説明

下部ノズルの固定装置

【課題】ハンマー等による過剰な打撃操作を行うことなく、弛みを確実に防止できる下部ノズル固定装置を提供すること。
【解決手段】下部ノズル30を収納して下方から支持する円筒状の下部ノズルホルダー10の外周面に形成した複数の突起11を、スライディングノズル装置の下プレートを収納する下プレート収納金枠50に連結固定した円筒状の下部ノズルスリーブ20の内周面に形成した螺旋溝21にはめ込み、下部ノズルホルダー10を螺旋溝21に沿って回転させることにより、下部ノズル30をスライディングノズル装置の下プレートに圧着固定するバイオネット方式の下部ノズル固定装置において、下部ノズルスリーブ20の下端面に螺旋溝21と同じ方向に傾斜する傾斜面22を設け、この傾斜面22に、下部ノズルホルダー10に装着されたボルト14の先端を突き当てるようにした。傾斜面22の傾斜角度は、螺旋溝21の傾斜角度より大きくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融金属の流量制御を行うスライディングノズル装置の下プレートに、下部ノズルをバイオネット方式で固定する下部ノズル固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スライディングノズル装置は、溶融金属の流量制御を正確に行うことができるため、各種の溶融金属容器に広く利用されている。スライディングノズル装置は、一般的に2〜3枚のプレートを備え、一番下の下プレートの下面に下部ノズルが接合される。
【0003】
この下部ノズルを下プレートの下面に接合して固定する下部ノズル固定装置としては、一般的にバイオネット方式の固定装置が使用されている(例えば特許文献1〜3)。バイオネット方式の下部ノズル固定装置は、図5及び図6に示すように、円筒状の下部ノズルホルダー10と、同じく円筒状の下部ノズルスリーブ20とを備える。下部ノズルホルダー10は、下部ノズル30を収納して下方から支持するもので、その外周面に複数の突起11が形成されている。下部ノズルスリーブ20は、スライディングノズル装置の下プレート40を収納する下プレート収納金枠50に連結固定され、その内周面に突起21と対応する位置に複数の螺旋溝21が形成されている。
【0004】
下部ノズル30をスライディングノズル装置の下プレート40に接合する際には、下部ノズルホルダー10に下部ノズル30を収納した状態で、下部ノズルホルダー10の突起11を下部ノズルスリーブ20の螺旋溝21にはめ込み、下部ノズルホルダー10を螺旋溝21に沿って回転させることにより、下部ノズルホルダー10を下部ノズルスリーブ20に装着(螺着)する。これにより、下部ノズルホルダー10の上端面が下部ノズル30のフランジ部31を下方から押し付けるため、下部ノズル30をスライディングノズル装置の下プレート40に強く押し付けて圧着固定(接合)することができる。
【0005】
従来、このようなバイオネット方式の固定装置においては、下部ノズルスリーブ20に装着(螺着)された下部ノズルホルダー10が容易に弛まないように、装着の際に、下部ノズルホルダー10の取手12をハンマー等でかなり強く叩いて締め付けるようにしていた。
【0006】
しかし、このハンマー等による過剰な打撃操作は、下部ノズルホルダー10が変形し早期に使用できなくなる原因となるばかりか、下部ノズルホルダー10の変形により、下部ノズル30に亀裂が発生したり、下部ノズル30が弛んで溶融金属の漏れが発生したりする原因となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−58124号公報
【特許文献2】特開2008−188639号公報
【特許文献3】特開2008−296233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、ハンマー等による過剰な打撃操作を行うことなく、弛みを確実に防止できる下部ノズル固定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、下部ノズルを収納して下方から支持する円筒状の下部ノズルホルダーの外周面に形成した複数の突起を、スライディングノズル装置の下プレートを収納する下プレート収納金枠に連結固定した円筒状の下部ノズルスリーブの内周面に形成した螺旋溝にはめ込み、下部ノズルホルダーを前記螺旋溝に沿って回転させることにより、下部ノズルをスライディングノズル装置の下プレートに圧着固定するバイオネット方式の下部ノズル固定装置において、下部ノズルスリーブの下端面に前記螺旋溝と同じ方向に傾斜する傾斜面を設け、この傾斜面に、下部ノズルホルダーに装着されたボルトの先端を突き当てるようにしており、前記傾斜面の傾斜角度を、前記螺旋溝の傾斜角度より大きくしたことを特徴とする。
