説明

下肢静止不能症候群および嗜癖障害の処置に有用なα−アミノアミド誘導体

本発明は、RLSおよび嗜癖障害の処置におけるある種のα−アミノアミド誘導体の使用に関する。本発明の化合物は、実質的に副作用を伴わずにRLSおよび嗜癖障害の症状を軽減するか止めたりさえすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下肢静止不能症候群(RLS)および嗜癖障害の処置での使用のためのα−アミノアミド誘導体、すなわちモノアミンオキシダーゼB(MAOB)インヒビター、ナトリウムチャネルブロッカー、ドーパミン再取り込みインヒビター、およびグルタメートレベルモジュレータの化学クラスに関する。
【背景技術】
【0002】
下肢静止不能症候群(RLS)は、膝から足首の間の下肢深部での不快なむずむず感、ひりひり感、または引っ張り感を特徴とする、明確に認識された病型であり、腕ではあまり見られない。症状は、下肢が静止しているとき、特に夕方や夜間に発症し、一般に運動によって軽減される。結果として、睡眠障害の出現、長時間の睡眠潜時、徐波睡眠の短縮または非存在および睡眠効率の低下を伴う総睡眠時間の短縮を引き起こす。
【0003】
疫学的研究により、RLSが一般的であり、生涯有病率値が成人において一般人口の9〜15%の範囲であることが見出された(Phillips B Epidemiology of restless legs syndrome in adults Archives of Internal Medicine 160(14)2137-2141 2000)。The international RLS Study Group Criteria(1995)は、RLS患者が以下の症状を提示するとして定義している(Walters AS Toward a better definition of the Restless Legs Syndrome Movement Disorders 10(5)634-642 1995):
1.知覚異常または異常感覚に関連して下肢を動かしたいという欲求。
2.運動性静止不能(覚醒中に患者は、不快感を軽減させようとして下肢を動かす)。
3.症状は静止時に悪化または専ら存在し、動作によって少なくとも部分的および一時的に軽減される。
4.症状は夕方または夜間に悪化する。
【0004】
他の共通の特徴は、睡眠障害、睡眠時周期性四肢運動(PLMS)、および同様の覚醒中の不随意運動(Walters AS Toward a better definition of the Restless Legs Syndrome Movement Disorders 10(5)634-642 1995)である。
【0005】
PLMおよび関連パラメータの数は、PLMが夜間覚醒または覚醒状態と頻繁に関連しているため、RLSの重症度のマーカーと見なされる。
【0006】
睡眠および覚醒中の問題のために、RLSに罹患した人々は、その仕事、社会生活、およびレクリエーション活動に困難を来たすことがある。
【0007】
RLSの病因は、未知のままであるが、現在の証拠は、好ましくは複数の影響によって支配される、正常な中枢神経系のペースメーカーの脱阻害を支持している。RLSにおけるポジトロン放出断層撮影(PET)研究は、障害の病因におけるドーパミン作動系の役割を裏付けている。Turjanskiらは、尾状核および被殻18F−ドーパ取り込みは、どちらもRLS患者では対照対象と比較してゆるやかに低下して、これが被殻において有意(p=0.04)に達したことを開示している。同じ研究は、これらの患者の被殻に結合しているD2ドーパミンレセプターの著しい減少を証明した(Turjanski N Neurology 52 932-937 1999)。同様にRuottinenらは、薬品未投与のRLS患者の群で試験を行い、被殻において18F−ドーパ取り込みの11%の低下を、尾状核において12%の低下を証明した(Ruottinen HM Neurology 54 502-504 2000)。これらのデータは、軽症の線条体シナプス前ドーパミン作動性障害を示唆している。
【0008】
L−dopaの調製物であるRestex(登録商標)が最近ドイツで発売されたが、米国ではRLS処置の薬剤は、現在指示されていない。RLS症状の処置に使用される他の製品には、オピエート、ベンゾジアゼピン、および一部の抗けいれん剤がある。ドーパミンアゴニスト、例えばカベルゴリン、プラミペキソール、およびロピニロールも、RLS処置に提案されている。これらすべての処置は、副作用、相互作用、短い作用期間、および濫用の可能性などの短所を有する。利用可能な証拠は、ドーパミン作動系の欠損がRLSで重要な役割を果たすことを示唆している。MAOBインヒビターは、そのレセプターでのドーパミンの時間経過の延長につながるドーパミンの代謝に影響を及ぼすため、本発明者らは、RLSの治療でのα−アミノ誘導体の使用を提案する。ドーパミン作動系の欠損が重要な役割を果たす他の障害は、強迫的な薬物探求および摂取を特徴とする病的挙動として定義できる嗜癖障害である。継続的な薬物使用は、依存、薬物への渇望、および再発につながる動機に関与する神経回路の長期に渡る機能変化を引き起こすと考えられる。
【0009】
通例、各種の濫用薬物(アンフェタミン、コカイン、ヘロイン、ニコチン、アルコール)は、主な分子標的が異なっていても、中脳辺縁系におけるドーパミン伝達を向上させる共通の作用を有する。嗜癖障害の処置には各種の手法が使用されており、その大半はドーパミン作動系の調節を目的としている。
【0010】
MAOBインヒビターは、そのレセプターでのドーパミンの時間経過の延長につながるヒトおよび霊長類におけるドーパミンの代謝に影響を及ぼす。MAOBインヒビターの使用は、PDにおいてと同様にドーパミン作動欠損が存在する病状の処置に有益であることが示されている。
【0011】
新たな証拠が、嗜癖障害の処置にMAOBインヒビターが有益であり得るという仮説を裏付けている。ラットおよびヒトにおいて実施された研究では、セレギリン(特異性MAOBインヒビター)がコカイン解毒中に中程度の抗強化効果を有し、再発事象に寄与すると考えられている退薬中のドーパミン欠損を改善し得ることが示されている(Schifferら, 2003 Synapse 48:35-8)。
【0012】
最近、喫煙者の血小板および脳におけるMAOB活性の低下が観察されている。脳でのMAOB活性の低下は、ニコチンの嗜癖特性の上昇に関与するという仮説が立てられている。第II相多施設試験において、別のMAOBインヒビターであるラザベミド(200mg/日)は、喫煙中止のパーセンテージを向上させるように思われる。(17%から30%へ)(Berlinら,2002 Addiction 97:1347-1354)。
【0013】
その上、Naチャネルブロッカーも嗜癖障害の処置に有効であることが示されている。実際に最近の臨床試験は、トピラメート(Naチャネルブロッカー)がアルコール依存性の処置に効果的であることを示している(Johnsonら,2003,The Lancet 361:1677-1685)。
【0014】
嗜癖障害の現在の処置として、抗うつ薬、メタドンなどのオピエートレセプターアゴニスト、ナルトレキソンおよびブプレノルフィンなどのオピエートレセプターアンタゴニストおよび部分アゴニスト、アルコール解毒のためのベンゾジアゼピンおよびジスルフィラムが挙げられる。これらの処置の短所として、副作用およびなお不満足な治療効能が挙げられる。
【0015】
MAOB阻害活性を有する化合物およびNaチャネルブロッカー活性を有する化合物が、嗜癖障害の処置に有効であり得るという証拠があるため、本発明者らは、嗜癖障害の処置に本発明のモノアミンオキシダーゼB(MAOB)インヒビターおよびナトリウムチャネルブロッカーの化学クラスである、α−アミノ誘導体の使用を提案する。
【0016】
テキストが参照として本明細書に組み入れられる国際公開公報第90/14334号、国際公開公報第94/22808号、国際公開公報第97/05102号、国際公開公報第97/0511号、および国際公開公報第99/35215号は、中枢神経系に対して活性であり、抗てんかん剤、抗パーキンソン病剤、神経防護剤、抗うつ剤、および鎮痙催眠剤として有用である、置換ベンジルアミノプロピオンアミド化合物を開示している(Pevarello P.ら(1998), J.Med.Chemistry, 41: 579-590も参照)。国際公開公報第99/35125号および国際公開公報第99/35123号は、中枢神経系に対して活性であり、鎮痛剤として有用である、置換ベンジルアミノプロパンアミド化合物を開示している。
【0017】
本発明は、既存の治療に代わる優れた代案である療法において、インビボで、あるα−アミノアミド化合物を利用することによって、RLSおよび嗜癖障害を処置するための、迅速および非常に有効な方法を提供する。
【0018】
実施態様において、本発明は、下肢静止不能症候群および嗜癖障害の症状を処置する医薬の調製のための、式(I):
【化2】


(式中:
・Aは、−(CH−X−基であり、式中、nは、0〜5の整数であり、Xは、CH、−O−、−S−、または−NH−であり;
・sは、1または2であり;
・Rは、場合によりハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシまたはトリフルオロメチルから独立して選択される1個または2個の置換基によって置換されている、フリル、チエニル、またはピリジル環もしくはフェニル環であり;
・Rは、水素またはC〜CアルキルまたはC〜Cシクロアルキルであり;
・RおよびRは、水素;場合によりヒドロキシまたはフェニルによって置換されている、C〜Cアルキル;場合によりC〜Cアルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、またはトリフルオロメチルから独立して選択される1個または2個の置換基によって置換されている、フェニルから独立して選択されるか;あるいはRおよびRは、それらが結合している炭素原子とひとまとめにされて、C〜Cシクロアルキル環を形成し;そして
