不正使用の可能性が低い経皮鎮痛薬システム
【課題】不正使用される可能性が低い経皮鎮痛薬システムの提供。
【解決手段】鎮痛薬を皮膚経由で投与するための経皮システムであって、(a)フェンタニルおよびこれの類似物から成る群から選択される鎮痛薬を含んで成る鎮痛薬貯蔵物、(b)前記鎮痛薬用の拮抗薬を含んで成る拮抗薬貯蔵物、(c)前記拮抗薬貯蔵物を前記鎮痛薬貯蔵物から分離しておりかつ前記鎮痛薬も前記拮抗薬も実質的に透過しないバリヤー層、から成り、製剤が不正使用されようとする時には鎮痛薬放出速度に対する拮抗薬放出速度の比率が不正使用を制限するに充分な比率になるような速度で前記拮抗薬を制御した様式で放出するシステム。
【解決手段】鎮痛薬を皮膚経由で投与するための経皮システムであって、(a)フェンタニルおよびこれの類似物から成る群から選択される鎮痛薬を含んで成る鎮痛薬貯蔵物、(b)前記鎮痛薬用の拮抗薬を含んで成る拮抗薬貯蔵物、(c)前記拮抗薬貯蔵物を前記鎮痛薬貯蔵物から分離しておりかつ前記鎮痛薬も前記拮抗薬も実質的に透過しないバリヤー層、から成り、製剤が不正使用されようとする時には鎮痛薬放出速度に対する拮抗薬放出速度の比率が不正使用を制限するに充分な比率になるような速度で前記拮抗薬を制御した様式で放出するシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乱用(または「不正使用」という)の可能性が低い(reduced potential for abuse)経皮鎮痛薬システム(transdermal analgesic system)に関する。詳細には、本発明は、フェンタニル(fentanyl)およびこれの類似物を被験体に無傷の皮膚を通して長期間に渡って経皮投与するに適したシステムに関し、本システムは、本製剤(即ち経皮鎮痛薬システム)が不正使用されようとする時に鎮痛薬放出速度に対する拮抗薬放出速度の比率が不正使用を制限するに充分な比率になるような速度で前記拮抗薬を制御して放出する。
【背景技術】
【0002】
急性および慢性両方の痛みを治療するための麻薬性鎮痛薬、即ちオピオイドの経皮投与は詳細に記述されている。フェンタニルおよびこれの類似物、例えばアルフェンタニル、カルフェンタニル、ロフェンタニル、レミフェンタニル、スフェンタニル、トレフェンタニルなどを経皮投与するいろいろな方法が特許文献1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16および17に記述されており、これらは引用することによって本明細書に組み入れられる。軟膏またはクリームを局所的に塗布するか或は経皮パッチを用いてフェンタニルを投与することができることが前記特許文献に開示されている。
【0003】
麻薬性鎮痛薬が鼻内、経口または非経口経路で不正使用される可能性があることは良く知られている。オピオイドの転用または不正使用は異なるいくつかの形態を取り得る。例えば、意図しない人がそのような薬剤を用いる可能性がある、即ち元々処方された経路(例えば経口または経皮)または代替経皮(例えば非経口、静脈内または鼻内)のいずれかで処方された量および/または頻度から逸脱、即ち多い量および/または頻度で用いる可能性がある。そのような物質の不正使用を防止する目的で、不正使用される可能性のある物質をこの不正使用される可能性のある物質の拮抗薬を当該薬剤の投与を意図した他の治療的利点をなくすことなくそのような物質の不正使用に伴う「恍惚状態(high)」をなくすに充分な量で組み合わせた製剤を提供することが提案された[例えば特許文献18、19、20、21、22、23、24、25、26および27(これらは全部引用することによって本明細書に組み入れられる)およびまた非特許文献1および2(引用することによって本明細書に組み入れられる)も参照]。
【0004】
麻酔性および精神活性物質を搬送するに適した経皮製剤が特許文献26に記述されており、その製剤は不正使用される可能性が低い。その経皮製剤は麻酔薬と拮抗薬を含んで成る鎮痛薬貯蔵物(analgesic reservoir)と放出手段(これによって前記麻酔薬が体に放出される)を含んで成る。オピオイドを経皮投与するに適した耐不正使用性(misuse−resistance)製剤が特許文献25に記述されている。その製剤はオピオイド、摂取または溶媒浸漬時に放出され得るオピオイド用拮抗薬、前記オピオイドを前記拮抗薬から分離しているバリヤー手段(barrier means)および前記オピオイドを搬送する搬送手段を含んで成る。
【0005】
現存の製剤はある程度の成功を収めているが、それにも拘らず、麻酔薬は注射、吸入または摂取用製剤から抽出可能であるか或は麻酔薬と鎮痛薬が相互作用する結果として不利な物理的および/または化学的相互作用、例えば望ましくないイオン交換が起こるか或は拮抗薬が麻酔薬貯蔵物の中に入り込む結果として拮抗薬が全身に送り込まれるなどと言った相互作用がもたらされる可能性があることから、不正使用の可能性を低くする点では完全には満足されるものではなかった。拮抗薬が皮膚に接触している時間が長くなると感作
反応が現れる。その上、現存する製剤の場合、その製剤が不正使用される傾向がある、例えばそのようなシステムが摂取されるか或は溶媒に実質的に浸漬された時などに麻酔薬放出速度に対する拮抗薬放出速度が不正使用を制限するに充分な比率になるような速度で拮抗薬の放出を制御するものではない。そのような製剤では、不正使用される傾向があっても、その製剤から鎮痛薬が放出される速度に釣り合わない速度で拮抗薬が分離される可能性があり、その結果として、不正使用の事態が起こっている間に鎮痛薬の麻酔効果が充分には遮断されなくなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4,466,953号
【特許文献2】米国特許第4,470,962号
【特許文献3】米国特許第4,588,580号
【特許文献4】米国特許第4,626,539号
【特許文献5】米国特許第5,006,342号
【特許文献6】米国特許第5,186,939号
【特許文献7】米国特許第5,310,559号
【特許文献8】米国特許第5,474,783号
【特許文献9】米国特許第5,656,286号
【特許文献10】米国特許第5,762,952号
【特許文献11】米国特許第5,948,433号
【特許文献12】米国特許第5,985,317号
【特許文献13】米国特許第5,958,446号
【特許文献14】米国特許第5,993,849号
【特許文献15】米国特許第6,024,976号
【特許文献16】米国特許第6,063,399号
【特許文献17】米国特許第6,139,866号
【特許文献18】米国特許第3,773,955号
【特許文献19】米国特許第3,493,657号
【特許文献20】米国特許第4,464,378号
【特許文献21】米国特許第4,457,933号
【特許文献22】米国特許第4,626,539号
【特許文献23】米国特許第4,806,341号
【特許文献24】米国特許第4,935,428号
【特許文献25】米国特許第5,149,538号
【特許文献26】米国特許第5,236,714号
【特許文献27】国際公開番号WO 01/58451A1
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Talwin;Levine J.D.他、「Potentiation of pentazocine analgesia by low−dose naloxone」、J Clin Invest 1988;82:1574−1577
【非特許文献2】Crain SM、Shen F−K、「Antagonist of excitatory opioid receptor function enhance morphine’s analgesic potency and attenuate opioid tolerance/dependence liability」、Pain 2000;84:121−131
【発明の概要】
【0008】
(発明の要約)
本発明は本技術分野における上述した要求に向けたものであり、当該システムを皮膚に付着させた時に鎮痛薬が有する治療もしくは有益な効果を減少させることなく不正使用の可能性を低くした経皮鎮痛薬システムを提供し、このシステムは、拮抗薬と接触することによる皮膚感作反応を実質的に無くし/無視できるほどにするものである。詳細には、本発明の経皮鎮痛薬系は、この製剤が不正使用されようとする時に鎮痛薬放出速度に対する拮抗薬放出速度の比率が不正使用を制限するに充分な比率になるような速度に前記拮抗薬の放出を制御するものである。追加的に、本発明の経皮鎮痛薬システムは安全性が向上、例えば使用済みシステムを子供または家庭用ペットが偶発的に摂取する可能性がある時などの安全性が向上している。
【0009】
本発明は、1つの面において、鎮痛薬を皮膚経由で投与するための経皮システムに関し、このシステムは不正使用される可能性が低いシステムであり、これは、
(a)フェンタニルおよびこれの類似物から成る群から選択される鎮痛薬を含んで成る鎮痛薬貯蔵物、
(b)前記鎮痛薬用の拮抗薬を含んで成る拮抗薬貯蔵物、
(c)バリヤー層[このバリヤー層は前記拮抗薬貯蔵物を前記鎮痛薬貯蔵物から分離しておりかつこのバリヤー層は前記鎮痛薬も前記拮抗薬も実質的に透過しない]
を含んで成り、このシステムでは、(i)このシステムを人である患者に張り付けている(securing)期間が約7日以内の時にはこのシステムから前記拮抗薬が実質的に放出されずそして(ii)この製剤が不正使用されようとする時、例えばこのシステムが摂取されたか或は溶媒の中に実質的に浸漬された時などには鎮痛薬放出速度に対する拮抗薬放出速度の比率が不正使用を制限するに充分な比率になるような速度で前記拮抗薬が放出される。
【0010】
別の面において、本発明の経皮鎮痛薬システムは、鎮痛を人である患者に誘発して少なくとも3日間に渡って維持するに充分な量で鎮痛薬を含有する鎮痛薬貯蔵物を含んで成り、ここで、前記鎮痛薬はフェンタニルまたはこれの類似物でありそして前記類似物をアルフェンタニル、ロフェンタニル、レミフェンタニル、スフェンタニルおよびトレフェンタニルから成る群から選択する。好適な態様における鎮痛薬はフェンタニルまたはスフェンタニル、より好適には塩基形態のフェンタニルまたはスフェンタニルである。
【0011】
追加的面において、本発明の経皮鎮痛薬システムは鎮痛薬貯蔵物を含んで成り、前記鎮痛薬貯蔵物は重合体マトリックス(polymeric matrix)(これは前記鎮痛薬を約1重量%から約20重量%含有する)と場合により透過促進剤(permeation enhancer)を含んで成る。前記鎮痛薬貯蔵物は好適には未溶解成分を含まない単相製剤を構成している。
【0012】
別な面において、本発明の経皮鎮痛薬システムは、前記鎮痛薬を約20重量%以下の量で含有し、透過促進剤を約50重量%以下の量で含有しかつゲル化剤(gelling agent)を約0.5から約10重量%含有して成る水性ゲルを構成している鎮痛薬貯蔵物を含んで成る。
【0013】
追加的面において、本発明の経皮鎮痛薬システムは、更に、前記鎮痛薬貯蔵物と皮膚の間に位置させる鎮痛薬放出速度制御手段(analgesic release rate controlling means)も含んで成る。特定の面において、前記鎮痛薬放出速度制御手段が前記鎮痛薬を透過する度合の方がそれが前記透過促進剤を透過する度合よりも低い。
【0014】
追加的面において、本発明の経皮鎮痛薬システムは、前記バリヤー層を通して放出され
ないがシステムが摂取された時か或は溶媒に実質的に浸漬された時にそれから放出される形態の拮抗薬を含有する拮抗薬貯蔵物を含んで成る。この拮抗薬貯蔵物は、好適には、重合体の中に分散している前記拮抗薬を含んで成り、この拮抗薬は前記拮抗薬貯蔵物の重合体に実質的に不溶である。特定の態様では、当該拮抗薬をこの拮抗薬の放出を実質的に防止する材料を含んで成るマトリックスの中に分散させるか、或はこの拮抗薬とイオン性樹脂の複合体を形成させる。追加的態様では、前記拮抗薬貯蔵物に含める拮抗薬を多粒子形態にして、各粒子の各々を当該拮抗薬の放出を実質的に防止する材料で覆っておく。追加的態様では、当該拮抗薬貯蔵物に当該拮抗薬で被覆しておいたビードを含め、そのビードをガラスまたは不活性もしくは非溶解性の重合体で構成させてもよく、そして更に、その被覆しておいたビードを場合により当該拮抗薬の放出を実質的に防止する材料で覆うか或はそれの中に分散させてもよい。そのような拮抗薬をナルトレキソン(naltrexone)、メチルナルトレキソン、ナロキソン(naloxone)、ナルブフィン(nalbuphine)、ナロルフィン(nalorphine)、ナロルフィンジニコチネート、ナルメフェン(nalmefene)、ナジド(nadide)、レバロルファン(levallorphan)、シクロゾシン(cyclozocine)およびこれらの薬学的に受け入れられる塩から成る群から選択する。好適な態様では、そのような拮抗薬を塩、好適には塩基である拮抗薬の塩酸塩として存在させる。
【0015】
追加的面において、本発明の経皮鎮痛薬システムは前記鎮痛薬も前記拮抗薬も透過しないバリヤー層を含んで成り、このバリヤー層は、水にもアルコールにも有機溶媒にも不溶な材料を含んで成る。皮膚から遠位のバリヤー層表面に前記拮抗薬貯蔵物を位置させそして皮膚に近位のバリヤー層表面に前記鎮痛薬貯蔵物を位置させる。
【0016】
追加的面において、本発明の経皮鎮痛薬システムは更に拮抗薬放出速度制御手段も含んで成り、前記拮抗薬放出速度制御手段は、本システムを人である患者に張り付けている期間が約7日以内の時には本システムから前記拮抗薬が実質的に放出されないようにしそして本製剤が不正使用されようとする時、例えば本システムが摂取されるか或は溶媒の中に実質的に浸漬された時などには鎮痛薬放出速度に対する拮抗薬放出速度の比率が不正使用を制限するに充分な比率になるような速度で前記拮抗薬を放出させる手段である。このような拮抗薬放出速度制御手段を皮膚から遠位の拮抗薬貯蔵物表面に位置させる。
【0017】
別の面において、本発明の経皮鎮痛薬システムでは、本製剤が不正使用されようとする時、例えば摂取されるか或は溶媒の中にある期間浸漬された時などには鎮痛薬放出速度に対する拮抗薬放出速度の比率が実質的に絶えず約0.075:1から約30:1、約0.25:1から約20:1、約0.5:1から約16:1、約0.5:1から約14:1、約0.75:1から約12:1、約1:1から約10:1、約1.5:1から約8:1、約2:1から約6:1および約2:1から約4:1になるようにし、ここで、そのような浸漬期間は約1分から約24時間である。
【0018】
別の面において、本発明は、鎮痛薬を皮膚経由で投与するための経皮システムに関し、このシステムは不正使用される可能性が低く、これは、
(a)鎮痛を人である患者に誘発して少なくとも3日間に渡って維持するに充分な量で鎮痛薬(この鎮痛薬はフェンタニルまたはこれの類似物でありそして前記類似物はアルフェンタニル、ロフェンタニル、レミフェンタニル、スフェンタニルおよびトレフェンタニルから成る群から選択される)を含んで成る鎮痛薬貯蔵物、
(b)バリヤー層を通して放出されない形態であるがシステムが摂取されたか或は溶媒に実質的に浸漬された時にそれから放出される前記鎮痛薬用の拮抗薬(ここでは更にそのような拮抗薬をナルトレキソン、メチルナルトレキソン、ナロキソン、ナルブフィン、ナロルフィン、ナロルフィンジニコチネート、ナルメフェン、ナジド、レバロルファン、シクロゾシンおよびこれらの薬学的に受け入れられる塩から成る群から選択する)を含んで成
る拮抗薬貯蔵物、
(c)前記拮抗薬貯蔵物を前記鎮痛薬貯蔵物から分離しておりかつ前記鎮痛薬も前記拮抗薬も実質的に透過しないバリヤー層、および
(d)皮膚から遠位の拮抗薬貯蔵物表面に位置していてこのシステムを人である患者に張り付けている期間が約7日以内の時にはこのシステムから前記拮抗薬が実質的に放出されないようにしそして更にこの製剤が不正使用される可能性がある、例えばこのシステムが摂取されたか或は溶媒に実質的に浸漬された時には鎮痛薬放出速度に対する拮抗薬放出速度の比率が不正使用を制限するに充分な比率になるような速度で前記拮抗薬が放出されるようにする拮抗薬放出速度制御手段、
を含んで成る。
【0019】
本明細書に示す開示を考慮することで本発明の前記および他の態様が本分野の通常の技術者に容易に思い浮かぶであろう。
【0020】
(本発明の詳細な記述)
概要:
本発明は、本システムを皮膚に張り付けた時に当該鎮痛薬が示す治療または有益な効果が低下することなく不正使用される可能性が低い経皮鎮痛薬システムに向けたものである。詳細には、本発明のシステムは、本製剤が不正使用されようとする時には鎮痛薬放出速度に対する拮抗薬放出速度の比率が不正使用を制限するに充分な比率になるような速度で前記拮抗薬が制御様式で放出されるようにしたシステムであり、本システムは、皮膚が拮抗薬に接触した時に起こす感作反応を実質的に最小限にし/無視出来るほどにするものである。
【0021】
本発明の実施では、特に明記しない限り、本分野の技術の範囲内である薬剤製品開発に係わる人が使用する通常の方法を利用する。そのような技術は文献の中に詳細に説明されている。例えばGale,R.、Chandrasekaran,S.K.、Swanson,D.およびWright,J.、「Use of Osmotically Active Therapeutic Agents in Monolithic Systems」、J.Membrane Sci.、7(1980)、319−331;Patini,G.A.およびChein,Y.W.、Swarbrick,J.およびBoylan,J.C.編集、Encyclopedia of Pharmaceutical Technology、ニューヨーク;Marcel Dekker,Inc.1999およびGale,R.、Hunt,J.およびPrevo,M.、Mathiowitz,E.編集、Encyclopedia of Controlled Drug Delivery Patches,Passive、ニューヨーク:J Wiley & Sons,Inc、1999を参照。本明細書の上または以下に挙げる特許、特許出願および出版物は全部引用することによって全体が本明細書に組み入れられる。
【0022】
定義:
本発明の記述および請求において下記の用語を以下に挙げる定義に従って用いる。
【0023】
単数形「a」、「an」および「the」は本文で明らかに他の様式で指示しない限り複数対象を包含する。従って、例えば「ある重合体」の言及は単一の重合体ばかりでなく異なる2種以上の重合体の混合物を包含し、「ある透過促進剤」の言及は単一の透過促進剤ばかりでなく組み合わされた異なる2種以上の透過促進剤も包含する、等々。
【0024】
用語「鎮痛薬」および「薬剤」を本明細書で用いる場合、これらを互換的に用い、フェンタニルおよびフェンタニルの類似物を指す。用語「フェンタニルの類似物」(本明細書では以降「類似物」と呼ぶ)を本明細書で用いる場合、これは非常に効力のある有効な鎮
痛薬、例えばアルフェンタニル、カルフェンタニル、ロフェンタニル、レミフェンタニル、スフェンタニル、トレフェンタニルなどを指す。
【0025】
用語「このシステムから前記拮抗薬が実質的に放出されず」を本明細書で用いる場合、これは、拮抗薬と皮膚の接触が最小限であるように経皮鎮痛薬システムが水に不用意に接触または偶発的に接触した時にこのシステムから放出される拮抗薬の量が最小限であり、従って皮膚が拮抗薬に接触することによって起こる皮膚の感作反応が実質的に最小限である経皮鎮痛薬システムを意味する。
【0026】
用語「水に偶発的に接触」を本明細書で用いる場合、これは、例えばシャワーを浴びている間、発汗中などに高い湿度に短時間接触するか或は液状の水に短時間接触することなどを指す。
【0027】
用語「亜飽和状態のシステム」を本明細書で用いる場合、これは、当該鎮痛薬の濃度が溶解度限界未満であるシステムを指す。そのような鎮痛薬貯蔵物は未溶解成分を含まない単相重合体組成物を構成しており、その場合の鎮痛薬および他の成分は全部がその貯蔵物の中にそれらの飽和濃度以下、好適には未満の濃度で存在する。
【0028】
用語「単相重合体組成物」を本明細書で用いる場合、これは、当該鎮痛薬および他のあらゆる成分が重合体の中に溶解していて当該組成物の中に未溶解成分が投与期間の実質的な部分に渡って存在しないようにそれらが当該貯蔵物の中にそれらの飽和濃度以下、好適には未満の濃度で存在していて前記成分の全部が前記重合体と組み合わされた状態で単相を構成している組成物を指す。
【0029】
用語「成分」を本明細書で用いる場合、これは、当該鎮痛薬貯蔵物の中の要素を指し、これには、これらに限定するものでないが、この上で定義した如き鎮痛薬、添加剤、透過促進剤、安定剤、染料、希釈剤、可塑剤、粘着付与剤、顔料、担体、不活性充填材、抗酸化剤、賦形剤、ゲル化剤、抗刺激剤、血管収縮薬などが含まれる。
【0030】
「鎮痛薬放出制御手段」を本明細書で用いる場合、これは、鎮痛薬の放出速度を加減する手段、例えば本技術分野で一般に公知の速度制御用膜などを指す。
【0031】
用語「拮抗薬放出制御手段」を本明細書で用いる場合、これは、当該拮抗薬の放出速度を制御しかつ皮膚が拮抗薬に接触することによる皮膚の感作反応を実質的に最小限にする手段を指す。この拮抗薬放出制御手段は溶媒が拮抗薬貯蔵物の中に入り込む度合を加減し、従って、当該拮抗薬が不正使用を抑制するに充分な速度で放出されることを可能にしながら不正使用中には当該拮抗薬の放出を加減する手段である。そのような拮抗薬放出制御手段には、物理的手段、例えば層、膜、フィルム、コーティング、シート、付着物などが含まれ、それには、これらに限定するものでないが、速度制御用層、速度制御用膜、多孔質膜または微孔性膜、放出がパッチの縁によって制御される不透過性膜などが含まれる。そのような拮抗薬放出制御手段にはまた化学的手段も含まれ、浸透圧で追い出すか、濃度に依存するか、或は当該拮抗薬放出制御手段を構成している材料の大きさおよび特徴に依存するようにしてもよい。特定の態様では、そのような拮抗薬速度制御手段を当該拮抗薬貯蔵物の中に組み込んで、その放出速度が浸透圧破裂機構(osmotic bursting mechanism)[Gale他(Gale,R.、Chandrasekaran,S.K.、Swanson,D.およびWright,J.、「Use of Osmotically Active Therapeutic Agents in
Monolithic Systems」、J.Membrane Sci.、7(1980)、319−331)が示した]で支配されるようにする。当該拮抗薬貯蔵物の中の拮抗薬の量、当該拮抗薬の粒子サイズ、拮抗薬塩の浸透圧、および当該拮抗薬貯蔵物の
重合体マトリックスが示す物理的特徴などの如き要因を用いて拮抗薬の放出速度を制御する。
【0032】
「DURAGESIC(商標)フェンタニルパッチ」と「DUROGESIC(商標)フェンタニルパッチ」を互換的に用い、これは、この上で考察した如きフェンタニルパッチを指す(またPhysicians Desk Reference、56版、2002、1786−1789頁を参照)。
【0033】
用語「経皮鎮痛薬システムの不正使用」を本明細書で用いる場合、これは、製品のラベルに示されている如き使用以外の経皮鎮痛薬システムの使用を指し、それには、当該システムの不正使用または誤用、当該システムを転用すること、当該システムを摂取するか或は静脈内投与、口腔内投与などの目的で当該システムを溶媒の中に実質的に浸漬することなどが含まれる。
【0034】
用語「Cmax(ng/ml)」を本明細書で用いる場合、これは、当該鎮痛薬、即ちフェンタニルまたはこれの類似物のピーク血液、血漿もしくは血清濃度を指す。
【0035】
用語「標準化Cmax(ng/ml・cm2)」を本明細書で用いる場合、これは、当該システムの活性鎮痛薬搬送領域、例えば鎮痛薬貯蔵物の領域の単位面積(cm2)当たりのCmax(ng/ml)を指す。
【0036】
用語「正規化Cmax[ng/ml・(mg/時)]」を本明細書で用いる場合、これは、Cmax(ng/ml)を投与した鎮痛薬の速度(mg/時)で割った値を指す。
【0037】
用語「定常状態の鎮痛薬の流出速度(flux)」を本明細書で用いる場合、これは、投与期間の実質的な部分に渡る1から20μg/時・cm2の範囲の鎮痛薬流出速度(インビトロおよびインビボ)を指す。
【0038】
用語「生利用度」を本明細書で用いる場合、これは、活性材料または活性部分が薬剤製品から吸収されて作用部位で利用される速度および度合を指す。この速度および度合は薬物動態学−パラメーター、例えば血液、血漿もしくは血清薬剤濃度−時間曲線(AUC)の下の面積および薬剤のピーク、血漿もしくは血清濃度(Cmax)などで確立される。
【0039】
異なる2種類の生成物に試験を同様な実験条件下で受けさせた時にそれらが実質的に同じ薬物動態効果をもたらした場合にはそれらは「生物学的に同等」であると見なす。数種のインビボおよびインビトロ方法を用いて生物学的に同等であることを示すことができる。そのような方法には、好適な順で示して、薬物動態学、薬力学、臨床およびインビトロ研究が含まれる。詳細には、薬物動態測定、例えば血液、血漿もしくは血清薬剤濃度−時間曲線(AUC)下の面積および薬剤のピーク血液、血漿もしくは血清濃度(Cmax)などを用い、本明細書の以下により詳細に記述する如き統計学的判断基準を用いて、生物学的同等を立証する。
【0040】
異なる2種類の生成物に試験を同様な実験条件下で受けさせた時にそれらが実質的に同じ治療効果をもたらした場合にはそれらは「薬理学的に同等」であると見なす(本明細書の以下により詳細に記述する如き数種のインビボおよびインビトロ方法で立証するように)。治療効果は、本明細書の以下により詳細に記述するように、いろいろな要因、例えば当該薬剤の効力、当該薬剤が皮膚の中で示す溶解性および拡散性、皮膚の厚み、皮膚投与部位の中の薬剤濃度、薬剤貯蔵物の中の薬剤濃度などに依存する。一般的には、投与した薬剤の率に関して正規化した当該薬剤のピーク血液、血漿もしくは血清濃度(即ち、この上に定義した如き正規化Cmax)および当該システムの活性薬剤搬送領域の単位面積当
たりに対して標準化した当該薬剤のピーク血液、血漿もしくは血清濃度(即ち、この上に定義した如き標準化Cmax)などの如き手段を用いて、薬理学的同等を立証する。
【0041】
薬剤投与率が当該経皮鎮痛薬システムの大きさに比例する異なる2種類の生成物を比較する時には、当該薬剤のピーク血液、血漿もしくは血清濃度(Cmax)を投与した薬剤の率に関して正規化する(正規化Cmax)か或は当該薬剤のピーク血液、血漿もしくは血清濃度(Cmax)を当該システムの活性薬剤搬送領域の単位面積当たりに標準化する(標準化Cmax)ことのいずれかで生物学的同等または薬理学的同等を立証することができる。しかしながら、単位面積当たりの薬剤投与率が異なる2種類の異なる生成物を比較する時には、当該薬剤のピーク血液、血漿もしくは血清濃度(Cmax)を投与した薬剤の率を基準にして正規化することで生物学的同等または薬理学的同等を確立する必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1に、本発明に従う経皮鎮痛薬システムの1つの態様の図式的透視図を貫く断面を示す。
【図2】本発明の別の態様を貫く断面図を示す。
【図3】本発明の別の態様を貫く断面図を示す。
【図4】本発明の別の態様を貫く断面図を示す。
【図5】本発明の別の態様を貫く断面図を示す。
【図6】Pluronic被覆Soluporである拮抗薬放出制御手段から放出されたナルトレキソンの累積放出を示す。
【図7】Pluronic被覆Soluporである拮抗薬放出制御手段から放出されたナルトレキソンの累積放出を示す。
【図8】Pluronic被覆Soluporである拮抗薬放出制御手段から放出されたナルトレキソンの累積放出を示す。
【図9】Celgard 3401である拮抗薬放出制御手段から放出されたナルトレキソンの放出速度および累積放出を示す。
【図10】Celgard 3401である拮抗薬放出制御手段から放出されたナルトレキソンの放出速度および累積放出を示す。
【図11】不透過性LDPEである拮抗薬放出制御手段から放出されたナルトレキソンの放出速度および累積放出を示す。
【図12】不透過性LDPEである拮抗薬放出制御手段から放出されたナルトレキソンの放出速度および累積放出を示す。
【図13】Celgard 3501である拮抗薬放出制御手段から放出されたナルトレキソンの放出速度および累積放出を示す。
【図14】Celgard 3501である拮抗薬放出制御手段から放出されたナルトレキソンの放出速度および累積放出を示す。
【図15】スパンボンデッドポリプロピレンである拮抗薬放出制御手段から放出されたナルトレキソンの放出速度および累積放出を示す。
【図16】スパンボンデッドポリプロピレンである拮抗薬放出制御手段から放出されたナルトレキソンの放出速度および累積放出を示す。
【図17】スフェンタニルをラットに投与して30分以内に誘発される臨床症状に対してナルトレキソンが示した効果を示す。
【図18】スフェンタニルをラットに投与して30分以内に誘発される臨床症状に対してナルトレキソンが示した効果を示す。
【図19】いろいろなフェンタニルシステムを72時間に渡って経皮投与した後の投与後120時間に渡る血清フェンタニル濃度を示す。
【図20】いろいろなフェンタニルシステムを72時間に渡って経皮投与した後の投与後120時間に渡る血清フェンタニル濃度を示す。
【図21】いろいろなスフェンタニル処置を受けさせた後の最初の投与後120時間以内の血漿スフェンタニル濃度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明は、フェンタニルおよびこれの類似物を鎮痛の目的で被験体の無傷の皮膚に長期間接触させて経皮搬送するに適した鎮痛薬システムを提供するものであり、このシステムは、不正使用される可能性が低くかつ皮膚が拮抗薬に接触することによる感作反応を実質的に最小限にし/無視出来るほどにするものである。詳細には、本発明の経皮鎮痛薬システムは、この製剤が不正使用されようとする時には鎮痛薬放出速度に対する拮抗薬放出速度の比率が不正使用を制限するに充分な比率になるような速度で前記拮抗薬を制限様式で放出させるシステムである。これに関して、本発明の経皮鎮痛薬システムは、当該鎮痛薬が不正使用される状況の時には麻酔効果を遮断するに充分な速度で当該拮抗薬を放出させるシステムである。
【0044】
ここに、図1−4を参照して、本発明に従う経皮鎮痛薬システムの好適な態様は、パッチ1、拮抗薬放出制御手段2、拮抗薬貯蔵物3(皮膚から遠位の拮抗薬貯蔵物表面に前記拮抗薬放出制御手段2が位置する)、不透過性バリヤー層4(皮膚から遠位のバリヤー層4表面に前記拮抗薬貯蔵物3が位置する)、皮膚に近位のバリヤー層4表面に位置する鎮痛薬貯蔵層5(少なくとも皮膚に接触する鎮痛薬貯蔵層5表面6は粘着性である)および剥離可能な保護層7を含んで成る。好適な態様では、薬学的に受け入れられる接着剤を用いて鎮痛薬貯蔵物5を生じさせる。ここに、図2を参照して、本発明の経皮鎮痛薬システムに、更に、皮膚に接触する鎮痛薬貯蔵物6表面に位置する鎮痛薬速度制御手段8(少なくとも皮膚に接触する鎮痛薬速度制御手段8表面は粘着性である)も含める。
【0045】
ここに、図3を参照して、粘着特性を充分には持たない材料を用いて鎮痛薬貯蔵物5を生じさせる。このような態様の本発明の経皮鎮痛薬システムは、パッチ1(皮膚に接触する鎮痛薬貯蔵物6表面をこれが粘着性コーティング9を伴うように構成してもよい)を含んで成る。鎮痛薬貯蔵層5は、この鎮痛薬貯蔵物5の中に当該鎮痛薬および他の成分の全部がそれらの飽和濃度以下、恐らくは未満の濃度で存在する単相重合体組成物である。そのようにすると、未溶解成分が存在しない組成物がもたらされる。ここに、図4を参照して、本発明の経皮鎮痛薬システムに、更に、皮膚に接触する鎮痛薬貯蔵物6表面に位置する鎮痛薬速度制御手段8(少なくとも皮膚に接触する鎮痛薬速度制御手段8表面は粘着性である)も含める。
【0046】
拮抗薬放出制御手段2は、本システムを人である患者に張り付けている期間が約7日以内の時には本システムから前記拮抗薬が実質的に放出されないようにし、皮膚が拮抗薬に接触することによる感作反応を実質的に最小限にしかつ本製剤が不正使用されようとする、例えば本システムが摂取されるか或は溶媒の中に実質的に浸漬される時などには前記拮抗薬を鎮痛薬放出速度に対する拮抗薬放出速度の比率が不正使用を制限するに充分な比率になるような速度で放出させる。このような拮抗薬放出制御手段2は、水/溶媒が拮抗薬貯蔵物の中に入り込む度合を加減し、従って当該拮抗薬の放出を加減するが不正使用中には拮抗薬を不正使用を制限するに充分な速度で放出させる手段である。そのような拮抗薬放出制御手段には、物理的手段、例えば膜、フィルム、コーティング、シート、付着物などが含まれ、それには、これらに限定するものでないが、速度制御用膜、多孔質もしくは微孔性膜、放出がパッチの縁によって制御される不透過性膜などが含まれる。そのような拮抗薬放出制御手段にはまた化学的手段も含まれ、浸透圧で追い出すか、濃度に依存するか、或は当該拮抗薬放出制御手段を構成している材料の大きさおよび特徴に依存するようにしてもよい。特定の態様では、そのような拮抗薬速度制御手段を当該拮抗薬貯蔵物の中に組み込んで、その放出速度が浸透圧破裂機構(Gale他が示した)で支配されるようにする。当該拮抗薬貯蔵物の中の拮抗薬の量、当該拮抗薬の粒子サイズ、拮抗薬塩の浸透
圧、および当該拮抗薬貯蔵物の重合体マトリックスが示す物理的特徴などの如き要因を用いて拮抗薬の放出速度を制御する。
【0047】
好適な態様における拮抗薬放出制御手段2は、偶発的に水分に接触した時には当該拮抗薬が拮抗薬貯蔵物から実質的に放出されないようにする材料を含んで成るモノリシック構造(monolithic)または多くの薄層から成る層であってもよい。詳細には、拮抗薬放出制御手段2はファブリック、多孔性、微孔性、スパンボンデッド(spun−bonded)、スパンレースド(spun laced)、トラックエッチド(track etched)または不透過性材料を含んで成る通気性もしくは閉塞性材料を含んで成るが、そのような材料にはポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリエステル、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、レーヨン(セルロースの溶液を微細な紡糸口金に通しそしてその結果として生じたフィラメントを固化させることで生じさせた合成織物用繊維)、ウッドパルプ、スパンレースドポリエステル、被覆されている紙製品、アルミニウムシートなどおよびこれらの組み合わせが含まれる。好適な態様における拮抗薬放出制御手段は低密度ポリエチレン(LDPE)材料、中密度ポリエチレン(MDPE)材料または高密度ポリエチレン(HDPE)材料などを含んで成る。好適な態様における放出制御手段はLDPEの単層である。好適な追加的態様における拮抗薬放出制御手段はSolupor微孔性超高密度ポリエチレン(UHDPE)材料/フィルム[DSM
Desotech(デンマーク)が製造しているSolupor(商標)]、微孔性ポリプロピレン[Celgard,Inc.(Charlotte、NC)が製造しているCelgard(商標)フィルム]、RoTerac Polyester Capillary Pore Membranes[OYPHEN GmbH(ドイツ)]、スパンレースドポリエステル、ポリプロピレンまたはポリエチレンから成る群から選択される微孔性層を含んで成る。以下により詳細に考察するように、そのような微孔性層に界面活性剤、例えばPluracareポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイドブロック共重合体(BASF、Wyandotte、MI)または親水性重合体、例えばポリビニルピロリドンなどによるさらなる修飾を受けさせることで、拮抗薬放出を追加的に制御してもよい。
【0048】
そのような拮抗薬放出制御手段に持たせる厚みは約0.012mm(0.5ミル)から約0.125mm(5ミル)、好適には0.025mm(1ミル)から約0.1mm(4ミル)、より好適には0.0375mm(1.5ミル)から約0.0875mm(3.5ミル)、更により好適には0.05mm(2ミル)から約0.0625mm(2.5ミル)である。
【0049】
本発明に従う経皮鎮痛薬システムは拮抗薬貯蔵物3を含んで成るが、皮膚から遠位の拮抗薬貯蔵物表面を拮抗薬放出制御手段2の上に位置させる。この拮抗薬貯蔵物の大きさは本パッチの他の層の大きさと同じであってもよいか、或はダイカットパッチ(die cut patch)の縁から拮抗薬を挿入することも可能である。そのような拮抗薬貯蔵物3は本技術分野で公知の如き標準的な材料で構成可能である。例えば、そのような拮抗薬貯蔵物を疎水性、親油性および/または非極性重合体材料、例えばエチレンオクテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、スチレンのブロック共重合体である熱可塑性弾性重合体などで構成させる。好適な態様では、以下により詳細に記述するように、拮抗薬貯蔵物3をEVA、エチレンオクテン共重合体で構成させる。
【0050】
この上で考察したように、拮抗薬貯蔵物3に、本経皮鎮痛薬システムが推奨通り用いられた時および/または水(例えば汗、シャワー、高湿度など)に偶発的に接触した時には
実質的に放出されないが鎮痛薬システムが不正使用された時、即ち摂取されたか或は溶媒に実質的に浸漬された時にはこの鎮痛薬システムから放出され得る拮抗薬を含有させる。好適には、そのような拮抗薬を、これが本発明の経皮鎮痛薬システムを張り付けるべき皮膚に実質的に浸透しない形態で存在させる。そのような拮抗薬貯蔵物に含める拮抗薬を重合体の中に分散させるが、その拮抗薬は拮抗薬貯蔵物の重合体に実質的に不溶である。好適な態様では、そのような拮抗薬を塩、好適には塩基である拮抗薬の塩酸塩として存在させる。そのような拮抗薬が皮膚および重合体の中で示す溶解度が低いと下記のいくつかの利点が得られる:拮抗薬と鎮痛薬の間の望ましくない相互作用が実質的に最小限であること、経皮鎮痛薬システムの安定性/貯蔵寿命が向上すること、そして皮膚が拮抗薬に接触した時の感作反応が実質的に最小限であること。
【0051】
特定の態様では、そのような拮抗薬を、当該拮抗薬の放出を実質的に防止する重合体材料、好適には熱成形可能材料を含んで成るマトリックスの中に分散させるか、或はそのような拮抗薬をイオン性樹脂と一緒にして複合体を生じさせる。追加的態様では、そのような拮抗薬貯蔵物に多粒子形態の拮抗薬を含有させるが、各粒子を個別に前記拮抗薬の放出を実質的に防止する重合体材料(この重合体材料は好適には熱成形可能材料である)で覆っておく。追加的態様では、拮抗薬貯蔵物に当該拮抗薬で被覆されているビードを含有させるが、そのようなビードをガラスまたは不活性もしくは非溶解性の重合体で構成させてもよく、そして更に、その被覆しておいたビードを場合により当該拮抗薬の放出を実質的に防止する重合体材料(この重合体材料は好適には熱成形可能材料である)で被覆しておくか或はそれの中に分散させておいてもよい。そのような拮抗薬をナルトレキソン、メチルナルトレキソン、ナロキソン、ナルブフィン、ナロルフィン、ナロルフィンジニコチネート、ナルメフェン、ナジド、レバロルファン、シクロゾシンおよびこれらの薬学的に受け入れられる塩から成る群から選択する。そのような拮抗薬を好適には塩として存在させる。
【0052】
この上で考察したように、前記拮抗薬貯蔵物に含める拮抗薬を重合体の中に分散させる。そのような拮抗薬を好適にはこの拮抗薬の放出を実質的に防止する熱成形可能材料を含んで成るマトリックスの中に分散させる。別法として、そのような拮抗薬を多粒子形態で存在させて、各粒子を個別に前記拮抗薬の放出を実質的に防止する重合体材料で覆っておく。そのような拮抗薬の放出を実質的に防止する重合体材料は、好適には疎水性、即ち正常な使用中には当該拮抗薬の放出を実質的に防止し、溶媒(水分、例えば汗、シャワー中)に偶発的/不用意に接触している間に放出される拮抗薬の量を最小限にし、そして本製剤が不正使用されようとする、例えば摂取されるか或は溶媒の中に浸漬された時などでは当該拮抗薬を不正使用を制限する量で放出させる材料である。そのような重合体材料は、好適には、当該拮抗薬を固相状態で加工することを可能にしかつ当該拮抗薬の劣化を防止するように低融点の材料である。拮抗薬の放出を実質的に防止する重合体材料の例には、これらに限定するものでないが、ポリエチレン、ポリオクテン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリスチレン重合体および共重合体およびこれらの混合物、ポリスチレン共重合体、例えばスチレンのブロック共重合体(SIS、SBS、SEBS)など、エチレン共重合体、例えばポリエチレンオクテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレンアクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体などおよびこれらの組み合わせが含まれる。
【0053】
追加的態様では、そのような拮抗薬をイオン性樹脂と一緒にして複合体を生じさせる。イオン性樹脂の例には、これらに限定するものでないが、スルホン化ポリスチレン樹脂などが含まれる。好適には、そのような樹脂にスルホン酸官能性を含有させるが、それが塩基である拮抗薬で中和されると、その拮抗薬のスルホン酸塩が生じる。
【0054】
