説明

不可視情報印刷シート

【課題】
不可視情報が視認されず、硬貨による擦過で不可視情報の可視化が容易に行え、削りカスの発生がなく、さらに不正を行うことができない不可視情報印刷シートを提供する。
【解決手段】
支持体の同一面上に、モース硬度4.0以上かつ10.0以下の材料を含むインキ組成物による印刷部分と、無色または淡色の電子供与性染料前駆体、電子受容性化合物及びワニスを含有するスクラッチ発色用インキによる印刷部分を、両者が接するように印刷するか、モース硬度4.0以上かつ10.0以下の材料と、無色または淡色の電子供与性染料前駆体、電子受容性化合物及びワニスを含有するインキによる印刷部分を設けることを特徴とする不可視情報印刷シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予め印刷された不可視情報を硬貨による擦過により発色させることで可視化する不可視情報印刷シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、くじに用いられるシートとして、当落を示す文字、数字、図柄等の情報を紙などのシートに印刷し、さらに隠蔽層で覆うことで情報を不可視の状態とした不可視情報印刷シートが一般的に用いられている。具体的には、紙等のシートに可視情報等を印刷し、さらに不可視化すべき情報を印刷した後、不可視化すべき情報を覆うように剥離剤層を設け、その上に隠蔽性の銀色等のスクラッチインキを設けた状態であり、硬貨等によりスクラッチインキを削り取ることで不可視情報が現れるようにして用いられている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
しかし、上記のスクラッチインキを取り除く際に発生する削りカスがゴミとなってしまう欠点があり、使用される用途や場所が限定される。また、隠蔽層とするためにスクラッチインキの層の厚さを大きくする必要から擦れや堅い尖ったものとの接触によりスクラッチインキが剥がれやすい欠点がある。さらにスクラッチインキの色は暗色であり、暗い感じになりやすくデザイン上の問題となりやすい。
【0004】
上記の問題を解決するために、硬貨の金属よりも硬度の大きい材料を含むインキ組成物で印刷部分を形成し、その印刷部分を硬貨でこすると硬貨の金属が削り取られ、削り取られた金属によって印刷部分が着色され、画像が現れることを特徴とする印刷物が提案されている(例えば特許文献2、特許文献3参照)。この文献記載の方法では擦過前の印刷部分の不可視性も充分であり、硬貨による擦過により削りカスの発生がなく、明瞭な画像が得られるものの、消しゴムで消すと画像が消えてしまう欠点があり、例えば複数の印刷部分から1つだけ選択させるようなくじの場合、全てを擦過し、「当り」以外の画像を消しゴムで消してしまうという不正が行われる欠点があった。なお、以下、不可視の印刷部分を何らかの操作により可視化したものを画像とも呼ぶ。
【特許文献1】実公昭44−12094号公報
【特許文献2】特公平6−78039号公報
【特許文献3】特開2008−73977号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
不可視情報が視認されず、硬貨による擦過で不可視情報の可視化が容易に行え、削りカスの発生がなく、さらに不正を行うことができない不可視情報印刷シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
(1)支持体上に、モース硬度4.0以上かつ10.0以下の材料、無色または淡色の電子供与性染料前駆体、電子受容性化合物及びワニスを含有する複合インキによる印刷部分を設けることを特徴とする不可視情報印刷シート、
(2)支持体の同一面上に、モース硬度4.0以上かつ10.0以下の材料を含むインキ組成物による印刷部分と、無色または淡色の電子供与性染料前駆体、電子受容性化合物及びワニスを含有するスクラッチ発色用インキによる印刷部分とを設けることを特徴とする不可視情報印刷シート、
(3)モース硬度4.0以上かつ10.0以下の材料を含むインキ組成物による印刷部分に接して、無色または淡色の電子供与性染料前駆体、電子受容性化合物及びワニスを含有するスクラッチ発色用インキによる印刷部分を設けることを特徴とする上記(2)記載の不可視情報印刷シート、
である。
【0007】
本発明に用いられるスクラッチ発色用インキによる印刷部分は、不可視性も良好であり、硬貨による擦過で不可視情報の可視化が容易に行え、鮮明な画像が得られる。
【0008】
本発明において、支持体の同一面上にインキ組成物による印刷部分に接して、スクラッチ発色用インキによる印刷部分を設けることを特徴とする不可視情報印刷シートも好ましい。それにより、硬貨による擦過で発色の後、画像を消しゴムでこすると、インキ組成物による印刷部分を硬貨により擦過して得た画像は消えるが、スクラッチ発色用インキによる印刷部分を硬貨により擦過して得た画像は消えない。
【0009】
また、本発明に用いられるインキ組成物による印刷部分、スクラッチ発色用インキおよび硬質材料含有スクラッチ発色用インキによる印刷部分は、擦過前は不可視性に優れるため、インキ組成物による印刷部分または硬質材料含有スクラッチ発色用インキによる印刷部分だけを選択的に硬貨により擦過して発色させることは極めて困難である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の不可視情報印刷シートは、不可視情報が、硬貨による擦過で鮮明に可視化でき、通常取り扱い時に擦れによる発色汚れが発生しにくく、削りカスの発生がなく、さらに発色前の状態での不可視性も良好である。また、例えば複数の印刷部分(「当り」の印刷部分は1つのみとする。)から1つだけ選択させるようなくじの場合、全てを擦過し、「当り」以外の画像を消しゴムで消してしまうという不正を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の不可視情報印刷シートは、
