説明

下着

【課題】第1の身生地部と第2の身生地部とを連続的に形成して、製造工程の簡略化を図りつつ着用感の低下の抑制を図ると共に、通気性の向上が図られた下着を提供する。
【解決手段】着用時に肌にフィットするように形成された下着において、端始末不要な編み組織からなり、第1の身生地部16と、第1の身生地部16より薄い第2の身生地部17とが交互に配置された本体編地14を備える構成とする。第2の身生地部17は、着用時に第1の身生地部16よりも相対的にフィットしないように、第1の身生地部16よりも肌側の厚みが薄くなるように形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下着に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、衣類の一部にメッシュ部を設けることで、通気性を向上させる衣類が数多く提案されている。例えば、身生地の一部にメッシュ状の布材を取り付けてメッシュ部分を形成するものの他、編地の組織を切り替えたり、糸の太さをメッシュ部分だけ細くしたりして、メッシュ部分と身生地部分とを連続的に形成するものが知られている。
【0003】
下記特許文献1には、後身頃の身生地部に、臀裂に沿って上下方向に延在するメッシュ部が設けられたボトム下着が開示されている。また、下記特許文献2には、臀裂の上端に対応する位置と、臀裂の下端に対応する位置との両方にメッシュ部が設けられたボトム衣類が開示されている。このボトム衣類では、上端側のメッシュ部を、下端側のメッシュ部より大きくすることで、歩行動作時に「ふいご効果」によって、臀裂近傍の空間において下方から上方への通気を促進しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】登録実用新案第3052111号公報
【特許文献2】特許第3836039号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された従来技術では、臀裂に沿って形成されたメッシュ部によって、ある程度の通気性を確保することは可能であるが、充分ではなかった。また、特許文献2に記載された従来技術では、着用者が歩行動作を行っていない静止状態において、充分な「ふいご効果」が得られなかった。そのため、通気性の向上が図られた下着が求められている。
【0006】
特許文献1,2の従来技術では、身生地部にメッシュ部を縫着等によって取り付ける必要があるため、製造に手間がかかり、製造工程の簡略化が求められていた。そのため、製造工程の簡略化を図ることができる下着が求められている。
【0007】
特許文献1の従来技術では、臀裂に沿ってメッシュ部が形成されており、当該メッシュ部の伸長回復性が他の身生地部分よりも低いため、良好なフィット性(キックバック性)を得ることができなかった。また、特許文献1,2の従来技術では、メッシュ部と身生地部との連絡部に縫着部分が形成されてしまうため、肌触りの点で問題があった。そのため、着用感の低下を抑制することが可能な下着が求められている。
【0008】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、互いに厚みが異なる第1の身生地部と第2の身生地部とを連続的に形成して、製造工程の簡略化を図りつつ着用感の低下の抑制を図ると共に、通気性の向上が図られた下着を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、着用時に肌にフィットするように形成された下着であって、異なる厚みを有する第1の身生地部と第2の身生地部とが、一体的に交互に編成された端始末不要な本体編地を備え、第2の身生地部は、着用時に第1の身生地部よりも相対的に肌との間に隙間が形成され易いように、第1の身生地部よりも厚みが薄くなるように形成されている、下着を提供する。
【0010】
この構成の下着によれば、互いに厚さの異なる第1の身生地部及び第2の身生地部とが一体的に交互に編成された本体編地を備える構成であるため、通気性を向上させることができ、蒸れにくくすることができる。本発明の下着では、1枚の本体編地において第1の身生地部と第2の身生地部とが連続的に形成されているので、第1の身生地部に第2の身生地部(例えばメッシュ部)を取り付ける必要を無くして、製造工程の簡略化を図ることができる。第2の身生地部を取り付けることで生じる縫着線が形成されないため、着用感の低下を抑制することができる。
