説明

下腿用サポーター

【課題】 アキレス腱の動きを阻害することなく、腓腹筋を上下左右から支持することができ、腓腹筋の過度の振れを抑制して、着用者の疲労感を軽減することができる下腿用サポーターを提供する。
【解決手段】 下腿用サポーターは、膝下に筒状編地を締着させる第1のアンカー部2と、踝上に筒状編地を締着させる第2のアンカー部3と、筒状編地の背面側に、腓腹筋101及びアキレス腱102の結合部102aに対応する部分近傍を下端とする略V字形状又は略U字形状に編成され、当該略V字形状又は略U字形状の編地における二つの端部を第1のアンカー部2にそれぞれ連結して腓腹筋101を支持する腓腹筋支持部4と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、着用者の日常動作を支援することのできる下腿用サポーターに関し、特に、腓腹筋の過度の振れや歪みを抑制して、着用者の疲労感を軽減するテーピング機能を具備する下腿用サポーターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
腓腹筋は、下腿後面の最も浅層にある筋であり、内側頭及び外側頭の2頭を有し、いわゆる「ふくらはぎ」の形を形成する。また、腓腹筋は、主な働きとして、足関節の底屈や膝関節の屈曲に貢献し、日常生活での働きとして、足首を伸展し、膝の屈曲を補助して、つま先立ちなどに働き、例えば、ランニング動作や跳躍動作が含まれる多くの動作で強く働く筋である。
このため、年を取り、筋肉(特に、腓腹筋)が衰えると、日常的な動作が困難になり、スポーツをたまに行なった時などに疲労感が生じ、ふくらはぎがつる場合がある。
【0003】
これに対し、従来の被服は、緊締力に優れたハードな伸縮特性を有する強面状部片が、目的とする人体の腱の部分から筋腹にかけて略筋繊維の方向に沿って沿設し、その他の緊締を必要としない部位にはソフトな伸縮特性を有する弱面状部片で構成し、強面状部片でテーピング機能を発揮させるように人体の体表面に圧接して着用される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、従来の膨ら脛用サポーターは、上下端に締付組織を有し下部が先細りの太鼓状筒体からなり、筒本体はナイロン糸とポリウレタン糸の交編からなる挿入編組織であって、筒本体の膨ら脛部位をコース方向に圧着するX襷状の補強部片を有し、補強部片は両端で編糸を切断した部分添え糸編組織からなる膨ら脛用サポーターを構成するものである(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、従来の膨ら脛サポータは、背面の膨ら脛部位周縁にV字形の縦伸び抑制組織を形成してなり、該膨ら脛部位とはアキレス腱から下腿三頭筋の左右側面を通り、腓腹筋の内側頭の内側と外側頭の外側に至る左右2か所で囲まれた部位であり、前記縦伸び抑制組織はカットボス編に、タック編または浮き編の合成組織からなる(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−343868号公報
【特許文献2】特開2002−266125号公報
【特許文献3】特開2009−150002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の被服は、強面状部片が、腓腹筋の両サイドを通り、ヒラメ筋ならびにアキレス腱の一部をカバーする様に充当されているため、アキレス腱の動きを阻害することになり、着用者の歩行の妨げになるという課題がある。
【0008】
また、従来の膨ら脛用サポーターは、ナイロン糸とポリウレタン糸との交編編みにし、縦方向へも生地に伸縮性を出させるようにして、縦方向の伸びを抑えたものではないため、腓腹筋を支持するという効果が十分に得られない。
【0009】
また、従来の膨ら脛サポータは、縦伸び抑制組織が、アキレス腱の下方にあるため、アキレス腱の動きを阻害することになり、着用者の歩行の妨げになるという課題がある。
