説明

下肢浴装置

【課題】複数のシャワーノズルから液体が噴射される場合に相互に干渉するのを防止するように改良した下肢浴装置を提供する。
【解決手段】下肢浴装置は、足が入れられる浴槽ユニット1と、入れられた足を支持する支持体13と、支持体13で支持された足に向けて所定温度の湯を複数方向から噴射することができるシャワーノズル装置15とを備え、シャワーノズル装置15は、足裏用シャワーノズル16と、足甲用シャワーノズル17と、足向脛用シャワーノズル18と、足脹脛用シャワーノズル19とを有して構成され、足裏用シャワーノズル16及び足甲用シャワーノズル17からの液体の噴射分布域の形状が円状の形状をなし、足向脛用シャワーノズル18及び足脹脛用シャワーノズル19からの液体の噴射分布域の形状が楕円状に近似した形状をなしたものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、老人や下肢に障害のある障害者のみならず一般人にも有用な下肢浴装置に関し、特に温水等の相対的に高温の液体を足に噴射させる複数のシャワーノズルからなるシャワーノズル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
足にマッサージ効果や熱移動効果が十分に及ぶようにして、従来品よりも一層、消炎沈痛効果、疲労回復、リラクゼーシヨン効果等の向上を図った下肢浴装置は、特許文献1に示されるように本願の出願人により特許出願されて既に公知となっている。
【0003】
この下肢浴装置について上記特許文献1に基づいて概説すると、下肢浴装置は、人体の足が入れられる浴槽と、この入れられた足を支持する支持体と、この支持体に支持された足に向けて温水を噴射するシャワーノズルとを備え、このシャワーノズルの種別としては、支持体に支持された足の足裏に向けて温水を噴射する足裏用シャワーノズルと、支持体に支持された足の甲に向けて温水を噴射する甲用シャワーノズルと、下肢のふくらはぎに向けて温水を噴射するふくらはぎ用シャワーノズルとが少なくとも有り、このうち足裏用シャワーノズル及び甲用シャワーノズルの温水の噴射範囲を、足指にも及ぶように設定すると共に、前記支持体を、足の踵以外が浴槽内に露出するように踵を支承する凹部からなる踵支承部を有して構成されたものとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−298558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
もっとも、足裏用シャワーノズル、甲用シャワーノズル及びふくらはぎ用シャワーノズルのそれぞれの噴射口から温水が噴射されるにあたり、足の甲、足の裏、足のふくらはぎの噴射対象部位以外の領域まで温水が噴射されると、噴射口から延びる噴射の軸線が交差する場合には一のシャワーノズルから噴射される温水と他のシャワーノズルから噴射される温水とが相互に干渉してしまうことが考えられる。そして、この温水同士の干渉により温水の運動エネルギーが低下してしまい、十分な衝突衝撃を噴射対象部位に与えられないことが想定される。この点、特許文献1に記載の下肢浴装置では、一のシャワーノズルから噴射される温水と他のシャワーノズルから噴射される温水とが相互に干渉する不具合の防止までは特に示されていない。
【0006】
また、足裏には相対的に大きな衝撃(打力)が求められ、足の向う脛には相対に小さな衝撃が求められ、この衝撃の増減は噴射対象部位の面積あたりの噴射量の調節で行うことが考えられるが、この噴射量の調節のための構成についても特許文献1に記載の下肢浴装置では特に示されていない。
【0007】
そこで、本発明は、複数のシャワーノズルから液体が噴射される場合に相互に干渉するのを防止するように改良すると共に噴射対象部位に応じて噴射領域を異ならせた下肢浴装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る下肢浴装置は、足にシャワーを浴びせることにより人体の下肢を入浴させる下肢浴装置であって、前記足が入れられる浴槽ユニットと、この入れられた前記足を支持する支持体と、この支持体で支持された前記足に向けて液体を複数方向から噴射することができるシャワーノズル装置とを備え、前記シャワーノズル装置のシャワーノズルは、前記支持体で支持された足