説明

不安全動作検出装置及び不安全動作検出方法

【課題】小型で消費電力が少ない不安全動作検出装置及び不安全動作検出方法を提供する。
【解決手段】不安全動作検出装置は、対向配置され、距離をおいて軸に垂直な面に対して面対称となるように配置された一対の電極と、一対の電極の間の空間内を可動し、一対の電極を導通の状態又は非導通の状態のいずれかの状態にする導電体と、を備える複数の、軸が異なり及び軸のうち少なくとも一つは同一平面上にない状態にある、傾斜センサー24と、所定の期間内における導通の状態及び非導通の状態を複数のレベル値で表し、導通の状態及び非導通の状態が複数のレベル値のいずれのレベル値であるかにより、複数の傾斜センサーの動き状態を識別する制御部20,28と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不安全動作検出装置及び不安全動作検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
点滴、人工透析、及び輸血など薬品を体に入れる行為、又は血液を体外の機器などとやり取りする行為では、患者が動いて穿刺針が外れ薬品や血液が漏れることは避けなければならない。特に人工透析において、穿刺針が外れて大量の血液が漏れると最悪死亡するような重大な事故になる。そこで、人工透析では、これまで次のような対策が講じられてきた。
【0003】
先ず、穿刺針自体が抜けないようにテープや器具で防止する。次に、もし穿刺針が抜けてしまったとき、抜けをいち早く検知し、早く知らせ迅速に対応をとってもらうような検知手段がとられている。例えば、静脈圧に変化があると警告を出す(透析装置に備えられている最も一般的な機能)。圧力で異常を検出することは臨床の場でも基本とされる。超音波で血流量の変化から穿刺針の抜けを検知する。穿刺針を含めた電気回路を形成しておき、穿刺針が抜けると回路が開いて電流が流れなくなるので、穿刺針が抜けたことがわかる。穿刺針が抜けて血が漏れたことを知る。これらの方法は、実際の人工透析装置に搭載されており、器具や水分センサーは市販されており、腕に装着して臨床の場で使われている。
【0004】
これらの対策は、既に穿刺針が外れ、何らかの不具合が生じている場合である。早めに検知したとしても、血が漏れている状態であり、処置を急がなくてはいけない。実際、静脈圧の変化や気泡の有無に頼る現在のアラーム体制だけでは極めて危険であることが指摘されている。そのため、装置の警報のみならず、スタッフが十分に観察及び監視できるようにすることが求められている。しかし、スタッフが患者1人1人を観察及び監視することは困難である。例え、頻繁に患者の様子を見にいっても、見ていないときや患者の思わぬ行動で外れる場合もあり、観察及び監視で事故を完全に抑えることは困難である。したがって、穿刺針が実際に抜ける前の抜けそうな不安全行動あるいは行為を機械的な手段で検知及び警告し、それを受けてスタッフが即座に対応することで事故を防ぐ必要がある。
【0005】
基本的な可撓性チューブの装着は、腕に血液を抜く可撓性チューブと浄化した血液を体に戻す可撓性チューブとの2本があり、可撓性チューブと穿刺針とをテープでしっかり固定する。この可撓性チューブ又は穿刺針の部分周辺に不用意な動きがあると、穿刺針が外れてしまうので、それを検知するために加速度や傾斜センサーを装着する。透析時の穿刺針が外れそうかを、穿刺針近傍の動き(加速度、傾きの相対変化)から検知及び警告する装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−55882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1では動きを検出したい穿刺針近傍に、動きを検出する加速度センサー又は傾斜センサーを装着するので、穿刺針を付けた腕又は手の動きしかわからない。穿刺針が抜けるのは、穿刺針を付けた腕又は手が動かなくても、肩や体全体が動く(寝返りを打つ)などで可撓性チューブ全体が引っ張られて力がかかって抜ける虞があり、このような動きには対応できない可能性がある。
【0008】
また、加速度や傾斜データから、体の姿勢、動きの程度を把握し、穿刺針が抜けるような不安全行動かどうか判定することが難しい虞がある。加速度(又はジャイロなどを使った角速度)や傾斜は、センサーを装着した対象の運動状態を詳しく知ることができる。しかし、絶対的な姿勢や動きの程度は、ある基準位置からの差分や解析が必要である。得られたデータの数値そのものを見て判定することは難しい。例えば、加速度の時間的な変化が得られたとして、その変化をもってどのような動きがあったのか、その動きは大きいかなどを判定するためには、動きを積分したり、他の座標と比較したり、多数の積和演算と事前の実験が必要であり非常に大変な作業を要する。また、解析には、CPUやメモリーなど、高性能なハードウェアが必要である。人工透析のように腕に付けるセンサーや周辺機器に、このような解析ができる高性能なCPU、メモリーを実装するのは、現在の進んだCPUでも高価で、小型化、消費電力の関係で難しい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0010】
[適用例1]本適用例に係る不安全動作検出装置は、対向配置され、距離をおいて軸に垂直な面に対して面対称となるように配置された一対の電極と、該一対の電極の間の空間内を可動し、前記一対の電極を導通の状態又は非導通の状態のいずれかの状態にする導電体と、を備える複数の、前記軸が異なり及び該軸のうち少なくとも一つは同一平面上にない状態にある、傾斜センサーと、所定の期間内における前記導通の状態及び前記非導通の状態を複数のレベル値で表し、前記導通の状態及び前記非導通の状態が前記複数のレベル値のいずれのレベル値であるかにより、前記複数の傾斜センサーの動き状態を識別する制御部と、を含むことを特徴とする。
【0011】
本適用例によれば、可動する導電体の動きにより発生する一対の電極の導通の状態及び非導通の状態を複数のレベル値で表すことで、このレベル値を利用して複数の傾斜センサーの動き状態を識別することが可能である。例えば、本適用例に係る不安全動作検出装置の傾斜センサーを、穿刺針を刺す(=薬液の注入や血液の出し入れをする箇所)近傍や周辺だけでなく、それ以外の複数の場所に装着しておけば、複数の傾斜センサーは患者(装置を装着して医療行為を受ける人)の動きに対応した動きをし、一対の電極間に存在する可動する導電体の動きにより一対の電極において導通の状態及び非導通の状態が発生することから、所定の期間内における導通の状態及び非導通の状態を複数のレベル値で表し、導通の状態及び非導通の状態が複数のレベル値のいずれのレベル値であるかにより、複数の傾斜センサーの動き状態を識別できるので、患者の穿刺針が抜けるといった不安全行動を検知できる。