【0010】
特に、従来の被服(膨ら脛サポーター)は、図3(c)に示すように、強面状部片(縦伸び抑制組織)201が、着用者の腓腹筋101(内側腓腹筋101a、外側腓腹筋101b)の両サイドを通り、アキレス腱102に対応する部分で一体となる。このため、従来の被服(膨ら脛サポーター)は、両サイドから腓腹筋101を支持するが、下方から腓腹筋101を支持するものではなく、歩行などの下腿の動きに対して、腓腹筋101が上下動し、腓腹筋101を支持するという効果が十分に得られない。
【0011】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、アキレス腱の動きを阻害することなく、腓腹筋を下方から支持することができ、腓腹筋の過度の振れや歪みを抑制して、着用者の疲労感を軽減することができる下腿用サポーターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明に係る下腿用サポーターにおいては、筒状編地の一端を周回して編成され、着用者の下腿の膝側に当該筒状編地を締着させる第1のアンカー部と、筒状編地の他端を周回して編成され、着用者の下腿の足首側に当該筒状編地を締着させる第2のアンカー部と、当該筒状編地の背面側に、第1のアンカー部に一端を連結し、着用者の内側腓腹筋の外縁に対応する部分に延在して、着用者の腓腹筋及びアキレス腱の結合部に対応する部分近傍を通り、着用者の外側腓腹筋の外縁に対応する部分に延在し、第1のアンカー部に他端を連結して、着用者の腓腹筋を支持する腓腹筋支持部と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0013】
この発明に係る下腿用サポーターにおいては、着用者の腓腹筋に対応する部分がベース生地であり、腓腹筋支持部により腓腹筋を挟持して下方から支持することで、腓腹筋の活動を阻害することなく、腓腹筋が必要以上に左右に振れずに安定性を確保し、着用者の疲労感を軽減することができる。また、この発明に係る下腿用サポーターにおいては、着用者のアキレス腱に対応する部分が伸縮性のあるベース生地であることにより、腓腹筋支持部がアキレス腱を押圧することなく、下腿の動作の自由度を確保することができると共に、筒状編地の周方向における第2のアンカー部の伸びも抑制しないため、サポーターの装着を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)は第1の実施形態に係る下腿用サポーターの概略構成を示す正面図であり、(b)は図1(a)に示す下腿用サポーターの背面図であり、(c)は図1(a)に示す下腿用サポーターの左側面図及び右側面図であり、(d)は図1(a)に示す下腿用サポーターの平面図であり、(e)は図1(a)に示す下腿用サポーターの底面図である。
【図2】(a)は図1に示す下腿用サポーターの着用状態を示す斜視図であり、(b)は図1に示す下腿用サポーターの着用状態を示す背面図である。
【図3】(a)は下腿部の筋肉の名称を説明するための後面側の人体図であり、(b)は図3(a)に示す人体図に対して図1に示す下腿用サポーターの着用状態を示す説明図であり、(c)は図3(a)に示す人体図に対して従来の被服(膨ら脛サポーター)の着用状態を示す説明図である。
【図4】(a)は第1の実施形態に係る他の下腿用サポーターの概略構成を示す正面図であり、(b)は図4(a)に示す下腿用サポーターの背面図であり、(c)は図4(a)に示す下腿用サポーターの左側面図及び右側面図であり、(d)は図4(a)に示す下腿用サポーターの平面図であり、(e)は図4(a)に示す下腿用サポーターの底面図である。
【図5】(a)は図1に示す下腿用サポーターにおける伸長率の測定部位を説明するための説明図であり、(b)は図1に示す下腿用サポーターにおける伸長率の測定部位を説明するための他の説明図である。
