不妊症関連DEFB−126欠失多型
本出願は、雄性個体のDEFB-126表現型および遺伝子型の状態を評価することによって雄性個体の生殖能の状態を判定するための診断方法を提供する。本発明は、DEFB-126核酸のタンパク質コード配列におけるジヌクレオチド欠失多型に関する。この変異体のアミノ酸配列は、野生型DEFB-126ポリペプチドと比較して、DEFB-126のカルボキシル末端の糖質含有ドメインが有意に変化している。この変異体は、異常なタンパク質機能および構造を生じさせて、精子機能および生殖能の低下を招く。本発明は、個体が生殖能低下を有するかどうかを判定するために、DEFB-126をコードする遺伝子に関して該個体の遺伝子型を解析するための方法を提供する。そのような判定により、自身の遺伝子型が生殖能低下のリスクを伴うかどうかについて個別の知識が提供され、かつ該個体が適切な生殖能治療選択肢を受けることを可能にする。本発明はさらに、DEFB-126欠失多型の有無に基づいて不妊症の高いリスクまたは確率を診断するのに有用であるキットを提供する。本出願はまた、不十分なレベルのDEFB-126を発現している個体からの精子において(たとえば受胎を達成するように)精子機能性を回復させる治療法および組成物も提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全開示が参照により本明細書に組み入れられる、2009年2月26日に出願された米国特許仮出願第61/155,807号の恩典を主張する。
【0002】
連邦政府資金援助を受けた研究開発の下で達成された発明に対する権利の声明
合衆国政府は、本発明における納付済みの実施権を有し、限られた状況において、国立衛生研究所(National Institutes of Health)によって授与された助成金第AI032738号および第AI050843号の条件によって規定されている妥当な条件において、特許所有者に対し、他者に実施許諾するよう求める権利を有する。
【0003】
発明の分野
本出願は、DEFB-126表現型および遺伝子型の状態を評価することによって雄性個体の生殖能の状態を判定するための診断法を提供する。本出願はまた、不十分なレベルのDEFB-126を発現している個体からの精子において(たとえば受胎を達成するように)精子機能性を回復するための治療法および組成物を提供する。いくつかの態様において、本発明は、DEFB-126遺伝子における多型を使用して、個体が不妊症の高いリスクまたは確率を有するかどうかを判定する方法および組成物も提供する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
ヒト不妊症とは、一般に、避妊なしの性交の1年後に妊娠を達成する能力がないことと定義される。この定義によると、世界の多くの国における不妊症の罹患率は約13〜14%である(Strickler et al., Am. J. Obstet. Gynecol. 172:766-73 (1995)(非特許文献1))。男性における不妊症は、一般に、精液の質のパラメータ、たとえば射精物中の精子濃度、運動性精子の割合および正常な形態を有する精子の割合の分析によって評価されるが、これらの尺度のいずれも、不妊症を診断するものではない(Guzick et al, N. Engl. J. Med. 345:1388-93 (2001)(非特許文献2))。原因不明の不妊症の罹患率は不妊男女カップルの約17%であると推定されている(Collins, Unexplained Infertility. In: Infertility Evaluation and Treatment(Keye, Chang, Rebar, and Soules, eds.) WB Saunders, Philadelphia, pages 249-262 (1995)(非特許文献3))。これらのケースにおいては、男性または女性のいずれのパートナにおいても生殖機能の異常を立証することができない。
【0005】
原因不明の不妊症を診断する必要性が存在する。本発明は、以下の開示を考察すると明らかになるように、これらの必要性および他の必要性を満たす。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Strickler et al., Am. J. Obstet. Gynecol. 172:766-73 (1995)
【非特許文献2】Guzick et al, N. Engl. J. Med. 345:1388-93 (2001)
【非特許文献3】Collins, Unexplained Infertility. In: Infertility Evaluation and Treatment(Keye, Chang, Rebar, and Soules, eds.) WB Saunders, Philadelphia, pages 249-262 (1995)
【発明の概要】
【0007】
不妊症の原因を知ることは、妊娠を達成することを求める男女カップルのための方向性のある医療介入への速やかな移行を可能にする。本発明は、一部には、DEFB-126をコードする遺伝子における2ヌクレオチド欠失(以下「DEFB-126欠失多型」)が、その多型を有する個体が不妊症になる確率を有意に増すという発見に基づく。
【0008】
一つの局面において、本発明は、個体の不妊症の高いリスクまたは可能性を判定するためにDEFB-126欠失多型の有無を評価するための組成物および方法を提供する。一つの局面において、本発明は、DEFB-126をコードする核酸の部分配列
内の個体のDEFB-126対立遺伝子を決定する工程を含む、該個体が不妊症の高い確率を有するかどうかを判定する方法であって、部分配列内の位置6〜10における5個の連続するシトシン「CCCCC」の存在が正常な生殖能を示し、部分配列の位置6〜10における3個以下の連続するシトシン「CCC」の存在が不妊症の高いリスクまたは可能性を示す方法を提供する。
【0009】
いくつかの態様において、方法は、DEFB-126をコードする核酸の部分配列
内のDEFB-126対立遺伝子を決定する工程を含み、部分配列内の位置11〜15における5個の連続するシトシン「CCCCC」の存在が正常な生殖能を示し、部分配列の位置11〜15における3個以下の連続するシトシン「CCC」の存在が不妊症の高いリスクまたは確率を示す。
【0010】
いくつかの態様において、個体はヒトである。いくつかの態様において、個体は雄性である。
【0011】
いくつかの態様において、核酸はDNAであり、他の態様において、核酸はRNAである。
【0012】
いくつかの態様において、DEFB-126をコードする核酸は、配列番号:4に対して少なくとも95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を共有する。いくつかの態様において、DEFB-126をコードする核酸は、配列番号:5、配列番号:13および配列番号:14から選択される核酸に対して少なくとも95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を共有する。
【0013】
DEFB-126欠失多型は、当技術分野において公知の任意の方法によって検出することができる。いくつかの態様において、DEFB-126欠失多型は増幅反応によって検出される。増幅反応を使用して多型を検出することに関して、DEFB-126対立遺伝子は、DEFB-126をコードする核酸の部分配列
内の対立遺伝子を識別する一つまたは複数のポリヌクレオチドを使用する増幅反応によって検出することができる。いくつかの態様において、増幅反応は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、鎖置換増幅(SDA)、核酸配列ベース増幅(NASBA)、ローリングサークル増幅(RCA)、T7ポリメラーゼ媒介増幅、T3ポリメラーゼ媒介増幅およびSP6ポリメラーゼ媒介増幅からなる群より選択される。
【0014】
いくつかの態様において、DEFB-126対立遺伝子は、DEFB-126をコードする核酸の部分配列
内の対立遺伝子を識別する一つまたは複数のポリヌクレオチドを使用するハイブリダイゼーションによって検出される。他の態様において、DEFB-126対立遺伝子は、核酸配列
を含む部分配列、DEFB-126の部分配列を配列決定することによって検出される。いくつかの態様において、DEFB-126対立遺伝子は制限酵素断片長多型によって検出される。他の態様において、DEFB-126対立遺伝子は蛍光共鳴エネルギー移動(「FRET」)によって検出される。
【0015】
本発明の他の局面は、DEFB-126ポリペプチドの変異体を分析して、個体の不妊症のリスクまたは確率を判定する。一つの態様は、個体が不妊症の高いリスクを有するかどうかを判定し、個体から生物学的試料を得る工程、および試料中のDEFB-126ポリペプチドの存在を判定する工程を含み、DEFB-126ポリペプチドの存在が正常な生殖能を示し、DEFB-126ポリペプチドの非存在(または少ない存在)が不妊症の高い確率を示す。
【0016】
いくつかの態様において、正常な生殖能を示すDEFB-126ポリペプチドは、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11および配列番号:12から選択される野生型DEFB-126ポリペプチドに対して少なくとも95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を共有する。いくつかの態様において、正常な生殖能を示すDEFB-126ポリペプチドは、配列番号:6の野生型DEFB-126ポリペプチドに対して少なくとも95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を共有する。いくつかの態様において、正常な生殖能を示すDEFB-126ポリペプチドは、配列番号:12の野生型DEFB-126ポリペプチドに対して少なくとも95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を共有する。
【0017】
いくつかの態様においては、不妊症の高いリスクを示す変異体DEFB-126ポリペプチドは、ジヌクレオチド欠失を有するDEFB-126核酸から発現する変異体DEFB-126ポリペプチドである配列番号:16に対して少なくとも95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を共有する。
【0018】
いくつかの態様において、TVSPTG(配列番号:35)のC末端アミノ酸配列を有するDEFB-126ポリペプチドは正常な生殖能を示す。いくつかの態様において、
のC末端アミノ酸配列を有するDEFB-126ポリペプチドは不妊症の高いリスクを示す。
【0019】
本発明の局面において、不妊症を判定するための方法として抗体が使用される。いくつかの態様において、DEFB-126ポリペプチドは、ポリペプチドのC末端に特異的に結合する抗体を使用して決定される。抗体は、野生型または変異体DEFB-126ポリペプチドのいずれかのC末端に特異的に結合することができる。いくつかの態様において、変異体DEFB-126ポリペプチドは、ELISA、免疫沈降、イムノアフィニティークロマトグラフィー、タンパク質アレイ、レクチン結合、等電点電気泳動またはウエスタンブロットによって決定される。
【0020】
本発明のもう一つの局面は、個体から精子試料を得る工程、および試料を、ガラクトース-GalNAcまたはシアル酸を選択的に拘束するレクチンと接触させる工程を含む、該個体が不妊症の高いリスクを有するかどうかを判定する方法であって、正常な対照または所定の閾値レベルと比較した、レクチンの非存在または低い結合レベルが、不妊症の高いリスクを示す方法を提供する。いくつかの態様において、レクチンはマッシュルーム(Agaricus bisporus)(ABA)またはパラミツ(Artocarpus integrifolia)(Jacalin)である。非ヒト霊長類精子からのDEFB126の損失とともに精子表面におけるシアル酸部分の有意な減少が実証された。したがって、正常な対照または所定の閾値レベルと比較した、DEFB126上のオリゴ糖上の末端位置におけるシアル酸部分を認識するレクチンの低い結合レベルが、不妊症の高いリスクを示す。いくつかの態様において、レクチンはアメリカカブトガニ(Limulus polphemus)(LPA)、イヌエンジュ(Macackia amurenesis)(MAL II)またはコムギ胚芽(Triticum vulgaris)(WGA)である。
【0021】
本発明のもう一つの局面は、個体から精子試料を得る工程、および試料を、シアル酸(および精子表面上の他の負荷電グリカン残基)に結合するポリ-L-リシン(または他のポリカチオン物質)と接触させる工程を含む、該個体が不妊症の高いリスクを有するかどうかを判定する方法であって、正常な対照または所定の閾値レベルと比較した、ポリ-L-リシン(またはポリカチオン物質)の非存在またはの低い結合レベルが、不妊症の高いリスクを示す方法を提供する。非ヒト霊長類の表面からのDEFB126の損失は、ポリ-L-リシン(または他のポリカチオン物質)への精子結合における有意な減少と対応する。したがって、正常な対照または所定の閾値レベルと比較した、DEFB126上のオリゴ糖と会合した負荷電部分を認識するポリ-L-リシンの低い結合レベルが、不妊症の高いリスクを示す。
【0022】
いくつかの態様において、方法はさらに、適切な不妊症治療を決定および/または選択することを含む。いくつかの態様において、方法はさらに、不妊症の理由を識別するために適切な診断試験を選択することを含む。いくつかの態様において、方法はさらに、DEFB-126欠失多型の有無の判定の結果を、有形媒体上、たとえば紙の上または電子もしくはコンピュータファイルの中に記録することを含む。
【0023】
本発明はさらにキットを提供する。一つの態様において、個体が不妊症の高いリスクを有するかどうかを判定するためのキットであって、部分配列
内の個体のDEFB-126対立遺伝子を識別する少なくとも一つのポリヌクレオチドと、部分配列内の位置6〜10における5個の連続するシトシン「CCCCC」の存在が正常な生殖能を示すことおよび部分配列の位置6〜10における3個の連続するシトシン「CCC」の存在が不妊症の高いリスクを示すことを述べている使用説明書とを含む、キットが提供される。
【0024】
他の態様において、個体が不妊症の高いリスクを有するかどうかを判定するためのキットであって、DEFB-126ポリペプチドを認識する少なくとも一つの抗体と、DEFB-126ポリペプチドの存在が正常な生殖能を示すことおよびDEFB-126ポリペプチドの非存在(または少ない存在)が不妊症の高い確率を示すことを述べている使用説明書とを含む、キットが提供される。いくつかの態様において、キットは、DEFB-126ポリペプチドのC末端に特異的に結合する少なくとも一つの抗体を含む。抗体は、野生型または変異体DEFB-126ポリペプチドのC末端に特異的に結合することができる。
【0025】
他の態様において、個体が不妊症の高いリスクを有するかどうかを判定するためのキットであって、DEFB-126ポリペプチドを認識する少なくとも一つのレクチンと、DEFB-126ポリペプチドの存在(レクチンの結合によって実証される)が正常な生殖能を示すことおよびDEFB-126ポリペプチドの非存在(または少ない存在)が不妊症の高い確率を示すことを述べている使用説明書とを含む、キットが提供される。いくつかの態様において、キットは、ガラクトース-GalNAcまたはシアル酸を選択的に拘束する少なくとも一つのレクチンを含む。いくつかの態様において、レクチンはマッシュルーム(ABA)またはパラミツ(Jacalin)である。いくつかの態様において、レクチンはアメリカカブトガニ(LPA)、イヌエンジュ(MAL II)またはコムギ胚芽(WGA)である。いくつかの態様において、レクチンは、検出可能な標識、たとえば蛍光体、酵素、化学発光部分、発色団などを含む。
【0026】
他の態様において、個体が不妊症の高いリスクを有するかどうかを判定するためのキットであって、DEFB-126ポリペプチドと会合した負荷電部分を認識するポリ-L-リシン(または類似のポリカチオン物質)と、DEFB-126ポリペプチドの存在(ポリ-L-リシンまたはポリカチオンの結合によって実証される)が正常な生殖能を示すことおよびDEFB-126ポリペプチドの非存在(または少ない存在)が不妊症の高い確率を示すことを述べている使用説明書とを含む、キットが提供される。いくつかの態様において、ポリ-L-リシンは、検出可能な標識、たとえば蛍光体、酵素、化学発光部分、発色団などを含む。
【0027】
本発明はさらに、非機能性変異体DEFB-126ポリペプチドに起因する低い生殖能を有する雄性個体を治療するための方法であって、機能性DEFB-126ポリペプチドをコードする核酸を、個体からの精巣上体細胞に導入する工程を含む方法を提供する。
【0028】
本発明はさらに、受胎を達成するのに不十分なレベルの機能性DEFB-126を発現している個体からの精子における精子機能性を回復または改善する方法であって、個体から得られた精液試料を機能性DEFB-126ポリペプチドと接触させる工程を含む方法を提供する。いくつかの態様において、個体はヒトであり、機能性DEFB-126ポリペプチドはヒトDEFB-126ポリペプチドである。いくつかの態様において、個体はヒトであり、機能性DEFB-126ポリペプチドは非ヒトDEFB-126ポリペプチドまたはDEFB-126ポリペプチド模倣物である。いくつかの態様において、個体はヒトであり、機能性DEFB-126ポリペプチドは非ヒト霊長類DEFB-126ポリペプチドである。
【0029】
いくつかの態様においては、精子をインビトロで機能性DEFB-126ポリペプチドと接触させる。いくつかの態様においては、精子を膣内で機能性DEFB-126ポリペプチドと接触させる。
【0030】
本組成物において有用なDEFB-126ポリペプチドまたはペプチド模倣物は、正常な生殖能を可能にすることができるものである。機能性DEFB-126ポリペプチドは、天然DEFB126分子の二つの一般的性質、(1)精子受精能獲得状態に依存して精子表面に可逆的に結合する能力、および(2)結合の間に精子表面に負電荷を付与する能力を有する。
【0031】
したがって、いくつかの態様において、機能性DEFB-126ポリペプチドまたはポリペプチド模倣物は、コアβデフェンシンモチーフ(aa 21〜67)、たとえば、配列番号:46、配列番号:47、配列番号:48、配列番号:48または配列番号:49とで95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。オルソログ(-)(上記で整列化した)の間で共有される残基がない場合、電荷もしくは極性が類似する、またはシステイン間スパンの電荷および極性の保持に貢献するアミノ酸を代用することができる。
【0032】
いくつかの態様において、DEFB-126ポリペプチドまたはポリペプチド模倣物は、結合の間に精子表面に負電荷を付与するのに十分にアニオン性である、たとえば十分な数のN結合型糖質、たとえばシアル酸部分を有するカルボキシル伸長モチーフ(たとえばaa 68〜121、68〜134または68〜181)を含む。
【0033】
いくつかの態様において、機能性DEFB-126ポリペプチドまたはポリペプチド模倣物は、デフェンシンコアモチーフおよびデフェンシンカルボキシル伸長モチーフを含む。いくつかの態様において、機能性DEFB-126ポリペプチドまたはポリペプチド模倣物は、デフェンシンコアモチーフならびにポリペプチドが結合の間に精子表面に負電荷を付与するのに十分にアニオン性になるようなO結合型および/またはN結合型グリコシル化を可能にする一つまたは複数の縦列反復または配列セグメント(たとえばムチン反復配列)を含むカルボキシモチーフを含む。いくつかの態様において、機能性DEFB-126ポリペプチドまたはポリペプチド模倣物は、配列番号:46、47、48または49のデフェンシンコアモチーフおよび、配列番号:50のデフェンシンカルボキシル伸長モチーフまたは結合の間に精子表面に負電荷を付与するのに十分なアニオン電荷を有する配列番号:50のより短い長さ(たとえばaa 68〜121、68〜134または68〜181)を含む。
【0034】
再構成法のいくつかの態様において、機能性DEFB-126ポリペプチドは、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11および配列番号:12からなる群より選択される配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、機能性DEFB-126ポリペプチドは、配列番号:6および配列番号:12からなる群より選択される配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、機能性DEFB-126ポリペプチドは、配列番号:6に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、機能性DEFB-126ポリペプチドは配列番号:6を含む。いくつかの態様において、機能性DEFB-126ポリペプチドは、配列番号:12に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、機能性DEFB-126ポリペプチドは配列番号:12を含む。
【0035】
本発明はさらに、機能性DEFB-126ポリペプチドおよび薬学的に許容可能な担体を含む組成物を提供する。いくつかの態様において、機能性DEFB-126ポリペプチドはヒトDEFB-126ポリペプチドである。いくつかの態様において、機能性DEFB-126ポリペプチドは非ヒトDEFB-126ポリペプチドまたはDEFB-126ポリペプチド模倣物である。いくつかの態様において、機能性DEFB-126ポリペプチドは非ヒト霊長類DEFB-126ポリペプチドである。
【0036】
組成物に使用するための機能性DEFB-126ポリペプチドまたはポリペプチド模倣物のさらなる態様は、上記および本明細書に記載されるとおりである。
【0037】
いくつかの態様において、組成物は、泡沫、たとえば膣内投与のために製剤化された泡沫である。
【0038】
関連態様において、本発明は、まず、本明細書に記載されるように、個体が機能性DEFB-126に関して欠乏性であるかどうかを、たとえば表現型または遺伝子型分析によって診断し、個体がDEFB-126欠乏性であると判定されるならば、本明細書に記載されるように、その個体の精子を機能性DEFB-126ポリペプチドと接触させる方法を提供する。
【0039】
定義
断りない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は一般的に、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解される同じ意味を有する。一般に、本明細書において使用される術語ならびに以下に記載する細胞培養、分子遺伝子学、有機化学、核酸化学およびハイブリダイゼーションにおける実験手法は当技術分野において周知であり、一般に使用されている。核酸およびペプチド合成には標準的技術が使用される。一般に、酵素的反応および精製ステップは製造者の仕様書にしたがって実施される。技術および手法は、一般に、当技術分野および本明細書の至る所で提供される様々な一般的参考文献における従来法にしたがって実施される(一般に、Sambrook et al. Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (2001)およびAusubel, ed., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley Interscience, (1990-2008)を参照)。本明細書において使用される術語および以下に記載する分析化学および有機合成における実験手法は当技術分野において周知であり、一般に使用されている。標準的技術またはその変形が化学合成および化学分析に使用される。
【0040】
生物学的試料とは、欠失多型を有する、または有しないDEFB-126核酸または発現タンパク質を含有する固体組織または生物学的流体をいう。核酸に関して、生物学的試料は、本明細書に記載される方法によって試験することができ、体液、たとえば全血、血清、血漿、脳脊髄液、尿、リンパ液、精液、精子細胞および気道、腸管および泌尿生殖器管の様々な外分泌物、涙液、唾液、乳、白血球、ミエローマなど、ならびに生物学的流体、たとえば細胞抽出物、細胞培養上澄み、固定組織標本および固定細胞標本を含む。生物学的試料はまた、固体組織からの試料、たとえば毛球、皮膚、生検もしくは検死試料または組織学的目的のために採取される凍結切片であることもできる。これらの試料は当技術分野において周知である。生物学的試料は、DEFB-126欠失多型に関して試験される任意の個体から得られる。いくつかの態様において、生物学的試料は精液または精子細胞である。生物学的試料は、液体材料、たとえば緩衝液、エクストラクタント、溶媒などに懸濁または溶解させることができる。
【0041】
正常な生殖能とは、世界の多くの国における不妊症の罹患率が約13〜14%であるとして(Strickler et al., Am. J. Obstet. Gynecol. 172:766-73 (1995)を参照)、受胎を試みる男女カップルに関して21ヶ月以内に妊娠する約80〜85%の確率をいう。
【0042】
ヒト不妊症とは、一般に、避妊なしの性交の1年後に妊娠を達成する能力がないことと定義される。
【0043】
本明細書において使用される「不妊症の高いリスクまたは確率または可能性」または「低い生殖能」とは、互換可能に、受胎を試みる男女カップルに関して21ヶ月以内に妊娠する確率が70%未満まで低下していることをいう。いくつかの態様において、これは、正常な生殖能を有する集団に対して比較することができる。
【0044】
遺伝子とは、特定の染色体位置を有するDNAの配列からなる遺伝性単位をいう。遺伝子は、発現するとタンパク質産物を産生する。
【0045】
対立遺伝子とは、遺伝子の特定の変異をいう。本発明に関する場合、対立遺伝子は、本明細書に記載されるように、DEFB-126の野生型コピーまたはDEFB-126欠失多型のいずれかであることができる。
【0046】
「核酸」および「ポリヌクレオチド」という用語は、一本鎖または二本鎖形態にあるデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドおよびそれらのポリマーを指すために、本明細書において互換可能に使用される。この用語は、合成、天然および非天然であり、基準核酸と類似した結合性を有し、基準ヌクレオチドに類似したやり方で代謝される、既知のヌクレオチド類似物または修飾された主鎖残基もしくは結合を含む核酸を包含する。このような類似物の例は、非限定的に、ホスホロチオエート、ホスホラミデート、メチルホスホネート、キラルメチルホスホネート、2-O-メチルリボヌクレオチド、ペプチド核酸(PNA)を含む。
【0047】
断りない限り、特定の核酸配列はまた、保存的に修飾されたその変異体(たとえば縮重コドン置換)および相補的配列ならびに明示的に示される配列を包含する。具体的には、縮重コドン置換は、一つまたは複数の選択された(またはすべての)コドンの第三位が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換されている配列を生成することによって達成することができる(Batzer et al., Nucleic Acid Res. 19:5081 (1991); Ohtsuka et al., J. Biol. Chem. 260:2605-2608 (1985); Rossolini et al., Mol. Cell. Probes 8:91-98 (1994))。「核酸」という用語は、遺伝子、cDNA、mRNA、オリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドとで互換可能に使用される。
【0048】
構造的に、DEFB-126または野生型DEFB-126とは、(1)DEFB-126核酸によってコードされるアミノ酸配列(たとえば配列番号:4および配列番号:5(ヒト)およびGenBankアクセッション番号NM_030931(ヒト)を参照)とで、またはDEFB-126ポリペプチドのアミノ酸配列(たとえば配列番号:6(ヒト)、配列番号:7(シロテテナガザル(Hylobates lar))、配列番号:8(ゴリラ(Gorilla))、配列番号:9(チンパンジー(Pantrolgoldytes))、配列番号:10(カニクイザル(Macacafascicularis)、配列番号:11(オランウータン(Pongo pygmaeus))、GenBankアクセッション番号NP_112193.1(ヒト)、A4H245.1(シロテテナガザル)、A4H243.1(ゴリラ)、XP_514453(チンパンジー)、CAL68961.1(カニクイザル)およびA4H244.1(オランウータン))とで、好ましくは少なくとも約25、50、100、200、500、1000もしくはより多くのアミノ酸の領域にわたって、または全長にわたって約90%を超えるアミノ酸配列同一性、たとえば91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%またはそれを超えるアミノ酸配列同一性を有し、(2)DEFB-126ポリペプチドのアミノ酸配列(たとえば配列番号:4、配列番号:5またはGenBankアクセッション番号NM_030931の核酸の核酸配列によってコードされた)またはアミノ酸配列(たとえば配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11またはGenBankアクセッション番号NP_112193.1、A4H245.1、A4H243.1、XP_514453、CAL68961.1、A4H244.1によってコードされた)および保存的に修飾されたそれらの変異体を含む免疫原に対して産生された抗体、たとえばポリクロナール抗体に結合し、(3)ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下、DEFB-126タンパク質をコードする核酸配列および保存的に修飾されたそれらの変異体に対応するアンチセンス鎖に特異的にハイブリダイズし、(4)DEFB-126核酸(たとえば配列番号:4、配列番号:5)とで、好ましくは少なくとも約25、50、100、200、500、1000もしくはより多くのヌクレオチドの領域にわたって、または全長にわたって約95%を超える、好ましくは約96%、97%、98%、99%もしくはそれを超えるヌクレオチド配列同一性を有する核酸配列を有する、核酸およびポリペプチド多型変異体、対立遺伝子、突然変異体および種間相同体をいう。野生型DEFB-126対立遺伝子は、配列番号:1の文脈的部分配列
の位置6〜10内に5個の連続するシトシン「CCCCC」を有する。
【0049】
すべてのデフェンシンは、概ねβシート構造を有し、三つの分子内システインジスルフィド結合を含む。βデフェンシンは、
の通常スペーシングを有する6システインモチーフおよび多数の塩基性アミノ酸残基によって定義される。同様に、DEFB-126は、システイン残基の規範的コアおよび52のアミノ酸のC末端テールを有して、約12,000Daの分子量(推測アミノ酸配列に基づく)を生じさせるペプチドである。野生型ヒトDEFB-126のアミノ酸配列分析は、C末端テール内のO結合型グリコシル化のための少なくとも20の部位を識別する。霊長類DEFB-126ポリペプチドは高レベルの配列同一性を共有する(図12、Perry, et al, Biol. Reprod. 61:965-972 (1999); Schutte, et al., PNAS 99(4):2129-2133 (2002);およびRodriguez-Jimenez, Genomics 81 :175-183 (2003)を参照)。
【0050】
以下は、ヒト(配列番号:46)、カニクイザル(macaque)(配列番号:47)およびマウス(配列番号:48)からのデフェンシンコア領域(aa 21〜67)、ならびにコンセンサス配列(「con」)(配列番号:49)を整列化したものである。保存されたシステインは反転表示され、保存された残基は陰付けされている。
【0051】
当業者は、種および異なるβデフェンシンタンパク質の間で保存されるアミノ酸残基が一般に置換または欠失に関して比較的寛容ではないということを認識する。たとえば、DEFB-126タンパク質のジスルフィド安定化コアに貢献するシステイン残基は置換または欠失を受けるべきではない。逆に、種および異なるβデフェンシンタンパク質の間で保存されないアミノ酸残基は、多くの場合、タンパク質の機能に影響することなく、置換または欠失を受けることができる。
【0052】
機能的に、野生型DEFB-126は、霊長類(ヒトおよび非ヒト)精子の受精能獲得に作用し、受精時に精子表面受容体提示を変調させる(Tollner et al., Mol. Reprod. Dev. 69:327-37 (2004))。DEFB126はまた、霊長類精子表面全体を免疫認識から保護し、シアル酸部分が、この独特な糖タンパク質の隠蔽特性の原因である(Yudin et al., Biol. Reprod. 73:1243-1252 (2005))。DEFB-126オリゴ糖のシアル酸部分もまた、頸管粘液を通過する精子の運動を促進する役割を担う(Tollner et al., Human Reprod. 23:2523-34 (2008))。DEFB-126はさらに、潜在的に、卵管貯蔵所の形成に関与する機構として、卵管上皮への非ヒト霊長類精子の付着を媒介する(Tollner et al., Biol. Reprod. 78:400-412 (2008))。
【0053】
本明細書において使用されるDEFB-126欠失多型とは、
によって定義される野生型DEFB-126ヌクレオチド配列の文脈的部分配列内の2ヌクレオチド「CC」欠失をいう。欠失多型を有するDEFB-126ポリペプチドをコードする核酸は、配列番号:1の文脈的部分配列
の位置6〜10内に3個より多いシトシンを含有しない。図2も参照。DEFB-126欠失多型を有する例示的なDEFB-126核酸配列は、配列番号:13(GenBankアクセッション番号AK225987)、配列番号:14および配列番号:15(GenBankアクセッション番号CO408416)を含む。DEFB-126欠失多型フレームシフトが、天然の停止コドンの「リードスルー」を生じさせ、それにより、天然のタンパク質(たとえば配列番号:3、6〜12および図1)と比較してC末端領域が伸長したDEFB-126変異体ポリペプチド(たとえば配列番号:16〜18および図2および3)を生成する。
【0054】
変異体DEFB-126ポリペプチドとは、DEFB-126欠失多型を有する核酸配列から発現する結果的なタンパク質をいう。DEFB-126欠失多型のタンパク質産物は、発現すると、野生型DEFB-126C末端領域(たとえば配列番号:3、6〜12)と比較して伸長したC末端を含む(たとえば配列番号:16〜18)。図3も参照。伸長したC末端とは、モチーフSMS(S/L)M(A/T)(配列番号:20)、たとえば配列番号:16のアミノ酸106から始まるC末端ドメインの伸長部分をいう。この伸長したC末端は、DEFB-126タンパク質の構造および機能における甚大な変化、もっとも顕著には、野生型DEFB-126ポリペプチド配列(たとえば配列番号:6〜12)のアミノ酸配列SMS(S/L)M(A/T)(配列番号:20)に対し、C末端のすぐ近くの領域におけるオリゴ糖の欠如を生じさせる。
【0055】
本明細書において使用される「識別する」核酸とは、(1)ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下、DEFB-126タンパク質をコードする核酸配列および保存的に修飾されたその変異体に対応するアンチセンス鎖に特異的にハイブリダイズする、または(2)DEFB-126核酸(たとえば配列番号:4および配列番号:5に記された配列)とで、好ましくは少なくとも約20、25、50、100、200、500、1000の領域にわたって、または全長にわたって約80%、85%、90%、95%を超える、好ましくは約96%、97%、98%、99%もしくはそれを超えるヌクレオチド配列同一性を有する核酸配列またはそれらの相補鎖、部分配列もしくはヒトと霊長類との間のコンセンサス配列(たとえば図12を参照)を有するポリヌクレオチドをいう。DEFB-126欠失多型を、欠失多型を含まない野生型DEFB-126核酸配列から識別する核酸は、欠失多型を含むDEFB-126ポリペプチドへのアニーリングののち、ポリヌクレオチド伸長および増幅を可能にするが、しかし欠失多型を含まないDEFB-126ポリヌクレオチドへのアニーリングののちでは、ポリヌクレオチド伸長または増幅を可能にしない。他の態様において、DEFB-126欠失多型を、欠失多型を含まないDEFB-126核酸配列から識別する核酸は、欠失多型を含むDEFB-126ポリヌクレオチドにはハイブリダイズするが、しかし欠失多型を含まないDEFB-126ポリヌクレオチドにはハイブリダイズしない。
【0056】
「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」という成句は、一般には核酸の複雑な混合物中、プローブがその標的部分配列にハイブリダイズするが、しかし他の配列にはハイブリダイズしないところの条件をいう。ストリンジェントな条件は配列依存性であり、様々な状況で異なる。長めの配列は高めの温度で特異的にハイブリダイズする。核酸のハイブリダイゼーションへの幅広い手引きが、Tijssen, Techniques in Biochemistry and Molecular Biology-Hybridization with Nucleic Probes, "Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid assays" (1993)に見られる。一般に、ストリンジェントな条件は、既定のイオン強度pHにおける特定の配列の熱融点Iよりも約5〜10℃低くなるように選択される。Tmは、標的に相補的なプローブの50%が平衡状態の標的配列にハイブリダイズする温度(既定のイオン強度pHおよび核酸濃度における)である(標的配列は過剰に存在するため、Tmでは、平衡状態でプローブの50%が占有される)。ストリンジェントな条件は、pH7.0〜8.3で塩濃度が約1.0Mナトリウムイオン未満、通常は約0.01〜1.0Mナトリウムイオン濃度(または他の塩)であり、温度が、短いプローブ(たとえば10〜50ヌクレオチド)の場合で少なくとも約30℃であり、長いプローブ(たとえば50ヌクレオチドを超える)の場合で少なくとも約60℃である条件である。ストリンジェントな条件はまた、ホルムアミドのような不安定化剤の添加によって達成することもできる。選択的または特異的ハイブリダーゼーションの場合、陽性シグナルは、バックグラウンドの少なくとも2倍、場合によっては、バックグラウンドハイブリダーゼーションの10倍である。例示的なストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は以下の条件であることができる。50%ホルムアミド、5×SSCおよび1%SDS、42℃でインキュベート、または5×SSC、1%SDS、65℃でインキュベート、0.2×SSCおよび0.1%SDS中65℃で洗浄。
【0057】
ストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズしない核酸は、それらがコードするポリペプチドが実質的に同一であるならば、それでも実質的に同一である。これは、たとえば、遺伝コードによって許可される最大コドン縮重を使用して核酸のコピーが生成される場合に起こる。そのような場合、核酸は一般に、中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする。例示的な「中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」は、40%ホルムアミド、1M NaCl、1%SDSの緩衝液中37℃でハイブリダイゼーションおよび1×SSC中45℃での洗浄を含む。陽性のハイブリダイゼーションはバックグランドの少なくとも2倍である。当業者は、代替ハイブリダイゼーションおよび洗浄条件を使用して同様なストリンジェンシーの条件を提供することができることを容易に理解するであろう。
【0058】
「選択的(または特異的)にハイブリダイズする」という成句は、ある特定のヌクレオチド配列が複雑な混合物(たとえば全細胞またはライブラリDNAまたはRNA)中に存在する場合、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下、その特定のヌクレオチド配列のみへの分子の結合、二重化またはハイブリダイズをいう。
【0059】
「単離された」、「精製された」または「生物学的に純粋な」という用語は、天然状態で見いだされる場合に通常はそれに付随する成分を実質的または本質的に含まない物質をいう。純度および均一性は、一般に、ポリアクリルアミドゲル電気泳動または高速液クロマトグラフィーのような分析化学技術を使用して決定される。調製物中に存在する優勢種であるタンパク質が実質的に精製される。特に、単離されたDEFB-126核酸は、DEFB-126遺伝子に隣接しかつDEFB-126以外のタンパク質をコードするオープンリーディングフレームから、分離されている。「精製された」という用語は、核酸またはタンパク質が電気泳動ゲル中で本質的に一つのバンドしか生じさせないことを意味する。特に、核酸またはタンパク質が、少なくとも純度85%、より好ましくは少なくとも純度95%、そしてもっとも好ましくは少なくとも純度99%であることを意味する。
【0060】
「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを指すために本明細書において互換可能に使用される。これらの用語は、一つまたは複数のアミノ酸残基が対応する天然アミノ酸の人工化学的模倣物であるアミノ酸ポリマーならびに天然アミノ酸ポリマーおよび非天然アミノ酸ポリマーに適用される。
【0061】
ポリペプチド変異体とは、野生型ではない遺伝子配列からの発現の結果として産生されるポリペプチドをいう。本明細書において参照される変異体DEFB-126ポリペプチドは、DEFB-126欠失多型の結果として産生されるタンパク質である。変異体DEFB-126ポリペプチドは、野生型DEFB-126の発現によって産生されるポリペプチドに比べて伸長したC末端ドメインを含む。
【0062】
「機能性DEFB-126ポリペプチド」とは、精子細胞の表面に吸着することができる、たとえば受精能獲得を促進するDEFB-126ポリペプチドをいう。機能性DEFB-126ポリペプチドは、O結合型グリコシル化のための少なくとも20の部位を含むことができる。
【0063】
