説明

不定形形状記憶ポリマー

それぞれ異なるガラス転移温度を特徴とするポリマーを別々に生成する2つのモノマーを、二官能モノマーを存在させて共重合することによって調製される形状記憶ポリマーであり、生成されたコポリマーは重合中に架橋され、熱硬化ネットワークが形成される。最終ポリマーの転移温度は、選択されたモノマーの比率によって、約20から約110℃に調整され、架橋の程度によって、平衡ゴム弾性率が制御される。形状記憶ポリマーは、コーティングや薄膜の形態で、キャスティング可能な製剤として加工することができる。このコポリマーは光学的に透明であり、医療用プラスチックとして有益である。本発明はまた、その製造品およびその調製、使用方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状記憶ポリマーおよびその製造に関する。より詳しくは、個別に重合されていれば異なるガラス転移温度によって特徴付けられるポリマーを生成するであろう2つのビニルモノマーの反応生成物と、二官能モノマーとを有する形状記憶コポリマーに関し、作製されたコポリマーは重合中に架橋され、熱硬化ネットワークを形成する。最終ポリマーの転移温度は、選択されたモノマーの比率によって、20℃ないし110℃に調整され、架橋の程度により、平衡ゴム弾性率(ラバリーモジュールプラトー: rubbery modulus plateau)が制御される。形状記憶ポリマーはキャスティング可能であり、光学的に透明で、所期の用途に応じて何色にでも染色可能である。
【背景技術】
【0002】
本願は、引用をもって本願に援用される、2002年5月2日出願の仮出願第60/377,544号の優先権を主張する。
【0003】
形状記憶材料とは、特定の温度および応力条件下で暫定的な休止形状に「固定」でき、その後、熱、電気、または環境的な要求を受けて、関係する弾性変形をほぼ完全に、当初の応力のない状態に弛緩させることができる材料である。
【0004】
これまでに研究され、使用されている形状記憶材料の種類は主に、形状記憶合金(SMA)である。形状記憶特性を呈する各種の金属材料(形状記憶合金)の形状記憶能力は、金属合金が、温度および/または外部応力の変化に伴い、ひとつの結晶状態から別の結晶状態へと可逆的な結晶相変態を起こす結果として発生する。特に、ニッケルとチタンの合金、たとえばニタノールは、室温でエネルギー結晶相変化を起こすことのできる上記の特性を呈し、これによって形状記憶機能を備える。このような合金は、高温オーステナイト相(母相)と室温マルテンサイト相の間の変形挙動の違い、つまり2つの位相を分離する一次相転移を利用する形状記憶効果を有する。マルテンサイトの「降伏応力」は極めて低いため、マルテンサイト構造は、結晶粒子の双晶形成によって非常に変形しやすいが、このような変形は非常に可逆的である。変形したマルテンサイト試料は、オーステナイト相への変態に関連する臨界温度より高温に加熱されるまで、その形態を保持する。この臨界温度を越えた時点で、構造的回復が発生し、マルテンサイト変形以前の当初の形状に至る。
【0005】
この変態はしばしば、熱弾性マルテンサイト変態と呼ばれる。NiTi合金のオーステナイト相からマルテンサイト相への可逆的変態は、個々の合金の特徴である2つの異なる温度範囲で発生する。合金が冷却されると、マルテンサイト相が形成を始める温度(Ms)に到達し、それよりずっと低い温度(Mf)で変態が終了する。再加熱すると、合金はオーステナイトの再形成が始まる温度(As)に達し、その後オーステナイトへの復元が完了する温度(Af)に達する。マルテンサイト状態の合金は、変形しやすい。変形された合金が十分に加熱されると、合金はオーステナイト状態へと逆転し、当初の構成に戻る。
【0006】
前述のとおり、最もよく知られ、最も入手しやすい形状記憶合金はニッケルチタン合金である。わずか10℃の温度変化で、この合金は、変形された状態からの形状変化への抵抗に対して用いられた場合、415MPaもの応力を発生することができる。このような合金は、知的材料や生物医学的装置用等に使用されている。しかしながら、比較的高価であることや、ひずみが約8%と限定されている等の理由から、その使用は制約されている。
【0007】
形状記憶合金(SMA)に代わるもの、あるいはその使用を補うものとして、形状記憶ポリマー(SMP)が現在開発されている。これは、ポリマーが軽量であり、形状回復能力が高く、操作性が高く、SMAと比較して経済的である、等の理由による。
【0008】
ポリマーは本来的に、ゴム弾性に基づく形状記憶効果を示すが、一時的形状固定、ひずみ回復率、回復中の作業能力、引き戻し状態の安定性のさまざまな特徴を有する。その中で最初に報告された形状記憶ポリマー(SMP)は、架橋ポリエチレンであった。しかしながら、この材料に関するひずみ回復メカニズムは直ちに、形状記憶合金のそれとはかけ離れていることが明らかにされた。実に、形状記憶ポリマーは実際に超弾性ゴムであり、ポリマーが加熱されてゴム状になると、弾性率〜1MPaの抵抗力を受けて変形し、温度が結晶化温度またはガラス転移温度より低くなると、変形された形状は低温剛性によって固定され、同時に、変形中に材料に費やされる機械的エネルギーが保存される。したがって、温度が転移温度(TgまたはTm)より高い温度まで上昇すると、ポリマーは、ネットワークチェーン配座エントロピーの回復によって、その当初の形態へと回復する。このように、SMPに関する有利な特性は、ネットワーク構造と、剛性およびゴム状態を分離する転移の急峻性と密接な関係がある。SMAと比較し、SMAの最大ひずみは8%に満たないが、SMPにはゴムコンプライアンス(rubbery compliance)が大きいためにひずみが大きい(数百パーセント)という利点がある。その他の利点として、用途からみた必要性に応じて、転移温度を調整でき、これは工業において非常に重要な要因である。
【0009】
これまで、数多くのポリマーが特に魅力的な形状記憶効果を持つことが発見され、中でも顕著なものがポリウレタン、ポリノルボルネン、スチレンブタジエンコポリマーおよび架橋ポリエチレンである。しかしながら、これらのポリマーの加工においては多数の問題が提起されている。