【0011】
また、着用時において、第2の身生地部が、第1の身生地部よりも相対的に着用者の肌との間に隙間が形成され易いように、第1の身生地部よりも厚みが薄く形成されているので、第2の身生地部間に挟まれた第1の身生地部が、着用者の肌に接触して汗を吸湿し、爽快感を向上させることができる。本発明の下着では、本体編地の肌側表面に凹凸が形成され、第2の身生地部と肌との間には、第1の身生地部と肌との間よりも相対的に隙間が形成され易く放熱を促進させることができる。その結果、着用者の爽快感を向上させることができる。
【0012】
下着の本体編地は、端始末不要な編み組織から形成されているため、裁断後の端始末が不要であり、製造工程の手間を省くことができる。
【0013】
本体編地は、臀部全体を覆うように形成され、第2の身生地部は、臀裂に対応する位置から左右両脇側まで連続して配置されていてもよい。
【0014】
この構成の下着では、第2の身生地部が臀裂近傍から左右両脇側まで連続して形成されているため、臀裂近傍の空気を第2の身生地部に沿って左右方向に逃がすことができる。これにより、放熱性を高め、着用者の爽快感を一層向上させることができる。
【0015】
本発明の下着の本体編地は、左右の脚がそれぞれ挿通される左右一対の裾口のうち、少なくとも前裾部分を形成し、第2の身生地部は、左右一対の前裾間で連続して形成されている構成でもよい。これにより、前裾部分(裾口の周縁部)に形成された第2の身生地部から、空気を流入または流出させることが可能となり、通気性を一層向上させることができ、前裾部分の通気性を向上させて蒸れを抑制することができる。
【0016】
本発明の下着の本体編地は、左右の脚をそれぞれ挿通される左右一対の裾口のうち、少なくとも臀部下部に位置する後裾部分を形成し、第2の身生地部は、臀裂に対応する位置から左右一対の後裾間を繋ぐように連続して形成されている構成でもよい。臀裂周辺から後裾部分まで第2の身生地部が連続して設けられているため、後裾部分に形成された第2の身生地部分から、空気を流入または流出させることが可能となり、通気性を一層向上させることができ、後裾部分の通気性を向上させて蒸れを抑制することができる。
【0017】
また、本体編地は、着用者のウエスト部分が挿通されるウエスト口を形成し、第2の身生地部は、左右の両脇部分から前中心側または後中心側のウエスト口へ連続して形成されている構成でもよい。これにより、左右両脇部分からウエスト口周辺に至る領域の通気性を向上させることができる。
【0018】
第1の身生地部は、第2の身生地部の幅と同等または第2の身生地部の幅よりも大きくなるように形成されていてもよい。
【0019】
本体編地の具体的な構成として、基本組織と挿入組織とによって編成され、第2の身生地部は、基本組織によって編成されている構成が挙げられる。
【0020】
基本組織は、弾性糸と非弾性糸を1コースまたは2コース進むごとに互いにルーピングすることによって形成されている組織とすることができる。ルーピングとは、編糸(弾性糸、非弾性糸)によって、ループ(輪)を形成することをいう。
【0021】
また、本体編地には、芯糸を綿糸で被覆した糸であるCSYが挿入され、CSYは、第1の身生地部において肌側に露出するように編みこまれている、構成とすることができる。この構成により、吸湿性を有する綿糸を肌側に設けることで、着用者の汗を吸収しやすくすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、互いに厚みが異なる第1の身生地部と第2の身生地部とを連続的に形成して、製造工程の簡略化を図りつつ着用感の低下の抑制を図ると共に、通気性の向上が図られた下着を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係るショーツを裏返して正面側を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係るショーツを示す背面図である。
【図3】図1に示すショーツの本体編地の展開図である。
【図4】図1中の身生地部及びメッシュ部の各構成糸の編成組織図である。
【図5】図1中の周囲領域の各構成糸の編成組織図である。
【図6】図1中のパイル編み領域の各構成糸の編成組織図である。
【図7】図1に示すショーツの本体編地の一部を拡大した図である。
