説明

不揮発性記憶素子、不揮発性記憶装置、不揮発性半導体装置、および不揮発性記憶素子の製造方法

【課題】 動作の高速化を図ることができ、可逆的に安定した書き換え特性と、良好な抵抗値のリテンション特性を有し、半導体製造プロセスと親和性の高い不揮発性記憶素子およびその製造方法、並びにその不揮発性記憶素子を備える不揮発性記憶装置および不揮発性半導体装置を提供する。
【解決手段】 本発明の不揮発性記憶素子は、第1電極103と、第2電極105と、第1電極103と第2電極104との間に介在させ、両電極103,105間に与えられる電気的信号に基づいて可逆的に抵抗値が変化する抵抗変化層104とを備え、この抵抗変化層104は少なくともタンタル酸化物を含み、当該タンタル酸化物をTaOと表した場合に、0<x<2.5を満足するように抵抗変化層104が構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不揮発性記憶素子、不揮発性記憶装置、不揮発性半導体装置、および不揮発性記憶素子の製造方法に関し、特に、印加される電気的信号に応じて抵抗値が変化する抵抗変化型のものに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタル技術の進展に伴い、携帯型情報機器および情報家電などの電子機器が、より一層高機能化している。そのため、不揮発性記憶素子の大容量化、書き込み電力の低減、書き込み/読み出し時間の高速化、および長寿命化の要求が高まっている。
【0003】
こうした要求に対して、既存のフローティングゲートを用いたフラッシュメモリの微細化には限界があると言われている。他方、可変抵抗層を記憶部の材料として用いる不揮発性記憶素子(抵抗変化型メモリ)の場合、可変抵抗素子から成る単純な構造の記憶素子で構成することができるため、さらなる微細化、高速化、および低消費電力化が期待されている。
【0004】
可変抵抗層を記憶部の材料として用いる場合、例えば、電気的パルスの入力などによって、その抵抗値を高抵抗から低抵抗へ、または低抵抗から高抵抗へと変化させることになる。この場合、低抵抗および高抵抗の2値を明確に区別し、且つ低抵抗と高抵抗との間を高速に安定して変化させ、これら2値が不揮発的に保持されることが必要になる。このようなメモリ特性の安定および記憶素子の微細化を目的として、従来から、種々の提案がなされている。
【0005】
そのような提案の一つとして、2つの電極と、それらの電極に挟まれた記録層とを備え、その記録層の抵抗値を可逆的に変化するように構成された抵抗変化素子によりメモリセルが構成された記憶素子が、特許文献1に開示されている。図33は、そのような従来の記憶素子の構成を示す断面図である。
【0006】
図33に示すように、この記憶素子は、メモリセルを構成する複数の抵抗変化素子10がアレイ状に配置されて構成されている。抵抗変化素子10は、下部電極1と上部電極4との間に、高抵抗膜2とイオン源層3とが挟まれて構成されている。これら高抵抗膜2およびイオン源層3により記憶層が構成され、この記憶層によって、各メモリセルの抵抗変化素子10に情報を記録することができる。
【0007】
なお、それぞれの抵抗変化素子10は、半導体基板11上に形成されたMOSトランジスタ18の上方に配設されている。このMOSトランジスタ18は、半導体基板11内の素子分離層12により分離された領域に形成されたソース/ドレイン領域13と、ゲート電極14とからなる。また、ゲート電極14は、記憶素子の一方のアドレス配線であるワード線を兼ねている。
【0008】
MOSトランジスタ18のソース/ドレイン領域13の一方と、抵抗変化素子10の下部電極1とが、プラグ層15、金属配線層16、およびプラグ層17を介して電気的に接続されている。また、MOSトランジスタ18のソース/ドレイン領域13の他方は、プラグ層15を介して金属配線層16に接続されている。この金属配線層16は、記憶素子の他方のアドレス配線であるビット線に接続される。
【0009】
上記のように構成された抵抗変化素子10の下部電極1と上部電極4との間に極性の異なる電位を印加することにより、記録層を構成するイオン源層3のイオン源を高抵抗層2へ移動させる。または、そのイオン源を、高抵抗層2から上部電極4へ移動させる。これにより、抵抗変化素子10の抵抗値が高抵抗状態から低抵抗状態へ、または、低抵抗状態から高抵抗状態へと遷移して情報を記録することができる。
【0010】
また、上部電極と下部電極とで挟まれた可変抵抗材料が、多結晶構造を有する第1の電気パルス変動抵抗層と、ナノ結晶またはアモルファス構造のいずれかを有する第2の電気パルス変動抵抗層とで構成された記憶素子(相変化型メモリ)も知られている。この可変抵抗材料を構成する抵抗層は、印加する電気パルスの電圧およびパルス幅に対応して抵抗値を変化させることによって調整された上で抵抗変化素子として動作することになる(例えば、特許文献2を参照。)。
【0011】
ところで、特許文献1および特許文献2において示された可変抵抗材料とは異なるものとして、2元系の遷移金属酸化物を用いた例が報告されている。例えば、特許文献3では、可変抵抗材料としてNiO、V、ZnO、Nb、TiO、WO、CoOが開示されている。これらの材料は、2元系であるため、組成制御および成膜が比較的容易である。その上、半導体製造プロセスとの整合性も比較的良好であるといえる。
【0012】
また、特許文献4においては、各種金属元素により構成されたp型酸化物半導体材料が急激な金属−絶縁体転移を伴うことによって得られる様々な可変抵抗材料が記載され、特にGa、As、VOなどが具体的な実施例として開示されている。さらに、特許文献5においては、抵抗状態が異なる絶縁体として酸化チタンおよび酸化タンタルとしてTaを実施例とした可変抵抗材料が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2006−40946号公報
【特許文献2】特開2004−349689号公報
【特許文献3】特開2004−363604号公報
【特許文献4】特開2006−32898号公報
【特許文献5】特開平7−263647号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】I.G.Beak Et Al., Tech. Digest IEDM 204,587頁
【非特許文献2】Japanese Journal of Applied Physics Vol45, NO11, 2006, pp.L3 10-L312, 図2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上述したような従来の可変抵抗材料に用いられる遷移金属酸化物は、以下のような問題がある。
【0016】
まず、NiOなどの遷移金属酸化物を用いた場合、可変抵抗材料を低抵抗状態から高抵抗状態へ変化させるためには、μsオーダーの長パルスが必要になるため、高速化を図ることが困難であるという問題がある。
【0017】
また、TiOを遷移金属酸化物として用いた場合、TiNを400℃酸素雰囲気で酸化処理して、TiO/TiN膜構造にする必要があり、比較的高いプロセス温度を要するという問題がある。
【0018】
さらに、Taを遷移金属酸化物として用いた場合では、高抵抗状態から低抵抗状態への1回動作のみに利用可能なアンチヒューズとして機能し、書き換えができないという問題がある。
【0019】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、動作の高速化を図ることができ、可逆的に安定した書き換え特性と、良好な抵抗値のリテンション特性を有し、半導体製造プロセスと親和性の高い不揮発性記憶素子およびその製造方法、並びにその不揮発性記憶素子を備える不揮発性記憶装置および不揮発性半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決するために、本発明の不揮発性記憶素子は、第1電極と、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に介在させ、前記第1電極および前記第2電極間に与えられる電気的信号に基づいて可逆的に抵抗値が変化する抵抗変化層とを備え、前記抵抗変化層は、少なくともタンタル酸化物を含み、当該タンタル酸化物をTaOと表した場合に、0<x<2.5を満足するように構成されている。
【0021】
また、前記抵抗変化層を構成するタンタル酸化物層は、Taよりも酸素が少ない組成を有し、かつ絶縁体でない。なお、本発明における絶縁体の定義は、一般的な絶縁体の定義に従う。即ち、抵抗率が10Ωm以上の材料を絶縁体と定義する(出展:『集積回路のための半導体工学』工業調査会(1992年)宇佐見晶、兼房慎二、前川隆雄、友景肇、井上森雄)。
【0022】
前記抵抗変化層は、少なくともタンタル酸化物を含み、当該タンタル酸化物をTaOと表した場合に、0<x≦1.9を満足するように構成されていることが好ましい。
【0023】
前記抵抗変化層は、少なくともタンタル酸化物を含み、当該タンタル酸化物をTaOと表した場合に、0.5≦x≦1.9を満足するように構成されていることがより好ましい。
【0024】
前記抵抗変化層は、少なくともタンタル酸化物を含み、当該タンタル酸化物をTaOと表した場合に、0.8≦x≦1.9を満足するように構成されていることがさらに好ましい。
【0025】
前記抵抗変化層は、前記第1電極および前記第2電極間に与えられる両極性の電気的信号により可逆的に抵抗値が変化してもよい。
【0026】
前記第1電極及び前記第2電極の少なくとも一方が、Pt,Ir,Cu,Au,Ag,TiN,及びTiAlNの少なくとも一種以上から構成されていることが好ましい。
【0027】
また、本発明の不揮発性記憶装置は、半導体基板と、前記半導体基板の上に互い平行に形成された複数の第1の電極配線と、前記複数の第1の電極配線の上方に前記半導体基板の主面に平行な面内において互いに平行に且つ前記複数の第1の電極配線に立体交差するように形成された複数の第2の電極配線と、前記複数の第1の電極配線と前記複数の第2の電極配線との立体交差点に対応して設けられた不揮発性記憶素子とを備えるメモリアレイを備え、
前記不揮発性記憶素子のそれぞれは、前記第1の電極配線と前記第2電極配線との間に介在させ、前記第1電極配線および前記第2電極配線間に与えられる電気的信号に基づいて可逆的に抵抗値が変化する抵抗変化層とを備え、
前記抵抗変化層は、少なくともタンタル酸化物を含み、当該タンタル酸化物をTaOと表した場合に、0<x<2.5を満足するように構成されている。
【0028】
前記不揮発性記憶素子のそれぞれは、前記第1の電極配線と接続された第1電極と、前記第2の電極配線と接続された第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に介在させられた前記抵抗変化層とを備え、前記抵抗変化層は、前記第1の電極配線および前記第2の電極配線に与えられ、ひいては前記第1電極および前記第2電極間に与えられる電気的信号に基づいて可逆的に抵抗値が変化してもよい。
【0029】
前記不揮発性記憶素子のそれぞれは、前記第1電極と前記第2電極との間に電流抑制素子を備えており、当該電流抑制素子は、前記抵抗変化層と電気的に接続されるように構成することができる。
【0030】
不揮発性記憶装置は、前記メモリアレイが複数積層されてなる多層化メモリアレイを備えていてもよい。
