不明水流入箇所特定装置
【課題】簡易、かつ精度良く、不明水の流入箇所を特定する。
【解決手段】所定期間内の水質データを受信する受信部11と、比較の基準となる基準水質データ等と各箇所における所定期間内の水質データ等、あるいは各箇所における所定期間内の水質データ同士等を比較する第一比較部13と、第一比較部13の結果に基づき不明水の流入箇所を特定する流入箇所特定部14と、を備え、流入箇所特定部14では、晴天時において、基準水質データ等から乖離しあるいは相対的に他の箇所の水質データ等から乖離することを条件に地下水と汚水の混合箇所であると特定する機能、および雨天時において、基準水質データ若しくはそれに基づく数値から乖離しあるいは相対的に他の箇所の水質データ若しくはそれに基づく数値から乖離することを条件に雨水と汚水の混合箇所であると特定する機能の少なくともいずれか一方の機能を実行する不明水流入箇所特定装置10に関する。
【解決手段】所定期間内の水質データを受信する受信部11と、比較の基準となる基準水質データ等と各箇所における所定期間内の水質データ等、あるいは各箇所における所定期間内の水質データ同士等を比較する第一比較部13と、第一比較部13の結果に基づき不明水の流入箇所を特定する流入箇所特定部14と、を備え、流入箇所特定部14では、晴天時において、基準水質データ等から乖離しあるいは相対的に他の箇所の水質データ等から乖離することを条件に地下水と汚水の混合箇所であると特定する機能、および雨天時において、基準水質データ若しくはそれに基づく数値から乖離しあるいは相対的に他の箇所の水質データ若しくはそれに基づく数値から乖離することを条件に雨水と汚水の混合箇所であると特定する機能の少なくともいずれか一方の機能を実行する不明水流入箇所特定装置10に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水管路等の不明水流入箇所を特定するための不明水流入箇所特定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下水施設には、本来の下水以外に一般に不明水と言われる浸入水が流入する。浸入水には二種類があり、ひとつは晴天時に流入する「常時浸入水」、もうひとつは雨天時に浸入する「雨天時浸入水」であり、特徴が異なる。マンホール、管渠等の下水管、およびます等の附帯施設のクラック、ズレや誤接、宅地内排水管の誤接等があると、本来の下水以上の不明水が流れ込み、様々な問題が発生する。下水管には汚水のみを収集する汚水管と雨水のみを収集する雨水管があるが、例えば、雨天時浸入水の例として汚水管に雨水管が誤接されている場合には、雨天時になると、汚水管に雨水が浸入し、汚水管が多量の水によって溢れ、あるいは汚水処理施設における処理水量の増大を招いてしまう。逆に、雨水管に汚水管が誤接されていると、雨水管内の水が常に汚れ、未処理汚水の公共用水域への流出問題が生じる。さらに、常時浸入水の例として、汚水管に、クラックを通じて地下水が定常的に浸入するような場合には、定常的に汚水管を流れる水量が増し、汚水処理施設における処理水量の増大を招いてしまう。このような問題を防止するには、定期、不定期を問わず、不明水の流入箇所を調査する必要がある。
【0003】
従来から、不明水の流入箇所を調査する方法として、下水管内の水の流速あるいは水位を直接計測する方法が知られている(例えば、特許文献1および特許文献2を参照)。特許文献1に開示される方法は、浮遊体に無線式ICタグリーダを固定し、管路内壁に設置した複数の無線式タグとの間で通信を行い、上記タグリーダと上記複数のタグ間の距離に基づき、管路内の水位と流速を求める方法である。また、特許文献2に開示される方法は、各地域における雨量の時系列変化を示す雨量データと、上記地域より下流に位置する基点における不明水量の時系列変化を示す不明水量データとからそれらのデータ間の相関値を算出し、各地区における不明水発生分布を推定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−179992号公報
【特許文献2】特開2005−023763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、管内の水の流量あるいは水位を測定して不明水流入箇所を特定する方法には、次のような問題がある。流量計測の場合、上記特許文献1に開示される方法のように、ICタグ等を管内内壁に設置する必要がある。また、上記方法以外の方法として、マンホールインバート部にフリュームを設置する必要があるため、機器の設置に特殊な技術を要し、不明水流入箇所の特定は極めて困難である。水位計測の場合、流量計測に比べて簡易に計測できるものの、夜間などの流量の少ない時間帯では水位計測値に大きな誤差が含まれ得る。また、管勾配や粗度係数の誤差が無視できないため、不明水流入箇所の特定には適していない。
【0006】
本発明は、かかる問題を解決するためになされたものであって、簡易、かつ精度良く、不明水の流入箇所を特定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、水位、地形等の影響を受けにくく、簡易に不明水流入箇所を特定する方法として、雨水あるいは地下水と、汚水との間の水質の違いに着目し、水質の計測による方法を考えた。具体的には、以下のとおりである。
【0008】
本発明の一実施形態は、不明水の流入箇所を特定するための不明水流入箇所特定装置であって、少なくとも1または複数の箇所における所定期間内の水質データを受信する受信部と、比較の基準となる基準水質データ若しくはそれに基づく数値と各箇所における所定期間内の水質データ若しくはそれに基づく数値、あるいは各箇所における所定期間内の水質データ同士若しくはそれに基づく数値同士を比較する第一比較部と、第一比較部の結果に基づき不明水の流入箇所を特定する流入箇所特定部と、を備え、流入箇所特定部では、晴天時において、基準水質データ若しくはそれに基づく数値から乖離しあるいは相対的に他の箇所の水質データ若しくはそれに基づく数値から乖離することを条件に地下水と汚水の混合箇所であると特定する機能、および雨天時において、基準水質データ若しくはそれに基づく数値から乖離しあるいは相対的に他の箇所の水質データ若しくはそれに基づく数値から乖離することを条件に雨水と汚水の混合箇所であると特定する機能の少なくともいずれか一方の機能を実行する不明水流入箇所特定装置である。
【0009】
本発明の別の一実施形態は、さらに、1または複数の箇所ごとに、計測された所定期間内の水質データの平均値を算出する平均値算出部と、1または複数の箇所ごとに、計測された所定期間内の水質データの標準偏差値を算出する標準偏差値算出部と、を備え、第一比較部では、各箇所における水質データの平均値および標準偏差値を、各箇所同士で、あるいは基準水質データの平均値および標準偏差値と比較し、流入箇所特定部では、少なくとも平均値が各箇所間にて相対的に小さい若しくは大きい箇所を、あるいは少なくとも平均値が基準水質データの平均値と比べて小さい若しくは大きい箇所を地下水と汚水の混合箇所と特定し、標準偏差値が各箇所間にて相対的に大きい箇所を、あるいは標準偏差値が基準水質データの標準偏差値と比べて大きい箇所を雨水と汚水の混合箇所と特定する不明水流入箇所特定装置である。
【0010】
本発明の別の一実施形態は、さらに、1または複数の箇所ごとに、晴天日の水質データの晴天日最小値と、雨天日の水質データの雨天日最小値とを比較する第二比較部と、晴天日最小値に対して所定割合以下の雨天日最小値を持つ箇所を、雨水と汚水の混合箇所候補に選出する雨水・汚水混合箇所候補選出部と、雨水と汚水の混合箇所候補ごとに、晴天日最小値に対する雨天日最小値の割合を複数段階に区分けして各区分に割り振られる重み係数と、各区分内に属する頻度とを乗じて、各区分にて乗じた数を全区分で加算するスコア算出部と、を備え、第一比較部では、各箇所同士で、あるいは基準水質データの基準スコアと比較し、流入箇所特定部では、相対的にスコアの大きい順から所定数の箇所、あるいは基準スコアに対してスコアの大きい箇所を、優先対応を要する雨水と汚水の混合箇所と特定する不明水流入箇所特定装置である。
【0011】
本発明の別の一実施形態は、さらに、1または複数の箇所における晴天日の水質データの平均値若しくは極値の少なくともいずれか1つを選択する水質データ選択部を備え、第一比較部では、複数の箇所の平均値同士若しくは極値同士、あるいは基準水質データの平均値若しくは極値と比較し、流入箇所特定部では、少なくとも、複数の箇所間において相対的に若しくは基準水質データとの比較において平均値若しくは極値の内の最小値が最も小さくなる箇所、あるいは複数の箇所間において相対的に若しくは基準水質データとの比較において平均値若しくは極値の内の最大値が最も大きくなる箇所を、地下水と汚水の混合箇所と特定する不明水流入箇所特定装置である。
【0012】
本発明の別の一実施形態は、水質データを測定する水質測定器を、さらに含む不明水流入箇所特定装置である。
【0013】
本発明の一実施形態は、コンピュータにインストールして実行することにより、当該コンピュータを不明水の流入箇所を特定するための不明水流入箇所特定装置として機能させることができるコンピュータプログラムであって、コンピュータに対して、少なくとも1または複数の箇所における所定期間内の水質データを受信する受信部; 比較の基準となる基準水質データ若しくはそれに基づく数値と各箇所における所定期間内の水質データ若しくはそれに基づく数値、あるいは各箇所における所定期間内の水質データ同士若しくはそれに基づく数値同士を比較する第一比較部; 第一比較部の結果に基づき不明水の流入箇所を特定する流入箇所特定部であって、晴天時において、基準水質データ若しくはそれに基づく数値から乖離しあるいは相対的に他の箇所の水質データ若しくはそれに基づく数値から乖離することを条件に地下水と汚水の混合箇所であると特定する機能、および雨天時において、基準水質データ若しくはそれに基づく数値から乖離しあるいは相対的に他の箇所の水質データ若しくはそれに基づく数値から乖離することを条件に雨水と汚水の混合箇所であると特定する機能の少なくともいずれか一方の機能を実行する流入箇所特定部; の各構成部の動作を行わせるコンピュータプログラムである。
【0014】
本発明の別の一実施形態は、さらに、コンピュータに対して、1または複数の箇所ごとに、計測された所定期間内の水質データの平均値を算出する平均値算出部; 1または複数の箇所ごとに、計測された所定期間内の水質データの標準偏差値を算出する標準偏差値算出部; の各構成部の動作を行わせると共に、第一比較部の動作として、各箇所における水質データの平均値および標準偏差値を、各箇所同士で、あるいは基準水質データの平均値および標準偏差値と比較し、流入箇所特定部の動作として、少なくとも平均値が各箇所間にて相対的に小さい若しくは大きい箇所を、あるいは少なくとも平均値が基準水質データの平均値と比べて小さい若しくは大きい箇所を地下水と汚水の混合箇所と特定し、標準偏差値が各箇所間にて相対的に大きい箇所を、あるいは標準偏差値が基準水質データの標準偏差値と比べて大きい箇所を雨水と汚水の混合箇所と特定するコンピュータプログラムである。
【0015】
本発明の別の一実施形態は、さらに、コンピュータに対して、1または複数の箇所ごとに、晴天日の水質データの晴天日最小値と、雨天日の水質データの雨天日最小値とを比較する第二比較部; 晴天日最小値に対して所定割合以下の雨天日最小値を持つ箇所を、雨水と汚水の混合箇所候補に選出する雨水・汚水混合箇所候補選出部; 雨水と汚水の混合箇所候補ごとに、晴天日最小値に対する雨天日最小値の割合を複数段階に区分けして各区分に割り振られる重み係数と、各区分内に属する頻度とを乗じて、各区分にて乗じた数を全区分で加算するスコア算出部; の各構成部の動作を行わせると共に、第一比較部の動作として、各箇所同士で、あるいは基準水質データの基準スコアと比較し、流入箇所特定部の動作として、相対的にスコアの大きい順から所定数の箇所、あるいは基準スコアに対してスコアの大きい箇所を、優先対応を要する雨水と汚水の混合箇所と特定するコンピュータプログラムである。
【0016】
本発明の別の一実施形態は、さらに、コンピュータに対して、1または複数の箇所における晴天日の水質データの平均値若しくは極値の少なくともいずれか1つを選択する水質データ選択部の動作を行わせると共に、第一比較部の動作として、複数の箇所の平均値同士若しくは極値同士、あるいは基準水質データの平均値若しくは極値と比較し、流入箇所特定部の動作として、少なくとも、複数の箇所間において相対的に若しくは基準水質データとの比較において平均値若しくは極値の内の最小値が最も小さくなる箇所、あるいは複数の箇所間において相対的に若しくは基準水質データとの比較において平均値若しくは極値の内の最大値が最も大きくなる箇所を、地下水と汚水の混合箇所と特定するコンピュータプログラムである。
【0017】
本発明の一実施形態は、不明水の流入箇所を特定するための不明水流入箇所特定方法であって、水質測定器から、不明水の流入箇所を特定する装置内に、少なくとも1または複数の箇所における所定期間内の水質データを受信する受信ステップと、当該装置において、比較の基準となる基準水質データ若しくはそれに基づく数値と各箇所における所定期間内の水質データ若しくはそれに基づく数値、あるいは各箇所における所定期間内の水質データ同士若しくはそれに基づく数値同士を比較する第一比較ステップと、第一比較ステップの処理結果に基づき不明水の流入箇所を特定する流入箇所特定ステップと、を実行し、流入箇所特定ステップでは、晴天時において、基準水質データ若しくはそれに基づく数値から乖離しあるいは相対的に他の箇所の水質データ若しくはそれに基づく数値から乖離することを条件に地下水と汚水の混合箇所であると特定する機能、および雨天時において、基準水質データ若しくはそれに基づく数値から乖離しあるいは相対的に他の箇所の水質データ若しくはそれに基づく数値から乖離することを条件に雨水と汚水の混合箇所であると特定する機能の少なくともいずれか一方の機能を実行する不明水流入箇所特定方法である。
【0018】
本発明の別の一実施形態は、さらに、前記の装置において、1または複数の箇所ごとに、計測された所定期間内の水質データの平均値を算出する平均値算出ステップと、1または複数の箇所ごとに、計測された所定期間内の水質データの標準偏差値を算出する標準偏差値算出ステップと、を実行し、第一比較ステップでは、各箇所における水質データの平均値および標準偏差値を、各箇所同士で、あるいは基準水質データの平均値および標準偏差値と比較し、流入箇所特定ステップでは、少なくとも平均値が各箇所間にて相対的に小さい若しくは大きい箇所を、あるいは少なくとも平均値が基準水質データの平均値と比べて小さい若しくは大きい箇所を地下水と汚水の混合箇所と特定し、標準偏差値が各箇所間にて相対的に大きい箇所を、あるいは標準偏差値が基準水質データの標準偏差値と比べて大きい箇所を雨水と汚水の混合箇所と特定する不明水流入箇所特定方法である。
【0019】
本発明の別の一実施形態は、さらに、前記の装置において、1または複数の箇所ごとに、晴天日の水質データの晴天日最小値と、雨天日の水質データの雨天日最小値とを比較する第二比較ステップと、晴天日最小値に対して所定割合以下の雨天日最小値を持つ箇所を、雨水と汚水の混合箇所候補に選出する雨水・汚水混合箇所候補選出ステップと、雨水と汚水の混合箇所候補ごとに、晴天日最小値に対する雨天日最小値の割合を複数段階に区分けして各区分に割り振られる重み係数と、各区分内に属する頻度とを乗じて、各区分にて乗じた数を全区分で加算するスコア算出ステップと、を実行し、第一比較ステップでは、各箇所同士で、あるいは基準水質データの基準スコアと比較し、流入箇所特定ステップでは、相対的にスコアの大きい順から所定数の箇所、あるいは基準スコアに対してスコアの大きい箇所を、優先対応を要する雨水と汚水の混合箇所と特定する不明水流入箇所特定方法である。
【0020】
本発明の別の一実施形態は、さらに、前記の装置において、1または複数の箇所における晴天日の水質データの平均値若しくは極値の少なくともいずれか1つを選択する水質データ選択ステップを実行し、第一比較ステップでは、複数の箇所の平均値同士若しくは極値同士、あるいは基準水質データの平均値若しくは極値と比較し、流入箇所特定ステップでは、少なくとも、複数の箇所間において相対的に若しくは基準水質データとの比較において平均値若しくは極値の内の最小値が最も小さくなる箇所、あるいは複数の箇所間において相対的に若しくは基準水質データとの比較において平均値若しくは極値の内の最大値が最も大きくなる箇所を、地下水と汚水の混合箇所と特定する不明水流入箇所特定方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、簡易、かつ精度良く、不明水の流入箇所を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、各種下水管内に水質測定器を配置している状況を示す図である。
【図2】図2は、地下に埋設される下水管網の平面図である。
【図3】図3は、汚水管に地下水が浸入する地下水浸入型の特徴を説明する図である。
【図4】図4は、汚水管に雨水が浸入する雨水浸入型の特徴を説明する図である。
【図5】図5は、本発明の第一実施形態に係る不明水流入箇所特定装置の構成および水質測定器からデータを受け取る状況を示す模式図である。
【図6】図6は、第一実施形態に係る不明水流入箇所特定方法において、水質の測定から不明水の流入箇所の特定までの各処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】図7は、本発明の第二実施形態に係る不明水流入箇所特定装置の構成および水質測定器からデータを受け取る状況を示す模式図である。
【図8】図8は、第二実施形態に係る不明水流入箇所特定方法において、水質の測定から不明水の流入箇所の特定までの各処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】図9は、第二実施形態において、所定期間(1カ月)内の複数の汚水管それぞれにおける水質データの推移およびその所定期間内の各日の雨量を示すグラフである。
【図10】図10は、図9に示す各水質データの推移に基づいて算出した平均値および標準偏差値を示す表である。
【図11】図11は、図10に示す平均値および標準偏差値に基づいて、それらをX軸とY軸にとるX−Y軸平面上にプロットしたグラフである。
【図12】図12は、本発明の第三実施形態に係る不明水流入箇所特定装置の構成および水質測定器からデータを受け取る状況を示す模式図である。
【図13】図13は、第三実施形態に係る不明水流入箇所特定方法において、水質の測定から、雨水と汚水の混合箇所であって優先的に対応すべき箇所の特定までの各処理の流れを示すフローチャートである。