【図8】図1に示すショーツの本体編地の断面を拡大して示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明による下着の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一または相当要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0025】
(ショーツ)
図1及び図2は、ショーツ10を示している。図1では、ショーツ10を裏返した状態として、主に、前身頃側を示している。本実施形態のショーツ10(下着)は、着用者の下腹部を覆う前身頃11と、着用者の臀部を覆う後身頃12と、前身頃11と後身頃12との間に形成された股部13と、を備え、1枚の連続した本体編地14から形成されている。なお、複数枚の編地を用いて下着を製造してもよい。また、本発明の下着は、ショーツ10に限定されず、クロッチ付の下着、または、その他の下着でもよい。例えば、上半身を覆う下着でもよい。
【0026】
前身頃11の本体編地14には、基本の編み組織である身生地部(第1の身生地部)16と、身生地部16より通気性が向上されたメッシュ部(第2の身生地部)17とが交互に形成されている。前身頃11は、下腹部全体を覆うように形成されている。前身頃11において、身生地部16及びメッシュ部17は、左右方向(第1の方向)に延在し、上下方向(第2の方向)に交互に配置されている。左右方向とは、着用状態における左右方向である。上下方向とは、通常の着用状態における上下方向であり、足先側が下方であり、頭部側が上方である。
【0027】
前身頃11の身生地部16及びメッシュ部17は、前身頃11の全域に形成されている。身生地部16及びメッシュ部17は、左右両方の脇線15間で連続して形成されている。身生地部16及びメッシュ部17は、前身頃11の全域に形成されていないものでもよい。前身頃11の一部分において、身生地部16及びメッシュ部17が交互に配置されている構成でもよい。また、前身頃11は、下腹部全体を覆っていないものでもよい。なお、身生地部16及びメッシュ部17が交互に配置された本体編地14の組織については、後述する。
【0028】
後身頃12の本体編地14には、身生地部16及びメッシュ部17が形成されている。後身頃12は、臀部全体を覆うように形成されている。後身頃12において、身生地部16及びメッシュ部17は、左右方向(第1の方向)に延在し、上下方向(第2の方向)に交互に配置されている。
【0029】
後身頃12の身生地部16及びメッシュ部17は、後身頃12の全域に形成されている。身生地部16及びメッシュ部17は、左右両方の脇線15間で連続して形成されている。身生地部16及びメッシュ部17は、前身頃11の全域に形成されていないものでもよい。後身頃12の一部分において、身生地部16及びメッシュ部17が交互に配置されている構成でもよい。また、後身頃12は、下腹部全体を覆っていないものでもよい。なお、脇線15において、前身頃11のメッシュ部17の位置と、後身頃12のメッシュ部17の位置とは、一致していることが好ましいが、ずれていてもよい。
【0030】
股部13の本体編地14には、左右方向の中央に配置されたパイル編み領域20、及びパイル編み領域20の左右両側に配置された周囲領域30が形成されている。パイル編み領域20は、クロッチ部分の大きさに対応するように形成されている。なお、股部13において、パイル編み領域20が形成されていない構成でもよい。また、股部13の本体編地14の一部分において、身生地部16及びメッシュ部17が交互に配置されている構成でもよい。パイル編み領域20及び周囲領域30が配置された本体編地14の組織については、後述する。
【0031】
(本体編地)
次に本実施形態のショーツ10の本体編地14について説明する。図3は、本発明の実施形態に係る本体編地を示す平面図である。本体編地14は、上述したように、前身頃11、後身頃12、及び股部13を備え、1枚の連続した編地から形成されている。
【0032】
本体編地14は、身生地部16、メッシュ部17、パイル編み領域20、及び周囲領域30を有し、複数の編成組織を重ねて形成された伸縮性経編地である。本体編地14では、図示上下方向(Y方向)がコース方向となる。周囲領域30は、コース方向Yにおいて、パイル編み領域20の両側に形成されている。
【0033】