【図6】(a)は第2の実施形態に係る下腿用サポーターの概略構成を示す正面図であり、(b)は図6(a)に示す下腿用サポーターの背面図であり、(c)は図6(a)に示す下腿用サポーターの左側面図及び右側面図であり、(d)は図6(a)に示す下腿用サポーターの平面図であり、(e)は図6(a)に示す下腿用サポーターの底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(本発明の第1の実施形態)
図1及び図2において、下腿用サポーター10は、靴下編機(例えば、ロナティ社製の編み機種(針数:256本))により丸編で編み立てられる筒状編地からなり、着用者の体表に密着して着用者の腓腹筋を補助するサポーターである。
【0016】
下腿用サポーター10は、表糸、裏糸及びゴム糸を編糸とし、平編、リブ編、タック編、浮き編又はパイル編などで編成されてなる伸縮性のある編地であるベース生地部1に対して、異なる編み立てを施すことで、テーピング機能などの所望の機能性を具備する。なお、本実施形態に係るベース生地部1は、リブ編により編成してなる編地(以下、リブ編地と称す)であり、下腿用サポーター10の長さ方向Lにおける伸縮抵抗が、下腿用サポーター10の周方向Hにおける伸縮抵抗と比較して大きい。
【0017】
また、下腿用サポーター10は、筒状編地の一端(上端10a)を周回して編成され、着用者の下腿の膝側(例えば、膝に重ならない膝下)に下腿用サポーター10を締着させる第1のアンカー部2と、筒状編地の他端(下端10b)を周回して編成され、着用者の下腿の足首側(例えば、踝に重ならない踝上)に下腿用サポーター10を締着させる第2のアンカー部3とを備える。
【0018】
この第1のアンカー部2及び第2のアンカー部3は、下腿用サポーター10(筒状編地)の周方向Hにおける伸縮抵抗が、下腿用サポーター10の周方向Hにおけるベース生地部1の伸縮抵抗より大きく編成されている。すなわち、素材に伸長を与えない状態から一定の伸長を与えた場合の張力をFとして、下腿用サポーター10の周方向Hにおけるベース生地部1の張力をFH1とし、下腿用サポーター10の周方向Hにおける第1のアンカー部2の張力をFH2とし、下腿用サポーター10の周方向Hにおける第2のアンカー部3の張力をFH3とした場合に、第1のアンカー部2及び第2のアンカー部3がベース生地部1と比較して、下腿用サポーター10の周方向Hに強い締付力(圧迫力)を持つような、FH2≒FH3>FH1という大小関係を有する。
【0019】
具体的には、第1のアンカー部2及び第2のアンカー部3を、鹿の子編で編成された編地(以下、鹿の子編地と称す)にすることにより、リブ編地のベース生地部1に対して、下腿用サポーター10の周方向Hにおける伸縮抵抗を大きくすることができる。
【0020】
なお、鹿の子編地とは、コース方向及びウェール方向に、平編とタック(あるコースで編み目を脱出させずに、その後のコースで複数ループを脱出させる組織)とが交互に、又は数コースごとに表れる編地である。このため、第1のアンカー部2及び第2のアンカー部3には、平編とタックとを併用することで、編地の表面に隆起や透かし目を作ることができ、鹿の子のような網目柄が表れる。
【0021】
このように、第1のアンカー部2は、着用者の膝下を周回して編成され、下腿用サポーター10の周方向Hにおける伸縮抵抗が、下腿用サポーター10の周方向Hにおけるベース生地部1の伸縮抵抗より大きいことにより、着用者の膝下に下腿用サポーター10を固定し、下腿用サポーター10の上端10aのずり下がりを抑制することができる。また、第1のアンカー部2は、後述する腓腹筋支持部4が連結され、この腓腹筋支持部4のアンカーとしても機能する。
【0022】