・R、Rは、独立して、水素、C〜CアルキルまたはC〜Cシクロアルキルであるか;あるいはRおよびRは、それらが結合している窒素原子とひとまとめにされて、5〜7原子飽和複素環を形成する)のα−アミノアミド化合物、またはその異性体、混合物、および医薬的に許容される塩である、少なくとも1種の薬物の使用を含む。
【0019】
アルキルおよびアルコキシ基は、分岐であり得るか、または直鎖基であり得る。
【0020】
本発明の化合物の医薬的に許容される塩として、例えば、無機酸、例えば硝酸、塩酸、臭化水素酸、硫酸、およびリン酸などとの、または有機酸、例えば酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、シュウ酸、マロン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、およびサリチル酸などとの酸付加塩などが挙げられる。
【0021】
式(I)の化合物の一部は、不斉炭素原子を有することができ、したがってラセミ混合物として、または個々の光学異性体(エナンチオマー)としてのどちらかで存在できる。したがって、式(I)のα−アミノアミドの「医薬的に許容される塩」という用語は、その範囲内に考えられるすべての異性体およびその混合物、ならびに任意の医薬的に許容される代謝産物、生体前駆物質および/またはプロドラッグ、すなわち式(I)のα−アミノアミドの1つとは異なる構造式を有し、哺乳類、特にヒトへの投与時にインビボで式(I)を有する化合物に直接または間接的になお変換される化合物を含むことを意味する。
【0022】
式(I)の好ましい化合物は、Aが、−CH−、−CH−CH−、−CH−S−、−CH−CH−S−、および−(CH−O−から選択される基であり、ここでnが1〜5の整数であり;
・sが、1または2であり;
・Rが、場合によりハロゲン、トリフルオロメチル、メトキシから独立して選択される1個または2個の置換基によって置換されているフェニル環、またはチエニル環であり;
・Rが、水素またはC〜Cアルキルであり;
・RおよびRの一方が、水素であり、他方が、場合によりヒドロキシもしくはフェニルによって置換されているC〜Cアルキル、または場合により1個もしくは2個のハロゲン原子によって置換されているフェニルであるか、あるいはRおよびRが、どちらもメチルであるか、またはそれらが結合している原子と一緒になって、シクロプロピルもしくはシクロペンチル環を形成でき;そして
・R、Rが、水素またはC〜Cアルキルであるか、あるいはそれらが結合している窒素原子と一緒になって、ピロリジンまたはピペリジン環を形成する、化合物およびその医薬的に許容される塩である。
【0023】
患者のRLSおよび嗜癖障害を処置するための有効量にて、単独で、または式(I)の他の化合物と併用して使用できる、式(I)の具体的な化合物の例は:
2−(4−ベンジルオキシベンジルアミノ)プロパンアミド;
2−[4−(2−メトキシベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]プロパンアミド;
2−[4−(2−フルオロベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]プロパンアミド;
(S)−(+)−2−[4−(2−フルオロベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]プロパンアミド
2−[4−(2−フルオロベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]−2−メチル−プロパンアミド;
2−[4−(2−フルオロベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]−N−メチル−プロパンアミド;
N−{2−[4−(2−フルオロベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]}プロピオニル−ピロリジン;
2−[4−(3−メトキシベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]プロパンアミド;
2−[4−(3−シアノベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]プロパンアミド;
2−[4−(3−フルオロベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]プロパンアミド;
(S)−(+)−2−[4−(3−フルオロベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]プロパンアミド;
2−[4−(3−フルオロベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]−2−メチル−プロパンアミド;
2−[4−(3−フルオロベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]−N−メチル−プロパンアミド;
N−{2−[4−(3−フルオロベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]}プロピオニル−ピロリジン;
2−[4−(4−フルオロベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]プロパンアミド;
2−[4−(3−フルオロベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]−2−メチル−プロパンアミド;
2−[4−(2−クロロベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]プロパンアミド;
2−[4−(3−クロロベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]プロパンアミド;
2−(4−ベンジルオキシベンジルアミノ)−3−ヒドロキシ−プロパンアミド;
2−[4−(2−フルオロベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]−3−ヒドロキシ−プロパンアミド;
2−[4−(3−フルオロベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]−3−ヒドロキシ−プロパンアミド;
2−(4−ベンジルオキシベンジルアミノ)−3−ヒドロキシ−N−メチル−プロパンアミド;
2−[4−(2−フルオロベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]−3−ヒドロキシ−N−メチル−プロパンアミド;
2−[4−(3−フルオロベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]−3−ヒドロキシ−N−メチル−プロパンアミド;
2−[4−(2−クロロベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]−3−ヒドロキシ−N−メチル−プロパンアミド;
2−[4−(3−シアノベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]−3−ヒドロキシ−N−メチル−プロパンアミド;
2−[4−(3−シアノベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]−2−メチル−3−ヒドロキシ−N−メチル−プロパンアミド;
2−[4−(3−クロロベンジルオキシ)−フェニルエチルアミノ]プロパンアミド;
2−{4−[2−(3−フルオロフェニル)−エチルオキシ]ベンジルアミノ}プロパンアミド;
2−{4−[2−(3−フルオロフェニル)−エチル]ベンジルアミノ}プロパンアミド;
2−[N−(4−ベンジルオキシベンジル)−N−メチルアミノ]プロパンアミド;
2−{4−[(3−クロロベンジルオキシ)−フェニルエチル]−アミノ}プロパンアミド;
2−[4−ベンジルチオベンジルアミノ]プロパンアミド;
2−[4−(2−フルオロベンジルチオ)−ベンジルアミノ]プロパンアミド;
2−[4−(3−フルオロベンジルチオ)−ベンジルアミノ]プロパンアミド;
2−[4−(3−フェニルプロピルオキシ)−ベンジルアミノ]プロパンアミド;
2−[4−(4−フェニルブチルオキシ)−ベンジルアミノ]プロパンアミド;
2−[4−(5−フェニルペンチルオキシ)−ベンジルアミノ]プロパンアミド;
2−(4−ベンジルオキシベンジルアミノ)−3−フェニル−N−メチル−プロパンアミド;
2−(4−ベンジルオキシベンジルアミノ)−3−メチル−N−メチル−ブタンアミド;
2−(4−ベンジルオキシベンジルアミノ)−2−フェニル−アセトアミド;
2−[4−(2−フルオロベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]−2−フェニル−アセトアミド;
2−[4−(3−フルオロベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]−2−フェニル−アセトアミド;
2−[4−(2−フルオロベンジルオキシ)−ベンジル−N−メチルアミノ]−2−フェニル−アセトアミド;
2−[4−(3−フルオロベンジルオキシ)−ベンジル−N−メチルアミノ]−2−フェニル−アセトアミド;
2−[4−(3−クロロベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]−2−フェニル−アセトアミド;
2−[4−(2−フルオロベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]−2−(2−フルオロフェニル)−アセトアミド;
2−[4−(2−フルオロベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]−2−(3−フルオロフェニル)−アセトアミド;
2−[4−(3−フルオロベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]−2−(2−フルオロフェニル)−アセトアミド;
