下水道施設の再構築工事用治具、及び、これを用いた治具組立体
【課題】施工効率を向上し、機械的強度に優れ、軽量であり、低コスト化を実現しうる下水道施設の再構築工事用治具、及び、これを用いた治具組立体を提供する。
【解決手段】治具10を構成する内枠部11は、剛性を有し、湾曲端縁111と、非湾曲端縁112と、連結部115、116とを含む。湾曲端縁111は、高さ方向Tに向かい合う二辺であって、円弧状に湾曲している。非湾曲端縁112は、幅方向Wに向かい合う二辺である。連結部115、116は、非湾曲端縁112に備えられている。外板部13は、弾性を有する合成樹脂材料を主成分とし、内枠部11の外面に取り付けられている。上述した治具10は、複数が組み合わされて治具組立体1を構成する。治具組立体1において、隣接する非湾曲端縁112は連結部115、116により順次結合され、結合された状態で全体として筒状になっている。
【解決手段】治具10を構成する内枠部11は、剛性を有し、湾曲端縁111と、非湾曲端縁112と、連結部115、116とを含む。湾曲端縁111は、高さ方向Tに向かい合う二辺であって、円弧状に湾曲している。非湾曲端縁112は、幅方向Wに向かい合う二辺である。連結部115、116は、非湾曲端縁112に備えられている。外板部13は、弾性を有する合成樹脂材料を主成分とし、内枠部11の外面に取り付けられている。上述した治具10は、複数が組み合わされて治具組立体1を構成する。治具組立体1において、隣接する非湾曲端縁112は連結部115、116により順次結合され、結合された状態で全体として筒状になっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水道施設の再構築工事に用いられる治具、及び、これを用いた治具組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
下水管路網に設置されているコンクリート製の既設マンホールについて、近年、下水から発生する硫化水素ガスによる内面の腐食劣化が確認され、深刻な社会問題になっている。なぜなら、マンホールの内面に腐食部分が生じたまま補修せずに放置すると、周囲からの土圧によって腐食部分に亀裂が生じ、この亀裂が漏水事故や崩壊事故の引き金となるからである。
【0003】
上述した問題を解決するために用いられる既設マンホールの再構築技術として、例えば、特許文献1及び2が知られている。特許文献1及び2は、筒状の合成樹脂製シートでマンホール内面を被覆し、マンホール内面と硫化水素ガスとの接触を遮断するものである。具体的に、特許文献1及び2では、腐食部分を洗浄処理した後のマンホール内に筒状の合成樹脂製シートを搬入し、シート外面とマンホール内面とが向かい合う隙間に接着剤を充填し、充填した接着剤の養生期間を経て、合成樹脂製シートをマンホール内面に貼り付ける。
【0004】
ところで、特許文献1及び2の開示内容では、養生期間の経過中に、合成樹脂製シートが位置ズレを起こさないように、何らかの突っ張り治具を用いる必要ある。この点、特許文献1では支保工を用いて合成樹脂製シートを支えており、特許文献2ではリング状治具を用いて合成樹脂製シートを支えている。
【0005】
しかし、特許文献1記載の支保工は、高価な金属製であるから、コスト高を招く。また、特許文献1記載の支保工は金属製であるから重量化し、施工現場での持ち運びや、狭いマンホール内での取り扱いが不便である。
【0006】
さらに、特許文献1記載の支保工では、組立作業、及び、設置作業に高度の熟練性が要求される。仮に支保工の設置が不適切であると、位置ズレが生じたまま合成樹脂製シートがマンホール内面に貼り付けられ、位置ズレ部分から再び腐食することとなる。
【0007】
加えて、特許文献1では、マンホールの内部空間が支保工によって塞がれるから、再構築作業者の作業スペースがなくなることとなり、施工効率が低下する。
【0008】
他方、特許文献2のリング状治具もまた金属製であるから、特許文献1と同様に、コスト高を招く問題、及び、施工現場での持ち運びや、狭いマンホール内での取り扱いが不便である問題を生じる。
【0009】
この種のコンクリート製マンホールの多くは成型品であるから、製品ごとに成型上の許容誤差が生じている。特に、再構築工事に係るマンホールは、合成樹脂製シート貼付前の洗浄処理により腐食部分が取り除かれるから、腐食部分が取り除かれた分だけ、内径寸法の誤差が拡大するという特有の問題がある。これに対し、特許文献2のようにリング状治具を用いた場合、再構築工事に係るマンホールの内径寸法の変化に追従することができない。
【特許文献1】特開2001−248177号公報
【特許文献2】特開2001−032309号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、施工効率を向上することができる下水道施設の再構築工事用治具、及び、これを用いた治具組立体を提供することである。
【0011】
本発明のもう1つの課題は、機械的強度に優れ、且、軽量である下水道施設の再構築工事用治具、及び、これを用いた治具組立体を提供することである。
【0012】
本発明の更にもう一つの課題は、低コスト化を実現しうる下水道施設の再構築工事用治具、及び、これを用いた治具組立体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る治具は、上述した課題を解決するため下水道施設の再構築工事で用いられるものであって、内枠部と、外板部とを含む。内枠部は、剛性を有し、湾曲端縁と、非湾曲端縁と、連結部とを含む。湾曲端縁は、高さ方向に向かい合う二辺であって、円弧状に湾曲している。非湾曲端縁は、高さ方向に直交する幅方向に向かい合う二辺である。連結部は、非湾曲端縁の一辺に備えられている。外板部は、弾性を有する合成樹脂材料を主成分とし、内枠部の外面側に取り付けられている。
【0014】
上述した治具は、複数が組み合わされて治具組立体を構成する。本発明に係る治具組立体は、複数の治具において、隣接する非湾曲端縁が連結部により順次結合され、結合された状態で全体として筒状になっている。
【0015】
上述したように、本発明に係る治具において、内枠部は、剛性を有するから、機械的強度に優れた治具、及び、これを用いた治具組立体を提供することができる。
【0016】
外板部は、合成樹脂材料を主成分としているから、例えば、内枠部を金属材料で構成したとしても、外板部の分だけ、軽量化することができる。
【0017】
内枠部において、湾曲端縁は、高さ方向に向かい合う二辺であって、円弧状に湾曲している。非湾曲端縁は、高さ方向に直交する幅方向に向かい合う二辺である。この構成によると、同じ規格品である治具を複数組み合わせ、互いの非湾曲端縁が隣接する関係で配置することにより、容易に筒状の治具組立体を構成することができる。
【0018】
内枠部を構成する湾曲端縁は、円弧状に湾曲しているから、幅寸法が小さくなり、取り扱いが容易になる。従って、施工効率を向上することができる。
【0019】
しかも、非湾曲端縁の一辺には連結部が備えられているから、隣接する非湾曲端縁を連結部により結合することにより、容易に筒状の治具組立体を構成することができる。
【0020】
治具組立体を構成する治具において、内枠部は剛性を有するから、治具組立体の組立作業、及び、解体作業の過程で生じる磨耗や物理的な衝撃に耐えることができる。従って、製品寿命が長くなり、低コスト化が実現される。
【0021】
外板部は、弾性を有し、内枠部の外面側に取り付けられている。この構成によると、治具組立体は、外面に外板部が配置されている構造になる。従って、下水道施設の再構築工事において、外板部の弾性率に応じた範囲内で、再構築工事に係るマンホールの内径寸法の変化に追従することが可能となり、施工効率の向上、及び、低コスト化の実現を図ることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上述べたように、本発明によれば、次のような効果を得ることができる。
(1)施工効率を向上することができる下水道施設の再構築工事用治具、及び、これを用いた治具組立体を提供することができる。
(2)機械的強度に優れ、且、軽量である下水道施設の再構築工事用治具、及び、これを用いた治具組立体を提供することができる。
(3)低コスト化を実現しうる下水道施設の再構築工事用治具、及び、これを用いた治具組立体を提供することができる。
【0023】
本発明の他の目的、構成及び利点については、添付図面を参照し、更に詳しく説明する。添付図面は、単に、例示に過ぎない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係る治具組立体の斜視図である。本発明の一実施形態に係る治具組立体は、下水道施設、具体的には人孔(マンホール)の再構築工事に用いられる。図1の治具組立体は、円筒状であって、矢印Tで示す高さ方向(又は軸方向)に沿って5つに分割されており、分割数に応じた5つの再構築工事用治具10を含んでいる。5つの治具10のうち、矢印Wで示す幅方向(又は周方向)に隣接する2つの治具10は、互に向かい合う辺112、112が、分離可能に組み合わされている。
【0025】
図1に示す治具組立体は、例えば、円筒の外径寸法OD1が850mm程度、内径寸法ID1が650mm程度である。この寸法例は、現在、最も普及しているマンホールの内径寸法である900mmを想定したものである。この構造によると、一般的なマンホールの内部に治具組立体を立設することができるとともに、立設した治具組立体の内部に作業員が入って作業するための空間を確保することができる。
【0026】
上述したように、治具組立体の外径寸法OD1は、再構築工事に係るマンホールの内径寸法に追従して設定される。例えば、治具組立体が、所謂2号マンホール(内径寸法1200mm)の内部に配置される場合、外径寸法OD1は1150mm程度に設定される。また、同治具組立体が、所謂3号マンホール(内径寸法1500mm)の内部に配置される場合、外径寸法OD1は1450mm程度に設定される。治具組立体の外径寸法OD1と、マンホールの内径寸法との径寸法差50mmは、治具組立体の外周に、図示しない防食シートや、裏込め材を配置するための隙間として用いられる。
【0027】
また、図1の治具組立体は、高さ方向Tに沿った高さ寸法T1が、300〜600mm程度である。治具組立体の高さ寸法T1は、再構築工事に係るマンホールの容積や深さ寸法、持ち運びなど取り扱いの容易性などの観点から適宜設定することができる。
【0028】
図2は本発明の一実施形態に係る再構築工事用治具の平面図、図3は図2の治具の分解構造を簡略化して示す斜視図である。さらに、図4は図2の治具の一部を破断して示す斜視図、図5は図4の治具を内側から見た図、図6は図5の6−6線に沿った断面図、図7は図5の7−7線に沿った断面図である。図2乃至図7において、図1に示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。
【0029】
図1の治具組立体を構成する治具10の具体的構造について、以下、図2乃至図7を参照して説明する。まず、図2の治具10は、幅方向Wに沿った幅寸法W10が500mm程度である。治具10の幅寸法W10は、マンホールの再構築工事の作業工程に深く関係している。例えば、一点鎖線で示す円Cは、一般的なマンホールの開口部の形状を示すものであって、最も普及しているマンホールの開口部の径寸法D210は、600mm程度である。従って、幅寸法W10を径寸法D210よりも小さくすることにより、治具10をマンホールの開口部から、その内部空間へ搬入することができる。
【0030】
図1の治具組立体の分割数、及び、図2の治具10の幅寸法W10は、施工に係るマンホールの開口部と本体部との内径寸法差に追従して決定される。即ち、マンホールの開口部が小さければ、幅寸法W10を小さくしなければ、治具10を開口部から本体部に搬入することができない。他方、マンホールは、通常、開口部に対して本体部の内径寸法が拡大されているから、本体部に追従した治具組立体を構成するには、治具10を多く用いる必要がある分、治具組立体の分割数が増加する。従って、図1の治具組立体の分割数は、治具10をマンホール開口部から搬入可能な範囲で、具体的に設定される。