また、第2のアンカー部3は、着用者の踝上を周回して編成され、下腿用サポーター10の周方向Hにおける伸縮抵抗が、下腿用サポーター10の周方向Hにおけるベース生地部1の伸縮抵抗より大きいことにより、着用者の踝上に下腿用サポーター10を固定し、下腿用サポーター10の下端10bのずり上がりを抑制することができる。また、第2のアンカー部3は、着用者のアキレス腱に対応する部分に当接することになるが、第2のアンカー部3の編地は弾力性を高めており、アキレス腱への衝撃を緩和することができる。
【0023】
なお、第1のアンカー部2及び第2のアンカー部3による着用者の膝下及び踝上に対する締付力(圧迫力)を強くしすぎると、膝下及び踝上における血流阻害を生じさせ、着用者に不快感を起こさせる。特に、この不快感は、踝上に比べ、膝下において顕著である。
【0024】
このため、本実施形態に係る下腿用サポーター10は、第1のアンカー部2の一部において度目を調整(例えば、第2のアンカー部3に対して締付力(圧迫力)を10%程度小さく)することで、着用者に与える不快感を緩和し、肌への食い込みを抑えている。すなわち、本実施形態に係る下腿用サポーター10は、下腿用サポーター10の周方向Hに適度な締付力(圧迫力)を持つように、FH3>FH2>FH1という大小関係を有することが好ましい。なお、本実施形態に係る下腿用サポーター10は、第2のアンカー部3による着用者の体表にかかる圧力(単位面積あたりの押圧力)と比較して第1のアンカー部2による着用者の体表にかかる圧力を小さくしているが、第2のアンカー部3に対して、第1のアンカー部2の長さ方向Lの幅を広げることで、総体的に所望の締付力(圧迫力)を得ることができ、下腿用サポーター10の上端10aのずり下がりを抑制することができる。
【0025】
腓腹筋支持部4は、下腿用サポーター10の背面側に備えられ、第1のアンカー部2に一端を連結し、着用者の内側腓腹筋101aの外縁に対応する部分に延在して、着用者の腓腹筋101及びアキレス腱102の結合部102aに対応する部分近傍を通り、着用者の外側腓腹筋101bの外縁に対応する部分に延在し、第1のアンカー部2に他端を連結して、着用者の腓腹筋101を上下左右から支持する。
【0026】
なお、本実施形態に係る腓腹筋支持部4は、図3(a)及び図3(b)に示すように、着用者の腓腹筋101及びアキレス腱102の結合部102aに対応する部分近傍を下端とする、図1に示す略V字形状又は図4に示す略U字形状に編成され、当該略V字形状又は略U字形状の編地における二つの端部を第1のアンカー部2にそれぞれ連結して着用者の腓腹筋101を上下左右から支持する。
すなわち、腓腹筋支持部4は、着用者の膝側における第1のアンカー部2で係止されているが、結合部102aに対応する部分近傍と第2のアンカー部3との間にベース生地部1が配設されることにより、着用者の足首側における第2のアンカー部3による係止力の影響が弱まり、腓腹筋支持部4による着用者の腓腹筋101を下腿側から支える作用をより確実に行うことができる。
【0027】
更に、腓腹筋支持部4は、図1(b)及び図3(b)に示すように、着用者の腓腹筋101(内側腓腹筋101a、外側腓腹筋101b)に対応する部分において、腓腹筋101の外縁を基準として腓腹筋101の一部とその周辺を包囲するような幅W(内側の幅Win、外側の幅Wout)を有する。特に、腓腹筋支持部4は、内側の幅Winを広げすぎると、腓腹筋101の活動を阻害するために、腓腹筋101の活動を阻害しない程度の内側の幅Winであることが好ましい。
【0028】
また、腓腹筋支持部4は、腓腹筋支持部4の長さ方向(曲線に沿う延在方向X(図1(b)参照))における伸縮抵抗が、腓腹筋支持部4の幅W方向(延在方向Xに垂直な方向)における伸縮抵抗と比較して大きくなるように、形成することが望ましいのであるが、この伸縮抵抗の違いを持たせた編地を丸編で編み立てることは困難である。そこで、本実施形態においては、この伸縮抵抗との違いを持たせた編地に近似するように、下腿用サポーター10の長さ方向Lにおける伸縮抵抗が、下腿用サポーター10の周方向Hにおける伸縮抵抗と比較して大きい、腓腹筋支持部4を形成している。
【0029】
