説明

下等真核生物におけるガラクトシル化された糖タンパク質の産生

【課題】末端β−ガラクトース残基を有すること及びフコース残基及びシアル酸残基を本質的に欠失していることを特徴とするヒト様糖タンパク質を産生する新規下等真核宿主細胞を提供する。治療用糖タンパク質として使用できる、組換え型下等真核宿主細胞における受容体基質への、UDP−ガラクトースからのガラクトース残基の転移を触媒するための方法も提供する。
【解決手段】β−ガラクトシルトランスフェラーゼ活性をコード化する単離された核酸分子と、UDP−ガラクトース輸送活性、UDP−ガラクトースC4エピメラーゼ活性又はガラクトキナーゼ活性又はガラクトース−1−リン酸ウリジルトランスフェラーゼをコード化する少なくとも1つの単離された核酸分子とを含む、ヒト様糖タンパク質を産生する組換え型下等真核宿主細胞。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2003年2月20日に出願された米国特許出願第10/371,877号の一部継続出願であり、前記特許出願は、米国特許法第119(e)に基づいて、2000年6月28日に出願された米国仮出願第60/214,358号、及び2001年3月30日に出願された米国仮出願第60/279,997号の利益を主張する、2001年6月27日に出願された米国特許出願第09/892,591号の一部継続出願であり、これらは各々、その全体を参照により本明細書に組み込まれる。本願は、2001年12月27日に出願した米国仮出願第60/344,169号の利益を主張する、2002年12月24日に出願されたPCT/US02/41510の一部継続出願であり、前記出願は各々、その全体を参照により本明細書に組み込まれる。本願は、2004年4月15日に出願した米国仮出願第60/562,424号に対する優先権も主張し、前記出願は、その全内容が参考文献により本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明は、下等真核生物におけるタンパク質のグリコシル化の分野、特に末端のガラクトース残基を有する糖タンパク質の産生に関する。本発明はさらに、グリカン上でのガラクトシル転移に関与する酵素をコード化する遺伝子を含む新規の宿主細胞及び、治療剤として特に有用な糖タンパク質の産生に関する。
【背景技術】
【0003】
酵母及び糸状菌はいずれも、組換えタンパク質の細胞内産生及び分泌型産生の両者にうまく使用されてきた(Cereghino,J.L.及びJ.M.Cregg 2000 FEMS Microbiology Reivews 24(1): 45−66; Harkki,A.ほか 1989 Bio−Technology 7(6): 596; Berka,R.M.ほか 1992 Abstr.Papers Amer.Chem.Soc.203: 121−BIOT; Svetina,M.ほか 2000 J.Biotechnol.76(2−3): 245−251)。K.ラクティス(K.lactis)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、ピキア・メタノリカ(Pichia methanolica)及びハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)などのさまざまな酵母は、高い細胞密度まで生育でき、多量の組換え型タンパク質を分泌できるため、真核生物発現系として特に重要な役割を担ってきた。同様に、アスペリギルス・ニガー(Aspergillus niger)、フザリウム種(Fusarium sp。)、ノイロスポラ・クロッサ(Neurospora crossa)及びその他の糸状菌は、産業スケールで糖タンパク質を効率よく産生するのに使用されてきた。しかしながら、これらの真核微生物のいずれかにおいて発現する糖タンパク質は、動物におけるそれとはN−グリカン構造において実質的に異なっている。このことは、グリコシル化した治療用タンパク質の産生のための宿主として酵母又は糸状菌の使用を妨げてきた。
【0004】
目下のところ、酵母、糸状菌、植物、藻類及び昆虫の細胞系(下等真核生物)などの発現系は、哺乳類系よりも安全で迅速であり、かつより高い生成物力価を生じる治療用タンパク質の産生のために研究されてきている。これらの系は、N結合したオリゴ糖合成における共通の分泌経路を共有する。最近、P.パストリス(P.pastoris)の分泌経路が遺伝子工学的に改変でき、ヒト及び他の高等哺乳類におけるN−グリカンの早期のプロセシングを模倣する連続したグリコシル化反応が実施できることが示された(Choiほか、Proc Natl Acad Sci USA 2003年4月29日号;100(9):5022−5027)。さらに、酵母P.パストリスにおける分泌経路を改変することを通じてガラクトースを欠失する複雑なN−グリカンを有するヒト糖タンパク質の産生が示された(Hamiltonほか、Science.2003年8月29日号;301(5637):1244−1246)。哺乳類細胞においては、更なる成熟にはガラクトース転移が関与している。したがって、酵母及び下等真核生物からの複雑なグリコシル化経路の成熟は、β1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼの機能的発現を必要とする。
【0005】
UDP−Gal:βGlcNAcβ1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ(β1,4GalT)の組換え発現は哺乳類細胞、昆虫細胞(例、Sf−9)及び酵母細胞において示されてきた。(内在性II型膜ドメインを欠失する)ヒトβ1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼI(EC2.4.1.22)の可溶性形態をコード化するcDNAもメチロトローフの酵母P.パストリスにおいて発現された(Malissardほか Biochem Biophys Res Commun 2000年1月7日号;267(1):169−173)。さらに、非常に低い変換効率で酵母ゴルジ体において前記酵素のある程度の活性を示す、ヒトβ1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ(Gal−Tf)の触媒作用ドメインへ融合されたScMnt1pをコード化する遺伝子融合体が発現された(Schwientekほか、J Biol Chem 1996年2月16日号;271(7):3398−3405)。したがって、末端GlcNAcを含有するグリカンを産生する宿主の分泌経路へβ1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ(β1,4GalT)を向けることは、ある種のガラクトース転移が生じることが期待される。しかしながら、より高等の真核生物における複雑なグリカンの形成は、哺乳類細胞においてGalTIと競合して作用することがわかっているマンノシダーゼIIの作用が関与している(Fukutaほか、Arch Biochem Biophys 2001年8月1日号;392(1):79−86)。したがって、GalTの成熟前の作用は、前記分泌経路における複雑なガラクトシル化糖タンパク質の形成を防止し、主としてハイブリッドグリカンを産生することが期待される。
【0006】
哺乳類糖タンパク質のN−グリカンは、典型的にガラクトース、フコース及び末端シアル酸を含む。これらの糖は、酵母及び糸状菌において産生される糖タンパク質に関して通常見られない。ヒトにおいて、ヌクレオチド糖前駆体(例、UDP−N−アセチルグルコサミン、UDP−N−アセチルガラクトサミン、CMP−N−アセチルノイラミン酸、UDP−ガラクトース、GDP−フコース等)がサイトゾル中で合成され、ゴルジ体へと輸送され、そこでこれらはグリコシルトランスフェラーゼによってN−グリカンへと組み込まれる(Sommers及びHirschberg、1981 J.Cell Biol 91(2): A406−A406; Sommers及びHirschberg 1982 J.Biol.Chem.257(18): 811−817; Perez及びHirschberg 1987 Methods in Enzymology 138: 709−715)。
【0007】
異種性のタンパク質発現系におけるグリコシル化エンジニアリングは、ヌクレオチド糖前駆体の合成に関与するさまざまな酵素の発現が関与していよう。酵素UDP−ガラクトース4−エピメラーゼは、糖ヌクレオチドUDP−グルコースをUDP−ガラクトースへ、C4のエピマー化を介して変換する。前記酵素は唯一の炭素源としてガラクトースを使用できる生物体において見られる。最近、二機能性酵素であるGal10pがUDP−グルコース4−エピメラーゼ及びアルドース1−エピメラーゼの両者の活性を有するサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)において精製された(Majumdarほか、Eur J Biochem 2000年2月号;271(4): 753−759)。
【0008】
UDP−ガラクトース輸送体(UGT)は、UDP−ガラクトースをサイトゾルからゴルジ体の内腔まで輸送する。2つの異種性遺伝子である、シゾサッカロミイセス・ポムベ(Shizosaccharomyces pombe)からα1,2−ガラクトシルトランスフェラーゼ(α1,2GalT)をコード化するgmal2(+)及びヒトUDP−ガラクトース輸送体をコード化するhUGT2は、ガラクトシル化に必要な細胞内条件を検討するために、S.セレビシエにおいて機能的に発現された。タンパク質ガラクトシル化とUDP−ガラクトース輸送活性との相関により、UDP−Gal輸送体の外来性の供給がS.セレビシエにおける効率的なガラクトシル化に重要な役割を果たすことが示された(Kainuma,1999 Glycobiology 9(2):133−141)。同様に、S.ポムベ由来のUDP−ガラクトース輸送体がクローニングされた(Aoki,1999 J.Biochem.126(5):940−950; Segawa,1999 Febs Letters 451(3): 295−298)。
【0009】
グリコシル転移反応は典型的に、ヌクレオシドの二リン酸塩又は一リン酸塩である副産物を生じる。一リン酸塩は対抗輸送メカニズムによってヌクレオシドの二リン酸塩糖と交換に直接輸送できるのに対し、二リン酸ヌクレオシド(例、GDP)は、輸送される前に、リン酸分解酵素(例、GDPase)によって開裂されてヌクレオシドの一リン酸塩及び無機リン酸塩が生じなければならない。この反応は、効率的なグリコシル化にとって重要であり、例えば、S.セレビシエ由来のGDPaseはマンノシル化に必要であることがわかっている。しかしながら、前記GDPaseはUDPに対して活性が90%低下している(Berninsoneほか、1994 J.Biol.Chem.269(1): 207−211)。下等真核生物はゴルジ体ベースの糖タンパク質合成のためにUDP−糖前駆体を利用しないため、ゴルジ体においてUDP特異的ジリン酸分解酵素活性を典型的に欠いている。細胞壁の多糖類へ(UDP−ガラクトースから)ガラクトース残基を付加することがわかっているS.セレビシエは、特異的UDPase活性を有することがわかっていて、このような酵素についての有力な必要性を示している(Berninsoneほか、1994)。
【0010】
UDPはグリコシルトランスフェラーゼの有力な阻害剤であることが公知であり、このグリコシル化の副産物の除去はゴルジ体の内腔におけるグリコシルトランスフェラーゼの阻害を防止するのに重要であり得る(Khataraほか、1974)。Berninsone,Pほか 1995 J.Biol.Chem.270(24): 14564−14567; Beaudet,L.ほか 1998 Abc Transporters: Biochemical Cellular, and Molecular Aspects.292: 397−413を参照してほしい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Choiほか、Proc Natl Acad Sci USA 2003年4月29日号;100(9):5022−5027
【非特許文献2】Hamiltonほか、Science.2003年8月29日号;301(5637):1244−1246
【非特許文献3】Malissardほか Biochem Biophys Res Commun 2000年1月7日号;267(1):169−173
【非特許文献4】Schwientekほか、J Biol Chem 1996年2月16日号;271(7):3398−3405
【非特許文献5】Fukutaほか、Arch Biochem Biophys 2001年8月1日号;392(1):79−86
【非特許文献6】Sommers及びHirschberg、1981 J.Cell Biol 91(2): A406−A406; Sommers及びHirschberg 1982 J.Biol.Chem.257(18): 811−817; Perez及びHirschberg 1987 Methods in Enzymology 138: 709−715
【非特許文献7】Majumdarほか、Eur J Biochem 2000年2月号;271(4): 753−759
【非特許文献8】Kainuma,1999 Glycobiology 9(2):133−141
【非特許文献9】Aoki,1999 J.Biochem.126(5):940−950; Segawa,1999 Febs Letters 451(3): 295−298
【非特許文献10】Berninsoneほか、1994 J.Biol.Chem.269(1): 207−211
【非特許文献11】Khataraほか、1974)。Berninsone,Pほか 1995 J.Biol.Chem.270(24): 14564−14567; Beaudet,L.ほか 1998 Abc Transporters: Biochemical Cellular, and Molecular Aspects.292: 397−413
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、必要なことは、UDP−ガラクトースの十分なプールから、治療用の糖タンパク質として使用するための好ましい受容体基質へのガラクトース残基の転移を触媒する方法である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、末端β−ガラクトース残基を有すること及びヒト様糖タンパク質においてフコース残基及びシアル酸残基が本質的に欠失していることを特徴とするヒト様タンパク質を産生する新規の下等真核宿主細胞を提供する。
【0014】
ある実施態様において、本発明は、β−ガラクトシルトランスフェラーゼ活性をコード化する単離された核酸分子と、UDP−ガラクトース輸送活性、UDP−ガラクトースC4エピメラーゼ活性又はガラクトキナーゼ活性又はガラクトース−1−リン酸ウリジルトランスフェラーゼをコード化する少なくとも1つの単離された核酸分子とを含む、ヒト様糖タンパク質を産生する組換え型下等真核宿主細胞を提供する。 本発明は、末端GlcNAc残基を含む糖タンパク質の、トリマンノース中心上にあるGlcNAcβ1,2−Manα1,3、GlcNAcβ1,4−Manα1,3、GlcNAcβ1,2−Manα1,6、GlcNAcβ1,4−Manα1,6、及びGlcNAcβ1,6−Manα1,6からなる群から選択されるN結合したオリゴ糖分岐鎖へと、β−ガラクトース残基を転移できる、ヒト様糖タンパク質を産生する組換え型下等真核宿主細胞も提供する。別の実施態様において、本発明は、シアル酸転移のための受容体基質である糖タンパク質を産生する組換え型下等真核宿主細胞を提供する。
【0015】
本発明の別の態様において、本明細書は、末端β−ガラクトース残基を有すること及び前記糖タンパク質上にフコース残基及びシアル酸残基が本質的に欠失していることを特徴とするヒト様ヒト様糖タンパク質を含む組成物を提供する。ある実施態様において、前記糖タンパク質はGalGlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAc及びGalGlcNAcManGlcNAcからなる群から選択されるN結合したオリゴ糖を含む。
【0016】
別の実施態様において、内在性レベルより高いUDP−ガラクトースを産生する段階を含む、下等真核宿主細胞におけるヒト様糖タンパク質を産生するための方法が提供される。
【0017】
さらに別の実施態様において、フコース残基及びシアル酸残基のない状態においてハイブリッド又は複雑な糖タンパク質上にガラクトース残基を転移させる段階を含む、下等真核宿主細胞においてヒト様糖タンパク質組成物を作製するための方法が提供される。
【0018】
本発明の方法にしたがって、少なくとも10%、好ましくは33%、より好ましくは60%以上のガラクトシル化した糖タンパク質組成物が産生される。
【0019】
本発明はさらに、GalNAcトランスフェラーゼ活性を発現する組換え型下等真核宿主細胞を提供する。
【0020】
本発明は、異種性のUDPase活性をコード化する遺伝子を発現する組換え型下等真核宿主細胞も提供する。
【0021】
さらに、本発明は、(a)配列番号14、(b)配列番号13のドナーヌクレオチド結合部位のアミノ酸残基と少なくとも約90%類似しているもの、(c)配列番号14と少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%又は少なくとも99.9%同一である核酸配列、(d)配列番号13のアミノ酸配列を有する保存されたポリペプチドをコード化する核酸配列、(e)配列番号13と少なくとも78%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%又は少なくとも99.9%同一のポリペプチドをコード化する核酸配列、(f)ストリンジェントな条件下で配列番号13とハイブリダイズする核酸配列、及び(g)長さにおいて少なくとも60個の連続したヌクレオチドである(a)ないし(f)のうちのいずれか1つの断片を含む核酸配列からなる群から選択される核酸配列を含むか又は前記核酸配列からなる単離されたポリヌクレオチドを提供する。
【0022】
本明細書には、配列番号48ないし配列番号52の保存された領域からなる群から選択される核酸配列を含むか又は前記核酸配列からなり、前記コード化されたポリペプチドがガラクトシル化した糖タンパク質の産生のためにUDP−グルコース及びUDP−ガラクトースの相互変換を触媒することに関与している、修飾されたポリヌクレオチドも提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1A】hGalTIをコード化する組み込みベクターpXB53のプラスミドマップの構築を示す。
【図1B】hGalTIをコード化する組み込みベクターpXB53のプラスミドマップの構築を示す。
【図2】図2は、S.ポムベGalエピメラーゼ(SpGalE)及びhGalTIをコード化する組み込みベクターpRCD425のプラスミドマップの構築を示す。
【図3A】キイロショウジョウバエUDP−ガラクトーストランスポーター(DmUGT)をコード化する組み込みベクターpSH263のプラスミドマップの構築を示す。
【図3B】キイロショウジョウバエUDP−ガラクトーストランスポーター(DmUGT)をコード化する組み込みベクターpSH263のプラスミドマップの構築を示す。
【図4】図4は、hGalTI、SpGalE及びDmUGTをコード化する組み込みベクターpRCD465のプラスミドマップの構築を示す。
【図5】図5は、ScMnn2/SpGalE/hGalTI融合タンパク質をコード化する組み込みベクターpRCD461のプラスミドマップの構築を示す。
【図6A】SpGalEのアミノ酸配列を示す。
【図6B】SpGALEのコード化配列を示す。
【図7】図7は、S.ポムベ、ヒト、大腸菌及びS.セレビシエのエピメラーゼの配列比較を示す。
【図8A】N−グリカンGlcNAcManGlcNAcの質量に対応する1342m/z[A]でのピークを示すRDP30−10(pRCD257で形質転換されたRDP27)において産生されたK3から放出されたN−グリカンのMALTI−TOF−MS分析である。
【図8B】N−グリカンGalGlcNAcManGlcNAcの質量に対応する1505m/z[B]でのピーク及びGalGlcNAcManGlcNAcの質量に対応する1662m/z[C]でのピークを示すRDP37(pXB53で形質転換されたRDP30−10)において産生されたK3から放出されたN−グリカンのMALDI−TOF−MS分析である。
【図9A】N−グリカンGalGlcNAcManGlcNAcの質量に対応する及びGlcNAcManGlcNAcの質量に対応する1501m/z[B]でのピークを示すpXB53で形質転換されたYSH−44において産生されたK3から放出されたN−グリカンのMALDI−TOF−MS分析である。
【図9B】N−グリカンGalGlcNAcManGlcNAcの質量に対応する1501m/z[B]でのピーク、GalGlcNAcManGlcNAcの質量に対応する1663m/z[C]でのピーク、及びGlcNAcManGlcNAcの質量に対応する1339m/z[A]でのピークを示すpXB53及びpRCD395で形質転換されたYSH−44において産生されたK3から放出されたN−グリカンのMALDI−TOF−MS分析である。
【図10A】N−グリカンGalGlcNAcManGlcNAcの質量に対応する1622m/z[K]での優勢なピーク及びGlcNAcManGlcNAcの質量に対応する1460m/z[H]でのピークを示すpRCD352及びpXB53で形質転換されたRDP39−6(P.パストリスPBP−3(米国特許出願第2004018590号))において産生されたK3から放出されたN−グリカンのMALDI−TOF−MSである。
【図10B】N−グリカンGlcNAcManGlcNAcの質量に対応する1461m/z[H]での優勢なピークを示すα1,2及びβ1,4−ガラクトシダーゼによる切断後のRDP39−6において産生されたK3から放出されたN−グリカンのMALDI−TOF−MAS分析である。
【図11】図11は、UDP−ガラクトース輸送活性を比較する多様なP.パストリス株において産生されたK3から単離されたN−グリカンのMALDI−TOF−MS分析である。パネルAは、RDP52と呼ばれる、Mnn2(s)/hGalTI及びSpGalEをコード化するベクターpRCD425で形質転換したP.パストリスYSH−44のN−グリカン特性を示す。パネルBは、RDP69と呼ばれる、SpUGTをコード化するベクターpRCD425及びpRCD393で形質転換したP.パストリスYSH−44のN−グリカン特性を示す。パネルCは、RDP70と呼ばれる、hUGT2をコード化するベクターpRCD425及びpSH262で形質転換したP.パストリスYSH−44のN−グリカン特性を示す。パネルDは、RDP71と呼ばれる、hUGTIをコード化するベクターpRCD425及びpSH264で形質転換したP.パストリスYSH−44のN−グリカン特性を示す。パネルEは、RDP57と呼ばれる、DmUGTをコード化するベクターpRCD425及びpSH263で形質転換したP.パストリスYSH−44のN−グリカン特性を示す。
【図12】図12は、β−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ活性を比較する種々のP.パストリス株において産生されたK3から放出されたN−グリカンのMALDI−TOF−MS分析である。パネルAは、RDP57と呼ばれる、DmUGTをコード化するベクターpRCD425及びpSH263で形質転換したP.パストリスYSH−44のN−グリカン特性を示す。パネルBは、RDP72と呼ばれる、Mnn2(s)/hGalTI及びSpGalEをコード化するベクターpRCD440及びDmUGTをコード化するpSH263で形質転換したP.パストリスYSH−44のN−グリカン特性を示す。パネルCは、RDP73と呼ばれる、Mnn2(s)/hGalTIII及びSpGalEをコード化するベクターpRCD443及びDmUGTをコード化するpSH263で形質転換したP.パストリスYSH−44のN−グリカン特性を示す。
【図13】図13は、エピメラーゼ活性を比較する種々のP.パストリス株において産生されたK3から放出されたN−グリカンのMALDI−TOF−MS分析である。パネルAは、RDP65と呼ばれる、Mnn2(s)/hGalTI及びScGal10をコード化するベクターpRCD424及びDmUGTをコード化するpSH263で形質転換したP.パストリスYSH−44のN−グリカン特性を示す。パネルBは、RDP57と呼ばれる、DmUGTをコード化するベクターpSH263、及びpRCD425で連続して形質転換したP.パストリスYSH−44のN−グリカン特性を示す。パネルCは、RDP63と呼ばれる、ベクターpRCD425で及び次にDmUGTをコード化するベクターpSH263で連続して形質転換したP.パストリスYSH−44のN−グリカン特性を示す。パネルDは、RDP67と呼ばれる、Mnn2(s)/hGalTI及びhGalEをコード化するベクターpXB53及びpRCD438、及びDmUGTをコード化するpSH263で形質転換したP.パストリスYSH−44のN−グリカン特性を示す。
【図14】図14Aは、N−グリカンGalGlcNAcManGlcNAcの質量に対応する1663m/z[C]での優勢なピークを示すRDP80(pRCD465で形質転換されたP.パストリスYSH−44)において産生されたK3から放出されたN−グリカンのMALTI−TOF−MS分析である。図14Bは、N−グリカンGlcNAcManGlcNAcの質量に対応する1340m/z[A]での優勢なピークを示すβ1,4−ガラクトシダーゼ切断後のRDP80(pRCD465で形質転換されたP.パストリスYSH−44)において産生されたK3から放出されたN−グリカンのMALTI−TOF−MS分析である。図14Cは、N−グリカンNANAGalGlcNAcManGlcNAcの質量に対応する2227m/z[X]での優勢なピークを示す、RDP80において産生され、試験管内でCMP−NANAの存在下でのシアリルトランスフェラーゼとインキュベートされたN−グリカンのMALDI−TOF−MS分析である。
【図15A】P.パストリスYSH−44(コントロール)において産生されたK3から放出されたNリカンGlcNAcManGlcNAc[A]を示すMALDI−TOF−MS分析である。