【図14】図14は、第三実施形態において、ある汚水管における晴天日の水質データの推移および雨天日3日間の水質データの推移を示すグラフである。
【図15】図15は、5箇所の汚水管において、晴天日の水質データの最小値に対する雨天日の水質データの最小値の各区分に属する頻度を比較する表である。
【図16】図16は、5箇所の汚水管において、図15に示す頻度それぞれに対して各区分に割り振られた重み係数を乗じて得られたスコアを比較する表である。
【図17】図17は、本発明の第四実施形態に係る不明水流入箇所特定装置の構成および水質測定器からデータを受け取る状況を示す模式図である。
【図18】図18は、第四実施形態に係る不明水流入箇所特定方法において、水質の測定から、地下水と汚水の混合箇所の特定までの各処理の流れを示すフローチャートである。
【図19】図19は、第四実施形態において、複数の汚水管における水質データの変動範囲を比較して示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明に係る不明水流入箇所特定装置、不明水流入箇所特定装置にインストールして実行可能なコンピュータプログラムおよび不明水流入箇所特定方法の各実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0024】
<第一実施形態>
図1は、各種下水管内に水質測定器を配置している状況を示す図である。図2は、地下に埋設される下水管網の平面図である。
【0025】
この実施形態では、測定対象となる箇所の一例である下水管1を流れる水の水質測定は、図1の(A)に例示するように、マンホールのインバートに、水質測定器4につながるチェーン3をアンカー2で固定し、水質測定器4のセンサー部分を水に漬けて行われる。ここで、測定対象となる箇所は、一般的に公道に設けられる下水管1以外にも、図1の(B)に例示するように、住宅地等民地内に設けられる公共ますや排水管等も含む。水質は、電気伝導度(EC)、塩素イオン濃度、pH、水温を含むように広義に解釈される。下水管1は、水が流れ込む管であればその種類を問わないが、例えば、下水道以外の集落排水に代表される生活排水等の汚水、雨水を集水する管渠施設も含む。不明水とは、本来流入するはずのない水であって、地下水か、雨水か、あるいはその他の種類の水かが明らかになっていない水をいう。晴天時若しくは晴天日とは、降雨のない時若しくは降雨のない日をいう。雨天時若しくは雨天日は、降雨のある時若しくは降雨のある日をいう。
【0026】
本発明の特徴は、マンホール、管渠などの下水管、およびます等の附帯施設内に水質測定器4を設置して、晴天日および雨天日の内の少なくとも一方の日を含む所定期間について水質を測定し、下水管1を本来流れるべき汚水に雨水が流入した場合若しくは本来流れるべき雨水に汚水が流入した場合の水質の変化と、本来流れるべき汚水に地下水が流入した場合の水質の変化との間の相違を利用して、浸入する不明水および浸入している箇所を特定するものである。この実施形態では、主に、下水管1を代表して、その下位概念として本来的に汚水を流す汚水管1aを、測定対象の水質として電気伝導度(EC)を例に説明する。また、ECを測定する箇所は、図2に示すような下水エリア内のマンホールA〜Eの5箇所とする。
【0027】
図3は、汚水管に地下水が浸入する地下水浸入型の特徴を説明する図である。図4は、汚水管に雨水が浸入する雨水浸入型の特徴を説明する図である。
【0028】
まず、図3を参照しながら、地下水浸入型について説明する。晴天日に、ある汚水管1aに水質測定器4を配置して、一定時間ごと(例えば、10分ごと)にECを測定し、当該測定を24時間継続する。汚水管1aに汚水のみが流れ、地下水の浸入が無い場合、ECの時間推移は、図3の(B)に示すようになる。一方、海水の混入がないことを前提とした場合、地下水自体は、汚水よりもECが低いため、図3の(A)に示すように、そのECはほぼ一定の時間推移となる。したがって、汚水に地下水が浸入していると、図3の(C)に示すように、汚水+地下水のEC(実線)は、地下水の浸入の無い他の汚水管1aのECの推移(点線)と比較して、時間の推移に依らずに一律に低くなる。
【0029】
次に、図4を参照しながら、雨水浸入型について説明する。晴天日に、ある汚水管1aに水質測定器4を配置して、一定時間ごと(例えば、10分ごと)にECを測定し、当該測定を24時間継続すると、汚水管1aに汚水のみが流れ、雨水が浸入しないため、ECの時間推移は、図4の(B)に示すようになる。ここで、図4の(A)に示すように、ある雨天日に一定時間の降雨があったと想定する。この場合、図4の(C)に示すように、雨天日の汚水+雨水のEC(実線)は、晴天日の同じ汚水管1aのECの推移(点線)と比較して、降雨の時間帯およびその直後の時間帯において低くなる。なお、本来的に雨水を流す管に汚水が浸入する場合であっても、降雨の時間帯付近で雨水の量が増えるので、その時間帯付近でのみ、ECが低下する。
【0030】
このように、地下水の浸入の無い正常な汚水管1aにおけるECと比べて、天候に関係なく、全測定時間帯においてECが低下する場合には、その測定対象の汚水管1aは、地下水浸入型に属すると考えられる。一方、同じ汚水管1aにおいて、晴天日のECの推移と比較して、降雨時間帯およびその直後においてECが低くなる場合には、その測定対象の汚水管1aは、雨水浸入型に属すると考えられる。
【0031】
図5は、本発明の第一実施形態に係る不明水流入箇所特定装置の構成および水質測定器からデータを受け取る状況を示す模式図である。
【0032】
この実施形態に係る不明水流入箇所特定装置10は、1または複数の下水管1にてそれぞれ水質を測定した水質測定器4からの水質データに基づき、不明水の流入箇所を特定するための装置である。不明水流入箇所特定装置10は、好適に、受信部11と、記憶部12と、第一比較部13と、流入箇所特定部14と、インターフェイス15とを備える。受信部11は、少なくとも1または複数の下水管1における所定期間内(例えば、1カ月)の水質データ(ここでは、EC)を、有線であるか無線であるかを問わず受信する部分である。記憶部12は、少なくとも、受信した上記水質データを記憶する部分である。ただし、記憶部12は、下水管1内にて測定して得られた水質データと比較するための基準となるデータ(基準水質データ)を予め記憶していても良い。基準水質データとは、一例を挙げると、雨水の流入箇所を特定する場合には、少なくとも雨水の流入の無い汚水管1aにおける水質データであり、地下水の流入箇所を特定する場合には、少なくとも地下水の流入の無い汚水管1aにおける水質データであり、より広義には、何らかの不明水の流入を見つける上で比較対象とするデータである。基準水質データは、水質測定器4側から送られたデータでも、デフォルトにて記憶部12に記憶されていたデータであっても良い。
【0033】
第一比較部13は、基準水質データを用いる場合には、当該基準水質データと、測定対象となる1または複数の下水管1における水質データとを比較する部分である。また、基準水質データを用いない場合には、第一比較部13は、測定対象となる複数の下水管1における水質データ同士を相対的に比較する部分である。第一比較部13は、ECのような水質データを比較対象とする他、当該水質データに基づいて計算して得られた数値を比較対象としても良い。
【0034】
流入箇所特定部14は、第一比較部13による比較結果に基づき不明水の流入箇所を特定する部分である。より具体的には、流入箇所特定部14は、晴天時において、基準水質データ若しくはそれに基づく数値から乖離しあるいは相対的に他の下水管1の水質データ若しくはそれに基づく数値から乖離することを条件に、その下水管1が地下水と汚水の混合箇所であると特定する機能を実行する部分である。加えて、流入箇所特定部14は、雨天時において、基準水質データ若しくはそれに基づく数値から乖離しあるいは相対的に他の下水管1の水質データ若しくはそれに基づく数値から乖離することを条件に、その下水管1が雨水と汚水の混合箇所であると特定する機能を実行する部分である。流入箇所特定部14は、雨水と汚水との混合箇所の特定機能、地下水と汚水との混合箇所の特定機能の内、少なくともいずれか1つの機能を実行することができる。
【0035】
インターフェイス15は、必須の構成ではないが、外部の装置と有線あるいは無線で接続可能であって、不明水流入箇所特定装置10の外部に情報を送信あるいは水質測定器4以外の外部から情報を受信するための接続部である。例えば、キーボードやポインティングデバイス等の入力機器をインターフェイス15に接続し、不明水流入箇所特定装置10に対して各種入力を行うこともできる。
【0036】
受信部11およびインターフェイス15の各機能は、例えば、接点および当該接点と電気的に接続するCPUを搭載した印刷回路基板(PCB)にて実現可能である。記憶部12は、例えば、RAMあるいはHDD等のメモリ機能を持つ電子部品や装置によって実現可能である。第一比較部13および流入箇所特定部14は、例えば、マイクロコンピュータやCPUによって実現可能である。受信部11、記憶部12、第一比較部13、流入箇所特定部14およびインターフェイス15は、複数の電子部品を導電線によって接続した1つのPCBにて、各機能を実行できるものでも良く、あるいは複数のPCBあるいは装置を接続して、各機能を実行できるものでも良い。
【0037】
不明水流入箇所特定装置10は、不明水流入箇所特定用の専用機器でも良いが、汎用のコンピュータに、特定のコンピュータプログラムをインストールして、これを実行することによっても実現可能である。その場合のコンピュータプログラムは、好適には、コンピュータに対して、少なくとも受信部11、第一比較部13および流入箇所特定部14の各構成部の動作を行わせるコンピュータプログラムである。
【0038】
図5に示すように、水質測定器4は、その外部に露出するセンサー5と、内部に格納されるCPUを含む制御部6、RAMやROMを含む記憶部7およびインターフェイス8とを、好適に備える。センサー5は、EC等の水質を測定する検知部分である。制御部6は、検知した信号を処理する部分である。記憶部7は、検知した信号や当該信号から演算される水質データ、あるいは当該水質データから計算された数値等を記憶する部分である。インターフェイス8は、水質測定器4の外部に水質データ等を出力するための接続部分であり、メモリディスク等を挿脱自在な構成の装填口であっても良い。なお、図5では、一部の水質測定器4の構造しか示されていないが、他の水質測定器4も同様の構成である。
【0039】
図6は、第一実施形態に係る不明水流入箇所特定方法において、水質の測定から不明水の流入箇所の特定までの各処理の流れを示すフローチャートである。
【0040】
まず、水質測定器4を下水管1の内部に配置して、所定期間内(例えば、1日、1週間、1カ月)の水質データを測定する(ステップS101)。測定は、1時間ごと、あるいは10分ごとというように、一定間隔で実行されるのが好ましい。この結果、センサー5にて検知された信号は、制御部6を通じて記憶部7に記憶される。次に、水質測定器4を不明水流入箇所特定装置10と接続し、不明水流入箇所特定装置10または水質測定器4からコマンドを送ると、不明水流入箇所特定装置10の受信部11は、水質測定器4側から水質データを受信する(ステップS102: 受信ステップ)。次に、不明水流入箇所特定装置10は、記憶部12に、受信した水質データを記憶する(ステップS103)。次に、第一比較部13は、各下水管1における所定期間内の水質データ同士(若しくはそれに基づく数値同士でも良い)を比較する(ステップS104: 第一比較ステップ)。また、基準水質データが記憶部12に記憶されており、1または複数の下水管1において測定された水質データを基準水質データと比較する場合には、ステップS104において、第一比較部13は、基準水質データ(若しくはそれに基づく数値でも良い)を基準として、1または複数の下水管1において測定された水質データ(若しくはそれに基づく数値でも良い)と比較する。次に、流入箇所特定部14は、晴天時において、基準水質データ(若しくはそれに基づく数値)から乖離しあるいは相対的に他の下水管1の水質データ(若しくはそれに基づく数値)から乖離することを条件に、当該測定対象の下水管1を、地下水と汚水の混合箇所であると特定する(ステップS105: 流入箇所特定ステップ)。また、流入箇所特定部14は、雨天時において、基準水質データ(若しくはそれに基づく数値)から乖離しあるいは相対的に他の下水管1の水質データ(若しくはそれに基づく数値)から乖離することを条件に、当該測定対象の下水管1を、雨水と汚水の混合箇所であると特定する(ステップS106: 流入箇所特定ステップ)。図6に示すフローチャートは、雨水と汚水の混合箇所および地下水と汚水の混合箇所の両方を特定する機能を持つ例であるが、この実施形態に係る不明水流入箇所特定方法は、地下水と汚水の混合箇所の特定のみを実行する場合には、ステップS105のみを、また、雨水と汚水の混合箇所の特定のみを実行する場合には、ステップS106のみを、それぞれ行うこともできる。
【0041】
<第二実施形態>
図7は、本発明の第二実施形態に係る不明水流入箇所特定装置の構成および水質測定器からデータを受け取る状況を示す模式図である。
【0042】
第二実施形態に係る不明水流入箇所特定装置20と水質測定器4とは、無線通信によって、水質データの送受信を可能とする。このため、水質測定器4は、第一実施形態にて説明した水質測定器4の内部に格納される構成に加え、発信器9と送信用アンテナ18とを備える。なお、図7では、一部の水質測定器4の構造しか示されていないが、この実施形態およびこれ以降の実施形態における他の水質測定器4も同様の構成である。不明水流入箇所特定装置20は、水質測定器4から送信される水質データを受信するための受信用アンテナ21を備える。
【0043】
不明水流入箇所特定装置20内の受信部11は、受信用アンテナ21と接続され、水質測定器4から送信されてくる水質データを受信する部分である。記憶部12およびインターフェイス15は、第一実施形態におけるそれらと同様の機能を持つ。平均値算出部22は、1または複数の下水管1ごとに、計測された所定期間(例えば、1カ月)内の水質データの平均値を算出する部分である。標準偏差値算出部23は、平均値算出の対象とした水質データの標準偏差値を算出する部分である。第一比較部13は、各下水管1における水質データの平均値および標準偏差値を、各下水管1同士で比較、あるいは基準水質データがある場合には基準水質データの平均値および標準偏差値と比較する。流入箇所特定部14は、各下水管1同士で相対比較して少なくとも平均値の小さい若しくは大きい上位所定数(例えば、1または2)の下水管1を地下水と汚水の混合箇所と特定し、各下水管1同士で相対比較して標準偏差値の大きい上位所定数(例えば、1または2)の下水管1を雨水と汚水の混合箇所と特定する。また、記憶部12に基準水質データを記憶しており、第一比較部13において当該基準水質データを基準に比較した場合には、流入箇所特定部14は、少なくとも基準水質データの平均値と比較して平均値の小さい若しくは大きい下水管1を地下水と汚水の混合箇所と特定し、基準水質データの標準偏差値と比較して標準偏差値の大きい上位所定数(例えば、1または2)の下水管1を雨水と汚水の混合箇所と特定することができる。
【0044】
平均値算出部22および標準偏差値算出部23は、例えば、マイクロコンピュータやCPUによって実現可能である。平均値算出部22および標準偏差値算出部23は、一つの構成部であっても良く、その場合、「平均値・標準偏差値算出部」に統合可能である。なお、受信部11、記憶部12、第一比較部13、流入箇所特定部14およびインターフェイス15の具体的なハードウェアは、第一実施形態と同様である。
【0045】
不明水流入箇所特定装置20は、不明水流入箇所特定用の専用機器でも良いが、汎用のコンピュータに、特定のコンピュータプログラムをインストールして、これを実行することによっても実現可能である。その場合のコンピュータプログラムは、好適には、コンピュータに対して、少なくとも受信部11、第一比較部13、流入箇所特定部14、平均値算出部22および標準偏差値算出部23の各構成部の動作を行わせるコンピュータプログラムである。
【0046】
図8は、第二実施形態に係る不明水流入箇所特定方法において、水質の測定から不明水の流入箇所の特定までの各処理の流れを示すフローチャートである。図9は、第二実施形態において、所定期間(1カ月)内の複数の汚水管それぞれにおける水質データの推移およびその所定期間内の各日の雨量を示すグラフである。図10は、図9に示す各水質データの推移に基づいて算出した平均値および標準偏差値を示す表である。図11は、図10に示す平均値および標準偏差値に基づいて、それらをX軸とY軸にとるX−Y軸平面上にプロットしたグラフである。
【0047】
まず、水質測定器4を1または複数の汚水管1aの内部にそれぞれ配置して、所定期間(例えば、1カ月)内の水質データを測定する(ステップS201)。測定間隔は、例えば、10分ごとというように適宜選択できる。この結果、センサー5にて検知された信号は、制御部6を通じて記憶部7に記憶される。次に、水質測定器4から不明水流入箇所特定装置20に向けて無線通信によって、所定期間内の水質データを送信する(ステップS202)。不明水流入箇所特定装置20の受信部11は、水質測定器4側から水質データを受信する(ステップS203: 受信ステップ)。次に、不明水流入箇所特定装置20の記憶部12は、受信した水質データを記憶する(ステップS204)。記憶部12は、所定期間内の基準水質データを記憶していても良い。基準水質データについては、第一実施形態にて既に説明したので、ここではその説明を省略する。
【0048】
ここで、3地点の汚水管1a(それぞれ、「地点A」、「地点B」および「地点C」と称する)における1カ月間のECを計測する例で説明する。また、以下、地点A,B,Cそれぞれのエリアにおける時間当たりの降雨量(mm/hr)の情報も、インターフェイス15を通じてあるいは水質測定器4側からの送信によって、記憶部12内に格納されていることを前提で説明する。
【0049】
ステップS204までの処理によって、不明水流入箇所特定装置20は、図9のグラフに示す各水質データを取得している。地点Aでは、地点B,Cの各水質データの推移と比較したときに、降雨時に、ECが低下する傾向が見られる。一方、地点Bでは、地点A,Cの各水質データの推移と比較したときに、降雨時か否かに関わらず、1カ月を通じて、常にECが低下している。図9に示す水質データの推移を示すグラフは、水質測定器4の制御部6に含まれるCPUの処理によって得られるものでも良く、また、不明水流入箇所特定装置20側のCPUの処理によって得られるものでも良い。
【0050】