前身頃11及び後身頃12は、互いに対面するように折り返されて、ショーツ10において、前身頃11及び後身頃12の側端部41,42同士が縫合されている。側端部41,42が縫合された線状の部分が、ショーツ10において脇線15となる。
【0034】
ショーツ10の上端部(ウエスト口)は、着用者の胴回りに対応する部分であり、本体編地14の周縁部分43,44によって形成されている。ショーツ10の上端部は、身生地部16またはメッシュ部17が裁断されて形成されている。周縁部分43,44では、裁断後の端始末は施されていない。なお、周縁部分43,44には裁断後の端始末を施す必要はないが、商品の仕様に応じてレース材等取り付けるために、縫製を施すといったことも考えられる。
【0035】
ショーツ10において、本体編地14のウエスト口を形成する周縁部分43,44に、メッシュ部17が形成されている構成でもよく、メッシュ部17が形成されていない構成でもよい。ウエスト口近傍のメッシュ部17は、前身頃11側のみ、後身頃12側のみに形成されていてもよい。ウエスト口近傍のメッシュ部17は、左右の両脇部分から前中心側または後中心側のウエスト口へ連続して形成されていることが好ましい。
【0036】
ショーツ10のすそ部(裾口)は、着用者の脚が挿通される開口部であり、本体編地14の周縁部分45〜47によって形成されている。ショーツ10のすそ部は、身生地部16、メッシュ部17、または周囲領域30が裁断されて形成されている。周縁部分45〜47では、裁断後の端始末は施されていない。
【0037】
ショーツ10のすそ部(45〜47)のうち、前身頃11の周縁部分45(前裾部分)のみにメッシュ部17が形成され、後身頃12の周縁部分47(後裾部分)にメッシュ部17が形成されていない構成でもよい。
【0038】
また、ショーツ10のすそ部(45〜47)のうち、後身頃12の周縁部分47(後裾部分)のみにメッシュ部17が形成され、前身頃11の周縁部分45(前裾部分)にメッシュ部17が形成されていない構成でもよい。着用時において、後裾部分は、汗のかきやすい部位である臀部下部に配置されるため、後裾部分にメッシュ部17が形成されていることが好ましい。
【0039】
なお、本実施形態では、本体編地14は、前身頃11と後身頃12とが股部13を介して一体に形成されており、前身頃11と後身頃12の左右の脇部分を繋ぎ合わせてショーツを形成する例を挙げている。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、前身頃と後身頃を別々の編地として形成し、互いの編地を接着または縫着等の手法によって繋ぎ合わせてショーツを形成するものとしても良いし、左右の身頃を別々の編地として形成し、互いの編地を縫着または接着等の手法によって繋ぎ合わせてショーツを形成するものとしても良い。
【0040】
(身生地部の編み組織)
次に、図4を参照して、身生地部16の編み組織について説明する。図4(a)は、図1中の身生地部16の各構成糸の編成組織図である。身生地部16は、非弾性糸50と弾性糸61〜63とを組み合わせて編成された経編地の一部分である。
【0041】
以下の説明において、1コースとは、図4において矢印Yで示す上下方向、すなわち各編成組織を構成する糸が編み込まれる方向の距離を意味している。1ウェールとは、矢印Xで示す左右方向の距離を意味している。
【0042】
身生地部16は、第1編成組織A(アトラス編地組織)、第2編成組織B(二目編組織)、第3編成組織C(挿入組織)、第4編成組織D(挿入組織)を備えている。
【0043】
第1編成組織Aは、非弾性糸50が1コースごとに1ウェール分の振り幅で、1繰り返し単位では合計2ウェール分の振り幅となるようにウェール方向に振られ、全てのコースでループを形成している。第1編成組織Aは、変形アトラス組織または変形デンビ組織としても表現できる組織である。
【0044】
第2編成組織Bは、弾性糸のうち第1の弾性糸61が2コースごとに左右交互に2ウェール分の振り幅(すなわち2針間)で振られて、部分的に二目編を形成している。第1編成組織A及び第2編成組織Bは、1コース進むごとに互いに締め付けあうようにルーピングしている。これにより、互いの組織の糸をほつれ難くし、裁断された際にも生地端始末を不要なものとしている。
【0045】
第3編成組織Cは、弾性糸のうち第2の弾性糸62が1コースごとに1ウェール分の振り幅で左右交互に振られ、第1編成組織Aと第2編成組織Bが形成するループの間に挟みこまれるように挿通される挿入組織である。
【0046】