「非機能性DEFB-126ポリペプチド」とは、精子細胞の表面に吸着されない、たとえば受精能獲得を促進しないDEFB-126ポリペプチドをいう。非機能性DEFB-126ポリペプチドは、有意に減少したO結合型グリコシル化部位を含むことができる。
【0064】
「アミノ酸」という用語は、天然および合成のアミノ酸ならびに天然アミノ酸と同様に機能するアミノ酸類似物およびアミノ酸模倣物をいう。天然アミノ酸は、遺伝コードによってコードされるアミノ酸およびのちに修飾されるアミノ酸、たとえばヒドロキシプロリン、α-カルボキシグルタメートおよびO-ホスホセリンである。アミノ酸類似物とは、天然アミノ酸と同じ基本的化学構造、すなわち水素、カルボキシル基、アミノ基およびR基に結合したα炭素を有する化合物、たとえばホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムをいう。そのような類似物は、修飾されたR基を有する(たとえばノルロイシン)または修飾されたペプチド主鎖を有するが、しかし天然アミノ酸と同じ基本的化学構造を保持する。アミノ酸模倣物とは、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、しかし天然アミノ酸と同様に機能する化合物をいう。
【0065】
本明細書中、アミノ酸は、一般に知られる3文字記号またはIUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionによって推奨される1文字記号によって言及されることができる。ヌクレオチドも同様に、一般に受け入れられた1文字コードによって言及されることができる。
【0066】
「保存的に修飾された変異体」はアミノ酸配列および核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、保存的に修飾された変異体とは、同一もしくは本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸、または核酸がアミノ酸配列をコードしない場合、本質的に同一の配列をいう。遺伝コードの縮重のせいで、数多くの機能的に同一の核酸が任意の所与のタンパク質をコードする。たとえば、コドンGCA、GCC、GCGおよびGCUはすべてアミノ酸アラニンをコードする。したがって、アラニンがコドンによって指定されるあらゆる位置において、そのコドンは、コードされるポリペプチドを変更することなしに、記述される対応するコドンのいずれかに変更することができる。そのような核酸変異は、保存的に修飾された変異の一種である「サイレント変異」である。ポリペプチドをコードする、本明細書におけるあらゆる核酸配列はまた、その核酸の可能なあらゆるサイレント変異を記述する。当業者は、核酸中の各コドン(通常はメチオニンにとっての唯一のコドンであるAUG、および通常はトリプトファンにとっての唯一のコドンであるTGGを除く)を修飾して機能的に同一の分子を得ることができることを理解するであろう。したがって、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変異は、記述される各配列において暗示的である。
【0067】
アミノ酸配列に関して、当業者は、コードされる配列中の1個のアミノ酸またはアミノ酸の小さな割合を変更、付加または欠失する、核酸、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質配列に対する個々の置換、欠失または付加が、その変更の結果として化学的に類似したアミノ酸によるアミノ酸の置換が生じる「保存的に修飾された変異体」であることを理解するであろう。機能的に類似したアミノ酸を提供する保存的置換表は当技術分野において周知である。そのような保存的に修飾された変異体は、本発明の多型変異体、種間相同体および対立遺伝子に加わるものであり、それらを除外しない。
【0068】
以下の8つのグループそれぞれが、互いにとって保存的置換であるアミノ酸を含む。
1)アラニン(A)、グリシン(G)、
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、
4)アルギニンI、リシン(K)、
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V)、
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)、および
7)セリン(S)、トレオニン(T)
(たとえばCreighton, Proteins (1984)を参照)。
【0069】
抗体とは、指定されたタンパク質を認識することができるポリクロナールまたはモノクロナール抗体をいう。タンパク質全体または全長タンパク質内の短いペプチド配列を認識することができる抗体を産生することができる。
【0070】
「特異的に結合する」または「結合した」または「結合している」という用語は、抗DEFB-126抗体と、特定の標的エピトープ(すなわちDEFB-126ポリペプチド)を有する細胞または組織との、全体的または部分的な、そのような標的エピトープを欠く細胞または組織と比較して優先的な会合をいう。当然、抗体と非標的エピトープとの間にある程度の非特異的相互作用が起こることもあるということは理解される。それにもかかわらず、特異的結合は、標的エピトープの特異的認識を介して媒介されるものとして区別することができる。一般に、特異的結合は、結合した抗体と標的エピトープを欠く実体(たとえばアッセイウェルまたは細胞)との間よりも送達される分子と標的エピトープを有する実体(たとえばアッセイウェルまたは細胞)との間ではるかに強い会合を生じさせる。特異的結合は一般に、標的エピトープを欠く細胞または組織に比較して、標的エピトープを有する細胞または組織に結合した抗DEFB-126抗体の量における約10倍を超える、もっとも好ましくは100倍を超える増大(単位時間あたり)を生じさせる。二つの実体の間の特異的結合は一般に、少なくとも106M-1の親和性を意味する。108M-1を超える親和性が好ましい。特異的結合は、当技術分野において公知の抗体結合のための任意のアッセイ法、たとえばウエスタンブロット、ELISA、フローサイトメトリー、免疫組織化学を使用して測定することができる。
【0071】
二つまたはそれ以上の核酸またはポリペプチド配列に関する「同一の」または%「同一性」という用語は、同じである、または同じであるアミノ酸残基またはヌクレオチドの指定の割合を有する二つまたはそれ以上の配列または部分配列をいう(すなわち、比較ウィンドウ、または以下の配列比較アルゴリズムの一つを使用して、もしくは手作業の整列化および目視によって計測される指定領域の範囲の最大一致に関して比較し、整列させた場合、特定領域にかけて、基準配列、たとえば配列番号:4、配列番号:6によってコードされるポリペプチドまたは本明細書に記載されるDEFB-126配列に対して少なくとも約80%の同一性、たとえば少なくとも約85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する。そして、そのような配列は「実質的に同一」といわれる。この定義はまた、試験配列の相補鎖を指す。好ましくは、同一性は、少なくとも約25のアミノ酸もしくはヌクレオチドの長さである領域、たとえば50〜100のアミノ酸もしくはヌクレオチドの長さである領域または基準配列の全長にわたって存在する。
【0072】
配列比較の場合、一般的には、一つ配列が、試験配列が比較される基準配列として働く。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験および基準配列がコンビュータに入力され、必要ならば部分配列座標が指定され、配列アルゴリズムプログラムパラメータが指定される。デフォルトプログラムパラメータを使用することもできるし、代替パラメータを指定することもできる。そして、配列比較アルゴリズムが、プログラムパラメータに基づいて、基準配列に対する試験配列の%配列同一性を計算する。DEFB-126核酸およびタンパク質との核酸およびタンパク質の配列比較の場合、以下に詳述するBLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズムおよびデフォルトパラメータが使用される。
【0073】
本明細書において使用される「比較ウインドウ」は、二つの配列が最適に整列化されたのち、一つの配列を同じ数の連続位置にある基準配列と比較することができる、20〜600、通常は約50〜約200、より通常には約100〜約150からなる群より選択される連続位置の数にあるいずれか一つのセグメントの参照を含む。比較のための配列の整列化の方法は当技術分野において周知である。比較のための配列の最適な整列化は、たとえば、Smith & Waterman, Adv. Appl. Math. 2:482 (1981)の局所相同性アルゴリズムによって、Needleman & Wunsch, J. Mol. Biol. 48:443 (1970)の相同性整列化アルゴリズムによって、Pearson & Lipman, Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 85:2444 (1988)の類似性検索法によって、これらのアルゴリズムのコンビュータ具現化(Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group(575 Science Dr., Madison, WI)のGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA)によって、または手作業による整列化および目視検査によって(たとえばAusubel et al, eds., Current Protocols in Molecular Biology (1995 supplement)を参照)、実施することができる。
【0074】
%配列同一性および配列類似性の判定に適したアルゴリズムの例は、BLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズムであり、それらはAltschul et al., J. Mol. Biol. 215:403-410 (1990)およびAltschul et al., Nucleic Acids Res. 25:3389-3402 (1977)にそれぞれ記載されている。BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information(WWW上、ncbi.nlm.nih.gov/)を通して入手可能である。このアルゴリズムは、まず、データベース配列中の同じ長さのワードと整列化された場合、正の値の閾値スコアTと一致するかまたはそれを満たす、問い合わせ配列中の長さWの短いワードを特定することにより、高スコア配列ペア(HSP)を識別することを含む。Tは、近傍ワードスコア閾値と呼ばれる(上記Altschulら)。これら初期近傍ワードヒットが、それらを含むより長いHSPを見いだすための検索を開始するためのシードとして働く。そして、ワードヒットは、累積整列化スコアを増すことができる限り、各配列に沿って両方向に伸長される。累積スコアは、ヌクレオチド配列の場合には、パラメータM(一致する残基ペアに対する報酬スコア、常に>0)およびN(不一致残基に対するペナルティスコア、常に<0)を使用して計算される。アミノ酸配列の場合、スコアリングマトリックスを使用して累積スコアを計算する。累積整列化スコアがその最大達成値から量Xだけ低下した場合、一つまたは複数の負スコア残基整列化の累積のせいで累積スコアが0またはそれ以下になった場合、またはいずれかの配列の最後に達した場合、各方向におけるワードヒットの伸長は停止する。BLASTアルゴリズムパラメータW、T、およびXが整列化の感度および速度を決める。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列の場合)は、デフォルトとして、28のワードサイズ(W)、10の期待値(E)、M=1、N=-2および両鎖の比較を使用する。アミノ酸配列の場合、BLASTPプログラムは、デフォルトとして、3のワードサイズ(W)、10の期待値(E)およびBLOSUM62スコアリングマトリックス(Henikoff & Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915 (1989)を参照)を使用する。
【0075】
BLASTアルゴリズムはまた、二つの配列の間の類似性の統計的分析を実施する(たとえばKarlin & Altschul, Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 90:5873-5787 (1993)を参照)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の一つの尺度は、二つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列の間の一致が偶然に起こる確率の指標を提供する最小和確率(P(N))である。たとえば、参照核酸に対する試験核酸の比較において最小和確率が約0.2未満、より好ましくは約0.01未満、もっとも好ましくは約0.001未満であるならば、核酸は、基準配列に類似しているとみなされる。
【0076】
二つの核酸配列またはポリペプチドが実質的に同一であるという指標は、以下に記載するように、第一の核酸によってコードされるポリペプチドが、第二の核酸によってコードされるポリペプチドに対して産生された抗体とで免疫学的に交差反応性であるということである。したがって、たとえば二つのペプチドが保存的置換によってのみ異なる場合、ポリペプチドは一般に、第二のポリペプチドとで実質的に同一である。二つの核酸配列が実質的に同一であるというもう一つの指標は、以下に記載するように、二つの分子またはそれらの相補鎖がストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズするということである。二つの核酸配列が実質的に同一であるというさらに別の指標は、同じプライマーを使用して配列を増幅することができるということである。
【0077】
「閾値レベル」という用語は、たとえば抗DEFB-126抗体、レクチンまたはポリカチオン物質の、たとえば精子細胞への結合の代表的レベルをいう。閾値レベルは、正常な対照、DEFB-126ヘテロ接合性個体または変異体DEFB-126欠失多型に関してホモ接合性である個体からの試料中に検出される結合を表すことができる。閾値レベルは、個体または個体集団から決定することができる。本診断法において、閾値レベルを超える結合は一般に、生殖能の可能性を示し、閾値レベル未満の結合は一般に、不妊症の高いリスクを示す。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】野生型DEFB-126cDNAのヌクレオチド配列(配列番号:4)およびアミノ酸配列(配列番号:6)を示す。配列変異(2-ヌクレオチド欠失)の位置が反転表示によって示されている。野生型カルボキシ末端テールの一次配列が示されている。
【図2】変異体DEFB-126欠失多型cDNAのヌクレオチド配列(配列番号:13)およびアミノ酸配列(配列番号:16)を示す。配列変異(2-ヌクレオチド欠失)の位置が示されている。多型変異体カルボキシ末端テールの一次配列が示されている。新たに生成されたリーディングフレーム中にはインフレーム停止コドンが存在せず、長いポリリシンテールを生じさせていることに注目すること。
【図3】野生型(配列番号:22)およびDEFB-126欠失多型変異体(配列番号:23)の両方のC末端アミノ酸配列(スラッシュの位置)の比較を提供する。逆スラッシュ以降のアミノ酸が、野生型DEFB-126ポリペプチドと変異体DEFB-126ポリペプチドとのC末端配列における違いを示す。
【図4】DEFB126のドメイン構造の簡略化スケッチを示す。実線がβデフェンシンドメインにおける三つのジスルフィド結合の存在を示す。菱形がカルボキシ末端ドメインにおけるO結合型糖質を表す。
【図5】DEFB-126野生型と多型遺伝子型との違いを示す。図5Aは、欠失多型(配列番号:24および25)の相対人口出現率を示す。図5Bは、DEFB-126精巣上体組織における低いDEFB-126mRNAレベルを示す。図5Cは、野生型および変異体DEFB-126ポリペプチドの両方における、会合したO結合型グリカンを有する様々なタンパク質配列を比較する。図5Dは、DEFB-126野生型および欠失突然変異ポリペプチド配列(配列番号:26および27)のC末端部分における潜在的なO結合型糖質置換およびカチオン性アミノ酸残基の位置を示す。
【図6】精巣上体における野生型および変異体DEFB-126の発現を示す。異常なタンパク質をコードするmRNAは、多くの場合、安定性に劣り、より急速な分解のせいで低めの定常状態濃度で存在する。リアルタイムPCR分析が、実験値を全入力RNA(左パネル)または対照「ハウスキーピング」遺伝子GAPDH(右パネル)のいずれかに正規化した場合の、野生型配列(白いバー)に比較した変異体DEFB126(黒いバー)の低いレベルを明らかにする。また、精巣上体におけるDEFB126の非常に高い発現が示されている。比較のため、二つの他のβデフェンシン(DEFB125およびDEFB129)が示されている。
【図7】O結合型グリカンに特異的な構造を拘束する、コンジュゲートしたレクチンABAで標識された精子の間の蛍光の違いを示す。
【図8】DEFB-126の高度にシアリル化された性質を示唆する、DEFB-126からのO結合型オリゴ糖の質量スペクトルを示す。
【図9】グリコシル化ヒトデフェンシン-5の質量スペクトルを示す(HD%)。非グリコシル化分画の質量スペクトルが図8Cのグリコシル形態の質量スペクトルと比較されている。
【図10】DEFB-126ポリペプチドの限局性発現を示す。
【図11】DEFB-126を隠蔽、修飾または除去する処理の後の頸管粘液の精子浸透を示す。
【図12】霊長類種ヒト(配列番号:6)、シロテテナガザル(配列番号:7)、ゴリラ(配列番号:8)、チンパンジー(配列番号:9)、カニクイザル(配列番号:10)およびオランウータン(配列番号:11)の間での野生型DEFB-126タンパク質配列の整列化比較を提供する。コンセンサス配列=配列番号:12)。
【図13】カニクイザルDEFB-126(GenBankアクセッション番号Q9BEE3)(配列番号:28)の三つのドメイン、すなわち(1)シグナル配列(aa 1〜20)、(2)βデフェンシンコア領域(aa 21〜64)および(3)カルボキシルテール(aa 65〜123)のアミノ酸配列図を提供する。
【図14】頸管粘液(CM)またはHAゲルの精子浸透の図を提供する。
【図15】DEFB126多型を示すヒト精子がHAゲルに浸透する能力を説明するデータを提供する(15A)。平均曲線速度(VCL)に関して精子懸濁液をCASAによって分析した(15B)。精子懸濁液のスメアを付けたスライドを「Pap」染色し、WHO '89精子形態法にしたがって分析し、全平均%正常形態(%正常)として報告した(15C)。wt DEFB126遺伝子を有するドナー(wt=wt/wt+wt/del)からの精子および遺伝子変異体のみを有するドナー(del/del=del)からの精子の間で、ABAレクチン標識結果を平均化した(D)。
【図16】先に図7および15Dで説明したような、wtおよびdelドナーからのヒト精子のFITCコンジュゲートレクチンABA標識における違いを実証するデータを提供する。
【図17】delドナーD10およびwtドナーD12からの精子によるHA浸透を説明するデータを提供する。ドナーD10(濃いグレーの四角)およびドナーD12(薄いグレーの四角)からの精子のHA浸透が、それぞれdel男性およびwt男性の平均値に照らして示されている。
【図18】DEFB126を精子表面に「アドバック」することができることを説明するデータを提供する。
【図19】cDEFB126によるdel男性からの精子の処理がHAゲルの精子浸透を改善したことを説明するデータを提供する。プロットは、3名の異なるdel/delドナーからの精子の平均±sd応答を表す(19A)。プロットは、cDEF126の付加によって浸透速度における約4倍の増加を示した、2名のdel/delドナーからの精子の平均±sd応答を表す(19B)。
【図20】カニクイザルおよびヒトDEFB-126のBLASTアミノ酸分析比較を提供して、これら二つの霊長類種の機能性DEFB-126タンパク質が、アルゴリズムによって比較された位置、すなわちカニクイザルDEFB-126の位置1〜134およびヒトDEFB-126の位置1〜121にかけて71%の配列相同性しか共有しないことを示す(図20A)(配列番号:29および30、コンセンサス=配列番号:31)。シグナル配列の除去が相同性を66%に低下させる(図20B)(配列番号:32および33、コンセンサス=配列番号:34)。
【発明を実施するための形態】
【0079】
詳細な説明
I. 序文
本発明は、一部には、ある共通のDEFB-126欠失多型を有する個体が、野生型DEFB-126遺伝子型を有する個体と比較して、不妊症の高いリスクまたは可能性を示すという予想外の発見に基づく。遺伝子多型は、遺伝子の異なる対立遺伝子を区別するのに有用な方法を提供することができる。さらには、多型の存在が特定の表現型と対応することができる場合、その多型は、強力なマーカとして作用し、個体の遺伝子型構成に基づいて表現型結果を決定するために使用することができる。
【0080】
特に、本発明は、DEFB-126核酸配列におけるジヌクレオチド欠失多型に関する。この変異体のアミノ酸配列は、DEFB-126のカルボキシル末端の糖質含有ドメインが有意に変更されている。この変異が異常なDEFB-126タンパク質機能および構造を生じさせて、精子機能および生殖能の低下を招く。不妊症評価の早期においてDEFB-126欠失多型を有する個体を識別することにより、臨床医は、方向性のある治療介入、たとえば子宮内精子注入法(IUI)および体外受精(IVF)への速やかな移行を正当化するための科学的証拠を得ることができ、それにより、男女カップルにとって、長引く精密検査の時間および費用を節約する。
【0081】
射精時に男性生殖路から放出される成熟した精子は、受精する能力を得る前に、女性生殖路中で時間を費やさなければならない。受精能獲得と呼ばれるこの最終的な成熟プロセスは、50年を超える間、受精のために不可欠な先行条件として認識されてきた。近年、カニクイザル(Macaca fascicularis)において、一つの精巣上体由来のタンパク質が精子上に連続的な被膜を形成し、その被膜が、勾配溶液に通して激しく洗浄されたのちでも精子に固着したまま残り、その後、インビトロ受精能獲得中に精子表面から放出されるということが実証された(Tollner et al., Mol. Reprod. Dev. 69:325-337 (2004); Yudin et al., Biol. Reprod. 73:1243-1252 (2005); Yudin et al., J. Membr. Biol. 207:119-129 (2005); Yudin et al., Biol. Reprod. 69:1118-1128 (2003))。この精巣上体分泌タンパク質は当初、ESP 13.2と呼ばれていたが、今は、βデフェンシンとのそのアミノ酸配列相同性および構造的類似のため、DEFB-126と呼ばれている(Lehrer et al., Mucosal Immunology, 3rd Ed., Academic Press: New York, 95-110 (2004))。βデフェンシンは、標的膜を破壊する抗菌性タンパク質である(たとえばDiamond and Bevins, Clinical Immunology and Immunopathology 88:221-25 (1998)を参照)。
【0082】
DEFB-126は、そのCOOHテールがO結合型シアル酸によって高度にグリコシル化されている(Yudin et al., J. Membr. Biol. 207:119-129 (2005))。交尾した雌性カニクイザルの子宮頸および子宮から回収された生育可能な精子は、その全面がDEFB-126で均一に被覆されており、DEFB-126が雌性上生殖路中で精子上に保持されることを示唆する(Tollner et al., Biol. Reprod. 78:400-412 (2008))。DEFB-126は、雌性生殖路による精子表面認識を妨げる免疫保護シールドを提供して、それにより、精子貯蔵および最終的な受精能獲得のための安全な避難所を保証することができる(Yudin et al., Biol. Reprod. 73:1243-1252 (2005))。ジヌクレオチド欠失多型を有するDEFB-126対立遺伝子を有し、かつ変異体DEFB-126ポリペプチドを発現している男性は、見かけは正常であるが雌性環境中では機能不全である精子を産生する。
【0083】
DEFB126のアミノ酸配列は、シグナル配列(aa 1〜20)および45アミノ酸βデフェンシンドメイン(aa 21〜64)を明らかにする。他のβデフェンシンと同じく、DEFB126は特定の6システイン編成を有する(Schutte et al., 2002)。60アミノ酸C末端ドメインは、不対システイン(白丸)およびO結合型グリコシル化のための数多くの潜在的部位(*)を有する(Julenius et al., 2005)(図13を参照)。
【0084】
II. DEFB-126欠失多型を識別することによる雄性生殖能低下のリスクの判定
本発明は、個体が低下した生殖能を有するかどうかを判定するために、DEFB-126をコードする遺伝子に関して該個体の遺伝子型を解析するための方法を提供する。そのような判定により、自身の遺伝子型が生殖能低下のリスクまたは可能性を伴うかどうかについて個別の知識が提供され、かつ該個体が適切な生殖能治療選択肢を受けることを可能にする。本発明はさらに、DEFB-126欠失多型の有無に基づいて不妊症の高いリスクを診断するのに有用であるキットを提供する。
【0085】
生殖能低下に関連するDEFB-126欠失多型
受精能獲得が、受精に不可欠である最終的な精子成熟プロセスである。このプロセスの間、精子上に連続的な被膜を形成する一つの精巣上体由来タンパク質が放出される。このタンパク質は当初、ESP 13.2(精巣上体分泌タンパク質)と呼ばれていたが、しかし今は、βデフェンシンとのそのアミノ酸配列相同性および構造的類似に基づき、DEFB-126と呼ばれている(Lehrer et al, Mucosal Immunology, 3rd Ed., Academic Press: 95-110, (2004); Diamond and Bevins, Clin. Immunol. Immunopathol. 88:221-25 (1998))。DEFB-126は、そのCOOHテールがO結合型シアル酸によって高度にグリコシル化されている(Yudin et al., J. Membr. Biol. 207:119-29 (2005))。DEFB-126は、受精能獲得の前に、雌性生殖路による精子表面認識からの免疫保護シールドを提供すると考えられている(Yudin et al., Biol. Reprod. 73:1243-1252 (2005))。
【0086】
不妊症増大に関連するDEFB-126欠失多型は、
によって定義される野生型DEFB-126ヌクレオチド配列の文脈的核酸部分配列内の2ヌクレオチド「CC」欠失である。DEFB-126欠失多型は、配列番号:1の文脈的部分配列
の位置6〜10内に3個より多いシトシンを含有しない(図2も参照)。欠失多型を有する例示的なDEFB-126核酸配列は、配列番号:13(GenBankアクセッション番号AK225987)、配列番号:14および配列番号:15(GenBankアクセッション番号CO408416)で提供されたヌクレオチド配列を有する。この欠失多型が存在するとき、新たに生成されたリーディングフレーム中には停止コドンが存在せず、それが伸長したポリリシンテールを生じさせる。野生型DEFB-126タンパク質は、C末端ドメインに負電荷を持ち込むO結合型糖質のためのアミノ酸残基を提供するが、DEFB-126突然変異体中のポリリシンテールはより正の電荷をこのドメインに持ち込む。
【0087】
また、オープンリーディングフレーム中のフレームシフトを生じさせる2ヌクレオチド省略(欠失)を有するDEFB126cDNAにおける配列変異が識別されている(図5Aを参照)。この対立遺伝子は、中国人男性コホートから無作為に選択された全部で465名の個体(S. Venners & Xiping Xu U. Chicagoと共同)および英国の男性集団からの74名の個体の遺伝子型分析によって識別された(図5Bを参照)。異常なタンパク質をコードするmRNAは、多くの場合、より急速な分解のせいで、組織中に低めの定常状態濃度で存在する。したがって、本発明者らは、定量的RT-PCR(qPCR)を使用して精巣上体組織中のDEFB126mRNAを分析した。この予測と合致するように、精巣上体標本中の低いDEFB126mRNAレベルが配列変異体とともに認められた(図5Cを参照)。
【0088】
また、オープンリーディングフレーム中のフレームシフトを生じさせる2ヌクレオチド省略(欠失)を有するDEFB126cDNAにおける配列変異が識別されている(図5を参照)。この特異的DEFB126多型は約0.45〜0.50の対立遺伝子頻度を有する。変異体DEFB126の変異体アミノ酸配列は、有意に変更されたC末端の糖質含有ドメインを予測する。この変異体の場合、オープンリーディングフレームがポリAテール中に延びるため、変異体はおそらくヌル(非発現性)対立遺伝子である。さらには、異常なタンパク質をコードするmRNAは、多くの場合、急速な分解の結果として、低めの定常状態濃度で存在するため、DEFB-126欠失多型を有する個体における精巣上体組織は、野生型精巣上体組織に比較した場合、顕著に低いDEFB-126mRNAの発現を有する(図5を参照)。DEFB126変異体は2ヌクレオチド省略(欠失)を有して、それがDEFB126のオープンリーディングフレーム中のフレームシフトを生じさせた(図5A)。この配列変異はNCBIゲノムDNA配列データベース中で確認された。
【0089】
DEFB-126欠失多型の核酸検出
DEFB-126欠失多型は、非限定的に増幅、配列決定およびハイブリダイゼーション技術を含む、当技術分野において公知の任意の方法を使用して検出することができる。一つの塩基変化の存在に関して核酸を評価する検出技術は、分子遺伝学の分野において周知の手法を含む。核酸を増幅する方法が、本発明を実施する際に有用である。方法を実施するための十分な手引きが当技術分野において提供されている。例示的な参考文献は、マニュアル、たとえばPCR Technology: Principles And Applications For DNA Amplification(ed. H. A. Erlich, Freeman Press, New York, NY, (1992)); PCR Protocols: A Guide To Methods And Applications (Innis, et al, eds., Academic Press, San Diego, CA, (1990)); Current Protocols In Molecular Biology, Ausubel,(1990-2008。補遺改訂を含む); Sambrook & Russell, Molecular Cloning, A Laboratory Manual(3rd Ed, 2001)を含む。
【0090】
本発明の一つの局面にしたがって、DEFB-126欠失多型は増幅反応によって検出される。DEFB-126領域は、オリゴヌクレオチド対を使用して増幅されて、DEFB-126欠失多型配列の核酸増幅産物を形成する。増幅は、PCRを含む当業者に公知の数多くの方法のいずれかによることができ、本発明は、任意の適当なDNA増幅方法を包含することを意図する。数多くのDNA増幅技術が本発明との使用に好適である。好都合には、そのような増幅技術は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、鎖置換増幅(SDA)、核酸配列ベース増幅(NASBA)、ローリングサークル増幅、T7ポリメラーゼ媒介増幅、T3ポリメラーゼ媒介増幅およびSP6ポリメラーゼ媒介増幅のような方法を含む。DNA増幅の厳密な方法が限定的である意図はなく、本明細書に挙げられていない他の方法が当業者に明らかであり、それらの使用は本発明の範囲内である。
【0091】
いくつかの態様において、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プロセスが使用されている(たとえば米国特許第4,683,195号および第4,683,202を参照)。PCRは、熱安定性DNAポリメラーゼ、プライマーとして知られる既知の配列、および複製するデオキシリボ核酸(DNA)鎖を分離させ、対象となる遺伝子を指数関数的に増幅させる加熱サイクルの使用を含む。定量的PCR、RT-PCR、ホットスタートPCR、LA-PCR、マルチプレックスPCR、タッチダウンPCRを含む任意のタイプのPCRが有用である。いくつかの態様においては、リアルタイムPCRが使用される。
【0092】
そして、生殖能低下に関連するDEFB-126欠失多型の有無を検出するために増幅産物を分析する。本発明の方法を実施し、増幅産物を分析することにより、試験される個体が生殖能低下のリスクを有するかどうかを判定することが可能である。
【0093】
いくつかの態様において、分析は、オリゴヌクレオチド対によるゲノムDNAの増幅によって産生されるPCRアンプリコンの制限酵素断片長多型(RFLP)分析によって実施することができる。増幅産物および制限酵素断片の検出を簡素化するために、当業者は、増幅されたDNAがさらに、比較的少量の産物の検出を可能にするための標識された部分を含むということを理解するであろう。多様な部分が当業者に周知であり、蛍光、生物発光、化学発光および放射性または発色性部分のような標識タグを含む。
【0094】
また、DEFB-126遺伝子増幅産物の存在および制限酵素消化性質を検出する多様な方法が本発明との使用に適している。これらは、ゲル電気泳動、質量分析法などのような方法を含むことができる。本発明はまた、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)のような一本鎖DNA検出技術の使用に適合されている。FRET分析の場合、ハイブリダイゼーションアンカおよび検出プローブを使用して増幅産物にハイブリダイズすることができる。プローブ配列は、たとえば多型の存在においては、得られるハイブリダイゼーション複合体が、特定のヌクレオチド位置にGまたはC残基がある場合よりも安定になるように選択される。したがって、ハイブリダイゼーション条件を調節することにより、DEFB-126欠失多型を有する個体とそれを有しない個体とを区別することが可能である。当業者に周知の多様なパラメータを使用して、ハイブリダイゼーション複合体が形成する能力に影響を加えることができる。これらは、温度、イオン濃度の変化または複合体安定性を低下させるホルムアミドのような化学成分の包含を含む。さらに、DEFB-126欠失多型に関してヘテロ接合性である個体と、それに関してホモ接合性である個体とを区別することが可能である。FRET分析の方法は当技術分野には周知であり、DEFB-126欠失多型の有無がFRETによって検出されるところの条件は容易に決定可能である。
【0095】
また、適当な配列検出方法は、たとえば、ジデオキシ配列決定ベースの方法およびMaxam and Gilbert配列決定法(たとえば上記Sambrook and Russellを参照)を含む。適当なHPLCベースの分析は、たとえば、Premstaller and Oefner, LC-GC Europe 1-9(July 2002); Bennet et al, BMC Genetics 2:17 (2001); Schrimi et al., Biotechniques 28(4):740 (2000); およびNairz et al., PNAS USA 99(16):10575-10580 (2002)に記載されているような変性HPLC(dHPLC)、ならびにたとえばOberacher et al.; Hum. Mutat. 21(1):86 (2003)に記載されているようなイオン対逆位相HPLCエレクトロスプレーイオン化質量分析法(ICEMS)を含む。DEFB-126対立遺伝子を特性決定するための他の方法は、たとえば、単一塩基伸長法(たとえばKobayashi et al, Mol. Cell. Probes, 9:175-182 (1995)を参照)、たとえばOrita et al., Proc. Nat. Acad. Sci. 86, 2766-2770 (1989)に記載されているような一本鎖立体配座多型分析法、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション(ASO)(たとえばStoneking et al., Am. J. Hum. Genet. 48:70-382 (1991); Saiki et al., Nature 324:163-166 (1986); EP235,726; およびWO89/11548)、およびたとえばWO93/22456; 米国特許第5,137,806号; 第5,595,890号; 第5,639,611号; および米国特許第4,851,331号に記載されているような配列特異的増幅またはプライマー伸長法、そして米国特許第5,210,015号; 第5,487,972号; および第5,804,375号ならびにHolland et al., 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:7276-7280 (1988)に記載されているような5'-ヌクレアーゼアッセイ法を含む。
【0096】
野生型または変異体DEFB-126ポリヌクレオチドを検出する際に使用するための例示的なポリヌクレオチドを以下の表にまとめる。
【0097】
たとえば、方法は、DEFB126-154s、DEFB126-199s、DEFB126-278sおよびDEFB129-441sからなる群より選択されるフォワードプライマー、ならびにDEFB126-330a、DEFB126-409aおよびDEFB129-546aからなる群より選択されるリバースプライマーを使用することができる。いくつかの態様においては、プライマーDEFB126-154sおよびDEFB126-409aをいっしょに使用して、たとえば増幅産物のDNA配列分析によって個体のDEFB-126遺伝子型を決定する。
【0098】
いくつかの態様において、方法は、たとえば増幅産物のDNA配列分析によってDEFB-126遺伝子型を決定するための配列決定プライマーとして有用であるポリヌクレオチドDEFB126-278sを使用する。
【0099】
ポリヌクレオチドは、当技術分野において公知であり、本明細書に記載される方法を使用する検出のために標識されることができる。
【0100】
DEFB-126欠失多型によって発現するタンパク質の検出
DEFB-126欠失多型は、当技術分野において公知の任意の方法を使用して検出することができる。たとえば、DEFB-126野生型および変異体タンパク質は、発現した野生型および多型DEFB-126遺伝子のタンパク質産物の物理的違いを分析することによって検出することができる。
【0101】
野生型DEFB-126ポリペプチドと変異体DEFB-126ポリペプチドとの間の一つの物理的違いは、タンパク質の相対的発生量である。DEFB-126欠失多型mRNAは、多くの場合、低めの定常状態濃度で存在し、多くの場合、異常に発現したmRNA配列をもって認められる。この結果、野生型DEFB-126ポリペプチドと比較して変異体DEFB-126ポリペプチドは発生量が全体的に低めになる(すなわち、存在が減少する)。いくつかの態様において、変異体DEFB-126ポリペプチドは完全に不在または検出不可能である。検出可能である場合、変異体DEFB-126ポリペプチドは、野生型DEFB-126ポリペプチドの検出可能量と比較して約50%、30%、10%またはそれ未満の量で存在することができる。
【0102】
上記のように、発現すると、変異体DEFB-126ポリペプチドは、ヌクレオチド配列フレームシフトの結果として野生型停止コドンのリードスルーから生じる伸長したC末端ドメインを含む。この伸長したC末端変異体DEFB-126ポリペプチドは、野生型DEFB-126ポリペプチドと変異体DEFB-126ポリペプチドとの間の認識可能な物理的違いを提供する。野生型DEFB-126ポリペプチドは111個のアミノ酸残基を有するが、変異体DEFB-126ポリペプチドは少なくとも132個のアミノ酸残基を含む。伸長したC末端を含むことに加えて、変異体DEFB-126ポリペプチドは、C末端O結合型グリコシル化が有意に低下している。
【0103】
変異体DEFB-126ポリペプチドの分子量および等電点は、変異体DEFB-126ポリペプチドと野生型DEFB-126ポリペプチドとの間の顕著な物理的違いを提供する。推定アミノ酸配列に基づく非グリコシル化変異体DEFB-126ポリペプチド(配列番号:16および配列番号:17)の予測分子量は、少なくとも約11.53kDaであり、等電点は少なくともpH10.75である。対照的に、推定アミノ酸配列に基づく非グリコシル化野生型DEFB-126ポリペプチド(配列番号:6)の予測分子量は、約9.19kDaであり、等電点は約pH10.75である。非ヒト霊長類において、非還元型および還元型天然DEFB-126タンパク質は、それぞれ、ポリアクリルアミドゲルにおいて約53kDa(タンパク質バンドは51〜55kDaに及ぶ)および約34kDa(タンパク質バンドは31〜36kDaに及ぶ)の見かけ分子量を有する。
【0104】
変異体DEFB-126ポリペプチドの検出は、抗体によって達成することができる。抗体の開発のための抗原としての使用のために、自然に産生される、もしくは組み換え形態で発現するDEFB-126タンパク質、または好ましくは少なくとも9個のアミノ酸を有するその機能性誘導体を得、それを使用して、ポリクロナールまたはモノクロナール抗体の産生のために動物を免疫化する。抗体は、分子と反応して、それにより、その分子を抗体に結合させることができるならば、その分子を拘束することができるとされる。特異的反応とは、抗原がその対応する抗体とは非常に選択的に反応するが、他の抗原によって誘発されることができる多数の他の抗体とは反応しないことをいう。
【0105】