ステップS204に続いて、平均値算出部22は、地点A,B,Cそれぞれの1カ月間のECの平均値を算出する(ステップS205: 平均値算出ステップ)。また、標準偏差値算出部23は、地点A,B,Cそれぞれの1カ月間のECの標準偏差値を算出する(ステップS206: 標準偏差値算出ステップ)。なお、ステップS205とステップS206は、同時に演算処理を行う1つのステップでも良く、また、先後を逆にして、ステップS206をステップS205よりも先に実行しても良い。さらには、地点単位で平均値と標準偏差値の両算出を行っても良い。その場合、地点AにおけるECの平均値と標準偏差値を算出するステップ、地点BにおけるECの平均値と標準偏差値を算出するステップ、地点CにおけるECの平均値と標準偏差値を算出するステップに時系列的に分けることができる。ステップS205とステップS206の算出の結果、地点A,B,Cにおいて、図10の表に示す平均値と標準偏差値が得られる。
【0051】
地点A,B,Cにおける各平均値および各標準偏差値を、平均値(X)−標準偏差値(Y)平面上にプロットすると、図11に示すようになる。図11に示すグラフの作成ステップの有無は問わないが、当該グラフを作成する場合、例えば、平均値算出部22、標準偏差値算出部23、第一比較部13若しくは流入箇所特定部14のいずれか1つ若しくは2以上の共同にて行うことができる。ステップS206に続いて、第一比較部13は、地点A,B,Cの各汚水管1aにて測定した水質データの平均値同士および標準偏差値同士を比較する(ステップS207: 第一比較ステップ)。その結果、流入箇所特定部14は、相対的に平均値が最も小さい地点Bの汚水管1aを、地下水と汚水の混合箇所と特定する(ステップS208: 流入箇所特定ステップ)。また、流入箇所特定部14は、相対的に標準偏差値の最も大きい地点Aの汚水管1aを、雨水と汚水の混合箇所と特定する(ステップS209: 流入箇所特定ステップ)。なお、流入箇所特定ステップS208は、調査地点が上記のような3箇所ではなく、もっと多いような場合には、相対的に平均値の最も小さい地点のみならず、次に小さい地点も含み平均値の小さい順から上位複数地点を、地下水と汚水の混合箇所と特定するステップでも良い。同様に、流入箇所特定ステップS209は、標準偏差値の大きい順から上位複数地点を、雨水と汚水の混合箇所と特定するステップでも良い。また、流入箇所特定ステップS208は、平均値のみならず、標準偏差値をも考慮し、平均値の相対的に小さな上位複数地点の内、標準偏差値の大きい上位複数地点を除外して、地下水と汚水の混合箇所と特定するステップでも良い。
【0052】
上記の不明水流入箇所特定方法は、地点A,B,Cの各汚水管1aにおける水質データ同士を相対比較した方法であるが、地点Cを標準地点とし、その水質データを基準水質データとそれぞれ位置づけて、地点A,Bの各水質データを、基準水質データと比較して、不明水流入箇所かどうかを特定することもできる。その場合、第一比較部13は、地点A,Bの各汚水管1aにて測定した水質データの平均値および標準偏差値を、基準水質データの平均値および標準偏差値と、それぞれ比較する(ステップS207: 第一比較ステップ)。その結果、流入箇所特定部14は、基準水質データの平均値よりも小さな平均値となる地点A,Bの汚水管1aを、地下水と汚水の混合箇所と特定する(ステップS208: 流入箇所特定ステップ)。また、流入箇所特定部14は、基準水質データの標準偏差値より大きな標準偏差値の地点A,Bの汚水管1aを、雨水と汚水の混合箇所と特定する(ステップS209: 流入箇所特定ステップ)。この場合、地点A,Bともに、地下水と汚水の混合箇所および雨水と汚水の混合箇所として特定される。地点Aと地点Bの標準偏差値の違いを考慮して、より正確な特定を行うには、前述の相対比較法か、あるいは後述の絶対基準と比較する方法を採用するのが好ましい。
【0053】
水質データ同士の相対比較、標準地点に対する比較以外に、絶対的数値を基準に、地点A,B,Cの各汚水管1aにつき、不明水流入箇所かどうかを特定する方法を採用しても良い。図11に示すPは、EC平均値の基準となる基準平均値である。同様に、Qは、EC標準偏差値の基準となる基準標準偏差値である。これらの値は、基準水質データに相当する。第一比較部13は、地点A,Bの各汚水管1aにて測定した水質データの平均値および標準偏差値を、基準水質データであるPおよびQとそれぞれ比較する(ステップS207: 第一比較ステップ)。地点Cでは、EC平均値は基準平均値Pより大きく、EC標準偏差値は基準標準偏差値Qより小さい。この結果、地点CにおけるEC平均値とEC標準偏差値との交差点は、図11に示すグラフにおいて、PとQによって4つに分割されたエリア26,27,28,29中、右下のエリア26に存在する。一方、地点Aでは、EC平均値は基準平均値Pより小さく、EC標準偏差値は基準標準偏差値Qより大きい。この結果、地点AにおけるEC平均値とEC標準偏差との交差点は、図11に示すグラフにおいて、PとQによって4つに分割されたエリア中、左上のエリア28に存在する。
【0054】
また、地点Bでは、EC平均値は基準平均値Pより小さく、EC標準偏差値は基準標準偏差値Qより小さい。この結果、地点BにおけるEC平均値とEC標準偏差値との交差点は、図11に示すグラフにおいて、PとQによって4つに分割されたエリア中、左下のエリア27に存在する。流入箇所特定部14は、EC平均値がPより小さく、かつEC標準偏差値がQより小さい地点Bの汚水管1aを、地下水と汚水の混合箇所と特定する(ステップS208: 流入箇所特定ステップ)。また、流入箇所特定部14は、EC平均値がPより小さく、かつEC標準偏差値がQより大きい地点Aの汚水管1aを、雨水と汚水の混合箇所と特定する(ステップS209: 流入箇所特定ステップ)。なお、この例では、エリア29に属する地点が存在しないが、もし当該地点が存在する場合には、流入箇所特定部14は、その地点を、雨水と汚水の混合箇所と特定することができる。標準偏差値が大きいことは、天候によって、ECの変動が大きいことを意味し、雨水の流入によるECが低下している可能性を示唆するからである。
【0055】
<第三実施形態>
図12は、本発明の第三実施形態に係る不明水流入箇所特定装置の構成および水質測定器からデータを受け取る状況を示す模式図である。
【0056】
第三実施形態に係る不明水流入箇所特定装置30と水質測定器4とは、無線通信によって、水質データの送受信を可能とする。この実施形態では、不明水流入箇所特定装置30は、雨水と汚水の混合箇所を特定する機能を必須に持つ装置である。水質測定器4は、第二実施形態と同様、発信器9と送信用アンテナ18とを備える。また、不明水流入箇所特定装置30は、水質測定器4から送信される水質データを受信するための受信用アンテナ31を備える。
【0057】
不明水流入箇所特定装置30内の受信部11は、受信用アンテナ31と接続され、水質測定器4から送信されてくる水質データを受信する部分である。記憶部12およびインターフェイス15は、第一実施形態および第二実施形態におけるそれらと同様の機能を持つ。第二比較部32は、1または複数の下水管1ごとに、晴天日の水質データ(ここでは、EC)の最小値(晴天日最小値という)と、雨天日の水質データの最小値(雨天日最小値という)とを比較する部分である。雨水・汚水混合箇所候補選出部33は、晴天日最小値に対して所定割合(例えば、80%)以下の雨天日最小値を持つ下水管1を、雨水と汚水の混合箇所候補に選出する部分である。記憶部12は、雨水と汚水の混合箇所として選出された下水管1において、晴天日最小値に対する雨天日最小値の割合を複数段階に区分けして、各区分内に重み係数を割り振って記憶している。例えば、晴天日最小値に対する雨天日最小値の割合が70%より大きく80%以下という区分(70〜80%の区分)、同割合が60%より大きく70%以下という区分(60〜70%の区分)、同割合が50%より大きく60%以下という区分(50〜60%の区分)、同割合が50%以下の区分(50%以下の区分)の4段階に区分けして、記憶部12にその情報を記憶しておくことができる。また、重み係数として、例えば、70〜80%の区分に重み係数「1」を、60〜70%の区分に重み係数「2」を、50〜60%の区分に重み係数「3」を、50%以下の区分に重み係数「4」を割り振ることにより、晴天日の最小のECに対して雨天日の最小のECが低下するほど重み係数を大きく設定するのが好ましい。
【0058】
スコア算出部34は、雨水と汚水の混合箇所候補ごとに、晴天日最小値に対する雨天日最小値の割合を複数段階に区分けして各区分に割り振られる重み係数と、各区分内に属する頻度とを乗じて、各区分にて乗じた数を全区分で加算する部分である。例えば、ある汚水管1aにおいて、100×雨天日の最小EC/晴天日の最小ECにて計算された値が70〜80%の区分に属する頻度が1回、同値が60〜70%の区分に属する頻度が2回、同値が50〜60%の区分に属する頻度が3回、同値が50%以下の区分に属する頻度が4回であると仮定する。また、重み係数は、70〜80%の区分に「1」を、60〜70%の区分に「2」を、50〜60%の区分に「3」を、50%以下の区分に「4」が割り振られていると仮定する。この場合、スコア算出部34は、その汚水管1aに対して、1回×重み係数1+2回×重み係数2+3回×重み係数3+4回×重み係数4=30という計算を実行する。その結果、その汚水管1aに対して算出されるスコアは30となる。
【0059】
第一比較部13は、各下水管1同士でスコアを相対的に比較する。また、基準水質データから求められる基準スコアが記憶部12に記憶されている場合には、第一比較部13は、各下水管1のスコアと基準スコアとを比較する。なお、基準スコアも、基準水質データの範疇に入る。流入箇所特定部14は、相対的にスコアの大きい順から所定数(例えば、1または2)の下水管1を、優先対応を要する雨水と汚水の混合箇所と特定する。また、基準スコアを用いた場合には、流入箇所特定部14は、その基準スコアに対してスコアの大きい箇所を、優先対応を要する雨水と汚水の混合箇所と特定する。
【0060】
第二比較部32、雨水・汚水混合箇所候補選出部33およびスコア算出部34は、例えば、マイクロコンピュータやCPUによって実現可能である。なお、受信部11、記憶部12、第一比較部13、流入箇所特定部14およびインターフェイス15の具体的なハードウェアは、第一実施形態および第二実施形態と同様である。
【0061】
不明水流入箇所特定装置30は、不明水流入箇所特定用の専用機器でも良いが、汎用のコンピュータに、特定のコンピュータプログラムをインストールして、これを実行することによっても実現可能である。その場合のコンピュータプログラムは、好適には、コンピュータに対して、少なくとも受信部11、第一比較部13、流入箇所特定部14、第二比較部32、雨水・汚水混合箇所候補選出部33およびスコア算出部34の各構成部の動作を行わせるコンピュータプログラムである。
【0062】
図13は、第三実施形態に係る不明水流入箇所特定方法において、水質の測定から、雨水と汚水の混合箇所であって優先的に対応すべき箇所の特定までの各処理の流れを示すフローチャートである。図14は、第三実施形態において、ある汚水管における晴天日の水質データの推移および雨天日3日間の水質データの推移を示すグラフである。図15は、5箇所の汚水管において、晴天日の水質データの最小値に対する雨天日の水質データの最小値の各区分に属する頻度を比較する表である。図16は、5箇所の汚水管において、図15に示す頻度それぞれに対して各区分に割り振られた重み係数を乗じて得られたスコアを比較する表である。
【0063】
まず、水質測定器4を1または複数の汚水管1aの内部に配置して、晴天である所定期間(例えば、3日)の水質データ、および雨天である所定期間(例えば、1カ月)の水質データを測定する(ステップS301)。測定間隔は、例えば、10分ごとというように適宜選択できる。この結果、センサー5にて検知された信号は、制御部6を通じて記憶部7に記憶される。次に、水質測定器4から不明水流入箇所特定装置30に向けて無線通信によって、所定期間内の水質データを送信する(ステップS302)。不明水流入箇所特定装置30の受信部11は、水質測定器4側から水質データを受信する(ステップS303: 受信ステップ)。次に、不明水流入箇所特定装置30の記憶部12は、受信した水質データを記憶する(ステップS304)。記憶部12は、予め、晴天日の所定期間内の水質データを記憶しておくこともできる。晴天日の水質データは、晴天日1日だけの水質データでも良いが、好ましくは、複数日(例えば3日)分の晴天日における水質データの推移の平均である。記憶部12に、測定対象の汚水管1aにおける晴天日の水質データを既に記憶している場合には、上記のステップS301は、雨天である所定期間の水質データを測定するステップであり、ステップS302〜ステップS304は、それぞれ、その測定した水質データの送信、受信および記憶を行う各ステップである。
【0064】
ここで、5箇所以上の汚水管1aにおけるECを計測する例で説明する。ステップS304までの処理によって、不明水流入箇所特定装置30は、調査地点それぞれにつき、図14のグラフに示す水質データの推移を取得している。当該水質データにおいて、図14中の晴天日の水質データの時間推移を示すライン(点線)は、晴天日3日間の水質データの推移を平均して得られたラインである。これは、その汚水管1aの雨天日の水質データと比較に用いるベンチマークとなる。図14中の3本のライン(実線)は、3日間の雨天日(連続3日間であるか、別々の日であるかを問わない)の水質データの時間推移を示す。いずれの日のラインを見ても、ECの雨天日最小値は、ECの晴天日最小値に対して80%以下を示す。ここでは、1日でも当該80%以下となった汚水管1aを、雨水と汚水の混合箇所と疑うべき汚水管1aと設定する。図14は、1つの調査地点について、晴天日の水質データの時間推移と雨天3日間の水質データの時間推移のみを例示しているが、実際には、ステップS304までの処理によって、全ての調査地点につき、雨天日の水質データが得られている。
【0065】
第二比較部32は、汚水管1aごとに、晴天日最小値と雨天日最小値とを比較する(ステップS305: 第二比較ステップ)。続いて、雨水・汚水混合箇所候補選出部33は、晴天日最小値に対して80%以下の雨天日最小値を持つ汚水管1aを、雨水と汚水の混合箇所候補に選出する(ステップS306: 雨水・汚水混合箇所候補選出ステップ)。この結果、多数の調査地点の内の5箇所が、雨水と汚水の混合の疑いのある箇所の候補として選出されるものとする。図15は、当該5箇所の調査地点における調査結果を比較した表である。図15に示す表のみでは、どの調査地点が優先的に修繕あるいはより詳しい調査を行うべき箇所かはわかりにくい。このため、ステップS306に続いて、スコア算出部34は、各調査地点につき、図15に示すデータに基づき、記憶部12内の重み係数を読み出して、各区分に割り振られた当該重み係数と各区分内に属する頻度とを乗じて、各区分にて乗じた数を全区分で加算し、スコアを算出する(ステップS307: スコア算出ステップ)。次に、第一比較部13は、調査地点1〜5の各汚水管1a同士でスコアを比較する(ステップS308: 第一比較ステップ)。図16は、各段階の重み係数を示す他、調査地点5箇所におけるスコアおよび対応すべき優先順位を比較した表である。図16に示すように、優先順位が最も高い調査地点は、スコアの最も大きい調査地点3であり、続いて、対応を要する順位は、スコア順に、調査地点1、調査地点4、調査地点2、調査地点5となる。流入箇所特定部14は、相対的にスコアの大きい順から所定数(例えば、1または2)の汚水管1aを、優先対応を要する雨水と汚水の混合箇所と特定する(ステップS309: 流入箇所特定ステップ)。
【0066】
上記の不明水流入箇所特定方法は、調査地点1〜5箇所の各汚水管1aにおける水質データに基づいて算出されたスコアを相対比較した方法であるが、基準スコアと、各水質データに基づいて算出されたスコアとを比較して、優先対応を要する雨水と汚水の混合箇所を特定することもできる。その場合、第一比較部13は、基準スコア(例えば、「40」)と各水質データに基づいて算出されたスコアとを比較し(ステップS308: 第一比較ステップ)、流入箇所特定部14は、基準スコアに対してスコアの大きい調査地点(図16に示す例では、調査地点3および調査地点1)の各汚水管1aを、優先対応を要する雨水と汚水の混合箇所と特定する(ステップS309: 流入箇所特定ステップ)。
【0067】
<第四実施形態>
図17は、本発明の第四実施形態に係る不明水流入箇所特定装置の構成および水質測定器からデータを受け取る状況を示す模式図である。
【0068】
第四実施形態に係る不明水流入箇所特定装置40と水質測定器4とは、無線通信によって、水質データの送受信を可能とする。この実施形態では、不明水流入箇所特定装置40は、地下水と汚水の混合箇所を特定する機能を必須に持つ装置である。水質測定器4は、第二実施形態および第三実施形態と同様、発信器9と送信用アンテナ18とを備える。また、不明水流入箇所特定装置40は、水質測定器4から送信される水質データを受信するための受信用アンテナ41を備える。
【0069】
不明水流入箇所特定装置40内の受信部11は、受信用アンテナ41と接続され、水質測定器4から送信されてくる水質データを受信する部分である。記憶部12およびインターフェイス15は、第一実施形態、第二実施形態および第三実施形態におけるそれらと同様の機能を持つ。水質データ選択部42は、1または複数の下水管1における晴天日の水質データの平均値若しくは極値の少なくともいずれか1つを選択する部分である。ここで、極値とは、最小値および最大値を意味する。第一比較部13は、複数の下水管1における上記平均値同士若しくは上記極値同士を比較する部分である。記憶部12に基準水質データを記憶している場合には、第一比較部13は、1または複数の下水管1における平均値若しくは極値と、基準水質データの平均値若しくは極値とをそれぞれ比較することもできる。流入箇所特定部14は、少なくとも、複数の下水管1において相対的に平均値若しくは最小値が最も小さくなる下水管1、あるいは相対的に平均値若しくは最大値が最も大きくなる下水管1を、地下水と汚水の混合箇所と特定する部分である。記憶部12に基準水質データを記憶して、第一比較部13によって基準水質データを用いて比較を行った場合には、流入箇所特定部14は、1または複数の下水管1の各水質データの平均値若しくは最小値が基準水質データの平均値若しくは最小値よりもそれぞれ小さくなる下水管1、あるいは基準水質データの平均値若しくは最大値よりも大きくなる下水管1を、地下水と汚水の混合箇所と特定することもできる。ここで、平均値若しくは最小値が小さくなる下水管1を、地下水と汚水の混合箇所と特定するのは、本来的に汚水を流す下水管1に地下水が浸入している箇所を特定する場合である。なお、流入箇所特定部14は、相対的に平均値若しくは最小値あるいは最大値が最も小さくなる下水管1のみならず、その次に平均値若しくは最小値あるいは最大値が小さくなる下水管1をも含む上位複数の下水管1を、地下水と汚水の混合箇所と特定しても良い。