追加的態様における拮抗薬貯蔵物は当該拮抗薬で被覆されているビードを含んで成り、ここでは、そのような球またはビードをガラス、金属または不活性もしくは非溶解性重合体で構成させてもよく、そして更に、その被覆しておいたビードを場合によりこの上に記述したように当該拮抗薬の放出を実質的に防止する重合体材料で被覆するか或はその中に分散させてもよい。そのようなビードの形状も大きさも形態も任意であるが、好適には大きさを小さくし、好適には10ミクロン未満にする。不活性もしくは非溶解性重合体の例には、これらに限定するものでないが、ポリメタアクリル酸メチル、ポリカーボネートおよびポリスチレンが含まれる。
【0055】
拮抗薬貯蔵物3が含有する当該拮抗薬の量を本経皮鎮痛薬システムが不正使用された時に鎮痛薬が示す鎮痛および陶酔効果に対抗するに充分な量にする。そのような拮抗薬貯蔵物に含有させる拮抗薬の量を好適には約0.2から約15mg/cm2、より好適には拮抗薬の量を約0.6から約5mg/cm2、更により好適には拮抗薬の量を約0.75から約1.5mg/cm2にする。そのような拮抗薬貯蔵物に含有させる拮抗薬の量を好適には約20から約70重量%、より好適には拮抗薬の量を約40から約65重量%、更により好適には拮抗薬の量を約50から約60重量%、更により好適には拮抗薬の量を約52から約56重量%にする。好適な態様では、そのような拮抗薬を塩形態にし、好適な拮抗薬はナルトレキソン、メチルナルトレキソン、ナロキソン、ナルブフィン、ナロルフィン、ナロルフィンジニコチネート、ナルメフェン、ナジド、レバロルファンおよびシクロゾシンである。
【0056】
そのような拮抗薬は、好適には、拮抗薬貯蔵物3を構成する重合体に実質的に不溶である。拮抗薬貯蔵物3を構成する材料が当該拮抗薬を溶かす量は、特に、重合体組成物全体の約0重量%から約1重量%、より好適には重合体組成物全体の約0重量%から約0.8重量%、更により好適には重合体組成物全体の約0重量%から約0.5重量%である。そのような拮抗薬貯蔵物3に持たせる厚みは約0.0125mm(0.5ミル)から約0.1mm(4ミル)、好適には約0.015mm(0.6ミル)から約0.0875mm(3.5ミル)、より好適には0.025mm(1ミル)から約0.08mm(3.3ミル)、更により好適には約0.025mm(1ミル)から約0.075mm(3ミル)である。
【0057】
本発明に従う経皮鎮痛薬システムは不透過性バリヤー層4を含んで成るが、皮膚から遠位のバリヤー層4表面に拮抗薬貯蔵物3を位置させかつ皮膚に近位のバリヤー層4表面に鎮痛薬貯蔵物5を位置させる。そのようなバリヤー層4は当該拮抗薬も当該鎮痛薬も透過せず、水、アルコールおよび有機溶媒に不溶な材料を含んで成る。そのようなバリヤー層4は、ポリオレフィン積層物(Dow Chemical、Midland、MI)、アクリロニトリル共重合体フィルム(BAREX、BP Chemicals、Koln、ドイツ)、ポリエチレンナフタレン(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド、ポリウレタン、ポリエチレン、金属被覆フィルムおよびガラス被覆フィルム[このようなフィルムにはエチレン共重合体、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)およびこれらの組み合わせなどが含まれ得る]などの如き重合体を含んで成る。好適な態様におけるバリヤー層は、ポリウレタン、ポリエチレンおよびエチレン共重合体などの如き重合体と積層しているPETの如きポリエステルを含んで成る。好適な態様におけるバリヤー層は、エチレン共重合体、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)などと積層しているPETの如きポリエステルを含んで成る。多数の薄層から成る層としてのバリヤー層に持たせる厚みは約0.075mm(0.3ミル)から約0.125mm(5ミル)、好適には0.025mm(1ミル)から約0.1mm(4ミル)、より好適には0.0625mm(1.5ミル)から約0.0875mm(3.5ミル)、更により好適には0.025mm(1ミル)から約0.005mm(2ミル)である。好適なPET−PE積層物のポリエチレンもしくはEVA積層層は、拮抗薬貯蔵物と支持体の接着
力を向上させかつ拮抗薬貯蔵物が不正使用者によって本システムから容易には除去されないようにする働きをする。
【0058】
鎮痛薬貯蔵物5を皮膚から近位のバリヤー層4表面に位置させ、少なくとも皮膚に接触する鎮痛薬貯蔵物5表面6を粘着性にする。この鎮痛薬貯蔵物5を本技術分野で公知の如き標準的材料で構成させてもよい。例えば、疎水性および/または親油性重合体材料、例えば疎水性ポリウレタン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)などを用いて鎮痛薬貯蔵物を生じさせる。好適な態様では、薬学的に受け入れられる感圧接着剤、好適には以下により詳細に記述する如きポリアクリレートまたはスチレンのブロック共重合体が基になった接着剤などを用いて鎮痛薬貯蔵物5を生じさせる。好適な態様では、動粘度曲線の時間−温度重ね合わせ原理を用いてそのような感圧接着剤をいろいろな温度で測定した時にそれが25℃で示すゼロせん断粘度が1・109ポイズより高くなるようにする。このような要求は、接着剤が冷流れを起こし、それに相当して、本システムの縁の所では鎮痛薬と拮抗薬の交換が起こる度合が高いが、それを防止するに役立つ。
【0059】
本技術分野で公知の標準的な感圧接着剤を用いて粘着性のある鎮痛薬貯蔵物5または粘着性のあるコーティング9を生じさせる。感圧接着剤の例には、これらに限定するものでないが、ポリアクリレート、ポリシロキサン、ポリイソブチレン(PIB)、ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレンのブロック共重合体などが含まれる。スチレンのブロック共重合体が基になった接着剤の例には、これらに限定するものでないが、スチレン−イソプレン−スチレンのブロック共重合体(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレンの共重合体(SBS)、スチレン−エチレンブテン−スチレンの共重合体(SEBS)およびこれらのジブロック類似物が含まれる。
【0060】
アクリル系重合体(acrylic polymers)は、アクリル酸、アクリル酸アルキル、メタアクリレート、二次的な共重合性単量体または官能基を有する単量体を包含する群から選択される少なくとも2種以上の典型的な成分を含んで成る共重合体もしくはターポリマーで構成されている。単量体の例には、これらに限定するものでないが、アクリル酸、メタアクリル酸、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタアクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、メタアクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルブチル、メタアクリル酸2−エチルブチル、アクリル酸イソオクチル、メタアクリル酸イソオクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸デシル、メタアクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、メタアクリル酸ドデシル、アクリル酸トリデシル、メタアクリル酸トリデシル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、アクリロニトリル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタアクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸t−ブチルアミノエチル、メタアクリル酸t−ブチルアミノエチル、アクリル酸メトキシエチル、メタアクリル酸メトキシエチルなどが含まれる。本発明の実施で用いるに適した適切なアクリル系接着剤の追加的例がSatas、「Acrylic Adhesives」、Handbook of Pressure−Sensitive Adhesive Technology、第2版、396−456頁(D.Satas編集)、Van Nostrand Reinhold、ニューヨーク(1989)に記述されている。そのようなアクリル系接着剤は商業的に入手可能である(National Starch and Chemical Corporation、Bridgewater、NJ;Solutia、MA)。ポリアクリレートが基になった接着剤のさらなる例は下記の通りであり、それらを、National Starch(Product Bulletin、2000)が製造している製造番号として下記の如く識別する:87−4098、87−2287、87−4287、87−5216、87−2051、87−2052、87−2054、87−2196、87−9259、87−9261、87−2979、87−2510、87−2353、87−2100、87−28
52、87−2074、87−2258、87−9085、87−9301および87−5298。
【0061】
そのようなアクリル系重合体には架橋した重合体および架橋していない重合体が含まれる。公知の方法を用いてそのような重合体を架橋させることで所望の重合体を生じさせる。好適な態様における接着剤は、ガラス転移温度(Tg)が−10℃未満、より好適にはTgが約−20℃から約−35℃のポリアクリレート系接着剤である。任意の架橋反応を受けさせる前のポリアクリレート系接着剤が示す分子量は重量平均(MW)として表して一般に25,000から10,000,000、好適には50,000から約3,000,000、より好適には100,000から1,000,000の範囲である。架橋後のMWは、重合体化学の技術に関与する技術者に公知のように、無限に近づく。
【0062】
本経皮鎮痛薬システムは鎮痛薬貯蔵物を含んで成るが、この鎮痛薬貯蔵物は、鎮痛薬を包含する成分を飽和濃度以上か或は飽和濃度に等しいか或は飽和濃度未満の濃度で含んで成る。この上で考察したように、好適な態様における鎮痛薬貯蔵物5は、人に鎮痛を誘発して少なくとも3日間に渡って維持するに充分な量の鎮痛薬を含有していて未溶解成分を含まない単相重合体組成物を含んでなる。そのような鎮痛薬をフェンタニルおよびこれの類似物、例えばアルフェンタニル、カルフェンタニル、ロフェンタニル、レミフェンタニル、スフェンタニル、トレフェンタニルなどから成る群から選択する。好適な態様における鎮痛薬貯蔵物は、鎮痛薬を約0.05から約1.75mg/cm2、好適には鎮痛薬を約0.07から約1.50mg/cm2、好適には鎮痛薬を約0.08から約1.25mg/cm2、より好適には鎮痛薬を約0.09から約1.0mg/cm2、より好適には鎮痛薬を約0.1から約0.75mg/cm2、更により好適には鎮痛薬を約0.12から約0.5mg/cm2含んで成る。そのような鎮痛薬は以下に考察する如き形態の重合体形成貯蔵物(polymer forming reservoir)3に溶解すべきである。好適な態様における鎮痛薬は塩基形態であり、好適な鎮痛薬はフェンタニルまたはスフェンタニルである。特に好適な態様における鎮痛薬貯蔵物は、フェンタニルを約0.05から約1.75mg/cm2、好適にはフェンタニルを約0.07から約1.50mg/cm2、好適にはフェンタニルを約0.08から約1.25mg/cm2、より好適にはフェンタニルを約0.09から約1.0mg/cm2、より好適にはフェンタニルを約0.1から約0.75mg/cm2、更により好適にはフェンタニルを約0.12から約0.5mg/cm2含んで成り、この場合のフェンタニルは塩基形態でありかつ完全に溶解する。追加的に好適な態様における鎮痛薬貯蔵物は、スフェンタニルを約0.05から約1.75mg/cm2、好適にはスフェンタニルを約0.07から約1.50mg/cm2、好適にはスフェンタニルを約0.08から約1.25mg/cm2、より好適にはスフェンタニルを約0.09から約1.0mg/cm2、より好適にはスフェンタニルを約0.1から約0.75mg/cm2、更により好適にはスフェンタニルを約0.12から約0.5mg/cm2含んで成り、この場合のスフェンタニルは塩基形態でありかつ完全に溶解する。
【0063】
鎮痛薬貯蔵物5を形成する材料が当該鎮痛薬を溶かす度合は重合体組成物全体の約1重量%から約25重量%、好適には重合体組成物全体の約2重量%から約15重量%、より好適には重合体組成物全体の約4重量%から約12重量%、更により好適には重合体組成物全体の約6重量%から約10重量%である。この貯蔵物5に持たせる厚みは、粘着性コーティング9の有り無しに拘らず、約0.0125mm(0.5ミル)から約0.1mm(4ミル)、好適には約0.025mm(1ミル)から約0.0875mm(3.5ミル)、より好適には0.0375mm(1.5ミル)から約0.075mm(3ミル)、更により好適には約0.04mm(1.6ミル)から約0.05mm(2ミル)である。好適な態様における鎮痛薬はフェンタニル、好適には塩基形態のフェンタニルであり、この場合に貯蔵物5を形成する材料がフェンタニルを溶かす度合は重合体組成物全体の約1重
量%から約25重量%、好適には重合体組成物全体の約3重量%から約15重量%、より好適には重合体組成物全体の約5重量%から約12重量%、更により好適には重合体組成物全体の約7重量%から約10重量%である。この貯蔵物5に持たせる厚みは、粘着性コーティング9の有り無しに拘らず、約0.0125mm(0.5ミル)から約0.1mm(4ミル)、好適には約0.025mm(1ミル)から約0.075mm(3ミル)、より好適には0.0375mm(1.5ミル)から約0.0625mm(2.5ミル)、更により好適には約0.04mm(1.6ミル)から約0.05mm(2ミル)である。追加的に好適な態様における鎮痛薬はスフェンタニル、好適には塩基形態のスフェンタニルであり、この場合に貯蔵物5を形成する材料がスフェンタニルを溶かす度合は重合体組成物全体の約1重量%から約25重量%、好適には重合体組成物全体の約3重量%から約15重量%、より好適には重合体組成物全体の約5重量%から約12重量%、更により好適には重合体組成物全体の約7重量%から約10重量%である。この貯蔵物5に持たせる厚みは、粘着性コーティング9の有り無しに拘らず、約0.0125mm(0.5ミル)から約0.1mm(4ミル)、好適には約0.025mm(1ミル)から約0.075mm(3ミル)、より好適には0.0375mm(1.5ミル)から約0.0625mm(2.5ミル)、更により好適には約0.04mm(1.6ミル)から約0.05mm(2ミル)である。
【0064】
追加的態様では、鎮痛薬貯蔵物5に場合により追加的成分、例えば添加剤、透過促進剤、安定剤、染料、希釈剤、可塑剤、粘着付与剤、顔料、担体、不活性充填材、抗酸化剤、賦形剤、ゲル化剤、抗刺激剤、血管収縮薬、および経皮技術で一般に公知の他の材料などを含有させてもよいが、但しそのような材料を当該貯蔵物の中に飽和濃度未満の濃度で存在させることを条件とする。
【0065】
透過促進剤の例には、これらに限定するものでないが、グリセリンの脂肪酸エステル、例えばカプリン酸、カプリル酸、ドデシル、オレイン酸などのエステル;イソソルビド、スクロース、ポリエチレングリコールの脂肪酸エステル;カプロイルラクチリックアシッド(caproyl lactylic acid);ラウレス−2;ラウレス−2アセテート;ラウレス−2ベンゾエート;ラウレス−3カルボン酸;ラウレス−4;ラウレス−5カルボン酸;オレス−2;グリセリルピログルタメートオレエート;オレイン酸グリセリル;N−ラウロイルサルコシン;N−ミリストイルサルコシン;N−オクチル−2−ピロリドン;ラウラミノプロピオン酸;ポリプロピレングリコール−4−ラウレス−2;ポリプロピレングリコール−4−ラウレス−5ジメチルラウラミド;ラウラミドジエタノールアミン(DEA)が含まれる。好適な促進剤には、これらに限定するものでないが、ピログルタミン酸ラウリル(LP)、モノラウリン酸グリセリル(GML)、モノカプリル酸グリセリル、モノカプリン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル(GMO)およびソルビタンモノラウレートが含まれる。適切な透過促進剤の追加的例が例えば米国特許第5,785,991号、5,843,468号、5,882,676号および6,004,578号に記述されている。
【0066】
特定の態様では、前記鎮痛薬貯蔵物に、瞬間粘着性を低くし、粘度を高くしそして/またはマトリックス構造を粘り強くし得る希釈用材料、例えばポリメタアクリル酸メチルまたはポリメタアクリル酸ブチル(ICI Acrylicsが製造しているELVACITE、例えばELVACITE 1010、ELVACITE 1020、ELVACITE 20)、高分子量のアクリレート、即ち平均分子量が少なくとも500,000のアクリレートなどを含有させる。
【0067】
特定の態様、特にスチレンのブロック共重合体である接着システムを用いる態様では、そのような接着剤組成物が示す接着特性を向上させる目的で可塑剤または粘着付与剤を混合する。適切な粘着付与剤の例には、これらに限定するものでないが、脂肪族炭化水素、
芳香族炭化水素、水添エステル、ポリテルペン、水添ウッドレジン(wood resins)、粘着付与樹脂、例えばESCOREZ、石油化学原料のカチオン重合で作られた脂肪族炭化水素樹脂または石油化学原料の熱重合に続く水添で作られた脂肪族炭化水素樹脂、ロジンエステルである粘着付与剤など、鉱油およびこれらの組み合わせが含まれる。
【0068】
用いる粘着付与剤は前記重合体の混合物と相溶すべきである。例えばスチレンのブロック共重合体の場合、これをゴムと相溶し得る粘着付与樹脂、末端ブロックと相溶し得る樹脂、例えばポリメチルスチレンなど、または可塑剤、例えば鉱油などと一緒に配合してもよい。一般的には、そのような重合体の量を接着剤組成物全体の約5−50%にし、粘着付与剤の量を接着剤組成物全体の約30−85%にしそして鉱油の量を接着剤組成物全体の約2−40%にする。
【0069】
パッチ1に更に鎮痛薬速度制御手段8も含有させて、それを皮膚に接触する鎮痛薬貯蔵物6表面に位置させ、少なくともその皮膚に接触する鎮痛薬速度制御手段8表面を粘着性にする。そのような鎮痛薬速度制御手段8を重合体材料、例えばエチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレンとアクリル酸ブチルの共重合体、ポリイソブチレン(PIB)、ポリエチレン(PE)、例えば低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)など、およびこれらの組み合わせで構成させ、そのような重合体材料に可塑剤を含有させてもよい。好適な態様では、接着性アクリル系、シリコンまたはPIB材料を用いてそのような鎮痛薬速度制御手段を皮膚に接着させる。そのような鎮痛薬速度制御手段に持たせる厚みは約0.012mm(0.5ミル)から約0.125mm(5ミル)、好適には0.025mm(0.6ミル)から約0.1mm(4ミル)、より好適には0.0625mm(0.8ミル)から約0.0875mm(3.5ミル)である。
【0070】
パッチ1に更に剥離可能な保護層7も含める。このような保護層7を重合体材料(場合により金属で被覆されていてもよい)で構成させる。そのような重合体材料の例には、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイミド、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、紙など、およびこれらの組み合わせが含まれる。好適な態様における保護層はシリコン被覆ポリエステルシートを含んで成る。
【0071】
ここに図5を参照して、本発明に従う経皮鎮痛薬システムの好適な態様はパッチ11、拮抗薬放出制御手段12、拮抗薬貯蔵物13(皮膚から遠位の拮抗薬貯蔵物表面が拮抗薬放出制御手段12の上に位置する)、不透過性バリヤー層14(皮膚から遠位のバリヤー層14表面の上に拮抗薬貯蔵物13が位置する)、不透過性バリヤー層14から生じさせたパウチ、鎮痛薬貯蔵物15、鎮痛薬速度制御手段18、および耐アミン性接触接着層(amine resistant contact adhesive layer)19(これを剥離可能な保護層17で覆う)を含んで成る。前記不透過性バリヤー層14の形態は、溶解および懸濁している鎮痛薬が中に入っているゲルの形態の鎮痛薬貯蔵物15が入る中心容積を与えるような形態である。本発明の好適な態様では図5に示す如き耐アミン性インライン(in−line)接着剤を用いるが、本システムを皮膚の上に維持するに適した他の手段を用いることも可能である。そのような手段には、鎮痛薬が本システムから皮膚に至る経路の外側に接着剤が備わっている周辺環(peripheral ring)が含まれ、この場合の接着剤は耐アミン性である必要はない。また、接着性オーバーレイ(overlays)または他の固定手段、例えばバックル、ベルトおよび弾性アームバンドなどの使用も考えられる。構成要素11、12、13、14、15、16、17、18および19は、図1−4に示した相当する構成要素で用いた材料に類似した材料で作られていてもよいが、鎮痛薬貯蔵物15には水性および非水性両方のシステムが含まれ、これは好適にはアクリル系、シリコンまたはポリイソブチレンが基になった材料であり、これに可塑剤を含有させてもよくかつ透過促進剤を含有させてもよく、それの中に
当該鎮痛薬を溶解または分散させる。図5に示した経皮鎮痛薬システムのバリヤー13、鎮痛薬貯蔵物15および鎮痛薬速度制御手段の一般的構成は米国特許第4,588,580号(これは引用することによって本明細書に組み入れられる)に記述した通りである。
【0072】
本発明に従う経皮鎮痛薬システムに含めるいろいろな層を加工する時に用いることができる幅広く多様な材料をこの上に記述してきた。従って、本発明は、本明細書に具体的に開示した材料以外の材料を用いることも意図し、それらには、必要な機能を果たし得ることが本技術分野で後に知られるようになる可能性のある材料が含まれる。
【0073】
薬剤の投与
本発明は、経皮鎮痛薬システムを皮膚に付着させた時に鎮痛薬が示す治療または有益な効果を減ずることなく不正使用される可能性を低くした経皮鎮痛薬システムを提供するものである。この上で考察したように、本経皮鎮痛薬システムは、本システムを推奨通り使用しそして/または偶発的に水に接触した時には実質的に放出されないが本鎮痛薬システムが不正使用、即ち摂取されるか或は溶媒の中に実質的に浸漬された時にはシステムから放出される形態の拮抗薬を含んで成る。詳細には、本発明のシステムは、本製剤が不正使用されようとする時には鎮痛薬放出速度に対する拮抗薬放出速度の比率が不正使用を制限するに充分な比率になるような速度で前記拮抗薬を制御して放出させるシステムである。本経皮鎮痛薬システムでは、このシステムを人である患者に張り付けている期間が約7日以内の時にはこのシステムから前記拮抗薬が実質的に放出されることはない。追加的に、本発明のシステムでは、本製剤が不正使用されようとする時、例えば本明細書の以下により詳細に記述するように本システムが摂取されるか或は溶媒の中に実質的に浸漬された時には鎮痛薬放出速度に対する拮抗薬放出速度の比率が不正使用を制限するに充分な比率になるような速度で前記拮抗薬を放出させる。
【0074】
本経皮システム(1、11)を皮膚に付着させると鎮痛薬貯蔵物(5、15)の中の鎮痛薬が拡散して皮膚の中に入り込んで血流の中に吸収されることで全身的な鎮痛効果がもたらされる。鎮痛の開始はいろいろな要因、例えば当該鎮痛薬の効力、当該鎮痛薬が皮膚の中で示す溶解度および拡散性、皮膚の厚み、皮膚付着部位の中の当該鎮痛薬の濃度、鎮痛薬貯蔵物の中の鎮痛薬濃度などに依存する(例えばフェンタニルおよびこれの類似物が示す相対的浸透性および効力の考察に関しては米国特許第4,588,580号を参照)。同時係属中の国際出願番号WO 200274286(これは引用することによって全体が本明細書に組み入れられる)に記述したように、本経皮鎮痛薬システムの大きさの上限を確立しそして逆に使用可能な投与率の下限を確立する時にはまた皮膚付着部位の中の当該鎮痛薬の濃度も重要である。
【0075】
鎮痛の継続が望まれる時には消耗した経皮鎮痛薬システムを取り外して新しいシステムを新しい場所に付着させる。例えば、慢性的痛みを和らげる目的で投与期間が終了した時点で本経皮鎮痛薬システムを順次取り外しそして新しいシステムに置き換えてもよい。鎮痛薬が新しい経皮鎮痛薬システムから新しい付着領域の中に吸収される速度は一般に経皮鎮痛薬システムを以前に付着させた部位の中に残存する鎮痛薬を体が吸収する速度と実質的に同じであることから、血液の濃度は実質的に一定のままである。加うるに、用量を経時的に多くしてもよくかつ抑えきれない痛みに対処する目的で他の鎮痛薬を同時に用いてもよいことも意図する。
【0076】
好適な態様において、本発明は、約3.3から約82.5ng/ml・(mg/時)、好適には約6.6から約50ng/ml・(mg/時)、より好適には約13から約40ng/ml・(mg/時)、更により好適には約20から約35ng/ml・(mg/時)の範囲の正規化Cmaxを示しかつ約0.001から約0.2ng/ml・cm2、好適には約0.005から約0.15ng/ml・cm2、より好適には約0.008から
約0.1ng/ml・cm2、更により好適には約0.01から約0.08ng/ml・cm2の範囲の標準化Cmaxを示す経皮鎮痛薬システムを提供する。本経皮鎮痛薬システムは、約0.5から約150cm2、好適には約2から約100cm2、より好適には約4から約50cm2、更により好適には約10から約20cm2の経皮鎮痛薬システムを構成するものである。本経皮鎮痛薬システムを皮膚の上に投与した時、これは約0.1から約20μg/時・cm2、好適には約0.75から約10μg/時・cm2、好適には約1から約8μg/時・cm2、より好適には約1.5から約5μg/時・cm2、より好適には約2から約3μg/時・cm2、更により好適には約1から約2.5μg/時・cm2の定常状態鎮痛薬流出速度(steady state analgesic flux)を示す。本発明に従って得ることができる定常状態投与速度(steady−state administration rates)は約0.1から約500μg/時、好適には約1から約300μg/時、より好適には約2から約250μg/時、更により好適には約5から約200μg/時の範囲である。
【0077】
追加的に好適な態様において、本発明は、約3.3から約82.5ng/ml・(mg/時)、好適には約10から約62ng/ml・(mg/時)、より好適には約16から約41ng/ml・(mg/時)、更により好適には約20から約35ng/ml・(mg/時)の範囲の正規化Cmaxを示しかつ約0.01から約0.2ng/ml・cm2、好適には約0.02から約0.15ng/ml・cm2、より好適には約0.03から約0.1ng/ml・cm2、更により好適には約0.04から約0.08ng/ml・cm2の範囲の標準化Cmaxを示す経皮フェンタニルシステムを提供する。本経皮フェンタニルシステムは、約1から約150cm2、好適には約2から約125cm2、より好適には約4から約100cm2、より好適には約5から約75cm2、更により好適には約5から約50cm2である。本経皮フェンタニルシステムを皮膚の上に投与した時、これは約1から約10μg/時・cm2、好適には約1.5から約8μg/時・cm2、より好適には約2から約5μg/時・cm2、更により好適には約2から約3μg/時・cm2の定常状態鎮痛薬流出速度を示す。本発明に従う経皮フェンタニルシステムに関して得ることができる定常状態投与速度は約1から約300μg/時、好適には約2から約250μg/時、より好適には約5から約200μg/時の範囲である。
【0078】
追加的に好適な態様において、本発明は、約0.04から約10ng/ml・(mg/時)、好適には約1から約8ng/ml・(mg/時)、より好適には約2から約5.5ng/ml・(mg/時)、更により好適には約2.5から約5ng/ml・(mg/時)の範囲の正規化Cmaxを示しかつ約0.001から約0.05ng/ml・cm2、好適には約0.005から約0.04ng/ml・cm2、より好適には約0.0075から約0.025ng/ml・cm2、更により好適には約0.01から約0.02ng/ml・cm2の範囲の標準化Cmaxを示す経皮スフェンタニルシステムを提供する。本経皮スフェンタニルシステムは、約0.5から約40cm2、好適には約1から約35cm2、より好適には約2から約30cm2の経皮鎮痛薬システムを構成する。本経皮スフェンタニルシステムを皮膚の上に投与した時、これは約0.1から約10μg/時・cm2、好適には約0.5から約8μg/時・cm2、より好適には約0.75から約6μg/時・cm2、より好適には約1から約5μg/時・cm2、更により好適には約1から約2.5μg/時・cm2の定常状態鎮痛薬流出速度を示す。本発明に従うスフェンタニルシステムに関して得ることができる定常状態投与速度は約0.1から約200μg/時、好適には約0.25から約150μg/時、より好適には約0.5から約100μg/時、より好適には約0.75から約50μg/時、更により好適には約1から約40μg/時の範囲である。
【0079】
投与維持期間を少なくとも3日間から7日以内にするが、3−4日間の投薬計画が好適であると見なす。好適な態様において、本システムを使用している最初のほぼ24時間の
間にそれに入っている鎮痛薬総量の少なくとも3%から40%以下の量の鎮痛薬が投与され、使用している最初のほぼ48時間の間に投与される量は鎮痛薬総量の少なくとも6%から50%以下でありそして投与期間の間に投与される量は鎮痛薬総量の少なくとも10%から75%以下である。好適な態様における経皮鎮痛薬システムはフェンタニルシステムであり、この場合には、本システムを使用している最初のほぼ24時間の間にそれに入っている鎮痛薬総量の少なくとも5%から40%以下の量の鎮痛薬が投与され、使用している最初のほぼ48時間の間に投与される量は鎮痛薬総量の少なくとも15%から50%以下でありそして投与期間の間に投与される量は鎮痛薬総量の少なくとも25%から75%以下である。好適な態様における経皮鎮痛薬システムはスフェンタニルシステムであり、この場合には、本システムを使用している最初のほぼ24時間の間にそれに入っている鎮痛薬総量の少なくとも3%から40%以下の量の鎮痛薬が投与され、使用している最初のほぼ48時間の間に投与される量は鎮痛薬総量の少なくとも6%から50%以下でありそして投与期間の間に投与される量は鎮痛薬総量の少なくとも10%から75%以下である。
【0080】
この上で考察したように、本発明の経皮鎮痛薬システムは、本製剤が不正使用されようとする時、例えば本システムが摂取されるか或は溶媒の中に実質的に浸漬された時などには鎮痛薬放出速度に対する拮抗薬放出速度の比率が不正使用を制限するに充分な比率になるような速度で前記拮抗薬を放出させるシステムである。これに関して、本発明の経皮鎮痛薬システムは、当該鎮痛薬が不正使用される状況の時には麻酔効果を遮断するに充分な速度で当該拮抗薬を放出させるシステムである。この上で考察しそして本実施例で説明するように、前記拮抗薬貯蔵物の中の拮抗薬濃度、拮抗薬塩の粒子サイズ、適切な拮抗薬放出速度制御手段の選択そして本経皮鎮痛薬システムを生じさせる時に必要な工程条件を変えることで、拮抗薬放出速度を調節する。「放出速度の比率」を本明細書で用いる場合、これは、適切な標準的技術を用いて測定した所定時間当たりの鎮痛薬放出速度に対する拮抗薬放出速度の比率を指す。これに関して、本発明は、本パッチが不正使用された時に放出される拮抗薬の量(即ち累積放出量)と本パッチが不正使用された時に放出される鎮痛薬の量(即ち累積放出量)の比率が約0.075:1から約30:1、約0.25:1から約20:1、約0.5:1から約16:1、約0.5:1から約14:1、約0.75:1から約12:1、約1:1から約10:1、約1.5:1から約8:1、約2:1から約6:1および約2:1から約4:1である経皮鎮痛薬システムを提供し、ここで、そのような不正使用の時間、例えば本システムが摂取されるか或は溶媒の中に実質的に浸漬される時間は約1分から約24時間であり、この放出は以下により詳細に記述するように標準化試験方法(例えばインビトロおよびインビボ抽出方法)が基になっている。そのような試験方法のいずれか1つが鎮痛薬放出速度に対する拮抗薬放出速度の比率が不正使用を制限する比率であることを満足させる場合、そのような放出速度の比率は不正使用を制限する比率であると言った要求を満足させると見なす。
【0081】
インビトロ抽出方法の例を以下の実施例により詳細に記述する。一般的には、経皮鎮痛薬システムを標準的な抽出用媒体/溶液の中に入れ、目標の温度になるまで平衡状態にして撹拌する。標準的な抽出用媒体の例には、これらに限定するものでないが、水性媒体、例えば蒸留水、塩溶液、pHを約1から14にするに適切な緩衝剤が入っている水性媒体(例えば燐酸塩緩衝剤が入っている水性媒体のpHは6.5である)、唾液に類似した水性媒体など、有機溶媒、例えばアルコール(例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなど)、ジメチルフラン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、エーテル、アセトン、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ペンタン、ジメチルホルムアミド、ホルムアルデヒド、酢酸エチル、メチルエチルケトンなど、そして通常の家庭用材料、例えばマニキュア除光液、消毒用アルコール、グリセリン、ミネラルスピリット、テレピン油、ウォッカ、調理用油、ビネガー、ガソリン、ケロセン、ドライクリーニング液など、およびこれらの混合物が含まれる。そのような媒体の体積を当該鎮痛薬および拮抗薬の溶解
度限界未満に調整する。その抽出の温度は周囲温度から沸点に近い温度、例えば25℃、50℃および75℃などの範囲内で多様であり得る。いろいろな時点、例えば0、2、5、15、60および120分の時に抽出用媒体を一定分量で取り出して、相当する未使用の抽出用媒体で希釈する。サンプルをHPLCにかけて拮抗薬含有量および鎮痛薬含有量を評価する。そのような試験方法のいずれか1つが上述した抽出用媒体/溶液の中で鎮痛薬放出速度に対する拮抗薬放出速度の比率が不正使用を制限する比率であることを満足させるならば、そのような放出速度の比率は不正使用を制限する比率であると言った要求を満足させると見なす。
【0082】
インビボ抽出方法の例を以下の実施例により詳細に記述する。一般的には、経皮鎮痛薬システムを動物、例えばマウス、ラット、ブタ、ネコ、イヌ、霊長類(サル)、ヒトなどの口腔の中に前以て決めておいた時間、例えば1分から約2時間入れておく。この試験時間が終了した時点で経皮鎮痛薬システムを口腔から取り出して空気で乾燥させる。この経皮鎮痛薬システムに標準的な抽出手順に続いて逆相HPLC分析を受けさせることで、それを残存鎮痛薬含有量および残存拮抗薬含有量に関して分析する。
【0083】
特定の面では、前記拮抗薬放出制御手段に膜選択または界面活性剤修飾を受けさせることで拮抗薬が燐酸塩緩衝媒体の中に放出される速度を調節する。一般的には、ポリエチレンフィルムを用いた時の拮抗薬放出速度が最も低くそしてCelgard膜を用いた時の拮抗薬放出速度が最も高い。鎮痛薬がフェンタニルであり、拮抗薬がナルトレキソンでありそして拮抗薬放出制御手段がPluronic修飾Solupor材料を含んで成る経皮鎮痛薬システムの場合のナルトレキソン放出速度とフェンタニル放出速度の比率は少なくとも2:1である。鎮痛薬がスフェンタニルである経皮鎮痛薬システムでは、スフェンタニルの効力の方が高いことから拮抗薬の放出速度をより高くする必要がある。そのように速度をより速くしようとする場合、拮抗薬放出制御手段を適切に選択、例えばCelgard 3501の使用、いろいろな不織材料の使用そして拮抗薬貯蔵物を露出させることなどで速くすることができ、その場合、拮抗薬貯蔵物の中の拮抗薬の量および拮抗薬の粒子サイズを用いて放出速度を調節する。
【0084】
本発明は、追加的面において、使用中に投与される拮抗薬の量と使用中に投与される鎮痛薬の量の比率が使用する鎮痛薬および拮抗薬、拮抗薬貯蔵物の中の拮抗薬の濃度および拮抗薬放出制御手段の選択に応じて1:1000より高い、好適には1:10,0000より高い経皮鎮痛薬システムを提供する。本発明は、追加的面において、使用中に投与される拮抗薬の量が投与して168時間後に0.1%以下である経皮鎮痛薬システムを提供する。本経皮鎮痛薬システムが不正使用された時に放出される拮抗薬の量は、好適には、不正使用の行動が成されて1、2、4、8または24時間後に70%以上である。
【0085】
本発明の好適な態様は、DURAGESIC(商標)フェンタニルシステムと生物学的に同等な経皮鎮痛薬システムである。詳細には、本発明に従うモノリス型フェンタニルシステムは、DURAGESIC(商標)経皮フェンタニルシステムと比較して、それらに試験を本明細書の以下により詳細に記述するように同様な実験条件下で受けさせた時、実質的に同じ薬物動態学的効果[血液、血漿もしくは血清薬剤濃度−時間曲線(AUC)の下の面積および薬剤のピーク血漿もしくは血清濃度(Cmax)で測定した時]をもたらす。
【0086】
好適な追加的態様において、本発明の経皮鎮痛薬システムはDURAGESIC(商標)フェンタニルシステムと薬理学的的に同等である。詳細には、本発明に従うモノリス型スフェンタニルシステムは、DURAGESIC(商標)経皮フェンタニルシステムと比較して、それらに試験を本明細書の以下により詳細に記述するように同様な実験条件下で受けさせた時、実質的に同じ治療効果をもたらす。
【0087】
標準的な生物学的同等研究を一般に少人数の志願者、通常は24から36人の健康で正常な成人による交差様式で実施する。試験製品を含有させた薬剤、例えば本発明に従う経皮フェンタニルシステムおよび基準製品、例えばDURAGESIC(商標)/DUROGESIC(商標)フェンタニルシステムなどを単一用量で投与して、当該薬剤の血液、血漿もしくは血清濃度を経時的に測定する。本明細書の以下により詳細に記述する如き統計学的方法を用いて、そのような濃度−時間曲線の特徴、例えば血液、血漿もしくは血清薬剤濃度−時間曲線(AUC)下の面積および薬剤のピーク血液、血漿もしくは血清濃度(Cmax)を検査する。一般的には、生物学的同等研究による対数変換パラメーター(log−transformed parameter)(AUCおよびCmax)を用いて2種類の片側統計的検定(one−sided statistical tests)を実施する。そのような2種類の片側検定を0.05レベルの有意さで実施して90%信頼区間を計算する。薬物動態学的パラメーターの平均(試験/基準製品)値の比率に関する信頼区間の下限が80%以上で上限が125%以下ならば試験と基準構成/組成物は生物学的に同等であると見なす。
【0088】
異なる2種類の製品に検定を同様な実験条件下で受けさせた時に、この上に記述した如き数種のインビボおよびインビトロ方法で立証されるように、それらが実質的に同じ治療効果をもたらすならば、それらは一般に「薬理学的に同等」であると見なす。治療効果は、本明細書の以下により詳細に記述するように、いろいろな要因、例えば当該薬剤の効力、当該薬剤が皮膚の中で示す溶解性および拡散性、皮膚の厚み、皮膚投与部位の中の薬剤濃度、薬剤貯蔵物の中の薬剤濃度などに依存する。一般的には、投与した薬剤の率に関して正規化した当該薬剤のピーク血液、血漿もしくは血清濃度(即ち、この上に定義した如き正規化Cmax)および当該システムの活性薬剤搬送領域の単位面積当たりに対して標準化した当該薬剤のピーク血液、血漿もしくは血清濃度(即ち、この上に定義した如き標準化Cmax)などの如き測定値を用いて、薬理学的同等を立証する。
【0089】
薬剤投与率が当該経皮鎮痛薬システムの大きさに比例する異なる2種類の製品を比較する時、当該薬剤のピーク血液、血漿もしくは血清濃度(Cmax)を投与した薬剤の率に関して正規化するか或は当該システムの活性薬剤搬送領域の単位面積当たりに標準化した時に差がないならば、生物学的同等または薬理学的同等を確定する。しかしながら、単位面積当たりの薬剤投与率が異なる2種類の異なる生成物を比較する時には、当該薬剤のピーク血液、血漿もしくは血清濃度(Cmax)を投与した薬剤の率を基準にして正規化することで生物学的同等または薬理学的同等を確定する必要がある。
【0090】
製造方法
本経皮鎮痛薬システムの製造は下記の通りである。以下により詳細に記述するように、公知の方法論に従って拮抗薬貯蔵物および鎮痛薬貯蔵物を製造する。
【0091】
拮抗薬貯蔵物
シグマブレードミキサー(sigma blade mixers)または押出し加工機の如き装置をバッチ式または連続式のいずれかで用いて拮抗薬、好適には拮抗薬塩と重合体材料、好適には熱成形可能材料を高せん断および高温で乾式混合することで、拮抗薬貯蔵物を生じさせることができる。その押出し加工品をカレンダー加工することで剥離用ライナー(release liners)の間の厚みを所望の厚みにした後、高温でバリヤーフィルムおよび/または鎮痛薬速度制御手段に積層させる。
【0092】