2−[4−(3−フルオロベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]−2−(3−フルオロフェニル)−アセトアミド;
2−[4−(3−クロロベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]−2−(3−フルオロフェニル)−アセトアミド;
2−(4−(2−チエニルオキシ)−ベンジルアミノ)プロパンアミド;
またはその異性体、混合物、および医薬的に許容される塩を含む。
【0024】
患者の1つ以上のRLSまたは嗜癖障害の症状を処置するための有効量にて、単独で、または式(I)の他の化合物と併用して使用できる、式(I)の好ましい化合物は、(S)−(+)−2−[4−(2−フルオロベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]プロパンアミドまたは(S)−(+)−2−[4−(3−フルオロベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]プロパンアミドである。
【0025】
一実施態様において、処置される患者は、1つ以上のRLSもしくは嗜癖障害の症状の緩和または抑制が必要な、ヒトを含む哺乳類である。
【0026】
特に、上述の処置が必要な哺乳類には、1日当たり約0.3〜約100mg/kg体重の範囲の先に定義した式(I)のα−アミノアミドの用量で投与される。「処置」は本明細書で使用するように、a)疾患または障害が、疾患/障害に掛かりやすいが、それを有するとまだ診断されていない対象において発生することを予防すること;b)疾患/障害、または状態を抑制すること、すなわちその発症を停止させること;あるいはc)疾患/障害、または状態を軽減すること、すなわち疾患/障害、または状態の後退を引き起こすことを目的とする、哺乳類、および特にヒトに対する手順または適用による任意のケアを含む。
【0027】
ヒトを含む哺乳類におけるRLSおよび嗜癖障害の状態はそれゆえ、抑制または緩和され得る。
【0028】
RLS症状の例は、運動性静止不能、膝から足首の間の下肢深部での不快なむずむず感、ひりひり感、または引っ張り感である。眠気および睡眠障害は、上述の症状の直接の結果である。
【0029】
嗜癖障害の例は、薬物濫用、重度のアルコール依存症、報酬不全症候群(RDS)である。
【0030】
別の態様において、本発明は、従来の手順によって、例えば活性剤と医薬的に許容される、治療的に不活性な有機および/または無機担体または賦形剤物質と混合することによって調製できる、RLSおよび嗜癖障害の処置において活性を有する医薬的に許容される組成物の活性剤として投与される式(I)のα−アミノアミドを含む。
【0031】
患者においてRLSおよび嗜癖障害の処置のための有効量で使用される、式(I)の好ましい化合物は、(S)−(+)−2−[4−(2−フルオロベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]プロパンアミドまたは(S)−(+)−2−[4−(3−フルオロベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]プロパンアミドである。式(I)の化合物およびその医薬的に許容される塩は、先に引用した特許出願に記載された周知のプロセスによって得ることができる。
【0032】
併用療法(または「co-therapy」)は、本発明の式(I)のアルファ−アミノアミド化合物および少なくとも第2の薬剤、例えば:
−ドーパミンアゴニスト、例えばブロモクリプチン、カベルゴリン、リスリド、ペルゴリド、ロピニロール、アポモルヒネ、スマニロール、ロチゴチン、タリペキソール、ジヒドロエルゴクリスチンおよびプラミペキソール、
−レボドパ、レボドパおよびカルビドパ(SINEMET(登録商標))、レボドパおよび制御放出カルビドパ(SINEMET−CR(登録商標))、レボドパおよびベンセラジド(MADOPAR(登録商標))、レボドパおよび制御放出ベンセラジド(MADOPAR−HBS)、
−COMTインヒビター、例えばトルカポンおよびエンタカポン、
−STALEVO(登録商標)、アマンタジン
−および抗コリン剤、
の投与を、これらの治療剤の同時作用から有益な効果を提供することを目的とした特定の治療計画の一部として含む。このような併用の利益は、従来の薬剤(すなわち本発明の薬剤以外)の用量の減少を、結果としてこのような従来の薬剤の副作用の減少と共に含む。併用の有益な効果は、これに限定されるわけではないが、治療剤の併用から生じる薬物動態学的または薬物力学的同時作用を含む。併用でのこれらの治療剤の投与は、通例、規定された期間(通常、選択した併用に応じて分、時間、日、または週)に渡って実施される。「併用療法」は、一般にはそうでないが、これらの治療剤の2つ以上の投与を、本発明によって考えられる併用を偶然または任意に生じさせる独立した単剤計画の一部として含むものとする。「併用療法」は、これらの治療剤の連続的な方式での、すなわち各治療剤が異なる時点で投与される投与はもちろんのこと、これら治療剤の、または治療剤の少なくとも2つの、実質的に同時の方式での投与も含むものとする。実質的に同時の投与は例えば対象に、各治療剤を固定比で有する単一のカプセルを、または治療剤それぞれについて単一のカプセル複数個を投与することによって実施できる。各治療剤の連続的な、または実質的に同時の投与は、これに限定されるわけではないが、経口経路、経静脈経路、筋肉内経路、および粘膜組織を通じた直接吸収を含む、任意の適切な経路によって実施できる。治療剤は、同じ経路によって、または異なる経路によって投与できる。例えば、選択された併用の組み合わせの第1の治療剤は、静脈注射によって投与できるが、併用のもう1種の治療剤は、経口投与できる。
【0033】
あるいは、例えば、すべての治療剤は、経口的に投与できるか、またはすべての治療剤は、静脈注射によって投与できる。治療剤が投与される順序は、厳密には重要ではない。「併用療法」は、他の生物活性成分および非薬物療法(例えば外科手術または放射線治療)との更なる併用において、上述のような治療剤の併用も含むことができる。併用療法が更に非薬物治療を含む場合、治療剤および非薬物治療の併用の同時作用からの有益な効果から実現される限り、非薬物治療は任意の適切な時点に実施できる。例えば適切な症例において、非薬物治療が治療剤の投与から一時的に、恐らく数日または数週さえ除去されたときに、有益な効果がなお達成される。
【0034】
本発明のα−アミノアミド組成物は、各種の投薬形で、例えば錠剤、トローチ剤、カプセル剤、糖衣錠またはフィルムコート錠剤、液剤、乳剤または懸濁剤の形で経口的に;坐剤の形で経直腸的に;例えば筋肉内または静脈注射または輸液によって非経口的に;そしてパッチ、軟膏、乳剤、ローション、液剤、ゲル剤、クリーム、または経鼻スプレーの形で経皮的に投与できる。
【0035】
このような組成物の調製で有用な、適切な医薬的に許容される治療的に不活性な有機および/または無機担体または賦形剤材料として、例えば、水、ゼラチン、アラビアゴム、ラクトース、デンプン、セルロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、植物油、シクロデキストリン、ポリアルキレングリコールなどが挙げられる。式(I)のα−アミノアミド組成物は、滅菌可能であり、当業者に周知である更なる成分、例えば保存料、安定剤、湿潤剤、または乳化剤、例えばパラフィンオイル、モノオレイン酸マンニド、浸透圧を調整するための塩、緩衝剤などを含有できる。
【0036】
加えて固体経口形態は、活性剤と共に希釈剤、例えばラクトース、デキストロース、サッカロース、セルロース、コーンスターチ、またはジャガイモデンプン;滑沢剤、例えばシリカ、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウムまたはカルシウム、および/またはポリエチレングリコール;結合剤、例えばデンプン、アラビアゴム、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはポリビニルピロリドン;崩壊剤、例えばデンプン、アルギン酸、アルギン酸塩またはナトリウムデンプングリコラート;発泡混合物;染料;甘味料;湿潤剤、例えばレシチン、ポリソルベート、ラウリルサルフェート;そして一般に医薬処方物で使用される非毒性および薬理学的に不活性な物質を含有できる。医薬調製物は、任意の既知の方式で、例えば混合、造粒、打錠、糖コーティング、フィルムコーティングプロセスによって製造できる。
【0037】
経口処方物は、従来の方式、例えば錠剤および顆粒剤に腸溶コーティングを塗布することによって調製できる持続放出処方物を含む。
【0038】
経口投与用の液体分散物は例えば、シロップ剤、乳剤、および懸濁剤であり得る。シロップ剤は、担体として、例えばサッカロースまたはサッカロースと共にグリセリンおよび/またはマンニトールおよび/またはソルビトールを更に含むことができる。
【0039】
懸濁剤および乳剤は、担体として、例えば天然ゴム、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、またはポリビニルアルコールを含有できる。筋肉内注射用の懸濁剤または液剤は、活性化合物と共に、医薬的に許容される担体、例えば滅菌水、オリーブ油、オレイン酸エチル、グリコール、例えばプロピレングリコール、そして所望ならば適切な量の塩酸リドカインを含有できる。静脈注射または輸液用の液剤は、担体、例えば滅菌水を含有でき、または好ましくはそれらは滅菌、水性、または等張性食塩溶液の形でもよい。
【0040】
坐剤は、活性剤と共に、医薬的に許容される担体、例えばココアバターポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル界面活性剤またはレシチンを含有できる。
【0041】
式(I)のα−アミノアミドを含む組成物は、一般に、例えば単位投薬形態当たり活性成分20〜7000mgを含有する用量単位の形態である。適切な治療は、クリアランス速度に応じて、1日1回または2回または3回与えられる。したがって所望の用量は、単回用量で、または適切な間隔で、例えば1日2〜4またはそれ以上のサブ用量での分割用量として与えることができる。