【0070】
水質データ選択部42は、例えば、マイクロコンピュータやCPUによって実現可能である。なお、受信部11、記憶部12、第一比較部13、流入箇所特定部14およびインターフェイス15の具体的なハードウェアは、第一実施形態、第二実施形態および第三実施形態と同様である。
【0071】
不明水流入箇所特定装置40は、不明水流入箇所特定用の専用機器でも良いが、汎用のコンピュータに、特定のコンピュータプログラムをインストールして、これを実行することによっても実現可能である。その場合のコンピュータプログラムは、好適には、コンピュータに対して、少なくとも受信部11、第一比較部13、流入箇所特定部14および水質データ選択部42の各構成部の動作を行わせるコンピュータプログラムである。
【0072】
図18は、第四実施形態に係る不明水流入箇所特定方法において、水質の測定から、地下水と汚水の混合箇所の特定までの各処理の流れを示すフローチャートである。図19は、第四実施形態において、複数の汚水管における水質データの変動範囲を比較して示すグラフである。
【0073】
まず、水質測定器4を1または複数の汚水管1aの内部に配置して、晴天である所定期間(例えば、7日間)の水質データを測定する(ステップS401)。測定間隔は、例えば、10分ごとというように適宜選択できる。この結果、センサー5にて検知された信号は、制御部6を通じて記憶部7に記憶される。次に、水質測定器4から不明水流入箇所特定装置40に向けて無線通信によって、複数の汚水管1aにおける所定期間内の水質データを送信する(ステップS402)。不明水流入箇所特定装置40の受信部11は、水質測定器4側から水質データを受信する(ステップS403: 受信ステップ)。次に、不明水流入箇所特定装置40の記憶部12は、受信した水質データを記憶する(ステップS404)。
【0074】
ここで、5箇所の汚水管1a(地点A〜E)における晴天日7日間のECを計測する例で説明する。ステップS404までの処理によって、地点A〜EにおけるECの変動がわかる。水質データ選択部42は、各地点のECの平均値若しくは極値を選択する(ステップS405: 水質データ選択ステップ)。当該選択は、平均値および極値の内の少なくともいずれか一方で良いが、この例では、極値であってかつ最小値を選択する方が好ましい。次に、第一比較部13は、各地点のECの平均値同士若しくは極値同士を比較する(ステップS406: 第一比較ステップ)。図19に、地点A〜Eにおける7日間の測定によって得られたECの変動幅を示す。当該変動幅におけるMAXはECの最大値を、MINはECの最小値を、AVはECの平均値を、それぞれ示す。図19に示すように、地点AにおけるECの最小値は、全ての地点の各ECの最小値の中で最も小さい。地点Aに続いてECの最小値の小さい地点は、地点Dである。また、地点AにおけるECの平均値も、全ての地点の各ECの平均値の中で最も小さい。地点Aに続いてECの平均値の小さい地点も、地点Dである。流入箇所特定部14は、各地点の中で、ECの最小値若しくは平均値の中で最も小さい値を示す地点Aと、次に最小値若しくは平均値の小さい地点Dを、地下水と汚水の混合箇所と特定する(ステップS407: 流入箇所特定ステップ)。なお、ステップS407において、地点Aのみを地下水と汚水の混合箇所と特定し、あるいは、地点Aおよび地点Dのみならず、三番目に最小値若しくは平均値の小さい地点Cをも、地下水と汚水の混合箇所と特定するようにしても良い。
【0075】
上記の不明水流入箇所特定方法は、測定地点間のECの極値若しくは平均値の相対的な比較によって、地下水と汚水の混合箇所を特定しているが、絶対的な基準水質データを用いて、地下水と汚水の混合箇所を特定しても良い。例えば、図19に示すように、Rで示すEC値を、最小値の基準とし、第一比較部13によって各地点のECの最小値とRとを比較し(ステップS406: 第一比較ステップ)、流入箇所特定部14によって、Rより小さなECの最小値を与える地点A,Dを、地下水と汚水の混合箇所と特定しても良い(ステップS407: 流入箇所特定ステップ)。また、同様に、ECの平均値の基準を設け、第一比較部13によって各地点のECの最小値と上記平均値の基準とを比較し(ステップS406: 第一比較ステップ)、流入箇所特定部14によって、その平均値の基準より小さなECの平均値を与える地点を、地下水と汚水の混合箇所と特定しても良い(ステップS407: 流入箇所特定ステップ)。その場合、記憶部12は、基準水質データとして、Rや、ECの平均値の基準値を記憶している。
【0076】
<その他の実施形態>
以上、本発明に係る不明水流入箇所特定装置、コンピュータプログラムおよび不明水流入箇所特定方法の各実施形態について説明してきたが、本発明は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、種々変形して実施できる。
【0077】
不明水流入箇所特定装置20,30,40は、無線通信によって、水質データの送受信を可能とするが、水質測定器4と有線接続によって水質データを受け取る装置、あるいはメモリディスク等の情報記録媒体を介して水質データを受け取る装置でも良い。また、汎用コンピュータを用いる場合、当該コンピュータにインストールして不明水流入箇所特定装置10,20,30,40の各機能を実行するためのコンピュータプログラムは、CD−ROM、フレキシブルディスク、メモリディスク等の情報記録媒体をコンピュータに装填してコンピュータ内のメモリにインストールされるものの他、コンピュータを外部サーバーにアクセスして、当該外部サーバーからダウンロードしてコンピュータ内部のハードディスク等にインストールされるものでも良い。
【0078】
上述の第一実施形態、第二実施形態、第三実施形態および第四実施形態の各構成および機能は、任意に組み合わせることもできる。例えば、第三実施形態に係る不明水流入箇所特定装置30は雨水流入箇所を特定する機能を備える装置であり、第四実施形態に係る不明水流入箇所特定装置40は地下水流入箇所を特定する機能を備える装置であるが、本発明は、これら両機能を備える不明水流入箇所特定装置でも良い。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、下水管路および附帯設備内への不明水の流入箇所を特定するのに利用可能である。
【符号の説明】
【0080】
1 下水管(箇所の一例)
1a 汚水管(下水管の下位概念、箇所の一例)
4 水質測定器
10,20,30,40 不明水流入箇所特定装置
11 受信部
13 第一比較部
14 流入箇所特定部
22 平均値算出部
23 標準偏差値算出部
32 第二比較部
33 雨水・汚水混合箇所候補選出部
34 スコア算出部
42 水質データ選択部
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水管路等の不明水流入箇所を特定するための不明水流入箇所特定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下水施設には、本来の下水以外に一般に不明水と言われる浸入水が流入する。浸入水には二種類があり、ひとつは晴天時に流入する「常時浸入水」、もうひとつは雨天時に浸入する「雨天時浸入水」であり、特徴が異なる。マンホール、管渠等の下水管、およびます等の附帯施設のクラック、ズレや誤接、宅地内排水管の誤接等があると、本来の下水以上の不明水が流れ込み、様々な問題が発生する。下水管には汚水のみを収集する汚水管と雨水のみを収集する雨水管があるが、例えば、雨天時浸入水の例として汚水管に雨水管が誤接されている場合には、雨天時になると、汚水管に雨水が浸入し、汚水管が多量の水によって溢れ、あるいは汚水処理施設における処理水量の増大を招いてしまう。逆に、雨水管に汚水管が誤接されていると、雨水管内の水が常に汚れ、未処理汚水の公共用水域への流出問題が生じる。さらに、常時浸入水の例として、汚水管に、クラックを通じて地下水が定常的に浸入するような場合には、定常的に汚水管を流れる水量が増し、汚水処理施設における処理水量の増大を招いてしまう。このような問題を防止するには、定期、不定期を問わず、不明水の流入箇所を調査する必要がある。
【0003】
従来から、不明水の流入箇所を調査する方法として、下水管内の水の流速あるいは水位を直接計測する方法が知られている(例えば、特許文献1および特許文献2を参照)。特許文献1に開示される方法は、浮遊体に無線式ICタグリーダを固定し、管路内壁に設置した複数の無線式タグとの間で通信を行い、上記タグリーダと上記複数のタグ間の距離に基づき、管路内の水位と流速を求める方法である。また、特許文献2に開示される方法は、各地域における雨量の時系列変化を示す雨量データと、上記地域より下流に位置する基点における不明水量の時系列変化を示す不明水量データとからそれらのデータ間の相関値を算出し、各地区における不明水発生分布を推定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−179992号公報
【特許文献2】特開2005−023763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、管内の水の流量あるいは水位を測定して不明水流入箇所を特定する方法には、次のような問題がある。流量計測の場合、上記特許文献1に開示される方法のように、ICタグ等を管内内壁に設置する必要がある。また、上記方法以外の方法として、マンホールインバート部にフリュームを設置する必要があるため、機器の設置に特殊な技術を要し、不明水流入箇所の特定は極めて困難である。水位計測の場合、流量計測に比べて簡易に計測できるものの、夜間などの流量の少ない時間帯では水位計測値に大きな誤差が含まれ得る。また、管勾配や粗度係数の誤差が無視できないため、不明水流入箇所の特定には適していない。
【0006】
本発明は、かかる問題を解決するためになされたものであって、簡易、かつ精度良く、不明水の流入箇所を特定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、水位、地形等の影響を受けにくく、簡易に不明水流入箇所を特定する方法として、雨水あるいは地下水と、汚水との間の水質の違いに着目し、水質の計測による方法を考えた。具体的には、以下のとおりである。
【0008】
本発明の一実施形態は、不明水の流入箇所を特定するための不明水流入箇所特定装置であって、少なくとも1または複数の箇所における所定期間内の水質データを受信する受信部と、比較の基準となる基準水質データ若しくはそれに基づく数値と各箇所における所定期間内の水質データ若しくはそれに基づく数値、あるいは各箇所における所定期間内の水質データ同士若しくはそれに基づく数値同士を比較する第一比較部と、第一比較部の結果に基づき不明水の流入箇所を特定する流入箇所特定部と、を備え、流入箇所特定部では、晴天時において、基準水質データ若しくはそれに基づく数値から乖離しあるいは相対的に他の箇所の水質データ若しくはそれに基づく数値から乖離することを条件に地下水と汚水の混合箇所であると特定する機能、および雨天時において、基準水質データ若しくはそれに基づく数値から乖離しあるいは相対的に他の箇所の水質データ若しくはそれに基づく数値から乖離することを条件に雨水と汚水の混合箇所であると特定する機能の少なくともいずれか一方の機能を実行する不明水流入箇所特定装置である。
【0009】
本発明の別の一実施形態は、さらに、1または複数の箇所ごとに、計測された所定期間内の水質データの平均値を算出する平均値算出部と、1または複数の箇所ごとに、計測された所定期間内の水質データの標準偏差値を算出する標準偏差値算出部と、を備え、第一比較部では、各箇所における水質データの平均値および標準偏差値を、各箇所同士で、あるいは基準水質データの平均値および標準偏差値と比較し、流入箇所特定部では、少なくとも平均値が各箇所間にて相対的に小さい若しくは大きい箇所を、あるいは少なくとも平均値が基準水質データの平均値と比べて小さい若しくは大きい箇所を地下水と汚水の混合箇所と特定し、標準偏差値が各箇所間にて相対的に大きい箇所を、あるいは標準偏差値が基準水質データの標準偏差値と比べて大きい箇所を雨水と汚水の混合箇所と特定する不明水流入箇所特定装置である。
【0010】
本発明の別の一実施形態は、さらに、1または複数の箇所ごとに、晴天日の水質データの晴天日最小値と、雨天日の水質データの雨天日最小値とを比較する第二比較部と、晴天日最小値に対して所定割合以下の雨天日最小値を持つ箇所を、雨水と汚水の混合箇所候補に選出する雨水・汚水混合箇所候補選出部と、雨水と汚水の混合箇所候補ごとに、晴天日最小値に対する雨天日最小値の割合を複数段階に区分けして各区分に割り振られる重み係数と、各区分内に属する頻度とを乗じて、各区分にて乗じた数を全区分で加算するスコア算出部と、を備え、第一比較部では、各箇所同士で、あるいは基準水質データの基準スコアと比較し、流入箇所特定部では、相対的にスコアの大きい順から所定数の箇所、あるいは基準スコアに対してスコアの大きい箇所を、優先対応を要する雨水と汚水の混合箇所と特定する不明水流入箇所特定装置である。
【0011】
本発明の別の一実施形態は、さらに、1または複数の箇所における晴天日の水質データの平均値若しくは極値の少なくともいずれか1つを選択する水質データ選択部を備え、第一比較部では、複数の箇所の平均値同士若しくは極値同士、あるいは基準水質データの平均値若しくは極値と比較し、流入箇所特定部では、少なくとも、複数の箇所間において相対的に若しくは基準水質データとの比較において平均値若しくは極値の内の最小値が最も小さくなる箇所、あるいは複数の箇所間において相対的に若しくは基準水質データとの比較において平均値若しくは極値の内の最大値が最も大きくなる箇所を、地下水と汚水の混合箇所と特定する不明水流入箇所特定装置である。
【0012】
本発明の別の一実施形態は、水質データを測定する水質測定器を、さらに含む不明水流入箇所特定装置である。
【0013】
本発明の一実施形態は、コンピュータにインストールして実行することにより、当該コンピュータを不明水の流入箇所を特定するための不明水流入箇所特定装置として機能させることができるコンピュータプログラムであって、コンピュータに対して、少なくとも1または複数の箇所における所定期間内の水質データを受信する受信部; 比較の基準となる基準水質データ若しくはそれに基づく数値と各箇所における所定期間内の水質データ若しくはそれに基づく数値、あるいは各箇所における所定期間内の水質データ同士若しくはそれに基づく数値同士を比較する第一比較部; 第一比較部の結果に基づき不明水の流入箇所を特定する流入箇所特定部であって、晴天時において、基準水質データ若しくはそれに基づく数値から乖離しあるいは相対的に他の箇所の水質データ若しくはそれに基づく数値から乖離することを条件に地下水と汚水の混合箇所であると特定する機能、および雨天時において、基準水質データ若しくはそれに基づく数値から乖離しあるいは相対的に他の箇所の水質データ若しくはそれに基づく数値から乖離することを条件に雨水と汚水の混合箇所であると特定する機能の少なくともいずれか一方の機能を実行する流入箇所特定部; の各構成部の動作を行わせるコンピュータプログラムである。
【0014】
本発明の別の一実施形態は、さらに、コンピュータに対して、1または複数の箇所ごとに、計測された所定期間内の水質データの平均値を算出する平均値算出部; 1または複数の箇所ごとに、計測された所定期間内の水質データの標準偏差値を算出する標準偏差値算出部; の各構成部の動作を行わせると共に、第一比較部の動作として、各箇所における水質データの平均値および標準偏差値を、各箇所同士で、あるいは基準水質データの平均値および標準偏差値と比較し、流入箇所特定部の動作として、少なくとも平均値が各箇所間にて相対的に小さい若しくは大きい箇所を、あるいは少なくとも平均値が基準水質データの平均値と比べて小さい若しくは大きい箇所を地下水と汚水の混合箇所と特定し、標準偏差値が各箇所間にて相対的に大きい箇所を、あるいは標準偏差値が基準水質データの標準偏差値と比べて大きい箇所を雨水と汚水の混合箇所と特定するコンピュータプログラムである。
【0015】
本発明の別の一実施形態は、さらに、コンピュータに対して、1または複数の箇所ごとに、晴天日の水質データの晴天日最小値と、雨天日の水質データの雨天日最小値とを比較する第二比較部; 晴天日最小値に対して所定割合以下の雨天日最小値を持つ箇所を、雨水と汚水の混合箇所候補に選出する雨水・汚水混合箇所候補選出部; 雨水と汚水の混合箇所候補ごとに、晴天日最小値に対する雨天日最小値の割合を複数段階に区分けして各区分に割り振られる重み係数と、各区分内に属する頻度とを乗じて、各区分にて乗じた数を全区分で加算するスコア算出部; の各構成部の動作を行わせると共に、第一比較部の動作として、各箇所同士で、あるいは基準水質データの基準スコアと比較し、流入箇所特定部の動作として、相対的にスコアの大きい順から所定数の箇所、あるいは基準スコアに対してスコアの大きい箇所を、優先対応を要する雨水と汚水の混合箇所と特定するコンピュータプログラムである。
【0016】
本発明の別の一実施形態は、さらに、コンピュータに対して、1または複数の箇所における晴天日の水質データの平均値若しくは極値の少なくともいずれか1つを選択する水質データ選択部の動作を行わせると共に、第一比較部の動作として、複数の箇所の平均値同士若しくは極値同士、あるいは基準水質データの平均値若しくは極値と比較し、流入箇所特定部の動作として、少なくとも、複数の箇所間において相対的に若しくは基準水質データとの比較において平均値若しくは極値の内の最小値が最も小さくなる箇所、あるいは複数の箇所間において相対的に若しくは基準水質データとの比較において平均値若しくは極値の内の最大値が最も大きくなる箇所を、地下水と汚水の混合箇所と特定するコンピュータプログラムである。
【0017】
本発明の一実施形態は、不明水の流入箇所を特定するための不明水流入箇所特定方法であって、水質測定器から、不明水の流入箇所を特定する装置内に、少なくとも1または複数の箇所における所定期間内の水質データを受信する受信ステップと、当該装置において、比較の基準となる基準水質データ若しくはそれに基づく数値と各箇所における所定期間内の水質データ若しくはそれに基づく数値、あるいは各箇所における所定期間内の水質データ同士若しくはそれに基づく数値同士を比較する第一比較ステップと、第一比較ステップの処理結果に基づき不明水の流入箇所を特定する流入箇所特定ステップと、を実行し、流入箇所特定ステップでは、晴天時において、基準水質データ若しくはそれに基づく数値から乖離しあるいは相対的に他の箇所の水質データ若しくはそれに基づく数値から乖離することを条件に地下水と汚水の混合箇所であると特定する機能、および雨天時において、基準水質データ若しくはそれに基づく数値から乖離しあるいは相対的に他の箇所の水質データ若しくはそれに基づく数値から乖離することを条件に雨水と汚水の混合箇所であると特定する機能の少なくともいずれか一方の機能を実行する不明水流入箇所特定方法である。