【図15B】N−グリカンGalGlcNAcManGlcNAcの質量に対応する、1679m/z[C]で優勢なピークを示すRDP86(pRCD461(Mnn2(s)/SpGalE/hGalTI融合体)で形質転換されたP.パストリスYSH−44)において産生されたK3から放出されたN−グリカンのMALDI−TOF−MS分析である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書に特段の定義がなければ、本発明に関連して使用される科学用語及び技術用語は当業者によって共通して理解される意味を有するべきである。さらに、文脈によって必要とされない限り、単数形の用語は複数形を含むべきであり、複数形の用語は単数形を含むべきである。本発明の方法及び技術は、本分野で周知の従来の方法にしたがって一般に実施される。一般に、本発明に関連して使用される学名、及び本明細書に記載される生化学、酵素学、分子細胞生物学、微生物学、遺伝学並びにタンパク質及び核酸の化学及びハイブリダイゼーションの技術は、本分野で周知のものであり共通して使用される。本発明の方法及び技術は一般に、本分野で周知の従来の方法にしたがって、特段の記載がなければ、本明細書を通じて引用され論議される多様な一般的な及びより特定の参考文献において記載されるように実施される。例えば、SambrookほかMolecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989); Ausubelほか、Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates(1992及び、2002年までの補遺); Harlow及びLane Antibodies: A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1990); Introduction to Glycobiology,Maureen E.Taylor,Kurt Drickamer,Oxford Univ.Press(2003); Worthington Enzyme Mannual,Worthington Biochemical Corp.Freehold,NJ; Handbook of Biochemistry: Section A Proteins 第1巻 1976 CRC Press; Handbook of Biochemistry: Section A Proteins 第2巻 1976 CRC Press; Essentials of Glycobiology,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1999)を参照してほしい。本発明に関連して使用される学名、及び本明細書に記載の生化学及び分子生物学の実験室での手段及び技術は、本分野で周知のものであり、共通して使用される。
【0025】
本明細書に記載のすべての刊行物、特許及び他の参考文献は、参照によりここに組み込まれる。
【0026】
特段の記載がなければ、以下の用語は次の意味を有すると理解されるべきである。
【0027】
本明細書で使用されるように、「K3」という語はヒトプラスミノーゲンのクリングル3ドメインを指す。
【0028】
ここで使用されているように、「N−グリカン」は、N結合したオリゴ糖を指し、例えば、ポリペプチドのアスパラギン残基へのアスパラギン−N−アセチルグルコサミン結合によって結合されるものである。N−グリカンは、ManGlcNAcの共通の五糖類中心を有する(「Man」はマンノースを指し、「Glc」はグルコースを指し、「NAc」はN−アセチルを指し、GlcNAcはN−アセチルグルコサミンを指す。)。N−グリカンは、前記ManGlcNAc(「Man3」)中心構造へ付加された周辺の糖(例、GlcNAc、ガラクトース、フコース及びシアル酸)を含む分岐鎖(アンテナ)の数に関して異なる。N−グリカンは、それらの分岐した構成要素にしたがって分類される(例、高マンノース、複雑な又はハイブリッド)。「高マンノース」型のN−グリカンは5個以上のマンノース残基を有する。「複雑な」型のN−グリカンは典型的に、1,3マンノースに結合した少なくとも1つのGlcNAc及び「トリマンノース」中心の1,6マンノースアームに結合した少なくとも1つのGlcNAcを有する。「トリマンノース中心」は、Man3構造を有する五糖類中心である。これはしばしば「マンノース欠乏(paucimannose)」構造と呼ばれる。複雑なN−グリカンは、場合によりシアル酸又は誘導体(「NeuAc」、「Neu」はノイラミン酸を指し、「Ac」はアセチルを指す。)で修飾されたガラクトース(「Gal」)残基も有し得る。複雑なN−グリカンは、また「二分している」GlcNAc及び中心フコース(「Fuc」)を含む鎖内置換を有し得る。複雑なN−グリカンは、またしばしば「多重アンテナ性グリカン」と呼ばれる、「トリマンノース中心」上の複数のアンテナを有し得る。「ハイブリッド」N−グリカンは、トリマンノース中心の1,3マンノースアームの末端にある少なくとも1つのGlcNAc、及びトリマンノース中心の1,6マンノースアームの0個以上のマンノースを有する。
【0029】
本明細書で使用される略語は、本分野で共通して使用されるものであり、例えば前述の糖の略語を参照してほしい。他の共通の略語には、ペプチドN−グリコシダーゼF(EC3.2.2.18)を指す「PNGase」、ガラクトシルトランスフェラーゼを指す「GalT」、UDP−ガラクトース:β−N−アセチルグルコサミンβ1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼを指す「β1,4GalT」が含まれる。さまざまな種からのβ−ガラクトシルトランスフェラーゼは、次のように省略される。すなわち、「hGal」はヒトβ1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼを指し、「bGalT」はウシβ1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼを指し、「XlGalT」はアフリカツメガエル(Xenopus leauis)β1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼを指し、「CeCalT」は線虫(C.elegans)β1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼを指す。「GalNAcT」はUDP−GalNAc−GlcNAcβ−1,4−N−アセチルがラクトサミニルトランスフェラーゼを指す。
【0030】
ここで使用されているように、「UGT」という語はUDP−ガラクトース輸送体を指す。「SpGalE」はS.ポムベUDP−ガラクトース4−エピメラーゼを指し、「hGalE」はヒトUDP−ガラクトース4−エピメラーゼを指し、「ScGal10」はS.セレビシエUDP−ガラクトース4−エピメラーゼを指し、「EcGalE」は大腸菌(E.coli)UDP−ガラクトース4−エピメラーゼを指す。
【0031】
本明細書で使用されるように、「UDP−Gal」という語はUDP−ガラクトースを指し、「UDP−GalNAc」という語はUDP−N−アセチルガラクトサミンを指す。
【0032】
N結合した糖タンパク質は、前記タンパク質にあるアスパラギン残基のアミド窒素へ結合したN−アセチルグルコサミン残基を含有する。糖タンパク質で見つかった優勢な糖は、グルコース、ガラクトース、マンノース、フコース、N−アセチルガラクトサミン(GalNAc)、N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)及びシアル酸(例、N−アセチルノイラミン酸(NANA))である。前記糖群の加工は、小胞体の内腔で同時翻訳的に生じ、N結合した糖タンパク質に向けてゴルジ装置において続行する。
【0033】
ここで使用されているように、「ヒト様」糖タンパク質という語は、ヒトのN結合したオリゴ糖合成において見つかった糖タンパク質に似たタンパク質に共有結合した修飾されたN−グリカンを指す。複雑なN−グリカン及びハイブリッドN−グリカンは、ヒトグリコシル化で見つかった中間体である。これらの中間体に共通なのは、マンノース欠乏(paucimannose)中心、五糖類中心、又は単にMan3若しくはMan3とも呼ばれるManGlcNAc中心構造である。それゆえ、ヒト様糖タンパク質は少なくともMan3中心構造を有する。
【0034】
ここで使用されているように、「1,6マンノシルトランスフェラーゼ活性を惹起する(imitiate)」という語は、Och1pによってα1,6結合とともに惹起される外側鎖形成におけるトリマンノース中心のManα1,3アームへ典型的に付加された酵母特異的グリカン残基を指す。
【0035】
ポジティブモードにおけるMALDI−TOF−MSによって測定されるN−グリカンへのガラクトース残基の転移モル%は、総中性N−グリカンのモル%に関するモル%ガラクトース転移を指す。K及びNaなどの特定の陽イオン付加生成物は通常、個々の付加生成物の分子量だけ前記N−グリカンの重量を増加する溶出されたピークを伴っている。
【0036】
ここで使用されているように、「分泌経路」という語は、細胞質から小胞体(ER)及びゴルジ装置の区画への生まれたてのポリペプチド鎖の分子の流れに次ぐ、脂質結合したオリゴ糖前駆体及びN−グリカン基質が連続的に露出される、多様なグリコシル化酵素の組み合せ系を指す。酵素は、この経路に沿って局在化されるといわれる。酵素Yの前の脂質結合したグリカン又はN−グリカンに作用する酵素Xは、酵素Yに対して「上流」であるか又は「上流」に作用するといわれ、同様に、酵素Yは酵素Xから「下流」であるか又は「下流」に作用する。
【0037】
本明細書で使用されるように、「変異」という語は、例えばグリコシル化関連酵素の遺伝子産物の核酸配列又はアミノ酸配列におけるいずれかの変化を指す。
【0038】
「ポリヌクレオチド」又は「核酸分子」という語は、少なくとも長さ10塩基のヌクレオチドのポリマー形態を指す。前記用語には、DNA分子(例、cDNA又はゲノムDNA若しくは合成DNA)及びRNA分子(例、mRNA又は合成RNA)並びに非天然ヌクレオチドアナログ、非天然ヌクレオシド間結合又はその両者を含有するDNA若しくはRNAのアナログが含まれる。前記核酸はトポロジー構造のいずれでもにありうる。例えば、前記核酸は、一本鎖、二本鎖、三本鎖、四本鎖、部分的に二本鎖、分岐鎖、ヘアピン状、環状又はパッドロックされた構造でありうる。前記用語には、DNAの一本鎖形態及び二本鎖形態が含まれる。
【0039】
特段の記載がなければ、「配列番号Xを含む核酸」は、その少なくとも一部が(i)配列番号Xの配列、又は(ii)配列番号Xと相補的な配列、のいずれかを有する核酸を指す。前記2つの間の選択は文脈によって指図される。例えば、もし前記核酸がプローブとして使用されれば、前記2つの間の選択は、前記プローブが望ましい標的に相補的である必要性によって必然的に決定する。
【0040】
「単離された」若しくは「実質的に純粋な」核酸若しくはポリヌクレオチド(例、RNA、DNA又は混合されたポリマー)は、天然のポリヌクレオチドの宿主細胞において天然のポリヌクレオチドが天然において伴っている他の細胞内成分(例えば天然のポリヌクレオチドが天然において伴っているリボソーム、ポリメラーゼ及びゲノム配列)から実質的に分離されたものである。前記用語は、(1)天然にある環境から採取されている、(2)「単離されたポリヌクレオチド」が天然においてみられる、ポリヌクレオチドの全部又は一部を伴っていない、(3)天然において結合していないポリヌクレオチドに機能可能に結合されている、又は(4)天然において存在しない、核酸又はポリヌクレオチドを包む。「単離された」又は「実質的に純粋な」という語は、組換え体又はクローニングされたDNA単離物、化学的に合成されるポリヌクレオチドアナログ、又は異種性の系によって生物学的に合成されたポリヌクレオチドアナログに関しても使用できる。
【0041】
しかしながら、「単離された」は、そのように記載された核酸又はポリヌクレオチドがそれ自体、その天然の環境から物理的に採取されたことを必ずしも必要としない。例えば、ある生命体のゲノムにおける内在性核酸配列は、異種性の配列(すなわち、この内在性核酸配列に天然において近接していない配列)が前記内在性核酸配列近くに置かれ、それによりこの内在性核酸配列の発現が変化する場合、本明細書において「単離された」とみなす。例として、非天然プロモーター配列はヒト細胞のゲノムにおける遺伝子の本来のプロモーターと置換でき、それによりこの遺伝子は発現パターンが変化する。この遺伝子は、それに本来隣接する配列の少なくとも一部から分離されたため、いまや「単離された」であろう。
【0042】
核酸は、天然において生じていないゲノムにおける対応する核酸へのなんらかの修飾を含有する場合も、「単離された」とされる。例えば、内在性のコード化配列が例えばヒト介入によって人工的に導入された挿入、欠失又は点変異を含有する場合、「単離される」とされる。「単離された核酸」には、異種性部位で宿主細胞染色体に組み込まれた核酸、エピソームとして存在する核酸構築物も含まれる。さらに、「単離された核酸」は、実質的に他の細胞内材料が存在し得ないか、又は組換え技術によって生じる場合、培地が実質的にありえないか、又は化学的に合成される場合、化学的前駆体又は他の化合物が実質的にありえない。
【0043】
本明細書で使用されるように、基準核酸配列の「縮重変異体」という語句は、標準的な遺伝子コードにしたがって翻訳できて、基準核酸配列から翻訳されるものと同一のアミノ酸配列を提供する核酸配列を包含する。
【0044】
核酸配列の文脈における「配列同一性%」又は「同一である%」という語は、最大の一致になるよう配列比較して、同一である2つの配列における残基を指す。配列同一性の比較の長さは、少なくとも約9個のヌクレオチドの鎖、通常少なくとも約20個のヌクレオチド、より通常に少なくとも約24個のヌクレオチド、典型的には少なくとも約28個のヌクレオチド、より典型的には少なくとも約32個のヌクレオチド、好ましくは少なくとも約36個以上のヌクレオチドにわたり得る。ヌクレオチド配列同一性を測定するのに使用できる本分野で公知の多数の異なるアルゴリズムがある。例えば、ポリヌクレオチド配列はWisconsin Package Version 10.0,Genetics Computer Group(GCG),Madison,WisconsinにおけるプログラムであるFASTA、Gap又はBestfitを使用して比較できる。FASTAは、質問配列と検索配列の間の最良の重なりの領域に関する配列比較及び配列同一性%を提供する(Pearson,1990)。例えば、核酸配列間の配列同一性%は、そのデフォルト因子(6の言語サイズ及びスコアリングマトリクスについてのNOPAM因子)によるFASTAを使用して、又は本明細書に参照により組み込まれるGCG Version 6.1により提供されるデフォルト因子によるGapを使用して決定できる。
【0045】
核酸又はその断片を指すとき、「実質的な相同性」又は「実質的な類似性」という語は、別の核酸(又はその相補的な鎖)と適切なヌクレオチドの挿入又は欠失と最適に配列比較して、前述のように、FASTA、BLAST又はGapなどの配列同一性のいずれかの周知のアルゴリズムによって測定されるところの、前記ヌクレオチド塩基の少なくとも約50%、より好ましくは60%、通常前記ヌクレオチド塩基の少なくとも約70%、より通常には少なくとも約80%、好ましくは少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%、96%、97%、98%又は99%におけるヌクレオチド配列同一性があることを指す。
【0046】
あるいは、核酸又はその断片が別の核酸、別の核酸の鎖又はその相補的な鎖と、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする場合、実質的な相同性又は類似性が存在する。核酸ハイブリダイゼーション実験の文脈における「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」及び「ストリンジェントな洗浄条件」は、多くの異なる物理的因子に依存する。核酸ハイブリダイゼーションは、塩の濃度、温度、溶媒、ハイブリダイズする種の塩基組成、相補的領域の長さなどの条件によって影響を受けるであろうし、そのことは当業者によって簡単に正しく認識されるであろう。当業者は、ハイブリダイゼーションの特定のストリンジェント性に達するためにこれらの因子をいかに変動させるかについて知っている。
【0047】
一般に、「ストリンジェントなハイブリダイゼーション」は、条件の特定のセットの下で、特定のDNAハイブリッドについて融点温度(T)から約25℃低い温度で実施される。「ストリンジェントな洗浄」は、条件の特定のセットの下で、特定のDNAハイブリッドについてのTよりも約5℃低い温度で実施される。前記Tは、完全に符合したプローブへ標的配列の50%がハイブリダイズする温度である。本明細書において参照により組み込まれる前述のSambrookほか、9.51ページを参照してほしい。本明細書の目的のため、「高いストリンジェント性条件」は、6×SSC(20×SSCが3.0MNaCl及び0.3Mクエン酸ナトリウムを含有する場合)、65℃で8時間ないし12時間1%SDSにおける水性ハイブリダイゼーション(すなわち、ホルムアミドなし)、その後、65℃で20分間0.2×SSC、0.1%SDSにおける2回洗浄としての溶液相ハイブリダイゼーションについて定義される。65℃でのハイブリダイゼーションが、ハイブリダイズしている配列の長さ及び同一性%を含む多くの因子によって、異なる割合で生じることは当業者によって正しく認識されるであろう。
【0048】
本発明の核酸(ポリヌクレオチドとも呼ばれる。)は、RNAのセンス鎖及びアンチセンス鎖の両方、cDNA、ゲノムDNA並びに前述の合成形態及びこれらの混合されたポリマーを含み得る。これらは、当業者により容易に認識されるように、化学的または生化学的に修飾され得、または非天然の又は誘導体化されたヌクレオチド塩基を含有し得る。このような修飾には、例えば、ラベル、メチル化、天然に存在するヌクレオチドの一つ以上をアナログと置換、荷電されていない結合(例、リン酸メチル、ホスホトリエステル、ホスホールアミデート、カルバメート等)、荷電された結合(例、ホスホールチオエート、ホスホロジチオエート等)、ペンダント部分(例、ポリペプチド)などのヌクレオチド間修飾、介入物(例、アクリジン、プソラーレン、等)、キレート剤、アルキル化剤、及び修飾された結合(例、αアノマー核酸等)が含まれる。また、水素結合または他の化学的相互作用を介する指定配列への結合能においてポリヌクレオチドを真似ている合成分子を含む。このような分子は本分野で公知であり、これは例えば前記分子の主鎖におけるリン酸結合をペプチド結合に置換することを含む。
【0049】
核酸配列へ適用される場合、「変異された」という語は、核酸配列におけるヌクレオチドが基準核酸配列と比較して挿入され、欠失され、又は荷電され得ることを意味する。単一の変化は座(点変異)でなされてもよく、又は複数のヌクレオチドが単一の座において挿入され、欠失され、又は荷電されてもよい。さらに、1つ以上の変化が、核酸配列内の遺伝子座のいずれの数でなされてもよい。核酸配列は本分野で公知のいずれかの方法によって変異されてよく、限定を加えるものではないが、「エラープローンPCR」(DNAポリメラーゼのコピー信頼性が低い場合、点変異の高い割合がPCR産物の全長に沿って得られるような条件下でPCRを実施するためのプロセスであり、例えばLeung,D.W.ほか、Technique、1、pp.11−15(1989)並びにCaldwell,R.C.及びJoyce G.F.、PCR Methods Applic.、2、pp.28−33(1992)を参照してほしい。)、及び「オリゴヌクレオチド指向型変異誘発」(興味の対象のいずれかのクローニングしたDNA断片における部位特異的変異の発生を可能にするプロセスであり、例えばReidhaar−Olson,J.F.及びSauer,R.T.ほか、Science、241、pp.53−57(1988)を参照してほしい。)などの変異誘発が含まれる。
【0050】
本明細書において使用される「ベクター」という語は、結合している別の核酸を輸送できる核酸分子を指すよう企図される。ベクターのあるタイプは「プラスミド」であり、さらなるDNAセグメントが連結され得る環状二本鎖DNAループを指す。他のベクターには、コスミド、バクテリア人工染色体(BAC)及び酵母人工染色体が含まれる。ベクターの別のタイプはウィルスベクターであり、さらなるDNAセグメントがウィルスゲノムへと連結され得る(以下により詳細に論議される。)。ある種のベクターは、それが導入されている宿主細胞において自己複製できる(例、宿主細胞において機能する複製元を有するベクター)。他のベクターは、宿主細胞への導入に際し、前記宿主細胞のゲノムに組込まれ、それにより宿主ゲノムに沿って複製される。さらに、ある種の好ましいベクターは、それらが機能可能に結合された遺伝子の発現を指令できる。このようなベクターは本明細書へ「組換え型発現ベクター」(又は単に「発現ベクター」)として参照される。
【0051】
「機能可能に結合された」発現調節配列は、前記発現調節配列が対象の遺伝子に近接して対象の遺伝子を制御する結合を、並びに、トランスで作用してまたは距離をおいて作用して対象の遺伝子を調節する発現調節配列を言う。
【0052】
本明細書で使用される「発現調節配列」という語は、機能可能に結合されたコード化配列の発現に影響を及ぼすのに必要なポリヌクレオチド配列を指す。発現調節配列は、核酸配列の転写、転写後事象及び翻訳を調節する配列である。発現調節配列には、適切な転写開始配列、終結配列、プロモーター配列及びエンハンサー配列、スプライシングシグナル及びポリアデニル化シグナルなどの効率よいRNAプロセシングシグナル、細胞質mRNAを安定化させる配列、翻訳効率性を強化する配列(例、リボソーム結合部位)、タンパク質安定性を強化する配列、及び望む場合、タンパク質分泌を強化する配列が含まれる。このような調節配列の性質は、宿主生命体によって異なっていて、原核生物においては、このような調節配列は一般に、プロモーター、リボソーム結合部位、転写終結配列を含む。「調節配列」という語は少なくとも、その存在が発現に不可欠である構成要素全部を含むよう企図され、その存在が有利である更なる構成要素(例えばリーダー配列及び融合パートナー配列)も含むことができる。
【0053】
本明細書で使用される「組換え型下等真核宿主細胞」(又は単に「宿主細胞」)という語は、組換えベクターが導入される細胞を指すよう企図される。このような用語は特定の対象細胞を指すだけでなく、このような細胞の子孫も指すよう企図される。子孫の世代において、変異または環境の影響によりある種の修飾が起こり得るため、そのような子孫は、実際、親細胞と同一でないこともあり得るが、しかし、本明細書で使用される「宿主細胞」の範囲内になおも含まれる。組換え宿主細胞は、培養中に生育した、単離された細胞又は細胞系であり得、又は生組織若しくは器官に存在する細胞であり得る。組換え宿主細胞には、酵母、菌、カラー・フラゲラータ(collar−flagellate、微胞子虫、アルベオラータ(alveolate)(例、渦鞭毛藻類)、ストラメノパイル(stramenopiles)(例、褐色藻類、原生動物)、紅藻植物(例、赤色藻類)、植物(例、緑色藻類、植物細胞、コケ)及び他の原生生物が含まれる。
【0054】
本明細書で使用される「ペプチド」という語は、短いポリペプチドを指し、例えば、典型的には長さ約50アミノ酸未満であるもの、より典型的には長さ約30アミノ酸未満であるものである。本明細書で使用される前記用語は、構造上の機能を模倣し、したがって生物学的機能を模倣するアナログ及び模倣体を包含する。
【0055】
「ポリペプチド」という語は、天然に存在するタンパク質及び天然に存在しないタンパク質の両者、これらの断片、変異体、誘導体及びアナログを包含する。ポリペプチドは単量体又は重合体であってもよい。さらに、ポリペプチドは、1つ以上の異なる活性を各々有する多数の異なるドメインを含み得る。
【0056】
「単離されたタンパク質」又は「単離されたポリペプチド」という語は、その由来又は出所によって、(1)元の状態において天然に伴っている成分を伴っていない、(2)純度を他の細胞物質の存在に関して判断して(例えば、同じ種からの他のタンパク質がない場合)、天然においてあり得ない純度で存在する、(3)異なる種の細胞によって発現される、又は(4)天然において存在しない(例えば、天然において見られるポリペプチドの断片であるか、又は天然において見られないアミノ酸アナログもしくは誘導体又は標準的なペプチド結合以外の結合を含む。)、タンパク質又はポリペプチドである。したがって、化学的に合成されたポリペプチド、またはポリペプチドが天然において存在する細胞とは別の細胞からの細胞システムにより合成されたポリペプチドは、天然において存在している成分から「単離されている」。ポリペプチド又はタンパク質は、本分野で周知のタンパク質精製技術を使用して、単離によって天然において存在する成分から実質的に単離し得る。このように定義されたように、「単離された」は、このように定義されたタンパク質、ポリペプチド、ペプチド又はオリゴペプチドが天然の環境から物理的に採取されていることを必須として要求しない。
【0057】
本明細書で使用される「ポリペプチド断片」という語は、全長のポリペプチドと比較してアミノ末端及び/又はカルボキシ末端の除去を有するポリペプチドを指す。好ましい実施態様において、前記ポリペプチド断片は、前記断片のアミノ酸配列がその天然において存在している配列に対応する位置と同じである、連続した配列である。断片は典型的に、少なくとも5、6、7、8、9又は10のアミノ酸長であり、好ましくは少なくとも12、14、16又は18アミノ酸長であり、より好ましくは少なくとも20のアミノ酸長であり、より好ましくは少なくとも25、30、35、40又は45のアミノ酸長であり、さらにより好ましくは少なくとも50又は60のアミノ酸長であり、さらにより好ましくは少なくとも70のアミノ酸長である。
【0058】
「修飾された誘導体」は、一次構造配列において実質的に相同であるポリペプチド又はその断片を指すが、これらのポリペプチド又はその断片は、例えばインビボもしくはインビトロでの化学的もしくは生化学的修飾を含み、又は天然のポリペプチドにおいて見つかっていないアミノ酸を組み込んでいる。このような修飾には、例えばアセチル化、カルボキシル化、リン酸化、グリコシル化、ユビキチン化、例えば放射性核種による標識化、および多様な酵素修飾が含まれ、これらは当業者によって容易に認識される。このような目的のために有用な、ポリペプチドを標識するための種々の方法及び種々の置換体又は標識がこの分野で知られていて、これらは、125I、32P、35S、及びHなどの放射性同位体、標識された抗リガンド(例えば抗体)に結合するリガンド、フルオロフォア、化学発光剤、酵素及び標識されたリガンドに対する特異的な結合対因子として機能できる抗リガンドを含む。標識の選択は、必要とされる感度、前記プライマーとの共役の簡便性、安定性の必要条件、及び入手可能な機器に依存している。ポリペプチドを標識するための方法は本分野で周知である。本明細書によって参照により組み込まれるAusubelほか、1992を参照。
【0059】