また、腓腹筋支持部4は、下腿用サポーター10の長さ方向Lにおける伸縮抵抗が、下腿用サポーター10の長さ方向Lにおけるベース生地部1の伸縮抵抗より大きく編成されている。すなわち、下腿用サポーター10の長さ方向Lにおけるベース生地部1の張力をFL1とし、下腿用サポーター10の長さ方向Lにおける腓腹筋支持部4の張力をFL4とした場合に、腓腹筋支持部4がベース生地部1と比較して、下腿用サポーター10の長さ方向Lに強い締付力(圧迫力)を持つような、FL4>FL1という大小関係を有する。
【0030】
具体的には、腓腹筋支持部4を、タック編と添え糸編とを併用した編地(以下、タック編・添え糸編地と称す)にすることにより、リブ編地のベース生地部1に対して、下腿用サポーター10の長さ方向Lにおける伸縮抵抗を大きくすることができる。
【0031】
なお、タック編地とは、生地を編成するときに、一時ある編み目を作らないで、次のコースを編むときに一緒に編み目を作る編地である。なお、本実施形態においては、度目とのバランスを考慮して、タックする回数を1回としているが、この回数に限られるものではない。
【0032】
また、タック編・添え糸編地では、タック編の地編糸の他に他の編糸(例えば、ウーリーナイロン糸)を添えて給糸することで、下腿用サポーター10の長さ方向Lにおける腓腹筋支持部4の伸縮を適度に抑えており、腓腹筋支持部4とベース生地部1との境界において他の編糸をカットしている(カットボス)。
【0033】
このように、腓腹筋支持部4は、第1のアンカー部2に連結し、着用者の腓腹筋101の一部とその周辺を包囲する略V字形状又は略U字形状に編成され、下腿用サポーター10の長さ方向Lにおける伸縮抵抗が、下腿用サポーター10の周方向Hにおける伸縮抵抗より大きく、下腿用サポーター10の長さ方向Lにおけるベース生地部1の伸縮抵抗より大きいことにより、以下の作用効果を奏する。
【0034】
腓腹筋支持部4は、着用者の腓腹筋101を足首側から膝側に向かって支持し、腓腹筋101の収縮を補助することにより、着用者の脚の動きを円滑にでき、腓腹筋101の上下左右の振れや歪みを抑制して、着用者の歩行を補助すると共に、着用者の体力の損失を防ぎ、疲労を軽減することができる(テーピング機能)。
【0035】
また、腓腹筋支持部4は、着用者のアキレス腱102に対応する部分を回避する(アキレス腱102に対応する部分がベース生地部1である)ことにより、腓腹筋支持部4がアキレス腱102を押圧することなく、下腿の動作の自由度を確保することができると共に、下腿用サポーター10の周方向Hにおける第2のアンカー部3の伸びも抑制しないため、下腿用サポーター10の装着を容易にすることができる。
【0036】
特に、腓腹筋支持部4は、地編糸の他に他の編糸を添えた添え糸編地(カットボス)により、腓腹筋支持部4に隣接するベース生地部1より編地が厚くなり、ベース生地部1との境界で段差が生じ、着用者の腓腹筋101が腓腹筋支持部4により支持されている実感を着用者に与えることができる。
なお、腓腹筋支持部4及びベース生地部1の境界で段差を生じさせるには、腓腹筋支持部4及びベース生地部1の境界に、液体の樹脂を塗り、樹脂が空気に触れ酸化して固着させることや、薄膜状の樹脂を取り付けることや、液体の樹脂を噴霧器などで吹き付け、樹脂が空気に触れ酸化して固着させることでもよい。また、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリウレタン系、ポリエチレン系(高密度、低密度)又はエチレン酢酸ビニル系などの種類の樹脂からなる接着樹脂を、ドット加工、パウダー加工、くもの巣加工又はフィルム加工などの加工方法によって、腓腹筋支持部4及びベース生地部1の境界に塗布し、フラット型プレス機、ローラー型プレス機などによって加熱及び加圧処理を施すことで、編地に樹脂を固着させることでもよい。
【0037】