【0018】
本発明の別の一実施形態は、さらに、前記の装置において、1または複数の箇所ごとに、計測された所定期間内の水質データの平均値を算出する平均値算出ステップと、1または複数の箇所ごとに、計測された所定期間内の水質データの標準偏差値を算出する標準偏差値算出ステップと、を実行し、第一比較ステップでは、各箇所における水質データの平均値および標準偏差値を、各箇所同士で、あるいは基準水質データの平均値および標準偏差値と比較し、流入箇所特定ステップでは、少なくとも平均値が各箇所間にて相対的に小さい若しくは大きい箇所を、あるいは少なくとも平均値が基準水質データの平均値と比べて小さい若しくは大きい箇所を地下水と汚水の混合箇所と特定し、標準偏差値が各箇所間にて相対的に大きい箇所を、あるいは標準偏差値が基準水質データの標準偏差値と比べて大きい箇所を雨水と汚水の混合箇所と特定する不明水流入箇所特定方法である。
【0019】
本発明の別の一実施形態は、さらに、前記の装置において、1または複数の箇所ごとに、晴天日の水質データの晴天日最小値と、雨天日の水質データの雨天日最小値とを比較する第二比較ステップと、晴天日最小値に対して所定割合以下の雨天日最小値を持つ箇所を、雨水と汚水の混合箇所候補に選出する雨水・汚水混合箇所候補選出ステップと、雨水と汚水の混合箇所候補ごとに、晴天日最小値に対する雨天日最小値の割合を複数段階に区分けして各区分に割り振られる重み係数と、各区分内に属する頻度とを乗じて、各区分にて乗じた数を全区分で加算するスコア算出ステップと、を実行し、第一比較ステップでは、各箇所同士で、あるいは基準水質データの基準スコアと比較し、流入箇所特定ステップでは、相対的にスコアの大きい順から所定数の箇所、あるいは基準スコアに対してスコアの大きい箇所を、優先対応を要する雨水と汚水の混合箇所と特定する不明水流入箇所特定方法である。
【0020】
本発明の別の一実施形態は、さらに、前記の装置において、1または複数の箇所における晴天日の水質データの平均値若しくは極値の少なくともいずれか1つを選択する水質データ選択ステップを実行し、第一比較ステップでは、複数の箇所の平均値同士若しくは極値同士、あるいは基準水質データの平均値若しくは極値と比較し、流入箇所特定ステップでは、少なくとも、複数の箇所間において相対的に若しくは基準水質データとの比較において平均値若しくは極値の内の最小値が最も小さくなる箇所、あるいは複数の箇所間において相対的に若しくは基準水質データとの比較において平均値若しくは極値の内の最大値が最も大きくなる箇所を、地下水と汚水の混合箇所と特定する不明水流入箇所特定方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、簡易、かつ精度良く、不明水の流入箇所を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、各種下水管内に水質測定器を配置している状況を示す図である。
【図2】図2は、地下に埋設される下水管網の平面図である。
【図3】図3は、汚水管に地下水が浸入する地下水浸入型の特徴を説明する図である。
【図4】図4は、汚水管に雨水が浸入する雨水浸入型の特徴を説明する図である。
【図5】図5は、本発明の第一実施形態に係る不明水流入箇所特定装置の構成および水質測定器からデータを受け取る状況を示す模式図である。
【図6】図6は、第一実施形態に係る不明水流入箇所特定方法において、水質の測定から不明水の流入箇所の特定までの各処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】図7は、本発明の第二実施形態に係る不明水流入箇所特定装置の構成および水質測定器からデータを受け取る状況を示す模式図である。
【図8】図8は、第二実施形態に係る不明水流入箇所特定方法において、水質の測定から不明水の流入箇所の特定までの各処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】図9は、第二実施形態において、所定期間(1カ月)内の複数の汚水管それぞれにおける水質データの推移およびその所定期間内の各日の雨量を示すグラフである。
【図10】図10は、図9に示す各水質データの推移に基づいて算出した平均値および標準偏差値を示す表である。
【図11】図11は、図10に示す平均値および標準偏差値に基づいて、それらをX軸とY軸にとるX−Y軸平面上にプロットしたグラフである。
【図12】図12は、本発明の第三実施形態に係る不明水流入箇所特定装置の構成および水質測定器からデータを受け取る状況を示す模式図である。
【図13】図13は、第三実施形態に係る不明水流入箇所特定方法において、水質の測定から、雨水と汚水の混合箇所であって優先的に対応すべき箇所の特定までの各処理の流れを示すフローチャートである。
【図14】図14は、第三実施形態において、ある汚水管における晴天日の水質データの推移および雨天日3日間の水質データの推移を示すグラフである。
【図15】図15は、5箇所の汚水管において、晴天日の水質データの最小値に対する雨天日の水質データの最小値の各区分に属する頻度を比較する表である。
【図16】図16は、5箇所の汚水管において、図15に示す頻度それぞれに対して各区分に割り振られた重み係数を乗じて得られたスコアを比較する表である。
【図17】図17は、本発明の第四実施形態に係る不明水流入箇所特定装置の構成および水質測定器からデータを受け取る状況を示す模式図である。
【図18】図18は、第四実施形態に係る不明水流入箇所特定方法において、水質の測定から、地下水と汚水の混合箇所の特定までの各処理の流れを示すフローチャートである。
【図19】図19は、第四実施形態において、複数の汚水管における水質データの変動範囲を比較して示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明に係る不明水流入箇所特定装置、不明水流入箇所特定装置にインストールして実行可能なコンピュータプログラムおよび不明水流入箇所特定方法の各実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0024】
<第一実施形態>
図1は、各種下水管内に水質測定器を配置している状況を示す図である。図2は、地下に埋設される下水管網の平面図である。
【0025】
この実施形態では、測定対象となる箇所の一例である下水管1を流れる水の水質測定は、図1の(A)に例示するように、マンホールのインバートに、水質測定器4につながるチェーン3をアンカー2で固定し、水質測定器4のセンサー部分を水に漬けて行われる。ここで、測定対象となる箇所は、一般的に公道に設けられる下水管1以外にも、図1の(B)に例示するように、住宅地等民地内に設けられる公共ますや排水管等も含む。水質は、電気伝導度(EC)、塩素イオン濃度、pH、水温を含むように広義に解釈される。下水管1は、水が流れ込む管であればその種類を問わないが、例えば、下水道以外の集落排水に代表される生活排水等の汚水、雨水を集水する管渠施設も含む。不明水とは、本来流入するはずのない水であって、地下水か、雨水か、あるいはその他の種類の水かが明らかになっていない水をいう。晴天時若しくは晴天日とは、降雨のない時若しくは降雨のない日をいう。雨天時若しくは雨天日は、降雨のある時若しくは降雨のある日をいう。
【0026】
本発明の特徴は、マンホール、管渠などの下水管、およびます等の附帯施設内に水質測定器4を設置して、晴天日および雨天日の内の少なくとも一方の日を含む所定期間について水質を測定し、下水管1を本来流れるべき汚水に雨水が流入した場合若しくは本来流れるべき雨水に汚水が流入した場合の水質の変化と、本来流れるべき汚水に地下水が流入した場合の水質の変化との間の相違を利用して、浸入する不明水および浸入している箇所を特定するものである。この実施形態では、主に、下水管1を代表して、その下位概念として本来的に汚水を流す汚水管1aを、測定対象の水質として電気伝導度(EC)を例に説明する。また、ECを測定する箇所は、図2に示すような下水エリア内のマンホールA〜Eの5箇所とする。
【0027】
図3は、汚水管に地下水が浸入する地下水浸入型の特徴を説明する図である。図4は、汚水管に雨水が浸入する雨水浸入型の特徴を説明する図である。
【0028】
まず、図3を参照しながら、地下水浸入型について説明する。晴天日に、ある汚水管1aに水質測定器4を配置して、一定時間ごと(例えば、10分ごと)にECを測定し、当該測定を24時間継続する。汚水管1aに汚水のみが流れ、地下水の浸入が無い場合、ECの時間推移は、図3の(B)に示すようになる。一方、海水の混入がないことを前提とした場合、地下水自体は、汚水よりもECが低いため、図3の(A)に示すように、そのECはほぼ一定の時間推移となる。したがって、汚水に地下水が浸入していると、図3の(C)に示すように、汚水+地下水のEC(実線)は、地下水の浸入の無い他の汚水管1aのECの推移(点線)と比較して、時間の推移に依らずに一律に低くなる。
【0029】
次に、図4を参照しながら、雨水浸入型について説明する。晴天日に、ある汚水管1aに水質測定器4を配置して、一定時間ごと(例えば、10分ごと)にECを測定し、当該測定を24時間継続すると、汚水管1aに汚水のみが流れ、雨水が浸入しないため、ECの時間推移は、図4の(B)に示すようになる。ここで、図4の(A)に示すように、ある雨天日に一定時間の降雨があったと想定する。この場合、図4の(C)に示すように、雨天日の汚水+雨水のEC(実線)は、晴天日の同じ汚水管1aのECの推移(点線)と比較して、降雨の時間帯およびその直後の時間帯において低くなる。なお、本来的に雨水を流す管に汚水が浸入する場合であっても、降雨の時間帯付近で雨水の量が増えるので、その時間帯付近でのみ、ECが低下する。
【0030】
このように、地下水の浸入の無い正常な汚水管1aにおけるECと比べて、天候に関係なく、全測定時間帯においてECが低下する場合には、その測定対象の汚水管1aは、地下水浸入型に属すると考えられる。一方、同じ汚水管1aにおいて、晴天日のECの推移と比較して、降雨時間帯およびその直後においてECが低くなる場合には、その測定対象の汚水管1aは、雨水浸入型に属すると考えられる。
【0031】
図5は、本発明の第一実施形態に係る不明水流入箇所特定装置の構成および水質測定器からデータを受け取る状況を示す模式図である。
【0032】
この実施形態に係る不明水流入箇所特定装置10は、1または複数の下水管1にてそれぞれ水質を測定した水質測定器4からの水質データに基づき、不明水の流入箇所を特定するための装置である。不明水流入箇所特定装置10は、好適に、受信部11と、記憶部12と、第一比較部13と、流入箇所特定部14と、インターフェイス15とを備える。受信部11は、少なくとも1または複数の下水管1における所定期間内(例えば、1カ月)の水質データ(ここでは、EC)を、有線であるか無線であるかを問わず受信する部分である。記憶部12は、少なくとも、受信した上記水質データを記憶する部分である。ただし、記憶部12は、下水管1内にて測定して得られた水質データと比較するための基準となるデータ(基準水質データ)を予め記憶していても良い。基準水質データとは、一例を挙げると、雨水の流入箇所を特定する場合には、少なくとも雨水の流入の無い汚水管1aにおける水質データであり、地下水の流入箇所を特定する場合には、少なくとも地下水の流入の無い汚水管1aにおける水質データであり、より広義には、何らかの不明水の流入を見つける上で比較対象とするデータである。基準水質データは、水質測定器4側から送られたデータでも、デフォルトにて記憶部12に記憶されていたデータであっても良い。
【0033】
第一比較部13は、基準水質データを用いる場合には、当該基準水質データと、測定対象となる1または複数の下水管1における水質データとを比較する部分である。また、基準水質データを用いない場合には、第一比較部13は、測定対象となる複数の下水管1における水質データ同士を相対的に比較する部分である。第一比較部13は、ECのような水質データを比較対象とする他、当該水質データに基づいて計算して得られた数値を比較対象としても良い。
【0034】
流入箇所特定部14は、第一比較部13による比較結果に基づき不明水の流入箇所を特定する部分である。より具体的には、流入箇所特定部14は、晴天時において、基準水質データ若しくはそれに基づく数値から乖離しあるいは相対的に他の下水管1の水質データ若しくはそれに基づく数値から乖離することを条件に、その下水管1が地下水と汚水の混合箇所であると特定する機能を実行する部分である。加えて、流入箇所特定部14は、雨天時において、基準水質データ若しくはそれに基づく数値から乖離しあるいは相対的に他の下水管1の水質データ若しくはそれに基づく数値から乖離することを条件に、その下水管1が雨水と汚水の混合箇所であると特定する機能を実行する部分である。流入箇所特定部14は、雨水と汚水との混合箇所の特定機能、地下水と汚水との混合箇所の特定機能の内、少なくともいずれか1つの機能を実行することができる。
【0035】
インターフェイス15は、必須の構成ではないが、外部の装置と有線あるいは無線で接続可能であって、不明水流入箇所特定装置10の外部に情報を送信あるいは水質測定器4以外の外部から情報を受信するための接続部である。例えば、キーボードやポインティングデバイス等の入力機器をインターフェイス15に接続し、不明水流入箇所特定装置10に対して各種入力を行うこともできる。
【0036】
受信部11およびインターフェイス15の各機能は、例えば、接点および当該接点と電気的に接続するCPUを搭載した印刷回路基板(PCB)にて実現可能である。記憶部12は、例えば、RAMあるいはHDD等のメモリ機能を持つ電子部品や装置によって実現可能である。第一比較部13および流入箇所特定部14は、例えば、マイクロコンピュータやCPUによって実現可能である。受信部11、記憶部12、第一比較部13、流入箇所特定部14およびインターフェイス15は、複数の電子部品を導電線によって接続した1つのPCBにて、各機能を実行できるものでも良く、あるいは複数のPCBあるいは装置を接続して、各機能を実行できるものでも良い。
【0037】
不明水流入箇所特定装置10は、不明水流入箇所特定用の専用機器でも良いが、汎用のコンピュータに、特定のコンピュータプログラムをインストールして、これを実行することによっても実現可能である。その場合のコンピュータプログラムは、好適には、コンピュータに対して、少なくとも受信部11、第一比較部13および流入箇所特定部14の各構成部の動作を行わせるコンピュータプログラムである。
【0038】
図5に示すように、水質測定器4は、その外部に露出するセンサー5と、内部に格納されるCPUを含む制御部6、RAMやROMを含む記憶部7およびインターフェイス8とを、好適に備える。センサー5は、EC等の水質を測定する検知部分である。制御部6は、検知した信号を処理する部分である。記憶部7は、検知した信号や当該信号から演算される水質データ、あるいは当該水質データから計算された数値等を記憶する部分である。インターフェイス8は、水質測定器4の外部に水質データ等を出力するための接続部分であり、メモリディスク等を挿脱自在な構成の装填口であっても良い。なお、図5では、一部の水質測定器4の構造しか示されていないが、他の水質測定器4も同様の構成である。
【0039】
図6は、第一実施形態に係る不明水流入箇所特定方法において、水質の測定から不明水の流入箇所の特定までの各処理の流れを示すフローチャートである。
【0040】
まず、水質測定器4を下水管1の内部に配置して、所定期間内(例えば、1日、1週間、1カ月)の水質データを測定する(ステップS101)。測定は、1時間ごと、あるいは10分ごとというように、一定間隔で実行されるのが好ましい。この結果、センサー5にて検知された信号は、制御部6を通じて記憶部7に記憶される。次に、水質測定器4を不明水流入箇所特定装置10と接続し、不明水流入箇所特定装置10または水質測定器4からコマンドを送ると、不明水流入箇所特定装置10の受信部11は、水質測定器4側から水質データを受信する(ステップS102: 受信ステップ)。次に、不明水流入箇所特定装置10は、記憶部12に、受信した水質データを記憶する(ステップS103)。次に、第一比較部13は、各下水管1における所定期間内の水質データ同士(若しくはそれに基づく数値同士でも良い)を比較する(ステップS104: 第一比較ステップ)。また、基準水質データが記憶部12に記憶されており、1または複数の下水管1において測定された水質データを基準水質データと比較する場合には、ステップS104において、第一比較部13は、基準水質データ(若しくはそれに基づく数値でも良い)を基準として、1または複数の下水管1において測定された水質データ(若しくはそれに基づく数値でも良い)と比較する。次に、流入箇所特定部14は、晴天時において、基準水質データ(若しくはそれに基づく数値)から乖離しあるいは相対的に他の下水管1の水質データ(若しくはそれに基づく数値)から乖離することを条件に、当該測定対象の下水管1を、地下水と汚水の混合箇所であると特定する(ステップS105: 流入箇所特定ステップ)。また、流入箇所特定部14は、雨天時において、基準水質データ(若しくはそれに基づく数値)から乖離しあるいは相対的に他の下水管1の水質データ(若しくはそれに基づく数値)から乖離することを条件に、当該測定対象の下水管1を、雨水と汚水の混合箇所であると特定する(ステップS106: 流入箇所特定ステップ)。図6に示すフローチャートは、雨水と汚水の混合箇所および地下水と汚水の混合箇所の両方を特定する機能を持つ例であるが、この実施形態に係る不明水流入箇所特定方法は、地下水と汚水の混合箇所の特定のみを実行する場合には、ステップS105のみを、また、雨水と汚水の混合箇所の特定のみを実行する場合には、ステップS106のみを、それぞれ行うこともできる。
【0041】
<第二実施形態>
図7は、本発明の第二実施形態に係る不明水流入箇所特定装置の構成および水質測定器からデータを受け取る状況を示す模式図である。
【0042】
第二実施形態に係る不明水流入箇所特定装置20と水質測定器4とは、無線通信によって、水質データの送受信を可能とする。このため、水質測定器4は、第一実施形態にて説明した水質測定器4の内部に格納される構成に加え、発信器9と送信用アンテナ18とを備える。なお、図7では、一部の水質測定器4の構造しか示されていないが、この実施形態およびこれ以降の実施形態における他の水質測定器4も同様の構成である。不明水流入箇所特定装置20は、水質測定器4から送信される水質データを受信するための受信用アンテナ21を備える。
【0043】