【0010】
文献では、ポリウレタンタイプのSMPは一般に、硬質部分と軟質部分を有する相分離線形ブロックコポリマーとして特徴付けられている。硬質部分は通常、結晶であり、融点が画定されており、軟質部分は通常、アモルファスで、ガラス転移温度が画定されている。しかしながら、硬質部分がアモルファスで、融点ではなくガラス転移温度を有する実施形態や、軟質部分が結晶で、ガラス転移温度ではなく融点を持つ実施形態もある。軟質部分の融点またはガラス転移温度は、硬質部分の融点またはガラス転移温度より実質的に低い。
【0011】
実際の生産にあたり、SMPが硬質部分の融点またはガラス転移温度より高い温度まで加熱されると、材料は賦形可能となる。この(当初の)形状は、SMPを硬質部分の融点またはガラス転移温度より低くなるまで冷却することによって記憶させることができる。形状が変形される間に、賦形されたSMPが軟質部分の融点またはガラス転移温度より低温まで冷却されると、新たな(一時的な)形状が固定される。当初の形状は、材料を軟質部分の融点またはガラス転移温度より高く、硬質部分の融点またはガラス転移温度より低い温度まで加熱することによって回復される。一時的形状を硬化させるための別の方法では、材料は軟質部分の融点またはガラス転移温度より低い温度で変形し、その結果、応力とひずみが軟質部分に吸収される。材料が、軟質部分の融点またはガラス転移温度より高く、硬質部分の融点(またはガラス転移温度)より低い温度まで加熱されると、応力とひずみは解放され、材料はその当初の形状に戻る。
【0012】
いわゆる硬質部分と軟質部分の2つのポリマーを複合したSMP材料を提供することが提案されてきた。硬質部分の融点またはガラス転移温度(以下、Ttransという)は、軟質部分のTtransより少なくとも10℃、好ましくは20℃高い。硬質または軟質部分を形成するのに、結晶またはアモルファス状態で、所定の範囲内のTtransを持つポリマーが使用されている。硬質部分のTtransは、好ましくは−30ないし270℃の範囲、より好ましくは30ないし150℃の範囲である。硬質部分:軟質部分の重量比は約5:95ないし95:5の範囲、好ましくは20:80と80:20の間である。形状記憶ポリマーはまた、硬質部分の代わりに、少なくともひとつの物理的架橋(硬質部分の物理的相互作用)または共有架橋を含むことができる。形状記憶ポリマーはまた、相互貫入ネットワークまたは準相互貫入ネットワークとすることができる。
【0013】
公知のSMPの硬質および軟質部分を調製するのに使用されるポリマーの例には、各種のポリエーテル、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリシロキサン、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリエーテルアミド、ポリウレタン/尿素、ポリエーテルエステル、ウレタン/ブタジエンコポリマーがある。たとえば、ワード他(Ward et al.)の米国特許第5,506,300号、ハヤシ(Hayashi)の米国特許第5,145,935号、ビトラー他(Bitler et al.)の米国特許第5,665,822号、およびゴードン(Gorden)の"Applications of Shape Memory Polyurethanes", Proceedings of the First International Conference on Shape Memory and Superelastic Technologies, SMST International Committee, pp.115-19(1994)等を参照されたい。
【0014】
また、Tgが室温より高い、高架橋(highly crosslinked)ホモポリマーを使用することが提案されており、架橋として機能する絡み合いの寿命が延ばされている。しかしながら、絡み合いを弾性の唯一の発生源とすることにより、加工が著しく困難となり、その結果、最終的に形状記憶性能を損なうことになる可塑剤の使用の必要性が生じる。既存の形状記憶ポリマーは、ポリウレタン(三菱)とNorsorex(登録商標)(日本ゼオン)をもとにして調製され、ゴムとして使用されている。いずれも、溶剤を使用せずに複雑な形状にキャスティングすることができず、また、どちらも光学的用途に使用できるほど十分な光学的透明性を持たない。上記の重大な制約から、重合工程そのものにおいて、応力のない状態が形成されるキャスティング可能な反応性製剤へのニーズが高まっている。この場合、形状記憶キャスティング物(固体物)、薄膜、コーティング、接着剤はすべて、同じ製剤から加工でき、加工方法によって違うものとすることができる。
【0015】
本発明の目的は、転移温度とゴム弾性率を所期の用途に応じて調整できる、形状記憶可能な物体を形成することのできる形状記憶ポリマーを提供することである。
【0016】
本発明の別の目的は、転移温度とゴム弾性率を所期の用途に応じて調整でき、回復可能なひずみが数百パーセントを超える、形状記憶可能な物体を形成することのできるポリマーを提供することである。
【0017】
本発明のまた別の目的は、公知の形状記憶ポリマーのそれとは異なる物理的、化学的構成を有する形状記憶ポリマーを提供することである。
【0018】
本発明のさらに別の目的は、コーティング、薄膜、接着剤の形態のキャスティング可能な製剤として加工できる形状記憶ポリマーを提供することである。
【0019】
本発明の他の目的は、光学的に透明で無色のキャスティング可能な形状記憶ポリマーを提供することである。
【0020】
【特許文献1】米国特許第5,506,300号明細書
【特許文献2】米国特許第5,145,935号明細書
【特許文献3】米国特許第5,665,822号明細書
