説明

不動産賃貸方法並びに、不動産賃貸に関する料金算出システム及びプログラム

【課題】不動産の貸主側の設備投資費用の回収を実現し、積極的に消費電力量の少ない電気製品を普及できるようにした不動産賃貸物件の貸与方法を提供すること。
【解決手段】 不動産賃貸物件に予め設置されている電気製品の所定期間における平均的な電力使用料金である第一電気使用料金を算出し、当該電気製品を、それよりも電気消費量の少ない電気製品に交換した時の前記所定期間における電力使用料金である第二電力使用料金を算出し、第一電気使用料金と第二電気使用料との差額を算出し、当該差額の一部を、不動産賃貸物件の賃借者の負担金として算出する不動産賃貸物件の貸与方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不動産賃貸物件に付帯される電気製品を省エネルギー製品に交換することを促進するためのシステム、方法および広告媒体に関するものであり、特に当該電気製品を省エネルギー製品に交換した時の設備投資費用を、削減した電気料金で回収できるようにしたシステム、方法および広告媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では消費電力の削減を目的として、省エネルギー家電(所謂エコ家電等)やLED照明等の消費電力の少ない電気製品も数多く提供されている。しかしながら、このような消費電力の少ない電気製品は、未だに高額であり、導入に際しては初期費用が多大であるといった問題がある。
【0003】
そこで従前においては、このような初期費用を削減するべく、電気料金の計算・精算システムとして特許文献1(特開2010−205255号公報)が提案されている。この特許文献は、省エネルギー機器の初期コストを電気料金の支払いでもって行えるようにした電気料金の計算・清算システムを提供するものであり、省エネルギー機器の初期コストの償還費用を記憶する償還費用記憶手段と、省エネルギー機器導入前の電気料金の平均値を記憶する旧料金記憶手段と、機器導入前と導入後の電気料金の差額を演算する差額演算手段と、差額の分だけ償還費用記憶手段の記憶を更新する償還費用更新手段と、償還が済むまでは機器導入前の電気料金の平均値をユーザに請求してユーザが電気料金と償還費用とを清算できるようにする一方、費用の償還後は導入後の電気料金をユーザに請求してユーザが電気料金を清算できるようにした電気料金請求手段とを備える電気料金の計算・清算システムとなっている。
【0004】
また不動産賃貸物件における賃料を算定するシステムも提案されている。例えば特許文献2(特開2004−272575号公報)では、地域差や時代感等の反映を目論めることができ、賃料の修正が容易にできる賃料算定システムを提供するべく、要因別ランク別に重み付け数値を複数記憶しておき、対象物件の仕様データに基づいて、これら複数の重み付け数値の中から該当一致する重み付け数値を選択し、対象物件の専有面積から必要面積を減算して有効面積を算出し、有効面積と基礎単位面積賃料と前記選択された重み付け数値とを乗算し、乗算結果に有効賃料を加算した結果を「賃料算定額」として表示する賃料算定システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−205255号公報
【特許文献2】特開2004−272575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のとおり、従前においても省エネルギー機器の初期コストを電気料金の支払いで賄うようにする思想は提案されているが、当該技術では電気事業者が初期コストを負担するものであり、不動産賃貸物件に適用する上では実用性に乏しいという問題が有る。
【0007】
即ち、住居用又は事業所用の不動産賃貸物件においては、付帯設備として、エアコンや照明器具等の電気製品を設置した状態で貸与を行う場合もあり、このような付帯設備の設置は、不動産の貸主側の負担により設置されているのが一般的である。一方で、電気料金の計算及び清算は、賃借者であるユーザと電気事業者との間の契約に基づき、電気事業者が基本料金にユーザの電力使用量に応じた従量料金又は時間帯別メニュー料金(以下、単に使用料金という)を加算して電気料金を求め、ユーザに請求して清算するという方式が一般的である。このため、省エネルギー機器等の電気製品の設置者と、電気料金の支払者が一致しないという問題が有った。この為、不動産の貸主側が不動産賃貸物件の付帯設備として省エネルギー機器等の電気製品を設置した場合、多大な設備投資費用を伴うものの、電気料金の削減による効果は賃借者であるユーザが享受することになり、設備投資費用の回収が困難であった。
【0008】
このような事情から、従前においては不動産賃貸物件の付帯設備として消費電力量の少ない電気製品の普及が遅れているのも事実である。
【0009】
そこで本発明は、このような問題を解消し、不動産の貸主側の設備投資費用の回収を実現し、積極的に消費電力量の少ない電気製品を普及できるようにした不動産賃貸に関する料金算出システムと料金算出プログラム、不動産賃貸物件の貸与方法、および不動産賃貸物件の賃借者の負担額の一部を算定する方法を提供することを第一の課題とする。
【0010】
また、不動産賃貸物件の場合において、消費電力量の少ない電気製品の導入に際しての設備投資費用の回収方法としては、直接的に賃借者であるユーザから直接的に金銭的に回収するだけでなく、そのような電気設備を導入することによる入居率の向上によっても達成することができる。即ち、当該設備を付帯することによる不動産賃貸物件の優位性を確保し、入居率を向上させることによっても、間接的ではあるが設備投資による効果を得ることができる。そこで本発明では、当該付帯設備により得られる効果を明確にした広告媒体を提供することを第二の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題の少なくともいずれかを解決するべく、本発明は不動産賃貸に関する料金算出システムと料金算出プログラム、不動産賃貸物件の貸与方法と広告媒体、および不動産賃貸物件の賃借者の負担額の一部を算定する方法を提供する。
【0012】