【0042】
式(I)のα−アミノアミドを含む医薬組成物は、投薬単位、例えばカプセル剤、錠剤、注射用粉剤、茶さじ1杯、坐剤当たり、活性成分約20〜7000mgを含有できる。
【0043】
投与される最適な治療的に有効な用量は、当業者によって容易に決定され、基本的には調製物の強度、投与様式、および処置される炎症状態または障害の進行によって変化する。加えて対象の年齢、体重、食餌、および投与時間を含む、処置される特定の対象に関連する要因は、用量を適切な治療的に有効なレベルへ調整する必要を生じる。
【0044】
先に定義した本発明の使用および方法に由来する利点は多く、基本的にあらゆる種類のRLSおよび嗜癖障害の症状を処置する可能性を含む。
【実施例1】
【0045】
オープンラベルRLS試験
特発性RLSの患者10名に実施したオープンラベル試験では、(S)−(+)−2−[4−(3−フルオロベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]−プロパンアミド100mg/日の2週間の投与は、RLS症状の改善に効果をもたらした。患者は、International RLS Study Groupによる最低診断基準を満足する場合に、試験に参加させた。患者の症状は、睡眠の開始および維持を少なくとも6ヶ月間および最近12週間の間に少なくとも15夜に渡って妨害する必要があり、それらはベースライン評価での15以上のIRLS 10(国際下肢静止不能症候群、International Restless Legs Syndrome)を有するべきである。物理検査、生化学、および血液臨床検査ならびに心電図を実施して、選択基準が満足されていることを確認した。(S)−(+)−2−[4−(3−フルオロベンジルオキシ)ベンジルアミノ]プロパンアミドの睡眠に対する効果を検証するために、睡眠ポリグラフ法をベースラインにて2夜および治療の終わりに2夜実施した。有効性は、以下の評価スケールによって測定した:国際下肢静止不能症候群10(IRLS 10)、下肢静止不能症候群(Restless Legs Syndrome Quality of Life)(RLS QoL)、作業生産性および活動阻害アンケート(Work Productivity and Activity Impairment Questionnaire)(WPAIRLS)および臨床全般印象(Clinical Global Impression)(CGIパートIおよびCGIパートII)。
【0046】
(S)−(+)−2−[4−(3−フルオロベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]−プロパンアミドで治療した患者は、RLS症状の著しい改善を示した。
【0047】
2週間後の治療スコアをベースラインスコアと比較すると、検討したすべての評価スケールで率が下降する傾向が見られる。
【0048】
患者のこのグループでは、(S)−(+)−2−[4−(3−フルオロベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]プロパンアミドは耐用性良好であり、有害事象は記録されなかった。
【0049】
結果
試験に参加した患者10名は、使用したすべての評価スケールにおいて著しい改善を示した。
【0050】
参加した患者10名のうち10名が有効性解析に適格であると見なされた;その全員が14+3日間の治療の計画期間を完了した。個体群統計学のベースライン値は、ごく少数の同時に生じるベースライン疾患と共に、参加した女性の70%および61.30歳の平均年齢を示し、物理検査での異常はなかった。主疾患に関して、それはCGI基準に従って患者の70%において重症と見なされ、日常活動に対する影響を伴って、通常の能力の約1/3の量として表せることがIRLS−10スコアによって確認された(WPAI−RLSおよびRLS−QoLQ結果による)。PSG記録は、8.90のPLM覚醒インデックス,72.62の睡眠効率、および睡眠中の覚醒状態回数のベースライン値によって証明されるように、睡眠に対する疾患の影響を示唆した。
【0051】
CGIパートIは、患者の60%にて疾患状況の目覚しい改善を、残りの40%では安定した疾患を有した(図1)。これらの変化は統計的変化を達成した(P=0.031)。
【0052】
CGIパートIIは、患者の90%においてグレード評価の改善を有し、患者1名のみ(10%)が変化なしと見なされた(表Iを参照)。
【0053】
【表1】

【0054】
IRLS−10スケールは、全スコアの統計的に有意な改善(p=0.002)である、すべての患者におけるスコア低下を示した。この改善は、統計的有意に達する「診断機能」(p=0.002)および「疾患の影響」(p=0.003)の改善により、また有意に近い「関連機能」および「重症度」の改善により、サブ項目の解析において確認された(表II)。
【0055】
【表2】

【0056】
RLS−QoLQは 図2に示すように、全スコアにおいて著しい低下を有した(p=0.002)。
【0057】
WPAI−RLSは、項目6における改善を有し、患者がその日常活動を実施する能力に関して観察された改善の示唆を与える。実際に、図3に見られるように、障害の34%から22%への統計的に有意な低下があった(p=0.005)。
【0058】
睡眠ポリグラフ記録(PSG)は、PLM(覚醒+睡眠)インデックス、PLM覚醒インデックス、PLM睡眠インデックスにおけるベースラインに対して、そして他のPSGパラメータの傾向によって、図4、図5、図6に示すような全体的な睡眠構造の変更なしに、統計的に有意な改善を有した。
【0059】
結論として、この試験は、(S)−(+)−2−[4−(3−フルオロベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]プロパンアミドが良好な安全性特性を有することを明らかにし、そして疾患およびその臨床所見で観察された改善の証拠を与えた。この証拠は、疾患の相関現象の客観的機器測定によって強化されている(すなわちPSG)。
【0060】
嗜癖試験では、いくつかの動物モデルを使用して、試験化合物の有効性を試験した。特に、以下の試験を実施した。試験化合物は、各種の動物モデルにおける一部の濫用薬物の行動効果を低下させることが見出され、嗜癖障害における潜在的な治療効果を証明した。
【実施例2】
【0061】
マウスにおけるコカイン相互作用試験
通例、精神刺激嗜癖薬物、例えばアンフェタミンおよびコカインは、げっ歯類および霊長類における自発運動の向上を誘発する。抗嗜癖潜在特性を有するいくつかの化合物は、精神刺激薬物によって誘発される自発運動の向上を防止することができる(Katz JL, Kopajtic TA,Myers KA,Mitkus RJ,Chider M,Behavioral effects of cocaine:interactions with D1 dopaminergic antagonists and agonists in mice and squirrel monkeys.J Pharmacol Exp Ther.1999 Oct;291(1):265-79)。
【0062】
試験化合物の効果をコカイン誘発運動増加のマウスモデルで評価する。
【0063】
方法
対象:Swiss−Websterマウス、オス
装置:自動化光セルチャンバ
薬物:コカイン20mg/kgを腹腔内投与し、ビヒクルに溶解させた試験化合物を異なる用量(10〜100mg/kg)でコカインの直前に腹腔内投与した。
行動試験:動物(実験グループごとに8匹)にコカイン(20mg/kg)または塩水および試験化合物(10〜100mg/kg腹腔内)またはそのビヒクルのどちらかの腹腔内注射を与え、自発運動を1時間に渡って記録した。
【0064】
データ解析
時間経過:ビヒクル、コカイン単独、各用量試験化合物単独+コカインについて、各10分間の平均(+SEM)活動をプロットした。
【0065】
最大効果:コカイン(20mg/kg)が最大活性を生成する30分間の期間を使用して、試験化合物の効果を判定した。次の解析のための変数を均質化するために、個々の対象の30分間の期間の平均カウントのlog10変換を実施する。ANOVA統計解析を実施し、ビヒクルおよび各用量の試験化合物+コカインをコカインのみと比較して、有意な(p<0.05)用量効果を決定した。線形最小二乗回帰解析を実施した。30分間の期間の平均カウントは、試験化合物のlog10用量に対する曲線の下降部分に関して、対象について回帰する。AD50(コカイン誘発刺激を50%軽減する用量)を線形回帰解析から決定した。
【実施例3】
【0066】
ラット薬物弁別アッセイ
薬物弁別(DD)タスクは、化合物が向精神薬(例えば嗜癖薬物)の代用をする能力の評価のための手順である。ラットは、2つまたは3つのマニピュランダ(manipulanda)のどれが食物送達を引き起こすかを知らせるために、内受容性薬物刺激を利用することを学習する(状態−依存学習)。このようなタスクは、「主観的」薬物効果を調査するために最良の動物モデルの成分となる。加えて、DD手順は、ある例において、薬物濫用を促進する(多幸感を引き起こす)一部のものおよび薬物濫用を阻止する(侵害受容性の)他のものを含む、薬物の複数の異なる主観効果を独立して測定する能力を有する。
【0067】
試験化合物の薬物濫用に対する促進効果および予防効果をラットでのコカイン弁別試験のモデルで評価した。
【0068】
(Colpaert FC(1986)Drug discrimination: behavioral, pharmacological and molecular mechanisms of discriminative drug effects, in Behavioral Analysis Of Drug Dependence, Goldberg SR and Stolerman IP eds, pp161-193, Academic Press, Orlando).