本明細書における、抗体という用語は、非限定的に、ヒトおよび非ヒトポリクロナール抗体、ヒトおよび非ヒトモノクロナール抗体(mAb)、キメラ抗体、抗イディオタイプ抗体(抗IdAb)ならびにヒト化抗体を含む。ポリクロナール抗体は、抗原で免疫化された動物の血清または鶏卵に由来する抗体分子の不均一集団である。モノクロナール抗体(「mAb」)は、特定の抗原に対する抗体の実質的に均一な集団である。mAbは、当業者に公知の方法によって得ることができる(たとえば米国特許第4,376,110号)。そのような抗体は、任意の免疫学的クラス、たとえばIgG、IgM、IgE、IgA、IgDおよびそれらの任意のサブクラスであることができる。DEFB-126に対するヒトおよび非ヒト抗体を産生するハイブリドーマをインビトロまたはインビボで培養することもできる。多量のmAbの産生の場合、インビボが現在のところ好ましい産生方法である。簡潔にいうと、個々のハイブリドーマからの細胞をプリスタンで初回刺激したBalb/xマウスまたはヌードマウスに腹腔内注射して、所望のmAbを高濃度で含有する腹水を生成する。その腹水または培養上澄みから、当業者に周知の標準クロマトグラフィー法を使用して、MAbを精製することができる(たとえばE. Harlow, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY (1988)を参照)。
【0106】
抗体または抗体のフラグメントは、上記のようにして得られた生物学的試料中の野生型または変異体DEFB-126ポリペプチドのいずれかの存在を定量的または定性的に検出するために使用される。野生型DEFB-126ポリペプチドと変異体DEFB-126ポリペプチドとはC末端が異なるため、野生型または変異体DEFB-126のC末端に特異的に結合する抗体を開発することができる。いくつかの態様において、識別する抗体は、野生型DEFB-126ポリペプチドのC末端内のエピトープに特異的に結合する。いくつかの態様において、識別する抗体は、変異体DEFB-126ポリペプチドのC末端内のエピトープに特異的に結合する。
【0107】
変異体DEFB-126ポリペプチドの存在の検出は、レクチン、ポリカチオン(たとえばポリ-L-リシン)または上記のようにして産生された抗体へのポリペプチドの結合によって達成することができる。生物学的試料を、細胞もしくは細胞粒子または可溶性タンパク質を固定化することができる固相支持体または担体、たとえばニトロセルロースまたは他の固体支持体で処理することができる。そして、支持体を洗浄したのち、検出可能に標識された抗DEFB-126抗体で処理することができる。続いて、支持体を洗浄して非結合抗体を除去する。固相支持体という用語は、非限定的にガラス、ポリスチレンポリプロピレン、ナイロン、修飾セルロースまたはポリアクリルアミドを含む、抗原または抗体を拘束することができる任意の支持体をいう。そして、前記支持体に結合した標識の量を、非限定的にウエスタンブロットハイブリダイゼーション、ELISAまたは免疫沈降を含む従来の手段によって検出することができる。
【0108】
レクチン、ポリカチオン(たとえばポリ-L-リシン)または抗体を使用する検出はさらに、蛍光標識された抗体を蛍光顕微鏡法、光学顕微鏡法、免疫電子顕微鏡法、インサイチューハイブリダイゼーション、フローサイトメトリーまたは蛍光光度検出とともに使用する免疫蛍光技術によって達成することもできる。抗体を使用して野生型または変異体DEFB-126ポリペプチドの存在を検出するために使用される上述の技術は、当技術分野において周知の様々な技術の代表例であるが、上記の技術のみに限定されるべきではない。
【0109】
変異体DEFB-126ポリペプチドの検出は、ガラクトース-GalNAcまたはシアル酸を選択的に拘束するレクチンを使用して達成することができる。たとえば、レクチンマッシュルーム(ABA)またはパラミツ(Jacalin)は、O結合型グリカンに特異的な構造であるガラクトース-GalNAc-セリン(またはトレオニン)を選択的に拘束する。変異体DEFB-126ポリペプチドを有する個体からの精子は、野生型ドナーに比較してABA関連蛍光の有意な減少を示す。精子表面上のシアル酸部分の有意な減少が非ヒト霊長類精子からのDEFB126の損失とともに実証されている。したがって、正常な対照または所定の閾値レベルと比較して、DEFB126上のオリゴ糖上の末端位置におけるシアル酸部分を認識するレクチンの低い結合レベルは、不妊症の高いリスクを示す。シアル酸部分を検出するためには、レクチンアメリカカブトガニ(LPA)、イヌエンジュ(MAL II)またはコムギ胚芽(WGA)を使用することができる。いくつかの態様において、レクチン検出は、精子をノイラミニダーゼで処理し、パラホルムアルデヒド/グルテルアルデヒドで固定し、次に精子をFITCコンジュゲートしたレクチンABAとともにインキュベートすることによって達成される。
【0110】
変異体DEFB-126ポリペプチドの検出はまた、DEFB-126と会合した負荷電オリゴ糖部分に結合するポリ-L-リシン(または類似したポリカチオン物質)を使用して達成することもできる。アクチベータ化合物(ACT)による精子からのDEFB-126の除去またはシアリダーゼもしくはOグリコシダーゼによる精子の処理が、非ヒト霊長類精子の表面へのポリ-L-リシンの結合の有意な損失を生じさせる。Yudin et al. J. Membrane Biol. 207, 119-129 (2005)。したがって、正常な対照と比較して、DEFB126上のオリゴ糖と会合した負荷電部分を認識するポリ-L-リシンの結合レベルの低下は、不妊症の高いリスクを示す。
【0111】
レクチン、ポリカチオン(たとえばポリ-L-リシン)および/または抗体は、精液試料中のDEFB126糖タンパク質の検出のための診断キットに用いられる利用可能な技術とともに使用することができる。診断キットは、医院における使用または家庭環境における使用のための診断キットであることができる。精子標識の違いを検査することができ、閾値が、DEFB126野生型または「陽性」の男性とDEFB126欠失変異体または「陰性」の男性とを区別することができる。閾値は、たとえば、DEFB126陽性または陰性対照への比較によって決定することができる。閾値は、DEFB126の野生型または変異形態のいずれかを有することが知られる個体集団に結合するレクチン、ポリ-L-リシン(または類似したポリカチオン物質)および/または抗体を評価することによって決定することができる。検査試料中のレクチン、ポリ-L-リシン(または類似したポリカチオン物質)または抗体結合が、DEFB126変異形態を表す陰性対照または対照試料中のレクチン、ポリ-L-リシン(または類似したポリカチオン物質)または抗体結合に類似している、または等しいならば、その検査試料は、DEFB126変異形態の存在および不妊症の可能性を示す。検査試料中のレクチン、ポリ-L-リシン(または類似したポリカチオン物質)または抗体結合が、DEFB126野生型を表す陽性対照または対照試料中のレクチン、ポリ-L-リシン(または類似したポリカチオン物質)または抗体結合に類似している、または等しいならば、その検査試料は、DEFB126野生型の存在および低い不妊症の可能性、または変異体DEFB126以外の理由による不妊症を示す。検査試料中のレクチン、ポリ-L-リシン(または類似したポリカチオン物質)または抗体結合が、DEFB126野生型を表す陽性対照または対照試料中のレクチン、ポリ-L-リシン(または類似したポリカチオン物質)または抗体結合に満たないならば、その検査試料は、DEFB126変異形態の存在および不妊症の可能性を示す。
【0112】
使用されるレクチンはガラクトース-GalNAcまたはシアル酸を選択的に拘束する。カニクイザルモデルにおいて、レクチンABAおよび麦芽アグルチニン(WGA)が、無傷の(かつ生育可能な)精子およびウエスタンブロットにおいてDEFB126を強力に認識するということが記載されている(Yudin et al., (2005))。ABAによる標識は、生きている精子および固定された精子で実施することができるステップとして、精子がはじめにシアリダーゼによって処理されることを要する(Yudin et al., (2005); Tollner et al., (2008))。
【0113】
しかし、レクチンは、精子多糖外被の糖脂質および他の糖タンパク質と潜在的に会合した同じクラスのオリゴ糖に結合する。同様に、ポリ-L-リシン(または類似したポリカチオン物質)は、精子表面上の他の生体分子と潜在的に会合した高度に負荷電した部分に結合する。そのようなものとして、必要ならば、抗体をレクチンまたはポリ-L-リシン(または類似したポリカチオン物質)とともに使用して、より高い特異性を提供することもできる。ラテラルフロー免疫クロマトグラフィー家庭用試験装置を使用して精子濃度を推定するために、精子特異的タンパク質に対する抗体が使用されている(「SPERMCHECK(登録商標)、Klotz et al., 2008)。いくつかの態様において、レクチン、ポリ-L-リシン(または類似したポリカチオン物質)またはDEFB126に特異的に結合する抗体は、不妊症診断のために使用される。いくつかの態様において、レクチンまたはポリ-L-リシン(または類似したポリカチオン物質)は、精子特異的抗体と組み合わせて、不妊症分析のために使用することができる。
【0114】
変異体DEFB-126ポリペプチドの検出は、上記のような野生型および変異体DEFB-126ポリペプチドの物理的および/または化学的性質の測定によって達成することができる。そのような性質は、分子量および等電点、DEFB-126ポリペプチドのC末端の配列ならびにDEFB-126のC末端のグリコシル化の程度を含む。分子量測定および等電点測定のための条件は当技術分野において周知であり、たとえば米国特許出願第07/919,784号で詳細に記載されている。C末端タンパク質配列の決定は、当技術分野において周知の任意の方法、たとえばEdman分解技術(Creighton, Proteins: Structures and Molecular Principles, W.H. Freeman, New York, p. 3449 (1983))によって達成することができる。C末端グリコシル化は、当技術分野において公知の任意の方法を使用して、たとえば以下、実施例4に記載するようにして測定することができる。
【0115】
III. DEFB-126欠失多型を識別するためのキット
本発明はさらに、個体がDEFB-126欠失多型を有するかどうかを判定するのに有用な診断キットを提供する。キットは、DEFB-126座における個体の遺伝子型構成を分析する際に使用するためのポリヌクレオチドおよび/または個体のDEFB-126タンパク質産物を分析する際に使用するための抗体および/またはレクチンを含むことができる。キットは、DEFB-126ポリペプチド欠失もしくは突然変異または非発現性対立遺伝子を有する個体の治療に使用するためのポリペプチドを含むことができる。
【0116】
a. ポリヌクレオチド
一般に、個体の遺伝子型構成を試験する各キットは、一つまたは複数のポリヌクレオチド、たとえば本発明のDEFB-126欠失多型を含む遺伝子の部分を増幅するのに適したプライマー対、または野生型もしくは変異体DEFB-126核酸に選択的にハイブリダイズするプローブを含む。いくつかの態様において、キットは、個体から採取されたゲノムDNA試料の増幅に適したフォワードおよびリバースプライマーならびに使用のための使用説明書を含む。上記のように、生物学的試料は、ゲノムDNAが存在する任意の組織または流体からの試料であることができる。好都合には、試料は、血液、皮膚または毛球から採取することができる。
【0117】
キットは、生物学的試料を使用して増幅反応に使用するための鋳型を生成する方法、および最適な増幅反応のために提供されたプライマーセットを使用する方法に関する使用説明書を含む。使用説明書はさらに、増幅反応の解釈を記載し、部分配列
の位置6〜10における5個の連続するシトシン「CCCCC」の存在が正常な生殖能を示し、上述の部分配列の位置6〜10内の3個以下の連続するシトシン「CCC」の存在が不妊症の高いリスクまたは確率を示すということを示す。
【0118】
野生型または変異体DEFB-126ポリヌクレオチドを検出する際に使用するための、キットに含められるための例示的なポリヌクレオチドを以下の表にまとめる。
【0119】
たとえば、キットは、DEFB126-154s、DEFB126-199s、DEFB126-278sおよびDEFB129-441sからなる群より選択されるフォワードプライマーならびにDEFB126-330a、DEFB126-409aおよびDEFB129-546aからなる群より選択されるリバースプライマーを含むことができる。いくつかの態様において、キットはプライマーDEFB126-154sおよびDEFB126-409aを含む。増幅は、直接配列分析によって遺伝子型を決定するための鋳型として使用することができる。
【0120】
いくつかの態様において、キットは、たとえば増幅産物の配列分析によってDEFB-126遺伝子型を決定するための配列決定プライマーとしての使用を見いだすプライマーDEFB126-278sを含む。
【0121】
ポリヌクレオチドは、本明細書に記載されているような、当技術分野において公知の方法を使用する検出のために標識されることができる。
【0122】
b. 抗体
一般に、個体が、野生型DEFB-126ポリペプチドを産生しているのか、変異体DEFB-126ポリペプチドを産生しているのかを試験する各キットは、上記のようにDEFB-126ポリペプチドを識別する少なくとも一つの抗体を含む。キットはさらに、使用のための使用説明書および所望の反応を実施するのに必要なコンポーネント、たとえばポリアクリルアミドゲル、二次抗体、緩衝液などを提供する。
【0123】
キットはまた、供給される抗体および所望の反応を実施するのに必要な他のコンポーネントとともに生物学的試料を使用する方法に関する使用説明書を含むことができる。キットはさらに、DEFB-126ポリペプチドの存在を、正常な生殖能を示すとして解釈し、DEFB-126ポリペプチドの非存在または少ない存在を、不妊症の高いリスクを示すとして解釈する使用説明書を提供する。検出されるDEFB-126の存在はまた、所定の閾値レベルを参照して判定することもできる。そのような態様において、キットはさらに、閾値レベルを超えるDEFB-126ポリペプチドの存在を、正常な生殖能を示すとして解釈し、DEFB-126ポリペプチドの非存在または閾値レベル未満の存在を、不妊症の高いリスクを示すとして解釈するための使用説明書を提供する。いくつかの態様において、キットに含まれる抗体は野生型または変異体DEFB-126ポリペプチドのC末端に選択的に結合する。有用であるさらなる抗体は、DEFB-126の野生型と突然変異形態とを識別することができる。いくつかの態様において、抗DEFB-126抗体は、たとえば蛍光体、発色団、化学発光部分、酵素、放射性同位体などで標識される。いくつかの態様において、キットは、標識された二次抗体を含む。
【0124】
c. レクチン
いくつかの態様において、レクチン-DEFB126-抗体「サンドイッチ」手法を使用することもでき、そのような手法は、レクチンを「精子捕獲」戦略として使用することができる試験キットに非常に適合性であろう。たとえば、固体支持体に結合した適切なレクチンは、野生型DEFB126上のオリゴ糖を介して精子を拘束することができる。DEFB126の変異形態は、レクチンによって拘束されない、または低レベルで拘束される。DEFB126は、ホスホリパーゼCまたは高い塩およびpHの条件を用いる処理によって精子表面から放出させることができる(Yudin et al., (2003); Tollner et al., (2009))。DEFB126の比色検出の場合には、ビオチンまたは酵素にコンジュゲートしたモノまたはポリクロナール抗体を固相に適用することもできる。類似したサンドイッチアッセイ法が、モノクロナール抗体による、膵がんに伴う血清ムチンの検出の感度および特異性を大幅に高め(Neil Parker, (1998))、そのような方法は、本発明の方法に容易に適合することができる。
【0125】
キットはまた、供給されるレクチンおよび所望の反応を実施するのに必要な他のコンポーネントとともに生物学的試料を使用する方法に関する使用説明書を含むことができる。キットはさらに、DEFB-126ポリペプチドの検出可能な存在を、正常な生殖能を示すとして解釈し、DEFB-126ポリペプチドの非存在または少ない存在を、不妊症の高いリスクを示すとして解釈する使用説明書を提供する。検出されるDEFB-126の存在はまた、所定の閾値レベルを参照して判定することもできる。そのような態様において、キットはさらに、閾値レベルを超えるDEFB-126ポリペプチドの存在を、正常な生殖能を示すとして解釈し、DEFB-126ポリペプチドの非存在または閾値レベル未満の存在を、不妊症の高いリスクを示すとして解釈する使用説明書を提供する。いくつかの態様において、キットは、ガラクトース-GalNAcまたはシアル酸を選択的に拘束する少なくとも一つのレクチンを含む。いくつかの態様において、レクチンはマッシュルーム(ABA)またはパラミツ(Jacalin)である。いくつかの態様において、レクチンはアメリカカブトガニ(LPA)、イヌエンジュ(MAL II)またはコムギ胚芽(WGA)である。また、いくつかの態様において、キットは精子特異的抗体をも含む。
【0126】
いくつかの態様において、レクチンは、検出可能な標識、たとえば蛍光体、発色団、化学発光部分、酵素、放射性同位体などを含む。いくつかの態様において、キットは、レクチンに結合する標識された抗体を含む。
【0127】
d. ポリカチオンおよびポリ-L-リシン
いくつかの態様において、ポリ-L-リシン(または類似したポリカチオン物質)を抗体とともに本明細書に記載するような「サンドイッチ」手法で使用することができる。
【0128】
キットはまた、供給されるポリ-L-リシン(または類似したポリカチオン物質)および所望の反応を実施するのに必要な他のコンポーネントとともに生物学的試料を使用する方法に関する使用説明書を含むことができる。キットはさらに、DEFB-126ポリペプチドの検出可能な存在を、正常な生殖能を示すとして解釈し、DEFB-126ポリペプチドの非存在または少ない存在を、不妊症の高いリスクを示すとして解釈する使用説明書を提供する。検出されるDEFB-126の存在はまた、所定の閾値レベルを参照して判定することもできる。そのような態様において、キットはさらに、閾値レベルを超えるDEFB-126ポリペプチドの存在を、正常な生殖能を示すとして解釈し、DEFB-126ポリペプチドの非存在または閾値レベル未満の存在を、不妊症の高いリスクを示すとして解釈する使用説明書を提供する。いくつかの態様において、キットは、ガラクトース-GalNAcまたはシアル酸を選択的に拘束する少なくとも一つのレクチンを含む。いくつかの態様において、キットはまた、精子特異的抗体を含む。
【0129】
いくつかの態様において、ポリ-L-リシンは、検出可能な標識、たとえば蛍光体、発色団、化学発光部分、酵素、放射性同位体などを含む。いくつかの態様において、キットは、ポリ-L-リシン(または類似したポリカチオン物質)に結合する標識された抗体を含む。
【0130】
e. ポリペプチド
いくつかの態様において、本発明のキットはまた、男性不妊症の治療に使用するための、突然変異または非機能性DEFB-126ポリペプチドを発現する個体に対する、精子機能性の再構成(すなわち、受胎を達成する能力、たとえば頸管粘液(CM)浸透能力の再構成)のための機能性DEFB-126ポリペプチドを含むことができる。いくつかの態様において、DEFB-126ポリペプチドは、非ヒト霊長類、たとえばカニクイザルから得られる。いくつかの態様において、DEFB-126はヒトから得られる。いくつかの態様において、DEFB-126は、組み換えDEFB-126であることができる(たとえば真核生物発現系、たとえば昆虫細胞中で発現する)。一般に、キットは、治療用「アドバック」法および薬学的組成物に関して本明細書に記載されるような、正常な生殖能の再構成を可能にする機能性DEFB-126ポリペプチドを含む。
【0131】
キットは、精子を含む生物学的試料を、供給される機能性DEFB-126ポリペプチドおよび精子機能性(すなわち、受胎を達成する能力、たとえば頸管粘液(CM)浸透能力の再構成)を回復させるのに必要な他のコンポーネントとともに使用する方法に関する使用説明書を含むことができる。キットはさらに、DEFB-126再構成がうまく働いたかどうかを解釈する際に使用するための使用説明書および材料、たとえばHAまたはCM浸透ゲルを分析のために提供することができる。精子機能性の再構成(すなわち、受胎を達成する能力、たとえば頸管粘液(CM)浸透能力の再構成)は正常な生殖能を示す。
【0132】
IV. DEFB-126欠失多型を宿す個体の治療
a.欠陥DEFB-126ポリヌクレオチドの置換
不妊症評価の早期に個体がDEFB-126を有することを確証することにより、臨床医は、方向性のある治療介入、たとえば子宮内精子注入法(IUI)および体外受精(IVF)への速やかな移行を正当化するための科学的証拠を得ることができ、それにより、男女カップルにとって、長引く精密検査の時間および費用を節約する。
【0133】
野生型DEFB-126核酸を精巣上体に導入することができる。これは、機能性DEFB-126ポリペプチドをコードする核酸を、DEFB-126欠失多型を有する個体の精巣上体細胞に導入することによって達成することができる。DEFB-126核酸配列は、インビトロまたはインビボで導入することができる。野生型DEFB-126遺伝子配列の導入は、当技術分野において公知の遺伝子治療の任意の方法によって達成することができる。当技術分野において公知の任意のベクターを使用して治療用遺伝子を精巣上体に送達することができる。DNAおよびRNAウイルスベクター、アデノウイルスならびにアデノ随伴ウイルスのようなウイルス性ベクターを遺伝子治療ベクターとして使用することができる。裸のDNA、オリゴヌクレオチド、リポプレックスおよびポリプレックスならびにデンドリマーのような非ウイルス性ベクターが、宿主細胞に組み換えDNAを提供するための使用される方法のさらなる例である。上記に提供された遺伝子治療法は例であり、本発明に開示される方法は、上述した遺伝子治療の方法または当技術分野において使用される現在公知の遺伝子治療の方法のみに限定されるべきではない。治療用遺伝子療法は当技術分野において周知である(たとえばVerma and Weitzman, Ann. Rev. Biochem. 74:711-38 (2005)を参照)。
【0134】
b. 欠陥DEFB-126ポリペプチドの置換
遺伝子治療処置に代えて、またはそれに加えて、野生型DEFB-126タンパク質を使用してDEFB-126突然変異または欠乏性精子を再構成して、同じく、不妊症に対する、より低廉でより非侵襲的な治療手法を提供することができる。欠陥または欠乏性DEFB-126ポリペプチドは、インビボ(たとえば膣内的に)またはインビトロで置換することができる。インビトロで機能的に回復させた精子は体外受精法において使用することができる。機能性DEFB-126ポリペプチドは、天然の供給源から(たとえば、機能性DEFB-126タンパク質を産生するヒトまたは非ヒト霊長類から)精製することもできるし、組み換え的に(たとえば真核生物発現系、たとえば昆虫細胞中で)産生することもできる。DEFB-126タンパク質は、本明細書および当技術分野において記載されているように精製することができる。
【0135】
機能性DEFB-126タンパク質を、DEFB-126ポリペプチドを正常に発現することができない個体からの精子と接触させることができる。機能性DEFB-126を発現しない個体の精子への機能性DEFB-126ポリペプチドの「アドバック」が、DEFB-126活性を回復させる。顕著には、機能性DEFB-126を発現しない個体の精子を機能性DEFB-126と接触させることは、DEFB-126欠乏性精子が頸管粘液(CM)に浸透し、受胎を達成する能力を回復または改善する。可溶性野生型DEFB-126タンパク質を使用して、不妊性個体の精子の表面の非機能性DEFB-126または非発現DEFB-126を再構成または置換することができる。いくつかの態様においては、可溶性野生型DEFB-126タンパク質を使用して、不妊性個体の精子上に存在する突然変異DEFB-126タンパク質を再構成することができる。いくつかの態様においては、DEFB-126タンパク質が不妊性個体の精子に存在しない場合、可溶性野生型DEFB-126タンパク質を使用してDEFB-126活性を再構成することができる。
【0136】
カニクイザルからのDEFB-126とヒトからのDEFB-126との間の低いアミノ酸配列同一性(71%、図20)にもかかわらず、カニクイザルタンパク質をヒトにおいて使用することができる。図19に示すように、野生型DEFB-126を有するdel/delドナー男性からのヒト男性精子の処理がHAゲル中の精子浸透を改善した。そのようなものとして、カニクイザルからのDEFB-126は、治療目的のためにヒトにおいて使用される潜在性を有する。カニクイザルから得られるDEFB-126は、ヒトにおける生殖能治療に使用することができる。カニクイザルから得られるDEFB-126は、DEFB-126活性を再構成するために、ヒトにおいて治療的に使用することができる。いくつかの態様において、野生型可溶性DEFB-126はカニクイザルからのものであることができる。いくつかの態様において、欠陥精子はヒトからの精子であることができる。いくつかの態様において、DEFB-126を欠く、または突然変異DEFB-126を発現している不妊症のヒト男性の治療処置は、カニクイザルから得られる野生型DEFB-126からの精子の再構成によって治療することができる。
【0137】
再構成に有用なDEFB-126ポリペプチドまたはペプチド模倣物は、正常な生殖能を可能にすることができるものである。機能的には、DEFB-126欠乏性精子の機能を再構成または回復する方法に関して、機能性DEFB-126ポリペプチドは、天然DEFB126分子の二つの一般的性質、(1)精子の受精能獲得状態に依存して精子表面に可逆的に結合する能力、および(2)結合の間に精子表面に負電荷を付与する能力を有する。DEFB126(およびそのオルソログ)の第一の性質は、βデフェンシン「コア」またはモチーフ(たとえば上述した配列番号:46〜49)によって媒介される。βデフェンシンはアミノ配列が相当に異なることができるため、6個のシステイン残基の位置は厳密に保存され、ジスルフィド結合を介して特徴的なペプチドのフォールディングを誘発する。βデフェンシンはまた、アスパラギン酸およびグルタミン酸残基の数に対して過剰なアルギニンおよびリシン残基の存在により、高度にカチオン性である。βデフェンシンはまた、高い割合の疎水性アミノ酸残基を有する。三次元構造、高い正電荷および疎水性残基の高い割合の組み合わせが、βデフェンシンが膜表面に結合することを可能にする。DEFB126の第二の性質は、ペプチドの負荷電カルボキシル伸長によって付与される。天然分子においては、シアリル化O結合型オリゴ糖が電荷の大部分を占めるが、しかし代替構造、たとえばN結合型オリゴ糖は、ポリペプチドのカルボキシル末端を十分にアニオン性にすることができる。O結合型糖質は、セリンおよびトレオニンに結合しているが、N結合型糖質はアスパラギンに結合している。
【0138】
したがって、いくつかの態様において、DEFB-126ポリペプチドまたはポリペプチド模倣物は、コアβデフェンシンモチーフ(aa 21〜67)、たとえば、配列番号:46、配列番号:47、配列番号:48、配列番号:48または配列番号:49とで95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。オルソログ(-)(上記で整列化した)の間で共有される残基はないが、電荷もしくは極性が類似している、またはシステイン間スパンの電荷および極性の保持に貢献するアミノ酸を置換することができる。
【0139】
いくつかの態様において、DEFB-126ポリペプチドまたはポリペプチド模倣物は、結合の間に精子表面に負電荷を付与するのに十分にアニオン性である、たとえば、十分な数のN結合型糖質、たとえばシアル酸部分を有するカルボキシル伸長モチーフ(たとえばaa 68〜121、68〜134または68〜181)を含む。DEFB126オルソログのカルボキシル伸長は、配列および長さの両方が相当に異なる。類似点は、セリンおよびトレオニン残基の発生量(カルボキシル領域中の全残基の約40%)ならびに隣接するセリンおよびトレオニン残基におけるグリコシル化をより起こりやすくするプロリンおよびアルギニン残基を含む。また、すべてのオルソログが、カルボキシル伸長のグリコシル化領域を進める第七のシステインを含有する(括弧内に示す)。括弧内の領域が天然分子の一般的性質に貢献するかどうかは明らかではなく、したがって、この配列セグメントは、場合によっては、所望により、機能性DEFB-126ポリペプチドに含められることもできるし、欠失されることもできる。以下は、マウス配列に基づくCOOH末端構造であり、最長のオルソログである。より短い構造(カニクイザルおよびヒトDEFB-126配列に基づく)、たとえばaa 68〜121、aa 68〜134またはaa 68〜181もまた、結合の間に精子表面に負電荷を付与するのに十分にアニオン性である、たとえば、十分な数のN結合型糖質、たとえばシアル酸部分を有するならば、機能性である。
【0140】
いくつかの態様において、機能性DEFB-126ポリペプチドまたはポリペプチド模倣物は、たとえば同じ種または異なる種からのデフェンシンコアモチーフおよびデフェンシンカルボキシル伸長モチーフを含む。いくつかの態様において、機能性DEFB-126ポリペプチドまたはポリペプチド模倣物は、デフェンシンコアモチーフ、ならびにポリペプチドが結合の間に精子表面に負電荷を付与するのに十分にアニオン性になるようなO結合型および/またはN結合型グリコシル化を可能にする一つまたは複数の縦列反復または配列セグメント(たとえばムチン反復配列)を含むカルボキシモチーフを含む。いくつかの態様において、機能性DEFB-126ポリペプチドまたはポリペプチド模倣物は、配列番号:46、47、48または49のデフェンシンコアモチーフ、および、配列番号:50のデフェンシンカルボキシル伸長モチーフまたは結合の間に精子表面に負電荷を付与するのに十分なアニオン電荷を有する配列番号:50のより短い長さ(たとえばaa 68〜121、68〜134または68〜181)を含む。
【0141】
いくつかの態様において、正常な生殖能を可能にするDEFB-126ポリペプチドは、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11および配列番号:12から選択される野生型DEFB-126ポリペプチドに対して少なくとも95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を共有する。いくつかの態様において、正常な生殖能を可能にするDEFB-126ポリペプチドは、配列番号:6の野生型DEFB-126ポリペプチドに対して少なくとも95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を共有する。いくつかの態様において、正常な生殖能を可能にするDEFB-126ポリペプチドは、配列番号:12の野生型DEFB-126ポリペプチドに対して少なくとも95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を共有する。
【0142】
本組成物および方法において有用である機能性DEFB-126ポリペプチドおよびポリペプチド模倣物は、CMまたはHAゲルに浸透するDEFB-126欠乏性精子試料の機能を回復させ、本明細書に記載されるようなHA/CMゲル浸透アッセイ法において試験することができる。
【0143】
DEFB-126「アドバック」アッセイ法
a. 可溶性DEFB-126の調製
DEFB-126を欠く、または突然変異体を含む精子は、頸管粘液(CM)浸透に関して欠陥があり、その結果、不妊症を生じさせる。DEFB-126をアドバックして、DEFB-126欠陥または欠乏性精子に対して精子機能性を再構成し(すなわち、受胎を達成する能力、たとえば頸管粘液(CM)浸透能力の再構成)、不妊症男性を潜在的に生殖可能にすることができる。
【0144】
DEFB-126可溶性タンパク質は、当業者に周知の任意の方法によって得ることができる。タンパク質調製のための一般的な方法は十分に記載されている(たとえば一般に、Sambrook et al. Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY (2001)およびAusubel, ed., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley Interscience, (1990-2008)を参照)。
【0145】
可溶性DEFB-126を含有する溶液の具体的な調製方法は十分に記載されている(Tollner et al., (2004))。簡潔にいうと、精子試料を80%Percollの3.5mlカラムに通して洗浄し、再懸濁させ、Tollner et al., (2004)に記載されているようにDEFB-126タンパク質濃度を測定し、エネルギー基質およびBSAなしでDPBS 10ml中に再懸濁させた。
【0146】
b. アドバック/再構成アッセイ法
タンパク質アドバック実験は当技術分野において一般的かつ周知であり、十分に記載されている(Tollner et al., (2004, 2008a,b))。DEFB-126を、DEFB-126欠乏性の精子および突然変異または非機能性DEFB-126を有する精子に付加することができる。DEFB-126は、たとえば個体における非発現性対立遺伝子の存在のせいで、精子に存在しないこともある。DEFB-126は、たとえば、精子表面からDEFB-126ポリペプチドを取り出すための当技術分野において公知であるACTを使用して、精子から取り出すことができる(Tollner et al., (2004))。
【0147】
興味深いことに、カニクイザルからのDEFB-126がヒトタンパク質に対して71%しか相同性でないという事実にもかかわらず(図20)、カニクイザルからのDEFB-126を使用するヒト精子の再構成が、ヒト精子の機能性を改善するのに効果的であった(実施例9および図19)。いくつかの態様においては、ヒト精子機能を再構成するために、カニクイザルまたは別の非ヒト霊長類からの野生型可溶性DEFB-126をアドバック実験に使用することができる。
【0148】
c. 頸管粘液またはHA浸透ゲル
頸管粘液(CM)ゲルは、周排卵期雌性カニクイザルから頸管粘液を採取することによって調製することができる。採取ののち、CMを、精子運動率実験における使用のために顕微鏡スライド上に調合することができる。このような実験は当技術分野において十分に記載されている(Tollner et al., (2008b))。
【0149】
精子機能のインビトロ試験のために、ヒアルロン酸(HA)で構成された媒体を使用してCMを模倣した。CMは、子宮頸部で生成される少なくとも五つの別々のムチン分子に由来する複雑な生物物理学的性質を有するが(Gipson et al., 1997; Lagow et al., 1999)、HAから調製された溶液は、特に粘度および電荷に関して粘液の性質のいくつかを共有する(Gatej et al., 2005)。HAゲルは、ヒト精子による浸透性においてCMに非常に類似している(Tang et al., 1999、Neuwinger et al., 1991; Aitken et al., 1992)。ヒトCMの限られた利用性および高い変異性のため、精子機能の臨床評価においてはHAゲルが粘液代用物として使用されている(Aitken, 2006)。ビデオ分析を実施してHA浸透ゲル中の個々の精子の運動を検査することができる(たとえばTollner et al., (2008)およびCherr et al., (1999)を参照)。
【0150】
CMまたはHAゲルは、分析のためのチャンバ中に調合することができる。これらのチャンバは、精子浸透能力のビデオ顕微鏡分析を可能し、当技術分野において記載されている(Tollner et al 2008b)。CMまたはHAゲルを含む浸透チャンバの概略図が図14に示されている。
【0151】
浸透チャンバは、個体から直接得られた精子、タンパク質を除去するために前処理された精子またはタンパク質がアドバックされた精子の浸透能力の分析のために使用することができる。いくつかの態様において、精子は突然変異DEFB-126を含有することができる。いくつかの態様において、精子は、DEFB-126を除去するために前処理されることができる。いくつかの態様において、精子は、DEFB-126を除去するために前処理されたのち、DEFB-126をアドバックされることもできる。
【0152】
CM中の効率的な精子移動が生殖能にとって重要であると記載されている。事実、DEFB-126の除去が、精子が頸管粘液(CM)に浸透する(またはその中で効率的に移動する)能力を低下させることがわかっている。上記のCMおよびHA浸透チャンバはさらに、個体から直接得られた精子の機能を検査するための診断目的にも使用することができる(たとえばTollner, et al., 2008bならびに実施例8および表2を参照)。
【0153】
V. 機能性DEFB-126ポリペプチドを含む組成物
本発明はさらに、生理学的に許容可能な担体中に機能性DEFB-126ポリペプチドを含む組成物を提供する。一つの態様において、薬学的組成物は、受胎を達成するには不十分なDEFB-126しか発現していないヒト精子の機能性を回復または改善する際に使用するための、本明細書に記載されるような機能性非ヒトDEFB-126ポリペプチドまたはDEFB-126ポリペプチド模倣物を含む。
【0154】
本組成物において有用なDEFB-126ポリペプチドまたはペプチド模倣物は、正常な生殖能を可能にすることができるものである。機能性DEFB-126ポリペプチドは、天然DEFB126分子の二つの一般的性質、(1)精子の受精能獲得状態に依存して精子表面に可逆的に結合する能力、および(2)結合の間に精子表面に負電荷を付与する能力を有する。
【0155】
したがって、いくつかの態様において、本組成物における機能性DEFB-126ポリペプチドまたはポリペプチド模倣物は、コアβデフェンシンモチーフ(aa 21〜67)、たとえば、配列番号:46、配列番号:47、配列番号:48、配列番号:48または配列番号:49とで95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。オルソログ(-)(上記で整列化した)の間で共有される残基がない場合、電荷もしくは極性が類似する、またはシステイン間スパンの電荷および極性の保持に貢献するアミノ酸を代用することができる。
【0156】
いくつかの態様において、DEFB-126ポリペプチドまたはポリペプチド模倣物は、結合の間に精子表面に負電荷を付与するのに十分にアニオン性である、たとえば十分な数のN結合型糖質、たとえばシアル酸部分を有するカルボキシル伸長モチーフ(たとえばaa 68〜121、68〜134または68〜181)を含む。
【0157】
いくつかの態様において、機能性DEFB-126ポリペプチドまたはポリペプチド模倣物は、デフェンシンコアモチーフおよびデフェンシンカルボキシル伸長モチーフを含む。いくつかの態様において、機能性DEFB-126ポリペプチドまたはポリペプチド模倣物は、デフェンシンコアモチーフ、ならびにポリペプチドが結合の間に精子表面に負電荷を付与するのに十分にアニオン性になるようなO結合型および/またはN結合型グリコシル化を可能にする一つまたは複数の縦列反復または配列セグメント(たとえばムチン反復配列)を含むカルボキシモチーフを含む。いくつかの態様において、機能性DEFB-126ポリペプチドまたはポリペプチド模倣物は、配列番号:46、47、48または49のデフェンシンコアモチーフ、および、配列番号:50のデフェンシンカルボキシル伸長モチーフまたは結合の間に精子表面に負電荷を付与するのに十分なアニオン電荷を有する配列番号:50のより短い長さ(たとえばaa 68〜121、68〜134または68〜181)を含む。
【0158】
一つの態様において、機能性DEFB-126ポリペプチドは、局所投与のために製剤化される薬学的組成物、たとえばクリーム、ペースト剤、ゲル、泡沫、軟膏、スプレー、潤滑剤、エマルションまたは懸濁液に調製される。いくつかの態様において、局所投与のために製剤化された薬学的組成物は、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11および配列番号:12から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一である機能性DEFB-126ポリペプチドを含む。
【0159】
局所製剤において、通常、機能性DEFB-126ポリペプチドは、約0.1、0.2、0.5、1.0または2.0重量%で含まれるが、最大で製剤全体の5、10、15または20重量%またはそれ以上で含まれることもできる。機能性DEFB-126ポリペプチドは、一つまたは複数の薬学的に許容可能な担体とともに製剤化される。たとえば局所適用の場合、薬学的に許容可能な担体はさらに、有機溶媒、乳化剤、ゲル化剤、加湿剤、安定剤、他の界面活性剤、湿潤剤、保存剤、徐放剤および少量の保湿剤、金属イオン封鎖剤、染料、香料および局所投与のための薬学的組成物に一般に使用される他の成分を含むことができる。局所投与のための固形剤形は、坐剤、粉剤および顆粒剤を含む。固形剤形において、組成物は、少なくとも一つの不活性希釈剤、たとえばショ糖、乳糖またはデンプンと混合されることができ、さらに、潤滑剤、緩衝剤および当業者には周知の他の成分を含むことができる。
【0160】
膣投与に適した機能性DEFB-126ポリペプチド製剤は、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、泡沫またはスプレーフォーミュラとして提示されることができる。
【実施例】
【0161】
以下の実施例は、請求項に係わる発明を例示するために提供されるものであり、それを限定するためのものではない。
【0162】
実施例1:DEFB-126欠失多型は有意に変化したペプチド構造を有する
原核生物細胞系における組み換え発現のためにヒトDEFB-126をクローン化するとき、DEFB-126cDNAにおける配列変異が識別された。この特定のDEFB-126欠失多型は、ヒト集団において非常に一般的であると思われる。変異体DEFB-126のアミノ酸配列は、構造および機能の甚大な変化を生じさせる、有意に変化し、伸長したカルボキシル末端の糖質含有ドメインを有する。さらには、配列変異を有する精巣上体標本は、野生型精巣上体組織に比較して顕著に低いDEFB-126の発現を有する。
【0163】
DEFB-126変異体は、DEFB-126のオープンリーディングフレーム中のフレームシフトを生じさせる2ヌクレオチド省略(欠失)を有するものであった(図4A)。この配列変異はNCBIゲノムDNA配列データベース中で確認された。中国人男性コホートから無作為に選択された465名の個体(S. Venners & Xiping Xu(U. Chicago)と共同)および英国の男性集団からの74名の個体を遺伝子型決定した(図4B)。異常なタンパク質をコードするmRNAは、多くの場合、より急速な分解のせいで、低めの定常状態濃度で存在する。したがって、定量的RT-PCR(qPCR)を使用して精巣上体組織中のDEFB-126mRNAを分析した。配列変異体を有する精巣上体標本中のDEFB-126mRNAのレベルの低下を分析した(図4C)。さらには、変異体DEFB-126のアミノ酸配列は、そのカルボキシル末端の糖質含有ドメインが有意に変化している(図4D)。