前頸骨筋支持部5は、下腿用サポーター10の正面側の略中央における第1のアンカー部2及び第2のアンカー部3間に略直線状に編成され、着用者の前頸骨筋を支持する部分であり、下腿用サポーター10の長さ方向Lにおける伸縮抵抗が、下腿用サポーター10の周方向Hにおける伸縮抵抗より大きく編成されている。
【0038】
この前頸骨筋支持部5は、下腿用サポーター10の長さ方向Lにおける伸縮抵抗が、下腿用サポーター10の長さ方向Lにおけるベース生地部1の伸縮抵抗より大きく、下腿用サポーター10の長さ方向Lにおける腓腹筋支持部4の伸縮抵抗より小さく編成されている。すなわち、下腿用サポーター10の長さ方向Lにおける前頸骨筋支持部5の張力をFL5とした場合に、前頸骨筋支持部5がベース生地部1と比較して、下腿用サポーター10の長さ方向Lに強い締付力(圧迫力)を持ち、前頸骨筋支持部5が腓腹筋支持部4と比較して、下腿用サポーター10の長さ方向Lに弱い締付力(圧迫力)を持つような、FL4>FL5>FL1という大小関係を有する。
【0039】
具体的には、前頸骨筋支持部5をタック編地にすることにより、リブ編地のベース生地部1に対して、下腿用サポーター10の長さ方向Lにおける伸縮抵抗を大きく、タック編・添え糸編地の腓腹筋支持部4に対して、下腿用サポーター10の長さ方向Lにおける伸縮抵抗より小さくすることができる。
【0040】
このように、前頸骨筋支持部5は、着用者の前頸骨筋に対応しており、下腿用サポーター10の長さ方向Lにおける伸縮抵抗が、下腿用サポーター10の長さ方向Lにおけるベース生地部1の伸縮抵抗より大きく、下腿用サポーター10の長さ方向Lにおける腓腹筋支持部4の伸縮抵抗より小さいことにより、前頸骨筋の働きを補助すると共に、脛骨に対する下腿用サポーター10からの圧迫による痛みを緩和することができる。また、前頸骨筋支持部5は、下腿用サポーター10の正面側の略中央における第1のアンカー部2及び第2のアンカー部3間に略直線状に編成されることにより、下腿用サポーター10を正しい位置で着用するための目印になる。
【0041】
なお、本実施形態においては、身生地(ベース生地部1、腓腹筋支持部4、前頸骨筋支持部5)におけるリブ編及びタック編に用いられる地編糸として、太さ70デニールのウーリーナイロン糸であり、編み本数2本からなる表糸と、太さ30デニールのウーリーナイロン糸であり、編み本数2本からなる裏糸と、太さ260デニールのポリウレタンの芯糸に太さ40デニールのナイロンの巻き糸を2本巻きつけたカバーリング・ヤーン(DCY:double covered yarn)であるゴム糸とを用いているが、この材質に限られるものではない。
【0042】
また、本実施形態においては、口ゴム部(第1のアンカー部2、第2のアンカー部3)における鹿の子編に用いられる地編糸として、太さ70デニールのウーリーナイロン糸であり、編み本数2本からなる表糸と、太さ30デニールのウーリーナイロン糸であり、編み本数2本からなる裏糸とを用いているが、この材質に限られるものではない。
【0043】
例えば、表糸としては、綿、毛(カシミヤ、ラム、アンゴラなど)、絹若しくは麻などの天然繊維、アクリルなどの化学繊維、又は吸汗、速乾若しくは体温調整機能を持つ素材などを、下腿用サポーター10のコスト又は着用者のニーズに合わせて選択することが好ましい。また、裏糸としては、エステル若しくはFTY(filament twisted yarn)、又は抗菌、防臭若しくは消臭素材を、下腿用サポーター10のコスト又は着用者のニーズに合わせて選択することが好ましい。
また、タック編・添え糸編地(腓腹筋支持部4)におけるウーリーナイロン糸(柄糸)は、太さ70デニールの編み本数2本からなる。
【0044】
また、下腿用サポーター10は、表糸及び/又は裏糸として、例えば、吸湿発熱素材、遠赤外線素材、光電子素材、鉱物練込素材、蓄熱素材等を使用することで、保温機能を新たに追加することもできる。逆に、下腿用サポーター10は、表糸及び/又は裏糸として、例えば、接触冷感素材、吸水・速乾性素材、吸熱・放熱性素材、クール加工素材等を使用することで、冷却機能を新たに追加することもできる。