半連続方法の場合には、重合体材料[例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体(VAが28重量%)]を連続コニーダーまたは2軸押出し加工機(Coperion Buss Kneader、Stuttgart、ドイツ)に備わっている1つのフィーダーホッパ
ーに1時間当たり約50ポンドの添加速度で添加する。2番目のホッパーに拮抗薬、好適には拮抗薬塩(例えば塩酸ナルトレキソン二水化物)を1時間当たり58.7ポンドの添加速度で添加する。前記押出し加工機を押出し加工品が1分当たり約1ポンドの一定生産速度で生産されるように操作する。前記押出し加工機から出た後の重合体−薬剤混合物をカレンダー加工することでバリヤー層(例えばポリエステル/EVA)と剥離用ライナー(シリコン被覆ポリエステルフィルム)の間の厚みを所望の厚み[約0.03mm(1.2ミル)]にする。その3層構造物を巻き上げロールに巻き取って、それにさらなる加工を受けさせる。
【0093】
本明細書の以下に示す実施例に示すように、拮抗薬の充填率、拮抗薬貯蔵物の厚み、鎮痛薬速度制御手段の膜選択および鎮痛薬速度制御手段の界面活性剤修飾の如きパラメーターをいろいろな不正使用状況に適するように変えることで、鎮痛薬放出速度に対する拮抗薬放出速度の目標を達成することができる。好適な態様では、ディップコーティング、グラビアコーティングなどの如き技術を用いて、鎮痛薬速度制御手段を形成する膜材料の上を界面活性剤で覆う。
【0094】
鎮痛薬貯蔵物
公知の方法論に従って経皮鎮痛薬システムを製造する。この上に記述したようにして、重合体である鎮痛薬貯蔵物材料の溶液をダブルプラネタリーミキサー(double planetary mixer)に加えた後、鎮痛薬、好適にはフェンタニル、より好適にはフェンタニル塩基および場合により透過促進剤を所望量で加える。そのような重合体である鎮痛薬貯蔵物材料は好適には粘着性重合体であり、これを有機溶媒、例えばエタノール、酢酸エチル、ヘキサンなどに溶解させる。次に、前記ミキサーを密封した後、ある時間作動させることで、前記材料の満足される均一性を達成する。前記ミキサーをコネクター手段でキャスティング/フィルム乾燥ラインの末端に位置する適切なキャスティングダイス(casting die)に取り付ける。窒素を用いて前記ミキサーを加圧することで溶液を前記キャスティングダイスに送り込む。溶液が湿った状態のフィルムとして動いているシリコン被覆ポリエステルウエブ(web)の上に流し込まれる。そのウエブをラインに通して引き伸ばしそして1組のオーブンを用いてキャスティング用溶媒を残存物が満足される範囲になるまで蒸発させる。次に、その乾燥させた鎮痛薬貯蔵物フィルムを選択したバリヤーに積層させた後、その積層品を巻き上げロールに巻き取る。別の方法では、本技術分野で公知の装置を用いた乾式混合そして熱フィルム成形を用いて鎮痛薬貯蔵物を成形することも可能である。好適には、前記材料を乾式混合し、スロットダイスを用いて押出し加工した後、カレンダー加工で適切な厚みにする。本明細書の以下に示す実施例に示すように、鎮痛薬の充填率、鎮痛薬貯蔵物の厚み、鎮痛薬の選択、材料の選択および製造方法の如きパラメーターを本発明の鎮痛薬貯蔵物の調製に適するように変えてもよい。
【0095】
経皮鎮痛薬システム
次の操作では、鎮痛薬貯蔵物含有中間体と拮抗薬貯蔵物含有中間体を積層させた後、個々の経皮システムをダイスで切断し、分離した後、適切なパウチストック(pouchstock)を用いて単位包装する(unit−packaged)。前記鎮痛薬貯蔵物含有中間体を乾燥させた直後に前記拮抗薬貯蔵物含有中間体を積層してもよい。通常の装置を用いて経皮鎮痛薬システムを箱詰めする。
【0096】
本発明を実施する具体的な態様の例を以下に示す。本実施例は単に説明の目的で示すものであり、決して本発明の範囲を限定することを意図するものでない。
【0097】
用いる数値(例えば量、温度など)に関して正確さを確保する試みを行いはしたが、勿論、いくらかの実験誤差および逸脱は許されるはずである。
【0098】
本明細書の以下に挙げる実施例では、フェンタニルおよびこれの類似物を長期間に渡って投与することを可能にする本発明のいろいろな経皮鎮痛薬システムの具体例を記述する。本経皮鎮痛薬システムは鎮痛薬貯蔵物を含んで成り、この鎮痛薬貯蔵物は鎮痛薬を飽和濃度以上、同等または以下の濃度で含んで成る。我々の発明に従い、鎮痛薬貯蔵物がフェンタニルを飽和濃度以下の量で含有していて未溶解成分を含まない単相構成物を構成している接着性鎮痛薬貯蔵物システムが現在のところ好適であると考えている。以下の実施例に示すパーセントは全部特に明記しない限り重量パーセントである。
【実施例1】
【0099】
フェンタニル塩基を1.5mg/cm2含有するように図1に従うモノリス型経皮鎮痛薬貯蔵物を調製した。ポリアクリレート系接着剤(National Starch 87−2287、100g)を溶媒(酢酸エチル、128ml)に溶解させた。フェンタニル塩基を前記ポリアクリレート系接着剤溶液にフェンタニルが接着剤溶液に4重量%入っている混合物が生じるに充分な量で加えた後、撹拌することで、その鎮痛薬を溶解させた。この溶液を剥離可能な保護ライナー、例えばシリコン被覆ポリエステルフィルムなどの上に流し込んだ後、溶媒を蒸発させることで、貯蔵物層の厚みを0.05mm(2ミル)にした。
【0100】
この上に記述した如きポリアクリレート系接着剤(National Starch 87−4287、100g)を用いてモノリス型の経皮鎮痛薬貯蔵物を同様に調製した。
【実施例2】
【0101】
下記を除いて実施例1に記述したようにモノリス型経皮鎮痛薬貯蔵物を調製した。酢酸エチルを存在させないで材料を乾式混合し、スロットダイスを用いて押出し加工した後、カレンダー加工することで適切な厚みにした。
【実施例3】
【0102】
図1に従うモノリス型経皮鎮痛薬貯蔵物を下記の如く調製した。ポリアクリレート系接着剤(National Starch 87−2287、500g)とモノラウリン酸グリセリル(GML、10g)を溶媒(酢酸エチル、640ml)に溶解させた。フェンタニル塩基を前記ポリアクリレート系接着剤溶液にフェンタニルが接着剤溶液に4重量%入っている混合物が生じるに充分な量で加えた後、撹拌することで、その鎮痛薬を溶解させた。この溶液を剥離可能な保護ライナー、例えばシリコン被覆ポリエステルフィルムなどの上に流し込んだ後、溶媒を蒸発させることで、貯蔵物層の厚みを0.045mm(1.8ミル)にした。この鎮痛薬経皮システムはフェンタニル塩基を0.35mg/cm2含有していた。
【0103】
この上に記述した如きポリアクリレート系接着剤(National Starch 87−4287、100g)を用いてモノリス型の経皮鎮痛薬貯蔵物を同様に調製する。
【実施例4】
【0104】
下記を除いて実施例3に記述したようにモノリス型経皮鎮痛薬貯蔵物を調製した。酢酸エチルを存在させないで材料を乾式混合し、スロットダイスを用いて押出し加工した後、カレンダー加工することで適切な厚みにした。
【実施例5】
【0105】
この上の実施例1に記述したようにして、ポリアクリレート系接着剤(National Starch 87−4287)の中にスフェンタニルを2.54cm2当たりそれぞれ0.25、0.5、0.75、1.0および1.1mgづつ含有するモノリス型経皮
鎮痛薬貯蔵物を調製した。
【0106】
この上に記述した如きポリアクリレート系接着剤(National Starch 87−2287、100g)を用いてモノリス型の経皮鎮痛薬貯蔵物を同様に調製した。
【実施例6】
【0107】
実施例5に記述したようにして、2.54cm2当たりにスフェンタニルをそれぞれ0.25、0.5、0.75、1.0および1.1mg含有しかつ透過促進剤(1mg)(ピログルタミン酸ラウリル、グリセロールモノラウレート、グリセロールモノカプリレートおよびグリセロールモノカプロエートを包含)を含有するモノリス型経皮鎮痛薬貯蔵物を調製した。
【実施例7】
【0108】
この上の実施例1−6に記述した経皮鎮痛薬貯蔵物をPET/EVAバリヤー層のPET表面に積層(例えば図1に示すように)させることで、経皮鎮痛薬貯蔵物を含有する中間体を生じさせた。
【実施例8】
【0109】
この上の実施例1−6に記述した経皮鎮痛薬貯蔵物を接着性コーティングで被覆した後、PET/EVAバリヤー層のPET表面に積層(例えば図3に示すように)させることで、経皮鎮痛薬貯蔵物を含有する中間体を生じさせる。
【実施例9】
【0110】
この上の実施例1−6に記述した経皮鎮痛薬貯蔵物を鎮痛薬速度制御膜に積層させた後、PET/EVAバリヤー層のPET表面に積層(例えば図2に示すように)させることで、経皮鎮痛薬貯蔵物を含有する中間体を生じさせる。
【実施例10】
【0111】
この上の実施例1−6に記述した経皮鎮痛薬貯蔵物を鎮痛薬速度制御膜に積層させる。皮膚に近位の鎮痛薬速度制御膜表面を接着性コーティングで被覆した後、PET/EVAバリヤー層のPET表面に積層(例えば図4に示すように)させることで、経皮鎮痛薬貯蔵物を含有する中間体を生じさせた。
【実施例11】
【0112】
拮抗薬貯蔵物含有中間体の調製を下記の如く行った。熱成形可能重合体(460g)、例えばEngage(商標)エチレン−オクテン共重合体(DuPont−Dow Elastomers、Midland、MI)などを高トルクブレンダーのボウルの中に入れた。前記ボウルを加熱(150℃)して、前記重合体のペレットをこの重合体のペレットが充分に素練りされて溶融した塊が生じるまで混合した(10分間)。この混合用ボウルに拮抗薬(塩酸ナルトレキソンUSP、540g)を加えた後、この混合物を約30分間混合した。この重合体溶融物を前記混合用ボウルから取り出した後、2枚の動いているウエブ、即ち上方の0.05mm(2ミル)のポリエステル/EVAフィルム層(EVA側が溶融物の方に向く)と下方の0.075mm(3ミル)のシリコン被覆ポリエステルフィルム層の間に押出した。この3層フィルム構造物をカレンダーロールに通すことで、バリヤー層の上に位置する拮抗薬貯蔵物の大きさを約0.025mm(1ミル)の厚みに合わせた。その動いているウエブを押出し加工ラインの終点でロール形態で巻き取った。
【0113】
前記ラインに通す2番目のパスで、前記シリコン被覆インターリービング(interleaving)を剥がした後、そのようにして露出させた拮抗薬貯蔵物に微孔性ポリエチレンフィルム(SOLUPOR、DSM Solutech、Heerlan、オラン
ダ)をカレンダーを用いて熱で積層させた。そのような微孔性膜は最終的な経皮鎮痛薬システムの拮抗薬放出制御手段になる。その結果として生じた構造物を拮抗薬放出制御手段もしくは層の上に位置する拮抗薬貯蔵物を含んで成る中間体生成物としてロールの形態で巻き取った。
【0114】
この上に記述した拮抗薬貯蔵物含有中間体をこの上の実施例1−6に記述した鎮痛薬含有接着性フィルムにこれが乾燥用オーブンを出た時点で積層させることで、下記の6層を有するフィルム積層品を得た:剥離可能ライナー、鎮痛薬貯蔵物、場合により含める速度制御用膜、バリヤー層(ポリエステル、EVA)、拮抗薬貯蔵物(ポリエチレンオクテン−ナルトレキソンHCl)および拮抗薬放出制御手段(微孔性ポリエチレン)。このフィルム全体の厚みは約0.2mm(8ミル)であった。
【0115】
この6層フィルムをダイスで切断して鎮痛薬搬送面積が1cm2から44cm2に相当する個々の経皮鎮痛薬システムを生じさせた。フェンタニル含有システムでは、最終的システムの中のフェンタニルとナルトレキソンの充填比を1:2にしたが、フェンタニル搬送速度(delivery rates)は当該システムの面積に応じて約12.5から約100μg/時であった。スフェンタニル含有システムでは、最終的システムの中のスフェンタニルとナルトレキソンの充填比を1:4−16にしたが、スフェンタニル搬送速度は当該システムの面積に応じて約1.5から約12μg/時であった。
【実施例12】
【0116】
拮抗薬貯蔵物含有中間体の調製を下記の如く行った。熱成形可能重合体(460g)、例えばEngage(商標)エチレン−オクテン共重合体(DuPont−Dow Elastomers、Midland、MI)などを高トルクブレンダーのボウルの中に入れた。前記ボウルを加熱(150℃)して、前記重合体のペレットをこの重合体のペレットが充分に素練りされて溶融した塊が生じるまで混合した(10分間)。この混合用ボウルに拮抗薬(塩酸ナルトレキソンUSP、540g)を加えた後、この混合物を約30分間混合した。この重合体溶融物を前記混合用ボウルから取り出した後、2枚の動いているウエブ、即ち上方の0.075mm(3ミル)のフルオロポリマー製剥離用ライナーフィルム層(フルオロカーボンジアクリレートで被覆されているポリエステルフィルム)と下方の0.075mm(3ミル)のシリコン被覆ポリエステルフィルム層の間に押出した。この3層フィルム構造物をカレンダーロールに通すことで、バリヤー層の上に位置する拮抗薬貯蔵物の大きさを約0.025mm(1ミル)の厚みに合わせた。その動いているウエブを押出し加工ラインの終点でロール形態で巻き取った。
【0117】
前記ラインに通す2番目のパスで、前記シリコン被覆インターリービングの一方を剥がした後、そのようにして露出させた拮抗薬貯蔵物に微孔性ポリエチレンフィルム(SoluPor、Solutech、デンマーク)をカレンダーを用いて熱で積層させた。そのような微孔性膜は最終的な経皮鎮痛薬システムの拮抗薬放出制御手段になる。その結果として生じた構造物を拮抗薬貯蔵物を含んで成る中間体生成物としてロールの形態で巻き取った。
【0118】
前記ラインに通す3番目のパスで、前記シリコン被覆インターリービングを剥がした後、そのようにして露出させた拮抗薬貯蔵物に接着性層をラミネーターを用いて積層させることで、下記の4層を有するフィルム積層品を生じさせた:接着性層、バリヤー層、拮抗薬貯蔵物(ポリエチレンオクテン−ナルトレキソンHCl)および拮抗薬放出制御手段(微孔性ポリエチレン)。この4層フィルムをダイスで切断して、面積が10、20、30および40cm2のフォームフィルシール(form fill seal)(FFS)システムに相当する個々の単位を生じさせた。
【0119】
鎮痛薬貯蔵物含有中間体の調製は下記の通りである。容器の中でフェンタニル塩基(1.4Kg)を精製水(5L、USP)に入れてスラリー状にした。40ガロンの圧力容器の中でエタノール(25Kg、USP)と水(65L、USP)を混合し、この溶液を撹拌しながら室温になるまで冷却した。このエタノール溶液に前記フェンタニルスラリーを加えたが、水(4L、USP)を用いて前記容器を定量的に濯いだ。別の容器内でヒドロキシエチルセルロース(2Kg、QP 100,000[HEC]NF)を水(4L)と一緒にしてスラリー状にした。40ガロンのミキサーを用いて前記フェンタニル混合物を混合しながらこれに前記ヒドロキシエチルセルローススラリーを加えた。残存するヒドロキシエチルセルロースを水(2L)で濯いで前記大型ミキサーの容器に加えた。この容器を即座に100サイクル/分で前記鎮痛薬貯蔵物混合物がゲル化するまで撹拌した。
【0120】
前記フェンタニルのゲルが入っている圧力容器をマルチノズルゲルプレースメントアレイ(multi−nozzle gel placement array)に取り付けて、これをBodolay Form−Fill−Sealing(FFS)機の上に置いた。フォームフィルシールシステムを構築する目的で用いる装置の上に保護ライナー(剥離可能PET−シリコンフィルム)と接着性層(接着性シリコンフィルム、1.57ミル)と鎮痛薬放出速度制御手段[EVAフィルム(VAが9%)、2ミル]で構成されている積層品を配置した。前記鎮痛薬貯蔵物を計量して前記保護ライナー/接着性層/鎮痛薬放出速度制御手段の上に前記ゲルが前記鎮痛薬放出速度制御手段に接触するように置いた。前記バリヤー層(PET/EVA)をこれが前記ゲルを覆うように配置した。前記バリヤー層のEVA成分が前記鎮痛薬放出制御膜と接触していた。このような構成物の周囲を熱で積層させることで、本システムの鎮痛薬部分を生じさせたが、これは縁が密封されたシステムを構成していて、貯蔵物ゲルをシステムの活性薬剤放出面積10cm2当たり245mg有していた。このフィルムをダイスで切断して鎮痛薬搬送面積が10から40cm2に相当する個々の単位を生じさせることで、鎮痛薬貯蔵物含有中間体を生じさせた。
【0121】
この鎮痛薬貯蔵物含有中間体のバリヤー層の上に前記拮抗薬貯蔵物含有中間体の接着性表面を積層させることで、フォームフィルシール(FFS)鎮痛薬貯蔵物を有する経皮鎮痛薬システムを生じさせた。
【0122】
フェンタニル含有システムでは、最終的システムの中のナルトレキソンに対するフェンタニルの充填比を0.5から4にしたが、フェンタニル搬送速度は当該システムの面積に応じて約12.5から約100μg/時であった。
【実施例13】
【0123】
実施例11に記述した拮抗薬貯蔵物含有中間体をこの上の実施例9および10に記述した鎮痛薬貯蔵物に積層させることで、下記の8層を有するフィルム積層品を生じさせた:剥離可能ライナー、接着性層、鎮痛薬速度制御膜、鎮痛薬貯蔵物(鎮痛薬−接着性層)、バリヤー層(ポリエステル、EVA)、拮抗薬貯蔵物(ポリエチレンオクテン−ナルトレキソンHCl)および拮抗薬放出制御手段(微孔性ポリエチレン)。
【0124】
この8層フィルムをダイスで切断して鎮痛薬搬送面積が5.5から44cm2に相当する個々の経皮鎮痛薬システムを生じさせた。フェンタニル含有システムでは、最終的システムの中のフェンタニルとナルトレキソンの充填比を1:2にしたが、フェンタニル搬送速度は当該システムの面積に応じて約12.5から約100μg/時であった。スフェンタニル含有システムでは、最終的システムの中のスフェンタニルとナルトレキソンの充填比を1:4−16にしたが、スフェンタニル搬送速度は当該システムの面積に応じて約1.5から約12μg/時であった。
【実施例14】
【0125】
熱成形可能重合体であるポリオレフィン弾性重合体(460g)、例えばEngage(商標)エチレン−オクテン共重合体(DuPont−Dow Elastomers、Midland、MI)などを塩酸ナルトレキソン二水化物(690g)と一緒に溶融状態(80−100℃)で約1.5から2.5時間混合した。この混合物を差別的剥離ライナー(differential release liners)の間に押出し、カレンダー加工して厚みを0.025mm(1ミル)にすることで、拮抗薬貯蔵物を生じさせた。この拮抗薬貯蔵物をPET−PEバリヤーフィルム(Mediflex 1203、Mylan、St.Albans、VT)のPE面に0−100℃、71psig、4フィート/分で積層させた。残存する剥離ライナーを剥がした後、前記バリヤー層を60℃、38psig、4フィート/分で積層した。この拮抗薬貯蔵物に拮抗薬放出速度制御手段、例えばSolupor 10P05A、Pluronic修飾Solupor、Celgard微孔性ポリプロピレン(Grades 3401および3501)、スパンボンデッドポリプロピレンおよびポリエチレンフィルムなどを60から90psigの範囲において4フィート/分で積層させた。
【0126】
この上に記述した拮抗薬貯蔵物含有中間体のPET表面をこの上の実施例1−6に記述した鎮痛薬含有接着性フィルムにこれが乾燥用オーブンを出た時点で24フィート/分、25℃、70psigで積層させた。ライナーからシステムを容易に剥がすことができるようにする目的で前記ライナーの代わりにスリット剥離ライナー(slit release liner)を用い、そしてそれをダイスで切断することで所望の寸法である5.5から44cm2にした。
【実施例15】
【0127】
熱成形可能重合体、例えばElvax(商標)210エチレン−酢酸ビニル共重合体(1.61Kg、酢酸ビニル28%、E.I.du Pont de Nemours、Wilmington、DE)などを塩酸ナルトレキソン二水化物(1.89Kg)と一緒に溶融状態(77−88℃)で約1.5から2.5時間混合した。この混合物を差別的剥離ライナーの間に押出し、カレンダー(0.031mm)加工で拮抗薬貯蔵物を生じさせた。この拮抗薬貯蔵物をPET−EVAバリヤーフィルム(Scotchpac 9733、3M、Minneapolis、MN)のEVA面に80−85℃、70−90psig、4−19フィート/分で積層させた。残存する剥離ライナーを剥がした後、前記拮抗薬貯蔵物に拮抗薬放出速度制御手段である微孔性ポリエチレン(例えばSolupor
10P05A、またはPluronic修飾Solupor)を80−85℃、50−54psig、4−24フィート/分で積層させた。
【0128】
この上に記述した拮抗薬貯蔵物含有中間体のPET面をこの上の実施例1−6に記述した鎮痛薬含有接着性フィルムにこれが乾燥用オーブンを出た時点で24フィート/分、25℃、70psigで積層させた。ライナーからシステムを容易に剥がすことができるようにする目的で前記ライナーの代わりにスリット剥離ライナーを用い、そしてそれをダイスで切断することで、5.25から44cm2の鎮痛薬搬送面積に相当する個々の経皮鎮痛薬システムを生じさせた。
【実施例16】
【0129】
下記を除いてこの上の実施例に記述した拮抗薬貯蔵物含有中間体を調製した。拮抗薬放出制御手段を下記の如く調製した。溶媒(3%が水で97%がエタノール)を用いてPluronic F108NFの溶液(0.5、1.0および2.0重量%)を生じさせた。このPluronic溶液で前記Solupor材料10P05Aを被覆した後、室温で一晩乾燥させたが、Pluronic溶液を0.5、1.0および2.0重量%用いると被膜の重量がそれぞれ35μg/cm2、50μg/cm2および90μg/cm2に
なった。このような拮抗薬放出制御手段、即ち界面活性剤による修飾を受けさせておいた膜をこの上に示した実施例に記述した如き拮抗薬組成物に積層させた。
【実施例17】
【0130】
下記を除いてこの上の実施例に記述した拮抗薬貯蔵物含有中間体を調製する。拮抗薬放出制御手段(水と接触した時点で孔をインサイチューで生じる塩充填膜)を下記の如く調製する。酢酸ビニル単量体が28%のエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)(Elvax 210、E.I.DuPont de Nemours、Wilmington、DE)を低温粉砕機(cryogrinder)のホッパーに加える(10Kg)。次に、この低温粉砕機に液体窒素を印の所まで充填した後、上部を密封する。この粉砕機を約10分間作動させることで前記重合体のペレットを粉砕して平均粒子サイズを約0.05mmにした後、乾燥(温風流を用いて)させることで、粉砕された重合体を得た。
【0131】
Vブレンダーのホッパーに硫酸マグネシウムを約2%含有する粉末状の塩化ナトリウム(National Formulary、約10Kg)を加える。次に、前記ホッパーに前記粉砕した重合体(10Kg)を加える。前記ホッパーを作動させて約15分間回転させることで、重合体と塩化ナトリウムの成分混合物である粉末混合物を得る。
【0132】
その粉末混合物を単軸押出し加工機(これの加熱セクションを予め約110℃に温めておいた)の添加口に連続的に送り込んだ。前記押出し加工機の終点にフレックス−ニップダイス(flex−nip die)を取り付けて、これを出口の厚みが約0.25mm(10ミル)になるように設定しておいた。前記押出し加工機を作動させてフィルムを生じさせた後、これを3本ロールカレンダーのロールに送り込む。そのロール間隙を厚みが約0.03mm(1.5ミル)の連続フィルムがカレンダーから出るように設定する。そのフィルムを巻き上げロールで巻き取って、それをさらなる製造で用いる。
【0133】
そのような拮抗薬放出制御手段、即ち塩含有フィルムをこの上に示した実施例に記述した如き拮抗薬貯蔵物に積層させる。最終的なシステムをダイスで切断して包装する。このようなシステムを水に浸漬すると、塩化ナトリウム層が急速に水溶性塩を脱離する。その結果としてフィルムがインサイチュー微孔性膜を形成し、これを用いた時の拮抗薬放出速度と鎮痛薬放出速度の比率は少なくとも2:1から20:1である。
【実施例18】
【0134】
代替の連続方法を用いて、実施例11−17に記述した如き拮抗薬貯蔵物含有中間体を製造する。重力もしくは定量供給機を用いて熱可塑性重合体を2軸押出し加工機、往復運動の単軸押出し加工機(「コニーダー」)または連続コンパウンダー(compounder)に供給する。その溶融させた重合体に拮抗薬を同様な様式で送り込んで混合した後、押出してカレンダーに送り込むことで、中間体である拮抗薬貯蔵物積層品を生じさせる。別法として、前記混合物を押出し加工してストランドまたはロッドにし、切断してペレット(約5−10mm)にした後、2番目の段階で押出し加工する。
【実施例19】
【0135】
下記を除いて実施例11−18に記述した拮抗薬中間体含有貯蔵物を調製する。この中間体拮抗薬貯蔵物を押出し加工して、それでバリヤー層のEVA面を冷却用ロール上で直接覆い、そして同じ工程段階で拮抗薬速度制御層を積層する。
【実施例20】
【0136】
実施例11−19に従って製造したシステムを用いて、そのシステムを周囲温度、即ち室温の水に浸漬した時にそれから放出されるナルトレキソンを調査した。そのような経皮鎮痛薬システムを蒸留水に浸漬した。選択した時間が経過した後にシステムを取り出して
新鮮な抽出用媒体に入れた。この操作を全体で24時間繰り返した。この試験手順中に放出されたナルトレキソンは、オピオイド放出を測定する試験手順に類似した試験手順を実施することで測定した時に放出されたフェンタニルの放出速度および度合に一致していた。そのようなシステムを水に少なくとも1時間浸漬した時に放出されたナルトレキソンとフェンタニルの比率は2:1であった。
【実施例21】
【0137】
実施例11−20に従って製造したシステムを用いて、そのシステムを燐酸塩緩衝剤が入っているpHが6.5の緩衝水性媒体に周囲温度、即ち室温または沸騰温度で浸漬した時にそれから放出されるナルトレキソンを調査した。前記媒体の体積を前記拮抗薬および鎮痛薬の溶解度限界未満に調整した。
【0138】
拮抗薬放出制御手段の膜を選択するか或はそれに界面活性剤による修飾を受けさせることで、拮抗薬が燐酸塩緩衝媒体の中に放出される速度を調節する。図6−16に、この上の実施例に記述したいろいろな経皮鎮痛薬システムが示した放出速度特徴を示す。図6、7および8に、Pluronic被覆Soluporである拮抗薬放出制御手段から放出されたナルトレキソンの累積を示す。図9および10に、Celgard 3401である拮抗薬放出制御手段から放出されたナルトレキソンの放出速度および累積のそれぞれを示す。図11および12に、不透過性LDPEである拮抗薬放出制御手段から放出されたナルトレキソンの放出速度および累積放出のそれぞれを示す。図13および14に、Celgard 3501である拮抗薬放出制御手段から放出されたナルトレキソンの放出速度および累積放出のそれぞれを示す。図15および16に、スパンボンデッドポリプロピレンである拮抗薬放出制御手段から放出されたナルトレキソンの放出速度および累積放出のそれぞれを示す。図9−16の各々に三重複実験(#1、2および3)のデータおよび平均データを示す。
【実施例22】
【0139】
抽出研究
無傷の未使用経皮鎮痛薬システム(100μg/時、42cm2)を目標温度になるように平衡状態にしておいた標準的な抽出用媒体/溶液(約300mL)の中に入れた。用いた標準的抽出用媒体の例には通常の家庭用材料、例えば蒸留水、ウォッカ、消毒用アルコール、調理用油、ビネガー/水混合物およびアセトンなどが含まれる。そのような抽出用媒体の一定分量(1mL)を0、2、5、15、60および120分経過した時点で取り出して、未使用の抽出用媒体(5mL)で希釈する。そのサンプルをHPLCでナルトレキソンおよびフェンタニル含有量に関して評価する。抽出を25℃で実施しかつ50℃および75℃(可能ならば)で繰り返した。拮抗薬放出速度と鎮痛薬放出速度の比率の範囲は約0.1:1未満から約3.6:1であった。
【実施例23】
【0140】
本分野の技術者に公知の技術を用いて下に位置する皮膚組織から前以て切除しておいたヒト表皮の断片に実施例11で加工した経皮システムを接着させた。このシステム/皮膚サンドイッチをFranz拡散セルの中に入れた。重複サンプルの数は12であった。その器具全体を32℃に自動温度調節されている水浴の中に浸漬した。前記セルのレセプター区分室(receptor compartment)をpHが6.5の燐酸塩緩衝水溶液で満たした。3日間に渡って選択した間隔で前記レセプター区分室からサンプリングを行った。高感度HPLC検定技術を用いて前記溶液をフェンタニルおよびナルトレキソンに関して評価した。フェンタニル/ナルトレキソン濃度、拡散面積、サンプル体積およびサンプリング時間を用いてフェンタニル/ナルトレキソン流出速度を計算した。その結果は、過渡的始動期間(transient start−up period)の後の平均フェンタニル流出速度は約2μg/時・cm2であったがナルトレキソン流出速度は
検定検出限界未満の値である(即ち<<0.1μg/時・cm2)ことを示していた。
【実施例24】
【0141】
感作研究
システムを下記の如く調製した:
経皮システム(2.5cm2)を皮膚に48時間付着させたままにした時の感作の可能性を評価する目的でオスの無毛モルモット(Charles River Laboratories、ボストン、MA)を用いた。そのような経皮システムを皮膚接着剤(NS
Duro−Tak 87−2287またはNS Duro−Tak 87−4287)、バリヤーフィルム、ナルトレキソンHCl含有重合体(経皮鎮痛薬システム)またはナルトレキソンHClを含有しない重合体(経皮プラセボシステム)、および多孔質支持体層で構成させた。モルモットを下記の6群に分けた:
【0142】
【表1】
【0143】
誘発期間中、群1−5の動物の背側の皮膚領域に個々の試験もしくは対照製品による局所的誘発を21日間に渡って9回(週に3回付着)受けさせた。DNCB(正対照)の場
合には24時間付けたままにする以外は各付着物を約48時間付けたままにした。各皮膚付着を行う前およびシステムを除去した後に皮膚部位をアルコール消毒綿で拭いた後、ガーゼパッドで吸い取って乾燥させた。システムを剥がした後に皮膚マーキング用ペンを用いて皮膚付着部位の縁に印を付けた。群1−4では、最初の誘発用システムを除去して2±0.5時間後に皮膚刺激を評価しかつ最後の誘発用システムを除去して2±0.5時間後および24±1時間後に評価した。群5では、最初および最後の誘発用付着物を除去した後の部位を最初の皮膚刺激に関して評価しそしてシステムを除去してそれぞれ2±0.5時間後および24±1時間後に累積皮膚刺激を評価した。
【0144】
最後の誘発付着を行った後、約10から14日以内に、各モルモットに表に示す処置に従うチャレンジを受けさせた。DNCB(正対照)の場合には24時間付けたままにする以外は各局所的付着物を約48時間付けたままにした。チャレンジ品(challenge article)を除去して約2±0.5時間後、24±1時間後および48±1時間後にあらゆる付着部位に刺激に関する評価を受けさせた。あらゆる評価を修飾Draizeスケールを用いて実施した(紅斑に関して0−4および水腫に関して0−4)。チャレンジして48時間後の紅斑と水腫を一緒にした評価が≧2であるならば感作反応が陽性であると定義した。
【0145】
前記経皮拮抗薬システム(2287接着剤)を用いて最初および最後の誘発付着を行った後に前記システムが示した平均刺激評価は同様であり、累積刺激の証拠は全くなく、そのような経皮システムが与える刺激は穏やかであると分類分けした。前記経皮拮抗薬システム(4287接着剤)を用いて最初および最後の誘発付着を行った後にそれらが示した平均刺激評価は同様であり、累積刺激の証拠は全くなく、そのような経皮システムが与える刺激は低−穏やかであると分類分けした。
【0146】
前記モルモットに前記経皮プラセボシステムまたは経皮拮抗薬システムによる誘発およびチャレンジを受けさせた時、それらのいずれにも感作の証拠は全く観察されなかった。このことからそのような経皮システムは感作の可能性が弱いとして分類分けされる。前記モルモットに正対照であるDNCBによる誘発およびチャレンジを受けさせた時、それらの全部に感作反応が現れ、このことは、そのようなモデルでは反応が現れる可能性があることを立証している。
【0147】
また、アクリレート系皮膚接着剤(skin acrylate adhesives)の製造業者も各接着剤に関する安全性試験を実施しており、その試験にはBuehler感作試験が含まれていた。このデータは各接着剤を安全に用いることができることを裏付けている。
【0148】
意識のある無毛モルモットを用いて実施したGLP研究により、ナルトレキソンゲルを皮内注射するか或は局所的に塗布すると研究条件下で中程度から強い接触感作が起こる可能性があることが分かった。意識のある無毛モルモットに経皮プラセボおよび拮抗薬システムを用いる2番目のGLP研究を実施した。前記モルモットに経皮プラセボシステムまたは経皮拮抗薬システムによる誘発およびチャレンジを受けさせた時、それらのいずれにも感作の証拠は全く観察されなかった。このことからそのような経皮システムは感作の可能性が低いとして分類分けされる。前記モルモットに正対照であるDNCBによる誘発およびチャレンジを受けさせた時、それらの全部に感作反応が現れ、このことは、そのようなモデルでは反応が現れる可能性があることを立証している(研究の詳細を以下に示す)。この研究で用いたアクリレート系皮膚接着剤に関する追加的安全データをその製造業者から入手することができる。臨床感作研究におけるデータは、支持体の中にナルトレキソンを含有する経皮システムおよび含有しない経皮システムを安全に用いることができることを裏付けている。
【実施例25】
【0149】
皮膚刺激研究
スフェンタニルを含有させたいろいろな経皮鎮痛薬システムを72時間に渡って局所的に1回付着させた後に刺激が起こる可能性を評価する目的で、意識のあるオスの無毛モルモット(IAF株:HA−HO−hr)を用いてGLP皮膚刺激研究を実施した。スフェンタニル塩基含有皮膚接着剤(NS Duro−Tak 87−4287)と支持体層で構成させた2種類の経皮システム[厚みが0.025mm(1.0ミル)および0.05mm(2.0ミル)]に試験を受けさせた(実施例11に記述したように)。両方のシステムからスフェンタニル塩基がインビトロで流出する速度は約0.60μg/cm2/時であった。6匹のモルモット各々の無傷の背側皮膚領域に各厚みのシステムの1つを72(±1)時間付着させたままにした。試験品を剥がして30−40分後、24(±1)時間後および48(±1)時間後の部位に紅斑、乾燥か皮および水腫に関する評価を受けさせた。
【0150】
紅斑に関して0−4および水腫に関して0−4のDraizeスケールを用いて各付着部位に評価を受けさせた。初期刺激指数(Primary Irritation Indices)(PII)を計算した。
【0151】
システムを付着させた後の刺激は全部穏やかであることを観察した。臨床的状態の変化は全く起こらなかった。このようなシステムをこれを付着させている時間を72時間以内にした単一付着ヒト臨床研究(single application human clinical study)で用いることができる。
【実施例26】
【0152】
経皮鎮痛薬システムを口腔内投与した後にそれが全身的毒性をもたらすか否かを評価する目的でユカタンミニブタを用いた。経皮システムをフェンタニル含有皮膚接着剤(NS
Duro−Tak 87−4287)、バリヤーフィルム、ナルトレキソンHCl含有重合体および多孔質支持体層(実施例14に記述した如き)で構成させた。ナルトレキソンHClを支持体の中に入れておいた前記経皮鎮痛薬システムは、フェンタニルをシステム当たり約8.8mgおよびナルトレキソンHClを35.2mg含有していた(22cm2のシステムの中に0.4mg/cm2)。
【0153】
S&S Farms(Ranchita、CA)から得た体重が19−27kgで年齢が少なくとも6カ月の健康なメスユカタンミニブタを用いた。これらのブタを耳に刻み目を付けることで識別した。5匹の動物を落ち着かせそしてTelazol(商標)およびIsofluraneをそれぞれ約4mg/kg用いて麻酔をかけ(耳挿管)、そして前記システムをそれらの口腔内に11−30分間入れたままにした。麻酔を止めて動物を回復させた。これらの動物を臨床症状に関して綿密に監視した。
【0154】
口腔から経皮鎮痛薬システムを取り出して空気で乾燥させた。投与した5個の経皮鎮痛薬システムの全部に関して残存薬剤分析を実施した。表2に示すように、フェンタニルおよびナルトレキソンの両方がパッチから放出されて口腔の中に入り込んでいた。ナルトレキソン放出速度とフェンタニル放出速度の比率は約6:1から約8:1であった。投薬を受けさせた5匹の動物の中の4匹には全くフェンタニルの毒性が観察されなかった。
【0155】
【表2】
【実施例27】
【0156】
ラットにおけるスフェンタニル/ナルトレキソン比率研究
群に分けたオスラット[CRL:CD(商標)(SD)IGSBR]に下記の試験作用剤を尾の静脈に通して静脈投与した:塩酸ナルトレキソン単独、スフェンタニル単独またはスフェンタニル投与後直ちに塩酸ナルトレキソン。この研究の目的は、前以て選択しておいた静脈内投与量(18.75μg/kg)のスフェンタニルを用いて誘発させたひどいオピオイド効果の特徴に対して有効な拮抗作用を示すであろうナルトレキソン用量を測定することにあった。その用量群を以下の表に要約する。
【0157】
【表3】
【0158】
試験作用剤を注射した後の動物を臨床症状に関して観察した。ナルトレキソンはナルトレキソン:スフェンタニル用量比を4:1、8:1および16:1にした時にスフェンタニルのオピオイド誘発効果を遮断するに有効であった。前記3種類の用量比各々でナルトレキソンが示した拮抗作用の持続時間は匹敵しており、スフェンタニル対照群が示した臨床症状が持続する時間(一般に1−2時間)と同じ時間持続すると思われた。ナルトレキソン:スフェンタニルの用量比を1:1にした時にはスフェンタニルによって誘発される臨床症状を遮断するにあまり有効でなかったが、このような用量比の時でも臨床症状は一般にスフェンタニル対照群に比べてあまりひどくなくかつ持続期間も短かった。ナルトレキソン(300μg/kg)を単独でラット(N=3)に投与しても明らかな効果は全くもたらされなかった。図17および18に、スフェンタニルがラットに誘発する臨床症状に対してナルトレキソンが示した効果を示す(投与して30分以内の)。
【実施例28】
【0159】
接触感作可能性の評価
健康な被験体における経皮システム
この上の実施例11に記述した如きいろいろな経皮拮抗薬パッチを下記の如く用いて、経皮鎮痛薬システムの成分が健康な被験体に接触感作を起こさせる可能性の試験を実施した:システムA:ナルトレキソンを含有させた経皮鎮痛薬システム(プラセボ)(44cm2)、およびシステムB:経皮鎮痛薬システム(プラセボ)(44cm2)。2番目の目的は定量化できない血清ナルトレキソン濃度を立証することにあった。
【0160】
この研究は誘発、休止およびチャレンジ段階を伴う単一施設、二重盲検、無作為化試験であった。この試験では240人の被験体にシステムAを受けさせそして60人の被験体にシステムBを受けさせた。システムA(ナルトレキソンを含有する経皮プラセボ鎮痛薬システム)はポリエステル製剥離ライナー、ポリアクリレート系接着剤およびポリエステル製支持体(これはナルトレキソン−ポリエチレン層を伴うポリエチレンフィルムに積層)を含有する。システムB(ナルトレキソンを伴わない経皮プラセボ鎮痛薬システム)はポリエステル製剥離ライナー、ポリアクリレート系接着剤およびポリエステル製支持体(これはポリエチレン層を伴うポリエチレンフィルムに積層)を含有する。
【0161】
誘発段階中、各被験体の同じ皮膚部位にシステムAまたはシステムBを全体で21日間に渡ってシステムの数が全体で9になるように連続的に付着させた。先行して付着させたシステムによってひどい皮膚反応が起こったことが理由で付着部位を変える必要がある場合には、同じ腕の異なる部位を用いて21日間に渡る付着プランを継続した。各システムを2日または3日(48時間または72時間)±4時間に渡って付着させたままにした。前記システムを上腕外側の皮膚部位に付着させた。各誘発段階のシステムを取り外した直後そして最後の誘発段階システムを取り外して24時間後に標準的な等級付けスケールを用いて付着部位に局所的反応に関する評価を受けさせた。
【0162】
誘発段階の後に開始する休止段階中の2週間の間には何も付着させなかった。休止段階後に開始するチャレンジ段階中には、誘発段階中に用いなかった上腕外側の未処置皮膚部位に2種類のシステム(Aを1つとBを1つ)付着させて48時間に渡って付着させたままにした。このチャレンジ段階の経皮鎮痛薬システムを剥がした後の皮膚部位を、剥がして0.5、24、48および72時間後に局所的刺激および感作反応に関して評価した。1番目のチャレンジ段階システムを取り外して24時間後に新しい部位に再チャレンジを受けさせると問題になる何らかの感作反応が起こることが立証された。最初のチャレンジを24時間評価した時点で誘発段階で用いなかった上腕外側の未処置皮膚部位(または必要ならば胸の上側)に2種類のシステム(Aを1つとBを1つ)付着させて48時間に渡って付着させたままにした。それらを剥がした後、剥がして0.5、24、48および72時間の追跡評価を実施した。各誘導段階システムを剥がした後の付着部位を標準的な等級付けスケールを用いて局所反応および付着に関して評価した。
【0163】