即ち本発明に係る不動産賃貸に関する料金算出システムは、不動産賃貸物件に予め設置されている電気製品の平均的な消費電力である第一消費電力を算出する第一消費電力算出手段と、当該電気製品を、それよりも消費電力の少ない電気製品に交換した時の電気製品の消費電力である第二消費電力を算出する第二消費電力算出手段と、第一消費電力に対する第二消費電力の割合から消費電力削減率を算出する消費電力削減率算出手段と、消費電力の少ない電気製品に交換した後における一定期間における消費電力量(消費電力×使用時間)と、単位電力量あたりの料金とを乗算して得た第一の値を、前記消費電力削減率で除算して第二の値を得て、この第二の値から第一の値を減算することにより、消費電力の少ない電気製品に交換することにより削減した電気料金を算出する、電気料金削減額算出手段と、当該削減した電気料金の範囲内で不動産賃貸物件の賃借者の負担額の一部を算定する負担額算出手段とを具備する。
【0013】
上記第一消費電力は、電気製品の平均的な消費電力であり、例えば不動産賃貸物件の付帯設備として設置していた電気製品であって、消費電力の少ない電気製品に交換する前に使用していた電気製品の消費電力の値を使用することができる。また、第二消費電力は、消費電力の少ない電気製品の消費電力の値を使用することができる。そして第一消費電力に対する第二消費電力の割合から消費電力削減率を算出することにより、削減した消費電力の基準となる値を算出することができる。例えば、明るさが60ワット形で、一カ月当たり1時間使用される電球を例にすれば、従前において使用していた電球が白熱灯であり消費電力が54ワットである場合において、この白熱球を同じ明るさの消費電力が8ワットのLED電球に交換したとすると、第一消費電力は54ワット、第二消費電力は8ワットとなり、第一消費電力に対する第二消費電力の割合は14.8%となる。そこで、この算出した14.8%を、消費電力の少ない電気製品に交換することにより削減した電気料金を算出する際の基準値として利用する。
【0014】
実際に、消費電力の少ない電気製品に交換することにより削減した電気料金を算出する場合には、消費電力の少ない電気製品に交換した後における一定期間における消費電力量(消費電力×使用時間)と、単位電力量あたりの料金とを乗算して得た第一の値を、前記消費電力削減率で除算して第二の値を得て、この第二の値から第一の値を減算することにより算出することができる。
【0015】
この一定期間における消費電力量(消費電力×使用時間)としては、電気事業者における検針のタイミングとすることができ、通常は一ヶ月間を当該一定期間として、その期間内における消費電力量(消費電力×使用時間)を使用することができる。また、この一定期間における消費電力量(消費電力×使用時間)と単位電力量あたりの料金は、電気事業者から送付される「電気ご使用量のお知らせ」等の検針表に示された情報を使用することができる。
【0016】
例えば、消費電力の少ない電気製品に交換した後における一定期間における消費電力量(消費電力×使用時間)と、単位電力量あたりの料金とを乗算して得た第一の値が5,000円である場合であって、第一消費電力に対する第二消費電力の割合が14.8%であるとすると、消費電力の少ない電気製品に交換することにより削減した電気料金は、第一の値である5,000円を14.8%で除算して得た値33,784円から、第一の値である5,000円を減じた28,748円となる。
【0017】
そこで、負担額算出手段は、この削減した電気料金28,748円の範囲内で、不動産賃貸物件の賃借者の負担額(家賃、共益費、その他の賃借者が負担する額)の一部を算定し、この賃借者の負担額を不動産の貸主に支払うことにより、不動産の貸主は消費電力の少ない電気製品の導入時における設備投資を回収することができ、これにより不動産賃貸物件における消費電力の少ない電気製品(省エネ家電等)の普及を図ることができる。
【0018】
かかる不動産賃貸物件の賃借者の負担額の一部の算定に際しては、設置した消費電力の少ない電気製品の耐用年数、および従前の電気製品を使用している場合に要するメンテナンス費用を加算して算出することもできる。例えばLED照明の場合には、白熱電球の25倍程度の定格耐用年数を有することから、省エネルギー電気製品とすることにより、通常は賃借者が負担する消耗品の交換費用を削減できる為である。
【0019】
なお、この賃借者の負担額の一部は、賃料に含まれても良く、また電気製品使用量等、その名目は問わない。更に、電気事業者との間の契約者(電気利用の契約者)は、不動産の貸主であっても、賃借者であるユーザであっても良い。電気事業者との契約者が不動産の貸主の場合には、当該貸主であるオーナーは、本発明により算出した賃借者の負担額の一部と電気利用料金とを、賃借者であるユーザに請求することになり、一方、電気事業者との契約者が賃借者であるユーザの場合には、当該オーナーは、本発明により算出した賃借者の負担額の一部を、賃借者であるユーザに請求することになる。
【0020】
特に本発明によれば、賃借者であるユーザが実際に使用した電気量に基づき、当該消費電力量の少ない電気製品とすることにより得られる利益を具体的に算出することが可能になる。
【0021】
上記本発明では、従来の電気製品における第一消費電力に対する、省エネルギー電気製品による第二消費電力の割合から消費電力削減率を算出を算出しているが、第二消費電力に対する第一消費電力の割合から消費電力削減率を算出しても良い。この場合、電気料金削減額算出手段は、消費電力の少ない電気製品に交換した後における一定期間における消費電力量(消費電力×使用時間)と、単位電力量あたりの料金とを乗算して得た第一の値に、消費電力削減率を乗算して第二の値を得て、この第二の値から第一の値を減算することにより、消費電力の少ない電気製品に交換することにより削減した電気料金を算出することができる。即ち、この電気料金削減額算出手段は、消費電力の少ない電気製品に交換したことにより削減できる電気料金を計算するものであれば良い。
【0022】
また、上記本発明において、消費電力の少ない電気製品とすることによる、不動産賃貸物件の賃借者の負担額の一部は、前記負担額算出手段で算定されることになるが、その算定に際して、当該負担額算出手段は、交換した消費電力の少ない電気製品の耐用年数と同じかそれよりも短い期間で、当該電気製品の交換に要した設備投資費用を除した金額であって、且つ当該電気製品に交換することにより削減した電気料金を超えない金額として算出することができる。これにより、不動産の貸主は消費電力の少ない電気製品の導入時における設備投資を、依り確実に回収することができる。
【0023】
また本発明では、前記不動産賃貸に関する料金算出システムに関連し、一般的な消費電力の削減量を保持する記憶装置を使用して、より簡易に消費電力料金の削減金額を算出することのできる不動産賃貸に関する料金算出システムを提供する。
【0024】