【0031】
また、本発明の不揮発性記憶装置は、半導体基板と、前記半導体基板上に形成された、互いに交差するように配列された複数のワード線および複数のビット線、前記複数のワード線および複数のビット線の交点に対応してそれぞれ設けられた複数のトランジスタ、並びに前記複数のトランジスタに一対一で対応して設けられた複数の不揮発性記憶素子とを備え、
前記不揮発性記憶素子のそれぞれは、第1電極と、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に介在させ、前記ビット線と前記ワード線との間に与えられ、ひいては、対応して設けられている前記トランジスタを介して前記第1電極および前記第2電極間に与えられる電気的信号に基づいて可逆的に抵抗値が変化する抵抗変化層とを備え、
前記抵抗変化層は、少なくともタンタル酸化物を含み、当該タンタル酸化物をTaOと表した場合に、0<x<2.5を満足するように構成されている。
【0032】
また、本発明の不揮発性記憶装置は、半導体基板と、前記半導体基板上に形成された、所定の演算を実行する論理回路およびプログラム機能を有する不揮発性記憶素子とを備え、
前記不揮発性記憶素子は、第1電極と、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に介在させ、両電極間の電圧に基づいて可逆的に抵抗値が変化する抵抗変化層とを備え、
前記抵抗変化層は、少なくともタンタル酸化物を含み、当該タンタル酸化物をTaOと表した場合に、0<x<2.5を満足するように構成されている。
【0033】
また、本発明の不揮発性半導体装置は、請求項12に記載の不揮発性半導体装置と、請求項7,8,および11のいずれかに記載の不揮発性記憶装置とを備える。
【0034】
また、本発明の不揮発性記憶素子の製造方法は、第1電極と、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に介在させ、前記第1電極および前記第2電極間に与えられる電気的信号に基づいて可逆的に抵抗値が変化する抵抗変化層とを備え、前記抵抗変化層は、少なくともタンタル酸化物を含み、当該タンタル酸化物をTaOと表した場合に、0<x<2.5を満足するように構成されている不揮発性記憶素子の製造方法であって、前記タンタル酸化物をスパッタ法により形成する。
【0035】
本発明の上記目的、他の目的、特徴、及び利点は、添付図面参照の下、以下の好適な実施態様の詳細な説明から明らかにされる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、高速動作が可能で、しかも可逆的に安定した書き換え特性と、良好な抵抗値のリテンション特性を有し、半導体製造プロセスと親和性の高い不揮発性記憶素子およびその製造方法、並びにその不揮発性記憶素子を備える不揮発性半導体装置等が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る不揮発性記憶素子の一構成例を示した断面図である。
【図2】基板温度を30℃とし、O流量比を0.5%とした場合に得られた、膜厚が40nmのタンタル酸化物からなる可変抵抗層のXRD(X線回折)チャートである。
【図3】情報を書き込む場合における本発明の第1の実施の形態に係る不揮発性記憶素子の動作例を示す図である。
【図4】情報を読み出す場合における本発明の第1の実施の形態に係る不揮発性記憶素子の動作例を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る不揮発性記憶素子が備える可変抵抗層の抵抗値とパルス印加回数との関係を示す図であって、(a)は、可変抵抗層の膜厚が25nmの場合の抵抗値とパルス印加回数との関係を示す図であり、(b)は、可変抵抗層の膜厚が220nmの場合であって、電極間に電気的パルスを連続的に印加したときの可変抵抗層の抵抗値と電気的パルスの印加回数との関係を示す図である。
【図6】不揮発性記憶素子の電気的な特性を示す図であって、(a)は、本発明の第1の実施の形態に係る不揮発性記憶素子の電流−電圧特性を示す図、(b)および(c)は、比較例1および比較例2に係る不揮発性記憶素子の電流−電圧特性をそれぞれ示す図である。
【図7】オージェ分析の結果を示す図であって、(a)は、上述したように抵抗変化現象を示す、本発明の第1の実施の形態に係る不揮発性記憶素子が備える可変抵抗層としての試料の深さ方向のオージェ分析の結果を示す図、(b)は、上述したように抵抗変化現象を示さない金属Ta試料の深さ方向のオージェ分析の結果を示す図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係る不揮発性記憶素子が備える可変抵抗層における酸素含有率と成膜ガスのO流量比との関係を示す図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態に係る不揮発性記憶素子が備える可変抵抗層におけるO流量比と抵抗率との関係を示す図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態に係る不揮発性記憶素子が備える可変抵抗層における酸素含有率と抵抗率との関係を示す図である。
【図11】本発明の第1の実施の形態に係る不揮発性記憶素子が備える可変抵抗層における酸素含有率と抵抗変化特性との関係を示す図である。
【図12】本発明の第1の実施の形態に係る不揮発性記憶素子の電極面積と初期抵抗値との関係を示す図である。
【図13】本発明の第1の実施の形態に係る不揮発性記憶素子が動作する場合に、電極間に印加される電気的パルスの幅と可変抵抗層の抵抗値との関係を示す図である。
【図14】本発明の第1の実施の形態に係る不揮発性記憶素子において、第1電極層がPtからなり、第2電極層がIrからなる場合のパルス印加による抵抗変化特性を示す図である。
【図15】本発明の第1の実施の形態に係る不揮発性記憶素子において、第1電極層がPtからなり、第2電極層がCuからなる場合のパルス印加による抵抗変化特性を示す図である。
【図16】本発明の第1の実施の形態に係る不揮発性記憶素子において、第1電極層がPtからなり、第2電極層がAuからなる場合のパルス印加による抵抗変化特性を示す図である。
【図17】本発明の第1の実施の形態に係る不揮発性記憶素子において、第1電極層がPtからなり、第2電極層がAgからなる場合のパルス印加による抵抗変化特性を示す図である。
【図18】本発明の第1の実施の形態に係る不揮発性記憶素子において、第1電極層がPtからなり、第2電極層がTiNからなる場合のパルス印加による抵抗変化特性を示す図である。
【図19】本発明の第1の実施の形態に係る不揮発性記憶素子の変形例の構成を示す断面図である。
【図20】本発明の第2の実施の形態に係る不揮発性記憶装置の構成を示すブロック図である。
【図21】図20におけるA部の構成(4ビット分の構成)を示す斜視図である。
【図22】本発明の第2の実施の形態に係る不揮発性記憶装置が備える不揮発性記憶素子の構成を示す断面図である。
【図23】本発明の第2の実施の形態に係る不揮発性記憶装置が備える不揮発性記憶素子の変形例の構成を示す断面図である。
【図24】本発明の多層化構造の不揮発性記憶装置が備えるメモリアレイの構成を示す斜視図である。
【図25】本発明の第2の実施の形態に係る不揮発性記憶装置の動作例を示すタイミングチャートである。
【図26】本発明の第3の実施の形態に係る不揮発性記憶装置の構成を示すブロック図である。
【図27】図26におけるC部の構成(2ビット分の構成)を示す断面図である。
【図28】本発明の第3の実施の形態に係る不揮発性記憶装置の動作例を示すタイミングチャートである。
【図29】本発明の第4の実施の形態に係る不揮発性半導体装置の構成を示すブロック図である。
【図30】本発明の第4の実施の形態に係る不揮発性半導体装置が備える救済アドレス格納レジスタの構成を示すブロック図である。
【図31】本発明の第4の実施の形態に係る不揮発性半導体装置が備える救済アドレス格納レジスタの構成を示す断面図である。
【図32】本発明の第4の実施の形態に係る不揮発性半導体装置の製造プロセスの主要な流れを示すフローチャートである。
【図33】従来の記憶素子の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳しく説明する。なお、図中同一または相当部分には同一の符号を付しその説明は省略する場合がある。
【0039】
(第1の実施の形態)
[不揮発性記憶素子の構成]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る不揮発性記憶素子の一構成例を示した断面図である。
【0040】
図1に示すように、不揮発性記憶素子100は、基板101と、その基板101上に形成された酸化物層102と、その酸化物層102に形成された第1電極層103と、第2電極層105と、第1電極層103および第2電極層105に挟まれた可変抵抗層104とを備えている。
【0041】
この不揮発性記憶素子100を駆動する場合、外部の電源によって所定の条件を満たす電圧(電気信号)を第1電極層103と第2電極層105との間に印加する。電圧印加の方向(電圧の極性)に従い、不揮発性記憶素子100の可変抵抗層104の抵抗値が、増加または減少する。例えば、所定の閾値電圧よりも大きなパルス電圧が印加された場合、可変抵抗層104の抵抗値が増加または減少する一方で、その閾値電圧よりも小さなパルス電圧が印加された場合、可変抵抗層104の抵抗値は変化しない。
【0042】
第1電極層103および第2電極層105の材料としては、例えば、Pt(白金)、Ir(イリジウム)、Cu(銅)、Au(金)、Ag(銀)、TiN(窒化チタン)およびTiAlN(窒化チタンアルミニウム)などを用いることができる。
【0043】
可変抵抗層104は、タンタル酸化物で構成されている。ここで、このタンタル酸化物は、TaOと表した場合に0<x<2.5を満足するものである。xがこの範囲内にある理由については後述する。
【0044】
なお、基板101としては、シリコン単結晶基板または半導体基板を用いることができるが、これらに限定されるわけではない。可変抵抗層104は比較的低い基板温度で形成することが可能であるため、樹脂材料などの上に可変抵抗層104を形成することができる。
【0045】
[不揮発性記憶素子の製造方法]
次に、本実施の形態の不揮発性記憶素子100の製造方法について説明する。
【0046】
まず、単結晶シリコンである基板101上に、厚さ200nmの酸化物層(SiOからなる絶縁層)102を熱酸化法により形成する。そして、第1電極層103としての厚さ100nmのPt薄膜を、RFマグネトロンスパッタ法により酸化物層102上に形成する。ここで、成膜の際の真空度は1.0Pa、RFパワーは250W、Ar流量は10sccm、成膜時間は20分とした。
【0047】
次に、第1電極層103上に、可変抵抗層104としてのタンタル酸化物膜を形成する。この成膜には、Taターゲットを用いた反応性RFスパッタ法を用いた。このときの成膜条件を表1に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
最後に、可変抵抗層104上に、第2電極層105としての厚さ150nmのPt薄膜をRFスパッタ法により形成する。この場合の成膜条件は、第1電極層103を形成する場合と同様である。
【0050】