1日目にシステムを付着させる前そして17、19および22日目にシステムを剥がす前に血液サンプルを採取してナルトレキソン濃度の分析を行った。標準的な手順を用いて血液サンプルから血清を取り出した。有効な液クロ−タンデム質量分析(LC/MS/MS)方法を用いて血清サンプルを分析した。定量の下限は約5pg/mLであった。
【0164】
前記経皮鎮痛薬システムが示す付着および刺激の度合は受け入れられるほどであることが立証された。感作の証拠は全く観察されなかった。大部分の血清サンプルに入っているナルトレキソン濃度は定量限界未満であった。従って、ナルトレキソンが全身に投与される証拠は全く存在しなかった。
【実施例29】
【0165】
活性研究
この研究の主目的は、ナルトレキソンシステムを伴わせた経皮鎮痛薬プラセボシステムをいろいろな条件(通常の活動、シャワーおよび運動)下で付着させたままにした後の血清ナルトレキソン濃度を評価することにあった。
【0166】
2番目の目的は、システムをいろいろな条件(通常の活動、シャワーおよび運動)下で4時間付着させたままにした後の使用済みシステムに入っている残存ナルトレキソンを評価することにあった。
【0167】
この研究は無作為、単一施設、オープンラベル(open−label)、4時間が3回の2シーケンスクロスオーバー(two−sequence crossover)試験であった。被験体を2種類の処置シーケンスの中の一方に無作為に割り当てた。3期間の全部を同じ日に実施した。各期間中、各被験体にナルトレキソン(44cm2)システムを伴う新しい経皮鎮痛薬プラセボシステム1個を4時間に渡って付着させたままにしながら通常の活動、激しい運動(20分間、室温)または温かいシャワー(約40℃で10分間)を浴びることを行ってもらった。通常の活動を最初に行ってもらったが、他の2種類の活動の順は無作為であった。
【0168】
1番目のシステムを付着させる前、そして続いてシステムを付着させて2、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13時間後に血液サンプルを採取して血清のナルトレキソン濃度を測定した。運動およびシャワーを浴びる活動では、その活動が終わった後に追加的血液サンプルを採取した。有効な液クロ−タンデム質量分析(LC/MS/MS)方法を用いて血清サンプルを分析してナルトレキソン濃度を測定した。定量の下限は約5pg/mLであった。
【0169】
前記システムを剥がす直前に各経皮鎮痛薬システムの付着を評価した。システムを付着させておいた皮膚部位の各々を剥がしてほぼ15分後、1時間後および16−24時間後に局所的反応(紅斑、水腫、吹き出物、丘疹およびかゆみを包含)に関して監視した。
【0170】
前記システムを剥がした後の使用済みシステムに残存するナルトレキソンを測定した。使用済みシステムに入っているナルトレキソンを分析する方法を下記の如く実施した。最初にシステムの重量を測定し、保護ライナーを剥がしてナイロン網の上に置いた後、転がしそして抽出用容器の中に入れた。有機溶媒を用いた振とうで抽出を実施した後、それを有機溶媒/水混合物で希釈した。UV検出器が備わっている逆相HPLCを用いてナルトレキソンを測定した。
【0171】
通常および激しい運動中に経皮システムから失われたナルトレキソン含有量のパーセントは平均で約2−3%であった。シャワーを浴びる活動中に経皮システムから失われたナルトレキソン含有量のパーセントは平均で約23%であった。大部分の血清サンプルに入っているナルトレキソン濃度は定量可能限界未満であった。従って、ナルトレキソンが全身に投与される証拠は全くなかった。加うるに、そのような経皮鎮痛薬システムが示す付着および刺激の度合は受け入れられる度合であることも立証された。感作の証拠は全く観察されなかった。
【実施例30】
【0172】
生物学的同等性の研究
実施例14に記述した如きいろいろな経皮フェンタニルシステム−経皮鎮痛薬システムおよびDUROGESIC(商標)フェンタニルシステムを用いてインビトロフェンタニル流出研究を実施して、比較薬物動態パラメーターを以下の表4および5に挙げる。経皮
鎮痛薬システムの薬物動態パラメーターの評価を下記の如く行った。
【0173】
経皮システムの各々を72時間の付着で用いる単一施設、無作為化、単一付着、オープンラベル、2処置、2シーケンス、2期間、クロスオーバー試験:処置Durogesic(商標)50μg/時および処置B[ナルトレキソンを伴わせた経皮フェンタニルシステム(フェンタニルを50μg/時)]を実施して、システムを1回付着させた後の薬物動態を評価した。
【0174】
被験体を無作為に2処置シーケンスの一方に割り当てた(1処置シーケンス当たり少なくとも14人の被験体)。被験体の上腕外側の皮膚部位に2回の72時間付着期間に渡って2個の経皮フェンタニルシステムを逐次的に付着させたままにした。処置と処置の間の最低限ウォッシュアウト期間(minimum washout period)を少なくとも14日から21日以内にした。研究システムを剥がした後にウォッシュアウト期間を開始させた。研究システムを72時間に渡って付着させたままにした。各被験体にナロキソン丸薬(0.5mg)を与えた後、オピオイド拮抗薬としての連続的ナロキソン注入(0.2mg/時)をシステム付着に先立って15分前に開始させて付着中そしてシステムを剥がした後4時間に渡って受けさせた。次に、各被験体に50mgのナルトレキソン錠剤をシステムを剥がして6時間後および20時間後に与えた。
【0175】
両方の処置に関して指定した時間の時(投与前そしてシステムを付着させてから2、3、5、8、12、18、24、30、36、42、48、54、60、66、72、73、74、76、80、84、96、108および120時間後)に各被験体から血液サンプルを採取して、血清のフェンタニル濃度を測定した。有効な液クロ−タンデム質量分析(LC/MS/MS)方法を用いて血清サンプルを分析することでフェンタニル濃度を測定した。指定した時間の時にシステムの局所的皮膚刺激および付着を評価した。
【0176】
このようなインビボ研究の結果を表4および5に挙げる。図19に、いろいろなフェンタニルシステムを経皮投与した後の血清のフェンタニル濃度を示す、即ち本発明の経皮鎮痛薬システム(50μg/時、22cm2)およびDUROGESIC(商標)フェンタニルシステム(50μg/時、20cm2)を1回付着させて最初に投与して120時間以内のフェンタニル濃度を示す。
【0177】
各処置毎にフェンタニル薬物動態パラメーターに関する記述統計学を計算した。そのような濃度−時間曲線の特徴、例えば血清薬剤濃度−時間曲線(AUC)下の面積、最大濃度に至る時間(Tmax)および薬剤のピーク血液、血漿もしくは血清濃度(Cmax)をこの上に記述した如き統計学的方法で検査した。フェンタニル薬物動態パラメーターの解析では、処置、期間、シーケンス、固定効果およびシーケンスランダムエフェクト内の被験体(subject−within−sequence random effect)を包含する混合効果(mixed−effect)分散分析(ANOVA)モデルを用いた(対数変換AUCinfおよびCmax、平均生利用度に関する統計学的方法)[Design and Analysis of Bioavailability and Bioequivalence Studies。S.ChowおよびJ.Liu(編集)、Marcel Dekker、ニューヨーク、NY、1992、70−125頁]。平均パラメーターの最小二乗推定値とこれらの90%信頼区間の間の比率[Schuirmann D.J.、A comparison of the two one−sided tests procedure and the power approach for assessing the equivalence of average bioavailability;J.Pharmacokinet.Biopharm.1987、15:657−680]を計算した。90%信頼区間の下限および上限のそれぞれを80%および125%と比較した。フェンタニルTmaxおよび
フェンタニル部分累積AUCの両方に対してノンパラメトリックウイルコクソンの順位和検定を実施した。これらの検定で0.05の有意水準を用いた。薬物動態パラメーターに関する平均(試験/基準生成物、即ち処置A/処置B)値の比率の信頼区間の下限が80%以上で上限が125%以下ならばそのような試験配合/組成物と基準配合/組成物は生物学的に同等であると見なした。対数変換薬物動態(PK)パラメーターの統計学的解析の結果を表4および5に挙げる。
【0178】
【表4】
【0179】
【表5】
【0180】
【表6】
【0181】
従って、この上に挙げた結果および図19に示す結果から明らかなように、ナルトレキソンを含んで成る本発明のフェンタニル含有経皮鎮痛薬システムは速度制御飽和(rate−controlled,saturated)DUROGESIC(商標)フェンタニルシステムと生物学的に同等な製品である。特に、本発明に従う経皮鎮痛薬システムは経皮DUROGESIC(商標)フェンタニルシステムに匹敵する薬物動態力学パラメーター(pharmacokinetic dynamic parameters)を示す、即ち平均対数変換Cmaxおよび基準配合に対する試験配合の平均比に関する90%信頼区間は80%から120%の範囲内に入る。
【実施例31】
【0182】
いろいろな経皮フェンタニルシステム、即ち実施例15に記述した如き経皮拮抗薬システムおよびDUROGESIC(商標)フェンタニルシステムを用いて、下記を除き、インビボフェンタニル流出試験を実施した。
【0183】
また、付着させて76時間経過する前および経過した時点で血清サンプルを採取し、有効な液クロ−タンデム質量分析(LC/MS/MS)方法を用いて、ナルトレキソン濃度(処置B)に関する分析も行った。
【0184】
【表7】
【0185】
【表8】
【0186】
【表9】
【0187】
従って、この上に挙げた結果および図20に示す結果から明らかなように、フェンタニル含有薬剤貯蔵物を含んで成る本発明の経皮鎮痛薬システムは速度制御飽和DUROGESIC(商標)フェンタニルシステムと生物学的に同等な製品である。特に、本発明に従う経皮鎮痛薬システムは経皮DUROGESIC(商標)フェンタニルシステムに匹敵する薬物動態力学パラメーターを示す、即ち平均対数変換Cmaxおよび基準配合に対する試験配合の平均比に関する90%信頼区間は80%から120%の範囲内に入る。加うるに、血清サンプルに入っているナルトレキソンの濃度は検出濃度未満であり、このことは、経皮鎮痛薬システムからナルトレキソンが全身に吸収されることはないことを示している。
【実施例32】
【0188】
スフェンタニル含有経皮システムに関する薬物動態研究
異なる厚みを持たせた2種類のスフェンタニル含有経皮鎮痛薬システムから吸収されるスフェンタニルの量を推定する目的で、健康な被験体に経皮システムをIV投与することによる単一施設、無作為化、オープンラベル、3処置、2シーケンス、3期間、クロスオーバー試験をスフェンタニルを静脈内投与した場合との比較で実施して、この2種類の経皮スフェンタニルシステムが示す薬物動態学を比較した。この試験中に下記の処置物を投与した:処置A:100μgのスフェンタニルを10μg/時の搬送速度で送り込む連続IVスフェンタニル注入(10時間の注入)、処置B:スフェンタニル含有経皮鎮痛薬システム(6mg、20cm2、接着剤の厚み0.05mm、約10μg/時、72時間付着)、および処置C:スフェンタニル含有経皮鎮痛薬システム(3mg、20cm2、接着剤の厚み0.025mm、10μg/時、72時間付着)。
【0189】
被験体を無作為に2処置シーケンスの一方に割り当てた。最初の期間中、各被験体に連続IVスフェンタニル注入を10μg/時で10時間受けさせた。その後、各被験体に72時間の経皮システムを2回、即ち処置期間2の間に1つのシステムと処置期間3の間に
1つのシステムを上腕外側の未処置皮膚部位に付着させた。処置と処置の間の最低限ウォッシュアウト期間を少なくとも6日から14日以内にした。経皮付着物を剥がした後またはIV注入を止めた後にウォッシュアウト期間を開始させた。システム付着/IV注入開始前14時間の時に各被験体に50mgのナルトレキソン錠剤をオピオイド拮抗薬として与え始めた。システム付着/IV注入中そしてシステム除去/IV注入停止後24時間に渡って被験体に50mgのナルトレキソン錠剤を日に2回与え続けた。
【0190】
IV注入/システム付着後の指定した時間の時に血液サンプルを採取して、血漿のスフェンタニル濃度を測定した。IV処置では、投与前そして注入を開始してから0.5、1、2、3、5、8、10、10.5、11、12、14、18、22、26、30、34、38および48時間後にサンプルを採取した。各経皮処置では、投与前そしてシステムを付着させてから0.5、1、2、3、5、8、12、18、24、30、36、42、48、54、60、66、72、73、74、78、84、96、108および120時間後にサンプルを採取した。有効な液クロ−タンデム質量分析(LC/MS/MS)方法を用いて血漿サンプルを分析することでスフェンタニル濃度を測定した。UV検出器が備わっている逆相HPLCを用いて前記システムの中に残存するスフェンタニルの含有量を測定する。経皮処置の場合には局所的皮膚刺激およびシステムの付着も評価した。有害反応、血圧、体温、心拍数および呼吸数を監視した。この研究の結果を表8に挙げる。図21に、いろいろなスフェンタニル処置を行った後の血漿スフェンタニル濃度(最初に投与して120時間以内)を示す。
【0191】
この上に示した実施例に記述した統計学的方法に従って各処置(A、BおよびC)毎にスフェンタニル薬物動態パラメーターに関する記述統計学を計算した。
【0192】
【表10】
【0193】
【表11】
【0194】
本発明は、以下に示す特徴および/または特質の中の1つ以上単独または他の特徴および特質の中の1つ以上との組み合わせで説明されかつ特徴付けられる:鎮痛薬を皮膚経由で投与するための経皮システムであって、このシステムは不正使用される可能性が低く、これは、
(a)フェンタニルおよびこれの類似物から成る群から選択される鎮痛薬を含んで成る鎮痛薬貯蔵物、
(b)前記鎮痛薬用の拮抗薬を含んで成る拮抗薬貯蔵物、
(c)前記拮抗薬貯蔵物を前記鎮痛薬貯蔵物から分離しておりかつ前記鎮痛薬も前記拮抗薬も実質的に透過しないバリヤー層、
を含んで成り、このシステムは、(i)このシステムを人である患者に張り付けている期間が約7日以内の時にはこのシステムから前記拮抗薬が実質的に放出されないようにしそして(ii)本製剤が不正使用されようとする時、例えばこのシステムが摂取されるか或は溶媒の中に実質的に浸漬される時などには鎮痛薬放出速度に対する拮抗薬放出速度の比率が不正使用を制限するに充分な比率になるような速度で前記拮抗薬を放出させる。本発明の経皮鎮痛薬システムは、鎮痛を人である患者に誘発して少なくとも3日間に渡って維持するに充分な量で鎮痛薬を含有する鎮痛薬貯蔵物を含んで成り、ここで、前記鎮痛薬はフェンタニルまたはこれの類似物でありそして前記類似物をアルフェンタニル、ロフェンタニル、レミフェンタニル、スフェンタニルおよびトレフェンタニルから成る群から選択する。好適な態様における鎮痛薬はフェンタニルまたはスフェンタニル、より好適には塩基形態のフェンタニルまたはスフェンタニルである。前記鎮痛薬貯蔵物は、重合体マトリックス(これは前記鎮痛薬を約1重量%から約20重量%含有する)と場合により透過促進剤を含んで成る。前記鎮痛薬貯蔵物は、未溶解成分を含まない単相構成物を構成していてもよいか、或は前記鎮痛薬を約20重量%以下の量で含有し、透過促進剤を約50重量%以下の量で含有しかつゲル化剤を約0.5から約10重量%含有して成る水性ゲルを構成していてもよい。追加的に、本発明の経皮鎮痛薬システムは、更に、前記鎮痛薬貯蔵物と皮膚の間に位置させる鎮痛薬放出速度制御手段も含んで成る。
【0195】
追加的面において、本発明の経皮鎮痛薬システムは、前記バリヤー層を通して放出されないが本製剤が不正使用されようとする時、例えば摂取された時にか或は溶媒に実質的に浸漬された時にシステムから放出される形態の拮抗薬を含有する拮抗薬貯蔵物を含んで成る。この拮抗薬貯蔵物は、好適には、重合体の中に分散している前記拮抗薬を含んで成り、この拮抗薬は前記拮抗薬貯蔵物の重合体に実質的に不溶である。そのような拮抗薬をナルトレキソン、メチルナルトレキソン、ナロキソン、ナルブフィン、ナロルフィン、ナロ
ルフィンジニコチネート、ナルメフェン、ナジド、レバロルファン、シクロゾシンおよびこれらの薬学的に受け入れられる塩から成る群から選択する。好適な態様では、そのような拮抗薬を塩、好適には塩基である拮抗薬の塩酸塩として存在させる。
【0196】
追加的面において、本発明の経皮鎮痛薬システムは前記鎮痛薬も前記拮抗薬も透過しないバリヤー層を含んで成り、このバリヤー層は、水にもアルコールにも有機溶媒にも不溶な材料を含んで成る。皮膚から遠位のバリヤー層表面に前記拮抗薬貯蔵物を位置させそして皮膚に近位のバリヤー層表面に前記鎮痛薬貯蔵物を位置させる。
【0197】
追加的面において、本発明の経皮鎮痛薬システムは更に拮抗薬放出速度制御手段も含んで成り、前記拮抗薬放出制御手段は、本システムを人である患者に張り付けている期間が約7日以内の時には本システムから前記拮抗薬が実質的に放出されないようにしそして本製剤が不正使用されようとする時、例えば本システムが摂取されるか或は溶媒の中に実質的に浸漬された時などには鎮痛薬放出速度に対する拮抗薬放出速度の比率が不正使用を制限するに充分な比率になるような速度で前記拮抗薬が放出されるようにする手段である。このような拮抗薬放出速度制御手段を皮膚から遠位の拮抗薬貯蔵物表面に位置させる。
【0198】
別の面において、本発明の経皮鎮痛薬システムでは、本製剤が不正使用されようとする時、例えば摂取されるか或は溶媒の中にある期間浸漬された時などには鎮痛薬放出速度に対する拮抗薬放出速度の比率が実質的に連続的に少なくとも約0.5:1から約20:1、好適には1:1から約16:1、より好適には約1.5:1から約8:1、更により好適には2:1から約4:1になるようにし、ここで、そのような浸漬期間は約1分から約24時間である。
【0199】
別の面において、本発明は、鎮痛薬を皮膚経由で投与するための経皮システムに関し、このシステムは不正使用される可能性が低く、これは、
(a)鎮痛を人である患者に誘発して少なくとも3日間に渡って維持するに充分な量で鎮痛薬(この鎮痛薬はフェンタニルまたはこれの類似物でありそして前記類似物はアルフェンタニル、ロフェンタニル、レミフェンタニル、スフェンタニルおよびトレフェンタニルから成る群から選択される)を含んで成る鎮痛薬貯蔵物、
(b)バリヤー層を通して放出されない形態であるがシステムが摂取されたか或は溶媒に実質的に浸漬された時にはそれから放出される前記鎮痛薬用の拮抗薬(ここでは更にそのような拮抗薬をナルトレキソン、メチルナルトレキソン、ナロキソン、ナルブフィン、ナロルフィン、ナロルフィンジニコチネート、ナルメフェン、ナジド、レバロルファン、シクロゾシンおよびこれらの薬学的に受け入れられる塩から成る群から選択する)を含んで成る拮抗薬貯蔵物、
(c)前記拮抗薬貯蔵物を前記鎮痛薬貯蔵物から分離しておりかつ前記鎮痛薬も前記拮抗薬も実質的に透過しないバリヤー層、および
(d)皮膚から遠位の拮抗薬貯蔵物表面に位置していてこのシステムを人である患者に張り付けている期間が約7日以内の時にはこのシステムから前記拮抗薬が実質的に放出されないようにしそして更にこの製剤が不正使用される可能性がある、例えばこのシステムが摂取されたか或は溶媒に実質的に浸漬された時には鎮痛薬放出速度に対する拮抗薬放出速度の比率が不正使用を制限するに充分な比率になるような速度で前記拮抗薬が放出されるようにする拮抗薬放出速度制御手段、
を含んで成る。
【0200】
上述した典型的な態様はあらゆる面で本発明の制限ではなく説明を意図したものである。従って、本発明は詳細な実施の点で本明細書に含めた説明から逸脱しない可能性のある数多くの変形を本分野の技術者によって成される可能性がある。そのような変形および修飾形は全部が本発明の範囲および精神の範囲内に入ると見なす。より具体的には、本発明
の主たる態様は、次のとおりである。
態様1:鎮痛薬を皮膚経由で投与するための経皮システムであって、
(a)フェンタニルおよびこれの類似物から成る群から選択される鎮痛薬を含んで成る鎮痛薬貯蔵物、
(b)前記鎮痛薬用の拮抗薬を含んで成る拮抗薬貯蔵物、
(c)前記拮抗薬貯蔵物を前記鎮痛薬貯蔵物から分離しておりかつ前記鎮痛薬も前記拮抗薬も実質的に透過しないバリヤー層、
を含んで成っていて、(i)このシステムを人である患者に張り付けている期間が約7日以内の時にはこのシステムから前記拮抗薬が実質的に放出されずそして(ii)このシステムが不正使用されようとする時には鎮痛薬放出速度に対する拮抗薬放出速度の比率が不正使用を制限するに充分な比率になるような速度で前記拮抗薬が放出されることで不正使用される可能性が低いシステム。
態様2:更に拮抗薬放出速度制御手段も含んで成る態様1記載のシステム。
態様3:前記拮抗薬放出速度制御手段がこのシステムを人である患者に張り付けている期間が約7日以内の時にはこのシステムから前記拮抗薬が実質的に放出されないようにしそしてこのシステムが不正使用されようとする時には前記拮抗薬が鎮痛薬放出速度に対する拮抗薬放出速度の比率が不正使用を制限するに充分な比率になるような速度で放出されるようにする態様2記載のシステム。
態様4:鎮痛薬を皮膚経由で投与するための経皮システムであって、
(a)フェンタニルおよびこれの類似物から成る群から選択される鎮痛薬を含んで成る鎮痛薬貯蔵物、
(b)前記鎮痛薬用の拮抗薬を含んで成る拮抗薬貯蔵物、
(c)前記拮抗薬貯蔵物を前記鎮痛薬貯蔵物から分離しておりかつ前記鎮痛薬も前記拮抗薬も実質的に透過しないバリヤー層、
を含んで成っていて、(i)このシステムを人である患者に張り付けている期間が約7日以内の時にはこのシステムから前記拮抗薬が実質的に放出されずそして(ii)このシステムが摂取された時または溶媒の中に実質的に浸漬された時には鎮痛薬放出速度に対する拮抗薬放出速度の比率が不正使用を制限するに充分な比率になるような速度で前記拮抗薬が放出されることで不正使用される可能性が低いシステム。
態様5:更に拮抗薬放出速度制御手段も含んで成る態様4記載のシステム。
態様6:前記拮抗薬放出速度制御手段がこのシステムを人である患者に張り付けている期間が約7日以内の時にはこのシステムから前記拮抗薬が実質的に放出されないようにしそしてこのシステムが摂取されたか或は溶媒の中に実質的に浸漬された時には前記拮抗薬が鎮痛薬放出速度に対する拮抗薬放出速度の比率が不正使用を制限するに充分な比率になるような速度で放出されるようにする態様5記載のシステム。
態様7:前記拮抗薬放出速度制御手段が皮膚から遠位の前記拮抗薬貯蔵物表面に位置する態様3または6記載のシステム。
態様8:前記拮抗薬放出速度制御手段が前記拮抗薬貯蔵物上の層、膜、フィルム、コーティング、シートおよび付着物から成る群から選択される態様7記載のシステム。
態様9:前記拮抗薬放出速度制御手段が速度制御用層、速度制御用膜、多孔質膜および微孔性膜から成る群から選択される態様8記載のシステム。
態様10:前記鎮痛薬貯蔵物が鎮痛を人である患者に誘発して少なくとも3日間に渡って維持するに充分な量で鎮痛薬を含んで成る前態様のいずれか記載のシステム。
態様11:前記鎮痛薬貯蔵物が鎮痛を誘発して3−7日間に渡って維持するに充分な量で溶解しているフェンタニルまたはこれの類似物を含んで成る態様10記載のシステム。
態様12:前記鎮痛薬貯蔵物が未溶解成分を含まない単層構成物を含んでなる前態様のいずれか記載のシステム。
態様13:前記鎮痛薬貯蔵物が接着性重合体を用いて生じさせたものである前態様のいずれか記載のシステム。
態様14:前記鎮痛薬貯蔵物がフェンタニルおよびこれの類似物に対して約1重量%から
約25重量%の可溶性を有する重合体を含んで成る態様13記載のシステム。
態様15:前記貯蔵物がフェンタニルまたはこれの類似物を約0.05から約1.75mg/cm2含んで成る態様14記載のシステム。
態様16:前記鎮痛薬貯蔵物が更に透過促進剤も含んで成る態様14記載のシステム。
態様17:前記鎮痛薬貯蔵物が重合体マトリックスと場合により透過促進剤を含んで成っていて前記重合体マトリックスが前記鎮痛薬を約5重量%から約50重量%含んで成る態様11記載のシステム。
態様18:前記鎮痛薬を約1重量%以下の量で含有し、透過促進剤を約25重量%以下の量で含有しかつゲル化剤を約1−10%含有して成る水性ゲルを含んで成る態様17記載のシステム。
態様19:更に前記鎮痛薬貯蔵物と皮膚の間に位置させる鎮痛薬放出速度制御手段も含んで成っていて前記放出速度制御手段が前記鎮痛薬を透過する度合の方がそれが前記透過促進剤を透過する度合よりも低い態様1記載のシステム。
態様20:前記拮抗薬貯蔵物が皮膚から遠位の前記バリヤー層表面に隣接して位置しかつ前記鎮痛薬貯蔵物が皮膚に近位の前記バリヤー層表面に隣接して位置する前態様のいずれか記載のシステム。
態様21:前記拮抗薬貯蔵物が重合体の中に分散している前記拮抗薬を含んで成る前態様のいずれか記載のシステム。
態様22:このシステムが約0.01から約0.2ng/ml・cm2の標準化Cmaxを示す前態様のいずれか記載のシステム。
態様23:このシステムが約3.3から約82.5ng/ml・(mg/時)の正規化Cmaxを示す前態様のいずれか記載のシステム。
態様24:このシステムが約0.1から約10μg/時・cm2のインビボ定常状態鎮痛薬流出速度を示す前態様のいずれか記載のシステム。
態様25:DURAGESIC(商標)経皮フェンタニルシステムと生物学的に同等な前態様のいずれか記載のシステム。
態様26:DURAGESIC(商標)経皮フェンタニルシステムと薬理学的に同等な前態様のいずれか記載のシステム。
態様27:前記鎮痛薬がフェンタニル類似物でありそして前記類似物がアルフェンタニル、ロフェンタニル、レミフェンタニル、スフェンタニルおよびトレフェンタニルから成る群から選択されそして前記拮抗薬がナルトレキソン、メチルナルトレキソン、ナロキソン、ナルブフィン、ナロルフィン、ナロルフィンジニコチネート、ナルメフェン、ナジド、レバロルファン、シクロゾシンおよびこれらの薬学的に受け入れられる塩から成る群から選択される前態様のいずれか記載のシステム。
態様28:前記鎮痛薬がフェンタニルでありそしてこのシステムが摂取されたか或は溶媒の中にある期間浸漬された時にこのシステムが実質的に示す拮抗薬放出速度と鎮痛薬放出速度の比率が約0.5:1から約20:1である態様25記載のシステム。
態様29:前記鎮痛薬がスフェンタニルでありそしてこのシステムが摂取されたか或は溶媒の中にある期間浸漬された時にこのシステムが実質的に示す拮抗薬放出速度と鎮痛薬放出速度の比率が少なくとも約4:1である態様26記載のシステム。
態様30:前記拮抗薬がナルトレキソンである請求項28または態様29記載のシステム。
態様31:鎮痛薬を皮膚経由で投与するための経皮システムであって、
(a)フェンタニルまたはこれの類似物である鎮痛薬を鎮痛を人である患者に誘発して維持するに充分な量で含んで成る鎮痛薬貯蔵物、
(b)バリヤー層を通して放出されない形態であるがシステムが摂取されたか或は溶媒に実質的に浸漬された時にそれから放出される前記鎮痛薬用の拮抗薬を含んで成る拮抗薬貯蔵物、
(c)前記拮抗薬貯蔵物を前記鎮痛薬貯蔵物から分離しておりかつ前記鎮痛薬も前記拮抗薬も実質的に透過しないバリヤー層、および
(d)皮膚から遠位の前記拮抗薬貯蔵物表面に位置していてこのシステムを人である患者に張り付けている期間が約7日以内の時にはこのシステムから前記拮抗薬が実質的に放出されないようにしそして更にこのシステムが不正使用されようとする時には鎮痛薬放出速度に対する拮抗薬放出速度の比率が不正使用を制限するに充分な比率になるような速度で前記拮抗薬が放出されるようにする拮抗薬放出速度制御手段、
を含んで成ることで不正使用される可能性が低いシステム。
態様32:鎮痛薬を皮膚経由で投与するための経皮システムであって、
(a)フェンタニルまたはこれの類似物である鎮痛薬を鎮痛を人である患者に誘発して維持するに充分な量で含んで成る鎮痛薬貯蔵物、
(b)バリヤー層を通して放出されない形態であるがシステムが摂取されたか或は溶媒に実質的に浸漬された時にそれから放出される前記鎮痛薬用の拮抗薬を含んで成る拮抗薬貯蔵物、
(c)前記拮抗薬貯蔵物を前記鎮痛薬貯蔵物から分離しておりかつ前記鎮痛薬も前記拮抗薬も実質的に透過しないバリヤー層、および
(d)皮膚から遠位の前記拮抗薬貯蔵物表面に位置していてこのシステムを人である患者に張り付けている期間が約7日以内の時にはこのシステムから前記拮抗薬が実質的に放出されないようにしそして更にこのシステムが摂取される或は溶媒の中に実質的に浸漬された時には鎮痛薬放出速度に対する拮抗薬放出速度の比率が不正使用を制限するに充分な比率になるような速度で前記拮抗薬が放出されるようにする拮抗薬放出速度制御手段、
を含んで成ることで不正使用される可能性が低いシステム。
態様33:前記拮抗薬放出速度制御手段が前記拮抗薬貯蔵物上の層、膜、フィルム、コーティング、シートおよび付着物から成る群から選択される態様31または請求項32記載のシステム。
態様34:前記拮抗薬放出速度制御手段が速度制御用層、速度制御用膜、多孔質膜および微孔性膜から成る群から選択される態様33記載のシステム。
態様35:前記鎮痛薬貯蔵物が鎮痛薬を鎮痛を人である患者に誘発して少なくとも3日間に渡って維持するに充分な量で含んで成る前記態様31−34のいずれか記載のシステム。
態様36:前記鎮痛薬貯蔵物が溶解しているフェンタニルまたはこれの類似物を鎮痛を誘発して3−7日間に渡って維持するに充分な量で含んで成る態様35記載のシステム。
態様37:前記鎮痛薬貯蔵物が未溶解成分を含まない単層構成物を含んでなる前記態様31−36のいずれか記載のシステム。
態様38:前記鎮痛薬貯蔵物が接着性重合体を用いて生じさせたものである前記態様31−37のいずれか記載のシステム。
態様39:前記鎮痛薬貯蔵物がフェンタニルおよびこれの類似物に対して約1重量%から約25重量%の可溶性を有する重合体を含んで成る態様38記載のシステム。
態様40:前記貯蔵物がフェンタニルまたはこれの類似物を約0.05から約1.75mg/cm2含んで成る態様39記載のシステム。
態様41:前記鎮痛薬貯蔵物が更に透過促進剤も含んで成る前記態様31−40のいずれか記載のシステム。
態様42:前記鎮痛薬貯蔵物が重合体マトリックスと場合により透過促進剤を含んで成っていて前記重合体マトリックスが前記鎮痛薬を約5重量%から約50重量%含んで成る態様36記載のシステム。
態様43:前記拮抗薬貯蔵物が重合体の中に分散している前記拮抗薬を含んで成る前記態様31−42のいずれか記載のシステム。
態様44:このシステムが約0.01から約0.2ng/ml・cm2の標準化Cmaxを示す前記態様31−43のいずれか記載のシステム。
態様45:このシステムが約3.3から約82.5ng/ml・(mg/時)の正規化Cmaxを示す前記態様31−44のいずれか記載のシステム。
態様46:このシステムが約0.1から約10μg/時・cm2のインビボ定常状態鎮痛
薬流出速度を示す前記態様31−45のいずれか記載のシステム。
態様47:DURAGESIC(商標)経皮フェンタニルシステムと生物学的に同等な前記態様31−46のいずれか記載のシステム。
態様48:DURAGESIC(商標)経皮フェンタニルシステムと薬理学的に同等な前記態様31−46のいずれか記載のシステム。
態様49:前記フェンタニル類似物がアルフェンタニル、ロフェンタニル、レミフェンタニル、スフェンタニルおよびトレフェンタニルから成る群から選択されそして前記拮抗薬がナルトレキソン、メチルナルトレキソン、ナロキソン、ナルブフィン、ナロルフィン、ナロルフィンジニコチネート、ナルメフェン、ナジド、レバロルファン、シクロゾシンおよびこれらの薬学的に受け入れられる塩から成る群から選択される前記態様31−48のいずれか記載のシステム。
態様50:前記鎮痛薬がフェンタニルでありそしてこのシステムが摂取されたか或は溶媒の中にある期間浸漬された時にこのシステムが実質的に示す拮抗薬放出速度と鎮痛薬放出速度の比率が約0.5:1から約20:1である態様47記載のシステム。
態様51:前記鎮痛薬がスフェンタニルでありそしてこのシステムが摂取されたか或は溶媒の中にある期間浸漬された時にこのシステムが実質的に示す拮抗薬放出速度と鎮痛薬放出速度の比率が少なくとも約4:1である態様48記載のシステム。
態様52:前記拮抗薬がナルトレキソンである請求項50または態様51記載のシステム。
態様53:フェンタニルを皮膚経由で投与するための経皮システムであって、
(a)鎮痛を人に誘発して少なくとも3日間に渡って維持するに充分な量で溶解しているフェンタニルを含有するに充分な度合いでフェンタニルを溶かすポリアクリレート系接着剤を含有していて未溶解成分を含まない単層重合体組成物を含んで成る鎮痛薬貯蔵物、
(b)バリヤー層を通して放出されない形態であるがシステムが摂取されたか或は溶媒に実質的に浸漬された時にはそれから放出される前記鎮痛薬用の拮抗薬を含んで成る拮抗薬貯蔵物、
(c)前記拮抗薬貯蔵物を前記鎮痛薬貯蔵物から分離しておりかつ前記鎮痛薬も前記拮抗薬も実質的に透過しないバリヤー層、および
(d)皮膚から遠位の前記拮抗薬貯蔵物表面に位置していてこのシステムを人である患者に張り付けている期間が約7日以内の時にはこのシステムから前記拮抗薬が実質的に放出されないようにしそして更にこのシステムが摂取されたか或は溶媒に実質的に浸漬された時には鎮痛薬放出速度に対する拮抗薬放出速度の比率が不正使用を制限するに充分な比率になるような速度で前記拮抗薬が放出されるようにする拮抗薬放出速度制御手段、
を含んで成ることで不正使用される可能性が低いシステム。
態様54:フェンタニルを皮膚経由で投与するための経皮システムであって、
(a)鎮痛を人に誘発して少なくとも3日間に渡って維持するに充分な量で溶解しているフェンタニルを含有するに充分な度合いでフェンタニルを溶かすポリアクリレート系接着剤を含有していて未溶解成分を含まない単層重合体組成物を含んで成る鎮痛薬貯蔵物、
(b)バリヤー層を通して放出されない形態であるがシステムが摂取されたか或は溶媒に実質的に浸漬された時にはそれから放出される前記鎮痛薬用の拮抗薬を含んで成る拮抗薬貯蔵物、
(c)前記拮抗薬貯蔵物を前記鎮痛薬貯蔵物から分離しておりかつ前記鎮痛薬も前記拮抗薬も実質的に透過しないバリヤー層、および
(d)皮膚から遠位の前記拮抗薬貯蔵物表面に位置していてこのシステムを人である患者に張り付けている期間が約7日以内の時にはこのシステムから前記拮抗薬が実質的に放出されないようにしそしてこのシステムが摂取されたか或は溶媒にある期間の間浸漬された時には拮抗薬放出速度と鎮痛薬放出速度の比率が約0.5:1から約20:1になるようにする拮抗薬放出速度制御手段、
を含んで成ることで不正使用される可能性が低いシステム。
態様55:(a)前鎮痛薬貯蔵物がフェンタニル塩基を約0.05から約1.75mg/
cm2含んで成り、
(b)前記拮抗薬貯蔵物がポリオレフィン、ポリエチレン、ポリオクテン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリスチレン、ポリエチレンオクテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレンアクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン−アクリル酸共重合体およびエチレン−アクリル酸エチル共重合体から成る群から選択される重合体もしくは共重合体の中に分散している前記拮抗薬を約0.2から約15mg/cm2含んで成り、
(c)前記バリヤー層がポリウレタン、ポリエチレンおよびエチレン共重合体から成る群から選択される重合体と積層しているポリエステルを含んで成り、そして
(d)前記拮抗薬放出速度制御手段が微孔性超高密度ポリエチレン(UHDPE)、微孔性ポリプロピレン、毛細孔ポリエステル膜、スパンレースドポリエステル、ポリプロピレンおよびポリエチレンから成る群から選択される微孔性層である、
態様53または54記載のシステム。
態様56:このシステムが約0.01から約0.2ng/ml・cm2の標準化Cmaxを示す前記態様53−55のいずれか記載のシステム。
態様57:このシステムが約3.3から約82.5ng/ml・(mg/時)の正規化Cmaxを示す前記態様53−56のいずれか記載のシステム。
態様58:DURAGESIC(商標)経皮フェンタニルシステムと生物学的に同等な前記態様53−57のいずれか記載のシステム。
態様59:前記拮抗薬がナルトレキソンである前記態様53−58のいずれか記載のシステム。
態様60:スフェンタニルを皮膚経由で投与するための経皮システムであって、
(a)鎮痛を人に誘発して少なくとも3日間に渡って維持するに充分な量で溶解しているスフェンタニルを含有するに充分な度合いでスフェンタニルを溶かすポリアクリレート系接着剤を含有していて未溶解成分を含まない単層重合体組成物を含んで成る鎮痛薬貯蔵物、
(b)バリヤー層を通して放出されない形態であるがシステムが摂取されたか或は溶媒に実質的に浸漬された時にはそれから放出される前記鎮痛薬用の拮抗薬を含んで成る拮抗薬貯蔵物、
(c)前記拮抗薬貯蔵物を前記鎮痛薬貯蔵物から分離しておりかつ前記鎮痛薬も前記拮抗薬も実質的に透過しないバリヤー層、および
(d)皮膚から遠位の前記拮抗薬貯蔵物表面に位置していてこのシステムを人である患者に張り付けている期間が約7日以内の時にはこのシステムから前記拮抗薬が実質的に放出されないようにしそして更にこのシステムが摂取されたか或は溶媒に実質的に浸漬された時には鎮痛薬放出速度に対する拮抗薬放出速度の比率が不正使用を制限するに充分な比率になるような速度で前記拮抗薬が放出されるようにする拮抗薬放出速度制御手段、
を含んで成ることで不正使用される可能性が低いシステム。
態様61:スフェンタニルを皮膚経由で投与するための経皮システムであって、
(a)鎮痛を人に誘発して少なくとも3日間に渡って維持するに充分な量で溶解しているスフェンタニルを含有するに充分な度合いでスフェンタニルを溶かすポリアクリレート系接着剤を含有していて未溶解成分を含まない単層重合体組成物を含んで成る鎮痛薬貯蔵物、
(b)バリヤー層を通して放出されない形態であるがシステムが摂取されたか或は溶媒に実質的に浸漬された時にはそれから放出される前記鎮痛薬用の拮抗薬を含んで成る拮抗薬貯蔵物、
(c)前記拮抗薬貯蔵物を前記鎮痛薬貯蔵物から分離しておりかつ前記鎮痛薬も前記拮抗薬も実質的に透過しないバリヤー層、および
(d)皮膚から遠位の前記拮抗薬貯蔵物表面に位置していてこのシステムを人である患者に張り付けている期間が約7日以内の時にはこのシステムから前記拮抗薬が実質的に放出されないようにしそしてこのシステムが摂取されたか或は溶媒にある期間の間浸漬された
時には拮抗薬放出速度と鎮痛薬放出速度の比率が少なくとも約4:1になるようにする拮抗薬放出速度制御手段、
を含んで成ることで不正使用される可能性が低いシステム。
態様62:(a)前鎮痛薬貯蔵物がスフェンタニル塩基を約0.05から約1.75mg/cm2含んで成り、
(b)前記拮抗薬貯蔵物がポリオレフィン、ポリエチレン、ポリオクテン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリスチレン、ポリエチレンオクテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレンアクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン−アクリル酸共重合体およびエチレン−アクリル酸エチル共重合体から成る群から選択される重合体もしくは共重合体の中に分散している前記拮抗薬を約0.2から約15mg/cm2含んで成り、
(c)前記バリヤー層がポリウレタン、ポリエチレンおよびエチレン共重合体から成る群から選択される重合体と積層しているポリエステルを含んで成り、そして
(d)前記拮抗薬放出速度制御手段が微孔性超高密度ポリエチレン(UHDPE)、微孔性ポリプロピレン、毛細孔ポリエステル膜、スパンレースドポリエステル、ポリプロピレンおよびポリエチレンから成る群から選択される微孔性層である、
態様60または61記載システム。
態様63:このシステムが約0.001から約0.05ng/ml・cm2の標準化Cmaxを示す前記態様60−62のいずれか記載のシステム。
態様64:このシステムが約0.04から約10ng/ml・(mg/時)の正規化Cmaxを示す態様60−63のいずれか記載のシステム。
態様65:DURAGESIC(商標)経皮フェンタニルシステムと薬理学的に同等な前記態様60−64のいずれか記載のシステム。
態様66:前記拮抗薬がナルトレキソンである前記請求項60−65のいずれか記載のシステム。
【技術分野】
【0001】
本発明は、乱用(または「不正使用」という)の可能性が低い(reduced potential for abuse)経皮鎮痛薬システム(transdermal analgesic system)に関する。詳細には、本発明は、フェンタニル(fentanyl)およびこれの類似物を被験体に無傷の皮膚を通して長期間に渡って経皮投与するに適したシステムに関し、本システムは、本製剤(即ち経皮鎮痛薬システム)が不正使用されようとする時に鎮痛薬放出速度に対する拮抗薬放出速度の比率が不正使用を制限するに充分な比率になるような速度で前記拮抗薬を制御して放出する。
【背景技術】
【0002】