【0012】
また、動きを検知する傾斜センサーで得られるデータに基づく不安全行動の検知は、データ処理が容易で、動きの判定がし易いものであり、不安全行動の検知のためのハードは、傾斜センサーを含め小型で消費電力が少ない。
【0013】
ここで、所定の期間とは、状態を検出する対象の動きの早さに合わせて適宜設定してよい時間間隔である、例えば、限定するものではないが、数十から数百msec程度に設定すると好ましい結果となる場合が多い。
【0014】
[適用例2]上記適用例に記載の不安全動作検出装置において、前記複数のレベル値は、複数の前記傾斜センサーで生じるチャタリングの前後の論理変化から識別することを特徴とする。
【0015】
本適用例によれば、チャタリングの前後の論理変化で運動の強さを識別するので、従来技術に比べてより速く識別することができる。
【0016】
[適用例3]上記適用例に記載の不安全動作検出装置において、前記複数の傾斜センサーの動き状態の識別は、各箇所の前記傾斜センサーの前記レベル値の時間変化より不安全行動候補を抽出することを特徴とする。
【0017】
本適用例によれば、論理変化を時間軸で見ていくので簡単な論理演算回路で不安全行動候補を抽出できる。また不安全行動候補を抽出することで、不安全状態の見極め前に情報が精査できる。
【0018】
[適用例4]上記適用例に記載の不安全動作検出装置において、前記不安全行動候補は、前記レベル値が第1の閾値より大きいときに抽出されることを特徴とする。
【0019】
本適用例によれば、極めて簡単な論理演算回路で不安全行動候補を抽出できる。
【0020】
[適用例5]上記適用例に記載の不安全動作検出装置において、前記不安全行動候補は、前記レベル値が第2の閾値以上を継続し、前記レベル値と時間変化との積分値が第3の閾値を超えるときに抽出されることを特徴とする。
【0021】
本適用例によれば、大きな運動ではないが、継続的に長時間この程度の指数がある場合も、不安全行動につながる可能性がある不安全行動候補を抽出できる。
【0022】
[適用例6]上記適用例に記載の不安全動作検出装置において、前記複数の傾斜センサーの動き状態の識別は、各箇所の前記傾斜センサーの前記レベル値及び前記各箇所のパラメーターをスコア化して、該スコアの大小関係で識別することを特徴とする。
【0023】
本適用例によれば、各箇所の前記傾斜センサーの前記レベル値及び前記各箇所のパラメーターをスコア化し、複数の傾斜センサーのそれぞれの結果を比較することで、全体として、不安全状態であるか見極めることができる。
【0024】
[適用例7]上記適用例に記載の不安全動作検出装置において、前記複数の傾斜センサーの動き状態の識別は、各箇所の前記傾斜センサーの前記レベル値及び不安全な行動様式を予め想定して、前記各箇所の前記傾斜センサーの前記レベル値及び前記不安全な行動様式に合致するかで識別することを特徴とする。
【0025】
本適用例によれば、不安全な行動様式とそれぞれの運動の強さを定義しておき、その条件に合致した場合、不安全状態と見なす。プログラム的には、論理変化と運動の強さの閾値を設定し、条件分岐をつくっておけば、不安全状態か判定することができる。
【0026】
[適用例8]本適用例に係る不安全動作検出方法は、対向配置され、距離をおいて軸に垂直な面に対して面対称となるように配置された一対の電極と、該一対の電極の間の空間内を可動し、前記一対の電極の間を導通の状態又は非導通の状態のいずれかの状態にする導電体と、を備える複数の傾斜センサーを前記軸が異なり及び該軸のうち少なくとも一つは同一平面上にない状態にすること、所定の期間内における前記導通の状態及び前記非導通の状態を複数のレベル値で表し、前記導通の状態及び前記非導通の状態が前記複数のレベル値のいずれのレベル値であるかにより、前記複数の傾斜センサーの動き状態を識別すること、を含むことを特徴とする。
【0027】
本適用例によれば、可動する導電体の動きにより発生する一対の電極の導通の状態を複数のレベル値で表すことで、このレベル値を利用して一対の電極の動き状態を識別することが可能である。
【0028】
[適用例9]上記適用例に記載の不安全動作検出方法において、前記複数のレベル値は、複数の前記傾斜センサーで生じるチャタリングの前後の論理変化から識別することを特徴とする。
【0029】
本適用例によれば、チャタリングの前後の論理変化のみで運動の強さを識別するので、従来技術に比べてより速く識別することができる。
【0030】
[適用例10]上記適用例に記載の不安全動作検出方法において、前記複数の傾斜センサーの動き状態の識別は、各箇所の前記傾斜センサーの前記レベル値の時間変化より不安全行動候補を抽出することを特徴とする。
【0031】
本適用例によれば、論理変化を時間軸で見ていくので簡単な論理演算回路で不安全行動候補を抽出できる。また不安全行動候補を抽出することで、不安全状態の見極め前に情報が精査できる。
【0032】
[適用例11]上記適用例に記載の不安全動作検出方法において、前記不安全行動候補は、前記レベル値が第1の閾値より大きかときに抽出されることを特徴とする。
【0033】
本適用例によれば、極めて簡単な論理演算回路で不安全行動候補を抽出できる。
【0034】
[適用例12]上記適用例に記載の不安全動作検出方法において、前記不安全行動候補は、前記レベル値が第2の閾値以上を継続し、前記レベル値と時間変化との積分値が第3の閾値を超えるときに抽出されることを特徴とする。
【0035】
本適用例によれば、大きな運動ではないが、継続的に長時間この程度の指数がある場合も、不安全行動につながる可能性がある不安全行動候補を抽出できる。
【0036】
[適用例13]上記適用例に記載の不安全動作検出方法において、前記複数の傾斜センサーの動き状態の識別は、各箇所の前記傾斜センサーの前記レベル値及び前記各箇所のパラメーターをスコア化して、該スコアの大小関係で識別することを特徴とする。
【0037】
本適用例によれば、各箇所の前記傾斜センサーの前記レベル値及び前記各箇所のパラメーターをスコア化し、複数の傾斜センサーのそれぞれの結果を比較することで、全体として、不安全状態であるか見極めることができる。