【0164】
実施例2:生殖能が低下した男性におけるDEFB-126欠失多型
中国、安徽省(Anhui Province)の農村において妻とともに人口ベースの予測的生殖能・妊娠コホート研究に参加した638名の男性においてDEFB-126欠失多型を遺伝子型決定した。2003年7月から2005年2月の間の募集時、全員が最近結婚したところであり、登録時、妊娠中である女性はいなかった。生理不順および骨盤炎症をはじめとする女性側不妊要因に関して(n=81)、また、サブセット分析においては、慢性的細菌性前立腺炎の証拠をはじめとする男性側要因に関して(精液pH>8.0、n=110)、夫婦をこの分析から除外した。登録前1年以内に経口避妊薬またはIUDを使用したことのある59組の夫婦を除外した。追跡調査できなくなったさらに39組の夫婦に関してデータが不明であった。この分析は、残り355組の夫婦を含むものである。
【0165】
21ヶ月以内の妊娠の相対的確率に関し、夫のDEFB-126遺伝子型にしたがって、データをロジスティック回帰によって分析した。分析は、del/del遺伝子型を有する男性は有意に生殖能が低いということを示した(OR=O.5、p=0.03)表1。モデルは、DEFB-126遺伝子型と妊娠との関係に関して、精液pHのレベル内では独立したパラメータを可能にしたが、しかしモデル中のすべての他のパラメータは集団全体で評価した。夫の年齢、妻の体重指数および精液採取前の夫の性行為禁断日数に関してロジスティック回帰パラメータを調節した。α=0.20としたこのモデルにおいては、夫の体重指数と喫煙および妻の年齢のいずれも統計的に有意ではなかった。同じモデルを使用して精子数のデータ(>2000万個/mlまたは<2000万個/ml、世界保健機構(World Health Organization)基準値)を分析すると、21ヶ月以内の妊娠との関連は見られなかった。この予測的コホートにおいて、DEFB-126遺伝子型が生殖能と関連していたが、男性不妊症の従来の尺度である精子数は関連していなかった。
【0166】
(表1)相対的妊娠確率のロジスティック回帰パラメータ
【0167】
実施例3:DEFB-126欠失多型を有するドナーからの精子はO結合に関連する表面グリコシル化が減少している
wtおよび変異体遺伝子型を有するドナーからのヒト精子を、O結合型グリカンに特異的な構造であるガラクトース-GalNAc-セリン(またはトレオニン)を選択的に拘束するレクチンマッシュルーム(ABA)で標識した。DEFB126変異体(del/del)を有するドナーからの精子は、野生型ドナー(wt/wt、wt/del)に比べてABA関連蛍光の有意な低下を示した。ヒトDEFB126のアミノ酸配列分析が、O結合型グリコシル化のための少なくとも20の部位を識別する。ABAのための結合部位の有意な減少は、DEFB126が、DEFB-126欠失多型を有する男性からの精子の表面に吸着されない、またはそのオリゴ糖の、全部ではないとしても大部分を欠いていることのいずれかを示唆する。
【0168】
ヒト精子をノイラミニダーゼで処理し、パラホルムアルデヒド/グルテルアルデヒドで処理し、FITCコンジュゲートしたレクチンABAとともにインキュベートした。DEFB126野生型ドナー(wt/wtおよびwt/del)からの精子とDEFB126遺伝子変異体のみを有するドナー(del/del)からの精子との間に蛍光における違いを明らかに見ることができる(図6A)。同じドナーからのレクチン標識された精子の強度をMetaMorph画像解析ソフトウェアで定量化した。36の精子/ドナーのデジタル画像をすべての処理に関して同じレベルに閾値設定し、平均画素強度を測定した(図6B)。
【0169】
実施例4:精子表面オリゴ糖の微細構造特性決定
精製されたDEFB126から切除されたO結合型オリゴ糖の質量スペクトルは、糖タンパク質の高度なアニオン性と合致する発見として、オリゴマーが高度にシアリル化されていることを示唆する。ヒト精子をノイラミニダーゼで処理し、パラホルムアルデヒド/グルタルアルデヒドで処理し、FITCコンジュゲートしたレクチンABAとともにインキュベートした。DEFB126野生型ドナー(wt/wtおよびwt/del)からの精子とDEFB126遺伝子変異体のみを有するドナー(del/del)からの精子との間に蛍光における違いを明らかに見ることができる(図7A)。同じドナーからのレクチン標識された精子の強度をMetaMorph画像解析ソフトウェアで定量化した。36の精子/ドナーのデジタル画像をすべての処理に関して同じレベルに閾値設定し、平均画素強度を測定した(図7B)。予備的結果のためのタンデム型MSを実施するには不十分な量のオリゴ糖しかなかった。しかし、タンデム型MSによる構造解明および単糖組成分析を可能にする、本明細書で提案される後続の実験においては、より多くのオリゴ糖が得られる。
【0170】
このタンパク質の相対的に小さなサイズは、無傷の糖タンパク質または主要なグリコシル化トリプシンペプチドを質量分析法によって直接精査することができるいわゆる「トップダウン」分析を適用可能にする。図8Aには、脱グリコシル化形態として発現したもう一つのデフェンシン(Lebrilla, Bevins, et al.、未公表)ペプチドの質量スペクトルが示されている。その構成成分グリカンが無傷である状態で得られる同じデフェンシンペプチドは、別々の単糖質量によって異なる一連のピークとしてグリカン構造の不均一性を示す。図8Cのはめ込み逆重畳スペクトルを参照。無傷の糖ペプチドをタンデム型MSで精査することにより、グリカン構成成分および部位特異的グリコシル化の両方を得ることができる。
【0171】
オリゴ糖をDEFB-126から放出させ、MSで試験した。分析のための試料を得るために、精製されたタンパク質をNaBH4/NaOHで処理してO結合型オリゴ糖を放出させた。クリーンアップのために、試料を多孔性黒鉛状炭素カートリッジに通してオリゴ糖を回収し、分離した。MALDI FTMS機器で得られた質量スペクトルは、オリゴ糖に対応する多数の特徴を示す。質量単位162個分だけ離間したピークが、ヘキソース残基を有するオリゴマーに対応する。たとえば990〜1056のピークの群は、シアル酸を含有するオリゴマーの存在を示す。この種は、多数のNa+イオンを含有するいくつかのシグナルにかけて分布している。
【0172】
実施例5:DEFB-126は精巣上体管中に分泌され、精子表面に吸着される
精巣上体体中でのDEFB-126の発現は、哺乳動物精子成熟の保存された特徴であると思われる。精巣上体体末端部中のDEFB-126の発現が以前にカニクイザル(Perry, et al., Biol. Reprod. 61:965-972 (1999))およびヒト(Rodriguez-Jimenez et al., Genomics 81:175-83 (2003))において記載されている。DEFB126の精巣上体体発現がカニクイザルにおいて立証された(図9A、Yudin et al., Biol. Reprod. 69:1118-1128 (2003))。DEFB-126オルソログ(Defb22)の精巣上体体発現がマウスにおいて立証された(図9BおよびC)。DEFB126(およびマウスオルソログDefb22)は、尾部への移動中に精子表面全体に吸着されるようになる。
【0173】
DEFB-126に対する抗体は、雄性カニクイザル生殖組織のウエスタンブロット上、31〜36kDaで移動する重度にグリコシル化されたDEFB-126を検出する(図9A)。DEFB126のマウスオルソログに対する抗体も同様に、マウス精巣上体中に糖ペプチドを検出した(図9B)。サルおよびマウスの両方において、グリコシル化デフェンシン(それぞれDEFB126/Defb22)の発現は精巣上体体中で開始すると思われ、デフェンシンは精子と会合したままになる。Defb22抗原は、マウス精巣上体の頭および体領域のパラフィン切片上に限局化した(図9C)。パパニコラウ(「PAP」、E)で染色すると、様々な分割領域が明らかになった。精巣上体体基部中、精巣上体の内腔は抗体で染色されなかったが、しかし管の周縁は抗Defb22Igで重度に標識された。精子が精巣上体体の末端部分に進むにつれ、内腔は精子で満たされ、それらの精子は抗Defb22Igで重度に標識された(図9C、右下)。DEFB126およびDefb22に特異的な抗体は、それぞれ、洗浄されたカニクイザルおよびマウス精子尾部上のグリコシル化デフェンシンを認識する。両種において、デフェンシンは精子表面全体に分布している。
【0174】
実施例6:DEFB-126表面被膜は雌性生殖路中の精子輸送の様々な段階を促進する
DEFB-126は、交尾した雌性カニクイザルの上生殖路から回収されたカニクイザル精子上に保持される(Tollner et al, Hum. Reprod. 23:2523-34 (2008))。カニクイザル精子表面上のDEFB-126は、この部位への精子輸送中の多数の主要イベントにとってきわめて重要であると思われる。抗DEFB-126Igで処理されたカニクイザル精子は、周排卵期頸管粘液に浸透する能力の大幅な低下を示した(図10A)。阻害の相対的大きさは、DEFB-126を除去するために精子を処理した場合に類似していた(図9B; Yudin et al., Biol. Reprod. 69:1118-28 (2003))。DEFB126の「アドバック」がカニクイザル精子の粘液浸透能力を完全に回復させる(図10B)。ノイラミニダーゼによる精子の処理(末端シアル酸残基を除去する)がDEFB126の正味負電荷を急激に低下させ(Yudin et al., Biol. Reprod. 73:1243-1252 (2005))、粘液浸透を有意に阻害する。図10C。同様に、ポリ-L-リシンの添加によってカニクイザル精子の負表面電荷が中和されると、粘液浸透は阻害される。図10D。さらには、DEFB-126の損失は、多数の精子特異的表面タンパク質を抗体認識に暴露し(Yudin et al, Biol. Reprod. 73(6):1243-52 (2005))、卵管上皮に結合する精子の親和力を低下させる(Tollner et al., Biol. Reprod. 78:400-412 (2008))。それにもかかわらず、精子頭部からのDEFB126の損失は、精子が透明帯に結合するためには不可欠である(Tollner et al., Mol. Reprod. Dev. 69:325-37 (2004))。
【0175】
精子を、DEFB-126に特異的な抗体(図10A)、DEFB-126を取り出すためのアクチベータ化合物(「放出」)(図10B)、ノイラミニダーゼ(図10C)またはポリ-L-リシン(PL、D)で処理した。処理ののち、精子を、周排卵期CMを含有するスライドチャンバに入れた。2分後、精子が精子懸濁液-CM界面から2.75mmのところでビデオ視野に入ったとき、精子を連続4分間録画した。ビデオ視野中の精子の数を1分間隔でカウントした。図10Bに示す実験の場合、アクチベータ条件から取り出したのち、これらの精子のアリコートをDEFB-126で処理した(アドバック)。3〜4匹の異なる雄性カニクイザルからの精子を用いて実験を実施した。文字(a、b)は、時間間隔内の処理の間の平均精子数における有意な差(p<0.05)を示す。
【0176】
実施例7:del/delドナーからの精子は周排卵期頸管粘液(CM)を模倣するゲルに浸透する能力の低下を示す。
精子機能のインビトロ試験のために、HAで構成された媒体を使用してCMを模倣した。CMは、子宮頸部で生成される少なくとも五つの別々のムチン分子に由来する複雑な生物物理学的性質を有するが(Gipson et al., 1997、Lagow et al., 1999)、HAから調製された溶液は、特に粘度および電荷に関して粘液の性質のいくつかを共有する(Gatej et al., 2005))。HAゲルは、ヒト精子による浸透性においてCMに非常に似ている(Tang et al., (1999); Neuwinger et al., (1991); Aitken et al., (1992))。ヒトCMの限られた利用性および高い変異性のため、精子機能の臨床評価においてはHAゲルが粘液代用物として使用されている(Aitken, (2006))。
【0177】
ヒアルロン酸(HA)ゲルに浸透するヒト精子の能力の評価が図14および15に示されている。図14は、頸管粘液(CM)またはHAゲルの精子浸透の図を提供する。CMまたはHAを含有する浸透チャンバを顕微鏡ステージウォーマ上で事前に暖め、Tollner et al.(2008b)によって記載されているようにビデオ顕微鏡機器でプレキューした。精子を、HEPES緩衝精子媒体中で洗浄し、スライドチャンバに入れた。2分後、精子が精子懸濁液-CM(またはHAゲル)界面から2.75mmのところでビデオ視野に入ったとき、精子を連続4分間録画した。ビデオ録画から、ビデオ視野中の精子の数を1分間隔でカウントした。
【0178】
図15は、HAゲルのヒト精子浸透を説明するデータを提供する。DEFB126多型に関して遺伝子型決定されたドナーからの精子をHA浸透実験に使用した(A)。HAゲルは、3%BSAで補足されたHEPES緩衝BWW媒体1mlあたり5mgの精製ヒアルロン酸(220kDa分画)で構成されたものであった。生殖能コホート実験におけるように、wt/wtおよびwt/delドナーからの精子に関する結果を平均化し(wt、n=8)、del/delドナーからの精子の平均応答(del、n=6)とで比較した。精子懸濁液を平均曲線速度(VCL)に関してCASAによって分析した(B)。精子懸濁液のスメアを付けたスライドを「Pap」染色し、WHO '89精子形態法にしたがって分析し、全平均%正常形態(%正常)として報告した(C)。A〜Cで報告された観察結果を対にし、これらは、各ドナーからの二ないし三回の射精(サブ試料)で平均化されたデータを表す。データを平均±SEMとして報告した。十字記号(+)および星印(*)は、それぞれ、1ウェイANOVAによって決定された遺伝子型の間での平均精子数におけるp<0.01およびp<0.005における有意な差を示す。wt DEFB126遺伝子を有するドナー(wt=wt/wt+wt/del)からの精子および遺伝子変異体のみを有するドナー(del/del=del)からの精子の間でABAレクチン標識結果を平均化した(D)。レクチン実験は、より最近募集されたドナーを含むように拡大され(付録の図2)、元のデータセットに関して記載したように、標識強度に関してMetamorphによって分析される。
【0179】
DEFB126遺伝子変異体に関して遺伝子型決定された同じ14名のドナーからのヒト精子を、HAゲルに浸透する能力に関して試験した(図15)。DEFB126多型に関してホモ接合性であったドナー(del/del=「del」)からの精子は、野生型の少なくとも一つのコピーを有する男性(wt/wtおよびwt/del=「wt」)からの精子に比較して有意に低下したHA浸透能力を示した(図15A)。平均曲線速度(VCL)によって推定される前進運動率および浸透アッセイ法で使用された精子の形態は、del男性とwt男性との間で有意には異ならず、したがって、HA中の精子性能の予測子として不十分であると思われた(図15Bおよび15C)。対照的に、DEFB126遺伝子型およびレクチン標識(図15D)は、HA浸透アッセイ法の結果と強く合致した。6名のdelドナー全員の精子が、8名のwtドナーからの精子に比較して、マッシュルーム(ABA)レクチンによる表面標識を顕著に低下させ、DEFB126遺伝子多型が精子多糖外被中のO結合型オリゴ糖の損失または減少を生じさせるということを示唆した(図16)。
【0180】
実施例8:ドナーの生殖能はWHO正常精液基準値よりも変異体遺伝子型決定および精子レクチン標識によって正確に予測される。
レクチンおよびHA浸透実験のために遺伝子型決定された14名のドナーのうち、10名は、パートナとで受胎を試みたことがない、または非意図的に受胎を達成したことがない学生である。3名のドナー(2人はwt/del、1人はwt/wt)は、自然な手段によって子供をもうけており、1人のドナー(del/del)は、ART(Assisted Reproductive Technologies)プログラムにおける臨床治療介入後に子供をもうけていた。正常精液パラメータのWHO基準値(表2)は、ドナー#10(D10、del/del)が正常値を有し、生殖能ありと分類されるであろうことを示す。実際には、D10は不妊症である。このドナーおよびその配偶者(いずれも、臨床精密検査の時点では検出可能な不妊問題を有しなかった)は、数年にわたり受胎を試み、6サイクルの子宮内精子注入法(IUI)ののち、はじめて受胎した。対照的に、ドナー#12(D12、wt/wt)は、基準値未満の精子形態を有し、非常に低い精子数を有する。WHO標準による、このドナーは、不妊性または低受胎性である可能性が非常に高いと分類されるであろう。D12およびそのパートナは、避妊の使用における失敗の間に自発的に受胎した。表2は、一般に受け入れられている診断基準が不妊症を予測することができない状況を強調している。D10およびD12のいずれの場合でも、遺伝子型決定およびレクチン標識の結果(図16)が精子機能の試験(図17)および実際の生殖能状態と強く合致している。
【0181】
(表2)WHO「正常」精液値
【0182】
実施例9:DEFB126欠失多型のスクリーニング
DEFB126多型に関する遺伝子型決定は、不妊症プログラムにおいて実行される一連の標準診断試験の一つとして有用である。不妊症評価の早期において患者のDEFB126遺伝子型を確証することにより、臨床医は、方向性のある治療介入、たとえばIUIおよびIVFへの速やかな移行を正当化するための科学的証拠を得ることができ、それにより、男女カップルにとって、長引く精密検査の時間および費用を節約する。
【0183】
潜在的な恩典の明確な例が、ドナーD10の原因不明の不妊症のケースによって実証されている(表2、図16および17)。図16は、図7に記載されているようなFITCコンジュゲートしたレクチンABAで標識されたヒト精子を説明するデータを提供する。8名のDEFB126野生型ドナー(wt/wtおよびwt/del)からの精子とDEFB126遺伝子変異体のみを有する6名のドナー(del/del)からの精子との間に蛍光における違いを明らかに見ることができる。ドナーD10からの精子は非常に低いレベルの結合レクチンを示すが、ドナーD12からの精子は明るくかつ均一に標識されている。図17は、D10およびD12からの精子によるHA浸透を説明するデータを提供する。浸透実験は、図14および15に記載するように実施した。del男性(ピンク)およびwt男性(青)からの精子浸透値のプロットが図15から再現されている。D10(淡いピンク)およびD12(淡い青)からの精子のHA浸透が、それぞれdelおよびwt男性の平均値に関して示されている。
【0184】
完全な不妊症精密検査の間にD10またはそのパートナのいずれにおいても不妊症問題は識別されなかった。生殖能評価プロセスの早期にこの男性が遺伝子型決定されていたならば、この男女カップルはすぐにIUIに進み、18ヶ月から2年にも及ぶ失敗を避けることができたであろう。
【0185】
DEFB126多型の検出はまた、精子運動率、形態および数のような精液性質の通例の尺度の予後診断力を改善する。現在、これらの精液パラメータは、男性の生殖能力と相関されているが、男性不妊症の予測子として信頼して使用されるための特異性を欠く(Guzick and Overstreet et al., (2001); Ombelet et al., (1997))。本発明者らのデータは、機能性DEFB126精子被覆タンパク質の欠如が、他ならば従来の臨床尺度に基づく生殖能状態の明確な解釈であるかもしれない解釈を曇らせる、重要であるがこれまで説明されていない低受胎性の要因であることを示唆する(表2)。ドナーD10(WHOカットオフ値よりもかなり高い)およびD12(WHOカットオフ値よりもかなり低い)に関する精子密度の尺度のみでは生殖能の予測子として不十分であるが、以下の遺伝子型決定が、特定のDEFB126遺伝子型を有する男性の生殖能力を予測するのに役立つことができる。
【0186】
実施例10:精液中のDEFB126糖タンパク質の検出
レクチンおよび/または抗体を、精液試料中のDEFB126糖タンパク質の検出のための家庭用診断キットに用いられる利用可能な技術とともに使用することができる。本発明者らのデータは、del/delドナーからの精子が、野生型遺伝子を有するドナーからの精子よりも有意に少ないFITC-ABA標識を有するということを示す(図8および9)。標識強度における違いは、DEFB126「陽性」男性とDEFB126「陰性」男性とを区別することができる閾値の決定にとって十分に大きいと思われる。本発明者らは、以前、カニクイザルにおいて、レクチンABAおよび麦芽アグルチニン(WGA)が、無傷の(かつ生育可能な)精子およびウエスタンブロットにおいてDEFB126を強力に認識するということを実証した(Yudin et al., (2005))。ABAによる標識は、生きている精子および固定された精子で実施することができるステップとして、精子がはじめにシアリダーゼによって処理されることを要する(Yudin et al., (2005); Tollner et al., (2008))。
【0187】
しかし、レクチンは、精子多糖外被の糖脂質および他の糖タンパク質と潜在的に会合した同じクラスのオリゴ糖に結合する。より大きな特異性が求められるならば、抗体が保証されることができる。ラテラルフロー免疫クロマトグラフィー家庭用試験装置を使用して精子濃度を推定するために、精子特異的タンパク質に対する抗体が使用されている("Sperm Check"; Klotz et al., 2008)。DEFB126の家庭での検出のための一般的スキームとして、精液試料の小さな部分を、DEFB126を放出するための低い%の洗剤を含有する生理食塩水に加える。可溶化されたタンパク質が試験パッド上を流れるとき、それが、金標識された抗DEFB126抗体のゾーンを水和させる。DEFB126-抗体複合体が、パッドの固相に付着した二次抗体によって試験ラインにおいて捕獲され、濃縮される。本発明者らはまた、レクチンを「精子捕獲」戦略として用いることができるレクチン-DEFB126-抗体「サンドイッチ」手法が試験キットに適用可能であると想像する。固体支持体に結合したABAまたはWGAがDEFB126上のオリゴ糖を介して精子を拘束するであろう。DEFB126は、ホスホリパーゼCまたは高い塩およびpHの条件を用いる処理によって精子表面から放出されるであろう(Yudin et al., (2003); Tollner et al., (2009))。DEFB126の比色検出の場合には、ビオチンまたは酵素にコンジュゲートしたモノ−またはポリクロナール抗体が固相に適用されるであろう。類似したサンドイッチアッセイ法が、モノクロナール抗体による、膵がんに伴う血清ムチンの検出の感度および特異性を大幅に高める(Neil Parker, (1998))。
【0188】
実施例11:DEFB126を精子表面に「アドバック」して精子機能を回復させることができる。
DEFB126は、精子から選択的に放出させ、精製し、濃縮し、そして、受精能獲得条件におけるインキュベーションののち、表面被膜を失った精子の表面にアドバックすることができる(図18、Tollner et al., (2004))。DEFB126を精子から放出させるための2mMカフェインによる処理後のカニクイザル精子の頭部の免疫蛍光標識強度およびDEFB126を含有するアドバック溶液の添加後のカフェイン処理された精子の評価。カフェインはDEFB126を頭部および中片から除去するが、受精能獲得を誘発することはない。抗DEFB126Igで標識された精子頭部の免疫蛍光画像は、すべての処理に関して同じ閾値レベルにあり、精子頭部ごとに、定量的画素解析を使用して平均画素面積およびグレー値を決定した。バーの高さが、処理された精子頭部の平均画素強度を表し、エラーバーがSEMを表す。カラムの上の文字(a、b)は処理の間の有意な差を示す(p≦0.05)(図は、Tollner, (2004)を修正したもの)。
【0189】
DEFB126の「アドバック」はカニクイザル精子の機能を完全に回復させて(Tollner et al., (2004; 2008a,b)、図18)、精子膜に再挿入されたときのその向きが、はじめに精子表面に吸着されたときと同じであることを示唆する。
【0190】
カニクイザルからの精製DEFB126が、del/del男性からのヒト精子に付加されると、これらのDEFB126欠乏性精子のHA浸透能力を高めるということが本明細書において最近実証されている。「補足された」精子の浸透速度はwt男性からの精子の浸透速度に似ている(図19A、B)。del/delドナーからの精子を約5uMのcDEFB126とともに37℃で1時間インキュベートした(オレンジ)。対照精子には等しい量の生理食塩水溶媒を加えた(ピンク)。精子を遠心分離によって洗浄し、BWW媒体中に再懸濁させ、図14および15で説明するようにHA浸透チャンバに導入した。1人のdelドナーからの精子は浸透速度の倍増を示し、2人の他のドナー(そのうち1人はD10)からの精子は浸透速度が四倍になった。図19Bは、4倍増応答を示した2人のドナーからの精子の平均化プロットを示す。
【0191】
実施例12:欠乏性精子への組み換えDEFB126の付加
本発明者らのデータは、Del/Delドナーからのヒト精子の表面へのカニクイザルからのDEFB126の付加が、これらの欠乏性精子の機能のレベルを、野生型遺伝子を有する男性からの精子に関して認められるレベルまで高めるということを実証する(図18)。この発見は非常に刺激的であり、非常に予想外である。このデータが暗示するところは明白である。本発明者らは、Del/Del遺伝子型を有する男性またはDEFB126精子被覆タンパク質を欠損していると診断される男性に対し、治療を提供することができる。より費用効果的な臨床医療介入を求める低受胎性男女カップルの場合、グリコシル化組み換えタンパク質を精液試料に加えたのち、人工的膣内精液注入を実施して「del/del」精子の生殖能を高めることができる。最終的に、組み換えペプチドは、精子表面へのペプチドの吸着を促進するように製剤化された膣泡沫またはゲルに濃縮することができる。ゲルは、家で簡単に適用することができ、男女カップルが受胎をより自然に達成することを可能にする。
【0192】
DEFB126のサル相同体が天然のヒトペプチドと同じくらい効果的に作用するということが特に驚くべきことである。生殖生物学において、近縁種でさえ、行動、解剖学および生化学および分子生物学における違いの一つまたは組み合わせによって決まる生殖戦略がかなり異なるということは実際に定説である。これは、非生殖組織中に発現する遺伝子よりもはるかに多岐であることが示されている、性交後の生殖プロセス(すなわち、配偶子輸送、貯蔵、シグナル伝達および受精)を媒介するタンパク質の遺伝子の場合に特に当てはまる(Swanson and Vacquier, 2002)。DEFB126は、生殖性タンパク質が急速に進化するという期待に対して例外ではない。カニクイザルDEFB126とヒトDEFB126とを比較するBlastアミノ酸分析は、これら2種の霊長類の全長タンパク質が71%の配列相同性しか共有しないことを示す(図19A)。シグナル配列を排除すると、相同性は66%に低下する(図19B)。相同性は、主に、6個のシステイン残基および隣接するアミノ酸のいくつかの保存位置を特徴とするデフェンシンコアに限定される。カルボキシル末端(aa 65〜134、DEFB126のグリコシル末端)の相同性は約50%に低下する。本発明者らの実験は、この分子、すなわちグリコシル化カルボキシル伸長を有するデフェンシンの一般的性質が機能を付与するのに十分であることを実証する。オリゴ糖構造が霊長類種特異的でもあり、様々な哺乳動物種における多くの精子機能(たとえば卵管結合、透明帯結合、精子・卵子融合)が完全に異なるタンパク質によって媒介されるということが示されていることを考慮すると、本発明者らの発見は実に驚くべきことである。
【0193】
多様な異なる手法が有効な治療用DEFB126コンストラクトの産生を生じさせることができる。O結合型オリゴ糖を有する糖ペプチドがSf9、Sf21およびTN-5B1-4(High-Five)細胞株によって産生される。たとえば、Sf9細胞中に発現するヒトインターフェロンα2が天然インターフェロンと同じ位置でOグリコシル化された(Sugyiama et al., (1993))。グリカンの組成は異なることができるが(GalNAc、およびGalNAc+シアリル化されていないGal)、正確なオリゴ糖配列および分枝の複製は、これらのグリカンが十分な負電荷を有する限り、必ずしも必要ではない。同様に、Sf21細胞中に発現するヒトインターロイキン2はGalβl-3GalNAcのOグリカンを含有するものであった(Grabenhorst et al., (1993))。対照的に、high-five細胞は、末端ガラクトースならびにα2,6およびα2,3シアル酸を有する組み換えペプチドを産生することができる(Davis et al., (1993); Davis and Wood, (1995))。昆虫細胞組み換え産物は、一定範囲のOグリカン変異体を本発明者らに提供することができ、そのいくつかは、グリコシル化の程度および負電荷基に関して天然DEFB126によく似ている。加えて、酵母および哺乳動物細胞株における組み換え発現は、グリコシル化ペプチドを作るための代替手法を提供する。原則として、精子表面への結合にきわめて重要なデフェンシンモチーフを、より徹底的にグリコシル化され、より負に荷電されたカルボキシルテールとともに保持する分子を操作することにより、自然の「設計」に改良を加えることが可能なはずである。
【0194】
本明細書に記載された実施例および態様は、説明目的のみのものであり、それを鑑みて、様々な改変または変更が当業者に示唆され、本出願の真意および範囲ならびに特許請求の範囲に含まれるということが理解されよう。本明細書において引用されるすべての刊行物、特許、特許出願およびアクセッション番号は参照により本明細書に組み入れられる。
【0195】
参考文献
【0196】
非公式配列リスト
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全開示が参照により本明細書に組み入れられる、2009年2月26日に出願された米国特許仮出願第61/155,807号の恩典を主張する。
【0002】
連邦政府資金援助を受けた研究開発の下で達成された発明に対する権利の声明
合衆国政府は、本発明における納付済みの実施権を有し、限られた状況において、国立衛生研究所(National Institutes of Health)によって授与された助成金第AI032738号および第AI050843号の条件によって規定されている妥当な条件において、特許所有者に対し、他者に実施許諾するよう求める権利を有する。
【0003】
発明の分野
本出願は、DEFB-126表現型および遺伝子型の状態を評価することによって雄性個体の生殖能の状態を判定するための診断法を提供する。本出願はまた、不十分なレベルのDEFB-126を発現している個体からの精子において(たとえば受胎を達成するように)精子機能性を回復するための治療法および組成物を提供する。いくつかの態様において、本発明は、DEFB-126遺伝子における多型を使用して、個体が不妊症の高いリスクまたは確率を有するかどうかを判定する方法および組成物も提供する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
ヒト不妊症とは、一般に、避妊なしの性交の1年後に妊娠を達成する能力がないことと定義される。この定義によると、世界の多くの国における不妊症の罹患率は約13〜14%である(Strickler et al., Am. J. Obstet. Gynecol. 172:766-73 (1995)(非特許文献1))。男性における不妊症は、一般に、精液の質のパラメータ、たとえば射精物中の精子濃度、運動性精子の割合および正常な形態を有する精子の割合の分析によって評価されるが、これらの尺度のいずれも、不妊症を診断するものではない(Guzick et al, N. Engl. J. Med. 345:1388-93 (2001)(非特許文献2))。原因不明の不妊症の罹患率は不妊男女カップルの約17%であると推定されている(Collins, Unexplained Infertility. In: Infertility Evaluation and Treatment(Keye, Chang, Rebar, and Soules, eds.) WB Saunders, Philadelphia, pages 249-262 (1995)(非特許文献3))。これらのケースにおいては、男性または女性のいずれのパートナにおいても生殖機能の異常を立証することができない。
【0005】
原因不明の不妊症を診断する必要性が存在する。本発明は、以下の開示を考察すると明らかになるように、これらの必要性および他の必要性を満たす。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Strickler et al., Am. J. Obstet. Gynecol. 172:766-73 (1995)
【非特許文献2】Guzick et al, N. Engl. J. Med. 345:1388-93 (2001)
【非特許文献3】Collins, Unexplained Infertility. In: Infertility Evaluation and Treatment(Keye, Chang, Rebar, and Soules, eds.) WB Saunders, Philadelphia, pages 249-262 (1995)
【発明の概要】
【0007】
不妊症の原因を知ることは、妊娠を達成することを求める男女カップルのための方向性のある医療介入への速やかな移行を可能にする。本発明は、一部には、DEFB-126をコードする遺伝子における2ヌクレオチド欠失(以下「DEFB-126欠失多型」)が、その多型を有する個体が不妊症になる確率を有意に増すという発見に基づく。
【0008】
一つの局面において、本発明は、個体の不妊症の高いリスクまたは可能性を判定するためにDEFB-126欠失多型の有無を評価するための組成物および方法を提供する。一つの局面において、本発明は、DEFB-126をコードする核酸の部分配列
内の個体のDEFB-126対立遺伝子を決定する工程を含む、該個体が不妊症の高い確率を有するかどうかを判定する方法であって、部分配列内の位置6〜10における5個の連続するシトシン「CCCCC」の存在が正常な生殖能を示し、部分配列の位置6〜10における3個以下の連続するシトシン「CCC」の存在が不妊症の高いリスクまたは可能性を示す方法を提供する。
【0009】
いくつかの態様において、方法は、DEFB-126をコードする核酸の部分配列
内のDEFB-126対立遺伝子を決定する工程を含み、部分配列内の位置11〜15における5個の連続するシトシン「CCCCC」の存在が正常な生殖能を示し、部分配列の位置11〜15における3個以下の連続するシトシン「CCC」の存在が不妊症の高いリスクまたは確率を示す。
【0010】
いくつかの態様において、個体はヒトである。いくつかの態様において、個体は雄性である。
【0011】
いくつかの態様において、核酸はDNAであり、他の態様において、核酸はRNAである。
【0012】
いくつかの態様において、DEFB-126をコードする核酸は、配列番号:4に対して少なくとも95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を共有する。いくつかの態様において、DEFB-126をコードする核酸は、配列番号:5、配列番号:13および配列番号:14から選択される核酸に対して少なくとも95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を共有する。
【0013】
DEFB-126欠失多型は、当技術分野において公知の任意の方法によって検出することができる。いくつかの態様において、DEFB-126欠失多型は増幅反応によって検出される。増幅反応を使用して多型を検出することに関して、DEFB-126対立遺伝子は、DEFB-126をコードする核酸の部分配列
内の対立遺伝子を識別する一つまたは複数のポリヌクレオチドを使用する増幅反応によって検出することができる。いくつかの態様において、増幅反応は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、鎖置換増幅(SDA)、核酸配列ベース増幅(NASBA)、ローリングサークル増幅(RCA)、T7ポリメラーゼ媒介増幅、T3ポリメラーゼ媒介増幅およびSP6ポリメラーゼ媒介増幅からなる群より選択される。
【0014】
いくつかの態様において、DEFB-126対立遺伝子は、DEFB-126をコードする核酸の部分配列
内の対立遺伝子を識別する一つまたは複数のポリヌクレオチドを使用するハイブリダイゼーションによって検出される。他の態様において、DEFB-126対立遺伝子は、核酸配列
を含む部分配列、DEFB-126の部分配列を配列決定することによって検出される。いくつかの態様において、DEFB-126対立遺伝子は制限酵素断片長多型によって検出される。他の態様において、DEFB-126対立遺伝子は蛍光共鳴エネルギー移動(「FRET」)によって検出される。
【0015】
本発明の他の局面は、DEFB-126ポリペプチドの変異体を分析して、個体の不妊症のリスクまたは確率を判定する。一つの態様は、個体が不妊症の高いリスクを有するかどうかを判定し、個体から生物学的試料を得る工程、および試料中のDEFB-126ポリペプチドの存在を判定する工程を含み、DEFB-126ポリペプチドの存在が正常な生殖能を示し、DEFB-126ポリペプチドの非存在(または少ない存在)が不妊症の高い確率を示す。
【0016】
いくつかの態様において、正常な生殖能を示すDEFB-126ポリペプチドは、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11および配列番号:12から選択される野生型DEFB-126ポリペプチドに対して少なくとも95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を共有する。いくつかの態様において、正常な生殖能を示すDEFB-126ポリペプチドは、配列番号:6の野生型DEFB-126ポリペプチドに対して少なくとも95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を共有する。いくつかの態様において、正常な生殖能を示すDEFB-126ポリペプチドは、配列番号:12の野生型DEFB-126ポリペプチドに対して少なくとも95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を共有する。
【0017】
いくつかの態様においては、不妊症の高いリスクを示す変異体DEFB-126ポリペプチドは、ジヌクレオチド欠失を有するDEFB-126核酸から発現する変異体DEFB-126ポリペプチドである配列番号:16に対して少なくとも95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を共有する。
【0018】
いくつかの態様において、TVSPTG(配列番号:35)のC末端アミノ酸配列を有するDEFB-126ポリペプチドは正常な生殖能を示す。いくつかの態様において、
のC末端アミノ酸配列を有するDEFB-126ポリペプチドは不妊症の高いリスクを示す。
【0019】
本発明の局面において、不妊症を判定するための方法として抗体が使用される。いくつかの態様において、DEFB-126ポリペプチドは、ポリペプチドのC末端に特異的に結合する抗体を使用して決定される。抗体は、野生型または変異体DEFB-126ポリペプチドのいずれかのC末端に特異的に結合することができる。いくつかの態様において、変異体DEFB-126ポリペプチドは、ELISA、免疫沈降、イムノアフィニティークロマトグラフィー、タンパク質アレイ、レクチン結合、等電点電気泳動またはウエスタンブロットによって決定される。
【0020】
本発明のもう一つの局面は、個体から精子試料を得る工程、および試料を、ガラクトース-GalNAcまたはシアル酸を選択的に拘束するレクチンと接触させる工程を含む、該個体が不妊症の高いリスクを有するかどうかを判定する方法であって、正常な対照または所定の閾値レベルと比較した、レクチンの非存在または低い結合レベルが、不妊症の高いリスクを示す方法を提供する。いくつかの態様において、レクチンはマッシュルーム(Agaricus bisporus)(ABA)またはパラミツ(Artocarpus integrifolia)(Jacalin)である。非ヒト霊長類精子からのDEFB126の損失とともに精子表面におけるシアル酸部分の有意な減少が実証された。したがって、正常な対照または所定の閾値レベルと比較した、DEFB126上のオリゴ糖上の末端位置におけるシアル酸部分を認識するレクチンの低い結合レベルが、不妊症の高いリスクを示す。いくつかの態様において、レクチンはアメリカカブトガニ(Limulus polphemus)(LPA)、イヌエンジュ(Macackia amurenesis)(MAL II)またはコムギ胚芽(Triticum vulgaris)(WGA)である。
【0021】
本発明のもう一つの局面は、個体から精子試料を得る工程、および試料を、シアル酸(および精子表面上の他の負荷電グリカン残基)に結合するポリ-L-リシン(または他のポリカチオン物質)と接触させる工程を含む、該個体が不妊症の高いリスクを有するかどうかを判定する方法であって、正常な対照または所定の閾値レベルと比較した、ポリ-L-リシン(またはポリカチオン物質)の非存在またはの低い結合レベルが、不妊症の高いリスクを示す方法を提供する。非ヒト霊長類の表面からのDEFB126の損失は、ポリ-L-リシン(または他のポリカチオン物質)への精子結合における有意な減少と対応する。したがって、正常な対照または所定の閾値レベルと比較した、DEFB126上のオリゴ糖と会合した負荷電部分を認識するポリ-L-リシンの低い結合レベルが、不妊症の高いリスクを示す。
【0022】
いくつかの態様において、方法はさらに、適切な不妊症治療を決定および/または選択することを含む。いくつかの態様において、方法はさらに、不妊症の理由を識別するために適切な診断試験を選択することを含む。いくつかの態様において、方法はさらに、DEFB-126欠失多型の有無の判定の結果を、有形媒体上、たとえば紙の上または電子もしくはコンピュータファイルの中に記録することを含む。
【0023】
本発明はさらにキットを提供する。一つの態様において、個体が不妊症の高いリスクを有するかどうかを判定するためのキットであって、部分配列
内の個体のDEFB-126対立遺伝子を識別する少なくとも一つのポリヌクレオチドと、部分配列内の位置6〜10における5個の連続するシトシン「CCCCC」の存在が正常な生殖能を示すことおよび部分配列の位置6〜10における3個の連続するシトシン「CCC」の存在が不妊症の高いリスクを示すことを述べている使用説明書とを含む、キットが提供される。
【0024】
他の態様において、個体が不妊症の高いリスクを有するかどうかを判定するためのキットであって、DEFB-126ポリペプチドを認識する少なくとも一つの抗体と、DEFB-126ポリペプチドの存在が正常な生殖能を示すことおよびDEFB-126ポリペプチドの非存在(または少ない存在)が不妊症の高い確率を示すことを述べている使用説明書とを含む、キットが提供される。いくつかの態様において、キットは、DEFB-126ポリペプチドのC末端に特異的に結合する少なくとも一つの抗体を含む。抗体は、野生型または変異体DEFB-126ポリペプチドのC末端に特異的に結合することができる。
【0025】
他の態様において、個体が不妊症の高いリスクを有するかどうかを判定するためのキットであって、DEFB-126ポリペプチドを認識する少なくとも一つのレクチンと、DEFB-126ポリペプチドの存在(レクチンの結合によって実証される)が正常な生殖能を示すことおよびDEFB-126ポリペプチドの非存在(または少ない存在)が不妊症の高い確率を示すことを述べている使用説明書とを含む、キットが提供される。いくつかの態様において、キットは、ガラクトース-GalNAcまたはシアル酸を選択的に拘束する少なくとも一つのレクチンを含む。いくつかの態様において、レクチンはマッシュルーム(ABA)またはパラミツ(Jacalin)である。いくつかの態様において、レクチンはアメリカカブトガニ(LPA)、イヌエンジュ(MAL II)またはコムギ胚芽(WGA)である。いくつかの態様において、レクチンは、検出可能な標識、たとえば蛍光体、酵素、化学発光部分、発色団などを含む。
【0026】
他の態様において、個体が不妊症の高いリスクを有するかどうかを判定するためのキットであって、DEFB-126ポリペプチドと会合した負荷電部分を認識するポリ-L-リシン(または類似のポリカチオン物質)と、DEFB-126ポリペプチドの存在(ポリ-L-リシンまたはポリカチオンの結合によって実証される)が正常な生殖能を示すことおよびDEFB-126ポリペプチドの非存在(または少ない存在)が不妊症の高い確率を示すことを述べている使用説明書とを含む、キットが提供される。いくつかの態様において、ポリ-L-リシンは、検出可能な標識、たとえば蛍光体、酵素、化学発光部分、発色団などを含む。
【0027】
本発明はさらに、非機能性変異体DEFB-126ポリペプチドに起因する低い生殖能を有する雄性個体を治療するための方法であって、機能性DEFB-126ポリペプチドをコードする核酸を、個体からの精巣上体細胞に導入する工程を含む方法を提供する。
【0028】
本発明はさらに、受胎を達成するのに不十分なレベルの機能性DEFB-126を発現している個体からの精子における精子機能性を回復または改善する方法であって、個体から得られた精液試料を機能性DEFB-126ポリペプチドと接触させる工程を含む方法を提供する。いくつかの態様において、個体はヒトであり、機能性DEFB-126ポリペプチドはヒトDEFB-126ポリペプチドである。いくつかの態様において、個体はヒトであり、機能性DEFB-126ポリペプチドは非ヒトDEFB-126ポリペプチドまたはDEFB-126ポリペプチド模倣物である。いくつかの態様において、個体はヒトであり、機能性DEFB-126ポリペプチドは非ヒト霊長類DEFB-126ポリペプチドである。
【0029】
いくつかの態様においては、精子をインビトロで機能性DEFB-126ポリペプチドと接触させる。いくつかの態様においては、精子を膣内で機能性DEFB-126ポリペプチドと接触させる。
【0030】
本組成物において有用なDEFB-126ポリペプチドまたはペプチド模倣物は、正常な生殖能を可能にすることができるものである。機能性DEFB-126ポリペプチドは、天然DEFB126分子の二つの一般的性質、(1)精子受精能獲得状態に依存して精子表面に可逆的に結合する能力、および(2)結合の間に精子表面に負電荷を付与する能力を有する。
【0031】
したがって、いくつかの態様において、機能性DEFB-126ポリペプチドまたはポリペプチド模倣物は、コアβデフェンシンモチーフ(aa 21〜67)、たとえば、配列番号:46、配列番号:47、配列番号:48、配列番号:48または配列番号:49とで95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。オルソログ(-)(上記で整列化した)の間で共有される残基がない場合、電荷もしくは極性が類似する、またはシステイン間スパンの電荷および極性の保持に貢献するアミノ酸を代用することができる。
【0032】
いくつかの態様において、DEFB-126ポリペプチドまたはポリペプチド模倣物は、結合の間に精子表面に負電荷を付与するのに十分にアニオン性である、たとえば十分な数のN結合型糖質、たとえばシアル酸部分を有するカルボキシル伸長モチーフ(たとえばaa 68〜121、68〜134または68〜181)を含む。
【0033】
いくつかの態様において、機能性DEFB-126ポリペプチドまたはポリペプチド模倣物は、デフェンシンコアモチーフおよびデフェンシンカルボキシル伸長モチーフを含む。いくつかの態様において、機能性DEFB-126ポリペプチドまたはポリペプチド模倣物は、デフェンシンコアモチーフならびにポリペプチドが結合の間に精子表面に負電荷を付与するのに十分にアニオン性になるようなO結合型および/またはN結合型グリコシル化を可能にする一つまたは複数の縦列反復または配列セグメント(たとえばムチン反復配列)を含むカルボキシモチーフを含む。いくつかの態様において、機能性DEFB-126ポリペプチドまたはポリペプチド模倣物は、配列番号:46、47、48または49のデフェンシンコアモチーフおよび、配列番号:50のデフェンシンカルボキシル伸長モチーフまたは結合の間に精子表面に負電荷を付与するのに十分なアニオン電荷を有する配列番号:50のより短い長さ(たとえばaa 68〜121、68〜134または68〜181)を含む。
【0034】
再構成法のいくつかの態様において、機能性DEFB-126ポリペプチドは、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11および配列番号:12からなる群より選択される配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、機能性DEFB-126ポリペプチドは、配列番号:6および配列番号:12からなる群より選択される配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、機能性DEFB-126ポリペプチドは、配列番号:6に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、機能性DEFB-126ポリペプチドは配列番号:6を含む。いくつかの態様において、機能性DEFB-126ポリペプチドは、配列番号:12に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、機能性DEFB-126ポリペプチドは配列番号:12を含む。
【0035】
本発明はさらに、機能性DEFB-126ポリペプチドおよび薬学的に許容可能な担体を含む組成物を提供する。いくつかの態様において、機能性DEFB-126ポリペプチドはヒトDEFB-126ポリペプチドである。いくつかの態様において、機能性DEFB-126ポリペプチドは非ヒトDEFB-126ポリペプチドまたはDEFB-126ポリペプチド模倣物である。いくつかの態様において、機能性DEFB-126ポリペプチドは非ヒト霊長類DEFB-126ポリペプチドである。
【0036】
組成物に使用するための機能性DEFB-126ポリペプチドまたはポリペプチド模倣物のさらなる態様は、上記および本明細書に記載されるとおりである。
【0037】
いくつかの態様において、組成物は、泡沫、たとえば膣内投与のために製剤化された泡沫である。
【0038】
関連態様において、本発明は、まず、本明細書に記載されるように、個体が機能性DEFB-126に関して欠乏性であるかどうかを、たとえば表現型または遺伝子型分析によって診断し、個体がDEFB-126欠乏性であると判定されるならば、本明細書に記載されるように、その個体の精子を機能性DEFB-126ポリペプチドと接触させる方法を提供する。
【0039】
定義
断りない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は一般的に、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解される同じ意味を有する。一般に、本明細書において使用される術語ならびに以下に記載する細胞培養、分子遺伝子学、有機化学、核酸化学およびハイブリダイゼーションにおける実験手法は当技術分野において周知であり、一般に使用されている。核酸およびペプチド合成には標準的技術が使用される。一般に、酵素的反応および精製ステップは製造者の仕様書にしたがって実施される。技術および手法は、一般に、当技術分野および本明細書の至る所で提供される様々な一般的参考文献における従来法にしたがって実施される(一般に、Sambrook et al. Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (2001)およびAusubel, ed., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley Interscience, (1990-2008)を参照)。本明細書において使用される術語および以下に記載する分析化学および有機合成における実験手法は当技術分野において周知であり、一般に使用されている。標準的技術またはその変形が化学合成および化学分析に使用される。
【0040】
生物学的試料とは、欠失多型を有する、または有しないDEFB-126核酸または発現タンパク質を含有する固体組織または生物学的流体をいう。核酸に関して、生物学的試料は、本明細書に記載される方法によって試験することができ、体液、たとえば全血、血清、血漿、脳脊髄液、尿、リンパ液、精液、精子細胞および気道、腸管および泌尿生殖器管の様々な外分泌物、涙液、唾液、乳、白血球、ミエローマなど、ならびに生物学的流体、たとえば細胞抽出物、細胞培養上澄み、固定組織標本および固定細胞標本を含む。生物学的試料はまた、固体組織からの試料、たとえば毛球、皮膚、生検もしくは検死試料または組織学的目的のために採取される凍結切片であることもできる。これらの試料は当技術分野において周知である。生物学的試料は、DEFB-126欠失多型に関して試験される任意の個体から得られる。いくつかの態様において、生物学的試料は精液または精子細胞である。生物学的試料は、液体材料、たとえば緩衝液、エクストラクタント、溶媒などに懸濁または溶解させることができる。
【0041】
正常な生殖能とは、世界の多くの国における不妊症の罹患率が約13〜14%であるとして(Strickler et al., Am. J. Obstet. Gynecol. 172:766-73 (1995)を参照)、受胎を試みる男女カップルに関して21ヶ月以内に妊娠する約80〜85%の確率をいう。
【0042】
ヒト不妊症とは、一般に、避妊なしの性交の1年後に妊娠を達成する能力がないことと定義される。
【0043】
本明細書において使用される「不妊症の高いリスクまたは確率または可能性」または「低い生殖能」とは、互換可能に、受胎を試みる男女カップルに関して21ヶ月以内に妊娠する確率が70%未満まで低下していることをいう。いくつかの態様において、これは、正常な生殖能を有する集団に対して比較することができる。
【0044】
遺伝子とは、特定の染色体位置を有するDNAの配列からなる遺伝性単位をいう。遺伝子は、発現するとタンパク質産物を産生する。
【0045】
対立遺伝子とは、遺伝子の特定の変異をいう。本発明に関する場合、対立遺伝子は、本明細書に記載されるように、DEFB-126の野生型コピーまたはDEFB-126欠失多型のいずれかであることができる。
【0046】
「核酸」および「ポリヌクレオチド」という用語は、一本鎖または二本鎖形態にあるデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドおよびそれらのポリマーを指すために、本明細書において互換可能に使用される。この用語は、合成、天然および非天然であり、基準核酸と類似した結合性を有し、基準ヌクレオチドに類似したやり方で代謝される、既知のヌクレオチド類似物または修飾された主鎖残基もしくは結合を含む核酸を包含する。このような類似物の例は、非限定的に、ホスホロチオエート、ホスホラミデート、メチルホスホネート、キラルメチルホスホネート、2-O-メチルリボヌクレオチド、ペプチド核酸(PNA)を含む。
【0047】
断りない限り、特定の核酸配列はまた、保存的に修飾されたその変異体(たとえば縮重コドン置換)および相補的配列ならびに明示的に示される配列を包含する。具体的には、縮重コドン置換は、一つまたは複数の選択された(またはすべての)コドンの第三位が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換されている配列を生成することによって達成することができる(Batzer et al., Nucleic Acid Res. 19:5081 (1991); Ohtsuka et al., J. Biol. Chem. 260:2605-2608 (1985); Rossolini et al., Mol. Cell. Probes 8:91-98 (1994))。「核酸」という用語は、遺伝子、cDNA、mRNA、オリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドとで互換可能に使用される。
【0048】
構造的に、DEFB-126または野生型DEFB-126とは、(1)DEFB-126核酸によってコードされるアミノ酸配列(たとえば配列番号:4および配列番号:5(ヒト)およびGenBankアクセッション番号NM_030931(ヒト)を参照)とで、またはDEFB-126ポリペプチドのアミノ酸配列(たとえば配列番号:6(ヒト)、配列番号:7(シロテテナガザル(Hylobates lar))、配列番号:8(ゴリラ(Gorilla))、配列番号:9(チンパンジー(Pantrolgoldytes))、配列番号:10(カニクイザル(Macacafascicularis)、配列番号:11(オランウータン(Pongo pygmaeus))、GenBankアクセッション番号NP_112193.1(ヒト)、A4H245.1(シロテテナガザル)、A4H243.1(ゴリラ)、XP_514453(チンパンジー)、CAL68961.1(カニクイザル)およびA4H244.1(オランウータン))とで、好ましくは少なくとも約25、50、100、200、500、1000もしくはより多くのアミノ酸の領域にわたって、または全長にわたって約90%を超えるアミノ酸配列同一性、たとえば91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%またはそれを超えるアミノ酸配列同一性を有し、(2)DEFB-126ポリペプチドのアミノ酸配列(たとえば配列番号:4、配列番号:5またはGenBankアクセッション番号NM_030931の核酸の核酸配列によってコードされた)またはアミノ酸配列(たとえば配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11またはGenBankアクセッション番号NP_112193.1、A4H245.1、A4H243.1、XP_514453、CAL68961.1、A4H244.1によってコードされた)および保存的に修飾されたそれらの変異体を含む免疫原に対して産生された抗体、たとえばポリクロナール抗体に結合し、(3)ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下、DEFB-126タンパク質をコードする核酸配列および保存的に修飾されたそれらの変異体に対応するアンチセンス鎖に特異的にハイブリダイズし、(4)DEFB-126核酸(たとえば配列番号:4、配列番号:5)とで、好ましくは少なくとも約25、50、100、200、500、1000もしくはより多くのヌクレオチドの領域にわたって、または全長にわたって約95%を超える、好ましくは約96%、97%、98%、99%もしくはそれを超えるヌクレオチド配列同一性を有する核酸配列を有する、核酸およびポリペプチド多型変異体、対立遺伝子、突然変異体および種間相同体をいう。野生型DEFB-126対立遺伝子は、配列番号:1の文脈的部分配列
の位置6〜10内に5個の連続するシトシン「CCCCC」を有する。
【0049】
すべてのデフェンシンは、概ねβシート構造を有し、三つの分子内システインジスルフィド結合を含む。βデフェンシンは、
の通常スペーシングを有する6システインモチーフおよび多数の塩基性アミノ酸残基によって定義される。同様に、DEFB-126は、システイン残基の規範的コアおよび52のアミノ酸のC末端テールを有して、約12,000Daの分子量(推測アミノ酸配列に基づく)を生じさせるペプチドである。野生型ヒトDEFB-126のアミノ酸配列分析は、C末端テール内のO結合型グリコシル化のための少なくとも20の部位を識別する。霊長類DEFB-126ポリペプチドは高レベルの配列同一性を共有する(図12、Perry, et al, Biol. Reprod. 61:965-972 (1999); Schutte, et al., PNAS 99(4):2129-2133 (2002);およびRodriguez-Jimenez, Genomics 81 :175-183 (2003)を参照)。
【0050】
以下は、ヒト(配列番号:46)、カニクイザル(macaque)(配列番号:47)およびマウス(配列番号:48)からのデフェンシンコア領域(aa 21〜67)、ならびにコンセンサス配列(「con」)(配列番号:49)を整列化したものである。保存されたシステインは反転表示され、保存された残基は陰付けされている。
【0051】
当業者は、種および異なるβデフェンシンタンパク質の間で保存されるアミノ酸残基が一般に置換または欠失に関して比較的寛容ではないということを認識する。たとえば、DEFB-126タンパク質のジスルフィド安定化コアに貢献するシステイン残基は置換または欠失を受けるべきではない。逆に、種および異なるβデフェンシンタンパク質の間で保存されないアミノ酸残基は、多くの場合、タンパク質の機能に影響することなく、置換または欠失を受けることができる。
【0052】
機能的に、野生型DEFB-126は、霊長類(ヒトおよび非ヒト)精子の受精能獲得に作用し、受精時に精子表面受容体提示を変調させる(Tollner et al., Mol. Reprod. Dev. 69:327-37 (2004))。DEFB126はまた、霊長類精子表面全体を免疫認識から保護し、シアル酸部分が、この独特な糖タンパク質の隠蔽特性の原因である(Yudin et al., Biol. Reprod. 73:1243-1252 (2005))。DEFB-126オリゴ糖のシアル酸部分もまた、頸管粘液を通過する精子の運動を促進する役割を担う(Tollner et al., Human Reprod. 23:2523-34 (2008))。DEFB-126はさらに、潜在的に、卵管貯蔵所の形成に関与する機構として、卵管上皮への非ヒト霊長類精子の付着を媒介する(Tollner et al., Biol. Reprod. 78:400-412 (2008))。
【0053】
本明細書において使用されるDEFB-126欠失多型とは、
によって定義される野生型DEFB-126ヌクレオチド配列の文脈的部分配列内の2ヌクレオチド「CC」欠失をいう。欠失多型を有するDEFB-126ポリペプチドをコードする核酸は、配列番号:1の文脈的部分配列
の位置6〜10内に3個より多いシトシンを含有しない。図2も参照。DEFB-126欠失多型を有する例示的なDEFB-126核酸配列は、配列番号:13(GenBankアクセッション番号AK225987)、配列番号:14および配列番号:15(GenBankアクセッション番号CO408416)を含む。DEFB-126欠失多型フレームシフトが、天然の停止コドンの「リードスルー」を生じさせ、それにより、天然のタンパク質(たとえば配列番号:3、6〜12および図1)と比較してC末端領域が伸長したDEFB-126変異体ポリペプチド(たとえば配列番号:16〜18および図2および3)を生成する。
【0054】
変異体DEFB-126ポリペプチドとは、DEFB-126欠失多型を有する核酸配列から発現する結果的なタンパク質をいう。DEFB-126欠失多型のタンパク質産物は、発現すると、野生型DEFB-126C末端領域(たとえば配列番号:3、6〜12)と比較して伸長したC末端を含む(たとえば配列番号:16〜18)。図3も参照。伸長したC末端とは、モチーフSMS(S/L)M(A/T)(配列番号:20)、たとえば配列番号:16のアミノ酸106から始まるC末端ドメインの伸長部分をいう。この伸長したC末端は、DEFB-126タンパク質の構造および機能における甚大な変化、もっとも顕著には、野生型DEFB-126ポリペプチド配列(たとえば配列番号:6〜12)のアミノ酸配列SMS(S/L)M(A/T)(配列番号:20)に対し、C末端のすぐ近くの領域におけるオリゴ糖の欠如を生じさせる。
【0055】
本明細書において使用される「識別する」核酸とは、(1)ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下、DEFB-126タンパク質をコードする核酸配列および保存的に修飾されたその変異体に対応するアンチセンス鎖に特異的にハイブリダイズする、または(2)DEFB-126核酸(たとえば配列番号:4および配列番号:5に記された配列)とで、好ましくは少なくとも約20、25、50、100、200、500、1000の領域にわたって、または全長にわたって約80%、85%、90%、95%を超える、好ましくは約96%、97%、98%、99%もしくはそれを超えるヌクレオチド配列同一性を有する核酸配列またはそれらの相補鎖、部分配列もしくはヒトと霊長類との間のコンセンサス配列(たとえば図12を参照)を有するポリヌクレオチドをいう。DEFB-126欠失多型を、欠失多型を含まない野生型DEFB-126核酸配列から識別する核酸は、欠失多型を含むDEFB-126ポリペプチドへのアニーリングののち、ポリヌクレオチド伸長および増幅を可能にするが、しかし欠失多型を含まないDEFB-126ポリヌクレオチドへのアニーリングののちでは、ポリヌクレオチド伸長または増幅を可能にしない。他の態様において、DEFB-126欠失多型を、欠失多型を含まないDEFB-126核酸配列から識別する核酸は、欠失多型を含むDEFB-126ポリヌクレオチドにはハイブリダイズするが、しかし欠失多型を含まないDEFB-126ポリヌクレオチドにはハイブリダイズしない。
【0056】
「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」という成句は、一般には核酸の複雑な混合物中、プローブがその標的部分配列にハイブリダイズするが、しかし他の配列にはハイブリダイズしないところの条件をいう。ストリンジェントな条件は配列依存性であり、様々な状況で異なる。長めの配列は高めの温度で特異的にハイブリダイズする。核酸のハイブリダイゼーションへの幅広い手引きが、Tijssen, Techniques in Biochemistry and Molecular Biology-Hybridization with Nucleic Probes, "Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid assays" (1993)に見られる。一般に、ストリンジェントな条件は、既定のイオン強度pHにおける特定の配列の熱融点Iよりも約5〜10℃低くなるように選択される。Tmは、標的に相補的なプローブの50%が平衡状態の標的配列にハイブリダイズする温度(既定のイオン強度pHおよび核酸濃度における)である(標的配列は過剰に存在するため、Tmでは、平衡状態でプローブの50%が占有される)。ストリンジェントな条件は、pH7.0〜8.3で塩濃度が約1.0Mナトリウムイオン未満、通常は約0.01〜1.0Mナトリウムイオン濃度(または他の塩)であり、温度が、短いプローブ(たとえば10〜50ヌクレオチド)の場合で少なくとも約30℃であり、長いプローブ(たとえば50ヌクレオチドを超える)の場合で少なくとも約60℃である条件である。ストリンジェントな条件はまた、ホルムアミドのような不安定化剤の添加によって達成することもできる。選択的または特異的ハイブリダーゼーションの場合、陽性シグナルは、バックグラウンドの少なくとも2倍、場合によっては、バックグラウンドハイブリダーゼーションの10倍である。例示的なストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は以下の条件であることができる。50%ホルムアミド、5×SSCおよび1%SDS、42℃でインキュベート、または5×SSC、1%SDS、65℃でインキュベート、0.2×SSCおよび0.1%SDS中65℃で洗浄。
【0057】
ストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズしない核酸は、それらがコードするポリペプチドが実質的に同一であるならば、それでも実質的に同一である。これは、たとえば、遺伝コードによって許可される最大コドン縮重を使用して核酸のコピーが生成される場合に起こる。そのような場合、核酸は一般に、中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする。例示的な「中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」は、40%ホルムアミド、1M NaCl、1%SDSの緩衝液中37℃でハイブリダイゼーションおよび1×SSC中45℃での洗浄を含む。陽性のハイブリダイゼーションはバックグランドの少なくとも2倍である。当業者は、代替ハイブリダイゼーションおよび洗浄条件を使用して同様なストリンジェンシーの条件を提供することができることを容易に理解するであろう。
【0058】
「選択的(または特異的)にハイブリダイズする」という成句は、ある特定のヌクレオチド配列が複雑な混合物(たとえば全細胞またはライブラリDNAまたはRNA)中に存在する場合、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下、その特定のヌクレオチド配列のみへの分子の結合、二重化またはハイブリダイズをいう。
【0059】
「単離された」、「精製された」または「生物学的に純粋な」という用語は、天然状態で見いだされる場合に通常はそれに付随する成分を実質的または本質的に含まない物質をいう。純度および均一性は、一般に、ポリアクリルアミドゲル電気泳動または高速液クロマトグラフィーのような分析化学技術を使用して決定される。調製物中に存在する優勢種であるタンパク質が実質的に精製される。特に、単離されたDEFB-126核酸は、DEFB-126遺伝子に隣接しかつDEFB-126以外のタンパク質をコードするオープンリーディングフレームから、分離されている。「精製された」という用語は、核酸またはタンパク質が電気泳動ゲル中で本質的に一つのバンドしか生じさせないことを意味する。特に、核酸またはタンパク質が、少なくとも純度85%、より好ましくは少なくとも純度95%、そしてもっとも好ましくは少なくとも純度99%であることを意味する。
【0060】
「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを指すために本明細書において互換可能に使用される。これらの用語は、一つまたは複数のアミノ酸残基が対応する天然アミノ酸の人工化学的模倣物であるアミノ酸ポリマーならびに天然アミノ酸ポリマーおよび非天然アミノ酸ポリマーに適用される。
【0061】
ポリペプチド変異体とは、野生型ではない遺伝子配列からの発現の結果として産生されるポリペプチドをいう。本明細書において参照される変異体DEFB-126ポリペプチドは、DEFB-126欠失多型の結果として産生されるタンパク質である。変異体DEFB-126ポリペプチドは、野生型DEFB-126の発現によって産生されるポリペプチドに比べて伸長したC末端ドメインを含む。
【0062】
「機能性DEFB-126ポリペプチド」とは、精子細胞の表面に吸着することができる、たとえば受精能獲得を促進するDEFB-126ポリペプチドをいう。機能性DEFB-126ポリペプチドは、O結合型グリコシル化のための少なくとも20の部位を含むことができる。
【0063】
「非機能性DEFB-126ポリペプチド」とは、精子細胞の表面に吸着されない、たとえば受精能獲得を促進しないDEFB-126ポリペプチドをいう。非機能性DEFB-126ポリペプチドは、有意に減少したO結合型グリコシル化部位を含むことができる。
【0064】
「アミノ酸」という用語は、天然および合成のアミノ酸ならびに天然アミノ酸と同様に機能するアミノ酸類似物およびアミノ酸模倣物をいう。天然アミノ酸は、遺伝コードによってコードされるアミノ酸およびのちに修飾されるアミノ酸、たとえばヒドロキシプロリン、α-カルボキシグルタメートおよびO-ホスホセリンである。アミノ酸類似物とは、天然アミノ酸と同じ基本的化学構造、すなわち水素、カルボキシル基、アミノ基およびR基に結合したα炭素を有する化合物、たとえばホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムをいう。そのような類似物は、修飾されたR基を有する(たとえばノルロイシン)または修飾されたペプチド主鎖を有するが、しかし天然アミノ酸と同じ基本的化学構造を保持する。アミノ酸模倣物とは、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、しかし天然アミノ酸と同様に機能する化合物をいう。
【0065】
本明細書中、アミノ酸は、一般に知られる3文字記号またはIUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionによって推奨される1文字記号によって言及されることができる。ヌクレオチドも同様に、一般に受け入れられた1文字コードによって言及されることができる。
【0066】
「保存的に修飾された変異体」はアミノ酸配列および核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、保存的に修飾された変異体とは、同一もしくは本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸、または核酸がアミノ酸配列をコードしない場合、本質的に同一の配列をいう。遺伝コードの縮重のせいで、数多くの機能的に同一の核酸が任意の所与のタンパク質をコードする。たとえば、コドンGCA、GCC、GCGおよびGCUはすべてアミノ酸アラニンをコードする。したがって、アラニンがコドンによって指定されるあらゆる位置において、そのコドンは、コードされるポリペプチドを変更することなしに、記述される対応するコドンのいずれかに変更することができる。そのような核酸変異は、保存的に修飾された変異の一種である「サイレント変異」である。ポリペプチドをコードする、本明細書におけるあらゆる核酸配列はまた、その核酸の可能なあらゆるサイレント変異を記述する。当業者は、核酸中の各コドン(通常はメチオニンにとっての唯一のコドンであるAUG、および通常はトリプトファンにとっての唯一のコドンであるTGGを除く)を修飾して機能的に同一の分子を得ることができることを理解するであろう。したがって、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変異は、記述される各配列において暗示的である。
【0067】
アミノ酸配列に関して、当業者は、コードされる配列中の1個のアミノ酸またはアミノ酸の小さな割合を変更、付加または欠失する、核酸、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質配列に対する個々の置換、欠失または付加が、その変更の結果として化学的に類似したアミノ酸によるアミノ酸の置換が生じる「保存的に修飾された変異体」であることを理解するであろう。機能的に類似したアミノ酸を提供する保存的置換表は当技術分野において周知である。そのような保存的に修飾された変異体は、本発明の多型変異体、種間相同体および対立遺伝子に加わるものであり、それらを除外しない。
【0068】
以下の8つのグループそれぞれが、互いにとって保存的置換であるアミノ酸を含む。
1)アラニン(A)、グリシン(G)、
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、
4)アルギニンI、リシン(K)、
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V)、
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)、および
7)セリン(S)、トレオニン(T)
(たとえばCreighton, Proteins (1984)を参照)。
【0069】
抗体とは、指定されたタンパク質を認識することができるポリクロナールまたはモノクロナール抗体をいう。タンパク質全体または全長タンパク質内の短いペプチド配列を認識することができる抗体を産生することができる。
【0070】
「特異的に結合する」または「結合した」または「結合している」という用語は、抗DEFB-126抗体と、特定の標的エピトープ(すなわちDEFB-126ポリペプチド)を有する細胞または組織との、全体的または部分的な、そのような標的エピトープを欠く細胞または組織と比較して優先的な会合をいう。当然、抗体と非標的エピトープとの間にある程度の非特異的相互作用が起こることもあるということは理解される。それにもかかわらず、特異的結合は、標的エピトープの特異的認識を介して媒介されるものとして区別することができる。一般に、特異的結合は、結合した抗体と標的エピトープを欠く実体(たとえばアッセイウェルまたは細胞)との間よりも送達される分子と標的エピトープを有する実体(たとえばアッセイウェルまたは細胞)との間ではるかに強い会合を生じさせる。特異的結合は一般に、標的エピトープを欠く細胞または組織に比較して、標的エピトープを有する細胞または組織に結合した抗DEFB-126抗体の量における約10倍を超える、もっとも好ましくは100倍を超える増大(単位時間あたり)を生じさせる。二つの実体の間の特異的結合は一般に、少なくとも106M-1の親和性を意味する。108M-1を超える親和性が好ましい。特異的結合は、当技術分野において公知の抗体結合のための任意のアッセイ法、たとえばウエスタンブロット、ELISA、フローサイトメトリー、免疫組織化学を使用して測定することができる。
【0071】
二つまたはそれ以上の核酸またはポリペプチド配列に関する「同一の」または%「同一性」という用語は、同じである、または同じであるアミノ酸残基またはヌクレオチドの指定の割合を有する二つまたはそれ以上の配列または部分配列をいう(すなわち、比較ウィンドウ、または以下の配列比較アルゴリズムの一つを使用して、もしくは手作業の整列化および目視によって計測される指定領域の範囲の最大一致に関して比較し、整列させた場合、特定領域にかけて、基準配列、たとえば配列番号:4、配列番号:6によってコードされるポリペプチドまたは本明細書に記載されるDEFB-126配列に対して少なくとも約80%の同一性、たとえば少なくとも約85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する。そして、そのような配列は「実質的に同一」といわれる。この定義はまた、試験配列の相補鎖を指す。好ましくは、同一性は、少なくとも約25のアミノ酸もしくはヌクレオチドの長さである領域、たとえば50〜100のアミノ酸もしくはヌクレオチドの長さである領域または基準配列の全長にわたって存在する。
【0072】
配列比較の場合、一般的には、一つ配列が、試験配列が比較される基準配列として働く。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験および基準配列がコンビュータに入力され、必要ならば部分配列座標が指定され、配列アルゴリズムプログラムパラメータが指定される。デフォルトプログラムパラメータを使用することもできるし、代替パラメータを指定することもできる。そして、配列比較アルゴリズムが、プログラムパラメータに基づいて、基準配列に対する試験配列の%配列同一性を計算する。DEFB-126核酸およびタンパク質との核酸およびタンパク質の配列比較の場合、以下に詳述するBLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズムおよびデフォルトパラメータが使用される。
【0073】
本明細書において使用される「比較ウインドウ」は、二つの配列が最適に整列化されたのち、一つの配列を同じ数の連続位置にある基準配列と比較することができる、20〜600、通常は約50〜約200、より通常には約100〜約150からなる群より選択される連続位置の数にあるいずれか一つのセグメントの参照を含む。比較のための配列の整列化の方法は当技術分野において周知である。比較のための配列の最適な整列化は、たとえば、Smith & Waterman, Adv. Appl. Math. 2:482 (1981)の局所相同性アルゴリズムによって、Needleman & Wunsch, J. Mol. Biol. 48:443 (1970)の相同性整列化アルゴリズムによって、Pearson & Lipman, Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 85:2444 (1988)の類似性検索法によって、これらのアルゴリズムのコンビュータ具現化(Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group(575 Science Dr., Madison, WI)のGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA)によって、または手作業による整列化および目視検査によって(たとえばAusubel et al, eds., Current Protocols in Molecular Biology (1995 supplement)を参照)、実施することができる。
【0074】
%配列同一性および配列類似性の判定に適したアルゴリズムの例は、BLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズムであり、それらはAltschul et al., J. Mol. Biol. 215:403-410 (1990)およびAltschul et al., Nucleic Acids Res. 25:3389-3402 (1977)にそれぞれ記載されている。BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information(WWW上、ncbi.nlm.nih.gov/)を通して入手可能である。このアルゴリズムは、まず、データベース配列中の同じ長さのワードと整列化された場合、正の値の閾値スコアTと一致するかまたはそれを満たす、問い合わせ配列中の長さWの短いワードを特定することにより、高スコア配列ペア(HSP)を識別することを含む。Tは、近傍ワードスコア閾値と呼ばれる(上記Altschulら)。これら初期近傍ワードヒットが、それらを含むより長いHSPを見いだすための検索を開始するためのシードとして働く。そして、ワードヒットは、累積整列化スコアを増すことができる限り、各配列に沿って両方向に伸長される。累積スコアは、ヌクレオチド配列の場合には、パラメータM(一致する残基ペアに対する報酬スコア、常に>0)およびN(不一致残基に対するペナルティスコア、常に<0)を使用して計算される。アミノ酸配列の場合、スコアリングマトリックスを使用して累積スコアを計算する。累積整列化スコアがその最大達成値から量Xだけ低下した場合、一つまたは複数の負スコア残基整列化の累積のせいで累積スコアが0またはそれ以下になった場合、またはいずれかの配列の最後に達した場合、各方向におけるワードヒットの伸長は停止する。BLASTアルゴリズムパラメータW、T、およびXが整列化の感度および速度を決める。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列の場合)は、デフォルトとして、28のワードサイズ(W)、10の期待値(E)、M=1、N=-2および両鎖の比較を使用する。アミノ酸配列の場合、BLASTPプログラムは、デフォルトとして、3のワードサイズ(W)、10の期待値(E)およびBLOSUM62スコアリングマトリックス(Henikoff & Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915 (1989)を参照)を使用する。
【0075】
BLASTアルゴリズムはまた、二つの配列の間の類似性の統計的分析を実施する(たとえばKarlin & Altschul, Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 90:5873-5787 (1993)を参照)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の一つの尺度は、二つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列の間の一致が偶然に起こる確率の指標を提供する最小和確率(P(N))である。たとえば、参照核酸に対する試験核酸の比較において最小和確率が約0.2未満、より好ましくは約0.01未満、もっとも好ましくは約0.001未満であるならば、核酸は、基準配列に類似しているとみなされる。
【0076】
二つの核酸配列またはポリペプチドが実質的に同一であるという指標は、以下に記載するように、第一の核酸によってコードされるポリペプチドが、第二の核酸によってコードされるポリペプチドに対して産生された抗体とで免疫学的に交差反応性であるということである。したがって、たとえば二つのペプチドが保存的置換によってのみ異なる場合、ポリペプチドは一般に、第二のポリペプチドとで実質的に同一である。二つの核酸配列が実質的に同一であるというもう一つの指標は、以下に記載するように、二つの分子またはそれらの相補鎖がストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズするということである。二つの核酸配列が実質的に同一であるというさらに別の指標は、同じプライマーを使用して配列を増幅することができるということである。
【0077】
「閾値レベル」という用語は、たとえば抗DEFB-126抗体、レクチンまたはポリカチオン物質の、たとえば精子細胞への結合の代表的レベルをいう。閾値レベルは、正常な対照、DEFB-126ヘテロ接合性個体または変異体DEFB-126欠失多型に関してホモ接合性である個体からの試料中に検出される結合を表すことができる。閾値レベルは、個体または個体集団から決定することができる。本診断法において、閾値レベルを超える結合は一般に、生殖能の可能性を示し、閾値レベル未満の結合は一般に、不妊症の高いリスクを示す。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】野生型DEFB-126cDNAのヌクレオチド配列(配列番号:4)およびアミノ酸配列(配列番号:6)を示す。配列変異(2-ヌクレオチド欠失)の位置が反転表示によって示されている。野生型カルボキシ末端テールの一次配列が示されている。
【図2】変異体DEFB-126欠失多型cDNAのヌクレオチド配列(配列番号:13)およびアミノ酸配列(配列番号:16)を示す。配列変異(2-ヌクレオチド欠失)の位置が示されている。多型変異体カルボキシ末端テールの一次配列が示されている。新たに生成されたリーディングフレーム中にはインフレーム停止コドンが存在せず、長いポリリシンテールを生じさせていることに注目すること。
【図3】野生型(配列番号:22)およびDEFB-126欠失多型変異体(配列番号:23)の両方のC末端アミノ酸配列(スラッシュの位置)の比較を提供する。逆スラッシュ以降のアミノ酸が、野生型DEFB-126ポリペプチドと変異体DEFB-126ポリペプチドとのC末端配列における違いを示す。
【図4】DEFB126のドメイン構造の簡略化スケッチを示す。実線がβデフェンシンドメインにおける三つのジスルフィド結合の存在を示す。菱形がカルボキシ末端ドメインにおけるO結合型糖質を表す。
【図5】DEFB-126野生型と多型遺伝子型との違いを示す。図5Aは、欠失多型(配列番号:24および25)の相対人口出現率を示す。図5Bは、DEFB-126精巣上体組織における低いDEFB-126mRNAレベルを示す。図5Cは、野生型および変異体DEFB-126ポリペプチドの両方における、会合したO結合型グリカンを有する様々なタンパク質配列を比較する。図5Dは、DEFB-126野生型および欠失突然変異ポリペプチド配列(配列番号:26および27)のC末端部分における潜在的なO結合型糖質置換およびカチオン性アミノ酸残基の位置を示す。
【図6】精巣上体における野生型および変異体DEFB-126の発現を示す。異常なタンパク質をコードするmRNAは、多くの場合、安定性に劣り、より急速な分解のせいで低めの定常状態濃度で存在する。リアルタイムPCR分析が、実験値を全入力RNA(左パネル)または対照「ハウスキーピング」遺伝子GAPDH(右パネル)のいずれかに正規化した場合の、野生型配列(白いバー)に比較した変異体DEFB126(黒いバー)の低いレベルを明らかにする。また、精巣上体におけるDEFB126の非常に高い発現が示されている。比較のため、二つの他のβデフェンシン(DEFB125およびDEFB129)が示されている。
【図7】O結合型グリカンに特異的な構造を拘束する、コンジュゲートしたレクチンABAで標識された精子の間の蛍光の違いを示す。
【図8】DEFB-126の高度にシアリル化された性質を示唆する、DEFB-126からのO結合型オリゴ糖の質量スペクトルを示す。
【図9】グリコシル化ヒトデフェンシン-5の質量スペクトルを示す(HD%)。非グリコシル化分画の質量スペクトルが図8Cのグリコシル形態の質量スペクトルと比較されている。
【図10】DEFB-126ポリペプチドの限局性発現を示す。
【図11】DEFB-126を隠蔽、修飾または除去する処理の後の頸管粘液の精子浸透を示す。
【図12】霊長類種ヒト(配列番号:6)、シロテテナガザル(配列番号:7)、ゴリラ(配列番号:8)、チンパンジー(配列番号:9)、カニクイザル(配列番号:10)およびオランウータン(配列番号:11)の間での野生型DEFB-126タンパク質配列の整列化比較を提供する。コンセンサス配列=配列番号:12)。
【図13】カニクイザルDEFB-126(GenBankアクセッション番号Q9BEE3)(配列番号:28)の三つのドメイン、すなわち(1)シグナル配列(aa 1〜20)、(2)βデフェンシンコア領域(aa 21〜64)および(3)カルボキシルテール(aa 65〜123)のアミノ酸配列図を提供する。
【図14】頸管粘液(CM)またはHAゲルの精子浸透の図を提供する。
【図15】DEFB126多型を示すヒト精子がHAゲルに浸透する能力を説明するデータを提供する(15A)。平均曲線速度(VCL)に関して精子懸濁液をCASAによって分析した(15B)。精子懸濁液のスメアを付けたスライドを「Pap」染色し、WHO '89精子形態法にしたがって分析し、全平均%正常形態(%正常)として報告した(15C)。wt DEFB126遺伝子を有するドナー(wt=wt/wt+wt/del)からの精子および遺伝子変異体のみを有するドナー(del/del=del)からの精子の間で、ABAレクチン標識結果を平均化した(D)。
【図16】先に図7および15Dで説明したような、wtおよびdelドナーからのヒト精子のFITCコンジュゲートレクチンABA標識における違いを実証するデータを提供する。
【図17】delドナーD10およびwtドナーD12からの精子によるHA浸透を説明するデータを提供する。ドナーD10(濃いグレーの四角)およびドナーD12(薄いグレーの四角)からの精子のHA浸透が、それぞれdel男性およびwt男性の平均値に照らして示されている。
【図18】DEFB126を精子表面に「アドバック」することができることを説明するデータを提供する。
【図19】cDEFB126によるdel男性からの精子の処理がHAゲルの精子浸透を改善したことを説明するデータを提供する。プロットは、3名の異なるdel/delドナーからの精子の平均±sd応答を表す(19A)。プロットは、cDEF126の付加によって浸透速度における約4倍の増加を示した、2名のdel/delドナーからの精子の平均±sd応答を表す(19B)。
【図20】カニクイザルおよびヒトDEFB-126のBLASTアミノ酸分析比較を提供して、これら二つの霊長類種の機能性DEFB-126タンパク質が、アルゴリズムによって比較された位置、すなわちカニクイザルDEFB-126の位置1〜134およびヒトDEFB-126の位置1〜121にかけて71%の配列相同性しか共有しないことを示す(図20A)(配列番号:29および30、コンセンサス=配列番号:31)。シグナル配列の除去が相同性を66%に低下させる(図20B)(配列番号:32および33、コンセンサス=配列番号:34)。
【発明を実施するための形態】
【0079】
詳細な説明
I. 序文
本発明は、一部には、ある共通のDEFB-126欠失多型を有する個体が、野生型DEFB-126遺伝子型を有する個体と比較して、不妊症の高いリスクまたは可能性を示すという予想外の発見に基づく。遺伝子多型は、遺伝子の異なる対立遺伝子を区別するのに有用な方法を提供することができる。さらには、多型の存在が特定の表現型と対応することができる場合、その多型は、強力なマーカとして作用し、個体の遺伝子型構成に基づいて表現型結果を決定するために使用することができる。
【0080】
特に、本発明は、DEFB-126核酸配列におけるジヌクレオチド欠失多型に関する。この変異体のアミノ酸配列は、DEFB-126のカルボキシル末端の糖質含有ドメインが有意に変更されている。この変異が異常なDEFB-126タンパク質機能および構造を生じさせて、精子機能および生殖能の低下を招く。不妊症評価の早期においてDEFB-126欠失多型を有する個体を識別することにより、臨床医は、方向性のある治療介入、たとえば子宮内精子注入法(IUI)および体外受精(IVF)への速やかな移行を正当化するための科学的証拠を得ることができ、それにより、男女カップルにとって、長引く精密検査の時間および費用を節約する。
【0081】
射精時に男性生殖路から放出される成熟した精子は、受精する能力を得る前に、女性生殖路中で時間を費やさなければならない。受精能獲得と呼ばれるこの最終的な成熟プロセスは、50年を超える間、受精のために不可欠な先行条件として認識されてきた。近年、カニクイザル(Macaca fascicularis)において、一つの精巣上体由来のタンパク質が精子上に連続的な被膜を形成し、その被膜が、勾配溶液に通して激しく洗浄されたのちでも精子に固着したまま残り、その後、インビトロ受精能獲得中に精子表面から放出されるということが実証された(Tollner et al., Mol. Reprod. Dev. 69:325-337 (2004); Yudin et al., Biol. Reprod. 73:1243-1252 (2005); Yudin et al., J. Membr. Biol. 207:119-129 (2005); Yudin et al., Biol. Reprod. 69:1118-1128 (2003))。この精巣上体分泌タンパク質は当初、ESP 13.2と呼ばれていたが、今は、βデフェンシンとのそのアミノ酸配列相同性および構造的類似のため、DEFB-126と呼ばれている(Lehrer et al., Mucosal Immunology, 3rd Ed., Academic Press: New York, 95-110 (2004))。βデフェンシンは、標的膜を破壊する抗菌性タンパク質である(たとえばDiamond and Bevins, Clinical Immunology and Immunopathology 88:221-25 (1998)を参照)。
【0082】
DEFB-126は、そのCOOHテールがO結合型シアル酸によって高度にグリコシル化されている(Yudin et al., J. Membr. Biol. 207:119-129 (2005))。交尾した雌性カニクイザルの子宮頸および子宮から回収された生育可能な精子は、その全面がDEFB-126で均一に被覆されており、DEFB-126が雌性上生殖路中で精子上に保持されることを示唆する(Tollner et al., Biol. Reprod. 78:400-412 (2008))。DEFB-126は、雌性生殖路による精子表面認識を妨げる免疫保護シールドを提供して、それにより、精子貯蔵および最終的な受精能獲得のための安全な避難所を保証することができる(Yudin et al., Biol. Reprod. 73:1243-1252 (2005))。ジヌクレオチド欠失多型を有するDEFB-126対立遺伝子を有し、かつ変異体DEFB-126ポリペプチドを発現している男性は、見かけは正常であるが雌性環境中では機能不全である精子を産生する。
【0083】
DEFB126のアミノ酸配列は、シグナル配列(aa 1〜20)および45アミノ酸βデフェンシンドメイン(aa 21〜64)を明らかにする。他のβデフェンシンと同じく、DEFB126は特定の6システイン編成を有する(Schutte et al., 2002)。60アミノ酸C末端ドメインは、不対システイン(白丸)およびO結合型グリコシル化のための数多くの潜在的部位(*)を有する(Julenius et al., 2005)(図13を参照)。
【0084】
II. DEFB-126欠失多型を識別することによる雄性生殖能低下のリスクの判定
本発明は、個体が低下した生殖能を有するかどうかを判定するために、DEFB-126をコードする遺伝子に関して該個体の遺伝子型を解析するための方法を提供する。そのような判定により、自身の遺伝子型が生殖能低下のリスクまたは可能性を伴うかどうかについて個別の知識が提供され、かつ該個体が適切な生殖能治療選択肢を受けることを可能にする。本発明はさらに、DEFB-126欠失多型の有無に基づいて不妊症の高いリスクを診断するのに有用であるキットを提供する。
【0085】
生殖能低下に関連するDEFB-126欠失多型
受精能獲得が、受精に不可欠である最終的な精子成熟プロセスである。このプロセスの間、精子上に連続的な被膜を形成する一つの精巣上体由来タンパク質が放出される。このタンパク質は当初、ESP 13.2(精巣上体分泌タンパク質)と呼ばれていたが、しかし今は、βデフェンシンとのそのアミノ酸配列相同性および構造的類似に基づき、DEFB-126と呼ばれている(Lehrer et al, Mucosal Immunology, 3rd Ed., Academic Press: 95-110, (2004); Diamond and Bevins, Clin. Immunol. Immunopathol. 88:221-25 (1998))。DEFB-126は、そのCOOHテールがO結合型シアル酸によって高度にグリコシル化されている(Yudin et al., J. Membr. Biol. 207:119-29 (2005))。DEFB-126は、受精能獲得の前に、雌性生殖路による精子表面認識からの免疫保護シールドを提供すると考えられている(Yudin et al., Biol. Reprod. 73:1243-1252 (2005))。
【0086】
不妊症増大に関連するDEFB-126欠失多型は、
によって定義される野生型DEFB-126ヌクレオチド配列の文脈的核酸部分配列内の2ヌクレオチド「CC」欠失である。DEFB-126欠失多型は、配列番号:1の文脈的部分配列
の位置6〜10内に3個より多いシトシンを含有しない(図2も参照)。欠失多型を有する例示的なDEFB-126核酸配列は、配列番号:13(GenBankアクセッション番号AK225987)、配列番号:14および配列番号:15(GenBankアクセッション番号CO408416)で提供されたヌクレオチド配列を有する。この欠失多型が存在するとき、新たに生成されたリーディングフレーム中には停止コドンが存在せず、それが伸長したポリリシンテールを生じさせる。野生型DEFB-126タンパク質は、C末端ドメインに負電荷を持ち込むO結合型糖質のためのアミノ酸残基を提供するが、DEFB-126突然変異体中のポリリシンテールはより正の電荷をこのドメインに持ち込む。
【0087】
また、オープンリーディングフレーム中のフレームシフトを生じさせる2ヌクレオチド省略(欠失)を有するDEFB126cDNAにおける配列変異が識別されている(図5Aを参照)。この対立遺伝子は、中国人男性コホートから無作為に選択された全部で465名の個体(S. Venners & Xiping Xu U. Chicagoと共同)および英国の男性集団からの74名の個体の遺伝子型分析によって識別された(図5Bを参照)。異常なタンパク質をコードするmRNAは、多くの場合、より急速な分解のせいで、組織中に低めの定常状態濃度で存在する。したがって、本発明者らは、定量的RT-PCR(qPCR)を使用して精巣上体組織中のDEFB126mRNAを分析した。この予測と合致するように、精巣上体標本中の低いDEFB126mRNAレベルが配列変異体とともに認められた(図5Cを参照)。
【0088】
また、オープンリーディングフレーム中のフレームシフトを生じさせる2ヌクレオチド省略(欠失)を有するDEFB126cDNAにおける配列変異が識別されている(図5を参照)。この特異的DEFB126多型は約0.45〜0.50の対立遺伝子頻度を有する。変異体DEFB126の変異体アミノ酸配列は、有意に変更されたC末端の糖質含有ドメインを予測する。この変異体の場合、オープンリーディングフレームがポリAテール中に延びるため、変異体はおそらくヌル(非発現性)対立遺伝子である。さらには、異常なタンパク質をコードするmRNAは、多くの場合、急速な分解の結果として、低めの定常状態濃度で存在するため、DEFB-126欠失多型を有する個体における精巣上体組織は、野生型精巣上体組織に比較した場合、顕著に低いDEFB-126mRNAの発現を有する(図5を参照)。DEFB126変異体は2ヌクレオチド省略(欠失)を有して、それがDEFB126のオープンリーディングフレーム中のフレームシフトを生じさせた(図5A)。この配列変異はNCBIゲノムDNA配列データベース中で確認された。
【0089】
DEFB-126欠失多型の核酸検出
DEFB-126欠失多型は、非限定的に増幅、配列決定およびハイブリダイゼーション技術を含む、当技術分野において公知の任意の方法を使用して検出することができる。一つの塩基変化の存在に関して核酸を評価する検出技術は、分子遺伝学の分野において周知の手法を含む。核酸を増幅する方法が、本発明を実施する際に有用である。方法を実施するための十分な手引きが当技術分野において提供されている。例示的な参考文献は、マニュアル、たとえばPCR Technology: Principles And Applications For DNA Amplification(ed. H. A. Erlich, Freeman Press, New York, NY, (1992)); PCR Protocols: A Guide To Methods And Applications (Innis, et al, eds., Academic Press, San Diego, CA, (1990)); Current Protocols In Molecular Biology, Ausubel,(1990-2008。補遺改訂を含む); Sambrook & Russell, Molecular Cloning, A Laboratory Manual(3rd Ed, 2001)を含む。
【0090】
本発明の一つの局面にしたがって、DEFB-126欠失多型は増幅反応によって検出される。DEFB-126領域は、オリゴヌクレオチド対を使用して増幅されて、DEFB-126欠失多型配列の核酸増幅産物を形成する。増幅は、PCRを含む当業者に公知の数多くの方法のいずれかによることができ、本発明は、任意の適当なDNA増幅方法を包含することを意図する。数多くのDNA増幅技術が本発明との使用に好適である。好都合には、そのような増幅技術は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、鎖置換増幅(SDA)、核酸配列ベース増幅(NASBA)、ローリングサークル増幅、T7ポリメラーゼ媒介増幅、T3ポリメラーゼ媒介増幅およびSP6ポリメラーゼ媒介増幅のような方法を含む。DNA増幅の厳密な方法が限定的である意図はなく、本明細書に挙げられていない他の方法が当業者に明らかであり、それらの使用は本発明の範囲内である。
【0091】
いくつかの態様において、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プロセスが使用されている(たとえば米国特許第4,683,195号および第4,683,202を参照)。PCRは、熱安定性DNAポリメラーゼ、プライマーとして知られる既知の配列、および複製するデオキシリボ核酸(DNA)鎖を分離させ、対象となる遺伝子を指数関数的に増幅させる加熱サイクルの使用を含む。定量的PCR、RT-PCR、ホットスタートPCR、LA-PCR、マルチプレックスPCR、タッチダウンPCRを含む任意のタイプのPCRが有用である。いくつかの態様においては、リアルタイムPCRが使用される。
【0092】
そして、生殖能低下に関連するDEFB-126欠失多型の有無を検出するために増幅産物を分析する。本発明の方法を実施し、増幅産物を分析することにより、試験される個体が生殖能低下のリスクを有するかどうかを判定することが可能である。
【0093】
いくつかの態様において、分析は、オリゴヌクレオチド対によるゲノムDNAの増幅によって産生されるPCRアンプリコンの制限酵素断片長多型(RFLP)分析によって実施することができる。増幅産物および制限酵素断片の検出を簡素化するために、当業者は、増幅されたDNAがさらに、比較的少量の産物の検出を可能にするための標識された部分を含むということを理解するであろう。多様な部分が当業者に周知であり、蛍光、生物発光、化学発光および放射性または発色性部分のような標識タグを含む。
【0094】
また、DEFB-126遺伝子増幅産物の存在および制限酵素消化性質を検出する多様な方法が本発明との使用に適している。これらは、ゲル電気泳動、質量分析法などのような方法を含むことができる。本発明はまた、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)のような一本鎖DNA検出技術の使用に適合されている。FRET分析の場合、ハイブリダイゼーションアンカおよび検出プローブを使用して増幅産物にハイブリダイズすることができる。プローブ配列は、たとえば多型の存在においては、得られるハイブリダイゼーション複合体が、特定のヌクレオチド位置にGまたはC残基がある場合よりも安定になるように選択される。したがって、ハイブリダイゼーション条件を調節することにより、DEFB-126欠失多型を有する個体とそれを有しない個体とを区別することが可能である。当業者に周知の多様なパラメータを使用して、ハイブリダイゼーション複合体が形成する能力に影響を加えることができる。これらは、温度、イオン濃度の変化または複合体安定性を低下させるホルムアミドのような化学成分の包含を含む。さらに、DEFB-126欠失多型に関してヘテロ接合性である個体と、それに関してホモ接合性である個体とを区別することが可能である。FRET分析の方法は当技術分野には周知であり、DEFB-126欠失多型の有無がFRETによって検出されるところの条件は容易に決定可能である。
【0095】
また、適当な配列検出方法は、たとえば、ジデオキシ配列決定ベースの方法およびMaxam and Gilbert配列決定法(たとえば上記Sambrook and Russellを参照)を含む。適当なHPLCベースの分析は、たとえば、Premstaller and Oefner, LC-GC Europe 1-9(July 2002); Bennet et al, BMC Genetics 2:17 (2001); Schrimi et al., Biotechniques 28(4):740 (2000); およびNairz et al., PNAS USA 99(16):10575-10580 (2002)に記載されているような変性HPLC(dHPLC)、ならびにたとえばOberacher et al.; Hum. Mutat. 21(1):86 (2003)に記載されているようなイオン対逆位相HPLCエレクトロスプレーイオン化質量分析法(ICEMS)を含む。DEFB-126対立遺伝子を特性決定するための他の方法は、たとえば、単一塩基伸長法(たとえばKobayashi et al, Mol. Cell. Probes, 9:175-182 (1995)を参照)、たとえばOrita et al., Proc. Nat. Acad. Sci. 86, 2766-2770 (1989)に記載されているような一本鎖立体配座多型分析法、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション(ASO)(たとえばStoneking et al., Am. J. Hum. Genet. 48:70-382 (1991); Saiki et al., Nature 324:163-166 (1986); EP235,726; およびWO89/11548)、およびたとえばWO93/22456; 米国特許第5,137,806号; 第5,595,890号; 第5,639,611号; および米国特許第4,851,331号に記載されているような配列特異的増幅またはプライマー伸長法、そして米国特許第5,210,015号; 第5,487,972号; および第5,804,375号ならびにHolland et al., 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:7276-7280 (1988)に記載されているような5'-ヌクレアーゼアッセイ法を含む。
【0096】
野生型または変異体DEFB-126ポリヌクレオチドを検出する際に使用するための例示的なポリヌクレオチドを以下の表にまとめる。
【0097】
たとえば、方法は、DEFB126-154s、DEFB126-199s、DEFB126-278sおよびDEFB129-441sからなる群より選択されるフォワードプライマー、ならびにDEFB126-330a、DEFB126-409aおよびDEFB129-546aからなる群より選択されるリバースプライマーを使用することができる。いくつかの態様においては、プライマーDEFB126-154sおよびDEFB126-409aをいっしょに使用して、たとえば増幅産物のDNA配列分析によって個体のDEFB-126遺伝子型を決定する。
【0098】
いくつかの態様において、方法は、たとえば増幅産物のDNA配列分析によってDEFB-126遺伝子型を決定するための配列決定プライマーとして有用であるポリヌクレオチドDEFB126-278sを使用する。
【0099】
ポリヌクレオチドは、当技術分野において公知であり、本明細書に記載される方法を使用する検出のために標識されることができる。
【0100】
DEFB-126欠失多型によって発現するタンパク質の検出
DEFB-126欠失多型は、当技術分野において公知の任意の方法を使用して検出することができる。たとえば、DEFB-126野生型および変異体タンパク質は、発現した野生型および多型DEFB-126遺伝子のタンパク質産物の物理的違いを分析することによって検出することができる。
【0101】
野生型DEFB-126ポリペプチドと変異体DEFB-126ポリペプチドとの間の一つの物理的違いは、タンパク質の相対的発生量である。DEFB-126欠失多型mRNAは、多くの場合、低めの定常状態濃度で存在し、多くの場合、異常に発現したmRNA配列をもって認められる。この結果、野生型DEFB-126ポリペプチドと比較して変異体DEFB-126ポリペプチドは発生量が全体的に低めになる(すなわち、存在が減少する)。いくつかの態様において、変異体DEFB-126ポリペプチドは完全に不在または検出不可能である。検出可能である場合、変異体DEFB-126ポリペプチドは、野生型DEFB-126ポリペプチドの検出可能量と比較して約50%、30%、10%またはそれ未満の量で存在することができる。
【0102】
上記のように、発現すると、変異体DEFB-126ポリペプチドは、ヌクレオチド配列フレームシフトの結果として野生型停止コドンのリードスルーから生じる伸長したC末端ドメインを含む。この伸長したC末端変異体DEFB-126ポリペプチドは、野生型DEFB-126ポリペプチドと変異体DEFB-126ポリペプチドとの間の認識可能な物理的違いを提供する。野生型DEFB-126ポリペプチドは111個のアミノ酸残基を有するが、変異体DEFB-126ポリペプチドは少なくとも132個のアミノ酸残基を含む。伸長したC末端を含むことに加えて、変異体DEFB-126ポリペプチドは、C末端O結合型グリコシル化が有意に低下している。
【0103】
変異体DEFB-126ポリペプチドの分子量および等電点は、変異体DEFB-126ポリペプチドと野生型DEFB-126ポリペプチドとの間の顕著な物理的違いを提供する。推定アミノ酸配列に基づく非グリコシル化変異体DEFB-126ポリペプチド(配列番号:16および配列番号:17)の予測分子量は、少なくとも約11.53kDaであり、等電点は少なくともpH10.75である。対照的に、推定アミノ酸配列に基づく非グリコシル化野生型DEFB-126ポリペプチド(配列番号:6)の予測分子量は、約9.19kDaであり、等電点は約pH10.75である。非ヒト霊長類において、非還元型および還元型天然DEFB-126タンパク質は、それぞれ、ポリアクリルアミドゲルにおいて約53kDa(タンパク質バンドは51〜55kDaに及ぶ)および約34kDa(タンパク質バンドは31〜36kDaに及ぶ)の見かけ分子量を有する。
【0104】
変異体DEFB-126ポリペプチドの検出は、抗体によって達成することができる。抗体の開発のための抗原としての使用のために、自然に産生される、もしくは組み換え形態で発現するDEFB-126タンパク質、または好ましくは少なくとも9個のアミノ酸を有するその機能性誘導体を得、それを使用して、ポリクロナールまたはモノクロナール抗体の産生のために動物を免疫化する。抗体は、分子と反応して、それにより、その分子を抗体に結合させることができるならば、その分子を拘束することができるとされる。特異的反応とは、抗原がその対応する抗体とは非常に選択的に反応するが、他の抗原によって誘発されることができる多数の他の抗体とは反応しないことをいう。
【0105】
本明細書における、抗体という用語は、非限定的に、ヒトおよび非ヒトポリクロナール抗体、ヒトおよび非ヒトモノクロナール抗体(mAb)、キメラ抗体、抗イディオタイプ抗体(抗IdAb)ならびにヒト化抗体を含む。ポリクロナール抗体は、抗原で免疫化された動物の血清または鶏卵に由来する抗体分子の不均一集団である。モノクロナール抗体(「mAb」)は、特定の抗原に対する抗体の実質的に均一な集団である。mAbは、当業者に公知の方法によって得ることができる(たとえば米国特許第4,376,110号)。そのような抗体は、任意の免疫学的クラス、たとえばIgG、IgM、IgE、IgA、IgDおよびそれらの任意のサブクラスであることができる。DEFB-126に対するヒトおよび非ヒト抗体を産生するハイブリドーマをインビトロまたはインビボで培養することもできる。多量のmAbの産生の場合、インビボが現在のところ好ましい産生方法である。簡潔にいうと、個々のハイブリドーマからの細胞をプリスタンで初回刺激したBalb/xマウスまたはヌードマウスに腹腔内注射して、所望のmAbを高濃度で含有する腹水を生成する。その腹水または培養上澄みから、当業者に周知の標準クロマトグラフィー法を使用して、MAbを精製することができる(たとえばE. Harlow, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY (1988)を参照)。
【0106】
抗体または抗体のフラグメントは、上記のようにして得られた生物学的試料中の野生型または変異体DEFB-126ポリペプチドのいずれかの存在を定量的または定性的に検出するために使用される。野生型DEFB-126ポリペプチドと変異体DEFB-126ポリペプチドとはC末端が異なるため、野生型または変異体DEFB-126のC末端に特異的に結合する抗体を開発することができる。いくつかの態様において、識別する抗体は、野生型DEFB-126ポリペプチドのC末端内のエピトープに特異的に結合する。いくつかの態様において、識別する抗体は、変異体DEFB-126ポリペプチドのC末端内のエピトープに特異的に結合する。
【0107】
変異体DEFB-126ポリペプチドの存在の検出は、レクチン、ポリカチオン(たとえばポリ-L-リシン)または上記のようにして産生された抗体へのポリペプチドの結合によって達成することができる。生物学的試料を、細胞もしくは細胞粒子または可溶性タンパク質を固定化することができる固相支持体または担体、たとえばニトロセルロースまたは他の固体支持体で処理することができる。そして、支持体を洗浄したのち、検出可能に標識された抗DEFB-126抗体で処理することができる。続いて、支持体を洗浄して非結合抗体を除去する。固相支持体という用語は、非限定的にガラス、ポリスチレンポリプロピレン、ナイロン、修飾セルロースまたはポリアクリルアミドを含む、抗原または抗体を拘束することができる任意の支持体をいう。そして、前記支持体に結合した標識の量を、非限定的にウエスタンブロットハイブリダイゼーション、ELISAまたは免疫沈降を含む従来の手段によって検出することができる。
【0108】
レクチン、ポリカチオン(たとえばポリ-L-リシン)または抗体を使用する検出はさらに、蛍光標識された抗体を蛍光顕微鏡法、光学顕微鏡法、免疫電子顕微鏡法、インサイチューハイブリダイゼーション、フローサイトメトリーまたは蛍光光度検出とともに使用する免疫蛍光技術によって達成することもできる。抗体を使用して野生型または変異体DEFB-126ポリペプチドの存在を検出するために使用される上述の技術は、当技術分野において周知の様々な技術の代表例であるが、上記の技術のみに限定されるべきではない。
【0109】
変異体DEFB-126ポリペプチドの検出は、ガラクトース-GalNAcまたはシアル酸を選択的に拘束するレクチンを使用して達成することができる。たとえば、レクチンマッシュルーム(ABA)またはパラミツ(Jacalin)は、O結合型グリカンに特異的な構造であるガラクトース-GalNAc-セリン(またはトレオニン)を選択的に拘束する。変異体DEFB-126ポリペプチドを有する個体からの精子は、野生型ドナーに比較してABA関連蛍光の有意な減少を示す。精子表面上のシアル酸部分の有意な減少が非ヒト霊長類精子からのDEFB126の損失とともに実証されている。したがって、正常な対照または所定の閾値レベルと比較して、DEFB126上のオリゴ糖上の末端位置におけるシアル酸部分を認識するレクチンの低い結合レベルは、不妊症の高いリスクを示す。シアル酸部分を検出するためには、レクチンアメリカカブトガニ(LPA)、イヌエンジュ(MAL II)またはコムギ胚芽(WGA)を使用することができる。いくつかの態様において、レクチン検出は、精子をノイラミニダーゼで処理し、パラホルムアルデヒド/グルテルアルデヒドで固定し、次に精子をFITCコンジュゲートしたレクチンABAとともにインキュベートすることによって達成される。
【0110】
変異体DEFB-126ポリペプチドの検出はまた、DEFB-126と会合した負荷電オリゴ糖部分に結合するポリ-L-リシン(または類似したポリカチオン物質)を使用して達成することもできる。アクチベータ化合物(ACT)による精子からのDEFB-126の除去またはシアリダーゼもしくはOグリコシダーゼによる精子の処理が、非ヒト霊長類精子の表面へのポリ-L-リシンの結合の有意な損失を生じさせる。Yudin et al. J. Membrane Biol. 207, 119-129 (2005)。したがって、正常な対照と比較して、DEFB126上のオリゴ糖と会合した負荷電部分を認識するポリ-L-リシンの結合レベルの低下は、不妊症の高いリスクを示す。
【0111】
レクチン、ポリカチオン(たとえばポリ-L-リシン)および/または抗体は、精液試料中のDEFB126糖タンパク質の検出のための診断キットに用いられる利用可能な技術とともに使用することができる。診断キットは、医院における使用または家庭環境における使用のための診断キットであることができる。精子標識の違いを検査することができ、閾値が、DEFB126野生型または「陽性」の男性とDEFB126欠失変異体または「陰性」の男性とを区別することができる。閾値は、たとえば、DEFB126陽性または陰性対照への比較によって決定することができる。閾値は、DEFB126の野生型または変異形態のいずれかを有することが知られる個体集団に結合するレクチン、ポリ-L-リシン(または類似したポリカチオン物質)および/または抗体を評価することによって決定することができる。検査試料中のレクチン、ポリ-L-リシン(または類似したポリカチオン物質)または抗体結合が、DEFB126変異形態を表す陰性対照または対照試料中のレクチン、ポリ-L-リシン(または類似したポリカチオン物質)または抗体結合に類似している、または等しいならば、その検査試料は、DEFB126変異形態の存在および不妊症の可能性を示す。検査試料中のレクチン、ポリ-L-リシン(または類似したポリカチオン物質)または抗体結合が、DEFB126野生型を表す陽性対照または対照試料中のレクチン、ポリ-L-リシン(または類似したポリカチオン物質)または抗体結合に類似している、または等しいならば、その検査試料は、DEFB126野生型の存在および低い不妊症の可能性、または変異体DEFB126以外の理由による不妊症を示す。検査試料中のレクチン、ポリ-L-リシン(または類似したポリカチオン物質)または抗体結合が、DEFB126野生型を表す陽性対照または対照試料中のレクチン、ポリ-L-リシン(または類似したポリカチオン物質)または抗体結合に満たないならば、その検査試料は、DEFB126変異形態の存在および不妊症の可能性を示す。
【0112】
使用されるレクチンはガラクトース-GalNAcまたはシアル酸を選択的に拘束する。カニクイザルモデルにおいて、レクチンABAおよび麦芽アグルチニン(WGA)が、無傷の(かつ生育可能な)精子およびウエスタンブロットにおいてDEFB126を強力に認識するということが記載されている(Yudin et al., (2005))。ABAによる標識は、生きている精子および固定された精子で実施することができるステップとして、精子がはじめにシアリダーゼによって処理されることを要する(Yudin et al., (2005); Tollner et al., (2008))。
【0113】
しかし、レクチンは、精子多糖外被の糖脂質および他の糖タンパク質と潜在的に会合した同じクラスのオリゴ糖に結合する。同様に、ポリ-L-リシン(または類似したポリカチオン物質)は、精子表面上の他の生体分子と潜在的に会合した高度に負荷電した部分に結合する。そのようなものとして、必要ならば、抗体をレクチンまたはポリ-L-リシン(または類似したポリカチオン物質)とともに使用して、より高い特異性を提供することもできる。ラテラルフロー免疫クロマトグラフィー家庭用試験装置を使用して精子濃度を推定するために、精子特異的タンパク質に対する抗体が使用されている(「SPERMCHECK(登録商標)、Klotz et al., 2008)。いくつかの態様において、レクチン、ポリ-L-リシン(または類似したポリカチオン物質)またはDEFB126に特異的に結合する抗体は、不妊症診断のために使用される。いくつかの態様において、レクチンまたはポリ-L-リシン(または類似したポリカチオン物質)は、精子特異的抗体と組み合わせて、不妊症分析のために使用することができる。
【0114】
変異体DEFB-126ポリペプチドの検出は、上記のような野生型および変異体DEFB-126ポリペプチドの物理的および/または化学的性質の測定によって達成することができる。そのような性質は、分子量および等電点、DEFB-126ポリペプチドのC末端の配列ならびにDEFB-126のC末端のグリコシル化の程度を含む。分子量測定および等電点測定のための条件は当技術分野において周知であり、たとえば米国特許出願第07/919,784号で詳細に記載されている。C末端タンパク質配列の決定は、当技術分野において周知の任意の方法、たとえばEdman分解技術(Creighton, Proteins: Structures and Molecular Principles, W.H. Freeman, New York, p. 3449 (1983))によって達成することができる。C末端グリコシル化は、当技術分野において公知の任意の方法を使用して、たとえば以下、実施例4に記載するようにして測定することができる。
【0115】
III. DEFB-126欠失多型を識別するためのキット
本発明はさらに、個体がDEFB-126欠失多型を有するかどうかを判定するのに有用な診断キットを提供する。キットは、DEFB-126座における個体の遺伝子型構成を分析する際に使用するためのポリヌクレオチドおよび/または個体のDEFB-126タンパク質産物を分析する際に使用するための抗体および/またはレクチンを含むことができる。キットは、DEFB-126ポリペプチド欠失もしくは突然変異または非発現性対立遺伝子を有する個体の治療に使用するためのポリペプチドを含むことができる。
【0116】
a. ポリヌクレオチド
一般に、個体の遺伝子型構成を試験する各キットは、一つまたは複数のポリヌクレオチド、たとえば本発明のDEFB-126欠失多型を含む遺伝子の部分を増幅するのに適したプライマー対、または野生型もしくは変異体DEFB-126核酸に選択的にハイブリダイズするプローブを含む。いくつかの態様において、キットは、個体から採取されたゲノムDNA試料の増幅に適したフォワードおよびリバースプライマーならびに使用のための使用説明書を含む。上記のように、生物学的試料は、ゲノムDNAが存在する任意の組織または流体からの試料であることができる。好都合には、試料は、血液、皮膚または毛球から採取することができる。
【0117】
キットは、生物学的試料を使用して増幅反応に使用するための鋳型を生成する方法、および最適な増幅反応のために提供されたプライマーセットを使用する方法に関する使用説明書を含む。使用説明書はさらに、増幅反応の解釈を記載し、部分配列
の位置6〜10における5個の連続するシトシン「CCCCC」の存在が正常な生殖能を示し、上述の部分配列の位置6〜10内の3個以下の連続するシトシン「CCC」の存在が不妊症の高いリスクまたは確率を示すということを示す。
【0118】
野生型または変異体DEFB-126ポリヌクレオチドを検出する際に使用するための、キットに含められるための例示的なポリヌクレオチドを以下の表にまとめる。
【0119】
たとえば、キットは、DEFB126-154s、DEFB126-199s、DEFB126-278sおよびDEFB129-441sからなる群より選択されるフォワードプライマーならびにDEFB126-330a、DEFB126-409aおよびDEFB129-546aからなる群より選択されるリバースプライマーを含むことができる。いくつかの態様において、キットはプライマーDEFB126-154sおよびDEFB126-409aを含む。増幅は、直接配列分析によって遺伝子型を決定するための鋳型として使用することができる。
【0120】
いくつかの態様において、キットは、たとえば増幅産物の配列分析によってDEFB-126遺伝子型を決定するための配列決定プライマーとしての使用を見いだすプライマーDEFB126-278sを含む。
【0121】
ポリヌクレオチドは、本明細書に記載されているような、当技術分野において公知の方法を使用する検出のために標識されることができる。
【0122】
b. 抗体
一般に、個体が、野生型DEFB-126ポリペプチドを産生しているのか、変異体DEFB-126ポリペプチドを産生しているのかを試験する各キットは、上記のようにDEFB-126ポリペプチドを識別する少なくとも一つの抗体を含む。キットはさらに、使用のための使用説明書および所望の反応を実施するのに必要なコンポーネント、たとえばポリアクリルアミドゲル、二次抗体、緩衝液などを提供する。
【0123】
キットはまた、供給される抗体および所望の反応を実施するのに必要な他のコンポーネントとともに生物学的試料を使用する方法に関する使用説明書を含むことができる。キットはさらに、DEFB-126ポリペプチドの存在を、正常な生殖能を示すとして解釈し、DEFB-126ポリペプチドの非存在または少ない存在を、不妊症の高いリスクを示すとして解釈する使用説明書を提供する。検出されるDEFB-126の存在はまた、所定の閾値レベルを参照して判定することもできる。そのような態様において、キットはさらに、閾値レベルを超えるDEFB-126ポリペプチドの存在を、正常な生殖能を示すとして解釈し、DEFB-126ポリペプチドの非存在または閾値レベル未満の存在を、不妊症の高いリスクを示すとして解釈するための使用説明書を提供する。いくつかの態様において、キットに含まれる抗体は野生型または変異体DEFB-126ポリペプチドのC末端に選択的に結合する。有用であるさらなる抗体は、DEFB-126の野生型と突然変異形態とを識別することができる。いくつかの態様において、抗DEFB-126抗体は、たとえば蛍光体、発色団、化学発光部分、酵素、放射性同位体などで標識される。いくつかの態様において、キットは、標識された二次抗体を含む。
