不可視インキによるマークの真偽鑑定方法

【目的】媒体上に赤外線吸収性印刷インキで印刷された読取りチェック用のバーコードや秘密情報等のマークの真偽を確実に判定することにある。
【構成】赤外線吸収インキにより印刷されたバーコードや秘密情報等の読取り用のマーク４の上にプロセスインキを読取りマークと同じ大きさで重ね刷りした有価証券１のマーク４の真偽を鑑定するに際して、マーク４に赤外光と可視光を照射して、赤外光が吸収し、可視光が反射したことを条件に真正品と判断する。

【発明の詳細な説明】
【０００１】
【産業上の利用分野】本発明は、有価証券等に使用される不可視インキによるマークの真偽鑑定方法に関する。
【０００２】
【従来の技術】最近、株券、債券、小切手、商品券等の有価証券やＩＤカード、クレジッドカード、キャッシュカード等の金券に代る関連商品においては、機械読取り可能なバーコードや秘密情報等のマークが媒体に印刷又は磁気記録されている。
【０００３】ところで、かかる有価証券や金券に代る関連商品にブラックライトによる印刷又は磁気記録されたバーコードや秘密情報が改ざんされることがあるため、そのバーコードや秘密情報の真偽を鑑定する必要がある。従来、この種のバーコードや秘密情報を機械を用いてその真偽をチェックする場合、蛍光、発光の有無、磁気記録の読取り等がある。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】しかし、ブラックライトは容易に入手できるので、媒体のどこに蛍光インキが入っているかが直ぐに分かってしまい、また磁気記録も広く知られているので、偽造されやすい。
【０００５】そこで、最近では赤外線吸収性印刷インキの開発に伴って、このインキでバーコードや秘密情報を媒体に印刷するようしたものがある。この赤外線吸収性印刷インキは、赤外領域に対しては十分な吸収特性を有するが、可視領域には吸収のない性質を有している。
【０００６】従って、このような赤外線吸収性印刷インキで読取りチェック用のバーコードや秘密情報を媒体に印刷すれば、これらが媒体のどこにあるのか分からないため、偽造や改ざんを防止する上では有効である。
【０００７】しかし、読取器による赤外線領域のチェックだけでは、バーコードや秘密情報がカーボンブラックを含むスミインキで印刷されている場合、可視領域及び赤外線領域の何ずれに対しても吸収してしまうため、スミインキにより印刷したものでも真正品と判断してしまうという問題がある。
【０００８】本発明は、媒体上に赤外線吸収性印刷インキで印刷された読取りチェック用のバーコードや秘密情報等のマークの真偽を確実に判定することができる不可視インキによるマークの真偽鑑定方法を提供することを目的とする。
【０００９】
【課題を解決するための手段】本発明は上記の目的を達成するため、次のような方法により不可視インキによるマークの真偽を鑑定するものである。請求項１に記載の発明は、赤外線吸収インキにより印刷されたバーコードや秘密情報等の読取り用のマークの上にプロセスインキを読取りマークとを重ね刷りした媒体のマークの真偽を鑑定するに際して、マークに赤外光と可視光を照射して、赤外光が吸収し、可視光が反射したことを条件に真正品と判断する。
【００１０】請求項２に記載の発明は、赤外線吸収インキにより印刷されたバーコードや秘密情報等の読取り用のマークの上にプロセスインキを読取りマークとを重ね刷りした媒体のマークの真偽を鑑定するに際して、まずマークに赤外光を照射して赤外領域の吸収をチェックし、赤外光を吸収したかどうかを判断し、赤外光を吸収したことを条件にマークに赤色の可視光を照射して可視領域の吸収をチェックし、可視光を反射したことで真正品と判断する。
【００１１】
【作用】請求項１に対応する発明にあっては、マークに赤外光と可視光を照射して、赤外光が吸収し、可視光が反射したとき真正品と判断するので、それが偽造品であるか否かを判断することができ、また可視領域のチェックにより可視光の反射によりマークの真偽を判断しているので、スミインキにより印刷したものと区別することが可能となる。
【００１２】また、請求項２に対応する発明にあっては、赤外領域の吸収をチェックした後に可視領域のチェックを行うようにしているので、可視インキによりマークを真似ても赤外領域の吸収をチェックするだけで、マークの偽造を直ちに判断することができる。
【００１３】
【実施例】以下本発明の一実施例を図面を参照して説明する。図２は、本発明方法でマークの真偽を鑑定する対象物の構成例を示すものである。即ち、図２に示すように媒体として有価証券１にバーコードや秘密情報等の読取り用のマークを赤外線吸収インキ２により印刷し、その上にプロセスインキ（例えば赤色）３を読取りマークと例えば同じ大きさで重ね刷りする。従って、外観上は赤いマークだけが印刷されているように見える。
【００１４】ここで、赤外線吸収インキは赤外領域に対しては十分な吸収特性を有するが、可視領域には吸収のない性質を有する不可視インキであり、またプロセスインキは可視領域に対して吸収し、赤外領域では吸収しない隠蔽用インキとして用いている。従って、この隠蔽用インキとしては、それ単独の色と赤外線吸収インキに重ねた時の色との差が少ないものが望ましい。
