説明

不正持出し検知機能付き無線周波識別タグ

【課題】 商品等に取付けることができ、識別対象物である商品等の個々のデータを非接触で書込み/読出しすることのできる無線周波識別(RFID)タグであって、商品等が正当な理由無く持出されることを検知する不正持出し検知機能付きのRFIDタグを提供する。
【解決手段】 取付孔18を形成した基体16と前記基体16に取付けたRFIDラベル14とで構成されるRFIDタグ4における前記取付孔18に、磁気方式(EM)ワイヤー8を挿入し、前記基体16と識別対象物6とを接続させることにより不正持出し検知機能付きRFIDタグ2を形成させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商品等に取付けることができ、識別対象物である商品等の個々のデータを非接触で書込み/読出しすることのできる無線周波識別(RFID)タグであって、商品等が正当な理由無く持出されることを検知する不正持出し検知機能付きのRFIDタグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種商品等の個々の識別データを記入したタグを商品等に取付けて市場を流通させることにより流通商品管理をすることが行われている。例えば、商品等に取付けられた荷札、ラベル、又は包装容器等にバーコードデータや、印字データが表示されたものは我々が日常よく目にするところである。
【0003】
一般に、商品等は工場で製造され、問屋、小売店を経由して消費者に供給されている。これらの商品等は、製品コード、サイズ表示、ブランド表示等の個々の製品に関するデータが付与されて流通管理が行われており、通常これらデータを記入した紙やプラスチック製のタグが商品等に添付されている。
【0004】
商品等の製造工場においては、商品等に製品コード、サイズ表示、ブランド等のデータが表示されたタグが商品等の適当な箇所に取付けられ、このタグの表示内容に基づいて出荷管理が行われている。また、問屋においては、受入れ検査、小売店の仕分等が前記タグの表示内容に基づいて行われている。更に、小売店においても、同様にしてタグの表示内容に基づいて商品等の在庫管理、発注管理等が行われている。
【0005】
この商品等の在庫管理、発注管理等を機械的に迅速に処理するには、商品等に取付けることができ、識別対象物である商品等の個々のデータを非接触で書込み/読出しすることのできるRFIDタグを、前記タグとして用いることが適している(例えば特許文献1)。
【0006】
一方、商品等に添付され、商品と共に移動し、所定のゲートを通過する際に検出されることにより商品の管理を行ったり、商品の盗難(いわゆる万引)を防止したりする、磁気方式の検知タグ[EM(Electro Magnetic)タグ]が知られている。検知タグは、予め管理を要する商品等に取りつけられている。この商品を正規に購入した場合は、料金支払所等で、タグの機能を変更することにより、ゲートを通過する際に正規の支払を済ませた商品と、不正持出し商品(万引品)とを区別できるようにしている(例えば特許文献2)。
【0007】
しかし、RFIDタグに不正持出し検知機能を持たせようとすると、RFIDタグと検知タグの二枚を別々に貼る必要性があり、特に万引きされ易い高価な小型商品については、その貼付け装着は難しい。なお、RFIDタグの装着が貼付けによらない場合は、装着が不安定であり、運用の環境によってはRFIDタグ中のICチップが破損する問題がある。
【特許文献1】特開2002−140669号公報 (特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2003−346267号公報 (特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者等は、上記問題を解決するために種々検討しているうちに、識別対象物とRFIDタグとを磁気方式(EM)ワイヤーで接続させることにより、RFIDタグと検知タグの二枚を別々に貼る必要性がなく、RFIDタグに不正持出し検知機能を持たせられることを知得した。
【0009】
また、ICチップ及びアンテナ回路が取付けられたRFIDラベルを、透明プラスチック板等の基体を用いてパウチ加工又はラミネート加工を施してRFIDタグを形成する場合には、通常時には起こらない運用環境下でも、RFIDタグ中のICチップ及び/又はアンテナ回路の破損を防止することができることを本発明者等は知得し、本発明を完成するに到った。
【0010】
従って、本発明の目的とするところは、上記問題を解決した、不正持出し検知機能付きRFIDタグを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成する本発明は、以下に記載するものである。
【0012】
〔1〕 取付孔を形成した基体と前記基体に取付けた無線周波識別ラベルとで構成される無線周波識別タグと、前記基体と識別対象物とを接続させる前記取付孔に挿入された磁気方式ワイヤーとからなる不正持出し検知機能付き無線周波識別タグ。
【0013】
〔2〕 磁気方式ワイヤーの取付孔が、無線周波識別タグにおけるICチップ及びアンテナ回路を形成した領域外に形成されてなる〔1〕に記載の不正持出し検知機能付き無線周波識別タグ。
【0014】
〔3〕 磁気方式ワイヤーが、その両端に互いに対をなす接続手段を有する〔1〕に記載の不正持出し検知機能付き無線周波識別タグ。
【0015】
〔4〕 無線周波識別タグが、基体と無線周波識別ラベルとでパウチ構造を形成したものである〔1〕に記載の不正持出し検知機能付き無線周波識別タグ。
【0016】
〔5〕 無線周波識別タグが、基体と無線周波識別ラベルとでラミネート構造を形成したものである〔1〕に記載の不正持出し検知機能付き無線周波識別タグ。
【0017】