【0069】
方法
対象。オスSprague-Dawleyラットでの試験を実施した。すべての動物を12時間明/暗サイクルで温度・湿度制御飼育器に収容した(午前7:00に点灯)。すべての実験は、明/暗サイクルの明相、午前8:00〜午後3:00の間に実施する。ラットは、約80〜85%の任意の体重に維持した。
【0070】
コカイン弁別。ラットには、試験の少なくとも30分後に標準実験用食餌約15gを毎日与え、このことはその各体重を試験の間維持した。対象は、光・音声減衰筐体内に収容された2レバーオペラント条件付けチャンバにて毎日試験を行った。外部の音声を隠すために、試験中にホワイトノイズが存在した。周囲照明は、前面パネルの中央上部のランプによる(家庭用照明)。レバーは17cm離して設置し、前面パネルにはまた、各レバーの上にランプの対(発光ダイオード;LED)が装備された。強化された応答によって45mgペレット1個が、チャンバ前面パネル上のレバー間の中心に配置されたフードトレイ上に出た。最初に対象を、食餌強化の10応答固定比(FR10)スケジュールで両方のレバーを押して、コカイン29μmol/kg(10mg/kg)の腹腔内注射を食塩水の腹腔内注射と弁別するように訓練した。コカイン注射の後、一方のレバーのみに対する応答を強化した。食塩水注射の後、他方のレバーに対する応答を強化した。コカインに適切なレバーおよび食塩水に適切なレバーの配置は、ラット間で相殺した。注射の直後にラットを実験チャンバ内に置いた。家庭用照明およびLEDを消灯し、応答に対する予定した結果のない、5分間のタイムアウト期間が、家庭用照明およびLEDの照明に先行した。適切なレバーに対する応答のみを強化して、そして不適切なレバーに対する応答は、FR応答要件をリセットした。各食餌の提示の後に、20秒間のタイムアウト期間が続き、この間にすべての照明を消灯して、応答には予定した結果がなかった。どちらか先に起こっても20回の食餌提示または20分の後、セッションが終了した。コカイン(C)および食塩水(S)注射を用いた訓練セッションは、週5日、二重交互配列(例えばSCCS)の順序で毎日実施した。
【0071】
試験は、性能が少なくとも85%の適切な応答全体の基準に達したときに、4回の連続セッションに渡るセッションの最初のFR10の間に開始した。試験化合物の選択された用量を注射360分まで異なる時点で経口投与して、弁別−刺激効果の時間経過を調査した。試験セッションの後、対象は、再度試験される2回の連続(コカインおよび食塩水)訓練セッションに渡って上述の性能基準を満足する必要がある。反復試験セッションを試験間の少なくとも2回の訓練セッションと共に、各対象における全体の用量効果が決定されるまで実施した。試験セッションは、各レバーに対する20回の連続応答が強化されることを除いて、訓練セッションと同じである。
【0072】
コカイン弁別手順にて試験された各ラットについて、全体の応答速度およびコカインに適切なレバーで生じた応答のパーセンテージを計算した。試験を行った各薬物用量での各測定値について、平均値を計算する。ラットの半分未満が特定の用量にて応答した場合、その用量でのコカイン相応応答のパーセンテージについて、平均値を計算しなかった。少なくとも20%のコカイン相応応答を、食塩水からの有意差を前提とする保守的基準として採用した。80%以上のコカイン相応応答をコカインの訓練用量と同様として見なし、中間レベルのコカイン相応応答を部分代用と見なした。
【0073】
データ解析。コカイン弁別試験の結果を、最大20分間継続するセッション全体の間に収集したデータを用いて評価した。
【0074】
個々の対象が試験中に1固定比スケジュールを完了しない場合、そのデータは応答速度の平均に含めるが、コカイン−レバー応答パーセンテージの平均には含めなかった。ED50値は、コカインを代替する試験化合物について、直線回帰解析を使用して計算した(>80%の薬物相応応答)。コカインを部分的に代替する試験化合物(>20%および<80%の薬物相応応答)では、最大代替を生じる最低用量およびパーセンテージを与える。コカインを代替しない化合物(<20%の薬物相応応答)では、試験した最高用量を計算した。
【実施例4】
【0075】
ラット薬物自己投与試験
薬物自己投与試験は、薬物(例えばコカイン)の強化特性および各種の化合物のこれらの報酬特性に対する効果を試験するために幅広く使用される方法である。この試験では、ラットを薬物の経口または経静脈投与を受けるために「作業する」ように訓練する。この行動方法によって、試験化合物が嗜癖薬物に対する強化特性の効果を有するかどうかを評価できる(Caine S.B.; Lintz R; Koob G.F.: Intravenous drug self-administration techniques in animals. In: Behavioral Neuroscience:A Practical Approach.ed.by A.Sahgal pp117-143, Oxford University Press, New York.1993; Fischman MW,Behavioral pharmacology of cocaine J. Clin Psychiatry.1988 Feb; 49 Suppl: 7-10)。
【0076】
方法
対象
350〜400gのオスSprague-Dawelyラットをケージに収容して、食餌および水へ自由に接触させて、12時間の明−暗サイクルを維持した(点灯午前7:00〜午後7:00)。
【0077】
自己投与
すべての動物に常用シラスティック頚静脈カテーテルをケタミン(60mg/kg腹腔内)およびナトリウムペントバルビタール(20mg/kg腹腔内)麻酔下で外科的に植え込んだ。カテーテルは頭蓋の露出部分まで皮下を通過させ、そこで歯科用アクリル樹脂を用いて頭蓋に埋め込まれた4個のステンレス鋼ネジに付着させた。自己投与セッション時に(通常は週に6日)、カテーテルを回転システムに連結して、それを次に輸液ポンプに連結した。
【0078】
術後7日間に渡って、動物をケージ床から3cmに、標準オペラント条件付けケージの側壁に取り付けられた金属レバーに毎日2時間接近させた。レバーを押すための力の要件は、平均30グラムであった(各種のケージで25〜35グラムの範囲)。ケージ自体は、音声減衰チャンバ内に収容した。各オペラントチャンバには2個のレバーが存在して、一方のレバーは薬物輸液を引き起こすが、もう一方は全セッションを通じて無効であった。有効なレバー押下げは、0.9%生理的食塩水に溶解して、4秒間に渡って送達される塩酸コカイン(0.50mg/kg/注射)0.1mlの静脈注射を行わせた。回転システムは、ケージ内の動物の自由運動を可能にした。注射の開始と同時に、オペラントチャンバの同じ側壁にてレバーの1cm上に位置する刺激灯が20秒間点灯して、その間レバーは無効となった。信号灯が点灯しない期間のレバー押下げは、連続強化スケジュールに基づいて強化した(固定比1、FR−1)。動物が3日間に渡って安定した薬物摂取を示したら(3日間に渡る1日摂取の15%未満の範囲)、自己投与スケジュールを安定まで(15〜20日間)FR10に切り換え、そして試験を開始した。試験日には、動物をセッションの開始直前に試験化合物によって腹腔内に前処置した。試験化合物の各種用量を使用した。各用量は、ラテン方格設計を用いて、各動物に対して1回のみ試験した。ベースライン自己投与から薬物試験日までは少なくとも2日間空けた。
【0079】
データ解析
120分間のセッション間に得られた強化者の総数を記録し、そしてデータの統計解析を、適切な場合には、反復測定(ANOVA)またはStudentのt検定による変化の一方向要因解析を使用して計算する。Newman−Keuls事後検定を使用して、個々の手段の比較を行った。
【実施例5】
【0080】
ラットにおけるコカイン誘発行動鋭敏化
薬物嗜癖は、強迫的な薬物探求および摂取を特徴とする病的行動である。これらの行動変化の1つの動物モデルは、薬物誘発行動鋭敏化として既知である、げっ歯類における精神刺激薬物の反復投与によって誘発される自発運動の長期に渡る増加である(Robinsonら,1993)。試験化合物の効果は、ラットにおけるコカイン誘発鋭敏化のモデルで評価した。
【0081】
方法
対象。到着時に体重200〜250gのオスWistarラットを使用した。
自発運動装置。自発運動は、それぞれ寸法が36cm(L)×25cm(W)×20cm(H)の同じ金属ワイヤ吊ケージ16個で測定した。各ケージは長軸に沿って、グリッドフロアの1cm上、ケージの前後より8cmに位置決めされた赤外線発光器−検出器光電池2セットを含有していた。ホワイトノイズ発生器によってバックグラウンドノイズを提供した。ケージ内での運動によって光電池の中断が生じ、これをIBM互換コンピュータによって自動的に記録した。
【0082】
鋭敏化手順および処置。実験前の連続2〜3日に渡って、動物を自発運動チャンバに馴化させた。ラットに、コカイン(15mg/kg)または食塩水および試験化合物(40〜100mg/kg腹腔内)またはそのビヒクルのどちらかの腹腔内注射を毎日5回投与し、自発運動を3時間に渡って記録した。最後のコカインまたは食塩水注射の10日後に(第15日)、動物を試験化合物の非存在下でコカイン15mg/kgで攻撃して、再び自発運動を3時間に渡って監視した。
【0083】
コカインを用いた処置の第5日までに、ビヒクルを用いて腹腔内予備処置された動物は、自発運動応答の上昇を示した(第1日より20%高い、p<0.05)。最後のコカインまたは食塩水注射の10日後に、動物を試験化合物の非存在下でコカイン15mg/kgで攻撃して、再び自発運動を3時間に渡って監視した。コカインを用いて前に処置され、試験化合物を投与されなかったラットは、コカインに対する自発運動応答の上昇を示すことが予想された(第1日より30%高い、p<0.05)。5日間のコカイン処置の間に試験化合物によって予備処置されたラットが自発運動の増加を示さなかった場合、試験化合物が精神刺激薬物嗜癖を予防する効果を有すると見なした(Koob,G.F.,Sanna,P.P.& Bloom,F.E.Neuron 21,467-476 1998;Robinson T.E.& Berridge K.C.The neural basis of drug craving: an incentive-sensitization theory of addiction.Brain Res Brain Res Rev 18,247-91,1993)。