急性および慢性両方の痛みを治療するための麻薬性鎮痛薬、即ちオピオイドの経皮投与は詳細に記述されている。フェンタニルおよびこれの類似物、例えばアルフェンタニル、カルフェンタニル、ロフェンタニル、レミフェンタニル、スフェンタニル、トレフェンタニルなどを経皮投与するいろいろな方法が特許文献1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16および17に記述されており、これらは引用することによって本明細書に組み入れられる。軟膏またはクリームを局所的に塗布するか或は経皮パッチを用いてフェンタニルを投与することができることが前記特許文献に開示されている。
【0003】
麻薬性鎮痛薬が鼻内、経口または非経口経路で不正使用される可能性があることは良く知られている。オピオイドの転用または不正使用は異なるいくつかの形態を取り得る。例えば、意図しない人がそのような薬剤を用いる可能性がある、即ち元々処方された経路(例えば経口または経皮)または代替経皮(例えば非経口、静脈内または鼻内)のいずれかで処方された量および/または頻度から逸脱、即ち多い量および/または頻度で用いる可能性がある。そのような物質の不正使用を防止する目的で、不正使用される可能性のある物質をこの不正使用される可能性のある物質の拮抗薬を当該薬剤の投与を意図した他の治療的利点をなくすことなくそのような物質の不正使用に伴う「恍惚状態(high)」をなくすに充分な量で組み合わせた製剤を提供することが提案された[例えば特許文献18、19、20、21、22、23、24、25、26および27(これらは全部引用することによって本明細書に組み入れられる)およびまた非特許文献1および2(引用することによって本明細書に組み入れられる)も参照]。
【0004】
麻酔性および精神活性物質を搬送するに適した経皮製剤が特許文献26に記述されており、その製剤は不正使用される可能性が低い。その経皮製剤は麻酔薬と拮抗薬を含んで成る鎮痛薬貯蔵物(analgesic reservoir)と放出手段(これによって前記麻酔薬が体に放出される)を含んで成る。オピオイドを経皮投与するに適した耐不正使用性(misuse−resistance)製剤が特許文献25に記述されている。その製剤はオピオイド、摂取または溶媒浸漬時に放出され得るオピオイド用拮抗薬、前記オピオイドを前記拮抗薬から分離しているバリヤー手段(barrier means)および前記オピオイドを搬送する搬送手段を含んで成る。
【0005】
現存の製剤はある程度の成功を収めているが、それにも拘らず、麻酔薬は注射、吸入または摂取用製剤から抽出可能であるか或は麻酔薬と鎮痛薬が相互作用する結果として不利な物理的および/または化学的相互作用、例えば望ましくないイオン交換が起こるか或は拮抗薬が麻酔薬貯蔵物の中に入り込む結果として拮抗薬が全身に送り込まれるなどと言った相互作用がもたらされる可能性があることから、不正使用の可能性を低くする点では完全には満足されるものではなかった。拮抗薬が皮膚に接触している時間が長くなると感作
反応が現れる。その上、現存する製剤の場合、その製剤が不正使用される傾向がある、例えばそのようなシステムが摂取されるか或は溶媒に実質的に浸漬された時などに麻酔薬放出速度に対する拮抗薬放出速度が不正使用を制限するに充分な比率になるような速度で拮抗薬の放出を制御するものではない。そのような製剤では、不正使用される傾向があっても、その製剤から鎮痛薬が放出される速度に釣り合わない速度で拮抗薬が分離される可能性があり、その結果として、不正使用の事態が起こっている間に鎮痛薬の麻酔効果が充分には遮断されなくなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4,466,953号
【特許文献2】米国特許第4,470,962号
【特許文献3】米国特許第4,588,580号
【特許文献4】米国特許第4,626,539号
【特許文献5】米国特許第5,006,342号
【特許文献6】米国特許第5,186,939号
【特許文献7】米国特許第5,310,559号
【特許文献8】米国特許第5,474,783号
【特許文献9】米国特許第5,656,286号
【特許文献10】米国特許第5,762,952号
【特許文献11】米国特許第5,948,433号
【特許文献12】米国特許第5,985,317号
【特許文献13】米国特許第5,958,446号
【特許文献14】米国特許第5,993,849号
【特許文献15】米国特許第6,024,976号
【特許文献16】米国特許第6,063,399号
【特許文献17】米国特許第6,139,866号
【特許文献18】米国特許第3,773,955号
【特許文献19】米国特許第3,493,657号
【特許文献20】米国特許第4,464,378号
【特許文献21】米国特許第4,457,933号
【特許文献22】米国特許第4,626,539号
【特許文献23】米国特許第4,806,341号
【特許文献24】米国特許第4,935,428号
【特許文献25】米国特許第5,149,538号
【特許文献26】米国特許第5,236,714号
【特許文献27】国際公開番号WO 01/58451A1
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Talwin;Levine J.D.他、「Potentiation of pentazocine analgesia by low−dose naloxone」、J Clin Invest 1988;82:1574−1577
【非特許文献2】Crain SM、Shen F−K、「Antagonist of excitatory opioid receptor function enhance morphine’s analgesic potency and attenuate opioid tolerance/dependence liability」、Pain 2000;84:121−131
【発明の概要】
【0008】
(発明の要約)
本発明は本技術分野における上述した要求に向けたものであり、当該システムを皮膚に付着させた時に鎮痛薬が有する治療もしくは有益な効果を減少させることなく不正使用の可能性を低くした経皮鎮痛薬システムを提供し、このシステムは、拮抗薬と接触することによる皮膚感作反応を実質的に無くし/無視できるほどにするものである。詳細には、本発明の経皮鎮痛薬系は、この製剤が不正使用されようとする時に鎮痛薬放出速度に対する拮抗薬放出速度の比率が不正使用を制限するに充分な比率になるような速度に前記拮抗薬の放出を制御するものである。追加的に、本発明の経皮鎮痛薬システムは安全性が向上、例えば使用済みシステムを子供または家庭用ペットが偶発的に摂取する可能性がある時などの安全性が向上している。
【0009】
本発明は、1つの面において、鎮痛薬を皮膚経由で投与するための経皮システムに関し、このシステムは不正使用される可能性が低いシステムであり、これは、
(a)フェンタニルおよびこれの類似物から成る群から選択される鎮痛薬を含んで成る鎮痛薬貯蔵物、
(b)前記鎮痛薬用の拮抗薬を含んで成る拮抗薬貯蔵物、
(c)バリヤー層[このバリヤー層は前記拮抗薬貯蔵物を前記鎮痛薬貯蔵物から分離しておりかつこのバリヤー層は前記鎮痛薬も前記拮抗薬も実質的に透過しない]
を含んで成り、このシステムでは、(i)このシステムを人である患者に張り付けている(securing)期間が約7日以内の時にはこのシステムから前記拮抗薬が実質的に放出されずそして(ii)この製剤が不正使用されようとする時、例えばこのシステムが摂取されたか或は溶媒の中に実質的に浸漬された時などには鎮痛薬放出速度に対する拮抗薬放出速度の比率が不正使用を制限するに充分な比率になるような速度で前記拮抗薬が放出される。
【0010】
別の面において、本発明の経皮鎮痛薬システムは、鎮痛を人である患者に誘発して少なくとも3日間に渡って維持するに充分な量で鎮痛薬を含有する鎮痛薬貯蔵物を含んで成り、ここで、前記鎮痛薬はフェンタニルまたはこれの類似物でありそして前記類似物をアルフェンタニル、ロフェンタニル、レミフェンタニル、スフェンタニルおよびトレフェンタニルから成る群から選択する。好適な態様における鎮痛薬はフェンタニルまたはスフェンタニル、より好適には塩基形態のフェンタニルまたはスフェンタニルである。
【0011】
追加的面において、本発明の経皮鎮痛薬システムは鎮痛薬貯蔵物を含んで成り、前記鎮痛薬貯蔵物は重合体マトリックス(polymeric matrix)(これは前記鎮痛薬を約1重量%から約20重量%含有する)と場合により透過促進剤(permeation enhancer)を含んで成る。前記鎮痛薬貯蔵物は好適には未溶解成分を含まない単相製剤を構成している。
【0012】
別な面において、本発明の経皮鎮痛薬システムは、前記鎮痛薬を約20重量%以下の量で含有し、透過促進剤を約50重量%以下の量で含有しかつゲル化剤(gelling agent)を約0.5から約10重量%含有して成る水性ゲルを構成している鎮痛薬貯蔵物を含んで成る。
【0013】
追加的面において、本発明の経皮鎮痛薬システムは、更に、前記鎮痛薬貯蔵物と皮膚の間に位置させる鎮痛薬放出速度制御手段(analgesic release rate controlling means)も含んで成る。特定の面において、前記鎮痛薬放出速度制御手段が前記鎮痛薬を透過する度合の方がそれが前記透過促進剤を透過する度合よりも低い。
【0014】
追加的面において、本発明の経皮鎮痛薬システムは、前記バリヤー層を通して放出され
ないがシステムが摂取された時か或は溶媒に実質的に浸漬された時にそれから放出される形態の拮抗薬を含有する拮抗薬貯蔵物を含んで成る。この拮抗薬貯蔵物は、好適には、重合体の中に分散している前記拮抗薬を含んで成り、この拮抗薬は前記拮抗薬貯蔵物の重合体に実質的に不溶である。特定の態様では、当該拮抗薬をこの拮抗薬の放出を実質的に防止する材料を含んで成るマトリックスの中に分散させるか、或はこの拮抗薬とイオン性樹脂の複合体を形成させる。追加的態様では、前記拮抗薬貯蔵物に含める拮抗薬を多粒子形態にして、各粒子の各々を当該拮抗薬の放出を実質的に防止する材料で覆っておく。追加的態様では、当該拮抗薬貯蔵物に当該拮抗薬で被覆しておいたビードを含め、そのビードをガラスまたは不活性もしくは非溶解性の重合体で構成させてもよく、そして更に、その被覆しておいたビードを場合により当該拮抗薬の放出を実質的に防止する材料で覆うか或はそれの中に分散させてもよい。そのような拮抗薬をナルトレキソン(naltrexone)、メチルナルトレキソン、ナロキソン(naloxone)、ナルブフィン(nalbuphine)、ナロルフィン(nalorphine)、ナロルフィンジニコチネート、ナルメフェン(nalmefene)、ナジド(nadide)、レバロルファン(levallorphan)、シクロゾシン(cyclozocine)およびこれらの薬学的に受け入れられる塩から成る群から選択する。好適な態様では、そのような拮抗薬を塩、好適には塩基である拮抗薬の塩酸塩として存在させる。
【0015】
追加的面において、本発明の経皮鎮痛薬システムは前記鎮痛薬も前記拮抗薬も透過しないバリヤー層を含んで成り、このバリヤー層は、水にもアルコールにも有機溶媒にも不溶な材料を含んで成る。皮膚から遠位のバリヤー層表面に前記拮抗薬貯蔵物を位置させそして皮膚に近位のバリヤー層表面に前記鎮痛薬貯蔵物を位置させる。
【0016】
追加的面において、本発明の経皮鎮痛薬システムは更に拮抗薬放出速度制御手段も含んで成り、前記拮抗薬放出速度制御手段は、本システムを人である患者に張り付けている期間が約7日以内の時には本システムから前記拮抗薬が実質的に放出されないようにしそして本製剤が不正使用されようとする時、例えば本システムが摂取されるか或は溶媒の中に実質的に浸漬された時などには鎮痛薬放出速度に対する拮抗薬放出速度の比率が不正使用を制限するに充分な比率になるような速度で前記拮抗薬を放出させる手段である。このような拮抗薬放出速度制御手段を皮膚から遠位の拮抗薬貯蔵物表面に位置させる。
【0017】
別の面において、本発明の経皮鎮痛薬システムでは、本製剤が不正使用されようとする時、例えば摂取されるか或は溶媒の中にある期間浸漬された時などには鎮痛薬放出速度に対する拮抗薬放出速度の比率が実質的に絶えず約0.075:1から約30:1、約0.25:1から約20:1、約0.5:1から約16:1、約0.5:1から約14:1、約0.75:1から約12:1、約1:1から約10:1、約1.5:1から約8:1、約2:1から約6:1および約2:1から約4:1になるようにし、ここで、そのような浸漬期間は約1分から約24時間である。
【0018】
別の面において、本発明は、鎮痛薬を皮膚経由で投与するための経皮システムに関し、このシステムは不正使用される可能性が低く、これは、
(a)鎮痛を人である患者に誘発して少なくとも3日間に渡って維持するに充分な量で鎮痛薬(この鎮痛薬はフェンタニルまたはこれの類似物でありそして前記類似物はアルフェンタニル、ロフェンタニル、レミフェンタニル、スフェンタニルおよびトレフェンタニルから成る群から選択される)を含んで成る鎮痛薬貯蔵物、
(b)バリヤー層を通して放出されない形態であるがシステムが摂取されたか或は溶媒に実質的に浸漬された時にそれから放出される前記鎮痛薬用の拮抗薬(ここでは更にそのような拮抗薬をナルトレキソン、メチルナルトレキソン、ナロキソン、ナルブフィン、ナロルフィン、ナロルフィンジニコチネート、ナルメフェン、ナジド、レバロルファン、シクロゾシンおよびこれらの薬学的に受け入れられる塩から成る群から選択する)を含んで成
る拮抗薬貯蔵物、
(c)前記拮抗薬貯蔵物を前記鎮痛薬貯蔵物から分離しておりかつ前記鎮痛薬も前記拮抗薬も実質的に透過しないバリヤー層、および
(d)皮膚から遠位の拮抗薬貯蔵物表面に位置していてこのシステムを人である患者に張り付けている期間が約7日以内の時にはこのシステムから前記拮抗薬が実質的に放出されないようにしそして更にこの製剤が不正使用される可能性がある、例えばこのシステムが摂取されたか或は溶媒に実質的に浸漬された時には鎮痛薬放出速度に対する拮抗薬放出速度の比率が不正使用を制限するに充分な比率になるような速度で前記拮抗薬が放出されるようにする拮抗薬放出速度制御手段、
を含んで成る。
【0019】
本明細書に示す開示を考慮することで本発明の前記および他の態様が本分野の通常の技術者に容易に思い浮かぶであろう。
【0020】
(本発明の詳細な記述)
概要:
本発明は、本システムを皮膚に張り付けた時に当該鎮痛薬が示す治療または有益な効果が低下することなく不正使用される可能性が低い経皮鎮痛薬システムに向けたものである。詳細には、本発明のシステムは、本製剤が不正使用されようとする時には鎮痛薬放出速度に対する拮抗薬放出速度の比率が不正使用を制限するに充分な比率になるような速度で前記拮抗薬が制御様式で放出されるようにしたシステムであり、本システムは、皮膚が拮抗薬に接触した時に起こす感作反応を実質的に最小限にし/無視出来るほどにするものである。
【0021】
本発明の実施では、特に明記しない限り、本分野の技術の範囲内である薬剤製品開発に係わる人が使用する通常の方法を利用する。そのような技術は文献の中に詳細に説明されている。例えばGale,R.、Chandrasekaran,S.K.、Swanson,D.およびWright,J.、「Use of Osmotically Active Therapeutic Agents in Monolithic Systems」、J.Membrane Sci.、7(1980)、319−331;Patini,G.A.およびChein,Y.W.、Swarbrick,J.およびBoylan,J.C.編集、Encyclopedia of Pharmaceutical Technology、ニューヨーク;Marcel Dekker,Inc.1999およびGale,R.、Hunt,J.およびPrevo,M.、Mathiowitz,E.編集、Encyclopedia of Controlled Drug Delivery Patches,Passive、ニューヨーク:J Wiley & Sons,Inc、1999を参照。本明細書の上または以下に挙げる特許、特許出願および出版物は全部引用することによって全体が本明細書に組み入れられる。
【0022】
定義:
本発明の記述および請求において下記の用語を以下に挙げる定義に従って用いる。
【0023】
単数形「a」、「an」および「the」は本文で明らかに他の様式で指示しない限り複数対象を包含する。従って、例えば「ある重合体」の言及は単一の重合体ばかりでなく異なる2種以上の重合体の混合物を包含し、「ある透過促進剤」の言及は単一の透過促進剤ばかりでなく組み合わされた異なる2種以上の透過促進剤も包含する、等々。
【0024】
用語「鎮痛薬」および「薬剤」を本明細書で用いる場合、これらを互換的に用い、フェンタニルおよびフェンタニルの類似物を指す。用語「フェンタニルの類似物」(本明細書では以降「類似物」と呼ぶ)を本明細書で用いる場合、これは非常に効力のある有効な鎮
痛薬、例えばアルフェンタニル、カルフェンタニル、ロフェンタニル、レミフェンタニル、スフェンタニル、トレフェンタニルなどを指す。
【0025】
用語「このシステムから前記拮抗薬が実質的に放出されず」を本明細書で用いる場合、これは、拮抗薬と皮膚の接触が最小限であるように経皮鎮痛薬システムが水に不用意に接触または偶発的に接触した時にこのシステムから放出される拮抗薬の量が最小限であり、従って皮膚が拮抗薬に接触することによって起こる皮膚の感作反応が実質的に最小限である経皮鎮痛薬システムを意味する。
【0026】
用語「水に偶発的に接触」を本明細書で用いる場合、これは、例えばシャワーを浴びている間、発汗中などに高い湿度に短時間接触するか或は液状の水に短時間接触することなどを指す。
【0027】
用語「亜飽和状態のシステム」を本明細書で用いる場合、これは、当該鎮痛薬の濃度が溶解度限界未満であるシステムを指す。そのような鎮痛薬貯蔵物は未溶解成分を含まない単相重合体組成物を構成しており、その場合の鎮痛薬および他の成分は全部がその貯蔵物の中にそれらの飽和濃度以下、好適には未満の濃度で存在する。
【0028】
用語「単相重合体組成物」を本明細書で用いる場合、これは、当該鎮痛薬および他のあらゆる成分が重合体の中に溶解していて当該組成物の中に未溶解成分が投与期間の実質的な部分に渡って存在しないようにそれらが当該貯蔵物の中にそれらの飽和濃度以下、好適には未満の濃度で存在していて前記成分の全部が前記重合体と組み合わされた状態で単相を構成している組成物を指す。
【0029】
用語「成分」を本明細書で用いる場合、これは、当該鎮痛薬貯蔵物の中の要素を指し、これには、これらに限定するものでないが、この上で定義した如き鎮痛薬、添加剤、透過促進剤、安定剤、染料、希釈剤、可塑剤、粘着付与剤、顔料、担体、不活性充填材、抗酸化剤、賦形剤、ゲル化剤、抗刺激剤、血管収縮薬などが含まれる。
【0030】
「鎮痛薬放出制御手段」を本明細書で用いる場合、これは、鎮痛薬の放出速度を加減する手段、例えば本技術分野で一般に公知の速度制御用膜などを指す。
【0031】
用語「拮抗薬放出制御手段」を本明細書で用いる場合、これは、当該拮抗薬の放出速度を制御しかつ皮膚が拮抗薬に接触することによる皮膚の感作反応を実質的に最小限にする手段を指す。この拮抗薬放出制御手段は溶媒が拮抗薬貯蔵物の中に入り込む度合を加減し、従って、当該拮抗薬が不正使用を抑制するに充分な速度で放出されることを可能にしながら不正使用中には当該拮抗薬の放出を加減する手段である。そのような拮抗薬放出制御手段には、物理的手段、例えば層、膜、フィルム、コーティング、シート、付着物などが含まれ、それには、これらに限定するものでないが、速度制御用層、速度制御用膜、多孔質膜または微孔性膜、放出がパッチの縁によって制御される不透過性膜などが含まれる。そのような拮抗薬放出制御手段にはまた化学的手段も含まれ、浸透圧で追い出すか、濃度に依存するか、或は当該拮抗薬放出制御手段を構成している材料の大きさおよび特徴に依存するようにしてもよい。特定の態様では、そのような拮抗薬速度制御手段を当該拮抗薬貯蔵物の中に組み込んで、その放出速度が浸透圧破裂機構(osmotic bursting mechanism)[Gale他(Gale,R.、Chandrasekaran,S.K.、Swanson,D.およびWright,J.、「Use of Osmotically Active Therapeutic Agents in
Monolithic Systems」、J.Membrane Sci.、7(1980)、319−331)が示した]で支配されるようにする。当該拮抗薬貯蔵物の中の拮抗薬の量、当該拮抗薬の粒子サイズ、拮抗薬塩の浸透圧、および当該拮抗薬貯蔵物の
重合体マトリックスが示す物理的特徴などの如き要因を用いて拮抗薬の放出速度を制御する。
【0032】
「DURAGESIC(商標)フェンタニルパッチ」と「DUROGESIC(商標)フェンタニルパッチ」を互換的に用い、これは、この上で考察した如きフェンタニルパッチを指す(またPhysicians Desk Reference、56版、2002、1786−1789頁を参照)。
【0033】
用語「経皮鎮痛薬システムの不正使用」を本明細書で用いる場合、これは、製品のラベルに示されている如き使用以外の経皮鎮痛薬システムの使用を指し、それには、当該システムの不正使用または誤用、当該システムを転用すること、当該システムを摂取するか或は静脈内投与、口腔内投与などの目的で当該システムを溶媒の中に実質的に浸漬することなどが含まれる。
【0034】
用語「Cmax(ng/ml)」を本明細書で用いる場合、これは、当該鎮痛薬、即ちフェンタニルまたはこれの類似物のピーク血液、血漿もしくは血清濃度を指す。
【0035】
用語「標準化Cmax(ng/ml・cm2)」を本明細書で用いる場合、これは、当該システムの活性鎮痛薬搬送領域、例えば鎮痛薬貯蔵物の領域の単位面積(cm2)当たりのCmax(ng/ml)を指す。
【0036】
用語「正規化Cmax[ng/ml・(mg/時)]」を本明細書で用いる場合、これは、Cmax(ng/ml)を投与した鎮痛薬の速度(mg/時)で割った値を指す。
【0037】
用語「定常状態の鎮痛薬の流出速度(flux)」を本明細書で用いる場合、これは、投与期間の実質的な部分に渡る1から20μg/時・cm2の範囲の鎮痛薬流出速度(インビトロおよびインビボ)を指す。
【0038】
用語「生利用度」を本明細書で用いる場合、これは、活性材料または活性部分が薬剤製品から吸収されて作用部位で利用される速度および度合を指す。この速度および度合は薬物動態学−パラメーター、例えば血液、血漿もしくは血清薬剤濃度−時間曲線(AUC)の下の面積および薬剤のピーク、血漿もしくは血清濃度(Cmax)などで確立される。
【0039】
異なる2種類の生成物に試験を同様な実験条件下で受けさせた時にそれらが実質的に同じ薬物動態効果をもたらした場合にはそれらは「生物学的に同等」であると見なす。数種のインビボおよびインビトロ方法を用いて生物学的に同等であることを示すことができる。そのような方法には、好適な順で示して、薬物動態学、薬力学、臨床およびインビトロ研究が含まれる。詳細には、薬物動態測定、例えば血液、血漿もしくは血清薬剤濃度−時間曲線(AUC)下の面積および薬剤のピーク血液、血漿もしくは血清濃度(Cmax)などを用い、本明細書の以下により詳細に記述する如き統計学的判断基準を用いて、生物学的同等を立証する。
【0040】
異なる2種類の生成物に試験を同様な実験条件下で受けさせた時にそれらが実質的に同じ治療効果をもたらした場合にはそれらは「薬理学的に同等」であると見なす(本明細書の以下により詳細に記述する如き数種のインビボおよびインビトロ方法で立証するように)。治療効果は、本明細書の以下により詳細に記述するように、いろいろな要因、例えば当該薬剤の効力、当該薬剤が皮膚の中で示す溶解性および拡散性、皮膚の厚み、皮膚投与部位の中の薬剤濃度、薬剤貯蔵物の中の薬剤濃度などに依存する。一般的には、投与した薬剤の率に関して正規化した当該薬剤のピーク血液、血漿もしくは血清濃度(即ち、この上に定義した如き正規化Cmax)および当該システムの活性薬剤搬送領域の単位面積当
たりに対して標準化した当該薬剤のピーク血液、血漿もしくは血清濃度(即ち、この上に定義した如き標準化Cmax)などの如き手段を用いて、薬理学的同等を立証する。
【0041】
薬剤投与率が当該経皮鎮痛薬システムの大きさに比例する異なる2種類の生成物を比較する時には、当該薬剤のピーク血液、血漿もしくは血清濃度(Cmax)を投与した薬剤の率に関して正規化する(正規化Cmax)か或は当該薬剤のピーク血液、血漿もしくは血清濃度(Cmax)を当該システムの活性薬剤搬送領域の単位面積当たりに標準化する(標準化Cmax)ことのいずれかで生物学的同等または薬理学的同等を立証することができる。しかしながら、単位面積当たりの薬剤投与率が異なる2種類の異なる生成物を比較する時には、当該薬剤のピーク血液、血漿もしくは血清濃度(Cmax)を投与した薬剤の率を基準にして正規化することで生物学的同等または薬理学的同等を確立する必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1に、本発明に従う経皮鎮痛薬システムの1つの態様の図式的透視図を貫く断面を示す。
【図2】本発明の別の態様を貫く断面図を示す。
【図3】本発明の別の態様を貫く断面図を示す。
【図4】本発明の別の態様を貫く断面図を示す。
【図5】本発明の別の態様を貫く断面図を示す。
【図6】Pluronic被覆Soluporである拮抗薬放出制御手段から放出されたナルトレキソンの累積放出を示す。
【図7】Pluronic被覆Soluporである拮抗薬放出制御手段から放出されたナルトレキソンの累積放出を示す。
【図8】Pluronic被覆Soluporである拮抗薬放出制御手段から放出されたナルトレキソンの累積放出を示す。
【図9】Celgard 3401である拮抗薬放出制御手段から放出されたナルトレキソンの放出速度および累積放出を示す。
【図10】Celgard 3401である拮抗薬放出制御手段から放出されたナルトレキソンの放出速度および累積放出を示す。
【図11】不透過性LDPEである拮抗薬放出制御手段から放出されたナルトレキソンの放出速度および累積放出を示す。
【図12】不透過性LDPEである拮抗薬放出制御手段から放出されたナルトレキソンの放出速度および累積放出を示す。
【図13】Celgard 3501である拮抗薬放出制御手段から放出されたナルトレキソンの放出速度および累積放出を示す。
【図14】Celgard 3501である拮抗薬放出制御手段から放出されたナルトレキソンの放出速度および累積放出を示す。
【図15】スパンボンデッドポリプロピレンである拮抗薬放出制御手段から放出されたナルトレキソンの放出速度および累積放出を示す。
【図16】スパンボンデッドポリプロピレンである拮抗薬放出制御手段から放出されたナルトレキソンの放出速度および累積放出を示す。
【図17】スフェンタニルをラットに投与して30分以内に誘発される臨床症状に対してナルトレキソンが示した効果を示す。
【図18】スフェンタニルをラットに投与して30分以内に誘発される臨床症状に対してナルトレキソンが示した効果を示す。
【図19】いろいろなフェンタニルシステムを72時間に渡って経皮投与した後の投与後120時間に渡る血清フェンタニル濃度を示す。
【図20】いろいろなフェンタニルシステムを72時間に渡って経皮投与した後の投与後120時間に渡る血清フェンタニル濃度を示す。
【図21】いろいろなスフェンタニル処置を受けさせた後の最初の投与後120時間以内の血漿スフェンタニル濃度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明は、フェンタニルおよびこれの類似物を鎮痛の目的で被験体の無傷の皮膚に長期間接触させて経皮搬送するに適した鎮痛薬システムを提供するものであり、このシステムは、不正使用される可能性が低くかつ皮膚が拮抗薬に接触することによる感作反応を実質的に最小限にし/無視出来るほどにするものである。詳細には、本発明の経皮鎮痛薬システムは、この製剤が不正使用されようとする時には鎮痛薬放出速度に対する拮抗薬放出速度の比率が不正使用を制限するに充分な比率になるような速度で前記拮抗薬を制限様式で放出させるシステムである。これに関して、本発明の経皮鎮痛薬システムは、当該鎮痛薬が不正使用される状況の時には麻酔効果を遮断するに充分な速度で当該拮抗薬を放出させるシステムである。
【0044】
ここに、図1−4を参照して、本発明に従う経皮鎮痛薬システムの好適な態様は、パッチ1、拮抗薬放出制御手段2、拮抗薬貯蔵物3(皮膚から遠位の拮抗薬貯蔵物表面に前記拮抗薬放出制御手段2が位置する)、不透過性バリヤー層4(皮膚から遠位のバリヤー層4表面に前記拮抗薬貯蔵物3が位置する)、皮膚に近位のバリヤー層4表面に位置する鎮痛薬貯蔵層5(少なくとも皮膚に接触する鎮痛薬貯蔵層5表面6は粘着性である)および剥離可能な保護層7を含んで成る。好適な態様では、薬学的に受け入れられる接着剤を用いて鎮痛薬貯蔵物5を生じさせる。ここに、図2を参照して、本発明の経皮鎮痛薬システムに、更に、皮膚に接触する鎮痛薬貯蔵物6表面に位置する鎮痛薬速度制御手段8(少なくとも皮膚に接触する鎮痛薬速度制御手段8表面は粘着性である)も含める。
【0045】
ここに、図3を参照して、粘着特性を充分には持たない材料を用いて鎮痛薬貯蔵物5を生じさせる。このような態様の本発明の経皮鎮痛薬システムは、パッチ1(皮膚に接触する鎮痛薬貯蔵物6表面をこれが粘着性コーティング9を伴うように構成してもよい)を含んで成る。鎮痛薬貯蔵層5は、この鎮痛薬貯蔵物5の中に当該鎮痛薬および他の成分の全部がそれらの飽和濃度以下、恐らくは未満の濃度で存在する単相重合体組成物である。そのようにすると、未溶解成分が存在しない組成物がもたらされる。ここに、図4を参照して、本発明の経皮鎮痛薬システムに、更に、皮膚に接触する鎮痛薬貯蔵物6表面に位置する鎮痛薬速度制御手段8(少なくとも皮膚に接触する鎮痛薬速度制御手段8表面は粘着性である)も含める。
【0046】
拮抗薬放出制御手段2は、本システムを人である患者に張り付けている期間が約7日以内の時には本システムから前記拮抗薬が実質的に放出されないようにし、皮膚が拮抗薬に接触することによる感作反応を実質的に最小限にしかつ本製剤が不正使用されようとする、例えば本システムが摂取されるか或は溶媒の中に実質的に浸漬される時などには前記拮抗薬を鎮痛薬放出速度に対する拮抗薬放出速度の比率が不正使用を制限するに充分な比率になるような速度で放出させる。このような拮抗薬放出制御手段2は、水/溶媒が拮抗薬貯蔵物の中に入り込む度合を加減し、従って当該拮抗薬の放出を加減するが不正使用中には拮抗薬を不正使用を制限するに充分な速度で放出させる手段である。そのような拮抗薬放出制御手段には、物理的手段、例えば膜、フィルム、コーティング、シート、付着物などが含まれ、それには、これらに限定するものでないが、速度制御用膜、多孔質もしくは微孔性膜、放出がパッチの縁によって制御される不透過性膜などが含まれる。そのような拮抗薬放出制御手段にはまた化学的手段も含まれ、浸透圧で追い出すか、濃度に依存するか、或は当該拮抗薬放出制御手段を構成している材料の大きさおよび特徴に依存するようにしてもよい。特定の態様では、そのような拮抗薬速度制御手段を当該拮抗薬貯蔵物の中に組み込んで、その放出速度が浸透圧破裂機構(Gale他が示した)で支配されるようにする。当該拮抗薬貯蔵物の中の拮抗薬の量、当該拮抗薬の粒子サイズ、拮抗薬塩の浸透
圧、および当該拮抗薬貯蔵物の重合体マトリックスが示す物理的特徴などの如き要因を用いて拮抗薬の放出速度を制御する。
【0047】
好適な態様における拮抗薬放出制御手段2は、偶発的に水分に接触した時には当該拮抗薬が拮抗薬貯蔵物から実質的に放出されないようにする材料を含んで成るモノリシック構造(monolithic)または多くの薄層から成る層であってもよい。詳細には、拮抗薬放出制御手段2はファブリック、多孔性、微孔性、スパンボンデッド(spun−bonded)、スパンレースド(spun laced)、トラックエッチド(track etched)または不透過性材料を含んで成る通気性もしくは閉塞性材料を含んで成るが、そのような材料にはポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリエステル、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、レーヨン(セルロースの溶液を微細な紡糸口金に通しそしてその結果として生じたフィラメントを固化させることで生じさせた合成織物用繊維)、ウッドパルプ、スパンレースドポリエステル、被覆されている紙製品、アルミニウムシートなどおよびこれらの組み合わせが含まれる。好適な態様における拮抗薬放出制御手段は低密度ポリエチレン(LDPE)材料、中密度ポリエチレン(MDPE)材料または高密度ポリエチレン(HDPE)材料などを含んで成る。好適な態様における放出制御手段はLDPEの単層である。好適な追加的態様における拮抗薬放出制御手段はSolupor微孔性超高密度ポリエチレン(UHDPE)材料/フィルム[DSM
Desotech(デンマーク)が製造しているSolupor(商標)]、微孔性ポリプロピレン[Celgard,Inc.(Charlotte、NC)が製造しているCelgard(商標)フィルム]、RoTerac Polyester Capillary Pore Membranes[OYPHEN GmbH(ドイツ)]、スパンレースドポリエステル、ポリプロピレンまたはポリエチレンから成る群から選択される微孔性層を含んで成る。以下により詳細に考察するように、そのような微孔性層に界面活性剤、例えばPluracareポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイドブロック共重合体(BASF、Wyandotte、MI)または親水性重合体、例えばポリビニルピロリドンなどによるさらなる修飾を受けさせることで、拮抗薬放出を追加的に制御してもよい。
【0048】
そのような拮抗薬放出制御手段に持たせる厚みは約0.012mm(0.5ミル)から約0.125mm(5ミル)、好適には0.025mm(1ミル)から約0.1mm(4ミル)、より好適には0.0375mm(1.5ミル)から約0.0875mm(3.5ミル)、更により好適には0.05mm(2ミル)から約0.0625mm(2.5ミル)である。
【0049】
本発明に従う経皮鎮痛薬システムは拮抗薬貯蔵物3を含んで成るが、皮膚から遠位の拮抗薬貯蔵物表面を拮抗薬放出制御手段2の上に位置させる。この拮抗薬貯蔵物の大きさは本パッチの他の層の大きさと同じであってもよいか、或はダイカットパッチ(die cut patch)の縁から拮抗薬を挿入することも可能である。そのような拮抗薬貯蔵物3は本技術分野で公知の如き標準的な材料で構成可能である。例えば、そのような拮抗薬貯蔵物を疎水性、親油性および/または非極性重合体材料、例えばエチレンオクテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、スチレンのブロック共重合体である熱可塑性弾性重合体などで構成させる。好適な態様では、以下により詳細に記述するように、拮抗薬貯蔵物3をEVA、エチレンオクテン共重合体で構成させる。
【0050】
この上で考察したように、拮抗薬貯蔵物3に、本経皮鎮痛薬システムが推奨通り用いられた時および/または水(例えば汗、シャワー、高湿度など)に偶発的に接触した時には
実質的に放出されないが鎮痛薬システムが不正使用された時、即ち摂取されたか或は溶媒に実質的に浸漬された時にはこの鎮痛薬システムから放出され得る拮抗薬を含有させる。好適には、そのような拮抗薬を、これが本発明の経皮鎮痛薬システムを張り付けるべき皮膚に実質的に浸透しない形態で存在させる。そのような拮抗薬貯蔵物に含める拮抗薬を重合体の中に分散させるが、その拮抗薬は拮抗薬貯蔵物の重合体に実質的に不溶である。好適な態様では、そのような拮抗薬を塩、好適には塩基である拮抗薬の塩酸塩として存在させる。そのような拮抗薬が皮膚および重合体の中で示す溶解度が低いと下記のいくつかの利点が得られる:拮抗薬と鎮痛薬の間の望ましくない相互作用が実質的に最小限であること、経皮鎮痛薬システムの安定性/貯蔵寿命が向上すること、そして皮膚が拮抗薬に接触した時の感作反応が実質的に最小限であること。
【0051】
特定の態様では、そのような拮抗薬を、当該拮抗薬の放出を実質的に防止する重合体材料、好適には熱成形可能材料を含んで成るマトリックスの中に分散させるか、或はそのような拮抗薬をイオン性樹脂と一緒にして複合体を生じさせる。追加的態様では、そのような拮抗薬貯蔵物に多粒子形態の拮抗薬を含有させるが、各粒子を個別に前記拮抗薬の放出を実質的に防止する重合体材料(この重合体材料は好適には熱成形可能材料である)で覆っておく。追加的態様では、拮抗薬貯蔵物に当該拮抗薬で被覆されているビードを含有させるが、そのようなビードをガラスまたは不活性もしくは非溶解性の重合体で構成させてもよく、そして更に、その被覆しておいたビードを場合により当該拮抗薬の放出を実質的に防止する重合体材料(この重合体材料は好適には熱成形可能材料である)で被覆しておくか或はそれの中に分散させておいてもよい。そのような拮抗薬をナルトレキソン、メチルナルトレキソン、ナロキソン、ナルブフィン、ナロルフィン、ナロルフィンジニコチネート、ナルメフェン、ナジド、レバロルファン、シクロゾシンおよびこれらの薬学的に受け入れられる塩から成る群から選択する。そのような拮抗薬を好適には塩として存在させる。
【0052】
この上で考察したように、前記拮抗薬貯蔵物に含める拮抗薬を重合体の中に分散させる。そのような拮抗薬を好適にはこの拮抗薬の放出を実質的に防止する熱成形可能材料を含んで成るマトリックスの中に分散させる。別法として、そのような拮抗薬を多粒子形態で存在させて、各粒子を個別に前記拮抗薬の放出を実質的に防止する重合体材料で覆っておく。そのような拮抗薬の放出を実質的に防止する重合体材料は、好適には疎水性、即ち正常な使用中には当該拮抗薬の放出を実質的に防止し、溶媒(水分、例えば汗、シャワー中)に偶発的/不用意に接触している間に放出される拮抗薬の量を最小限にし、そして本製剤が不正使用されようとする、例えば摂取されるか或は溶媒の中に浸漬された時などでは当該拮抗薬を不正使用を制限する量で放出させる材料である。そのような重合体材料は、好適には、当該拮抗薬を固相状態で加工することを可能にしかつ当該拮抗薬の劣化を防止するように低融点の材料である。拮抗薬の放出を実質的に防止する重合体材料の例には、これらに限定するものでないが、ポリエチレン、ポリオクテン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリスチレン重合体および共重合体およびこれらの混合物、ポリスチレン共重合体、例えばスチレンのブロック共重合体(SIS、SBS、SEBS)など、エチレン共重合体、例えばポリエチレンオクテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレンアクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体などおよびこれらの組み合わせが含まれる。
【0053】
追加的態様では、そのような拮抗薬をイオン性樹脂と一緒にして複合体を生じさせる。イオン性樹脂の例には、これらに限定するものでないが、スルホン化ポリスチレン樹脂などが含まれる。好適には、そのような樹脂にスルホン酸官能性を含有させるが、それが塩基である拮抗薬で中和されると、その拮抗薬のスルホン酸塩が生じる。
【0054】
追加的態様における拮抗薬貯蔵物は当該拮抗薬で被覆されているビードを含んで成り、ここでは、そのような球またはビードをガラス、金属または不活性もしくは非溶解性重合体で構成させてもよく、そして更に、その被覆しておいたビードを場合によりこの上に記述したように当該拮抗薬の放出を実質的に防止する重合体材料で被覆するか或はその中に分散させてもよい。そのようなビードの形状も大きさも形態も任意であるが、好適には大きさを小さくし、好適には10ミクロン未満にする。不活性もしくは非溶解性重合体の例には、これらに限定するものでないが、ポリメタアクリル酸メチル、ポリカーボネートおよびポリスチレンが含まれる。
【0055】
拮抗薬貯蔵物3が含有する当該拮抗薬の量を本経皮鎮痛薬システムが不正使用された時に鎮痛薬が示す鎮痛および陶酔効果に対抗するに充分な量にする。そのような拮抗薬貯蔵物に含有させる拮抗薬の量を好適には約0.2から約15mg/cm2、より好適には拮抗薬の量を約0.6から約5mg/cm2、更により好適には拮抗薬の量を約0.75から約1.5mg/cm2にする。そのような拮抗薬貯蔵物に含有させる拮抗薬の量を好適には約20から約70重量%、より好適には拮抗薬の量を約40から約65重量%、更により好適には拮抗薬の量を約50から約60重量%、更により好適には拮抗薬の量を約52から約56重量%にする。好適な態様では、そのような拮抗薬を塩形態にし、好適な拮抗薬はナルトレキソン、メチルナルトレキソン、ナロキソン、ナルブフィン、ナロルフィン、ナロルフィンジニコチネート、ナルメフェン、ナジド、レバロルファンおよびシクロゾシンである。
【0056】
そのような拮抗薬は、好適には、拮抗薬貯蔵物3を構成する重合体に実質的に不溶である。拮抗薬貯蔵物3を構成する材料が当該拮抗薬を溶かす量は、特に、重合体組成物全体の約0重量%から約1重量%、より好適には重合体組成物全体の約0重量%から約0.8重量%、更により好適には重合体組成物全体の約0重量%から約0.5重量%である。そのような拮抗薬貯蔵物3に持たせる厚みは約0.0125mm(0.5ミル)から約0.1mm(4ミル)、好適には約0.015mm(0.6ミル)から約0.0875mm(3.5ミル)、より好適には0.025mm(1ミル)から約0.08mm(3.3ミル)、更により好適には約0.025mm(1ミル)から約0.075mm(3ミル)である。