【0038】
[適用例14]上記適用例に記載の不安全動作検出方法において、前記複数の傾斜センサーの動き状態の識別は、各箇所の前記傾斜センサーの前記レベル値及び不安全な行動様式を予め想定して、前記各箇所の前記傾斜センサーの前記レベル値及び前記不安全な行動様式に合致するかで識別することを特徴とする。
【0039】
本適用例によれば、不安全な行動様式とそれぞれの運動の強さを定義しておき、その条件に合致した場合、不安全状態と見なす。プログラム的には、論理変化と運動の強さの閾値を設定し、条件分岐をつくっておけば、不安全状態か判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】第1の実施形態に係る不安全動作検出装置の基本構成及び不安全行動を検出するセンサーの配置例を示す図。
【図2】第1の実施形態に係る不安全動作検出装置の構成を示すブロック図。
【図3】第1の実施形態に係るボールセンサーを示す図。
【図4】第1の実施形態に係るセンサーユニットを示す図。
【図5】第1の実施形態に係るセンサーユニットを右手首(手の甲)に装着した例を示す図。
【図6】第1の実施形態に係るセンサーユニットを左手首に装着して腕をいろいろな方向に動かした場合の例を示す図。
【図7】第1の実施形態に係るボールセンサーの論理変化を示す図。
【図8】第1の実施形態に係るボールセンサーの論理変化による運動の強さを示す図。
【図9】第1の実施形態に係るボールセンサーの論理変化による運動の強さの識別を時系列で示した表。
【図10】第1の実施形態に係る不安全行動候補をセンサーユニットのある軸の強度指数の時間的な変化から決める目安を示す図。
【図11】第1の実施形態に係る不安全行動候補とする手順を示すフローチャート。
【図12】第1の実施形態に係る動き程度確認処理を示すフローチャート。
【図13】第1の実施形態に係るXYZ軸に動きが生じている例を示す図。
【図14】第1の実施形態に係る不安全行動判定処理の各状態を示す図。
【図15】第1の実施形態に係る不安全行動判定処理を示すフローチャート。
【図16】第1の実施形態に係る状態把握処理を示すフローチャート。
【図17】第2の実施形態に係る肘を中心に腕が水平から垂直以上に移動する動きを示す図。
【図18】第2の実施形態に係る不安全行動判定処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の不安全動作検出装置及び不安全動作検出方法の実施形態について、図を用いて説明する。本実施形態に係る不安全動作検出装置は、患者の体内に液体を導入又は患者の体内から血液を導出して得る、可撓性チューブの先端に取り付けられて患者の穿刺部位に穿刺可能な穿刺針が、当該穿刺部位から離脱しそうな状況を検知するためのものであり、血液浄化治療を施すための血液浄化装置(更に具体的には、血液透析治療を施すための血液透析装置)に適用されたものである。
【0042】
(第1の実施形態)
(不安全動作検出装置の構成)
本実施形態に係る不安全動作検出装置は、傾斜センサーとして、最も一般的なボールセンサーを使った例を示す。
図1は、本実施形態に係る不安全動作検出装置の基本構成及び不安全行動を検出するセンサーの配置例を示す図である。本実施形態に係る不安全動作検出装置2は、不安全行動を検出する複数のセンサーユニット10と、複数のセンサーユニット10で捉えた動き情報から不安全行動を知らせる外部端末12と、を備えている。不安全行動を検出するセンサーユニット(ボールセンサー内蔵)10は、動きを検出したい身体の箇所に装着される。例えば、装着箇所は、可撓性チューブが挿入されている部位周囲の他、手首、腕、肘、肩、及び腰などがある。各センサーユニット10で捉えた動き情報は、センサーユニット10より、ナースステーションなどに置いた外部端末12に、無線又は有線で伝わり、不安全行動の場合は、スピーカー14による音声やディスプレイ16で知らせる。知らせを受けて、患者の元に駆けつけ、対応する。又は、不安全行動で危険性が高い場合は、透析を中止する信号を機器に送り、自動停止させてもよい。
【0043】
図2は、本実施形態に係る不安全動作検出装置2の構成を示すブロック図である。本実施形態に係る外部端末12は、センサーユニット10の信号を受信(無線又は有線でもよい)するインターフェイス部(I/Fと略)18と、I/F18が受信した信号から不安全な行動らしい動きを判定する不安全行動判定部(制御部)20と、スピーカー14及びディスプレイ16などに不安全な行動に対して警告を出力する出力部22と、を備えている。本実施形態に係る身体各所に取り付けたセンサーユニット10内部には、3軸XYZのボールセンサー(傾斜センサー)24と、ボールセンサー24の信号を検出する検出部26と、検出部26が検出した信号の時間変化などから不安全な行動らしい動きを検出する不安全行動候補検出部(制御部)28と、これらの情報を外部に送信(無線又は有線でもよい)するインターフェイス部(I/Fと略)30と、を内蔵する。この機構はどのセンサーユニット10でももっていて、各センサーユニット10の結果が、外部端末12に受信され、そこの不安全行動判定部20で、身体各部所の情報を参照して、最終的に危険な行為があったか判定されている。
【0044】
なお、不安全行動判定部20は、それぞれのセンサーユニット10内部にもっていてもよい。外部端末12は、各センサーユニット10の不安全行動判定部20の判定を単純に警告する働きでもよい。警告の外部出力は、外部端末12だけではなく、各センサーユニット10で個別に行ってもよい。例えば、腕に取り付けたセンサーユニット10で、不安全な行動らしい動きを検出したら、LEDを点滅させたり、音を鳴らしたりして、とりあえず、怪しい動きがあったら、該当するセンサーユニット10自体が警告してもよい。これらの構成は、本実施形態を使う場面、患者の負担(身体に装着するセンサーユニット10から警告が発せられるのがいやだとか)、監視者の配置などを考慮して、様々な形態をとってもよい。
【0045】
(ボールセンサーの原理)