第4編成組織Dは、弾性糸のうち第3の弾性糸63が第3編成組織と同様に、第1編成組織Aの形成する、例えば、ニードルループとシンカーループの間に挿通され、編成組織Aの糸によって挟み込まれる挿入組織である。これによって、編成組織Aを形成する糸がほつれ難くしている。なお、身生地部16は、その他の編成組織から構成されていてもよい。例えば、第4編成組織Dを備えていない身生地部16でもよい。または、第1編成組織A及び第2編成組織Bの形成する、例えば、ニードルループとシンカーループの間に挿通され、編成組織A、Bの糸によって挟み込まれる挿入組織でもよい。
【0047】
(第1編成組織A)
非弾性糸50による第1編成組織Aは、伸縮性経編地の基本組織を構成している。第1編成組織Aは、1コース毎に1ウェール分の振り幅で1繰り返し単位では合計2ウェール分の振り幅でウェール方向に振られて全てのコースでループを形成する。具体的には、21/10/12/23//などの繰り返し単位を有する編成組織が採用されている。後述する弾性糸の編成組織B、C、Dとの組み合わせによって、伸縮性経編地の機能や特性に違いが生じる。
【0048】
(第1編成組織Aの非弾性糸)
第1編成組織Aの非弾性糸としては、通常の経編地と同様の糸材料を使用することができる。「非弾性糸」とは、弾性糸と比較して弾性が少ない糸を含むものである。例えば、伸度100%未満の糸を非弾性糸として使用することができる。非弾性糸としては、伸度60未満の糸であることが好適である。具体的には、綿などの天然繊維、ナイロンなどの合成繊維、さらには半合成繊維や再生繊維なども、非弾性糸として使用可能である。非弾性糸の形態としては、フィラメント糸、紡績糸、交撚糸などを採用することができる。
【0049】
(第2編成組織B)
弾性糸による第2編成組織Bは、本体編地14に良好な伸縮性を付与する機能を有している。また、第2編成組織Bは、編地のほつれや裂けを防止する機能を有している。第2編成組織Bは、他の編成組織A、Cと共に用いることによって、弾性編地を形成する。具体的には、12/02/21/31//などの繰り返し単位を有する編成組織が採用されている。
【0050】
(第2編成組織Bの弾性糸)
第2編成組織Bは、編地がカールし難くする機能を有している。第2編成組織Bの弾性糸としては、通常の伸縮性経編地と同様の糸材料を使用することができる。例えば、伸度200%以上の糸を弾性糸として使用することができる。弾性糸としては、伸度400%以上であることが好適である。具体的には、ポリウレタン弾性糸を使用することができる。
【0051】
(第3編成組織C)
弾性糸による第3編成組織Cは、伸縮性その他の特性を編地に付与する機能を有している。第3編成組織Cは、第2編成組織Bと異なり、第2の弾性糸62が1コース毎に1ウェール分の振り幅で左右交互に振られて挿入される。いわゆるジグザグ状の挿入組織であり、00/11//の繰り返し単位になる。なお、本実施形態では、第3編成組織Cは、00/11//の繰り返し単位となる例を挙げているが、例えば、11/00/11/22//の繰り返し単位となるようにしてもよい。
【0052】
第3編成組織Cは、主にタテ方向(X方向またはY方向)における伸縮性に関与する。ヨコ方向および斜め方向に優れた伸縮性を示す第2編成組織Bと組み合わせられ、経編地に、タテ、ヨコ、斜めの何れの方向にもバランスの取れた伸縮機能を付与することができる。
【0053】
(第3編成組織Cの弾性糸)
第3編成組織Cの弾性糸としては、基本的には、第2編成組織Bに用いる弾性糸と共通する糸材料が使用できる。弾性糸の伸度も同程度の範囲内に設定することができる。
【0054】
(第4編成組織D)
弾性糸による第4編成組織Dは、伸縮性その他の特性を編地に付与する機能を有している。第4編成組織Dは、第2編成組織Bと異なり、第3の弾性糸63が2コース毎に2ウェール分の振り幅で左右交互に振られて挿入される。いわゆるジグザグ状の挿入組織である。
【0055】
第4編成組織Dは、主にタテ方向における伸縮性に関与し、ホツレ防止にも寄与する。ヨコ方向および斜め方向に優れた伸縮性を示す第2編成組織Bと組み合わせられ、経編地に、タテ、ヨコ、斜めの何れの方向にもバランスの取れた伸縮機能を付与することができる。
【0056】
(第4編成組織Dの弾性糸)
第4編成組織Dの弾性糸としては、CSYが使用できる。CSYの伸度は、第2編成組織Bの弾性糸61の伸度と同程度の範囲内に設定することができる。ここで、CSYとは、コアスパンヤーンを意味する。