図2は、基板温度を30℃とし、O流量比(スパッタガス中のOの流量比率)を0.5%とした場合に得られた、膜厚が40nmのタンタル酸化物からなる可変抵抗層のXRD(X線回折)チャートである。図2に示すように、金属Taのピークを確認することができないため、タンタル酸化物が得られたと推定される。また、2θが30〜40deg.において幅広いピークを確認することができることから、アモルファス状態であると考えることができる。なお、2θが56deg.のピークは、シリコン基板に起因するものである。
【0051】
なお、可変抵抗層104の形成において、タンタル酸化物をターゲットとすることによって、Oなどの反応性ガスを使用しないスパッタ法を用いるようにしてもよい。
【0052】
[不揮発性記憶素子の動作例]
次に、本実施の形態の不揮発性記憶素子100のメモリとしての動作例、すなわち情報の書き込み/読み出しをする場合の動作例を、図面を参照して説明する。
【0053】
図3は、情報を書き込む場合における本発明の第1の実施の形態に係る不揮発性記憶素子の動作例を示す図である。
【0054】
第1電極層103と第2電極層105との間(以下、電極間という場合がある)にパルス幅が100nsecの極性が異なる2種類の電気的パルスを交互に印加すると、可変抵抗層104の抵抗値が図3に示すように変化する。すなわち、負電圧パルス(電圧E1、パルス幅100nsec)を電極間に印加した場合、可変抵抗層104の抵抗値が、高抵抗値Rb(850Ω)から低抵抗値Ra(150Ω)へ減少する。他方、正電圧パルス(電圧E2、パルス幅100nsec)を電極間に印加した場合、可変抵抗層104の抵抗値が、低抵抗値Raから高抵抗値Rbへ増加する。なお、ここでは、電圧E1を−3.5Vとし、電圧E2を+2.5Vとしている。
【0055】
この図3に示す例では、高抵抗値Rbを情報「0」に、低抵抗値Raを情報「1」にそれぞれ割り当てている。そのため、可変抵抗層104の抵抗値が高抵抗値Rbになるように正電圧パルスを電極間に印加することによって情報「0」が書き込まれることになり、また、低抵抗値Raになるように負電圧パルスを電極間に印加することによって情報「1」が書き込まれることになる。
【0056】
図4は、情報を読み出す場合における本発明の第1の実施の形態に係る不揮発性記憶素子の動作例を示す図である。
【0057】
情報の読み出しを行う場合、可変抵抗層104の抵抗値を変化させるときに印加する電気的パルスよりも振幅の小さい読み出し用電圧E3(|E3|<|E1|、|E3|<|E2|)を電極間に印加する。その結果、可変抵抗層104の抵抗値に対応した電流が出力され、その出力電流値を検出することにより、書き込まれている情報の読み出しが可能となる。
【0058】
図4に示す例では、出力電流値Iaが抵抗値Raに、出力電流値Ibが抵抗値Rbにそれぞれ対応しているので、出力電流値laが検出された場合は情報「1」が、出力電流値lbが検出された場合は情報「0」がそれぞれ読み出されることになる。
【0059】
以上のように、第1電極層103と第2電極層105とに挟まれた領域において、可変抵抗層104が記憶部として機能することにより、不揮発性記憶素子100がメモリとして動作することになる。
【0060】
[不揮発性記憶素子の抵抗変化特性]
次に、本実施の形態の不揮発性記憶素子100に対して電気的パルスを印加した場合の抵抗変化特性について説明する。
【0061】
図5(a)は、本発明の第1の実施の形態に係る不揮発性記憶素子が備える可変抵抗層104の抵抗値とパルス印加回数との関係を示す図である。この図5には、第1電極層103と第2電極層105との間にパルス幅が100nsecの極性が異なる2種類の電気的パルスを交互に印加した結果が示されている。
【0062】
このように2種類の電気的パルスを交互に電極間に印加した結果、図5(a)に示すように、可変抵抗層104の抵抗値は可逆的に変化した。具体的には、負電圧パルス(電圧−3.5V、パルス幅100nsec)を電極間に印加した場合、可変抵抗層104の抵抗値が減少して150Ω(低抵抗値)となり、正電圧パルス(電圧+2.5V、パルス幅100nsec)を電極間に印加した場合、可変抵抗層104の抵抗値が増加して850Ω(高抵抗値)となった。また、このような抵抗変化は、パルスを20000回連続して印加しても安定して続いた。
【0063】
以上のことから、可変抵抗層104を用いることによって、低電圧で安定した可逆的な書き換え特性を有した抵抗変化型の不揮発性記憶素子が実現可能であることを確認することができる。
【0064】
この図5(a)に示す結果は、可変抵抗層104の膜厚が25nmで、直径2μmの円形パターンのものである。以下の説明において、特に断りがない場合、可変抵抗層104のサイズはこのとおりである。
【0065】
なお、図5(b)には、可変抵抗層の膜厚が220nmの場合であって、電極間に電気的パルスを連続的に印加したときの可変抵抗層の抵抗値と電気的パルスの印加回数との関係が示されている。この図5(b)に示す結果からも、本実施の形態に係る不揮発性記憶素子が100nsecの電気的パルスで動作することがわかる。これらの結果から、膜厚に対し広い抵抗変化領域を有していることがわかる。そのため、本実施の形態に係る不揮発性記憶素子における可変抵抗層を形成する場合、その膜厚の調整を行うことによって、他の回路領域などを形成する半導体プロセスとのマッチングを容易にとることができる。
【0066】
[不揮発性記憶素子の電流−電圧特性]
次に、本実施の形態の不揮発性記憶素子100における電流−電圧特性について、比較例と対比しながら説明する。
【0067】
図6(a)は、本発明の第1の実施の形態に係る不揮発性記憶素子の電流−電圧特性を示す図であり、図6(b)および(c)は、比較例1および比較例2に係る素子の電流−電圧特性をそれぞれ示す図である。
【0068】
ここで、比較例1は、金属Taが第1電極層と第2電極層とに挟まれた構造の素子であり、比較例2は、酸化が進行したTaが第1電極層と第2電極層とに挟まれた構造の素子である。
【0069】
図6(a)に示すように、本実施の形態の不揮発性記憶素子100の場合、電流−電圧特性にヒステリシス特性が見られる。これに対し、図6(b)および(C)に示すように、比較例1および比較例2に係る素子の場合、電流−電圧特性にヒステリシス特性は見られない。
【0070】
以上のことより、可変抵抗層104を用いることによって、本実施の形態の不揮発性記憶素子100が抵抗変化型の不揮発性記憶素子として機能することを確認することができる。
【0071】
なお、実際に、比較例1および比較例2に対して電気的パルスを印加しても、抵抗変化現象は認められなかった。したがって、これら比較例1および比較例2を、可逆的な書き換え特性を有する抵抗変化型の不揮発性記憶素子として用いることはできない。
【0072】
[可変抵抗層の組成]
次に、タンタル酸化物で構成される可変抵抗層104の組成について説明する。
【0073】
図7(a)は、上述したように抵抗変化現象を示す、本発明の第1の実施の形態に係る不揮発性記憶素子が備える可変抵抗層としての試料の深さ方向のオージェ分析の結果を示す図であり、図7(b)は、上述したように抵抗変化現象を示さない金属Ta試料の深さ方向のオージェ分析の結果を示す図である。
【0074】
なお、この金属Ta試料は、上述した比較例1におけるものと同一であり、その厚みは20nmである。この金属Ta試料上に、厚み50nmのPt上部電極を形成している。
【0075】
図7(a)と図7(b)とを比較すると明らかなように、抵抗変化現象を示す試料の方のみ、タンタルが酸化されていることが理解できる。ここでの本発明の第1の実施の形態に係る不揮発性記憶素子が備える可変抵抗層としての試料におけるTaとOとの原子比を分析すると、O/Ta=0.5/1であった。
【0076】
さらに、より正確な組成分析をRBS(ラザフォード後方散乱)法により行った。その結果、オージェ分析で「O/Ta=0.5/1」原子比の試料の組成は、O/Ta=1.4/1であった。なお、RBS法による組成分析は、膜全体の平均的な組成である。このように、オージェ分析結果とRBS分析結果が異なることは、文献でも報告されている(例えば、Journal of Vacuum Science A,Volume21,No3,(2003)P616-622, Pei-Chuen Jiang and J.S.Chen)。上記文献においては、オージェ分析では、材料ごとに感度係数を補正する必要があり、一般的にRBS分析の方がオージェ分析よりも信頼性があることが述べられている。
【0077】
このRBS分析の結果は、図7(a)のオージェ分析の結果ではタンタル酸化物の膜厚方向中央部分の組成に相当する。図7(a)から、タンタル酸化物層の両界面(Pt層との界面)近傍では、酸素含有率が増加していることが読みとれる。従って、界面部分の酸素含有率はRBS法により分析された組成よりも高い可能性がある。
【0078】
図8は、スパッタガス中のO流量比とRBS法で分析した可変抵抗層である酸化タンタル層の酸素含有率との関係を示す図である。O流量比が7%以上の条件では酸素含有率が飽和する傾向が見られるが、O流量比により酸化タンタル層の組成を連続的に制御できることがわかる。つまり、タンタル酸化物層を反応性RFスパッタ法により形成する際に、スパッタガス中のO流量比を制御することにより、タンタル酸化物層の酸素含有率をタンタル酸化物層の厚み方向において所望の一定値に制御することができる。
【0079】
以上に説明した本実施の形態の不揮発性記憶素子における抵抗変化特性、電流−電圧特性、および可変抵抗層の組成によれば、良好な抵抗変化現象を示すために、タンタルがある範囲で酸化されていることが重要であると考えられる。
【0080】
[O流量比と抵抗率との関係]
次に、本実施の形態の不揮発性記憶素子100の可変抵抗層104の製造工程におけるO流量比と抵抗率との関係について説明する。
【0081】
図9は、本発明の第1の実施の形態に係る不揮発性記憶素子が備える可変抵抗層におけるO流量比と抵抗率との関係を示す図である。図10は、本発明の第1の実施の形態に係る不揮発性記憶素子が備える可変抵抗層の酸素含有率と可変抵抗層の抵抗率との関係を示す図である。なお、ここで示す抵抗率は、基板(窒化膜を形成したシリコンウエハ)上に可変抵抗層のみを直接形成した試料を4端子法により測定するシート抵抗値に基づいて算出したものである。
【0082】
図9に示すように、O流量比の値によって、可変抵抗層104の抵抗率は連続的に変化している。より、詳しく説明すると、上述のように、O流量比の値によってタンタル酸化物層(可変抵抗層104)の酸素含有率は連続的に変化する。そして、図10に示すように、酸素含有率によって、可変抵抗層104の抵抗率は連続的に変化する。したがって、可変抵抗層104の酸素含有率により、可変抵抗層104の抵抗率を連続的に制御することができる。このことから、可変抵抗層104において良好な抵抗変化現象を得るためには、可変抵抗層104の酸素含有率が適切な範囲にあることが必要と考えられる。
【0083】
本発明者等は、図10に示す各酸素含有率を有する試料の抵抗率を測定し、その測定データの回帰曲線を求めた。図10には、この測定データ(黒三角印で示す)とこの回帰曲線とを示す。また、本発明者等は、この各酸素含有率を有する試料に電気パルスを印加して抵抗変化特性が発現することを確認した。上記回帰曲線によれば、可変抵抗層をTaOと表記した場合のxの範囲が0<x<2.5の範囲で可変抵抗層が導体となり(導体として定義される抵抗率を有するものとなり)、各試料について確認したような抵抗変化現象を発現すると推認される。