図3は、本実施形態に係るボールセンサー24を示す図である。物体の運動状態を検出するには、一般に加速度センサーやジャイロセンサー等が使われる。このような、加速度センサーは、消費電力が大きく(素子あたりmWオーダー)携帯機器など電源の制限(電池容量、供給方法)が厳しい条件で使うことが難しい。また、加速度センサーは多値出力なので、出力結果をCPUで扱うにはAD変換が必要である。本実施形態においては、運動状態を検出する他のセンサーとしてボールセンサー24を用いる。ボールセンサー24は、対向配置され、距離をおいて軸に垂直な面に対して面対称となるように配置された一対の電極32,34と、一対の電極32,34の間の空間内を可動し、一対の電極32,34を導通の状態又は非導通の状態のいずれかの状態にするボール(導電体)36と、を備える。ボールセンサー24は、図3に示すように、電源+とGNDに設定された2つの電極32,34に接するように導電性のボール36が移動し、2つの電極32,34に接して導通するかどうかで、ボールセンサー24全体が正立しているか、又は転倒したのか、2つの状態を知ることができる。
【0046】
加速度センサーなどと異なり、ボールセンサー24は、ON/OFFのみの出力のため、運動した結果、今も正立しているか、激しく動いて転倒したか、の程度しかわからない。しかし、構造が非常に簡単で製作が容易であり、導通時のみ電流が流れるだけなので、消費電力が非常に少ない(μWオーダー以下)。この利点を利用し、プロパンガスなどの施設機器が、地震などの強い動きを受けて、転倒していないかどうか検出する用途に使われている。
【0047】
(3軸構成)
ボールセンサー24は、複数備えられ、軸が異なり及び軸のうち少なくとも一つは同一平面上にない状態にある。例えば、3つのボールセンサー24を互いに垂直な3軸に配置すると、各ボールセンサー24の時間変化から、センサーユニット10の系の回転方向がわかる。更に6個使えば、より詳しい回転角度がわかる。
【0048】
(センサーユニットの構成と装着座標例)
図4は、本実施形態に係るセンサーユニット10を示す図である。各センサーユニット10の内部は、図4に示すように、互いに直交する3軸XYZのボールセンサー24と、その信号を検出し、不安全行動か判定し、送信する回路基板(IC)38などと電池40を内蔵する。3軸XYZのボールセンサー24の方向は、センサーユニット10のケースの面と一致させてもよい。これにより、装着時にどれがX軸かなどがわかりやすい。
【0049】
図5は、本実施形態に係るセンサーユニット10を右手首(手の甲)に装着した例を示す図である。この例では、X軸を手首から指先、Y軸をX軸に垂直にとり、XY平面を手の甲と一致させる。Z軸は手の甲の面の垂線方向とする。
【0050】
図6は、本実施形態に係るセンサーユニット10を右手首に装着して腕をいろいろな方向に動かした場合の例を示す図である。センサーユニット10のX軸側の側面を斜線部42で示した。斜線部42は、図6(A)は右側の垂直面、図6(B)は上面、図6(C)は、手前垂直面になる。それに伴い、3つのボールセンサー24(図4参照)の値が変わるので、図6に示すように、今、腕がどの姿勢なのか知ることができる。
【0051】
(単位時間あたりの論理変化による動き検出)
図7は、本実施形態に係るボールセンサー24の論理変化を示す図である。ボールセンサー24の出力は、ON、OFFの2値である。しかし、動きがあって、ONからOFFに論理変化するとき、単純にONからOFFにはならない。実際には、図7(A)に示すような波形ではなく、図7(B)に示すように、短時間のON/OFFの繰り返し(=チャタリング)を起こして、OFF状態に落ち着くことが多い。これは、動きがあったとき、ボールセンサー24の容器内で、しばらくの間、導電性のボール36が振動して、電極32,34間を行き来するため生ずる現象である。チャタリングは、姿勢の変化が短時間にはっきりと起こる場合、生じている時間、回数(ON/OFF数、パルス数)が少ないが、姿勢が1つの状態になかなか定まらず、あいまいな状態が続いているときは、導電性のボール36が容器内での振動を繰り返すため、チャタリング時間が長く、回数も多くなる。
【0052】
このチャタリング時間、回数を、動きの程度の指標に使うことができる。具体的には、単位時間あたりのチャタリング回数の積算から動きの強度を換算することができる。この方法は、電流の導通を検出するだけのボールセンサー24のON/OFFの回数を数えるだけなので、回路も少なく、CPUの計算も簡単で、加速度センサーやジャイロセンサー類のようなADコンバーターが不要なので、極めて消費電力が少ない利点がある。このように、単位時間あたりのチャタリング回数の積算から、運動の強さをかなり正確に把握できる。しかし、加速度センサーやジャイロセンサー類よりも計算や回路が簡単といえども、単位時間あたりの積算が必要である。人工透析のような、生命の危険に関する動きを検出する場合、詳しい運動の強さよりも危険な運動が生じた可能性を出来る限り速く判定できる必要がある。そこで、本実施形態においては単位時間あたりの積算をせずに、図8に示すように、ボールセンサー24のチャタリング前後の論理変化のみで運動の強さを識別する方法をとる。
【0053】
図8は、本実施形態に係るボールセンサー24の論理変化による運動の強さを示す図である。図8(A)は、センサーユニット10が装着された箇所の姿勢が変化して、ボールセンサー24の論理がONからOFFに変わった理想的な状態である。姿勢が瞬時に変わり、ボール36のバウンドもなく、チャタリングが生じない場合である。この時の姿勢変化で生じる運動の強さを強度指数(レベル値)5とする。
【0054】
図8(B)は、図8(A)と同じ姿勢変化でボールセンサー24の論理がONからOFFになる過程に、チャタリングが生ずる場合である。図8(A)のように姿勢が瞬時に変わったわけではないが、比較的短時間で、姿勢が変化する大きめの動きがあったと考えられるので強度指数4とする。
【0055】
図8(C)は、論理はONで、チャタリングが生じ、チャタリングが収まったら、ONのままだった場合である。もしかしたら、チャタリング中にOFFに状態変化する可能性もあったが(図中の破線)、チャタリングの作用で、ONに成りきれなかったとも考えられる。そこで、このような状態は、図8(B)の状態に次ぐ運動の強さがあったとして強度指数3とする。
【0056】
図8(D)は、論理はOFFでチャタリングを経てもOFFのままの状態である。これは、本来ONの状態になろうとしていたのが(図中の破線)、中途半端な動きのためチャタリングが生じたものの、OFFになってしまったとも考えられる。このような動きは非常に緩慢だと考えられるので強度指数2とする。
【0057】
