説明

下水道汚泥および廃棄物の資源化方法および資源化装置

【課題】廉価な設備で発熱量の多い固形燃料を生成可能な下水道汚泥を資源化するための資源化方法および資源化装置を提供する。
【解決手段】下水道汚泥の資源化装置1は、下水道汚泥W1を脱水して含水率が略40%の脱水汚泥W1aを生成する脱水機4と、脱水汚泥W1aに、予め用意しておいた間伐材チップW2を混合撹拌して、含水率が略25%の水分調整混合物W3を生成する混合撹拌機5と、水分調整混合物W3を180℃から300℃の範囲内の密閉加熱雰囲気中で加熱して燻炭状の固形燃料W4を生成する低温炭化炉6と、燻炭状の固形燃料W4を圧縮成形して固形燃料ペレットW5を生成する圧縮成形機7とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水道汚泥および廃棄物(一般廃棄物、産業廃棄物)に含まれている可燃塵をボイラーなどの固形燃料として資源化するための資源化方法および資源化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般廃棄物および産業廃棄物については、一般に、分別された後に、可燃塵については焼却処理、空き缶、空き瓶などの資源塵については再資源化処理、それ以外の不燃塵などは埋め立て廃棄処理がそれぞれ行われている。一方、下水道汚泥は焼却処理あるいは資源化処理(固体燃料化処理)が施されている。資源化処理においては、多量に含まれている水分を除去して高温で加熱乾燥させる工程が必要であり、一般に、加熱乾燥工程を経て含水率が20〜40重量%の乾燥汚泥を生成し、これを圧縮成形機に掛けてペレット状の固形燃料を得るようにしている。このような下水道汚泥の資源化方法は特許文献1〜3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−207397号公報
【特許文献2】特開平11−80763号公報
【特許文献3】WO2009/116170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特に、下水道汚泥は多量の水分を含んでいるので、その脱水、乾燥、加熱処理に多くの熱エネルギーを必要とし、効率が悪いという問題点がある。また、乾燥、加熱処理においては脱水後の汚泥あるいは分別破砕後の可燃物が600〜700℃に加熱されるので自然発火の危険性があり、発生する臭気が外部に漏れないように排ガス処理も必要であり設備コストも高いという問題点がある。これに加えて、脱水後の汚泥、分別破砕後の可燃物が高温で処理されるので、生成された固形燃料の炭化が進んでおり、固形燃料として用いるには発熱量が少ないという問題点がある。
【0005】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、廉価な設備で発熱量の多い固形燃料を生成可能な下水道汚泥および廃棄物を資源化するための資源化方法および資源化装置を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の下水道汚泥の資源化方法は、
下水道汚泥を脱水機に掛けて脱水して、含水率が略40%の脱水汚泥とし、
脱水汚泥に、予め用意しておいた間伐材チップを混合しながら水分調整を行って(混合攪拌機に掛けて)、含水率が略25%の混合物を生成し、
混合物を乾燥機に掛けて、180℃から300℃の範囲内の密閉加熱雰囲気中で加熱して燻炭状の固形燃料を生成し、
燻炭状の固形燃料を圧縮成形機に掛けて固形燃料ペレットを生成することを特徴としている。
【0007】
また、上記の方法により下水道汚泥を資源化する資源化装置は、
下水道汚泥を脱水して含水率が略40%の脱水汚泥を生成する脱水機と、
脱水汚泥に、予め用意しておいた間伐材チップを混合しながら水分調整を行って、含水率が略25%の混合物を生成する混合撹拌機と、
混合物を180℃から300℃の範囲内の密閉加熱雰囲気中で加熱して燻炭状の固形燃料を生成する低温炭化炉と、
燻炭状の固形燃料を圧縮成形して固形燃料ペレットを生成する圧縮成形機とを有していることを特徴としている。
【0008】
次に、本発明の廃棄物の資源化方法は、
一般廃棄物あるいは産業廃棄物を分別して可燃塵を取り出し、
可燃塵を破砕機に掛けて破砕して破砕可燃塵とし、
破砕可燃塵の含水率が40%を超える場合には、当該破砕可燃塵を脱水機に掛けて脱水して、含水率が略40%の脱水破砕塵とし、
脱水破砕塵に、予め用意しておいた間伐材チップを混合しながら脱水機に掛けて、含水率が略25%の混合物を生成し、
混合物を乾燥機に掛けて、180℃から300℃の範囲内の密閉加熱雰囲気中で加熱して燻炭状の固形燃料を生成し、
燻炭状の固形燃料を圧縮成形機に掛けて固形燃料ペレットを生成することを特徴としている。
【0009】
また、上記の方法により廃棄物を資源化する資源化装置は、
一般廃棄物あるいは産業廃棄物を分別して可燃塵を取り出す分別機と、
分別機から取り出される可燃塵を破砕して破砕可燃塵を生成する破砕機と、
破砕可燃塵の含水率が40%を超える場合に、当該破砕可燃塵を脱水して、含水率が略40%の脱水破砕塵にする脱水機と、