不明水流入箇所特定装置20内の受信部11は、受信用アンテナ21と接続され、水質測定器4から送信されてくる水質データを受信する部分である。記憶部12およびインターフェイス15は、第一実施形態におけるそれらと同様の機能を持つ。平均値算出部22は、1または複数の下水管1ごとに、計測された所定期間(例えば、1カ月)内の水質データの平均値を算出する部分である。標準偏差値算出部23は、平均値算出の対象とした水質データの標準偏差値を算出する部分である。第一比較部13は、各下水管1における水質データの平均値および標準偏差値を、各下水管1同士で比較、あるいは基準水質データがある場合には基準水質データの平均値および標準偏差値と比較する。流入箇所特定部14は、各下水管1同士で相対比較して少なくとも平均値の小さい若しくは大きい上位所定数(例えば、1または2)の下水管1を地下水と汚水の混合箇所と特定し、各下水管1同士で相対比較して標準偏差値の大きい上位所定数(例えば、1または2)の下水管1を雨水と汚水の混合箇所と特定する。また、記憶部12に基準水質データを記憶しており、第一比較部13において当該基準水質データを基準に比較した場合には、流入箇所特定部14は、少なくとも基準水質データの平均値と比較して平均値の小さい若しくは大きい下水管1を地下水と汚水の混合箇所と特定し、基準水質データの標準偏差値と比較して標準偏差値の大きい上位所定数(例えば、1または2)の下水管1を雨水と汚水の混合箇所と特定することができる。
【0044】
平均値算出部22および標準偏差値算出部23は、例えば、マイクロコンピュータやCPUによって実現可能である。平均値算出部22および標準偏差値算出部23は、一つの構成部であっても良く、その場合、「平均値・標準偏差値算出部」に統合可能である。なお、受信部11、記憶部12、第一比較部13、流入箇所特定部14およびインターフェイス15の具体的なハードウェアは、第一実施形態と同様である。
【0045】
不明水流入箇所特定装置20は、不明水流入箇所特定用の専用機器でも良いが、汎用のコンピュータに、特定のコンピュータプログラムをインストールして、これを実行することによっても実現可能である。その場合のコンピュータプログラムは、好適には、コンピュータに対して、少なくとも受信部11、第一比較部13、流入箇所特定部14、平均値算出部22および標準偏差値算出部23の各構成部の動作を行わせるコンピュータプログラムである。
【0046】
図8は、第二実施形態に係る不明水流入箇所特定方法において、水質の測定から不明水の流入箇所の特定までの各処理の流れを示すフローチャートである。図9は、第二実施形態において、所定期間(1カ月)内の複数の汚水管それぞれにおける水質データの推移およびその所定期間内の各日の雨量を示すグラフである。図10は、図9に示す各水質データの推移に基づいて算出した平均値および標準偏差値を示す表である。図11は、図10に示す平均値および標準偏差値に基づいて、それらをX軸とY軸にとるX−Y軸平面上にプロットしたグラフである。
【0047】
まず、水質測定器4を1または複数の汚水管1aの内部にそれぞれ配置して、所定期間(例えば、1カ月)内の水質データを測定する(ステップS201)。測定間隔は、例えば、10分ごとというように適宜選択できる。この結果、センサー5にて検知された信号は、制御部6を通じて記憶部7に記憶される。次に、水質測定器4から不明水流入箇所特定装置20に向けて無線通信によって、所定期間内の水質データを送信する(ステップS202)。不明水流入箇所特定装置20の受信部11は、水質測定器4側から水質データを受信する(ステップS203: 受信ステップ)。次に、不明水流入箇所特定装置20の記憶部12は、受信した水質データを記憶する(ステップS204)。記憶部12は、所定期間内の基準水質データを記憶していても良い。基準水質データについては、第一実施形態にて既に説明したので、ここではその説明を省略する。
【0048】
ここで、3地点の汚水管1a(それぞれ、「地点A」、「地点B」および「地点C」と称する)における1カ月間のECを計測する例で説明する。また、以下、地点A,B,Cそれぞれのエリアにおける時間当たりの降雨量(mm/hr)の情報も、インターフェイス15を通じてあるいは水質測定器4側からの送信によって、記憶部12内に格納されていることを前提で説明する。
【0049】
ステップS204までの処理によって、不明水流入箇所特定装置20は、図9のグラフに示す各水質データを取得している。地点Aでは、地点B,Cの各水質データの推移と比較したときに、降雨時に、ECが低下する傾向が見られる。一方、地点Bでは、地点A,Cの各水質データの推移と比較したときに、降雨時か否かに関わらず、1カ月を通じて、常にECが低下している。図9に示す水質データの推移を示すグラフは、水質測定器4の制御部6に含まれるCPUの処理によって得られるものでも良く、また、不明水流入箇所特定装置20側のCPUの処理によって得られるものでも良い。
【0050】
ステップS204に続いて、平均値算出部22は、地点A,B,Cそれぞれの1カ月間のECの平均値を算出する(ステップS205: 平均値算出ステップ)。また、標準偏差値算出部23は、地点A,B,Cそれぞれの1カ月間のECの標準偏差値を算出する(ステップS206: 標準偏差値算出ステップ)。なお、ステップS205とステップS206は、同時に演算処理を行う1つのステップでも良く、また、先後を逆にして、ステップS206をステップS205よりも先に実行しても良い。さらには、地点単位で平均値と標準偏差値の両算出を行っても良い。その場合、地点AにおけるECの平均値と標準偏差値を算出するステップ、地点BにおけるECの平均値と標準偏差値を算出するステップ、地点CにおけるECの平均値と標準偏差値を算出するステップに時系列的に分けることができる。ステップS205とステップS206の算出の結果、地点A,B,Cにおいて、図10の表に示す平均値と標準偏差値が得られる。
【0051】
地点A,B,Cにおける各平均値および各標準偏差値を、平均値(X)−標準偏差値(Y)平面上にプロットすると、図11に示すようになる。図11に示すグラフの作成ステップの有無は問わないが、当該グラフを作成する場合、例えば、平均値算出部22、標準偏差値算出部23、第一比較部13若しくは流入箇所特定部14のいずれか1つ若しくは2以上の共同にて行うことができる。ステップS206に続いて、第一比較部13は、地点A,B,Cの各汚水管1aにて測定した水質データの平均値同士および標準偏差値同士を比較する(ステップS207: 第一比較ステップ)。その結果、流入箇所特定部14は、相対的に平均値が最も小さい地点Bの汚水管1aを、地下水と汚水の混合箇所と特定する(ステップS208: 流入箇所特定ステップ)。また、流入箇所特定部14は、相対的に標準偏差値の最も大きい地点Aの汚水管1aを、雨水と汚水の混合箇所と特定する(ステップS209: 流入箇所特定ステップ)。なお、流入箇所特定ステップS208は、調査地点が上記のような3箇所ではなく、もっと多いような場合には、相対的に平均値の最も小さい地点のみならず、次に小さい地点も含み平均値の小さい順から上位複数地点を、地下水と汚水の混合箇所と特定するステップでも良い。同様に、流入箇所特定ステップS209は、標準偏差値の大きい順から上位複数地点を、雨水と汚水の混合箇所と特定するステップでも良い。また、流入箇所特定ステップS208は、平均値のみならず、標準偏差値をも考慮し、平均値の相対的に小さな上位複数地点の内、標準偏差値の大きい上位複数地点を除外して、地下水と汚水の混合箇所と特定するステップでも良い。
【0052】
上記の不明水流入箇所特定方法は、地点A,B,Cの各汚水管1aにおける水質データ同士を相対比較した方法であるが、地点Cを標準地点とし、その水質データを基準水質データとそれぞれ位置づけて、地点A,Bの各水質データを、基準水質データと比較して、不明水流入箇所かどうかを特定することもできる。その場合、第一比較部13は、地点A,Bの各汚水管1aにて測定した水質データの平均値および標準偏差値を、基準水質データの平均値および標準偏差値と、それぞれ比較する(ステップS207: 第一比較ステップ)。その結果、流入箇所特定部14は、基準水質データの平均値よりも小さな平均値となる地点A,Bの汚水管1aを、地下水と汚水の混合箇所と特定する(ステップS208: 流入箇所特定ステップ)。また、流入箇所特定部14は、基準水質データの標準偏差値より大きな標準偏差値の地点A,Bの汚水管1aを、雨水と汚水の混合箇所と特定する(ステップS209: 流入箇所特定ステップ)。この場合、地点A,Bともに、地下水と汚水の混合箇所および雨水と汚水の混合箇所として特定される。地点Aと地点Bの標準偏差値の違いを考慮して、より正確な特定を行うには、前述の相対比較法か、あるいは後述の絶対基準と比較する方法を採用するのが好ましい。
【0053】
水質データ同士の相対比較、標準地点に対する比較以外に、絶対的数値を基準に、地点A,B,Cの各汚水管1aにつき、不明水流入箇所かどうかを特定する方法を採用しても良い。図11に示すPは、EC平均値の基準となる基準平均値である。同様に、Qは、EC標準偏差値の基準となる基準標準偏差値である。これらの値は、基準水質データに相当する。第一比較部13は、地点A,Bの各汚水管1aにて測定した水質データの平均値および標準偏差値を、基準水質データであるPおよびQとそれぞれ比較する(ステップS207: 第一比較ステップ)。地点Cでは、EC平均値は基準平均値Pより大きく、EC標準偏差値は基準標準偏差値Qより小さい。この結果、地点CにおけるEC平均値とEC標準偏差値との交差点は、図11に示すグラフにおいて、PとQによって4つに分割されたエリア26,27,28,29中、右下のエリア26に存在する。一方、地点Aでは、EC平均値は基準平均値Pより小さく、EC標準偏差値は基準標準偏差値Qより大きい。この結果、地点AにおけるEC平均値とEC標準偏差との交差点は、図11に示すグラフにおいて、PとQによって4つに分割されたエリア中、左上のエリア28に存在する。
【0054】
また、地点Bでは、EC平均値は基準平均値Pより小さく、EC標準偏差値は基準標準偏差値Qより小さい。この結果、地点BにおけるEC平均値とEC標準偏差値との交差点は、図11に示すグラフにおいて、PとQによって4つに分割されたエリア中、左下のエリア27に存在する。流入箇所特定部14は、EC平均値がPより小さく、かつEC標準偏差値がQより小さい地点Bの汚水管1aを、地下水と汚水の混合箇所と特定する(ステップS208: 流入箇所特定ステップ)。また、流入箇所特定部14は、EC平均値がPより小さく、かつEC標準偏差値がQより大きい地点Aの汚水管1aを、雨水と汚水の混合箇所と特定する(ステップS209: 流入箇所特定ステップ)。なお、この例では、エリア29に属する地点が存在しないが、もし当該地点が存在する場合には、流入箇所特定部14は、その地点を、雨水と汚水の混合箇所と特定することができる。標準偏差値が大きいことは、天候によって、ECの変動が大きいことを意味し、雨水の流入によるECが低下している可能性を示唆するからである。
【0055】
<第三実施形態>
図12は、本発明の第三実施形態に係る不明水流入箇所特定装置の構成および水質測定器からデータを受け取る状況を示す模式図である。
【0056】
第三実施形態に係る不明水流入箇所特定装置30と水質測定器4とは、無線通信によって、水質データの送受信を可能とする。この実施形態では、不明水流入箇所特定装置30は、雨水と汚水の混合箇所を特定する機能を必須に持つ装置である。水質測定器4は、第二実施形態と同様、発信器9と送信用アンテナ18とを備える。また、不明水流入箇所特定装置30は、水質測定器4から送信される水質データを受信するための受信用アンテナ31を備える。
【0057】
不明水流入箇所特定装置30内の受信部11は、受信用アンテナ31と接続され、水質測定器4から送信されてくる水質データを受信する部分である。記憶部12およびインターフェイス15は、第一実施形態および第二実施形態におけるそれらと同様の機能を持つ。第二比較部32は、1または複数の下水管1ごとに、晴天日の水質データ(ここでは、EC)の最小値(晴天日最小値という)と、雨天日の水質データの最小値(雨天日最小値という)とを比較する部分である。雨水・汚水混合箇所候補選出部33は、晴天日最小値に対して所定割合(例えば、80%)以下の雨天日最小値を持つ下水管1を、雨水と汚水の混合箇所候補に選出する部分である。記憶部12は、雨水と汚水の混合箇所として選出された下水管1において、晴天日最小値に対する雨天日最小値の割合を複数段階に区分けして、各区分内に重み係数を割り振って記憶している。例えば、晴天日最小値に対する雨天日最小値の割合が70%より大きく80%以下という区分(70〜80%の区分)、同割合が60%より大きく70%以下という区分(60〜70%の区分)、同割合が50%より大きく60%以下という区分(50〜60%の区分)、同割合が50%以下の区分(50%以下の区分)の4段階に区分けして、記憶部12にその情報を記憶しておくことができる。また、重み係数として、例えば、70〜80%の区分に重み係数「1」を、60〜70%の区分に重み係数「2」を、50〜60%の区分に重み係数「3」を、50%以下の区分に重み係数「4」を割り振ることにより、晴天日の最小のECに対して雨天日の最小のECが低下するほど重み係数を大きく設定するのが好ましい。
【0058】
スコア算出部34は、雨水と汚水の混合箇所候補ごとに、晴天日最小値に対する雨天日最小値の割合を複数段階に区分けして各区分に割り振られる重み係数と、各区分内に属する頻度とを乗じて、各区分にて乗じた数を全区分で加算する部分である。例えば、ある汚水管1aにおいて、100×雨天日の最小EC/晴天日の最小ECにて計算された値が70〜80%の区分に属する頻度が1回、同値が60〜70%の区分に属する頻度が2回、同値が50〜60%の区分に属する頻度が3回、同値が50%以下の区分に属する頻度が4回であると仮定する。また、重み係数は、70〜80%の区分に「1」を、60〜70%の区分に「2」を、50〜60%の区分に「3」を、50%以下の区分に「4」が割り振られていると仮定する。この場合、スコア算出部34は、その汚水管1aに対して、1回×重み係数1+2回×重み係数2+3回×重み係数3+4回×重み係数4=30という計算を実行する。その結果、その汚水管1aに対して算出されるスコアは30となる。
【0059】
第一比較部13は、各下水管1同士でスコアを相対的に比較する。また、基準水質データから求められる基準スコアが記憶部12に記憶されている場合には、第一比較部13は、各下水管1のスコアと基準スコアとを比較する。なお、基準スコアも、基準水質データの範疇に入る。流入箇所特定部14は、相対的にスコアの大きい順から所定数(例えば、1または2)の下水管1を、優先対応を要する雨水と汚水の混合箇所と特定する。また、基準スコアを用いた場合には、流入箇所特定部14は、その基準スコアに対してスコアの大きい箇所を、優先対応を要する雨水と汚水の混合箇所と特定する。
【0060】
第二比較部32、雨水・汚水混合箇所候補選出部33およびスコア算出部34は、例えば、マイクロコンピュータやCPUによって実現可能である。なお、受信部11、記憶部12、第一比較部13、流入箇所特定部14およびインターフェイス15の具体的なハードウェアは、第一実施形態および第二実施形態と同様である。
【0061】
不明水流入箇所特定装置30は、不明水流入箇所特定用の専用機器でも良いが、汎用のコンピュータに、特定のコンピュータプログラムをインストールして、これを実行することによっても実現可能である。その場合のコンピュータプログラムは、好適には、コンピュータに対して、少なくとも受信部11、第一比較部13、流入箇所特定部14、第二比較部32、雨水・汚水混合箇所候補選出部33およびスコア算出部34の各構成部の動作を行わせるコンピュータプログラムである。
【0062】
図13は、第三実施形態に係る不明水流入箇所特定方法において、水質の測定から、雨水と汚水の混合箇所であって優先的に対応すべき箇所の特定までの各処理の流れを示すフローチャートである。図14は、第三実施形態において、ある汚水管における晴天日の水質データの推移および雨天日3日間の水質データの推移を示すグラフである。図15は、5箇所の汚水管において、晴天日の水質データの最小値に対する雨天日の水質データの最小値の各区分に属する頻度を比較する表である。図16は、5箇所の汚水管において、図15に示す頻度それぞれに対して各区分に割り振られた重み係数を乗じて得られたスコアを比較する表である。
【0063】
まず、水質測定器4を1または複数の汚水管1aの内部に配置して、晴天である所定期間(例えば、3日)の水質データ、および雨天である所定期間(例えば、1カ月)の水質データを測定する(ステップS301)。測定間隔は、例えば、10分ごとというように適宜選択できる。この結果、センサー5にて検知された信号は、制御部6を通じて記憶部7に記憶される。次に、水質測定器4から不明水流入箇所特定装置30に向けて無線通信によって、所定期間内の水質データを送信する(ステップS302)。不明水流入箇所特定装置30の受信部11は、水質測定器4側から水質データを受信する(ステップS303: 受信ステップ)。次に、不明水流入箇所特定装置30の記憶部12は、受信した水質データを記憶する(ステップS304)。記憶部12は、予め、晴天日の所定期間内の水質データを記憶しておくこともできる。晴天日の水質データは、晴天日1日だけの水質データでも良いが、好ましくは、複数日(例えば3日)分の晴天日における水質データの推移の平均である。記憶部12に、測定対象の汚水管1aにおける晴天日の水質データを既に記憶している場合には、上記のステップS301は、雨天である所定期間の水質データを測定するステップであり、ステップS302〜ステップS304は、それぞれ、その測定した水質データの送信、受信および記憶を行う各ステップである。
【0064】
ここで、5箇所以上の汚水管1aにおけるECを計測する例で説明する。ステップS304までの処理によって、不明水流入箇所特定装置30は、調査地点それぞれにつき、図14のグラフに示す水質データの推移を取得している。当該水質データにおいて、図14中の晴天日の水質データの時間推移を示すライン(点線)は、晴天日3日間の水質データの推移を平均して得られたラインである。これは、その汚水管1aの雨天日の水質データと比較に用いるベンチマークとなる。図14中の3本のライン(実線)は、3日間の雨天日(連続3日間であるか、別々の日であるかを問わない)の水質データの時間推移を示す。いずれの日のラインを見ても、ECの雨天日最小値は、ECの晴天日最小値に対して80%以下を示す。ここでは、1日でも当該80%以下となった汚水管1aを、雨水と汚水の混合箇所と疑うべき汚水管1aと設定する。図14は、1つの調査地点について、晴天日の水質データの時間推移と雨天3日間の水質データの時間推移のみを例示しているが、実際には、ステップS304までの処理によって、全ての調査地点につき、雨天日の水質データが得られている。