【0084】
図11は、可変抵抗層の酸素含有率が45〜65atm%の組成範囲における抵抗変化特性を説明する図であって、(a)は酸素含有率と抵抗率との関係を示す図、(b)は酸素含有率が45atm%の場合におけるパルス印加回数と抵抗値との関係を示す図、(c)は酸素含有率が65atm%の場合におけるパルス印加回数と抵抗値との関係を示す図である。
【0085】
上述の抵抗変化特性の測定によれば、図11(a)に示すα点(酸素含有率45atm%)からβ点(酸素含有率65atm%)の酸素含有率の範囲においては、高抵抗値が低抵抗値の5倍以上と良好であった。α点(酸素含有率45atm%)およびβ点(酸素含有率65atm%)の酸素含有率を有する試料についてのパルス印加回数に対する抵抗変化特性を、それぞれ、図11(b)および図11(c)に示す。図11(b)および図11(c)によれば、α点およびβ点の酸素含有率においては、共に、高抵抗値が低抵抗値の5倍以上と良好であることが判る。この測定結果から、可変抵抗層をTaOと表記した場合のXの範囲が0<x≦1.9の範囲において、良好な抵抗変化現象が推認される。また、α点(酸素含有率45atm%)からβ点(酸素含有率65atm%)に渡る酸素含有率の範囲においては、高抵抗値が低抵抗値の5倍以上と良好であることから、この組成範囲は、記憶素子として安定した動作を実現できるより適切な組成範囲と考えられる。従って、酸素含有率が45〜65atm%の組成範囲、即ち可変抵抗層をTaOと表記した場合におけるxの範囲が0.8≦x≦1.9の範囲がより適切な可変抵抗層の範囲である(酸素含有率=45atm%がx=0.8に、酸素含有率=65atm%がx=1.9にそれぞれ対応)。なお、RBS法による組成分析では、酸素含有量の分析値は±5atm%程度の精度である。従って、前記xの組成範囲もこの精度に起因する測定誤差を含んでおり、実際には、酸素含有率が40〜70atm%の組成範囲までこの適切な組成範囲である可能性がある。この組成範囲以外でも抵抗変化現象は確認され又は推認されるが、この組成範囲内に比べると抵抗率が小さくなり又は大きくなることから高抵抗値が低抵抗値の5倍未満になると考えられ、記憶素子として動作の安定性にやや欠けると考えられる。
【0086】
[スケーラビリティー]
図12に、電極面積と素子の初期抵抗値の関係を、一例として抵抗率が6mΩcmの可変抵抗層の場合について示す。図12から素子面積の減少にともなって抵抗値が増加することがわかる。素子の初期抵抗値が図示される100〜1000Ωの範囲で、抵抗変化現象が確認された。抵抗率が同じ可変抵抗膜を使用した場合、素子面積を小さくすると初期抵抗値が高くなり良好な抵抗変化現象が認められない。一方、素子面積が大きい場合には、初期抵抗値が低くなり素子に十分な電圧を印加することが難しくなる。以上のように、素子の初期抵抗値には、適切な範囲があると考えられる。図11のβ点よりも酸素含有率が高い組成では、適切な初期抵抗値を得るためには素子面積を拡大する必要がある。しかし、記憶素子の面積を拡大させることはコスト面および電圧印加の点で課題がある。従って、現実的には可変抵抗層の酸素含有率には上限が設けられる。
【0087】
一方、図11のα点よりも酸素含有率が低い組成では、素子面積が微細化した場合には、素子の初期抵抗値が適切な範囲に含まれると予想される。将来、記憶素子サイズは電極面積0.002μmまで微細化されることが予想される。電極面積0.002μm素子の初期抵抗値は、図12の実験値(実測値)から3×10Ωと推定される。この値は、適切な初期抵抗値の上限値よりも30倍程度高い。従って、適切な初期抵抗値を得るためには、抵抗率を現状の6mΩcmよりも1/30程度低下させた0.2mΩcm程度である必要がある。図10より、この抵抗率をもつ可変抵抗層の酸素含有率は33atm%(図10の最低酸素含有率の測定点における酸素含有率)程度、即ち、可変抵抗層をTaOと表記した場合にはx=0.5である。以上より、将来の本発明の不揮発性記憶素子の微細化を考慮すると、可変抵抗層を構成するTaOの組成範囲は、0.5≦x≦1.9であることが適切と考えられる。
【0088】
[印加する電気的パルスの幅と抵抗値との関係]
次に、本実施の形態の不揮発性記憶素子100において電極間に印加する電気的パルスの幅と可変抵抗層104の抵抗値との関係について説明する。
【0089】
図13は、本発明の第1の実施の形態に係る不揮発性記憶素子が動作する場合に、電極間に印加される電気的パルスの幅と可変抵抗層の抵抗値との関係を示す図である。なお、図9において、RHは高抵抗値を、RLは低抵抗値をそれぞれ示している。また、このRHおよびRLは、各パルス幅の電気的パルスを100回印加した場合における可変抵抗層104の抵抗値の平均値である。
【0090】
図13に示すように、印加する電気的パルスの幅が20nsecのような高速パルスの場合であっても、抵抗変化現象を確認することができる。また、RHの値は、20nsecから300nsecの間でほぼ一定である。他方、RLの値は、パルス幅が20nsecの場合に高くなる傾向が見られる。
【0091】
[インプリント特性]
電極間に同極性の電気的パルスを連続して印加した場合における本実施の形態の不揮発性記憶素子100の設定された抵抗値のインプリント性は良好である。例えば、不揮発性記憶素子100の電極間に負の電気的パルスを連続して20回印加することによって低抵抗状態を連続的に発生させた後において、正負の電気的パルスを交互に連続して印加した場合であっても、安定して高抵抗状態または低抵抗状態を繰り返している。また、正の電気的パルスを連続して20回印加することによって高抵抗状態を連続的に発生させた後において、正負の電気的パルスを交互に連続して印加した場合も、同様にして高抵抗状態または低抵抗状態を安定的に繰り返している。以上の結果から、本実施の形態の不揮発性記憶素子100は、いわゆるインプリント耐性が高く、したがって安定した動作をすることが期待できる。
【0092】
[不揮発性記憶素子のリテンション特性]
本発明の第1の実施の形態に係る不揮発性記憶素子において高温環境下で抵抗値の変化を測定した。低抵抗状態に設定した場合は初期の抵抗値と比較して殆ど変化が認められないのに対し、高抵抗に設定した場合は変化が見られた。従って、本発明の第1の実施の形態に係る不揮発性記憶素子のリテンション特性は、高抵抗値側の変化で律速されていると考えられる。初期状態における高抵抗値と低抵抗値の1/2の抵抗値を基準に、これに到達する時間からリテンション時間を推定すると、本実施の形態の不揮発性記憶素子は、180℃の高温で保持した場合にリテンション時間は100時間以上であり、非常に高いリテンション特性を有していると考えられる。
【0093】
[電極材料]
本発明の第1の実施の形態に係る不揮発性記憶素子においては、第1電極層あるいは第2電極層として、Ptの他にIr,Cu,Au,Ag,TiN,TiAlNを好適に用いることができる。第1電極層がPtからなり、第2電極層がIrからなる場合のパルス印加による抵抗変化特性を図14に示す。第1電極層がPtからなり、第2電極層がCuからなる場合のパルス印加による抵抗変化特性を図15に示す。第1電極層がPtからなり、第2電極層がAuからなる場合のパルス印加による抵抗変化特性を図16に示す。第1電極層がPtからなり、第2電極層がAgからなる場合のパルス印加による抵抗変化特性を図17に示す。第1電極層がPtからなり、第2電極層がTiNからなる場合のパルス印加による抵抗変化特性を図18に示す。図14〜図18において、Ir,Cu,Au,Ag,TiNの各電極材料は、Ptと同様にして作製した。また、印加パルスは100nsecである。図14〜図18から明らかなように、第1電極層及び第2電極層がいずれの上記電極材料の組合せからなる場合においても、良好な抵抗変化現象が確認された。
【0094】
なお、本実施の形態では、図1に示したとおり、抵抗変化層104が、下方に設けられた第1電極層103と、上方に設けられた第2電極層105とによって挟まれるように構成されており、しかも抵抗変化層104の両端部と第2電極層105の両端部とが断面視で揃っているが、これは一例であり、本発明はこのような構成に限定されるわけではない。
【0095】
図19(a)から(c)は、本発明の第1の実施の形態に係る不揮発性記憶素子の変形例の構成を示す断面図である。なお、これらの図19(a)から(c)においては、基板および酸化物層を便宜上省略している。
【0096】
図19(a)に示す変形例では、第1電極層103A、可変抵抗層104A、および第2電極層105Aがこの順に積層されて構成されており、これらの第1電極層103A、可変抵抗層104A、および第2電極層105Aの両端部は断面視で揃っていない。これに対し、図19(b)に示す変形例では、同じく第1電極層103B、可変抵抗層104B、および第2電極層105Bが積層されて構成されているものの、これらの第1電極層103B、可変抵抗層104B、および第2電極層105Bの両端部が断面視ですべて揃っている。本発明の不揮発性記憶素子は、このように構成されていてもよい。
【0097】
また、本実施の形態に係る不揮発性記憶素子100、および上記の2つの変形例においては、いずれも可変抵抗層が上下に配された電極で挟まれるように構成されているが、可変抵抗層の両端面に電極を形成することによって、可変抵抗層の主面に平行な方向に電流を流すような構成であってもよい。すなわち、図19(c)に示すように、可変抵抗層104Cの一方の端面に第1電極103Cを、他方の端面に第2電極105Cをそれぞれ形成し、その可変抵抗層104Cの主面に平行な方向に電流を流すように構成されていてもよい。
【0098】
ところで、図示していないが、本実施の形態に係る不揮発性記憶素子は絶縁層(層間絶縁膜)を備えている。なお、CVD法などによって弗素ドープの酸化膜を形成し、これを絶縁層とするようにしてもよい。また、絶縁層を備えない構成であってもよい。
【0099】
また、同様にして、図示していないが、本実施の形態に係る不揮発性記憶素子は配線層を備えている。配線材料としては、例えば、Al、W、Cuなどを用いることができる。なお、この配線層を備えない構成であってもよい。
【0100】
(第2の実施の形態)
上述した第1の実施の形態に係る不揮発性記憶素子は、種々の形態の不揮発性半導体装置へ適用することが可能である。第2の実施の形態に係る半導体装置は、第1の実施の形態に係る不揮発性記憶素子を備える不揮発性記憶装置であって、ワード線とビット線との交点(立体交差点)にアクティブ層を介在させた、いわゆるクロスポイント型のものである。
【0101】
[第2の実施の形態に係る半導体装置の構成]
図20は、本発明の第2の実施の形態に係る不揮発性記憶装置の構成を示すブロック図である。また、図21は、図20におけるA部の構成(4ビット分の構成)を示す斜視図である。
【0102】
図20に示すように、本実施の形態に係る不揮発性記憶装置200は、半導体基板上に、メモリ本体部201を備えており、このメモリ本体部201は、メモリアレイ202と、行選択回路/ドライバ203と、列選択回路/ドライバ204と、情報の書き込みを行うための書き込み回路205と、選択ビット線に流れる電流量を検出し、データ「1」または「0」と判定するセンスアンプ206と、端子DQを介して入出力データの入出力処理を行うデータ入出力回路207とを具備している。また、不揮発性記憶装置200は、外部から入力されるアドレス信号を受け取るアドレス入力回路208と、外部から入力されるコントロール信号に基づいて、メモリ本体部201の動作を制御する制御回路209とをさらに備えている。