図8(E)は図8(B)と全く論理変化が逆である。想定する動きではないが、何らかの動きがあってチャタリングが生じたと考えて強度指数は最小の1とする。以上のように、チャタリングがあったときは運動が生じたと考え、その前後の論理変化の違いで、運動の強さを識別する。図8(B)〜(E)は基本的なパターンを示したが、これ以外に設定を考え、より詳細な強度指数を定義してもよい。
【0058】
なお、チャタリングがあったかどうかの観測は、Δt(数十から数百msec程度)でモニタリングする。時間が長いほど、緩やかで長期的な動き、短時間では、強度が大きく、ちょっとした動きが検出しやすくなるので、センサーユニット10の装着箇所での動き方や検出したい精度、頻度によってΔtの長さを調整すればよい。
【0059】
本実施形態によれば、論理変化を時間軸で見ていくので、積算したり、その和を比較したりするなどの乗算は不要である。極めて簡単な論理演算、回路で済む。この識別は、図2の各センサーユニット10の検出部26で行う。
【0060】
(不安全行動候補の抽出)
図9は、本実施形態に係るボールセンサー24の論理変化による運動の強さの識別を時系列で示した表である。図9は、図8の運動の強さ(強度指数)の識別をΔt時間ごとに、腕、腰、及び肩などの各センサーユニット10を装着した箇所ごとに、XYZ軸ごとに行い時系列にまとめたものである。図9の実線円で囲まれた箇所は、強度指数が5,4(第1の閾値)と大きかった箇所である(腕X軸、腰X軸)。これは、運動が大きいので、不安全行動につながる可能性が高いと考え、不安全行動候補とする。
【0061】
一方、強度指数3,2(第2の閾値)は、大きな運動ではないが、継続的に長時間この程度の指数がある場合も、不安全行動につながる可能性があると考える(図9の破線円で囲まれた箇所)。例えば、腕の運動で、可撓性チューブを引っ張るような動きであっても、強度指数3,2程度であれば、穿刺針は外れないが、長時間このような引っ張る運動の強さがある場合、穿刺針の部分に力はかかっていて、徐々に緩んで、抜ける可能性が出てくる。よって、中程度の強度指数で長時間継続する場合も不安全行動候補とする。
【0062】
図10は、本実施形態に係る不安全行動候補をセンサーユニット10のある軸の強度指数の時間的な変化から決める目安を示す図である。Δt内で強度指数が5,4の場合、図10(A)の斜線のように、その部分は即不安全行動候補とする。一方、強度指数が小さい場合、継続してモニターしていて、ある時刻で強度指数が3ないし2になった場合、次のΔtも強度指数が3ないし2か継続的にモニターし、強度指数が3ないし2の継続時間を見る。例えば、継続時間を3秒とする。これは不安全行動が生じている場合、2秒以上強い運動が継続するという実験結果による。この継続時間と強度指数の積分値L(図10(B)の斜線部の面積)が、ある一定以上(第3の閾値)になった時刻で、その一連の動きを不安全行動候補とする。例えば、積分値Lの閾値を「最大強度指数×3(秒)」とした場合、最大強度指数は本実施形態では「5」であるので、積分値Lの閾値は「15」となる。この手順を図11に示す。
【0063】
図11は、本実施形態に係る不安全行動候補とする手順を示すフローチャートである。先ず、ステップS10において、時刻t=0、継続時間と強度指数との積分値L=0として初期設定を行う。
【0064】
次に、ステップS20において、ボールセンサー24の論理変化より姿勢変化で生じる運動の強さを強度指数とし動き程度確認処理を行う(図12参照)。
【0065】
次に、ステップS30において、運動指数が4又は5であるか判定する。運動指数が4又は5である場合(Y)は、ステップS70へ進む。運動指数が4及び5でない場合(N)は、ステップS40へ進む。
【0066】
次に、ステップS40において、運動指数が2又は3であるか判定する。運動指数が2又は3である場合(Y)は、ステップS50へ進む。運動指数が2及び3でない場合(N)は、ステップS80へ進む。
【0067】
次に、ステップS50において、積分値L=L+運動指数を計算し、積分値Lに運動指数を足しこみ積分値Lを更新する。
【0068】
次に、ステップS60において、積分値Lが閾値以上であるか判定する。積分値Lが閾値以上である場合(Y)は、ステップS70へ進む。積分値Lが閾値未満である場合(N)は、ステップS80へ進む。
【0069】
次に、ステップS70において、不安全行動候補から不安全行為かどうかの判定として不安全行動判定処理を行う(図15又は図18参照)。
【0070】
次に、ステップS80において、時刻t=t+Δtを計算し、時刻tにΔtを足しこみ時刻tを更新する。
【0071】
図12は、本実施形態に係る動き程度確認処理を示すフローチャートである。先ず、ステップS100において、時刻tからΔt間でチャタリングがあるか判定する。チャタリングがある場合(Y)は、ステップS130へ進む。チャタリングがない場合(N)は、ステップS110へ進む。
【0072】
次に、ステップS110において、論理変化がONからOFFであるか判定する。論理変化がONからOFFである場合(Y)は、ステップS120へ進む。論理変化がONからOFFでない場合(N)は、終了する。
【0073】
次に、ステップS120において、姿勢変化で生じる運動の強さを強度指数5とする。そして終了する。
【0074】
次に、ステップS130において、論理変化がONからOFFであるか判定する。論理変化がONからOFFである場合(Y)は、ステップS140へ進む。論理変化がONからOFFでない場合(N)は、ステップS150へ進む。
【0075】
次に、ステップS140において、姿勢変化で生じる運動の強さを強度指数4とする。そして終了する。
【0076】
次に、ステップS150において、論理変化がONからONであるか判定する。論理変化がONからONである場合(Y)は、ステップS160へ進む。論理変化がONからONでない場合(N)は、ステップS170へ進む。
【0077】
次に、ステップS160において、姿勢変化で生じる運動の強さを強度指数3とする。そして終了する。
【0078】
次に、ステップS170において、論理変化がOFFからOFFであるか判定する。論理変化がOFFからOFFである場合(Y)は、ステップS180へ進む。論理変化がOFFからOFFでない場合(N)は、ステップS190へ進む。
【0079】
次に、ステップS180において、姿勢変化で生じる運動の強さを強度指数2とする。そして終了する。
【0080】
次に、ステップS190において、姿勢変化で生じる運動の強さを強度指数1とする。そして終了する。
【0081】