破砕機からの破砕可燃塵あるいは脱水機からの脱水破砕塵に、予め用意しておいた間伐材チップを混合しながら脱水して、含水率が略25%の混合物を生成する混合脱水機と、
混合物を180℃から300℃の範囲内の密閉加熱雰囲気中で加熱して燻炭状の固形燃料を生成する低温炭化炉と、
燻炭状の固形燃料を圧縮成形して固形燃料ペレットを生成する圧縮成形機とを有していることを特徴としている。
【0010】
ここで、混合物を乾燥機に掛けて低温炭化して固形燃料を生成する際の加熱温度としては、200℃から250℃の範囲内の温度とすることが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の方法及び装置では、回収された下水道汚泥の含水率は約85%と高く、廃棄物(一般廃棄物、産業廃棄物)の可燃塵の含水率も約70%と高い。本発明では、これらに間伐材チップを混合して水分調整を行い、混合物全体の含水率を略25%まで落としている。高温で長時間に亘って加熱乾燥する場合とは異なり、処理対象物が自然発火する危険性が無く、処理対象物から発生する臭気も僅かである。
【0012】
また、本発明の方法及び装置によれば間伐材チップを有効利用することができる。すなわち、森林整備においては、間伐材をチップにして利用しているが、間伐材の利用率は15〜20%程度と低いのが現状である。これは、間伐材を伐採して山出しするための経費が掛かり過ぎ、採算がとれないからである。本発明の方法及び装置が普及すれば、間伐材の利用率を高めることにより経費を抑制することができるので、雇用の創出が図られ、間伐材、下水道汚泥、廃棄物の再利用が進むことを期待できる。
【0013】
さらに、本発明の方法及び装置では、従来に比べて比較的低い180℃から300℃の範囲内(好ましくは、200℃から250℃の範囲内)の加熱雰囲気中で混合物を加熱して燻炭状にしているので、得られる固形燃料は従来のように炭化が進んでおらず発熱量の多い固形燃料ペレットを得ることができる。また、加熱温度が低いので自然発火の危険性がなく安全であり、設備を簡素化できると共に取扱も簡素化できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明を適用した下水道汚泥の資源化システムの構成を示す説明図である。
【図2】本発明を適用した廃棄物(一般廃棄物、産業廃棄物)の資源化システムの構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を参照して本発明を適用した資源化方法および資源化装置の実施の形態を説明する。
【0016】
(下水道汚泥の資源化装置の例)
図1を参照して説明すると、本実施の形態に係る下水道汚泥の資源化装置1は、回収された下水道汚泥W1の貯留部2および間伐材チップW2の貯留部3を備えている。貯留部2に貯留されている下水道汚泥W1は含水率が80重量%程度であり、不図示の搬送機構によって搬送されて脱水機4に投入される。
【0017】
脱水機4では、投入された下水道汚泥W1を脱水して、含水率が略40%となった脱水汚泥W1aを生成する。脱水汚泥W1aは次に混合撹拌機5に投入される。混合撹拌機5には、貯留部3から不図示の搬送機構を介して間伐材チップW2も同時に投入される。混合撹拌機5において、脱水汚泥W1aと間伐材チップW2が混合撹拌されて水分調整が行われる。これにより、全体としての含水率が略25%の水分調整混合物W3が得られる。
【0018】
水分調整混合物W3は次の低温炭化炉6に投入される。低温炭化炉6では、180℃〜300℃の範囲内の密閉加熱雰囲気中、好ましくは、200℃〜250℃の範囲内の密閉加熱雰囲気中で、水分調整混合物W3が加熱乾燥される。これにより、水分調整混合物W3が燻蒸処理されて、燻炭化状の固形燃料W4が生成される。
【0019】
生成された燻炭化状の固形燃料W4は、圧縮成形機7に投入されて、所定の大きさのペレットに圧縮成形される。これによって固形燃料ペレットW5が得られる。固形燃料ペレットW5は回収部8に回収される。このようにして得られた固形燃料ペレットW5は、ボイラーの燃料等として使用することができる。
【0020】
(廃棄物の資源化装置の例)
図2を参照して説明すると、本実施の形態に係る廃棄物の資源化装置11は、回収された産業廃棄物および一般廃棄物W20(以下、これらを総称して「廃棄物W20」と呼ぶ。)の貯留部12と、間伐材チップW12の貯留部13を備えている。廃棄物W20はコンベア等の不図示の搬送機構によって分別機21に供給され、ここにおいて可燃塵W21とその他の不燃塵、資源塵などに分別される。分別後の可燃塵W21は含水率が70重量%程度であり、破砕機22に投入されて所定の大きさに破砕される。
【0021】
破砕後の破砕可燃塵W22の含水率が略40%を超えている場合には、当該破砕可燃塵W22は脱水機14に投入されて含水率が略40%になるように脱水される。脱水後の脱水破砕可燃塵W23は混合脱水機15に投入される。破砕可燃塵W22の含水率が略40%あるいはそれ以下の場合には、破砕可燃塵W22を、脱水工程を経ることなく混合脱水機15に投入する。同時に、間伐材チップW12が不図示の搬送機構によって混合脱水機15に投入される。