の裏側に向けて前記液体を噴射する足裏用シャワーノズルと、前記支持体で支持された足の甲側に向けて前記液体を噴射する足甲用シャワーノズルと、前記支持体で支持された足の向う脛側に向けて前記液体を噴射する足向脛用シャワーノズルと、前記支持体で支持された足の脹ら脛側に向けて前記液体を噴射する足脹脛用シャワーノズルとから構成され、前記足裏用シャワーノズル及び足甲用シャワーノズルからの液体の噴射分布域の形状が真円状又はこれに近似した形状をなし、前記足向脛用シャワーノズル及び足脹脛用シャワーノズルからの液体の噴射分布域の形状が楕円状又はこれに近似した形状をなしていることを特徴としている(請求項1)。ここで、足裏用シャワーノズル、足甲用シャワーノズル、足脹脛用シャワーノズル及び足脹脛用シャワーノズルは、例えば右足用と左足用とのそれぞれに備えられている。
【0009】
前記液体は、相対的に高い温度で且つ人体に問題のない温度の液体であること(請求項2)が好適である。ここで、この相対的に高い温度で且つ人体に問題のない温度の液体としては、例えば人体の皮膚に火傷を生じない温度の温水等が用いられる。
【0010】
そして、この発明に係る下肢浴装置では、各シャワーノズルから噴射される液体の噴射分布域の範囲は、前記足向脛用シャワーノズル及び足脹脛用シャワーノズルでは対象となる人体の脛について前記噴射口側から見た範囲を超えないように調整され、前記足裏用シャワーノズル及び足甲用シャワーノズルでは人体の足の甲及び足の裏について前記噴射口側から見た範囲を超えないように調整されていることも特徴としている(請求項3)。
【0011】
このように、各シャワーノズルから噴射される液体の噴射分布域の範囲を各々の噴射対象部位の範囲以下とすることにより、シャワーノズルから噴射された液体が噴射対象部位以外に無駄に噴射されることを防止することができ、一のシャワーノズルから噴射される液体と他のシャワーノズルから噴射される液体とが相互に干渉し合うのを回避することが可能となる。このため、各シャワーノズルから噴射される液体の運動エネルギーの低下を防止することができる。
【0012】
更にこの発明に係る下肢浴装置では、各シャワーノズルの噴射口から噴射対象部位までの寸法を前記各シャワーノズルの用途に応じて設定したものとなっている(請求項4)。これにより、足裏用シャワーノズルでは、噴射口から足裏までの寸法値を他のシャワーノズルの場合に比し最も小さくすることによって、他のシャワーノズルから噴射される噴射分布域の範囲を相対的に狭くすることで、所定の面積あたりの液体の噴射量(液体の打撃力)を増すことが可能となることから、足裏に対する高いマッサージ効果を得ることが可能となる。また、足向脛用シャワーノズルでは、噴射口から足裏までの寸法値を他のシャワーノズルの場合に比し最も大きくすることによって、所定の面積あたりの液体の噴射量(液体の打撃力)を減らすことが可能となることから、向う脛に対しては衝撃の弱い柔らかな感触となるように液体を万遍なく噴射させることができ、利用者に対し噴射液が痛い等の不快感を与えるのを防止することが可能となる。
【0013】
この発明に係る下肢浴装置は、前記シャワーノズル装置の各シャワーノズルに液体を供給するための液体供給手段を有し、この液体供給手段はドレン排出機構を備えており、このドレン排出機構により人体に問題のない温度の液体以外の温度の液体を排出することができる(請求項5)。これにより、相対的に高い温度で且つ人体に問題のない温度の液体以外の液体を、ドレン排出機構から下肢浴装置外に排出することができる。
【0014】
この発明に係る下肢浴装置の各シャワーノズルの具体的構成を示すと、前記足裏用シャワーノズル、前記足甲用シャワーノズル、前記足向脛用シャワーノズル及び前記足脹脛用シャワーノズルは、アダプター部とノズル本体とで構成され、前記足裏用シャワーノズルのノズル本体は、噴射口の径寸法が前記足甲用シャワーノズルよりも相対的に大きく、前記足脹脛用シャワーノズルのノズル本体は、噴射口の径寸法が前記足向脛用シャワーノズルの噴射口よりも相対的に大きくなっていると共に、前記足向脛用シャワーノズル及び前記前記足脹脛用シャワーノズルのノズル本体は、当該ノズル本体の先端側に向けて開口したスリットが形成されていると共にこのスリット内において前記ノズル本体の先端側に向けて開口した噴射口を有し、この噴射口は前記スリットの長手方向に沿った内径寸法が前記スリットの短手方向に沿った内径寸法よりも長くなるように形成されており、前記足裏用シャワーノズル及び足甲用シャワーノズルのノズル本体は、前記噴射口の開口近傍部位の形状が前記液体の噴射する方向に進むに従って小さくなっている(請求項6)。