【0103】
メモリアレイ202は、図20および図21に示すように、半導体基板の上に互いに平行に形成された複数のワード線WL0,WL1,WL2,…と、これらの複数のワード線WL0,WL1,WL2,…の上方にその半導体基板の主面に平行な面内において互いに平行に、しかも複数のワード線WL0,WL1,WL2,…に立体交差するように形成された複数のビット線BL0,BL1,BL2,…とを備えている。
【0104】
また、これらの複数のワード線WL0,WL1,WL2,…と複数のビット線BL0,BL1,BL2,…との立体交差点に対応してマトリクス状に設けられた複数のメモリセルM111,M112,M113,M121,M122,M123,M131,M132,M133,…(以下、「メモリセルM111,M112,…」と表す)が設けられている。
【0105】
ここで、メモリセルM111,M112,…は、第1の実施の形態に係る不揮発性記憶素子に相当し、タンタル酸化物を含む可変抵抗層を有している。ただし、本実施の形態において、これらのメモリセルM111,M112,…は、後述するように、電流抑制素子を備えている。
【0106】
なお、図20におけるメモリセルM111,M112,…は、図21において符号210で示されている。
【0107】
アドレス入力回路208は、外部回路(図示せず)からアドレス信号を受け取り、このアドレス信号に基づいて行アドレス信号を行選択回路/ドライバ203へ出力するとともに、列アドレス信号を列選択回路/ドライバ204へ出力する。ここで、アドレス信号は、複数のメモリセルM111,M112,…のうちの選択される特定のメモリセルのアドレスを示す信号である。また、行アドレス信号は、アドレス信号に示されたアドレスのうちの行のアドレスを示す信号であり、列アドレス信号は、アドレス信号に示されたアドレスのうちの列のアドレスを示す信号である。
【0108】
制御回路209は、情報の書き込みサイクルにおいては、データ入出力回路207に入力された入力データDinに応じて、書き込み用電圧の印加を指示する書き込み信号を書き込み回路205へ出力する。他方、情報の読み出しサイクルにおいて、制御回路209は、読み出し用電圧の印加を指示する読み出し信号を列選択回路/ドライバ204へ出力する。
【0109】
行選択回路/ドライバ203は、アドレス入力回路208から出力された行アドレス信号を受け取り、この行アドレス信号に応じて、複数のワード線WL0,WL1,WL2,…のうちの何れかを選択し、その選択されたワード線に対して、所定の電圧を印加する。
【0110】
また、列選択回路/ドライバ204は、アドレス入力回路208から出力された列アドレス信号を受け取り、この列アドレス信号に応じて、複数のビット線BL0,BL1,BL2,…のうちの何れかを選択し、その選択されたビット線に対して、書き込み用電圧または読み出し用電圧を印加する。
【0111】
書き込み回路205は、制御回路209から出力された書き込み信号を受け取った場合、行選択回路/ドライバ203に対して選択されたワード線に対する電圧の印加を指示する信号を出力するとともに、列選択回路/ドライバ204に対して選択されたビット線に対して書き込み用電圧の印加を指示する信号を出力する。
【0112】
また、センスアンプ206は、情報の読み出しサイクルにおいて、読み出し対象となる選択ビット線に流れる電流量を検出し、データ「1」または「0」と判定する。その結果得られた出力データDOは、データ入出力回路207を介して、外部回路へ出力される。
【0113】
[第2の実施の形態に係る不揮発性記憶装置が備える不揮発性記憶素子の構成]
図22は、本発明の第2の実施の形態に係る不揮発性記憶装置が備える不揮発性記憶素子の構成を示す断面図である。なお、図22では、図21のB部における構成が示されている。
【0114】
図22に示すように、本実施の形態に係る不揮発性記憶装置が備える不揮発性記憶素子210は、銅配線である下部配線212(図21におけるワード線WL1に相当する)と同じく上部配線211(図21におけるビット線BL1に相当する)との間に介在しており、下部電極217と、電流抑制素子216と、内部電極215と、可変抵抗層214と、上部電極213とがこの順に積層されて構成されている。
【0115】
ここで、内部電極215、可変抵抗層214、および上部電極213は、図1に示した実施の形態1に係る不揮発性記憶素子100における第1電極層103、可変抵抗層104、および第2電極層105にそれぞれ相当する。したがって、可変抵抗層214は、第1の実施の形態と同様にして形成される。
【0116】
電流抑制素子216は、TaNである内部電極215を介して、可変抵抗層214と直列接続されており、電流抑制素子216と可変抵抗層214とは電気的に接続されている。この電流抑制素子216は、MIM(Metal−Insulator−Metal;金属−絶縁体−金属の意味)ダイオード又はMSM(Metal−Semiconductor−Metal;金属−半導体−金属の意味)ダイオードに代表される素子であり、電圧に対して非線形な電流特性を示すものである。また、この電流抑制素子216は、電圧に対して双方向性の電流特性を有しており、所定の閾値電圧Vf(一方の電極を基準にして例えば+1V以上または−1V以下)で導通するように構成されている。
【0117】
なお、タンタルおよびその酸化物は、半導体プロセスに一般的に用いられている材料であり、非常に親和性が高いといえる。そのため、既存の半導体製造プロセスに容易に組み入れることが可能である。
【0118】
[第2の実施の形態に係る不揮発性記憶装置が備える不揮発性記憶素子の変形例の構成]
本実施の形態に係る不揮発性記憶装置が備える不揮発性記憶素子の構成は、図22に示したものに限られるわけではなく、以下に示すような構成であってもよい。
【0119】
図23(a)から(g)は、本発明の第2の実施の形態に係る不揮発性記憶装置が備える不揮発性記憶素子の変形例の構成を示す断面図である。
【0120】
図23(a)には、図22に示す構成と異なり、内部電極を備えず、可変抵抗層214が電流抑制素子216の上に形成されている構成が示されている。
【0121】
図23(b)は、図22に示す構成と異なり、下部電極、内部電極、および上部電極を備えず、可変抵抗層214が電流抑制素子216の上に形成されている構成が示されている。また、図23(c)には、図22に示す構成と異なり、下部電極を備えていない構成が示されている。他方、図示はしないが、上部電極を備えていない構成も考えられる。
【0122】
図23(d)には、図22に示す構成と異なり、内部電極および電流抑制素子を備えていない構成が示されており、図23(e)には、さらに上部電極および下部電極を備えていない構成が示されている。
【0123】
また、図23(f)には、図22に示す構成と異なり、内部電極を備えず、その代わりにオーミック抵抗層218を備える構成が示されており、図23(g)には、内部電極の代わりに第2の可変抵抗層219を備える構成が示されている。
【0124】
なお、以上に示した変形例において、上部電極を備えていない場合は上部配線211が不揮発性記憶素子の上部電極として機能し、また、下部電極を備えていない場合は下部配線212が不揮発性記憶素子の下部電極として機能することになる。
【0125】
また、メモリセルの数が比較的少ない場合、選択されないメモリセルへの回り込み電流が少なくなる。このような場合、上述したような電流抑制素子を備えない構成とすることが考えられる。
【0126】
以上のように、本実施の形態に係る不揮発性記憶装置が備える不揮発性記憶素子については、種々の構成が考えられる。
【0127】
[多層化構造の不揮発性記憶装置の構成例]
図20および図21に示した本実施の形態に係る不揮発性記憶装置におけるメモリアレイを、3次元に積み重ねることによって、多層化構造の不揮発性記憶装置を実現することができる。
【0128】
図24は、本発明の多層化構造の不揮発性記憶装置が備えるメモリアレイの構成を示す斜視図である。図24に示すように、この不揮発性記憶装置は、図示しない半導体基板の上に互いに平行に形成された複数の下部配線212と、これらの複数の下部配線212の上方にその半導体基板の主面に平行な面内において互いに平行に、しかも複数の下部配線212に立体交差するように形成された複数の上部配線211と、これらの複数の下部配線212と複数の上部配線211との立体交差点に対応してマトリクス状に設けられた複数のメモリセル210とを備えるメモリアレイが、複数積層されてなる多層化メモリアレイを備えている。
【0129】
なお、図24に示す例では、配線層が5層であり、その立体交差点に配される不揮発性記憶素子が4層の構成となっているが、必要に応じてこれらの層数を増減してもよいことは勿論である。
【0130】
このように構成された多層化メモリアレイを設けることによって、超大容量不揮発性メモリを実現することが可能となる。
【0131】
なお、第1の実施の形態において説明したように、本発明における可変抵抗層は低温で成膜することが可能である。したがって、本実施の形態で示すような配線工程での積層化を行う場合であっても、下層工程で形成されたトランジスタおよびシリサイドなどの配線材料に影響を与えることがないため、多層化メモリアレイを容易に実現することができる。すなわち、本発明のタンタル酸化物を含む可変抵抗層を用いることによって、多層化構造の不揮発性記憶装置を容易に実現することが可能となる。
【0132】
[不揮発性記憶装置の動作例]
次に、情報を書き込む場合の書き込みサイクルおよび情報を読み出す場合の読み出しサイクルにおける第2の実施の形態に係る不揮発性記憶装置の動作例について、図25に示すタイミングチャートを参照しながら説明する。
【0133】
図25は、本発明の第2の実施の形態に係る不揮発性記憶装置の動作例を示すタイミングチャートである。なお、ここでは、可変抵抗層が高抵抗状態の場合を情報「1」に、低抵抗状態の場合を情報「0」にそれぞれ割り当てたときの動作例を示す。また、説明の便宜上、メモリセルM111およびM122について情報の書き込みおよび読み出しをする場合のみについて示す。
【0134】
図25におけるVPは、可変抵抗素子と電流抑制素子とで構成されたメモリセルの抵抗変化に必要なパルス電圧を示している。ここでは、VP/2<閾値電圧Vfの関係が成り立つことが望ましい。なぜなら、非選択のメモリセルに回り込んで流れる漏れ電流を抑えることができるからである。その結果、情報を書き込む必要のないメモリセルへ供給される余分な電流を抑制することができ、低消費電流化をより一層図ることができる。また、非選択のメモリセルへの意図しない浅い書き込み(一般にディスターブと称される)が抑制されるなどの利点もある。
【0135】
また、図25において、1回の書き込みサイクルに要する時間である書き込みサイクル時間をtWで、1回の読み出しサイクルに要する時間である読み出しサイクル時間をtRでそれぞれ示している。
【0136】
メモリセルM111に対する書き込みサイクルにおいて、ワード線WL0にはパルス幅tPのパルス電圧VPが印加され、そのタイミングに応じて、ビット線BL0には同じく0Vの電圧が印加される。これにより、メモリセルM111に情報「1」を書き込む場合の書き込み用電圧が印加され、その結果、メモリセルM111の可変抵抗層が高抵抗化する。すなわち、メモリセルM111に情報「1」が書き込まれたことになる。