【0010】
本発明において、前記螺旋溝の傾斜角度は経験的に下部ノズルホルダーが自然に弛むことがない8度以下にすることが好ましい。また、前記傾斜面の傾斜角度は前記螺旋溝の傾斜角度より1度以上大きいことが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の下ノズル固定装置では、下部ノズルスリーブの下端面に設けた傾斜面に、下部ノズルホルダーに装着(螺着)されたボルトの先端を突き当てるようにしているので、ボルトが弛み防止のストッパーの作用を奏する。しかも、傾斜面の傾斜角度を螺旋溝の傾斜角度より大きくしているので、ボルトによって弛みを確実に防止できる。したがって、従来のようにハンマー等による過剰な打撃操作を行うことなく、弛みを確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の下部ノズル固定装置の一実施例を示す分解斜視図である。
【図2】図1の下部ノズル固定装置において、傾斜面とボルトとの位置関係を、螺旋溝と突起との位置関係と対照して示す説明図である。
【図3】図1の下部ノズル固定装置において、下部ノズルホルダーを締め付ける際に使用する締付治具を示し、(a)は左側面図、(b)は平面図である。
【図4】図3の締付治具の使用状態を示す平面図である。
【図5】従来の下部ノズル固定装置を示す分解斜視図である。
【図6】従来の下部ノズル固定装置の使用状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に示す実施例に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【0014】
図1は、本発明の下部ノズル固定装置の一実施例を示す分解斜視図である。
【0015】
本発明の下部ノズル固定装置はバイオネット方式であり、その基本的な構成は図5及び図6に示した下ノズル固定装置と同じで、円筒状の下部ノズルホルダー10と、円筒状の下部ノズルスリーブ20とを備える。下部ノズルホルダー10は、下部ノズル30を収納して下方から支持するもので、その外周面に複数(実施例では3個)の突起11が形成されている。下部ノズルスリーブ20は、スライディングノズル装置の下プレートを収納する下プレート収納金枠50に連結固定され、その内周面に突起11と対応する位置に複数(実施例では3条)の螺旋溝21が形成されている。さらに、下部ノズルスリーブ20の下端面には、下部ノズルスリーブ20の周方向に沿って螺旋溝21と同じ方向に傾斜する傾斜面22が形成されている。そして、この傾斜面22に、下部ノズルホルダー10のボルト装着部13に装着(螺着)されたボルト14の先端を突き当てるようにしている。
【0016】
下部ノズル30をスライディングノズル装置の下プレートに接合する際には、下部ノズルホルダー10に下部ノズル30を収納した状態で、下部ノズルホルダー10の突起11を下部ノズルスリーブ20の螺旋溝21にはめ込み、下部ノズルホルダー10を螺旋溝21に沿って回転させることにより、下部ノズルホルダー10を下部ノズルスリーブ20に装着(螺着)する。これにより、下部ノズルホルダー10の上端面が下部ノズル30のフランジ部31を下方から押し付けるため、下部ノズル30をスライディングノズル装置の下プレート40に強く押し付けて圧着固定(接合)することができる。
【0017】
さらに、本発明の下部ノズル固定装置では、下部ノズルスリーブ20に装着(螺着)された下部ノズルホルダー10が弛まないように、下部ノズルホルダー10のボルト装着部13に装着(螺着)されたボルト14の先端を、下部ノズルスリーブ20の下端面に形成された傾斜面22に突き当てる。
【0018】
図2は、傾斜面22とボルト14との位置関係を、螺旋溝21と突起11との位置関係と対照して示す説明図である。図2において右方向が締め方向であり、左方向が弛み方向である。図2からわかるように、下部ノズルホルダー10に形成された突起11がはめ込まれる螺旋溝21と、下部ノズルホルダー10に装着されたボルト14が突き当たる傾斜面22とは、同じ方向に傾斜しているが、傾斜面22の傾斜角度θ2を、螺旋溝21の傾斜角度θ1を大きくしている。したがって、突起11が螺旋溝21に沿って弛み方向(図2の左方向)に動こうとしても、傾斜面22に突き当たっているボルト14がこの妨げとなり、弛みを確実に防止できる。