(1)支持体上に、モース硬度4.0以上かつ10.0以下の材料、無色または淡色の電子供与性染料前駆体、電子受容性化合物及びワニスを含有する複合インキ(以下、硬質材料含有スクラッチ発色用インキとも呼ぶ)による印刷部分を設けることを特徴とする不可視情報印刷シート、
(2)支持体の同一面上に、モース硬度4.0以上かつ10.0以下の材料を含むインキ組成物(以下、単に、インキ組成物とも呼ぶ)による印刷部分と、無色または淡色の電子供与性染料前駆体、電子受容性化合物及びワニスを含有するスクラッチ発色用インキ(以下、単に、スクラッチ発色用インキとも呼ぶ)による印刷部分とを設けることを特徴とする不可視情報印刷シート、
(3)モース硬度4.0以上かつ10.0以下の材料を含むインキ組成物による印刷部分に接して、無色または淡色の電子供与性染料前駆体、電子受容性化合物及びワニスを含有するスクラッチ発色用インキによる印刷部分を設けることを特徴とする上記(2)記載の不可視情報印刷シート、
である。以下、本発明の不可視情報印刷シートを更に具体的に説明する。
【0012】
本発明に用いられる支持体は、紙が主として用いられるが、紙の他に各種織布、不織布、合成樹脂フィルム、合成樹脂ラミネート紙、合成紙、金属箔、蒸着シート、あるいはこれらを貼り合わせ等で組み合わせた複合シートを目的に応じて任意に用いることができる。しかしながら、モース硬度4.0以上の硬質材料(二酸化チタン,酸化アルミニウム,二酸化ケイ素,酸化クロム、ダイヤモンド等)を、できるだけ含まない支持体を使用するのが好ましい。硬質材料を支持体中、特に支持体表面部分に含む場合、硬貨による擦過により印刷部分以外の擦過部分までもが薄く発色し画像とのコントラストを損なう恐れがある。
【0013】
次に、本発明に用いられるスクラッチ発色用インキについて説明する。本発明に用いられるスクラッチ発色用インキは、無色または淡色の電子供与性染料前駆体、電子受容性化合物及びワニスを含有する。電子供与性染料前駆体及び電子受容性化合物が実質的に未発色の状態であるためには、それぞれが固体粒子としてスクラッチ発色用インキ中に含有されることがより好ましい。
【0014】
スクラッチ発色用インキに用いられる無色または淡色の電子供与性染料前駆体としては、一般に感圧記録材料や、感熱記録材料に用いられているものに代表されるが、特に限定されるものではない。
【0015】
具体的な電子供与性染料前駆体の例としては、
(1)トリアリールメタン系化合物:3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド(クリスタルバイオレットラクトン)、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(1,2−ジメチルインドール−3−イル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−フェニルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(1,2−ジメチルインドール−3−イル)−6−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(9−エチルカルバゾール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(2−フェニルインドール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(1−メチルピロール−2−イル)−6−ジメチルアミノフタリド等、
【0016】
(2)ジフェニルメタン系化合物:4,4′−ビス(ジメチルアミノフェニル)ベンズヒドリルベンジルエーテル、N−クロロフェニルロイコオーラミン、N−2,4,5−トリクロロフェニルロイコオーラミン等、
【0017】
(3)キサンテン系化合物:ローダミンBアニリノラクタム、ローダミンB−p−クロロアニリノラクタム、3−ジエチルアミノ−7−ジベンジルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−オクチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−フェニルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−メチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(3,4−ジクロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(2−クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジペンチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−トリル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−トリル)アミノ−6−メチル−7−フェネチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(4−ニトロアニリノ)フルオラン、3−(N−メチル−N−プロピル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−イソアミル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−メチル−N−シクロヘキシル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−テトラヒドロフルフリル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン等、
