぎ、ストレーナ94から吸引された下水に混入するおそれのある漂流物などのケーブルへの付着を防ぐことができる。また、この実施形態によれば、フレキシブル管90は1本の連続した管で構成することができるために、気密性をより高めることができる。
【0067】
次に、図10は、下水用採水装置10を、下水内のガスを捕集するガス捕集装置を兼ねる下水用採水・捕集装置として使用することができるものとした他の実施形態を表す。
【0068】
この実施形態では、好ましくは、連結管路16の途中に、さらに、ガス捕集用の分岐管路110が設けられており、分岐管路110は、コック112を介してガス検出センサ114の吸引口に連結されている。ガス検出センサ114は、特定のガスの濃度を検出することができるセンサで、例えば、干渉増幅反射法を利用してVOC(揮発性有機物質)の濃度を測定できるセンサとすることができる。また、ガス検出センサ114自身が汲み上げ手段としての吸引機能を有している。
【0069】
以下、そのガス捕集装置を兼ねた下水用採水装置10の作用を説明する。第1実施形態で説明したものと同様の手順で着水確認ランプ58aが点灯した後に採水を行った後、ノズル12,12−1を上昇させると、着水確認ランプ58aが消灯する。この消灯した直ぐの状態で、コック112を開く。これにより、下水の直上の位置とガス検出センサ114とをノズル12,12−1を介して連通させることができ、下水の直上に存在するガスの種類と濃度を計測することができる。
【0070】
こうして、ガス検出センサ114での計測を完了し、コック112を閉じた後、任意には、さらに、装置本体14に別の捕集容器40−1をセットし、前述の採水ボタン58bを押圧すると、リレー54がONとなり真空ポンプ50の吸引により、下水の真上にあるガスを捕集容器40−1内に汲み上げることができる。所定時間経過するか、または停止ボタン58cが押圧されるかすると、リレー54がOFFとなる。その後に、捕集容器40−1を装置本体14から取り外すと、ガスの捕集も可能になる。
【0071】
こうして、下水の採水、下水の直上のガスの計測及び/または下水の真上のガスの捕集を一連の流れで行なうことができる。これらの捕集または計測結果を分析することにより、液体の分析結果とガスの分析結果との相関関係を調べることもできるようになる。また、このような一連の流れで捕集を終了し、捕集時間は短時間で済むために、交通への影響を低減して安全に作業を行なうことができる。
【0072】
この実施形態では、下水用採水装置10を、下水内のガスを捕集するガス捕集装置を兼ねる下水用採水・捕集装置として使用することができるものとして説明したが、これに限るものではなく、ガスの捕集またはガスの検出のみを行なう下水用ガス捕集装置として使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の第1実施形態に係る採水装置の作業状態を表す全体説明図である。
【図2】図1の採水装置のノズルの拡大断面図である。
【図3】図1の採水装置の装置本体及び連結管路の側面図である。
【図4】図1の採水装置の装置本体の平面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る採水装置の作業を表す説明図である。
【図6】マンホールの蓋の平面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る採水装置の装置本体及び連結管路の側面図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係る採水装置の図1相当図である。
【図9】本発明の他の実施形態に係るノズルの拡大断面図である。
【図10】本発明の更に他の実施形態に係るガス捕集装置を兼用した採水装置の装置本体の側面図である。
【符号の説明】
【0074】
10 下水用採水装置
12,12−1 ノズル
24a 開口
34 着水検出手段
40 採水容器
40−1 捕集装置
50 真空ポンプ(汲み上げ手段)
66 洗浄水供給手段
70 汲み上げポンプ(汲み上げ手段)
80 カメラ付きファイバスコープ
94a 開口
100 下水路
102 マンホール
104 蓋
104a ガス抜き孔
112 コック(連通手段)
114 ガス検出センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下水路を流れる下水の採水を行うための可搬性の下水用採水装置であって、
下水路に沿って設けられたマンホールの蓋に形成されたガス抜き孔を挿通可能なノズルと、
該ノズルの先端部に設けられた開口からノズルを通して下水を汲み上げて地上に配置された採水容器に輸送する汲み上げ手段と、
を備えることを特徴とする下水用採水装置。
【請求項2】
ノズルの先端部の下水への着水を検出する着水検出手段をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の下水用採水装置。
【請求項3】
前記着水検出手段は、ノズルの先端部において離間された2点の電気伝導度を検出するものであることを特徴とする請求項2記載の下水用採水装置。
【請求項4】
前記着水検出手段は、ノズルと並列に設けられてノズルの先端部の撮影を行なうカメラ付きファイバスコープを有することを特徴とする請求項2記載の下水用採水装置。
【請求項5】
前記ノズル内へ洗浄水を供給する洗浄水供給手段をさらに備えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の下水用採水装置。
【請求項6】
前記ノズルは、導電性フレキシブル管を有することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の下水用採水装置。
【請求項7】
地上に配置されたガス検出センサと、ガス検出センサを選択的に切り替えて前記ノズルに連通させる手段と、をさらに備え、該連通手段により前記ガス検出センサは、前記ノズルを介してマンホールの蓋の下方の空間と連通されて、該空間内に存在するガスを検出するものである、ガス捕集装置を兼用した請求項1ないし6のいずれか1項に記載の下水用採水装置。
【請求項8】
前記汲み上げ手段は、前記ノズルを通してマンホールの蓋の下方の気体をも汲み上げるものである、ガス捕集装置を兼用した請求項1ないし7のいずれか1項に記載の下水用採水装置。
【請求項9】
下水路に沿って設けられたマンホールの蓋の下方の液体の採水または気体の捕集を行なう可搬性の下水用採水・捕集装置であって、
マンホールの蓋に形成されたガス抜き孔を挿通可能なノズルと、
該ノズルの先端部に設けられた開口からノズルを通してマンホールの蓋の下方の液体または気体を汲み上げて地上に配置された容器またはセンサに輸送する汲み上げ手段と、
を備えることを特徴とする下水用採水・捕集装置。
【請求項10】
下水路を流れる下水の上方のガスの捕集を行うための可搬性の下水用ガス捕集装置であって、
下水路に沿って設けられたマンホールの蓋に形成されたガス抜き孔を挿通可能なノズルと、
該ノズルの先端部に設けられた開口からノズルを通してガスを汲み上げて地上に配置された捕集容器に輸送する汲み上げ手段と、
を備えることを特徴とする下水用ガス捕集装置。
【請求項11】
下水路を流れる下水の上方のガスの検出を行うための可搬性の下水用ガス捕集装置であって、
下水路に沿って設けられたマンホールの蓋に形成されたガス抜き孔を挿通可能なノズルと、
地上に配置され、該ノズルの先端部に設けられた開口からノズルを通してガスを汲み上げて下水の上方のガスの検出を行なうガス検出センサと、
を備えることを特徴とする下水用ガス捕集装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−53124(P2006−53124A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−62806(P2005−62806)
【出願日】平成17年3月7日(2005.3.7)
【出願人】(592088585)三洋測器株式会社 (1)
【出願人】(591043581)東京都 (107)
【Fターム(参考)】