説明

下肢吐水装置

【課題】装置本体を移動させることなく、使用湯水の供給・排水が可能な下肢吐水装を提供する。
【解決手段】使用者の下肢を収納する下肢収納空間LSを形成する本体2と、収納された上記下肢を指向して湯水を吐出する吐水手段5,6,7と、該吐水手段5,6,7から吐出された湯水を回収し該吐出手段5,6,7へ送水する循環手段15と、上記吐水手段5,6,7に湯水を供給するとともに使用された湯水を回収可能に上記本体2に着脱自在に装着された給排水タンク30とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内に収納された下肢に向かって吐水する下肢吐水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、下肢を収容する容器と該容器内に収納された下肢に向かって吐水するノズルとを備える下肢吐水装置或いは足マッサージ装置等と呼ばれるものが人気を集めている。これは、靴下等を脱ぐだけで手軽に足の汚れを落とせる、温水を使用することから血行増進が図られる等の効果の他に、マッサージ効果を有することから、長時間立ち続けることからくる疲労の回復や足のむくみの除去、肌に対する美容効果等も期待できることによるものである。
【0003】
この下肢吐水装置は、湯水を使用することから、浴室、洗面所等水廻りに設置される一方、よりリラックスできるように、居間や寝室で使用されることも多い。
【0004】
ところが、このような給排水設備を有しない空間で使用する場合、吐水用の水を給排水設備のある場所まで取りに行ったり、また使用後は捨てに行ったりしなければならない。給水時はまだ、洗面器等に水を汲んでそれを下肢吐水装置まで運べば済むものの、排水時は、重い装置を浴室等まで運んで捨てる作業が必要になる。キャスター付のものもあるが、家具等で狭い住居内を引き回すのは面倒である。
【0005】
そこで、足を収納する容器外に着脱自在に排水タンクを据え付け、ポンプの力により、排水ホースを介して、容器内の水を排水タンクに導く足部マッサージ器が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
しかしながら、この構成では、ポンプ内にエアが通じた時点で排出が停止してしまうので、排水ホース内やポンプ内に水が残ってしまう。また、この排水タンクは給水用には使用されない。
【0007】
また、使用者の足を挿入させる水槽を、該水槽の外部に配置されたポンプ部を回転駆動する駆動部を内蔵した本体ケーシングに対して分離構造とされており、該水槽が該本体ケーシングに対して脱着可能とされている自動足洗装置が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0008】
しかしながら、この水槽は、水槽内面を洗浄する場合に、本体ケーシングから分離させて風呂場等適宜の洗い場に持ち運んだ上、洗浄するために本体ケーシングに対して脱着可能とされているのであって、排水時には、装置全体を垂直に起立させ、このとき排水口が下側に位置し、この状態で開閉弁を開操作することにより、水槽内の水を水抜管28を通じて外部に排出する。すなわち、排水時には、やはり、装置全体を風呂場等適宜の洗い場に持ち運ぶ必要がある。
【特許文献1】特開昭58−188453号公報
【特許文献2】特開平8−154998号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、装置本体を移動させることなく、使用湯水の供給・排水が可能な下肢吐水装置を提供することを目的とするものである。
【0010】
本発明の他の目的は、装置内に残存水を残すことなく、排水可能な下肢吐水装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る下肢吐水装置は、上述した課題を解決するために、請求項1に記載したように、使用者の下肢を収納する下肢収納空間を形成する本体と、収納された上記下肢を指向して湯水を吐出する吐水手段と、該吐水手段から吐出された湯水を回収し該吐出手段へ送水する循環手段と、上記吐水手段に湯水を供給するとともに使用された湯水を回収可能に上記本体に着脱自在に装着された給排水タンクとを備えるものである。
【0012】
前記給排水タンクは、好適には、請求項2に記載したように、給水時には前記吐水手段より高くなり、排水時には、前記本体を略90°回転させることにより前記下肢収納空間より低くなる位置に装着されることが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る下肢吐水装置によれば、装置本体を移動させることなく、使用湯水の供給・排水が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係る下肢吐水装置の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る下肢吐水装置1を、右足側と左足側とに切断して全体的な概要を示す斜視図である。
【0015】
同図に示すように、本実施形態に係る下肢吐水装置1は、外形が略直方体状の本体2内に、上部が開口して使用者の下肢を収納する下肢収納空間LSが形成されている。
【0016】
下肢収納空間LSの下端を画成する底面3には、図示しないメッシュ状の板が載置されて、使用者の足を支持する足置き台となり、底面3より下の部分には、使用者の足に向かって吐出された湯水を回収する貯水ピット4が形成される。