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、この発明によれば、各シャワーノズルから噴射される液体の噴射分布域の範囲を各々の噴射対象部位の範囲以下とすることにより、シャワーノズルから噴射された液体が噴射対象部位以外に無駄に噴射されることを防止することができ、一のシャワーノズルから噴射される液体と他のシャワーノズルから噴射される液体とが相互に干渉し合うのを回避することが可能となるので、各シャワーノズルから噴射される液体の運動エネルギーの低下を防止することができる。
【0016】
特に請求項4に記載の発明によれば、足裏用シャワーノズルでは、噴射口から足裏までの寸法値を他のシャワーノズルの場合に比し最も小さくすることによって、他のシャワーノズルから噴射される噴射分布域の範囲を相対的に狭くすることで、所定の面積あたりの液体の噴射量(液体の打撃力)を増すことが可能となることから、足裏に対する高いマッサージ効果を得ることが可能となる。また、足向脛用シャワーノズルでは、噴射口から足裏までの寸法値を他のシャワーノズルの場合に比し最も大きくすることによって、所定の面積あたりの液体の噴射量(液体の打撃力)を減らすことが可能となることから、向う脛に対しては衝撃の弱い柔らかな感触となるように液体を万遍なく噴射させることができ、利用者に対し噴射液が痛い等の不快感を与えるのを防止することが可能となる。
【0017】
特に、請求項2と請求項5とに記載の発明によれば、相対的に高い温度で且つ人体に問題のない温度の液体以外の液体を、ドレン排出機構から下肢浴装置外に排出し、シャワーノズルから噴射されるおそれを確実に排除することよって、人体に対して危険な状態、不快な状態を回避することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、この発明に係る下肢浴装置の全体構成を示す簡略図である。
【図2】図2は、同上の下肢浴装置を構成する浴槽ユニットの構成を示す説明図である。
【図3】図3は、同上の浴槽ユニットにおける各用途に応じたシャワーノズルの配置及びこれらのシャワーノズルから噴射される温水の噴射分布域を側方から示した説明図である。
【図4】図4は、足裏用シャワーノズルのアダプター部とノズル本体とを分離した状態を示す説明図である。
【図5】図5は、足裏用シャワーノズルのアダプター部とノズル本体とを組み合わせた状態を示す説明図であり、図5(a)は足裏用シャワーノズルの側面図、図5(b)は足裏用シャワーノズルの噴射口から見た状態の底面図である。
【図6】図6は、足甲用シャワーノズルのアダプター部とノズル本体とを分離した状態を示す説明図である。
【図7】図7は、足甲用シャワーノズルのアダプター部とノズル本体とを組み合わせた状態を示す説明図であり、図7(a)は足甲用シャワーノズルの側面図、図7(b)は足甲用シャワーノズルの噴射口から見た状態の底面図である。
【図8】図8は、足裏用シャワーノズル及び足甲用シャワーノズルの噴射口からミスト状に吹き出さされる温水の状態を示す説明図であり、図8(a)は噴射分布域を噴射口の軸方向から見た状態を示す説明図、図8(b)は噴射分布域を噴射口の径方向から見た状態を示す説明図である。
【図9】図9は、足向脛用シャワーノズルのアダプター部とノズル本体とを分離した状態を示す説明図である。
【図10】図10は、足向脛用シャワーノズルのアダプター部とノズル本体とを組み合わせた状態を示す説明図であり、図10(a)は足向脛用シャワーノズルの側面図、図10(b)は足向脛用シャワーノズルの噴射口から見た状態の底面図である。
【図11】図11は、足脹脛用シャワーノズルのアダプター部とノズル本体とを分離した状態を示す説明図である。
【図12】図12は、足脹脛用シャワーノズルのアダプター部とノズル本体とを組み合わせた状態を示す説明図であり、図12(a)は足脹脛用シャワーノズルの側面図、図12(b)は足脹脛用シャワーノズルの噴射口から見た状態の底面図である。