【0018】
(4)チアジン系化合物:ベンゾイルロイコメチレンブルー、p−ニトロベンゾイルロイコメチレンブルー等、
【0019】
(5)スピロ系化合物:3−メチルスピロジナフトピラン、3−エチルスピロジナフトピラン、3,3′−ジクロロスピロジナフトピラン、3−ベンジルスピロジナフトピラン、3−メチルナフト−(3−メトキシベンゾ)スピロピラン、3−プロピルスピロベンゾピラン等を挙げることができる。またこれらの染料前駆体は必要に応じて単独、もしくは2種以上混合して使用することができる。スクラッチ発色用インキの変色防止性や発色感度からは好ましくはキサンテン系化合物が用いられる。
【0020】
本発明に用いられるスクラッチ発色用インキに用いられる電子受容性化合物としては、一般に感圧記録材料、または感熱記録材料に用いられる酸性物質に代表されるが、これらに制限されることはない。例えば、フェノール誘導体、芳香族カルボン酸誘導体、N,N′−ジアリールチオ尿素誘導体、アリールスルホニル尿素誘導体、スルホンアミド誘導体、有機化合物の亜鉛塩などの多価金属塩、ベンゼンスルホンアミド誘導体等を挙げることができる。
【0021】
具体的な例を挙げれば、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−イソプロポキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−ベンジルオキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−プロポキシジフェニルスルホン、ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、3,4−ジヒドロキシ−4′−メチルジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−ベンゼンスルホニルオキシジフェニルスルホン、2,4−ビス(フェニルスルホニル)フェノール等のジフェニルスルホン系化合物が挙げられる。
【0022】
その他の具体例としては、p−フェニルフェノール、p−ヒドロキシアセトフェノン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,3−ジ−〔2−(p−ヒドロキシフェニル)プロピル〕ベンゼン、1,3−ジ−〔2−(3,4−ジヒドロキシフェニル)プロピル〕ベンゼン、1,4−ジ−〔2−(p−ヒドロキシフェニル)プロピル〕ベンゼン、4,4′−ヒドロキシジフェニルエーテル、
【0023】
3,3′−ジクロロ−4,4′−ヒドロキシジフェニルスルフィド、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸メチル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸ブチル、4,4′−チオビス(2−tert−ブチル−5−メチルフェノール)、
【0024】
N−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゼンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)−p−トルエンスルホンアミド、N−(2,4−ジヒドロキシフェニル)ベンゼンスルホンアミド、N−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−p−トルエンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシナフチル)ベンゼンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシナフチル)−p−トルエンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)−1−ナフタレンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)−2−ナフタレンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシナフチル)−1−ナフタレンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシナフチル)−2−ナフタレンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)−p−クロロベンゼンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)−p−メトキシベンゼンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)−p−アリルベンゼンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)−p−フェニルベンゼンスルホンアミド、4,4′−ビス(2−ヒドロキシフェニルアミノスルホニル)ジフェニルメタン、N−(2−ヒドロキシフェニル)−N−メチルベンゼンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)−N−メチル−p−トルエンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)−N−ベンジル−p−トルエンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)−N−アリル−p−トルエンスルホンアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)−N−フェニルベンゼンスルホンアミド、