【0031】
再び、図2乃至図7を参照して、治具10の具体的構造を説明する。図2乃至図7の治具10は、内枠部11と、基板部12と、外板部13とを含む。
【0032】
内枠部11は、剛性を有する材料を主成分とし、好ましくは金属材料を主成分としている。内枠部11に用いられる金属材料は、剛性、材料コスト、及び、成形容易性の観点から、鉄などが好ましい。
【0033】
内枠部11は、正面から見て横長の長方形形状の枠組み構造となっており、湾曲端縁111と、非湾曲端縁112と、補強部114と、第1の連結部115と、第2の連結部116とを含む。
【0034】
湾曲端縁111は、高さ方向Tに向かい合う二辺であって、好ましくは薄板で構成されており、円弧状に湾曲している。他方、非湾曲端縁112は、幅方向Wに向かい合う二辺であって、好ましくは薄板で構成されている。
【0035】
内枠部11は、湾曲端縁111及び非湾曲端縁112によって画定される2つの湾曲面領域を有している。即ち、内枠部11は、外面側に拡大された湾曲面領域を有し、内面側に縮小された湾曲面領域を有している。
【0036】
また、内枠部11は、湾曲端縁111及び非湾曲端縁112によって画定される内部空間を有し、この内部空間が、拡大された湾曲面から、縮小された湾曲面に貫通している。
【0037】
補強部114は、棒状であって、湾曲端縁111の幅寸法W10の中間部分において、高さ方向Tに向かい合う湾曲端縁111、111に対し直交する関係で配置され、両端が湾曲端縁111、111に結合されている。
【0038】
第1、第2の連結部115、116は、非湾曲端縁112に備えられている。より詳細に説明すると、第1の連結部115は、非湾曲端縁112の一方に備えられており、非湾曲端縁112の一方端面において幅方向Wに沿って凹状に陥没している。他方、第2の連結部116は、所謂ガイドピンであって、第1の連結部115に向かい合う非湾曲端縁112の他辺に備えられており、非湾曲端縁112の他方端面において幅方向Wに沿って凸状に突出している。
【0039】
第1、第2の連結部115、116は、非湾曲端縁112の一方端面と、他方端面とのそれぞれおいて、重なり合う位置に配置されている。さらに、第1、第2の連結部115、116は、相互に凹凸嵌合可能な構造を有しており、複数の治具10を幅方向Wに隣接して配置したとき、向かい合う非湾曲端縁112を分離可能に結合し、筒状の治具組立体を構成するために用いられる。
【0040】
基板部12は、断面円弧状の薄板、又は、シートであって、合成樹脂材料を主成分とし、より好ましくは厚みが5mm程度の繊維強化プラスチック(FRP=Fiber Reinforced Plastics)で構成されている。本明細書において「繊維強化プラスチック」とは、プラスチック基体の内部に繊維層を有するプラスチック複合材を意味する。一例として、基板部12としては、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP =Glass fiber reinforced plastics)、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)などを用いることができる。
【0041】
基板部12は、内枠部11の外面側に取り付けられており、好ましくは内枠部11に結合されている。内枠部11と、基板部12との結合構造は、FRP製造工程によって実現することができる。この種のFRP製造工程では、内枠部11の外面の曲率に沿った型装置に繊維シートを敷き、さらに繊維シートに母材となるプラスチックを塗布する工程を所定の回数だけ繰り返す。上述したFRP製造工程の途中で、内枠部11の外面を繊維シートに載置し、その上からプラスチックを塗布ことにより、基板部12の内部に、内枠部11が埋設される。
【0042】
さらに、図4乃至図7の基板部12は、FRP補強材120を有している。FRP補強材120は、内枠部11の内面側において、内枠部11と基板部12との結合部分に沿って配置されている。
【0043】
再び図2乃至図7を参照して、治具10の構造を説明する。外板部13は、体積弾性を有する合成樹脂材料を主成分とし、基板部12の外面に取り付けられている。即ち、外板部13は、基板部12を介して、内板部11の外面側に取り付けられている。外板部13は、断面円弧状の薄板、又は、シートであって、好ましくは基板部12との張り合わせ面に粘着層を有しており、基板部12に張り付けられている。
【0044】
外板部13は、好ましくは発泡樹脂を主成分としている。なお、本明細書において「発泡樹脂」とは、粒子状の合成樹脂材料に発泡剤(例えば炭化水素ガス)を吸収させ、これに高温蒸気を当てて発泡させることにより得られる合成樹脂性加工素材を意味する。治具10に用いられる発泡樹脂の構成について、合成樹脂材料の種類や、発泡倍率などの具体的な組成は、治具10に必要とされる機械的強度や、体積弾性、製造コスト、加工容易性などの観点から適宜設定することができる。一例として、治具10としては、EPS(発泡スチロール=expanded polystyrene)、EPP(expanded polypropylene)、EPE(expanded Polyethylene)などを用いることができる。
【0045】
図1乃至図7を参照して説明したように、本発明の一実施形態に係る治具組立体は、分割数に応じて5つの治具10を含み、5つの治具10は隣接する非湾曲端縁112、112が第1、第2の連結部115、116により順次凹凸嵌合により結合され、結合された状態で全体として筒状になっている。
【0046】
図2乃至図7の治具10は、断面円弧状であるから、嵩張らない態様で容易に、かつ、効率的に輸送することができる。従って、輸送コストの低減を図ることができる。
【0047】
治具10は、量産性に富む形状であるから、製造コストを低減することができる。
治具10を構成する内枠部11は、枠状であるから、軽量化することができる。
【0048】
内枠部11は、剛性を有するから、優れた機械的強度を有する。その結果、治具組立体の組立作業、及び、解体作業中に生じる磨耗や物理的な衝撃による経年劣化を最小限にとどめることができる。従って、製品寿命が長くなり、低コスト化が実現される。
【0049】
内枠部11を構成する湾曲端縁111は、円弧状に湾曲しているから、幅寸法W10が小さくなる。従って、取り扱いが容易になり、施工効率を向上することができる。
【0050】
内枠部11は、幅方向Wに向かい合う非湾曲端縁112を有しているから、同じ規格品である治具10を複数組み合わせ、互いの非湾曲端縁112か隣接する関係で配置することにより、容易に筒状の治具組立体を構成することができる。
【0051】
しかも、非湾曲端縁112には第1、第2の連結部115、116が備えられているから、隣接する非湾曲端縁112、112を、第1、第2の連結部115、116を用いた凹凸結合により、容易に筒状の治具組立体を構成することができる。
【0052】
さらに内枠部11を構成する補強部114は、湾曲端縁111の幅寸法の中間部分において、高さ方向Tに向かい合う湾曲端縁111、111に対し直交する関係で配置され、両端が湾曲端縁111、111に結合されている。この構造によると、外部からの衝撃や圧力によって歪みや、変形が生じる不具合を回避し、もって内枠部11の機械的強度を向上させることができる。
【0053】
治具10は、内枠部11と、基板部12と、外板部13との3層構造となっている。基板部12と、外板部13とは、合成樹脂材料を主成分としているから、例えば、内枠部11を比重の大きな金属材料で構成したとしても、基板部12、及び、外板部13の分だけ、軽量化を実現することができる。
【0054】
基板部12は内板部11の外面に取り付けられており、外板部13は基板部12の基板部12の外面に取り付けられている。この構成によると、内枠部11が枠組み状、又は、フレーム状であったとしても、外板部13を基板部12によって面支持することができる。さらに、内枠部11と基板部12とが一体的に結合される構造によると、内枠部11と、基板部12と、外板部13との3層構造の一体性が向上するする。従って、機械的強度に優れた治具10を提供することである。
【0055】
基板部12は、FRP補強材120を有している。FRP補強材120は、内枠部11の内面側において、内枠部11と基板部12との結合部分に沿って配置されている。この構造によると、FRP補強材120の分だけ基板部12の載置面積が確保されるから、内枠部11に対して基板部12を安定して配置することができる。
【0056】
また、基板部12の載置面積が確保されることにより、内枠部11の外面側から押し圧力が加えられた場合に、この押し圧力をFRP補強材120によって面支持することができる。
【0057】
しかも、FRP補強材120は、内枠部11を構成する補強部114の部分において、基板部12との相対向面間に補強部114を挟み込んでいる(図6参照)。この構造によると、内枠部11と、基板部12との結合強度を向上することができる。
【0058】
外板部13は、発泡樹脂を主成分としているから、その発泡構造により優れた体積弾性を有している。従って、下水道施設の再構築工事において、外板部13の体積弾性力に応じた範囲内で、再構築工事に係るマンホールの内径寸法の変化に追従することが可能となり、施工効率の向上、及び、低コスト化の実現を図ることができる。
【0059】
外板部13は、発泡樹脂を主成分としているから、軽量である。従って、施工効率を向上することができる。また、外板部13は、発泡樹脂を主成分としているから、材料コストを比較的安価に抑えることができるとともに、ヒートカッターなどで容易に加工することができる。従って、製造コストを低減することができる。
【0060】
図8乃至図18は、本発明の一実施形態に係る治具を用いた下水道施設の再構築工事の工程を示す図である。図1乃至図7を参照して説明した治具10、及び、これを用いた治具組立体の利点について、以下、図8乃至図18に示した再構築工事の施工工程に沿って説明する。なお、図8乃至図18において、図1乃至図7に示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。
【0061】
まず、図8のマンホール2は、所謂、組立式であって、斜壁ブロック21、直壁ブロック22、及び、底塊ブロック23が高さ方向Tに連結されており、一体的なマンホール内面200、及び、このマンホール内面200により区画される内部空間20を有している。
【0062】
斜壁ブロック21は、開口部210に蓋211を有し、この蓋211がグランドラインGLに露出している。底塊ブロック23は、内部底面230上に流路231を有し、この流路231に流入管61、流出管62が接続されている。流路231は、流入管61から流入した汚水を、流出管62へ流下させる。
【0063】
内部空間20の内径寸法は、斜壁ブロック21の開口部210における径寸法D210で最小となり、底塊ブロック23における内径寸法D230などで最大となる。
【0064】
図8に示す工程において、マンホール内面200に生じた腐食部分を、例えば、高圧水洗浄により除去する。図8のマンホールは腐食部分が既に除去されており、マンホール内面200は、腐食部分を除去した後の部分が凹凸面201となっている。凹凸面201には、予め、エポキシ樹脂や、モルタル等の補修剤を充填して補強してもよい。
【0065】
図9の工程は、図8に示した工程のあとの工程であって、防食シート3を内部空間20に搬入する。防食シート3は、防食効果を有する合成樹脂材料を主成分とし、可撓性を有することが好ましい。防食シート3に用いられる合成樹脂材料としては、塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリプロピレン(PP)、繊維強化プラスチック(FRP=Fiber Reinforced Plastics)等を用いることができる。
【0066】