【図13】図13は、足向脛用シャワーノズル及び足脹脛用シャワーノズルの噴射口からミスト状に吹き出さされる温水の状態を示す説明図であり、図13(a)は噴射分布域を噴射口の軸方向から見た状態を示す説明図、図13(b)は噴射分布域を噴射口の径方向から見た状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1から図13において、この発明に係る下肢浴装置の構成の一例が示されており、この下肢浴装置は、図1に示されるように、浴槽ユニット1と、温水供給ユニット20とで基本的に構成されている。
【0021】
浴槽ユニット1は、人体の両方の足のうちおよそ膝から先側が入れられるもので、その外郭は図2に示されるように浴槽本体2と蓋体3とにより構成されており、これら浴槽本体2と蓋体3とは、例えば蓋体3に設けられた軸部4を浴槽本体2の側方内面に形成された窪み又は貫通孔(図示せず。)に回転自在に挿通させることにより連結されている。これにより、蓋体3の開閉は、図2に示されるように、当該蓋体3について軸部4を回転中心として浴槽本体2に対して遠近させる方向に回転させることで行うことが可能となっている。この蓋体3の開閉動作は、例えば蓋体3に設けられた把手5を持って行われる。
【0022】
もっとも、浴槽本体2と蓋体3とを開閉可能に連結する構成は、上記したものに限定されず、図示しないが例えばヒンジ(蝶番)等の他の連結機器を用いても良い。
【0023】
また、浴槽ユニット1のうち軸部4を有する側と反対側には両足が挿通可能な開口面積を有する開口部6が形成されている。この開口部6は、浴槽本体2に対し蓋体3側から下方に向けて切り欠かれるように形成された湾部6aと蓋体3に対し浴槽本体2側から上方に向けて切り欠かれるように形成された湾部6bとを組み合わせることで構成される。すなわち、開口部6は、蓋体3を浴槽本体2側に回転させて、図2(a)の実線で示されるような閉じた状態とすることによりはじめて形成される。
【0024】
このうち、蓋体3の湾部6aは、図2(b)に示されるように、浴槽ユニット1外に後述するシャワーノズル16乃至19からの温水が漏れるのを防止するためにシャワーカーテン7が取り付けられている。このシャワーカーテン7は、右足用の切り欠き8と左足用の切り欠き9とが当該シャワーカーテン7の下縁から上方に向かってのびるように形成されている。そして、切り欠き8、9の上縁近傍部位には、足の挿入の容易化のため及び足の太さが異なっても対応可能なようにスリット10が複数にわたって設けられている。
【0025】
尚、蓋体3の内部に、図示しないがもう1つシャワーカーテンが吊り下げられたものとしても良く、このシャワーカーテンにも差し込まれた足の周面に接することができる略半円形状の切り欠きが形成され、更にこの切り欠きに対し放射状に延びるスリットが設けられたものとしても良い。
【0026】
これに対し、浴槽本体2の湾部6bは、足の例えば膝近傍の太股下面を支持することができるように2つの略半円状の窪み11、12により構成されている。
【0027】
更に、浴槽ユニット1は、図3に示されるように、その内部の底面に支持体13が上方に向けて隆起するかたちで設けられており、この支持体13に足の踵部分を載置することで浴槽ユニット1内に開口部6から入れられた足を支持することが可能となっている。
【0028】
更にまた、浴槽ユニット1内には、温水を複数方向から噴射することができるシャワーノズル装置15が設けられている。このシャワーノズル装置15は、図3に示されるように、支持体13で支持された足の裏側に向けて温水を噴射する足裏用シャワーノズル16と、支持体13で支持された足の甲側に向けて温水を噴射する足甲用シャワーノズル17と、支持体13で支持された足の向う脛側に向けて温水を噴射する足向脛用シャワーノズル18と、支持体13で支持された足の脹ら脛側に向けて温水を噴射する足脹脛用シャワーノズル19とから構成されている。
【0029】