【0025】
4−ヒドロキシフタル酸ジメチル、4−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、4−ヒドロキシ安息香酸メチル、没食子酸ベンジル、没食子酸ステアリル、N,N′−ジフェニルチオ尿素、4,4′−ビス[3−(4−メチルフェニルスルホニル)ウレイド]ジフェニルメタン、N−(4−メチルフェニルスルホニル)−N′−フェニル尿素、サリチルアニリド、5−クロロサリチルアニリド、サリチル酸、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸、3,5−ジ−α−メチルベンジルサリチル酸、4−[2′−(4−メトキシフェノキシ)エチルオキシ]サリチル酸、3−(オクチルオキシカルボニルアミノ)サリチル酸あるいはこれらサリチル酸誘導体の金属塩、N−(4−ヒドロキシフェニル)−p−トルエンスルホンアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼンスルホンアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)−1−ナフタレンスルホンアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)−2−ナフタレンスルホンアミド、N−(4−ヒドロキシナフチル)−p−トルエンスルホンアミド、N−(4−ヒドロキシナフチル)ベンゼンスルホンアミド、N−(4−ヒドロキシナフチル)−1−ナフタレンスルホンアミド、N−(4−ヒドロキシナフチル)−2−ナフタレンスルホンアミド、N−(3−ヒドロキシフェニル)−p−トルエンスルホンアミド、N−(3−ヒドロキシフェニル)ベンゼンスルホンアミド、N−(3−ヒドロキシフェニル)−1−ナフタレンスルホンアミド、N−(3−ヒドロキシフェニル)−2−ナフタレンスルホンアミドなどが挙げられる。特にスクラッチ発色用インキの変色防止性や発色感度からはジフェニルスルホン系化合物が好ましい。
【0026】
本発明に用いられるスクラッチ発色用インキに使用されるワニスには、バインダー樹脂及び、必要に応じて油、溶剤等が含有されている。
【0027】
ワニスに含有されるバインダー樹脂としては、ロジンなどの天然樹脂、硬化ロジン、ロジンエステルなどの天然樹脂誘導体、そしてアルキド樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、スチレン樹脂、エポキシ樹脂、セルロース誘導体、フェノール樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、キシレン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ケトン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、オレフィン等の不飽和炭化水素を原料とした石油樹脂などの合成樹脂が使用される。
【0028】
ワニスに必要に応じて含有される油は、アマニ油、菜種油、ヤシ油、オリーブ油、大豆油、桐油等の植物油、及びこれらを再生処理した植物油、スピンドル油、マシーン油、モビル油等の鉱物油が用途により適宜選択されて使用される。
【0029】
ワニスに必要に応じて含有される溶剤は、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、メチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール等のアルコール系溶剤、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール系溶剤、パラフィン、ナフテン系を主成分とした芳香族成分1%以下の石油系溶剤等が挙げられる。
【0030】
本発明に用いられるスクラッチ発色用インキには、更に各種の補助剤を含有させてもよい。例えば、乾燥促進剤としてナフテン酸コバルト、オクチル酸マンガン等のドライヤー、一般的にアルミニウムキレートと呼ばれるキレート化剤、インキの粘度を調整する調整剤、印刷後の滑りを調節するワックス、界面活性剤、有機や無機の微粒子類、感熱記録材料で公知の脂肪酸アミド類、脂肪族尿素化合物、エーテル化合物、エステル化合物、ビフェニル誘導体等の増感剤も発色濃度を上げるために含有させてもよい。
【0031】
本発明に用いられるスクラッチ発色用インキは、印刷部分の汚れ及び発色性から、電子供与性染料前駆体に対する電子受容性化合物の質量比率は、50〜1000質量%が好ましく、100〜500質量%が特に好ましい。また、電子供与性染料前駆体(以下、単に染料と呼ぶ場合がある。)と電子受容性化合物(以下、顕色剤と呼ぶ場合がある。)とを所定の比率で同時にワニス(ビヒクル)に添加し、混練りすると染料が発色してインキの着色を招くため、別々に混練りしてインキ化した後に、撹拌機等により所定の比率で充分に混ぜ合わせる方が、染料と顕色剤の接触等によるインキ着色を低減することができ、印刷部の不可視化には好ましい。ワニス(ビヒクル)の種類やスクラッチ発色用インキ中のワニス含有量は印刷方法により異なるが、好ましくはスクラッチ発色用インキの10〜90質量%、特に30〜70質量%の範囲で適宜選択される。
【0032】