【0084】
データ解析。データ(3時間の間の光線中断の総回数)を、4つの実験グループ(すなわち食塩水/ビヒクル、食塩水/試験化合物、コカイン/ビヒクル、およびコカイン/試験化合物)および2つの時点(第1日および第5)を含む、1つの要因に対する反復測定による2方向ANOVAと、それに続く単純影響解析を使用して解析した。1つの要因に対する反復測定による第2の2方向ANOVAを使用して第1日および攻撃と比較し、Newman−Keuls事後検定を続けた。
【実施例6】
【0085】
サル薬物弁別アッセイ
コカイン弁別は、候補処置医薬品を評価するために広範に使用される行動アッセイである。試験化合物急性投与によって引き起こされたコカイン様行動効果の効力および時間経過をこの手順で決定する。特に試験化合物は単独で、またはコカインに対する予備処置としてのどちらかで、0.4mg/kgコカインを塩水と弁別するように訓練されたアカゲザルに投与した。
【0086】
方法
対象。対象は、成オスアカゲザル(Macaca mulatta)である。サルをオペラントセッションに与えられるフルーツ味のペレットに加えて、1日に付きモンキービスケット(Purina Monkey Chow Jumbo #5037)3〜4個の食餌および新鮮な果物1片で養った。水はすべてのサルが常時自由に飲めるようになっていた。サルを12時間の明−暗サイクル(午前7時から午後7時まで点灯)で湿度・温度制御室に収容した。
【0087】
装置。各サルを通気の良いステンレス鋼チャンバ(56×71×69cm)に個別に収容した。すべてのサルのホームケージは、前壁に取り付けられたオペラントパネル(28 3 28cm)を含むように改造した。正方形透明応答キー(6.4×6.4cm)3個を、オペラントパネルの上から3.2cmの水平列に2.54cm離して配置した。各キーは、赤色または緑色刺激光(スーパーブライトLED)を用いて光を通過させることができた。オペラントパネルは、ケージにのオペラント応答パネル下に取り付けられたフード容器にフードペレット1gを送達する外付けのペレットディスペンサ(Gerbrands,Model G5210)も支持した。オペラントパネルの操作およびデータ収集は、独立した部屋に位置するコンピュータによって実施した。
【0088】
弁別訓練。薬物弁別手順は、他の試験で使用された手順と同様である(Lamas X, Negus SS, Hall E and Mello NK(1995)relationship between the discriminative stimulus effects and plasma concentrations of intramuscular cocaine in rhesus monkeys. Psychopharmacology 121: 331-338; Negus SS,Mello NK, Portoghese PS,Lukas SE and Mendelson JH(1995)Role of delta opioid receptors in the reinforcing and discriminative stimulus effects of cocaine in rhesus monkeys.J Pharmacol Exp Ther 273: 1245-1256.; Negus SS, Mello NK, Lamas X and Mendelson JH(1996)Acute and chronic effects of flupenthixol on the discriminative stimulus and reinforcing effects of cocaine in rhesus monkeys.J Pharmacol Exp Ther 278: 879-890.
【0089】
弁別セッションは、複数のサイクルより構成され、5日/週で実施した。各サイクルは15分間のタイムアウト期間と、それに続く5分間の応答期間より構成された。タイムアウトの間、すべての刺激光を消灯して、応答には予定した結果がなかった。応答期間の間、左右の応答キーには赤色または緑色の光が通過し、サルは、食物提示の固定比(FR)30スケジュールに基づく応答によって、最大10個のフードペレットを得ることができる。サルの1グループでは、左キーは緑色で照明し、右キーは赤色で照明する。サルの残りのグループでは、応答キーの色は逆にする。中央キーは、いかなるときも照明せず、中央キーでの応答には予定した結果はない。5分間の応答時間終了前に利用可能なフードペレットすべてを送達した場合、応答キーを通過する刺激光が消え、その応答時間の残りの間、応答には予定した結果がない。訓練日には、サルに、食塩水または0.40mg/kgコカインのどちらかの筋肉内注射を各タイムアウト期間の5分後に投与した(すなわち応答期間の10分前)。食塩水の投与後には、緑色キーのみへの応答(食塩水適切キー)は食餌をもたらすのに対して、0.40mg/kgコカインの投与後には、赤色キーのみへの応答(薬物適切キー)は食餌をもたらした。不適切なキーに対する応答は、適切なキーのFR要件をリセットした。1日のセッションは1〜5サイクルで構成され、コカインの訓練用量を投与する場合、それは最後のサイクル中のみに投与した。それゆえ訓練日は、0〜5回の食塩水サイクルと、それに続く0〜1回の薬物サイクルより構成された。
【0090】
各サイクルの応答期間中に、3個の依存変数を決定した:1)第1の強化刺激の送達前の注射相応応答のパーセンテージ[(第1の強化刺激前に発された注射相応応答/第1の強化刺激前に発された全応答)×100];2)全応答時間の注射相応応答のパーセンテージ[(応答期間中に発された注射相応応答/応答期間中に発された全応答)×100];および3)応答速度(応答期間中に発された全応答/刺激光が照明した全時間)。以下の3つの基準が8回の連続訓練セッション中7回で満足されたときに、サルがコカイン弁別を獲得したと見なした。1)第1の強化刺激の送達前の注射相応応答パーセンテージがすべてのサイクルで80%に等しいかそれ以上である;2)サイクル全体の注射相応応答のパーセンテージがすべてのサイクルで90%に等しいかそれ以上である;3)すべての訓練サイクル中に少なくとも1個のペレットを得る。
【0091】
弁別試験。サルがコカイン弁別の基準レベルを満足したら、試験を開始した。試験セッションは、どちらかのキーでの応答が食餌をもたらすことを除いて訓練セッションと同じであり、以下で述べるようにコカインまたは試験化合物を投与した。単独で、またはコカインの前処置として投与された試験化合物の効果を特徴付けるために、2シリーズの実験を実施した。第1シリーズの実験では、試験化合物単独の効果の時間経過を決定した。試験化合物(1〜100mg/kg)の1回用量を試験セッション開始時に投与し、10、30、100、および300分後に5分間の応答期間を開始した。第2シリーズの実験では、試験化合物前処置のコカイン弁別に対する効果を決定した。1回用量の試験化合物を試験セッション前の適切な時間に投与し、そこで累積コカイン用量−効果曲線を決定した(0.013〜1.3mg/kg)。一般に試験薬物は、コカイン用量−効果曲線の著しい変化を生じる用量、あるいは応答速度を0.1応答/秒未満まで低下させる用量のどちらかまで評価した。
【0092】
データ解析。コカイン相応応答のパーセンテージ(全応答期間に渡る)および応答速度を、試験化合物投与後の時間(時間経過試験のために)またはコカインの累積用量(試験化合物前処置試験のために)のどちらかの関数としてプロットした。所与のサイクルのコカイン相応応答のパーセンテージは、サルがサイクルの間に少なくとも30回の応答を発した場合に限り解析に含めた(すなわち1回の強化刺激の送達をもたらすのに十分な応答)。ED50値は、50%のコカイン相応応答を生じる試験化合物またはコカインの用量として定義し、個々の対象用量−効果曲線からの線形内挿によって計算した。各試験化合物では、ED50値は、ピーク効果の適切な時間に得られたデータから計算した。
【実施例7】
【0093】
サル薬物自己投与試験
実験用動物での自己投与手順は、コカインおよび関連する精神運動刺激薬物への嗜癖を管理するための候補薬物を評価するために使用することが多い。通常、実験は、単一のスケジュールに基づき、固定した、または漸進的に増加する応答回数、すなわち固定比(FR)または累進比スケジュールの結果としての強化を用いて、応答速度または静脈内注射の回数がどのように変化するかを決定するために実施した(Mello NK and Negus SS(1996)Preclinical evaluation of pharmacotherapies for treatment of cocaine and opioid abuse using drug self administration procedures. Neuropsychopharmacology 14: 375-424)。このような研究において、食餌送達などの別の強化刺激による静脈内自己投与行動および性能の変化の比較は、候補医薬品の効果における行動選択性の尺度を与えることができる(Woolverton WL(1996)Intravenous self-administration of cocaine under concurrent VI schedules of reinforcement. Psychopharmacology 127: 195-203.; Negus SS, Brandt MR, and Mello NK(1999)Effects of the long-acting monoamine reuptake inhibitor indatraline on cocaine self-administration in rhesus monkeys.J Pharmacol Exp Ther 291:60-69; Caine SB,Negus SS,and Mello NK(2000)Effects of dopamine Dl-like and D2-like agonists on cocaine self-administration in rhesus monkeys:rapid assessment of cocaine dose-effect functions.Psychopharmacology 148:41-51)。