これらシャワーノズル16乃至19は、温水を粒子状(ミスト状)にして噴射する方式のもので、この実施例では、足裏用シャワーノズル16は開口部6とは反対側となる浴槽ユニット1内の奥側の下方に位置すると共に開口部6に向けて温水を斜め上方に噴射することができるように設置され、足甲用シャワーノズル17は浴槽ユニット1内部の略中央の上面側に位置すると共に浴槽ユニット1の奥に向けて温水を斜め下方に噴射することができるように設置されている。また、この実施例では、足向脛用シャワーノズル18は、浴槽ユニット1内部の略中央の上面側で且つ足甲用シャワーノズル17よりも開口部6寄りに位置すると共に開口部6に向けて温水を斜め下方に噴射することができる位置に設置され、足脹脛用シャワーノズル19は開口部6近傍となる浴槽ユニット1内の下方に位置すると共に浴槽ユニット1の奥側に向けて温水を斜め下方に噴射することができるように設置されている。
【0030】
そして、温水供給ユニット20は、シャワーノズル装置15のシャワーノズル16乃至19に対し好適な同じ圧力にて温水を供給するためのもので、図1に示されるように、浴槽ユニット1に近接して配置されると共に、図3に示されるように、相対的に高温の熱水を供給するための給水ポンプ21と、冷水を供給するための給水ポンプ22と、給水ポンプ21で送られてくる相対的に高温の熱水に給水ポンプ22で送られてくる冷水を混合して形成する温水の温度を調整するミキサ23と、このミキサ23で上記の人体に問題のない温度まで調整された温水をシャワーノズル16乃至19に送り出す加圧ポンプ24とを有して構成されている。
【0031】
ここで、図3において、温水供給ユニット20のうち、符号25で示されるものは加圧ポンプ24よりも温水の下流側用の電磁バルブ、符号26で示されるものは電磁バルブ25よりも温水の上流側に設けられた浴槽ユニット1内からのドレン排出機構となる電磁バルブであり、符号27で示されるものは給水ポンプ21から延びる配管上に設けられた減圧器、符号28で示されるものは圧力計、符号29で示されるものは温度計である。また、温水供給ユニット20のうち、符号30で示されるものは給水ポンプ22から延びる配管上に設けられた減圧器、符号31で示されるものは圧力計、符号32で示されるものは温度計である。更に、符号33で示されるものは、ミキサ23と加圧ポンプ24との間に配置された減圧器である。
【0032】
このような浴槽ユニット1及び温水供給ユニット20から構成された下肢浴装置の利用手順を以下に説明する。
【0033】
まず、図2の想像線に示されるように、蓋体3を上方に回転させて開いた状態とした後、利用者(入浴者)が自ら若しくは介護者の手を借りて、図1に示されるように椅子に着座したまま、足を浴槽ユニット1内に開口部6から入れる。この場合に、足の踵が浴槽ユニット1内の支持体13に当たるまで足を浴槽ユニット1内に入れる必要がある。足の浴槽ユニット1内への挿入動作が完了したら、図2の実線に示されるように蓋体3を下方に回転させて閉じた状態とする。これにより、利用者の下肢浴の準備が完了する。
【0034】
次に、図示しないON/OFFスイッチを押して温水供給ユニット2をON状態にして給水ポンプ21、22及び加圧ポンプ24を稼働させる。この場合、電磁バルブ25を閉状態、電磁バルブ26を開状態にして温度調整運転を予め行って、適正温度になったことを確認してから、電磁バルブ25を開状態、電磁バルブ26を閉状態にして、シャワーノズル装置15の各シャワーノズル16乃至19に温水を供給することが好ましい。
【0035】
ここで、温水の適正温度とは、人体に問題のない温度、すなわち、皮膚に火傷(低温火傷を含む。)を生じない温度であることが最低条件であり、更に詳述すれば35℃から43℃の間であって、この温度未満の比較的低い温度も忌避されるべきであるところ、上記のように35℃から43℃の範囲外の温度であると判定した温水若しくは冷水をドレン水として排出し、シャワーノズルから噴射されるおそれを確実に排除することよって、人体に対して危険な状態、不快な状態を回避することが可能である。
【0036】
尚、この実施例では、浴槽ユニット1と温水供給ユニット20とが別個独立のユニットとして示されているが必ずしもこれに限定されず、両ユニット1、20を統合して一体的なユニットにしても良いものであり、且つこの統合後のユニットについても特許請求の範囲に記載された浴槽ユニット1の範疇に含まれるものである。
【0037】
ところで、シャワーノズル装置15を構成する各シャワーノズル16乃至19は、図4、図6、図9及び図11に示されるようにアダプター部35と各ノズル本体16a乃至19bとの組み合わせで構成されているもので、アダプター部35の共通化が図られている。
【0038】