「融合タンパク質」という語は、異種性のアミノ酸配列へ結合したポリペプチド又は断片を含むポリペプチドを指す。融合タンパク質は、それらが2つ以上の異なるタンパク質から2つ以上の望ましい機能要素を含有するよう構築できるため、有用である。融合タンパク質は対象のポリペプチド由来の少なくとも10の連続したアミノ酸を含み、より好ましくは少なくとも20又は30のアミノ酸を、さらにより好ましくは少なくとも40、50又は60のアミノ酸を、なおより好ましくは少なくとも75、100又は125のアミノ酸を含む。融合タンパク質は、異なるタンパク質又はペプチドをコード化する核酸配列と共にフレーム内においてポリペプチド又はその断片をコード化する核酸配列を構築し、この融合タンパク質を発現させることによって、組換え生産できる。あるいは、融合タンパク質は、前記ポリペプチド又はその断片を別のタンパク質へ架橋させることによって化学的に作製できる。
【0060】
「非ペプチドアナログ」という語は、基準ポリペプチドのものと類似である特性を有する化合物を指す。非ペプチド性化合物は、「ペプチド擬態体」又は「ペプチド模倣体」とも呼び得る。例えば、Jones(1992)Amino Acid and Peptide Synthesis,Oxford University Press; Jung(1997)Combinatorial Peptide and Nonpeptide Libraries: A Handbook John Wiley; Bodanszkyほか、(1993)Peptide Chemistry―A Practical Textbook,Springer Verlag;「Synthetic Peptides: A Users Guide」、G.A.Grant編、W.H.Freeman and Co.、1992; Evansほか J.Med.Chem.30: 1229(1987); Fauchere、J.Adv.Drug Res.15: 29(1986); Veber及びFreidinger TINS p.392(1985);及び上記文献の各々に引用されている参考文献。これらは本明細書において参照により組み込まれる。このような化合物はしばしば、コンピューター化した分子モデリングの援助で開発される。本発明の有用なペプチドと構造上類似したペプチド模倣体は、等価の効果を生じるよう使用され得、それゆえ、本発明の一部であると構想される。
【0061】
「ポリペプチド変異体」又は「変異体タンパク質」は、その配列が元の又は野生型のタンパク質のアミノ酸配列と比較して1つ以上のアミノ酸の挿入、複製、欠失、再編成又は置換を含有するポリペプチドを指す。変異タンパク質は、それぞれ天然に存在するタンパク質の配列に置いて、1つ又はそれ以上の点置換(ある位置の単一のアミノ酸が別のアミノ酸に変更されている。)、1つ又はそれ以上の挿入及び/又は削除(1つ又はそれ以上のアミノ酸が挿入され又は削除されている。)、及び/又はアミノ末端又はカルボキシ末端のいずれか又は両者におけるアミノ酸配列の切断を有し得る。変異タンパク質は、天然に存在するタンパク質と比較して、同一の生物活性を有し得るが、好ましくは異なる生物活性を有する。
【0062】
変異タンパク質は、その野生型対応物と少なくとも70%の全体的な配列相同性を有する。さらにより好ましくは、野生型タンパク質と80%、85%又は90%の全体的な配列相同性を有する変異タンパク質である。さらにより好ましい実施態様において、変異タンパク質は95%の配列同一性を示し、さらにより好ましくは97%、さらにより好ましくは98%及びさらにより好ましくは99%、99.5%又は99.9%の全体的な配列同一性を示す。配列相同性は、Gap又はBestfitなどのいずれかの共通配列分析アルゴリズムによって測定し得る。
【0063】
好ましいアミノ酸置換は、(1)タンパク質分解に対する敏感性を低下させ、(2)酸化に対する敏感性を低下させ、(3)タンパク質複合体を形成するための結合親和性を変化させ、(4)結合親和性又は酵素活性を変化させ、及び(5)このようなアナログの他の物理化学的特性又は機能的特性を付与又は修飾するものである。
【0064】
本明細書で使用されているように、20個の従来のアミノ酸及びそれらの略語は、従来の使用に従う。本明細書に参照によって組み込まれる、Immunology−A Synthesis(第2版、E.S.Golub及びD.R.Gren編、Sinauer Associates、Sunderland,Mass.(1991))を参照してほしい。前記20個の従来のアミノ酸、α,α−二置換したアミノ酸などの非天然アミノ酸、N−アルキルアミノ酸、及び他の非従来型アミノ酸の立体異性体(例、D型アミノ酸)も本発明のポリペプチドのための適切な構成要素であり得る。非従来型アミノ酸の例には、4−ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタミン酸塩、ε−N,N,N−トリメチルリジン、ε−N−アセチルリジン、O−ホスホセリン、N−アセチルセリン、N−ホルミルメチオニン、3−メチルヒスチジン、5−ヒドロキシリジン、s−N−メチルアルギニン、及び他の類似したアミノ酸及びイミノ酸(例、4−ヒドロキシプロリン)が含まれる。本明細書で使用されるポリペプチドの表示法において、標準的な使用及び慣習にしたがって、左手方向はアミノ末端方向であり、右手方向はカルボキシ末端方向である。
【0065】
タンパク質は、前記タンパク質をコード化する核酸配列が第二タンパク質をコード化する核酸配列と類似した配列を有する場合、前記第二タンパク質の「相同性」を有し、又は「相同的」である。あるいは、前記2つのタンパク質が「類似した」アミノ酸配列を有する場合、タンパク質は第二タンパク質との相同性を有する(したがって、「相同性タンパク質」という語は前記2つのタンパク質が類似したアミノ酸配列を有することを意味するよう定義される。)。好ましい実施態様において、相同的なタンパク質はその野生型タンパク質に対して60%の配列相同性を呈するものであり、より好ましくは70%の配列相同性である。さらにより好ましくは前記野生型タンパク質に対して80%、85%又は90%の配列相同性を呈する相同的なタンパク質である。本明細書で使用されるように、(特に推定される構造類似性に関する)アミノ酸配列の2つの領域間の相同性は、機能の上での類似性を包含するものと解釈される。
【0066】
「相同的な」がタンパク質又はペプチドに関して使用される場合、同一でない残基位置が、しばしば保存されたアミノ酸置換によって異なっていることが認識される。「保存的なアミノ酸置換」は、似た化学特性(例えば電荷又は疎水性)を備えた側鎖(R基)を有する別のアミノ酸残基によってアミノ酸残基が置換されているものである。一般に、保存的なアミノ酸置換は、タンパク質の機能的特性を実質的に変化させない。2つ又はそれ以上のアミノ酸配列が保存的な置換だけで互いに異なっている場合、配列同一性%又は相同性の程度は、前記置換の保存的な性質を補償するよう上向きに調整され得る。この調整をなすための手段は当業者に周知である(例、本明細書に参照によって組み込まれるPearsonほか、1994を参照してほしい。)。
【0067】
次の6つの群は各々、互いに保存的な置換であるアミノ酸を含有する。すなわち、1)セリン(S)、スレオニン(T);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リジン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、アラニン(A)、バリン(V)、及び6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)である。
【0068】
配列同一性%とも呼ばれるポリペプチドについての配列相同性は、配列分析ソフトウェアを使用して典型的に測定される。例えば、遺伝学コンピューターグループ(the Genetics Computer Group)(GCG)の配列分析ソフトウェアパッケージ(the Sequence Analysis Software Package)、University of Wisconsin Biotechnology Center,910 University Avenue,Madison,Wisconsin 53705を参照してほしい。タンパク質分析ソフトウェアは、多様な置換、欠失及び(保存的なアミノ酸置換を含む)他の修飾に割り当てられた相同性の測定を使用して、似た配列と比較する。例えば、GCGは、生物体の異なる種由来の相同的なポリペプチド又は野生型タンパク質及びその変異タンパク質の間での相同的なポリペプチドなどの密接に関連したポリペプチド間の配列相同性又は配列同一性を決定するために、デフォルト・パラメータを使用できる「Gap」及び「Bestfit」などのプログラムを含む。例えば、GCG 第6.1版を参照してほしい。
【0069】
阻害分子配列を、異なる生物由来の多数の配列を含有するデータベースと比較する場合、好ましいアルゴリズムはコンピュータプログラムBLAST(Altschul,S.F.ほか(1990)J.Mol.Biol.215:403−410; Gish及びStates(1993)Nature Genet.3: 266−272; Madden,T.L.ほか(1996)Meth.Enzymol.266: 131−141; Altschul,S.F.ほか(1997)Nucleic Acids Res.25: 3389−3402; Zhang,J.及びMadden,T.L.(1997)Genome Res.7: 649−656)であり、特にblastp又はtblastn(Altschulほか、1997)である。BLASTpについての好ましい因子は、期待値:10(初期設定); フィルター:seg(初期設定); 間隙を開くためのコスト:11(初期設定); 間隙を伸長するためのコスト:1(初期設定); 最大配列比較:100(初期設定); 言語サイズ:11(初期設定);記載の番号:100(初期設定);罰則マトリクス:BLOWSUM62である。
【0070】
相同性について比較されるポリペプチド配列の長さは、一般に少なくとも約16個のアミノ酸残基、通常少なくとも約20残基、より通常少なくとも約24残基、典型的には少なくとも約28残基、及び好ましくは約35残基超である。大きな数の、異なる生物由来の配列を含有するデータベースを検索する場合、アミノ酸配列を比較することが好ましい。アミノ酸配列を使用するデータベース検索は、本分野で公知のblastp以外のアルゴリズムによって測定できる。例えば、ポリペプチド配列は、GCG第6.1版におけるプログラムであるFASTAを使用して比較できる。FASTAは、質問配列と検索配列との最良の重なりの領域の配列比較及び配列同一性%を提供する(本明細書で参照によって組み込まれるPearson,1990)。例えば、アミノ酸配列間の配列同一性%は、そのデフォルト・パラメータ(言語サイズ2及びPAM250のスコアリングマトリクス)を備えたFASTAを使用して決定でき、これは本明細書に参照によって組み込まれるGCG第6.1版において提供されている。
【0071】
本明細書で使用される「ドメイン」という語は、生体分子の公知の機能又は予測される機能へ関与する生体分子の構造を指す。ドメインは、領域又はその一部と同一の広がりを有し得、ドメインは、生体分子の異なる非連続的な領域も含み得る。タンパク質ドメインの例には、これらに制限されるものではないが、Igドメイン、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞質ドメインが含まれる。
【0072】
本明細書で使用されているように、「分子」という語は、以下に限定するものではないが、小分子、ペプチド、タンパク質、糖、ヌクレオチド、核酸、脂質等を含むいずれかの化合物を意味し、このような化合物は天然化合物又は合成化合物でありうる。
【0073】
本明細書及びその実施態様を通じて、「含む」という語又は「含有する」もしくは「含んでいる」などの変形は、記載されている整数又は整数の群を包含するが、いずれかの他の整数又は整数の群を排除しないことを指すものと理解される。
【0074】
特段の定義がなければ、本明細書で使用される技術用語および科学用語はすべて、本発明の関する分野の当業者によって共通して理解されるのと同じ意味を有する。典型的な方法及び材料は以下に記載されるが、本明細書に記載されるものと同様の又は等価の方法及び材料も本発明の実施において使用でき、当業者に明らかである。本明細書に記載されたすべての刊行物及び他の参考文献は、参照によってその全部が組み込まれる。矛盾する場合、定義を含む本明細書が調節する。前記材料、方法、及び実施例は実例となるのみであり、限定を加えるよう意図されてはいない。
【0075】
ヒト様ガラクトシル化した糖タンパク質を産生するための宿主の設計
本発明は、ヒト様糖タンパク質が末端β−ガラクトース残基を有し、フコース及びシアル酸を本質的に欠失することを特徴とする、前記糖タンパク質を産生する組換え型下等真核宿主細胞を提供する。ある実施態様において、本発明は、UDP−ガラクトース輸送体をコード化する少なくとも第二の単離された核酸分子、UDP−ガラクトース4−エピメラーゼをコード化する単離された核酸又はガラクトキナーゼ若しくはガラクトース−1−リン酸ウリジルトランスフェラーゼをコード化する単離された核酸との組み合わせでUDP−ガラクトース:β−N−アセチルグルコサミンβ1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ(β1,4GalT)をコード化する単離された核酸分子を含む下等真核宿主細胞を提供する。別の実施態様において、β1,4GalTは、UDP−ガラクトース輸送体をコード化する単離された核酸分子及びUDP−ガラクトース4−エピメラーゼをコード化する単離された核酸分子との組み合わせで発現する。前述の酵素をコード化する前記核酸配列の変異体及び断片、組換えDNA分子、及び形質転換向けの前記酵素をコード化する核酸配列も提供される。
【0076】
本発明のある態様において、方法は、下等真核宿主細胞においてヒト様糖タンパク質を産生するために提供され、UDP−ガラクトースからβ結合における受容体基質へのβ1,4GalT活性の発現による転移を触媒する段階と、宿主へUDP−ガラクトース4−エピメラーゼ活性、ガラクトキナーゼ活性、ガラクトース−1−リン酸ウリジルトランスフェラーゼ活性又はUDP−ガラクトース輸送活性を導入する段階とを含む。受容体基質は好ましくは、トリマンノース中心上の末端GlcNAc残基、例えばGlcNAcβ1,2−Manα1,3; GlcNAcβ1,4−Manα1,3; GlcNAcβ1,2−Manα1,6; GlcNAcβ1,4−Manα1,6;又はGlcNAcβ1,6−Manα1,6分岐を含むオリゴ糖組成物である。
【0077】
受容体基質は、より好ましくは対象のタンパク質に共有結合される(N結合される)複雑なグリカン(例、GlcNAcManGlcNAc)、ハイブリッドグリカン(例、GlcNAcManGlcNAc)又は複数のアンテナ性グリカン(例、GlcNAcManGlcNAc)である。前記β−ガラクトース残基は、β−グリコシド結合を形成する2−アセトアミド−2−デオキシ−D−グルコース(GlcNAc)の炭素4でヒドロキシ基を含む受容体基質へと転移される。ガラクトース残基を受容できる末端GlcNAc残基を含むN結合した受容体基質には、GlcNAcMAnGlcNAc、GlcNAcManGlcNAc、GlcNAcManGlcNAc、GlcNAcManGlcNAc、GlcNAcManGlcNAcGlcNAcManGlcNAc、GlcMAcManGlcNAc、GlcNAcManGlcNAc、GlcNAcManGlcNAc及びGlcNAcManGlcNAcが含まれるが、これらに限定されない。
【0078】
β1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ遺伝子のクローニング
ヒトb−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼI遺伝子(hGalTI、Genbank AH003575)を、プライマーRCD192(配列番号1)及びRCD186(配列番号2)を使用して、ヒト腎cDNA(マラソンレディcDNA、Clontech)からPCR増幅した。このPCR産物を、クローニングし配列決定したpCR2.1(Invitrogen)中にクローニングした。このクローンから、PCR重複変異誘発を実施した。前記遺伝子のNotI部位までの5’末端を、プライマーRCD198(配列番号3)及びRCD201(配列番号4)を使用して増幅し、前記3’末端を、プライマーRCD200(配列番号5)及びRCD199(配列番号6)を使用して増幅した。前記産物をプライマーRCD198(配列番号3)及びRCD199(配列番号6)と互いに重ねて、前記NotI部位を除去しながら(43個のアミノ酸のN末端欠失を除く)前記野生型アミノ酸配列を用いて前記ORFを再合成した。前記新たな切断したhGalTI PCR産物をpCR2.1中にクローニングし、配列決定した。次に、導入したAscI/PacI部位を使用して、前記断片を、pRCD260を作製するPpURA3/HYGロールインベクターであるプラスミドpRCD259(図1)へとサブクローニングした(図1)(実施例4)。
【0079】
同一の戦略を、ヒトβ1,4GalTII及びヒトβ1,4GalTIIIをクローニングする上で適用した。実施例4は、PCRによってヒトβ1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼII及びIII遺伝子を増幅させるために遺伝子特異的プライマーを使用し、次にそれをベクターへとクローニングすることを記載する。
【0080】
下等真核生物におけるβ1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼの発現
β1,4GalT活性をコード化する遺伝子又はβ1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ活性をコード化する組換え型核酸分子、β1,4GalT活性をコード化する遺伝子融合体(例、pXB53)(図1)又はβ1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼをコード化する核酸分子(Genbank AH003575)からの発現を下等真核宿主細胞(例、P.パストリス(pastoris))へ導入して発現させ、ガラクトシル化した糖タンパク質を産生した。あるいは、β−ガラクトシルトランスフェラーゼ活性の活性化によって、下等真核宿主細胞を遺伝子工学的に改変し、ガラクトシル化した糖形態を産生する。触媒活性のあるβ1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼドメイン又はその一部は、UDP−ガラクトースから、β1,4−Galグリコシド結合を形成するオリゴ糖受容体基質(例、GlcNAcManGlcNAc)の末端GlcNAc残基へのガラクトース残基の転移を触媒する。本発明に従って産生される複雑なガラクトシル化したN−グリカンはフコース及びシアル酸を本質的に欠失している(例、GalGlcNAcManGlcNAc)。ガラクトシル化し、脱フコシル化し、脱シアル酸付加したこのような糖タンパク質組成物は、治療剤として有用である。
【0081】
前記新規に形成された基質は、下等真核宿主において産生されるシアル酸付加した糖タンパク質の形成における好ましい前駆体でもある。本発明はしたがって、ヒト様糖タンパク質が下等真核生物におけるシアル酸転移のための受容体基質である末端ガラクトース残基を有することを特徴とする、前記糖タンパク質を産生するための方法を提供する。
【0082】
β1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼのコンビナトリアルDNAライブラリ
本発明に関連する態様において、β1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ及び酵母指向性配列膜貫通ドメインのコンビナトリアルDNAライブラリを作製し、WO02/00879において記載されるていように下等真核宿主細胞において発現させる。
【0083】
したがって、WO02/00879に記載されているように、長さが短、中、長の指向性ペプチドのサブライブラリへと融合されたhGalTI(例、Genbank受入番号X55415)のサブライブラリが作成される。指向性ペプチドサブライブラリには、小胞体、ゴルジ体、又はトランスゴルジネットワーク内の特定の位置へのタンパク質の局在化を生じる指向性シグナルぺプチドをコード化する核酸配列が含まれる。これらの指向性ペプチドは、遺伝子工学的に改変された宿主生物体から、他の関連した又は関連していない生物体からと同様、選択され得る。一般に、このような配列は3つのカテゴリーへと分類される。すなわち(1)ゴルジ体の内膜(内腔膜)へタンパク質を互いにまたは個々につなぐサイトゾル尾部(ct)、膜貫通ドメイン(tmd)及びステム領域(sr)の一部又は全部をコード化するN末端配列、(2)HDEL又はKDELテトラペプチドなどのC末端で一般にみられる修復シグナル、及び(3)ゴルジ体において局在化することが公知の多様なタンパク質、例えばヌクレオチド糖輸送体からの膜架橋領域、である。
【0084】
指向性ペプチドは本明細書において、II型膜タンパク質の一部に対して短(s)、中(m)、長(l)と示される。短(s)と示される指向性ペプチド配列は、膜結合タンパク質の膜貫通ドメイン(tmd)に対応する。長(l)と示される指向性ペプチド配列は、膜貫通ドメイン(tmd)及びステム領域(sr)の長さに対応する。中(m)と示される指向性ペプチド配列は、膜貫通ドメイン(tmd)及び、ステム領域(sr)の長さのほぼ半分に対応する。触媒作用のあるドメイン領域は本明細書において、その野生型グリコシル化酵素に関してヌクレオチド欠失の数によって示される。
【0085】
ある実施態様において、前記ライブラリをP.パストリス(pastoris)へと形質転換し、前記形質転換体を、ハイグロマイシンを含有する最小培地上で選抜した。(以下に記載されるような)多様なリーダー配列へ融合したβ1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼIの活性を、ポジティブモードにおいてMALDI−TOF MSを使用する読み取りとしてのガラクトシル化したN−グリカンの産生を介して分析した。
【0086】
□−ガラクトシルトランスフェラーゼ融合構築物
(48個のリーダー配列(WO02/00879)からなる)単離された酵母指向性配列膜貫通ドメインのライブラリを、hGalTI遺伝子の上流にあるpRCD260上のNotI/AscI部位に連結し、プラスミドpXB20−pXB67を作製した(各プラスミドは1つのリーダー配列を有する。)。
【0087】
本発明のコンビナトリアルDNAライブラリ由来のGalT融合構築物の代表例はpXB53(図1)であり、ヒトβ1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼI(Genbank AH003575)の43N末端アミノ酸欠失へフレーム内連結した、切断したS.セレビシエMnn2(s)指向性ペプチド(Genbank NP_009571由来のMNN2の1ないし108ヌクレオチド)である。したがって、本明細書で使用される命名法は、グリコシル化酵素の指向性ペプチド/触媒作用ドメイン領域を、S.セレビシエMnn2(s)/hGalTIΔ43とする。しかしながら、コード化した融合タンパク質単独では、図9Aに示される主としてガラクトシル化したグリカンを有するN−グリカンを生じるのには不十分である。N−グリカンGalGlcNAcManGlcNAc[B]の集団と一致するピークが、P.パストリスにおけるhGalTIの導入で示されているが、前記試料のその後の切断によって、このピークがb−1,4−ガラクトシダーゼに不応性であることが示される(実施例7)。
【0088】
さらに、β−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ活性は、対象の特定のタンパク質に対して特異的であってもよい。したがって、対象の糖タンパク質に関する適切なグリコシル化を生じさせるために、指向性ペプチド/ガラクトシルトランスフェラーゼ触媒作用ドメイン融合構築物が必ずしもすべて等しく十分に機能するのではないということは、さらに理解されるべきである。したがって、対象のタンパク質は、前記タンパク質に最適なガラクトシルトランスフェラーゼ活性を発現する1つ以上の融合構築物を特定するために、コンビナトリアルDNAライブラリで形質転換した宿主細胞へと導入され得る。当業者は、本明細書に記載のコンビナトリアルDNAライブラリアプローチを使用して最適な融合構築物を作成及び選抜できるであろう。
【0089】
さらに、局在化した活性のあるガラクトシルトランスフェラーゼ触媒作用ドメイン(又はより一般には、いずれかの酵素のドメイン)を呈する他のこのような融合構築物が本明細書に記載の技術を使用して作製され得ることは明白である。例えば、特定の宿主細胞へと導入される特定の発現ベクターにおける融合構築物のライブラリからのGalGlcNAcManGlcNAc産生を最適化するために本発明のコンビナトリアルDNAライブラリを作製及び使用することは、当業者にとって決まりきった実験法の一内容である。
【0090】
遺伝子改変のP.パストリスにおけるガラクトシル化したN−グリカンの産生
本発明の方法にしたがって産生されるヒト様ガラクトシル化糖タンパク質には、GalGlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAc、GalGlcNacManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAc及びGalGlcNAcManGlcNAcが含まれる。
【0091】
本発明のある実施態様において、MNN2(s)/hGalTIを含むプラスミドpXB53を用いて、GlcNAcManGlcNAcを産生する宿主であるP.パストリスRDP30−10を形質転換した(実施例5)。触媒活性のあるβ−ガラクトシルトランスフェラーゼドメインは、末端GlcNAc残基(例、GlcNAcManGlcNAc)を有する受容体基質へガラクトース残基を転移するのを触媒し、ガラクトシル化した糖形態を生じる。MALDI−TOF MSを使用して、P.パストリスRDP37由来のリポータータンパク質から放出されたN−グリカンは、GalGlcNAcManGlcNAc[B]の質量に対応する1505m/zでピークを示した(図8B)。GalGlcNAcManGlcNAcを生じた受容体基質GlcNAcManGlcNAcへの、ヒトサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)Mnn2(s)/β1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼを含む融合構築物によるガラクトース残基の転移は、約10%ないし20%であることを示した。図8Bは、1662m/z[C]でのGalGlcNAcManGlcNAcの対応する質量を示す。それゆえ、GalGlcNAcManGlcNAcを生じるGlcNAcManGlcNAcへの2つのガラクトース残基の転移は明白であった。したがって、本発明の宿主は、ヒト様N−グリカン上のガラクトシル部分の少なくとも10モル%を呈する。