【0022】
混合脱水機15では、投入された破砕可燃塵W22あるいは脱水破砕可燃塵W23と、間伐材チップW12とを混合撹拌しながら、これらの脱水処理を行う。脱水後の脱水混合物W13は全体として含水率が略25%に調整されたものになる。このように含水率が調整された後の脱水混合物W13は低温炭化炉16に投入されて、180℃〜300℃の範囲内の密閉加熱雰囲気中、好ましくは、200℃〜250℃の範囲内の密閉加熱雰囲気中で加熱乾燥される。これにより、脱水混合物W13が燻蒸処理されて、燻炭化状の固形燃料W14が生成される。
【0023】
生成された燻炭化状の固形燃料W14は、圧縮成形機17に投入されて、所定の大きさのペレットに圧縮成形される。これによって固形燃料ペレットW15が得られる。固形燃料ペレットW15は回収部18に回収される。このようにして得られた固形燃料ペレットW15は、ボイラーの燃料等として使用することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 下水道汚泥の資源化装置
2 貯留部
3 貯留部
4 脱水機
5 混合撹拌機
6 低温炭化炉
7 圧縮成形機
8 回収部
W1 下水道汚泥
W1a 脱水汚泥
W2 間伐材チップ
W3 水分調整混合物
W4 固形燃料
W5 固形燃料ペレット
11 廃棄物の資源化装置
12 貯留部
13 貯留部
14 脱水機
15 脱水混合気
16 低温炭化炉
17 圧縮成形機
18 回収部
21 分別機
22 破砕機
W12 間伐材チップ
W13 脱水混合物
W14 固形燃料
W15 固形燃料ペレット
W20 廃棄物
W21 可燃塵
W22 破砕可燃塵
W23 脱水破砕可燃塵

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下水道汚泥を脱水機に掛けて脱水して、含水率が略40%の脱水汚泥とし、
脱水汚泥に、予め用意しておいた間伐材チップを混合しながら水分調整を行って、含水率が略25%の混合物を生成し、
混合物を乾燥機に掛けて、180℃から300℃の範囲内の密閉加熱雰囲気中で加熱して燻炭状の固形燃料を生成し、
燻炭状の固形燃料を圧縮成形機に掛けて固形燃料ペレットを生成することを特徴とする下水道汚泥の資源化方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法により下水道汚泥を資源化する資源化装置であって、
下水道汚泥を脱水して含水率が略40%の脱水汚泥を生成する脱水機と、
脱水汚泥に、予め用意しておいた間伐材チップを混合撹拌して、含水率が略25%の混合物を生成する混合攪拌機と、
混合物を180℃から300℃の範囲内の密閉加熱雰囲気中で加熱して燻炭状の固形燃料を生成する低温炭化炉と、
燻炭状の固形燃料を圧縮成形して固形燃料ペレットを生成する圧縮成形機とを有していることを特徴とする下水道汚泥の資源化装置。
【請求項3】
一般廃棄物あるいは産業廃棄物を分別して可燃塵を取り出し、
可燃塵を破砕機に掛けて破砕して破砕可燃塵とし、
破砕可燃塵の含水率が40%を超える場合には、当該破砕可燃塵を脱水機に掛けて脱水して、含水率が略40%の脱水破砕塵とし、
脱水破砕塵に、予め用意しておいた間伐材チップを混合しながら脱水機に掛けて、含水率が略25%の混合物を生成し、
混合物を乾燥機に掛けて、180℃から300℃の範囲内の密閉加熱雰囲気中で加熱して燻炭状の固形燃料を生成し、
燻炭状の固形燃料を圧縮成形機に掛けて固形燃料ペレットを生成することを特徴とする廃棄物の資源化方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法により廃棄物を資源化する資源化装置であって、
一般廃棄物あるいは産業廃棄物を分別して可燃塵を取り出す分別機と、
分別機から取り出される可燃塵を破砕して破砕可燃塵を生成する破砕機と、
破砕可燃塵の含水率が40%を超える場合に、当該破砕可燃塵を脱水して、含水率が略40%の脱水破砕塵にする脱水機と、
破砕機からの破砕可燃塵あるいは脱水機からの脱水破砕塵に、予め用意しておいた間伐材チップを混合しながら脱水して、含水率が略25%の混合物を生成する混合脱水機と、
混合物を180℃から300℃の範囲内の密閉加熱雰囲気中で加熱して燻炭状の固形燃料を生成する低温炭化炉と、
燻炭状の固形燃料を圧縮成形して固形燃料ペレットを生成する圧縮成形機とを有していることを特徴とする廃棄物の資源化装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−56982(P2013−56982A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195488(P2011−195488)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(511219249)
【Fターム(参考)】