【0124】
c. レクチン
いくつかの態様において、レクチン-DEFB126-抗体「サンドイッチ」手法を使用することもでき、そのような手法は、レクチンを「精子捕獲」戦略として使用することができる試験キットに非常に適合性であろう。たとえば、固体支持体に結合した適切なレクチンは、野生型DEFB126上のオリゴ糖を介して精子を拘束することができる。DEFB126の変異形態は、レクチンによって拘束されない、または低レベルで拘束される。DEFB126は、ホスホリパーゼCまたは高い塩およびpHの条件を用いる処理によって精子表面から放出させることができる(Yudin et al., (2003); Tollner et al., (2009))。DEFB126の比色検出の場合には、ビオチンまたは酵素にコンジュゲートしたモノまたはポリクロナール抗体を固相に適用することもできる。類似したサンドイッチアッセイ法が、モノクロナール抗体による、膵がんに伴う血清ムチンの検出の感度および特異性を大幅に高め(Neil Parker, (1998))、そのような方法は、本発明の方法に容易に適合することができる。
【0125】
キットはまた、供給されるレクチンおよび所望の反応を実施するのに必要な他のコンポーネントとともに生物学的試料を使用する方法に関する使用説明書を含むことができる。キットはさらに、DEFB-126ポリペプチドの検出可能な存在を、正常な生殖能を示すとして解釈し、DEFB-126ポリペプチドの非存在または少ない存在を、不妊症の高いリスクを示すとして解釈する使用説明書を提供する。検出されるDEFB-126の存在はまた、所定の閾値レベルを参照して判定することもできる。そのような態様において、キットはさらに、閾値レベルを超えるDEFB-126ポリペプチドの存在を、正常な生殖能を示すとして解釈し、DEFB-126ポリペプチドの非存在または閾値レベル未満の存在を、不妊症の高いリスクを示すとして解釈する使用説明書を提供する。いくつかの態様において、キットは、ガラクトース-GalNAcまたはシアル酸を選択的に拘束する少なくとも一つのレクチンを含む。いくつかの態様において、レクチンはマッシュルーム(ABA)またはパラミツ(Jacalin)である。いくつかの態様において、レクチンはアメリカカブトガニ(LPA)、イヌエンジュ(MAL II)またはコムギ胚芽(WGA)である。また、いくつかの態様において、キットは精子特異的抗体をも含む。
【0126】
いくつかの態様において、レクチンは、検出可能な標識、たとえば蛍光体、発色団、化学発光部分、酵素、放射性同位体などを含む。いくつかの態様において、キットは、レクチンに結合する標識された抗体を含む。
【0127】
d. ポリカチオンおよびポリ-L-リシン
いくつかの態様において、ポリ-L-リシン(または類似したポリカチオン物質)を抗体とともに本明細書に記載するような「サンドイッチ」手法で使用することができる。
【0128】
キットはまた、供給されるポリ-L-リシン(または類似したポリカチオン物質)および所望の反応を実施するのに必要な他のコンポーネントとともに生物学的試料を使用する方法に関する使用説明書を含むことができる。キットはさらに、DEFB-126ポリペプチドの検出可能な存在を、正常な生殖能を示すとして解釈し、DEFB-126ポリペプチドの非存在または少ない存在を、不妊症の高いリスクを示すとして解釈する使用説明書を提供する。検出されるDEFB-126の存在はまた、所定の閾値レベルを参照して判定することもできる。そのような態様において、キットはさらに、閾値レベルを超えるDEFB-126ポリペプチドの存在を、正常な生殖能を示すとして解釈し、DEFB-126ポリペプチドの非存在または閾値レベル未満の存在を、不妊症の高いリスクを示すとして解釈する使用説明書を提供する。いくつかの態様において、キットは、ガラクトース-GalNAcまたはシアル酸を選択的に拘束する少なくとも一つのレクチンを含む。いくつかの態様において、キットはまた、精子特異的抗体を含む。
【0129】
いくつかの態様において、ポリ-L-リシンは、検出可能な標識、たとえば蛍光体、発色団、化学発光部分、酵素、放射性同位体などを含む。いくつかの態様において、キットは、ポリ-L-リシン(または類似したポリカチオン物質)に結合する標識された抗体を含む。
【0130】
e. ポリペプチド
いくつかの態様において、本発明のキットはまた、男性不妊症の治療に使用するための、突然変異または非機能性DEFB-126ポリペプチドを発現する個体に対する、精子機能性の再構成(すなわち、受胎を達成する能力、たとえば頸管粘液(CM)浸透能力の再構成)のための機能性DEFB-126ポリペプチドを含むことができる。いくつかの態様において、DEFB-126ポリペプチドは、非ヒト霊長類、たとえばカニクイザルから得られる。いくつかの態様において、DEFB-126はヒトから得られる。いくつかの態様において、DEFB-126は、組み換えDEFB-126であることができる(たとえば真核生物発現系、たとえば昆虫細胞中で発現する)。一般に、キットは、治療用「アドバック」法および薬学的組成物に関して本明細書に記載されるような、正常な生殖能の再構成を可能にする機能性DEFB-126ポリペプチドを含む。
【0131】
キットは、精子を含む生物学的試料を、供給される機能性DEFB-126ポリペプチドおよび精子機能性(すなわち、受胎を達成する能力、たとえば頸管粘液(CM)浸透能力の再構成)を回復させるのに必要な他のコンポーネントとともに使用する方法に関する使用説明書を含むことができる。キットはさらに、DEFB-126再構成がうまく働いたかどうかを解釈する際に使用するための使用説明書および材料、たとえばHAまたはCM浸透ゲルを分析のために提供することができる。精子機能性の再構成(すなわち、受胎を達成する能力、たとえば頸管粘液(CM)浸透能力の再構成)は正常な生殖能を示す。
【0132】
IV. DEFB-126欠失多型を宿す個体の治療
a.欠陥DEFB-126ポリヌクレオチドの置換
不妊症評価の早期に個体がDEFB-126を有することを確証することにより、臨床医は、方向性のある治療介入、たとえば子宮内精子注入法(IUI)および体外受精(IVF)への速やかな移行を正当化するための科学的証拠を得ることができ、それにより、男女カップルにとって、長引く精密検査の時間および費用を節約する。
【0133】
野生型DEFB-126核酸を精巣上体に導入することができる。これは、機能性DEFB-126ポリペプチドをコードする核酸を、DEFB-126欠失多型を有する個体の精巣上体細胞に導入することによって達成することができる。DEFB-126核酸配列は、インビトロまたはインビボで導入することができる。野生型DEFB-126遺伝子配列の導入は、当技術分野において公知の遺伝子治療の任意の方法によって達成することができる。当技術分野において公知の任意のベクターを使用して治療用遺伝子を精巣上体に送達することができる。DNAおよびRNAウイルスベクター、アデノウイルスならびにアデノ随伴ウイルスのようなウイルス性ベクターを遺伝子治療ベクターとして使用することができる。裸のDNA、オリゴヌクレオチド、リポプレックスおよびポリプレックスならびにデンドリマーのような非ウイルス性ベクターが、宿主細胞に組み換えDNAを提供するための使用される方法のさらなる例である。上記に提供された遺伝子治療法は例であり、本発明に開示される方法は、上述した遺伝子治療の方法または当技術分野において使用される現在公知の遺伝子治療の方法のみに限定されるべきではない。治療用遺伝子療法は当技術分野において周知である(たとえばVerma and Weitzman, Ann. Rev. Biochem. 74:711-38 (2005)を参照)。
【0134】
b. 欠陥DEFB-126ポリペプチドの置換
遺伝子治療処置に代えて、またはそれに加えて、野生型DEFB-126タンパク質を使用してDEFB-126突然変異または欠乏性精子を再構成して、同じく、不妊症に対する、より低廉でより非侵襲的な治療手法を提供することができる。欠陥または欠乏性DEFB-126ポリペプチドは、インビボ(たとえば膣内的に)またはインビトロで置換することができる。インビトロで機能的に回復させた精子は体外受精法において使用することができる。機能性DEFB-126ポリペプチドは、天然の供給源から(たとえば、機能性DEFB-126タンパク質を産生するヒトまたは非ヒト霊長類から)精製することもできるし、組み換え的に(たとえば真核生物発現系、たとえば昆虫細胞中で)産生することもできる。DEFB-126タンパク質は、本明細書および当技術分野において記載されているように精製することができる。
【0135】
機能性DEFB-126タンパク質を、DEFB-126ポリペプチドを正常に発現することができない個体からの精子と接触させることができる。機能性DEFB-126を発現しない個体の精子への機能性DEFB-126ポリペプチドの「アドバック」が、DEFB-126活性を回復させる。顕著には、機能性DEFB-126を発現しない個体の精子を機能性DEFB-126と接触させることは、DEFB-126欠乏性精子が頸管粘液(CM)に浸透し、受胎を達成する能力を回復または改善する。可溶性野生型DEFB-126タンパク質を使用して、不妊性個体の精子の表面の非機能性DEFB-126または非発現DEFB-126を再構成または置換することができる。いくつかの態様においては、可溶性野生型DEFB-126タンパク質を使用して、不妊性個体の精子上に存在する突然変異DEFB-126タンパク質を再構成することができる。いくつかの態様においては、DEFB-126タンパク質が不妊性個体の精子に存在しない場合、可溶性野生型DEFB-126タンパク質を使用してDEFB-126活性を再構成することができる。
【0136】
カニクイザルからのDEFB-126とヒトからのDEFB-126との間の低いアミノ酸配列同一性(71%、図20)にもかかわらず、カニクイザルタンパク質をヒトにおいて使用することができる。図19に示すように、野生型DEFB-126を有するdel/delドナー男性からのヒト男性精子の処理がHAゲル中の精子浸透を改善した。そのようなものとして、カニクイザルからのDEFB-126は、治療目的のためにヒトにおいて使用される潜在性を有する。カニクイザルから得られるDEFB-126は、ヒトにおける生殖能治療に使用することができる。カニクイザルから得られるDEFB-126は、DEFB-126活性を再構成するために、ヒトにおいて治療的に使用することができる。いくつかの態様において、野生型可溶性DEFB-126はカニクイザルからのものであることができる。いくつかの態様において、欠陥精子はヒトからの精子であることができる。いくつかの態様において、DEFB-126を欠く、または突然変異DEFB-126を発現している不妊症のヒト男性の治療処置は、カニクイザルから得られる野生型DEFB-126からの精子の再構成によって治療することができる。
【0137】
再構成に有用なDEFB-126ポリペプチドまたはペプチド模倣物は、正常な生殖能を可能にすることができるものである。機能的には、DEFB-126欠乏性精子の機能を再構成または回復する方法に関して、機能性DEFB-126ポリペプチドは、天然DEFB126分子の二つの一般的性質、(1)精子の受精能獲得状態に依存して精子表面に可逆的に結合する能力、および(2)結合の間に精子表面に負電荷を付与する能力を有する。DEFB126(およびそのオルソログ)の第一の性質は、βデフェンシン「コア」またはモチーフ(たとえば上述した配列番号:46〜49)によって媒介される。βデフェンシンはアミノ配列が相当に異なることができるため、6個のシステイン残基の位置は厳密に保存され、ジスルフィド結合を介して特徴的なペプチドのフォールディングを誘発する。βデフェンシンはまた、アスパラギン酸およびグルタミン酸残基の数に対して過剰なアルギニンおよびリシン残基の存在により、高度にカチオン性である。βデフェンシンはまた、高い割合の疎水性アミノ酸残基を有する。三次元構造、高い正電荷および疎水性残基の高い割合の組み合わせが、βデフェンシンが膜表面に結合することを可能にする。DEFB126の第二の性質は、ペプチドの負荷電カルボキシル伸長によって付与される。天然分子においては、シアリル化O結合型オリゴ糖が電荷の大部分を占めるが、しかし代替構造、たとえばN結合型オリゴ糖は、ポリペプチドのカルボキシル末端を十分にアニオン性にすることができる。O結合型糖質は、セリンおよびトレオニンに結合しているが、N結合型糖質はアスパラギンに結合している。
【0138】
したがって、いくつかの態様において、DEFB-126ポリペプチドまたはポリペプチド模倣物は、コアβデフェンシンモチーフ(aa 21〜67)、たとえば、配列番号:46、配列番号:47、配列番号:48、配列番号:48または配列番号:49とで95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。オルソログ(-)(上記で整列化した)の間で共有される残基はないが、電荷もしくは極性が類似している、またはシステイン間スパンの電荷および極性の保持に貢献するアミノ酸を置換することができる。
【0139】
いくつかの態様において、DEFB-126ポリペプチドまたはポリペプチド模倣物は、結合の間に精子表面に負電荷を付与するのに十分にアニオン性である、たとえば、十分な数のN結合型糖質、たとえばシアル酸部分を有するカルボキシル伸長モチーフ(たとえばaa 68〜121、68〜134または68〜181)を含む。DEFB126オルソログのカルボキシル伸長は、配列および長さの両方が相当に異なる。類似点は、セリンおよびトレオニン残基の発生量(カルボキシル領域中の全残基の約40%)ならびに隣接するセリンおよびトレオニン残基におけるグリコシル化をより起こりやすくするプロリンおよびアルギニン残基を含む。また、すべてのオルソログが、カルボキシル伸長のグリコシル化領域を進める第七のシステインを含有する(括弧内に示す)。括弧内の領域が天然分子の一般的性質に貢献するかどうかは明らかではなく、したがって、この配列セグメントは、場合によっては、所望により、機能性DEFB-126ポリペプチドに含められることもできるし、欠失されることもできる。以下は、マウス配列に基づくCOOH末端構造であり、最長のオルソログである。より短い構造(カニクイザルおよびヒトDEFB-126配列に基づく)、たとえばaa 68〜121、aa 68〜134またはaa 68〜181もまた、結合の間に精子表面に負電荷を付与するのに十分にアニオン性である、たとえば、十分な数のN結合型糖質、たとえばシアル酸部分を有するならば、機能性である。
【0140】
いくつかの態様において、機能性DEFB-126ポリペプチドまたはポリペプチド模倣物は、たとえば同じ種または異なる種からのデフェンシンコアモチーフおよびデフェンシンカルボキシル伸長モチーフを含む。いくつかの態様において、機能性DEFB-126ポリペプチドまたはポリペプチド模倣物は、デフェンシンコアモチーフ、ならびにポリペプチドが結合の間に精子表面に負電荷を付与するのに十分にアニオン性になるようなO結合型および/またはN結合型グリコシル化を可能にする一つまたは複数の縦列反復または配列セグメント(たとえばムチン反復配列)を含むカルボキシモチーフを含む。いくつかの態様において、機能性DEFB-126ポリペプチドまたはポリペプチド模倣物は、配列番号:46、47、48または49のデフェンシンコアモチーフ、および、配列番号:50のデフェンシンカルボキシル伸長モチーフまたは結合の間に精子表面に負電荷を付与するのに十分なアニオン電荷を有する配列番号:50のより短い長さ(たとえばaa 68〜121、68〜134または68〜181)を含む。
【0141】
いくつかの態様において、正常な生殖能を可能にするDEFB-126ポリペプチドは、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11および配列番号:12から選択される野生型DEFB-126ポリペプチドに対して少なくとも95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を共有する。いくつかの態様において、正常な生殖能を可能にするDEFB-126ポリペプチドは、配列番号:6の野生型DEFB-126ポリペプチドに対して少なくとも95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を共有する。いくつかの態様において、正常な生殖能を可能にするDEFB-126ポリペプチドは、配列番号:12の野生型DEFB-126ポリペプチドに対して少なくとも95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を共有する。
【0142】
本組成物および方法において有用である機能性DEFB-126ポリペプチドおよびポリペプチド模倣物は、CMまたはHAゲルに浸透するDEFB-126欠乏性精子試料の機能を回復させ、本明細書に記載されるようなHA/CMゲル浸透アッセイ法において試験することができる。
【0143】
DEFB-126「アドバック」アッセイ法
a. 可溶性DEFB-126の調製
DEFB-126を欠く、または突然変異体を含む精子は、頸管粘液(CM)浸透に関して欠陥があり、その結果、不妊症を生じさせる。DEFB-126をアドバックして、DEFB-126欠陥または欠乏性精子に対して精子機能性を再構成し(すなわち、受胎を達成する能力、たとえば頸管粘液(CM)浸透能力の再構成)、不妊症男性を潜在的に生殖可能にすることができる。
【0144】
DEFB-126可溶性タンパク質は、当業者に周知の任意の方法によって得ることができる。タンパク質調製のための一般的な方法は十分に記載されている(たとえば一般に、Sambrook et al. Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY (2001)およびAusubel, ed., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley Interscience, (1990-2008)を参照)。
【0145】
可溶性DEFB-126を含有する溶液の具体的な調製方法は十分に記載されている(Tollner et al., (2004))。簡潔にいうと、精子試料を80%Percollの3.5mlカラムに通して洗浄し、再懸濁させ、Tollner et al., (2004)に記載されているようにDEFB-126タンパク質濃度を測定し、エネルギー基質およびBSAなしでDPBS 10ml中に再懸濁させた。
【0146】
b. アドバック/再構成アッセイ法
タンパク質アドバック実験は当技術分野において一般的かつ周知であり、十分に記載されている(Tollner et al., (2004, 2008a,b))。DEFB-126を、DEFB-126欠乏性の精子および突然変異または非機能性DEFB-126を有する精子に付加することができる。DEFB-126は、たとえば個体における非発現性対立遺伝子の存在のせいで、精子に存在しないこともある。DEFB-126は、たとえば、精子表面からDEFB-126ポリペプチドを取り出すための当技術分野において公知であるACTを使用して、精子から取り出すことができる(Tollner et al., (2004))。
【0147】
興味深いことに、カニクイザルからのDEFB-126がヒトタンパク質に対して71%しか相同性でないという事実にもかかわらず(図20)、カニクイザルからのDEFB-126を使用するヒト精子の再構成が、ヒト精子の機能性を改善するのに効果的であった(実施例9および図19)。いくつかの態様においては、ヒト精子機能を再構成するために、カニクイザルまたは別の非ヒト霊長類からの野生型可溶性DEFB-126をアドバック実験に使用することができる。
【0148】
c. 頸管粘液またはHA浸透ゲル
頸管粘液(CM)ゲルは、周排卵期雌性カニクイザルから頸管粘液を採取することによって調製することができる。採取ののち、CMを、精子運動率実験における使用のために顕微鏡スライド上に調合することができる。このような実験は当技術分野において十分に記載されている(Tollner et al., (2008b))。
【0149】
精子機能のインビトロ試験のために、ヒアルロン酸(HA)で構成された媒体を使用してCMを模倣した。CMは、子宮頸部で生成される少なくとも五つの別々のムチン分子に由来する複雑な生物物理学的性質を有するが(Gipson et al., 1997; Lagow et al., 1999)、HAから調製された溶液は、特に粘度および電荷に関して粘液の性質のいくつかを共有する(Gatej et al., 2005)。HAゲルは、ヒト精子による浸透性においてCMに非常に類似している(Tang et al., 1999、Neuwinger et al., 1991; Aitken et al., 1992)。ヒトCMの限られた利用性および高い変異性のため、精子機能の臨床評価においてはHAゲルが粘液代用物として使用されている(Aitken, 2006)。ビデオ分析を実施してHA浸透ゲル中の個々の精子の運動を検査することができる(たとえばTollner et al., (2008)およびCherr et al., (1999)を参照)。
【0150】
CMまたはHAゲルは、分析のためのチャンバ中に調合することができる。これらのチャンバは、精子浸透能力のビデオ顕微鏡分析を可能し、当技術分野において記載されている(Tollner et al 2008b)。CMまたはHAゲルを含む浸透チャンバの概略図が図14に示されている。
【0151】
浸透チャンバは、個体から直接得られた精子、タンパク質を除去するために前処理された精子またはタンパク質がアドバックされた精子の浸透能力の分析のために使用することができる。いくつかの態様において、精子は突然変異DEFB-126を含有することができる。いくつかの態様において、精子は、DEFB-126を除去するために前処理されることができる。いくつかの態様において、精子は、DEFB-126を除去するために前処理されたのち、DEFB-126をアドバックされることもできる。
【0152】
CM中の効率的な精子移動が生殖能にとって重要であると記載されている。事実、DEFB-126の除去が、精子が頸管粘液(CM)に浸透する(またはその中で効率的に移動する)能力を低下させることがわかっている。上記のCMおよびHA浸透チャンバはさらに、個体から直接得られた精子の機能を検査するための診断目的にも使用することができる(たとえばTollner, et al., 2008bならびに実施例8および表2を参照)。
【0153】
V. 機能性DEFB-126ポリペプチドを含む組成物
本発明はさらに、生理学的に許容可能な担体中に機能性DEFB-126ポリペプチドを含む組成物を提供する。一つの態様において、薬学的組成物は、受胎を達成するには不十分なDEFB-126しか発現していないヒト精子の機能性を回復または改善する際に使用するための、本明細書に記載されるような機能性非ヒトDEFB-126ポリペプチドまたはDEFB-126ポリペプチド模倣物を含む。
【0154】
本組成物において有用なDEFB-126ポリペプチドまたはペプチド模倣物は、正常な生殖能を可能にすることができるものである。機能性DEFB-126ポリペプチドは、天然DEFB126分子の二つの一般的性質、(1)精子の受精能獲得状態に依存して精子表面に可逆的に結合する能力、および(2)結合の間に精子表面に負電荷を付与する能力を有する。
【0155】
したがって、いくつかの態様において、本組成物における機能性DEFB-126ポリペプチドまたはポリペプチド模倣物は、コアβデフェンシンモチーフ(aa 21〜67)、たとえば、配列番号:46、配列番号:47、配列番号:48、配列番号:48または配列番号:49とで95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。オルソログ(-)(上記で整列化した)の間で共有される残基がない場合、電荷もしくは極性が類似する、またはシステイン間スパンの電荷および極性の保持に貢献するアミノ酸を代用することができる。
【0156】
いくつかの態様において、DEFB-126ポリペプチドまたはポリペプチド模倣物は、結合の間に精子表面に負電荷を付与するのに十分にアニオン性である、たとえば十分な数のN結合型糖質、たとえばシアル酸部分を有するカルボキシル伸長モチーフ(たとえばaa 68〜121、68〜134または68〜181)を含む。
【0157】
いくつかの態様において、機能性DEFB-126ポリペプチドまたはポリペプチド模倣物は、デフェンシンコアモチーフおよびデフェンシンカルボキシル伸長モチーフを含む。いくつかの態様において、機能性DEFB-126ポリペプチドまたはポリペプチド模倣物は、デフェンシンコアモチーフ、ならびにポリペプチドが結合の間に精子表面に負電荷を付与するのに十分にアニオン性になるようなO結合型および/またはN結合型グリコシル化を可能にする一つまたは複数の縦列反復または配列セグメント(たとえばムチン反復配列)を含むカルボキシモチーフを含む。いくつかの態様において、機能性DEFB-126ポリペプチドまたはポリペプチド模倣物は、配列番号:46、47、48または49のデフェンシンコアモチーフ、および、配列番号:50のデフェンシンカルボキシル伸長モチーフまたは結合の間に精子表面に負電荷を付与するのに十分なアニオン電荷を有する配列番号:50のより短い長さ(たとえばaa 68〜121、68〜134または68〜181)を含む。
【0158】
一つの態様において、機能性DEFB-126ポリペプチドは、局所投与のために製剤化される薬学的組成物、たとえばクリーム、ペースト剤、ゲル、泡沫、軟膏、スプレー、潤滑剤、エマルションまたは懸濁液に調製される。いくつかの態様において、局所投与のために製剤化された薬学的組成物は、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11および配列番号:12から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一である機能性DEFB-126ポリペプチドを含む。
【0159】
局所製剤において、通常、機能性DEFB-126ポリペプチドは、約0.1、0.2、0.5、1.0または2.0重量%で含まれるが、最大で製剤全体の5、10、15または20重量%またはそれ以上で含まれることもできる。機能性DEFB-126ポリペプチドは、一つまたは複数の薬学的に許容可能な担体とともに製剤化される。たとえば局所適用の場合、薬学的に許容可能な担体はさらに、有機溶媒、乳化剤、ゲル化剤、加湿剤、安定剤、他の界面活性剤、湿潤剤、保存剤、徐放剤および少量の保湿剤、金属イオン封鎖剤、染料、香料および局所投与のための薬学的組成物に一般に使用される他の成分を含むことができる。局所投与のための固形剤形は、坐剤、粉剤および顆粒剤を含む。固形剤形において、組成物は、少なくとも一つの不活性希釈剤、たとえばショ糖、乳糖またはデンプンと混合されることができ、さらに、潤滑剤、緩衝剤および当業者には周知の他の成分を含むことができる。
【0160】
膣投与に適した機能性DEFB-126ポリペプチド製剤は、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、泡沫またはスプレーフォーミュラとして提示されることができる。
【実施例】
【0161】
以下の実施例は、請求項に係わる発明を例示するために提供されるものであり、それを限定するためのものではない。
【0162】
実施例1:DEFB-126欠失多型は有意に変化したペプチド構造を有する
原核生物細胞系における組み換え発現のためにヒトDEFB-126をクローン化するとき、DEFB-126cDNAにおける配列変異が識別された。この特定のDEFB-126欠失多型は、ヒト集団において非常に一般的であると思われる。変異体DEFB-126のアミノ酸配列は、構造および機能の甚大な変化を生じさせる、有意に変化し、伸長したカルボキシル末端の糖質含有ドメインを有する。さらには、配列変異を有する精巣上体標本は、野生型精巣上体組織に比較して顕著に低いDEFB-126の発現を有する。
【0163】
DEFB-126変異体は、DEFB-126のオープンリーディングフレーム中のフレームシフトを生じさせる2ヌクレオチド省略(欠失)を有するものであった(図4A)。この配列変異はNCBIゲノムDNA配列データベース中で確認された。中国人男性コホートから無作為に選択された465名の個体(S. Venners & Xiping Xu(U. Chicago)と共同)および英国の男性集団からの74名の個体を遺伝子型決定した(図4B)。異常なタンパク質をコードするmRNAは、多くの場合、より急速な分解のせいで、低めの定常状態濃度で存在する。したがって、定量的RT-PCR(qPCR)を使用して精巣上体組織中のDEFB-126mRNAを分析した。配列変異体を有する精巣上体標本中のDEFB-126mRNAのレベルの低下を分析した(図4C)。さらには、変異体DEFB-126のアミノ酸配列は、そのカルボキシル末端の糖質含有ドメインが有意に変化している(図4D)。
【0164】
実施例2:生殖能が低下した男性におけるDEFB-126欠失多型
中国、安徽省(Anhui Province)の農村において妻とともに人口ベースの予測的生殖能・妊娠コホート研究に参加した638名の男性においてDEFB-126欠失多型を遺伝子型決定した。2003年7月から2005年2月の間の募集時、全員が最近結婚したところであり、登録時、妊娠中である女性はいなかった。生理不順および骨盤炎症をはじめとする女性側不妊要因に関して(n=81)、また、サブセット分析においては、慢性的細菌性前立腺炎の証拠をはじめとする男性側要因に関して(精液pH>8.0、n=110)、夫婦をこの分析から除外した。登録前1年以内に経口避妊薬またはIUDを使用したことのある59組の夫婦を除外した。追跡調査できなくなったさらに39組の夫婦に関してデータが不明であった。この分析は、残り355組の夫婦を含むものである。
【0165】
21ヶ月以内の妊娠の相対的確率に関し、夫のDEFB-126遺伝子型にしたがって、データをロジスティック回帰によって分析した。分析は、del/del遺伝子型を有する男性は有意に生殖能が低いということを示した(OR=O.5、p=0.03)表1。モデルは、DEFB-126遺伝子型と妊娠との関係に関して、精液pHのレベル内では独立したパラメータを可能にしたが、しかしモデル中のすべての他のパラメータは集団全体で評価した。夫の年齢、妻の体重指数および精液採取前の夫の性行為禁断日数に関してロジスティック回帰パラメータを調節した。α=0.20としたこのモデルにおいては、夫の体重指数と喫煙および妻の年齢のいずれも統計的に有意ではなかった。同じモデルを使用して精子数のデータ(>2000万個/mlまたは<2000万個/ml、世界保健機構(World Health Organization)基準値)を分析すると、21ヶ月以内の妊娠との関連は見られなかった。この予測的コホートにおいて、DEFB-126遺伝子型が生殖能と関連していたが、男性不妊症の従来の尺度である精子数は関連していなかった。
【0166】
(表1)相対的妊娠確率のロジスティック回帰パラメータ
【0167】
実施例3:DEFB-126欠失多型を有するドナーからの精子はO結合に関連する表面グリコシル化が減少している
wtおよび変異体遺伝子型を有するドナーからのヒト精子を、O結合型グリカンに特異的な構造であるガラクトース-GalNAc-セリン(またはトレオニン)を選択的に拘束するレクチンマッシュルーム(ABA)で標識した。DEFB126変異体(del/del)を有するドナーからの精子は、野生型ドナー(wt/wt、wt/del)に比べてABA関連蛍光の有意な低下を示した。ヒトDEFB126のアミノ酸配列分析が、O結合型グリコシル化のための少なくとも20の部位を識別する。ABAのための結合部位の有意な減少は、DEFB126が、DEFB-126欠失多型を有する男性からの精子の表面に吸着されない、またはそのオリゴ糖の、全部ではないとしても大部分を欠いていることのいずれかを示唆する。
【0168】
ヒト精子をノイラミニダーゼで処理し、パラホルムアルデヒド/グルテルアルデヒドで処理し、FITCコンジュゲートしたレクチンABAとともにインキュベートした。DEFB126野生型ドナー(wt/wtおよびwt/del)からの精子とDEFB126遺伝子変異体のみを有するドナー(del/del)からの精子との間に蛍光における違いを明らかに見ることができる(図6A)。同じドナーからのレクチン標識された精子の強度をMetaMorph画像解析ソフトウェアで定量化した。36の精子/ドナーのデジタル画像をすべての処理に関して同じレベルに閾値設定し、平均画素強度を測定した(図6B)。
【0169】
実施例4:精子表面オリゴ糖の微細構造特性決定
精製されたDEFB126から切除されたO結合型オリゴ糖の質量スペクトルは、糖タンパク質の高度なアニオン性と合致する発見として、オリゴマーが高度にシアリル化されていることを示唆する。ヒト精子をノイラミニダーゼで処理し、パラホルムアルデヒド/グルタルアルデヒドで処理し、FITCコンジュゲートしたレクチンABAとともにインキュベートした。DEFB126野生型ドナー(wt/wtおよびwt/del)からの精子とDEFB126遺伝子変異体のみを有するドナー(del/del)からの精子との間に蛍光における違いを明らかに見ることができる(図7A)。同じドナーからのレクチン標識された精子の強度をMetaMorph画像解析ソフトウェアで定量化した。36の精子/ドナーのデジタル画像をすべての処理に関して同じレベルに閾値設定し、平均画素強度を測定した(図7B)。予備的結果のためのタンデム型MSを実施するには不十分な量のオリゴ糖しかなかった。しかし、タンデム型MSによる構造解明および単糖組成分析を可能にする、本明細書で提案される後続の実験においては、より多くのオリゴ糖が得られる。
【0170】
このタンパク質の相対的に小さなサイズは、無傷の糖タンパク質または主要なグリコシル化トリプシンペプチドを質量分析法によって直接精査することができるいわゆる「トップダウン」分析を適用可能にする。図8Aには、脱グリコシル化形態として発現したもう一つのデフェンシン(Lebrilla, Bevins, et al.、未公表)ペプチドの質量スペクトルが示されている。その構成成分グリカンが無傷である状態で得られる同じデフェンシンペプチドは、別々の単糖質量によって異なる一連のピークとしてグリカン構造の不均一性を示す。図8Cのはめ込み逆重畳スペクトルを参照。無傷の糖ペプチドをタンデム型MSで精査することにより、グリカン構成成分および部位特異的グリコシル化の両方を得ることができる。
【0171】
オリゴ糖をDEFB-126から放出させ、MSで試験した。分析のための試料を得るために、精製されたタンパク質をNaBH4/NaOHで処理してO結合型オリゴ糖を放出させた。クリーンアップのために、試料を多孔性黒鉛状炭素カートリッジに通してオリゴ糖を回収し、分離した。MALDI FTMS機器で得られた質量スペクトルは、オリゴ糖に対応する多数の特徴を示す。質量単位162個分だけ離間したピークが、ヘキソース残基を有するオリゴマーに対応する。たとえば990〜1056のピークの群は、シアル酸を含有するオリゴマーの存在を示す。この種は、多数のNa+イオンを含有するいくつかのシグナルにかけて分布している。
【0172】
実施例5:DEFB-126は精巣上体管中に分泌され、精子表面に吸着される
精巣上体体中でのDEFB-126の発現は、哺乳動物精子成熟の保存された特徴であると思われる。精巣上体体末端部中のDEFB-126の発現が以前にカニクイザル(Perry, et al., Biol. Reprod. 61:965-972 (1999))およびヒト(Rodriguez-Jimenez et al., Genomics 81:175-83 (2003))において記載されている。DEFB126の精巣上体体発現がカニクイザルにおいて立証された(図9A、Yudin et al., Biol. Reprod. 69:1118-1128 (2003))。DEFB-126オルソログ(Defb22)の精巣上体体発現がマウスにおいて立証された(図9BおよびC)。DEFB126(およびマウスオルソログDefb22)は、尾部への移動中に精子表面全体に吸着されるようになる。
【0173】
DEFB-126に対する抗体は、雄性カニクイザル生殖組織のウエスタンブロット上、31〜36kDaで移動する重度にグリコシル化されたDEFB-126を検出する(図9A)。DEFB126のマウスオルソログに対する抗体も同様に、マウス精巣上体中に糖ペプチドを検出した(図9B)。サルおよびマウスの両方において、グリコシル化デフェンシン(それぞれDEFB126/Defb22)の発現は精巣上体体中で開始すると思われ、デフェンシンは精子と会合したままになる。Defb22抗原は、マウス精巣上体の頭および体領域のパラフィン切片上に限局化した(図9C)。パパニコラウ(「PAP」、E)で染色すると、様々な分割領域が明らかになった。精巣上体体基部中、精巣上体の内腔は抗体で染色されなかったが、しかし管の周縁は抗Defb22Igで重度に標識された。精子が精巣上体体の末端部分に進むにつれ、内腔は精子で満たされ、それらの精子は抗Defb22Igで重度に標識された(図9C、右下)。DEFB126およびDefb22に特異的な抗体は、それぞれ、洗浄されたカニクイザルおよびマウス精子尾部上のグリコシル化デフェンシンを認識する。両種において、デフェンシンは精子表面全体に分布している。
【0174】
実施例6:DEFB-126表面被膜は雌性生殖路中の精子輸送の様々な段階を促進する
DEFB-126は、交尾した雌性カニクイザルの上生殖路から回収されたカニクイザル精子上に保持される(Tollner et al, Hum. Reprod. 23:2523-34 (2008))。カニクイザル精子表面上のDEFB-126は、この部位への精子輸送中の多数の主要イベントにとってきわめて重要であると思われる。抗DEFB-126Igで処理されたカニクイザル精子は、周排卵期頸管粘液に浸透する能力の大幅な低下を示した(図10A)。阻害の相対的大きさは、DEFB-126を除去するために精子を処理した場合に類似していた(図9B; Yudin et al., Biol. Reprod. 69:1118-28 (2003))。DEFB126の「アドバック」がカニクイザル精子の粘液浸透能力を完全に回復させる(図10B)。ノイラミニダーゼによる精子の処理(末端シアル酸残基を除去する)がDEFB126の正味負電荷を急激に低下させ(Yudin et al., Biol. Reprod. 73:1243-1252 (2005))、粘液浸透を有意に阻害する。図10C。同様に、ポリ-L-リシンの添加によってカニクイザル精子の負表面電荷が中和されると、粘液浸透は阻害される。図10D。さらには、DEFB-126の損失は、多数の精子特異的表面タンパク質を抗体認識に暴露し(Yudin et al, Biol. Reprod. 73(6):1243-52 (2005))、卵管上皮に結合する精子の親和力を低下させる(Tollner et al., Biol. Reprod. 78:400-412 (2008))。それにもかかわらず、精子頭部からのDEFB126の損失は、精子が透明帯に結合するためには不可欠である(Tollner et al., Mol. Reprod. Dev. 69:325-37 (2004))。
【0175】
精子を、DEFB-126に特異的な抗体(図10A)、DEFB-126を取り出すためのアクチベータ化合物(「放出」)(図10B)、ノイラミニダーゼ(図10C)またはポリ-L-リシン(PL、D)で処理した。処理ののち、精子を、周排卵期CMを含有するスライドチャンバに入れた。2分後、精子が精子懸濁液-CM界面から2.75mmのところでビデオ視野に入ったとき、精子を連続4分間録画した。ビデオ視野中の精子の数を1分間隔でカウントした。図10Bに示す実験の場合、アクチベータ条件から取り出したのち、これらの精子のアリコートをDEFB-126で処理した(アドバック)。3〜4匹の異なる雄性カニクイザルからの精子を用いて実験を実施した。文字(a、b)は、時間間隔内の処理の間の平均精子数における有意な差(p<0.05)を示す。
【0176】
実施例7:del/delドナーからの精子は周排卵期頸管粘液(CM)を模倣するゲルに浸透する能力の低下を示す。
精子機能のインビトロ試験のために、HAで構成された媒体を使用してCMを模倣した。CMは、子宮頸部で生成される少なくとも五つの別々のムチン分子に由来する複雑な生物物理学的性質を有するが(Gipson et al., 1997、Lagow et al., 1999)、HAから調製された溶液は、特に粘度および電荷に関して粘液の性質のいくつかを共有する(Gatej et al., 2005))。HAゲルは、ヒト精子による浸透性においてCMに非常に似ている(Tang et al., (1999); Neuwinger et al., (1991); Aitken et al., (1992))。ヒトCMの限られた利用性および高い変異性のため、精子機能の臨床評価においてはHAゲルが粘液代用物として使用されている(Aitken, (2006))。
【0177】
ヒアルロン酸(HA)ゲルに浸透するヒト精子の能力の評価が図14および15に示されている。図14は、頸管粘液(CM)またはHAゲルの精子浸透の図を提供する。CMまたはHAを含有する浸透チャンバを顕微鏡ステージウォーマ上で事前に暖め、Tollner et al.(2008b)によって記載されているようにビデオ顕微鏡機器でプレキューした。精子を、HEPES緩衝精子媒体中で洗浄し、スライドチャンバに入れた。2分後、精子が精子懸濁液-CM(またはHAゲル)界面から2.75mmのところでビデオ視野に入ったとき、精子を連続4分間録画した。ビデオ録画から、ビデオ視野中の精子の数を1分間隔でカウントした。
【0178】
図15は、HAゲルのヒト精子浸透を説明するデータを提供する。DEFB126多型に関して遺伝子型決定されたドナーからの精子をHA浸透実験に使用した(A)。HAゲルは、3%BSAで補足されたHEPES緩衝BWW媒体1mlあたり5mgの精製ヒアルロン酸(220kDa分画)で構成されたものであった。生殖能コホート実験におけるように、wt/wtおよびwt/delドナーからの精子に関する結果を平均化し(wt、n=8)、del/delドナーからの精子の平均応答(del、n=6)とで比較した。精子懸濁液を平均曲線速度(VCL)に関してCASAによって分析した(B)。精子懸濁液のスメアを付けたスライドを「Pap」染色し、WHO '89精子形態法にしたがって分析し、全平均%正常形態(%正常)として報告した(C)。A〜Cで報告された観察結果を対にし、これらは、各ドナーからの二ないし三回の射精(サブ試料)で平均化されたデータを表す。データを平均±SEMとして報告した。十字記号(+)および星印(*)は、それぞれ、1ウェイANOVAによって決定された遺伝子型の間での平均精子数におけるp<0.01およびp<0.005における有意な差を示す。wt DEFB126遺伝子を有するドナー(wt=wt/wt+wt/del)からの精子および遺伝子変異体のみを有するドナー(del/del=del)からの精子の間でABAレクチン標識結果を平均化した(D)。レクチン実験は、より最近募集されたドナーを含むように拡大され(付録の図2)、元のデータセットに関して記載したように、標識強度に関してMetamorphによって分析される。