【0092】
GalTIが宿主の産生する複雑な(例、二アンテナ性)グリカンにおける第二末端GlcNAc残基を有する受容体基質へ第二ガラクトース残基を転移できることが認識される。例えば、グリカンGlcNAcManGlcNAcのGlcNAcβ1,2Manα1,3アーム上のガラクトース残基で末端GlcNAcをキャッピングできるMann2(s)/hGalTI融合は、末端GlcNAc残基(例、GlcNAcβ1,2Manα1,6)とともに露出されたその他のアーム上での少なくとも1つのさらなるβ−グリコシド結合を形成でき、それにより、その後ガラクトシルトランスフェラーゼを発現させずにガラクトシル化した糖形態を生じる。図12は、GalGlcNAcManGlcNAcに対応する1663m/z[C]でのピークを呈するMALDI−TOF MSを示す。本結果は、特定のβ1,4−GalTに対する基質特異性が前記グリカンの指定されたアームのみにあるガラクトース残基の転移を触媒するよう制限されてはおらず、それゆえ第二ガラクトシルトランスフェラーゼが不要になるかもしれないことを示す。したがって、本発明のある実施態様において、たった1つのβ1,4−GalT活性が一本、二本、三本又は四本のアンテナ性のガラクトシル化した糖形態を生じうる。このような実施態様において、前記ガラクトース残基と前記グリカン上のGlcNAc残基の間のグリコシド結合はすべて同一であろう。例えば、二アンテナ性グリカンを産生する宿主におけるhGalT1の発現は2つの末端Galβ1,4−GlcNAcβ1,2結合を呈するであろう。
【0093】
あるいは、異なるβ−ガラクトシルトランスフェラーゼ活性(例、hGalTII)又はその触媒活性部分を下等真核宿主細胞において発現させる。ある実施態様において、MNN2(s)/hGalTII及びSpGALEを含むベクターpRCD440、及びDmUGTを含むベクターpSH263(図3B)を宿主P.パストリス(YSH−44(図12B)に形質転換した。前記形質転換体のN−グリカン分析によって、hGalTIIが前記受容体基質上へ両ガラクトース残基を転移させたことを示すGalGlcNAcManGlcNAcの糖形態の産生が示された(図12B)。二ガラクトシル化構造(GalGlcNAcManGlcNAc)が支配的である。中性グリカン%に関するガラクトシル部分の転移は約75%であった。
【0094】
さらに別の実施態様において、hGalTIIIをコード化する配列を下等真核宿主細胞において発現させる。図12Cは、前記組み合わせた一ガラクトシル化したグリカン及び二ガラクトシル化したグリカンへのガラクトース転移が約50モル%ないし60モル%であることを示す。hGalTI、hGalTII及びhGalTIIIの比較は、ガラクトース転移の多様なレベルを示す(図12Aないし図12C)。P.パストリスRDP71由来のN−グリカンプロファイルは、hGalTIの発現によるガラクトース残基の転移がK3受容体タンパク質に対して最適である(約80モル%)ことを示す。
【0095】
さらなるβ1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼの発現
別の実施態様において、hGalTI及びhGalTIIは、順次に局在化し、中期ゴルジ体指向性配列及び後期ゴルジ体指向性配列をそれぞれ使用して発現される。例えば、前記hGalTIは、中期ゴルジ体において局在化するのに対し、前記hGalTIIは後期ゴルジ体において局在化する。あるいは、別の実施態様においてマンノシダーゼIIとの基質競合を回避するため、後期ゴルジ体リーダーをβ−ガラクトシルトランスフェラーゼについて使用する。
【0096】
ガラクトシルトランスフェラーゼ活性の発現は通常、一ガラクトシル化したグリカン及び二ガラクトシル化したグリカンの両者を生じる。一ガラクトシル化した糖形態に加えて複数アンテナ性のガラクトシル化した糖形態が、ガラクトシルトランスフェラーゼ活性を発現する宿主細胞において一般に生産される。
【0097】
ガラクトシルトランスフェラーゼ活性及び、組換え型宿主細胞における多様なプロモーター及び多様な発現ベクターを使用することによって前記タンパク質をコード化する遺伝子の発現を最適化することは当業者にとって決まりきった実験法の事項である。
【0098】
N−グリカンの産生における目的に合わせたガラクトシル化したグリコシド結合
本発明の別の特徴において、異なるGalTを使用する複数のアンテナ性のガラクトシル化した糖タンパク質の産生は、異なるβ−グリコシド結合を生じる。ある実施態様において、好ましい所望のβ−グリコシド結合が、下等真核宿主細胞において作成される。例えば、β1,4GalTファミリーのいずれか1つ(例、hGalTI、hGalT2、hGalT3、hGalT4、hGalT5、hGalT6、hGalT7、bGalTI、XlCalT、CeGalTII)を、β1,4Galグリコシド結合を有することを特徴とするガラクトシル化した糖タンパク質の産生のために発現させる。
【0099】
あるいは、β1,3GalT活性又はβ1,6GalT活性などの他のガラクトシルトランスフェラーゼ(酵素、ホモログ、変異体、誘導体及び触媒活性のあるそれらの断片)を下等真核宿主細胞(例、P.パストリス)において発現させることによって、特に望ましいβGalグリコシド結合を形成する中間的なオリゴ糖受容体基質へとガラクトース残基を転移させる。多様な末端ガラクトース結合(例、β1,3、β1,4、又はβ1,6)を望ましいβ−ガラクトシルトランスフェラーゼ活性の発現の結果として形成する。
【0100】
下等真核生物におけるGalNAcT発現
GalNAcによりキャップしたグリカンは、ヒトにおける特定のタンパク質で観察されてきた。本発明の別の態様において、GalNAcトランスフェラーゼ(GalNAcT)をコード化する遺伝子を下等真核宿主細胞において発現させ、それが末端GlcNAc残基を有する基質へとGalNAcを転移させる。ある実施態様において、線虫GalNAcTをコード化する遺伝子(Genbank AN NP_490872)は、宿主細胞において産生されるグリカンのオリゴ糖分岐鎖を伸長する末端GlcNAc残基を有する基質へのGAlNAc残基の転移を触媒する。
【0101】
強化したガラクトシル転移
図12に示されるhGalTI発現の比較は、β−ガラクトシルトランスフェラーゼ発現単独では下等真核生物における受容体基質上でのβGal−グリコシド結合の形成に十分ではあり得ないことを示す。ガラクトース残基の転移は、エピメラーゼもしくはガラクトキナーゼ、ガラクトース−1−リン酸ウリジルトランスフェラーゼ、及び/又はUGTをコード化する遺伝子の追加によって強化される。ガラクトシル化した糖形態(例、GalGlcNAcManGlcNAc)の十分量が治療用糖タンパク質として望ましい。したがって、輸送活性の追加の発現によってグリカンへのガラクトシル転移を強化し、及び/又は内在性UDP−ガラクトースレベルを上昇させることは、本発明の特徴である。ある実施態様において、UDP−ガラクトースレベルを強化させるため、宿主細胞にエピメラーゼ活性を導入する。別の実施態様において、UDP−ガラクトースレベルの強化は、ガラクトキナーゼ又はガラクトース−1−リン酸ウリジルトランスフェラーゼ活性によって仲介される。本発明はそれゆえ、UDP−GAl輸送活性を使用して及び/又は、エピメラーゼ又はガラクトキナーゼ又はガラクトース−1−リン酸ウリジルトランスフェラーゼを介する内在性UDP−ガラクトースレベルを上昇させることによってのいずれかとの組み合わせでβ−ガラクトシルトランスフェラーゼ活性を導入及び発現させることによって、ガラクトシル転移を強化する方法を提供する。
【0102】
ヒト様糖タンパク質の産生における下等真核生物宿主でのUDP−ガラクトース輸送体(UGT)のクローニング及び発現
本明細書には、ヒト様ガラクトシル化糖タンパク質の産生のための下等真核細胞(例、P.パストリス)におけるUDP−ガラクトース輸送体をコード化する遺伝子を導入及び発現する方法も開示される。
【0103】
S.ポムベUDP−ガラクトース輸送体のクローニング及び発現
遺伝子特異的プライマーをS.ポムベUDP−ガラクトース輸送体遺伝子(Genbank AL022598)の相同性領域を補完するようデザインし、S.ポムベゲノムDNA(ATCC24843)からPCR増幅し、単一イントロンを排除した。前記遺伝子の5’の96塩基対を増幅するために、プライマーRCD164(配列番号7)及びRCD177(配列番号8)を使用した。前記3’の966塩基対を増幅するために、プライマーRCD176(配列番号9)及びRCD165(配列番号10)を使用した。前記末端で導入されるNotI部位及びPacI部位を有する1つの連続したオープン・リーディング・フレームを含有する単一PCR断片へと前記2つの増幅した産物を重ねるために、プライマーRCD164(配列番号7)及びRCD165(配列番号10)を使用した。前記PCR産物をpCR2.1TA(Invitrogen)へとクローニングし、配列決定した。前記遺伝子産物を、P.パストリスGAPDHプロモーターを含有するプラスミドpJN335へとサブクローニングした(実施例2)。
【0104】
したがって、ある実施態様において、S.ポムベUDP−ガラクトース輸送体をコード化するプラスミドpRCD257(Genbank AB023425)を構築し、宿主において発現させ、末端GlcNAc残基(P.パストリスRDP−27(例、GlcNAcManGlcNAc))を産生する。
【0105】
多様なUDP−ガラクトース輸送体のクローニング及び発現
好ましい実施態様において、キイロショウジョウバエ(D.melanogaster)UDP−ガラクトース輸送体をコード化する遺伝子を下等真核宿主細胞において導入及び発現させる。キイロショウジョウバエUGTをキイロショウジョウバエcDNAライブラリ(UC Berkeleyキイロショウジョウバエゲノムプロジェクト、卵巣λ−ZAPライブラリ GM)からPCR増幅し、pCR2.1PCRクローニングベクターへとクローニングし、配列決定した。NotI部位及びPacI部位を導入する遺伝子を増幅するため、プライマーDmUGT−5’(配列番号11)及びDmUGT−3’(配列番号12)を使用した。pSH263をつくるpRCD393における前記NotI部位及びPacI部位でPpOCH1プロモーターの下流へ融合したこの遺伝子を増幅するため、前記NotI部位及びPacI部位を使用した(図3B)。実施例2は、多様な他のUDPガラクトース輸送体のクローニングを示す。
【0106】
図11は、ガラクトース転移の強化についての比較におけるUDP−輸送体活性を示す。本発明の最良のモードとして、キイロショウジョウバエから単離されたUDP−ガラクトース輸送体をP.パストリスにおいて発現させる。キイロショウジョウバエUDP−ガラクトース輸送体と同時発現するヒトGalTI遺伝子融合体の活性を図11Eに示す。驚くべきことに、キイロショウジョウバエUGTを発現する宿主細胞は、主としてガラクトシル化した糖形態を産生するのに対し、S.ポムベ(図11B)、ヒトI(図11C)及びヒトII(図11D)由来のUGTは最適な転移を下回ることを示した。二ガラクトシル化し、脱フコシル化し、脱シアル酸付加した糖形態GalGlcNAcManGlcNAcの産生における有意な強化が生じる。1664m/z[C]での単一形態のピークは、グリカンGalGlcNAcManGlcNAcの質量に対応する。DmUGTを発現する宿主細胞(例、P.パストリス(pastoris))は、他のUDP−ガラクトース輸送体と比較して少なくとも90モル%のガラクトース転移を呈する。
【0107】
UDP−ガラクトース輸送体ポリペプチド
本発明は、下等真核宿主細胞(例、P.パストリス)において発現する輸送体−トランスフェラーゼ融合体の多様な組み合わせを提供する。したがって、ある実施態様において、本発明は、触媒活性のあるβ−ガラクトシルトランスフェラーゼドメインへフレーム内に融合したUDP−ガラクトース輸送体を含む下等真核宿主を提供する。別の実施態様において、ヒト様等タンパク質を産生する宿主細胞は、hGalTI触媒ドメインへフレーム内に融合したS.ポムベ及びS.セレビシエMnn2(s)指向性ペプチドから単離されるUDP−ガラクトース輸送体を含む。
【0108】
ヒト様糖タンパク質の産生における下等真核宿主におけるUDP−ガラクトース4−エピメラーゼの発現
本発明の別の態様において、β1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ活性及び少なくともUDP−ガラクトース4−エピメラーゼ活性(酵素、ホモログ、変異体、誘導体及び触媒活性のあるそれらの断片)を発現させることによって下等真核生物(例、P.パストリス(pastoris))においてヒト様糖タンパク質を産生するための方法が提供される。エピメラーゼは、UDP−ガラクトース及びUDP−グルコースの相互変換を触媒する酵素である。本分野で周知の技術を使用して、エピメラーゼ遺伝子(例、ScGAL10、SpGALE、hGALE)の相同性領域を補完するよう遺伝子特異的プライマーをデザインし、PCR増幅する(実施例3)。ある実施態様において、S.セレビシエGal10活性をコード化する遺伝子、又はエピメラーゼをコード化する組換え型核酸分子、又はエピメラーゼ活性をコード化する核酸分子からの発現を下等真核宿主細胞(例、P.パストリス)において導入及び発現させ、末端β−ガラクトース残基を有することを特徴とするヒト様糖タンパク質を産生させる。あるいは、エピメラーゼ活性の活性化によって、宿主細胞を遺伝子工学的に改変し、ガラクトシル化した糖形態のレベルを上昇させる。
【0109】
複雑なN−グリカンの産生におけるUDP−ガラクトース4−エピメラーゼの発現
ある実施態様において、UDP−グルコースをUDP−ガラクトースへ変換するためにエピメラーゼ活性をコード化する遺伝子を発現させ、宿主細胞におけるガラクトシル転移のためにUDP−ガラクトースのレベルを上昇させる。β−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ活性に加えてエピメラーゼ活性の発現は、ガラクトシル化したN−グリカンの産生を強化する。図9Bは、ScCal10をコード化するプラスミドであるpRCD395と組み合わせたMnn2(s)/hGalTI融合体で形質転換した複雑なグリカンを産生する酵母系(例、P.パストリスYSH−44)を示す。ScGal10エピメラーゼの付加は、ガラクトース転移のための入手可能なUDP−ガラクトースを上昇させる。1501m/z[B]でのピークは、グリカンGlcNAcManGlcNAc上の1つのガラクトース残基の転移に対応し、1663m/z[C]でのピークは、グリカンGlcNAcManGlcNAc上の2つのガラクトース残基の転移に対応する。好ましくはガラクトースの少なくとも60モル%が中性グリカン全体の%に関して転移する。したがって、ある実施態様において、エピメラーゼ活性との組み合わせでのβ−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ活性が、宿主細胞において発現され、ガラクトシル化した糖タンパク質を産生する(実施例7)。
【0110】
ハイブリッドN−グリカンの産生におけるUDP−ガラクトース4−エピメラーゼの発現
別の実施態様において、ScGAL10の導入及び発現は、下等真核生物におけるハイブリッド糖タンパク質に関するガラクトース転移を強化する(実施例6)。図10Aは、ハイブリッドガラクトシル化N−グリカンを生成するScGal10エピメラーゼと組み合わせてMnn2(m)/hGalTI融合体を発現するP.パストリス株RDP39−6を示す。前記N−グリカン分析によって、1つのガラクトース残基の転移を確立するグリカンGalGlcNAcMAnGlcNAcの質量に対応する1622m/z[K]でのピーク、及びハイブリッドグリカンGlcNAcManGlcNAcの質量に対応する1460m/z[H]でのピークが示される。その後のβ1,4−ガラクトシダーゼ切断によって単一ガラクトース残基の存在が確立される(図10B)。好ましくはガラクトース転移の少なくとも70モル%が中性グリカン全体の%に関して検出される。
【0111】
ガラクトース転移を強化するため、さらに他のエピメラーゼを宿主細胞において発現させる。実施例3は、エピメラーゼ構築物の構築を示し、図13は、ヒト様N−グリカンの生成における種々のエピメラーゼの活性を示す。図13AにおけるMnn2(s)/hGalTI及びDmUGTに沿ったScGal10の発現は、優勢な二ガラクトシル化した糖形態GalGlcNAcManGlcNAcを示す。同様に、いずれかのオーダーにおけるSpGalE、Mnn2(s)/hGalTI、前記DmUGTの形質転換は、二ガラクトシル化した糖形態の産生を生じる(図13B及び図13C)。hGalEの付加は同一の効果を有する(図13D)。好ましくは、前記エピメラーゼは、S.セレビシエUDP−ガラクトース4−エピメラーゼ、S.ポムベUDP−ガラクトース4−エピメラーゼ、大腸菌(E.coli)UDP−ガラクトース4−エピメラーゼ、ヒトUDP−ガラクトース4−エピメラーゼからなる群から選択される。制限を加えることなく、他のエピメラーゼは同様に選択できかつ宿主細胞において発現できる。
【0112】
SpGALEをコード化する核酸配列
本発明はさらに、S.ポムベ由来のGALE遺伝子及びその変異体を含む単離された核酸分子を提供する。酵素UDP−ガラクトース4−エピメラーゼをコード化するこの遺伝子についての全長の核酸配列はすでに配列決定されており、Genbank NC_003423に示されるように同定されている。S.ポムベゲノムdNAからSpGALEを増幅するのに使用されるプライマーは、除去された175塩基対のイントロンを明らかにした(実施例3)。前記クローニングしたゲノム配列内に含まれるのは、S.ポムベUDP−ガラクトース4−エピメラーゼについてのコード化配列である。前記コード化したアミノ酸配列は配列番号13にも示される。前記SpGALE遺伝子は、宿主細胞におけるN−グリカンへのガラクトース転移のためのUDP−ガラクトースの十分なプールを生じる上で特に有用である。下等真核生物におけるSpGALE遺伝子の発現は、N結合したオリゴ糖合成における強化された及び効率のよいガラクトース転移を提供する。
【0113】
ある実施態様において、本発明は、配列番号14に示されるSpGALEコード化配列を含むか又はそれからなる核酸配列並びにそのホモログ、変異体及び誘導体を有する単離された核酸分子を提供する。更なる実施態様において、本発明は、野生型遺伝子と少なくとも53%の同一性を有するSpGALE遺伝子の変異体である配列を含むか又はそれからなる核酸分子を提供する。核酸配列は野生型遺伝子と少なくとも70%、75%又は80%の同一性を有しうる。さらにより好ましくは、前記核酸配列は、野生型遺伝子に対して85%、90%、95%、98%、99%、99.9%又はさらにより高い同一性を有しうる。
【0114】
別の実施態様において、本発明の核酸分子は配列番号13のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコード化する。配列番号13と少なくとも60%同一であるポリペプチド配列をコード化する核酸分子も提供される。典型的に、本発明の核酸分子は、配列番号13との少なくとも70%、75%又は80%の同一性のポリペプチド配列をコード化する。好ましくは、前記コード化したポリペプチドは、配列番号13と85%、90%又は95%同一であり、前記同一性はさらにより好ましくは98%、99%、99.9%又はさらにより高くありうる。
【0115】
ガラクトシル化した糖タンパク質の産生のためのUDP−グルコース及びUDP−ガラクトースの相互変換に関与するエピメラーゼの保存された領域
S.ポムベ、ヒト、大腸菌由来のエピメラーゼと、S.セレビシエの最初の362個のアミノ酸残基との配列比較は、いくつものモチーフ及び潜在的な活性部位の存在を示す非常に保存された領域を示す(図7)(実施例11)。ある実施態様において、本発明は、潜在的なUDP−ガラクトース又はUDP−グルコース結合モチーフを以下の箇所で有する配列番号13のアミノ酸配列を含むポリペプチドを包含する。すなわち、
9−VLVTGGXGYIGSHT−22(配列番号48)、
83−VIHFAGLKAVGESXQXPLXYY−103(配列番号49)、
127−FSSSATVYGX−136(配列番号50)、
184−LRYFNPXGAHXSGXXGEDPXGIPNNLXPYXXQVAXGRX−221(配列番号51)、又は
224−LXXFGXDYXXXDGTXXRDYIHVXDLAXXHXXAX−256(配列番号52)
である。
【0116】
別の好ましい実施態様において、第一配列の位置15にあるアミノ酸残基は、S及びAからなる群から選択される。
【0117】
別の好ましい実施態様において、第二配列の位置96にあるアミノ酸残基は、T及びVからなる群から選択される。
【0118】
別の好ましい実施態様において、第二配列の位置98にあるアミノ酸残基は、V、K及びIからなる群から選択される。
【0119】
別の好ましい実施態様において、第二配列の位置101にあるアミノ酸残基は、S、D、E及びRからなる群から選択される。
【0120】
別の好ましい実施態様において、第三配列の位置136にあるアミノ酸残基は、D及びNからなる群から選択される。
【0121】
別の好ましい実施態様において、第四配列の位置190にあるアミノ酸残基は、G、T、V及びIからなる群から選択される。
【0122】
別の好ましい実施態様において、第四配列の位置194にあるアミノ酸残基は、P及びAからなる群から選択される。
【0123】
別の好ましい実施態様において、第四配列の位置197にあるアミノ酸残基は、E、C、D及びLからなる群から選択される。
【0124】
別の好ましい実施態様において、第四配列の位置198にあるアミノ酸残基は、L、I及びMからなる群から選択される。
【0125】
別の好ましい実施態様において、第四配列の位置203にあるアミノ酸残基は、L及びQからなる群から選択される。
【0126】
別の好ましい実施態様において、第四配列の位置210にあるアミノ酸残基は、L及びMからなる群から選択される。
【0127】
別の好ましい実施態様において、第四配列の位置213にあるアミノ酸残基は、I、V及びMからなる群から選択される。
【0128】
別の好ましい実施態様において、第四配列の位置214にあるアミノ酸残基は、A及びSからなる群から選択される。
【0129】
別の好ましい実施態様において、第四配列の位置218にあるアミノ酸残基は、V及びIからなる群から選択される。
【0130】
別の好ましい実施態様において、第四配列の位置221にあるアミノ酸残基は、L及びRからなる群から選択される。
【0131】
別の好ましい実施態様において、第五配列の位置225にあるアミノ酸残基は、N、A及びYからなる群から選択される。
【0132】
別の好ましい実施態様において、第五配列の位置226にあるアミノ酸残基は、V及びIからなる群から選択される。
【0133】
別の好ましい実施態様において、第五配列の位置229にあるアミノ酸残基は、D及びNからなる群から選択される。
【0134】
別の好ましい実施態様において、第五配列の位置232にあるアミノ酸残基は、P及びDからなる群から選択される。
【0135】
別の好ましい実施態様において、第五配列の位置233にあるアミノ酸残基は、T及びSからなる群から選択される。
【0136】
別の好ましい実施態様において、第五配列の位置234にあるアミノ酸残基は、S、E及びRからなる群から選択される。
【0137】
別の好ましい実施態様において、第五配列の位置238にあるアミノ酸残基は、P及びGからなる群から選択される。
【0138】
別の好ましい実施態様において、第五配列の位置239にあるアミノ酸残基は、I及びVからなる群から選択される。
【0139】
別の好ましい実施態様において、第五配列の位置246にあるアミノ酸残基は、C、V及びMからなる群から選択される。
【0140】
別の好ましい実施態様において、第五配列の位置250にあるアミノ酸残基は、E、K及びDからなる群から選択される。
【0141】
別の好ましい実施態様において、第五配列の位置251にあるアミノ酸残基は、A及びGからなる群から選択される。
【0142】
別の好ましい実施態様において、第五配列の位置253にあるアミノ酸残基は、V及びIからなる群から選択される。
【0143】
別の好ましい実施態様において、第五配列の位置254にあるアミノ酸残基は、A及びVからなる群から選択される。
【0144】
別の好ましい実施態様において、第五配列の位置256にあるアミノ酸残基は、L及びMからなる群から選択される。
【0145】
単離されたポリペプチド
本発明の別の態様にしたがって、本発明の核酸分子によってコード化される(変異タンパク質、対立形質、変異体、断片、誘導体、及びアナログを含む)単離されたポリペプチドが提供される。ある実施態様において、前記単離されたポリペプチドは、配列番号13に対応するポリペプチド配列を含む。本発明のある代替的な実施態様において、前記単離されたポリペプチドは配列番号13と少なくとも60%同一のポリペプチド配列を含む。好ましくは、本発明の前記単離されたポリペプチドは配列番号13との少なくとも70%、75%又は80%同一性を有する。より好ましくは、前記同一性は85%、90%又は95%であるが、配列番号13との同一性は98%、99%、99.9%又はさらにより高くありうる。
【0146】
本発明の他の実施態様にしたがって、前述のポリペプチド針悦の断片を含む単離されたポリペプチドが提供される。これらの断片には好ましくは少なくとも20個の連続したアミノ酸、より好ましくは少なくとも25個、30個、35個、40個、45個、50個、60個、70個、80個、90個、100個又はさらにより多くの連続したアミノ酸が含まれる。
【0147】
本発明のポリペプチドは、前述のポリペプチド配列と異種性のポリペプチドとの間の融合も含む。前記異種性の配列は、例えば組換えで発現されるタンパク質の精製及び/又は可視化を容易にするようデザインされた異種性の配列を含むことができる。タンパク質融合の他の制限のない例には、ファージ又は細胞の表面上でコード化されたタンパク質を表しうるもの、緑色蛍光タンパク質(GFP)などの本質的に蛍光性のタンパク質への融合、及びIgG Fc領域への融合が含まれる。
【0148】
UDP−ガラクトース4−エピメラーゼ/β1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ融合ポリペプチド