【非特許文献1】Applications of Shape Memory Polyurethanes", Proceedings of the First International Conference on Shape Memory and Superelastic Technologies, SMST International Committee, pp.115-19(1994)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明によれば、それぞれ、ビニルモノマー、ビニリデンモノマー、アルキルメタクリレートのカテゴリから選択された2つのモノマーを共重合することによって、そのホモポリマーのいずれに関するものともまったく異なるガラス転移温度を有するキャスティング可能な形状記憶ポリマー(CSMP)を形成し、多官能モノマーを重合反応の中に含め、コポリマーが重合中に架橋され、熱硬化ネットワークを形成するようにすることによって、上記の目的が実現され、たとえば形状記憶合金やポリウレタン等の先行技術による形状記憶製品の欠点が克服される。
【0022】
ビニル、ビニリデン、アルキルメタクリレートモノマーから選択された2つのモノマーと多官能架橋剤に加え、有機過酸化物あるいはアゾ化合物等の開始剤も存在する。
【0023】
本発明は、2つまたはそれ以上のモノマーと架橋剤の混合物の使用を含み、少なくともひとつの選択されたモノマーは、高Tgポリマー形成カテゴリと低Tgポリマー形成カテゴリの各々から選択されたものである。
【0024】
高Tgポリマー形成モノマーには以下のものがある。塩化ビニル、ビニルブチラール、フッ化ビニル、ピバル酸ビニル、2−ビニルナフタレン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、ビニルピロリドン、n−ビニルカーバゾル、ビニルトルエン、ビニルベンゼン(スチレン)、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、アクリル官能基化POSS、メタクリル官能基化POSSその他。(POSSは、Hybrid Plastics, Inc.から市販されているpolyhedraloligosilsesquioxaneである。)
【0025】
低Tgポリマー成形モノマーには、次のものがある。ビニルエチルエーテル、ビニルラウレート、ビニルメチルエーテル、ビニルプロピオネート、アルキルアクリレート(メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート)、アルキルメタクリレート(プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート)。
【0026】
モノマーは、使用前に、蒸留あるいは、その目的のために設計されたカラムに流すことにより、阻害物質を排除するために精製しなければならない。
【0027】
多官能モノマーまたは架橋剤には次のものがある。ジアクリレート類:プロポキシレートネオペンチルグリコールジアクリレート、グリコールの長さが異なるポリエチレングリコールジアクリレート、たとえば、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール200ジアクリレート、ポリエチレングリコール400ジアクリレート;ポリエチレングリコールジメタクリレート、たとえば、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコール200ジメタクリレート、ポリエチレングリコール600ジメレタクリレート;1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート;トリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレート、トリアクリレートおよびテトラアクリレート、たとえば、グリセリルプロキシトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレートおよびマルチアクリル−またはマルチメタクリル−POSS。POSSとは、Hybrid Plastics, Inc.から市販されているpolyhedraloligosilsesquioxaneである。好ましくは、架橋剤は二官能モノマーであり、最も好ましくは、テトラエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)である。
【0028】
架橋剤は一般に、購入した状態のまま使用できるが、これも、蒸留または吸収性カラムクロマトグラフィによって精製し、存在するかもしれない阻害物質を排除することが好ましい。
【0029】
架橋は、完全な形状記憶能力を実現するために必要である。不完全な形状記憶能力(50−90%の範囲)は、架橋がなくても実現でき、100kg/molより大きな分子量の場合、なお実現でき、特に250kg/molより大きいとさらに実現できる。
【0030】
架橋剤の量は、0.3重量%から10重量%までと幅広く、その正確な数値は、一時的な形状の賦形中に保存された機械的エネルギーを決定する。
【0031】
熱重合開始剤として、たとえば、tert―アミルパーオキシベンゾエート、1,1’―アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、4,4−アゾビス(4−シアノバレリン酸)、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、過硫化カリウムおよび好ましくは2,2’−アゾ−ビスブチロニトリル等、モノマーに溶解される開始剤が使用される。
【0032】
好ましくは、開始剤は、先行技術においてその使用が知られている方法を用いた再結晶によって精製される。
【0033】
一般に、モノマーはその使用量範囲が広く、所期の用途に基づいて選択される広範囲の転移温度をカバーする、魅力的な形状記憶特性を有する形状記憶ポリマーを提供する。
【0034】
医療機器に使用する場合の、転移温度範囲がT=37℃を含むべき好ましい範囲は、ブチルメタクリレート(BMA)が60ないし80%、メチルメタクリレート(MMA)が20ないし40%である。これらの範囲では、パーセンテージが10%未満の場合に使用される架橋剤に関係なく、30ないし60℃の急峻なガラス転移温度を実現できる。
【0035】