(判定方法)
図13は、本実施形態に係るXYZ軸に動きが生じている例を示す図である。運動の強さ、それが生じた場所や箇所などのパラメーターをスコア化して判定する。例えば、手首に付けたセンサーユニット10のXYZ軸の強度指数をSx、Sy、Sz、S=Sx+Sy+Szとする。
【0082】
(XYZ軸の1軸だけに動きが生じている場合)
図13(A)に示すように、Sx、Sy、Szのどれか1つのみ値があり、その他は0である。単なる平行移動で、それほど危険な行動ではない。可撓性チューブのたるみ、ゆとり内での動きであり、総スコアAS=Sとする。
【0083】
(XYZ軸のうち2軸に動きが生じている場合)
図13(B)に示すように、Sx、Sy、Szのどれか2つのみ値があり、その他は0である。例えば、xy平面で回転が生じている。少し大きな動きであり多少注意が必要である。よってスコアに重み付けをする。例えば、総スコアAS=S×3とする。
【0084】
(XYZ軸のすべての軸で動きが生じている場合)
図13(C)に示すように、Sx、Sy、Szの全てに値がある。例えば、X軸方向に回転しながら、ZY平面に移動など複雑な動きになっている。2軸の動きより、更に注意が必要なので、総スコアAS=S×5とする。このように、総スコアASを、装着した箇所ごとに求めておく。例えば、AS(手首)、AS(腕)、及びAS(肩)である。
【0085】
重み付けは手首、腕、及び肩などの部位や軸によって変えてもよい。例えば、腕の動きは重要なので重み付けを大きくする。肩は、3軸動かなければ特に大きな問題は生じないと考え、3軸の場合の重み付けに重点を置くなど調整を行う。総スコアは、ある閾値の範囲内にあるかどうかで最終的に不安全かどうか判定する。
【0086】
図14は、本実施形態に係る不安全行動判定処理の各状態を示す図である。例えば、状態としてAS(手首)>β(手首)ならば、「手首」は不安全状態Aである。また、状態としてα(手首)<AS(手首)<β(手首)ならば、「手首」は注意状態Bである。更に、状態としてAS(手首)≦α(手首)ならば、「手首」は問題なし状態Cである。また腕及び腰も同様である。なお、α(手首)、α(腕)、及びα(腰)は問題なし状態と注意状態とを区分けする各閾値である。また、β(手首)、β(腕)、及びβ(腰)は注意状態と不安全状態とを区分けする各閾値である。
【0087】
上記「不安全状態A」、「注意状態B」、及び「問題なし状態C」の状態を複数のセンサーユニットについて判定する。もし、複数のセンサーユニット10でどれか1つでも「不安全状態A」があれば、不安全状態として、直ちに対処するように求める(場合によっては、人工透析機器をストップさせる)。複数のセンサーユニット10のうち、「注意状態B」が例えば、3箇所以上あったら、不安全状態と見なす。以上のように、まず、各センサーユニット10のXYZ軸ごとの強度指数を、動きのある軸の数、箇所などの要因ごとに重み付けしてスコア化し、次に、複数のセンサーユニット10のそれぞれの結果を比較することで、全体として、不安全状態であるか見極める。
【0088】
図15は、本実施形態に係る不安全行動判定処理を示すフローチャートである。先ず、ステップS200において、運動の強さ、それが生じた手首のパラメーターをスコア化して状態を把握する(図16参照)。
【0089】
次に、ステップS210において、運動の強さ、それが生じた腕のパラメーターをスコア化して状態を把握する(図16参照)。
【0090】
次に、ステップS220において、運動の強さ、それが生じた腰のパラメーターをスコア化して状態を把握する(図16参照)。
【0091】
次に、ステップS230において、各部位のうち状態「不安全状態A」があるか判定する。各部位のうち一つでも状態「不安全状態A」がある場合(Y)は、ステップS240へ進む。各部位のうち状態「不安全状態A」がない場合(N)は、ステップS250へ進む。
【0092】
次に、ステップS240において、「不安全」であることを警告する。そして終了する。
【0093】
次に、ステップS250において、各部位のうち状態「注意状態B」が3つ以上あるか判定する。各部位のうち状態「注意状態B」が3つ以上ある場合(Y)は、ステップS240へ進む。各部位のうち状態「注意状態B」が2つ以下である場合(N)は、ステップS260へ進む。
【0094】
次に、ステップS260において、各部位のうち状態「注意状態B」が2つあるか判定する。各部位のうち状態「注意状態B」が2つある場合(Y)は、ステップS270へ進む。各部位のうち状態「注意状態B」が2つでない場合(N)は、終了する。
【0095】
次に、ステップS270において、「注意」を促す。そして終了する。
【0096】
図16は、本実施形態に係る状態把握処理を示すフローチャートである。なお、図面中の「*」は、ステップS200においては手首、ステップS210においては腕、ステップS220においては腰に読み替える。以下の実施形態は手首を例に説明する。
【0097】
先ず、ステップS300において、手首に不安全行動候補があるか判定する。手首に不安全行動候補がある場合(Y)は、ステップS310へ進む。手首に不安全行動候補がない場合(N)は、ステップS410へ進む。
【0098】
次に、ステップS310において、手首の動きがXYZ軸のいずれか1軸のみであるか判定する。手首の動きがXYZ軸のいずれか1軸のみである場合(Y)は、ステップS320へ進む。手首の動きがXYZ軸のいずれか1軸のみでない場合(N)は、ステップS330へ進む。
【0099】
次に、ステップS320において、AS(手首)=Sとする。
【0100】
次に、ステップS330において、手首の動きがXYZ軸のうち2軸であるか判定する。手首の動きがXYZ軸のうち2軸である場合(Y)は、ステップS340へ進む。手首の動きがXYZ軸のうち2軸でない場合(N)は、ステップS350へ進む。
【0101】
次に、ステップS340において、AS(手首)=S×3とする。
【0102】
次に、ステップS350において、手首の動きがXYZ軸の3軸であるか判定する。手首の動きがXYZ軸の3軸である場合(Y)は、ステップS360へ進む。手首の動きがXYZ軸の3軸でない場合(N)は、ステップS410へ進む。
【0103】
次に、ステップS360において、AS(手首)=S×5とする。
【0104】
次に、ステップS370において、AS(手首)≦α(手首)であるか判定する。AS(手首)≦α(手首)である場合(Y)は、ステップS410へ進む。AS(手首)≦α(手首)でない場合(N)は、ステップS380へ進む。