このうち、アダプター部35は公知のものであり、ノズル本体16a乃至19bの下記する基部40が収納される穴部36が開口したホルダー37が形成され、更に基部40の側方から突出した係合突起42が係合可能な係合孔38がホルダー37に対し穴部36とは交差する方向に形成されている。
【0039】
これに対し、足裏用シャワーノズルのノズル本体16a及びノズル本体17aは、足裏用シャワーノズル16及び足甲用シャワーノズル17に対して充円錐ノズル(Full Cone Spray Nozzle)としての機能・作用を与えるためのもので、略円筒状の基部40とこの基部40の先端に設けられた先端部41とから構成されている。
【0040】
基部40には、アダプター部35の係合孔38と係合可能な係合突起42が形成され、これにより、アダプター部35とノズル本体16a、17aとを反対方向に、或いはいずれか一方のみを回転させることで、ノズル本体16a、17aの係合突起42がアダプター部35の係合孔38内に入り、アダプター部35とノズル本体16a、17aとを確実に固定、連結させることができる。
【0041】
先端部41は、図4、図5(b)と図6、図7(b)に示されるように2カ所で切り欠かれた略円状の外周部43の内周側において基部40側からこの基部40とは反対側に進むに従いしぼむ略円錐形状(コーン状)の噴射突部44が形成され、その先端に噴射口45が開口している。
【0042】
そして、噴射口45の形状は、図5(b)及び図7(b)に示されるように、円形状若しくは円に近似する形状をなしており、これに伴って、噴射口45から噴射される温水のシャワーパターンは図8(a)に示されるように噴射口45の位置を示すXポイントを中心とした円形状となっており、且つこの噴射口45が略円錐形状の噴射突部44の先端に形成されていることもあって温水の噴射分布域を噴射口45の径方向から見た場合には裾広がりの台形状のように拡がったものとなっている。
【0043】
更に、ノズル本体16aの噴射口45の内径寸法W1はノズル本体17aの噴射口45の内径寸法W2よりも大きくなっており、これに伴い、噴射口45から噴射される温水の微粒子の粒子径は、足裏用シャワーノズル16の噴射口45から噴射される温水の微粒子では例えば約500ミクロンメートルであるのに対し、足甲用シャワーノズル17の噴射口45から噴射される温水の微粒子では例えば約400ミクロンメートルであり、足裏用シャワーノズル16の方が足甲用シャワーノズル17よりも大きくなっている。
【0044】
また、足向脛用シャワーノズルのノズル本体18a及び足脹脛用シャワーノズルのノズル本体19aは、足向脛用シャワーノズル18及び足脹脛用シャワーノズル19に対して一触ノズル(Standard Flat Spray Nozzle) としての機能・作用を与えるためのもので、略円筒状の基部47とこの基部47の先端に設けられた先端部48とから構成されている。
【0045】
基部47は、足裏用シャワーノズル16及び足甲用シャワーノズル17の基部40とほぼ同様の構成であり、アダプター部35の係合孔38と係合可能な係合突起49が形成されて、アダプター部35等を適宜に回転させることにより、この係合突起49がアダプター部35の係合孔38内に入るので、アダプター部35とノズル本体18a、19aとを確実に固定、連結させることが可能となっている。
【0046】
先端部48は、図9、図10(b)と図11、図12(b)に示されるように2カ所で切り欠かれた略円状の外周部50の内周側において基部47側からこの基部47とは反対側に延びる略円柱状の噴射突部51が形成されている。この噴射突部51は、先端において、当該噴射突部51の中心を通るように端から端まで直線的に延びると共に噴射突部51の軸方向に沿っても所定の深度を有する切欠き52が形成されている。そして、この切り欠52の底面には略半球状の台座53が形成されていると共にこの台座53に噴射口54が開口している。
【0047】
また、噴射口54の形状は、図10(b)及び図12(b)に示されるように、楕円形状若しくはラグビーボール等の楕円に近似する形状をなしており、これに伴って、噴射口54から噴射される温水のシャワーパターンは図13(a)に示されるように噴射口54の位置を示すXポントを中心とした楕円形状となっており、且つ噴射突部53の形状もあって温水の噴射分布域を噴射口54の径方向のうち長手方向から見た場合には開口が大きく底の浅い略椀形状のように拡がったものとなっている。