即ち、電気製品ごとに、当該電気製品を消費電力の少ない電気製品とすることにより削減できる消費電力を関連付けた消費電力削減データを具備する記憶手段と、不動産賃貸物件に予め設置されている電気製品の情報を入力する入力手段と、入力手段から入力された電気製品の情報に基づいて、消費電力削減データから、削減できる消費電力を抽出して集計すると共に、この集計結果に、一カ月当たりの使用時間と、単位電力量あたりの料金を乗算することにより、削減した電気料金を算出し、当該削減した電気料金に一定の割合を乗算することにより算出した金額を、不動産賃貸物件の賃借者の負担額の一部として算定する演算手段とを具備する、不動産賃貸に関する料金算出システムである。
【0025】
かかる料金算出システムを構成する記憶手段は、電気製品ごとに、当該電気製品を消費電力の少ない電気製品とすることにより削減できる消費電力を関連付けた消費電力削減データを保持している。かかる消費電力削減データは、データベース形式であってもファイル形式であっても良く、少なからず両者の関連付けが果たされていればよい。かかる消費電力削減データは、例えば、電気製品がLED電球である場合には、これに関連付けて、白熱電球をLED電球に変えたことにより削減できる消費電力を記録しておく。かかる電気製品は、LED電球のみならず、エアコン、電磁調理器、換気扇など住居用又は事業所用の不動産賃貸物件に付帯され得る各種の電気製品について記録することができる。また各種電気製品の内、対応する空間ごとに消費電力が異なる場合もあり、そのような場合には、不動産賃貸物件における広さ等に応じて、異なる規格とし、その規格ごとに別の消費電力を関連付けることもできる。例えば照明器具やエアコンの場合には、6畳用、10畳用、15平方メートル用等、その室内空間の広さに応じて別のレコード又はファイルとすることができる。
【0026】
この料金算出システムでは、かかる記憶手段を備えることから、不動産賃貸物件における付帯設備と間取りから、単に付帯する電気製品を選択することにより、簡易に消費電力量の削減量(削減した電気料金)を算定することができる。この為、例えば後述する不動産賃貸物件の広告を作成する際にも、消費電力の少ない電気製品を使用することにより削減できる電気料金を簡易に算定することができる。
【0027】
なお、上記の消費電力削減データは、電気製品ごと削減される消費電力を記録する他、当該電気製品を、一定期間(例えば一カ月)使用した場合の消費電力量を記録しておくこともできる。
【0028】
そして本発明では、上記の不動産賃貸に関する料金算出システムを用いることにより、消費電力の少ない電気製品に交換することにより削減した電気料金の範囲内で、不動産賃貸物件の賃借者の負担額の一部を算定する方法を提案する。当該方法を実施することにより、不動産の貸主は、消費電力の少ない電気製品についての設備投資を安心して行うことができ、一方で賃借者であるユーザは、電気料金を抑えることによる経済効果を享受することができる。
【0029】
また本発明では上記不動産賃貸に関する料金算出システムを使用することにより、消費電力の少ない電気製品によって享受できる経済効果を試算することができ、この経済効果を、不動産賃貸物件を賃貸しようとする者に示すことができる不動産賃貸物件の広告媒体を提供する。
【0030】
即ち、不動産賃貸物件の広告媒体であって、少なくとも不動産賃貸物件の賃貸料金を表示する賃貸料金表示欄と、当該不動産賃貸物件に予め設置されている電気製品の所定期間における平均的な電力使用料金である第一電気使用料金と、当該電気製品を、それよりも電気消費量の少ない電気製品に交換した時の前記所定期間における電力使用料金である第二電力使用料金との差である電力使用料金削減金額を表示する電力使用料金削減金額表示欄を備える不動産賃貸物件の広告媒体である。
【0031】
かかる広告媒体は、不動産会社の店舗に提示する紙媒体の広告の他、インターネット等により、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の表示装置に表示する広告媒体を含む。更に本発明における広告媒体は、貸与可能な不動産物件を知らせる為の媒体であって、少なくとも不動産賃貸物件の賃貸料金を含んでいる情報と定義づけることができ、更に間取り等を表示したものとすることができる。したがって、不動産会社が店舗内で、不動産賃貸を希望する者に対して提示する紙媒体や電子媒体も、本明細書における広告媒体に含まれる。
【0032】
このような電力使用料金削減金額を表示した不動産賃貸物件の広告媒体を提供することにより、不動産賃貸を希望する者は、家賃の他に、その賃貸物件に入居することにより受けることのできる経済効果を考慮して、不動産賃貸物件を選択することができる。この為、同じ賃貸料金の不動産物件を対比する場合において、単にLED照明付きとの表示がなされている広告媒体よりも、より確かな経済効果を確認した上で不動産賃貸物件を選択することができる。
【0033】
更に本発明では、パーソナルコンピュータ等の電子計算機を上記の不動産賃貸に関する料金算出システムとして動作させる為の電子計算機用プログラムを提供する。
【0034】
即ち、不動産賃貸物件に予め設置されている電気製品の平均的な消費電力である第一消費電力を算出する第一消費電力算出ステップと、当該電気製品を、それよりも消費電力の少ない電気製品に交換した時の電気製品の消費電力である第二消費電力を算出する第二消費電力算出ステップと、第一消費電力に対する第二消費電力の割合から消費電力削減率を算出する消費電力削減率算出ステップと、消費電力の少ない電気製品に交換した後における電気使用料金を、前記消費電力削減率で除算した値を算出し、この値から、消費電力の少ない電気製品に交換した後における電力使用量金を減算することにより、消費電力の少ない電気製品に交換することにより削減した電気料金を算出する、電気料金削減額算出ステップと、当該削減した電気料金の範囲内で不動産賃貸物件の賃借者の負担額の一部を算定する負担額算出ステップとを、パーソナルコンピュータ等の電子計算機に実行させる不動産賃貸に関する料金算出プログラムである。
【0035】
かかるプログラムによれば、消費電力の少ない電気製品に交換することにより得られる経済効果を具体的に算出し、その結果に基づいて不動産賃貸物件の賃借者の、不動産の貸主に対する負担額の一部を算定し、これを不動産の貸主が受領することができる。これにより、消費電力の少ない電気製品を導入した際の設備投資費用を回収することができ、所謂LED照明器具や省エネルギー家電の普及を促進することができる。
【0036】
そして本発明では、上記の様に消費電力の少ない電気製品に交換することにより得られる、賃借者側の経済上の利益を不動産の貸主に支払うようにした不動産賃貸物件の貸与方法を提供する。