本発明の更なる態様において、エピメラーゼ及びガラクトシルトランスフェラーゼ活性を含むポリペプチドをコード化する遺伝子融合が生成される。ある実施態様において、UDP−ガラクトース4−エピメラーゼ及びβ1,4−GalTIを含む融合ポリペプチドが生成され、宿主細胞に導入される。より好ましい実施態様において、前記融合ポリペプチドはさらに、リーダー配列を含む。例えば、指向性ペプチドをコード化するリーダー配列のライブラリが、SpGalE/hGalTI融合にフレーム内に連結される。さらにより好ましい実施態様において、前記融合ポリペプチドは、ScMnn2(s)リーダー、SpGalEエピメラーゼ及びhGalTIを含む。前記融合ポリペプチドは、HYGマーカーを含む酵母組み込みプラスミドに挿入される。pRCD461と命名されるエピメラーゼ−ガラクトシルトランスフェラーゼ組み込みプラスミドの例は図5に示されている(実施例8)。前記エピメラーゼ−ガラクトシルトランスフェラーゼ融合形質転換体は、約70%ガラクトシル化したヒト様糖タンパク質GalGlcNAcManGlcNAcを生成する(図15B)。
【0149】
B1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ、UDP−ガラクトース4−エピメラーゼ、UDP−ガラクトース輸送体ポリペプチド
本発明の別の態様において、β−ガラクトシルトランスフェラーゼ、エピメラーゼ及びUDP−ガラクトース輸送体の活性を含むポリペプチドをコード化する単一構築物が生成される。ある実施態様において、ヒトβ1,4−GalT、SpGalE及びDmUGT(「三重」)を含むプラスミドを構築する(実施例9)。好ましい実施態様において、前記トランスフェラーゼポリペプチドはさらに、リーダー配列、例えばhGalTIへフレーム内に凍結されたScMnn2(s)を含む。3つのポリペプチドはすべて、好ましくは自らのプロモーター及び終結因子とともにKANRマーカーを含有する酵母組み込みプラスミドへと挿入される。pRCD465と命名されるこの「三重」組み込みプラスミドの例は図4に示されている。ある実施態様において、前記融合ポリペプチドを含む「三重」組み込みプラスミドが、宿主細胞において導入及び発現され、末端GlcNAc残基を産生する。P.パストリスYSH−44を前記「三重」組み込みプラスミドで形質転換し、RDP80と命名した。
【0150】
RDP80系において産生されるN−グリカンが、推定したGalGlcNAcManGlcNAc種であるかどうかを査定するため、RDP80から分泌され、精製したK3を、CMP−NANAの存在下において試験管内でシアリルトランスフェラーゼとインキュベートし、生じたN−グリカンが放出された。前記N−グリカンのMALDI−TOF MS分析は、最終的にシアル酸付加したN−グリカンNANAGalGlcNAcManGlcNAcである複雑なものの質量に対応する2227m/z[X]での優勢なピークを示した(図14C)。
【0151】
UDP−Galの代替的な生産
前述のように、ガラクトース残基のN−グリカンへの転移は、活性化されたガラクトース(UDP−Gal)のプールを要する。下等真核生物における内在性レベルを上回るこのようなプールを形成するある方法は、UDP−ガラクトース4エピメラーゼの発現である。代替的な経路には、3つの個別の遺伝子(UDP−ガラクトース4エピメラーゼのない状態での形質膜ガラクトースパーミアーゼ、ガラクトキナーゼ、及びガラクトース−1−リン酸ウリジルトランスフェラーゼ)の発現が含まれる。前記UDP−ガラクトース4エピメラーゼのない状態で、ガラクトースの外来源を有するルロワ(LeLoir)経路のその他の3つの遺伝子の発現は、UDP−ガラクトースの内在性レベルを上昇するのに機能するであろう(Rossほか、2004)。さらに、本実施態様において、前記生じたUDP−ガラクトースがN−グリカンなどの基質への添加と離れては代謝できないため、UDP−ガラクトース4エピメラーゼのないことによってUDP−ガラクトースのレベルは、ガラクトースの外来性濃縮を調節することで調節できるようになる。
【0152】
ガラクトースパーミアーゼは、形質膜ヘキソース輸送体であり、外来源からガラクトースを取り込む。ある実施態様において、S.セレビシエガラクトースパーミーゼ遺伝子、GAL2(Genbank: M81879)、又はガラクトースを取り込むことのできる形質膜ヘキソース輸送体をコード化するいずれかの遺伝子を使用する。
【0153】
ガラクトキナーゼは、ガラクトース代謝の第一段階、すなわちガラクトースのガラクトース−1−リン酸へのリン酸化を触媒する酵素である。別の実施態様において、S.セレビシエ由来のGAL1遺伝子(Genbank: X76078)を使用する。
【0154】
ガラクトース−1−リン酸ウリジルトランスフェラーゼは、UDP−ガラクトース及びガラクトース−1−リン酸のUDP−ガラクトース及びグルコース−1−リン酸への変換である、ガラクトース代謝の第二段階を触媒する。別の実施態様において、ガラクトース−1−リン酸ウリジルトランスフェラーゼ活性をコード化するいずれかの遺伝子を使用でき、これにはS.セレビシエGAL7(Genbank: M12348)が含まれる。
【0155】
好ましい実施態様において、UDP−ガラクトース4エピメラーゼをコード化する遺伝子は、ルロワ(LeLoir)経路を介してガラクトースを代謝できる下等真核生物から削除される。
【0156】
より好ましい実施態様において、ガラクトースパーミアーゼ、ガラクトキナーゼ及びガラクトース−1−リン酸ウリジルトランスフェラーゼをコード化する遺伝子を、gal(−)でありルロワ(LeLoir)経路の遺伝子を内在的に発現しない下等真核宿主細胞において発現させる(Hittingerほか、2004)。
【0157】
この代替実施態様の利点は、生育阻害濃度を下回るレベルでの外部ガラクトースの調節により、UDP−ガラクトース4−エピメラーゼのないことで内部UDP−ガラクトース濃度の特異的な調節が可能になることである。
【0158】
遺伝学的に変化した酵母細胞におけるガラクトシル化したN−グリカン産生の増加
酵母及び菌の宿主におけるヒト様N−グリカンを産生する方法は、WO00200879A3及びWO03056914A1において提供され、本明細書に組み込まれる。当業者は、前述の方法と組み合わせて本明細書で開示された手段の決まりきった改変が対象の糖タンパク質の産生における改善された結果を提供し得ることを認識する。
【0159】
本発明の方法にしたがって、少なくともβ−ガラクトシルトランスフェラーゼ融合構築物pXB53で形質転換したP.パストリス(実施例4)(図12)は、検出可能な部分において複雑によりガラクトシル化されたグリカンを生成する。ガラクトース残基の少なくとも10%は宿主細胞において糖タンパク質へと転移される。エピメラーゼの発現は、ガラクトース転移のレベルも増加する(図13)。好ましくは、ガラクトース残基の少なくとも60%が宿主細胞における糖タンパク質へと転移される。UGTなどの別の異種性グリコシル化酵素の発現は、望ましいガラクトシル化した糖タンパク質の細胞内産生をさらに強化する。驚くべきことに、このような輸送体の一つであるDmUGTの発現はガラクトース転移を劇的に増加させる(図11)。本実施態様の最良のモードにおいて、DmUGTで形質転換した宿主細胞は、少なくとも90%以上のガラクトース転移を示す。
【0160】
好ましくは、前記酵母宿主細胞の温度は、前記酵素の至適温度と符合させるため37℃に維持される。
【0161】
さらに、前記方法にはこれらの糖タンパク質を単離することも含まれる。
【0162】
UDPase活性の発現
WO02/00879に記載されているように、ヒトにおいて、ヌクレオチド糖前駆体(例えばUDP−N−アセチルグルコサミン、UDP−N−アセチルガラクトサミン、CMP−N−アセチルノイラミン酸、UDP−ガラクトース等)は、一般にサイトゾル中で合成され、ゴルジ体へと輸送され、そこでヌクレオチド糖前駆体はグリコシルトランスフェラーゼによって中心オリゴ糖に結合する。このプロセスを下等真核生物において複製するため、糖ヌクレオシド特異的輸送体が、ヌクレオシド糖前駆体の適切なレベルを確実にするため、ゴルジ体において発現されなければならない(Sommers,1981; Sommers,1982; Perez,1987)。糖のN−グリカンへの転移の副産物は、ヌクレオシド二リン酸又はヌクレオシド一リン酸のいずれかである。一リン酸塩がアンチポートメカニズムによってヌクレオシド三リン酸糖との交換において直接放出されることができる一方で、二リン酸ヌクレオシド(例えばGDP)は、放出される前に、リン酸分解酵素(例、GDPase)によって開裂され、ヌクレオシド一リン酸及び無機リン酸が産生されなければならない。この反応は、S.セレビシエ由来のGDPaseがマンノシル化に必要であることがわかっているため、効率のよいグリコシル化に重要であるように見える。しかしながら、前記酵素はUDPに対して活性が10%しかない(Berninsone,1994)。下等真核生物は、ゴルジ体において糖タンパク質合成のためのUDP−糖前駆体を利用しないため、ゴルジ体においてUDP特異的ジホスファターゼ活性をしばしば有していない。
【0163】
遺伝子工学的に改変された酵母の系は、基質としてUDP−GlcNAc又はUDP−ガラクトースを利用する複数のトランスフェラーゼ酵素を含有する。このことは、殆んどの種においてこれらの基質を含有しない酵母ゴルジ体において、適切な基質プールの遺伝子工学的改変を要する。しかしながら、UDP−GlcNAc又はUDP−ガラクトースを利用するトランスフェラーゼ反応の最終生成物には遊離UDPが含まれる。このUDPは、これらの糖ヌクレオチドを利用する殆んどのトランスフェラーゼの強い阻害剤として作用する。S.セレビシエは、ヌクレオシドジホスファターゼ活性を有する2つのゴルジ体タンパク質を発現する。1つはScGDA1であり、GDPに対して非常に特異的である(Abeijonほか、1993)。二番目はScYND1というアピラーゼであり、したがってヌクレオシド二リン酸と同様、ヌクレオシド三リン酸も加水分解でき、ADP/ATP、GDP/GTP及びUDP/UTPに対して等しく特異的である(Gaoほか、1999)。しかしながら、野生型ゴルジ体におけるUDPに結合した糖の欠失、及びUDPを最終生成物として生成するトランスフェラーゼ酵素の同時欠失のため、遺伝子工学的に改変された酵母の系におけるUDPの蓄積の起こりうる上昇が重大な関心事である。
【0164】
サイトゾルからゴルジ体へのガラクトース残基の転移がUDPaseの欠失によって阻害され得るので、UDPaseを発現させるための遺伝子操作が下等真核宿主細胞において効率よいガラクトース転移のために必要であろう。したがって、本発明の別の態様において、UDPaseをコード化する遺伝子を発現させる、好ましくは過剰発現させる方法が提供される。UDPase活性をコード化する遺伝子の過剰発現により、ゴルジ体における受容体基質へのガラクトースの転移に必要な糖ヌクレオチドUDP−ガラクトースの利用可能性を増加させることが意図される。酵母のゴルジ体におけるUDPase活性のレベルを上昇させるためにはいくつかの可能性が存在する。ある実施態様において、UDPase活性をコード化する遺伝子、例えばUDPに対していくらかの活性(約10%)のあるScGDA1(NP_010872)が過剰発現される。別の実施態様において、ヌクレオシドジホスファターゼ活性をコード化する遺伝子、例えばGDPと比較してUDPに対してより高い活性を有するScYND1(NP_010920)(これは、しかし、ヌクレオチド二リン酸に特異的ではない。)が過剰発現される。さらに、別の実施態様において、P.パストリスにおけるより高いUPDase活性を得るという目標を達成するために、S.セレビシエGDA1又はYND1が過剰発現される。又は、これらの遺伝子のP.パストリスのホモログ(これはBLAST相同性検索を介して簡単に同定可能である。)が過剰発現される。
【0165】
さらに、これらの糖ヌクレオチドを利用する生物は、これら糖ヌクレオチドをUMPへ、UDPに特異的なヌクレオチドジホスファターゼの作用を介して変換することができる。一例は、Wang及びGuidotti(AF016032)によって特定されたヒトウリジンジホスファターゼ(UDPase)である。しかしながら、このタンパク質は2つの推定膜貫通ドメインを含有し、1つはC末端に、1つはN末端にある。したがって、酵母ゴルジ体におけるこのタンパク質の局在化のためには、このタンパク質の触媒ドメインを酵母指向性ドメインと融合させる必要がある。
【0166】
K.ラクティス及びS.セレビシエを含む他の酵母は、それらのゴルジ体においてUDP−糖を利用し、GlcNAc及びガラクトースをそれぞれそれらのN−グリカンへと付加する。K.ラクティスもS.ポムベも、KlGDA1(Lopez−Avalosほか、2001; CAC21576)及びSpgdaI(D’Alessioほか、2003; NP_593447)とそれぞれ命名され、UDPase活性も有する、ScGDA1の相同体を発現する。UDPが遺伝子工学的に改変された酵母の系において蓄積し、前記遺伝子工学的に改変されたトランスフェラーゼに対して有害であることが示される場合、これらのいずれかのタンパク質又はより多くのタンパク質の発現はUDPase活性を許容可能なレベルまで押し上げるよう機能する。
【0167】
アシアロ糖タンパク質受容体(ASGR)に対する結合親和性
本発明の別の特徴は、脱シアル酸付加した糖タンパク質を除去し、循環器系における治療タンパク質の半減期を低下させることがわかっているASGRに対する結合親和性の低下を提供する。先行研究により、二アンテナ性構造を有するグリカンは、三アンテナ性又は四アンテナ性構造を有するグリカンよりもあまり迅速には除去されないことが示されている(Stockert、Physiol Rev.1995年7月号;75(3): 591−609)。本発明のある態様において、末端ガラクトース残基を有することを特徴とする単一糖形態(例えば二アンテナ性構造)を有する対象のタンパク質上のグリカンを提供する。このような二アンテナ性構造は、三アンテナ性及び四アンテナ性分岐反応を触媒する他のGnTのため、哺乳類細胞において容易に生成されない。ガラクトース残基を備えた末端GlcNAc残基を有する基質をキャッピングすることによって、ガラクトシル化した基質へのGlcNAcの転移を触媒する他のGnT(例、GnT IV、GnT V)は存在しない。したがって、本発明は、哺乳類宿主において産生される前記糖タンパク質と比較して、ASGRに対する結合親和性がほとんどない脱シアル酸した糖タンパク質を生成するための方法を提供する。より好ましい実施態様において、脱シアル酸した糖タンパク質は、哺乳類において産生される異種性の糖タンパク質と比較して、増加した体内における循環上の半減期及び生物活性によって特徴付けられる。
【0168】
組み込み部位
例えば1,3マンノシルトランスフェラーゼ(例えばS.セレビシエにおけるMNN1)(Graham,1991)、1,2マンノシルトランスフェラーゼ(例えばS.セレビシエ由来のKTR/KREファミリー)、1,6マンノシルトランスフェラーゼ(S.セレビシエ又はP.パストリス由来のOCH1)、マンノシルリン酸トランスフェラーゼ及びその制御因子(S.セレビシエ由来のMNN4、PNO1及びMNN6)、細胞内プロテアーゼA(PEP4)、細胞内プロテアーゼB(PRB1)GPIにより固定されたアスパラギン酸プロテアーゼ(YPS1)、及び異常で、免疫原性の(即ち、ヒト以外でのグリコシル化反応に関与する)他の酵素などのマンノシルトランスフェラーゼに対応する遺伝子座においてUGT、エピメラーゼ及びβ1,4GalTをコード化する核酸を組み込むことが好ましい。
【0169】
破壊された遺伝子座を有する変異体は、酵素活性の低下した又は酵素活性が完全に排除された生存可能な表現型を生じる。好ましくは、惹起(initiating)するα−1,6マンノシルトランスフェラーゼ活性をコード化する遺伝子座は、グリコシルトランスフェラーゼ活性をコード化する遺伝子の初期組み込みのための適した標的である。同じようにして、前記遺伝子座における遺伝子破壊事象に基づいて、(1)よりヒト様の様式でグリコシル化する細胞の能力を改善する、(2)タンパク質を分泌する細胞の能力を改善する、(3)外来タンパク質のタンパク質分解を低下させる、及び(4)精製を容易にするプロセス又は発酵プロセス自体の他の特徴を改善する、ことが期待される他の染色体の組み込み部位の範囲を選択できる。
【0170】
特に好ましい実施態様において、ライブラリDNAは宿主染色体における望ましくない遺伝子の部位へ組み込まれ、前記遺伝子を破壊し又は除去される。例えば、OCH1、MNN1又はMNN4遺伝子の部位への組み込みによって、望ましいライブラリDNAの発現が可能になる一方、酵母における糖タンパク質の過マンノシル化に関与する酵素の発現を防止する。他の実施態様において、ライブラリDNAは、核酸分子、プラスミド、ベクター(例えばウィルスベクター又はレトロウィルスベクター)、染色体を介して宿主へと導入されてもよく、自立性核酸分子として、又は宿主ゲノムへの相同的又は無作為に組み込まれてもよい。いずれの場合においても、安定的に形質転換された宿主生物を容易に選別することを可能にするために、少なくとも1つの選択可能なマーカー遺伝子を各ライブラリDNA構築物に含むことが一般に望ましい。選択できるURA5などの再利用可能なマーカー遺伝子(Yeast,2003年11月号;20(15): 1279−1290)が特に適している。
【0171】
更なる配列多様性の作成
本実施態様の方法は、核酸、例えば宿主へ形質転換されるDNAライブラリが多様な配列を含有するとき最も効果的であり、それにより少なくとも1つの形質転換体が望ましい表現型を呈する確率を増大させる。例えば、単一のアミノ酸突然変異が、糖タンパク質加工酵素の活性を劇的に変更させ得る(Romeroほか、2000)。したがって、形質転換の前に、DNAライブラリ又はサブライブラリ成分は、更なる配列多様性を作成するための1つ以上の技術へ供され得る。例えば、遺伝子シャフリング、エラープロンPCR、試験管内変異誘発又は配列多様性を作成するための他の方法が、融合構築物のプール内で配列のより大きな多様性を得るために実施し得る。
【0172】
コドン最適化
本発明の核酸が、保存的なアミノ酸置換、付加、欠失又はその組み合わせなどの一次アミノ酸配列における1つ以上の変化を生じるようにコドンの最適化がされてもよいことも意図される。
【0173】
発現調節配列
各ライブラリ構築物を、前述のオープン・リーディング・フレーム配列に加えて、(例えばプロモーター、転写終結因子、エンハンサー、リボソーム結合部位、及び宿主生物体への融合構築物の形質転換に際し融合タンパク質の効果的な転写及び翻訳を確実にするのに必要であり得る他の機能的配列などの)発現調節配列と共に提供することが一般に好ましい。
【0174】
適切なベクター構成成分(例えば、選択可能なマーカー、発現調節配列(例、プロモーター、エンハンサー、終結因子等)及び必要に応じて宿主細胞における自律複製に必要な配列)は、選択された特定の宿主細胞の機能として選択される。特定の哺乳類宿主細胞又は下等真核宿主細胞に使用のための適切なベクター構成成分の選抜基準は日常的なものである。本発明の好ましい下等真核宿主細胞には、ピキアパストリス(Pichia pastoris)、ピキアフィンランディカ(Pichia finlandica)、ピキアトレハロフィラ(Pichia trehalophila)、ピキアコクラマエ(Pichia koclamae)、ピキアメンブラナエファシエンス(Pichia membranaefaciens)、ピキアミニュータ(Pichia minuta)(オガタエアミニュータ(Ogataea minuta)、ピキアリンドネリ(Pichia lindneri))、ピキアオプンティアエ(Pichia opuntiae)、ピキアサーモトレランス(Pichia thermotolerans)、ピキアサリクタリア(Pichia salictaria)、ピキアグエルキューム(Pichia guercuum)、ピキアピジュペリ(Pichia pijperi)、ピキアスティプティス(Pichia stiptis)、ピキアメタノリカ(Pichia methanolica)、ピキア種(Pichia sp.)、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス種(Saccharomyces sp.)、ハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、クルイベロミセス種(Kluyveromyces sp.)、クルイベロミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、アスペリギルス・ニドウランス(Aspergillus nidulans)、アスペリギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリゼ(Aspergills oryzae)、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)、クリソスポリウム・ラックノウエンス(Chrysosporium lucknowense)、フサリウム種(Fusarium sp.)、フザリウム・グラミネウム(Fusarium gramineum)、フザリウム・ベネナツム(Fusarium venenatum)、フィスコミトレラ・パテンス(Physcomitrella patens)及びノイロスポラ・クロッサ(Neurospora crossa)が含まれる。
【0175】
宿主がピキア・パストリスの場合、適切なプロモーターは、例えばAOX1、AOX2、GAPDH、OCH1、SEC4、D2及びP40のプロモーターを含む。
【0176】
選択可能なマーカー
薬物耐性を付与し又は宿主の代謝上の破壊された部分を補完するための遺伝子などの、少なくとも1つの選択可能なマーカーを各構築物に提供することがまた好ましい。前記マーカーの存在は、形質転換体のその後の選択において有用であり、例えば酵母においては、URA5、URA3、HIS4、SUC2、G418、BLA又はSH BLEといった遺伝子が使用され得る。選択可能なマーカーの多くは公知であり、酵母、菌、植物、昆虫、哺乳類及びその他の真核宿主細胞において使用するために利用可能である。
【0177】
形質転換
酵母において、電気穿孔法、塩化リチウム法又はスフェロプラスト法などのDNA導入法のいずれかの従来の方法を使用し得る。糸状菌及び植物細胞において、従来の方法は、粒子照射、電気穿孔法及びアグロバクテリウムにより仲介される形質転換を含む。高密度培養(例えば酵母における発酵)に適した安定した株を作製するため、宿主染色体へ融合構築物に組み込むことが望ましい。好ましい実施態様において、組み込みは本分野で周知の技術を使用して相同的組換えを介して行われる。好ましくは、P.パストリスの安定した遺伝的修飾は、二重のクロスオーバー事象を介して行われる(Nettほか、Yeast、2003年11月号;20(15): 1279−1290)。例えば、異種性の酵素活性は宿主生物の配列と相同的な側面配列によって提供され、次いで、単一マーカーを拾いだすことにより形質転換が行われる。このような方法により、組み込みが、再利用可能なマーカーを使用する宿主ゲノムの特定の部位において行われる。
【0178】
スクリーニングプロセス及び選択プロセス
宿主株を異種性の酵素で形質転換した後、望ましいグリコシル化表現型を示す形質転換体が選択される。選択は、単一段階において又は多様なアッセイ又は検出方法のいずれかを使用する一連の表現型の濃縮段階及び/又は枯渇段階によって実施され得る。表現型の特徴付けは、手動で又は自動化した高処理量のスクリーニング装置を使用して実施し得る。共通して、宿主微生物は、細胞表面上にタンパク質N−グリカンを示し、それにより細胞表面上に多様な糖タンパク質が局在する。
【0179】
例えば、細胞表面上の末端GlcNAcの最大濃度を有する細胞について、又は最大の末端GlcNAc含有量でタンパク質を分泌する細胞について、スクリーニングし得る。このようなスクリーニングは、染色手順、特定の末端GlcNAcに結合する、抗体又はマーカーに結合したレクチン(このようなレクチンはE.Y.Laboratories社、San Mateo,CAから入手可能である。)の結合能力、末端マンノース残基へ結合する特異的レクチンの低下した能力、インビボでの放射性標識した糖を組み込む能力、染色剤への又は荷電した表面への変化した結合のような可視化方法に基づき得、又はフルオロフォア標識したレクチン又は抗体と組み合わせたFluorescence Assited Sorting(FACS)を使用することによって達成し得る(Guillen,1998)。
【0180】
したがって、無傷細胞が、この細胞を望ましいN−グリカンへ特異的に結合するレクチン又は抗体に曝すことによって望ましいグリコシル化表現型についてスクリーニングされ得る。多様なオリゴ糖特異的レクチン(例えばEY Laboratories,San Mateo,CAから)が商業的に入手可能である。あるいは、ヒト又は動物N−グリカンに対して特異的な抗体は、商業的に入手可能であり、又は標準的な技術を使用して作製し得る。適切なレクチン又は抗体は、発色団、フルオロフォア、放射性同位体、又は色素生産性基質を有する酵素などのリポーター分子へ結合させ得る(Guillenほか、1998、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95(14): 7888−7892)。
【0181】
次いで、スクリーニングは、分光測定、蛍光測定、蛍光標示式細胞分取、又はシンチレーション計数などの分析方法を使用して実施し得る。他の場合において、形質転換した細胞から単離した糖タンパク質又はN−グリカンを分析する必要があり得る。タンパク質の単離は、本分野で公知の技術によって実施し得る。好ましい実施態様において、リポータータンパク質は、培地へと分泌され、アフィニティークロマトグラフィー(例、Ni−アフィニティ又はグルタチオン−S−トランスフェラーゼアフィニティクロマトグラフィー)により精製される。単離されたN−グリカンが好ましい場合、エンド−b−N−アセチルグルコサミニダーゼ(Genzyme社、Boston,MA; New England Biolabs,Beverly,MA)などの酵素を使用して糖タンパク質から前記N−グリカンを切断してもよい。単離されたタンパク質又はN−グリカンは、次いで、液体クロマトグラフィー(例、HPLC)、質量分析又は他の適切な手段によって分析され得る。米国特許第5,595,900号は、望ましい細胞外炭水化物構造を有する細胞を特定し得るいくつかの方法を教示している。好ましい実施態様において、MALDI−TOF質量分析が前記切断したN−グリカンを分析するのに使用される。
【0182】
望ましい形質転換体の選抜の前に、望ましくない表現型を有する細胞の形質転換した集団を枯渇させることが望ましいこともあり得る。例えば、前記方法を使用して、機能的マンノシダーゼ活性を細胞へと遺伝子工学的に改変させるとき、望ましい形質転換体は、細胞内糖タンパク質において比較的低レベルのマンノースを有する。形質転換した手段を培地中のマンノースの致死量放射性同位体へ暴露することで、望ましくない表現型、つまり高レベルの組み込まれたマンノースを有する形質転換体の集団を枯渇させる(Huffaker TC及びRobbins PW.,Proc Natl Acad Sci USA.1983年12月号;80(24): 7466−7470)。あるいは、望ましくないN−グリカンに対して指向する細胞毒性レクチン又は抗体が、望ましくない表現型の形質転換した集団を枯渇させるのに使用し得る(例、Stanley P及びSiminovitch L.Somatic Cell Genet 1977年7月号;3(4): 391−405)。米国特許第5,595,900号は望ましい細胞外炭水化物構造を有する細胞を特定し得るいくつかの方法を教示している。この戦略を繰り返して実施することによって、下等真核生物におけるさらにより複雑なグリカンを順次行うことによって遺伝子工学的に改変できる。
