説明

不均一系触媒を製造する方法

【課題】アルドール縮合、脱水、ダイマー化、還元、酸化、アルキル化、エーテル化、エステル化並びに水素化から選択される少なくとも一つの反応のための、不均一系触媒を製造する方法の提供。
【解決手段】乾燥イオン交換樹脂とケトンおよび金属の溶液とを混合し、イオン交換樹脂を膨潤させ、樹脂に金属を分布させ、およびこの金属を還元剤を使用することなく120℃未満の温度でゼロ価に変換することを含む不均一系触媒を製造する方法、その方法で製造された触媒、およびその触媒の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は不均一系触媒を製造する方法に関する。より具体的には、本発明は金属ドープイオン交換樹脂触媒を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不均一系触媒を製造する方法は既知である。不均一系触媒を製造する一方法は米国特許第6,977,314号に開示されており、ここでは金属を含む水溶液をイオン交換樹脂と接触させ、次いですすぐことによりカチオン交換樹脂に金属イオンが添加される。触媒はその用途におけるその使用前に活性化される。活性化手順は、金属含浸カチオン交換樹脂を還元剤、例えば、水素およびヒドラジン(これは非常に毒性である)で還元することによって行われる。
【0003】
既知の方法においては、使用される樹脂は湿潤状態であり、それは金属が液体からイオン交換樹脂ビーズに拡散するのに長い接触時間を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6,977,314号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、反応が、余分な液体を少ししか生じさせず、水素もしくはヒドラジンをはじめとする当該技術分野で知られている還元剤での活性化工程を必要としない、樹脂中に均一に分散されたゼロ価の状態の金属を含む不均一系触媒を製造する方法を提供することにより現在の技術を改良することを求める。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の形態においては、乾燥イオン交換樹脂をケトンおよび金属の溶液と混合し、イオン交換樹脂を膨潤させ、金属を樹脂中に分布させ、および還元剤を使用することなく120℃未満の温度で金属をゼロ価に変換することを含む不均一系触媒を製造する方法が提供される。
本発明の第2の形態においては、乾燥イオン交換樹脂をケトン、並びにパラジウム、白金、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、銅、金および/または銀の金属の溶液と混合し、イオン交換樹脂を膨潤させ、金属が乾燥物基準で触媒の0.1〜15重量%を構成するように金属を樹脂中に分布させ、および還元剤を使用することなく120℃未満の温度で金属をゼロ価に変換することを含む不均一系触媒を製造する方法が提供される。
【0007】
本発明の第3の形態においては、本発明の方法によって製造される不均一系触媒が提供される。
本発明の第4の形態においては、アルキン、アルケン、アルデヒド、ケトン、アルコール、ニトリル、アミンおよび/またはニトログループのアルドール縮合、脱水、ダイマー化、還元、酸化、アルキル化、エーテル化、エステル化、アルキル化並びに水素化から選択される反応のための、本発明の方法によって製造される不均一系触媒の使用が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は不均一系触媒を製造する方法に関する。不均一系触媒は、触媒活性部位表面で反応して生成物を生じさせる液体、蒸気または気体のような他の相を有しうる反応において固相として存在する材料である。不均一系触媒はプロセス中に気体、液体または蒸気相に可溶性ではない。
【0009】
本方法においては、触媒は、乾燥もしくは部分的に乾燥(液体の少なくと50%が除かれている)している乾燥イオン交換樹脂をケトンおよび金属の溶液と混合することにより製造される。ある実施形態においては、湿潤イオン交換樹脂を乾燥させる。イオン交換樹脂の例には、アンダースルホン化(undersulfonated)樹脂およびポリスルホン化樹脂が挙げられる。好ましい実施形態においては、乾燥イオン交換樹脂は、芳香族/スルホンの範囲が10:1〜1:2であるポリスルホン化カチオン交換樹脂を含む。1:2がスルホン化限度である。触媒に使用されうる他の樹脂には、アクリル骨格樹脂、例えば、弱酸カチオン樹脂、弱塩基アニオン樹脂、強塩基アニオン樹脂および強酸カチオン樹脂が挙げられる。
【0010】
本方法において有用なイオン交換樹脂はゲルもしくはマクロポーラスビーズの形態であってよい。好ましくは、イオン交換樹脂触媒は、100μm〜2mm、より好ましくは150μm〜1.5mm、最も好ましくは250μm〜1mmの平均粒子直径を有するマクロポーラス球状ビーズの形態である。イオン交換樹脂がポリスルホン化カチオン交換樹脂である場合には、スルホン酸基の含量は、ポリスルホン化カチオン交換樹脂の乾燥重量を基準にして、好ましくは約5.0〜7.0、より好ましくは約5.1〜6.5、最も好ましくは約5.2〜6.0meq/g(ミリ当量/グラム)を含み、ポリスルホン化カチオン交換樹脂の乾燥重量を基準にして、好ましくは約0.1〜10%、より好ましくは約0.5〜5%、最も好ましくは約0.7〜2%の金属もしくは金属イオンが添加される。
【0011】
好ましくは、イオン交換樹脂は約10〜1000、より好ましくは約15〜500、最も好ましくは約0.1〜50平行メートル/グラム(m/g)の表面積、および好ましくは約0.1〜0.9、より好ましくは約0.2〜0.7、最も好ましくは約0.25〜0.5立方センチメートル孔/ポリマーのグラム(cm/g)の全気孔率で、好ましくは約50〜2,500オングストローム、より好ましくは約150〜1000オングストロームの平均孔直径を有する。
【0012】
イオン交換樹脂は、全モノマー重量を基準にして少なくとも1重量パーセントのポリビニル不飽和モノマーを含むモノマーもしくはモノマーの混合物から重合されたポリマーもしくはコポリマーである架橋マクロポーラスコポリマーから製造されうる。気孔率はポロゲン(「相エクステンダー」または「沈殿剤」としても知られる)、すなわち、モノマーには溶媒であるがポリマーには非溶媒である、の存在下で懸濁重合することによりコポリマービーズに導入される。
【0013】
架橋マクロポーラスコポリマー製造は、例えば、懸濁助剤(例えば、分散剤、保護コロイドおよび緩衝剤)を含む連続水性相溶液の製造と、その後に、1〜85%のポリビニル芳香族モノマー、フリーラジカル開始剤、および1部のモノマーあたり好ましくは約0.2〜5、より好ましくは約0.3〜3、最も好ましくは約0.4〜1部のポロゲン(例えば、トルエン、キシレン、(C−C10)アルカノール、(C−C12)飽和炭化水素またはポリアルキレングリコール)を含むモノマー混合物との混合を含むことができる。モノマーとポロゲンとの混合物は、次いで、高温で重合されて、その後、得られたポリマービーズから様々な手段によってポロゲンが除去され、例えば、トルエン、キシレンおよび(C−C10)アルコールは蒸留もしくは溶媒洗浄によって除去されることができ、およびポリアルキレングリコールは水洗浄によって除去されることができる。得られたマクロポーラスコポリマーは、次いで、従来の手段、例えば、脱水によって単離され、次いで、乾燥させられる。
【0014】
架橋コポリマーの製造に使用されうる好適なポリビニル芳香族モノマーには、例えば、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルナフタレンおよびジビニルキシレン、並びにその混合物から選択される1種以上のモノマーが挙げられ;上記架橋剤のそれぞれの様々ないずれかの位置異性体が好適であることが理解される。好ましい実施形態においては、ポリビニル芳香族モノマーはジビニルベンゼンである。好ましくは、架橋コポリマーは約1〜85%、より好ましくは約5〜55%、最も好ましくは約10〜25%のポリビニル芳香族モノマー単位を含む。
【0015】
場合によっては、非芳香族架橋性モノマー、例えば、エチレングリコールジアクリラート、エチレングリコールジメタクリラート、トリメチロールプロパントリアクリラート、トリメチロールプロパントリメタクリラート、ジエチレングリコールジビニルエーテル、およびトリビニルシクロヘキサンが、ポリビニル芳香族架橋剤に加えて使用されうる。使用される場合には、非芳香族架橋性モノマーは、重合単位として、マクロポーラスコポリマーを形成するために使用される全モノマー重量を基準にして、マクロポーラスポリマーの好ましくは約0〜10%、より好ましくは約0〜5%、最も好ましくは約0〜2%を構成する。
【0016】
架橋コポリマーの製造に使用されうる好適なモノ不飽和ビニル芳香族モノマーには、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、(C−C)アルキル−置換スチレン、ハロ−置換スチレン(例えば、ジブロモスチレンおよびトリブロモスチレン)、ビニルナフタレン、およびビニルアントラセンが挙げられる。好ましくは、モノ不飽和ビニル芳香族モノマーは、スチレン、(C−C)アルキル−置換スチレンおよびその混合物から選択される。好適な(C−C)アルキル−置換スチレンに含まれるものは、例えば、エチルビニルベンゼン、ビニルトルエン、ジエチルスチレン、エチルメチルスチレンおよびジメチルスチレンである。上記ビニル芳香族モノマーのそれぞれの様々な位置異性体のいずれかが好適であることが理解される。好ましくは、コポリマーは約15〜99%、より好ましくは約75〜90%のモノ不飽和ビニル芳香族モノマー単位を含む。
【0017】
場合によっては、非芳香族モノ不飽和ビニルモノマー、例えば、脂肪族不飽和モノマー、例えば、塩化ビニル、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸およびアルキル(メタ)アクリラートがビニル芳香族モノマーに加えて使用されうる。使用される場合には、非芳香族モノ不飽和ビニルモノマーは、重合単位として、マクロポーラスコポリマーを形成するために使用される全モノマー重量を基準にして、マクロポーラスコポリマーの約0〜10%、より好ましくは約0〜5%、および最も好ましくは約0〜2%を構成することができる。
【0018】
マクロポーラスコポリマーを製造するのに有用なポロゲンには、疎水性ポロゲン、例えば、(C−C10)芳香族炭化水素および(C−C12)飽和炭化水素、および親水性ポロゲン、例えば、(C−C10)アルカノールおよびポリアルキレングリコールが挙げられる。好適な(C−C10)芳香族炭化水素には、例えば、トルエン、エチルベンゼン、オルト−キシレン、メタ−キシレンおよびパラ−キシレンが挙げられ;上記炭化水素のそれぞれの様々な位置異性体のいずれかが好適であると理解される。好ましくは、芳香族炭化水素はトルエンもしくはキシレンまたはキシレンの混合物、またはトルエンとキシレンとの混合物である。好適な(C−C12)飽和炭化水素には、例えば、1種以上のヘキサン、ヘプタン、およびイソオクタンが挙げられ;好ましくは、飽和炭化水素はイソオクタンである。好適な(C−C10)アルカノールには、例えば、イソブチルアルコール、tert−アミルアルコール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、メチルイソブチルカルビノール(4−メチル−2−ペンタノール)、ヘキサノールおよびオクタノールの1種以上が挙げられ;好ましくはアルカノールは1種以上の(C−C)アルカノール、例えば、メチルイソブチルカルビノールおよびオクタノールから選択される。
【0019】
コポリマーを製造するのに有用な重合開始剤には、モノマー可溶性開始剤、例えば、ペルオキシド、ヒドロペルオキシド、および関連する開始剤、例えば、ベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、クメンペルオキシド、テトラリンペルオキシド、アセチルペルオキシド、カプロイルペルオキシド、tert−ブチルペルオクトアート(tert−ブチルペルオキシ−2−エチルへキサノアートとしても知られている)、tert−アミルペルオクトアート、tert−ブチルペルベンゾアート、tert−ブチルジペルフタラート、ジシクロヘキシルペルオキシジカルボナート、ジ(4−tert−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカルボナート、およびメチルエチルケトンペルオキシドが挙げられる。また有用なのはアゾ開始剤、例えば、アゾジイソブチロニトリル、アゾジイソブチルアミド、2,2’−アゾ−ビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾ−ビス(α−メチルブチロニトリル)およびジメチル−、ジエチル−もしくはジブチルアゾ−ビス(メチルバレラート)である。好ましいペルオキシド開始剤は、ジアシルペルオキシド、例えば、ベンゾイルペルオキシド、およびペルオキシエステル、例えば、tert−ブチルペルオクトアートおよびtert−ブチルペルベンゾアートであり;より好ましくは、開始剤はベンゾイルペルオキシドである。ペルオキシド開始剤の使用量は、ビニルモノマーの全重量を基準にして、好ましくは約0.3%〜5%、より好ましくは約0.5〜3%、より好ましくは約0.7〜2%である。
【0020】
好ましくは、架橋コポリマーは、触媒のための基材として使用するための、ジビニルベンゼンコポリマー、スチレン−ジビニルベンゼンコポリマー、ジビニルベンゼン−エチルビニルベンゼンコポリマーおよびスチレン−エチルビニルベンゼン−ジビニルベンゼンコポリマーから選択される。これら架橋コポリマーは、当業者に知られているポリスルホン化のための従来の方法、例えば、三酸化硫黄(SO)、発煙硫酸またはオレウム(三酸化硫黄含有濃硫酸)、およびクロロスルホン酸でのスルホン化などに従って強酸官能基で官能化されうる。あるいは、モノスルホン化カチオン交換樹脂ポリマーは従来のポリスルホン化条件にかけられて、ポリスルホン化カチオン交換樹脂触媒を提供してもよい。
【0021】
乾燥イオン交換樹脂はケトンおよび金属の溶液と混合される。典型的なケトンには、アセトン、ブタノン、ペンタノン、シクロヘキサノン、ヘキサノンおよびこの混合物が挙げられる。典型的な金属には、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、およびその混合物が挙げられる。触媒は樹脂中に均一に分散されたゼロ価の状態の金属からつくられている。
【0022】
イオン交換樹脂は膨潤させられ、金属が樹脂中に分布させられる。バッチもしくは連続反応器において金属イオンの水溶液を水素形態のイオン交換樹脂と接触させることによりイオン交換樹脂に所望の金属イオンが添加されうる。金属イオンは金属塩、例えば、塩化物、臭化物、硝酸塩、硫酸塩、アセチルアセトナートおよび酢酸塩の形態で提供されうる。添加イオン交換樹脂はすすがれることができ、残留する塩もしくは酸をなくすことができる。触媒製造プロセス中にケトンはイオン交換樹脂から除かれうる。使用される金属塩の量は、金属もしくは金属イオンが最終的にイオン交換樹脂の約0.1〜2%添加、好ましくは約0.5〜1.5%添加、より好ましくは約0.8〜1.2%添加の量で存在するであろうように選択される。好ましい実施形態においては、イオン交換樹脂触媒は触媒の乾燥重量を基準にして0.1〜15%の金属を含む。
【0023】
好ましい実施形態においては、金属は還元剤なしで120℃未満の温度でゼロ価に変換される。製造される触媒は約5〜60%の収率、約70〜99%の選択性を含む。ある実施形態においては、触媒は20〜35%の収率、94〜99%の選択性を含む。収率は生成したケトンの量を基準にする。選択性は全生成物に対する生成したケトンの量を基準にする。本発明の方法においては、この方法の後での過剰な液体および液体廃棄物が最小であるかもしくは存在さえせず、かつ還元剤なしで120℃未満の低温で金属の還元が達成される。結果として、本方法により生じた乾燥触媒は前処理なしで還元条件に直接使用されうる。この触媒を用いて可能な反応には、これに限定されないが、アルキン、アルケン、アルデヒド、ケトン、アルコール、ニトリル、アミンおよびニトログループの少なくとも1種のアルドール縮合、脱水、ダイマー化、還元、酸化、アルキル化、エーテル化、エステル化、アルキル化および水素化から選択される反応が挙げられる。
【0024】
本方法のある実施形態においては、水素(H)形態のイオン交換樹脂1リットルが、0.5〜2リットルの蒸留水中の10〜50グラムの酢酸パラジウムの溶液に注がれ、このパラジウムは約1〜4時間イオン交換樹脂に吸収させられ、次いで、この溶液が樹脂からデカントして除かれる。あるいは、所望の量の金属イオンが樹脂によって保持されるまで、イオン交換樹脂のカラムに金属塩の水溶液を通過させることによりイオン交換樹脂に金属を添加することができる。これは、その後に、水で徹底的に洗浄されることができ、残留塩および添加プロセス中に生じる酸を除去することができる。
【0025】
触媒を使用するある実施形態においては、金属ドープイオン交換樹脂触媒は容器内に収容されているビーズの物理的形態であり、このビーズは触媒の床を形成する。ケトン反応物質または溶媒、例えばアセトンの供給流れが、水素(別の供給流れとして)の存在下で、ケトンの縮合反応が起こるのに充分な時間および温度で触媒床と接触させられる。反応生成物(飽和ケトン付加物)、副生成物(不飽和ケトン付加物)、および存在しうる未反応ケトン反応物質を含む縮合液体流れが触媒床から分離されることができ、その液体流れから従来の分離手段(例えば蒸留)によって所望のケトン付加物が回収される。
【0026】
当業者は、(1)バッチ操作、例えば、その操作においては触媒床に水素の存在下で液体流れが添加される、または(2)より好ましい連続操作、例えば、その操作においては、所望の反応が起こるのに充分な触媒床における滞留時間を可能にする速度で、液体流れが連続的にカラム反応器の一方の端に(水素と共に)供給され、その床の別の端から縮合液体流れが連続的に取り出されるなどの、好適な条件を選択することができるであろう。同様に、反応装置、床を通る反応物質流れの移動の方向についての上向流もしくは下向流の選択、反応時間および温度、具体的な反応物質、並びにケトン付加物の回収方法は、本明細書に提供される案内および当業者の利用可能な知識に基づいて容易に選択される。
【0027】
カラム反応器内の温度および圧力は、ケトン反応物質が触媒床においてその沸点である様に選択されうる。ケトン反応物質の温度/圧力の変化が使用されて、縮合反応が触媒床において液相で起こるような反応温度および条件の所望の組み合わせを提供する。条件は変えられることができ、触媒床に気相条件を提供することができ、並びにこの条件は縮合反応が液相で行われるものであり得る。好ましい実施形態においては、触媒床を流れる液体および気体が存在しているトリクル床条件が使用される。ある実施形態においては、この気体は水素であり、平衡液体/蒸気はアセトンである。より高い圧力を選択すると、より多くの液体を提供しうる。
【0028】
本発明の金属ドープイオン交換樹脂触媒は、ケトン反応物質および水素がバッチ反応条件下でまたは連続反応条件下で接触させられる縮合反応において使用されうる。ある実施形態においては、本方法は触媒蒸留プロセスをベースにした連続プロセスであり、ケトン反応物質の導入はリボイラーステージのすぐ上のカラム反応器の底部であり;この場合、生成物画分または流れは、さらなる処理のための蒸留装置のリボイラー部分から連続的に抜き出される。好ましくは、縮合反応を受けるケトン反応物質は触媒床を通って下向きに供給され、水素の流れは同じ方向に反応領域を通って流れる。しかし、反応物質供給流れを導入する他のバリエーション、例えば、並流および対向流水素流れ、フラッディングプロセス、および気相プロセスが使用されることができる。
【0029】
連続プロセスについては、反応物質の量に対して使用される触媒の量は、典型的には、LHSV(液体時間空間速度)で表される反応のスループット速度、または単位時間あたりの触媒の体積に対する反応物質の液体流速に関連する。装置利用および生成物発生を最大化するために高いLHSVが望ましい場合があるが、しかしこの目的を満たすことは原料の変換率%および所望の生成物に対する選択性%に対してバランスを取られなければならない。LHSVが低すぎる場合には、所望の生成物の生産速度(収率および選択性)が小さくなり、方法が経済的でない場合がある。LHSVが高すぎると、所望の量の変換率を提供するには触媒活性が不充分になる(プロセスが「反応速度論的に制限される」こととなる)であろう。LHSVの好適な値は、典型的には、好ましくは0.5〜10h−1、より好ましくは1〜8h−1、最も好ましくは2〜4h−1の範囲であろう。
【0030】
ケトン反応物質は触媒の存在下で、65〜200℃の温度で、1〜100bar(0.1〜10MPa)の水素の圧力で、水素と接触させられうる。典型的には、縮合反応は少なくとも1:1の水素/ケトン反応物質モル比で行われる。
【0031】
別の実施形態においては、本方法は、触媒蒸留装置のリボイラーセクションステージにおけるケトン反応物質の反応器カラムへの導入を伴うバッチ反応(上述のと同様)でありうる。リボイラーセクションにおいてケトン付加物の所望の生成物組成が達成されると、本方法は次いで停止させられうる。あるいは、バッチオートクレーブ反応器において特定の時間で縮合が行われることができ、次いで、冷却され、および蒸留もしくは他の従来の手段による所望の量のケトン付加物の回収が行われうる。
【実施例】
【0032】
以下の実施例は、本発明を例示するために示される。実施例においては、以下の略語が使用される。
GCはガスクロマトグラフである。
keVはキロ電子ボルトである。
kPaはキロパスカルである。
kVはキロボルトである。
LHSVは液体時間空間速度である。
mAはミリオングストロームであり;μAはマイクロオングストロームである。
MIBKはメチルイソブチルケトンである。
MPaはメガパスカルである。
psiはポンド/平方インチである。
RPMは回転/分である。
Wはワットである。
Cは摂氏であり;mlはミリリットルであり;μlはマイクロリットルであり;minは分であり;hは時間であり;secおよびsは秒であり;gはグラムであり;mはメートルであり;cmはセンチメートルであり;nmはナノメートルであり;mmはミリメートルであり;μmはマイクロメートルまたはミクロンであり;ccは立方センチメートルであり;ならびにnml/minは、圧力=1atm、温度=25℃および体積=22.4リットルで定義される気体標準条件でのミリリットル/分である。
【0033】
試験方法
走査型電子顕微鏡測定(SEM):SEM像形成のための伝導性塗膜を提供するために、サンプルが金/パラジウム合金でスパッタコーティングされるか、あるいはサンプル上に炭素コーティングが蒸着させられた。スパッタコーティングしたサンプルは主として像形成のために使用され、炭素コートされたサンプルは主として元素分析のために使用された。鉄でコーティングされた石灰石の乾燥状態での像が、JEOL840SEMおよびJEOL6700FESEM(電界放射型走査型電子顕微鏡)(両方ともマサチューセッツ州ピーボディーのJEOL USAから得られた)の両方を用いて、10〜20keVの加速電圧で撮影された。JEOL840からの像はPGT Imix−PCソフトウェア(ニュージャージー州プリンストンのプリンストンガンマテックインスツルメンツインク)を用いて撮られ、JEOL6700からの像はJEOLのPC−SEMソフトウェアを用いて撮られた。エネルギー分散x−線分光分析(EDSまたはEDX)スペクトルおよび元素マップはPGT検出器を用いて、PGT Imix−PCソフトウェアを用いて得られた。塗膜厚みの測定のために意図される像について100倍〜300倍の倍率が使用された。空間キャリブレーションおよび塗膜厚み測定はメリーランド州シルバースプリングのメディアサイバーネティックスからのImege−Pro Plus商標像分析ソフトウェアを用いてもたらされた。選択された石灰石およびチャコール粒子は外科用メスで半分に切断され、EDSによる鉄の浸透を観察するために、得られた切断面は電子ビームに対してできるだけ垂直に向けられた。
【0034】
実験条件:
【表1】

【0035】
X−線蛍光(XRF):サンプルはオランダ国アルメロのPANalyticalからのPhilips/PANalyticalPW2404波長分散型X線蛍光光度計を用いて分析された。サンプルは110℃で一晩乾燥させられた。ほぼ1〜1.5gの各サンプルがポリプロピレン膜を備えたXRFサンプルカップ内に秤量され、ヘリウム下で分析された。オランダ国、ベルドホーベンネプチューンズ2NL−5505NHのオメガデータシステムズビーブイからのユニクアントソフトウェアパッケージ(これは、スタンダードレス定量パッケージである)を用いてその結果が計算された。結果が計算されて、元素はCa以外、その酸化物形態で存在していたことが推定され、これはCaCOであると推定される。サンプルは全て無機であるとも推定された。XRFにおいては、x線ビームがサンプルに焦点あわせされ、これは内殻電子を動かし;外殻電子がその内殻電子に置き換わり、そのプロセス中に、それらの間のエネルギー差に等しい光(または蛍光)を放射した。放射した光の波長は各元素に対して独自であり、放射した光の強度は元素の濃度に比例する。波長分散型XRF分光計は回折結晶を使用して、様々な波長の放射光を分ける。
【0036】
X−線回折(XRD):ニッケルフィルター銅Kα放射の50kV/200mAでのリガクD/MAX2500。サンプルは、0.03度のステップで、0.25度/分で5〜85度の2θについてスキャンされた。反射位置が使用され、サンプルは20RPMで回転させられた。ビーズ状のサンプルが標準体積サンプルホルダ内のストップコックグリースの層上に取り付けられた。このビーズはグリースの上層内にあり、回折計の集束サークル上にサンプルを存在させる様に注意深く水平にされた。
【0037】
XPS:XPSデータはサーモK−アルファX線光電子分光計で集められた。励起源として、単色Al Kalpha X線(72W、12keV、6mA)が使用された。分析領域は100μmであった。20eVの通過エネルギーが使用されて高解像データを集め、一方200eV通過エネルギーが使用されてサーベイスペクトルを集めた。90度のテイクオフ角度が使用された。CasaXPSソフトウェアが使用されてデータを検討した。サンプルは両面銅テープ上に樹脂をまき散らすことによって調製された。各サンプルについて最低限5つのビーズが分析された。
【0038】
収率、変換率、および選択性:反応からの生成物はGCクロマトグラフにインジェクトされる。様々な反応生成物が分析され定量化された。アセトン変換率は反応して生成物を作るアセトンであり、生成物収率は得られた所望の生成物の量であり、選択性はGCによって決定された全ての生成物に対する目的生成物の割合である。
【0039】
二重カラムGC−FID法の説明:
キャリアガス:高圧室窒素からのN
インジェクター:0.2μl体積
インレット:フロント、モード:スプリット、温度:250℃、圧力:5.4psi(37kPa)
スプリット比:50.0対1、スプリットフロー73.0ml/分;合計フロー76.6ml/分
ガスセーバー:20.0ml/分、2.00分
カラム:
カラム1:Macherei Nagel 726600、Optima Wax.30m×250μm×0.25μm
定圧、インレット:フロント、アウトレット:フロント
窒素フロー:圧力5.4psi(37kPa)、フロー0.7ml/分、平均速度20cm/秒
カラム2:Varian CP9151 VF1701MS キャピラリー30.0m×250μm×0.25μm
定圧、インレット:フロント、アウトレット:バック
窒素フロー:圧力5.4psi(37kPa)、フロー0.7ml/分、平均速度20cm/秒
オーブン:
設定点:40℃
保持時間:5分
勾配1:5.0℃/分、115℃まで
勾配2:15.0℃/分、240℃まで
最終時間:6.67分、240℃
合計操作時間:35分
検出器:
フロントFID:ヒーター:250℃
フロー:H:30ml/分、空気:350ml/分、メイクアップN:30ml/分
シグナル1:データレート20Hz、ピーク幅0.01分、スタート0、エンド35分
バックFID:ヒーター:250℃
フロー:H:30ml/分、空気:350ml/分、メイクアップN:30ml/分
シグナル2:データレート20Hz、ピーク幅0.01分、スタート0、エンド35分
【0040】
【表2】

【0041】
実施例
実施例1:触媒の製造
市販の乾燥イオン交換樹脂(すなわち、Amberlyst商標36DRY樹脂)および比較的低い沸点を有する溶媒(すなわち、アセトン)中のPd塩溶液が使用された。
初期湿潤方法手順:樹脂に添加される金属の量および樹脂を膨潤させるのに必要な液体の量が計算された。金属塩の溶液が製造された。乾燥樹脂が金属含有溶液と混合された。樹脂の膨潤が達成され、過剰な液体は観察されなかった。この材料は次いで溶媒を蒸発させるであろう温度で乾燥させられた(溶媒は回収されることができた)。樹脂の色が暗黒色に変化したことが観察された。XPSによる測定で、金属がゼロ価に還元され一部分はPd(II)として残留していたことが確認された。この触媒を乾燥させて、何らかの反応条件のための触媒としての用途に使用する準備ができた。XRDによる測定で、Pd結晶の存在が決定され、そしてXPSはPd(0)およびPd(II)に対応する金属の価数を決定した。
【0042】
実施例2:Pd触媒の製造
1gの強酸カチオン性スチレン系樹脂が110℃で一晩乾燥させられた。アセトンおよび酢酸Pdの溶液が製造された。透明な色の溶液が含まれていた。Pdの使用は、乾燥基準で樹脂の1重量%となるように計算され、および使用される全液体は選択された溶媒について樹脂の全膨潤容量よりも5%少ない様に計算された。この液体は樹脂と30分間室温で混合され、サンプル中に過剰な液体が存在しなかったことが観察された。この材料は次いで110℃で2時間乾燥させられ、樹脂の色は暗黒色であった。この触媒はXRDによって決定されたナノメートルPdクラスターを有しており、(シェラーの式による)40nmの推定結晶サイズおよびICPにより測定される1.02%Pdを有していた。
【0043】
実施例3:不均一系触媒適用
8gの乾燥Pd添加樹脂がカラムに充填され、アセトンが使用されてその触媒のスラリーを製造した。水素が300cc/分で提供され、アセトンは0.25ml/分で提供され、温度は100℃であった。このカラムは2MPaで操作された。3時間後に得られた生成物は集められ、GC装置で分析された。アセトン変換率および選択性が報告された。Amberlyst商標CH28触媒および実験室で製造した触媒JET13088が実施例2に従って製造された。条件:アセトンLHSV=2h−1、温度=120℃、圧力=2MPa、および水素流速=350nml/分。
【0044】
【表3】

a=MIBK製造前に水素で還元された市販の樹脂。
b=本出願における手順によって還元され、MIBK製造プロセスにおいて使用された実験樹脂。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥イオン交換樹脂をケトンおよび金属の溶液と混合し;
前記イオン交換樹脂を膨潤させ;
前記金属を前記樹脂中に分布させ;並びに
還元剤を使用することなく120℃未満の温度で前記金属をゼロ価に変換する;
ことを含む不均一系触媒を製造する方法。
【請求項2】
乾燥イオン交換樹脂が乾燥イオン交換樹脂および部分乾燥イオン交換樹脂の少なくとも1種を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
イオン交換樹脂からケトンを除去することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
湿潤イオン交換樹脂を乾燥させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
触媒が、その中に分布させられた、触媒の乾燥重量を基準にして0.1〜15パーセントの金属イオンを含み、金属イオンがパラジウム、白金、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、銅、金および銀の1種以上から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
触媒が約5〜60%の収率および70〜99%の選択性を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ケトンがアセトンを含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法によって製造された不均一系触媒。
【請求項9】
アルキン、アルケン、アルデヒド、ケトン、アルコール、ニトリル、アミンおよびニトログループの少なくとも1種のアルドール縮合、脱水、ダイマー化、還元、酸化、アルキル化、エーテル化、エステル化、アルキル化並びに水素化から選択される少なくとも1つの反応のための、請求項1に記載の方法によって製造された不均一系触媒の使用。
【請求項10】
乾燥イオン交換樹脂を、パラジウム、白金、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、銅、金および銀の少なくとも1種の金属並びにケトンの溶液と混合し;
前記イオン交換樹脂を膨潤させ;
前記金属が乾燥基準で触媒の0.1〜15重量%を構成するように前記金属を前記樹脂中に分布させ;並びに
還元剤を使用することなく120℃未満の温度で前記金属をゼロ価に変換する;
ことを含む不均一系触媒を製造する方法。

【公開番号】特開2012−11378(P2012−11378A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−132754(P2011−132754)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】