本発明に用いられるスクラッチ発色用インキにおけるワニスの調製は、従来公知の方法で良く、例えばバインダー樹脂、油等の組成成分を加熱溶解させた後、溶剤、アルミキレート剤等を添加して得られる。
【0033】
次に、本発明に用いられるモース硬度4.0以上かつ10.0以下の材料(以下の説明中、硬質材料と呼び他の材料と区別する場合もある。)を含有するインキ組成物について述べる。インキ組成物は、モース硬度4.0以上かつ10.0以下の材料とワニスとを含有する。スクラッチ用の硬貨としてよく用いられる10円硬貨のモース硬度は3.5であるため、インキ組成物に含有する硬質材料のモース硬度は4.0以上、更には5.0以上、特に6.0以上が好ましい。モース硬度が大きい程、より多くの種類の硬貨に対応できる。また、硬質材料のモース硬度に実用面からの上限は無いものの、10.0を超えるモース硬度の材料は知られていない。
また、硬質材料は粉砕ないし造粒により体積平均粒径を好ましくは0.01〜10μmとして用いられる。体積平均粒径の好ましい範囲は一次粒子としても二次粒子としても同様である。体積平均粒径0.01μmに満たないものは安定した製造が困難である。一方、体積平均粒径10μmを超えると不可視性が劣る恐れがある。
【0034】
硬質材料としては、ホタル石、リンカイ石、セイチョウ石、トパーズ、コランダム、ブルカイト、ルチル型二酸化チタン、アナターゼ型二酸化チタン、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素(特に石英)、酸化クロム、ダイヤモンドなどが挙げられる。インキ組成物に含有される硬質材料の比率は10〜80質量%が好ましい。10質量%未満の場合は硬貨が金属により削り取られる度合が少なく、着色が不十分となる恐れがある。一方、80質量%を超えるときはインキ化が困難となる恐れがある。
【0035】
本発明に用いられるインキ組成物に用いられるワニスには、バインダー樹脂、及び必要に応じて油、溶剤等が含有されている。用いられるワニスは、スクラッチ発色用インキに用いられるワニスと共通のものでも別途作製したものでもよい。以下、インキ組成物に用いられるワニスの含有成分について述べる。
【0036】
ワニスに含有されるバインダー樹脂としては、ロジンなどの天然樹脂、硬化ロジン、ロジンエステルなどの天然樹脂誘導体、そしてアルキド樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、スチレン樹脂、エポキシ樹脂、セルロース誘導体、フェノール樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、キシレン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ケトン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、オレフィン等の不飽和炭化水素を原料とした石油樹脂などの合成樹脂が使用される。
【0037】
ワニスに必要に応じて含有される油としては、アマニ油、菜種油、ヤシ油、オリーブ油、大豆油、桐油等の植物油、及びこれらを再生処理した植物油、スピンドル油、マシーン油、モビル油等の鉱物油等が挙げられる。
【0038】
ワニスに必要に応じて含有される溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、メチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール等のアルコール系溶剤、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール系溶剤、パラフィン、ナフテン系を主成分とした芳香族成分1%以下の石油系溶剤等が挙げられる。
【0039】
本発明に用いられるインキ組成物には、更に各種の補助剤を使用してもよい。例えば、乾燥促進剤としてナフテン酸コバルト、オクチル酸マンガン等のドライヤー、一般的にアルミニウムキレートと呼ばれるキレート化剤、インキの粘度を調整する石油系溶剤やワニス等の調整剤、印刷後の滑りを調節するワックス、界面活性剤、体質顔料(炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、炭酸ナトリウムなどの単体または混合物)である。
【0040】
本発明に用いられるインキ組成物におけるワニスの調製は、従来公知の方法で良く、例えばバインダー樹脂、油等の組成成分を加熱溶解させた後、溶剤、アルミキレート剤等を添加して得られる。
【0041】
本発明に用いられるインキ組成物は、以上の含有させる成分を撹拌機、ミキサーなどの公知の混合機に投入し、混合することによって調製することができる。
【0042】
本発明に用いられるインキ組成物におけるワニスと置換して、紫外線硬化性樹脂を使用したインキ組成物を使用することもできる。紫外線硬化性樹脂を使用したインキ組成物は重合反応性樹脂、カットモノマー、光重合開始剤または増感剤、その他助剤・添加剤から成る。
【0043】
紫外線硬化性樹脂を使用したインキ組成物に用いられる重合反応性樹脂としては、アクリル酸をエステル反応またはエーテル反応させ分子中に不飽和基を持たせたもので、例えば多価アルコールのアクリル酸エステル(ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレートなど)、エポキシアクリレート(エポキシ化乾性油アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリレート、変成ビスフェノールAエポキシアクリレート、ノボラック型エポキシアクリレート、脂肪族型エポキシアクリレートなど)、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、アクリレートアルキッド、メラミンアクリレートなどが使用される。