【0019】
本実施例では、下部ノズルスリーブ20の下端面の一箇所に傾斜面22を設けたが、弛み防止効果をより顕著に作用させるには、傾斜面22を等間隔で複数箇所に設けることもできる。ただし、傾斜面22を三箇所以上に設けても二箇所に設けた場合と弛み防止効果は大差がなく、むしろボルト14の配置スペース及び作業性を考慮すると、最大で二箇所に設ければ十分である。
【0020】
ここで、螺旋溝21の傾斜角度θ1は、8度以下であることが好ましい。傾斜角度θ1が8度を超えると、突起11が螺旋溝21に沿って弛み方向に動きやすくなる(傾斜角度θ1が大きくなればなるほど、突起11が螺旋溝21に沿って弛み方向に動きやすくなる。)。傾斜角度θ1の下限はとくに限定されないが、螺旋溝21の配置スペース及び作業性の点から3度以上であることが好ましい。また、傾斜面22の傾斜角度θ2と螺旋溝21の傾斜角度θ1との差(θ2−θ1)は1度以上であることが好ましい。θ2−θ1が1度未満であると、ボルト14によるストッパーの作用が十分に得られない場合がある。θ2−θ1の上限はとくに限定されないが、ボルト14の配置スペースの点から4度以下であることが好ましい。なお、本実施例では、螺旋溝21の傾斜角度θ1=4度、傾斜面22の傾斜角度θ2=6度、θ2−θ1=2度とした。
【0021】
図3は、図1に示した本発明の下部ノズル固定装置において、下部ノズルホルダー10を締め付ける際に使用する締付治具を示し、(a)は左側面図、(b)は平面図である。締付治具60は、把持棒61の先端に半円弧状のつかみ部62を備え、つかみ部の両方の先端部分に爪部63が形成されている。つかみ部の内周の円弧の曲率は、下部ノズルホルダー10の外周面の曲率と同じにしている。
【0022】
図4は、締付治具60の使用状態を示す平面図である。先に説明したように、下部ノズルホルダー10を下部ノズルスリーブ20に装着して締め付ける際、締付治具60の爪部63を、下部ノズルホルダー10の下端部に形成したL字状の引っかけ溝15(図1参照)に引っかける。その後、把持棒61を握って所定方向に回転させることで、下部ノズルホルダー10を締め付ける。このとき、締付治具60の爪部62,62を結ぶ線分が、下部ノズルホルダー10の中心を通るようにすることで、より確実に締め付け力を作用させることができる。このような締付治具60を使用することで、ハンマー等による打撃操作を行うことなく、下部ノズルホルダー10を締め付けることができる。
【0023】
このようにハンマー等による打撃操作を行うことなく、締付治具により手作業で下部ノズルホルダー10を締め付ける場合、上述の螺旋溝21の傾斜角度θ1は、締め付けに要する力が過大とならいように4度以下とすることが好ましい。
【符号の説明】
【0024】
10 下部ノズルホルダー
11 突起
12 取手
13 ボルト装着部
14 ボルト
15 引っかけ溝
20 下部ノズルスリーブ
21 螺旋溝
22 傾斜面
30 下部ノズル
31 フランジ部
40 下プレート
50 下プレート収納金枠
60 締付治具
61 把持棒
62 つかみ部
63 爪部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部ノズルを収納して下方から支持する円筒状の下部ノズルホルダーの外周面に形成した複数の突起を、スライディングノズル装置の下プレートを収納する下プレート収納金枠に連結固定した円筒状の下部ノズルスリーブの内周面に形成した螺旋溝にはめ込み、下部ノズルホルダーを前記螺旋溝に沿って回転させることにより、下部ノズルをスライディングノズル装置の下プレートに圧着固定するバイオネット方式の下部ノズル固定装置において、
下部ノズルスリーブの下端面に前記螺旋溝と同じ方向に傾斜する傾斜面を設け、この傾斜面に、下部ノズルホルダーに装着されたボルトの先端を突き当てるようにしており、
前記傾斜面の傾斜角度を、前記螺旋溝の傾斜角度より大きくしたことを特徴とするバイオネット方式の下部ノズル固定装置。
【請求項2】
前記螺旋溝の傾斜角度が8度以下であり、前記傾斜面の傾斜角度が前記螺旋溝の傾斜角度より1度以上大きい請求項1に記載の下部ノズル固定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate