説明

不均一系触媒ライブラリーの連続的製造

【課題】迅速かつ効率的な方法により比較的多量の固体、特に不均一系触媒のライブラリーの製造方法を提供する。
【解決手段】a)触媒中に存在する化学元素および/または前記化学元素の元素化合物の少なくとも二個の噴霧可能な溶液、乳濁液、および/または分散液、ならびに、任意に有機担体材料の分散液を調製する工程、
b)少なくとも二個の異なる溶液、乳濁液、および/または分散液を混合装置に計量導入し、所定の比で均一混合する工程、
c)混合装置から取り出した混合物を乾燥し、乾燥混合物を回収する工程、
d)工程b)における比を変更し、N個の異なる乾燥混合物が得られるまで、工程b)、工程c)、および工程d)を(N−1)回繰り返す工程、および、
e)混合物を、任意に成形およびか焼して、固体を得る工程、
を有する、固体触媒ライブラリーの逐次製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不均一系触媒ライブラリーの製造方法、および、これに適した装置に関する。
【背景技術】
【0002】
個々の物質の合成および研究に向けられた古典的化学に加えて、新規な化合物を製造および研究するために、組み合わせ化学が発展してきた。このアプローチでは、非常に多くの反応物質をワンポット合成において反応させ、得られた反応混合物が、例えば、薬理活性などの所望する特性を呈するかどうか分析される。反応混合物において活性を発見した場合、反応混合物のどの特定の物質が前記活性に対応しているかをさらなる段階において決定する必要がある。実際に活性のある化合物を特定するための費用が高額であることに加えて、多様な反応物質について不要な副反応を除外することは困難である。
【0003】
他にハイスループット合成のアプローチにおいて、多様な異なる反応器において多数の反応物質を特定の用量で反応させることによって、多様な化合物が合成される。このプロセスでは、例えば、混合物の薬理活性の場合に、その製造に用いられる出発材料がすぐにわかるようにするため、それぞれの反応器中に一種の反応生成物が存在するのが好ましい。
【0004】
新規な薬理活性物質を調査するより特有のコンビナトリアル合成の初期の用途に加えて、特に最近では、この合成方法がまた低分子量有機化合物および有機または無機触媒へと拡大している。
【0005】
X.−D.Xiang et al.,“A Combinatorial Approach for Materials Discovery”Science 268,(1995),1738〜1740ページには、基板上でのBiSrCaCuOおよびYBaCuO超伝導フィルムの製造、すなわち、物理的なマスキング法および蒸着技術法によって適当な金属を堆積させて得られる異なる金属組成物の連結アレイの製造が開示されている。焼成後、異なる組成物がアレイ上の異なる位置に出現し、例えばそれらの伝導性などが、マイクロプローブによって調査される。
【0006】
WO96/11878には、超伝導性アレイに加えて、ゼオライトの製造が開示されており、その製造では、スポットタイプ基板上でインクジェットを用いて多数の金属塩溶液を予め混合をせずに、それぞれの場合において必要とされる量を測定し、最後の溶液の添加によって沈殿が開始する。BSCCO超伝導体は、必要とされるそれぞれの金属の硝酸塩溶液を分離測定し、スポットタイプ基板上に噴霧した後に加熱することによっても製造できる。
【0007】
WO98/47613には、スパッタリング法、CVD法、またはPVD法を用いて、関心をひく可能性がある物質のライブラリーを製造することができる多くの方法が開示されている。この出願では、核心において、一つの基板上で少なくとも二個の化合物(別々の物質として存在する)を明確に分離することができ、結果として複合材料が得られる適切なマスキング技術の使用について記載されている。さらに、この方法の手段によって、スパッタ基板上に傾斜を形成することで異なる組成の物質ライブラリーを製造することができる。
【0008】
上述した方法は、多くの不利を有している。まず、機械的分離によって、所望の特性について、相互別々に連続的に試験することのみでき、一つの基板上に小型の連続的ライブラリーを製造する。次に、これらの基板コーティング技術によって製造される試料の量が非常に少ない(基板上に薄い層として数ミリグラムのみ)ので、か焼工程または特定の媒体(液体、ガス)を用いた処理など、特定の処理が、特に再生工程における条件または試料の量の増大において、困難をもたらす。さらに、スパッタ法の不利は、製造される物質の形態、結晶化度および粒径が、慣用の方法、すなわち、噴霧法、沈殿法、または含浸法によって製造される物質と大きく異なることである。例えば、硬さ、イオン伝導性、熱伝導性、誘電定数、電子伝導性、熱起電力、磁気特性、空隙率などの材料特性は、とりわけ、結晶化度、結晶の結晶学的性質または粒子の粒径程度、欠陥、粒界、および、製造条件によって大きな影響を受け得るその他のパラメーターなどに相当程度、左右されるため、組み合わせ法によって決定されたパラメーターの適用性が不明確である。上述した製造技術のさらなる問題は、基板の影響なしに材料の有用な特性を試験することであり、少量の材料および薄いフィルムに基づくときのみ困難ではあるが可能となる。電子的または磁気的な特性などの特定の用途では、非担持材料の製造、および、得られた物質の有用な特性の試験に大きな関心がある。
【0009】
DE−A−19955789には、例えば、溶液または分散液など、少なくとも二個の異なる噴霧可能な材料成分を、基板から離れかつ相互に少し離れた少なくとも二個のノズルから基板上の同じ側に噴霧し、これにより異なる組成の物質が基板上の異なる表面領域で得られる平面基板の表面領域における二次元配列状の物質のライブラリーの組み合わせ法による作製方法を開示している。
【0010】
この方法は、また、比較的多量の材料の製造には適用できない。
【0011】
DE−A−10303526は、より早い優先権(2003年1月29日の優先日)を有するが、本発明の出願時では公開されていないもので、これは複合金属酸化物の製造に必要とされる出発化合物から、溶媒中で混合溶液を連続的に製造し、この混合溶液を乾燥機に供給して溶媒を除去し、得られた固体を高温で熱処理する複合金属酸化物の製造方法に関する。この方法において、前駆体溶液は、それぞれ必要とされる出発化合物を副次的な量で含有する、少なくとも二個の空間的に分離された副溶液からなる。
【0012】
WO02/04112は、多変数のスクリーニング反応器における不均一系触媒の分析方法に関する。この反応器は、並流反応器であることが好ましい。図2Aは、異なる流通反応器において、異なる反応状態を設定することができる並流反応器を示す。異なる評価方法が実施されている。
【0013】
EP−A−1283073は、担体を並行に注入した後に乾燥およびか焼する、注入器中での担持触媒の並行的な製造が開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、公知の方法における不利を回避し、迅速かつ効率的に比較的多量の不均一系触媒を製造できる、固体触媒、特に不均一系触媒のライブラリーの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
我々は、
a)触媒中に存在する化学元素および/または前記化学元素の元素化合物の少なくとも二個の噴霧溶液、乳濁液、および/または分散液、ならびに、任意に有機担体材料の分散液を調製する工程、
b)少なくとも二個の異なる溶液、乳濁液、および/または分散液を混合装置に計量導入し、所定の比で、溶液、乳濁液、および/または分散液を均一混合する工程、
c)混合装置から取り出した混合物を乾燥し、乾燥混合物を回収する工程、
d)工程b)における比を変更し、N個の異なる乾燥混合物が得られるまで、工程b)、工程c)、および工程d)を(N−1)回繰り返す工程、および、
e)混合物を、任意に成形および任意にか焼して、固体を得る工程、
を有する、N個(一日以内の、Nは少なくとも2の整数である)の異なる固体触媒、特に不均一系触媒のライブラリーの逐次製造方法による発明によって上記目的が達成されることを見出した。
【発明の効果】
【0016】
本発明の方法および装置によれば、より多くの量の触媒を、短時間かつ低費用で製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、上述した通り、N個の異なる固体触媒、特に不均一系触媒のライブラリーの逐次製造方法に関する。
【0018】
ここで、“不均一系触媒のライブラリー”という用語は、特定の基板上に製造された非常に多数の異なる不均一系触媒を意味し、前記基板は別々の不均一系触媒を別々に取込むための区画を有している。この場合において、好ましくは、上述した多数の異なる不均一系触媒は、基板上に存在する。
【0019】
一方、異なる固体触媒、特に不均一系触媒は、多数の反応器中に導入された後、そこで不均一系触媒のアレイまたはライブラリーを形成してもよい。複数の反応器としては、例えば、多数の管、特に2、4、8、16、または64個の管を有する管型反応器などであってもよい。好ましい複数の反応器は、例えば、WO02/04112、DE−A−19955789、DE−A−19959973などの文献において記載されている。
【0020】
さらに、本発明者等は、それぞれの固体を複数の反応器へと別々に導入した後、所望する触媒特性を試験するために必要とされる方法を実施する工程を有する、上記方法によって得られた固体触媒、特に不均一系触媒のライブラリーの所望する触媒特性についての平行試験方法に関する発明によっても前記目的が達成されることを見出した。この並行試験方法は、上記した後者においてより詳細に記載されているものと同様である。
【0021】
本発明によれば、非常に多数の有機固体または無機固体を製造することができる。特に、無機固体触媒、さらには不均一系触媒が製造される。N個の異なる固体が一日(24時間)以内に製造される。本発明の方法は、N個の異なる固体触媒、特に不均一系触媒を、短時間で、迅速かつ連続的に製造することができる。慣用の方法によれば、今日まで、一つの固体触媒または不均一系触媒のみを一日以内に製造することが可能であった。また、本発明の方法は、固体触媒、特に不均一系触媒の製造の自動化および相当な迅速化を可能にする。
【0022】
工程b)において、均一混合が実施される。均一混合は、混合物の乾燥後、乾燥させた微粒子または粒子の組成物を分析することによって行われる。本発明によれば、個々の乾燥粒子の間には、組成の相違が、最大で30%、好ましくは最大で15%、特に最大で5%ある。ここで、組成物の相違は、例えば、ESCA、EDX、XPS、および同様の方法などの、空間的に決定される微細構造成分解析によって測定することができる。
【0023】
工程e)における成形としては、例えば、タブレット化、または、断片の形成などが挙げられる。例えば、乾燥混合物は、まず、タブレット状とし、粉砕することにより断片状とし、その後、か焼することができる。
【0024】
Nは、少なくとも2、好ましくは少なくとも9、特に好ましくは少なくとも45、特に少なくとも90の整数である。これは、本工程において、少なくとも2、好ましくは少なくとも9、特に好ましくは少なくとも45、特に少なくとも90、互いに異なる不均一系触媒が製造されることを意味する。この上限は、例えば50000、好ましくは例えば5000であり得る。これは、触媒中に存在する化学元素および/または前記化学元素の元素化合物の異なる溶液、乳濁液、および/または分散液の比を変更することによって変えることができる。溶液、乳濁液、および/または分散液は、ポンプによって、通例は、連続的に計量される。通例では、溶液、乳濁液、および/または分散液のために、溶液、乳濁液、および/または分散液をそれぞれ収容できる貯蔵器が用意される。それぞれの貯蔵器は、好ましくは50〜50000ml、より好ましくは100〜10000ml、特に好ましくは500〜5000mlの体積を有する。それぞれの貯蔵器から一つの液流がそれぞれ混合装置に送り込まれるように、それぞれの貯蔵器はパイプまたは管を介したポンプなどの手段によって混合装置に接続される。混合装置では、これによって各貯蔵器における異なる副流が合流して、全体の流れが形成される。異なる副流は、それぞれ所定の流速でともに流れて全体の流れを形成する。混合装置への異なる流れの計量導入は、混合装置内または混合装置の上流において直接、実施することができる。混合装置としては、溶液、乳濁液、および/または分散液を均一に混合するのに適したものであれば、いかなる混合装置であってもよい。例えば、静的または動的ミキサーなどであればよい。好ましくは、動的ミキサーが用いられる。混合作用は、上述した通り、可能な限り均一な系を、例えば、溶液、乳濁液、および/または分散液の状態で調製することができるようなものでなければならない。
【0025】
最も単純な場合、少なくとも二個の溶液の副流が、T部分の二個の注入口(好ましくはT部分の注入口において供給が縮小する)を通過する。T部分の内部では、二個の溶液の副流が合流し、ともに全体の溶液の流れとして、T部分から全体の溶液の流れが取り除かれるT部分の排出部へと流れる。二個の溶液の副流が合流した後、全体の溶液の流れとしてそれらのさらなる通過時に本質的に均一な混合が行われ、例えば、それらの合流の際に乱流が大部分に生じさせることなどによって引き起こされ得る。
【0026】
しかしながら、全体の溶液の流れは、本質的に均一に混合された溶液として流れて通過するが、出口路において、静的ミキサー(例えば、Sulzer Chemtech社製、SMXSタイプなどの一種、D−61239 Ober−Moerlen−Ziegenbergなど)および/または動的ミキサーをさらに一体化させることもできる。原理上は、静的ミキサーまたは動的ミキサーは、混合溶液流を形成するための混合を起こす乱流を同時に生成させるため、混合溶液流の流れにおいてそれぞれ作用する、固定障害物または可動障害物を含む空間である。“静的ミキサー”とは、例えば、フローピン(flow pins)など、固定された混合手段を含み、混合されるべき物質が通過して他の障害物とともに渦によって混合されるものを意味し;“動的ミキサー”とは、例えば、回転混合性の形態のものなど、動作中の混合手段を含むものを意味し;これらにおいて、混合すべき材料が互いに能動輸送によって混合される。
【0027】
実際では、超音波動作(例えば、Hielscher博士による超音波振動子UIP50など)によって、混合域における混合をさらに強力にすること、または、それが単独で引き起こすことが証明された。このため、桿菌様の超音波プローブなどが、混合域中に導入されてもよい。
【0028】
当然として、本発明の方法の上述した実施形態の例において、該方法の基本原理において大きな変化がなければ、“T部分”の注入部の数が2個を超過してもよい。
【0029】
混合物を、混合装置から乾燥機へと輸送し、これによって、溶液、乳濁液、および/または分散液を迅速に乾燥することができる。混合物を、混合装置から乾燥機へと、中間ポンプを有するさらなるパイプを介して輸送することができる。また、乾燥機への輸送は、既存の圧力または既存の流れを利用することによって行うこともできる。
【0030】
また、混合物を、好ましい形態である場合には、吸引によってときどき引き込む。
【0031】
上述した通り、それぞれの副流は、まず、混合装置において混合された後、乾燥機に輸送される。混合と乾燥の開始を同時にするため、乾燥機の噴霧ノズルにおいてそれぞれの成分を直接、混合してもよい。
【0032】
使用される乾燥機は、乳濁液、および/または分散液を迅速に乾燥させることができるものであれば、全ての乾燥機が好ましく用いられる。好ましくは、噴霧乾燥機、または、噴霧凍結乾燥機が用いられる。前記噴霧乾燥機または前記噴霧凍結乾燥機は、慣用の方法で設計され得る。
【0033】
上記の通りに形成された混合溶液流を、噴霧乾燥機(例えば、デンマーク、コペンハーゲン、ニロ(Niro)製、Minor Hi−Tec Niro Atomizer)の霧化頭を最短ルートに沿って直接、通過させ、微細に分割された液滴に分解することができ、高温ガス(例えば、空気、窒素、空気および窒素の混合物、希ガス、または酸化炭素)との接触によって乾燥させる。本発明の方法においては、上述した噴霧乾燥機の場合、高温ガスの注入温度は、例えば、200〜400℃、好ましくは310〜330℃であればよい。本発明によれば、乾燥ガスの排出温度は、100〜200℃、好ましくは105〜115℃とすべきである。噴霧乾燥機において、噴霧された混合溶液および高温乾燥ガスは、並流または向流によって導入されてもよい。噴霧において得られる液滴サイズは、通常は5〜1000μm、特には10〜100μmである。この液滴の乾燥時間は、一般的な噴霧乾燥機においては、1秒未満である。また、原理上は、本発明の方法における噴霧乾燥は、EP−A−0603836に記載されるように行ってもよい。
【0034】
本発明の方法において、全溶液の霧化は、ノズル法(例えば、膨張プレートノズル法、二流体ノズル法)、ガス圧力噴霧法、噴霧ディスク法または噴霧バスケット法(“回転ノズル”ともいう)などによってすることができる。本発明によれば、二流体ノズル法、噴霧ディスク法、および噴霧バスケット法が好ましい。後者のものは、他のノズルと比較すると、高エネルギー消費による高い技術的支出が必要であるが、形成され得る固体粒子においてそれほど細心の注意を払う必要がない。一般的に、全溶液は、加圧されずにディスクまたはバスケットに流され、散布され、平坦なディスクの縁からまたは穴が開けられたバスケットの縁から円錐状のくぼみに噴霧される。
【0035】
しかしながら、本発明の方法における溶液の副流は、また、DE−A−10043489において記載される動的ミキサー、DE−A−10041823によるマイクロミキサー、またはDE−A−19958355によるミキサーノズルに直接、供給されて、これらにおける発明に従って混合されてもよい。本発明の方法に用いられ得るこのタイプのミキシングノズルは、スムーズジェットノズル(smooth−jet nozzles)、レボノズル(levo nozzles)ボッシュノズル(Boschu nozzles)、またはジェットディスパーサー(jet dispersers)である。本発明においては、溶液の副流を合流させてこれらを混合させるだけでなく、得られた混合流の分配をもすることができるミキサーノズルを使用するのが好ましい。霧化された全溶液は、並流または向流の高温ガス手段によって、その後に乾燥させることができる。合流しないで流れている間に連続的に混合して形成された安定な副溶液による本発明の方法の有利な点としては、その結果として、混合された溶液流が直接かつ要求される短い時間内で形成され、混合溶液流が時間の浪費なく狭い滞留時間分布で噴霧乾燥することができることである。
【0036】
混合装置中への計量導入の間に、異なる溶液、乳濁液、および/または分散液の流速を変更または適応させることによって、上記工程b)およびd)における比を設定および変更することができる。異なる種類や濃度の出発原料を、異なる貯蔵器に与えることができる。過度の液量を回避するために、所望する生成物の組成より、異なる濃度の乳濁液、および/または分散液を貯蔵器から取り除くこともできる。全量、すなわち、全体の流れは、例えば、乾燥装置、特に噴霧乾燥機の作動中の最適な形態の範囲内で、変えることができる。したがって、全体の流れは、後工程で行われる最適な乾燥が確実に行われるように制御される。例えば、噴霧乾燥機などの最適な操作範囲は、当業者に知られている。また、混合された溶液、乳濁液、および/または分散液は、所望の液量および所望の生成物含有量となるように、水によって、希釈してもよい。異なる貯蔵器から異なる副流を合流させることで形成された全体の流れは、実質的にまたは正確に一定に維持される。これは、一定の物質の流れ(全体の流れ)が、混合装置および乾燥機を介して流れることを意味する。これは、混合操作および乾燥操作の制御が、異なる触媒組成にそれぞれ合わせて新しくする必要がなく、該方法において一度、設定された後は一定のままとなるという利点を有している。最大で±50%、好ましくは最大で±20%、特に最大で±5%の偏差は、ほどんど許容できる。本発明の方法において、まず、所望する混合比を有する組成物が得られるように、異なる貯蔵器からの副流が設定される。そして、所望量の不均一系触媒またはこれらの前駆体が得られるまで、副流を用いて噴霧乾燥が続けられる。好ましくは、異なる不均一系触媒は、それぞれ、0.1〜500g、好ましくは1〜100g、特に5〜50gの量で製造される。また、これらは、本発明の方法に従って、多いまたは少ない量で製造することができる。
【0037】
所望量の触媒または触媒前駆体の製造後、副流を変えて新たな触媒組成を得る。そして、所望量の触媒が製造されるまで、混合および乾燥が再び実施される。それぞれのさらなる触媒組成のため、前記工程は次々と(連続して)繰り返される。
【0038】
可能な限り正確な一群の組成を有する異なる不均一系触媒が得られるように、二種の触媒製造操作の間に、慣用の方法を用いて系を洗浄してもよい。このような場合、不均一系触媒の製造後、副流は止められ、例えば、酸またはアルカリの添加によりpHが塩基性、中性、または酸性であり得る脱イオン水による洗浄などで、装置全体が洗浄される。その後、次の触媒組成のため、副流の供給を開始して触媒の製造が続けられる。
【0039】
該方法のサイズの設計は、それぞれの要件に合わせることができる。好ましくは、全体の流れは、600ml/h〜15l/h、好ましくは0.5〜3l/h、特に好ましくは1.4〜2.6l/hの範囲内とする。このそれぞれの溶液、乳濁液、および/または分散液の全体の流れは、一定の工程条件が得られるように、混合装置への計量導入および乾燥の間は可能な限り一定であるのが好ましい。
【0040】
操作は、適した噴霧乾燥操作の範囲で実施されなければならない。
【0041】
好ましくは、溶液、乳濁液、および/または分散液の混合と乾燥との間の時間は、可能なかぎり短く維持すべきである。好ましくは、前記時間は、10分未満、好ましくは5分未満、より好ましくは1分未満、特に好ましくは10秒未満、特に3秒未満、さらには1秒未満である。前記時間は、混合装置および乾燥機の間の接続における装置設計や流速を介することによって満たすことができる。混合装置および乾燥機の間の経路は短くするのが好ましい。また、混合は、乾燥機の注入口で行うことも可能である。
【0042】
好ましくは、工程b)における比は、混合装置中で異なる溶液、乳濁液、および/または分散液をそれぞれ輸送するポンプの出力を制御する中央コンピューターによって、設定または変更される。前記コンピューターを介して、それぞれのポンプの出力を制御できるだけでなく、輸送時間を予め決定することができる。不均一系触媒の連続的な製造における全工程は、コンピューター制御の下で実施することができる。好ましいソフトウェアプログラムおよびポンプの好ましいコンピューター制御を介して、該方法が実施される前に、所望の触媒組成を決定してコンピューターに入力することができる。所望の溶液、乳濁液、および/または分散液で貯蔵器を満たした後、コンピューターはそれぞれのポンプの排出速度および量を自動的に算出および制御することができる。所望の組成を有する触媒の製造の最後に、コンピューター制御の下で製造装置を洗浄した後にすぐ、次の触媒組成の製造を続けることができる。
【0043】
コンピューターは、適切な入力媒体および出力媒体または装置を有するものが用いられる。通常のコンピューターは、画面、キーボード、およびプリンターを有する。
【0044】
また、本発明の方法によれば、混合装置における混合だけでなく、乾燥機中での乾燥もまたコンピューターによって制御することができる。例えば、噴霧乾燥のための温度プログラムを用いることができる。
【0045】
噴霧乾燥の後に得られた固体、例えば均一系触媒または不均一系触媒、特に不均一系触媒は、収集、貯蔵、および、さらに好ましい方法による処理が行われてもよい。一般的には、それぞれの不均一系触媒は、別々の容器に収集され、さらなる用途のために貯蔵される。ここで、収集および貯蔵の形態は、さらなる用途に左右される。例えば、得られた不均一系触媒は、管型反応装置の異なる管または固体材料からなる塊の異なる穿孔(boreholes)に導入され得る。特に不均一系触媒気相反応を実施するために相当する反応器設計は、DE−A−19955789の実施例に記載されているものが好ましい。
【0046】
また、本発明の方法によって製造された不均一系触媒は、容器の配列中に配置することができ、この場合、配列における容器の配置は、コンピューターの制御の下で行われる。この方法によって、配列中の所定の位置における不均一系触媒群のそれぞれの組成を、コンピューター中に記憶し、利用できるように維持することができる。
【0047】
工程e)において、上述した配列中でそれぞれの触媒混合物はそれぞれまたはともにか焼され、不均一系触媒となる。この手段によって、全ての触媒混合物において、一定のか焼条件を維持することができる。
【0048】
触媒前駆体組成物は、250〜1500℃、例えば300〜1000℃の温度(物質温度)で、不活性ガスまたは反応ガス含有雰囲気(すなわち、通例は、所定のか焼段階において、O2および/またはNH3を部分的に含むガス雰囲気)などにおいて、熱処理される。さらに、か焼雰囲気は、CO2、蒸気、アクリロニトリル、NOXを含んでいてもよい。
【0049】
反応ガスとしては、還元作用または酸化作用のどちらか一方を有していてもよい。か焼時間は、一般的には数分から数時間、通例は0.5〜3時間である。
【0050】
本発明の方法では、N個の異なる混合物が、混合装置において製造され、乾燥機において乾燥される。
【0051】
本発明によれば、不均一系触媒中に存在する化学元素および/または前記化学元素の元素化合物のいかなる溶液、乳濁液、および/または分散液を用いることができる。好ましくは、元素周期表における、IB族、IIB族、IIIB族、IVB族、VB族、VIB族、VIIB族、およびVIII族の元素、ランタニド元素、アクチニド元素、IA族、IIA族、IIIA族、IVA族、VA族、VIA族、およびVIIA族の元素、または、これらの化合物もしくは混合物を含む噴霧溶液、乳濁液、および/または分散液である。
【0052】
該方法において噴霧される成分は、好ましくは、金属塩溶液、金属塩分散液、または相当する酸化物である。任意で、Al23、ZrO2、SiO2、Y23、TiO2、活性炭、MgO、SiC、またはSi34などの無機担体材料の分散液が用いられてもよく、これらは噴霧乾燥に適用できる粒径のものが用いられる。
【0053】
本発明の一実施形態によれば、該方法は、一般化学量論式I
【0054】
【化1】

の複合金属酸化物(M1=TeおよびSbよりなる群から選択される少なくとも一種の元素;M2=Nb、Ti、W、Ta、Bi、Zr、およびReよりなる群から選択される少なくとも一種の元素;M3=Pb、Ni、Co、Fe、Pd、Ag、Pt、Cu、Au、Ga、Zn、Sn、In、Ce、Ir、Sm、Sc、Y、Pr、Nd、およびTbよりなる群から選択される少なくとも一種の元素;M4=Li、Na、K、Rb、Cs、Ca、Sr、およびBaよりなる群から選択される少なくとも一種の元素;a=0.01〜1、b=≧0〜1、c=>0〜1、d=≧0〜0.5、e=≧0〜1、n=(I)中の酸素と異なる元素の原子価および頻度によって決定される数)を製造するためのものではない。
【0055】
一般的に、液体混合物は、溶媒として用いられる液体化学成分、混合物におけるさらなる成分として分散助剤としての乳化剤を含む。溶媒および分散助剤としては、有機溶媒、乳化剤、および/または水、好ましくは水が用いられる。有機溶媒の好ましい例としては、アルコール、パラフィン、酢酸または無機酸などの酸、エステル、エーテル、ケトンなどである。さらに、有機添加剤などの好ましい分散剤と有機溶媒の混合物を用いてもよい。分散液/懸濁液が噴霧される場合、分散液/懸濁液中に存在する粒子は、好ましくは<50μm、特に好ましくは<10μmとすべきである。本発明によれば、超微粒子状の粉末を安定した分散液または懸濁液に転用することができる。分散剤の蒸発を可能な限り少なくするために、噴霧される分散液または懸濁液として固体の体積分率が可能な限り高いと同時に低い粘度を有するものを使用すべきである。好ましい分散剤の含有量は、好ましくは0.5〜50質量%、特に好ましくは1〜30質量%である。
【0056】
好ましい分散剤は、例えば、DE−A19955789などに記載されるものである。これらに記載される所定の分散剤は、流動性媒体(分散媒)中で多数の微細な粒子状の固体を分散させるために用いられる。固体に対して、好ましくは0.1〜10質量%、特に好ましくは0.5〜5質量%の分散媒が用いられる。
【0057】
本発明の不均一系触媒の製造における好ましい出発原料は、例えば、アンモニウム化合物である。溶液、乳濁液、および/または分散液は、溶液、乳濁液、および/または分散液の全量に対して、好ましくは0.5〜50質量%、特に好ましくは1〜30質量%の含有量で溶解成分または固体成分を含む。考慮すべき選択された前記化学元素の出発化合物は、原理上は元素自身であり、好ましくは明確に分割された形態であり、さらには、酸化物、水酸化物、オキシ水酸化物、無機塩類、好ましくは、硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、有機金属化合物、アルコキシドなど、好ましい形態により選択された前記化学元素を含む全ての化合物である。それぞれの出発化合物は、溶液、乳濁液、および/または分散液の形態で用いられる。
【0058】
金属は、それらの硝酸塩、シュウ酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、塩化物、塩素酸塩、硫酸塩、酸化硫酸塩、硫酸水素塩、水酸化物、酸化物として、過酸化物として、例えば、酢酸塩、シュウ酸塩、酒石酸塩などのカルボン酸塩として、あるいは、アルコキシドとしての形態で添加され得る。これらのいくつかの例としては、下記のものがある:
A.アンモニウム塩
ヘプタモリブデン酸アンモニウム
メタバナジン酸アンモニウム
パラタングステン酸アンモニウム
B.硝酸塩
硝酸鉄(IIまたはIII)
硝酸銀
硝酸ビスマス
C.硫酸塩/酸化硫酸塩
硫酸鉄
酸化硫酸チタニウム
D.シュウ酸塩
シュウ酸ニオブ
E.酒石酸塩
酒石酸アンチモン
酒石酸ニオブ
【0059】
さらに、酢酸アンモニウム、酢酸、シュウ酸アンモニウム、シュウ酸、アンモニウム酒石酸塩、酒石酸、クエン酸アンモニウム、クエン酸、またはEDTAアンモニウムの溶液を別々に添加してもよく、また、これらの化合物の混合物を添加してもよい。
【0060】
さらに、緩衝系を、それぞれの塩、および、例えば、炭酸塩緩衝系、ホウ酸塩緩衝系、酢酸塩緩衝系、またはクエン酸塩緩衝系などの個々の緩衝溶液として、課す、加える、共に噴霧することができる。
【0061】
好ましい元素化合物、特に触媒活性金属の化合物は、水溶性の酸化物、水酸化物、酸、または、有機塩もしくは無機塩で中和された有機酸もしくは無機酸の塩である。
【0062】
活性金属としては、元素周期表の亜族、例えば、酸化触媒として第V亜族および第VI亜族が、水素化触媒として白金族が好ましい。また、本発明の方法は、
特に金属および金属酸化物など、触媒活性があるとみなされていない(特殊)元素のスクリーニングをすることができる。これらは、各溶液、乳濁液、および/または分散液において、それぞれの場合、1以上、より好ましくは2以上、特に好ましくは3以上の、化学元素、一般的に、50個未満の化学元素を、それぞれ1質量%を超えて含まれているのが好ましい。化学元素は、例えば、種々の混和性溶液の混合物、小さい液滴直径の密接した乳化剤、および/または、好ましくは、化学的に混合された沈殿物の形態など、微細に分割された沈殿物の形態で相当する化学元素を一般的に含む懸濁液(分散液)など、非常に緊密な混合物における混合物中に存在するのが好ましい。また、実質的に均一な分布において、塩水およびゲル、特に相当する化学元素を含むこれらを使用することもできる。
【0063】
本発明により製造される不均一系触媒は、いかなる化学反応にも適している。好ましい均一系触媒は、ガスまたはガス混合物の反応、特に酸化反応に適している。好ましい反応の例としては、窒素酸化物の超臨海流体抽出、アンモニア合成、アンモニア酸化、硫化水素から硫黄への酸化、二酸化硫黄の酸化、メチルクロロシランの直接合成、精油、メタンの酸化カップリング、メタノール合成、一酸化炭素および二酸化炭素の水素付加、メタノールから炭化水素への変化、触媒改質、触媒分解および水素化分解、石炭ガス化、液化、燃料電池、不均一系光触媒、MTBEおよびTAMEの合成、異性化、アルキル化、芳香族化、脱水素化、水素化、ヒドロホルミル化、選択的または部分的酸化(例えば、プロペンをアクリル酸に、プロパンをアクリル酸に、ブタンを無水マレイン酸になど、飽和または不飽和カルボン酸の製造)、アンモ酸化(例えば、プロパンをアクリロニトリルに)、飽和または不飽和カルボン酸、無水物、アルデヒド、およびケテンの製造、アミノ化、ハロゲン化、芳香族求核置換、付加および脱離反応、オリゴマー化、メタセシス、重合、エナンチオ選択的触媒反応、および生体触媒反応がある。
【0064】
本発明において用いられる各溶液、乳濁液、および/または分散液は、さらに、酸および/または塩基を添加することによって、所定のpHに調整されてもよい。また、それぞれの貯蔵器から混合装置へと酸および/または塩基を計量導入することができる。多くの場合において、pH中性懸濁液が用いられる。
【0065】
また、本発明は、
触媒中に存在する化学元素および/または前記化学元素の元素化合物の溶液、乳濁液、および/または分散液、ならびに、任意に無機担体材料の分散液を収容する少なくとも二個の貯蔵器、
溶液、乳濁液、および/または分散液を混合する混合装置、
ポンプ、および、混合装置と複数の貯蔵器とをそれぞれ独立して接続するパイプ接続部、
パイプを介して混合装置に接続され、混合装置を通過した混合物を乾燥するための装置、および、
ポンプの排出速度を制御するコンピューター、
を有する、N個(Nは少なくとも2の整数である)異なる不均一系触媒のライブラリーの逐次製造装置に関する。
【0066】
乾燥装置は、好ましくは、噴霧乾燥機および噴霧凍結乾燥機である。通常では、2個以上の貯蔵器が用いられる。好ましくは、2〜20個の貯蔵器、特に好ましくは3〜8個の貯蔵器が用いられる。貯蔵器の大きさは、すでに、上述した通りである。さらに、本発明において用いられる装置は、上述した特長および特性を有しているのが好ましい。
【0067】
本発明の方法および本発明の装置は、公知の方法により可能となるものよりも、多くの量の触媒を有利な方法により製造することができる。自動化された製造手段によって、非常に多数の触媒組成を短時間かつ低費用で合成することができる。前記触媒は、後の実際の適用において使用される方法において得ることもできる。このように、本発明の触媒製造は、従来公知の方法よりもかなり実用に近い。
【実施例】
【0068】
下記実施例により、本発明をより詳細に説明する。
【0069】
実施例1
複合金属酸化物の製造
溶液Aを得るために、まず、ガラス溶液中で水4000mlを80℃に加熱した。80℃に維持し、撹拌しながら、そこに、81.53質量%(=4molのMo)の含有量でMoO3を含むヘプタモリブデン酸アンモニウム(H.C.Starck,Goslar製(ドイツ))706.2gを溶解させた。同様に、80℃で、77.4質量%(=1.2molのV)の含有量でV25を含むメタバナジン酸アンモニウム(H.C.Starck,Goslar製(ドイツ))141.0gを、得られた澄んだ透明溶液中で撹拌して溶解させた。同様に、80℃で、≧99%(=0.92molのTe)の含有量でTe(OH)6を含むTe(OH)6(Fluka Chemie有限責任会社製(スイス)、Buchs)211.28gを得られた透明溶液中で撹拌して溶解させた。得られた赤色調の溶液を撹拌しながら25℃まで冷却し、25℃の温度の水で補足し、全体積が4500mlの澄んだ透明な副溶液Aを得た。
【0070】
溶液Bを得るために、20.1質量%(=0.48molのNb)の含有量でNbを含むシュウ酸ニオブアンモニウム(niobium ammonium oxalate)(H.C.Starck,Goslar製(ドイツ))221.28gを、80℃に加熱した水1000ml中に溶解した。得られた澄んだ透明溶液を、25℃まで冷却し、同様に25℃の温度を有する水で補足し、全体積が1500mlの澄んだ透明な副溶液Bを得た。
【0071】
二個の安定な水溶液AおよびBを、プロミネント(ProMinent)タイプおよびガンマg/4aタイプの二個の実験室的な定量ポンプ手段によって、二個の別々のプラスチックチューブからY型のプラスチック製のT部品の二個の注入部へと、連続的に送り込んだ。前記T部品の三つの管状部(二個の注入部と一つの排出部)は、それぞれ、5mmの内径、および、38mmの長さを有している。前記溶液Aを、体積流速1500ml/hの流れで、前記溶液Bは体積流速500ml/hの流れで輸送させた。前記T部品の内部において、二個の溶液Aおよび溶液Bは、併合され、2000ml/hの全体の溶液流となって前記T部品の排出部へと流された。このとき、SMXS型静的ミキサー(0ber−Moerlen−Ziegenberg、Sulzer Chemtech製(ドイツ))を設置した。静的ミキサーの直径は4.8mmであり、ミキサーバーの長さは35mmであった。前記T部品の排出部の端部は、供給された混合溶液流を噴霧化(液滴サイズ、約30μm)する噴霧乾燥器の霧化頭(Niro Atomizer,Minor−Hi−tec type,Niro Copenhagen,(デンマーク)製)に直接接続されている。乾燥塔の天井に取り付けられた熱風分配器の中央部に取り付けられた霧化頭内では、混合された溶液流が、内径6mm、長さ15cmの接続ラインを通って、30000rpmで回転する噴霧ディスク(チャンネルディスク)へと流される。これにより噴霧化された霧を、熱風(並流、注入温度320℃、排出温度105℃)によって乾燥させた。3時間以内で、全溶液流の全量6000mlを噴霧乾燥させた。
【0072】
全溶液流2000ml/h、前記T部品の排出部の内径、および静的混合部の長さ35mmから、合流した副溶液流AおよびBが実質的に均一に混合された溶液流へと変化する間の時間t1が約1.2秒と算出された。さらに、内部直径6mmを有する霧化頭における長さ15cmの接続ラインを通って、静的ミキサーの排出部から噴霧化点への混合溶液流の輸送を考慮すると、溶液流AおよびBの合流から混合溶液流の噴霧化までの時間t2は9秒未満となる。乾燥時間を1秒未満とすると、合流から乾燥粉末までの時間t3は10秒未満である。
【0073】
溶液AおよびBと選択された副流との化学量論(3:1)を考慮すると、得られた乾燥粉末は、Mo10.3Nb0.12Te0.23の化学量論モル比で、Mo、V、Nb、およびTeの元素を含んでいる(前記T部品の排出部に噴霧乾燥器の霧化頭を直接接続せずに、代わりに内径6mm、長さ15cmの透明のプラスチックチューブを前記T部品の排出部の端部に直接接続すると、混合溶液流は真下に取り付けられた回収器へと送られ、外観検査ではプラスチックチューブの全長においてだけでなく回収器に到達したものまで混合溶液流はいかなる沈殿物を含まず、全ての範囲において澄んでいてかつ透明であることがわかり;プラスチックチューブから流出した混合溶液のろ過により、固体を含んでいないことを確認した)。
【0074】
噴霧された粉末150gを、DE−A10118814の図1に記載の回転式球状炉中で、室温(25℃)から275℃まで、5℃/minの加熱速度で、空気(101(S.T.P.)/h)下で、加熱した。その後、すぐに、窒素分子流(101(S.T.P.)/h)下で、2℃/minの加熱速度で、275℃から650℃まで加熱し、この温度を窒素分子流を保持しつつ6時間維持した。そして、窒素流を保持しつつ、これによって25℃まで冷却した。黒色のか焼された複合金属酸化活性物Mが得られた。
【0075】
副流を変えることによって、異なる組成の複合金属酸化物が得られた。
【0076】
実施例2
5つの貯蔵器、蠕動ポンプ、混合および噴霧化塔を有する製造系ならびに中央制御ユニットを有する製造装置において、一段式プロパン酸化用の九つの触媒を製造した。
【0077】
KPG攪拌器が取り付けられ、それぞれ5lの体積を有する加熱可能なガラス容器(貯蔵器)において、下記組成を有する溶液を調製した:
(i)脱イオン水中、ヘプタモリブデン酸アンモニウム(H.C.Starck,Goslar、82.55質量%のMoO3)130g/l(溶液A)
(ii)脱イオン水中、メタバナジン酸アンモニウム(G.f.E.,Nuremberg、77.5質量%のV25)28g/l(溶液B)
(iii)脱イオン水中、テルル酸(Fluka製、99%H6TeO6)37g/l(溶液C)
(iV)脱イオン水中、シュウ酸ニオブアンモニウム(H.C.Starck,Goslar、22.0質量%のNb)200g/l(溶液D)
【0078】
それぞれの容器は、ライン(内径6mm)を介して、それぞれの溶液が共に導入される混合スターに接続される。これらから、不溶性金属塩の混合物がミキサー(超音波放射体、Dr Hielscher製 UIP50タイプ)を通って通過した後、噴霧化塔を通過する。それぞれの溶液を、5つの蠕動ポンプ(貯蔵器あたり1ポンプ)によって混合スターおよびさらに超音波放射体の混合器へと輸送した。混合溶液は、ポンプによる輸送に加えて、オーバーフロー装置を介して、溶液を引き込む噴霧化塔へと供給される。使用される噴霧化塔(BASF社内で作製、噴霧化塔の直径35cm)には、二流体ノズルが備え付けられ、水溶性混合液の噴霧化だけでなく噴霧された混合粒子の乾燥のため、窒素が充填された(注入ガス温度:290℃;排出ガス温度130℃)。乾燥物は、サイクロン中で分離し、回収した。プラスチック管を介した溶液AからDへの輸送速度、および、噴霧化塔の操作は、必要とされる出発溶液の濃度および所望の化学量論を入力する中央PCによって制御した。噴霧乾燥により選択された組成物が得られたら、サイクロンの下にある回収器を交換しなければならならず、これは手動または自動で行うことができる。
【0079】
得られた生成物は、タブレット状(直径16mm、高さ=10mm)であり、モルタル中で予め粉砕される(粒径画分0.7〜1.0mm)。これらの一部の3mlを、平行な別々の容器中(共有ガスが全てのか焼管に供給される)で14個の触媒をか焼できるか焼炉中に置いた。このか焼装置は、ナボサーム(Nabotherm)からマッフルファーネス中に挿入され、ガスが充填される。マッフルファーネスの温度を、まず、400l(S.T.P.)/hの空気流中で、室温から1.5℃/minの勾配で275℃まで直線的に上げ、そこで2時間、保持した。次に、ガスの供給を、空気から窒素(400l(S.T.P.)/h)に切り替え、同様にして、系を600℃まで1.5℃/minの勾配で加熱した。この温度で触媒を3時間、保持した後、ファーネスを放置し、室温まで冷却した。得られた触媒を、再び、粉砕し、粒径画分0.4〜0.7mmのものを触媒検査のために分離した。
【0080】
このように、一日以内に、下記の触媒が製造された。タブレット状およびか焼がなく、試料あたりに必要とされた時間は、約45分である。
【0081】
1. Mo10.4Te0.2Nb0.06x
2. Mo10.4Te0.2Nb0.20x
3. Mo10.4Te0.1Nb0.12x
4. Mo10.4Te0.3Nb0.12x
5. Mo10.2Te0.2Nb0.12x
6. Mo10.5Te0.2Nb0.12x
7. Mo10.4Te0.2Nb0.12x
8. Mo0.70.4Te0.2Nb0.12x
9. Mo1.30.4Te0.2Nb0.12x
10. Mo10.4Te0.2Nb0.12x
【0082】
比較例2
Mo10.4Te0.2Nb0.12x組成の触媒の製造:
メタバナジン酸アンモニウム(G.F.E.,Nuremberg,V2577.5質量%、理想組成:NH4VO3)52.57gを用いてその温度を60℃まで減じた。この溶液に、テルル酸(Fluka、99%H6TeO6)52.47gおよびヘプタモリブデン酸アンモニウム水和物(H.C.Starck、Goslar、82.55質量%MoO3、理想組成:(HH46MO724・4H2O)200.0gを添加し、前記組成物を溶解させ、最後に溶液の温度を30℃まで減じた(溶液A)。同時に、60℃で、シュウ酸ニオブアンモニウム溶液(H.C.Stack,Goslar、20.3質量%のNb)62.23gを、水250g中で調製し、溶解操作後、温度を30℃まで減じた(溶液B)。30℃で、溶液Bを溶液Aに添加し(約4分)、その後すぐ、短時間後に、沈殿のない橙赤色の懸濁液が形成された。この懸濁液を噴霧乾燥器(Niro製装置、Tin=290℃、Tout=130℃)で乾燥させた。
【0083】
得られた生成物を同様の方法でタブレット状(直径16mm、高さ=10mm)にし、上記した方法で粉砕した。得られた断片70gを、空気下(50l(S.T.P.)/h)、1.5℃/minの加熱速度で275℃まで、回転式球状炉(内部容量1lの石英ガラス球体)中で加熱し、この温度で1時間、保持した。次に、乾燥組成物を、窒素下(50l(S.T.P.)/h)、1.5℃/minの加熱速度で、600℃まで加熱し、この温度で2時間、保持した。同様にして、窒素下で、室温まで冷却した。
【0084】
タブレット化およびか焼がなく、試料あたりに必要とされた時間は、約5時間である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)触媒中に存在する化学元素および/または前記化学元素の元素化合物の少なくとも二個の噴霧溶液、乳濁液、および/または分散液、ならびに、任意に有機担体材料の分散液を調製する工程、
b)少なくとも二個の異なる溶液、乳濁液、および/または分散液を混合装置に計量導入し、所定の比で、溶液、乳濁液、および/または分散液を均一混合する工程、
c)混合装置から取り出した混合物を乾燥し、乾燥混合物を回収する工程、
d)工程b)における比を変更し、N個の異なる乾燥混合物が得られるまで、工程b)、工程c)、および工程d)を(N−1)回繰り返す工程、および、
e)混合物を、任意に成形および任意にか焼して、固体を得る工程、
を有する、N個(一日以内の、Nは少なくとも2の整数である)の異なる固体触媒、特に不均一系触媒のライブラリーの逐次製造方法。
【請求項2】
工程b)および工程d)における比を、混合装置中への計量導入の間に、異なる溶液、乳濁液、および/または分散液の流速を変更または適応させることによって、設定および変更する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
それぞれの溶液、乳濁液、および/または分散液の全体の流れを、混合装置への計量導入および乾燥の間、一定に維持する請求項2に記載の方法。
【請求項4】
溶液、乳濁液、および/または分散液の混合および乾燥の間の時間が、10秒未満である請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記乾燥が、噴霧乾燥機または噴霧凍結乾燥機により行われる請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記異なる固体が、それぞれ0.1〜500g製造される請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
工程b)における比が、異なる溶液、乳濁液、および/または分散液を独立して混合装置へ輸送するポンプの排出量を制御する中央コンピューターによって、設定または変更される請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
触媒中に存在する化学元素および/または前記化学元素の元素化合物の溶液、乳濁液、および/または分散液、ならびに、任意に無機担体材料の分散液を収容する少なくとも二個の貯蔵器、
溶液、乳濁液、および/または分散液を混合する混合装置、
ポンプ、および、混合装置と複数の貯蔵器とをそれぞれ独立して接続するパイプ接続部、
パイプを介して混合装置に接続され、混合装置を通過した混合物を乾燥するための装置、および、
ポンプの出力を制御する中央コンピューター、
を有するN個(Nは少なくとも2の整数である)異なる固体のライブラリーの逐次製造装置。
【請求項9】
乾燥装置が、噴霧乾燥機または噴霧凍結乾燥機である請求項8に記載の装置。
【請求項10】
それぞれの固体を複数の反応器に別々に導入した後、所望する触媒特性を試験するために必要とされる工程を実施する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法によって製造された固体ライブラリーの所望する触媒特性の平行試験方法。

【公表番号】特表2007−501108(P2007−501108A)
【公表日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522302(P2006−522302)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【国際出願番号】PCT/EP2004/008606
【国際公開番号】WO2005/016513
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】