【0037】
即ち、パーソナルコンピュータ等の電子計算機により、不動産賃貸物件に予め設置されている電気製品の所定期間における平均的な電力使用料金である第一電気使用料金を算出し、当該電気製品を、それよりも電気消費量の少ない電気製品に交換した時の前記所定期間における電力使用料金である第二電力使用料金を算出し、第一電気使用料金と第二電気使用料との差額を算出し、当該差額の一部を、不動産賃貸物件の賃借者の負担金として算出する不動産賃貸物件の貸与方法である。
【0038】
かかる不動産賃貸物件の貸与方法において、算出処理の実施は一覧表等に基づいた計算によって行う他、パーソナルコンピュータ等の電子計算機によって実施することができる。また、平均的な電力使用料金である第一電気使用料金は、一般家庭の平均的な生活パターンにおいて電気製品を使用した場合における電力使用量であり、各電化製品ごとの平均使用時間によって算出することができる。また、集合住宅である場合には、当該集合住宅に居住する世帯に対するアンケート結果の平均値として算出することができる。
【0039】
かかる不動産賃貸物件の貸与方法によれば、不動産賃貸物件に入居する際に、その物件の付帯設備を入居者(賃借者)が、消費電力の少ない電気製品に交換するか否かを判断することができ、貸主との間における合意を達成する上でも有効なものとなる。
【0040】
なお上記した本発明の全ての態様において、不動産賃貸物件の付帯設備となる電気製品が接続されるコンセントと、入居者(賃借者)が自ら設置する電気製品を接続するコンセントとを別にすることができ、また不動産賃貸物件の付帯設備となる電気製品が使用する電力を計測する電力量計を、それ以外の電気製品の電力使用量を計測する電力量計と別にしても良い。
【発明の効果】
【0041】
上記本発明によれば、不動産賃貸物件の付帯設備の様に、省エネルギー機器等の電気製品の設置者と、電気料金の支払者が一致しない場合であっても、省エネルギー機器等の電気製品を設置する際の多大な設備投資費用を、電気料金の削減による効果を得ている賃借者であるユーザから回収することが可能になり、これにより不動産賃貸物件の付帯設備として、消費電力の少ない電気製品を安心して導入することができ、当該省エネルギー電気製品の普及を増大させることができる。
【0042】
また、本発明によれば、消費電力の少ない電気製品の導入による経済上の利益を、数値で明示することができる。この為、当該電気製品の導入に際しての設備投資費用の回収方法として、直接的に賃借者であるユーザから直接的に金銭的に回収するだけでなく、そのような電気設備を導入することによる入居率の向上によっても達成することができる。即ち、不動産賃貸物件の広告媒体に、付帯設備により削減できる電気料金を明示することで、当該設備を付帯していることによる不動産賃貸物件の優位性を確保して、入居率を向上させ、設備投資費用の回収に充てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】第1の実施形態に係る不動産賃貸物件の貸与方法の全体の流れを示す略図
【図2】第2の実施形態に係る不動産賃貸物件の貸与方法の全体の流れを示す略図
【図3】電子計算機の構成の一例を示すブロック図
【図4】不動産賃貸に関する料金算出プログラムの処理を示すフローチャート
【図5】記憶手段に保持する(a)商品コード表のデータ構成を示す略図、(b)規格コード表のデータ構成を示す略図、(c)商品・規格対応表のデータ構成を示す略図
【図6】記憶手段に保持する消費電力削減データの構成を示す略図
【図7】表示装置における表示画面を示す略図
【図8】広告媒体の一例を示す略図
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下では、本実施の形態に係る不動産賃貸物件の貸与方法と、これを実現する不動産賃貸に関する料金算出システムと料金算出プログラム、および不動産賃貸物件の賃借者の負担額の一部を算定する方法と広告媒体の例を、図面を参照しながら説明する。
【0045】
先ず、本実施の形態に係る不動産賃貸物件の貸与方法は、消費電力の少ない電気製品(「省エネルギー電気製品」ともいう)とすることにより月々の電気料金を減らし、その減った金額の一部を家主が、この消費電力の少ない電気製品を導入することにより要した設備投資費用として回収するようにしたものである。
【0046】
そしてこのような不動産賃貸物件の貸与方法としては、電気事業者14に対する月ごとの電気料金の支払者に応じて、図1又は図2のそれぞれに示した実施の形態とすることができる。
【0047】
即ち、図1に示した実施の形態は、月ごとの電気料金を賃借者12が負担し、新たな設備投資により削減できた電気料金分の一部を、賃借者12負担金として貸主10に支払う形態となっている。具体的には、LED照明や、いわゆる省エネ基準達成率やエネルギー消費効率の高い電気製品(エアコンや調理器具等)を不動産賃貸物件に設置するために、家主である貸主10がその設備投資費用を負担する。これにより、省エネルギー電気製品に変更する前においては電気料金(A)が必要であったところ、省エネルギー電気製品の導入により、それよりも低い電気料金(B)となる。その結果、ユーザである賃借者12は、従前に電気料金(A)から新たな電気料金(B)を減じた額について経済上の利益を受けることができる。そこで、この内の一部の料金(C)を賃借者12負担金として貸主10に支払うことにより、貸主10は設備投資費用を回収することができる。そして、この場合であっても、賃借者12は従前の電気料金(A)から、新たな電気料金(B)と賃借者12負担金(C)を減じた残りの金額について経済上の利益を得ることができる。よって、このような不動産賃貸物件の貸与方法によれば、貸主10及び賃借者12の双方において経済上の利益を受けることができ、更にその不動産賃貸物件全体におけるエネルギー消費量を大きく削減することができる。
【0048】
また、図2に示した実施の形態では、特に電気事業者14に対する電気料金の支払いを家主である貸主10が負担する形態となっている。即ちこの実施の形態では、賃借者12が使用した電気料金(B)は、家賃などと一緒に貸主10に支払う形となる。この時、省エネルギー電気製品とすることにより削減した電気料金の一部として算出される賃借者12負担金(C)も家主に支払われることになる。貸主10は賃借者12から支払われた新たな電気料金(B)、賃借者負担金(C)、及び家賃などの中から、電気事業者14に対して新たな電気料金(B)を支払い、賃借者負担金(C)を省エネルギー電気製品の設置に際しての設備投資費用に充当することができる。特に、この実施の形態においては、その不動産賃貸物件の付帯設備として設置した電気製品の使用量を定額とし、その中から電気事業者14に新たな電気料金(B)支払うと共に、残金を賃借者負担金(C)に充当することもできる。