【0017】
下肢収納空間LS内には、吐水手段としての上方ノズル5、下方ノズル6、後方ノズル7(以下、これらを総称する場合は、「吐水ノズル」という。)が配設される。
【0018】
上方ノズル5は、下肢収納空間LSの前方(使用者のつま先が位置する側、図1では紙面に対して左側)上部コーナー近傍において、本体2の左右の側面間に架設されたシャフト5aに、複数の吐水口が設けられて成る。シャフト5aは、その内部を湯水が流通し、本体2の側面に取設されたモータ8によって回転され、吐水口が使用者のつま先から踝近傍までを指向する間のみ吐水する。
【0019】
下方ノズル6は、貯水ピット4内において、本体2の左右の側面間に架設されたシャフト6aに、左右一対の吐水口が設けられて成る。シャフト6aは、その内部を湯水が流通し、本体2の側面に取設されたモータ9によって駆動され、吐水口6bが使用者の足裏のつま先から踵近傍までを往復運動しながら吐水する。
【0020】
後方ノズル7は、本体2の側面後方及び左右の足を分離する立上り部10に設けられ、使用者の下腿に対して左右から吐水する。
【0021】
本体2前方の外部最上部に、本体2に着脱自在に装着された給排水タンク30は、吐水される湯水を本体2に供給するとともに、使用された湯水を回収排水するものであり、詳細は後述する。なお、給排水タンク30側面には水量観察窓31が設けられる。上面に設けられた水量観察窓32は、下肢吐水装置1が90°回転された場合のものである。
【0022】
本体2外部の両側面には、給排水タンク30の湯水を本体内に取り込む取り込まない、又は排水するしないを操作するバルブ11,12が設けられる。
【0023】
本体2外部の前方下部には、キャスター13が設けられ、本体2外部の後方中段に設けられた把手14を持って引き上げることで、キャスター13近傍に設けられたストッパーゴム足(図8参照。)が床から離れ、キャスターのみが接地することとなるため、下肢吐水装置1の移動を比較的容易に行うことができる。把手14はまた、下肢吐水装置1を回転させるべく持ち上げる場合(後述)の手掛かりとなる。
【0024】
給排水タンク30により供給された湯水は、本体2の最低部に設置された循環ポンプ15により、本体2内を循環する。この循環の概要を図2を参照して説明する。
【0025】
給排水タンク30からポンプ流入管16を経由して循環ポンプ15へ、またピット流入管17を経由して貯水ピット4への送水が完了し、吐水開始のスイッチが入れられると、循環ポンプ15は流出管18へ湯水を圧送する。
【0026】
ここでポンプへ直接送水を行うため、運転開始直後から空気かみが起こらないため、初回安定動作が保証される。
【0027】
流出管18は、上方ノズル5に接続される上方流出管19、下方ノズル6に接続される下方流出管20、後方ノズル7に接続される後方流出管21に分岐して、湯水はそれぞれの吐水ノズルに送られ、下肢収納空間LS内に吐水される。
【0028】
吐出された湯水は貯水ピット4内に回収され、戻り管22を介して循環ポンプ15に戻され、再度循環ポンプ15から圧送され、これを繰り返して吐水が継続される。
【0029】
給排水タンク30は、図3に示すように、上部が2段に形成され、キャップ33に閉蓋された給排水口は低い方の段に設けられる。なお、キャップ33には、通気口が設けられている。
【0030】
給排水タンク30の、本体2に面しない側面の両コーナーには手掛かり34が凹設され、本体2に当接する側面下部中央には、ガイド凹35が凹設される。このガイド凹35は、図4に示すように、本体2に突設された位置決めガイド23に係合し、両者の位置決めを容易にするとともに、両者が外れ難くする役割も果たす。
【0031】
また、給排水タンク30の下面にはマグネット36が固設され、本体2のこのマグネット36に対向する位置にもマグネット24が固設される。これらのマグネット24,36の吸引力により、給排水タンク30と本体2とはより外れ難く確実に装着される。これは、止水の観点及び本体2が90°回転して立てられることから重要である。なお、このマグネット24,36は、一方が磁性を有する金属であってもよい。
【0032】
給排水タンク30は、図5に示すように、キャップ33に閉蓋される水出入り口37と、その直下にもう一つの出入り口38を備える。出入り口37からは丸棒39が垂設され、この丸棒39にピストン40が外嵌される。他方、本体2の出入り口38に対向する位置にはシリンダ25が凸設される。このシリンダ25は、外周がOリング26により止水処理されている。
【0033】
ピストン40は、図5(a)に示すように、ばね41により付勢されて、その底面40aが水出入り口38に押圧され、水出入り口38を閉止する。したがって、給排水タンク30が本体2から分離されても、中に入っている湯水が水出入り口38から漏水することはない。
【0034】
ところが、給排水タンク30が本体2に接続されると、シリンダ25が水出入り口38に挿通されてピストン38を押し上げ、3底面40aが水出入り口38から離間すると、給排水タンク30内の湯水が本体2内に流入する。このとき、水出入り口38と外部との隙間はOリング26により止水され、外部へ漏水することはない。
【0035】