また、下腿用サポーター10は、表糸及び/又は裏糸として、着色した編糸(例えば、青色や桃色の柄糸など)を使用することで、需要者の視覚を通じて美観を起こさせ、従来の白色のサポーターとの差別化を図り、購買意欲を発揮させることもできる。
【0045】
ここで、前述した編糸及び編地に従って製作した下腿用サポーター10の伸縮抵抗の大小を確認した。確認方法としては、下腿用サポーター10の各部位(図5参照)に対して、ストレッチテスタ(引張荷重:4kg)により、伸長率(引き伸ばしたときの長さ(伸び寸法)と元の長さ(置き寸法)との差の、元の長さに対する百分率)を測定してその大小を比較した。結果を表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
なお、表1に示す置き寸法は、下腿用サポーター10の一例であり、この寸法に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、修正や改良等が適宜加えられたものについても、本発明の範囲に属する。また、表1における伸長率は、値が大きいほど編地が伸び易いことを示しているのに対して、前述した張力Fにおいては、張力Fが大きいほど編地が伸び難い(締付力(圧迫力)が大きい)ことを示すため、伸長率の大小関係は張力Fの大小関係とは逆になる。
表1より、下腿用サポーター10においては、前述したFH3>FH2>FH1及びFL4>FL5>FL1の関係を有していることが確認された。
【0048】
(本発明の第2の実施形態)
図6(a)は第2の実施形態に係る下腿用サポーターの概略構成を示す正面図であり、図6(b)は図6(a)に示す下腿用サポーターの背面図であり、(c)は図6(a)に示す下腿用サポーターの左側面図及び右側面図であり、図6(d)は図6(a)に示す下腿用サポーターの平面図であり、図6(e)は図6(a)に示す下腿用サポーターの底面図である。図6において、図1と同じ符号は、同一又は相当部分を示し、その説明を省略する。
【0049】
本実施形態に係る下腿用サポーター10は、図6に示すように、腓腹筋支持部4の下端に連結し、筒状編地を周回して編成され、着用者の腓腹筋101及びアキレス腱102の結合部102a近傍に当該筒状編地を締着させる第3のアンカー部6を備える。すなわち、腓腹筋支持部4は、着用者の膝側における第1のアンカー部2で係止され、着用者の結合部102a近傍における第3のアンカー部6でも係止されている。
【0050】
この第3のアンカー部6は、下腿用サポーター10(筒状編地)の周方向Hにおける伸縮抵抗が、下腿用サポーター10の周方向Hにおけるベース生地部1の伸縮抵抗より大きく編成されている。すなわち、下腿用サポーター10の周方向Hにおける第3のアンカー部6の張力をFH6とした場合に、第3のアンカー部6がベース生地部1と比較して、下腿用サポーター10の周方向Hに強い締付力(圧迫力)を持つような、FH6>FH1という大小関係を有する。
【0051】
具体的には、第3のアンカー部6を鹿の子編地にすることにより、リブ編地のベース生地部1に対して、下腿用サポーター10の周方向Hにおける伸縮抵抗を大きくすることができる。
【0052】
なお、この第2の実施形態においては、下腿用サポーター10が第3のアンカー部6を備えるところのみが第1の実施形態と異なるところであり、後述する第3のアンカー部6による作用効果以外は、第1の実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0053】
前述した第1の実施形態では、腓腹筋支持部4が第2のアンカー部3で係止されないため、腓腹筋支持部4による着用者の腓腹筋101を引き上げる効果を高めることができるが、腓腹筋支持部4と第2のアンカー部3との間に、伸縮性のあるベース生地部1が存在することになり、着用者の腓腹筋101に対して腓腹筋支持部4の位置ずれが生じる恐れがある。