【0183】
宿主細胞の表面上にヒト様N−グリカン中間体GalGlcNAcManGlcNAcの高い程度を有する前記細胞を検出するために、例えばインビトロ細胞アッセイにおいてGalTによるUDP−ガラクトースからのガラクトースへの最も効率的な転移を可能にする形質転換体を選択し得る。このスクリーニングは、アガープレート上で選択的な圧力の下で形質転換したライブラリを有する細胞を生育させ、個々のコロニーを96穴マイクロタイタープレートへと転移することによって実施し得る。前記細胞を生育させた後、前記細胞を遠心分離し、緩衝液中に再懸濁し、UDP−ガラクトース及びGalTの添加後のUDPの放出をHPLC又はUDPについての酵素結合アッセイのいずれかによって測定する。あるいは、放射性標識したUDP−ガラクトース及びGalTを使用し、前記細胞を洗浄した後、β−ガラクトシダーゼによる放射性ガラクトースの放出について観察してもよい。このことはすべて、手動で実施してもよく又は高処理量のスクリーニング装置の使用を通じて自動化されてもよい。第一アッセイにおいてより多くのUDPを放出する形質転換体、又は第二アッセイにおいてより放射性標識されたガラクトースを放出する形質転換体は、前記形質転換体の表面上にGalGlcNAcManGlcNAcのより高い程度を有すると期待され、したがって望ましい表現型を構成すると期待される。同様のアッセイが、同様に分泌されたタンパク質上のN−グリカンを観察するのに適応させ得る。
【0184】
あるいは、形質転換した細胞の表面上のグリコシル化パターンの変化を示すことのできるレクチン結合アッセイなどのその他の適切なスクリーニングを使用してもよい。この場合、末端マンノースに特異的なレクチンの結合の低下は、適切な選抜ツールであり得る。スノードロップ(Galantus nivalis)レクチンは、十分なマンノシダーゼII活性がゴルジ体に存在する場合低下すると期待される末端a−1,3マンノースへ特異的に結合する。又、高い末端マンノース含有量を有する細胞の除去を可能にするクロマトグラフィー分離段階を実施することによって、望ましい形質転換体を濃縮し得る。この分離段階は低い末端マンノース含有量を有する細胞を上回る、高い末端マンノース含有量を有する細胞に特異的に結合するレクチンカラムを使用して実施されるであろう(例、アガロースへ結合したスノードロップレクチン、Sigma,St.Louis,MO)。
【0185】
宿主細胞
本発明はP.パストリスを宿主生物体として使用して例示するが、酵母宿主及び菌宿主の他の種を含む他の真核宿主細胞に、ヒト様糖タンパク質を産生するために、本明細書に記載されるように替えることができることが当業者によって理解される。このような宿主には、好ましくはピキアフィンランディカ(Pichia finlandica)、ピキアトレハロフィラ(Pichia trehalophila)、ピキアコクラマエ(Pichia koclamae)、ピキアメンブラナエファシエンス(Pichia membranaefaciens)、ピキアミニュータ(Pichia minuta)(オガタエアミニュータ(Ogataea minuta)、ピキアリンドネリ(Pichia lindneri))、ピキアオプンティアエ(Pichia opuntiae)、ピキアサーモトレランス(Pichia thermotolerans)、ピキアサリクタリア(Pichia salictaria)、ピキアグエルキューム(Pichia guercuum)、ピキアピジュペリ(Pichia pijperi)、ピキアスティプティス(Pichia stiptis)、ピキアメタノリカ(Pichia methanolica)、ピキア種(Pichia sp.)、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス種(Saccharomyces sp.)、ハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、クルイベロミセス種(Kluyveromyces sp.)、クルイベロミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、アスペリギルス・ニドウランス(Aspergillus nidulans)、アスペリギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリゼ(Aspergills oryzae)、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)、クリソスポリウム・ラックノウエンス(Chrysosporium lucknowense)、フサリウム種(Fusarium sp.)、フザリウム・グラミネウム(Fusarium gramineum)、フザリウム・ベネナツム(Fusarium venenatum)、フィスコミトレラ・パテンス(Physcomitrella patens)及びノイロスポラ・クロッサ(Neurospora crossa)が含まれる。
【0186】
望ましくない宿主細胞グリコシル化遺伝子、例えばOCH1の同定及び破壊のために本明細書に記載された技術は、他の酵母系及び菌系などの他の真核宿主細胞における望ましくない宿主細胞グリコシル化遺伝子及び/又他の相同の若しくは機能的に関連した遺伝子に適用可能であると理解される(WO02/00879参照)。さらに、他の好ましい宿主細胞は、Dol−P−Man:ManGlcNAc−PP−Dolマンノシルトランスフェラーゼ活性についてコード化するAlg3pにおいて欠乏している。
【0187】
好ましい宿主細胞は、酵母宿主及び糸状菌宿主であり、これらはβ1,4−ガラクトース結合、フコース及び末端シアル酸を本質的に欠失している。哺乳類糖タンパク質のN−グリカンとは異なり、これらの糖は酵母及び糸状菌において産生される糖タンパク質に関して通常見つかっていない。本発明は、糖タンパク質上にガラクトース残基を産生し、前記糖タンパク質上にフコース残基およびシアル酸残基を本質的に欠失する宿主細胞を遺伝子工学的に改変するための方法を提供する。別の実施態様において、フコース又はシアル酸を産生する該宿主細胞は、フコシルトランスフェラーゼ活性又はシアリルトランスフェラーゼ活性を低下させるか又は排除するよう修飾できる。本発明の宿主から産生される糖タンパク質組成物はそれゆえ、フコース残基及びシアル酸残基を本質的に欠失している。本発明の有意な利点は、前記宿主細胞がフコシダーゼ及びシアリダーゼ処理による生体外修飾をせずにガラクトシル化した、フコースのない、及びシアル酸のない糖タンパク質を産生することである。
【0188】
他の好ましい宿主細胞には、グリカンに関してマンノシルリン酸化を欠失する菌宿主が含まれる(USSN11/020,808)。さらに他の好ましい宿主細胞には、グリカンに関してβ−マンノシル化を欠失する菌宿主が含まれる(USSN60/566,736)。
【0189】
したがって、本発明の別の態様は、ヒト細胞によって作られるものと類似した修飾されたN−グリカンを含む糖タンパク質を発現するヒト以外の真核宿主系に関する。酵母細胞及び菌細胞以外の種において本発明の方法を実施することはしたがって、本発明により意図され包含される。本発明のコンビナトリアル核酸ライブラリがいずれかの真核宿主細胞系におけるグリコシル化経路を修飾する構築物を選択するために使用し得る。例えば、本発明のコンビナトリアルライブラリは、宿主細胞分泌経路に沿って望ましい位置においてグリコシル化酵素又はその触媒作用ドメインを含むタンパク質を局在化させるために、植物、藻類及び昆虫において、並びに哺乳類細胞及びヒト細胞を含む他の真核宿主細胞においても使用し得る。好ましくは、グリコシル化酵素又は触媒作用ドメイン及びその類似体は、これらが機能でき、好ましくはこれらが最も効率よく機能するようデザインされ又は選択される宿主細胞分泌経路に沿って、細胞内の位置へと向かわされる。
【0190】
本発明のこの実施態様にしたがった方法を使用して影響を及ぼしうるグリコシル化への修飾の例は、(1)ManGlcNAcからマンノース残基を切断してManGlcNAcN−グリカンを生じるよう真核宿主細胞を遺伝子工学的に改変すること、(2)N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)残基をGlcNAcトランスフェラーゼIの作用によりManGlcNAcへ付加するよう真核宿主細胞を遺伝子工学的に改変すること、(3)N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GnTI、GnTII、GnTIII、GnTIV、GnTV、GnTVI、GnTIX)、マンノシダーゼII、フコシルトランスフェラーゼ(FT)、ガラクトシルトランスフェラーゼ(GalT)又はシアリルトランスフェラーゼ(ST)などの酵素を機能的に発現するよう真核宿主細胞を遺伝子工学的に改変すること、である。
【0191】
前記方法を繰り返すことによって、ますます複雑なグリコシル化経路が下等真核微生物などの標的宿主へと遺伝子工学的に改変できる。ある好ましい実施態様において、前記宿主生物体は、グリコシル化活性をコード化する配列を含むDNAライブラリと2回以上形質変換される。望ましい表現型の選択は、形質転換の各ラウンド後、又はそれに替わるものとして何回もの形質転換が生じた後に実施され得る。複雑なグリコシル化経路はこの方法で迅速に遺伝子工学的に改変できる。
【0192】
指向性糖タンパク質
本明細書に記載の方法は、糖タンパク質、特にヒトにおいて治療上使用される糖タンパク質を産生するのに有用である。特異的糖形態を有する糖タンパク質は、例えば、治療用タンパク質の指向性において特に有用であり得る。例えば、マンノース−6−リン酸は、リソソームへタンパク質を指向することが示されており、マンノース−6−リン酸は、少しだけ述べれば、ゴーシェ病、ハンター病、ハーラー病、シャイエ病、ファブリー病及びテイ・サックス病などのリソソーム貯蔵疾患に関連したいくつもの酵素の適切な機能に不可欠であり得る。同様に、グリカン側鎖への1つ以上のシアル酸残基の付加は、投与後の生体内治療用糖タンパク質の寿命を延長させ得る。したがって、宿主細胞(例、下等真核細胞又は哺乳類細胞)は、前記細胞において発現される糖タンパク質中の末端シアル酸の程度を増大するよう遺伝子工学的に改変され得る。あるいは、シアル酸は、シアル酸トランスフェラーゼ及び適切な基質を使用する投与の前に、インビトロで対象のタンパク質に結合させてもよい。生育培地組成物の変化が、ヒトの形態をより密接に模倣する糖タンパク質を産生するために、ヒト様グリコシル化に関与する酵素活性の発現に加えて、採用されてもよい(S.Weikertほか、Nature Biotechnology,1999,17,1116−1121; Werner,Noeほか 1998 Arzneimittelforschung 48(8): 870−880; Weikert,Papacほか、1999; Andersen及びGoochee 1994 Cur.Opin.Biotechnol.5: 546−549; Yang及びButler 2000 Biotechnol.Bioengin.68(4): 370−380)。モノクローナル抗体に特異的なグリカンの修飾(例、二分するGlcNAcの付加)は、抗体依存性細胞の細胞毒性を改善することが示されており(Umana P.ほか、1999)、このことは抗体又は他の治療用タンパク質の産生のために望ましいことであり得る。
【0193】
治療用タンパク質は、典型的には注入、経口的、肺経由、又は他の手段によって投与される。本発明にしたがって産生し得る適切な標的糖タンパク質の例には、以下に制限を加えるものではないが、エリスロポエチン、インターフェロン−a、インターフェロン−b、インターフェロン−g、インターフェロン−w、及び顆粒球−CSF、GM−CSFなどのサイトカイン、第VIII因子、第IX因子、及びヒトタンパク質C、抗トロンビンIII、トロンビンなどの凝固因子、可溶性IgE受容体a鎖、IgG、IgG断片、IgG融合体、IgM、インターロイキン、ウロキナーゼ、キマーゼ、及び尿素トリプシン阻害剤、IGF結合タンパク質、上皮成長因子、成長ホルモン放出因子、アネキシンV融合タンパク質、アンジオスタチン、血管内皮増殖因子−2、骨髄系前駆体阻害因子−1、オステオプロテジェリン、a−1−抗トリプシン、a−胎児タンパク質、DNaseII、ヒトプラスミノーゲンのクリングル3、グルコセレブロシダーゼ、TNF結合タンパク質1、卵胞刺激ホルモン、細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4−Ig、膜貫通活性化因子及びカルシウム調節因子及びサイクロフィリンリガンド、可溶性TNF受容体Fc融合体、グルカゴン様タンパク質1、IL−2受容体アゴニストが含まれる。
【0194】
分泌シグナル配列
分泌シグナルをコード化する核酸配列を、糖タンパク質をコード化する対象の配列と結合させることがまた好ましい。「分泌シグナル配列」という語は、より大きなポリペプチドの構成成分として、合成された細胞の分泌経路を通じてより大きなポリペプチドを向わせるポリペプチド(「分泌ペプチド」)をコード化するDNA配列を示す。前記より大きなポリペプチドは、分泌経路を通じての移行の間、前記分泌ペプチドを除去するよう共通して開裂される。宿主細胞の分泌経路へとポリペプチドを向わせるため、(リーダー配列、プレプロ配列又はプレ配列としても公知の)分泌シグナル配列が発現ベクターにおいて提供される。前記分泌シグナル配列は、制限を加えることなく、糖タンパク質に関連した野生型配列、S.セレビシエSuc2シグナル配列をコード化する配列、ピキアPho2シグナル配列をコード化する配列、ピキアPrc1シグナル配列をコード化する配列、S.セレビシエα接合因子(αMF)シグナル配列をコード化する配列、ウシリゾチームCシグナル配列をコード化する配列の分泌シグナル配列であり得る。前記分泌シグナル配列は、核酸配列へ機能できるよう結合され、すなわち、前記2つの配列は正確な読み枠において接続され、新規に合成されるポリペプチドを宿主細胞の分泌経路へと向わせるよう置かれ得る。分泌シグナル配列は、興味の対象のポリペプチドをコード化するDNA配列に対して5’にどれも置かれるが、特定の分泌シグナル配列は、対象のDNA配列におけるほかのどこかに置かれてもよい(例、Welchほか、米国特許第5,037,743号;Hollandほか、米国特許第5,143,830号)。
【0195】
あるいは、本発明のポリペプチド中に含有される分泌シグナル配列は、分泌経路へと他のポリペプチドを向わせるのに使用される。本発明はこのような融合ポリペプチドについて提供する。本発明の融合ポリペプチドに含有される分泌シグナル配列は好ましくは、分泌経路へと更なるペプチドを向わせるために、更なるペプチドへアミノ末端で融合される。このような構築物は本分野で公知の数多くの適用を有する。例えば、これらの新規の分泌シグナル配列融合構築物は、受容体などの通常分泌されないタンパク質の活性部分の分泌を指示できる。このような融合物は、前記分泌経路を通じてペプチドを向わせるようインビボ又はインビトロで使用し得る。
【0196】
本発明の方法によって生産される糖タンパク質は、本分野で周知の技術によって単離できる。望ましい糖タンパク質は、分画、イオン交換、ゲルろ過、疎水性クロマトグラフィー及びアフィニティクロマトグラフィーなどの方法によって精製及び分離される。
【0197】
以下は、本発明の組成物及び方法を説明する例である。これらの例は制限を加えるものとして解釈されるべきではなく、前記例は、説明の目的のみのために含まれる。
【実施例1】
【0198】
プロモーターカセット及び発現ベクターの構築
PpOCH1遺伝子についての800塩基対プロモーターを、プライマーRCD48(配列番号15)(5’−TATGCGGCCGCGGCTGATGATATTTGCTACGA−3’)及びプライマーRCD134(配列番号16)(5’−CCTCTCGAGTGGACACAGGAGACTCAGAAACAG−3’)を使用して増幅し、PpSEC4遺伝子についての400塩基対プロモーターを、プライマーRCD156(配列番号17)(5’−CTTCTCGAGGAAGTAAAGTTGGCGAAACTT−3’)及びプライマーRCD157(配列番号18)(5’−CTTAGCGGCCGCGATTGTTCGTTTGAGTAGTTT−3’)を使用して増幅した。前記PCR産物をpCR2.1クローニングベクター(Invitrogen)へとクローニングし、配列決定した。次に、プラスミドpRCD360及びプラスミドpRCD362をそれぞれ作製するために導入されたXhoI/NotI制限部位を使用してGAPDHプロモーターの替わりにベクターpJN261(Nettほか、Yeast、2003年11月号;20(15): 1279−1290)へとOCH1プロモーター及びSEC4プロモーターをサブクローニングした。
【0199】
PpHIS3プロモーターを、プライマーRCD152(配列番号19)(5’−CTTCTCGAGGGCATTCAAAGAAGCCTTGGG−3’)及びプライマーRCD153(配列番号20)(5’−CTTAGCGGCCGCTGAGTGGTCATGTGGGAACTT−3’)を使用してPCR増幅し、プラスミドpCR2.1へとクローニングし、配列決定した。次に、PpPMA1強力プロモーターをより弱いPpHISプロモーターと置換して、PpHIS3プロモーターへと延びているNATプラスミドであるプラスミドpRCD351を作製するため、前記PpHIS3プロモーターをプラスミドpTA18へとサブクローニングするようXhoI/NotI部位を使用した。
【0200】
前記PpHIS3の一部を、プライマーRCD301(配列番号21)(5’−CCTGGATCCAACAGACTACAATGACAGGAG−3’)及びプライマーRCD302(配列番号22)(5’−CCTGCATGCCTCGAGCTTGCCGGCGTCTAAATAGCCGTTGAAG−3’)を使用して増幅し、プラスミドpRCD391を作製するため、BamHI/SphI制限部位を使用してpUC19へと挿入した。このベクターは、プライマーRCD302(配列番号22)へと遺伝子工学的に改変されるXhoI部位及びNgoMIV部位と同様、PpHIS座の1.2Kb部分を含有する。pRCD392を作製するため、G418遺伝子をBglII/SacI断片としてpUG6(Wachほか、1994)からpRCD391のBamHI/SacI部位へと挿入した。
【0201】
PpTRP1の1.2Kb部分を、プライマーRCD307(配列番号23)(5’−CCTGTCGACGCTGCCGGCAAGCTCGAGTTTAAGCGGTGCTGC−3’)及びプライマーRCD308(配列番号24)(5’−CCTGGATCCTTTGGCAAAAACCAGCCCTGGTGAG−3’)を使用してP.パストリスゲノムDNAから増幅した。プラスミドpRCD399を作製するため、BamHI/SalI部位を使用して、前記増幅した断片をpUC19へと挿入した。フォスフィノスリシンに対する耐性を付与するPAT遺伝子を、BglII/SacIを使用してプラスミドpAG29(Goldstein及びMcCusker、1999)から放出させ、プラスミドpRCD401へ延びているPpTRP1/PATを作製するため、BamHI/SacIで切断したpRCD399へと挿入した。
【実施例2】
【0202】
ガラクトース輸送体のクローニング
S.ポムベUDPガラクトース輸送体
単一イントロンを除去するために、SpUGTと呼ばれるUDPガラクトース輸送体をコード化するS.ポムベ遺伝子(SpGMS1+、Genbank AL022598)を、S.ポムベゲノムDNA(ATCC24843)から2つのピースへとPCR増幅した。前記遺伝子の5’の96塩基対を増幅するために、プライマーRCD164(配列番号7)(5’−CCTTGCGGCCGCATGGCTGTCAAGGGCGACGATGTCAAA−3’)及びプライマーRCD177(配列番号8)(5’−ATTCGAGAATAGTTAAGTGTCAAAATCAATGCACTATTTT−3’)を使用し、3’の966塩基対を増幅するために、プライマーRCD176(配列番号9)(5’−AAAATAGTGCATTGATTTTGACACTTAACTATTCTCGAAT−3’)及びプライマーRCD165(配列番号10)(5’−CCTTTTAATTAATTAATGCTTATGATCAACGTCCTTAGC−3’)を使用した。その後、プライマーRCD164(配列番号7)及びプライマー165(配列番号10)を使用して、これら2つの増幅した産物を重ね合わせ、1つの連続したオープン・リーディング・フレームを含み、末端に導入されたでNotI部位及びPacI部位を有する単一のPCR断片とした。このPCR産物をpCR2.1ベクター(Invitrogen)へとクローニングし、配列決定した。次に、NotI部位及びPacI部位を使用して、この遺伝子を、P.パストリスGAPDHプロモーターの下流の遺伝子を融合しているカセットを含有するプラスミドpJN335へとサブクローニングした。次に、400塩基対のPpOCH1転写終結因子を、プライマーRCD202(配列番号25)(5’−TCCTTAATTAAAGAAAGCTAGAGTAAAATAGAT−3’)及びプライマーRCD203(配列番号26)(5’−TCCCTCGAGGATCATGTTGATCAACTGAGACCG−3’)を使用してPCR増幅し、pCR2.1へとクローニングした。その後、プラスミドpRCD257を作製するために、前記GAPDHプロモーター/SpUGT遺伝子融合体をXhoI/PacI断片として、及びPpOCH1−TTをPacI/XhoI断片としてプラスミドpTA18における単一XhoI部位へと挿入するよう、三重ライゲーションを実施した。前記新規のプラスミドpRCD257はNATであり、このNATはGAPDH−SpGALE−OCH1TT融合体を、PpPMAIプロモーターによって駆動されるScVAN1膜貫通ドメインへ融合されたヒトGnTII遺伝子の切断バージョンを含有する第二カセットに沿って含有するベクターを含有している。
【0203】
プラスミドpRCD385及びプラスミドpRCD387をそれぞれ作製するため、OCH1プロモーターを有するpRCD360の、及びSEC4プロモーターを有するpRCD362のNot/PacI部位へとSpUGT遺伝子も挿入した。P.パストリスHIS3/G418ロールイン型の発現プラスミドpRCD393及び発現プラスミドpRCD394をそれぞれ作製するため、XhoI/NgoMIVを使用して、pRCD385由来のPOCH1−SpUGT−PpCYC1TTカセット及びpRCD387由来のPSEC4−SpUGT−PpCYC1TTカセットを、pRCD392HIS3/G418ロールインベクターへと挿入した。
【0204】
キイロショウジョウバエUDPガラクトース輸送体
DmUGTと呼ばれるUDPガラクトース輸送体をコード化するキイロショウジョウバエ遺伝子(Genbank BAB62747)を、キイロショウジョウバエcDNAライブラリ(UC Berkeleyショウジョウバエゲノムプロジェクト、卵巣1−ZAPライブラリGM)からPCR増幅し、pCR2.1PCRクローニングベクターへとクローニングし、配列決定した。5’末端及び3’末端でそれぞれNotI部位及びPacI部位を導入した前記遺伝子を増幅するため、プライマーDmUGT−5’(配列番号11)(5’−GGCTCGAGCGGCCGCCACCATGAATAGCATACACATGAACGCCAATACG−3’)及びプライマーDmUGT−3’(配列番号12)(5’−CCCTCGAGTTAATTAACTAGACGCGCGGCAGCAGCTTCTCCTCATCG−3’)を使用した。次に、プラスミドpSH263を作製するため、pRCD393においてNotI/PacI部位でPpOCH1及びプロモーターの下流へ融合した前記遺伝子をサブクローニングするため、NotI部位及びPacI部位を使用した。
【0205】
ヒトUDPガラクトース輸送体
hUGT1及びhUGT2とそれぞれ呼ばれるUDPガラクトース輸送体1をコード化するヒト遺伝子(Genbank BAA95615番)及びUDPガラクトース輸送体2をコード化するヒト遺伝子(Genbank BAA95614番)をヒト前立腺cDNA(マラソンレディdDNA、Clontech)から増幅した。前記UGT1遺伝子を、プライマーhUGT1−5’(配列番号27)(5’−GGCTCGAGCGGCCGCCACCATGGCAGCGGTTGGGGCTGGTGGTTC−3’)及びhUGT1−3’(配列番号28)(5’−CCCTCGAGTTAATTAATCACTTCACCAGCACTGACTTTGGCAG−3’)を使用して増幅し、hUGT2遺伝子を、プライマーhUGT2−5’(配列番号29)(5’−GGCTCGAGCGGCCGCCACCATGGCAGCGGTTGGGGCTGGTGGTTC)及びプライマーhUGT2−3’(配列番号30)(5’−CCCTCGAGTTAATTAACTAGGAACCCTTCACCTTGGTGAGCAAC−3’)を使用して増幅した。前記PCR産物をpCR2.1ベクター(Invitrogen,Carlsbad,CA)へとクローニングし、配列決定した。その後、プラスミドpSH264及びプラスミドpSH262をそれぞれ作製するため、NotI/PacIを使用するPpOCH1プロモーターの下流のpRCD393へと前記hUGT1遺伝子及びhUGT2遺伝子を挿入した。
【実施例3】
【0206】
UDP−ガラクトース−4−エピメラーゼ遺伝子のクローニング
S.セレビシエUDP−ガラクトース4−エピメラーゼ
UDP−ガラクトース4−エピメラーゼをコード化するS.セレビシエ遺伝子(ScGAL10)を、プライマーRCD270(配列番号31)(5’−TAGCGGCCGCATGACAGCTCAGTTACAAAGTGAAAG−3’)及びRCD271(配列番号32)(5’−CGTTAATTAATCAGGAAAATCTGTAGACAATCTTGG−3’)を使用してS.セレビシエゲノムDNAからPCR増幅した。生じたPCR産物をpCR2.1へとクローニングし、配列決定した。
【0207】
次に、プラスイドpRCD395及びプラスミドpRCD396をそれぞれ作製するため、NotI/PacI部位を使用して前記ScGAL10をプラスミドpRCD393及びpRCD394へとサブクローニングし、又、プラスミドpRCD404及びプラスミドpRCD405を作製するため、プラスミドpRCD402及びプラスミドpRCD403へとサブクローニングした。プラスミドpRCD402及びプラスミドpRCD403は、P.パストリスOCH1プロモーター及びSEC4プロモーターをそれぞれ含有し、並びにPpCYC1終結因子及び簡便な制限部位(この制限部位はエピメラーゼとこれらのプロモーターと融合させ、別のプラスミドへと一体にして移動させ得るカセットを作製するために使用された。)を含有する発現ベクターである。