防食シート3は、予め、内部空間20の内周長を横辺33とし、底塊ブロック23の高さ寸法T23を縦辺とする四角形にカットし、さらにカットした四角形の防食シート3の縦辺を重ね合わせて接着することにより、無端の円筒状に加工されている。防食シート3の外径寸法は、マンホール2が、所謂1号マンホール(内径寸法900mm)である場合、850mmとすることが好ましい。この構造によると、防食シート3の外面31と、マンホール内面200との間に、両者の径寸法差による25mm程度の隙間(G)が生じ、この隙間(G)を裏込め材(5)の打設空間として用いることができる。
【0067】
さらに、防食シート3を内部空間20に搬入するには、図10に示すように、防食シート3を、開口部210の径寸法D210(=600mm)より小さい外径寸法D3となるように、例えば、中間部分で高さ方向Tに沿って凹状に湾曲させ、外径寸法を縮径させる。この湾曲作業により、防食シート3の外径寸法D3を径寸法D210以下に縮径させ、開口部210から、内部空間20に搬入することができる。
【0068】
図11の工程は、図9及び図10に示した工程のあとの工程であって、縮径した防食シート3を内部空間20に搬入して後、底塊ブロック23の内径寸法D230に沿った円筒状に復元(拡径)する。拡径した防食シート3は、マンホール内面200から隙間Gを隔てた状態で、内部底面230に立設される。そして、所定の枚数の治具10を、開口部210を通じて内部空間20に搬入し、さらに防食シート3の内部において、複数の治具10を連結して筒状の治具組立体1を構成する。治具10の連結作業について、一方の治具10の第1の連結部115を、他方の治具10の第2の連結部116に案内して、隣接する非湾曲端縁112を相互に凹凸嵌合する。
【0069】
上述した連結作業を順次繰り返すことにより、図12に示すように無端円筒状の治具組立体1が、同じく無端円筒状の防食シート3の内側に構築され、防食シート3が治具組立体1によって内側から皺や弛みのない状態に押し広げられる。治具組立体1は、好ましくは、その外面が、防食シート3の内面に圧着した状態で、底塊ブロック23の内部底面230に立設されている。
【0070】
図13の工程は、図11及び図12に示した工程のあとの工程であって、マンホール内面200と、防食シート3の外面(31)との間の隙間(G)に裏込め材5を充填する。裏込め材5には、モルタルコンクリートやセメント等を用いることができるが、より好ましくは速硬性コンクリートを用いる。裏込め材5に速硬性コンクリートを用いることにより、施工効率を向上し、施工期間を短縮することができる。
【0071】
裏込め材5は、図14に示すように、隙間G、及び、凹凸面201を埋める。このとき、防食シート3に対して、裏込め材5から矢印Fで示す押し圧力(充填圧力)が加えられる。充填圧力Fは、治具組立体1によって支持されることにより、充填圧力Fによる防食シート3の変形、歪み、さらには剥離などの配置不良が防止される。
【0072】
防食シート3の貼り付けは、上述した配置不良を回避する観点、及び、施工効率の観点から、各マンホール構成ブロック(21、22、23)ごとに一段づつ施工する。防食シート3の高さ方向Tの横辺33には、目地材4を載置しておくのが好ましい。
【0073】
図15の工程は、図13及び図14に示した工程のあとの工程であって、底塊ブロック23の部分に充填した裏込め材5が硬化した後、新たな防食シート3b、及び、治具10を図9乃至図12を参照して説明した工程に沿って内部空間20に搬入する。新たな防食シート3bは、目地材4を介して防食シート3(3a)に連続配置された状態で、直壁ブロック22に対応する部分のマンホール内面200に配置される。
【0074】
他方、新たに搬入された治具10は、図11及び図12を参照して説明した工程に沿って、直壁ブロック22に対応する部分で治具組立体1aに組み合わさる。治具組立体1aは、図16に示すように、防食シート3a、3bの継ぎ目、及び、目地材4の設置箇所を避けた状態で、底塊ブロック23に立設されている治具組立体1bの上に立設される。これは、充填圧力Fにより、防食シート3a、3bの継ぎ目、及び、目地材4の部分から裏込め材(5)が漏出する不具合を回避するためである。目地材4により生じる凹凸は、治具組立体1bの外面を構成する外板部13により、弾性的に吸収される。
【0075】
以上の配置作業を終了した後、直壁ブロック22に対して図13及び図14を参照した裏込め材5の充填工程を行う。
【0076】
図17の工程は、図15及び図16に示した工程のあとの工程であって、裏込め材5の養生期間経過後に、図11及び図12に示した搬入工程の逆の順序に従って、治具組立体(1a、1b)を解体し、解体した治具10を開口部210から搬出する。
【0077】
図17に示す工程の後、さらに斜壁ブロック21に防食シート3を貼り付けし、必要に応じて高さ方向Tに隣接する防食シート3の継ぎ部分に、エポキシ樹脂等の合成樹脂系シール剤を貼付(塗布)するなどして硫化水素ガスに対する気密性、及び、汚水に対する水密性を確保することにより、図18に示す再構築マンホールが得られる。
【0078】
図8乃至図18を参照して説明した下水道施設の再構築方法によると、図1乃至図7を参照して説明した治具10、及び、これを用いた治具組立体1の利点を全て有することができる。例えば、治具組立体1は、複数の治具10を用いた連結構造であるから、それぞれの治具10の幅寸法W10を、開口部210より小さくしておくことにより、開口部210から容易に搬入し、且、内部空間20において容易に組み立てすることができる。
【0079】
治具10を構成する内枠部11は、剛性を有するから、裏込め材5の充填圧力Fに耐えることができる。従って、防食シート3の配置不良を回避することができる。
【0080】
内枠部11は、剛性を有するから、治具組立体1の組立作業、及び、解体作業中に生じる磨耗や物理的な衝撃による経年劣化を最小限にとどめることができる。従って、製品寿命が長くなり、低コスト化が実現される。
【0081】
治具10は、軽量であるから、治具組立体1の組立作業、及び、解体作業を、容易、且、迅速に行うことができる。具体的に、治具10を構成する内枠部11は枠状であり、しかも、基板部12および外板部13は合成樹脂を主成分としているから、従来の鉄製治具と比較して、大幅な軽量化が図られている。従って、施工現場での持ち運び時や、狭いマンホール2内での組立時の等の取り扱いが容易になり、もって施工効率化向上する。
【0082】
内枠部11を構成する湾曲端縁111は、円弧状に湾曲しているから、マンホール内面200に沿った筒状に組み合わせることができる。他方、内枠部11を構成する非湾曲端縁112は、第1、第2の連結部115、116を有しているから、隣接する非湾曲端縁112を第1、第2の連結部115、116により結合することにより、筒状の治具組立体1を容易に構成することができる。従って、治具組立体1の組立作業の施工効率を向上することができる。
【0083】
治具組立体1は、筒状であるから、一般的なマンホール2の内部において、治具組立体1を内部底面230に自立させることができる。従って、治具組立体1を用いた防食シート3の配置作業を容易に行うことができる。
【0084】
治具組立体1は、筒状であるから、治具組立体1の内部には作業員が入って作業する作業スペースが確保される。従って、狭いマンホール2内における防食シート3a、3bの配置作業や、治具組立体1a、1bの積み上げ作業、及び、裏込め材5の充填作業を、容易に、且、迅速に行うことができる。
【0085】
しかも内枠部11は、剛性を有するから、マンホール2の容積や深さ寸法に追従して治具10の高さ寸法T10を大きくする必要が生じた場合でも、治具10の肉厚を厚くする必要は生じない。従って、治具組立体1の内部に充分な作業スペースを確保することができる。
【0086】
外板部13は、弾性を有する合成樹脂材料を主成分とし、内枠部11の外周側に固定されている。再構築工事に係るコンクリート製マンホールの多くは成型品であるから、製品ごとに成型上の許容誤差が生じている。しかも、再構築工事では洗浄処理により、腐食部分が取り除かれた分だけ、マンホールの内径寸法の誤差が拡大するという特有の問題がある。これに対し、本願発明の治具組立体1は、外板部13の体積弾性に応じた範囲内で、マンホール2の内径寸法の誤差に追従することができる。従って、施工効率の向上、及び、低コスト化の実現を図ることができる。
【0087】
また、この種の腐食マンホールの再構築工事では、目地材4を用いて、複数の防食シート3を張り合わせるから、防食シート3の継ぎ目には目地材4による凹凸が生じる。治具組立体1bの外面は、弾性を有する外板部13で構成されているから、目地材4により生じる凹凸を弾性的に吸収し、
さらに、治具組立体1は、その外周に現れた外板部13の弾性を利用して、防食シート3に対して圧着することができる。例えば、この種の再構築工事では、目地材4を用いて、複数の防食シート3a、3bを継ぎ合わせるから、防食シート3a、3bの継ぎ目には目地材4による凹凸が生じる。これに対し、治具組立体1の外面は、弾性を有する外板部13で構成されているから、目地材4により生じる凹凸を弾性的に吸収することが可能である。従って、施工歩留まりが向上し、もって、防食効果の信頼性が向上する。
【0088】
外板部13は、好ましくは発泡樹脂を主成分としているから、例えばヒートカッターなどを用いた熱線切断により、容易に成形することができる。従って、施工に係る下水道施設の径寸法に容易に追従して、様々な径寸法を有する治具組立体1を迅速、且、安価に用意することができる。
【0089】
治具組立体1は、治具10の組み合わせ枚数を任意に設定することにより、径寸法、及び、平面視形状を容易に調整することができる。従って、本発明に係る治具組立体1の構造によると、施工対象である下水道施設の内径寸法や形状の変化に容易に追従し、且、迅速に治具組立体1を設置することができる。
【0090】
図19は本発明のもう一つの実施形態に係る治具組立体の平面図、図20は図19の治具組立体の一部を内側から見た図である。また、図21は図19の治具組立体について一部を取り外した状態の平面図、図22は図21の治具組立体の一部を内側から見た図、図23は図21の治具組立体の一部を側面から見た図である。図19乃至図23において、図1乃至図18に示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。
【0091】
図19乃至図23の治具組立体1は、筒の外径寸法OD1を拡縮することができる構造を有する点で、図1乃至図18の実施形態とは異なる。以下、相違点を中心に説明する。なお、説明の都合上、上述した拡縮構造を構成する治具の一方を治具10aとし、他方を治具10bとする。
【0092】
まず、図19乃至図23の治具組立体1を構成する治具10aは、幅方向Wに向かい合う一方の非湾曲端縁112aに、ガイド部14と、第1の支持金具15と、第2の支持金具16とを有している。
【0093】
ガイド部14は、金属材料を主成分とする2つのレール状部141を有し、隣接する2つのレール状部141の間に隙間を有している。ガイド部14は、非湾曲端縁112aの端面において、高さ方向Tで見た下側に配置されており、2つのレール状部141は、互いに平行する関係で、非湾曲端縁112aの端面を高さ方向Tに沿って伸びている。
【0094】
第1の支持金具15は、板状であって、高さ方向Tで見た非湾曲端縁112aの下側に備えられている。より詳細に説明すると、第1の支持金具15は、非湾曲端縁112aから内径方向に立ち上がる関係で突出しており、突出する部分に切欠部150を有している。切欠部150は、突出部分の下面側に開口している。
【0095】
第2の支持金具16は、板状であって、高さ方向Tで見た非湾曲端縁112aの上側に備えられている。第2の支持金具16は、非湾曲端縁112aから内径方向に立ち上がる関係で突出しており、突出する部分に切欠部160を有している。切欠部160は、突出部分の上面側に開口している。
【0096】
他方、治具10bは、非湾曲端縁112aと幅方向Wに間隔を隔てて向かい合う非湾曲端縁112bに、ガイド部14と、第1の支持金具15と、第2の支持金具16とを有している。
【0097】