【0048】
更に、ノズル本体18aの噴射口54の短手方向の内径寸法W3はノズル本体19aの噴射口54の短手方向の内径寸法W4よりも小さくなっており、これに伴い、ノズル噴射口54から噴射される温水の微粒子の粒子径は、足向脛用シャワーノズル18の噴射口54から噴射される温水の微粒子では例えば約200から300ミクロンメートルであるのに対し、足脹脛用シャワーノズル19の噴射口54から噴射される温水の微粒子では例えば約400ミクロンメートルであり、足向脛用シャワーノズル18の方が足脹脛用シャワーノズル19よりも小さくなっている。
【0049】
このように、この下肢浴装置によれば、足裏用シャワーノズル16及び足甲用シャワーノズル17による温水のシャワーパターンが図8(a)に示されるように円形状であり、噴射口45側から見て相対的に広い面積を有する足の裏や足の甲に対しその範囲をほぼ満たす範囲で且つ足の裏や足の甲の外縁を超えて温水が噴射されないように調整することが可能となっている。また、足向脛用シャワーノズル18及び足脹脛用シャワーノズル19による温水のシャワーパターンが図13(a)に示されるように楕円状であり、噴射口45側から見て相対的に狭く縦長の足の向う脛や足の脹ら脛に対しその部位の範囲を超えて温水が噴射されないように調整することが可能となっている。よって、この下肢浴装置では、各シャワーノズル16乃至19の噴射口45、54から噴射される温水が相互に干渉してしまうことが回避されている。
【0050】
しかも、この下肢浴装置によれば、肉厚で相対的に強い衝撃が求められる足の裏に対しては、足裏用シャワーノズル16の噴射口45から噴射される温水の微粒子の粒子径が最も大きくなるようにしているので、足の裏に対する打力も最も大きくすることが可能となり、足の裏のマッサージとしては必要充分な打力を与えるよう設定することができると共に、肉薄で噴射される温水の衝突衝撃が骨に伝わり易い足の向う脛に対しては、全く温水の微粒子を当てないのではなく、代わりに足向脛用シャワーノズル18の噴射口54から噴射される温水の微粒子の粒子径が最も小さくなるようにしているので、足の向う脛に対する打力を最も小さいかたちで与えるよう設定することが可能となっている。更には、足の甲や足の脹ら脛に対してもこれらの対象部位の肉厚などの条件に応じて好適な打力を与えるように温水の微粒子の粒子径の設定が可能となっている。
【0051】
そして、この下肢浴装置では、各シャワーノズル16乃至19の対象部位からの寸法も対象部位に応じて可変することが可能である。これにより、足裏用シャワーノズル16においては、足の裏から噴射口45までの寸法を相対に短くし、足の裏への温水の噴射領域を他のシャワーノズル17乃至19から噴射される温水の噴射領域に比し狭くすることで、所定の面積あたりの温水噴射量(衝撃若しくは打力)を増大することが可能となっており、これによって高いマッサージ効果を与えることができる。また、足向脛用シャワーノズル18においては、向う脛から噴射口54までの寸法を相対的に長くすることで、向う脛に向けての温水の噴射領域を他のシャワーノズル16、17及び19から噴射される温水の噴射領域に比し広くなり、所定の面積あたりの温水噴射量も減少するので、他の部位と比較して鉛直方向への高さを有する向う脛に対して、衝撃若しくは打力が柔らかな液体を万遍なく噴射させることができる。
【符号の説明】
【0052】
1 浴槽ユニット
2 浴槽本体
3 蓋体
4 軸部
5 把手
6 開口部
7 シャワーカーテン
8 切り欠き
9 切り欠き
10 スリット
11 窪み
12 窪み
13 支持体
15 シャワーノズル装置
16 足裏用シャワーノズル
17 足甲用シャワーノズル
18 足向脛用シャワーノズル
19 足脹脛用シャワーノズル
20 温水供給ユニット(温水供給手段)
21 給水ポンプ
22 給水ポンプ
23 ミキサ
24 加圧ポンプ
25 電磁バルブ
26 電磁バルブ(ドレン排出機構)
27 減圧器
28 圧力計
29 温度計
30 減圧器
31 圧力計
32 温度計
35 アダプター部
36 穴部
37 ホルダー
38 係合孔
40 基部
41 先端部
42 係合突起
43 外周部
44 噴射突部
45 噴射口
47 基部
48 先端部