【0054】
このため、本実施形態に係る第3のアンカー部6は、着用者の腓腹筋101及びアキレス腱102の結合部102a近傍を周回して編成され、下腿用サポーター10の周方向Hにおける伸縮抵抗が、下腿用サポーター10の周方向Hにおけるベース生地部1の伸縮抵抗より大きいことにより、腓腹筋支持部4がアキレス腱102を押圧することなく、着用者の結合部102a近傍に下腿用サポーター10を固定し、腓腹筋支持部4のアンカーとしても機能するため、腓腹筋支持部4の位置ずれを抑制することができ、適正な位置に腓腹筋支持部4を固定することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 ベース生地部
2 第1のアンカー部
3 第2のアンカー部
4 腓腹筋支持部
5 前頸骨筋支持部
6 第3のアンカー部
10 下腿用サポーター
10a 上端
10b 下端
101 腓腹筋
101a 内側腓腹筋
101b 外側腓腹筋
102 アキレス腱
102a 結合部
201 強面状部片(縦伸び抑制組織)
H 周方向
L 長さ方向
W 幅
in 内側の幅
out 外側の幅
X 腓腹筋支持部の長さ方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
丸編で編み立てられる筒状編地からなり、着用者の体表に密着して当該着用者の腓腹筋を補助する下腿用サポーターにおいて、
前記筒状編地の一端を周回して編成され、前記着用者の下腿の膝側に当該筒状編地を締着させる第1のアンカー部と、
前記筒状編地の他端を周回して編成され、前記着用者の下腿の足首側に当該筒状編地を締着させる第2のアンカー部と、
前記筒状編地の背面側に、前記第1のアンカー部に一端を連結し、前記着用者の内側腓腹筋の外縁に対応する部分に延在して、前記着用者の腓腹筋及びアキレス腱の結合部に対応する部分近傍を通り、前記着用者の外側腓腹筋の外縁に対応する部分に延在し、前記第1のアンカー部に他端を連結して、前記着用者の腓腹筋を支持する腓腹筋支持部と、
を備えることを特徴とする下腿用サポーター。
【請求項2】
前記請求項1に記載の下腿用サポーターにおいて、
前記腓腹筋支持部が、前記着用者の腓腹筋及びアキレス腱の結合部に対応する部分近傍を下端とする略V字形状又は略U字形状に編成され、当該略V字形状又は略U字形状の編地における二つの端部を前記第1のアンカー部にそれぞれ連結して着用者の腓腹筋を支持することを特徴とする下腿用サポーター。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載の下腿用サポーターにおいて、
前記筒状編地の周方向における前記第1のアンカー部の伸縮抵抗が、前記筒状編地の周方向における前記第2のアンカー部の伸縮抵抗より小さく、前記筒状編地の周方向におけるベース生地部の伸縮抵抗より大きいことを特徴とする下腿用サポーター。
【請求項4】
前記請求項1乃至3のいずれかに記載の下腿用サポーターにおいて、
前記筒状編地の正面側の略中央における前記第1のアンカー部及び第2のアンカー部間に略直線状に編成され、前記着用者の前頸骨筋を支持する前頸骨筋支持部を備え、
前記筒状編地の長さ方向における前記前頸骨筋支持部の伸縮抵抗が、前記筒状編地の長さ方向における前記ベース生地部の伸縮抵抗より大きく、前記筒状編地の長さ方向における前記腓腹筋支持部の伸縮抵抗より小さいことを特徴とする下腿用サポーター。
【請求項5】
前記請求項1乃至4のいずれかに記載の下腿用サポーターにおいて、
前記腓腹筋支持部の下端に連結し、前記筒状編地を周回して編成され、前記着用者の腓腹筋及びアキレス腱の結合部近傍に当該筒状編地を締着させる第3のアンカー部を備えることを特徴とする下腿用サポーター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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