【0208】
ヒトUDP−ガラクトース4−エピメラーゼ
hGALEと呼ばれるUDP−ガラクトース4−エピメラーゼをコード化するヒト遺伝子(Thodenほか、(2001)JBC,276巻(18) 15131−15136)を、それぞれNotI部位及びPacI部位を有するプライマーGD7(配列番号33)及びプライマーGD8(配列番号34)を使用して、ヒト腎cDNA(マラソンレディcDNA、Clontech)からPCR増幅した。次に、プラスミドpRCD427及びプラスミドpRCD428をそれぞれ作製するため、NotI/PAcI部位を使用してプラスミドpRCD406及びプラスミドpRCD407へとhGALE遺伝子をサブクローニングした。
【0209】
S.ポムベUDP−ガラクトース4−エピメラーゼ
S.ポムベ(ATCC24843)ゲノムDNA由来のSpGALE遺伝子を増幅するため、プライマーGALE2−L(配列番号35)及びプライマーGALE2−R(配列番号36)を使用した。前記増幅した産物をpCR2.1へとクローニングし、配列決定した。配列決定は、+66の位置でのイントロン(175塩基対)の存在を明らかにした。
【0210】
前記イントロンを除去するため、上流のプライマーGD1(配列番号37)(94塩基対)をデザインした。これはイントロンの66塩基上流にNotI部位を有し、前記イントロンの先の20塩基が続く。GD2(配列番号38)は下流のプライマーであり、PacI部位を有する。pCR2.1サブクローンからSpGALE無イントロン遺伝子を増幅するため、プライマーGD1(配列番号37)及びプライマーGD2(配列番号38)を使用し、前記産物を再度pCR2.1へとクローニングし、配列決定した。
【実施例4】
【0211】
b−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ遺伝子のクローニング
ヒトb−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼI
ヒトb−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼI遺伝子(hGalTI、Genbank AH003575)を、プライマーRCD192(配列番号1)(5’−GCCGCGACCTGAGCCGCCTGCCCCAAC−3’)及びプライマーRCD186(配列番号2)(5’−CTAGCTCGGTGTCCCGATGTCCA−3’)を使用してヒト腎cDNA(マラソンレディcDNA、Clontech)からPCR増幅した。このPCR産物をpCR2.1ベクター(Invitrogen,Carlsbad,CA)へとクローニングし、配列決定した。このクローンから、PCR重複変異誘発を次の3つの目的のために実施した。すなわち、1)野生型タンパク質配列を維持しながらオープン・リーティング・フレーム内のNotI部位を除去するため、2)内在性膜貫通ドメインのすぐ下流のタンパク質を切断するため、及び3)モジュールクローニングのために5’末端及び3’末端にAscI部位及びPacI部位を導入するため、である。これを実施するため、前記NotI部位までの前記遺伝子の5’末端を、プライマーRCD198(配列番号3)(5’−CTTAGGCGCGCCGGCCGCGACCTGAGCCGCCTGCCC−3’)及びプライマーRCD201(配列番号4)(5’−GGGGCATATCTGCCGCCCATC−3’)を使用して増幅し、前記3’末端を、プライマーRCD200(配列番号5)(5’−GATGGGCGGCAGATATGCCCC−3’)及びプライマーRCD199(配列番号6)(5’−CTTCTTAATTAACTAGCTCGGTGTCCCGATGTCCAC−3’)を使用して増幅した。前記NotI部位を除去しながら、前記オープン・リーディング・フレームを野生型アミノ酸配列で再合成するために、前記産物をプライマー198及びプライマー199を用いて重ね合せた。前記新規の切断したhGalTI PCR産物をpCR2.1ベクター(Invitrogen,Carlsbad,CA)へとクローニングし、配列決定した。次に、pRCD260を作製するため、PpURA3/HYGロールインベクターであるプラスミドpRCD259へと前記断片をサブクローニングするため、前記導入したAscI/PacI部位を使用した。プラスミドpXB20−pXB67を作製するため、参照によって組み込まれるWO02/00879に記載の酵母指向性配列膜貫通ドメインのライブラリを、hGalTI遺伝子の上流にあるNotI/AscI部位に連結した。
【0212】
ヒトb−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼII
ヒトb−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼII遺伝子(hGalTII、Genbank AF038660)の切断した形態を、プライマーRCD292(配列番号39)(5’−CTTAGGCGCGCCCAGCACCTGGCCTTCTTCAGC−3’)及びプライマーRCD293(配列番号40)(5’−CTTGTTAATTAATCAGCCCCGAGGGGGCCACGACGG−3’)を使用してヒト腎cDNA(マラソンレディcDNA、Clontech)からPCR増幅し、プラスミドpCR2.1へとクローニングし、配列決定した。プラスミドpRCD378を作製するため、N末端膜貫通ドメインをコード化する遺伝子の一部を除去したこの切断したクローンを、hGalTIの替わりにベクターpXB53へと導入されたAscI/PacI部位を使用してサブクローニングした。切断したhGalTIIと、S.セレビシエMNN2遺伝子の膜貫通ドメイン/リーダー配列をコード化する部分との遺伝子融合物を含有する、このプラスミドは、PpGAPDHプロモーターにより駆動される。
【0213】
ヒトb−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼIII
ヒトb−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼIII遺伝子(hGalTIII、Genbank AF038661)の切断した形態を、プライマーRCD294(配列番号41)(5’−CTTAGGCGCGCCCGAAGTCTCAGTGCCCTATTTGGC−3’)及びRCD295(配列番号42)(5’−CTTGTTAATTAATCAGTGTGAACCTCGGAGGGCTGT−3’)を使用してヒト腎cDNA(マラソンレディcDNA、Clontech)からPCR増幅し、プラスミドpCR2.1へとクローニングし、配列決定した。プラスミドpRCD381を作製するため、hGalTIの替わりにベクターpXB53へと導入されたAscI/PacI部位を使用して、N末端膜貫通ドメインをコード化する遺伝子の一部を除去したこの切断したクローンをサブクローニングした。このプラスミドはいまや、前記切断したhGalTIIIと、PpGGAPDHプロモーターによって駆動されるS.セレビシエMNN2遺伝子の膜貫通ドメイン/リーダー配列をコード化する部分との遺伝子融合を含有する。
【実施例5】
【0214】
複雑なN−グリカンを産生するにおけるSpUGTを有するhGalTIの発現
ヒトGnTII遺伝子及びSpGMS1+遺伝子(SpUGT)を含有するpRCD257プラスミドをRDP27株に導入した。RDP27は、P.パストリスの変異株であり、och1及びalg3の欠失を有していて、プラスミドpSH49及びプラスミドpPB104で形質転換されたものである。プラスミドpSH49及びプラスミドpPB104は、それぞれマウスマンノシダーゼIBとびヒトGnTIとの活性ある融合構築物を含有し、またプラスミドpPB103を含有する。プラスミドpPB103は、K.ラクティスUPD−GlcNAcトランスポーターを含有し及びリポータータンパク質K3(Choiほか、2003)を含有するプラスミドpBK64を含有する。ナーセオスリシン(nourseothricin)上での選択後、16個の形質転換体を選抜し、発現されたリポータータンパク質K13のグリコシル化を測定した。これら形質転換株のうち2つにおいて、期待される複雑なヒトグリコシル化構造GlcNAcManGlcNAcを観察し、これらの株をRDP30−10(図8A)及びRDP30−13と命名した。hGalTI遺伝子/リーダー融合プラスミドライブラリの一部を、RDP30−10株へと形質転換し、ハイグロマイシンを含有する最小培地上で形質転換株を選択した。生じた株によって分泌されたK3から放出されたN−グリカンをMALDI−TOF MSで分析した。1個のガラクトース糖の追加に一致する質量における分子レベルのシフトを、2つの異なるリーダー構築物pXB53及びpXB65の形質転換株由来のN−グリカンに関して観察した。第一のpXB53は、ScMnn2(s)リーダーへ融合させた(本明細書でScMnn2(s)/hGalTIと呼ばれる)hGalTIからなり、もう一方はScMnn1(m)リーダーとの融合体であった。MALDI−TOFによる、RDP37(pXB53で形質転換したRDP30−10)からのK3から放出されたN−グリカンの分析は、約10%ないし20%のGlcNAcManGlcNAcがGalGlcNAcManGlcNAcへ変換され、より少量(1%ないし2%)がGalGlcNAcManGlcNAc(pXB53,図8B)へ変換されることを示した。GalGlcNAcManGlcNAcへの変換のより少量(3%ないし5%)が(しかしGalGlcNAcManGlcNAcはできなかった。)第二融合体(pXB65)で観察された。
【実施例6】
【0215】
ハイブリッドN−グリカンを産生する株におけるhGalTI及びScGAL10の発現
NotI/PacIを用いて、hGnTIIに替えて、NATベクターpTA18及びpRCD351へ、UDP−ガラクトース4−エピメラーゼをコード化するScGAL10遺伝子をサブクローニングした。これにより、強力なPMAIプロモーター及びより弱いPpHIS3プロモーターの前にエピメラーゼ遺伝子が挿入され、プラスミドpRCD331(PPMAI−ScGAL10)及びpRCD352(PHIS3−ScGAL10)がそれぞれ作製される。前記プラスミドを直鎖状にし(PpPMA1プロモーターにおいてSacIを有するpRCD331及びPpHIS3プロモーターにおいてBglIIを有するpRCD352)、PBP−3(米国特許出願第20040018590号)へと形質転換した。PBP−3株はP.パストリスの変異株である。この変異株は、Och1の欠失を有しており、プラスミドpSH49及びプラスミドpPB104で形質転換されている。プラスミドpSH49及びプラスミドpPB104は、それぞれマウスマンノシダーゼIBとヒトGnTIとの活性融合構築物を含有し、またプラスミドpPB103を含有している。pPB103は、K.ラクティスUDP−GlcNAcトランスポーターを含有し、リポータータンパク質K3(Choiほか)を含有するプラスミドpBK64を含有している。この株は、分泌されたタンパク質上の構造GlcNAcManGlcNAcのハイブリッドN−グリカンを産生する。ナーセオスリシンを含有するYPD培地上で選択された、得られた形質転換株を、プライマーRCD285(配列番号43)(5’−TACGAGATTCCCAAATATGATTCC−3’)及びプライマーRCD286(配列番号44)(5’−ATAGTGTCTCCATATGGCTTGTTC−3’)を使用するPCRによって、及び前記リポータータンパク質K3を発現させ、放出されたN−グリカンを分析して、前記株がハイブリッドGlcNAcManGlcNAcグリカン構造を維持していることを確認することによって、分析した。pRCD352(PHIS3−ScGAL10)構築物によって形質転換したある株をRDP38−18と命名した。この株をプラスミドpXB53(Mnn2(s)hGalTI融合構築物並びにHYG遺伝子及びPpURA3遺伝子を含有する。)により、SalI(PpURA3にある。)で直鎖状にした後、形質転換した。形質変換株を、ハイグロマイシンを有するYPD培地上で選択し、K3を発現させ、N−グリカンのサイズを決定することによってスクリーニングした。RDP39−6株(図10A)から精製され、K3から放出されたN−グリカンの大部分(〜2/3)は、主としてGlcNAcManGlcNAcであるRDP38−38由来のものと比較して、1個の追加のヘキソース(HexGlcNAcManGlcNAc)を含有していた。さらに、前記追加のヘキソース残基は、可溶性b−1,4−ガラクトシダーゼとの(しかし、a−1,3−ガラクトシダーゼまたはa−1,2−マンノしダーゼとではない。)その後のインキュベーションにより除去でき、このことは、特異的結合(b−1,4)による、末端GlcNAcへの単一ガラクトースの付加はこの株のhGalTIによって触媒されたことを示している。
【実施例7】
【0216】
複雑なN−グリカンを産生する系におけるhGalTI及びScGAL10の発現
GlcNAcManGlcNAc構造を有する複雑なN−グリカンを表示するP.パストリスYSH−44株を構築した。YSH−44は、P.パストリスの変異株であり、och1を欠失していて、プラスミドpSH49、pPB104、pKD53及びpTC53で形質転換される。プラスミドpSH49、pPB104、pKD53及びpTC53は、それぞれマウスマンノシダーゼIB、ヒトGnTI、キイロショウジョウバエマンノシダーゼII及びヒトGnTIIの活性融合構築物を含有し、またpPB103を含有する。pPB103は、K.ラクティス(lactis)UDP−GlcNAcトランスポーターを含有し、およびリポータータンパク質K3(Hamiltonほか、Science 2003年8月29日号;301(5637): 1244−1246)を含有するプラスミドpBK64を含有している。この株を、Mnn2(s)/hGalTI融合構築物を含有するpXB53プラスミドで形質転換し、形質転換体を、ハイグロマイシンを有するYPD培地上で選択した。K3を精製し、MALDI−TOF MSによって、放出されたN−グリカンを分析することによって、いくつかの形質転換株を分析した。分析した形質変換株のそれぞれは、GlcNAcManGlcNAc構造を有するN−グリカンの主要部分及び単一ヘキソース追加と一致した少数部分(〜5%)(YSH−71)を与えた。しかしながら、このピークは常にhGAlTIの導入と相関していたが、b−1,4−ガラクトシダーゼに対して完全に不応性であった。次いで、これらの株のいくつかを、プラスミドpRCD395及びプラスミドpRCD396(POCH1−ScGAL10及びPSEC4−ScGAL10をそれぞれ含有するPpHIS3/G418プラスミド)で、BglIIで直鎖状にした後、形質転換し、G418上で選択した、得られた株をそれぞれYSH−83及びYSH−84と命名した。分泌されたK3から放出されたN−グリカンをMALDI−TOF MSにより分析した。得られた形質転換体を、G418を含有するYPD培地上で選択した。これらの株から分泌され精製されたK3から放出されたN−グリカンをMALDI−TOF MSにより分析した。これらの形質転換体由来N−グリカンの大部分は、3つの構造、GalGlcNAcManGlcNAc(〜0%ないし25%)又はGalGlcNAcManGlcNAc(〜40%ないし50%)からなり、残りのN−グリカンは、親YSH−44株により表示されるGlcNAcManGlcNAc構造を保持していた。N−グリカンの相対的な量は、前記ScGAL10エピメラーゼ遺伝子をPpOCH1プロモーター(YSH−83)又はPpSEC4プロモーター(YSH−84)によって駆動したかどうかとは無関係に変化しないままであった。図9Bは、YSH−84から放出されたN−グリカンのMALDI−TOF MSを示す。
【実施例8】
【0217】
エピメラーゼ/トランスフェラーゼ融合構築物の構築
SpGALE遺伝子を、プライマーRCD326(配列番号45)(5’−CTTGGCGCGCCATGACTGGTGTTCATGAAGGGACT)及びプライマーRCD329(配列番号46)(5’−CCTGGATCCCTTATATGTCTTGGTATGGGTCAG−3’)を使用して増幅し、pCR2.1ベクター(Invitrogen)へとクローニングし、配列決定した。最初の43個のアミノ酸を除去するhGalTI遺伝子の切断した部分(hGalTIΔ43)を、プライマーRCD328(配列番号47)(5’−CTTGGATCCGGTGGTGGCCGCGACCTGAGCCGCCTGCCC−3’)及びプライマーRCD199(配列番号48)(5’−CTTCTTAATTAACTAGCTCGGTGTCCCGATGTCCAC−3’)を使用して増幅し、pCR2.1ベクター(Invitrogen)へとクローニングし、配列決定した。次に、SpGALEクローンをAscI/BamHIで切断し、hGalTIクローンをBamHI/PacIで切断し、両者を、AscI/PacIで切断したpRCD452へと挿入した。プラスミドpRCD452は、G418耐性マーカー、及びScMNN2(S)/hGalTI融合体を有するGAPDH/CYC1カセットを含有している。AscI/BamHISpGALE断片及びBamHI/PacIhGalTIΔ43断片を、AscI/PacIにより放出されたhGalTIに置き換えて連結し、pRCD461を作製した。この新規プラスミドpRCD461は、ScMNN2(s)/SpGALE/hGalTI融合体を含有していて、SpGalEタンパク質及びhGalTIタンパク質は、Bam HI部位を含有する4つのアミノ酸(GSGG)リンカーによって分離されていて、PpGAPDHプロモーターによって駆動される単一のポリペプチドにおいてコード化されている。
【実施例9】
【0218】
複雑なN−グリカンを産生する系におけるガラクトシルトランスフェラーゼ、エピメラーゼ及びトランスポーターの発現
活性のあるhGalTI−53遺伝子融合体を含有するプラスミドpXB53、及びhGalTII−53融合体を含有するpRCD378を、HYGマーカー近くのXhoIで直鎖状にし、T4DNAポリメラーゼ(New England Biolabs,Beverly,MA)で平滑末端化した。hGalTIII−53遺伝子融合体を含有するプラスミドpRCD381をURA3遺伝子近くのHindIIIで直鎖状にし、T4ポリメラーゼで平滑末端化した。次に、3つのエピメラーゼ遺伝子ScGAL10、SpGALE及びhGALEをプラスミドpRCD404、pRCD406、及びpRCD427からそれぞれXhoI/SphIで切断し、T4DNAポリメラーゼで平滑末端化し、前記3つの直鎖状にしたトランスフェラーゼプラスミドへと挿入した。これにより9つの新規二重トランスフェラーゼ/エピメラーゼHYGプラスミドが生じた。すなわち、hGalTI−53及びScGAL10を有するpRCD424、hGalTI−53及びSpGALEを有するpRCD425、hGalTI−53及びhGALEを有するpRCD438、hGalTII−53及びScGAL10を有するpRCD439、hGalTII−53及びSpGALEを有するpRCD440、hGalTII53及びhGALEを有するpRCD441、hGalTIII−53及びScGAL10を有するpRCD442、hGalTIII−53及びSpGALEを有するpRCD443並びにhGalTIII−53及びhGALEを有するpRCD447である。その後、YSH44系を、これらの(XbaIで直鎖状にした)二重HYGプラスミド、及び(AgeIで直鎖状にした)SpUGT、hUGT2、DmUGT及びhUGT1 UDP−Galトランスポーターコード化遺伝子をそれぞれ含有するG418プラスミドpRCD393、pSH262、pSH263及びpSH264で順次形質転換した。このように、一連の株は、それぞれがトランスフェラーゼ、エピメラーゼ及びトランスポーターの異なる組み合わせを含有するよう作製された。第一に、異なるUDP−Galトランスポーターを、hGalTI−53及びSpGALEを含有する株において比較した。DmUGT遺伝子の導入は、2つの末端ガラクトース残基(GalGlcNAcManGlcNAc)を有する複雑なグリカンをすべて実質的に生じたのに対し、その他の3つのトランスポーターは、前記トランスフェラーゼ及びエピメラーゼのみで得られたものと実質的に同一の複雑なグリカンの特性を生じた(図11Aないし図11E)。第二に、前記エピメラーゼ遺伝子を、pRCD424、pRCD425又はpRCD438と共にpSH263を株に導入することによって、hGalTI−53融合体及び活性のあるDmUGT遺伝子を有する株において比較した。前記3つのそれぞれのエピメラーゼ遺伝子とGal遺伝子との組み合わせは、分泌されたK3に関してGalGlcNAcManGlcNAcの複雑なN−グリカンを生じる上で等価であった。最後に、前記3つのヒトトランスフェラーゼ融合構築物hGalTI−53、hGalTII−53及びhGalTIII−53を、pSH263で形質転換した株へpRCD425、pRCD440及びpRCD443を導入することによって、DmUGT及びSpGAKEを有する株において比較した。ここで、hGalTII−53は、Galを転移させる上でわずかに効率がよくなく、hGalTI053を有する株における複雑なN−グリカンの約10%であり、単一のがラクトース(GalGlcNAcManGlcNAc)のみを有していた一方、他の観察可能な、hGalTII−53を有する株における複雑なN−グリカンは二ガラクトシル化したGalGlcNAcManGlcNAcであった(図12Aないし図12B)。さらに、hGalTIII−53は、前記複雑なN−グリカンの60%ないし70%が0個ないし1個のガラクトース残基(GlcNAcManGlcNAc又はGalGlcNAcManGlcNAc)を含有するのに対し、30%ないし40%はGalGlcNAcMan3GlcNAcであり、hGalTI−53又はhGalTII−53のいずれかよりも有意に効率が劣っていた(図12Aないし図12C)。
【実施例10】
【0219】
単一プラスミド構築物を使用するガラクトシルトランスフェラーゼ、エピメラーゼ及びトランスポーターの発現
OCH1−DmUGTを含有するG418プラスミドであるpSH263を、SacIで切断することによって直鎖状にした後、T4DNAポリメラーゼ(New England Biolabs)で平滑末端化した。PSEC4−SpGALE遺伝子をプラスミドpRCD405からXhoI/SphI切り出し、T4DNAポリメラーゼで平滑末端化した。次に、平滑末端化したSpGALEをpSH263の平滑末端化したSacI部位へと挿入し、二重トランスポーター/エピメラーゼG418プラスミドであるプラスミドpRCD446を作製した。次に、pRCD446をEcoRIで直鎖状にし、T4DNAポリメラーゼで平滑末端化した。PGAPDHScMNN2(s)/hGalTI融合コンストラクトをpXB53からBglII/BamHIにより放出させ、T4DNAポリメラーゼで平滑末端化した。次に、平滑末端化したScMNN2(s)/hGalTIをpRCD446の平滑末端化したEcoRI部位へと挿入し、ScMNN2(s)/hGalTI、SpGALE及びDmUGTを含有する三重G418プラスミドであるプラスミドpRCD465を作製した。pRCD465で形質転換したP.パストリスYSH−44をRDP80と命名した。N−グリカン特性はGalGlcNAcManGlcNAc[C]の質量に対応する1663m/zで単一のピークを示した(図14A)。
【0220】
hGalTI−53及びSpGALEを含有するHYGプラスミドであるpRCD425をAflIIで直鎖状にし、T4DNAポリメラーゼで平滑末端化した。DmUGT遺伝子をpSH263からNotI/PacIで切り出し、NotI/PacIで切断したプラスミドpRCD405へ挿入し、pRCD468を作製した。pRCD468は、単一カセットとして放出されることができるPSEC4−DmUGT−CYC1−TT融合体を含有する。pRCD468をXhoI/SalIで切断し、前記DmUGTカセットを放出させ、T4DNAポリメラーゼで平滑末端化した。前記平滑末端化したDmUGTをpRCD425の前記平滑末端化したAflII部位へと挿入し、hGalTI−53、SpGALE及びDmUGTを有するHYG三重プラスミドであるプラスミドpRCD466を作製した。
【0221】
hGalTI−53及びhGALEを含有するHYGプラスミドであるpRCD438をAflIIで直鎖状にし、T4DNAポリメラーゼで平滑末端化した。pRCD468をXhoI/SalIで切断し、DmUGTカセットを放出させ、T4DNAポリメラーゼで平滑末端化した。平滑末端化したDmUGTをpRCD438の平滑末端化したAflII部位へと挿入し、hGalTI−53、hGALE及びDmUGTを有するHYG三重プラスミドであるプラスミドpRCD467を作製した。
【0222】
インビトロb−ガラクトシダーゼ切断
P.パストリスRDP80株由来のN−グリカン(2μg)を、50mM NHHCO(pH6.0)中の3mU β1,4ガラクトシダーゼ(QA bio,San Mateo,CA)とともに37℃で16時間ないし20時間インキュベートした。図14BにおけるN−グリカン分析は、N−グリカンGlcNAcManGlcNAcの質量に対応する1430m/z[A]での優勢なピークを示し、図14Aにおいてガラクトース転移を確認する。
【0223】
インビトロシアリルトランスフェラーゼ反応
RDP80株から精製したK3(200μg)を、50mM NHHCO(pH6.0)中の50mgCMP−シアル酸及び15mUラット組換え型a□(2,6−)−(N)−シアリルトランスフェラーゼ(Calbiochem)とともに、37℃で16時間ないし20時間インキュベートした。次に、N−グリカンをPNGaseF切断によって放出させ、MALDI−TOF MSで検出した。前記グリカンのスペクトルは、RDP80由来のもの(図14A)と比較したとき、シアリルトランスフェラーゼ処置後の質量における増加を示した(図14C)。図14Cに示されるスペクトルは、N−グリカンNANAGalGlcNAcManGlcNAcの質量に対応する2227m/z[X]での優勢なピークを示し、RDP80株によって産生されたN−グリカンがヒト型GalGlcNAcManGlcNAcであることを確認する。
【実施例11】
【0224】
エピメラーゼ配列比較
エピメラーゼの配列比較を、CLUSTALを使用して実施した。GenBank、SwissProt、BLOCKS及びPimaIIのデータベースにおける配列を問い合わせるため、配列リストのヌクレオチド配列及び/又はアミノ酸配列を使用した。すでに同定され注釈のついた配列を含有するこれらのデータベースを、BLAST(Basic Local Alignment Search Tool)を使用して相同性の領域について検索した(例、Altschul,S.F.(1993)J.Mol.Evol 36: 290−300及びAltschulほか(1990)J.Mol.Biol.215: 403−410を参照してほしい。)。BLASTは、配列類似性を決定するためにヌクレオチド配列及びアミノ酸配列の両者の配列比較を生じた。一次配列パターン及び二次構造間隙罰則を取り扱う場合、他のアルゴリズムを使用できた(例、Smith,Tほか(1992)Protein Engineering 5: 35−51を参照してほしい。)。