【0044】
紫外線硬化性樹脂を使用したインキ組成物に用いられるカットモノマーとしては、アクリル酸をエステル反応またはエーテル反応させ分子中に不飽和基を持たせたもので、例えばヒドロキシブチルアクリレート、ジシクロペンタジエンアクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレートなどが用いられる。
【0045】
紫外線硬化性樹脂を使用したインキ組成物に用いられる光重合開始剤または増感剤としては、吸収波長が360〜450nm程度のものを使用することができる。例えば、チオキサントン類(チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン)、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパノン−1、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドなどが用いられる。
【0046】
その他、必要に応じて界面活性剤、消泡剤、レベリング剤、溶剤、増粘剤、体質顔料などをインキ中に配合しても良い。
【0047】
本発明に用いられるインキ組成物に紫外線硬化性樹脂を使用したインキ組成物を使用する場合は、これらの成分を撹拌機、ミキサーなどの公知の混合機に投入し、混合することによって調製することができる。また、インキ組成物は、モース硬度4.0以上かつ10.0以下の材料と紫外線硬化性樹脂を使用したインキ組成物を撹拌機、ミキサーなどの公知の混合機に投入し、混合することによって調製することができる。
【0048】
本発明に用いられる硬質材料含有スクラッチ発色用インキの調整法は、上記のスクラッチ発色用インキの調整の途中で、モース硬度4.0以上かつ10.0以下の材料を混合する方法でも良いし、インキ組成物とスクラッチ発色用インキを印刷開始前までに混合したものでも良い。どちらの場合にも、ワニスの含有量が硬質材料含有スクラッチ発色用インキに対して10〜90質量%、特に30〜70質量%の範囲で適宜選択され、硬質材料の含有量は硬質材料含有スクラッチ発色用インキに対して10〜80質量%が好ましい。
【0049】
次に、不可視情報印刷シートを得る方法の説明に移る。本発明の不可視情報印刷シートのスクラッチ部及びその周辺に印刷をする場合には、各種印刷用インキが使用可能であるが、インキ組成物及びスクラッチ発色用インキの発色色相や、支持体面の色相と異なった色相のインキを使用することもできる。支持体面の色相が白色で、インキ組成物及びスクラッチ発色用インキの発色色相が黒や青色であれば、黄色、橙等の明度の高い色相のインキが好ましい。
【0050】
本発明の不可視情報印刷シートにおける不可視情報は、インキ組成物による印刷部分に隣接し、または下層に、スクラッチ発色用インキによる印刷部分を設け、製図することが好ましい。
【0051】
具体的には、インキ組成物またはスクラッチ発色用インキのどちらかを印刷しようとする画像原稿の一部をノックアウト(ヌキ)して製図し、他方をノックアウトした部分に合わせて製図する。また画像原稿に網点を適用することもできる。
また、インキ組成物またはスクラッチ発色用インキのどちらかを印刷しようとする他方の画像原稿の一部または全部に、オーバープリント(ノセ)して他方の画像原稿を製図することもできる。
【0052】
本発明の不可視情報印刷シートの不可視情報を印刷するには、本発明に用いられるスクラッチ発色用インキまたはインキ組成物により、オフセット印刷、グラビア印刷、凸版印刷等の各種印刷方法を用いるが、印刷精度や印刷適性からは特にオフセット印刷によることが好ましい。
【0053】
スクラッチ発色用インキのインキ盛量およびインキ組成物のインキ盛量は特に限定されないが、スクラッチ発色用インキの発色濃度およびインキ組成物の印刷部分をスクラッチした時の発色濃度により適宜選択される。
なお、スクラッチ発色用インキ、インキ組成物のインキ盛り量はいずれも、膜厚として0.2〜2.0μmとすると、不可視性と発色濃度の両方を満足でき、好ましい。
【0054】
スクラッチ発色用インキおよびインキ組成物の印刷の順序は任意であるが、インキ組成物による印刷部分で、スクラッチ発色用インキによる不可視情報を全て覆うように製図した場合は、スクラッチ発色用インキによる不可視情報が硬貨で擦過した場合良好な発色が得られない恐れがあるので、印刷の順序はインキ組成物を印刷した後にスクラッチ発色用インキで印刷するか、インキ組成物で印刷する画像原稿をノックアウトで製図することが好ましい。
また、場合によっては、適宜印刷部分を分割して印刷することもできる。
【0055】
硬質材料含有スクラッチ発色用インキでは上記の方法と同様の製図法でも良いが、必ずしもインキ組成物またはスクラッチ発色用インキと接して製図する必要はなく、硬貨による擦過で現れる画像(例えば「当り」)を単独で製図しても良い。
【実施例】
【0056】
以下、実施例によって本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0057】
(各種インキ調製例1)
(ワニスの作製)
植物油としてアマニ油20質量部、ロジン変性フェノール樹脂(質量平均分子量20000、酸価20mgKOH/g)50質量部、スピンドル油20質量部を配合して約200℃で約1時間加熱して樹脂を溶解させた後、スピンドル油10質量部、アルミニウムキレート剤1質量部を添加して約180℃で約1時間加熱し、ワニスを得た。
(スクラッチ発色用染料インキベースの調製)
上記ワニス50質量部、クリスタルバイオレットラクトン30質量部、スピンドル油5質量部を3本ロールミルで練肉し、上記ワニス10質量部、スピンドル油10質量部を添加することによってスクラッチ発色用染料インキベース(a)を調製した。