【0049】
上記2つの実施の形態において、賃借者負担金(C)の算定に際しては、当然のことながら、従前の電気料金(A)から新たな電気料金(B)を減じた範囲内である事が必要であり、これは削減した電気料金の他、その電気製品の導入に際して要した費用(設備投資費用)や、その電気製品の耐用年数、更に従前の電気製品を使用していた場合に要する費用(補修や消耗品の交換費用)等を考慮した上で、適宜算出することができる。また、その不動産賃貸物件に、複数の省エネルギー電気製品を新たに設置した場合には、それぞれの電気製品についての導入費用と、耐用年数を考慮して、各電気製品ごとに算出した賃借者負担金(C)の合計が、従前の電気料金(A)から新たな電気料金(B)を減じた範囲内である事が必要である。
【0050】
以上の様な不動産賃貸物件の貸与方法によれば、不動産賃貸物件のオーナーである貸主10も安心して省エネルギー電気製品を導入することができ、一方で賃借者12であるユーザは、貸主10が設置した省エネルギー電気製品による電気料金の削減効果を得ることができる。
【0051】
なお、上記の実施の形態において、不動産賃貸物件は住居用の物件である他、事業所用の物件であっても良く、また入居者である賃借者12が所有する電気製品によって使用した電気料金を含めて、定額にすることも可能である。更に、賃借者負担金(C)は、設備投資費用を回収した後には、これを無くす他、その後においても継続的に徴収することも可能である。
【0052】
次に、この不動産賃貸物件の貸与方法を実施する際に有用な不動産賃貸に関する料金算出システム(以下では「不動産賃貸料金算出システム」とする)と料金算出プログラムの実施の形態を、図3〜7を参照しながら具体的に示す。
【0053】
図3はこの不動産賃貸料金算出システムを構成するコンピュータのハードウエア構成の一例を示している。この図3に基づいて本実施の形態に係る不動産賃貸料金算出システムとして用いられるコンピュータのハードウエア構成の例について説明する。ただし、図3のコンピュータ500は、不動産賃貸料金算出システム10の代表的な構成を例示したにすぎない。
【0054】
コンピュータ500は、CPU501、メモリ502、音声出力装置503、ネットワークインタフェース504、ディスプレイコントローラ505、ディスプレイ506、入力機器インタフェース507、キーボード508、マウス509、外部記憶装置510、外部記録媒体駆動装置511、およびこれらの構成要素を互いに接続するバス512を含んで構成されている。
【0055】
CPU501は、コンピュータ500の各構成要素の動作を制御し、OSの制御下で、不動産料金算出プログラムの実行をコントロールし、その動作を制御するものであり、本明細書における第一消費電力算出手段、第二消費電力算出手段、消費電力削減率算出手段、電気料金削減額算出手段、負担額算出手段に相当する。メモリ502は通常、不揮発性メモリであるROM(Read Only Memory)、および揮発性メモリであるRAM(Random Access Memory)から構成され、記憶部に相当する。ROMには、コンピュータ500の起動時に実行される不動産料金算出プログラム等が格納される。RAMには、CPU501で実行され、特に不動産賃貸料金算出システム10にあっては、本発明における賃借者負担金(C)の算出などを実現するためのプログラムや、それらのプログラムが実行中に使用するデータ(たとえば、データベースやファイルシステムから読み出されたデータ)が一時的に格納される。
【0056】
音声出力装置503は、スピーカ等の、音声を出力する機器であり、ネットワークインタフェース504は、ネットワーク520に接続するためのインタフェースである。ディスプレイコントローラ505は、CPU501が発する描画命令を実際に処理するための専用コントローラである。ディスプレイコントローラ505で処理された描画データは、一旦グラフィックメモリに書き込まれ、その後、表示部としてのディスプレイ506に出力される。かかるディスプレイ506は、たとえば、LCDやCRTで構成される表示装置である。
【0057】
入力機器インタフェース507は、キーボード508やマウス509、或いはタッチパッドなどの入出力デバイスから入力された信号を受信して、その信号パターンに応じて所定の指令をCPU501に送信する。キーボード508やマウス509は、プログラムの実行や操作を行う場合に必要となる。
【0058】
外部記憶装置510も本明細書における記憶手段の範疇に含まれる。かかる外部記憶装置510は、たとえばハードディスクドライブ(HDD)のような記憶装置で構成することができる。この装置内には上述したプログラムやデータが記録され、実行時に、必要に応じてそこからメモリ502のRAMにロードされる。特に、不動産賃貸料金算出システムにあっては、コンピュータで実行する為の不動産料金算出プログラム、およびこのプログラムが使用するデータを格納しておくことができる。
【0059】
外部記録媒体駆動装置511は、CD(Compact Disc)、MO(Magnet−Optical Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)などの可搬型の外部記録媒体530の記録面にアクセスして、そこに記録されているデータを読み取る装置である。
【0060】
以上の様な構成からなるパーソナルコンピュータ等の電子計算機では、そのハードウエア資源を利用して、例えば図4のフローチャートに示すような処理を実行することにより、不動産賃貸に関する料金算出システムとして機能させることができる。
【0061】
この図4は、不動産料金算出プログラムの一例における処理工程を示しており、実行に際しては、先ず不動産賃貸物件に予め設置されている電気製品を特定する「既存電気製品の選択」ステップS11を実行する。このステップでは、貸与する不動産賃貸物件に設置してある、既存設備としての電気製品を特定するものであり、例えば電球や蛍光灯などの照明器具等の電気製品のワット数(消費電力)や数、更に望ましくは各電気製品使用時間を特定するものである。かかる特定は、キーボード508ドやマウス509などの入力装置からの入力により行うことができる。特にこのステップS11で特定される既存電気製品は、省エネルギー電気製品と交換する予定の電気製品とすることができる。
【0062】