使用される開始剤の量は0.1%ないし2%、好ましくは0.2%から1%とする。架橋剤が使用されない場合、高分子量ポリマーを得るための好ましい範囲は0.05%ないし0.25%である。
【0036】
本発明によれば、転移温度(Tg)は、モノマーの比率によって調整でき、架橋の程度が平衡ゴム弾性率を制御する。後者は、変形中に保存されるエネルギー、したがって、ポリマーが回復する際に解放に使用されるエネルギーを決定する。新しいポリマーは、非常に良好な形状記憶効果を呈する。転移温度は、20ないし110℃と広い範囲で調整可能である。本発明の形状記憶ポリマーは、コーティングや薄膜の形態でキャスティング可能な調剤として加工できる。さらに、これらは光学的に透明で無色である。このキャスティング可能な形状記憶ポリマーは、使用の可能性が非常に大きく、たとえば、新規な医療機器の加工におけるコーティング等に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
材料と合成
アルキルメタクリレートモノマー(メチルメタクリレート、MMA;ブチルメタクリレート、BMA)と架橋剤(テトラエチレングリコールジメタクリレート、TEGDMA)をAldrichから購入した。開始モノマー中に存在するすべての阻害物質を、液状モノマーにScientific Polymer Products, Inc.から購入した阻害物質除去カラムを通過させて除去した。Aldrichから購入したAIBNをそのまま熱重合開始剤として使用した。精製したモノマーと架橋剤を、室温において、表1(下)に示すように、さまざまな比率(ここでは、%Aとする)でAIBNと攪拌によって混合した。この混合物について、次に、フラスコの中で、65℃のオイルバスを使い、最高30分間、重合前処理(pre-polymerize)を行い、粘度を前述の条件を使ったキャスティングに反応しやすい数値まで増加させ、グリセロールのそれと同様の粘度を得た。この粘性流体を、密封用に設計されたスペーサまたはOリングがその間に挿入された2枚のキャスティングガラスプレートの間に充填し、このアセンブリをオーブンに入れ、40℃ないし60℃、好ましくは50℃で8から50時間、好ましくは48時間保持した。次に温度を約70℃ないし約100℃に上げ、10ないし40時間、好ましくは20から30時間、最も好ましくは80℃で24時間保温した。次に、温度を90ないし150℃、好ましくは100ないし120℃に上げ、この選択された温度で5ないし20時間保持し、最も好ましくは温度を100℃に上げて6時間保ち、残留モノマーを完全に反応させた。その後、この試料を室温まで冷却し、型からはずした。硬化時間を長くすることにより、収縮が最小限に抑えられ、試料に応力が残らず、空隙、ひびが発生しなかった。
【0038】
本発明のポリマーは、次のステップを以下に示す順序で実行することによって得ることができる。工程は、具体的なモノマー、架橋剤および開始剤について述べられているが、ここで使用に適していると開示されたその他の材料にも同等に応用できる。
1.MMA/BMA/TEGDMAとAIBN(開始剤、モノマーの0.3%)を混合する。
2.液状混合物に対し、約65℃の温度で30分間、重合前処理を行う(粘度を上げるため)。重合前処理時間は、キャスティングに適した所望の粘性が得られるのに必要な時間に応じて、0ないし30分の間で変更できる。たとえば、グリセロールの粘性と同等の粘性は、前述の具体的条件で得られる。
3.反応性混合物を、Oリングによって密封された2枚のガラススライド(または、接着しないように作られた型)の間に注入し、型をオーブンに入れ、50℃で2日間保温する。温度範囲は40℃ないし60℃とすることができるが、50℃が好ましい。時間は、8時間ないし80時間とすることができるが、反応を完了させるには48時間が好ましい。
4.反応温度を80℃に上げて1日保温する。温度範囲は70ないし100℃、時間は10時間ないし40時間とすることができるが、好ましくは20ないし30時間である。
5.反応温度を100ないし120℃に上げ、10時間保温する。温度範囲は90ないし150℃、時間は5ないし20時間とすることができる。
6.室温まで冷却し、型からはずす。
【0039】
反応混合物の粘性を上げるための工程の第一段階は、紫外線照明を使って室温で実行することができる。これが行われる場合、AIBNは、紫外線開始物質と熱重合開始物質の両方として機能するため、好ましい開始剤といえる。熱重合開始物質はその後の硬化を完了させるために必要である。使用可能な紫外線開始剤には、たとえば、紫外線光に対して感度があり、紫外線照射を受けるとフリーラジカルに分解する開始剤等があり、アセトフェノン、アニソイン、アントラキノン、アントラキノン−2−硫酸、ナトリウム塩一水和物、(ベンゼン)トリカルボニルクロミウム、ベンジル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾフェノン、ベンゾフェノン/1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(50/50混和)、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラ二無水カルボン酸、4−ベンゾイルビフェニル、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−4’−モルフォリノブチロフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン,4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、カンホルキノン、2−クロロチオキサンセン−9−オン、(クメン)シクロぺンタジエニル鉄(II)ヘキサフルオロホスフェート、ジベンゾスベレノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、4−(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ジメチルベンジル、4,4’−ジメチルベンジル等である。
【0040】
紫外線照明を使用すれば、次の2ステップ手順を実行することもできる。