【0057】
(メッシュ部の編み組織)
次に、図4を参照して、メッシュ部17の編み組織について説明する。図4(b)は、図1中の身生地部16の各構成糸の編成組織図である。メッシュ部17は、身生地部16の編み組織から挿入組織(第3編成組織C及び第4編成組織D)が取り除かれた部分である。メッシュ部17は、第1編成組織A(アトラス編地組織)、及び第2編成組織B(二目編組織)を備えている。第1編成組織Aと第2編成組織Bは1コース進むごとに互いに締め合うようにループを構成している。このため、身生地部16と同様に生地端始末が不要である。
【0058】
(周囲領域)
次に図5を参照して、周囲領域30の編み組織について説明する。図5は、図1中の周囲領域の各構成糸の編成組織図である。周囲領域30は、非弾性糸50,64と弾性糸61〜63とを組み合わせて編成された経編地の一部分である。
【0059】
周囲領域30は、上述した第1編成組織A、第2編成組織B、第3編成組織C、及び第4編成組織Dの他に、非弾性糸64が1コースごとに1ウェール分の振り幅で左右交互に振られて挿入された第5編成組織Eを備えている。なお、第1の周囲領域31は、その他の編成組織から構成されていてもよい。
【0060】
(第5編成組織E)
非弾性糸64による第5編成組織Eは、領域20で形成するパイルの糸を各編成組織に絡めている。これにより、周囲領域30の編地が裁断されたときに、パイルを形成する糸がほつれ難くしている。第5編成組織Eは、非弾性糸64が1コース毎に1ウェール分の振り幅で左右交互に振られて挿入される。いわゆるジグザグ状の挿入組織であり、00/11//の繰り返し単位になる。
【0061】
第5編成組織Eは、非弾性糸64を絡めることで周囲領域30と第2の周囲領域32との間に伸度の差、すなわち、パワー差を設ける機能を有している。これにより、第1の周囲領域(股部)31の伸度を小さくし、着用者の股に対して生地が食い込み難くしている。一方、着用者の臀部及び腹部周辺を覆う第2の周囲領域32については、第1の周囲領域よりも伸度を高くして伸縮性を持たせ、臀部に対するフィット性を高めている。
【0062】
(パイル編み領域)
次に図6を参照して、パイル編み領域20の編み組織について説明する。図6は、パイル編み領域の各構成糸の編成組織図である。パイル編み領域20は、非弾性糸50,64と弾性糸61〜63とを組み合わせて編成された経編地の一部分である。
【0063】
パイル編み領域20は、上述した第1編成組織A、第2編成組織B、第3編成組織C、及び第4編成組織Dの他に、非弾性糸64が挿入された第6編成組織Fを備えている。
【0064】
(第6編成組織F)
第6編成組織Fは、パイルを構成する部分であり、パイルのループを構成するために、部分的に編み込まないようにしている。具体的には、11/11/11/11/11/11/11/11/11/11/00/11//などの繰り返し単位を有する編成組織が採用されている。
【0065】
本実施形態では、上記のようにループの間隔を11針間(すなわち、11コース分の距離)とすることで、パイル部分を形成する例を挙げているが、本発明は、これに限定されるものではない。商品の仕様に応じて、ループの間隔を設定すれば良い。
【0066】
(身生地部及びメッシュ部の配置)
次に、図7及び図8に参照して、身生地部16及びメッシュ部17の配置について説明する。本実施形態の本体編地14では、身生地部16及びメッシュ部17が交互に形成され、例えばボーダー状に配置されている。本実施形態では、身生地部16の幅W16は、5mm程度、メッシュ部17の幅W17は、2mm程度である。このように、メッシュ部17の幅W16は隣接する身生地部16の幅W17よりも狭くなるように形成されていることが好ましい。これにより、身生地部と比較してメッシュ部は肌にあまりフィットしないため相対的に通気性を高くすることができる。身生地部16の幅W16は、3mm〜12mmであることが好ましい。メッシュ部17の幅W17は、身生地部16の幅W16と同等または幅W16よりも狭く、例えば1mm〜5mmであることが好ましい。
【0067】
図8に示すように、身生地部16は、メッシュ部17よりも肌側へ厚みを有している。換言すれば、メッシュ部17は、着用時に身生地部16よりも相対的に肌にフィットしないように、身生地部16よりも肌側に厚みが薄くなるように形成されている。そのため、ショーツ10の着用時において、メッシュ部17と着用者の肌との間に隙間が形成され易くなっている。