【0065】
第二比較部32は、汚水管1aごとに、晴天日最小値と雨天日最小値とを比較する(ステップS305: 第二比較ステップ)。続いて、雨水・汚水混合箇所候補選出部33は、晴天日最小値に対して80%以下の雨天日最小値を持つ汚水管1aを、雨水と汚水の混合箇所候補に選出する(ステップS306: 雨水・汚水混合箇所候補選出ステップ)。この結果、多数の調査地点の内の5箇所が、雨水と汚水の混合の疑いのある箇所の候補として選出されるものとする。図15は、当該5箇所の調査地点における調査結果を比較した表である。図15に示す表のみでは、どの調査地点が優先的に修繕あるいはより詳しい調査を行うべき箇所かはわかりにくい。このため、ステップS306に続いて、スコア算出部34は、各調査地点につき、図15に示すデータに基づき、記憶部12内の重み係数を読み出して、各区分に割り振られた当該重み係数と各区分内に属する頻度とを乗じて、各区分にて乗じた数を全区分で加算し、スコアを算出する(ステップS307: スコア算出ステップ)。次に、第一比較部13は、調査地点1〜5の各汚水管1a同士でスコアを比較する(ステップS308: 第一比較ステップ)。図16は、各段階の重み係数を示す他、調査地点5箇所におけるスコアおよび対応すべき優先順位を比較した表である。図16に示すように、優先順位が最も高い調査地点は、スコアの最も大きい調査地点3であり、続いて、対応を要する順位は、スコア順に、調査地点1、調査地点4、調査地点2、調査地点5となる。流入箇所特定部14は、相対的にスコアの大きい順から所定数(例えば、1または2)の汚水管1aを、優先対応を要する雨水と汚水の混合箇所と特定する(ステップS309: 流入箇所特定ステップ)。
【0066】
上記の不明水流入箇所特定方法は、調査地点1〜5箇所の各汚水管1aにおける水質データに基づいて算出されたスコアを相対比較した方法であるが、基準スコアと、各水質データに基づいて算出されたスコアとを比較して、優先対応を要する雨水と汚水の混合箇所を特定することもできる。その場合、第一比較部13は、基準スコア(例えば、「40」)と各水質データに基づいて算出されたスコアとを比較し(ステップS308: 第一比較ステップ)、流入箇所特定部14は、基準スコアに対してスコアの大きい調査地点(図16に示す例では、調査地点3および調査地点1)の各汚水管1aを、優先対応を要する雨水と汚水の混合箇所と特定する(ステップS309: 流入箇所特定ステップ)。
【0067】
<第四実施形態>
図17は、本発明の第四実施形態に係る不明水流入箇所特定装置の構成および水質測定器からデータを受け取る状況を示す模式図である。
【0068】
第四実施形態に係る不明水流入箇所特定装置40と水質測定器4とは、無線通信によって、水質データの送受信を可能とする。この実施形態では、不明水流入箇所特定装置40は、地下水と汚水の混合箇所を特定する機能を必須に持つ装置である。水質測定器4は、第二実施形態および第三実施形態と同様、発信器9と送信用アンテナ18とを備える。また、不明水流入箇所特定装置40は、水質測定器4から送信される水質データを受信するための受信用アンテナ41を備える。
【0069】
不明水流入箇所特定装置40内の受信部11は、受信用アンテナ41と接続され、水質測定器4から送信されてくる水質データを受信する部分である。記憶部12およびインターフェイス15は、第一実施形態、第二実施形態および第三実施形態におけるそれらと同様の機能を持つ。水質データ選択部42は、1または複数の下水管1における晴天日の水質データの平均値若しくは極値の少なくともいずれか1つを選択する部分である。ここで、極値とは、最小値および最大値を意味する。第一比較部13は、複数の下水管1における上記平均値同士若しくは上記極値同士を比較する部分である。記憶部12に基準水質データを記憶している場合には、第一比較部13は、1または複数の下水管1における平均値若しくは極値と、基準水質データの平均値若しくは極値とをそれぞれ比較することもできる。流入箇所特定部14は、少なくとも、複数の下水管1において相対的に平均値若しくは最小値が最も小さくなる下水管1、あるいは相対的に平均値若しくは最大値が最も大きくなる下水管1を、地下水と汚水の混合箇所と特定する部分である。記憶部12に基準水質データを記憶して、第一比較部13によって基準水質データを用いて比較を行った場合には、流入箇所特定部14は、1または複数の下水管1の各水質データの平均値若しくは最小値が基準水質データの平均値若しくは最小値よりもそれぞれ小さくなる下水管1、あるいは基準水質データの平均値若しくは最大値よりも大きくなる下水管1を、地下水と汚水の混合箇所と特定することもできる。ここで、平均値若しくは最小値が小さくなる下水管1を、地下水と汚水の混合箇所と特定するのは、本来的に汚水を流す下水管1に地下水が浸入している箇所を特定する場合である。なお、流入箇所特定部14は、相対的に平均値若しくは最小値あるいは最大値が最も小さくなる下水管1のみならず、その次に平均値若しくは最小値あるいは最大値が小さくなる下水管1をも含む上位複数の下水管1を、地下水と汚水の混合箇所と特定しても良い。
【0070】
水質データ選択部42は、例えば、マイクロコンピュータやCPUによって実現可能である。なお、受信部11、記憶部12、第一比較部13、流入箇所特定部14およびインターフェイス15の具体的なハードウェアは、第一実施形態、第二実施形態および第三実施形態と同様である。
【0071】
不明水流入箇所特定装置40は、不明水流入箇所特定用の専用機器でも良いが、汎用のコンピュータに、特定のコンピュータプログラムをインストールして、これを実行することによっても実現可能である。その場合のコンピュータプログラムは、好適には、コンピュータに対して、少なくとも受信部11、第一比較部13、流入箇所特定部14および水質データ選択部42の各構成部の動作を行わせるコンピュータプログラムである。
【0072】
図18は、第四実施形態に係る不明水流入箇所特定方法において、水質の測定から、地下水と汚水の混合箇所の特定までの各処理の流れを示すフローチャートである。図19は、第四実施形態において、複数の汚水管における水質データの変動範囲を比較して示すグラフである。
【0073】
まず、水質測定器4を1または複数の汚水管1aの内部に配置して、晴天である所定期間(例えば、7日間)の水質データを測定する(ステップS401)。測定間隔は、例えば、10分ごとというように適宜選択できる。この結果、センサー5にて検知された信号は、制御部6を通じて記憶部7に記憶される。次に、水質測定器4から不明水流入箇所特定装置40に向けて無線通信によって、複数の汚水管1aにおける所定期間内の水質データを送信する(ステップS402)。不明水流入箇所特定装置40の受信部11は、水質測定器4側から水質データを受信する(ステップS403: 受信ステップ)。次に、不明水流入箇所特定装置40の記憶部12は、受信した水質データを記憶する(ステップS404)。
【0074】
ここで、5箇所の汚水管1a(地点A〜E)における晴天日7日間のECを計測する例で説明する。ステップS404までの処理によって、地点A〜EにおけるECの変動がわかる。水質データ選択部42は、各地点のECの平均値若しくは極値を選択する(ステップS405: 水質データ選択ステップ)。当該選択は、平均値および極値の内の少なくともいずれか一方で良いが、この例では、極値であってかつ最小値を選択する方が好ましい。次に、第一比較部13は、各地点のECの平均値同士若しくは極値同士を比較する(ステップS406: 第一比較ステップ)。図19に、地点A〜Eにおける7日間の測定によって得られたECの変動幅を示す。当該変動幅におけるMAXはECの最大値を、MINはECの最小値を、AVはECの平均値を、それぞれ示す。図19に示すように、地点AにおけるECの最小値は、全ての地点の各ECの最小値の中で最も小さい。地点Aに続いてECの最小値の小さい地点は、地点Dである。また、地点AにおけるECの平均値も、全ての地点の各ECの平均値の中で最も小さい。地点Aに続いてECの平均値の小さい地点も、地点Dである。流入箇所特定部14は、各地点の中で、ECの最小値若しくは平均値の中で最も小さい値を示す地点Aと、次に最小値若しくは平均値の小さい地点Dを、地下水と汚水の混合箇所と特定する(ステップS407: 流入箇所特定ステップ)。なお、ステップS407において、地点Aのみを地下水と汚水の混合箇所と特定し、あるいは、地点Aおよび地点Dのみならず、三番目に最小値若しくは平均値の小さい地点Cをも、地下水と汚水の混合箇所と特定するようにしても良い。
【0075】
上記の不明水流入箇所特定方法は、測定地点間のECの極値若しくは平均値の相対的な比較によって、地下水と汚水の混合箇所を特定しているが、絶対的な基準水質データを用いて、地下水と汚水の混合箇所を特定しても良い。例えば、図19に示すように、Rで示すEC値を、最小値の基準とし、第一比較部13によって各地点のECの最小値とRとを比較し(ステップS406: 第一比較ステップ)、流入箇所特定部14によって、Rより小さなECの最小値を与える地点A,Dを、地下水と汚水の混合箇所と特定しても良い(ステップS407: 流入箇所特定ステップ)。また、同様に、ECの平均値の基準を設け、第一比較部13によって各地点のECの最小値と上記平均値の基準とを比較し(ステップS406: 第一比較ステップ)、流入箇所特定部14によって、その平均値の基準より小さなECの平均値を与える地点を、地下水と汚水の混合箇所と特定しても良い(ステップS407: 流入箇所特定ステップ)。その場合、記憶部12は、基準水質データとして、Rや、ECの平均値の基準値を記憶している。
【0076】
<その他の実施形態>
以上、本発明に係る不明水流入箇所特定装置、コンピュータプログラムおよび不明水流入箇所特定方法の各実施形態について説明してきたが、本発明は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、種々変形して実施できる。
【0077】
不明水流入箇所特定装置20,30,40は、無線通信によって、水質データの送受信を可能とするが、水質測定器4と有線接続によって水質データを受け取る装置、あるいはメモリディスク等の情報記録媒体を介して水質データを受け取る装置でも良い。また、汎用コンピュータを用いる場合、当該コンピュータにインストールして不明水流入箇所特定装置10,20,30,40の各機能を実行するためのコンピュータプログラムは、CD−ROM、フレキシブルディスク、メモリディスク等の情報記録媒体をコンピュータに装填してコンピュータ内のメモリにインストールされるものの他、コンピュータを外部サーバーにアクセスして、当該外部サーバーからダウンロードしてコンピュータ内部のハードディスク等にインストールされるものでも良い。
【0078】
上述の第一実施形態、第二実施形態、第三実施形態および第四実施形態の各構成および機能は、任意に組み合わせることもできる。例えば、第三実施形態に係る不明水流入箇所特定装置30は雨水流入箇所を特定する機能を備える装置であり、第四実施形態に係る不明水流入箇所特定装置40は地下水流入箇所を特定する機能を備える装置であるが、本発明は、これら両機能を備える不明水流入箇所特定装置でも良い。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、下水管路および附帯設備内への不明水の流入箇所を特定するのに利用可能である。
【符号の説明】
【0080】
1 下水管(箇所の一例)
1a 汚水管(下水管の下位概念、箇所の一例)
4 水質測定器
10,20,30,40 不明水流入箇所特定装置
11 受信部
13 第一比較部
14 流入箇所特定部
22 平均値算出部
23 標準偏差値算出部
32 第二比較部
33 雨水・汚水混合箇所候補選出部
34 スコア算出部
42 水質データ選択部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不明水の流入箇所を特定するための不明水流入箇所特定装置であって、
少なくとも1または複数の箇所における所定期間内の水質データを受信する受信部と、
比較の基準となる基準水質データ若しくはそれに基づく数値と各箇所における所定期間内の上記水質データ若しくはそれに基づく数値、あるいは各箇所における所定期間内の上記水質データ同士若しくはそれに基づく数値同士を比較する第一比較部と、
上記第一比較部の結果に基づき不明水の流入箇所を特定する流入箇所特定部と、
を備え、
上記流入箇所特定部は、晴天時において、上記基準水質データ若しくはそれに基づく数値から乖離しあるいは相対的に他の上記箇所の上記水質データ若しくはそれに基づく数値から乖離することを条件に地下水と汚水の混合箇所であると特定する機能、および雨天時において、上記基準水質データ若しくはそれに基づく数値から乖離しあるいは相対的に他の上記箇所の上記水質データ若しくはそれに基づく数値から乖離することを条件に雨水と汚水の混合箇所であると特定する機能の少なくともいずれか一方の機能を実行することを特徴とする不明水流入箇所特定装置。
【請求項2】
前記1または複数の箇所ごとに、計測された所定期間内の前記水質データの平均値を算出する平均値算出部と、
前記1または複数の箇所ごとに、計測された所定期間内の前記水質データの標準偏差値を算出する標準偏差値算出部と、
を備え、
前記第一比較部は、各箇所における前記水質データの上記平均値および上記標準偏差値を、各箇所同士で、あるいは前記基準水質データの平均値および標準偏差値と比較し、
前記流入箇所特定部は、少なくとも上記平均値が前記各箇所間にて相対的に小さい若しくは大きい箇所を、あるいは少なくとも上記平均値が前記基準水質データの平均値と比べて小さい若しくは大きい箇所を前記地下水と汚水の混合箇所と特定し、上記標準偏差値が前記各箇所間にて相対的に大きい箇所を、あるいは上記標準偏差値が前記基準水質データの標準偏差値と比べて大きい箇所を前記雨水と汚水の混合箇所と特定することを特徴とする請求項1に記載の不明水流入箇所特定装置。
【請求項3】
前記1または複数の箇所ごとに、晴天日の前記水質データの晴天日最小値と、雨天日の前記水質データの雨天日最小値とを比較する第二比較部と、
上記晴天日最小値に対して所定割合以下の上記雨天日最小値を持つ箇所を、雨水と汚水の混合箇所候補に選出する雨水・汚水混合箇所候補選出部と、
上記雨水と汚水の混合箇所候補ごとに、上記晴天日最小値に対する上記雨天日最小値の割合を複数段階に区分けして各区分に割り振られる重み係数と、上記各区分内に属する頻度とを乗じて、上記各区分にて乗じた数を全区分で加算するスコア算出部と、
を備え、
前記第一比較部は、各箇所同士で、あるいは前記基準水質データの基準スコアと比較し、
前記流入箇所特定部は、相対的に前記スコアの大きい順から所定数の箇所、あるいは上記基準スコアに対して前記スコアの大きい箇所を、優先対応を要する前記雨水と汚水の混合箇所と特定することを特徴とする請求項1に記載の不明水流入箇所特定装置。
【請求項4】
前記1または複数の箇所における晴天日の前記水質データの平均値若しくは極値の少なくともいずれか1つを選択する水質データ選択部を備え、
前記第一比較部は、複数の前記箇所の上記平均値同士若しくは上記極値同士、あるいは前記基準水質データの上記平均値若しくは上記極値と比較し、
前記流入箇所特定部は、少なくとも、複数の前記箇所間において相対的に若しくは前記基準水質データとの比較において上記平均値若しくは上記極値の内の最小値が最も小さくなる箇所、あるいは複数の前記箇所間において相対的に若しくは前記基準水質データとの比較において上記平均値若しくは上記極値の内の最大値が最も大きくなる箇所を、前記地下水と汚水の混合箇所と特定することを特徴とする請求項1に記載の不明水流入箇所特定装置。
【請求項5】
前記水質データを測定する水質測定器を、さらに含むことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の不明水流入箇所特定装置。
【請求項6】
コンピュータにインストールして実行することにより、当該コンピュータを不明水の流入箇所を特定するための不明水流入箇所特定装置として機能させることができるコンピュータプログラムであって、
上記コンピュータに対して、
少なくとも1または複数の箇所における所定期間内の水質データを受信する受信部;
比較の基準となる基準水質データ若しくはそれに基づく数値と各箇所における所定期間内の上記水質データ若しくはそれに基づく数値、あるいは各箇所における所定期間内の上記水質データ同士若しくはそれに基づく数値同士を比較する第一比較部;
上記第一比較部の結果に基づき不明水の流入箇所を特定する流入箇所特定部であって、晴天時において、上記基準水質データ若しくはそれに基づく数値から乖離しあるいは相対的に他の上記箇所の上記水質データ若しくはそれに基づく数値から乖離することを条件に地下水と汚水の混合箇所であると特定する機能、および雨天時において、上記基準水質データ若しくはそれに基づく数値から乖離しあるいは相対的に他の上記箇所の上記水質データ若しくはそれに基づく数値から乖離することを条件に雨水と汚水の混合箇所であると特定する機能の少なくともいずれか一方の機能を実行する流入箇所特定部;
の各構成部の動作を行わせることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項7】
コンピュータに対して、
前記1または複数の箇所ごとに、計測された所定期間内の前記水質データの平均値を算出する平均値算出部;
前記1または複数の箇所ごとに、計測された所定期間内の前記水質データの標準偏差値を算出する標準偏差値算出部;
の各構成部の動作を行わせると共に、
前記第一比較部の動作として、各箇所における前記水質データの上記平均値および上記標準偏差値を、各箇所同士で、あるいは前記基準水質データの平均値および標準偏差値と比較し、
前記流入箇所特定部の動作として、少なくとも上記平均値が前記各箇所間にて相対的に小さい若しくは大きい箇所を、あるいは少なくとも上記平均値が前記基準水質データの平均値と比べて小さい若しくは大きい箇所を前記地下水と汚水の混合箇所と特定し、上記標準偏差値が前記各箇所間にて相対的に大きい箇所を、あるいは上記標準偏差値が前記基準水質データの標準偏差値と比べて大きい箇所を前記雨水と汚水の混合箇所と特定することを特徴とする請求項6に記載のコンピュータプログラム。
【請求項8】
コンピュータに対して、
前記1または複数の箇所ごとに、晴天日の前記水質データの晴天日最小値と、雨天日の前記水質データの雨天日最小値とを比較する第二比較部;
上記晴天日最小値に対して所定割合以下の上記雨天日最小値を持つ箇所を、雨水と汚水の混合箇所候補に選出する雨水・汚水混合箇所候補選出部;
上記雨水と汚水の混合箇所候補ごとに、上記晴天日最小値に対する上記雨天日最小値の割合を複数段階に区分けして各区分に割り振られる重み係数と、上記各区分内に属する頻度とを乗じて、上記各区分にて乗じた数を全区分で加算するスコア算出部;