【0057】
本発明に従う経皮鎮痛薬システムは不透過性バリヤー層4を含んで成るが、皮膚から遠位のバリヤー層4表面に拮抗薬貯蔵物3を位置させかつ皮膚に近位のバリヤー層4表面に鎮痛薬貯蔵物5を位置させる。そのようなバリヤー層4は当該拮抗薬も当該鎮痛薬も透過せず、水、アルコールおよび有機溶媒に不溶な材料を含んで成る。そのようなバリヤー層4は、ポリオレフィン積層物(Dow Chemical、Midland、MI)、アクリロニトリル共重合体フィルム(BAREX、BP Chemicals、Koln、ドイツ)、ポリエチレンナフタレン(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド、ポリウレタン、ポリエチレン、金属被覆フィルムおよびガラス被覆フィルム[このようなフィルムにはエチレン共重合体、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)およびこれらの組み合わせなどが含まれ得る]などの如き重合体を含んで成る。好適な態様におけるバリヤー層は、ポリウレタン、ポリエチレンおよびエチレン共重合体などの如き重合体と積層しているPETの如きポリエステルを含んで成る。好適な態様におけるバリヤー層は、エチレン共重合体、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)などと積層しているPETの如きポリエステルを含んで成る。多数の薄層から成る層としてのバリヤー層に持たせる厚みは約0.075mm(0.3ミル)から約0.125mm(5ミル)、好適には0.025mm(1ミル)から約0.1mm(4ミル)、より好適には0.0625mm(1.5ミル)から約0.0875mm(3.5ミル)、更により好適には0.025mm(1ミル)から約0.005mm(2ミル)である。好適なPET−PE積層物のポリエチレンもしくはEVA積層層は、拮抗薬貯蔵物と支持体の接着
力を向上させかつ拮抗薬貯蔵物が不正使用者によって本システムから容易には除去されないようにする働きをする。
【0058】
鎮痛薬貯蔵物5を皮膚から近位のバリヤー層4表面に位置させ、少なくとも皮膚に接触する鎮痛薬貯蔵物5表面6を粘着性にする。この鎮痛薬貯蔵物5を本技術分野で公知の如き標準的材料で構成させてもよい。例えば、疎水性および/または親油性重合体材料、例えば疎水性ポリウレタン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)などを用いて鎮痛薬貯蔵物を生じさせる。好適な態様では、薬学的に受け入れられる感圧接着剤、好適には以下により詳細に記述する如きポリアクリレートまたはスチレンのブロック共重合体が基になった接着剤などを用いて鎮痛薬貯蔵物5を生じさせる。好適な態様では、動粘度曲線の時間−温度重ね合わせ原理を用いてそのような感圧接着剤をいろいろな温度で測定した時にそれが25℃で示すゼロせん断粘度が1・109ポイズより高くなるようにする。このような要求は、接着剤が冷流れを起こし、それに相当して、本システムの縁の所では鎮痛薬と拮抗薬の交換が起こる度合が高いが、それを防止するに役立つ。
【0059】
本技術分野で公知の標準的な感圧接着剤を用いて粘着性のある鎮痛薬貯蔵物5または粘着性のあるコーティング9を生じさせる。感圧接着剤の例には、これらに限定するものでないが、ポリアクリレート、ポリシロキサン、ポリイソブチレン(PIB)、ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレンのブロック共重合体などが含まれる。スチレンのブロック共重合体が基になった接着剤の例には、これらに限定するものでないが、スチレン−イソプレン−スチレンのブロック共重合体(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレンの共重合体(SBS)、スチレン−エチレンブテン−スチレンの共重合体(SEBS)およびこれらのジブロック類似物が含まれる。
【0060】
アクリル系重合体(acrylic polymers)は、アクリル酸、アクリル酸アルキル、メタアクリレート、二次的な共重合性単量体または官能基を有する単量体を包含する群から選択される少なくとも2種以上の典型的な成分を含んで成る共重合体もしくはターポリマーで構成されている。単量体の例には、これらに限定するものでないが、アクリル酸、メタアクリル酸、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタアクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、メタアクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルブチル、メタアクリル酸2−エチルブチル、アクリル酸イソオクチル、メタアクリル酸イソオクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸デシル、メタアクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、メタアクリル酸ドデシル、アクリル酸トリデシル、メタアクリル酸トリデシル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、アクリロニトリル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタアクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸t−ブチルアミノエチル、メタアクリル酸t−ブチルアミノエチル、アクリル酸メトキシエチル、メタアクリル酸メトキシエチルなどが含まれる。本発明の実施で用いるに適した適切なアクリル系接着剤の追加的例がSatas、「Acrylic Adhesives」、Handbook of Pressure−Sensitive Adhesive Technology、第2版、396−456頁(D.Satas編集)、Van Nostrand Reinhold、ニューヨーク(1989)に記述されている。そのようなアクリル系接着剤は商業的に入手可能である(National Starch and Chemical Corporation、Bridgewater、NJ;Solutia、MA)。ポリアクリレートが基になった接着剤のさらなる例は下記の通りであり、それらを、National Starch(Product Bulletin、2000)が製造している製造番号として下記の如く識別する:87−4098、87−2287、87−4287、87−5216、87−2051、87−2052、87−2054、87−2196、87−9259、87−9261、87−2979、87−2510、87−2353、87−2100、87−28
52、87−2074、87−2258、87−9085、87−9301および87−5298。
【0061】
そのようなアクリル系重合体には架橋した重合体および架橋していない重合体が含まれる。公知の方法を用いてそのような重合体を架橋させることで所望の重合体を生じさせる。好適な態様における接着剤は、ガラス転移温度(Tg)が−10℃未満、より好適にはTgが約−20℃から約−35℃のポリアクリレート系接着剤である。任意の架橋反応を受けさせる前のポリアクリレート系接着剤が示す分子量は重量平均(MW)として表して一般に25,000から10,000,000、好適には50,000から約3,000,000、より好適には100,000から1,000,000の範囲である。架橋後のMWは、重合体化学の技術に関与する技術者に公知のように、無限に近づく。
【0062】
本経皮鎮痛薬システムは鎮痛薬貯蔵物を含んで成るが、この鎮痛薬貯蔵物は、鎮痛薬を包含する成分を飽和濃度以上か或は飽和濃度に等しいか或は飽和濃度未満の濃度で含んで成る。この上で考察したように、好適な態様における鎮痛薬貯蔵物5は、人に鎮痛を誘発して少なくとも3日間に渡って維持するに充分な量の鎮痛薬を含有していて未溶解成分を含まない単相重合体組成物を含んでなる。そのような鎮痛薬をフェンタニルおよびこれの類似物、例えばアルフェンタニル、カルフェンタニル、ロフェンタニル、レミフェンタニル、スフェンタニル、トレフェンタニルなどから成る群から選択する。好適な態様における鎮痛薬貯蔵物は、鎮痛薬を約0.05から約1.75mg/cm2、好適には鎮痛薬を約0.07から約1.50mg/cm2、好適には鎮痛薬を約0.08から約1.25mg/cm2、より好適には鎮痛薬を約0.09から約1.0mg/cm2、より好適には鎮痛薬を約0.1から約0.75mg/cm2、更により好適には鎮痛薬を約0.12から約0.5mg/cm2含んで成る。そのような鎮痛薬は以下に考察する如き形態の重合体形成貯蔵物(polymer forming reservoir)3に溶解すべきである。好適な態様における鎮痛薬は塩基形態であり、好適な鎮痛薬はフェンタニルまたはスフェンタニルである。特に好適な態様における鎮痛薬貯蔵物は、フェンタニルを約0.05から約1.75mg/cm2、好適にはフェンタニルを約0.07から約1.50mg/cm2、好適にはフェンタニルを約0.08から約1.25mg/cm2、より好適にはフェンタニルを約0.09から約1.0mg/cm2、より好適にはフェンタニルを約0.1から約0.75mg/cm2、更により好適にはフェンタニルを約0.12から約0.5mg/cm2含んで成り、この場合のフェンタニルは塩基形態でありかつ完全に溶解する。追加的に好適な態様における鎮痛薬貯蔵物は、スフェンタニルを約0.05から約1.75mg/cm2、好適にはスフェンタニルを約0.07から約1.50mg/cm2、好適にはスフェンタニルを約0.08から約1.25mg/cm2、より好適にはスフェンタニルを約0.09から約1.0mg/cm2、より好適にはスフェンタニルを約0.1から約0.75mg/cm2、更により好適にはスフェンタニルを約0.12から約0.5mg/cm2含んで成り、この場合のスフェンタニルは塩基形態でありかつ完全に溶解する。
【0063】
鎮痛薬貯蔵物5を形成する材料が当該鎮痛薬を溶かす度合は重合体組成物全体の約1重量%から約25重量%、好適には重合体組成物全体の約2重量%から約15重量%、より好適には重合体組成物全体の約4重量%から約12重量%、更により好適には重合体組成物全体の約6重量%から約10重量%である。この貯蔵物5に持たせる厚みは、粘着性コーティング9の有り無しに拘らず、約0.0125mm(0.5ミル)から約0.1mm(4ミル)、好適には約0.025mm(1ミル)から約0.0875mm(3.5ミル)、より好適には0.0375mm(1.5ミル)から約0.075mm(3ミル)、更により好適には約0.04mm(1.6ミル)から約0.05mm(2ミル)である。好適な態様における鎮痛薬はフェンタニル、好適には塩基形態のフェンタニルであり、この場合に貯蔵物5を形成する材料がフェンタニルを溶かす度合は重合体組成物全体の約1重
量%から約25重量%、好適には重合体組成物全体の約3重量%から約15重量%、より好適には重合体組成物全体の約5重量%から約12重量%、更により好適には重合体組成物全体の約7重量%から約10重量%である。この貯蔵物5に持たせる厚みは、粘着性コーティング9の有り無しに拘らず、約0.0125mm(0.5ミル)から約0.1mm(4ミル)、好適には約0.025mm(1ミル)から約0.075mm(3ミル)、より好適には0.0375mm(1.5ミル)から約0.0625mm(2.5ミル)、更により好適には約0.04mm(1.6ミル)から約0.05mm(2ミル)である。追加的に好適な態様における鎮痛薬はスフェンタニル、好適には塩基形態のスフェンタニルであり、この場合に貯蔵物5を形成する材料がスフェンタニルを溶かす度合は重合体組成物全体の約1重量%から約25重量%、好適には重合体組成物全体の約3重量%から約15重量%、より好適には重合体組成物全体の約5重量%から約12重量%、更により好適には重合体組成物全体の約7重量%から約10重量%である。この貯蔵物5に持たせる厚みは、粘着性コーティング9の有り無しに拘らず、約0.0125mm(0.5ミル)から約0.1mm(4ミル)、好適には約0.025mm(1ミル)から約0.075mm(3ミル)、より好適には0.0375mm(1.5ミル)から約0.0625mm(2.5ミル)、更により好適には約0.04mm(1.6ミル)から約0.05mm(2ミル)である。
【0064】
追加的態様では、鎮痛薬貯蔵物5に場合により追加的成分、例えば添加剤、透過促進剤、安定剤、染料、希釈剤、可塑剤、粘着付与剤、顔料、担体、不活性充填材、抗酸化剤、賦形剤、ゲル化剤、抗刺激剤、血管収縮薬、および経皮技術で一般に公知の他の材料などを含有させてもよいが、但しそのような材料を当該貯蔵物の中に飽和濃度未満の濃度で存在させることを条件とする。
【0065】
透過促進剤の例には、これらに限定するものでないが、グリセリンの脂肪酸エステル、例えばカプリン酸、カプリル酸、ドデシル、オレイン酸などのエステル;イソソルビド、スクロース、ポリエチレングリコールの脂肪酸エステル;カプロイルラクチリックアシッド(caproyl lactylic acid);ラウレス−2;ラウレス−2アセテート;ラウレス−2ベンゾエート;ラウレス−3カルボン酸;ラウレス−4;ラウレス−5カルボン酸;オレス−2;グリセリルピログルタメートオレエート;オレイン酸グリセリル;N−ラウロイルサルコシン;N−ミリストイルサルコシン;N−オクチル−2−ピロリドン;ラウラミノプロピオン酸;ポリプロピレングリコール−4−ラウレス−2;ポリプロピレングリコール−4−ラウレス−5ジメチルラウラミド;ラウラミドジエタノールアミン(DEA)が含まれる。好適な促進剤には、これらに限定するものでないが、ピログルタミン酸ラウリル(LP)、モノラウリン酸グリセリル(GML)、モノカプリル酸グリセリル、モノカプリン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル(GMO)およびソルビタンモノラウレートが含まれる。適切な透過促進剤の追加的例が例えば米国特許第5,785,991号、5,843,468号、5,882,676号および6,004,578号に記述されている。
【0066】
特定の態様では、前記鎮痛薬貯蔵物に、瞬間粘着性を低くし、粘度を高くしそして/またはマトリックス構造を粘り強くし得る希釈用材料、例えばポリメタアクリル酸メチルまたはポリメタアクリル酸ブチル(ICI Acrylicsが製造しているELVACITE、例えばELVACITE 1010、ELVACITE 1020、ELVACITE 20)、高分子量のアクリレート、即ち平均分子量が少なくとも500,000のアクリレートなどを含有させる。
【0067】
特定の態様、特にスチレンのブロック共重合体である接着システムを用いる態様では、そのような接着剤組成物が示す接着特性を向上させる目的で可塑剤または粘着付与剤を混合する。適切な粘着付与剤の例には、これらに限定するものでないが、脂肪族炭化水素、
芳香族炭化水素、水添エステル、ポリテルペン、水添ウッドレジン(wood resins)、粘着付与樹脂、例えばESCOREZ、石油化学原料のカチオン重合で作られた脂肪族炭化水素樹脂または石油化学原料の熱重合に続く水添で作られた脂肪族炭化水素樹脂、ロジンエステルである粘着付与剤など、鉱油およびこれらの組み合わせが含まれる。
【0068】
用いる粘着付与剤は前記重合体の混合物と相溶すべきである。例えばスチレンのブロック共重合体の場合、これをゴムと相溶し得る粘着付与樹脂、末端ブロックと相溶し得る樹脂、例えばポリメチルスチレンなど、または可塑剤、例えば鉱油などと一緒に配合してもよい。一般的には、そのような重合体の量を接着剤組成物全体の約5−50%にし、粘着付与剤の量を接着剤組成物全体の約30−85%にしそして鉱油の量を接着剤組成物全体の約2−40%にする。
【0069】
パッチ1に更に鎮痛薬速度制御手段8も含有させて、それを皮膚に接触する鎮痛薬貯蔵物6表面に位置させ、少なくともその皮膚に接触する鎮痛薬速度制御手段8表面を粘着性にする。そのような鎮痛薬速度制御手段8を重合体材料、例えばエチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレンとアクリル酸ブチルの共重合体、ポリイソブチレン(PIB)、ポリエチレン(PE)、例えば低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)など、およびこれらの組み合わせで構成させ、そのような重合体材料に可塑剤を含有させてもよい。好適な態様では、接着性アクリル系、シリコンまたはPIB材料を用いてそのような鎮痛薬速度制御手段を皮膚に接着させる。そのような鎮痛薬速度制御手段に持たせる厚みは約0.012mm(0.5ミル)から約0.125mm(5ミル)、好適には0.025mm(0.6ミル)から約0.1mm(4ミル)、より好適には0.0625mm(0.8ミル)から約0.0875mm(3.5ミル)である。
【0070】
パッチ1に更に剥離可能な保護層7も含める。このような保護層7を重合体材料(場合により金属で被覆されていてもよい)で構成させる。そのような重合体材料の例には、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイミド、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、紙など、およびこれらの組み合わせが含まれる。好適な態様における保護層はシリコン被覆ポリエステルシートを含んで成る。
【0071】
ここに図5を参照して、本発明に従う経皮鎮痛薬システムの好適な態様はパッチ11、拮抗薬放出制御手段12、拮抗薬貯蔵物13(皮膚から遠位の拮抗薬貯蔵物表面が拮抗薬放出制御手段12の上に位置する)、不透過性バリヤー層14(皮膚から遠位のバリヤー層14表面の上に拮抗薬貯蔵物13が位置する)、不透過性バリヤー層14から生じさせたパウチ、鎮痛薬貯蔵物15、鎮痛薬速度制御手段18、および耐アミン性接触接着層(amine resistant contact adhesive layer)19(これを剥離可能な保護層17で覆う)を含んで成る。前記不透過性バリヤー層14の形態は、溶解および懸濁している鎮痛薬が中に入っているゲルの形態の鎮痛薬貯蔵物15が入る中心容積を与えるような形態である。本発明の好適な態様では図5に示す如き耐アミン性インライン(in−line)接着剤を用いるが、本システムを皮膚の上に維持するに適した他の手段を用いることも可能である。そのような手段には、鎮痛薬が本システムから皮膚に至る経路の外側に接着剤が備わっている周辺環(peripheral ring)が含まれ、この場合の接着剤は耐アミン性である必要はない。また、接着性オーバーレイ(overlays)または他の固定手段、例えばバックル、ベルトおよび弾性アームバンドなどの使用も考えられる。構成要素11、12、13、14、15、16、17、18および19は、図1−4に示した相当する構成要素で用いた材料に類似した材料で作られていてもよいが、鎮痛薬貯蔵物15には水性および非水性両方のシステムが含まれ、これは好適にはアクリル系、シリコンまたはポリイソブチレンが基になった材料であり、これに可塑剤を含有させてもよくかつ透過促進剤を含有させてもよく、それの中に
当該鎮痛薬を溶解または分散させる。図5に示した経皮鎮痛薬システムのバリヤー13、鎮痛薬貯蔵物15および鎮痛薬速度制御手段の一般的構成は米国特許第4,588,580号(これは引用することによって本明細書に組み入れられる)に記述した通りである。
【0072】
本発明に従う経皮鎮痛薬システムに含めるいろいろな層を加工する時に用いることができる幅広く多様な材料をこの上に記述してきた。従って、本発明は、本明細書に具体的に開示した材料以外の材料を用いることも意図し、それらには、必要な機能を果たし得ることが本技術分野で後に知られるようになる可能性のある材料が含まれる。
【0073】
薬剤の投与
本発明は、経皮鎮痛薬システムを皮膚に付着させた時に鎮痛薬が示す治療または有益な効果を減ずることなく不正使用される可能性を低くした経皮鎮痛薬システムを提供するものである。この上で考察したように、本経皮鎮痛薬システムは、本システムを推奨通り使用しそして/または偶発的に水に接触した時には実質的に放出されないが本鎮痛薬システムが不正使用、即ち摂取されるか或は溶媒の中に実質的に浸漬された時にはシステムから放出される形態の拮抗薬を含んで成る。詳細には、本発明のシステムは、本製剤が不正使用されようとする時には鎮痛薬放出速度に対する拮抗薬放出速度の比率が不正使用を制限するに充分な比率になるような速度で前記拮抗薬を制御して放出させるシステムである。本経皮鎮痛薬システムでは、このシステムを人である患者に張り付けている期間が約7日以内の時にはこのシステムから前記拮抗薬が実質的に放出されることはない。追加的に、本発明のシステムでは、本製剤が不正使用されようとする時、例えば本明細書の以下により詳細に記述するように本システムが摂取されるか或は溶媒の中に実質的に浸漬された時には鎮痛薬放出速度に対する拮抗薬放出速度の比率が不正使用を制限するに充分な比率になるような速度で前記拮抗薬を放出させる。
【0074】
本経皮システム(1、11)を皮膚に付着させると鎮痛薬貯蔵物(5、15)の中の鎮痛薬が拡散して皮膚の中に入り込んで血流の中に吸収されることで全身的な鎮痛効果がもたらされる。鎮痛の開始はいろいろな要因、例えば当該鎮痛薬の効力、当該鎮痛薬が皮膚の中で示す溶解度および拡散性、皮膚の厚み、皮膚付着部位の中の当該鎮痛薬の濃度、鎮痛薬貯蔵物の中の鎮痛薬濃度などに依存する(例えばフェンタニルおよびこれの類似物が示す相対的浸透性および効力の考察に関しては米国特許第4,588,580号を参照)。同時係属中の国際出願番号WO 200274286(これは引用することによって全体が本明細書に組み入れられる)に記述したように、本経皮鎮痛薬システムの大きさの上限を確立しそして逆に使用可能な投与率の下限を確立する時にはまた皮膚付着部位の中の当該鎮痛薬の濃度も重要である。
【0075】
鎮痛の継続が望まれる時には消耗した経皮鎮痛薬システムを取り外して新しいシステムを新しい場所に付着させる。例えば、慢性的痛みを和らげる目的で投与期間が終了した時点で本経皮鎮痛薬システムを順次取り外しそして新しいシステムに置き換えてもよい。鎮痛薬が新しい経皮鎮痛薬システムから新しい付着領域の中に吸収される速度は一般に経皮鎮痛薬システムを以前に付着させた部位の中に残存する鎮痛薬を体が吸収する速度と実質的に同じであることから、血液の濃度は実質的に一定のままである。加うるに、用量を経時的に多くしてもよくかつ抑えきれない痛みに対処する目的で他の鎮痛薬を同時に用いてもよいことも意図する。
【0076】
好適な態様において、本発明は、約3.3から約82.5ng/ml・(mg/時)、好適には約6.6から約50ng/ml・(mg/時)、より好適には約13から約40ng/ml・(mg/時)、更により好適には約20から約35ng/ml・(mg/時)の範囲の正規化Cmaxを示しかつ約0.001から約0.2ng/ml・cm2、好適には約0.005から約0.15ng/ml・cm2、より好適には約0.008から
約0.1ng/ml・cm2、更により好適には約0.01から約0.08ng/ml・cm2の範囲の標準化Cmaxを示す経皮鎮痛薬システムを提供する。本経皮鎮痛薬システムは、約0.5から約150cm2、好適には約2から約100cm2、より好適には約4から約50cm2、更により好適には約10から約20cm2の経皮鎮痛薬システムを構成するものである。本経皮鎮痛薬システムを皮膚の上に投与した時、これは約0.1から約20μg/時・cm2、好適には約0.75から約10μg/時・cm2、好適には約1から約8μg/時・cm2、より好適には約1.5から約5μg/時・cm2、より好適には約2から約3μg/時・cm2、更により好適には約1から約2.5μg/時・cm2の定常状態鎮痛薬流出速度(steady state analgesic flux)を示す。本発明に従って得ることができる定常状態投与速度(steady−state administration rates)は約0.1から約500μg/時、好適には約1から約300μg/時、より好適には約2から約250μg/時、更により好適には約5から約200μg/時の範囲である。
【0077】
追加的に好適な態様において、本発明は、約3.3から約82.5ng/ml・(mg/時)、好適には約10から約62ng/ml・(mg/時)、より好適には約16から約41ng/ml・(mg/時)、更により好適には約20から約35ng/ml・(mg/時)の範囲の正規化Cmaxを示しかつ約0.01から約0.2ng/ml・cm2、好適には約0.02から約0.15ng/ml・cm2、より好適には約0.03から約0.1ng/ml・cm2、更により好適には約0.04から約0.08ng/ml・cm2の範囲の標準化Cmaxを示す経皮フェンタニルシステムを提供する。本経皮フェンタニルシステムは、約1から約150cm2、好適には約2から約125cm2、より好適には約4から約100cm2、より好適には約5から約75cm2、更により好適には約5から約50cm2である。本経皮フェンタニルシステムを皮膚の上に投与した時、これは約1から約10μg/時・cm2、好適には約1.5から約8μg/時・cm2、より好適には約2から約5μg/時・cm2、更により好適には約2から約3μg/時・cm2の定常状態鎮痛薬流出速度を示す。本発明に従う経皮フェンタニルシステムに関して得ることができる定常状態投与速度は約1から約300μg/時、好適には約2から約250μg/時、より好適には約5から約200μg/時の範囲である。
【0078】
追加的に好適な態様において、本発明は、約0.04から約10ng/ml・(mg/時)、好適には約1から約8ng/ml・(mg/時)、より好適には約2から約5.5ng/ml・(mg/時)、更により好適には約2.5から約5ng/ml・(mg/時)の範囲の正規化Cmaxを示しかつ約0.001から約0.05ng/ml・cm2、好適には約0.005から約0.04ng/ml・cm2、より好適には約0.0075から約0.025ng/ml・cm2、更により好適には約0.01から約0.02ng/ml・cm2の範囲の標準化Cmaxを示す経皮スフェンタニルシステムを提供する。本経皮スフェンタニルシステムは、約0.5から約40cm2、好適には約1から約35cm2、より好適には約2から約30cm2の経皮鎮痛薬システムを構成する。本経皮スフェンタニルシステムを皮膚の上に投与した時、これは約0.1から約10μg/時・cm2、好適には約0.5から約8μg/時・cm2、より好適には約0.75から約6μg/時・cm2、より好適には約1から約5μg/時・cm2、更により好適には約1から約2.5μg/時・cm2の定常状態鎮痛薬流出速度を示す。本発明に従うスフェンタニルシステムに関して得ることができる定常状態投与速度は約0.1から約200μg/時、好適には約0.25から約150μg/時、より好適には約0.5から約100μg/時、より好適には約0.75から約50μg/時、更により好適には約1から約40μg/時の範囲である。
【0079】
投与維持期間を少なくとも3日間から7日以内にするが、3−4日間の投薬計画が好適であると見なす。好適な態様において、本システムを使用している最初のほぼ24時間の
間にそれに入っている鎮痛薬総量の少なくとも3%から40%以下の量の鎮痛薬が投与され、使用している最初のほぼ48時間の間に投与される量は鎮痛薬総量の少なくとも6%から50%以下でありそして投与期間の間に投与される量は鎮痛薬総量の少なくとも10%から75%以下である。好適な態様における経皮鎮痛薬システムはフェンタニルシステムであり、この場合には、本システムを使用している最初のほぼ24時間の間にそれに入っている鎮痛薬総量の少なくとも5%から40%以下の量の鎮痛薬が投与され、使用している最初のほぼ48時間の間に投与される量は鎮痛薬総量の少なくとも15%から50%以下でありそして投与期間の間に投与される量は鎮痛薬総量の少なくとも25%から75%以下である。好適な態様における経皮鎮痛薬システムはスフェンタニルシステムであり、この場合には、本システムを使用している最初のほぼ24時間の間にそれに入っている鎮痛薬総量の少なくとも3%から40%以下の量の鎮痛薬が投与され、使用している最初のほぼ48時間の間に投与される量は鎮痛薬総量の少なくとも6%から50%以下でありそして投与期間の間に投与される量は鎮痛薬総量の少なくとも10%から75%以下である。
【0080】
この上で考察したように、本発明の経皮鎮痛薬システムは、本製剤が不正使用されようとする時、例えば本システムが摂取されるか或は溶媒の中に実質的に浸漬された時などには鎮痛薬放出速度に対する拮抗薬放出速度の比率が不正使用を制限するに充分な比率になるような速度で前記拮抗薬を放出させるシステムである。これに関して、本発明の経皮鎮痛薬システムは、当該鎮痛薬が不正使用される状況の時には麻酔効果を遮断するに充分な速度で当該拮抗薬を放出させるシステムである。この上で考察しそして本実施例で説明するように、前記拮抗薬貯蔵物の中の拮抗薬濃度、拮抗薬塩の粒子サイズ、適切な拮抗薬放出速度制御手段の選択そして本経皮鎮痛薬システムを生じさせる時に必要な工程条件を変えることで、拮抗薬放出速度を調節する。「放出速度の比率」を本明細書で用いる場合、これは、適切な標準的技術を用いて測定した所定時間当たりの鎮痛薬放出速度に対する拮抗薬放出速度の比率を指す。これに関して、本発明は、本パッチが不正使用された時に放出される拮抗薬の量(即ち累積放出量)と本パッチが不正使用された時に放出される鎮痛薬の量(即ち累積放出量)の比率が約0.075:1から約30:1、約0.25:1から約20:1、約0.5:1から約16:1、約0.5:1から約14:1、約0.75:1から約12:1、約1:1から約10:1、約1.5:1から約8:1、約2:1から約6:1および約2:1から約4:1である経皮鎮痛薬システムを提供し、ここで、そのような不正使用の時間、例えば本システムが摂取されるか或は溶媒の中に実質的に浸漬される時間は約1分から約24時間であり、この放出は以下により詳細に記述するように標準化試験方法(例えばインビトロおよびインビボ抽出方法)が基になっている。そのような試験方法のいずれか1つが鎮痛薬放出速度に対する拮抗薬放出速度の比率が不正使用を制限する比率であることを満足させる場合、そのような放出速度の比率は不正使用を制限する比率であると言った要求を満足させると見なす。
【0081】
インビトロ抽出方法の例を以下の実施例により詳細に記述する。一般的には、経皮鎮痛薬システムを標準的な抽出用媒体/溶液の中に入れ、目標の温度になるまで平衡状態にして撹拌する。標準的な抽出用媒体の例には、これらに限定するものでないが、水性媒体、例えば蒸留水、塩溶液、pHを約1から14にするに適切な緩衝剤が入っている水性媒体(例えば燐酸塩緩衝剤が入っている水性媒体のpHは6.5である)、唾液に類似した水性媒体など、有機溶媒、例えばアルコール(例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなど)、ジメチルフラン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、エーテル、アセトン、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ペンタン、ジメチルホルムアミド、ホルムアルデヒド、酢酸エチル、メチルエチルケトンなど、そして通常の家庭用材料、例えばマニキュア除光液、消毒用アルコール、グリセリン、ミネラルスピリット、テレピン油、ウォッカ、調理用油、ビネガー、ガソリン、ケロセン、ドライクリーニング液など、およびこれらの混合物が含まれる。そのような媒体の体積を当該鎮痛薬および拮抗薬の溶解
度限界未満に調整する。その抽出の温度は周囲温度から沸点に近い温度、例えば25℃、50℃および75℃などの範囲内で多様であり得る。いろいろな時点、例えば0、2、5、15、60および120分の時に抽出用媒体を一定分量で取り出して、相当する未使用の抽出用媒体で希釈する。サンプルをHPLCにかけて拮抗薬含有量および鎮痛薬含有量を評価する。そのような試験方法のいずれか1つが上述した抽出用媒体/溶液の中で鎮痛薬放出速度に対する拮抗薬放出速度の比率が不正使用を制限する比率であることを満足させるならば、そのような放出速度の比率は不正使用を制限する比率であると言った要求を満足させると見なす。
【0082】
インビボ抽出方法の例を以下の実施例により詳細に記述する。一般的には、経皮鎮痛薬システムを動物、例えばマウス、ラット、ブタ、ネコ、イヌ、霊長類(サル)、ヒトなどの口腔の中に前以て決めておいた時間、例えば1分から約2時間入れておく。この試験時間が終了した時点で経皮鎮痛薬システムを口腔から取り出して空気で乾燥させる。この経皮鎮痛薬システムに標準的な抽出手順に続いて逆相HPLC分析を受けさせることで、それを残存鎮痛薬含有量および残存拮抗薬含有量に関して分析する。
【0083】
特定の面では、前記拮抗薬放出制御手段に膜選択または界面活性剤修飾を受けさせることで拮抗薬が燐酸塩緩衝媒体の中に放出される速度を調節する。一般的には、ポリエチレンフィルムを用いた時の拮抗薬放出速度が最も低くそしてCelgard膜を用いた時の拮抗薬放出速度が最も高い。鎮痛薬がフェンタニルであり、拮抗薬がナルトレキソンでありそして拮抗薬放出制御手段がPluronic修飾Solupor材料を含んで成る経皮鎮痛薬システムの場合のナルトレキソン放出速度とフェンタニル放出速度の比率は少なくとも2:1である。鎮痛薬がスフェンタニルである経皮鎮痛薬システムでは、スフェンタニルの効力の方が高いことから拮抗薬の放出速度をより高くする必要がある。そのように速度をより速くしようとする場合、拮抗薬放出制御手段を適切に選択、例えばCelgard 3501の使用、いろいろな不織材料の使用そして拮抗薬貯蔵物を露出させることなどで速くすることができ、その場合、拮抗薬貯蔵物の中の拮抗薬の量および拮抗薬の粒子サイズを用いて放出速度を調節する。
【0084】
本発明は、追加的面において、使用中に投与される拮抗薬の量と使用中に投与される鎮痛薬の量の比率が使用する鎮痛薬および拮抗薬、拮抗薬貯蔵物の中の拮抗薬の濃度および拮抗薬放出制御手段の選択に応じて1:1000より高い、好適には1:10,0000より高い経皮鎮痛薬システムを提供する。本発明は、追加的面において、使用中に投与される拮抗薬の量が投与して168時間後に0.1%以下である経皮鎮痛薬システムを提供する。本経皮鎮痛薬システムが不正使用された時に放出される拮抗薬の量は、好適には、不正使用の行動が成されて1、2、4、8または24時間後に70%以上である。
【0085】
本発明の好適な態様は、DURAGESIC(商標)フェンタニルシステムと生物学的に同等な経皮鎮痛薬システムである。詳細には、本発明に従うモノリス型フェンタニルシステムは、DURAGESIC(商標)経皮フェンタニルシステムと比較して、それらに試験を本明細書の以下により詳細に記述するように同様な実験条件下で受けさせた時、実質的に同じ薬物動態学的効果[血液、血漿もしくは血清薬剤濃度−時間曲線(AUC)の下の面積および薬剤のピーク血漿もしくは血清濃度(Cmax)で測定した時]をもたらす。
【0086】
好適な追加的態様において、本発明の経皮鎮痛薬システムはDURAGESIC(商標)フェンタニルシステムと薬理学的的に同等である。詳細には、本発明に従うモノリス型スフェンタニルシステムは、DURAGESIC(商標)経皮フェンタニルシステムと比較して、それらに試験を本明細書の以下により詳細に記述するように同様な実験条件下で受けさせた時、実質的に同じ治療効果をもたらす。
【0087】
標準的な生物学的同等研究を一般に少人数の志願者、通常は24から36人の健康で正常な成人による交差様式で実施する。試験製品を含有させた薬剤、例えば本発明に従う経皮フェンタニルシステムおよび基準製品、例えばDURAGESIC(商標)/DUROGESIC(商標)フェンタニルシステムなどを単一用量で投与して、当該薬剤の血液、血漿もしくは血清濃度を経時的に測定する。本明細書の以下により詳細に記述する如き統計学的方法を用いて、そのような濃度−時間曲線の特徴、例えば血液、血漿もしくは血清薬剤濃度−時間曲線(AUC)下の面積および薬剤のピーク血液、血漿もしくは血清濃度(Cmax)を検査する。一般的には、生物学的同等研究による対数変換パラメーター(log−transformed parameter)(AUCおよびCmax)を用いて2種類の片側統計的検定(one−sided statistical tests)を実施する。そのような2種類の片側検定を0.05レベルの有意さで実施して90%信頼区間を計算する。薬物動態学的パラメーターの平均(試験/基準製品)値の比率に関する信頼区間の下限が80%以上で上限が125%以下ならば試験と基準構成/組成物は生物学的に同等であると見なす。
【0088】
異なる2種類の製品に検定を同様な実験条件下で受けさせた時に、この上に記述した如き数種のインビボおよびインビトロ方法で立証されるように、それらが実質的に同じ治療効果をもたらすならば、それらは一般に「薬理学的に同等」であると見なす。治療効果は、本明細書の以下により詳細に記述するように、いろいろな要因、例えば当該薬剤の効力、当該薬剤が皮膚の中で示す溶解性および拡散性、皮膚の厚み、皮膚投与部位の中の薬剤濃度、薬剤貯蔵物の中の薬剤濃度などに依存する。一般的には、投与した薬剤の率に関して正規化した当該薬剤のピーク血液、血漿もしくは血清濃度(即ち、この上に定義した如き正規化Cmax)および当該システムの活性薬剤搬送領域の単位面積当たりに対して標準化した当該薬剤のピーク血液、血漿もしくは血清濃度(即ち、この上に定義した如き標準化Cmax)などの如き測定値を用いて、薬理学的同等を立証する。
【0089】
薬剤投与率が当該経皮鎮痛薬システムの大きさに比例する異なる2種類の製品を比較する時、当該薬剤のピーク血液、血漿もしくは血清濃度(Cmax)を投与した薬剤の率に関して正規化するか或は当該システムの活性薬剤搬送領域の単位面積当たりに標準化した時に差がないならば、生物学的同等または薬理学的同等を確定する。しかしながら、単位面積当たりの薬剤投与率が異なる2種類の異なる生成物を比較する時には、当該薬剤のピーク血液、血漿もしくは血清濃度(Cmax)を投与した薬剤の率を基準にして正規化することで生物学的同等または薬理学的同等を確定する必要がある。
【0090】
製造方法
本経皮鎮痛薬システムの製造は下記の通りである。以下により詳細に記述するように、公知の方法論に従って拮抗薬貯蔵物および鎮痛薬貯蔵物を製造する。
【0091】
拮抗薬貯蔵物
シグマブレードミキサー(sigma blade mixers)または押出し加工機の如き装置をバッチ式または連続式のいずれかで用いて拮抗薬、好適には拮抗薬塩と重合体材料、好適には熱成形可能材料を高せん断および高温で乾式混合することで、拮抗薬貯蔵物を生じさせることができる。その押出し加工品をカレンダー加工することで剥離用ライナー(release liners)の間の厚みを所望の厚みにした後、高温でバリヤーフィルムおよび/または鎮痛薬速度制御手段に積層させる。
【0092】
半連続方法の場合には、重合体材料[例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体(VAが28重量%)]を連続コニーダーまたは2軸押出し加工機(Coperion Buss Kneader、Stuttgart、ドイツ)に備わっている1つのフィーダーホッパ
ーに1時間当たり約50ポンドの添加速度で添加する。2番目のホッパーに拮抗薬、好適には拮抗薬塩(例えば塩酸ナルトレキソン二水化物)を1時間当たり58.7ポンドの添加速度で添加する。前記押出し加工機を押出し加工品が1分当たり約1ポンドの一定生産速度で生産されるように操作する。前記押出し加工機から出た後の重合体−薬剤混合物をカレンダー加工することでバリヤー層(例えばポリエステル/EVA)と剥離用ライナー(シリコン被覆ポリエステルフィルム)の間の厚みを所望の厚み[約0.03mm(1.2ミル)]にする。その3層構造物を巻き上げロールに巻き取って、それにさらなる加工を受けさせる。
【0093】
本明細書の以下に示す実施例に示すように、拮抗薬の充填率、拮抗薬貯蔵物の厚み、鎮痛薬速度制御手段の膜選択および鎮痛薬速度制御手段の界面活性剤修飾の如きパラメーターをいろいろな不正使用状況に適するように変えることで、鎮痛薬放出速度に対する拮抗薬放出速度の目標を達成することができる。好適な態様では、ディップコーティング、グラビアコーティングなどの如き技術を用いて、鎮痛薬速度制御手段を形成する膜材料の上を界面活性剤で覆う。
【0094】
鎮痛薬貯蔵物