【0094】
方法
対象。対象は、成オスアカゲザル(Macaca mulatta)である。サルをオペラントセッションに与えられるフルーツ味のペレットに加えて、1日に付きモンキービスケット(Purina Monkey Chow Jumbo #5037)3〜4個の食餌および新鮮な果物1片で養った。水はすべてのサルが常時自由に飲めるようになっていた。サルを12時間の明−暗サイクル(午前7時から午後7時まで点灯)で湿度・温度制御室に収容した。
【0095】
外科的処置。2管腔シリコーンゴムカテーテル(内径0.7mm;外径2.0mm)を頚静脈または大腿静脈に植え込み、肩甲骨間に出した。すべての外科的処置は、無菌条件下で実施した。サルは、最初にケタミン(5mg/kg)で鎮静させ、ナトリウムチオペンタール(10mg/kg、経静脈)を用いて麻酔を誘発した。加えて、サルを0.05mg/kgアトロピンで処置して、唾液を減少させた。気管チューブの挿入後、麻酔をイソフルレン(酸素中1〜1.5%)によって維持した。術後、アスピリンまたはアセトアミノフェン(80〜160mg/日、経口)を3日間に渡って投与した。抗生剤であるプロカインペニシリンG(300,000U/日、筋肉内)を5日間に渡って毎日投与した。筋肉内カテーテルは、柔軟性ステンレス鋼ケーブルおよび流体回転台に連結されたカスタム装着ナイロンベストより構成された繋留システムによって保護した(Lomir Biomedical,マローン、ニューヨーク州)。この柔軟性繋留システムによって、サルは自由に動くことができた。カテーテルの開通性は、短期作用型バルビツールのメトヘキシタール(3mg/kg、経静脈)の経静脈投与によって定期的に評価した。カテーテルは、メトヘキシタールの経静脈投与が10秒以内に筋緊張の消失を生じた場合に開通していると見なした。
【0096】
行動装置。各サルを通気の良いステンレス鋼チャンバ(64×64×79cm)に個別に収容した。すべてのサルのホームケージは、前壁に取り付けられたオペラントパネル(28×28cm)を含むように改造した。正方形透明応答キー(6.4×6.4cm)3個を、オペラントパネルの上から3.2cmの水平列に2.54cm離して配置した。各キーは、赤色または緑色刺激光(スーパーブライトLED)を用いて光を通過させることができた。オペラントパネルは、ケージにのオペラント応答パネル下に取り付けられたフード容器にフルーツ味のフードペレット1gを送達する外付けのペレットディスペンサも支持した。加えて、経静脈カテーテルの2本の管腔を通じた食塩水または薬物溶液の送達のために、2本のシリンジポンプ(モデルB5P-lE; Braintree Scientific,ブレインツリー、マサチューセッツ州、またはモデル980210;Harvard Apparatus,サウスナティック、マサチューセッツ州)を上の各ケージに取り付けた。オペラントパネルの操作およびデータ収集は、独立した部屋に位置するコンピュータによって実施した。
【0097】
初期訓練手順。コカインおよび食餌維持応答の評価の手順は、他の試験で使用した手順と同様であった(Negus SS,Mello NK,Portoghese PS and Lin CE(1997)Effects of kappa opioids on cocain self-administration by rhesus monkeys.J Pharmacol Exp Ther 282:44-55; Negus SS,Mello NK,Portoghese PS,Lukas SE and Mendelson JH(1995)Role of delta opioid receptors in the reinforcing and discriminative stimulus effects of cocaine in rhesus monkeys.J Pharmacol Exp Ther 273:1245-1256)。基本プロトコルに基づいて、食餌および経静脈注射は、3つの切り換え成分の間で利用できた。食餌および経静脈注射は、どちらも強化のFR30スケジュールに基づいて利用できた。赤色灯を食物送達と関連付けて、緑色灯を薬物注射と関連付けた。食物および薬物成分は、5分間のタイムアウトによって分離した。食餌−薬物−食餌セッション全体は、120分間継続し、毎日午後3〜5時に実施した。訓練の間、薬物成分が0.032mg/kg/注射のコカインと塩水とで切り換わる間に、自己投与には溶液が利用可能であった。サルは、安定したコカイン自己投与のための以下の基準を満足するまで訓練した。1)3連続日に渡って、各セッションの薬物成分の反応速度が平均薬物成分の応答速度と20%を超えて異ならない。2)食塩水代替の第1日における薬物成分応答速度の低下によって示される、迅速な食塩水の消失。
【0098】
薬物自己投与試験。サルがコカインおよび食餌自己投与の高い安定レベルの基準を満足したら、各種用量のコカイン(0.00032〜0.1mg/kg/注射)が食塩水/コカイン訓練用量条件を代替する代替セッションを使用して試験を開始した。少なくとも4日の期間の各代替試験後に、コカインおよび食餌によって維持された1日当たりの強化の回数がベースラインレベルに戻るまで、コカインの維持用量を回復した。
【0099】
試験化合物の評価。試験化合物は、予備処置手順試験を使用して評価した。第1の実験は、食塩水または試験化合物を用いた非偶発性処置の食餌およびコカイン応答に対する効果を調査した。セッション前に試験化合物を筋肉内(または、および経口)投与した。試験化合物は、コカイン自己投与用量−効果曲線の上行脚における統計的に有意な変化を生じる用量、または第1の食餌成分の間の応答を消失させる用量のどちらかまで投与した。第2の実験では、試験化合物の少なくとも3回の用量を、コカイン用量−効果曲線のピークでのコカインの単位用量への予備処置として評価した。これらの初期試験を使用して、薬物自己投与手順で行動的に有効である試験化合物の用量を確認した。試験薬物の行動的有効用量が確認されたら、その用量を予備処置として一連の各種のコカイン単位用量まで投与した。このようにして、試験薬物の行動的有効用量のコカイン用量−効果曲線全体に対する効果を決定できる。試験化合物の他の用量も試験できた。
【0100】
データ解析。送達された注射またはフードペレットの全回数を応答速度として決定した。コカインの自己投与に対する試験化合物の効果のデータを、1または2要因ANOVAを使用して評価した。有意なANOVAの後に、Duncan事後検定を使用して個々の平均比較を続けた。有意性の基準はp≦0.05に設定した。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】臨床全般印象パートIを示す図である[平均スコア(およびSD)]。
【図2】RLS−QoLQを示す図である[全スコアの平均値(およびSD)]。
【図3】WPAI−RLSを示す図である[項目6の平均スコア(およびSD)]。
【図4】睡眠ポリグラフ記録によるPLM(覚醒+睡眠)インデックスを示す図である(平均値)。
【図5】睡眠ポリグラフ記録によるPLM(睡眠)インデックスを示す図である[平均(およびSD)]。
【図6】睡眠ポリグラフ記録によるPLM(覚醒)インデックスを示す図である[平均(およびSD)]。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下肢静止不能症候群および嗜癖障害の症状を処置する医薬の調製のための、式(I)
【化1】


(式中:
・Aは、−(CH−X−基であり、式中、nは、0〜5の整数であり、Xは、CH、−O−、−S−、または−NH−であり;
・sは、1または2であり;
・Rは、場合によりハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、またはトリフルオロメチルから独立して選択される1個または2個の置換基によって置換されている、フリル、チエニル、またはピリジル環もしくはフェニル環であり;
・Rは、水素またはC〜CアルキルもしくはC〜Cシクロアルキルであり;
・RおよびRは、水素;場合によりヒドロキシまたはフェニルによって置換されている、C〜Cアルキル;場合によりC〜Cアルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、またはトリフルオロメチルから独立して選択される1個または2個の置換基によって置換されている、フェニルから独立して選択されるか;あるいはRおよびRは、それらが結合している炭素原子とひとまとめにされて、C〜Cシクロアルキル環を形成し;そして
・R、Rは、独立して、水素、C〜Cアルキル、またはC〜Cシクロアルキルであるか;あるいはRおよびRは、それらが結合している窒素原子とひとまとめにされて、5〜7原子飽和複素環を形成する)
のアルファ−アミノアミド化合物、またはその異性体、混合物、および医薬的に許容される塩もしくはエステルである、少なくとも1種の作用物質の使用。
【請求項2】
Aが、−CH−、−CH−CH−、−CH−S−、−CH−CH−S−、または−(CH−O−から選択され;nが、0〜5の整数であり;sが、1または2であり;Rが、場合によりハロゲン、トリフルオロメチル、メトキシから独立して選択される1個または2個の置換基によって置換されているフェニル環、またはチエル環であり;Rが、水素またはC〜Cアルキルであり;RおよびRの一方が、水素であり、他方が、場合によりヒドロキシもしくはフェニルによって置換されているC〜Cアルキル、または場合により1個もしくは2個のハロゲン原子によって置換されているフェニルであるか、あるいはRおよびRが、どちらもメチルであるか、またはそれらが結合している原子と一緒になって、シクロプロピルもしくはシクロペンチル環を形成でき;そしてR、Rが、水素またはC〜Cアルキルであるか、あるいはそれらが結合している窒素と一緒になって、ピロリジンまたはピペリジン環を形成する、請求項1記載の化合物の使用。