1.上記のように調製され、紫外線透過性の型に入れられた混合物を、強度10ないし100mW/cm2の範囲、好ましくは25mW/cm2の紫外線放射(波長365nm)に、温度25℃ないし50℃(好ましくは40℃)で、60ないし120時間、好ましくは90分間暴露する。
2.100℃まで加熱し、10ないし30時間保温することにより、硬化を完了させ、存在する残留モノマーおよび小分子を重合する。
【0041】
本発明をより具体的に説明するために次の例を挙げるが、これらは限定的であるとは解釈しないものとする。
【0042】
例1:POSSを含むキャスティング可能な形状記憶ポリマーの合成:
材料:メタクリルイソブチル−POSS(Hybrid Plastics, Inc.のMA0702(登録商標))をそのまま使用した。メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、テトラエチレングリコールジメチルアクリレート、AIBNをAldrichから購入し、前述のように精製した。
【0043】
重合手順:
材料MA0702,MMA,BMA,TEGDMA,AIBNをまず、小さなガラス瓶の中で混合し、透明な混和性溶液を得た。この透明な(溶剤を含まない)溶液を温度65℃で30分間予熱し、透明な粘性流体を得た。液体を室温に冷却し、シールおよびスペーサを備える2枚のガラススライドの間に注入した。このステップは、管理しやすい粘度を実現する65℃/30分間の予熱によって促進された。この密封物を40℃に予熱したオーブンの中に移し、48時間保持し、次に65ないし80℃に温度を上げ、さらに24時間保ち、最後に120℃に上げて10時間保ち、残留モノマーのすべてを反応させた。
【0044】
POSSモノマーを、上述のように、約15wt−%の溶解性限界まで製剤に添加できる。0%ないし30%のMMA比率範囲を使うことで、キャスティング物は優良な形状記憶特性を示す。
【0045】
例2:複合紫外線熱重合
材料は、前述のものと同じであり、次の量で使用した。
モノマーの総量に基づき、MMA30%、BMA70%、TEGDMA5%、開始剤としてAIBN0.3%。
【0046】
材料をまず混合し、均質で透明な溶液を作り、次にこれを2枚のガラススライド(一方のガラススライドは、好ましくは石英とする)の間に注入し、40℃まで加熱した。波長365nmの紫外線ランプを使い、反応性混合物が固化するまで、これを90分間照明した。この調合物を、100ないし120℃に保持されたオーブンに24時間入れ、すべての残留モノマーを重合した。
【0047】
上記のようにして得られたキャスティング物は、熱硬化されたキャスティング物と比較して同様の熱機械的特性を示したが、部分的固化、複雑な三次元的形状への熱機械的賦形、および硬化完了後に離型できるという利点を伴っていた。
【0048】
紫外線照明を用いずに、40℃で24時間、同じ工程を繰り返したところ、混合物は依然として液状のままであり、紫外線照明が、紫外線熱重合された試料の固化において主導的役割を果たすことが示された。
【0049】
熱特性:
熱重量分析(TGA)および示差走査熱量分析(DSC)を、パーキンエルマー(Perkin-Elmer)計器(それぞれモデル951と2910)を使って行った。TGA分析を実行するために、試料を窒素雰囲気中で室温から600℃へと、20℃/分の速度で加熱した。重量損失の開始温度と重量損失のパーセンテージを記録した。DSCについては、試料をまず−50℃から150℃に、10℃/分の速度で加熱し、過去の温度履歴をすべて消去した。次に、試料を−50℃へと80℃/分の速度で急冷し、最終的には試料を10℃/分で150℃に再加熱した。この2回目の加熱の熱容量中間点に対応する温度を使い、そのポリマーのガラス転移温度を決定した。
【0050】
動的機械分析:
SMPの弾性率は、TA計器DMA2980を使い、引張モードにおいて動的機械熱分析(DMTA)によって測定された。採用された方法は、1Hzの一定した機械的発振周波数での温度上昇(temperature-ramp)であった。温度は、熱消費率4℃/分で、−100℃から200℃に上昇した。長方形の薄膜形状を選択し、薄膜の形状寸法は長さ×幅×厚さ、15×2×1.2mmであった。
【0051】
形状記憶:
応力を受けない(ストレスフリーの: stress-free)形状回復手順を実行し、調製された試料がゴム状態で誘発され、ガラス状態に凍結されたひずみを回復する能力を評価した。試料をまず長方形にカットし、光学的コントラストを持たせるために、赤に染色した。次に、特定の試料を、T=90℃の温水バスの中で加熱しながら曲げ、幅軸を中心として内径0.737cmの円形の形状にした。変形した試料を、氷水の中で急冷し、ガラス化によってその形状に固定した。続いて、この結果得られた、曲がった試料をカスタム化されたプランジャを使って、所定の温度の温水バスにくぐらせ、形状の回復を、ビデオカメラと1秒に20フレームのレートで画像を回収するデジタルフレームグラバを使って視覚的にモニターした。
【0052】
モノマー比の異なるSMPのTGA:
BMA対MMAの比率が異なる(0%ないし100%)一連の形状記憶ポリマーを、上述の手順で合成し、特徴づけ、ポリマーの熱的安定性を、図1に示すようにTGAによって測定した。BMAの純粋ポリマー(MMA0%)を使った場合、薄膜は非常に安定しており、250℃未満では分解しないことがわかる。MMAがコポリマーに含まれると、このコポリマーの分解温度は、より高温に推移する。さらにモノマーMMAを増やすと、分解温度は上昇し、PMMAのホモポリマーの分解温度は最も高くなり、ホモポリマーPBMAより約50℃高い。これは、MMAモノマーの安定性への貢献がBMAより大きく、すべてのポリマーが、医療機器に関連して使用するのに十分な安定性を持っていることを証明する。すべてのポリマーは、450℃より高い温度に加熱されると、窒素の中で完全に分解することができる。
【0053】
モノマー比の異なるSMPのDSC:
モノマーMMAの比率が0%から100%の範囲で異なるSMPのガラス転移温度をDSCによって測定し、その結果を図2に示し、表1にまとめる。
【0054】
【表1】

【0055】