公知の方法論に従って経皮鎮痛薬システムを製造する。この上に記述したようにして、重合体である鎮痛薬貯蔵物材料の溶液をダブルプラネタリーミキサー(double planetary mixer)に加えた後、鎮痛薬、好適にはフェンタニル、より好適にはフェンタニル塩基および場合により透過促進剤を所望量で加える。そのような重合体である鎮痛薬貯蔵物材料は好適には粘着性重合体であり、これを有機溶媒、例えばエタノール、酢酸エチル、ヘキサンなどに溶解させる。次に、前記ミキサーを密封した後、ある時間作動させることで、前記材料の満足される均一性を達成する。前記ミキサーをコネクター手段でキャスティング/フィルム乾燥ラインの末端に位置する適切なキャスティングダイス(casting die)に取り付ける。窒素を用いて前記ミキサーを加圧することで溶液を前記キャスティングダイスに送り込む。溶液が湿った状態のフィルムとして動いているシリコン被覆ポリエステルウエブ(web)の上に流し込まれる。そのウエブをラインに通して引き伸ばしそして1組のオーブンを用いてキャスティング用溶媒を残存物が満足される範囲になるまで蒸発させる。次に、その乾燥させた鎮痛薬貯蔵物フィルムを選択したバリヤーに積層させた後、その積層品を巻き上げロールに巻き取る。別の方法では、本技術分野で公知の装置を用いた乾式混合そして熱フィルム成形を用いて鎮痛薬貯蔵物を成形することも可能である。好適には、前記材料を乾式混合し、スロットダイスを用いて押出し加工した後、カレンダー加工で適切な厚みにする。本明細書の以下に示す実施例に示すように、鎮痛薬の充填率、鎮痛薬貯蔵物の厚み、鎮痛薬の選択、材料の選択および製造方法の如きパラメーターを本発明の鎮痛薬貯蔵物の調製に適するように変えてもよい。
【0095】
経皮鎮痛薬システム
次の操作では、鎮痛薬貯蔵物含有中間体と拮抗薬貯蔵物含有中間体を積層させた後、個々の経皮システムをダイスで切断し、分離した後、適切なパウチストック(pouchstock)を用いて単位包装する(unit−packaged)。前記鎮痛薬貯蔵物含有中間体を乾燥させた直後に前記拮抗薬貯蔵物含有中間体を積層してもよい。通常の装置を用いて経皮鎮痛薬システムを箱詰めする。
【0096】
本発明を実施する具体的な態様の例を以下に示す。本実施例は単に説明の目的で示すものであり、決して本発明の範囲を限定することを意図するものでない。
【0097】
用いる数値(例えば量、温度など)に関して正確さを確保する試みを行いはしたが、勿論、いくらかの実験誤差および逸脱は許されるはずである。
【0098】
本明細書の以下に挙げる実施例では、フェンタニルおよびこれの類似物を長期間に渡って投与することを可能にする本発明のいろいろな経皮鎮痛薬システムの具体例を記述する。本経皮鎮痛薬システムは鎮痛薬貯蔵物を含んで成り、この鎮痛薬貯蔵物は鎮痛薬を飽和濃度以上、同等または以下の濃度で含んで成る。我々の発明に従い、鎮痛薬貯蔵物がフェンタニルを飽和濃度以下の量で含有していて未溶解成分を含まない単相構成物を構成している接着性鎮痛薬貯蔵物システムが現在のところ好適であると考えている。以下の実施例に示すパーセントは全部特に明記しない限り重量パーセントである。
【実施例1】
【0099】
フェンタニル塩基を1.5mg/cm2含有するように図1に従うモノリス型経皮鎮痛薬貯蔵物を調製した。ポリアクリレート系接着剤(National Starch 87−2287、100g)を溶媒(酢酸エチル、128ml)に溶解させた。フェンタニル塩基を前記ポリアクリレート系接着剤溶液にフェンタニルが接着剤溶液に4重量%入っている混合物が生じるに充分な量で加えた後、撹拌することで、その鎮痛薬を溶解させた。この溶液を剥離可能な保護ライナー、例えばシリコン被覆ポリエステルフィルムなどの上に流し込んだ後、溶媒を蒸発させることで、貯蔵物層の厚みを0.05mm(2ミル)にした。
【0100】
この上に記述した如きポリアクリレート系接着剤(National Starch 87−4287、100g)を用いてモノリス型の経皮鎮痛薬貯蔵物を同様に調製した。
【実施例2】
【0101】
下記を除いて実施例1に記述したようにモノリス型経皮鎮痛薬貯蔵物を調製した。酢酸エチルを存在させないで材料を乾式混合し、スロットダイスを用いて押出し加工した後、カレンダー加工することで適切な厚みにした。
【実施例3】
【0102】
図1に従うモノリス型経皮鎮痛薬貯蔵物を下記の如く調製した。ポリアクリレート系接着剤(National Starch 87−2287、500g)とモノラウリン酸グリセリル(GML、10g)を溶媒(酢酸エチル、640ml)に溶解させた。フェンタニル塩基を前記ポリアクリレート系接着剤溶液にフェンタニルが接着剤溶液に4重量%入っている混合物が生じるに充分な量で加えた後、撹拌することで、その鎮痛薬を溶解させた。この溶液を剥離可能な保護ライナー、例えばシリコン被覆ポリエステルフィルムなどの上に流し込んだ後、溶媒を蒸発させることで、貯蔵物層の厚みを0.045mm(1.8ミル)にした。この鎮痛薬経皮システムはフェンタニル塩基を0.35mg/cm2含有していた。
【0103】
この上に記述した如きポリアクリレート系接着剤(National Starch 87−4287、100g)を用いてモノリス型の経皮鎮痛薬貯蔵物を同様に調製する。
【実施例4】
【0104】
下記を除いて実施例3に記述したようにモノリス型経皮鎮痛薬貯蔵物を調製した。酢酸エチルを存在させないで材料を乾式混合し、スロットダイスを用いて押出し加工した後、カレンダー加工することで適切な厚みにした。
【実施例5】
【0105】
この上の実施例1に記述したようにして、ポリアクリレート系接着剤(National Starch 87−4287)の中にスフェンタニルを2.54cm2当たりそれぞれ0.25、0.5、0.75、1.0および1.1mgづつ含有するモノリス型経皮
鎮痛薬貯蔵物を調製した。
【0106】
この上に記述した如きポリアクリレート系接着剤(National Starch 87−2287、100g)を用いてモノリス型の経皮鎮痛薬貯蔵物を同様に調製した。
【実施例6】
【0107】
実施例5に記述したようにして、2.54cm2当たりにスフェンタニルをそれぞれ0.25、0.5、0.75、1.0および1.1mg含有しかつ透過促進剤(1mg)(ピログルタミン酸ラウリル、グリセロールモノラウレート、グリセロールモノカプリレートおよびグリセロールモノカプロエートを包含)を含有するモノリス型経皮鎮痛薬貯蔵物を調製した。
【実施例7】
【0108】
この上の実施例1−6に記述した経皮鎮痛薬貯蔵物をPET/EVAバリヤー層のPET表面に積層(例えば図1に示すように)させることで、経皮鎮痛薬貯蔵物を含有する中間体を生じさせた。
【実施例8】
【0109】
この上の実施例1−6に記述した経皮鎮痛薬貯蔵物を接着性コーティングで被覆した後、PET/EVAバリヤー層のPET表面に積層(例えば図3に示すように)させることで、経皮鎮痛薬貯蔵物を含有する中間体を生じさせる。
【実施例9】
【0110】
この上の実施例1−6に記述した経皮鎮痛薬貯蔵物を鎮痛薬速度制御膜に積層させた後、PET/EVAバリヤー層のPET表面に積層(例えば図2に示すように)させることで、経皮鎮痛薬貯蔵物を含有する中間体を生じさせる。
【実施例10】
【0111】
この上の実施例1−6に記述した経皮鎮痛薬貯蔵物を鎮痛薬速度制御膜に積層させる。皮膚に近位の鎮痛薬速度制御膜表面を接着性コーティングで被覆した後、PET/EVAバリヤー層のPET表面に積層(例えば図4に示すように)させることで、経皮鎮痛薬貯蔵物を含有する中間体を生じさせた。
【実施例11】
【0112】
拮抗薬貯蔵物含有中間体の調製を下記の如く行った。熱成形可能重合体(460g)、例えばEngage(商標)エチレン−オクテン共重合体(DuPont−Dow Elastomers、Midland、MI)などを高トルクブレンダーのボウルの中に入れた。前記ボウルを加熱(150℃)して、前記重合体のペレットをこの重合体のペレットが充分に素練りされて溶融した塊が生じるまで混合した(10分間)。この混合用ボウルに拮抗薬(塩酸ナルトレキソンUSP、540g)を加えた後、この混合物を約30分間混合した。この重合体溶融物を前記混合用ボウルから取り出した後、2枚の動いているウエブ、即ち上方の0.05mm(2ミル)のポリエステル/EVAフィルム層(EVA側が溶融物の方に向く)と下方の0.075mm(3ミル)のシリコン被覆ポリエステルフィルム層の間に押出した。この3層フィルム構造物をカレンダーロールに通すことで、バリヤー層の上に位置する拮抗薬貯蔵物の大きさを約0.025mm(1ミル)の厚みに合わせた。その動いているウエブを押出し加工ラインの終点でロール形態で巻き取った。
【0113】
前記ラインに通す2番目のパスで、前記シリコン被覆インターリービング(interleaving)を剥がした後、そのようにして露出させた拮抗薬貯蔵物に微孔性ポリエチレンフィルム(SOLUPOR、DSM Solutech、Heerlan、オラン
ダ)をカレンダーを用いて熱で積層させた。そのような微孔性膜は最終的な経皮鎮痛薬システムの拮抗薬放出制御手段になる。その結果として生じた構造物を拮抗薬放出制御手段もしくは層の上に位置する拮抗薬貯蔵物を含んで成る中間体生成物としてロールの形態で巻き取った。
【0114】
この上に記述した拮抗薬貯蔵物含有中間体をこの上の実施例1−6に記述した鎮痛薬含有接着性フィルムにこれが乾燥用オーブンを出た時点で積層させることで、下記の6層を有するフィルム積層品を得た:剥離可能ライナー、鎮痛薬貯蔵物、場合により含める速度制御用膜、バリヤー層(ポリエステル、EVA)、拮抗薬貯蔵物(ポリエチレンオクテン−ナルトレキソンHCl)および拮抗薬放出制御手段(微孔性ポリエチレン)。このフィルム全体の厚みは約0.2mm(8ミル)であった。
【0115】
この6層フィルムをダイスで切断して鎮痛薬搬送面積が1cm2から44cm2に相当する個々の経皮鎮痛薬システムを生じさせた。フェンタニル含有システムでは、最終的システムの中のフェンタニルとナルトレキソンの充填比を1:2にしたが、フェンタニル搬送速度(delivery rates)は当該システムの面積に応じて約12.5から約100μg/時であった。スフェンタニル含有システムでは、最終的システムの中のスフェンタニルとナルトレキソンの充填比を1:4−16にしたが、スフェンタニル搬送速度は当該システムの面積に応じて約1.5から約12μg/時であった。
【実施例12】
【0116】
拮抗薬貯蔵物含有中間体の調製を下記の如く行った。熱成形可能重合体(460g)、例えばEngage(商標)エチレン−オクテン共重合体(DuPont−Dow Elastomers、Midland、MI)などを高トルクブレンダーのボウルの中に入れた。前記ボウルを加熱(150℃)して、前記重合体のペレットをこの重合体のペレットが充分に素練りされて溶融した塊が生じるまで混合した(10分間)。この混合用ボウルに拮抗薬(塩酸ナルトレキソンUSP、540g)を加えた後、この混合物を約30分間混合した。この重合体溶融物を前記混合用ボウルから取り出した後、2枚の動いているウエブ、即ち上方の0.075mm(3ミル)のフルオロポリマー製剥離用ライナーフィルム層(フルオロカーボンジアクリレートで被覆されているポリエステルフィルム)と下方の0.075mm(3ミル)のシリコン被覆ポリエステルフィルム層の間に押出した。この3層フィルム構造物をカレンダーロールに通すことで、バリヤー層の上に位置する拮抗薬貯蔵物の大きさを約0.025mm(1ミル)の厚みに合わせた。その動いているウエブを押出し加工ラインの終点でロール形態で巻き取った。
【0117】
前記ラインに通す2番目のパスで、前記シリコン被覆インターリービングの一方を剥がした後、そのようにして露出させた拮抗薬貯蔵物に微孔性ポリエチレンフィルム(SoluPor、Solutech、デンマーク)をカレンダーを用いて熱で積層させた。そのような微孔性膜は最終的な経皮鎮痛薬システムの拮抗薬放出制御手段になる。その結果として生じた構造物を拮抗薬貯蔵物を含んで成る中間体生成物としてロールの形態で巻き取った。
【0118】
前記ラインに通す3番目のパスで、前記シリコン被覆インターリービングを剥がした後、そのようにして露出させた拮抗薬貯蔵物に接着性層をラミネーターを用いて積層させることで、下記の4層を有するフィルム積層品を生じさせた:接着性層、バリヤー層、拮抗薬貯蔵物(ポリエチレンオクテン−ナルトレキソンHCl)および拮抗薬放出制御手段(微孔性ポリエチレン)。この4層フィルムをダイスで切断して、面積が10、20、30および40cm2のフォームフィルシール(form fill seal)(FFS)システムに相当する個々の単位を生じさせた。
【0119】
鎮痛薬貯蔵物含有中間体の調製は下記の通りである。容器の中でフェンタニル塩基(1.4Kg)を精製水(5L、USP)に入れてスラリー状にした。40ガロンの圧力容器の中でエタノール(25Kg、USP)と水(65L、USP)を混合し、この溶液を撹拌しながら室温になるまで冷却した。このエタノール溶液に前記フェンタニルスラリーを加えたが、水(4L、USP)を用いて前記容器を定量的に濯いだ。別の容器内でヒドロキシエチルセルロース(2Kg、QP 100,000[HEC]NF)を水(4L)と一緒にしてスラリー状にした。40ガロンのミキサーを用いて前記フェンタニル混合物を混合しながらこれに前記ヒドロキシエチルセルローススラリーを加えた。残存するヒドロキシエチルセルロースを水(2L)で濯いで前記大型ミキサーの容器に加えた。この容器を即座に100サイクル/分で前記鎮痛薬貯蔵物混合物がゲル化するまで撹拌した。
【0120】
前記フェンタニルのゲルが入っている圧力容器をマルチノズルゲルプレースメントアレイ(multi−nozzle gel placement array)に取り付けて、これをBodolay Form−Fill−Sealing(FFS)機の上に置いた。フォームフィルシールシステムを構築する目的で用いる装置の上に保護ライナー(剥離可能PET−シリコンフィルム)と接着性層(接着性シリコンフィルム、1.57ミル)と鎮痛薬放出速度制御手段[EVAフィルム(VAが9%)、2ミル]で構成されている積層品を配置した。前記鎮痛薬貯蔵物を計量して前記保護ライナー/接着性層/鎮痛薬放出速度制御手段の上に前記ゲルが前記鎮痛薬放出速度制御手段に接触するように置いた。前記バリヤー層(PET/EVA)をこれが前記ゲルを覆うように配置した。前記バリヤー層のEVA成分が前記鎮痛薬放出制御膜と接触していた。このような構成物の周囲を熱で積層させることで、本システムの鎮痛薬部分を生じさせたが、これは縁が密封されたシステムを構成していて、貯蔵物ゲルをシステムの活性薬剤放出面積10cm2当たり245mg有していた。このフィルムをダイスで切断して鎮痛薬搬送面積が10から40cm2に相当する個々の単位を生じさせることで、鎮痛薬貯蔵物含有中間体を生じさせた。
【0121】
この鎮痛薬貯蔵物含有中間体のバリヤー層の上に前記拮抗薬貯蔵物含有中間体の接着性表面を積層させることで、フォームフィルシール(FFS)鎮痛薬貯蔵物を有する経皮鎮痛薬システムを生じさせた。
【0122】
フェンタニル含有システムでは、最終的システムの中のナルトレキソンに対するフェンタニルの充填比を0.5から4にしたが、フェンタニル搬送速度は当該システムの面積に応じて約12.5から約100μg/時であった。
【実施例13】
【0123】
実施例11に記述した拮抗薬貯蔵物含有中間体をこの上の実施例9および10に記述した鎮痛薬貯蔵物に積層させることで、下記の8層を有するフィルム積層品を生じさせた:剥離可能ライナー、接着性層、鎮痛薬速度制御膜、鎮痛薬貯蔵物(鎮痛薬−接着性層)、バリヤー層(ポリエステル、EVA)、拮抗薬貯蔵物(ポリエチレンオクテン−ナルトレキソンHCl)および拮抗薬放出制御手段(微孔性ポリエチレン)。
【0124】
この8層フィルムをダイスで切断して鎮痛薬搬送面積が5.5から44cm2に相当する個々の経皮鎮痛薬システムを生じさせた。フェンタニル含有システムでは、最終的システムの中のフェンタニルとナルトレキソンの充填比を1:2にしたが、フェンタニル搬送速度は当該システムの面積に応じて約12.5から約100μg/時であった。スフェンタニル含有システムでは、最終的システムの中のスフェンタニルとナルトレキソンの充填比を1:4−16にしたが、スフェンタニル搬送速度は当該システムの面積に応じて約1.5から約12μg/時であった。
【実施例14】
【0125】
熱成形可能重合体であるポリオレフィン弾性重合体(460g)、例えばEngage(商標)エチレン−オクテン共重合体(DuPont−Dow Elastomers、Midland、MI)などを塩酸ナルトレキソン二水化物(690g)と一緒に溶融状態(80−100℃)で約1.5から2.5時間混合した。この混合物を差別的剥離ライナー(differential release liners)の間に押出し、カレンダー加工して厚みを0.025mm(1ミル)にすることで、拮抗薬貯蔵物を生じさせた。この拮抗薬貯蔵物をPET−PEバリヤーフィルム(Mediflex 1203、Mylan、St.Albans、VT)のPE面に0−100℃、71psig、4フィート/分で積層させた。残存する剥離ライナーを剥がした後、前記バリヤー層を60℃、38psig、4フィート/分で積層した。この拮抗薬貯蔵物に拮抗薬放出速度制御手段、例えばSolupor 10P05A、Pluronic修飾Solupor、Celgard微孔性ポリプロピレン(Grades 3401および3501)、スパンボンデッドポリプロピレンおよびポリエチレンフィルムなどを60から90psigの範囲において4フィート/分で積層させた。
【0126】
この上に記述した拮抗薬貯蔵物含有中間体のPET表面をこの上の実施例1−6に記述した鎮痛薬含有接着性フィルムにこれが乾燥用オーブンを出た時点で24フィート/分、25℃、70psigで積層させた。ライナーからシステムを容易に剥がすことができるようにする目的で前記ライナーの代わりにスリット剥離ライナー(slit release liner)を用い、そしてそれをダイスで切断することで所望の寸法である5.5から44cm2にした。
【実施例15】
【0127】
熱成形可能重合体、例えばElvax(商標)210エチレン−酢酸ビニル共重合体(1.61Kg、酢酸ビニル28%、E.I.du Pont de Nemours、Wilmington、DE)などを塩酸ナルトレキソン二水化物(1.89Kg)と一緒に溶融状態(77−88℃)で約1.5から2.5時間混合した。この混合物を差別的剥離ライナーの間に押出し、カレンダー(0.031mm)加工で拮抗薬貯蔵物を生じさせた。この拮抗薬貯蔵物をPET−EVAバリヤーフィルム(Scotchpac 9733、3M、Minneapolis、MN)のEVA面に80−85℃、70−90psig、4−19フィート/分で積層させた。残存する剥離ライナーを剥がした後、前記拮抗薬貯蔵物に拮抗薬放出速度制御手段である微孔性ポリエチレン(例えばSolupor
10P05A、またはPluronic修飾Solupor)を80−85℃、50−54psig、4−24フィート/分で積層させた。
【0128】
この上に記述した拮抗薬貯蔵物含有中間体のPET面をこの上の実施例1−6に記述した鎮痛薬含有接着性フィルムにこれが乾燥用オーブンを出た時点で24フィート/分、25℃、70psigで積層させた。ライナーからシステムを容易に剥がすことができるようにする目的で前記ライナーの代わりにスリット剥離ライナーを用い、そしてそれをダイスで切断することで、5.25から44cm2の鎮痛薬搬送面積に相当する個々の経皮鎮痛薬システムを生じさせた。
【実施例16】
【0129】
下記を除いてこの上の実施例に記述した拮抗薬貯蔵物含有中間体を調製した。拮抗薬放出制御手段を下記の如く調製した。溶媒(3%が水で97%がエタノール)を用いてPluronic F108NFの溶液(0.5、1.0および2.0重量%)を生じさせた。このPluronic溶液で前記Solupor材料10P05Aを被覆した後、室温で一晩乾燥させたが、Pluronic溶液を0.5、1.0および2.0重量%用いると被膜の重量がそれぞれ35μg/cm2、50μg/cm2および90μg/cm2に
なった。このような拮抗薬放出制御手段、即ち界面活性剤による修飾を受けさせておいた膜をこの上に示した実施例に記述した如き拮抗薬組成物に積層させた。
【実施例17】
【0130】
下記を除いてこの上の実施例に記述した拮抗薬貯蔵物含有中間体を調製する。拮抗薬放出制御手段(水と接触した時点で孔をインサイチューで生じる塩充填膜)を下記の如く調製する。酢酸ビニル単量体が28%のエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)(Elvax 210、E.I.DuPont de Nemours、Wilmington、DE)を低温粉砕機(cryogrinder)のホッパーに加える(10Kg)。次に、この低温粉砕機に液体窒素を印の所まで充填した後、上部を密封する。この粉砕機を約10分間作動させることで前記重合体のペレットを粉砕して平均粒子サイズを約0.05mmにした後、乾燥(温風流を用いて)させることで、粉砕された重合体を得た。
【0131】
Vブレンダーのホッパーに硫酸マグネシウムを約2%含有する粉末状の塩化ナトリウム(National Formulary、約10Kg)を加える。次に、前記ホッパーに前記粉砕した重合体(10Kg)を加える。前記ホッパーを作動させて約15分間回転させることで、重合体と塩化ナトリウムの成分混合物である粉末混合物を得る。
【0132】
その粉末混合物を単軸押出し加工機(これの加熱セクションを予め約110℃に温めておいた)の添加口に連続的に送り込んだ。前記押出し加工機の終点にフレックス−ニップダイス(flex−nip die)を取り付けて、これを出口の厚みが約0.25mm(10ミル)になるように設定しておいた。前記押出し加工機を作動させてフィルムを生じさせた後、これを3本ロールカレンダーのロールに送り込む。そのロール間隙を厚みが約0.03mm(1.5ミル)の連続フィルムがカレンダーから出るように設定する。そのフィルムを巻き上げロールで巻き取って、それをさらなる製造で用いる。
【0133】
そのような拮抗薬放出制御手段、即ち塩含有フィルムをこの上に示した実施例に記述した如き拮抗薬貯蔵物に積層させる。最終的なシステムをダイスで切断して包装する。このようなシステムを水に浸漬すると、塩化ナトリウム層が急速に水溶性塩を脱離する。その結果としてフィルムがインサイチュー微孔性膜を形成し、これを用いた時の拮抗薬放出速度と鎮痛薬放出速度の比率は少なくとも2:1から20:1である。
【実施例18】
【0134】
代替の連続方法を用いて、実施例11−17に記述した如き拮抗薬貯蔵物含有中間体を製造する。重力もしくは定量供給機を用いて熱可塑性重合体を2軸押出し加工機、往復運動の単軸押出し加工機(「コニーダー」)または連続コンパウンダー(compounder)に供給する。その溶融させた重合体に拮抗薬を同様な様式で送り込んで混合した後、押出してカレンダーに送り込むことで、中間体である拮抗薬貯蔵物積層品を生じさせる。別法として、前記混合物を押出し加工してストランドまたはロッドにし、切断してペレット(約5−10mm)にした後、2番目の段階で押出し加工する。
【実施例19】
【0135】
下記を除いて実施例11−18に記述した拮抗薬中間体含有貯蔵物を調製する。この中間体拮抗薬貯蔵物を押出し加工して、それでバリヤー層のEVA面を冷却用ロール上で直接覆い、そして同じ工程段階で拮抗薬速度制御層を積層する。
【実施例20】
【0136】
実施例11−19に従って製造したシステムを用いて、そのシステムを周囲温度、即ち室温の水に浸漬した時にそれから放出されるナルトレキソンを調査した。そのような経皮鎮痛薬システムを蒸留水に浸漬した。選択した時間が経過した後にシステムを取り出して
新鮮な抽出用媒体に入れた。この操作を全体で24時間繰り返した。この試験手順中に放出されたナルトレキソンは、オピオイド放出を測定する試験手順に類似した試験手順を実施することで測定した時に放出されたフェンタニルの放出速度および度合に一致していた。そのようなシステムを水に少なくとも1時間浸漬した時に放出されたナルトレキソンとフェンタニルの比率は2:1であった。
【実施例21】
【0137】
実施例11−20に従って製造したシステムを用いて、そのシステムを燐酸塩緩衝剤が入っているpHが6.5の緩衝水性媒体に周囲温度、即ち室温または沸騰温度で浸漬した時にそれから放出されるナルトレキソンを調査した。前記媒体の体積を前記拮抗薬および鎮痛薬の溶解度限界未満に調整した。
【0138】
拮抗薬放出制御手段の膜を選択するか或はそれに界面活性剤による修飾を受けさせることで、拮抗薬が燐酸塩緩衝媒体の中に放出される速度を調節する。図6−16に、この上の実施例に記述したいろいろな経皮鎮痛薬システムが示した放出速度特徴を示す。図6、7および8に、Pluronic被覆Soluporである拮抗薬放出制御手段から放出されたナルトレキソンの累積を示す。図9および10に、Celgard 3401である拮抗薬放出制御手段から放出されたナルトレキソンの放出速度および累積のそれぞれを示す。図11および12に、不透過性LDPEである拮抗薬放出制御手段から放出されたナルトレキソンの放出速度および累積放出のそれぞれを示す。図13および14に、Celgard 3501である拮抗薬放出制御手段から放出されたナルトレキソンの放出速度および累積放出のそれぞれを示す。図15および16に、スパンボンデッドポリプロピレンである拮抗薬放出制御手段から放出されたナルトレキソンの放出速度および累積放出のそれぞれを示す。図9−16の各々に三重複実験(#1、2および3)のデータおよび平均データを示す。
【実施例22】
【0139】
抽出研究
無傷の未使用経皮鎮痛薬システム(100μg/時、42cm2)を目標温度になるように平衡状態にしておいた標準的な抽出用媒体/溶液(約300mL)の中に入れた。用いた標準的抽出用媒体の例には通常の家庭用材料、例えば蒸留水、ウォッカ、消毒用アルコール、調理用油、ビネガー/水混合物およびアセトンなどが含まれる。そのような抽出用媒体の一定分量(1mL)を0、2、5、15、60および120分経過した時点で取り出して、未使用の抽出用媒体(5mL)で希釈する。そのサンプルをHPLCでナルトレキソンおよびフェンタニル含有量に関して評価する。抽出を25℃で実施しかつ50℃および75℃(可能ならば)で繰り返した。拮抗薬放出速度と鎮痛薬放出速度の比率の範囲は約0.1:1未満から約3.6:1であった。
【実施例23】
【0140】
本分野の技術者に公知の技術を用いて下に位置する皮膚組織から前以て切除しておいたヒト表皮の断片に実施例11で加工した経皮システムを接着させた。このシステム/皮膚サンドイッチをFranz拡散セルの中に入れた。重複サンプルの数は12であった。その器具全体を32℃に自動温度調節されている水浴の中に浸漬した。前記セルのレセプター区分室(receptor compartment)をpHが6.5の燐酸塩緩衝水溶液で満たした。3日間に渡って選択した間隔で前記レセプター区分室からサンプリングを行った。高感度HPLC検定技術を用いて前記溶液をフェンタニルおよびナルトレキソンに関して評価した。フェンタニル/ナルトレキソン濃度、拡散面積、サンプル体積およびサンプリング時間を用いてフェンタニル/ナルトレキソン流出速度を計算した。その結果は、過渡的始動期間(transient start−up period)の後の平均フェンタニル流出速度は約2μg/時・cm2であったがナルトレキソン流出速度は
検定検出限界未満の値である(即ち<<0.1μg/時・cm2)ことを示していた。
【実施例24】
【0141】
感作研究
システムを下記の如く調製した:
経皮システム(2.5cm2)を皮膚に48時間付着させたままにした時の感作の可能性を評価する目的でオスの無毛モルモット(Charles River Laboratories、ボストン、MA)を用いた。そのような経皮システムを皮膚接着剤(NS
Duro−Tak 87−2287またはNS Duro−Tak 87−4287)、バリヤーフィルム、ナルトレキソンHCl含有重合体(経皮鎮痛薬システム)またはナルトレキソンHClを含有しない重合体(経皮プラセボシステム)、および多孔質支持体層で構成させた。モルモットを下記の6群に分けた:
【0142】
【表1】
【0143】
誘発期間中、群1−5の動物の背側の皮膚領域に個々の試験もしくは対照製品による局所的誘発を21日間に渡って9回(週に3回付着)受けさせた。DNCB(正対照)の場
合には24時間付けたままにする以外は各付着物を約48時間付けたままにした。各皮膚付着を行う前およびシステムを除去した後に皮膚部位をアルコール消毒綿で拭いた後、ガーゼパッドで吸い取って乾燥させた。システムを剥がした後に皮膚マーキング用ペンを用いて皮膚付着部位の縁に印を付けた。群1−4では、最初の誘発用システムを除去して2±0.5時間後に皮膚刺激を評価しかつ最後の誘発用システムを除去して2±0.5時間後および24±1時間後に評価した。群5では、最初および最後の誘発用付着物を除去した後の部位を最初の皮膚刺激に関して評価しそしてシステムを除去してそれぞれ2±0.5時間後および24±1時間後に累積皮膚刺激を評価した。
【0144】
最後の誘発付着を行った後、約10から14日以内に、各モルモットに表に示す処置に従うチャレンジを受けさせた。DNCB(正対照)の場合には24時間付けたままにする以外は各局所的付着物を約48時間付けたままにした。チャレンジ品(challenge article)を除去して約2±0.5時間後、24±1時間後および48±1時間後にあらゆる付着部位に刺激に関する評価を受けさせた。あらゆる評価を修飾Draizeスケールを用いて実施した(紅斑に関して0−4および水腫に関して0−4)。チャレンジして48時間後の紅斑と水腫を一緒にした評価が≧2であるならば感作反応が陽性であると定義した。
【0145】
前記経皮拮抗薬システム(2287接着剤)を用いて最初および最後の誘発付着を行った後に前記システムが示した平均刺激評価は同様であり、累積刺激の証拠は全くなく、そのような経皮システムが与える刺激は穏やかであると分類分けした。前記経皮拮抗薬システム(4287接着剤)を用いて最初および最後の誘発付着を行った後にそれらが示した平均刺激評価は同様であり、累積刺激の証拠は全くなく、そのような経皮システムが与える刺激は低−穏やかであると分類分けした。
【0146】
前記モルモットに前記経皮プラセボシステムまたは経皮拮抗薬システムによる誘発およびチャレンジを受けさせた時、それらのいずれにも感作の証拠は全く観察されなかった。このことからそのような経皮システムは感作の可能性が弱いとして分類分けされる。前記モルモットに正対照であるDNCBによる誘発およびチャレンジを受けさせた時、それらの全部に感作反応が現れ、このことは、そのようなモデルでは反応が現れる可能性があることを立証している。
【0147】
また、アクリレート系皮膚接着剤(skin acrylate adhesives)の製造業者も各接着剤に関する安全性試験を実施しており、その試験にはBuehler感作試験が含まれていた。このデータは各接着剤を安全に用いることができることを裏付けている。
【0148】
意識のある無毛モルモットを用いて実施したGLP研究により、ナルトレキソンゲルを皮内注射するか或は局所的に塗布すると研究条件下で中程度から強い接触感作が起こる可能性があることが分かった。意識のある無毛モルモットに経皮プラセボおよび拮抗薬システムを用いる2番目のGLP研究を実施した。前記モルモットに経皮プラセボシステムまたは経皮拮抗薬システムによる誘発およびチャレンジを受けさせた時、それらのいずれにも感作の証拠は全く観察されなかった。このことからそのような経皮システムは感作の可能性が低いとして分類分けされる。前記モルモットに正対照であるDNCBによる誘発およびチャレンジを受けさせた時、それらの全部に感作反応が現れ、このことは、そのようなモデルでは反応が現れる可能性があることを立証している(研究の詳細を以下に示す)。この研究で用いたアクリレート系皮膚接着剤に関する追加的安全データをその製造業者から入手することができる。臨床感作研究におけるデータは、支持体の中にナルトレキソンを含有する経皮システムおよび含有しない経皮システムを安全に用いることができることを裏付けている。
【実施例25】
【0149】
皮膚刺激研究
スフェンタニルを含有させたいろいろな経皮鎮痛薬システムを72時間に渡って局所的に1回付着させた後に刺激が起こる可能性を評価する目的で、意識のあるオスの無毛モルモット(IAF株:HA−HO−hr)を用いてGLP皮膚刺激研究を実施した。スフェンタニル塩基含有皮膚接着剤(NS Duro−Tak 87−4287)と支持体層で構成させた2種類の経皮システム[厚みが0.025mm(1.0ミル)および0.05mm(2.0ミル)]に試験を受けさせた(実施例11に記述したように)。両方のシステムからスフェンタニル塩基がインビトロで流出する速度は約0.60μg/cm2/時であった。6匹のモルモット各々の無傷の背側皮膚領域に各厚みのシステムの1つを72(±1)時間付着させたままにした。試験品を剥がして30−40分後、24(±1)時間後および48(±1)時間後の部位に紅斑、乾燥か皮および水腫に関する評価を受けさせた。
【0150】
紅斑に関して0−4および水腫に関して0−4のDraizeスケールを用いて各付着部位に評価を受けさせた。初期刺激指数(Primary Irritation Indices)(PII)を計算した。
【0151】
システムを付着させた後の刺激は全部穏やかであることを観察した。臨床的状態の変化は全く起こらなかった。このようなシステムをこれを付着させている時間を72時間以内にした単一付着ヒト臨床研究(single application human clinical study)で用いることができる。
【実施例26】
【0152】
経皮鎮痛薬システムを口腔内投与した後にそれが全身的毒性をもたらすか否かを評価する目的でユカタンミニブタを用いた。経皮システムをフェンタニル含有皮膚接着剤(NS
Duro−Tak 87−4287)、バリヤーフィルム、ナルトレキソンHCl含有重合体および多孔質支持体層(実施例14に記述した如き)で構成させた。ナルトレキソンHClを支持体の中に入れておいた前記経皮鎮痛薬システムは、フェンタニルをシステム当たり約8.8mgおよびナルトレキソンHClを35.2mg含有していた(22cm2のシステムの中に0.4mg/cm2)。
【0153】
S&S Farms(Ranchita、CA)から得た体重が19−27kgで年齢が少なくとも6カ月の健康なメスユカタンミニブタを用いた。これらのブタを耳に刻み目を付けることで識別した。5匹の動物を落ち着かせそしてTelazol(商標)およびIsofluraneをそれぞれ約4mg/kg用いて麻酔をかけ(耳挿管)、そして前記システムをそれらの口腔内に11−30分間入れたままにした。麻酔を止めて動物を回復させた。これらの動物を臨床症状に関して綿密に監視した。
【0154】
口腔から経皮鎮痛薬システムを取り出して空気で乾燥させた。投与した5個の経皮鎮痛薬システムの全部に関して残存薬剤分析を実施した。表2に示すように、フェンタニルおよびナルトレキソンの両方がパッチから放出されて口腔の中に入り込んでいた。ナルトレキソン放出速度とフェンタニル放出速度の比率は約6:1から約8:1であった。投薬を受けさせた5匹の動物の中の4匹には全くフェンタニルの毒性が観察されなかった。
【0155】
【表2】
【実施例27】
【0156】
ラットにおけるスフェンタニル/ナルトレキソン比率研究
群に分けたオスラット[CRL:CD(商標)(SD)IGSBR]に下記の試験作用剤を尾の静脈に通して静脈投与した:塩酸ナルトレキソン単独、スフェンタニル単独またはスフェンタニル投与後直ちに塩酸ナルトレキソン。この研究の目的は、前以て選択しておいた静脈内投与量(18.75μg/kg)のスフェンタニルを用いて誘発させたひどいオピオイド効果の特徴に対して有効な拮抗作用を示すであろうナルトレキソン用量を測定することにあった。その用量群を以下の表に要約する。
【0157】
【表3】
【0158】
試験作用剤を注射した後の動物を臨床症状に関して観察した。ナルトレキソンはナルトレキソン:スフェンタニル用量比を4:1、8:1および16:1にした時にスフェンタニルのオピオイド誘発効果を遮断するに有効であった。前記3種類の用量比各々でナルトレキソンが示した拮抗作用の持続時間は匹敵しており、スフェンタニル対照群が示した臨床症状が持続する時間(一般に1−2時間)と同じ時間持続すると思われた。ナルトレキソン:スフェンタニルの用量比を1:1にした時にはスフェンタニルによって誘発される臨床症状を遮断するにあまり有効でなかったが、このような用量比の時でも臨床症状は一般にスフェンタニル対照群に比べてあまりひどくなくかつ持続期間も短かった。ナルトレキソン(300μg/kg)を単独でラット(N=3)に投与しても明らかな効果は全くもたらされなかった。図17および18に、スフェンタニルがラットに誘発する臨床症状に対してナルトレキソンが示した効果を示す(投与して30分以内の)。
【実施例28】
【0159】
接触感作可能性の評価
健康な被験体における経皮システム
この上の実施例11に記述した如きいろいろな経皮拮抗薬パッチを下記の如く用いて、経皮鎮痛薬システムの成分が健康な被験体に接触感作を起こさせる可能性の試験を実施した:システムA:ナルトレキソンを含有させた経皮鎮痛薬システム(プラセボ)(44cm2)、およびシステムB:経皮鎮痛薬システム(プラセボ)(44cm2)。2番目の目的は定量化できない血清ナルトレキソン濃度を立証することにあった。
【0160】
この研究は誘発、休止およびチャレンジ段階を伴う単一施設、二重盲検、無作為化試験であった。この試験では240人の被験体にシステムAを受けさせそして60人の被験体にシステムBを受けさせた。システムA(ナルトレキソンを含有する経皮プラセボ鎮痛薬システム)はポリエステル製剥離ライナー、ポリアクリレート系接着剤およびポリエステル製支持体(これはナルトレキソン−ポリエチレン層を伴うポリエチレンフィルムに積層)を含有する。システムB(ナルトレキソンを伴わない経皮プラセボ鎮痛薬システム)はポリエステル製剥離ライナー、ポリアクリレート系接着剤およびポリエステル製支持体(これはポリエチレン層を伴うポリエチレンフィルムに積層)を含有する。
【0161】
誘発段階中、各被験体の同じ皮膚部位にシステムAまたはシステムBを全体で21日間に渡ってシステムの数が全体で9になるように連続的に付着させた。先行して付着させたシステムによってひどい皮膚反応が起こったことが理由で付着部位を変える必要がある場合には、同じ腕の異なる部位を用いて21日間に渡る付着プランを継続した。各システムを2日または3日(48時間または72時間)±4時間に渡って付着させたままにした。前記システムを上腕外側の皮膚部位に付着させた。各誘発段階のシステムを取り外した直後そして最後の誘発段階システムを取り外して24時間後に標準的な等級付けスケールを用いて付着部位に局所的反応に関する評価を受けさせた。
【0162】
誘発段階の後に開始する休止段階中の2週間の間には何も付着させなかった。休止段階後に開始するチャレンジ段階中には、誘発段階中に用いなかった上腕外側の未処置皮膚部位に2種類のシステム(Aを1つとBを1つ)付着させて48時間に渡って付着させたままにした。このチャレンジ段階の経皮鎮痛薬システムを剥がした後の皮膚部位を、剥がして0.5、24、48および72時間後に局所的刺激および感作反応に関して評価した。1番目のチャレンジ段階システムを取り外して24時間後に新しい部位に再チャレンジを受けさせると問題になる何らかの感作反応が起こることが立証された。最初のチャレンジを24時間評価した時点で誘発段階で用いなかった上腕外側の未処置皮膚部位(または必要ならば胸の上側)に2種類のシステム(Aを1つとBを1つ)付着させて48時間に渡って付着させたままにした。それらを剥がした後、剥がして0.5、24、48および72時間の追跡評価を実施した。各誘導段階システムを剥がした後の付着部位を標準的な等級付けスケールを用いて局所反応および付着に関して評価した。
【0163】
1日目にシステムを付着させる前そして17、19および22日目にシステムを剥がす前に血液サンプルを採取してナルトレキソン濃度の分析を行った。標準的な手順を用いて血液サンプルから血清を取り出した。有効な液クロ−タンデム質量分析(LC/MS/MS)方法を用いて血清サンプルを分析した。定量の下限は約5pg/mLであった。
【0164】
前記経皮鎮痛薬システムが示す付着および刺激の度合は受け入れられるほどであることが立証された。感作の証拠は全く観察されなかった。大部分の血清サンプルに入っているナルトレキソン濃度は定量限界未満であった。従って、ナルトレキソンが全身に投与される証拠は全く存在しなかった。
【実施例29】
【0165】
活性研究
この研究の主目的は、ナルトレキソンシステムを伴わせた経皮鎮痛薬プラセボシステムをいろいろな条件(通常の活動、シャワーおよび運動)下で付着させたままにした後の血清ナルトレキソン濃度を評価することにあった。
【0166】
2番目の目的は、システムをいろいろな条件(通常の活動、シャワーおよび運動)下で4時間付着させたままにした後の使用済みシステムに入っている残存ナルトレキソンを評価することにあった。
【0167】
この研究は無作為、単一施設、オープンラベル(open−label)、4時間が3回の2シーケンスクロスオーバー(two−sequence crossover)試験であった。被験体を2種類の処置シーケンスの中の一方に無作為に割り当てた。3期間の全部を同じ日に実施した。各期間中、各被験体にナルトレキソン(44cm2)システムを伴う新しい経皮鎮痛薬プラセボシステム1個を4時間に渡って付着させたままにしながら通常の活動、激しい運動(20分間、室温)または温かいシャワー(約40℃で10分間)を浴びることを行ってもらった。通常の活動を最初に行ってもらったが、他の2種類の活動の順は無作為であった。
【0168】