49 係合突起
50 外周部
51 噴射突部
52 切り欠き
53 台座
54 噴射口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
足にシャワーを浴びせることにより人体の下肢を入浴させる下肢浴装置であって、
前記足が入れられる浴槽ユニットと、この入れられた前記足を支持する支持体と、この支持体で支持された前記足に向けて液体を複数方向から噴射することができるシャワーノズル装置とを備え、
前記シャワーノズル装置のシャワーノズルは、前記支持体で支持された足の裏側に向けて前記液体を噴射する足裏用シャワーノズルと、前記支持体で支持された足の甲側に向けて前記液体を噴射する足甲用シャワーノズルと、前記支持体で支持された足の向う脛側に向けて前記液体を噴射する足向脛用シャワーノズルと、前記支持体で支持された足の脹ら脛側に向けて前記液体を噴射する足脹脛用シャワーノズルとから構成され、
前記足裏用シャワーノズル及び足甲用シャワーノズルからの液体の噴射分布域の形状が真円状又はこれに近似した形状をなし、前記足向脛用シャワーノズル及び足脹脛用シャワーノズルからの液体の噴射分布域の形状が楕円状又はこれに近似した形状をなしていることを特徴とする下肢浴装置。
【請求項2】
前記液体は、相対的に高い温度で且つ人体に問題のない温度の液体であることを特徴とする請求項1に記載の下肢浴装置。
【請求項3】
各シャワーノズルから噴射される液体の噴射分布域の範囲は、前記足向脛用シャワーノズル及び足脹脛用シャワーノズルでは対象となる人体の脛について前記噴射口側から見た範囲を超えないように調整され、前記足裏用シャワーノズル及び足甲用シャワーノズルでは人体の足の甲及び足の裏について前記噴射口側から見た範囲を超えないように調整されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の下肢浴装置。
【請求項4】
各シャワーノズルの噴射口から噴射対象部位までの寸法を前記各シャワーノズルの用途に応じて設定したことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の下肢浴装置。
【請求項5】
前記シャワーノズル装置の各シャワーノズルに液体を供給するための液体供給手段を有し、この液体供給手段はドレン排出機構を備えており、このドレン排出機構により人体に問題のない温度の液体以外の温度の液体を排出することができることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の下肢浴装置。
【請求項6】
前記足裏用シャワーノズル、前記足甲用シャワーノズル、前記足向脛用シャワーノズル及び前記足脹脛用シャワーノズルは、アダプター部とノズル本体とで構成され、
前記足裏用シャワーノズルのノズル本体は、噴射口の径寸法が前記足甲用シャワーノズルよりも相対的に大きく、前記足脹脛用シャワーノズルのノズル本体は、噴射口の径寸法が前記足向脛用シャワーノズルの噴射口よりも相対的に大きくなっていると共に、 前記足向脛用シャワーノズル及び前記前記足脹脛用シャワーノズルのノズル本体は、当該ノズル本体の先端側に向けて開口したスリットが形成されていると共にこのスリット内において前記ノズル本体の先端側に向けて開口した噴射口を有し、この噴射口は前記スリットの長手方向に沿った内径寸法が前記スリットの短手方向に沿った内径寸法よりも長くなるように形成されており、
前記足裏用シャワーノズル及び足甲用シャワーノズルのノズル本体は、前記噴射口の開口近傍部位の形状が前記液体の噴射する方向に進むに従って小さくなっていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の下肢浴装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−207373(P2010−207373A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−56055(P2009−56055)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(509069858)
【出願人】(596030139)システム・インテグレーション株式会社 (2)
【Fターム(参考)】