図2から、コポリマーにはひとつのTgしかなく、これは、コポリマーが骨格(バックボーン: backbone)に沿ったモノマーの分散において合理的にランダムであることを示していることがわかる。純粋なポリ(ブチルメタクリレート)の測定されたTgは22.2℃であるが、MMAを添加すると、ガラス転移温度はより高温へと体系的に上昇する。最終的に、本発明の方法によって調製された純粋なPMMAのTgは117.7℃である。したがって、形状記憶挙動のための転移温度は2種類のモノマーの組成比を変更することによって調整できる。ポリマーのTg’は表1に示すとおりであり、フォックス方程式(Fox equation)(図3)によって相関される。この結果は、等式がデータに対応することを示す。
【0056】
架橋がある場合とない場合のCSMPのDMTA比較:
DMTAを使い、同じモノマー比で、架橋のあるポリマーの温度依存貯蔵弾性率を、架橋のないポリマーのそれと比較した(図4)。この図において比較された特定の試料の、架橋なし、架橋ありの場合のMMA/BMA/TEGDMAの重量パーセントはそれぞれ、30/70/0と28.5/66.5/5である。どちらのポリマーも、70℃未満の温度で、〜3×109Paの引張弾性率でのガラス性機械的応答を示している。温度が70℃に達すると、弾性率は大きく低下し、100℃においてそのゴム状に到達する。このシステムについて、TEGDMAの濃度が低いと(この場合、5wt%)、ガラス転移温度は影響を受けず、Tgとゴム弾性率を別個に制御することが可能となる。架橋剤を使用しないと、ポリマーのゴム弾性率は、粘性流が発生するまで温度の上昇とともに急速に下落し、平衡ゴム弾性率は維持されない。架橋を用いた場合、試料は平坦な平衡弾性率を示し、熱劣化が発生するまで流れることはない。このように、MMAとTEGDMAの含量によって熱機械的特性を調整することが可能であることによって、必要な臨界温度とゴム弾性率(機械的作業)が決定される用途に合わせて調整可能な材料システムが実現する。
【0057】
CSMPSの形状記憶挙動:
キャスティング可能な帯状の形状記憶ポリマーの応力のないひずみ回復を実行し、その結果を図5に示す。ポリマーの当初の形態(永久形状)は、極めて平らな長方形の帯であった。この帯は、円(二次形状)へと変形され、形状記憶手順について前述したように固定された。変形された帯の形状記憶は、90℃の温水バスの中に素早く沈めることにより、臨界温度より高温に加熱されることによって引き起こされた。図5に示されるように、帯の回復速度と程度は、デジタル式の記録によれば、この帯が良好な形状記憶効果を持ち、10秒で完全にその当初の形状に回復できることがわかる。しかしながら、ひずみのほとんどは、最初の5秒以内に回復される。
【産業上の利用可能性】
【0058】
その固有の記憶特性により、キャスティング可能な形状記憶材料は、たとえば受動的光学温度センサ等に使用することができる。このような用途において、CSMPは、記載されたメッセージ(たとえば、「この包装は85°Fを超えています。」等)として包装資材の上に成形され、その後、エンボスまたは発泡加工を施し、透明なコーティングを不透明にする。コーティングが所定の温度(CSMP臨界温度)より高温に加熱されると、再び形状記憶を通じて光学的に透明となり、包装材にかかれたメッセージが表示される。図2について述べたように、異なる転移温度を持つ一連のCSMPを使用することにより、異なる露出温度で異なるメッセージを出現させることができる。本発明のCSMPの別の使用例としては、熱によって引き起こされる、自己展開可能な、使い捨てのポンプがある。加熱された型に入ったCSMPを回転キャスティングすることにより、中空のタンクを熱硬化によって加工し、その後、CSMPのTgより高いガス圧で拡張され、室温に冷却され、その中に液体を充填することが可能となる。特に、CSMP材料を膨張させない液体、たとえば水溶液、水性塗料等を使用できる。タンクをCSMPのTgより高い温度に加熱すると、ポリマーのゴム弾性率と、使用された流量制限(ノズル)によって決定される圧力で、この液体は最後まで容易に押し出される。このポンプの再利用は、CSMPの臨界温度より高いガスで加圧することによって実現される。この用途は、小型ロケットのモータ、使い捨て塗料スプレー、および熱により引き起こされる化学物質の放出に有益である。
【0059】
本発明の形状記憶ポリマーには、物体として、またコーティング、薄膜、接着剤の形態でのキャスティング可能な製剤として、膨大な数のその他の用途がある。形状記憶ポリマーは特に、医学および生物学的用途、たとえば、縫合、歯科矯正材料、ボーンスクリュー、ネイル、プレート、メッシュ、義歯、ポンプ、カテーテル、フィルム、ステント、組織工学のためのスカフォールド、薬剤投与装置、温度インディケータその他において特に有用である。
【0060】
固有の記憶特性により、形状記憶材料は、自己トリガ式ステント、カテーテル、補助装置用として、医療機器業界においてますます使用されている。装置は、熱機械的に調整され、外科的に体内に装着され、その後、手術中に熱その他による処理を施し、その装置が体内で特定の機械的作動を行うような転移を起こさせることができる。SMP材料には、外科的要件に応じた転移温度(Tg)と回復力(ゴム弾性率)の両方を予め決定することができるため、既存の医療機器を改造する大きな可能性がある。さらに、変形の程度は200%にもなりうる。公知のSMA装置の変形は8%程度にすぎず、臨界温度は調整が困難である。さらに、本発明の形状記憶材料の光学的透過性と染料の受容能力が、その用途を大幅に改良、拡大する。
【0061】
本発明のその他の実施形態では、反応混合物にポリメチリアクリレート等のポリマーを溶解させ、本発明においてはプリキュアによって達成される粘性改善を実現することも含む。本明細書に記載されるモノマー混合物に溶解し、重合中に混和性溶液を生成するすべてのポリマーは、このようなポリマーとして適している。たとえば、ポリ(アルキルメタクリレート)、ポリ(アルキルアクリレート)、ポリ(アキルメタクリレート)とポリ(アキルアクリレート)のコポリマー、POSS変性ポリ(アルキル(メタ)アクリレート)等が反応混合物に溶解されるが、これに限るものではない。好ましい実施形態において、ポリ(ブチルメタクリレート)とMMAとPOSS−アクリレート(MA0702)のコポリマーが用いられてBMA/MMA/TEGDMA/AIBNの反応性混合物中に溶解され、粘度が有利に上昇された。ポリマーの濃度は、0%から混和性限界までの範囲、好ましくは10ないし40wt−%の範囲とすることができる。形状記憶挙動は、このようなコンポーネントを追加しても、上記のように使用した場合、損なわれない。