1番目のシステムを付着させる前、そして続いてシステムを付着させて2、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13時間後に血液サンプルを採取して血清のナルトレキソン濃度を測定した。運動およびシャワーを浴びる活動では、その活動が終わった後に追加的血液サンプルを採取した。有効な液クロ−タンデム質量分析(LC/MS/MS)方法を用いて血清サンプルを分析してナルトレキソン濃度を測定した。定量の下限は約5pg/mLであった。
【0169】
前記システムを剥がす直前に各経皮鎮痛薬システムの付着を評価した。システムを付着させておいた皮膚部位の各々を剥がしてほぼ15分後、1時間後および16−24時間後に局所的反応(紅斑、水腫、吹き出物、丘疹およびかゆみを包含)に関して監視した。
【0170】
前記システムを剥がした後の使用済みシステムに残存するナルトレキソンを測定した。使用済みシステムに入っているナルトレキソンを分析する方法を下記の如く実施した。最初にシステムの重量を測定し、保護ライナーを剥がしてナイロン網の上に置いた後、転がしそして抽出用容器の中に入れた。有機溶媒を用いた振とうで抽出を実施した後、それを有機溶媒/水混合物で希釈した。UV検出器が備わっている逆相HPLCを用いてナルトレキソンを測定した。
【0171】
通常および激しい運動中に経皮システムから失われたナルトレキソン含有量のパーセントは平均で約2−3%であった。シャワーを浴びる活動中に経皮システムから失われたナルトレキソン含有量のパーセントは平均で約23%であった。大部分の血清サンプルに入っているナルトレキソン濃度は定量可能限界未満であった。従って、ナルトレキソンが全身に投与される証拠は全くなかった。加うるに、そのような経皮鎮痛薬システムが示す付着および刺激の度合は受け入れられる度合であることも立証された。感作の証拠は全く観察されなかった。
【実施例30】
【0172】
生物学的同等性の研究
実施例14に記述した如きいろいろな経皮フェンタニルシステム−経皮鎮痛薬システムおよびDUROGESIC(商標)フェンタニルシステムを用いてインビトロフェンタニル流出研究を実施して、比較薬物動態パラメーターを以下の表4および5に挙げる。経皮
鎮痛薬システムの薬物動態パラメーターの評価を下記の如く行った。
【0173】
経皮システムの各々を72時間の付着で用いる単一施設、無作為化、単一付着、オープンラベル、2処置、2シーケンス、2期間、クロスオーバー試験:処置Durogesic(商標)50μg/時および処置B[ナルトレキソンを伴わせた経皮フェンタニルシステム(フェンタニルを50μg/時)]を実施して、システムを1回付着させた後の薬物動態を評価した。
【0174】
被験体を無作為に2処置シーケンスの一方に割り当てた(1処置シーケンス当たり少なくとも14人の被験体)。被験体の上腕外側の皮膚部位に2回の72時間付着期間に渡って2個の経皮フェンタニルシステムを逐次的に付着させたままにした。処置と処置の間の最低限ウォッシュアウト期間(minimum washout period)を少なくとも14日から21日以内にした。研究システムを剥がした後にウォッシュアウト期間を開始させた。研究システムを72時間に渡って付着させたままにした。各被験体にナロキソン丸薬(0.5mg)を与えた後、オピオイド拮抗薬としての連続的ナロキソン注入(0.2mg/時)をシステム付着に先立って15分前に開始させて付着中そしてシステムを剥がした後4時間に渡って受けさせた。次に、各被験体に50mgのナルトレキソン錠剤をシステムを剥がして6時間後および20時間後に与えた。
【0175】
両方の処置に関して指定した時間の時(投与前そしてシステムを付着させてから2、3、5、8、12、18、24、30、36、42、48、54、60、66、72、73、74、76、80、84、96、108および120時間後)に各被験体から血液サンプルを採取して、血清のフェンタニル濃度を測定した。有効な液クロ−タンデム質量分析(LC/MS/MS)方法を用いて血清サンプルを分析することでフェンタニル濃度を測定した。指定した時間の時にシステムの局所的皮膚刺激および付着を評価した。
【0176】
このようなインビボ研究の結果を表4および5に挙げる。図19に、いろいろなフェンタニルシステムを経皮投与した後の血清のフェンタニル濃度を示す、即ち本発明の経皮鎮痛薬システム(50μg/時、22cm2)およびDUROGESIC(商標)フェンタニルシステム(50μg/時、20cm2)を1回付着させて最初に投与して120時間以内のフェンタニル濃度を示す。
【0177】
各処置毎にフェンタニル薬物動態パラメーターに関する記述統計学を計算した。そのような濃度−時間曲線の特徴、例えば血清薬剤濃度−時間曲線(AUC)下の面積、最大濃度に至る時間(Tmax)および薬剤のピーク血液、血漿もしくは血清濃度(Cmax)をこの上に記述した如き統計学的方法で検査した。フェンタニル薬物動態パラメーターの解析では、処置、期間、シーケンス、固定効果およびシーケンスランダムエフェクト内の被験体(subject−within−sequence random effect)を包含する混合効果(mixed−effect)分散分析(ANOVA)モデルを用いた(対数変換AUCinfおよびCmax、平均生利用度に関する統計学的方法)[Design and Analysis of Bioavailability and Bioequivalence Studies。S.ChowおよびJ.Liu(編集)、Marcel Dekker、ニューヨーク、NY、1992、70−125頁]。平均パラメーターの最小二乗推定値とこれらの90%信頼区間の間の比率[Schuirmann D.J.、A comparison of the two one−sided tests procedure and the power approach for assessing the equivalence of average bioavailability;J.Pharmacokinet.Biopharm.1987、15:657−680]を計算した。90%信頼区間の下限および上限のそれぞれを80%および125%と比較した。フェンタニルTmaxおよび
フェンタニル部分累積AUCの両方に対してノンパラメトリックウイルコクソンの順位和検定を実施した。これらの検定で0.05の有意水準を用いた。薬物動態パラメーターに関する平均(試験/基準生成物、即ち処置A/処置B)値の比率の信頼区間の下限が80%以上で上限が125%以下ならばそのような試験配合/組成物と基準配合/組成物は生物学的に同等であると見なした。対数変換薬物動態(PK)パラメーターの統計学的解析の結果を表4および5に挙げる。
【0178】
【表4】
【0179】
【表5】
【0180】
【表6】
【0181】
従って、この上に挙げた結果および図19に示す結果から明らかなように、ナルトレキソンを含んで成る本発明のフェンタニル含有経皮鎮痛薬システムは速度制御飽和(rate−controlled,saturated)DUROGESIC(商標)フェンタニルシステムと生物学的に同等な製品である。特に、本発明に従う経皮鎮痛薬システムは経皮DUROGESIC(商標)フェンタニルシステムに匹敵する薬物動態力学パラメーター(pharmacokinetic dynamic parameters)を示す、即ち平均対数変換Cmaxおよび基準配合に対する試験配合の平均比に関する90%信頼区間は80%から120%の範囲内に入る。
【実施例31】
【0182】
いろいろな経皮フェンタニルシステム、即ち実施例15に記述した如き経皮拮抗薬システムおよびDUROGESIC(商標)フェンタニルシステムを用いて、下記を除き、インビボフェンタニル流出試験を実施した。
【0183】
また、付着させて76時間経過する前および経過した時点で血清サンプルを採取し、有効な液クロ−タンデム質量分析(LC/MS/MS)方法を用いて、ナルトレキソン濃度(処置B)に関する分析も行った。
【0184】
【表7】
【0185】
【表8】
【0186】
【表9】
【0187】
従って、この上に挙げた結果および図20に示す結果から明らかなように、フェンタニル含有薬剤貯蔵物を含んで成る本発明の経皮鎮痛薬システムは速度制御飽和DUROGESIC(商標)フェンタニルシステムと生物学的に同等な製品である。特に、本発明に従う経皮鎮痛薬システムは経皮DUROGESIC(商標)フェンタニルシステムに匹敵する薬物動態力学パラメーターを示す、即ち平均対数変換Cmaxおよび基準配合に対する試験配合の平均比に関する90%信頼区間は80%から120%の範囲内に入る。加うるに、血清サンプルに入っているナルトレキソンの濃度は検出濃度未満であり、このことは、経皮鎮痛薬システムからナルトレキソンが全身に吸収されることはないことを示している。
【実施例32】
【0188】
スフェンタニル含有経皮システムに関する薬物動態研究
異なる厚みを持たせた2種類のスフェンタニル含有経皮鎮痛薬システムから吸収されるスフェンタニルの量を推定する目的で、健康な被験体に経皮システムをIV投与することによる単一施設、無作為化、オープンラベル、3処置、2シーケンス、3期間、クロスオーバー試験をスフェンタニルを静脈内投与した場合との比較で実施して、この2種類の経皮スフェンタニルシステムが示す薬物動態学を比較した。この試験中に下記の処置物を投与した:処置A:100μgのスフェンタニルを10μg/時の搬送速度で送り込む連続IVスフェンタニル注入(10時間の注入)、処置B:スフェンタニル含有経皮鎮痛薬システム(6mg、20cm2、接着剤の厚み0.05mm、約10μg/時、72時間付着)、および処置C:スフェンタニル含有経皮鎮痛薬システム(3mg、20cm2、接着剤の厚み0.025mm、10μg/時、72時間付着)。
【0189】
被験体を無作為に2処置シーケンスの一方に割り当てた。最初の期間中、各被験体に連続IVスフェンタニル注入を10μg/時で10時間受けさせた。その後、各被験体に72時間の経皮システムを2回、即ち処置期間2の間に1つのシステムと処置期間3の間に
1つのシステムを上腕外側の未処置皮膚部位に付着させた。処置と処置の間の最低限ウォッシュアウト期間を少なくとも6日から14日以内にした。経皮付着物を剥がした後またはIV注入を止めた後にウォッシュアウト期間を開始させた。システム付着/IV注入開始前14時間の時に各被験体に50mgのナルトレキソン錠剤をオピオイド拮抗薬として与え始めた。システム付着/IV注入中そしてシステム除去/IV注入停止後24時間に渡って被験体に50mgのナルトレキソン錠剤を日に2回与え続けた。
【0190】
IV注入/システム付着後の指定した時間の時に血液サンプルを採取して、血漿のスフェンタニル濃度を測定した。IV処置では、投与前そして注入を開始してから0.5、1、2、3、5、8、10、10.5、11、12、14、18、22、26、30、34、38および48時間後にサンプルを採取した。各経皮処置では、投与前そしてシステムを付着させてから0.5、1、2、3、5、8、12、18、24、30、36、42、48、54、60、66、72、73、74、78、84、96、108および120時間後にサンプルを採取した。有効な液クロ−タンデム質量分析(LC/MS/MS)方法を用いて血漿サンプルを分析することでスフェンタニル濃度を測定した。UV検出器が備わっている逆相HPLCを用いて前記システムの中に残存するスフェンタニルの含有量を測定する。経皮処置の場合には局所的皮膚刺激およびシステムの付着も評価した。有害反応、血圧、体温、心拍数および呼吸数を監視した。この研究の結果を表8に挙げる。図21に、いろいろなスフェンタニル処置を行った後の血漿スフェンタニル濃度(最初に投与して120時間以内)を示す。
【0191】
この上に示した実施例に記述した統計学的方法に従って各処置(A、BおよびC)毎にスフェンタニル薬物動態パラメーターに関する記述統計学を計算した。
【0192】
【表10】
【0193】
【表11】
【0194】
本発明は、以下に示す特徴および/または特質の中の1つ以上単独または他の特徴および特質の中の1つ以上との組み合わせで説明されかつ特徴付けられる:鎮痛薬を皮膚経由で投与するための経皮システムであって、このシステムは不正使用される可能性が低く、これは、
(a)フェンタニルおよびこれの類似物から成る群から選択される鎮痛薬を含んで成る鎮痛薬貯蔵物、
(b)前記鎮痛薬用の拮抗薬を含んで成る拮抗薬貯蔵物、
(c)前記拮抗薬貯蔵物を前記鎮痛薬貯蔵物から分離しておりかつ前記鎮痛薬も前記拮抗薬も実質的に透過しないバリヤー層、
を含んで成り、このシステムは、(i)このシステムを人である患者に張り付けている期間が約7日以内の時にはこのシステムから前記拮抗薬が実質的に放出されないようにしそして(ii)本製剤が不正使用されようとする時、例えばこのシステムが摂取されるか或は溶媒の中に実質的に浸漬される時などには鎮痛薬放出速度に対する拮抗薬放出速度の比率が不正使用を制限するに充分な比率になるような速度で前記拮抗薬を放出させる。本発明の経皮鎮痛薬システムは、鎮痛を人である患者に誘発して少なくとも3日間に渡って維持するに充分な量で鎮痛薬を含有する鎮痛薬貯蔵物を含んで成り、ここで、前記鎮痛薬はフェンタニルまたはこれの類似物でありそして前記類似物をアルフェンタニル、ロフェンタニル、レミフェンタニル、スフェンタニルおよびトレフェンタニルから成る群から選択する。好適な態様における鎮痛薬はフェンタニルまたはスフェンタニル、より好適には塩基形態のフェンタニルまたはスフェンタニルである。前記鎮痛薬貯蔵物は、重合体マトリックス(これは前記鎮痛薬を約1重量%から約20重量%含有する)と場合により透過促進剤を含んで成る。前記鎮痛薬貯蔵物は、未溶解成分を含まない単相構成物を構成していてもよいか、或は前記鎮痛薬を約20重量%以下の量で含有し、透過促進剤を約50重量%以下の量で含有しかつゲル化剤を約0.5から約10重量%含有して成る水性ゲルを構成していてもよい。追加的に、本発明の経皮鎮痛薬システムは、更に、前記鎮痛薬貯蔵物と皮膚の間に位置させる鎮痛薬放出速度制御手段も含んで成る。
【0195】
追加的面において、本発明の経皮鎮痛薬システムは、前記バリヤー層を通して放出されないが本製剤が不正使用されようとする時、例えば摂取された時にか或は溶媒に実質的に浸漬された時にシステムから放出される形態の拮抗薬を含有する拮抗薬貯蔵物を含んで成る。この拮抗薬貯蔵物は、好適には、重合体の中に分散している前記拮抗薬を含んで成り、この拮抗薬は前記拮抗薬貯蔵物の重合体に実質的に不溶である。そのような拮抗薬をナルトレキソン、メチルナルトレキソン、ナロキソン、ナルブフィン、ナロルフィン、ナロ
ルフィンジニコチネート、ナルメフェン、ナジド、レバロルファン、シクロゾシンおよびこれらの薬学的に受け入れられる塩から成る群から選択する。好適な態様では、そのような拮抗薬を塩、好適には塩基である拮抗薬の塩酸塩として存在させる。
【0196】
追加的面において、本発明の経皮鎮痛薬システムは前記鎮痛薬も前記拮抗薬も透過しないバリヤー層を含んで成り、このバリヤー層は、水にもアルコールにも有機溶媒にも不溶な材料を含んで成る。皮膚から遠位のバリヤー層表面に前記拮抗薬貯蔵物を位置させそして皮膚に近位のバリヤー層表面に前記鎮痛薬貯蔵物を位置させる。
【0197】
追加的面において、本発明の経皮鎮痛薬システムは更に拮抗薬放出速度制御手段も含んで成り、前記拮抗薬放出制御手段は、本システムを人である患者に張り付けている期間が約7日以内の時には本システムから前記拮抗薬が実質的に放出されないようにしそして本製剤が不正使用されようとする時、例えば本システムが摂取されるか或は溶媒の中に実質的に浸漬された時などには鎮痛薬放出速度に対する拮抗薬放出速度の比率が不正使用を制限するに充分な比率になるような速度で前記拮抗薬が放出されるようにする手段である。このような拮抗薬放出速度制御手段を皮膚から遠位の拮抗薬貯蔵物表面に位置させる。
【0198】
別の面において、本発明の経皮鎮痛薬システムでは、本製剤が不正使用されようとする時、例えば摂取されるか或は溶媒の中にある期間浸漬された時などには鎮痛薬放出速度に対する拮抗薬放出速度の比率が実質的に連続的に少なくとも約0.5:1から約20:1、好適には1:1から約16:1、より好適には約1.5:1から約8:1、更により好適には2:1から約4:1になるようにし、ここで、そのような浸漬期間は約1分から約24時間である。
【0199】
別の面において、本発明は、鎮痛薬を皮膚経由で投与するための経皮システムに関し、このシステムは不正使用される可能性が低く、これは、
(a)鎮痛を人である患者に誘発して少なくとも3日間に渡って維持するに充分な量で鎮痛薬(この鎮痛薬はフェンタニルまたはこれの類似物でありそして前記類似物はアルフェンタニル、ロフェンタニル、レミフェンタニル、スフェンタニルおよびトレフェンタニルから成る群から選択される)を含んで成る鎮痛薬貯蔵物、
(b)バリヤー層を通して放出されない形態であるがシステムが摂取されたか或は溶媒に実質的に浸漬された時にはそれから放出される前記鎮痛薬用の拮抗薬(ここでは更にそのような拮抗薬をナルトレキソン、メチルナルトレキソン、ナロキソン、ナルブフィン、ナロルフィン、ナロルフィンジニコチネート、ナルメフェン、ナジド、レバロルファン、シクロゾシンおよびこれらの薬学的に受け入れられる塩から成る群から選択する)を含んで成る拮抗薬貯蔵物、
(c)前記拮抗薬貯蔵物を前記鎮痛薬貯蔵物から分離しておりかつ前記鎮痛薬も前記拮抗薬も実質的に透過しないバリヤー層、および
(d)皮膚から遠位の拮抗薬貯蔵物表面に位置していてこのシステムを人である患者に張り付けている期間が約7日以内の時にはこのシステムから前記拮抗薬が実質的に放出されないようにしそして更にこの製剤が不正使用される可能性がある、例えばこのシステムが摂取されたか或は溶媒に実質的に浸漬された時には鎮痛薬放出速度に対する拮抗薬放出速度の比率が不正使用を制限するに充分な比率になるような速度で前記拮抗薬が放出されるようにする拮抗薬放出速度制御手段、
を含んで成る。
【0200】
上述した典型的な態様はあらゆる面で本発明の制限ではなく説明を意図したものである。従って、本発明は詳細な実施の点で本明細書に含めた説明から逸脱しない可能性のある数多くの変形を本分野の技術者によって成される可能性がある。そのような変形および修飾形は全部が本発明の範囲および精神の範囲内に入ると見なす。より具体的には、本発明
の主たる態様は、次のとおりである。
態様1:鎮痛薬を皮膚経由で投与するための経皮システムであって、
(a)フェンタニルおよびこれの類似物から成る群から選択される鎮痛薬を含んで成る鎮痛薬貯蔵物、
(b)前記鎮痛薬用の拮抗薬を含んで成る拮抗薬貯蔵物、
(c)前記拮抗薬貯蔵物を前記鎮痛薬貯蔵物から分離しておりかつ前記鎮痛薬も前記拮抗薬も実質的に透過しないバリヤー層、
を含んで成っていて、(i)このシステムを人である患者に張り付けている期間が約7日以内の時にはこのシステムから前記拮抗薬が実質的に放出されずそして(ii)このシステムが不正使用されようとする時には鎮痛薬放出速度に対する拮抗薬放出速度の比率が不正使用を制限するに充分な比率になるような速度で前記拮抗薬が放出されることで不正使用される可能性が低いシステム。
態様2:更に拮抗薬放出速度制御手段も含んで成る態様1記載のシステム。
態様3:前記拮抗薬放出速度制御手段がこのシステムを人である患者に張り付けている期間が約7日以内の時にはこのシステムから前記拮抗薬が実質的に放出されないようにしそしてこのシステムが不正使用されようとする時には前記拮抗薬が鎮痛薬放出速度に対する拮抗薬放出速度の比率が不正使用を制限するに充分な比率になるような速度で放出されるようにする態様2記載のシステム。
態様4:鎮痛薬を皮膚経由で投与するための経皮システムであって、
(a)フェンタニルおよびこれの類似物から成る群から選択される鎮痛薬を含んで成る鎮痛薬貯蔵物、
(b)前記鎮痛薬用の拮抗薬を含んで成る拮抗薬貯蔵物、
(c)前記拮抗薬貯蔵物を前記鎮痛薬貯蔵物から分離しておりかつ前記鎮痛薬も前記拮抗薬も実質的に透過しないバリヤー層、
を含んで成っていて、(i)このシステムを人である患者に張り付けている期間が約7日以内の時にはこのシステムから前記拮抗薬が実質的に放出されずそして(ii)このシステムが摂取された時または溶媒の中に実質的に浸漬された時には鎮痛薬放出速度に対する拮抗薬放出速度の比率が不正使用を制限するに充分な比率になるような速度で前記拮抗薬が放出されることで不正使用される可能性が低いシステム。
態様5:更に拮抗薬放出速度制御手段も含んで成る態様4記載のシステム。
態様6:前記拮抗薬放出速度制御手段がこのシステムを人である患者に張り付けている期間が約7日以内の時にはこのシステムから前記拮抗薬が実質的に放出されないようにしそしてこのシステムが摂取されたか或は溶媒の中に実質的に浸漬された時には前記拮抗薬が鎮痛薬放出速度に対する拮抗薬放出速度の比率が不正使用を制限するに充分な比率になるような速度で放出されるようにする態様5記載のシステム。
態様7:前記拮抗薬放出速度制御手段が皮膚から遠位の前記拮抗薬貯蔵物表面に位置する態様3または6記載のシステム。
態様8:前記拮抗薬放出速度制御手段が前記拮抗薬貯蔵物上の層、膜、フィルム、コーティング、シートおよび付着物から成る群から選択される態様7記載のシステム。
態様9:前記拮抗薬放出速度制御手段が速度制御用層、速度制御用膜、多孔質膜および微孔性膜から成る群から選択される態様8記載のシステム。
態様10:前記鎮痛薬貯蔵物が鎮痛を人である患者に誘発して少なくとも3日間に渡って維持するに充分な量で鎮痛薬を含んで成る前態様のいずれか記載のシステム。
態様11:前記鎮痛薬貯蔵物が鎮痛を誘発して3−7日間に渡って維持するに充分な量で溶解しているフェンタニルまたはこれの類似物を含んで成る態様10記載のシステム。
態様12:前記鎮痛薬貯蔵物が未溶解成分を含まない単層構成物を含んでなる前態様のいずれか記載のシステム。
態様13:前記鎮痛薬貯蔵物が接着性重合体を用いて生じさせたものである前態様のいずれか記載のシステム。
態様14:前記鎮痛薬貯蔵物がフェンタニルおよびこれの類似物に対して約1重量%から
約25重量%の可溶性を有する重合体を含んで成る態様13記載のシステム。
態様15:前記貯蔵物がフェンタニルまたはこれの類似物を約0.05から約1.75mg/cm2含んで成る態様14記載のシステム。
態様16:前記鎮痛薬貯蔵物が更に透過促進剤も含んで成る態様14記載のシステム。
態様17:前記鎮痛薬貯蔵物が重合体マトリックスと場合により透過促進剤を含んで成っていて前記重合体マトリックスが前記鎮痛薬を約5重量%から約50重量%含んで成る態様11記載のシステム。
態様18:前記鎮痛薬を約1重量%以下の量で含有し、透過促進剤を約25重量%以下の量で含有しかつゲル化剤を約1−10%含有して成る水性ゲルを含んで成る態様17記載のシステム。
態様19:更に前記鎮痛薬貯蔵物と皮膚の間に位置させる鎮痛薬放出速度制御手段も含んで成っていて前記放出速度制御手段が前記鎮痛薬を透過する度合の方がそれが前記透過促進剤を透過する度合よりも低い態様1記載のシステム。
態様20:前記拮抗薬貯蔵物が皮膚から遠位の前記バリヤー層表面に隣接して位置しかつ前記鎮痛薬貯蔵物が皮膚に近位の前記バリヤー層表面に隣接して位置する前態様のいずれか記載のシステム。
態様21:前記拮抗薬貯蔵物が重合体の中に分散している前記拮抗薬を含んで成る前態様のいずれか記載のシステム。
態様22:このシステムが約0.01から約0.2ng/ml・cm2の標準化Cmaxを示す前態様のいずれか記載のシステム。
態様23:このシステムが約3.3から約82.5ng/ml・(mg/時)の正規化Cmaxを示す前態様のいずれか記載のシステム。
態様24:このシステムが約0.1から約10μg/時・cm2のインビボ定常状態鎮痛薬流出速度を示す前態様のいずれか記載のシステム。
態様25:DURAGESIC(商標)経皮フェンタニルシステムと生物学的に同等な前態様のいずれか記載のシステム。
態様26:DURAGESIC(商標)経皮フェンタニルシステムと薬理学的に同等な前態様のいずれか記載のシステム。
態様27:前記鎮痛薬がフェンタニル類似物でありそして前記類似物がアルフェンタニル、ロフェンタニル、レミフェンタニル、スフェンタニルおよびトレフェンタニルから成る群から選択されそして前記拮抗薬がナルトレキソン、メチルナルトレキソン、ナロキソン、ナルブフィン、ナロルフィン、ナロルフィンジニコチネート、ナルメフェン、ナジド、レバロルファン、シクロゾシンおよびこれらの薬学的に受け入れられる塩から成る群から選択される前態様のいずれか記載のシステム。
態様28:前記鎮痛薬がフェンタニルでありそしてこのシステムが摂取されたか或は溶媒の中にある期間浸漬された時にこのシステムが実質的に示す拮抗薬放出速度と鎮痛薬放出速度の比率が約0.5:1から約20:1である態様25記載のシステム。
態様29:前記鎮痛薬がスフェンタニルでありそしてこのシステムが摂取されたか或は溶媒の中にある期間浸漬された時にこのシステムが実質的に示す拮抗薬放出速度と鎮痛薬放出速度の比率が少なくとも約4:1である態様26記載のシステム。
態様30:前記拮抗薬がナルトレキソンである請求項28または態様29記載のシステム。
態様31:鎮痛薬を皮膚経由で投与するための経皮システムであって、
(a)フェンタニルまたはこれの類似物である鎮痛薬を鎮痛を人である患者に誘発して維持するに充分な量で含んで成る鎮痛薬貯蔵物、
(b)バリヤー層を通して放出されない形態であるがシステムが摂取されたか或は溶媒に実質的に浸漬された時にそれから放出される前記鎮痛薬用の拮抗薬を含んで成る拮抗薬貯蔵物、
(c)前記拮抗薬貯蔵物を前記鎮痛薬貯蔵物から分離しておりかつ前記鎮痛薬も前記拮抗薬も実質的に透過しないバリヤー層、および
(d)皮膚から遠位の前記拮抗薬貯蔵物表面に位置していてこのシステムを人である患者に張り付けている期間が約7日以内の時にはこのシステムから前記拮抗薬が実質的に放出されないようにしそして更にこのシステムが不正使用されようとする時には鎮痛薬放出速度に対する拮抗薬放出速度の比率が不正使用を制限するに充分な比率になるような速度で前記拮抗薬が放出されるようにする拮抗薬放出速度制御手段、
を含んで成ることで不正使用される可能性が低いシステム。
態様32:鎮痛薬を皮膚経由で投与するための経皮システムであって、
(a)フェンタニルまたはこれの類似物である鎮痛薬を鎮痛を人である患者に誘発して維持するに充分な量で含んで成る鎮痛薬貯蔵物、
(b)バリヤー層を通して放出されない形態であるがシステムが摂取されたか或は溶媒に実質的に浸漬された時にそれから放出される前記鎮痛薬用の拮抗薬を含んで成る拮抗薬貯蔵物、
(c)前記拮抗薬貯蔵物を前記鎮痛薬貯蔵物から分離しておりかつ前記鎮痛薬も前記拮抗薬も実質的に透過しないバリヤー層、および
(d)皮膚から遠位の前記拮抗薬貯蔵物表面に位置していてこのシステムを人である患者に張り付けている期間が約7日以内の時にはこのシステムから前記拮抗薬が実質的に放出されないようにしそして更にこのシステムが摂取される或は溶媒の中に実質的に浸漬された時には鎮痛薬放出速度に対する拮抗薬放出速度の比率が不正使用を制限するに充分な比率になるような速度で前記拮抗薬が放出されるようにする拮抗薬放出速度制御手段、
を含んで成ることで不正使用される可能性が低いシステム。
態様33:前記拮抗薬放出速度制御手段が前記拮抗薬貯蔵物上の層、膜、フィルム、コーティング、シートおよび付着物から成る群から選択される態様31または請求項32記載のシステム。
態様34:前記拮抗薬放出速度制御手段が速度制御用層、速度制御用膜、多孔質膜および微孔性膜から成る群から選択される態様33記載のシステム。
態様35:前記鎮痛薬貯蔵物が鎮痛薬を鎮痛を人である患者に誘発して少なくとも3日間に渡って維持するに充分な量で含んで成る前記態様31−34のいずれか記載のシステム。
態様36:前記鎮痛薬貯蔵物が溶解しているフェンタニルまたはこれの類似物を鎮痛を誘発して3−7日間に渡って維持するに充分な量で含んで成る態様35記載のシステム。
態様37:前記鎮痛薬貯蔵物が未溶解成分を含まない単層構成物を含んでなる前記態様31−36のいずれか記載のシステム。
態様38:前記鎮痛薬貯蔵物が接着性重合体を用いて生じさせたものである前記態様31−37のいずれか記載のシステム。
態様39:前記鎮痛薬貯蔵物がフェンタニルおよびこれの類似物に対して約1重量%から約25重量%の可溶性を有する重合体を含んで成る態様38記載のシステム。
態様40:前記貯蔵物がフェンタニルまたはこれの類似物を約0.05から約1.75mg/cm2含んで成る態様39記載のシステム。
態様41:前記鎮痛薬貯蔵物が更に透過促進剤も含んで成る前記態様31−40のいずれか記載のシステム。
態様42:前記鎮痛薬貯蔵物が重合体マトリックスと場合により透過促進剤を含んで成っていて前記重合体マトリックスが前記鎮痛薬を約5重量%から約50重量%含んで成る態様36記載のシステム。
態様43:前記拮抗薬貯蔵物が重合体の中に分散している前記拮抗薬を含んで成る前記態様31−42のいずれか記載のシステム。
態様44:このシステムが約0.01から約0.2ng/ml・cm2の標準化Cmaxを示す前記態様31−43のいずれか記載のシステム。
態様45:このシステムが約3.3から約82.5ng/ml・(mg/時)の正規化Cmaxを示す前記態様31−44のいずれか記載のシステム。
態様46:このシステムが約0.1から約10μg/時・cm2のインビボ定常状態鎮痛
薬流出速度を示す前記態様31−45のいずれか記載のシステム。
態様47:DURAGESIC(商標)経皮フェンタニルシステムと生物学的に同等な前記態様31−46のいずれか記載のシステム。
態様48:DURAGESIC(商標)経皮フェンタニルシステムと薬理学的に同等な前記態様31−46のいずれか記載のシステム。
態様49:前記フェンタニル類似物がアルフェンタニル、ロフェンタニル、レミフェンタニル、スフェンタニルおよびトレフェンタニルから成る群から選択されそして前記拮抗薬がナルトレキソン、メチルナルトレキソン、ナロキソン、ナルブフィン、ナロルフィン、ナロルフィンジニコチネート、ナルメフェン、ナジド、レバロルファン、シクロゾシンおよびこれらの薬学的に受け入れられる塩から成る群から選択される前記態様31−48のいずれか記載のシステム。
態様50:前記鎮痛薬がフェンタニルでありそしてこのシステムが摂取されたか或は溶媒の中にある期間浸漬された時にこのシステムが実質的に示す拮抗薬放出速度と鎮痛薬放出速度の比率が約0.5:1から約20:1である態様47記載のシステム。
態様51:前記鎮痛薬がスフェンタニルでありそしてこのシステムが摂取されたか或は溶媒の中にある期間浸漬された時にこのシステムが実質的に示す拮抗薬放出速度と鎮痛薬放出速度の比率が少なくとも約4:1である態様48記載のシステム。
態様52:前記拮抗薬がナルトレキソンである請求項50または態様51記載のシステム。
態様53:フェンタニルを皮膚経由で投与するための経皮システムであって、
(a)鎮痛を人に誘発して少なくとも3日間に渡って維持するに充分な量で溶解しているフェンタニルを含有するに充分な度合いでフェンタニルを溶かすポリアクリレート系接着剤を含有していて未溶解成分を含まない単層重合体組成物を含んで成る鎮痛薬貯蔵物、
(b)バリヤー層を通して放出されない形態であるがシステムが摂取されたか或は溶媒に実質的に浸漬された時にはそれから放出される前記鎮痛薬用の拮抗薬を含んで成る拮抗薬貯蔵物、
(c)前記拮抗薬貯蔵物を前記鎮痛薬貯蔵物から分離しておりかつ前記鎮痛薬も前記拮抗薬も実質的に透過しないバリヤー層、および
(d)皮膚から遠位の前記拮抗薬貯蔵物表面に位置していてこのシステムを人である患者に張り付けている期間が約7日以内の時にはこのシステムから前記拮抗薬が実質的に放出されないようにしそして更にこのシステムが摂取されたか或は溶媒に実質的に浸漬された時には鎮痛薬放出速度に対する拮抗薬放出速度の比率が不正使用を制限するに充分な比率になるような速度で前記拮抗薬が放出されるようにする拮抗薬放出速度制御手段、
を含んで成ることで不正使用される可能性が低いシステム。
態様54:フェンタニルを皮膚経由で投与するための経皮システムであって、
(a)鎮痛を人に誘発して少なくとも3日間に渡って維持するに充分な量で溶解しているフェンタニルを含有するに充分な度合いでフェンタニルを溶かすポリアクリレート系接着剤を含有していて未溶解成分を含まない単層重合体組成物を含んで成る鎮痛薬貯蔵物、
(b)バリヤー層を通して放出されない形態であるがシステムが摂取されたか或は溶媒に実質的に浸漬された時にはそれから放出される前記鎮痛薬用の拮抗薬を含んで成る拮抗薬貯蔵物、
(c)前記拮抗薬貯蔵物を前記鎮痛薬貯蔵物から分離しておりかつ前記鎮痛薬も前記拮抗薬も実質的に透過しないバリヤー層、および
(d)皮膚から遠位の前記拮抗薬貯蔵物表面に位置していてこのシステムを人である患者に張り付けている期間が約7日以内の時にはこのシステムから前記拮抗薬が実質的に放出されないようにしそしてこのシステムが摂取されたか或は溶媒にある期間の間浸漬された時には拮抗薬放出速度と鎮痛薬放出速度の比率が約0.5:1から約20:1になるようにする拮抗薬放出速度制御手段、
を含んで成ることで不正使用される可能性が低いシステム。
態様55:(a)前鎮痛薬貯蔵物がフェンタニル塩基を約0.05から約1.75mg/
cm2含んで成り、
(b)前記拮抗薬貯蔵物がポリオレフィン、ポリエチレン、ポリオクテン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリスチレン、ポリエチレンオクテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレンアクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン−アクリル酸共重合体およびエチレン−アクリル酸エチル共重合体から成る群から選択される重合体もしくは共重合体の中に分散している前記拮抗薬を約0.2から約15mg/cm2含んで成り、
(c)前記バリヤー層がポリウレタン、ポリエチレンおよびエチレン共重合体から成る群から選択される重合体と積層しているポリエステルを含んで成り、そして
(d)前記拮抗薬放出速度制御手段が微孔性超高密度ポリエチレン(UHDPE)、微孔性ポリプロピレン、毛細孔ポリエステル膜、スパンレースドポリエステル、ポリプロピレンおよびポリエチレンから成る群から選択される微孔性層である、
態様53または54記載のシステム。
態様56:このシステムが約0.01から約0.2ng/ml・cm2の標準化Cmaxを示す前記態様53−55のいずれか記載のシステム。
態様57:このシステムが約3.3から約82.5ng/ml・(mg/時)の正規化Cmaxを示す前記態様53−56のいずれか記載のシステム。
態様58:DURAGESIC(商標)経皮フェンタニルシステムと生物学的に同等な前記態様53−57のいずれか記載のシステム。
態様59:前記拮抗薬がナルトレキソンである前記態様53−58のいずれか記載のシステム。
態様60:スフェンタニルを皮膚経由で投与するための経皮システムであって、
(a)鎮痛を人に誘発して少なくとも3日間に渡って維持するに充分な量で溶解しているスフェンタニルを含有するに充分な度合いでスフェンタニルを溶かすポリアクリレート系接着剤を含有していて未溶解成分を含まない単層重合体組成物を含んで成る鎮痛薬貯蔵物、
(b)バリヤー層を通して放出されない形態であるがシステムが摂取されたか或は溶媒に実質的に浸漬された時にはそれから放出される前記鎮痛薬用の拮抗薬を含んで成る拮抗薬貯蔵物、
(c)前記拮抗薬貯蔵物を前記鎮痛薬貯蔵物から分離しておりかつ前記鎮痛薬も前記拮抗薬も実質的に透過しないバリヤー層、および
(d)皮膚から遠位の前記拮抗薬貯蔵物表面に位置していてこのシステムを人である患者に張り付けている期間が約7日以内の時にはこのシステムから前記拮抗薬が実質的に放出されないようにしそして更にこのシステムが摂取されたか或は溶媒に実質的に浸漬された時には鎮痛薬放出速度に対する拮抗薬放出速度の比率が不正使用を制限するに充分な比率になるような速度で前記拮抗薬が放出されるようにする拮抗薬放出速度制御手段、
を含んで成ることで不正使用される可能性が低いシステム。
態様61:スフェンタニルを皮膚経由で投与するための経皮システムであって、
(a)鎮痛を人に誘発して少なくとも3日間に渡って維持するに充分な量で溶解しているスフェンタニルを含有するに充分な度合いでスフェンタニルを溶かすポリアクリレート系接着剤を含有していて未溶解成分を含まない単層重合体組成物を含んで成る鎮痛薬貯蔵物、
(b)バリヤー層を通して放出されない形態であるがシステムが摂取されたか或は溶媒に実質的に浸漬された時にはそれから放出される前記鎮痛薬用の拮抗薬を含んで成る拮抗薬貯蔵物、
(c)前記拮抗薬貯蔵物を前記鎮痛薬貯蔵物から分離しておりかつ前記鎮痛薬も前記拮抗薬も実質的に透過しないバリヤー層、および
(d)皮膚から遠位の前記拮抗薬貯蔵物表面に位置していてこのシステムを人である患者に張り付けている期間が約7日以内の時にはこのシステムから前記拮抗薬が実質的に放出されないようにしそしてこのシステムが摂取されたか或は溶媒にある期間の間浸漬された
時には拮抗薬放出速度と鎮痛薬放出速度の比率が少なくとも約4:1になるようにする拮抗薬放出速度制御手段、
を含んで成ることで不正使用される可能性が低いシステム。
態様62:(a)前鎮痛薬貯蔵物がスフェンタニル塩基を約0.05から約1.75mg/cm2含んで成り、
(b)前記拮抗薬貯蔵物がポリオレフィン、ポリエチレン、ポリオクテン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリスチレン、ポリエチレンオクテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレンアクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン−アクリル酸共重合体およびエチレン−アクリル酸エチル共重合体から成る群から選択される重合体もしくは共重合体の中に分散している前記拮抗薬を約0.2から約15mg/cm2含んで成り、
(c)前記バリヤー層がポリウレタン、ポリエチレンおよびエチレン共重合体から成る群から選択される重合体と積層しているポリエステルを含んで成り、そして
(d)前記拮抗薬放出速度制御手段が微孔性超高密度ポリエチレン(UHDPE)、微孔性ポリプロピレン、毛細孔ポリエステル膜、スパンレースドポリエステル、ポリプロピレンおよびポリエチレンから成る群から選択される微孔性層である、
態様60または61記載システム。
態様63:このシステムが約0.001から約0.05ng/ml・cm2の標準化Cmaxを示す前記態様60−62のいずれか記載のシステム。
態様64:このシステムが約0.04から約10ng/ml・(mg/時)の正規化Cmaxを示す態様60−63のいずれか記載のシステム。
態様65:DURAGESIC(商標)経皮フェンタニルシステムと薬理学的に同等な前記態様60−64のいずれか記載のシステム。
態様66:前記拮抗薬がナルトレキソンである前記請求項60−65のいずれか記載のシステム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鎮痛薬を皮膚経由で投与するための経皮システムであって、
(a)フェンタニルおよびこれの類似物から成る群から選択される鎮痛薬を含んで成る鎮痛薬貯蔵物、
(b)前記鎮痛薬用の拮抗薬を含んで成る拮抗薬貯蔵物、
(c)前記拮抗薬貯蔵物を前記鎮痛薬貯蔵物から分離しておりかつ前記鎮痛薬も前記拮抗薬も実質的に透過しないバリヤー層、
を含んで成っていて、(i)このシステムを人である患者に張り付けている期間が約7日以内の時にはこのシステムから前記拮抗薬が実質的に放出されずそして(ii)このシステムが不正使用されようとする時には鎮痛薬放出速度に対する拮抗薬放出速度の比率が不正使用を制限するに充分な比率になるような速度で前記拮抗薬が放出されることで不正使用される可能性が低いシステム。
【請求項1】
鎮痛薬を皮膚経由で投与するための経皮システムであって、
(a)フェンタニルおよびこれの類似物から成る群から選択される鎮痛薬を含んで成る鎮痛薬貯蔵物、
(b)前記鎮痛薬用の拮抗薬を含んで成る拮抗薬貯蔵物、
(c)前記拮抗薬貯蔵物を前記鎮痛薬貯蔵物から分離しておりかつ前記鎮痛薬も前記拮抗薬も実質的に透過しないバリヤー層、
を含んで成っていて、(i)このシステムを人である患者に張り付けている期間が約7日以内の時にはこのシステムから前記拮抗薬が実質的に放出されずそして(ii)このシステムが不正使用されようとする時には鎮痛薬放出速度に対する拮抗薬放出速度の比率が不正使用を制限するに充分な比率になるような速度で前記拮抗薬が放出されることで不正使用される可能性が低いシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2011−57684(P2011−57684A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−233859(P2010−233859)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【分割の表示】特願2003−587366(P2003−587366)の分割
【原出願日】平成15年4月22日(2003.4.22)
【出願人】(503073787)アルザ・コーポレーシヨン (113)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【分割の表示】特願2003−587366(P2003−587366)の分割
【原出願日】平成15年4月22日(2003.4.22)
【出願人】(503073787)アルザ・コーポレーシヨン (113)
【Fターム(参考)】
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