【実施例12】
【0225】
材料
MOPS、カコジル酸ナトリウム、塩化マンガン、UDP−ガラクトース及びCMP−N−アセチルノイラミン酸はSigma社製であった。TFAはAldrich社製であった。ウシ乳由来のb1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼはCalbiochem社製であった。タンパク質N−グリコシダーゼF、マンノシダーゼ、及びオリゴ糖はGlyko社(San Rafael,CA)製であった。DEAEトヨパール樹脂はTosoHaas社製であった。金属キレート「HisBind」樹脂はNovagen社(Madison,WI)製であった。タンパク質結合96穴プレートはMillipore社(Bedford,MA)製であった。塩及び緩衝剤はSigma社(St.Louis,MO)製であった。MALDIマトリクスはAldrich社(Milwaukee,WI)製であった。
【0226】
振盪フラスコ培養
単一コロニーを、興味の対象の系を含有するYPDプレート(2週齢未満)から拾い上げ、50ml「ファルコン」遠心チューブの中のBMGY培地の10mlへと接種した。前記培養物を24℃で飽和するまで生育させた(約48時間)。種培養物を、BMGY培地の150mlを含有する500mlの調節されたメスフラスコへと移し、24℃で5±2のOD600になるまで生育させた(約18時間)。前記細胞の生育速度を、時間に対するOD600の自然対数のプロットの傾斜として決定した。前記細胞を、3000gで10分間遠心分離することによって前記生育培地(BMGY)から回収し、BMMYで洗浄し、250mlの調節したメスフラスコ中のBMMYの15ml中に懸濁した。24時間後、前記発現培地フラスコを遠心分離(3000gで10分間)することによって回収し、前記上清をK3産生について分析した。
【0227】
バイオリアクター培養
BMGY培地の150mlの入った500mlの調節されたメスフラスコを種培養物(フラスコ培養参照)の1mlで接種した。前記接種体を24℃で4ないし6のOD600になるよう生育させた(約18時間)。次に、前記接種培養物由来の細胞を遠心分離し、発酵培地(培地1lあたり:CaSO・2HO 0.30g、KSO 6.00g、MgSO・7HO 5.00g、グリセロール40.0g、PTM塩2.0ml、ビオチン4×10−3g、HPO(85%)30ml、1lあたりのPTM1塩:CuSO・HO 6.00、NaI 0.08g、MnSO・7HO 3.00g、NaMoO・2HO 0.20g、HBO 0.02g、CoCl・6HO 0.50g、ZnCl 20.0g、FeSO・7HO 65.0g、ビオチン0.20g、HSO(98%)5.00ml)の50mlへと再懸濁した。
【0228】
発酵を3lのくぼんだ底(1.5lの初期負荷容積)のApplikonバイオリアクターで実施した。前記発酵槽を24℃の温度において流加培養モードで稼動させ、30%水酸化アンモニウムを使用してpHを4.5±0.1に調節した。溶解した酸素を1気圧の空気による飽和に対して40%を上回るよう、撹拌速度(450rpmないし900rpm)及び純酸素供給を調整することによって維持した。気流速度を1vvmに維持した。DOの増加によって示される、バッチ相における初期グリセロール(40g/l)が枯渇するとき、PTM塩の12ml/lを含有する50%グリセロール溶液を、望ましいバイオマス濃度に到達するまで12ml/l/時の供給速度で供給した。飢餓相の30分後、メタノール供給(12ml/lPTMを有する100%メタノール)を開始する。メタノール供給速度を使用して、発酵槽におけるメタノール濃度を0.2%ないし0.5%に調節する。メタノール濃度をオンラインで、前記発酵槽からの気体流出口にあるTGSガスセンサー(Figaro Engineering社製TGS822)を使用して測定する。発酵槽から8時間ごとに試料採取し、バイオマス(OD600、細胞湿重量及び細胞計数)、残余炭素源レベル(Aminex87Hを使用するHPLCによるグリセロール及びメタノール)、及び(SDS−PAGE及びBio−Radタンパク質アッセイによる)細胞外タンパク質含有量について分析した。
【0229】
リポータータンパク質の発現、精製、及びN結合したグリカンの放出
アルコールオキシダーゼ1(AOX1)プロモーターの調節下でのK3ドメインをモデルタンパク質として使用し、6×ヒスチジンタグを使用してすでに報告されているように精製した(Choiほか、Proc Natl Acad Sci USA 2003年4月29日号;100(9): 5022−5027)。グリカンを糖タンパク質から、すでに報告された方法の修正によって放出させ及び分離した(Papac及びBriggs 1998)。前記タンパク質を還元及びカルボキシメチル化した後、膜をブロッキングし、ウェルを水で3回洗浄した。前記タンパク質を、N−グリカナーゼ(Glyko)の1ミリ単位を含有する10mM NHHCO、pH8.3の30mlの添加によって脱グリコシルした。37℃で16時間後、グリカンを含有する溶液を遠心分離によって除去し、乾燥させるために蒸発させた。
【0230】
タンパク質精製
Beckman BioMek2000試料取り扱いロボット(Beckman/Coulter Ranch Cucamonga,CA)で96穴フォーマットを使用してクリングル3を精製した。C末端6−ヒスチジンタグを使用してクリングル3を発現培地から精製した。ロボット精製は、NovagenのHisBind樹脂についてのNovagenによって提供されるプロトコールの応用である。簡潔に説明すれば、樹脂の150μl(μl)に設定された容積を96穴細胞溶解液結合プレートのウェルへと注入し、水の3容積で洗浄し、50mM NiSOの5容積を負荷し、結合緩衝液(5mMイミダゾール、0.5M NaCl、20mMトリス−HCl、pH7.9)の3容積で洗浄する。タンパク質発現培地を3:2の培地:PBS(60mM PO4、16mM KCl、822mM NaCl、pH7.4)に希釈し、カラムへ負荷する。排水後、前記カラムを結合緩衝液の10容積及び洗浄緩衝液(30mMイミダゾール、0.5M NaCl、20mMトリス−HCl、pH7.9)の6容積で洗浄し、前記タンパク質を溶出緩衝液(1Mイミダゾール、0.5M NaCl、20mMトリス−HCl、pH7.9)の6容積で溶出する。前記溶出した糖タンパク質を凍結乾燥により乾燥するまで蒸発させる。
【0231】
N結合したグリカンの放出
グリカンをすでに報告された方法(Papacほか、A.J.S.(1998)Glycobiology 8、445−454)の修正によって糖タンパク質から放出させ及び分離する。96穴MultiScreen IP(Immobilon P膜)プレート(Millipore)のウェルをメタノールの100μlで湿らせ、水の3×150μl及びRCM緩衝液(8M尿素、360mMトリス、3.2mM EDTA、pH8.6)の50μlで洗浄し、各添加後にゆるく真空にしながら排水する。前記乾燥したタンパク質試料をRCM緩衝液の30μlに溶解し、RCM緩衝液の10μlを含有するウェルへと移す。前記ウェルを排水し、RCM緩衝液で2回洗浄する。前記タンパク質をRCM緩衝液中の0.1M DTTの60μlの37℃での1時間の添加によって還元する。前記ウェルを水の300μlで3回洗浄し、0.1Mヨード酢酸の60μlの暗所における室温での30分間の添加によってカルボキシメチル化する。前記ウェルを水で再度3回洗浄し、膜を水中の1%PVP360の100μlの室温での1時間の添加によってブロッキングする。前記ウェルを排水し、水の300μlで3回洗浄し、N−グリカナーゼ(Glyko)の1ミリ単位を含有する10mM NHHCO、pH8.3の30μlの添加によって脱グリコシルした。37℃で16時間後、前記グリカンを含有する溶液を遠心分離により除去し、乾燥するまで蒸発させた。
【0232】
種々:タンパク質をLaemmli(Laemmli 1970)にしたがってSDS−PAGEにより分離した。
【0233】
飛行時間型質量分析法のマトリクス支援レーザー脱離イオン化時間
前記グリカンの分子量を、抽出の遅延を使用するVoyager DE PRO線形MALDI−TOF(Applied Biosciences)質量分析法を使用して決定した。各ウェル由来の乾燥したグリカンを水の15μlに溶解し、0.5μlをステンレス鋼試料プレート上に点状に置き、S−DHBマトリクス(ジヒドロキシ安息香酸の9mg/ml、水とアセトニトリル0.1%TFAの1:1中の5−メトキシサリチル酸の1mg/ml)の0.5μlと混合し、乾燥させた。
【0234】
イオンを4ナノ秒のパルス時間でパルス化された窒素レーザー(337nm)による照射によって発生させた。機器を125ナノ秒の遅延及び20kVの加速電位での抽出遅延モードにおいて稼動させた。格子電位は93.00%であり、誘導ワイヤ電位は0.10%であり、内部圧力は5×10−7トルであり、低質量ゲートは875Daであった。スペクトルを100ないし200のレーザーパルスの合計から生じ、2GHzのデジタイザーで獲得した。外部分子量標準物質としてManGlcNAcオリゴ糖を使用した。スペクトルはすべて陽イオンモードにおいて前記機器で生じた。前記スペクトルの概算された質量の精度は0.5%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
末端β−ガラクトース残基を有すること及びヒト様糖タンパク質においてフコース残基及びシアル酸残基が本質的に欠失していることを特徴とするヒト様タンパク質を産生する組換え型下等真核宿主細胞。
【請求項2】
前記宿主細胞がβ1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ活性を発現する、請求項1に記載の宿主細胞。
【請求項3】
前記宿主細胞がUDP−ガラクトース輸送活性を発現する、請求項1に記載の宿主細胞。
【請求項4】
前記宿主細胞がUDP−ガラクトースの上昇したレベルを呈する、請求項1に記載の宿主細胞。
【請求項5】
β−ガラクトシルトランスフェラーゼ活性をコード化する単離された核酸分子と、UDP−ガラクトース輸送活性、UDP−ガラクトースC4エピメラーゼ活性又はガラクトキナーゼ活性又はガラクトース−1−リン酸ウリジルトランスフェラーゼ活性をコード化する少なくとも1つの単離された核酸分子とを含む、ヒト様糖タンパク質を産生する組換え型下等真核宿主細胞。
【請求項6】
前記UDP−ガラクトース輸送活性がSpUGT、hUGT1、hUGT2及びDmUGTからなる群から選択される遺伝子によってコード化されている、請求項3又は請求項5に記載の宿主。
【請求項7】
前記UDP−ガラクトースC4エピメラーゼ活性がSpGALE、ScGAL10及びhGALEからなる群から選択される遺伝子によってコード化されている、請求項4又は請求項5に記載の宿主。
【請求項8】
ヒト様糖タンパク質を産生する組換え型下等真核宿主細胞であり、前記宿主細胞は末端GlcNAc残基を含む糖タンパク質のN結合したオリゴ糖分岐鎖へとβ−ガラクトース残基を転移でき、前記N−結合したオリゴ糖分岐鎖は、トリマンノース中心上にあるGlcNAcβ1,2−Manα1,3、GlcNAcβ1,4−Manα1,3、GlcNAcβ1,2−Manα1,6、GlcNAcβ1,4−Manα1,6、及びGlcNAcβ1,6−Manα1,6からなる群から選択される、前記宿主細胞。
【請求項9】
シアル酸に対する受容体基質である糖タンパク質を産生される、請求項1において生じる組換え型下等真核宿主細胞。
【請求項10】
前記宿主細胞が、前記糖タンパク質上のグリカンに関して1,6マンノシルトランスフェラーゼ活性を惹起する点において弱められている、請求項1、請求項5又は請求項8のいずれか1項に記載の宿主。
【請求項11】
前記宿主細胞が、ドリチル−P−Man:Man5GlcNAc2−PP−ドリチルα−1,3−マンノシルトランスフェラーゼ活性において低下されている又は欠失されている、請求項1、請求項5又は請求項8の何れか1項に記載の宿主。
【請求項12】
該宿主細胞がα1,2−マンノシダーゼI活性、マンノシダーゼII活性、マンノシダーゼIIx活性及びクラスIIIマンノシダーゼ活性から選択されるマンノシダーゼ活性を発現する、請求項1、請求項5又は請求項8のいずれか1項に記載の宿主。
【請求項13】
該宿主細胞がGnTI、GnTII、GnTIII、GnTIV、GnTV、GnTVI及びGnTIXからなる群から選択されるGnT活性を発現する、請求項1、請求項5又は請求項8のいずれか1項に記載の宿主。
【請求項14】
前記宿主細胞が、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、ピキアフィンランディカ(Pichia finlandica)、ピキア・トレハロフィラ(Pichia trehalophila)、ピキア・コクラマエ(Pichia koclamae)、ピキア・メンブラナエファシエンス(Pichia membranaefaciens)、ピキア・ミニュータ(Pichia minuta)(オガタエア・ミニュータ(Ogataea minuta)、ピキア・リンドネリ(Pichia lindneri))、ピキア・オプンティアエ(Pichia opuntiae)、ピキアサーモトレランス(Pichia thermotolerans)、ピキア・サリクタリア(Pichia salictaria)、ピキア・グエルキューム(Pichia guercuum)、ピキアピジュペリ(Pichia pijperi)、ピキア・スティプティス(Pichia stiptis)、ピキア・メタノリカ(Pichia methanolica)、ピキア種(Pichia sp.)、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス種(Saccharomyces sp.)、ハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、クルイベロミセス種(Kluyveromyces sp.)、クルイベロミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、アスペリギルス・ニドウランス(Aspergillus nidulans)、アスペリギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリゼ(Aspergills oryzae)、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)、クリソスポリウム・ラックノウエンス(Chrysosporium lucknowense)、フサリウム種(Fusarium sp.)、フザリウム・グラミネウム(Fusarium gramineum)、フザリウム・ベネナツム(Fusarium venenatum)、フィスコミトレラ・パテンス(Physcomitrella patens)及びノイロスポラ・クロッサ(Neurospora crossa)からなる群から選択される、請求項1、請求項5又は請求項8のいずれか一項に記載の宿主。
【請求項15】
末端β−ガラクトース残基を有し、前記糖タンパク質上にフコース残基及びシアル酸残基が本質的に欠失していることを特徴とするヒト様糖タンパク質を含む組成物。
【請求項16】
前記糖タンパク質が、GalGlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAc、GalGlcNAcManGlcNAc及びGalGlcNAcManGlcNAcからなる群から選択されるN結合したオリゴ糖を含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記糖タンパク質が、エリスロポエチン、例えば、サイトカイン、インターフェロン−a、インターフェロン−b、インターフェロン−g、インターフェロン−w及び顆粒球−CSF、GM−CSF、例えば、凝固因子、第VIII因子、第IX因子及びヒトタンパク質C、抗トロンビンIII、トロンビン、可溶性IgE受容体a鎖、IgG、IgG断片、IgG融合体、IgM、インターロイキン、ウロキナーゼ、キマーゼ、及び尿素トリプシン阻害剤、IGF結合タンパク質、上皮成長因子、成長ホルモン放出因子、アネキシンV融合タンパク質、アンジオスタチン、血管内皮増殖因子−2、骨髄系前駆体阻害因子−1、オステオプロテジェリン、a−1−抗トリプシン、a−胎児タンパク質、DNaseII、ヒトプラスミノーゲンのクリングル3、グルコセレブロシダーゼ、TNF結合タンパク質1、卵胞刺激ホルモン、細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4−Ig、膜貫通活性化因子及びカルシウム調節因子及びサイクロフィリンリガンド、可溶性TNF受容体Fc融合体、グルカゴン様タンパク質1、IL−2受容体アゴニストからなる群から選択される、請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
内在性レベルを上回ってUDP−ガラクトースを産生する段階を含む、下等真核宿主細胞におけるヒト様糖タンパク質を産生するための方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法によって作製された宿主細胞。
【請求項20】
フコース残基及びシアル酸残基のない状態においてハイブリッド又は複雑な糖タンパク質上にガラクトース残基を転移させる段階を含む、下等真核宿主細胞においてヒト様糖タンパク質組成物を作製するための方法。
【請求項21】
前記ガラクトース残基が、GlcNAcManGlcNAc、GlcNAcManGlcNAc、GlcNAcManGlcNAc、GlcNAcManGlcNAc、GlcNAcManGlcNAcGlcNAcManGlcNAc、GlcNAcManGlcNAc、GlcNAcManGlcNAc、GlcNAcManGlcNAc及びGlcNAcManGlcNAcからなる群から選択される糖タンパク質上へ転移される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記転移段階が、β−ガラクトシルトランスフェラーゼ活性をコード化する遺伝子又はβ−ガラクトシルトランスフェラーゼの触媒作用活性のある断片を発現させることをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記ガラクトシルトランスフェラーゼ活性がヒトGalTI、GalTII、GalTIII、GalTIV、GalTV、GalTVI、GalTVII、ウシGalTI、アフリカツメガエル(X.leavis)GalT及び線虫(C.elegans)GalTIIからなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記転移段階が、UDP−ガラクトース輸送活性を発現させることをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記UGTがS.ホムベ(S.pombe)UGT、ヒトUGT1、ヒトUGT2、及びキイロショウジョウバエ(D.melanogaster)UGTからなる群から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記転移段階が、UDP−ガラクトースC4エピメラーゼ活性をコード化する遺伝子を発現させることをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
前記エピメラーゼ活性がS.ポムベ(S.pombe)GalE、S.セレビシエ(S.cerevisiae)Gal10及びヒトGalEからなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
少なくとも33%ガラクトシル化された糖タンパク質組成物が作製される、請求項20ないし請求項27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
少なくとも60%ガラクトシル化された糖タンパク質組成物が作製される、請求項20ないし請求項27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
少なくとも90%ガラクトシル化された糖タンパク質組成物が作製される、請求項20ないし請求項27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
請求項20ないし請求項27の何れか1項によって作製された糖タンパク質組成物。
【請求項32】
前記糖タンパク質組成物がシアル酸に対する受容体基質である、請求項20ないし請求項27の何れか1項によって作製される糖タンパク質組成物。
【請求項33】
前記糖タンパク質がエリスロポエチン、サイトカイン、例えば、インターフェロン−a、インターフェロン−b、インターフェロン−g、インターフェロン−w及び顆粒球−CSF、GM−CSF、凝固因子、例えば、第VIII因子、第IX因子、及びヒトタンパク質C、抗トロンビンIII、トロンビン、可溶性IgE受容体a鎖、IgG、IgG断片、IgG融合体、IgM、インターロイキン、ウロキナーゼ、キマーゼ、及び尿素トリプシン阻害剤、IGF結合タンパク質、上皮成長因子、成長ホルモン放出因子、アネキシンV融合タンパク質、アンジオスタチン、血管内皮増殖因子−2、骨髄系前駆体阻害因子−1、オステオプロテジェリン、a−1−抗トリプシン、a−胎児タンパク質、DNaseII、ヒトプラスミノーゲンのクリングル3、グルコセレブロシダーゼ、TNF結合タンパク質1、卵胞刺激ホルモン、細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4−Ig、膜貫通活性化因子及びカルシウム調節因子及びサイクロフィリンリガンド、可溶性TNF受容体Fc融合体、グルカゴン様タンパク質1、IL−2受容体アゴニストからなる群から選択される、請求項31によって作成される糖タンパク質組成物。
【請求項34】
前記糖タンパク質が、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、ピキア・フィンランディカ(Pichia finlandica)、ピキア・トレハロフィラ(Pichia trehalophila)、ピキア・コクラマエ(Pichia koclamae)、ピキア・メンブラナエファシエンス(Pichia membranaefaciens)、ピキア・ミニュータ(Pichia minuta)(オガタエア・ミニュータ(Ogataea minuta)、ピキア・リンドネリ(Pichia lindneri))、ピキア・オプンティアエ(Pichia opuntiae)、ピキア・サーモトレランス(Pichia thermotolerans)、ピキア・サリクタリア(Pichia salictaria)、ピキア・グエルキューム(Pichia guercuum)、ピキア・ピジュペリ(Pichia pijperi)、ピキア・スティプティス(Pichia stiptis)、ピキア・メタノリカ(Pichia methanolica)、ピキア種(Pichia sp.)、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス種(Saccharomyces sp.)、ハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、クルイベロミセス種(Kluyveromyces sp.)、クルイベロミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、アスペリギルス・ニドウランス(Aspergillus nidulans)、アスペリギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリゼ(Aspergills oryzae)、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)、クリソスポリウム・ラックノウエンス(Chrysosporium lucknowense)、フサリウム種(Fusarium sp.)、フザリウム・グラミネウム(Fusarium gramineum)、フザリウム・ベネナツム(Fusarium venenatum)、フィスコミトレラ・パテンス(Physcomitrella patens)及びノイロスポラ・クロッサ(Neurospora crossa)からなる群から選択される宿主細胞から産生される、請求項31において作製される糖タンパク質組成物。
【請求項35】
GalNAcトランスフェラーゼ活性を発現する組換え型下等真核宿主細胞。
【請求項36】
異種性UDPase活性をコード化する遺伝子を発現する組換え型下等真核宿主細胞。
【請求項37】
(a)配列番号14、(b)配列番号13のドナーヌクレオチド結合部位のアミノ酸残基と少なくとも約90%類似しているもの、(c)配列番号14と少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%又は少なくとも99.9%同一である核酸配列、(d)配列番号13のアミノ酸配列を有する保存されたポリペプチドをコード化する核酸配列、(e)配列番号13と少なくとも78%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%又は少なくとも99.9%同一のポリペプチドをコード化する核酸配列、(f)ストリンジェントな条件下で配列番号13とハイブリダイズする核酸配列、及び(g)長さにおいて少なくとも60個の連続したヌクレオチドである(a)ないし(f)のうちのいずれか1つの断片を含む核酸配列からなる群から選択される核酸配列を含むか又は前記核酸配列からなる単離されたポリヌクレオチド。
【請求項38】
配列番号48ないし配列番号52の保存された領域からなる群から選択される核酸配列を含むか又は前記核酸配列からなり、コード化されたポリペプチドがガラクトシル化した糖タンパク質の産生のためのUDP−グルコース及びUDP−ガラクトースの相互変換を触媒することに関与している、修飾されたポリヌクレオチド。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【公開番号】特開2011−254822(P2011−254822A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−157566(P2011−157566)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【分割の表示】特願2007−507921(P2007−507921)の分割
【原出願日】平成17年4月15日(2005.4.15)
【出願人】(503007287)グライコフィ, インコーポレイテッド (37)
【Fターム(参考)】