【0179】
DEFB126遺伝子変異体に関して遺伝子型決定された同じ14名のドナーからのヒト精子を、HAゲルに浸透する能力に関して試験した(図15)。DEFB126多型に関してホモ接合性であったドナー(del/del=「del」)からの精子は、野生型の少なくとも一つのコピーを有する男性(wt/wtおよびwt/del=「wt」)からの精子に比較して有意に低下したHA浸透能力を示した(図15A)。平均曲線速度(VCL)によって推定される前進運動率および浸透アッセイ法で使用された精子の形態は、del男性とwt男性との間で有意には異ならず、したがって、HA中の精子性能の予測子として不十分であると思われた(図15Bおよび15C)。対照的に、DEFB126遺伝子型およびレクチン標識(図15D)は、HA浸透アッセイ法の結果と強く合致した。6名のdelドナー全員の精子が、8名のwtドナーからの精子に比較して、マッシュルーム(ABA)レクチンによる表面標識を顕著に低下させ、DEFB126遺伝子多型が精子多糖外被中のO結合型オリゴ糖の損失または減少を生じさせるということを示唆した(図16)。
【0180】
実施例8:ドナーの生殖能はWHO正常精液基準値よりも変異体遺伝子型決定および精子レクチン標識によって正確に予測される。
レクチンおよびHA浸透実験のために遺伝子型決定された14名のドナーのうち、10名は、パートナとで受胎を試みたことがない、または非意図的に受胎を達成したことがない学生である。3名のドナー(2人はwt/del、1人はwt/wt)は、自然な手段によって子供をもうけており、1人のドナー(del/del)は、ART(Assisted Reproductive Technologies)プログラムにおける臨床治療介入後に子供をもうけていた。正常精液パラメータのWHO基準値(表2)は、ドナー#10(D10、del/del)が正常値を有し、生殖能ありと分類されるであろうことを示す。実際には、D10は不妊症である。このドナーおよびその配偶者(いずれも、臨床精密検査の時点では検出可能な不妊問題を有しなかった)は、数年にわたり受胎を試み、6サイクルの子宮内精子注入法(IUI)ののち、はじめて受胎した。対照的に、ドナー#12(D12、wt/wt)は、基準値未満の精子形態を有し、非常に低い精子数を有する。WHO標準による、このドナーは、不妊性または低受胎性である可能性が非常に高いと分類されるであろう。D12およびそのパートナは、避妊の使用における失敗の間に自発的に受胎した。表2は、一般に受け入れられている診断基準が不妊症を予測することができない状況を強調している。D10およびD12のいずれの場合でも、遺伝子型決定およびレクチン標識の結果(図16)が精子機能の試験(図17)および実際の生殖能状態と強く合致している。
【0181】
(表2)WHO「正常」精液値
【0182】
実施例9:DEFB126欠失多型のスクリーニング
DEFB126多型に関する遺伝子型決定は、不妊症プログラムにおいて実行される一連の標準診断試験の一つとして有用である。不妊症評価の早期において患者のDEFB126遺伝子型を確証することにより、臨床医は、方向性のある治療介入、たとえばIUIおよびIVFへの速やかな移行を正当化するための科学的証拠を得ることができ、それにより、男女カップルにとって、長引く精密検査の時間および費用を節約する。
【0183】
潜在的な恩典の明確な例が、ドナーD10の原因不明の不妊症のケースによって実証されている(表2、図16および17)。図16は、図7に記載されているようなFITCコンジュゲートしたレクチンABAで標識されたヒト精子を説明するデータを提供する。8名のDEFB126野生型ドナー(wt/wtおよびwt/del)からの精子とDEFB126遺伝子変異体のみを有する6名のドナー(del/del)からの精子との間に蛍光における違いを明らかに見ることができる。ドナーD10からの精子は非常に低いレベルの結合レクチンを示すが、ドナーD12からの精子は明るくかつ均一に標識されている。図17は、D10およびD12からの精子によるHA浸透を説明するデータを提供する。浸透実験は、図14および15に記載するように実施した。del男性(ピンク)およびwt男性(青)からの精子浸透値のプロットが図15から再現されている。D10(淡いピンク)およびD12(淡い青)からの精子のHA浸透が、それぞれdelおよびwt男性の平均値に関して示されている。
【0184】
完全な不妊症精密検査の間にD10またはそのパートナのいずれにおいても不妊症問題は識別されなかった。生殖能評価プロセスの早期にこの男性が遺伝子型決定されていたならば、この男女カップルはすぐにIUIに進み、18ヶ月から2年にも及ぶ失敗を避けることができたであろう。
【0185】
DEFB126多型の検出はまた、精子運動率、形態および数のような精液性質の通例の尺度の予後診断力を改善する。現在、これらの精液パラメータは、男性の生殖能力と相関されているが、男性不妊症の予測子として信頼して使用されるための特異性を欠く(Guzick and Overstreet et al., (2001); Ombelet et al., (1997))。本発明者らのデータは、機能性DEFB126精子被覆タンパク質の欠如が、他ならば従来の臨床尺度に基づく生殖能状態の明確な解釈であるかもしれない解釈を曇らせる、重要であるがこれまで説明されていない低受胎性の要因であることを示唆する(表2)。ドナーD10(WHOカットオフ値よりもかなり高い)およびD12(WHOカットオフ値よりもかなり低い)に関する精子密度の尺度のみでは生殖能の予測子として不十分であるが、以下の遺伝子型決定が、特定のDEFB126遺伝子型を有する男性の生殖能力を予測するのに役立つことができる。
【0186】
実施例10:精液中のDEFB126糖タンパク質の検出
レクチンおよび/または抗体を、精液試料中のDEFB126糖タンパク質の検出のための家庭用診断キットに用いられる利用可能な技術とともに使用することができる。本発明者らのデータは、del/delドナーからの精子が、野生型遺伝子を有するドナーからの精子よりも有意に少ないFITC-ABA標識を有するということを示す(図8および9)。標識強度における違いは、DEFB126「陽性」男性とDEFB126「陰性」男性とを区別することができる閾値の決定にとって十分に大きいと思われる。本発明者らは、以前、カニクイザルにおいて、レクチンABAおよび麦芽アグルチニン(WGA)が、無傷の(かつ生育可能な)精子およびウエスタンブロットにおいてDEFB126を強力に認識するということを実証した(Yudin et al., (2005))。ABAによる標識は、生きている精子および固定された精子で実施することができるステップとして、精子がはじめにシアリダーゼによって処理されることを要する(Yudin et al., (2005); Tollner et al., (2008))。
【0187】
しかし、レクチンは、精子多糖外被の糖脂質および他の糖タンパク質と潜在的に会合した同じクラスのオリゴ糖に結合する。より大きな特異性が求められるならば、抗体が保証されることができる。ラテラルフロー免疫クロマトグラフィー家庭用試験装置を使用して精子濃度を推定するために、精子特異的タンパク質に対する抗体が使用されている("Sperm Check"; Klotz et al., 2008)。DEFB126の家庭での検出のための一般的スキームとして、精液試料の小さな部分を、DEFB126を放出するための低い%の洗剤を含有する生理食塩水に加える。可溶化されたタンパク質が試験パッド上を流れるとき、それが、金標識された抗DEFB126抗体のゾーンを水和させる。DEFB126-抗体複合体が、パッドの固相に付着した二次抗体によって試験ラインにおいて捕獲され、濃縮される。本発明者らはまた、レクチンを「精子捕獲」戦略として用いることができるレクチン-DEFB126-抗体「サンドイッチ」手法が試験キットに適用可能であると想像する。固体支持体に結合したABAまたはWGAがDEFB126上のオリゴ糖を介して精子を拘束するであろう。DEFB126は、ホスホリパーゼCまたは高い塩およびpHの条件を用いる処理によって精子表面から放出されるであろう(Yudin et al., (2003); Tollner et al., (2009))。DEFB126の比色検出の場合には、ビオチンまたは酵素にコンジュゲートしたモノ−またはポリクロナール抗体が固相に適用されるであろう。類似したサンドイッチアッセイ法が、モノクロナール抗体による、膵がんに伴う血清ムチンの検出の感度および特異性を大幅に高める(Neil Parker, (1998))。
【0188】
実施例11:DEFB126を精子表面に「アドバック」して精子機能を回復させることができる。
DEFB126は、精子から選択的に放出させ、精製し、濃縮し、そして、受精能獲得条件におけるインキュベーションののち、表面被膜を失った精子の表面にアドバックすることができる(図18、Tollner et al., (2004))。DEFB126を精子から放出させるための2mMカフェインによる処理後のカニクイザル精子の頭部の免疫蛍光標識強度およびDEFB126を含有するアドバック溶液の添加後のカフェイン処理された精子の評価。カフェインはDEFB126を頭部および中片から除去するが、受精能獲得を誘発することはない。抗DEFB126Igで標識された精子頭部の免疫蛍光画像は、すべての処理に関して同じ閾値レベルにあり、精子頭部ごとに、定量的画素解析を使用して平均画素面積およびグレー値を決定した。バーの高さが、処理された精子頭部の平均画素強度を表し、エラーバーがSEMを表す。カラムの上の文字(a、b)は処理の間の有意な差を示す(p≦0.05)(図は、Tollner, (2004)を修正したもの)。
【0189】
DEFB126の「アドバック」はカニクイザル精子の機能を完全に回復させて(Tollner et al., (2004; 2008a,b)、図18)、精子膜に再挿入されたときのその向きが、はじめに精子表面に吸着されたときと同じであることを示唆する。
【0190】
カニクイザルからの精製DEFB126が、del/del男性からのヒト精子に付加されると、これらのDEFB126欠乏性精子のHA浸透能力を高めるということが本明細書において最近実証されている。「補足された」精子の浸透速度はwt男性からの精子の浸透速度に似ている(図19A、B)。del/delドナーからの精子を約5uMのcDEFB126とともに37℃で1時間インキュベートした(オレンジ)。対照精子には等しい量の生理食塩水溶媒を加えた(ピンク)。精子を遠心分離によって洗浄し、BWW媒体中に再懸濁させ、図14および15で説明するようにHA浸透チャンバに導入した。1人のdelドナーからの精子は浸透速度の倍増を示し、2人の他のドナー(そのうち1人はD10)からの精子は浸透速度が四倍になった。図19Bは、4倍増応答を示した2人のドナーからの精子の平均化プロットを示す。
【0191】
実施例12:欠乏性精子への組み換えDEFB126の付加
本発明者らのデータは、Del/Delドナーからのヒト精子の表面へのカニクイザルからのDEFB126の付加が、これらの欠乏性精子の機能のレベルを、野生型遺伝子を有する男性からの精子に関して認められるレベルまで高めるということを実証する(図18)。この発見は非常に刺激的であり、非常に予想外である。このデータが暗示するところは明白である。本発明者らは、Del/Del遺伝子型を有する男性またはDEFB126精子被覆タンパク質を欠損していると診断される男性に対し、治療を提供することができる。より費用効果的な臨床医療介入を求める低受胎性男女カップルの場合、グリコシル化組み換えタンパク質を精液試料に加えたのち、人工的膣内精液注入を実施して「del/del」精子の生殖能を高めることができる。最終的に、組み換えペプチドは、精子表面へのペプチドの吸着を促進するように製剤化された膣泡沫またはゲルに濃縮することができる。ゲルは、家で簡単に適用することができ、男女カップルが受胎をより自然に達成することを可能にする。
【0192】
DEFB126のサル相同体が天然のヒトペプチドと同じくらい効果的に作用するということが特に驚くべきことである。生殖生物学において、近縁種でさえ、行動、解剖学および生化学および分子生物学における違いの一つまたは組み合わせによって決まる生殖戦略がかなり異なるということは実際に定説である。これは、非生殖組織中に発現する遺伝子よりもはるかに多岐であることが示されている、性交後の生殖プロセス(すなわち、配偶子輸送、貯蔵、シグナル伝達および受精)を媒介するタンパク質の遺伝子の場合に特に当てはまる(Swanson and Vacquier, 2002)。DEFB126は、生殖性タンパク質が急速に進化するという期待に対して例外ではない。カニクイザルDEFB126とヒトDEFB126とを比較するBlastアミノ酸分析は、これら2種の霊長類の全長タンパク質が71%の配列相同性しか共有しないことを示す(図19A)。シグナル配列を排除すると、相同性は66%に低下する(図19B)。相同性は、主に、6個のシステイン残基および隣接するアミノ酸のいくつかの保存位置を特徴とするデフェンシンコアに限定される。カルボキシル末端(aa 65〜134、DEFB126のグリコシル末端)の相同性は約50%に低下する。本発明者らの実験は、この分子、すなわちグリコシル化カルボキシル伸長を有するデフェンシンの一般的性質が機能を付与するのに十分であることを実証する。オリゴ糖構造が霊長類種特異的でもあり、様々な哺乳動物種における多くの精子機能(たとえば卵管結合、透明帯結合、精子・卵子融合)が完全に異なるタンパク質によって媒介されるということが示されていることを考慮すると、本発明者らの発見は実に驚くべきことである。
【0193】
多様な異なる手法が有効な治療用DEFB126コンストラクトの産生を生じさせることができる。O結合型オリゴ糖を有する糖ペプチドがSf9、Sf21およびTN-5B1-4(High-Five)細胞株によって産生される。たとえば、Sf9細胞中に発現するヒトインターフェロンα2が天然インターフェロンと同じ位置でOグリコシル化された(Sugyiama et al., (1993))。グリカンの組成は異なることができるが(GalNAc、およびGalNAc+シアリル化されていないGal)、正確なオリゴ糖配列および分枝の複製は、これらのグリカンが十分な負電荷を有する限り、必ずしも必要ではない。同様に、Sf21細胞中に発現するヒトインターロイキン2はGalβl-3GalNAcのOグリカンを含有するものであった(Grabenhorst et al., (1993))。対照的に、high-five細胞は、末端ガラクトースならびにα2,6およびα2,3シアル酸を有する組み換えペプチドを産生することができる(Davis et al., (1993); Davis and Wood, (1995))。昆虫細胞組み換え産物は、一定範囲のOグリカン変異体を本発明者らに提供することができ、そのいくつかは、グリコシル化の程度および負電荷基に関して天然DEFB126によく似ている。加えて、酵母および哺乳動物細胞株における組み換え発現は、グリコシル化ペプチドを作るための代替手法を提供する。原則として、精子表面への結合にきわめて重要なデフェンシンモチーフを、より徹底的にグリコシル化され、より負に荷電されたカルボキシルテールとともに保持する分子を操作することにより、自然の「設計」に改良を加えることが可能なはずである。
【0194】
本明細書に記載された実施例および態様は、説明目的のみのものであり、それを鑑みて、様々な改変または変更が当業者に示唆され、本出願の真意および範囲ならびに特許請求の範囲に含まれるということが理解されよう。本明細書において引用されるすべての刊行物、特許、特許出願およびアクセッション番号は参照により本明細書に組み入れられる。
【0195】
参考文献
【0196】
非公式配列リスト
【特許請求の範囲】
【請求項1】
DEFB-126をコードする核酸の部分配列
内の個体のDEFB-126対立遺伝子を決定する工程を含む、該個体が不妊症の高いリスクを有するかどうかを判定するための方法であって、該部分配列内の位置6〜10における5個の連続するシトシン「CCCCC」の存在が正常な生殖能を示し、該部分配列の位置6〜10内の3個以下の連続するシトシン「CCC」の存在が不妊症の高い確率を示す、方法。
【請求項2】
前記部分配列が
であり、該部分配列内の位置11〜15における5個の連続するシトシン「CCCCC」の存在が正常な生殖能を示し、該部分配列の位置11〜15内の3個以下の連続するシトシン「CCC」の存在が不妊症の高い確率を示す、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記個体がヒトである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記個体が雄性である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記核酸がDNAである、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記核酸がRNAである、請求項1記載の方法。
【請求項7】
DEFB-126をコードする前記核酸が配列番号:4に対して少なくとも95%の配列同一性を共有する、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記DEFB-126対立遺伝子が、DEFB-126をコードする核酸の部分配列
内の対立遺伝子を識別する一つまたは複数のポリヌクレオチドを使用する増幅反応によって検出される、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記増幅反応が、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、鎖置換増幅(SDA)、核酸配列ベース増幅(NASBA)、ローリングサークル増幅(RCA)、T7ポリメラーゼ媒介増幅、T3ポリメラーゼ媒介増幅およびSP6ポリメラーゼ媒介増幅からなる群より選択される、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記DEFB-126対立遺伝子が、DEFB-126をコードする核酸の部分配列
内の対立遺伝子を識別する一つまたは複数のポリヌクレオチドを使用するハイブリダイゼーションによって検出される、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記DEFB-126対立遺伝子が、DEFB-126の部分配列を配列決定することによって検出され、該部分配列が、核酸配列
を含む、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記DEFB-126対立遺伝子が制限酵素断片長多型によって検出される、請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記DEFB-126対立遺伝子が蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)によって検出される、請求項1記載の方法。
【請求項14】
個体から生物学的試料を得る工程、および該試料中のDEFB-126ポリペプチドの存在を決定する工程を含む、該個体が不妊症の高い確率を有するかどうかを判定する方法であって、DEFB-126ポリペプチドの存在が正常な生殖能を示し、DEFB-126ポリペプチドの非存在が不妊症の高い確率を示す方法。
【請求項15】
配列番号:12に対して少なくとも95%の配列同一性を共有するDEFB-126ポリペプチドが正常な生殖能を示す、請求項14記載の方法。
【請求項16】
配列番号:6に対して少なくとも95%の配列同一性を共有するDEFB-126ポリペプチドが正常な生殖能を示す、請求項14記載の方法。
【請求項17】
C末端アミノ酸配列PVSPTG(配列番号:3)を有するDEFB-126ポリペプチドが正常な生殖能を示す、請求項14記載の方法。
【請求項18】
配列番号:16に対して少なくとも95%の配列同一性を共有するDEFB-126ポリペプチドが不妊症の高い確率を示す、請求項14記載の方法。
【請求項19】
n=1〜50であるC末端アミノ酸配列
を有するDEFB-126ポリペプチドが不妊症の高い確率を示す、請求項14記載の方法。
【請求項20】
前記DEFB-126ポリペプチドが、該ポリペプチドのC末端に特異的に結合する抗体を使用して決定される、請求項14記載の方法。
【請求項21】
前記DEFB-126ポリペプチド変異体が、ELISA、免疫沈降、イムノアフィニティークロマトグラフィー、タンパク質アレイ、レクチン結合、等電点電気泳動またはウエスタンブロットによって決定される、請求項20記載の方法。
【請求項22】
個体から精子試料を得る工程、および該試料を、ガラクトース-GalNAcまたはシアル酸を選択的に拘束するレクチンと接触させる工程を含む、該個体が不妊症の高い確率を有するかどうかを判定する方法であって、正常な対照と比較した該レクチンの低い結合レベルが不妊症の高い確率を示す、方法。
【請求項23】
前記レクチンが、マッシュルーム(Agaricus bisporus)(ABA)、パラミツ(Artocarpus integrifolia)(Jacalin)、アメリカカブトガニ(Limulus polphemus)(LPA)、イヌエンジュ(Macackia amurenesis)(MAL II)またはコムギ胚芽(Triticum vulgaris)(WGA)およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項22記載の方法。
【請求項24】
個体から精子試料を得る工程、および該試料をポリ-L-リシンと接触させる工程を含む、該個体が不妊症の高い確率を有するかどうかを判定する方法であって、正常な対照と比較した該ポリ-L-リシンの低い結合レベルが不妊症の高い確率を示す、方法。
【請求項25】
個体が不妊症の高い確率を有するかどうかを判定するためのキットであって、部分配列
内の該個体のDEFB-126対立遺伝子を識別する少なくとも一つのポリヌクレオチドと、該部分配列内の位置6〜10における5個の連続するシトシン「CCCCC」の存在が正常な生殖能を示すことおよび該部分配列の位置6〜10内の3個以下の連続するシトシン「CCC」の存在が不妊症の高い確率を示すことを述べている使用説明書とを含む、キット。
【請求項26】
個体が不妊症の高い確率を有するかどうかを判定するためのキットであって、DEFB-126ポリペプチドを認識する少なくとも一つの抗体と、DEFB-126ポリペプチドの存在が正常な生殖能を示すことおよびDEFB-126ポリペプチドの非存在が不妊症の高い確率を示すことを述べている使用説明書とを含む、キット。
【請求項27】
非機能性DEFB-126ポリペプチドに起因する生殖能低下を有する雄性個体を治療するための方法であって、該個体からの精巣上体細胞に、機能性DEFB-126ポリペプチドをコードする核酸を導入する工程を含む、方法。
【請求項28】
個体が不妊症の高い確率を有するかどうかを判定するためのキットであって、DEFB-126に特異的に結合する少なくとも一つのレクチンと、DEFB-126ポリペプチドの存在が正常な生殖能を示すことおよびDEFB-126ポリペプチドの非存在が不妊症の高い確率を示すことを述べている使用説明書とを含む、キット。
【請求項29】
前記レクチンがガラクトース-GalNAcまたはシアル酸を選択的に拘束する、請求項28記載のキット。
【請求項30】
前記レクチンが、マッシュルーム(ABA)、パラミツ(Jacalin)、アメリカカブトガニ(LPA)、イヌエンジュ(MAL II)またはコムギ胚芽(WGA)およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項28記載のキット。
【請求項31】
前記レクチンが検出可能な標識を含む、請求項28記載のキット。
【請求項32】
個体が不妊症の高い確率を有するかどうかを判定するためのキットであって、ポリ-L-リシンと、DEFB-126ポリペプチドの存在が正常な生殖能を示すことおよびDEFB-126ポリペプチドの非存在が不妊症の高い確率を示すことを述べている使用説明書とを含む、キット。
【請求項33】
前記ポリ-L-リシンが検出可能な標識を含む、請求項32記載のキット。
【請求項34】
受胎を達成するのに不十分なレベルの機能性DEFB-126を発現している個体からの精子の機能性を回復させるための方法であって、該個体から得られた精子試料を機能性DEFB-126ポリペプチドと接触させる工程を含む、方法。
【請求項35】
前記精子をインビトロで機能性DEFB-126ポリペプチドと接触させる、請求項34記載の方法。
【請求項36】
前記精子を膣内で機能性DEFB-126ポリペプチドと接触させる、請求項34記載の方法。
【請求項37】
前記機能性DEFB-126ポリペプチドが、デフェンシンコアモチーフおよびデフェンシンカルボキシル伸長モチーフを含む、請求項34記載の方法。
【請求項38】
前記機能性DEFB-126ポリペプチドが、配列番号:49のアミノ酸配列を有するデフェンシンコアモチーフ、および、配列番号:50のアミノ酸配列を有するデフェンシンカルボキシル伸長モチーフまたはそのより短い長さを含む、請求項34記載の方法。
【請求項39】
前記機能性DEFB-126ポリペプチドが、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11および配列番号:12からなる群より選択される配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項34記載の方法。
【請求項40】
前記機能性DEFB-126ポリペプチドが、配列番号:6および配列番号:12からなる群より選択される配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項39記載の方法。
【請求項41】
前記機能性DEFB-126ポリペプチドが、配列番号:6に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項39記載の方法。
【請求項42】
前記機能性DEFB-126ポリペプチドが配列番号:6を含む、請求項39記載の方法。
【請求項43】
前記機能性DEFB-126ポリペプチドが、配列番号:12に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項39記載の方法。
【請求項44】
前記機能性DEFB-126ポリペプチドが配列番号:12を含む、請求項39記載の方法。
【請求項45】
前記個体がヒトであり、前記ポリペプチドが非ヒトDEFB-126ポリペプチドである、請求項39記載の方法。
【請求項46】
機能性DEFB-126ポリペプチドおよび薬学的に許容可能な担体を含む、組成物。
【請求項47】
前記機能性DEFB-126ポリペプチドがデフェンシンコアモチーフおよびデフェンシンカルボキシル伸長モチーフを含む、請求項46記載の組成物。
【請求項48】
前記機能性DEFB-126ポリペプチドが、配列番号:49のアミノ酸配列を有するデフェンシンコアモチーフ、および、配列番号:50のアミノ酸配列を有するデフェンシンカルボキシル伸長モチーフまたはそのより短い長さを含む、請求項46記載の組成物。
【請求項49】
前記機能性DEFB-126ポリペプチドが、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11および配列番号:12からなる群より選択される配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項46記載の組成物。
【請求項50】
前記機能性DEFB-126ポリペプチドが、配列番号:6および配列番号:12からなる群より選択される配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項46記載の組成物。
【請求項51】
前記機能性DEFB-126ポリペプチドが、配列番号:6に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項46記載の組成物。
【請求項52】
前記機能性DEFB-126ポリペプチドが配列番号:6を含む、請求項46記載の組成物。
【請求項53】
前記機能性DEFB-126ポリペプチドが、配列番号:12に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項46記載の組成物。
【請求項54】
前記機能性DEFB-126ポリペプチドが配列番号:12を含む、請求項46記載の組成物。
【請求項55】
泡沫である、請求項46記載の組成物。
【請求項1】
DEFB-126をコードする核酸の部分配列
内の個体のDEFB-126対立遺伝子を決定する工程を含む、該個体が不妊症の高いリスクを有するかどうかを判定するための方法であって、該部分配列内の位置6〜10における5個の連続するシトシン「CCCCC」の存在が正常な生殖能を示し、該部分配列の位置6〜10内の3個以下の連続するシトシン「CCC」の存在が不妊症の高い確率を示す、方法。
【請求項2】
前記部分配列が
であり、該部分配列内の位置11〜15における5個の連続するシトシン「CCCCC」の存在が正常な生殖能を示し、該部分配列の位置11〜15内の3個以下の連続するシトシン「CCC」の存在が不妊症の高い確率を示す、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記個体がヒトである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記個体が雄性である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記核酸がDNAである、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記核酸がRNAである、請求項1記載の方法。
【請求項7】
DEFB-126をコードする前記核酸が配列番号:4に対して少なくとも95%の配列同一性を共有する、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記DEFB-126対立遺伝子が、DEFB-126をコードする核酸の部分配列
内の対立遺伝子を識別する一つまたは複数のポリヌクレオチドを使用する増幅反応によって検出される、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記増幅反応が、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、鎖置換増幅(SDA)、核酸配列ベース増幅(NASBA)、ローリングサークル増幅(RCA)、T7ポリメラーゼ媒介増幅、T3ポリメラーゼ媒介増幅およびSP6ポリメラーゼ媒介増幅からなる群より選択される、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記DEFB-126対立遺伝子が、DEFB-126をコードする核酸の部分配列
内の対立遺伝子を識別する一つまたは複数のポリヌクレオチドを使用するハイブリダイゼーションによって検出される、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記DEFB-126対立遺伝子が、DEFB-126の部分配列を配列決定することによって検出され、該部分配列が、核酸配列
を含む、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記DEFB-126対立遺伝子が制限酵素断片長多型によって検出される、請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記DEFB-126対立遺伝子が蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)によって検出される、請求項1記載の方法。
【請求項14】
個体から生物学的試料を得る工程、および該試料中のDEFB-126ポリペプチドの存在を決定する工程を含む、該個体が不妊症の高い確率を有するかどうかを判定する方法であって、DEFB-126ポリペプチドの存在が正常な生殖能を示し、DEFB-126ポリペプチドの非存在が不妊症の高い確率を示す方法。
【請求項15】
配列番号:12に対して少なくとも95%の配列同一性を共有するDEFB-126ポリペプチドが正常な生殖能を示す、請求項14記載の方法。
【請求項16】
配列番号:6に対して少なくとも95%の配列同一性を共有するDEFB-126ポリペプチドが正常な生殖能を示す、請求項14記載の方法。
【請求項17】
C末端アミノ酸配列PVSPTG(配列番号:3)を有するDEFB-126ポリペプチドが正常な生殖能を示す、請求項14記載の方法。
【請求項18】
配列番号:16に対して少なくとも95%の配列同一性を共有するDEFB-126ポリペプチドが不妊症の高い確率を示す、請求項14記載の方法。
【請求項19】
n=1〜50であるC末端アミノ酸配列
を有するDEFB-126ポリペプチドが不妊症の高い確率を示す、請求項14記載の方法。
【請求項20】
前記DEFB-126ポリペプチドが、該ポリペプチドのC末端に特異的に結合する抗体を使用して決定される、請求項14記載の方法。
【請求項21】
前記DEFB-126ポリペプチド変異体が、ELISA、免疫沈降、イムノアフィニティークロマトグラフィー、タンパク質アレイ、レクチン結合、等電点電気泳動またはウエスタンブロットによって決定される、請求項20記載の方法。
【請求項22】
個体から精子試料を得る工程、および該試料を、ガラクトース-GalNAcまたはシアル酸を選択的に拘束するレクチンと接触させる工程を含む、該個体が不妊症の高い確率を有するかどうかを判定する方法であって、正常な対照と比較した該レクチンの低い結合レベルが不妊症の高い確率を示す、方法。
【請求項23】
前記レクチンが、マッシュルーム(Agaricus bisporus)(ABA)、パラミツ(Artocarpus integrifolia)(Jacalin)、アメリカカブトガニ(Limulus polphemus)(LPA)、イヌエンジュ(Macackia amurenesis)(MAL II)またはコムギ胚芽(Triticum vulgaris)(WGA)およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項22記載の方法。
【請求項24】
個体から精子試料を得る工程、および該試料をポリ-L-リシンと接触させる工程を含む、該個体が不妊症の高い確率を有するかどうかを判定する方法であって、正常な対照と比較した該ポリ-L-リシンの低い結合レベルが不妊症の高い確率を示す、方法。
【請求項25】
個体が不妊症の高い確率を有するかどうかを判定するためのキットであって、部分配列
内の該個体のDEFB-126対立遺伝子を識別する少なくとも一つのポリヌクレオチドと、該部分配列内の位置6〜10における5個の連続するシトシン「CCCCC」の存在が正常な生殖能を示すことおよび該部分配列の位置6〜10内の3個以下の連続するシトシン「CCC」の存在が不妊症の高い確率を示すことを述べている使用説明書とを含む、キット。
【請求項26】
個体が不妊症の高い確率を有するかどうかを判定するためのキットであって、DEFB-126ポリペプチドを認識する少なくとも一つの抗体と、DEFB-126ポリペプチドの存在が正常な生殖能を示すことおよびDEFB-126ポリペプチドの非存在が不妊症の高い確率を示すことを述べている使用説明書とを含む、キット。
【請求項27】
非機能性DEFB-126ポリペプチドに起因する生殖能低下を有する雄性個体を治療するための方法であって、該個体からの精巣上体細胞に、機能性DEFB-126ポリペプチドをコードする核酸を導入する工程を含む、方法。
【請求項28】
個体が不妊症の高い確率を有するかどうかを判定するためのキットであって、DEFB-126に特異的に結合する少なくとも一つのレクチンと、DEFB-126ポリペプチドの存在が正常な生殖能を示すことおよびDEFB-126ポリペプチドの非存在が不妊症の高い確率を示すことを述べている使用説明書とを含む、キット。
【請求項29】
前記レクチンがガラクトース-GalNAcまたはシアル酸を選択的に拘束する、請求項28記載のキット。
【請求項30】
前記レクチンが、マッシュルーム(ABA)、パラミツ(Jacalin)、アメリカカブトガニ(LPA)、イヌエンジュ(MAL II)またはコムギ胚芽(WGA)およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項28記載のキット。
【請求項31】
前記レクチンが検出可能な標識を含む、請求項28記載のキット。
【請求項32】
個体が不妊症の高い確率を有するかどうかを判定するためのキットであって、ポリ-L-リシンと、DEFB-126ポリペプチドの存在が正常な生殖能を示すことおよびDEFB-126ポリペプチドの非存在が不妊症の高い確率を示すことを述べている使用説明書とを含む、キット。
【請求項33】
前記ポリ-L-リシンが検出可能な標識を含む、請求項32記載のキット。
【請求項34】
受胎を達成するのに不十分なレベルの機能性DEFB-126を発現している個体からの精子の機能性を回復させるための方法であって、該個体から得られた精子試料を機能性DEFB-126ポリペプチドと接触させる工程を含む、方法。
【請求項35】
前記精子をインビトロで機能性DEFB-126ポリペプチドと接触させる、請求項34記載の方法。
【請求項36】
前記精子を膣内で機能性DEFB-126ポリペプチドと接触させる、請求項34記載の方法。
【請求項37】
前記機能性DEFB-126ポリペプチドが、デフェンシンコアモチーフおよびデフェンシンカルボキシル伸長モチーフを含む、請求項34記載の方法。
【請求項38】
前記機能性DEFB-126ポリペプチドが、配列番号:49のアミノ酸配列を有するデフェンシンコアモチーフ、および、配列番号:50のアミノ酸配列を有するデフェンシンカルボキシル伸長モチーフまたはそのより短い長さを含む、請求項34記載の方法。
【請求項39】
前記機能性DEFB-126ポリペプチドが、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11および配列番号:12からなる群より選択される配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項34記載の方法。
【請求項40】
前記機能性DEFB-126ポリペプチドが、配列番号:6および配列番号:12からなる群より選択される配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項39記載の方法。
【請求項41】
前記機能性DEFB-126ポリペプチドが、配列番号:6に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項39記載の方法。
【請求項42】
前記機能性DEFB-126ポリペプチドが配列番号:6を含む、請求項39記載の方法。
【請求項43】
前記機能性DEFB-126ポリペプチドが、配列番号:12に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項39記載の方法。
【請求項44】
前記機能性DEFB-126ポリペプチドが配列番号:12を含む、請求項39記載の方法。
【請求項45】
前記個体がヒトであり、前記ポリペプチドが非ヒトDEFB-126ポリペプチドである、請求項39記載の方法。
【請求項46】
機能性DEFB-126ポリペプチドおよび薬学的に許容可能な担体を含む、組成物。
【請求項47】
前記機能性DEFB-126ポリペプチドがデフェンシンコアモチーフおよびデフェンシンカルボキシル伸長モチーフを含む、請求項46記載の組成物。
【請求項48】
前記機能性DEFB-126ポリペプチドが、配列番号:49のアミノ酸配列を有するデフェンシンコアモチーフ、および、配列番号:50のアミノ酸配列を有するデフェンシンカルボキシル伸長モチーフまたはそのより短い長さを含む、請求項46記載の組成物。
【請求項49】
前記機能性DEFB-126ポリペプチドが、配列番号:6、配列番号:7、配列番号:8、配列番号:9、配列番号:10、配列番号:11および配列番号:12からなる群より選択される配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項46記載の組成物。
【請求項50】
前記機能性DEFB-126ポリペプチドが、配列番号:6および配列番号:12からなる群より選択される配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項46記載の組成物。
【請求項51】
前記機能性DEFB-126ポリペプチドが、配列番号:6に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項46記載の組成物。
【請求項52】
前記機能性DEFB-126ポリペプチドが配列番号:6を含む、請求項46記載の組成物。
【請求項53】
前記機能性DEFB-126ポリペプチドが、配列番号:12に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項46記載の組成物。
【請求項54】
前記機能性DEFB-126ポリペプチドが配列番号:12を含む、請求項46記載の組成物。
【請求項55】
泡沫である、請求項46記載の組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公表番号】特表2012−519003(P2012−519003A)
【公表日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552196(P2011−552196)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/025626
【国際公開番号】WO2010/099468
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【出願人】(503060525)ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ ユニバーシティ オブ イリノイ (25)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/025626
【国際公開番号】WO2010/099468
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【出願人】(503060525)ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ ユニバーシティ オブ イリノイ (25)
【Fターム(参考)】
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