ガイド部14は、非湾曲端縁112a、112bにおいて、同一高さ位置に配置されている。第1、第2の支持金具15、16は、非湾曲端縁112a、112bにおいて、同一高さ位置に配置されている。違う言葉で表現すれば、第1の支持金具15は、非湾曲端縁112a、112bにおいて、同一高さ位置に配置され、閂状となっている。
【0098】
さらに、図19乃至図23の治具組立体1は、楔片挿入空間70と、第1の楔片71と、第2の楔片72と、第1の締め込み具73と、第2の締め込み具74とを有している。
【0099】
楔片挿入空間70は、非湾曲端縁112aと、非湾曲端縁112aに向かい合う非湾曲端縁112bとによって画定されている。非湾曲端縁112a、112bは、高さ方向Tの上側から下側へ向かうに従って、相対向面間の間隔が小さくなる方向に傾斜しており、楔片挿入空間70が先細り状になっている。
【0100】
第1の楔片71は、楔片挿入空間70の下側に配置されるものであって、取付部710と、突起711とを有している。取付部710は、金属材料を主成分とする平板状であって、第1の楔片71の内面から内径方向に立ち上がっており、立ち上がり面にスリット712を有している。スリット712は立ち上がり面を厚み方向に貫通するとともに、立ち上がり面の周縁に開口し、第1の楔片71の内面に向かって内径方向に伸びている(例えば、図25参照)。
【0101】
突起711は、第1の楔片71において、幅方向Wに向かい合う両側面にそれぞれ備えられ、側面を高さ方向Tに沿って伸びている。突起711は、ガイド部14の隙間に嵌合されており、嵌合された状態で第1の楔片71の揺動を規制する。
【0102】
第2の楔片72は、楔片挿入空間70の上側に配置されるものであって、内面にネジ穴(720)を有している。第1、第2の楔片71、72は、楔片挿入空間70の内部において高さ方向Tに連続して配置され、楔片挿入空間70に配置された状態で、外径寸法OD1を拡張させ、楔片挿入空間70から取り出された状態で、外径寸法OD1を縮小させる。即ち、第1、第2の楔片71、72は、組立作業の効率性、及び、正確性の観点から、楔片挿入空間70に対応する楔体を高さ方向Tの中間部分で分割した構造を有している。
【0103】
第1の締め込み具73は、第1の固定部731と、ボルト732と、ナット733とを有している。第1の固定部731は、板状であって、第1の支持金具15の切欠部150にはめ込めまれる。違う言葉で表現すれば、第1の固定部731は、閂状に配置された第1の支持金具15に対して、所謂横木として用いられるものである。
【0104】
ボルト732は、好ましくはスタッドボルトであって、第1の固定部731を高さ方向Tに貫通した状態で、一端が第1の固定部731から突出し、他端が第1の楔片71の取付部710に配置されている。
【0105】
ナット733は、ボルト732の両端に取り付けられ、一方が第1の固定部731の下側に取り付けられ、他方が第1の楔片71の取付部710の上側に取り付けられている。この構造によると、第1の締め込み具73は、ボルト732とナット733とを締め付けることにより生じる締め付け力を利用して、第1の固定部731、治具10a、10b、及び、第1の楔片71を一体的に結合することができる。
【0106】
第2の締め込み具74は、第2の固定部741と、ハンドル部742とを有している。第2の固定部741は、第2の支持金具16の切欠部160にはめ込めまれる。違う言葉で表現すれば、第2の固定部741は、閂状に配置された第2の支持金具16に対して、所謂横木として用いられるものである。
【0107】
ハンドル部742は、軸部分がボルト状になっており、軸部分が第2の固定部741を貫通した状態で、軸部分の先端がネジ穴720に螺着されている。この構造によると、第2の締め込み具74は、閉方向にハンドル部742を操作することにより生じる締め付け力を利用して、第2の固定部741、治具10a、10b、及び、第2の楔片72を一体的に結合することができる。
【0108】
図24乃至図27は、図19乃至図23の治具組立体の組立工程について一部を省略して示す図である。図24乃至図27において、図1乃至図23に示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。
【0109】
図19乃至図23を参照して説明した治具組立体1の利点について、さらに具体的な使用方法の観点から説明する。
【0110】
図24に示す状態では、治具組立体1には楔片挿入空間70の分だけ外径寸法(OD1)を縮小可能であるから、例えば、5分割された治具組立体1において、5つ目(最後)の治具10a又は10bを、高さ方向Tからの垂直差込みではなく、幅方向Wからの水平差込みによって配置することができる。そして、図25に示すように、全ての治具10を配置して略筒状に構成した状態で、楔片挿入空間70に第1の楔片71を挿入する。第1の楔片71は、突起711がガイド部14の隙間に案内されることにより、ガイド部14により揺動や位置ズレが規制された状態で、楔片挿入空間70に案内される。楔片挿入空間70に第1の楔片71が打ち込まれるにしたがって、非湾曲端縁112a、112bの間が離間する。
【0111】
図26に示す工程は、図24及び図25に示した工程のあとの工程であって、第1の楔片71が楔片挿入空間70に案内された状態で、第1の締め込み具73を締め付けることにより、第1の楔片71が楔片挿入空間70に固定され、外径寸法(OD1)が、第1の楔片の幅寸法W71の分だけ、幅方向Wに拡張される。第1の楔片71が第1の締め込み具73により固定された状態で、さらに第2の楔片72を楔片挿入空間70に案内する。
【0112】
図27に示す工程は、図26に示した工程のあとの工程であって、第2の楔片72が楔片挿入空間70に案内された状態で、第2の締め込み具74を締め付ける。即ち、楔片挿入空間70は、外径寸法(OD1)が、第2の楔片72の幅寸法W72の分だけ、幅方向Wに拡張し、拡張した状態で固定される。
【0113】
図24乃至図27に示したように、治具組立体1は、第1、第2の楔片71、72が、楔片挿入空間70に打ち込まれた状態で外径寸法OD1を拡張させ、楔片挿入空間70から取り出された状態で外径寸法OD1を縮小させることが可能であるから、治具組立体1の組立作業及び解体作業の効率を向上することができる。例えば、図8乃至図18を参照して説明した底塊ブロック23の内径寸法が900mm程度の場合、その外径寸法OD1が850mmの治具組立体1を構築しようとすると、組立工程の最後の治具10を差し込む際に、窮屈になる場合がある。
【0114】
これに対し、本実施形態では、組立工程の最後に結合される治具10a、10bに楔片挿入空間70を設け、第1、第2の楔片71、72を打ち込むことにより外径寸法OD1を拡張させることが可能であるから、第1、第2の楔片71、72の幅寸法W71、72の分だけ、スペースに余裕が生まれる。従って、治具組立体1の組立作業を効率的に行うことができる。また、治具組立体1の組立作業とは逆の順序で解体作業を効率的に行うことができることも明白である。
【0115】
さらに、第1、第2の楔片71、72を打ち込むことにより、治具組立体1の外径寸法OD1を、幅寸法W71、72の分だけ拡張することができるから、防食シート3に対する密着性を微調節することが可能となり、防食効果の信頼性が向上する。
【0116】
ガイド部14が楔片挿入空間70の下側に配置されている構成によると、第1の楔片71の挿入時に、先端部が非湾曲端縁112a、112bに直接接触することが回避されるから、円滑な出し入れが可能となるとともに、両者の接触による損壊事故が生じる危険を回避することができる。
【0117】
以上、好ましい実施例を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種種の変形態様を採り得ることは自明である。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本発明の一実施形態に係る治具組立体の斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る再構築工事用治具の平面図である。
【図3】図2の治具の分解構造を簡略化して示す斜視図である。
【図4】図2の治具の一部を破断して示す斜視図である。
【図5】図4の治具を内側から見た図である。
【図6】図5の6−6線に沿った断面図である。
【図7】図5の7−7線に沿った断面図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る治具を用いた下水道施設の再構築工事の工程について一部を省略して示す部分断面図である。
【図9】図8に示した工程のあとの工程を示す図である。
【図10】図9に示した工程について一部を省略して示す斜視図である。
【図11】図9及び図10に示した工程のあとの工程を示す図である。
【図12】図11に示した工程のあとの状態について一部を省略して示す平面図である。
【図13】図11及び図12に示した工程のあとの工程を示す図である。
【図14】図13に示した工程について一部を省略して示す拡大図である。
【図15】図13及び図14に示した工程のあとの工程を示す図である。
【図16】図15に示した工程について一部を省略して示す拡大図である。
【図17】図15及び図16に示した工程のあとの工程を示す図である。
【図18】図17に示した工程のあとの状態を示す図である。
【図19】本発明のもう一つの実施形態に係る治具組立体の平面図である。
【図20】図19の治具組立体の一部を内側から見た図である。
【図21】図19の治具組立体について一部を取り外した状態の平面図である。
【図22】図21の治具組立体の一部を内側から見た図である。
【図23】図21の治具組立体の一部を側面から見た図である。
【図24】本発明のもう一つの実施形態に係る治具組立体の組立工程について一部を省略して示す図である。
【図25】図24に示した工程を平面から見た状態を示す図である。
【図26】図24及び図25に示した工程のあとの工程を示す図である。
【図27】図26に示した工程のあとの工程を示す図である。
【符号の説明】
【0119】
1 治具組立体
10 治具
11 内枠部
111 湾曲端縁
112 非湾曲端縁
115 第1の連結部
116 第2の連結部
12 基板部
13 外板部
70 楔片挿入空間
71、72 第1、第2の楔片
OD1 治具組立体の外径寸法
T 高さ方向
W 幅方向
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水道施設の再構築工事に用いられる治具、及び、これを用いた治具組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
下水管路網に設置されているコンクリート製の既設マンホールについて、近年、下水から発生する硫化水素ガスによる内面の腐食劣化が確認され、深刻な社会問題になっている。なぜなら、マンホールの内面に腐食部分が生じたまま補修せずに放置すると、周囲からの土圧によって腐食部分に亀裂が生じ、この亀裂が漏水事故や崩壊事故の引き金となるからである。
【0003】
上述した問題を解決するために用いられる既設マンホールの再構築技術として、例えば、特許文献1及び2が知られている。特許文献1及び2は、筒状の合成樹脂製シートでマンホール内面を被覆し、マンホール内面と硫化水素ガスとの接触を遮断するものである。具体的に、特許文献1及び2では、腐食部分を洗浄処理した後のマンホール内に筒状の合成樹脂製シートを搬入し、シート外面とマンホール内面とが向かい合う隙間に接着剤を充填し、充填した接着剤の養生期間を経て、合成樹脂製シートをマンホール内面に貼り付ける。
【0004】
ところで、特許文献1及び2の開示内容では、養生期間の経過中に、合成樹脂製シートが位置ズレを起こさないように、何らかの突っ張り治具を用いる必要ある。この点、特許文献1では支保工を用いて合成樹脂製シートを支えており、特許文献2ではリング状治具を用いて合成樹脂製シートを支えている。
【0005】
しかし、特許文献1記載の支保工は、高価な金属製であるから、コスト高を招く。また、特許文献1記載の支保工は金属製であるから重量化し、施工現場での持ち運びや、狭いマンホール内での取り扱いが不便である。