そしてこの「既存電気製品の選択」ステップS11の入力結果を受けて、電子計算機の中央処理装置(CPU501)は、既存電気製品の消費電力である第一消費電力を算出する第一消費電力算出ステップS12を実行する。この第一消費電力算出ステップS12では、実際に入力された電気製品の消費電力から算出することができる。またこの段階で消費電力量(消費電力×使用時間)を算出することもでき、その場合には消費電力量と使用時間から算出する他、その電気製品における平均的な消費電力量を記憶手段である外部記憶装置510に記録しておき、これを読み出すことによっても行うことができる。
【0063】
そして電子計算機の中央処理装置(CPU501)は、「既存電気製品の選択」ステップS11における入力結果を取得して、入力により特定された電気製品を、より消費電力の少ない電気製品(以下「省エネルギー対応製品」ともいう)に交換した場合における電気製品の消費電力である第二消費電力を算出する第二消費電力算出ステップS13を実行する。この第二消費電力算出ステップS13では、電気製品に対応させて、削減可能な消費電力(又は消費電力量)を関連付けて記憶したデータベースやファイル形式の消費電力削減データを、記憶手段である外部記憶装置510等から読み出し、この情報を基に計算することができる。特に、この消費電力削減データが電気製品ごとの消費電力を記憶している場合には、その使用時間を入力するか、一般的な使用状態における平均使用時間を乗算して、消費電力量を算出することができる。
【0064】
この第二消費電力算出ステップS13で使用する消費電力削減データは、例えば図6に示すような形で構成することができる。この図6に示すデータ形式では、電気製品の種類を特定する商品コードと、その電気製品の出力や用途などを特定する規格コードとの組み合わせにより電気製品を特定し(図5)、この電気製品ごとに削減できる消費電力を保持するように構成している。特にこの例では、電気製品に対して消費電力(W)を関連付けていることから、消費電力量(Wh)を算出する為には、一カ月当たりの実際の使用時間や、一カ月当たりの平均的な使用時間の情報の入力を要求するか、あるいは別途記憶手段に所定の使用時間を保持し、これを読み出すことが必要になる。
【0065】
なお、この図6に示しているような「削減できる消費電力」については、市販されている製品同士の消費電力同士の差を求める他、例えば消費電力量(Wh)を関連付ける場合には、一定の基準によって算出されている値、例えばエアコンにおいては社団法人日本冷凍空調工業会規格(JRA4046−2004:ルームエアコンディショナーの期間消費電力量算出基準)に基づいて試算した値を使用することができる。
【0066】
以上の様に、第一消費電力算出ステップS12と第二消費電力算出ステップS13を実施した後の演算結果は、例えばメモリ502に保持しておき、それぞれの演算結果である第一消費電力に対する第二消費電力の割合から消費電力削減率を算出する消費電力削減率算出ステップS14を実行する。なおこの消費電力削減率算出ステップS14では、第二消費電力に対する第一消費電力の割合を消費電力削減率とすることもでき、何れの計算を実行するかにより、以下の電気料金削減額算出ステップでの演算処理内容が変わってくる。
【0067】
上記消費電力削減率算出ステップS14で消費電力削減率すると、これをメモリ502に保持しておき、この値を用いて消費電力の少ない電気製品に交換することにより削減した電気料金を算出する、電気料金削減額算出ステップS15を実行する。
【0068】
この電気料金削減額算出ステップS15は、消費電力の少ない電気製品に交換した後における電気使用料金を、前記消費電力削減率で除算した値から、消費電力の少ない電気製品に交換した後における電力使用量金を減算することができる。より具体的には、消費電力削減率として第一消費電力に対する第二消費電力の割合を算出した場合には、消費電力の少ない電気製品に交換した後における一定期間における消費電力量(消費電力×使用時間)と、単位電力量あたりの料金とを乗算して得た第一の値を、前記消費電力削減率で除算して第二の値を得て、この第二の値から第一の値を減算することにより、消費電力の少ない電気製品に交換することにより削減した電気料金を算出することができる。また、消費電力削減率として第二消費電力に対する第一消費電力の割合を算出した場合には、消費電力の少ない電気製品に交換した後における一定期間における消費電力量(消費電力×使用時間)と、単位電力量あたりの料金とを乗算して得た第一の値と、前記消費電力削減率とを乗算して第二の値を得て、この第二の値から第一の値を減算することにより、消費電力の少ない電気製品に交換することにより削減した電気料金を算出することができる。
【0069】
この電気料金削減額算出ステップS15を実行する事により、省エネルギー電気製品に変更した場合における電気料金の削減額を算定することができ、この算定額に基づいて、次に不動産賃貸物件の賃借者の負担額の一部を算定する負担額算出ステップS16を実行する。
【0070】
この負担額算出ステップS16では、この削減した電気料金の範囲内で不動産賃貸物件の賃借者の負担額の一部を算定するものであり、その割合や金額については、新たに設置した省エネルギー電気製品の設置費用や耐用年数の他、従来の電気製品を使用していた場合における維持費用を加味して算定することができる。
【0071】
そこでこの計算式の例を、100W型白熱電球(120Lux)と、これに相当する光量のLED電球(130Lux)とで比較する場合を以下に示す。
【0072】
先ず、白熱電球とLED電球のそれぞれについての月間電気代の算出は、消費電力(W)×1Wh当りの電気代(円/Wh)×1日の点灯時間(時間)×月間点灯日数(日)×使用個数(個)により算出可能である。
【0073】
そこで、白熱電球の場合には、消費電力(98W)×1Wh当りの電気代(0.022円/Wh)×1日の点灯時間(8時間)×月間点灯日数(31日)×使用個数(1個)=白熱電球月間電気使用料金(535円)となる。
【0074】
一方、LED電球の場合には、消費電力(4W)×1Wh当りの電気代(0.022円/Wh)×1日の点灯時間(8時間)×月間点灯日数(31日)×使用個数(1個)=LED電球月間電気使用料金(22円)となる。
【0075】
したがって、両者の差である白熱電球年間電気使用料金(535円)−LED電球年間電気使用料金(22円)の513円を電気料金削減額として算出することができる。
【0076】