【００１５】図１は上記のように有価証券１に印刷されたバーコードや秘密情報等のマークの読取装置の構成例を示すものである。図１において、有価証券１上のマーク４に対して赤外光を照射する第１の発光素子５と、同様にマーク４に対して可視光を照射する第２の発光素子６及びマーク４に対して照射された赤外光及び可視光の吸収しない波長の反射光を検知する受光素子７から構成され、この受光素子７で検知した可視光〜赤外光を電気信号に変換して演算処理装置８に入力し、マークの真偽鑑定に必要な演算処理を実行するものである。
【００１６】次にその作用を図３に示すフローチャートを参照しながら述べる。いま、可視インキ（赤色）として用いられたプロセスインキは、赤色の波長が図４に示すように例えば４００ｎｍから６００ｎｍの領域で吸収（反射率が小さい）し、これより波長が大きくなると反射（反射率が大きい）を示し、また可視インキとして用いられた赤外線吸収インキは赤外領域の波長が７２０ｎｍより徐々に吸収を見せ、例えば１０００ｎｍで最大の吸収率となるものが選定されているものとする。
【００１７】このような条件下で第１の発光素子５よりマーク４に対して赤外光を照射し、その反射を受光素子７により受光すると、これを電気信号に変換して演算処理装置８に入力する。
【００１８】この演算処理装置８では、ステップＳ１にて赤外領域の吸収をチェックし、ステップＳ２により例えば１０００ｎｍで吸収率が最大を示めせば真券と判断して、ステップＳ３に進み、また赤外領域の吸収を示さない場合にはステップ６にて偽造品と判断してその旨を出力する。
【００１９】次にステップＳ２により真券であると判定されると、第１の発光素子５よりマーク４に対して赤色光を照射し、その反射を受光素子７により受光すると、これを電気信号に変換して演算処理装置８に入力する。
【００２０】すると演算処理装置８では、ステップＳ３にて可視領域の吸収をチェックし、ステップＳ４により例えば赤色の波長が６５０ｎｍで反射を示せばステップＳ５により真正品と判断し、反射を示さなければステップＳ６にて偽造品と判断してその旨を出力する。
【００２１】このように本実施例では、赤外線吸収インキ２により印刷されたバーコードや秘密情報等の読取り用のマークの上にプロセスインキ（例えば赤色）３を読取りマークとを重ね刷り（本例では読取りマークと同じ大きさで重ね刷り）した有価証券１のマークの真偽を鑑定するに際して、マークに赤外光を照射して赤外領域の吸収をチェックし、赤外光を吸収したことで真券と判断し、さらにマークに赤色の可視光を照射して可視領域の吸収をチェックし、可視光を反射したことで真正品と判断するようにしたので、例えば赤色の可視インキによりマークを真似ても赤外領域の吸収をチェックするだけで、それが偽造品であることを直ちに判断できる。
【００２２】また、バーコードや秘密情報がカーボンブラックを含むスミインキで印刷されている場合、可視領域及び赤外線領域の何ずれに対しても吸収する特性を有しているため、赤外線領域のチェックだけではその真偽を判断できないが、本実施例では可視領域のチェックにより可視光の反射によりマークの真偽を判断しているので、スミインキにより印刷したものと区別することが可能となり、スミインキで印刷されたマークを真券と判断することがなくなる。
【００２３】なお、上記実施例では、赤外領域の吸収チェックをした後に可視領域の吸収チェックをしたが、その順序を逆にしても真正品と偽造品とを判断することができる。
【００２４】また、上記実施例では第１の発光素子より赤外光を照射し、第２の発光素子より可視光を照射するようにしたが、図５に示すように赤外光と可視光を含む光を照射する発光素子９を設けると共に、発光素子９からの光路に面して赤外光のみを透過するフィルタ１０Ａと可視光のみを透過するフィルタ１０Ｂを挿脱可能に設け、フィルタ１０Ａの使用後フィルタ１０Ｂに切換えて使用するようにしてもよい。
【００２５】
【発明の効果】以上述べたように本発明によれば、媒体上に赤外線吸収性印刷インキで印刷された読取りチェック用のバーコードや秘密情報等のマークの真偽を確実に判定することができる不可視インキによるマークの真偽鑑定方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明方法を説明するためのマークの読取装置の構成例を示す図。
【図２】本発明方法でマークの真偽を鑑定する対象物の構成例を示す図。
【図３】本発明方法の一実施例を説明するためのフローチャート。
【図４】可視インキと不可視インキの赤外光と可視光の吸収率を示す特性曲線図。
【図５】本発明方法を説明するための他のマークの読取装置の構成例を示す図。
【符号の説明】
１……有価証券、２……赤外線吸収インキ、３……プロセスインキ、４……マーク、５……第１の発光素子、６……第２の発光素子、７……受光素子、８……演算処理装置。

【特許請求の範囲】
【請求項１】赤外線吸収インキにより印刷されたバーコードや秘密情報等の読取り用のマークの上にプロセスインキを読取りマークとを重ね刷りした媒体のマークの真偽を鑑定するに際して、マークに赤外光と可視光を照射して、赤外光が吸収し、可視光が反射したことを条件に真正品と判断することを特徴とする不可視インキによるマークの真偽鑑定方法。
【請求項２】赤外線吸収インキにより印刷されたバーコードや秘密情報等の読取り用のマークの上にプロセスインキを読取りマークとを重ね刷りした媒体のマークの真偽を鑑定するに際して、まずマークに赤外光を照射して赤外領域の吸収をチェックし、赤外光を吸収したかどうかを判断し、次に赤外光を吸収したことを条件にマークに赤色の可視光を照射して可視領域の吸収をチェックし、可視光を反射したことで真正品と判断することを特徴とする不可視インキによるマークの真偽鑑定方法。

【図１】