【0062】
開示された実施形態以外のさまざまな実施形態またはその他の変更は、この説明を読む当業者にとっては明らかであり、あるいは添付の特許請求範囲で定義されている本発明の精神と範囲から逸脱せずに実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】コポリマーのMMA含量に対する熱的安定性の依存性を示すグラフである。
【図2】MMA重量パーセントで示されるコポリマーのDSCのグラフである。
【図3】Tgのコポリマー組成への依存性を、Tg-1対MMA重量パーセントで示すグラフである。
【図4】MMAおよびTEGDMA重量パーセントがそれぞれ30と5である場合の、架橋の有無による引張貯蔵弾性率の温度依存性を示すグラフである。
【図5】T=80℃のウォーターバスに急速に沈めた場合の、架橋MMA/BMA/TEGDMA(28.5/66.5/5wt%)のひずみ回復を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれのホモポリマーのガラス転移温度が異なる2種類のモノマーを共重合し、そのガラス転移温度が前記2つのホモポリマーの数値の間であるコポリマーを生成することによって得られる形状記憶ポリマー組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の形状記憶ポリマーであって、
前記モノマーは、ビニルモノマー、ビニリデンモノマーとアルキルメタクリレートからなるグループから選択されるそれぞれ1種であることを特徴とする形状記憶ポリマー。
【請求項3】
請求項2に記載の形状記憶ポリマー組成物であって、
前記モノマーはそれぞれビニルモノマーであることを特徴とする形状記憶ポリマー組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の形状記憶ポリマー組成物であって、
前記モノマーのひとつは、高Tgポリマー形成モノマーであり、塩化ビニル、ビニルブチラール、フッ化ビニル、ピバル酸ビニル、2−塩化ビニル、ビニルブチラール、フッ化ビニル、ピバル酸ビニル、2−ビニルナフタレン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、ビニルピロリドン、n−ビニルカーバゾル、ビニルトルエン、ビニルベンゼン(スチレン)、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、アクリル官能基化POSS、メタクリル官能基化POSSからなるグループから選択される1種であることを特徴とする形状記憶ポリマー組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の形状記憶ポリマー組成物であって、
前記モノマーのひとつが低Tgポリマー形成モノマーであり、ビニルエチルエーテル、ビニルラウレート、ビニルメチルエーテル、ビニルプロピオネート、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレートからなるグループから選択される1種であることを特徴とする形状記憶ポリマー組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の形状記憶ポリマー組成物であって、
前記モノマーのひとつは、ガラス転移温度が高く、塩化ビニル、ビニルブチラール、フッ化ビニル、ピバル酸ビニル、2−ビニルナフタレン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、ビニルピロリドン、n−ビニルカーバゾル、ビニルトルエン、ビニルベンゼン(スチレン)、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、アクリル官能基化POSS、メタクリル官能基化POSSからなるグループから選択され、前記他方のモノマーはガラス転移温度が低く、ビニルエチルエーテル、ビニルラウレート、ビニルメチルエーテル、ビニルプロピオネート、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレートからなるグループから選択されることを特徴とする形状記憶ポリマー組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の形状記憶ポリマー組成物であって、
前記高ガラス転移温度モノマーはメチルメタクリレートであり、前記低ガラス転移温度モノマーはブチルメタクリレートであることを特徴とする形状記憶ポリマー組成物。
【請求項8】
請求項1に記載の形状記憶ポリマー組成物であって、
前記コポリマーのガラス転移温度は20℃から110℃に調整されることを特徴とする形状記憶ポリマー組成物。
【請求項9】
請求項1に記載の形状記憶ポリマー組成物であって、
多官能モノマーが共重合反応に組み込まれ、前記コポリマーは重合中に架橋され、熱硬化ネットワークを形成することを特徴とする形状記憶ポリマー組成物。
【請求項10】
請求項9に記載の形状記憶ポリマー組成物であって、
前記多官能モノマーは二官能モノマーであることを特徴とする形状記憶ポリマー組成物。
【請求項11】
請求項10に記載の形状記憶ポリマー組成物であって、
前記二官能モノマーは、アルキルジメタクリレートであることを特徴とする形状記憶ポリマー組成物。
【請求項12】
請求項10に記載の形状記憶ポリマー組成物であって、