【0068】
なお、本実施形態では、メッシュ部17よりも身生地部16の肌側の厚みのみが厚くなるように形成されている例を挙げているが、本発明は、これに限定されるものではない。編地の仕様によっては、例えば、肌側と反対側である表側の厚みもメッシュ部17よりも身生地部16の方が厚く形成されるようにしてもよい。
【0069】
(身生地部及びメッシュ部の通気量の測定)
本実施形態の編地について通気量の測定を実施した。通気量の測定は、カトーテック株式会社製「KES−F8−AP1」を用い、KES法にて通気抵抗を測定し、その測定値を変換して通気量を算出した。試験片として、身生地部16(幅6mm)及びメッシュ部17(幅2mm)が交互に配置された編地(試験片1)、身生地部16のみからなる編地(試験片2)、メッシュ部17のみからなる編地(試験片3)について、通気量を算出した。各試験片について、5回の測定を行い、通気量の平均値を算出した。以下の表1に測定結果を示す。単位はKpa・S/mである。
【表1】

【0070】
以上、このような構成の本実施形態のショーツ10では、本体編地14に、端始末不要なフリーカット素材を採用しているため、裁断後の裾始末及びウエスト上辺始末が不要である。その結果、製造工程の手間を省き、製造コストの上昇を抑えることができる。
【0071】
本実施形態のショーツ10では、編成後の編地(きばた)に対して、編地を面状に広げてわずかにテンションが付与された状態でヒートセットが行われている。その結果、編地のフリーカット性が向上され、裁断後の糸のほつれを抑制することができる。
【0072】
このような本実施形態のショーツ10によれば、身生地部16とメッシュ部17とが交互に配置された本体編地14を備える構成であるため、1枚の編地において身生地部16とメッシュ部17とを連続的に形成することができる。これにより、メッシュ部17を取り付ける必要を無くして、製造工程の簡略化を図ることができる。メッシュ部17を取り付けることで生じる縫着線が形成されないため、着用感の低下が抑制されている。なお、身生地部16とメッシュ部17とを連続的に形成するとは、換言すると、身生地部16とメッシュ部17とを一体的に形成するとも表現することができる。
【0073】
また、本実施形態のショーツ10では、上記の編み組織を有する本体編地14を採用しているため、着用時のフィット性(密着性)を低下させず、且つ、メッシュ部17から肌が透け過ぎない下着を実現することができる。なお、本実施形態において、「密着」とは、着用状態におけるフィット性を意味しており、ガードル等の補整機能を有する衣類のように高い補整力が発揮される着用状態を意味するものではない。
【0074】
ショーツ10では、身生地部16と身生地部16に挟まれるように細長いメッシュ部17が繰り返し配置されているため、身生地部16とメッシュ部17との伸び易さの違いが緩和され、編地全体としてのフィット性が低下しないようにしつつ、身頃の広い範囲にメッシュ部を設けることができる。その結果、編地の広範囲にわたり、メッシュ部17を形成しても適度な伸長回復性を備える下着を実現することができる。
【0075】
例えば、糸を細くしてメッシュ部を編成する方法を用いて、本実施形態の本体編地のように、身生地部16とメッシュ部17とが交互に現れるように編成すると、身生地部とメッシュ部との伸度差が大きくなり、着用状態においてメッシュ部が身生地部よりもかなり伸ばされてしまい、結果的に伸長回復性の低下を招くことが予想される。
【0076】
ショーツ10では、着用時において、メッシュ部17と肌との間に隙間が形成され易いように、身生地部16よりも厚みが薄くなるように形成されている。これにより、メッシュ部17と肌との間に隙間が形成され易くし、空気の流れを阻害するものを減らして放熱を促進させ、着用者の爽快感が向上されている。
【0077】
本体編地14は、臀部全体を覆うように形成され、メッシュ部17は、臀裂に対応する位置から左右両脇側まで連続して配置されている。メッシュ部17が臀裂近傍から左右両脇側まで連続して形成されているため、臀裂近傍の空気をメッシュ部17に沿って左右方向に逃がすことができる。これにより、放熱性を高め、着用者の爽快感を一層向上させることができる。
【0078】