(スクラッチ発色用顕色剤インキベースの調製)
上記ワニス50質量部、4−ヒドロキシ−4′−イソプロポキシジフェニルスルホン30質量部、スピンドル油5質量部を3本ロールミルで練肉し、上記ワニス10質量部、スピンドル油10質量部を添加することによってスクラッチ発色用顕色剤インキベース(b)を調製した。
(スクラッチ発色用インキの調製)
上記2種のインキベース(a)、(b)をそれぞれ1:2の比率で混合し、ドライヤー(ナフテン酸マンガン)添加量を該インキベース合計の0.2質量%、及び調整溶剤を添加し、充分撹拌して均質化することによって本発明のスクラッチ発色用インキAを得た。
(硬質材料を含有するインキ組成物の調製)
上記ワニス50質量部にモース硬度6.0の材料として体積平均粒径0.3μmのルチル型二酸化チタン50質量部を添加し、充分撹拌することによってインキ組成物Bを得た。
(硬質材料を含有するスクラッチ発色用インキの調製)
上記で得られたスクラッチ発色用インキとインキ組成物を1:1の質量比率で混合し、硬質材料含有スクラッチ発色用インキCを得た。
【0058】
(印刷条件)
次の印刷条件で各実施例および比較例の不可視情報印刷シートを得た。
(印刷速度)
150m/min
(印刷に使用した用紙)
三菱IJフォーム用紙 135g/m2 (三菱製紙株式会社製)
(給湿液)
5質量%IPA−0.2質量%SEVENSTAR(大日精化社製)の混合液
(使用刷版)
HPF 0.24mm(富士フイルム社製)
(印刷機)
MVF−18D(株式会社ミヤコシ製)(オフ交換胴による平版オフセット印刷方式)
(識別用四角枠の有色UV硬化型印刷インキ)
BEST CURE UV NVR墨(株式会社ティーアンドケイ東華製)
(識別用四角枠の有色UV硬化型印刷インキ硬化装置)
UE081−425−01(岩崎電気株式会社製)
【0059】
(実施例1)
各種インキ調製例1記載のスクラッチ発色用インキA及びインキ組成物Bを用い、上記の印刷条件で印刷した。
(識別用四角枠の絵柄)
下記スクラッチ発色用インキの各絵柄が中央にくるように、22mm角の正方形(線幅1mm、白ヌキ)を製図した。なお、この絵柄は擦過時の位置を容易に特定するために設けた。
(スクラッチ発色用インキの絵柄)
(1)20mm角の正方形、ベタ(ただしベタ中央部に24ポイントの文字で「A」という文字をノックアウトしてある)
(2)20mm角の正方形、ベタ(ただしベタ中央部に24ポイントの文字で「B」という文字をノックアウトしてある)
(3)20mm角の正方形、ベタ(ただしベタ中央部に24ポイントの文字で「C」という文字をノックアウトしてある)
(1)、(2)、(3)を並べて製図した。
インキ膜厚は各々1.4μm
(硬質材料を含有するインキ組成物の絵柄)
上記スクラッチインキ発色用インキの絵柄のうちノックアウトした部分に合わせて24ポイントの文字で「A」、「B」、「C」という文字を製図した。
インキ膜厚は各々1.4μm
(印刷順序)
識別用四角枠(有色UV硬化型印刷インキ)→(UV照射)→スクラッチ発色用インキA→硬質材料を含有するインキ組成物B
【0060】
(実施例2)
各種インキ調製例1記載のスクラッチ発色用インキA及びインキ組成物Bを用い、上記の印刷条件で印刷した。
(識別用四角枠の絵柄)
下記スクラッチ発色用インキの各絵柄が中央にくるように、22mm角の正方形(線幅1mm、白ヌキ)を製図した。なお、この絵柄は擦過時の位置を容易に特定するために設けた。
(スクラッチ発色用インキの絵柄)
(1)20mm角の正方形、ベタ
(2)20mm角の正方形、ベタ
(3)20mm角の正方形、ベタ
(1)、(2)、(3)を並べて製図した。
インキ膜厚は各々1.4μm
(硬質材料を含有するインキ組成物の絵柄)
24ポイントの文字で「A」、「B」、「C」という文字を、上記スクラッチインキ発色用インキの絵柄の中央部に位置するように製図した。
インキ膜厚は各々1.4μm
(印刷順序)
識別用四角枠(有色UV硬化型印刷インキ)→(UV照射)→スクラッチ発色用インキA→硬質材料を含有するインキ組成物B
【0061】
(実施例3)
各種インキ調製例1記載の硬質材料含有スクラッチ発色用インキCを、上記の印刷条件で印刷した。
(識別用四角枠の絵柄)
下記硬質材料含有スクラッチ発色用インキの各絵柄が中央にくるように、22mm角の正方形(線幅1mm、白ヌキ)を製図した。なお、この絵柄は擦過時の位置を容易に特定するために設けた。
(硬質材料含有スクラッチ発色用インキの絵柄)
24ポイントの文字で「A」、「B」、「C」という文字を並べて製図した。
インキ膜厚は各々1.4μm
(印刷順序)
識別用四角枠(有色UV硬化型印刷インキ)→(UV照射)→硬質材料含有スクラッチ発色用インキC
【0062】
(比較例1)
各種インキ調製例1記載の硬質材料を含有するインキ組成物Bのみを上記の印刷条件で印刷した。
(識別用四角枠の絵柄)
下記硬質材料を含有するインキ組成物の各絵柄が中央にくるように、22mm角の正方形(線幅1mm、白ヌキ)を製図した。なお、この絵柄は擦過時の位置を容易に特定するために設けた。
(硬質材料を含有するインキ組成物の絵柄)
24ポイントの文字で「A」、「B」、「C」という文字を並べて製図した。
インキ膜厚は各々1.4μm
(印刷順序)
識別用四角枠(有色UV硬化型印刷インキ)→(UV照射)→硬質材料を含有するインキ組成物B
【0063】
(硬貨による擦過、および消しゴムによる消去結果)