【0006】
さらに、特許文献1記載の支保工では、組立作業、及び、設置作業に高度の熟練性が要求される。仮に支保工の設置が不適切であると、位置ズレが生じたまま合成樹脂製シートがマンホール内面に貼り付けられ、位置ズレ部分から再び腐食することとなる。
【0007】
加えて、特許文献1では、マンホールの内部空間が支保工によって塞がれるから、再構築作業者の作業スペースがなくなることとなり、施工効率が低下する。
【0008】
他方、特許文献2のリング状治具もまた金属製であるから、特許文献1と同様に、コスト高を招く問題、及び、施工現場での持ち運びや、狭いマンホール内での取り扱いが不便である問題を生じる。
【0009】
この種のコンクリート製マンホールの多くは成型品であるから、製品ごとに成型上の許容誤差が生じている。特に、再構築工事に係るマンホールは、合成樹脂製シート貼付前の洗浄処理により腐食部分が取り除かれるから、腐食部分が取り除かれた分だけ、内径寸法の誤差が拡大するという特有の問題がある。これに対し、特許文献2のようにリング状治具を用いた場合、再構築工事に係るマンホールの内径寸法の変化に追従することができない。
【特許文献1】特開2001−248177号公報
【特許文献2】特開2001−032309号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、施工効率を向上することができる下水道施設の再構築工事用治具、及び、これを用いた治具組立体を提供することである。
【0011】
本発明のもう1つの課題は、機械的強度に優れ、且、軽量である下水道施設の再構築工事用治具、及び、これを用いた治具組立体を提供することである。
【0012】
本発明の更にもう一つの課題は、低コスト化を実現しうる下水道施設の再構築工事用治具、及び、これを用いた治具組立体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る治具は、上述した課題を解決するため下水道施設の再構築工事で用いられるものであって、内枠部と、外板部とを含む。内枠部は、剛性を有し、湾曲端縁と、非湾曲端縁と、連結部とを含む。湾曲端縁は、高さ方向に向かい合う二辺であって、円弧状に湾曲している。非湾曲端縁は、高さ方向に直交する幅方向に向かい合う二辺である。連結部は、非湾曲端縁の一辺に備えられている。外板部は、弾性を有する合成樹脂材料を主成分とし、内枠部の外面側に取り付けられている。
【0014】
上述した治具は、複数が組み合わされて治具組立体を構成する。本発明に係る治具組立体は、複数の治具において、隣接する非湾曲端縁が連結部により順次結合され、結合された状態で全体として筒状になっている。
【0015】
上述したように、本発明に係る治具において、内枠部は、剛性を有するから、機械的強度に優れた治具、及び、これを用いた治具組立体を提供することができる。
【0016】
外板部は、合成樹脂材料を主成分としているから、例えば、内枠部を金属材料で構成したとしても、外板部の分だけ、軽量化することができる。
【0017】
内枠部において、湾曲端縁は、高さ方向に向かい合う二辺であって、円弧状に湾曲している。非湾曲端縁は、高さ方向に直交する幅方向に向かい合う二辺である。この構成によると、同じ規格品である治具を複数組み合わせ、互いの非湾曲端縁が隣接する関係で配置することにより、容易に筒状の治具組立体を構成することができる。
【0018】
内枠部を構成する湾曲端縁は、円弧状に湾曲しているから、幅寸法が小さくなり、取り扱いが容易になる。従って、施工効率を向上することができる。
【0019】
しかも、非湾曲端縁の一辺には連結部が備えられているから、隣接する非湾曲端縁を連結部により結合することにより、容易に筒状の治具組立体を構成することができる。
【0020】
治具組立体を構成する治具において、内枠部は剛性を有するから、治具組立体の組立作業、及び、解体作業の過程で生じる磨耗や物理的な衝撃に耐えることができる。従って、製品寿命が長くなり、低コスト化が実現される。
【0021】
外板部は、弾性を有し、内枠部の外面側に取り付けられている。この構成によると、治具組立体は、外面に外板部が配置されている構造になる。従って、下水道施設の再構築工事において、外板部の弾性率に応じた範囲内で、再構築工事に係るマンホールの内径寸法の変化に追従することが可能となり、施工効率の向上、及び、低コスト化の実現を図ることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上述べたように、本発明によれば、次のような効果を得ることができる。
(1)施工効率を向上することができる下水道施設の再構築工事用治具、及び、これを用いた治具組立体を提供することができる。
(2)機械的強度に優れ、且、軽量である下水道施設の再構築工事用治具、及び、これを用いた治具組立体を提供することができる。
(3)低コスト化を実現しうる下水道施設の再構築工事用治具、及び、これを用いた治具組立体を提供することができる。
【0023】
本発明の他の目的、構成及び利点については、添付図面を参照し、更に詳しく説明する。添付図面は、単に、例示に過ぎない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係る治具組立体の斜視図である。本発明の一実施形態に係る治具組立体は、下水道施設、具体的には人孔(マンホール)の再構築工事に用いられる。図1の治具組立体は、円筒状であって、矢印Tで示す高さ方向(又は軸方向)に沿って5つに分割されており、分割数に応じた5つの再構築工事用治具10を含んでいる。5つの治具10のうち、矢印Wで示す幅方向(又は周方向)に隣接する2つの治具10は、互に向かい合う辺112、112が、分離可能に組み合わされている。
【0025】
図1に示す治具組立体は、例えば、円筒の外径寸法OD1が850mm程度、内径寸法ID1が650mm程度である。この寸法例は、現在、最も普及しているマンホールの内径寸法である900mmを想定したものである。この構造によると、一般的なマンホールの内部に治具組立体を立設することができるとともに、立設した治具組立体の内部に作業員が入って作業するための空間を確保することができる。
【0026】
上述したように、治具組立体の外径寸法OD1は、再構築工事に係るマンホールの内径寸法に追従して設定される。例えば、治具組立体が、所謂2号マンホール(内径寸法1200mm)の内部に配置される場合、外径寸法OD1は1150mm程度に設定される。また、同治具組立体が、所謂3号マンホール(内径寸法1500mm)の内部に配置される場合、外径寸法OD1は1450mm程度に設定される。治具組立体の外径寸法OD1と、マンホールの内径寸法との径寸法差50mmは、治具組立体の外周に、図示しない防食シートや、裏込め材を配置するための隙間として用いられる。
【0027】
また、図1の治具組立体は、高さ方向Tに沿った高さ寸法T1が、300〜600mm程度である。治具組立体の高さ寸法T1は、再構築工事に係るマンホールの容積や深さ寸法、持ち運びなど取り扱いの容易性などの観点から適宜設定することができる。
【0028】
図2は本発明の一実施形態に係る再構築工事用治具の平面図、図3は図2の治具の分解構造を簡略化して示す斜視図である。さらに、図4は図2の治具の一部を破断して示す斜視図、図5は図4の治具を内側から見た図、図6は図5の6−6線に沿った断面図、図7は図5の7−7線に沿った断面図である。図2乃至図7において、図1に示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。
【0029】
図1の治具組立体を構成する治具10の具体的構造について、以下、図2乃至図7を参照して説明する。まず、図2の治具10は、幅方向Wに沿った幅寸法W10が500mm程度である。治具10の幅寸法W10は、マンホールの再構築工事の作業工程に深く関係している。例えば、一点鎖線で示す円Cは、一般的なマンホールの開口部の形状を示すものであって、最も普及しているマンホールの開口部の径寸法D210は、600mm程度である。従って、幅寸法W10を径寸法D210よりも小さくすることにより、治具10をマンホールの開口部から、その内部空間へ搬入することができる。
【0030】
図1の治具組立体の分割数、及び、図2の治具10の幅寸法W10は、施工に係るマンホールの開口部と本体部との内径寸法差に追従して決定される。即ち、マンホールの開口部が小さければ、幅寸法W10を小さくしなければ、治具10を開口部から本体部に搬入することができない。他方、マンホールは、通常、開口部に対して本体部の内径寸法が拡大されているから、本体部に追従した治具組立体を構成するには、治具10を多く用いる必要がある分、治具組立体の分割数が増加する。従って、図1の治具組立体の分割数は、治具10をマンホール開口部から搬入可能な範囲で、具体的に設定される。
【0031】
再び、図2乃至図7を参照して、治具10の具体的構造を説明する。図2乃至図7の治具10は、内枠部11と、基板部12と、外板部13とを含む。
【0032】
内枠部11は、剛性を有する材料を主成分とし、好ましくは金属材料を主成分としている。内枠部11に用いられる金属材料は、剛性、材料コスト、及び、成形容易性の観点から、鉄などが好ましい。
【0033】
内枠部11は、正面から見て横長の長方形形状の枠組み構造となっており、湾曲端縁111と、非湾曲端縁112と、補強部114と、第1の連結部115と、第2の連結部116とを含む。
【0034】
湾曲端縁111は、高さ方向Tに向かい合う二辺であって、好ましくは薄板で構成されており、円弧状に湾曲している。他方、非湾曲端縁112は、幅方向Wに向かい合う二辺であって、好ましくは薄板で構成されている。
【0035】
内枠部11は、湾曲端縁111及び非湾曲端縁112によって画定される2つの湾曲面領域を有している。即ち、内枠部11は、外面側に拡大された湾曲面領域を有し、内面側に縮小された湾曲面領域を有している。
【0036】
また、内枠部11は、湾曲端縁111及び非湾曲端縁112によって画定される内部空間を有し、この内部空間が、拡大された湾曲面から、縮小された湾曲面に貫通している。
【0037】
補強部114は、棒状であって、湾曲端縁111の幅寸法W10の中間部分において、高さ方向Tに向かい合う湾曲端縁111、111に対し直交する関係で配置され、両端が湾曲端縁111、111に結合されている。
【0038】
第1、第2の連結部115、116は、非湾曲端縁112に備えられている。より詳細に説明すると、第1の連結部115は、非湾曲端縁112の一方に備えられており、非湾曲端縁112の一方端面において幅方向Wに沿って凹状に陥没している。他方、第2の連結部116は、所謂ガイドピンであって、第1の連結部115に向かい合う非湾曲端縁112の他辺に備えられており、非湾曲端縁112の他方端面において幅方向Wに沿って凸状に突出している。
【0039】
第1、第2の連結部115、116は、非湾曲端縁112の一方端面と、他方端面とのそれぞれおいて、重なり合う位置に配置されている。さらに、第1、第2の連結部115、116は、相互に凹凸嵌合可能な構造を有しており、複数の治具10を幅方向Wに隣接して配置したとき、向かい合う非湾曲端縁112を分離可能に結合し、筒状の治具組立体を構成するために用いられる。
【0040】
基板部12は、断面円弧状の薄板、又は、シートであって、合成樹脂材料を主成分とし、より好ましくは厚みが5mm程度の繊維強化プラスチック(FRP=Fiber Reinforced Plastics)で構成されている。本明細書において「繊維強化プラスチック」とは、プラスチック基体の内部に繊維層を有するプラスチック複合材を意味する。一例として、基板部12としては、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP =Glass fiber reinforced plastics)、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)などを用いることができる。
【0041】