【0137】
次に、メモリセルM122に対する書き込みサイクルにおいて、ワード線WL1にはパルス幅tPの0Vの電圧が印加され、そのタイミングに応じて、ビット線BL1には同じくパルス電圧VPが印加される。これにより、M122に情報「0」を書き込む場合の書き込み用電圧が印加され、その結果、メモリセルM122の可変抵抗層が低抵抗化する。すなわち、メモリセルM122に情報「0」が書き込まれたことになる。
【0138】
メモリセルM111に対する読み出しサイクルにおいては、書き込み時のパルスよりも振幅が小さいパルス電圧であって、0Vよりも大きくVP/2よりも小さい値の電圧が、ワード線WL0に印加される。また、このタイミングに応じて、書き込み時のパルスよりも振幅が小さいパルス電圧であって、VP/2よりも大きくVPよりも小さい値の電圧が、ビット線BL0に印加される。これにより、高抵抗化されたメモリセルM111の可変抵抗層214の抵抗値に対応した電流が出力され、その出力電流値を検出することにより、情報「1」が読み出される。
【0139】
次に、メモリセルM122に対する読み出しサイクルにおいて、先のメモリセルM111に対する読み出しサイクルと同様の電圧がワード線WL1およびビット線BL1に印加される。これにより、低抵抗化されたメモリセルM122の可変抵抗層214の抵抗値に対応した電流が出力され、その出力電流値を検出することにより、情報「0」が読み出される。
【0140】
なお、第1の実施の形態において説明したように、本発明におけるタンタル酸化物を含む可変抵抗層を用いた場合、電極間に印加する電気的パルスの幅が20nsec程度の高速パルスであっても、抵抗変化現象を確認することができる。したがって、パルス幅tPは50nsec程度に設定することができる。
【0141】
このようにパルス幅が50nsec程度の高速パルスを用いることができるため、不揮発性記憶装置200の制御回路などの周辺回路の動作時間などを考慮したとしても、1回の書き込みサイクル時間tWは80nsec程度に設定することができる。その場合、例えばデータ入出力回路207の端子DQを介して、不揮発性記憶装置200の外部とのデータの入出力を16ビットで行う場合、情報の書き込みに要するデータ転送速度は、1秒間当たり25Mバイトとなり、非常に高速な書き込み動作を実現することができる。さらに、公知のページモードまたはバーストモードなどの手法を用い、不揮発性記憶装置内部での並列の書き込みビット数を増やすことによって、より一層高速な書き込み動作
を実現することも可能である。
【0142】
従来の不揮発性メモリにおいて、比較的高速なデータ転送が可能であるとして知られているNANDフラッシュメモリの場合、上記のページモードを用いたとしても、書き込みに要するデータ転送速度は1秒間当たり10Mバイト程度である。このことからも、本実施の形態の不揮発性記憶装置の書き込み動作の高速性を確認することができる。
【0143】
また、第1の実施の形態において説明したように、本発明におけるタンタル酸化物を含む可変抵抗層を用いた場合、インプリント性の低い不揮発性記憶素子を実現することができる。すなわち、同一のデータを繰り返し書き込んだ後に、それと逆のデータを書き込む場合であっても、1回の高速パルスで書き換えを行うことができる。そのため、一般的に不揮発性記憶素子で必要とされる消去サイクルまたはリセットサイクルに代表されるような、書き込み前に一方のデータに揃えるステップが不要となる。この点も、本実施の形態における不揮発性記憶装置における書き込みの高速化に寄与する。また、そのようなステップが不要であるため、書き込み動作を単純なステップで行うことが可能となる。
【0144】
さらに、書き込み用電圧は2〜3V程度の低電圧で足りるため、低消費電力化を実現することもできる。
【0145】
本実施の形態においては、半導体基板上に集積したクロスポイント構造のみについて説明している。しかしながら、このような半導体基板上ではなく、プラスチック基板などのより安価な基板上にクロスポイント構造を形成し、バンプ等の組み立て工法で積層化したメモリ装置に適用するようにしてもよい。
【0146】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態に係る不揮発性記憶装置は、第1の実施の形態に係る不揮発性記憶素子を備える不揮発性記憶装置であって、1トランジスタ/1不揮発性記憶部のものである。
【0147】
[第3の実施の形態に係る不揮発性記憶装置の構成]
図26は、本発明の第3の実施の形態に係る不揮発性記憶装置の構成を示すブロック図である。また、図27は、図26におけるC部の構成(2ビット分の構成)を示す断面図である。
【0148】
図26に示すように、本実施の形態に係る不揮発性記憶装置300は、半導体基板上に、メモリ本体部301を備えており、このメモリ本体部301は、メモリアレイ302と、行選択回路/ドライバ303と、列選択回路304と、情報の書き込みを行うための書き込み回路305と、選択ビット線に流れる電流量を検出し、データ「1」または「0」と判定するセンスアンプ306と、端子DQを介して入出力データの入出力処理を行うデータ入出力回路307とを具備している。また、不揮発性記憶装置300は、セルプレート電源(VCP電源)308と、外部から入力されるアドレス信号を受け取るアドレス入力回路309と、外部から入力されるコントロール信号に基づいて、メモリ本体部301の動作を制御する制御回路310とをさらに備えている。
【0149】
メモリアレイ302は、半導体基板の上に形成された、互いに交差するように配列された複数のワード線WL0,WL1,WL2,…およびビット線BL0,BL1,BL2,…と、これらのワード線WL0,WL1,WL2,…およびビット線BL0,BL1,BL2,…の交点に対応してそれぞれ設けられた複数のトランジスタT11,T12,T13,T21,T22,T23,T31,T32,T33,…(以下、「トランジスタT11,T12,…」と表す)と、トランジスタT11,T12,…と1対1に設けられた複1,M232,M233(以下、「メモリセルM211,M212,…」と表す)とを備えている。
【0150】
また、メモリアレイ302は、ワード線WL0,WL1,WL2,…に平行して配列されている複数のプレート線PL0,PL1,PL2,…を備えている。
【0151】
図27に示すように、ワード線WL0,WL1の上方にビット線BL0が配され、そのワード線WL0,WL1とビット線BL0との間に、プレート線PL0,PL1が配されている。
【0152】
ここで、メモリセルM211,M212,…は、第1の実施の形態に係る不揮発性記憶素子に相当し、タンタル酸化物を含む可変抵抗層を有している。より具体的には、図27における不揮発性記憶素子313が、図26におけるメモリセルM211,M212,…に相当し、この不揮発性記憶素子313は、上部電極314、タンタル酸化物を含む可変抵抗層315、および下部電極316から構成されている。
【0153】
なお、図27における317はプラグ層を、318は金属配線層を、319はソース/ドレイン領域をそれぞれ示している。
【0154】
図26に示すように、トランジスタT11,T12,T13,…のドレインはビット線BL0に、トランジスタT21,T22,T23,…のドレインはビット線BL1に、トランジスタT31,T32,T33,…のドレインはビット線BL2に、それぞれ接続されている。
【0155】
また、トランジスタT11,T21,T31,…のゲートはワード線WL0に、トランジスタT12,T22,T32,…のゲートはワード線WL1に、トランジスタT13,T23,T33,…のゲートはワード線WL2に、それぞれ接続されている。
【0156】
さらに、トランジスタT11,T12,…のソースはそれぞれ、メモリセルM211,M212,…と接続されている。
【0157】
また、メモリセルM211,M221,M231,…はプレート線PL0に、メモリセルM212,M222,M232,…はプレート線PL1に、メモリセルM213,M223,M233,…はプレート線PL2に、それぞれ接続されている。
【0158】
アドレス入力回路309は、外部回路(図示せず)からアドレス信号を受け取り、このアドレス信号に基づいて行アドレス信号を行選択回路/ドライバ303へ出力するとともに、列アドレス信号を列選択回路304へ出力する。ここで、アドレス信号は、複数のメモリセルM211,M212,…のうちの選択される特定のメモリセルのアドレスを示す信号である。また、行アドレス信号は、アドレス信号に示されたアドレスのうちの行のアドレスを示す信号であり、列アドレス信号は、アドレス信号に示されたアドレスのうちの列のアドレスを示す信号である。
【0159】
制御回路310は、情報の書き込みサイクルにおいては、データ入出力回路307に入力された入力データDinに応じて、書き込み用電圧の印加を指示する書き込み信号を書き込み回路305へ出力する。他方、情報の読み出しサイクルにおいて、制御回路310は、読み出し用電圧の印加を指示する読み出し信号を列選択回路304へ出力する。
【0160】
行選択回路/ドライバ303は、アドレス入力回路309から出力された行アドレス信号を受け取り、この行アドレス信号に応じて、複数のワード線WL0,WL1,WL2,…のうちの何れかを選択し、その選択されたワード線に対して、所定の電圧を印加する。
【0161】
また、列選択回路304は、アドレス入力回路309から出力された列アドレス信号を受け取り、この列アドレス信号に応じて、複数のビット線BL0,BL1,BL2,…のうちの何れかを選択し、その選択されたビット線に対して、書き込み用電圧または読み出し用電圧を印加する。
【0162】
書き込み回路305は、制御回路310から出力された書き込み信号を受け取った場合、列選択回路304に対して選択されたビット線に対して書き込み用電圧の印加を指示する信号を出力する。
【0163】
また、センスアンプ306は、情報の読み出しサイクルにおいて、読み出し対象となる選択ビット線に流れる電流量を検出し、データ「1」または「0」と判定する。その結果得られた出力データDOは、データ入出力回路307を介して、外部回路へ出力される。
【0164】
なお、1トランジスタ/1不揮発性記憶部の構成である第3の実施の形態の場合、第2の実施の形態のクロスポイント型の構成と比べて記憶容量は小さくなる。しかしながら、ダイオードのような電流抑制素子が不要であるため、CMOSプロセスに容易に組み合わせることができ、また、動作の制御も容易であるという利点がある。
【0165】
また、第2の実施の形態の場合と同様に、本発明における可変抵抗層は低温で成膜することが可能であることから、本実施の形態で示すような配線工程での積層化を行う場合であっても、下層工程で形成されたトランジスタおよびシリサイドなどの配線材料に影響を与えることがないという利点がある。
【0166】
さらに、第2の実施の形態の場合と同様に、タンタルおよびその酸化物の成膜は、既存の半導体製造プロセスに容易に組み入れることが可能であるため、本実施の形態に係る不揮発性記憶装置を容易に製造することができる。
【0167】
[不揮発性記憶装置の動作例]