【0105】
次に、ステップS380において、α(手首)<AS(手首)<β(手首)であるか判定する。α(手首)<AS(手首)<β(手首)である場合(Y)は、ステップS390へ進む。α(手首)<AS(手首)<β(手首)でない場合(N)は、ステップS400へ進む。
【0106】
次に、ステップS390において、注意として「注意状態B」とする。そして終了する。
【0107】
次に、ステップS400において、不安全として「不安全状態A」とする。そして終了する。
【0108】
次に、ステップS410において、問題なしとして「問題なし状態C」とする。そして終了する。
【0109】
(第2の実施形態)
続いて、第2の実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態は、前述した第1の実施形態が、運動の強さ、それが生じた場所、箇所などのパラメーターをスコア化して判定させていることに対して、不安全な行動様式と運動の強さを予め想定し、その様式と強度に合致するか判定させていることを特徴としている。例えば、可撓性チューブが引っ張られて、穿刺針が抜けそうな動きを定義しておく。よって、第1の実施形態との相違箇所を中心に、第1の実施形態と同じ符号を付して説明する。
【0110】
(実施例1)
(肘を中心に腕が水平から垂直以上に移動する動き)
図17は、本実施形態に係る肘を中心に腕が水平から垂直以上に移動する動きを示す図である。透析中、顔がかゆくなって思わず掻く場合がよくある。このような動きは可撓性チューブを引っ張り最も穿刺針が抜けやすくなる動きである。
【0111】
(判定の仕方)
先ず、該当する動きか判定する。例えば、手首や肘(腕)などのXYZ軸の論理変化から、上記の動きかわかる腕が水平(例:手首のXY平面が水平、Z軸が鉛直)から垂直以上に移動(例:XY平面が水平ではなく、Z軸が90度以上移動)した。
【0112】
次に、運動の強さは大きいか判定する。例えば、該当する動きであって、手首及び肘(腕)などの総スコアについて、例えば、AS(手首)が5、AS(腕)が4以上、及びAS(肩)が3以上の場合、不安全状態と見なす。
【0113】
図18は、本実施形態に係る不安全行動判定処理を示すフローチャートである。先ず、ステップS500において、予め想定した不安全な行動様式と合致するか判定する。予め想定した不安全な行動様式と合致する場合(Y)は、ステップS510へ進む。予め想定した不安全な行動様式と合致しない場合(N)は、終了する。
【0114】
次に、ステップS510において、AS(手首)>5であるか判定する。AS(手首)>5である場合(Y)は、ステップS520へ進む。AS(手首)>5でない場合(N)は、終了する。
【0115】
次に、ステップS520において、AS(腕)>4であるか判定する。AS(腕)>4である場合(Y)は、ステップS540へ進む。AS(腕)>4でない場合(N)は、ステップS530へ進む。
【0116】
次に、ステップS530において、注意を促す。
【0117】
次に、ステップS540において、AS(肩)>3であるか判定する。AS(肩)>3である場合(Y)は、ステップS550へ進む。AS(肩)>3でない場合(N)は、ステップS530へ進む。
【0118】
次に、ステップS550において、不安全状態の警告を行う。
【0119】
(実施例2)
(寝返り)
腕、肘、及び手首の相対位置は同じで、背骨を中心に回転する。前述のような、腕を大きく振るような動きほどではないが、体が回転するため、人工透析機から可撓性チューブが引っ張られ、穿刺針が抜ける可能性がある動きの1つである。
【0120】
(判定の仕方)
先ず、該当する動きか判定する。例えば、腕、肘、及び手首をはじめ、肩、腰の論理変化が、1つの軸中心になっている。
【0121】
次に、運動の強さは大きいか判定する。例えば、各センサーユニット10を装着した箇所の総スコアが、どれも3以上ある場合。該当する動きであって、どこか1つが大きいのではく、体全体で平準以上の動きがある場合、不安全状態と見なす。
【0122】
(実施例3)
(ベッド上で立ち上がる、上体を起こすような動き)
寝返りと同様、腕自体の動きは大きくないが、上体を起こす場合、やはり人工透析機から可撓性チューブが引っ張られ穿刺針が抜ける可能性がある動きの1つである。
【0123】
(判定の仕方)
先ず、該当する動きか判定する。例えば、腕、肘、及び手首をはじめ、肩、腰の論理変化が、腰を中心に対称的になっている。
【0124】
次に、運動の強さは大きいか判定する。例えば、腰の運動は小さく、腰から離れた場所の運動が大きい。該当する動きであって、例えば、腕、肘、手首、及び肩の総スコアが4以上、又は足首及び膝の総スコアが4以上ある場合、不安全状態と見なす。
【0125】
以上のように、穿刺針が抜けそうな動きの様式(どの部分にどんな論理変化が時間的に生ずる)とそれぞれの運動の強さを定義しておき、その条件に合致した場合、不安全状態と見なす。プログラム的には、論理変化と運動の強さの閾値を設定し、条件分岐をつくっておけば、不安全状態か判定することができる。
【0126】
上述の実施形態によれば、ボールセンサー24は論理変化から姿勢、運動の強さを導き出せるので、不安全状態をイメージし、それに対応する論理変化は、どのようなものか比較的簡単に想定できる。人間の不安全状態は、複雑で個人差もあり、なかなか簡単に記述できないが、ボールセンサー24を使えば、論理変化と姿勢、運動の強さが直感的なので、人間の不安全状態を把握するシステムを作成することが、加速度センサーなどに比べ、非常に容易である。
【0127】
また、センサーの構造、論理変化による運動の強さを識別するため回路、アルゴリズムが簡素で、装置が極めて小さく、消費電力が少なく、判定時間も短いため、人間に装着するのに大変適しており、特に複数のセンサーを使うことが容易である。複数のセンサーでいろいろな箇所の動き、姿勢が把握できるため、不安全状態の判定が正確である。
【0128】
更に、身体の複数の場所に装着した傾斜センサーの情報から、前述の不安全行動候補の他、基本姿勢、運動した箇所と運動の強さを知ることができるので、これらの情報を総合すれば、本当に不安全行為なので警告を出して対処してもらう必要があるか否かまで判定できる。
【0129】
なお、総スコアによる判定と、条件分岐による場合分けによる不安全状態の判定法を示したが、双方の方法を組み合わせて使ってもよい。