なお、上記の電気料金削減額の算出に際しては、白熱電球消費電力(98W)に対するLED電球消費電力(4W)の割合(4.1%)を算出し、前記LED電球月間電気使用料金(22円)をこの割合で除算した値(536円)から、LED電球月間電気使用料金(22円)を減算することによっても算出できる。
【0077】
また、この照明器具を使用する為の月間あたりの維持費の算出は、電球単価(円)×1日の点灯時間(時間)×月間点灯日数(日)×使用個数(個)÷電球定格寿命(時間)により算出可能である。
【0078】
そこで白熱電球の場合には、電球単価(680円)×1日の点灯時間(8時間)×月間点灯日数(31日)×使用個数(1個)÷電球定格寿命(2,000時間)=白熱電球月間ランプ使用金額(84円)となる。
【0079】
一方、LED電球の場合には、電球単価(5,700円)×1日の点灯時間(8時間)×月間点灯日数(31日)×使用個数(1個)÷電球定格寿命(50,000時間)=LED電球月間ランプ使用金額(28円)となる。
【0080】
ここで、一般的には不動産賃貸物件に付帯された設備における電球などの消耗品は、賃借者12の負担によって行われることから、仮にLED電球に交換しない場合には、白熱電球月間電気使用料金(535円)+白熱電球月間ランプ使用金額(84円)の合計が賃借者12の負担額(619円)となる。これに対して、LED電球を設置することにより電気代金はLED電球月間電気使用料金(22円)となる。よってLED電球とすることにより、従前における賃借者12の負担額(619円)からLED電球月間電気使用料金(22円)を減算した金額(597円)が電気料金等削減額(電気料金削減額と電気製品の使用料金)となる。
【0081】
そこで、この電気料金等削減額(597円)を超えない範囲で、かつ貸主10が負担したLED電球の設置費用から算出されるLED電球月間ランプ使用金額(28円)を下回らない範囲で、不動産賃貸物件の賃借者12の負担額の一部を算定するものである。例えば、電気料金等削減額(597円)から、設備投資費用であるLED電球月間ランプ使用金額(28円)を減じた金額(569円)を折半した場合には、不動産賃貸物件の賃借者12の負担額の一部は約285円となる。この場合であっても、不動産賃貸物件の賃借者12の負担額は、LED電球月間ランプ使用金額(28円)と、この負担金(285円)の合計である313円であることから、従前における負担額(619円)よりも大幅に削減できることになる。なお、この賃借者12の負担金は月ごとに一定の金額として、家賃などの賃料に含めることもできる。
【0082】
次に、図5〜7を参照しながら、この不動産賃貸に関する料金算出システムを使用する際の画面操作と情報の読み出し処理を説明する。先ず不動産賃貸料金算出プログラムの実行により、電子計算機の表示装置に図7に示すような画面20を表示させる。この画面20上には、不動産賃貸物件の情報を表示する物件情報表示欄21を設け、その中には物件名、賃料、間取り、部屋の大きさ、付帯設備等の不動産賃貸物件の基本情報を表示する。そして使用者は、この不動産賃貸物件の基本情報を参照しながら、その物件に付帯されている、省エネルギー電気製品の情報(電気製品名)を入力する。この実施の形態では、プルダウン形式で当該電気製品名を選択できるように構成されており、当該製品名は、予め記憶手段に保持されている商品コード表に記述された電気製品名を、電気製品名表示欄22にプルダウン項目として表示するように構成する。
【0083】
そしてこの電気製品名を特定した後には、この電気製品に対応する規格を選択する操作を行う。この時、電子計算機においては、図5(A)に示す商品コード表から、選択された電気製品名に対応する商品コードを読み出し、この商品コードを検索キーとして、商品・規格対応表を検索し、この商品コードに対応する規格コードを抽出してメモリに読み出す。そして読み出した規格コードに対応する規格を読み出し、これを画面20の規格表示欄23にプルダウン形式で表示する。
【0084】
この時、商品コードに対応する規格コードは、その電気製品特有の単位として表示できるように構成されており、例えば照明器具やエアコンであれば消費電力量と室内の広さの規格を表示する規格コードが関連付けられており、電磁調理器などにおいては消費電力量の規格を表示する規格コードが関連付けられている。これにより、その製品との関係で意味のない規格を選択する可能性を阻止することができる。
【0085】
そしてこのプルダウン項目から規格を選択することにより、それに対応する規格コードがメモリに保持される。よって、ここまでの操作により、商品コードと規格コードとがメモリに保持されることになる。そこで、この商品コードと規格コードとを検索キーとして図6に示す消費電力削減データを走査して、対応する「削減できる消費電力」の値をメモリに読み出す。なお、この削減できる消費電力の値は、例えば40W型の電球の場合には、白熱電球の消費電力36WからLED電球の消費電力5Wを減じた値として設定している。
【0086】
そして個数入力欄24に対する入力手段からの入力による電気製品の個数の情報、および時間入力欄25に対する、一カ月当たりの平均的な使用時間の入力情報を取得し、これらを「削減できる消費電力」の値に乗算し、その結果を「削減できる消費電力表示欄に出力する。なお、この電気製品名と規格は、複数の乱に重複して入力することもでき、例えば同じ電気製品であっても、居間用と台所用となど、使用する空間ごとに分けて入力することもできる。
【0087】
そして各電気製品、及び規格ごとに削減できる消費電力を算出した後においては、その合計を集計し、これに電力事業者ごとに定められる1Wh当りの電気代を乗算して削減できる電気代を算出し、その値を画面20上の「削減できる電気料金」欄に出力する。
【0088】
したがって、その不動産貸与物件を借りるか借りないかの判断に際して、単に間取りや賃料だけでなく、付帯設備によって享受できる間接的な経済効果を判断基準に組み込むことができ、新たな観点で不動産賃貸物件を選択することができる。
【0089】
図8は、上記の様にして算出した省エネルギー電化製品を使用することによる経済効果を、賃貸を予定するユーザに対して明確に表示することのできる不動産の広告媒体をしめしており、その中には、従前における不動産広告と同じように、その不動産賃貸物件に関する情報を表示する。かかる情報としては、物件名や、賃料、駅までの距離、契約の条件等、様々な情報を掲載することができる。ただし、本実施の形態に係る広告媒体では、従前における不動産広告媒体に対して、更に電力省料金削減金額を表示する欄30を設けており、これにより、ユーザは直感的に当該不動産賃貸物件の優位性を理解することができる。即ち、不動産賃貸を受けようとする者は、その物件の住居環境や間取りの他、当然のことながら賃料(家賃)を判断対象にするが、本実施の形態に係る不動産広告媒体の様に、実質的に賃料(家賃)を減じることができる情報を掲載することにより、他の物件よりも優位性を獲得することができる。