次に、情報を書き込む場合の書き込みサイクルおよび情報を読み出す場合の読み出しサイクルにおける第3の実施の形態に係る不揮発性記憶装置の動作例について、図28に示すタイミングチャートを参照しながら説明する。
【0168】
図28は、本発明の第3の実施の形態に係る不揮発性記憶装置の動作例を示すタイミングチャートである。なお、ここでは、可変抵抗層が高抵抗状態の場合を情報「1」に、低抵抗状態の場合を情報「0」にそれぞれ割り当てたときの動作例を示す。また、説明の便宜上、メモリセルM211およびM222について情報の書き込みおよび読み出しをする場合のみについて示す。
【0169】
図28において、VPは、可変抵抗素子の抵抗変化に必要なパルス電圧を示しており、VTはトランジスタの閾値電圧を示している。また、プレート線には、常時電圧VPが印加され、ビット線も、非選択の場合は電圧VPにプリチャージされている。
【0170】
メモリセルM211に対する書き込みサイクルにおいて、ワード線WL0にはパルス幅tPのパルス電圧2VP+トランジスタの閾値電圧VTよりも大きい電圧が印加され、トランジスタT11がON状態となる。そして、そのタイミングに応じて、ビット線BL0にはパルス電圧2VPが印加される。これにより、メモリセルM211に情報「1」を書き込む場合の書き込み用電圧が印加され、その結果、メモリセルM211の可変抵抗層が高抵抗化する。すなわち、メモリセルM211に情報「1」が書き込まれたことになる。
【0171】
次に、メモリセルM222に対する書き込みサイクルにおいて、ワード線WL1にはパルス幅tPのパルス電圧2VP+トランジスタの閾値電圧VTよりも大きい電圧が印加され、トランジスタT22がON状態となる。そのタイミングに応じて、ビット線BL1には0Vの電圧が印加される。これにより、メモリセルM222に情報「0」を書き込む場合の書き込み用電圧が印加され、その結果、メモリセルM222の可変抵抗層が低抵抗化する。すなわち、メモリセルM222に情報「0」が書き込まれたことになる。
【0172】
メモリセルM211に対する読み出しサイクルにおいては、トランジスタT11をON状態にするために所定の電圧がワード線WL0に印加され、そのタイミングに応じて、書き込みの際のパルス幅よりも振幅が小さいパルス電圧が、ビット線BL0に印加される。これにより、高抵抗化されたメモリセルM211の可変抵抗層の抵抗値に対応した電流が出力され、その出力電流値を検出することにより、情報「1」が読み出される。
【0173】
次に、メモリセルM222に対する読み出しサイクルにおいて、先のメモリセルM211に対する読み出しサイクルと同様の電圧がワード線WL1およびビット線BL1に印加される。これにより、低抵抗化されたメモリセルM222の可変抵抗層の抵抗値に対応した電流が出力され、その出力電流値を検出することにより、情報「0」が読み出される。
【0174】
第2の実施の形態の場合と同様、本実施の形態においても、高速パルスを用いて書き込み動作を行うことができる。
【0175】
また、第2の実施の形態において説明したように、本発明におけるタンタル酸化物を含む可変抵抗層を用いた場合、インプリント性の低い不揮発性記憶素子を実現することができ、その結果、第3の実施の形態に係る不揮発性記憶装置においても、消去サイクルまたはリセットサイクルなどのステップが不要となる。したがって、書き込みの高速化を図ることができるとともに、書き込み動作を単純なステップで行うことが可能となる。
【0176】
さらに、書き込み用電圧は2〜3V程度の低電圧で足りるため、低消費電力化を実現することもできる。
【0177】
なお、第2の実施の形態において説明したように、本実施の形態においても、冗長救済用メモリセルおよびエラー訂正用のパリティビット用のメモリセルを別途設けるような構成としてもよく、その場合、それらのメモリセルとして、本発明の不揮発性記憶素子を用いることができる。
【0178】
(第4の実施の形態)
第4の実施の形態に係る不揮発性半導体装置は、プログラム機能を有する第1の実施の形態に係る不揮発性記憶素子を備える不揮発性半導体装置であって、所定の演算を実行する論理回路を備えるものである。
【0179】
[不揮発性半導体装置の構成]
図29は、本発明の第4の実施の形態に係る不揮発性半導体装置の構成を示すブロック図である。
【0180】
図29に示すように、本実施の形態に係る不揮発性半導体装置400は、半導体基板401上に、CPU402と、外部回路との間でデータの入出力処理を行う入出力回路403と、所定の演算を実行する論理回路404と、アナログ信号を処理するアナログ回路405と、自己診断を行うためのBIST(Built In Self Test)回路406と、SRAM407と、これらBIST回路406およびSRAM407と接続され、特定のアドレス情報を格納するための救済アドレス格納レジスタ408とを備えている。
【0181】
図30は、本発明の第4の実施の形態に係る不揮発性半導体装置が備える救済アドレス格納レジスタの構成を示すブロック図である。また、図31は、同じく救済アドレス格納レジスタの構成を示す断面図である。
【0182】
図30および図31に示すように、救済アドレス格納レジスタ408は、第1の実施の形態に係る不揮発性記憶素子に相当する不揮発性記憶素子409と、その不揮発性記憶素子409に対して特定のアドレス情報を書き込むための書き込み回路410と、不揮発性記憶素子409に書き込まれているアドレス情報を読み出すための読み出し回路411と、ラッチ回路412とを備えている。
【0183】
不揮発性記憶素子409は、書込み回路側410への切替え部と読出し回路411側への切替え部に接続されており、可変抵抗層421を、上部電極422と下部電極423とで挟むようにして構成されている。ここで、この不揮発性記憶素子409は、第1の実施の形態に係る不揮発性記憶素子に相当する。
【0184】
なお、図31において、424はプラグ層を、425は金属配線層を、426はソース/ドレイン層をそれぞれ示している。
【0185】
本実施の形態では、2層配線で、第1配線と第2配線との間に不揮発性記憶素子を設ける構成を示しているが、例えば、3層以上の多層配線とした上で、任意の配線間へ不揮発性記憶素子を配置したり、または、必要に応じて複数の配線間に配置したりするようにしてもよい。
【0186】
[不揮発性半導体装置の動作例]
次に、上述したように構成される本実施の形態に係る不揮発性半導体装置の動作例について説明する。
【0187】
以下、救済アドレス格納レジスタ408に対してアドレス情報の書き込みを行う場合について説明する。BIST回路406は、診断指示信号TSTを受け取った場合、SRAM407のメモリブロックの検査を実行する。
【0188】
なお、このメモリブロックの検査は、LSIの製造過程における検査の際、およびLSIが実際のシステムに搭載された場合における各種の診断実行の際などに行われる。
【0189】
メモリブロックの検査の結果、不良ビットが検出された場合、BIST回路406は、書き込みデータ指示信号WDを救済アドレス格納レジスタ408へ出力する。この書き込みデータ指示信号WDを受け取った救済アドレス格納レジスタ408は、対応する不良ビットのアドレス情報を救済アドレス格納レジスタに格納する。
【0190】
このアドレス情報の格納は、そのアドレス情報に応じて、該当するレジスタが備える可変抵抗層の抵抗状態を高抵抗化または低抵抗化することによって行われる。可変抵抗層の高抵抗化または低抵抗化は、第1の実施の形態の場合と同様にして実現される。
【0191】
このようにして、救済アドレス格納レジスタ408に対するアドレス情報の書き込みが行われる。そして、SRAM407がアクセスされる場合、それと同時に救済アドレス格納レジスタ408に書き込まれているアドレス情報が読み出される。このアドレス情報の読み出しは、第1の実施の形態の場合と同様、可変抵抗層の抵抗状態に応じた出力電流値を検出することにより行われる。
【0192】
このようにして救済アドレス格納レジスタ408から読み出されたアドレス情報と、アクセス先のアドレス情報とが一致する場合、SRAM407内に設けられている予備の冗長メモリセルにアクセスし、情報の読み取りまたは書き込みが行われる。
【0193】
以上のようにして自己診断を行うことによって、製造工程の検査において外部の高価なLSIテスタを用いる必要がなくなる。また、at Speedテストが可能になるという利点もある。さらには、検査をする際のみではなく、経時変化した場合にも不良ビットの救済が可能となるため、長期間に亘って高品質を保つことできるという利点もある。
【0194】
本実施の形態に係る不揮発性半導体装置は、製造工程における1回のみの情報の書き込む場合と、製品出荷後に繰り返し情報を書き換える場合との何れにも対応することができる。
【0195】
[不揮発性半導体装置の製造方法]
次に、上述したように構成される本実施の形態に係る不揮発性半導体装置の製造方法について説明する。
【0196】
図32は、本発明の第4の実施の形態に係る不揮発性半導体装置の製造プロセスの主要な流れを示すフローチャートである。
【0197】
まず、半導体基板上にトランジスタを形成する(S101)。次に、第1ビアを形成し(S102)、その上に第1配線を形成する(S103)。
【0198】
そして、S103で形成された第1配線の上に、可変抵抗層を形成する(S104)。この可変抵抗層の形成は、第1の実施の形態において説明したとおりに行われる。
【0199】
次に、可変抵抗層の上に第2ビアを形成し(S105)、さらに、第2配線を形成する(S106)。
【0200】
以上に示すように、本実施の形態の不揮発性半導体装置の製造方法は、COMSプロセスの製造工程に、電極および可変抵抗層を形成する工程が追加されたものである。したがって、既存のCMOSプロセスを利用して容易に製造することが可能となる。また、追加の工程も少なく、しかも可変抵抗層の膜厚は比較的薄いため、プロセスの短縮化を図ることができる。
【0201】
また、第2の実施の形態の場合と同様に、本発明における可変抵抗層は低温で成膜することが可能であることから、本実施の形態で示すような配線工程での積層化を行う場合であっても、下層工程で形成されたトランジスタおよびシリサイドなどの配線材料に影響を与えることがないという利点がある。
【0202】
なお、電極部は1μm角以下で形成することができ、且つその他の回路もCMOSプロセスで形成することが可能であるため、小型の不揮発性スイッチ回路を容易に実現することができる。
【0203】
本実施の形態のように、第1の実施の形態におけるタンタル酸化物を含む可変抵抗層を備えた不揮発性記憶素子を用いるのではなく、公知のフラッシュメモリの不揮発性記憶素子を用いたり、または、公知のFeRAMメモリの不揮発性記憶素子を用いたりすることによって、不揮発性半導体装置を実現することも考えられる。しかしながら、これらの場合、特別の専用プロセス工程および材料が必要となり、COMSプロセスとの親和性に劣るという欠点がある。そのため、コスト面で問題があり、しかも製造工数が著しく増加するなど、現実性に乏しいといえる。さらに、情報の書き込みおよび読み出しが複雑であり、プログラム素子として扱うのが困難であるという問題がある。
【0204】
また、CMOSプロセスと親和性が高い構成としては、CMOS不揮発性メモリセルと称される、COMSプロセスでゲート配線をフローティング化して等価的にフラッシュメモリセルと同様の動作を実現するものがある。しかし、この構成によると、素子部の面積が大きくなり、しかも動作の制御が複雑になるなどの問題が生じる。