実施例1記載の不可視情報印刷シートは、発色前は不可視性に優れ、図柄の視認はできなかったが、印刷部分を100円硬貨で擦った場合、各々、「A」、「B」、「C」という黒色の絵柄(硬質材料を含有するインキ組成物による)が青色の背景(スクラッチ発色用インキの発色による)で視認された。次に、消しゴム(株式会社ライオン事務器製No.5100)で図柄を擦ったところ、「A」、「B」、「C」の黒色の絵柄だけが消え白色となり、青色の背景に白色の「A」、「B」、「C」の絵柄が表示されていた。
【0064】
また、実施例2記載の不可視情報印刷シートは、発色前は不可視性に優れ、図柄の視認はできなかったが、印刷部分を100円硬貨で擦った場合、各々、「A」、「B」、「C」という黒色の絵柄(硬質材料を含有するインキ組成物による)が青色の背景(スクラッチ発色用インキの発色による)で視認された。次に、消しゴム(株式会社ライオン事務器製No.5100)で図柄を擦ったところ、「A」、「B」、「C」の黒色の絵柄だけが消え、青色の背景が表示されていた。
【0065】
また、実施例3記載の不可視情報印刷シートは、発色前は不可視性に優れ、図柄の視認はできなかったが、印刷部分を100円硬貨で擦った場合、各々、「A」、「B」、「C」という黒色の絵柄が視認された。次に、消しゴム(株式会社ライオン事務器製No.5100)で図柄を擦ったところ、「A」、「B」、「C」の青色となった。
【0066】
一方、比較例1記載の不可視情報印刷シートは、発色前は不可視性に優れ、図柄の視認はできなかったが、印刷部分を100円硬貨で擦った場合、各々、「A」、「B」、「C」という黒色の絵柄(硬質材料を含有するインキ組成物による)が視認された。次に、消しゴム(株式会社ライオン事務器製No.5100)で図柄を擦ったところ、「A」、「B」、「C」の黒色の絵柄が消え白色となり擦過前と同じ外観に戻った。さらに、「A」の部分のみを100円硬貨で擦った場合、再度「A」の黒色の絵柄が表示された。
【0067】
比較例1記載の不可視情報印刷シートは、硬質材料を含有するインキ組成物を単独で用いており、発色するのは硬質材料を含有するインキ組成物で印刷した部分のみとなり、消しゴムで消した場合には発色した絵柄が消えてしまった。消えた絵柄も100円硬貨で擦った場合、再度発色させ得るので最終的に絵柄のアルファベットのうち、任意のもののみを発色させることができた。
【0068】
しかしながら、実施例1および実施例2記載の不可視情報印刷シートは、硬質材料を含むインキ組成物と、スクラッチ発色用インキの印刷部分で構成され、しかも、実施例1の場合は、硬質材料を含むインキ組成物による印刷部分に接して、スクラッチ発色用インキによる印刷部分を設けたものであるが、消しゴムで消した場合、硬質材料を含有するインキ組成物で印刷し発色した部分は消去されたが、スクラッチ発色用インキの発色部分は消去されず、結果としてどの絵柄を擦ったかが明瞭に示された。オーバープリントによる実施例2でも同様であった。
【0069】
また、実施例3の場合は硬質材料由来の発色部分は消しゴムにより消去されたが、無色または淡色の電子供与性染料前駆体と電子受容性化合物由来の発色部分は消去されず、結果としてどの絵柄を擦ったかが明瞭に示された。
【0070】
このことより、例えば複数の印刷部分から1つだけ選択させるようなくじの場合、全てを擦過し、「当り」以外を消しゴムで消してしまうという不正を防ぐことができた。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の活用例として、不可視情報の可視化が可能であり、削りカスの発生も無いので特に乗り物内での使用にも有効である。またスクラッチ前に優れた不可視性を有し、不可視情報を不正に読み取ることを防止できるため、高額なくじ類にも有効である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】印刷の一例 可視化して示した。「A」という文字をノックアウト(ヌキ)して印刷した例。実施例1に相当する。
【図2】印刷の一例 可視化して示した。「A」という文字をオーバープリント(ノセ)して印刷した例。可視化して示した。実施例2に相当する。
【図3】図1の印刷部分の断面図の例 可視化して示した。識別用の四角枠(有色インキ)は省略してある。
【図4】図2の印刷部分の断面図の例 可視化して示した。識別用の四角枠(有色インキ)は省略してある。
【符号の説明】
【0073】
1.有色UV硬化型印刷インキ
2.支持体
3.スクラッチ発色用インキ
4.インキ組成物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、モース硬度4.0以上かつ10.0以下の材料、無色または淡色の電子供与性染料前駆体、電子受容性化合物及びワニスを含有する複合インキによる印刷部分を設けることを特徴とする不可視情報印刷シート。
【請求項2】
支持体の同一面上に、モース硬度4.0以上かつ10.0以下の材料を含むインキ組成物による印刷部分と、無色または淡色の電子供与性染料前駆体、電子受容性化合物及びワニスを含有するスクラッチ発色用インキによる印刷部分とを設けることを特徴とする不可視情報印刷シート。
【請求項3】
モース硬度4.0以上かつ10.0以下の材料を含むインキ組成物による印刷部分に接して、無色または淡色の電子供与性染料前駆体、電子受容性化合物及びワニスを含有するスクラッチ発色用インキによる印刷部分を設けることを特徴とする請求項2記載の不可視情報印刷シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−613(P2010−613A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−159265(P2008−159265)
【出願日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】