続いて、この給排水タンク30による給水・排水の手順について説明する。まず、給水に際しては、給排水タンク30を本体2から取り外して、洗面台や浴室で給水し、これを本体2に装着する。このとき、ポンプ15及び貯水ピット4に接続するバルブ11,12は、閉止しておき、給排水タンク30装着後に開放する。これにより、給排水タンク30内の湯水は、図6(a)に示すように、本体2内に流出し、最終的には、給排水タンク30内の湯水は、図6(b)に示すように、すべて貯水ピット4及び循環ポンプ15内に移動する。このように、循環ポンプ15内にも独立して湯水を引き込むので、循環ポンプ15がエアをかんで空転することが防止される。
【0036】
なお、バルブ11,12の開け忘れ、閉め忘れを防止するために、電動バルブを用い、循環ポンプ15作動時には必ず閉じられる構成とすることが望ましい。
【0037】
給水が完了すると、吐水開始前にバルブ11,12は閉止される。開放された状態で循環ポンプ15を作動させると、給排水タンク30からエアを引き込み、空転を起こすからである。
【0038】
排水に際しては、循環ポンプ15を停止し、吐水運転を停止した後に、図7(a)に示すように、バルブ11,12を開放する。そして、本体2の把手14を持って下肢吐水装置1を、図7(b)に示すように、90°回転させる。このとき、キャスター13を支点とするテコの原理により小さな力でも起こす事ができる。また、キャスター近傍には、図8に示ように、ゴム製のストッパーゴム足27が複数取り付けられ、ある程度起きると、これがストッパとして機能するので、キャスター13が滑ることはない。なお、このストッパーゴム足27は、本体を直接床に接触させないガードの役割も果たしている。
【0039】
そうすると、貯水ピット4内の湯水は給排水タンク30内に自然落下していく。また、循環ポンプ15も、同図に示す水出入り口38のレベルL2よりも高い位置に配置されているので、循環ポンプ15内の湯水も給排水タンク30内に自然落下していく。
【0040】
また、レベル2以下の給排水タンク30の容量を、下肢吐水装置1を起こす前の水出入り口38のレベルL1の容量より大きくしているので、容量不足で本体2内に湯水が残ることもない。
【0041】
このとき、キャップ33に設けられた通気口が空気抜きの役目を果たす。キャップ33に設けられているので、通気口から浸水することはない。
【0042】
このようにして回収された湯水は、給排水タンク30を本体2から分離して、洗面台又は浴室まで持って行き、排水することができるので、大きく重い下肢吐水装置を移動させることなく、容易に排水することができる。
【0043】
また、自然落下により排水するので、排水ポンプ等が不要となり、製造コストや運転コストを低減することができる。
【0044】
以上に説明した実施態様は説明のためのものであり、本発明の範囲を制限するものではない。したがって、当業者であればこれらの各要素もしくは全要素をこれと均等なものによって置換した実施態様を採用することが可能であるが、これらの実施態様も本発明の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係る下肢吐水装置の実施形態の概要を示す縦断面を含む斜視図。
【図2】本実施形態に係る下肢吐水装置における湯水の循環を模式的に示す図。
【図3】本実施形態に係る給排水タンクの斜視図。
【図4】給排水タンクの取付けを説明する図で、(a)は平面図、(b)は側面図。
【図5】給排水タンクのピストンの作動を説明する図で、(a)は給排水タンク取付前、(b)は取付後の状態を示す図。
【図6】給水作業を説明する図で、(a)は給排水タンク取付前、(b)は取付後を示す図。
【図7】排水作業を説明する図で、(a)は下肢吐水装置回転前、(b)は回転後態を示す図。
【図8】本実施形態に係る下肢吐水装置の背面図。
【符号の説明】
【0046】
1 下肢吐水装置
2 本体
3 底面
4 貯水ピット
5 上方ノズル
6 下方ノズル
7 後方ノズル
8,9 モータ
10 立上り部
11,12 バルブ
13 キャスター
14 把手
15 循環ポンプ
16 ポンプ流入管
17 ピット流入管
18 流出管
19 上方流出管
20 下方流出管
21 後方流出管
22 戻り管
23 位置決めガイド
24 ,36 マグネット
25 シリンダ
26 Oリング
27 ストッパーゴム足
30 給排水タンク
31,32 水量観察窓
33 キャップ
34 手掛かり
35 ガイド凹
36 マグネット
37,38 水出入り口
39 丸棒
40 ピストン
41 ばね
LS 下肢収納空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の下肢を収納する下肢収納空間を形成する本体と、収納された上記下肢を指向して湯水を吐出する吐水手段と、該吐水手段から吐出された湯水を回収し該吐出手段へ送水する循環手段と、上記吐水手段に湯水を供給するとともに使用された湯水を回収可能に上記本体に着脱自在に装着された給排水タンクとを備えることを特徴とする下肢吐水装置。
【請求項2】
前記給排水タンクは、給水時には前記吐水手段より高くなり、排水時には、前記本体を略90°回転させることにより前記下肢収納空間より低くなる位置に装着されることを特徴とする請求項1記載の下肢吐水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−268066(P2007−268066A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−99227(P2006−99227)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】