【0205】
また、シリサイド溶断型などの電気フューズ素子で構成する場合もCMOSプロセスと親和性が高いと言えるが、この場合、情報の書き換えが不可能である、また、素子部の面積が大きくなるなどの問題が生じる。
【0206】
さらに、公知のレーザーで配線をトリミングすることも考えられるが、この場合では、製造工程のみに限定される、レーザートリマー装置の機械的精度に律速されることになるため、微細化することができない、または、最上層に配置しなければならないというレイアウトの制約があるなどの問題が生じる。
【0207】
なお、本実施の形態では、第1の実施の形態における不揮発性記憶素子をSRAMの救済アドレス格納レジスタとして用いたが、それ以外にも、次のような適用例が考えられる。すなわち、例えば、DRAM、ROM、または第2および第3の実施の形態に係る不揮発性記憶装置の不良ビットに対する救済アドレス格納レジスタとして、第1の実施の形態における不揮発性記憶素子を用いることが可能である。
【0208】
また、不良ロジック回路若しくは予備ロジック回路の切り替え用不揮発性スイッチに適用することもできる。その他にも、アナログ回路の電圧調整およびタイミング調整用のレジスタとして、製品完成後のROMの修正用のレジスタとして、リコンフィギュアラブルロジックおよびFPGA用の不揮発性スイッチ素子として、さらには、不揮発性レジスタとして用いることも可能である。
【0209】
(その他の実施の形態)
第4の実施の形態に係る不揮発性半導体装置が、第2の実施の形態に係る不揮発性記憶装置を備えるような構成、すなわち、第2の実施の形態に係るクロスポイント型の不揮発性記憶装置と第4の実施の形態に係るCPUなどを有するLSIとを一つの半導体基板上に集積するような構成を実現することができる。
【0210】
この場合、第2の実施の形態に係るクロスポイント型の不揮発性記憶装置および第4の実施の形態に係るCPUなどを有するLSIをそれぞれ別の半導体基板上に形成しておき、その後に一つのパッケージ内にモールドするような構成であってもよい。
【0211】
また、第4の実施の形態に係る不揮発性半導体装置が、第3の実施の形態に係る不揮発性記憶装置を備えるような構成、すなわち、第3の実施の形態に係る1トランジスタ/1不揮発性記憶部構成の不揮発性記憶装置と第4の実施の形態に係るCPUなどを有するLSIとを一つの半導体基板上に集積するような構成を実現することもできる。
【0212】
この場合も、第3の実施の形態に係る1トランジスタ/1不揮発性記憶部構成の不揮発性記憶装置および第4の実施の形態に係るCPUなどを有するLSIをそれぞれ別の半導体基板上に形成しておき、その後に一つのパッケージ内にモールドするような構成であってもよい。
【0213】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0214】
本発明の不揮発性記憶素子、不揮発性記憶装置、および不揮発性半導体装置は、高速動作が可能で、しかも安定した書き換え特性を有しており、デジタル家電、メモリカード、携帯型電話機、およびパーソナルコンピュータなどの種々の電子機器に用いられる不揮発性記憶素子等として有用である。
【0215】
本発明の不揮発性記憶素子の製造方法は、高速動作が可能で、しかも安定した書き換え特性を有しており、デジタル家電、メモリカード、携帯型電話機、およびパーソナルコンピュータなどの種々の電子機器に用いられる不揮発性記憶素子の製造方法等として有用である。
【符号の説明】
【0216】
100 不揮発性記憶素子
101 基板
102 酸化物層
103 第1電極層
104 可変抵抗層
105 第2電極層
200 不揮発性記憶装置
201 メモリ本体部
202 メモリアレイ
203 行選択回路/ドライバ
204 列選択回路/ドライバ
205 書き込み回路
206 センスアンプ
207 データ入出力回路
208 アドレス入力回路
209 制御回路
210 不揮発性記憶素子
211 上部配線
212 下部配線
213 上部電極
214 可変抵抗層
215 内部電極
216 電流抑制素子
217 下部電極
218 オーミック抵抗層
219 第2の可変抵抗層
300 不揮発性記憶装置
301 メモリ本体部
302 メモリアレイ
303 行選択回路/ドライバ
304 列選択回路
305 書き込み回路
306 センスアンプ
307 データ入出力回路
308 セルプレート電源
309 アドレス入力回路
310 制御回路
313 不揮発性記憶素子
314 上部電極
315 可変抵抗層
316 下部電極
400 不揮発性半導体装置
401 半導体基板
402 CPU
403 入出力回路
404 論理回路
405 アナログ回路
406 BIST回路
407 SRAM
408 救済アドレス格納レジスタ
409 不揮発性記憶素子
410 書き込み回路
411 読み出し回路
412 ラッチ回路
BL0,BL1,… ビット線
M11,M12,… メモリセル
T11,T12,… トランジスタ
WL0,WL1,… ワード線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に介在させ、前記第1電極および前記第2電極間に与えられる電気的信号に基づいて可逆的に抵抗値が変化する抵抗変化層とを備え、
前記抵抗変化層は、少なくともタンタル酸化物を含み、当該タンタル酸化物をTaOと表した場合に、0<x<2.5を満足するように構成されている、不揮発性記憶素子。
【請求項2】
前記抵抗変化層を構成するタンタル酸化物層が、Taよりも酸素が少ない組成を有し、かつ絶縁体でない、請求項1に記載の不揮発性記憶素子。
【請求項3】
前記抵抗変化層は、少なくともタンタル酸化物を含み、当該タンタル酸化物をTaOと表した場合に、0<x≦1.9を満足するように構成されている、請求項1に記載の不揮発性記憶素子。
【請求項4】
前記抵抗変化層は、少なくともタンタル酸化物を含み、当該タンタル酸化物をTaOと表した場合に、0.5≦x≦1.9を満足するように構成されている、請求項1に記載の不揮発性記憶素子。
【請求項5】
前記抵抗変化層は、少なくともタンタル酸化物を含み、当該タンタル酸化物をTaOと表した場合に、0.8≦x≦1.9を満足するように構成されている、請求項1に記載の不揮発性記憶素子。
【請求項6】
前記抵抗変化層は、前記第1電極および前記第2電極間に与えられる両極性の電気的信号により可逆的に抵抗値が変化する、請求項1に記載の不揮発性記憶素子 。
【請求項7】
前記第1電極及び前記第2電極の少なくとも一方が、Pt,Ir,Cu,Au,Ag,TiN,及びTiAlNの少なくとも一種以上から構成されている、請求項1に記載の不揮発性記憶素子。
【請求項8】
半導体基板と、前記半導体基板の上に互い平行に形成された複数の第1の電極配線と、前記複数の第1の電極配線の上方に前記半導体基板の主面に平行な面内において互いに平行に且つ前記複数の第1の電極配線に立体交差するように形成された複数の第2の電極配線と、前記複数の第1の電極配線と前記複数の第2の電極配線との立体交差点に対応して設けられた不揮発性記憶素子とを備えるメモリアレイを備え、
前記不揮発性記憶素子のそれぞれは、前記第1の電極配線と前記第2電極配線との間に介在させ、前記第1電極配線および前記第2電極配線間に与えられる電気的信号に基づいて可逆的に抵抗値が変化する抵抗変化層とを備え、
前記抵抗変化層は、少なくともタンタル酸化物を含み、当該タンタル酸化物をTaOと表した場合に、0<x<2.5を満足するように構成されている、不揮発性記憶装置。
【請求項9】
前記不揮発性記憶素子のそれぞれは、前記第1の電極配線と接続された第1電極と、前記第2の電極配線と接続された第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に介在させられた前記抵抗変化層とを備え、前記抵抗変化層は、前記第1の電極配線および前記第2の電極配線に与えられ、ひいては前記第1電極および前記第2電極間に与えられる電気的信号に基づいて可逆的に抵抗値が変化する、請求項8に記載の不揮発性記憶装置。
【請求項10】
前記不揮発性記憶素子のそれぞれは、前記第1電極と前記第2電極との間に電流抑制素子を備えており、
当該電流抑制素子は、前記抵抗変化層と電気的に接続されている、請求項9に記載の不揮発性記憶装置。
【請求項11】
前記メモリアレイが複数積層されてなる多層化メモリアレイを備える、請求項8乃至10のいずれかに記載の不揮発性記憶装置。
【請求項12】
半導体基板と、前記半導体基板上に形成された、互いに交差するように配列された複数のワード線および複数のビット線、前記複数のワード線および複数のビット線の交点に対応してそれぞれ設けられた複数のトランジスタ、並びに前記複数のトランジスタに一対一で対応して設けられた複数の不揮発性記憶素子とを備え、
前記不揮発性記憶素子のそれぞれは、第1電極と、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に介在させ、前記ビット線と前記ワード線との間に与えられ、ひいては、対応して設けられている前記トランジスタを介して前記第1電極および前記第2電極間に与えられる電気的信号に基づいて可逆的に抵抗値が変化する抵抗変化層とを備え、
前記抵抗変化層は、少なくともタンタル酸化物を含み、当該タンタル酸化物をTaOと表した場合に、0<x<2.5を満足するように構成されている、不揮発性記憶装置。
【請求項13】
半導体基板と、前記半導体基板上に形成された、所定の演算を実行する論理回路およびプログラム機能を有する不揮発性記憶素子とを備え、
前記不揮発性記憶素子は、第1電極と、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に介在させ、両電極間の電圧に基づいて可逆的に抵抗値が変化する抵抗変化層とを備え、
前記抵抗変化層は、少なくともタンタル酸化物を含み、当該タンタル酸化物をTaOと表した場合に、0<x<2.5を満足するように構成されている、不揮発性半導体装置。
【請求項14】
請求項13に記載の不揮発性半導体装置と、
請求項8,9,および12のいずれかに記載の不揮発性記憶装置とを備える、不揮発性半導体装置。
【請求項15】
第1電極と、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に介在させ、前記第1電極および前記第2電極間に与えられる電気的信号に基づいて可逆的に抵抗値が変化する抵抗変化層とを備え、前記抵抗変化層は、少なくともタンタル酸化物を含み、当該タンタル酸化物をTaOと表した場合に、0<x<2.5を満足するように構成されている不揮発性記憶素子の製造方法であって、
前記タンタル酸化物をスパッタ法により形成する、不揮発性記憶素子の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【公開番号】特開2013−102181(P2013−102181A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−288753(P2012−288753)
【出願日】平成24年12月28日(2012.12.28)
【分割の表示】特願2008−236577(P2008−236577)の分割
【原出願日】平成19年10月24日(2007.10.24)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】