前記多官能モノマーは、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコール200ジメタクリレート、ポリエチレングリコール600ジメタクリレート;プロポキシレート化ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、グリセリルプロキシトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ならびに、マルチアクリルおよびマルチメタクリル−POSSであることを特徴とする形状記憶ポリマー組成物。
【請求項13】
請求項7に記載の形状記憶ポリマー組成物であって、
メチルメタクリレートとブチルメタクリレートの比が、メチルメタクリレート対ブチルメタクリレートで20−80:80−20%の範囲であることを特徴とする形状記憶ポリマー組成物。
【請求項14】
請求項7に記載の形状記憶ポリマー組成物であって、
コポリマーにおけるメチルメタクリレートの含量が増加することにより、前記コポリマーのガラス転移温度が上昇することを特徴とする形状記憶ポリマー組成物。
【請求項15】
2種類のモノマーを共重合させることによって得られる形状記憶ポリマー組成物であって、前記モノマーのそれぞれのホモポリマーは、二官能モノマーの存在下でガラス転移温度が異なり、結果として得られるコポリマーが架橋され、前記ホモポリマーの数値の間のガラス転移温度を有するようになることを特徴とする形状記憶ポリマー組成物。
【請求項16】
請求項15に記載の形状記憶ポリマー組成物であって、
前記ホモポリマーのひとつのガラス転移温度が約20℃であり、他方のホモポリマーのそれは約120℃であることを特徴とする形状記憶ポリマー組成物。
【請求項17】
請求項15に記載の形状記憶ポリマー組成物であって、
前記二官能モノマーがテトラエチレンジグリコールジメタクリレートであることを特徴とする形状記憶ポリマー組成物。
【請求項18】
請求項17に記載の形状記憶ポリマー組成物であって、
前記テトラエチレングリコールジメタクリレートの含量が、ポリマーのゴム弾性率(ラバー係数: rubber modulus)を画定し、最大20%の量で存在することを特徴とする形状記憶ポリマー組成物。
【請求項19】
請求項18に記載の形状記憶ポリマー組成物であって、
前記テトラエチレングリコールジメタクリレートは0.5%ないし10%の量で存在することを特徴とする形状記憶ポリマー組成物。
【請求項20】
形状記憶機能を有する組成物を作製する方法であって、
a)それぞれのホモポリマーが異なるガラス転移温度を有する2種類のモノマーからなるコポリマーを、二官能モノマーの存在下で調製し、架橋され、ガラス転移温度が前記2つのホモポリマーの数値の間であるコポリマーを提供するステップと、
b)前記組成物を、加熱しながら第一の形状に賦形し、変形試料を成形するステップと、
c)前記変形試料を冷水中で急冷するステップと、
d)前記急冷された試料を温水中で加熱し、前記変形試料をその当初の形状に戻すステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法であって、
前記ステップa)は、紫外線照明を使用して行われることを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項1の形状記憶ポリマー組成物を備える医療機器または医療機器の構成要素。
【請求項23】
請求項22に記載の医療機器または医療機器の構成要素であって、
医療機器または医療機器の構成要素は、ステント、カテーテル、義歯、移植片、ねじ、ピン、プレート、ポンプ、メッシュからなるグループから選択されるひとつであることを特徴とする医療機器または医療機器の構成要素。
【請求項24】
それぞれのホモポリマーのガラス転移温度が異なる2種類のモノマーを共重合し、そのガラス転移温度が前記2つのホモポリマーの数値の間であるコポリマーを生成することによって得られる光学的に透明な形状記憶ポリマー組成物。
【請求項25】
請求項24に記載の光学的に透明な形状記憶ポリマー組成物であって、
前記コポリマーが染色可能であることを特徴とする形状記憶ポリマー組成物。
【請求項26】
請求項24に記載の光学的に透明な形状記憶ポリマー組成物であって、
前記コポリマーが無色であることを特徴とする形状記憶ポリマー組成物。
【請求項27】
請求項24に記載の光学的に透明な形状記憶ポリマー組成物であって、
キャスティング、押出成形または押し型成形可能であることを特徴とする形状記憶ポリマー組成物。
【請求項28】
請求項24に記載の光学的に透明な形状記憶ポリマー組成物であって、
熱感知用の光学シャッタに使用されることを特徴とする形状記憶ポリマー組成物。
【請求項29】
請求項24に記載の光学的に透明な形状記憶ポリマー組成物であって、
情報記憶または微小流動装置用の可逆エンボス加工に使用されることを特徴とする形状記憶ポリマー組成物。
【請求項30】
請求項24に記載の光学的に透明な形状記憶ポリマー組成物であって、
複雑な形状のテントを備える展開構造物に使用されることを特徴とする形状記憶ポリマー組成物。
【請求項31】
請求項24に記載の光学的に透明な形状記憶ポリマー組成物であって、
眼鏡に使用されることを特徴とする形状記憶ポリマー組成物。
【請求項32】
請求項6による形状記憶ポリマー組成物からなる接着剤。
【請求項33】
薄膜の形態をとる請求項6による形状記憶ポリマー組成物。
【請求項34】
コーティングの形態をとる請求項6による形状記憶ポリマー組成物。
【請求項35】
一体キャステイングの形態をとる請求項6による形状記憶ポリマー組成物。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−506471(P2006−506471A)
【公表日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−501480(P2004−501480)
【出願日】平成15年4月30日(2003.4.30)
【国際出願番号】PCT/US2003/013355
【国際公開番号】WO2003/093341
【国際公開日】平成15年11月13日(2003.11.13)
【出願人】(501315876)ユニバーシティ オブ コネチカット (22)
【Fターム(参考)】