ショーツ10には、左右の脚をそれぞれ挿通すべき左右一対の裾口が形成されており、メッシュ部は、左右一対の裾口間で連続して形成されている。これにより、裾口の周縁部に形成されたメッシュ部に沿って、空気を流入または流出させることが可能となり、通気性を一層向上させることができる。
【0079】
本実施形態では、本体編地に、芯糸を綿糸で被覆した糸であるCSYが挿入され、CSYが、身生地部17において肌側に露出するように編みこまれている。これにより、吸湿性を有する綿糸を肌側に多く設けることで、着用者の汗を吸収しやすくすることができる。CSYは、綿繊維でカバーリングされているため、吸水性、保温性の確保に有効である。綿繊維の代わりにリヨセルなどの天然繊維を用いることも可能である。
【0080】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
【0081】
上記実施形態のショーツ10では、身生地部16及びメッシュ部17が左右方向に延在し、上下方向に繰り返し配置されているボーダー状に形成されているが、身生地部16及びメッシュ部17は、その他の配置でもよい。例えば、ストライプ(縦縞状)、格子柄、チェック柄、千鳥格子状に、身生地部及びメッシュ部を形成してもよい。
【符号の説明】
【0082】
10…ショーツ(下着)
11…前身頃
12…後身頃
13…股部
14…本体編地
15…脇線
16…身生地部(第1の身生地部)
17…メッシュ部(第2の身生地部)
20…パイル編み領域
30…周囲領域
43,44…ウエスト口
45〜47…裾口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用時に肌にフィットするように形成された下着であって、
異なる厚みを有する第1の身生地部と第2の身生地部とが、一体的に交互に編成された端始末不要な本体編地を備え、
前記第2の身生地部は、着用時に前記第1の身生地部よりも相対的に肌との間に隙間が形成され易いように、前記第1の身生地部よりも厚みが薄くなるように形成されている、
下着。
【請求項2】
前記本体編地は、臀部全体を覆うように形成され、
前記第2の身生地部は、臀裂に対応する位置から左右両脇側まで連続して配置されている、
請求項1に記載の下着。
【請求項3】
前記本体編地は、左右の脚がそれぞれ挿通される左右一対の裾口のうち、少なくとも前裾部分を形成し、
前記第2の身生地は、左右一対の前記前裾間を繋ぐように連続して形成されている、
請求項1または2に記載の下着。
【請求項4】
前記本体編地は、左右の脚がそれぞれ挿通される左右一対の裾口のうち、少なくとも臀部下部に位置する後裾部分を形成し、
前記第2の身生地部は、臀裂に対応する位置から左右一対の前記後裾間を繋ぐように連続して形成されている、
請求項1から3のいずれか1項に記載の下着。
【請求項5】
前記本体編地は、着用者のウエスト部分が挿通されるウエスト口を形成し、
前記第2の身生地部は、左右の両脇部分から前中心側または後中心側のウエスト口へ連続して形成されている、
請求項1から4のいずれか1項に記載の下着。
【請求項6】
前記第1の身生地部は、前記第2の身生地部の幅と同等または前記第2の身生地部の幅よりも大きくなるように形成されている、
請求項1から5のいずれか1項に記載の下着。
【請求項7】
前記第1の身生地部は、基本組織と挿入組織とによって編成され、
前記第2の身生地部は、前記基本組織によって編成されている、
請求項1から6のいずれか1項に記載の下着。
【請求項8】
前記基本組織は、弾性糸と非弾性糸を1コースまたは2コース進むごとに互いにルーピピングすることによって形成されている、
請求項7に記載の下着。
【請求項9】
前記本体編地には、芯糸を綿糸で被覆した糸であるCSYが挿入され、
前記CSYは、前記第1の身生地部において肌側に露出するように編みこまれている、
請求項1〜8のいずれか1項に記載の下着。
【請求項10】
前記第2の身生地部は、メッシュ状に形成されている、
請求項1〜9のいずれか1項に記載の下着。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−100610(P2013−100610A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243868(P2011−243868)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(306033379)株式会社ワコール (116)
【Fターム(参考)】