基板部12は、内枠部11の外面側に取り付けられており、好ましくは内枠部11に結合されている。内枠部11と、基板部12との結合構造は、FRP製造工程によって実現することができる。この種のFRP製造工程では、内枠部11の外面の曲率に沿った型装置に繊維シートを敷き、さらに繊維シートに母材となるプラスチックを塗布する工程を所定の回数だけ繰り返す。上述したFRP製造工程の途中で、内枠部11の外面を繊維シートに載置し、その上からプラスチックを塗布ことにより、基板部12の内部に、内枠部11が埋設される。
【0042】
さらに、図4乃至図7の基板部12は、FRP補強材120を有している。FRP補強材120は、内枠部11の内面側において、内枠部11と基板部12との結合部分に沿って配置されている。
【0043】
再び図2乃至図7を参照して、治具10の構造を説明する。外板部13は、体積弾性を有する合成樹脂材料を主成分とし、基板部12の外面に取り付けられている。即ち、外板部13は、基板部12を介して、内板部11の外面側に取り付けられている。外板部13は、断面円弧状の薄板、又は、シートであって、好ましくは基板部12との張り合わせ面に粘着層を有しており、基板部12に張り付けられている。
【0044】
外板部13は、好ましくは発泡樹脂を主成分としている。なお、本明細書において「発泡樹脂」とは、粒子状の合成樹脂材料に発泡剤(例えば炭化水素ガス)を吸収させ、これに高温蒸気を当てて発泡させることにより得られる合成樹脂性加工素材を意味する。治具10に用いられる発泡樹脂の構成について、合成樹脂材料の種類や、発泡倍率などの具体的な組成は、治具10に必要とされる機械的強度や、体積弾性、製造コスト、加工容易性などの観点から適宜設定することができる。一例として、治具10としては、EPS(発泡スチロール=expanded polystyrene)、EPP(expanded polypropylene)、EPE(expanded Polyethylene)などを用いることができる。
【0045】
図1乃至図7を参照して説明したように、本発明の一実施形態に係る治具組立体は、分割数に応じて5つの治具10を含み、5つの治具10は隣接する非湾曲端縁112、112が第1、第2の連結部115、116により順次凹凸嵌合により結合され、結合された状態で全体として筒状になっている。
【0046】
図2乃至図7の治具10は、断面円弧状であるから、嵩張らない態様で容易に、かつ、効率的に輸送することができる。従って、輸送コストの低減を図ることができる。
【0047】
治具10は、量産性に富む形状であるから、製造コストを低減することができる。
治具10を構成する内枠部11は、枠状であるから、軽量化することができる。
【0048】
内枠部11は、剛性を有するから、優れた機械的強度を有する。その結果、治具組立体の組立作業、及び、解体作業中に生じる磨耗や物理的な衝撃による経年劣化を最小限にとどめることができる。従って、製品寿命が長くなり、低コスト化が実現される。
【0049】
内枠部11を構成する湾曲端縁111は、円弧状に湾曲しているから、幅寸法W10が小さくなる。従って、取り扱いが容易になり、施工効率を向上することができる。
【0050】
内枠部11は、幅方向Wに向かい合う非湾曲端縁112を有しているから、同じ規格品である治具10を複数組み合わせ、互いの非湾曲端縁112か隣接する関係で配置することにより、容易に筒状の治具組立体を構成することができる。
【0051】
しかも、非湾曲端縁112には第1、第2の連結部115、116が備えられているから、隣接する非湾曲端縁112、112を、第1、第2の連結部115、116を用いた凹凸結合により、容易に筒状の治具組立体を構成することができる。
【0052】
さらに内枠部11を構成する補強部114は、湾曲端縁111の幅寸法の中間部分において、高さ方向Tに向かい合う湾曲端縁111、111に対し直交する関係で配置され、両端が湾曲端縁111、111に結合されている。この構造によると、外部からの衝撃や圧力によって歪みや、変形が生じる不具合を回避し、もって内枠部11の機械的強度を向上させることができる。
【0053】
治具10は、内枠部11と、基板部12と、外板部13との3層構造となっている。基板部12と、外板部13とは、合成樹脂材料を主成分としているから、例えば、内枠部11を比重の大きな金属材料で構成したとしても、基板部12、及び、外板部13の分だけ、軽量化を実現することができる。
【0054】
基板部12は内板部11の外面に取り付けられており、外板部13は基板部12の基板部12の外面に取り付けられている。この構成によると、内枠部11が枠組み状、又は、フレーム状であったとしても、外板部13を基板部12によって面支持することができる。さらに、内枠部11と基板部12とが一体的に結合される構造によると、内枠部11と、基板部12と、外板部13との3層構造の一体性が向上するする。従って、機械的強度に優れた治具10を提供することである。
【0055】
基板部12は、FRP補強材120を有している。FRP補強材120は、内枠部11の内面側において、内枠部11と基板部12との結合部分に沿って配置されている。この構造によると、FRP補強材120の分だけ基板部12の載置面積が確保されるから、内枠部11に対して基板部12を安定して配置することができる。
【0056】
また、基板部12の載置面積が確保されることにより、内枠部11の外面側から押し圧力が加えられた場合に、この押し圧力をFRP補強材120によって面支持することができる。
【0057】
しかも、FRP補強材120は、内枠部11を構成する補強部114の部分において、基板部12との相対向面間に補強部114を挟み込んでいる(図6参照)。この構造によると、内枠部11と、基板部12との結合強度を向上することができる。
【0058】
外板部13は、発泡樹脂を主成分としているから、その発泡構造により優れた体積弾性を有している。従って、下水道施設の再構築工事において、外板部13の体積弾性力に応じた範囲内で、再構築工事に係るマンホールの内径寸法の変化に追従することが可能となり、施工効率の向上、及び、低コスト化の実現を図ることができる。
【0059】
外板部13は、発泡樹脂を主成分としているから、軽量である。従って、施工効率を向上することができる。また、外板部13は、発泡樹脂を主成分としているから、材料コストを比較的安価に抑えることができるとともに、ヒートカッターなどで容易に加工することができる。従って、製造コストを低減することができる。
【0060】
図8乃至図18は、本発明の一実施形態に係る治具を用いた下水道施設の再構築工事の工程を示す図である。図1乃至図7を参照して説明した治具10、及び、これを用いた治具組立体の利点について、以下、図8乃至図18に示した再構築工事の施工工程に沿って説明する。なお、図8乃至図18において、図1乃至図7に示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。
【0061】
まず、図8のマンホール2は、所謂、組立式であって、斜壁ブロック21、直壁ブロック22、及び、底塊ブロック23が高さ方向Tに連結されており、一体的なマンホール内面200、及び、このマンホール内面200により区画される内部空間20を有している。
【0062】
斜壁ブロック21は、開口部210に蓋211を有し、この蓋211がグランドラインGLに露出している。底塊ブロック23は、内部底面230上に流路231を有し、この流路231に流入管61、流出管62が接続されている。流路231は、流入管61から流入した汚水を、流出管62へ流下させる。
【0063】
内部空間20の内径寸法は、斜壁ブロック21の開口部210における径寸法D210で最小となり、底塊ブロック23における内径寸法D230などで最大となる。
【0064】
図8に示す工程において、マンホール内面200に生じた腐食部分を、例えば、高圧水洗浄により除去する。図8のマンホールは腐食部分が既に除去されており、マンホール内面200は、腐食部分を除去した後の部分が凹凸面201となっている。凹凸面201には、予め、エポキシ樹脂や、モルタル等の補修剤を充填して補強してもよい。
【0065】
図9の工程は、図8に示した工程のあとの工程であって、防食シート3を内部空間20に搬入する。防食シート3は、防食効果を有する合成樹脂材料を主成分とし、可撓性を有することが好ましい。防食シート3に用いられる合成樹脂材料としては、塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリプロピレン(PP)、繊維強化プラスチック(FRP=Fiber Reinforced Plastics)等を用いることができる。
【0066】
防食シート3は、予め、内部空間20の内周長を横辺33とし、底塊ブロック23の高さ寸法T23を縦辺とする四角形にカットし、さらにカットした四角形の防食シート3の縦辺を重ね合わせて接着することにより、無端の円筒状に加工されている。防食シート3の外径寸法は、マンホール2が、所謂1号マンホール(内径寸法900mm)である場合、850mmとすることが好ましい。この構造によると、防食シート3の外面31と、マンホール内面200との間に、両者の径寸法差による25mm程度の隙間(G)が生じ、この隙間(G)を裏込め材(5)の打設空間として用いることができる。
【0067】
さらに、防食シート3を内部空間20に搬入するには、図10に示すように、防食シート3を、開口部210の径寸法D210(=600mm)より小さい外径寸法D3となるように、例えば、中間部分で高さ方向Tに沿って凹状に湾曲させ、外径寸法を縮径させる。この湾曲作業により、防食シート3の外径寸法D3を径寸法D210以下に縮径させ、開口部210から、内部空間20に搬入することができる。
【0068】
図11の工程は、図9及び図10に示した工程のあとの工程であって、縮径した防食シート3を内部空間20に搬入して後、底塊ブロック23の内径寸法D230に沿った円筒状に復元(拡径)する。拡径した防食シート3は、マンホール内面200から隙間Gを隔てた状態で、内部底面230に立設される。そして、所定の枚数の治具10を、開口部210を通じて内部空間20に搬入し、さらに防食シート3の内部において、複数の治具10を連結して筒状の治具組立体1を構成する。治具10の連結作業について、一方の治具10の第1の連結部115を、他方の治具10の第2の連結部116に案内して、隣接する非湾曲端縁112を相互に凹凸嵌合する。
【0069】
上述した連結作業を順次繰り返すことにより、図12に示すように無端円筒状の治具組立体1が、同じく無端円筒状の防食シート3の内側に構築され、防食シート3が治具組立体1によって内側から皺や弛みのない状態に押し広げられる。治具組立体1は、好ましくは、その外面が、防食シート3の内面に圧着した状態で、底塊ブロック23の内部底面230に立設されている。
【0070】
図13の工程は、図11及び図12に示した工程のあとの工程であって、マンホール内面200と、防食シート3の外面(31)との間の隙間(G)に裏込め材5を充填する。裏込め材5には、モルタルコンクリートやセメント等を用いることができるが、より好ましくは速硬性コンクリートを用いる。裏込め材5に速硬性コンクリートを用いることにより、施工効率を向上し、施工期間を短縮することができる。
【0071】
裏込め材5は、図14に示すように、隙間G、及び、凹凸面201を埋める。このとき、防食シート3に対して、裏込め材5から矢印Fで示す押し圧力(充填圧力)が加えられる。充填圧力Fは、治具組立体1によって支持されることにより、充填圧力Fによる防食シート3の変形、歪み、さらには剥離などの配置不良が防止される。
【0072】
防食シート3の貼り付けは、上述した配置不良を回避する観点、及び、施工効率の観点から、各マンホール構成ブロック(21、22、23)ごとに一段づつ施工する。防食シート3の高さ方向Tの横辺33には、目地材4を載置しておくのが好ましい。
【0073】
図15の工程は、図13及び図14に示した工程のあとの工程であって、底塊ブロック23の部分に充填した裏込め材5が硬化した後、新たな防食シート3b、及び、治具10を図9乃至図12を参照して説明した工程に沿って内部空間20に搬入する。新たな防食シート3bは、目地材4を介して防食シート3(3a)に連続配置された状態で、直壁ブロック22に対応する部分のマンホール内面200に配置される。