【0130】
人工透析以外に、何らかの医療行為中、不用意な動きが危険な状況を招くような場合、適用することができる。人間にも機器にも適応できる。
【符号の説明】
【0131】
2…不安全動作検出装置 10…センサーユニット 12…外部端末 14…スピーカー 16…ディスプレイ 18…インターフェイス部(I/F部) 20…不安全行動判定部(制御部) 22…出力部 24…ボールセンサー(傾斜センサー) 26…検出部 28…不安全行動候補検出部(制御部) 30…インターフェイス部(I/F部) 32,34…電極 36…ボール(導電体) 38…回路基板(IC) 40…電池 42…斜線部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置され、距離をおいて軸に垂直な面に対して面対称となるように配置された一対の電極と、該一対の電極の間の空間内を可動し、前記一対の電極を導通の状態又は非導通の状態のいずれかの状態にする導電体と、を備える複数の、前記軸が異なり及び該軸のうち少なくとも一つは同一平面上にない状態にある、傾斜センサーと、
所定の期間内における前記導通の状態及び前記非導通の状態を複数のレベル値で表し、前記導通の状態及び前記非導通の状態が前記複数のレベル値のいずれのレベル値であるかにより、前記複数の傾斜センサーの動き状態を識別する制御部と、
を含むことを特徴とする不安全動作検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の不安全動作検出装置において、
前記複数のレベル値は、複数の前記傾斜センサーで生じるチャタリングの前後の論理変化から識別することを特徴とする不安全動作検出装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の不安全動作検出装置において、
前記複数の傾斜センサーの動き状態の識別は、各箇所の前記傾斜センサーの前記レベル値の時間変化より不安全行動候補を抽出することを特徴とする不安全動作検出装置。
【請求項4】
請求項3に記載の不安全動作検出装置において、
前記不安全行動候補は、前記レベル値が第1の閾値より大きいときに抽出されることを特徴とする不安全動作検出装置。
【請求項5】
請求項3に記載の不安全動作検出装置において、
前記不安全行動候補は、前記レベル値が第2の閾値以上を継続し、前記レベル値と時間変化との積分値が第3の閾値を超えるときに抽出されることを特徴とする不安全動作検出装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の不安全動作検出装置において、
前記複数の傾斜センサーの動き状態の識別は、各箇所の前記傾斜センサーの前記レベル値及び前記各箇所のパラメーターをスコア化して、該スコアの大小関係で識別することを特徴とする不安全動作検出装置。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の不安全動作検出装置において、
前記複数の傾斜センサーの動き状態の識別は、各箇所の前記傾斜センサーの前記レベル値及び不安全な行動様式を予め想定して、前記各箇所の前記傾斜センサーの前記レベル値及び前記不安全な行動様式に合致するかで識別することを特徴とする不安全動作検出装置。
【請求項8】
対向配置され、距離をおいて軸に垂直な面に対して面対称となるように配置された一対の電極と、該一対の電極の間の空間内を可動し、前記一対の電極を導通の状態又は非導通の状態のいずれかの状態にする導電体と、を備える複数の傾斜センサーを前記軸が異なり及び該軸のうち少なくとも一つは同一平面上にない状態にすること、
所定の期間内における前記導通の状態及び前記非導通の状態を複数のレベル値で表し、前記導通の状態及び前記非導通の状態が前記複数のレベル値のいずれのレベル値であるかにより、前記複数の傾斜センサーの動き状態を識別すること、
を含むことを特徴とする不安全動作検出方法。
【請求項9】
請求項8に記載の不安全動作検出方法において、
前記複数のレベル値は、複数の前記傾斜センサーで生じるチャタリングの前後の論理変化から識別することを特徴とする不安全動作検出方法。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の不安全動作検出方法において、
前記複数の傾斜センサーの動き状態の識別は、各箇所の前記傾斜センサーの前記レベル値の時間変化より不安全行動候補を抽出することを特徴とする不安全動作検出方法。
【請求項11】
請求項10に記載の不安全動作検出方法において、
前記不安全行動候補は、前記レベル値が第1の閾値より大きかときに抽出されることを特徴とする不安全動作検出方法。
【請求項12】
請求項10に記載の不安全動作検出方法において、
前記不安全行動候補は、前記レベル値が第2の閾値以上を継続し、前記レベル値と時間変化との積分値が第3の閾値を超えるときに抽出されることを特徴とする不安全動作検出方法。
【請求項13】
請求項8〜12のいずれか一項に記載の不安全動作検出方法において、
前記複数の傾斜センサーの動き状態の識別は、各箇所の前記傾斜センサーの前記レベル値及び前記各箇所のパラメーターをスコア化して、該スコアの大小関係で識別することを特徴とする不安全動作検出方法。
【請求項14】
請求項8〜12のいずれか一項に記載の不安全動作検出方法において、
前記複数の傾斜センサーの動き状態の識別は、各箇所の前記傾斜センサーの前記レベル値及び不安全な行動様式を予め想定して、前記各箇所の前記傾斜センサーの前記レベル値及び前記不安全な行動様式に合致するかで識別することを特徴とする不安全動作検出方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図18】
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【図1】
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【図13】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−94434(P2013−94434A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240068(P2011−240068)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】