【0090】
そして、このような電力省料金削減金額を表示する欄30を設けることにより、不動産賃貸物件を借りようとするユーザは、月々の負担額を明確にした上で、その不動産賃貸物件を選択することができる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、不動産賃貸物件の流通促進に寄与するのみならず、省エネルギーの電気製品の不動産賃貸物件における普及の向上をもたらすことができ、更に省エネルギーの電気製品の流通量の拡大にも寄与することができる。
【符号の説明】
【0092】
10 貸主
12 賃借者
14 電気事業者
20 画面
21 物件情報表示欄
22 電気製品名表示欄
23 規格表示欄
24 個数入力欄
25 時間入力欄
500 コンピュータ
502 メモリ
505 ディスプレイコントローラ
506 ディスプレイ
507 入力機器インタフェース
508 キーボード
509 マウス
510 外部記憶装置
S11 既存電気製品の選択ステップ
S12 第一消費電力算出ステップ
S13 第二消費電力算出ステップ
S14 消費電力削減率算出ステップ
S15 電気料金削減額算出ステップ
S16 負担額算出ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不動産賃貸物件に予め設置されている電気製品の平均的な消費電力である第一消費電力を算出する第一消費電力算出手段と、
当該電気製品を、それよりも消費電力の少ない電気製品に交換した時の電気製品の消費電力である第二消費電力を算出する第二消費電力算出手段と、
第一消費電力に対する第二消費電力の割合から消費電力削減率を算出する消費電力量削減率算出手段と、
消費電力の少ない電気製品に交換した後における一定期間における消費電力量(消費電力×使用時間)と、単位電力量あたりの料金とを乗算して得た第一の値を、前記消費電力削減率で除算して第二の値を得て、この第二の値から第一の値を減算することにより、消費電力の少ない電気製品に交換することにより削減した電気料金を算出する、電気料金削減額算出手段と、
当該削減した電気料金の範囲内で不動産賃貸物件の賃借者の負担額の一部を算定する負担額算出手段とを具備する、不動産賃貸に関する料金算出システム。
【請求項2】
前記負担額算出手段は、交換した消費電力の少ない電気製品の耐用年数と同じかそれよりも短い期間で、当該電気製品の交換に要した設備投資費用を除した金額であって、且つ当該電気製品に交換することにより削減した電気料金を超えない金額として算出する、請求項1に記載の料金算出システム。
【請求項3】
電気製品ごとに、当該電気製品を消費電力の少ない電気製品とすることにより削減できる消費電力を関連付けた消費電力削減データを具備する記憶手段と、
不動産賃貸物件に予め設置されている電気製品の情報を入力する入力手段と、
入力手段から入力された電気製品の情報に基づいて、消費電力削減データから、削減できる消費電力を抽出して集計すると共に、1月あたりの使用時間を乗算し、この計算結果に単位電力量あたりの料金を乗算して削減した電気料金を算出し、当該削減した電気料金に一定の割合を乗算することにより算出した金額を、不動産賃貸物件の賃借者の負担額の一部として算定する演算手段とを具備する、不動産賃貸に関する料金算出システム。
【請求項4】
前記不動産賃貸物件の賃借者の負担額の一部の算定に際しては、設置した消費電力の少ない電気製品の耐用年数、および従前の電気製品を使用している場合に要するメンテナンス費用を加算して算出される、請求項1〜3の何れか一項に記載の不動産賃貸に関する料金算出システム。
【請求項5】
不動産賃貸物件における賃借者の負担金額の少なくとも一部を算定する方法であって、
請求項1〜4の何れか一項に記載の不動産賃貸に関する料金算出システムを用いて、消費電力の少ない電気製品に交換することにより削減した電気料金の範囲内で、不動産賃貸物件の賃借者の負担額の一部を算定する方法。
【請求項6】
不動産賃貸物件の広告媒体であって、
少なくとも不動産賃貸物件の賃貸料金を表示する賃貸料金表示欄と、
当該不動産賃貸物件に予め設置されている電気製品の所定期間における平均的な電力使用料金である第一電気使用料金と、当該電気製品を、それよりも電気消費量の少ない電気製品に交換した時の前記所定期間における電力使用料金である第二電力使用料金との差である電力使用料金削減金額を表示する電力使用料金削減金額表示欄を備えることを特徴とする、不動産賃貸物件の広告媒体。
【請求項7】
不動産賃貸物件に予め設置されている電気製品の平均的な消費電力である第一消費電力を算出する第一消費電力算出ステップと、
当該電気製品を、それよりも消費電力の少ない電気製品に交換した時の電気製品の消費電力である第二消費電力を算出する第二消費電力算出ステップと、
第一消費電力に対する第二消費電力の割合から消費電力削減率を算出する消費電力削減率算出ステップと、
消費電力の少ない電気製品に交換した後における電気使用料金を、前記消費電力削減率で除算した値から、消費電力の少ない電気製品に交換した後における電気使用料金を減算することにより、消費電力の少ない電気製品に交換することにより削減した電気料金を算出する、電気料金削減額算出ステップと、
当該削減した電気料金の範囲内で不動産賃貸物件の賃借者の負担額の一部を算定する負担額算出ステップとを電子計算機に実行させる不動産賃貸に関する料金算出プログラム。
【請求項8】
電子計算機により、
不動産賃貸物件に予め設置されている電気製品の所定期間における平均的な電力使用料金である第一電気使用料金を算出し、
当該電気製品を、それよりも電気消費量の少ない電気製品に交換した時の前記所定期間における電力使用料金である第二電力使用料金を算出し、
第一電気使用料金と第二電気使用料との差額を算出し、
当該差額の一部を、不動産賃貸物件の賃借者の負担金として算出することを特徴とする、不動産賃貸物件の貸与方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−65218(P2013−65218A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203896(P2011−203896)
【出願日】平成23年9月17日(2011.9.17)
【出願人】(594057314)翼システム株式会社 (22)