【0074】
他方、新たに搬入された治具10は、図11及び図12を参照して説明した工程に沿って、直壁ブロック22に対応する部分で治具組立体1aに組み合わさる。治具組立体1aは、図16に示すように、防食シート3a、3bの継ぎ目、及び、目地材4の設置箇所を避けた状態で、底塊ブロック23に立設されている治具組立体1bの上に立設される。これは、充填圧力Fにより、防食シート3a、3bの継ぎ目、及び、目地材4の部分から裏込め材(5)が漏出する不具合を回避するためである。目地材4により生じる凹凸は、治具組立体1bの外面を構成する外板部13により、弾性的に吸収される。
【0075】
以上の配置作業を終了した後、直壁ブロック22に対して図13及び図14を参照した裏込め材5の充填工程を行う。
【0076】
図17の工程は、図15及び図16に示した工程のあとの工程であって、裏込め材5の養生期間経過後に、図11及び図12に示した搬入工程の逆の順序に従って、治具組立体(1a、1b)を解体し、解体した治具10を開口部210から搬出する。
【0077】
図17に示す工程の後、さらに斜壁ブロック21に防食シート3を貼り付けし、必要に応じて高さ方向Tに隣接する防食シート3の継ぎ部分に、エポキシ樹脂等の合成樹脂系シール剤を貼付(塗布)するなどして硫化水素ガスに対する気密性、及び、汚水に対する水密性を確保することにより、図18に示す再構築マンホールが得られる。
【0078】
図8乃至図18を参照して説明した下水道施設の再構築方法によると、図1乃至図7を参照して説明した治具10、及び、これを用いた治具組立体1の利点を全て有することができる。例えば、治具組立体1は、複数の治具10を用いた連結構造であるから、それぞれの治具10の幅寸法W10を、開口部210より小さくしておくことにより、開口部210から容易に搬入し、且、内部空間20において容易に組み立てすることができる。
【0079】
治具10を構成する内枠部11は、剛性を有するから、裏込め材5の充填圧力Fに耐えることができる。従って、防食シート3の配置不良を回避することができる。
【0080】
内枠部11は、剛性を有するから、治具組立体1の組立作業、及び、解体作業中に生じる磨耗や物理的な衝撃による経年劣化を最小限にとどめることができる。従って、製品寿命が長くなり、低コスト化が実現される。
【0081】
治具10は、軽量であるから、治具組立体1の組立作業、及び、解体作業を、容易、且、迅速に行うことができる。具体的に、治具10を構成する内枠部11は枠状であり、しかも、基板部12および外板部13は合成樹脂を主成分としているから、従来の鉄製治具と比較して、大幅な軽量化が図られている。従って、施工現場での持ち運び時や、狭いマンホール2内での組立時の等の取り扱いが容易になり、もって施工効率化向上する。
【0082】
内枠部11を構成する湾曲端縁111は、円弧状に湾曲しているから、マンホール内面200に沿った筒状に組み合わせることができる。他方、内枠部11を構成する非湾曲端縁112は、第1、第2の連結部115、116を有しているから、隣接する非湾曲端縁112を第1、第2の連結部115、116により結合することにより、筒状の治具組立体1を容易に構成することができる。従って、治具組立体1の組立作業の施工効率を向上することができる。
【0083】
治具組立体1は、筒状であるから、一般的なマンホール2の内部において、治具組立体1を内部底面230に自立させることができる。従って、治具組立体1を用いた防食シート3の配置作業を容易に行うことができる。
【0084】
治具組立体1は、筒状であるから、治具組立体1の内部には作業員が入って作業する作業スペースが確保される。従って、狭いマンホール2内における防食シート3a、3bの配置作業や、治具組立体1a、1bの積み上げ作業、及び、裏込め材5の充填作業を、容易に、且、迅速に行うことができる。
【0085】
しかも内枠部11は、剛性を有するから、マンホール2の容積や深さ寸法に追従して治具10の高さ寸法T10を大きくする必要が生じた場合でも、治具10の肉厚を厚くする必要は生じない。従って、治具組立体1の内部に充分な作業スペースを確保することができる。
【0086】
外板部13は、弾性を有する合成樹脂材料を主成分とし、内枠部11の外周側に固定されている。再構築工事に係るコンクリート製マンホールの多くは成型品であるから、製品ごとに成型上の許容誤差が生じている。しかも、再構築工事では洗浄処理により、腐食部分が取り除かれた分だけ、マンホールの内径寸法の誤差が拡大するという特有の問題がある。これに対し、本願発明の治具組立体1は、外板部13の体積弾性に応じた範囲内で、マンホール2の内径寸法の誤差に追従することができる。従って、施工効率の向上、及び、低コスト化の実現を図ることができる。
【0087】
また、この種の腐食マンホールの再構築工事では、目地材4を用いて、複数の防食シート3を張り合わせるから、防食シート3の継ぎ目には目地材4による凹凸が生じる。治具組立体1bの外面は、弾性を有する外板部13で構成されているから、目地材4により生じる凹凸を弾性的に吸収し、
さらに、治具組立体1は、その外周に現れた外板部13の弾性を利用して、防食シート3に対して圧着することができる。例えば、この種の再構築工事では、目地材4を用いて、複数の防食シート3a、3bを継ぎ合わせるから、防食シート3a、3bの継ぎ目には目地材4による凹凸が生じる。これに対し、治具組立体1の外面は、弾性を有する外板部13で構成されているから、目地材4により生じる凹凸を弾性的に吸収することが可能である。従って、施工歩留まりが向上し、もって、防食効果の信頼性が向上する。
【0088】
外板部13は、好ましくは発泡樹脂を主成分としているから、例えばヒートカッターなどを用いた熱線切断により、容易に成形することができる。従って、施工に係る下水道施設の径寸法に容易に追従して、様々な径寸法を有する治具組立体1を迅速、且、安価に用意することができる。
【0089】
治具組立体1は、治具10の組み合わせ枚数を任意に設定することにより、径寸法、及び、平面視形状を容易に調整することができる。従って、本発明に係る治具組立体1の構造によると、施工対象である下水道施設の内径寸法や形状の変化に容易に追従し、且、迅速に治具組立体1を設置することができる。
【0090】
図19は本発明のもう一つの実施形態に係る治具組立体の平面図、図20は図19の治具組立体の一部を内側から見た図である。また、図21は図19の治具組立体について一部を取り外した状態の平面図、図22は図21の治具組立体の一部を内側から見た図、図23は図21の治具組立体の一部を側面から見た図である。図19乃至図23において、図1乃至図18に示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。
【0091】
図19乃至図23の治具組立体1は、筒の外径寸法OD1を拡縮することができる構造を有する点で、図1乃至図18の実施形態とは異なる。以下、相違点を中心に説明する。なお、説明の都合上、上述した拡縮構造を構成する治具の一方を治具10aとし、他方を治具10bとする。
【0092】
まず、図19乃至図23の治具組立体1を構成する治具10aは、幅方向Wに向かい合う一方の非湾曲端縁112aに、ガイド部14と、第1の支持金具15と、第2の支持金具16とを有している。
【0093】
ガイド部14は、金属材料を主成分とする2つのレール状部141を有し、隣接する2つのレール状部141の間に隙間を有している。ガイド部14は、非湾曲端縁112aの端面において、高さ方向Tで見た下側に配置されており、2つのレール状部141は、互いに平行する関係で、非湾曲端縁112aの端面を高さ方向Tに沿って伸びている。
【0094】
第1の支持金具15は、板状であって、高さ方向Tで見た非湾曲端縁112aの下側に備えられている。より詳細に説明すると、第1の支持金具15は、非湾曲端縁112aから内径方向に立ち上がる関係で突出しており、突出する部分に切欠部150を有している。切欠部150は、突出部分の下面側に開口している。
【0095】
第2の支持金具16は、板状であって、高さ方向Tで見た非湾曲端縁112aの上側に備えられている。第2の支持金具16は、非湾曲端縁112aから内径方向に立ち上がる関係で突出しており、突出する部分に切欠部160を有している。切欠部160は、突出部分の上面側に開口している。
【0096】
他方、治具10bは、非湾曲端縁112aと幅方向Wに間隔を隔てて向かい合う非湾曲端縁112bに、ガイド部14と、第1の支持金具15と、第2の支持金具16とを有している。
【0097】
ガイド部14は、非湾曲端縁112a、112bにおいて、同一高さ位置に配置されている。第1、第2の支持金具15、16は、非湾曲端縁112a、112bにおいて、同一高さ位置に配置されている。違う言葉で表現すれば、第1の支持金具15は、非湾曲端縁112a、112bにおいて、同一高さ位置に配置され、閂状となっている。
【0098】
さらに、図19乃至図23の治具組立体1は、楔片挿入空間70と、第1の楔片71と、第2の楔片72と、第1の締め込み具73と、第2の締め込み具74とを有している。
【0099】
楔片挿入空間70は、非湾曲端縁112aと、非湾曲端縁112aに向かい合う非湾曲端縁112bとによって画定されている。非湾曲端縁112a、112bは、高さ方向Tの上側から下側へ向かうに従って、相対向面間の間隔が小さくなる方向に傾斜しており、楔片挿入空間70が先細り状になっている。
【0100】
第1の楔片71は、楔片挿入空間70の下側に配置されるものであって、取付部710と、突起711とを有している。取付部710は、金属材料を主成分とする平板状であって、第1の楔片71の内面から内径方向に立ち上がっており、立ち上がり面にスリット712を有している。スリット712は立ち上がり面を厚み方向に貫通するとともに、立ち上がり面の周縁に開口し、第1の楔片71の内面に向かって内径方向に伸びている(例えば、図25参照)。
【0101】
突起711は、第1の楔片71において、幅方向Wに向かい合う両側面にそれぞれ備えられ、側面を高さ方向Tに沿って伸びている。突起711は、ガイド部14の隙間に嵌合されており、嵌合された状態で第1の楔片71の揺動を規制する。
【0102】
第2の楔片72は、楔片挿入空間70の上側に配置されるものであって、内面にネジ穴(720)を有している。第1、第2の楔片71、72は、楔片挿入空間70の内部において高さ方向Tに連続して配置され、楔片挿入空間70に配置された状態で、外径寸法OD1を拡張させ、楔片挿入空間70から取り出された状態で、外径寸法OD1を縮小させる。即ち、第1、第2の楔片71、72は、組立作業の効率性、及び、正確性の観点から、楔片挿入空間70に対応する楔体を高さ方向Tの中間部分で分割した構造を有している。
【0103】
第1の締め込み具73は、第1の固定部731と、ボルト732と、ナット733とを有している。第1の固定部731は、板状であって、第1の支持金具15の切欠部150にはめ込めまれる。違う言葉で表現すれば、第1の固定部731は、閂状に配置された第1の支持金具15に対して、所謂横木として用いられるものである。
【0104】
ボルト732は、好ましくはスタッドボルトであって、第1の固定部731を高さ方向Tに貫通した状態で、一端が第1の固定部731から突出し、他端が第1の楔片71の取付部710に配置されている。
【0105】
ナット733は、ボルト732の両端に取り付けられ、一方が第1の固定部731の下側に取り付けられ、他方が第1の楔片71の取付部710の上側に取り付けられている。この構造によると、第1の締め込み具73は、ボルト732とナット733とを締め付けることにより生じる締め付け力を利用して、第1の固定部731、治具10a、10b、及び、第1の楔片71を一体的に結合することができる。
【0106】
第2の締め込み具74は、第2の固定部741と、ハンドル部742とを有している。第2の固定部741は、第2の支持金具16の切欠部160にはめ込めまれる。違う言葉で表現すれば、第2の固定部741は、閂状に配置された第2の支持金具16に対して、所謂横木として用いられるものである。