の各構成部の動作を行わせると共に、
前記第一比較部の動作として、各箇所同士で、あるいは前記基準水質データの基準スコアと比較し、
前記流入箇所特定部の動作として、相対的に前記スコアの大きい順から所定数の箇所、あるいは上記基準スコアに対して前記スコアの大きい箇所を、優先対応を要する前記雨水と汚水の混合箇所と特定することを特徴とする請求項6に記載のコンピュータプログラム。
【請求項9】
コンピュータに対して、
前記1または複数の箇所における晴天日の前記水質データの平均値若しくは極値の少なくともいずれか1つを選択する水質データ選択部の動作を行わせると共に、
前記第一比較部の動作として、複数の前記箇所の上記平均値同士若しくは上記極値同士、あるいは前記基準水質データの上記平均値若しくは上記極値と比較し、
前記流入箇所特定部の動作として、少なくとも、複数の前記箇所間において相対的に若しくは前記基準水質データとの比較において上記平均値若しくは上記極値の内の最小値が最も小さくなる箇所、あるいは複数の前記箇所間において相対的に若しくは前記基準水質データとの比較において上記平均値若しくは上記極値の内の最大値が最も大きくなる箇所を、前記地下水と汚水の混合箇所と特定することを特徴とする請求項6に記載のコンピュータプログラム。
【請求項10】
不明水の流入箇所を特定するための不明水流入箇所特定方法であって、
水質測定器から、不明水の流入箇所を特定する装置内に、少なくとも1または複数の箇所における所定期間内の水質データを受信する受信ステップと、
上記装置において、
比較の基準となる基準水質データ若しくはそれに基づく数値と各箇所における所定期間内の上記水質データ若しくはそれに基づく数値、あるいは各箇所における所定期間内の上記水質データ同士若しくはそれに基づく数値同士を比較する第一比較ステップと、
上記第一比較ステップの処理結果に基づき不明水の流入箇所を特定する流入箇所特定ステップと、を実行し、
上記流入箇所特定ステップは、晴天時において、上記基準水質データ若しくはそれに基づく数値から乖離しあるいは相対的に他の上記箇所の上記水質データ若しくはそれに基づく数値から乖離することを条件に地下水と汚水の混合箇所であると特定する機能、および雨天時において、上記基準水質データ若しくはそれに基づく数値から乖離しあるいは相対的に他の上記箇所の上記水質データ若しくはそれに基づく数値から乖離することを条件に雨水と汚水の混合箇所であると特定する機能の少なくともいずれか一方の機能を実行することを特徴とする不明水流入箇所特定方法。
【請求項11】
前記装置において、
1または複数の箇所ごとに、計測された所定期間内の前記水質データの平均値を算出する平均値算出ステップと、
前記1または複数の箇所ごとに、計測された所定期間内の前記水質データの標準偏差値を算出する標準偏差値算出ステップと、を実行し、
前記第一比較ステップは、各箇所における前記水質データの上記平均値および上記標準偏差値を、各箇所同士で、あるいは前記基準水質データの平均値および標準偏差値と比較し、
前記流入箇所特定ステップは、少なくとも上記平均値が前記各箇所間にて相対的に小さい若しくは大きい箇所を、あるいは少なくとも上記平均値が前記基準水質データの平均値と比べて小さい若しくは大きい箇所を前記地下水と汚水の混合箇所と特定し、上記標準偏差値が前記各箇所間にて相対的に大きい箇所を、あるいは上記標準偏差値が前記基準水質データの標準偏差値と比べて大きい箇所を前記雨水と汚水の混合箇所と特定することを特徴とする請求項10に記載の不明水流入箇所特定方法。
【請求項12】
前記装置において、
前記1または複数の箇所ごとに、晴天日の前記水質データの晴天日最小値と、雨天日の前記水質データの雨天日最小値とを比較する第二比較ステップと、
上記晴天日最小値に対して所定割合以下の上記雨天日最小値を持つ箇所を、雨水と汚水の混合箇所候補に選出する雨水・汚水混合箇所候補選出ステップと、
上記雨水と汚水の混合箇所候補ごとに、上記晴天日最小値に対する上記雨天日最小値の割合を複数段階に区分けして各区分に割り振られる重み係数と、上記各区分内に属する頻度とを乗じて、上記各区分にて乗じた数を全区分で加算するスコア算出ステップと、を実行し、
前記第一比較ステップは、各箇所同士で、あるいは前記基準水質データの基準スコアと比較し、
前記流入箇所特定ステップは、相対的に前記スコアの大きい順から所定数の箇所、あるいは上記基準スコアに対して前記スコアの大きい箇所を、優先対応を要する前記雨水と汚水の混合箇所と特定することを特徴とする請求項10に記載の不明水流入箇所特定方法。
【請求項13】
前記装置において、
前記1または複数の箇所における晴天日の前記水質データの平均値若しくは極値の少なくともいずれか1つを選択する水質データ選択ステップを実行し、
前記第一比較ステップは、複数の前記箇所の上記平均値同士若しくは上記極値同士、あるいは前記基準水質データの上記平均値若しくは上記極値と比較し、
前記流入箇所特定ステップは、少なくとも、複数の前記箇所間において相対的に若しくは前記基準水質データとの比較において上記平均値若しくは上記極値の内の最小値が最も小さくなる箇所、あるいは複数の前記箇所間において相対的に若しくは前記基準水質データとの比較において上記平均値若しくは上記極値の内の最大値が最も大きくなる箇所を、前記地下水と汚水の混合箇所と特定することを特徴とする請求項10に記載の不明水流入箇所特定方法。
【請求項1】
不明水の流入箇所を特定するための不明水流入箇所特定装置であって、
少なくとも1または複数の箇所における所定期間内の水質データを受信する受信部と、
比較の基準となる基準水質データ若しくはそれに基づく数値と各箇所における所定期間内の上記水質データ若しくはそれに基づく数値、あるいは各箇所における所定期間内の上記水質データ同士若しくはそれに基づく数値同士を比較する第一比較部と、
上記第一比較部の結果に基づき不明水の流入箇所を特定する流入箇所特定部と、
を備え、
上記流入箇所特定部は、晴天時において、上記基準水質データ若しくはそれに基づく数値から乖離しあるいは相対的に他の上記箇所の上記水質データ若しくはそれに基づく数値から乖離することを条件に地下水と汚水の混合箇所であると特定する機能、および雨天時において、上記基準水質データ若しくはそれに基づく数値から乖離しあるいは相対的に他の上記箇所の上記水質データ若しくはそれに基づく数値から乖離することを条件に雨水と汚水の混合箇所であると特定する機能の少なくともいずれか一方の機能を実行することを特徴とする不明水流入箇所特定装置。
【請求項2】
前記1または複数の箇所ごとに、計測された所定期間内の前記水質データの平均値を算出する平均値算出部と、
前記1または複数の箇所ごとに、計測された所定期間内の前記水質データの標準偏差値を算出する標準偏差値算出部と、
を備え、
前記第一比較部は、各箇所における前記水質データの上記平均値および上記標準偏差値を、各箇所同士で、あるいは前記基準水質データの平均値および標準偏差値と比較し、
前記流入箇所特定部は、少なくとも上記平均値が前記各箇所間にて相対的に小さい若しくは大きい箇所を、あるいは少なくとも上記平均値が前記基準水質データの平均値と比べて小さい若しくは大きい箇所を前記地下水と汚水の混合箇所と特定し、上記標準偏差値が前記各箇所間にて相対的に大きい箇所を、あるいは上記標準偏差値が前記基準水質データの標準偏差値と比べて大きい箇所を前記雨水と汚水の混合箇所と特定することを特徴とする請求項1に記載の不明水流入箇所特定装置。
【請求項3】
前記1または複数の箇所ごとに、晴天日の前記水質データの晴天日最小値と、雨天日の前記水質データの雨天日最小値とを比較する第二比較部と、
上記晴天日最小値に対して所定割合以下の上記雨天日最小値を持つ箇所を、雨水と汚水の混合箇所候補に選出する雨水・汚水混合箇所候補選出部と、
上記雨水と汚水の混合箇所候補ごとに、上記晴天日最小値に対する上記雨天日最小値の割合を複数段階に区分けして各区分に割り振られる重み係数と、上記各区分内に属する頻度とを乗じて、上記各区分にて乗じた数を全区分で加算するスコア算出部と、
を備え、
前記第一比較部は、各箇所同士で、あるいは前記基準水質データの基準スコアと比較し、
前記流入箇所特定部は、相対的に前記スコアの大きい順から所定数の箇所、あるいは上記基準スコアに対して前記スコアの大きい箇所を、優先対応を要する前記雨水と汚水の混合箇所と特定することを特徴とする請求項1に記載の不明水流入箇所特定装置。
【請求項4】
前記1または複数の箇所における晴天日の前記水質データの平均値若しくは極値の少なくともいずれか1つを選択する水質データ選択部を備え、
前記第一比較部は、複数の前記箇所の上記平均値同士若しくは上記極値同士、あるいは前記基準水質データの上記平均値若しくは上記極値と比較し、
前記流入箇所特定部は、少なくとも、複数の前記箇所間において相対的に若しくは前記基準水質データとの比較において上記平均値若しくは上記極値の内の最小値が最も小さくなる箇所、あるいは複数の前記箇所間において相対的に若しくは前記基準水質データとの比較において上記平均値若しくは上記極値の内の最大値が最も大きくなる箇所を、前記地下水と汚水の混合箇所と特定することを特徴とする請求項1に記載の不明水流入箇所特定装置。
【請求項5】
前記水質データを測定する水質測定器を、さらに含むことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の不明水流入箇所特定装置。
【請求項6】
コンピュータにインストールして実行することにより、当該コンピュータを不明水の流入箇所を特定するための不明水流入箇所特定装置として機能させることができるコンピュータプログラムであって、
上記コンピュータに対して、
少なくとも1または複数の箇所における所定期間内の水質データを受信する受信部;
比較の基準となる基準水質データ若しくはそれに基づく数値と各箇所における所定期間内の上記水質データ若しくはそれに基づく数値、あるいは各箇所における所定期間内の上記水質データ同士若しくはそれに基づく数値同士を比較する第一比較部;
上記第一比較部の結果に基づき不明水の流入箇所を特定する流入箇所特定部であって、晴天時において、上記基準水質データ若しくはそれに基づく数値から乖離しあるいは相対的に他の上記箇所の上記水質データ若しくはそれに基づく数値から乖離することを条件に地下水と汚水の混合箇所であると特定する機能、および雨天時において、上記基準水質データ若しくはそれに基づく数値から乖離しあるいは相対的に他の上記箇所の上記水質データ若しくはそれに基づく数値から乖離することを条件に雨水と汚水の混合箇所であると特定する機能の少なくともいずれか一方の機能を実行する流入箇所特定部;
の各構成部の動作を行わせることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項7】
コンピュータに対して、
前記1または複数の箇所ごとに、計測された所定期間内の前記水質データの平均値を算出する平均値算出部;
前記1または複数の箇所ごとに、計測された所定期間内の前記水質データの標準偏差値を算出する標準偏差値算出部;
の各構成部の動作を行わせると共に、
前記第一比較部の動作として、各箇所における前記水質データの上記平均値および上記標準偏差値を、各箇所同士で、あるいは前記基準水質データの平均値および標準偏差値と比較し、
前記流入箇所特定部の動作として、少なくとも上記平均値が前記各箇所間にて相対的に小さい若しくは大きい箇所を、あるいは少なくとも上記平均値が前記基準水質データの平均値と比べて小さい若しくは大きい箇所を前記地下水と汚水の混合箇所と特定し、上記標準偏差値が前記各箇所間にて相対的に大きい箇所を、あるいは上記標準偏差値が前記基準水質データの標準偏差値と比べて大きい箇所を前記雨水と汚水の混合箇所と特定することを特徴とする請求項6に記載のコンピュータプログラム。
【請求項8】
コンピュータに対して、
前記1または複数の箇所ごとに、晴天日の前記水質データの晴天日最小値と、雨天日の前記水質データの雨天日最小値とを比較する第二比較部;
上記晴天日最小値に対して所定割合以下の上記雨天日最小値を持つ箇所を、雨水と汚水の混合箇所候補に選出する雨水・汚水混合箇所候補選出部;
上記雨水と汚水の混合箇所候補ごとに、上記晴天日最小値に対する上記雨天日最小値の割合を複数段階に区分けして各区分に割り振られる重み係数と、上記各区分内に属する頻度とを乗じて、上記各区分にて乗じた数を全区分で加算するスコア算出部;
の各構成部の動作を行わせると共に、
前記第一比較部の動作として、各箇所同士で、あるいは前記基準水質データの基準スコアと比較し、
前記流入箇所特定部の動作として、相対的に前記スコアの大きい順から所定数の箇所、あるいは上記基準スコアに対して前記スコアの大きい箇所を、優先対応を要する前記雨水と汚水の混合箇所と特定することを特徴とする請求項6に記載のコンピュータプログラム。
【請求項9】
コンピュータに対して、
前記1または複数の箇所における晴天日の前記水質データの平均値若しくは極値の少なくともいずれか1つを選択する水質データ選択部の動作を行わせると共に、
前記第一比較部の動作として、複数の前記箇所の上記平均値同士若しくは上記極値同士、あるいは前記基準水質データの上記平均値若しくは上記極値と比較し、
前記流入箇所特定部の動作として、少なくとも、複数の前記箇所間において相対的に若しくは前記基準水質データとの比較において上記平均値若しくは上記極値の内の最小値が最も小さくなる箇所、あるいは複数の前記箇所間において相対的に若しくは前記基準水質データとの比較において上記平均値若しくは上記極値の内の最大値が最も大きくなる箇所を、前記地下水と汚水の混合箇所と特定することを特徴とする請求項6に記載のコンピュータプログラム。
【請求項10】
不明水の流入箇所を特定するための不明水流入箇所特定方法であって、
水質測定器から、不明水の流入箇所を特定する装置内に、少なくとも1または複数の箇所における所定期間内の水質データを受信する受信ステップと、
上記装置において、
比較の基準となる基準水質データ若しくはそれに基づく数値と各箇所における所定期間内の上記水質データ若しくはそれに基づく数値、あるいは各箇所における所定期間内の上記水質データ同士若しくはそれに基づく数値同士を比較する第一比較ステップと、
上記第一比較ステップの処理結果に基づき不明水の流入箇所を特定する流入箇所特定ステップと、を実行し、
上記流入箇所特定ステップは、晴天時において、上記基準水質データ若しくはそれに基づく数値から乖離しあるいは相対的に他の上記箇所の上記水質データ若しくはそれに基づく数値から乖離することを条件に地下水と汚水の混合箇所であると特定する機能、および雨天時において、上記基準水質データ若しくはそれに基づく数値から乖離しあるいは相対的に他の上記箇所の上記水質データ若しくはそれに基づく数値から乖離することを条件に雨水と汚水の混合箇所であると特定する機能の少なくともいずれか一方の機能を実行することを特徴とする不明水流入箇所特定方法。
【請求項11】
前記装置において、
1または複数の箇所ごとに、計測された所定期間内の前記水質データの平均値を算出する平均値算出ステップと、
前記1または複数の箇所ごとに、計測された所定期間内の前記水質データの標準偏差値を算出する標準偏差値算出ステップと、を実行し、
前記第一比較ステップは、各箇所における前記水質データの上記平均値および上記標準偏差値を、各箇所同士で、あるいは前記基準水質データの平均値および標準偏差値と比較し、
前記流入箇所特定ステップは、少なくとも上記平均値が前記各箇所間にて相対的に小さい若しくは大きい箇所を、あるいは少なくとも上記平均値が前記基準水質データの平均値と比べて小さい若しくは大きい箇所を前記地下水と汚水の混合箇所と特定し、上記標準偏差値が前記各箇所間にて相対的に大きい箇所を、あるいは上記標準偏差値が前記基準水質データの標準偏差値と比べて大きい箇所を前記雨水と汚水の混合箇所と特定することを特徴とする請求項10に記載の不明水流入箇所特定方法。
【請求項12】
前記装置において、
前記1または複数の箇所ごとに、晴天日の前記水質データの晴天日最小値と、雨天日の前記水質データの雨天日最小値とを比較する第二比較ステップと、
上記晴天日最小値に対して所定割合以下の上記雨天日最小値を持つ箇所を、雨水と汚水の混合箇所候補に選出する雨水・汚水混合箇所候補選出ステップと、
上記雨水と汚水の混合箇所候補ごとに、上記晴天日最小値に対する上記雨天日最小値の割合を複数段階に区分けして各区分に割り振られる重み係数と、上記各区分内に属する頻度とを乗じて、上記各区分にて乗じた数を全区分で加算するスコア算出ステップと、を実行し、
前記第一比較ステップは、各箇所同士で、あるいは前記基準水質データの基準スコアと比較し、
前記流入箇所特定ステップは、相対的に前記スコアの大きい順から所定数の箇所、あるいは上記基準スコアに対して前記スコアの大きい箇所を、優先対応を要する前記雨水と汚水の混合箇所と特定することを特徴とする請求項10に記載の不明水流入箇所特定方法。
【請求項13】
前記装置において、
前記1または複数の箇所における晴天日の前記水質データの平均値若しくは極値の少なくともいずれか1つを選択する水質データ選択ステップを実行し、
前記第一比較ステップは、複数の前記箇所の上記平均値同士若しくは上記極値同士、あるいは前記基準水質データの上記平均値若しくは上記極値と比較し、
前記流入箇所特定ステップは、少なくとも、複数の前記箇所間において相対的に若しくは前記基準水質データとの比較において上記平均値若しくは上記極値の内の最小値が最も小さくなる箇所、あるいは複数の前記箇所間において相対的に若しくは前記基準水質データとの比較において上記平均値若しくは上記極値の内の最大値が最も大きくなる箇所を、前記地下水と汚水の混合箇所と特定することを特徴とする請求項10に記載の不明水流入箇所特定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−237099(P2012−237099A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105057(P2011−105057)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【特許番号】特許第4980478号(P4980478)
【特許公報発行日】平成24年7月18日(2012.7.18)
【出願人】(397028016)株式会社日水コン (18)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【特許番号】特許第4980478号(P4980478)
【特許公報発行日】平成24年7月18日(2012.7.18)
【出願人】(397028016)株式会社日水コン (18)
【Fターム(参考)】
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