【請求項3】
前記医薬が、1日当たり約0.3〜約100mg/kg体重の範囲の用量で投与される、請求項1または2記載の化合物の使用。
【請求項4】
前記化合物が:
2−(4−ベンジルオキシベンジルアミノ)プロパンアミド;
2−[4−(2−メトキシベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]プロパンアミド;
2−[4−(2−フルオロベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]プロパンアミド;
(S)−(+)−2−[4−(2−フルオロベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]プロパンアミド;
2−[4−(2−フルオロベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]−2−メチル−プロパンアミド;
2−[4−(2−フルオロベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]−N−メチル−プロパンアミド;
N−{2−[4−(2−フルオロベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]}プロピオニル−ピロリジン;
2−[4−(3−メトキシベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]プロパンアミド;
2−[4−(3−シアノベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]プロパンアミド;
2−[4−(3−フルオロベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]プロパンアミド;
2−[4−(3−フルオロベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]−2−メチル−プロパンアミド;
2−[4−(3−フルオロベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]−N−メチル−プロパンアミド;
N−{2−[4−(3−フルオロベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]}プロピオニル−ピロリジン;
2−[4−(4−フルオロベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]プロパンアミド;
2−[4−(3−フルオロベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]−2−メチル−プロパンアミド;
2−[4−(2−クロロベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]プロパンアミド;
2−[4−(3−クロロベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]プロパンアミド;
2−(4−ベンジルオキシベンジルアミノ)−3−ヒドロキシ−プロパンアミド;
2−[4−(2−フルオロベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]−3−ヒドロキシ−プロパンアミド;
2−[4−(3−フルオロベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]−3−ヒドロキシ−プロパンアミド;
2−(4−ベンジルオキシベンジルアミノ)−3−ヒドロキシ−N−メチル−プロパンアミド;
2−[4−(2−フルオロベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]−3−ヒドロキシ−N−メチル−プロパンアミド;
2−[4−(3−フルオロベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]−3−ヒドロキシ−N−メチル−プロパンアミド;
2−[4−(2−クロロベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]−3−ヒドロキシ−N−メチル−プロパンアミド;
2−[4−(3−シアノベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]−3−ヒドロキシ−N−メチル−プロパンアミド;
2−[4−(3−シアノベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]−2−メチル−3−ヒドロキシ−N−メチル−プロパンアミド;
2−[4−(3−クロロベンジルオキシ)−フェニルエチルアミノ]プロパンアミド;
2−{4−[2−(3−フルオロフェニル)−エチルオキシ]ベンジルアミノ}プロパンアミド;
2−{4−[2−(3−フルオロフェニル)−エチル]ベンジルアミノ}プロパンアミド;
2−[N−(4−ベンジルオキシベンジル)−N−メチルアミノ]プロパンアミド;
2−{4−[(3−クロロベンジルオキシ)−フェニルエチル]−アミノ}プロパンアミド;
2−[4−ベンジルチオベンジルアミノ]プロパンアミド;
2−[4−(2−フルオロベンジルチオ)−ベンジルアミノ]プロパンアミド;
2−[4−(3−フルオロベンジルチオ)−ベンジルアミノ]プロパンアミド;
2−[4−(3−フェニルプロピルオキシ)−ベンジルアミノ]プロパンアミド;
2−[4−(4−フェニルブチルオキシ)−ベンジルアミノ]プロパンアミド;
2−[4−(5−フェニルペンチルオキシ)−ベンジルアミノ]プロパンアミド;
2−(4−ベンジルオキシベンジルアミノ)−3−フェニル−N−メチル−プロパンアミド;
2−(4−ベンジルオキシベンジルアミノ)−3−メチル−N−メチル−ブタンアミド;
2−(4−ベンジルオキシベンジルアミノ)−2−フェニル−アセトアミド;
2−[4−(2−フルオロベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]−2−フェニル−アセトアミド;
2−[4−(3−フルオロベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]−2−フェニル−アセトアミド;
2−[4−(2−フルオロベンジルオキシ)−ベンジル−N−メチルアミノ]−2−フェニル−アセトアミド;
2−[4−(3−フルオロベンジルオキシ)−ベンジル−N−メチルアミノ]−2−フェニル−アセトアミド;
2−[4−(3−クロロベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]−2−フェニル−アセトアミド;
2−[4−(2−フルオロベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]−2−(2−フルオロフェニル)−アセトアミド;
2−[4−(2−フルオロベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]−2−(3−フルオロフェニル)−アセトアミド;
2−[4−(3−フルオロベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]−2−(2−フルオロフェニル)−アセトアミド;
2−[4−(3−フルオロベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]−2−(3−フルオロフェニル)−アセトアミド;
2−[4−(3−クロロベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]−2−(3−フルオロフェニル)−アセトアミド;
2−(4−(2−チエニルオキシ)−ベンジルアミノ)プロパンアミド;
またはその異性体、混合物、および医薬的に許容される塩から選択される、請求項1〜3記載の化合物の使用。
【請求項5】
α−アミノアミドが、(S)−(+)−2−[4−(2−フルオロベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]プロパンアミドである、請求項1〜4のいずれか一項記載の化合物の使用。
【請求項6】
α−アミノアミドが、(S)−(+)−2−[4−(3−フルオロベンジルオキシ)−ベンジルアミノ]プロパンアミドである、請求項1〜4のいずれか一項記載の化合物の使用。
【請求項7】
ドーパミンアゴニストと、および/またはレボドパ、カルビドパ、ベンセラジド、およびその組み合わせと併用した、請求項1〜6のいずれか一項記載の化合物の使用。
【請求項8】
下肢静止不能症候群に罹患した対象の治療方法であって、請求項1〜6のいずれか一項記載の化合物の治療的有効量の前記対象への投与を含む、方法。
【請求項9】
ドーパミンアゴニストの、および/またはレボドパ、カルビドパ、ベンセラジドおよびその組み合わせの投与を更に含む、請求項8記載の治療方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−533691(P2007−533691A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−508825(P2007−508825)
【出願日】平成17年4月19日(2005.4.19)
【国際出願番号】PCT/EP2005/004166
【国際公開番号】WO2005/102300
【国際公開日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【出願人】(505196819)ニューロン・ファーマシューティカルズ・ソチエタ・ペル・アチオニ (12)
【氏名又は名称原語表記】NEWRON PHARMACEUTICALS S.P.A.
【Fターム(参考)】