【0107】
ハンドル部742は、軸部分がボルト状になっており、軸部分が第2の固定部741を貫通した状態で、軸部分の先端がネジ穴720に螺着されている。この構造によると、第2の締め込み具74は、閉方向にハンドル部742を操作することにより生じる締め付け力を利用して、第2の固定部741、治具10a、10b、及び、第2の楔片72を一体的に結合することができる。
【0108】
図24乃至図27は、図19乃至図23の治具組立体の組立工程について一部を省略して示す図である。図24乃至図27において、図1乃至図23に示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。
【0109】
図19乃至図23を参照して説明した治具組立体1の利点について、さらに具体的な使用方法の観点から説明する。
【0110】
図24に示す状態では、治具組立体1には楔片挿入空間70の分だけ外径寸法(OD1)を縮小可能であるから、例えば、5分割された治具組立体1において、5つ目(最後)の治具10a又は10bを、高さ方向Tからの垂直差込みではなく、幅方向Wからの水平差込みによって配置することができる。そして、図25に示すように、全ての治具10を配置して略筒状に構成した状態で、楔片挿入空間70に第1の楔片71を挿入する。第1の楔片71は、突起711がガイド部14の隙間に案内されることにより、ガイド部14により揺動や位置ズレが規制された状態で、楔片挿入空間70に案内される。楔片挿入空間70に第1の楔片71が打ち込まれるにしたがって、非湾曲端縁112a、112bの間が離間する。
【0111】
図26に示す工程は、図24及び図25に示した工程のあとの工程であって、第1の楔片71が楔片挿入空間70に案内された状態で、第1の締め込み具73を締め付けることにより、第1の楔片71が楔片挿入空間70に固定され、外径寸法(OD1)が、第1の楔片の幅寸法W71の分だけ、幅方向Wに拡張される。第1の楔片71が第1の締め込み具73により固定された状態で、さらに第2の楔片72を楔片挿入空間70に案内する。
【0112】
図27に示す工程は、図26に示した工程のあとの工程であって、第2の楔片72が楔片挿入空間70に案内された状態で、第2の締め込み具74を締め付ける。即ち、楔片挿入空間70は、外径寸法(OD1)が、第2の楔片72の幅寸法W72の分だけ、幅方向Wに拡張し、拡張した状態で固定される。
【0113】
図24乃至図27に示したように、治具組立体1は、第1、第2の楔片71、72が、楔片挿入空間70に打ち込まれた状態で外径寸法OD1を拡張させ、楔片挿入空間70から取り出された状態で外径寸法OD1を縮小させることが可能であるから、治具組立体1の組立作業及び解体作業の効率を向上することができる。例えば、図8乃至図18を参照して説明した底塊ブロック23の内径寸法が900mm程度の場合、その外径寸法OD1が850mmの治具組立体1を構築しようとすると、組立工程の最後の治具10を差し込む際に、窮屈になる場合がある。
【0114】
これに対し、本実施形態では、組立工程の最後に結合される治具10a、10bに楔片挿入空間70を設け、第1、第2の楔片71、72を打ち込むことにより外径寸法OD1を拡張させることが可能であるから、第1、第2の楔片71、72の幅寸法W71、72の分だけ、スペースに余裕が生まれる。従って、治具組立体1の組立作業を効率的に行うことができる。また、治具組立体1の組立作業とは逆の順序で解体作業を効率的に行うことができることも明白である。
【0115】
さらに、第1、第2の楔片71、72を打ち込むことにより、治具組立体1の外径寸法OD1を、幅寸法W71、72の分だけ拡張することができるから、防食シート3に対する密着性を微調節することが可能となり、防食効果の信頼性が向上する。
【0116】
ガイド部14が楔片挿入空間70の下側に配置されている構成によると、第1の楔片71の挿入時に、先端部が非湾曲端縁112a、112bに直接接触することが回避されるから、円滑な出し入れが可能となるとともに、両者の接触による損壊事故が生じる危険を回避することができる。
【0117】
以上、好ましい実施例を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種種の変形態様を採り得ることは自明である。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本発明の一実施形態に係る治具組立体の斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る再構築工事用治具の平面図である。
【図3】図2の治具の分解構造を簡略化して示す斜視図である。
【図4】図2の治具の一部を破断して示す斜視図である。
【図5】図4の治具を内側から見た図である。
【図6】図5の6−6線に沿った断面図である。
【図7】図5の7−7線に沿った断面図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る治具を用いた下水道施設の再構築工事の工程について一部を省略して示す部分断面図である。
【図9】図8に示した工程のあとの工程を示す図である。
【図10】図9に示した工程について一部を省略して示す斜視図である。
【図11】図9及び図10に示した工程のあとの工程を示す図である。
【図12】図11に示した工程のあとの状態について一部を省略して示す平面図である。
【図13】図11及び図12に示した工程のあとの工程を示す図である。
【図14】図13に示した工程について一部を省略して示す拡大図である。
【図15】図13及び図14に示した工程のあとの工程を示す図である。
【図16】図15に示した工程について一部を省略して示す拡大図である。
【図17】図15及び図16に示した工程のあとの工程を示す図である。
【図18】図17に示した工程のあとの状態を示す図である。
【図19】本発明のもう一つの実施形態に係る治具組立体の平面図である。
【図20】図19の治具組立体の一部を内側から見た図である。
【図21】図19の治具組立体について一部を取り外した状態の平面図である。
【図22】図21の治具組立体の一部を内側から見た図である。
【図23】図21の治具組立体の一部を側面から見た図である。
【図24】本発明のもう一つの実施形態に係る治具組立体の組立工程について一部を省略して示す図である。
【図25】図24に示した工程を平面から見た状態を示す図である。
【図26】図24及び図25に示した工程のあとの工程を示す図である。
【図27】図26に示した工程のあとの工程を示す図である。
【符号の説明】
【0119】
1 治具組立体
10 治具
11 内枠部
111 湾曲端縁
112 非湾曲端縁
115 第1の連結部
116 第2の連結部
12 基板部
13 外板部
70 楔片挿入空間
71、72 第1、第2の楔片
OD1 治具組立体の外径寸法
T 高さ方向
W 幅方向
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下水道施設の再構築工事用治具であって、内枠部と、外板部とを含み、
前記内枠部は、剛性を有し、湾曲端縁と、非湾曲端縁と、連結部とを含み、
前記湾曲端縁は、高さ方向に向かい合う二辺であって、円弧状に湾曲しており、
前記非湾曲端縁は、前記高さ方向に直交する幅方向に向かい合う二辺であり、
前記連結部は、前記非湾曲端縁の一辺に備えられており、
前記外板部は、弾性を有する合成樹脂材料を主成分とし、前記内枠部の外面側に取り付けられている、
再構築工事用治具。
【請求項2】
下水道施設の再構築工事用治具であって、内枠部と、基板部と、外板部とを含み、
前記内枠部は、剛性を有し、湾曲端縁と、非湾曲端縁と、連結部とを含み、
前記湾曲端縁は、高さ方向に向かい合う二辺であり、円弧状に湾曲しており、
前記非湾曲端縁は、前記高さ方向に直交する幅方向に向かい合う二辺であり、
前記連結部は、前記非湾曲端縁の一辺に備えられており、
前記基板部は、合成樹脂材料を主成分とし、前記内枠部の外面に取り付けられており、
前記外板部は、弾性を有する合成樹脂材料を主成分とし、前記基板部の外面に取り付けられている、
再構築工事用治具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された再構築工事用治具であって、
前記外板部は、発泡樹脂を主成分としている、
再構築工事用治具。
【請求項4】
下水道施設の再構築工事で用いられる治具組立体であって、複数の再構築工事用治具を含み、
前記再構築工事用治具は、請求項1乃至3の何れかに記載されたものでなり、
前記複数の前記再構築工事用治具は、隣接する前記非湾曲端縁が前記連結部により順次結合され、前記結合された状態で全体として筒状になっている、
治具組立体。
【請求項5】
請求項4に記載された治具組立体であって、さらに、楔片挿入空間と、楔片とを有しており、
前記楔片挿入空間は、前記隣接する前記非湾曲端縁によって画定されており、
前記楔片は、前記楔片挿入空間の内部に配置された状態で、治具組立体の径寸法を拡張させ、前記楔片挿入空間から取り出された状態で、前記径寸法を縮小させる、
治具組立体。
【請求項1】
下水道施設の再構築工事用治具であって、内枠部と、外板部とを含み、
前記内枠部は、剛性を有し、湾曲端縁と、非湾曲端縁と、連結部とを含み、
前記湾曲端縁は、高さ方向に向かい合う二辺であって、円弧状に湾曲しており、
前記非湾曲端縁は、前記高さ方向に直交する幅方向に向かい合う二辺であり、
前記連結部は、前記非湾曲端縁の一辺に備えられており、
前記外板部は、弾性を有する合成樹脂材料を主成分とし、前記内枠部の外面側に取り付けられている、
再構築工事用治具。
【請求項2】
下水道施設の再構築工事用治具であって、内枠部と、基板部と、外板部とを含み、
前記内枠部は、剛性を有し、湾曲端縁と、非湾曲端縁と、連結部とを含み、
前記湾曲端縁は、高さ方向に向かい合う二辺であり、円弧状に湾曲しており、
前記非湾曲端縁は、前記高さ方向に直交する幅方向に向かい合う二辺であり、
前記連結部は、前記非湾曲端縁の一辺に備えられており、
前記基板部は、合成樹脂材料を主成分とし、前記内枠部の外面に取り付けられており、
前記外板部は、弾性を有する合成樹脂材料を主成分とし、前記基板部の外面に取り付けられている、
再構築工事用治具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された再構築工事用治具であって、
前記外板部は、発泡樹脂を主成分としている、
再構築工事用治具。
【請求項4】
下水道施設の再構築工事で用いられる治具組立体であって、複数の再構築工事用治具を含み、
前記再構築工事用治具は、請求項1乃至3の何れかに記載されたものでなり、
前記複数の前記再構築工事用治具は、隣接する前記非湾曲端縁が前記連結部により順次結合され、前記結合された状態で全体として筒状になっている、
治具組立体。
【請求項5】
請求項4に記載された治具組立体であって、さらに、楔片挿入空間と、楔片とを有しており、
前記楔片挿入空間は、前記隣接する前記非湾曲端縁によって画定されており、
前記楔片は、前記楔片挿入空間の内部に配置された状態で、治具組立体の径寸法を拡張させ、前記楔片挿入空間から取り出された状態で、前記径寸法を縮小させる、
治具組立体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公開番号】特開2010−133175(P2010−133175A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−311394(P2008−311394)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(591084654)エバタ株式会社 (35)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(591084654)エバタ株式会社 (35)
【Fターム(参考)】
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