〔6〕 磁気方式ワイヤーによる基体と識別対象物との接続形態が、下げ札形態である〔1〕に記載の不正持出し検知機能付き無線周波識別タグ。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、識別対象物とRFIDタグとを磁気方式ワイヤーで接続させているので、RFIDタグと検知タグの二枚を識別対象物に別々に貼る必要性がなく、RFIDタグに不正持出し検知機能を持たせることができる。
【0019】
また、本発明によれば、必要に応じてRFIDラベルにパウチ加工又はラミネート加工を施す場合は、劣悪な運用環境でもRFIDタグ中のICチップ及び/又はアンテナ回路の破損を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の不正持出し検知機能付きRFIDタグを、商品の不正持出し検知システムに運用する場合を例にして詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の不正持出し検知機能付きRFIDタグの一例を示す概略図である。図2は、上記不正持出し検知システム示す概念図である。図1及び/又は図2中、2は不正持出し検知機能付きRFIDタグで、RFIDタグ4と、このRFIDタグ4と識別対象物6とを接続させる、磁気に反応する磁気方式ワイヤー(以下EMワイヤーという)8とからなる。
【0022】
図1に示されるようにRFIDタグ4は、ICチップ10及びアンテナ回路12が取付けられたRFIDラベル14を、透明プラスチック板等の基体16で挟んで接着して被覆する加工処理を施すことにより、いわゆるパウチ構造が形成されている。このパウチ構造を形成することで、通常時には起こらない運用環境下でも、RFIDタグ4中のICチップ10及び/又はアンテナ回路12の破損を防止することができる。
【0023】
RFIDタグ4におけるICチップ10及びアンテナ回路12を形成した領域外には、EMワイヤー8の取付孔18が形成されている。具体的には、RFIDラベル14よりも広い透明プラスチック板等の基体16を用いてRFIDタグ4が形成されている。この構成によりRFIDタグ4には、RFIDラベル14が無い部分が形成される。このRFIDラベル14が無い部分には、ICチップ10及びアンテナ回路12が無いので、この部分にEMワイヤー取付孔18を穿設しても、RFIDタグ4中のICチップ10及びアンテナ回路12は破損されることがない。
【0024】
EMワイヤー8は、その両端に互いに対をなす接続手段20a、20bを有する。EMワイヤー8は、芯材としてアモルファス金属等の軟磁性体が用いられる。軟磁性体は磁気感応性が高いのでゲート通過時に感応する。即ち、EMワイヤー8は、その寸法が小さくても不正持出し検知機能が高い。寸法の小さいEMワイヤー8は、その取付孔18の取付けに場所を取ることがなく、ひいては、不正持出し検知機能付きRFIDタグ2の寸法も小さいものにできる。
【0025】
なお、軟磁性体の芯材を色鮮やかな被覆物で覆って装飾性を持たせることにより、EMワイヤー8が不正持出し検知機能を有していることに対する隠匿性を持たせることができる。
【0026】
EMワイヤー8による識別対象物6とRFIDタグ4との接続形態は、下げ札形態をとることができる。この下げ札形態は装着が容易で且つ店頭等の運用環境では外れにくいので、識別対象物6が宝石、指輪、時計など万引きされ易い高価な小型商品の場合、特に好ましい形態である。
【0027】
以上のようにICチップ10及びアンテナ回路12を有すると共に、EMワイヤー8を有する不正持出し検知機能付きRFIDタグ2は、商品等個々のデータの非接触書込み/読出しが可能な在庫管理、発注管理等の処理機能を備えると共に、不正持出し検知機能をも備えている。
【0028】
図2中、22は不正持出し検知用ゲートで、建物内の商店舗の出口の壁際等に立設されている。ゲートの検出方式は、磁気方式のゲート(EMゲート)を用いる。
【0029】
24は、商店舗内の料金支払所(カウンター)に設けられた記録装置である。このカウンターで商品持出し人26は購入商品の代価を支払う。この際に、記録装置24により、識別対象物6に取りつけられているRFIDタグ4の記録内容が変更され、また管理データが収集されると共に、鋏などの不正持出し検知解除手段28によりEMワイヤー8を切断し、RFIDタグ2は識別対象物6から分離してカウンターに残す。その結果、識別対象物6は不正持出し検知機能が解除される。
【0030】
この不正持出し検知解除処理をすることにより、EMゲート22を識別対象物6が通過してもEMゲート22は不正持出し検知信号を発生しないようになっている。他方、商品の料金を支払っていない場合(商品を不正に持出そうとする場合)は、識別対象物6に取り付けられているEMワイヤー8の不正持出し検知機能が解除されていないので、EMゲート22を通過する際に、不正持出し検知信号が発生して不正持出しが発覚する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の不正持出し検知機能付きRFIDタグの一例を示す概略図である。
【図2】本発明の不正持出し検知機能付きRFIDタグを用いた商品の不正持出し検知システムの一例を示す概念図である。
【符号の説明】
【0032】
2 不正持出し検知機能付きRFIDタグ
4 RFIDタグ
6 識別対象物
8 EMワイヤー
10 ICチップ
12 アンテナ回路
14 RFIDラベル
16 基体
18 EMワイヤー取付孔
20a、20b 接続手段
22 不正持出し検知用ゲート(EMゲート)
24 記録装置
26 商品持出し人
28 不正持出し検知解除手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付孔を形成した基体と前記基体に取付けた無線周波識別ラベルとで構成される無線周波識別タグと、前記基体と識別対象物とを接続させる前記取付孔に挿入された磁気方式ワイヤーとからなる不正持出し検知機能付き無線周波識別タグ。
【請求項2】
磁気方式ワイヤーの取付孔が、無線周波識別タグにおけるICチップ及びアンテナ回路を形成した領域外に形成されてなる請求項1に記載の不正持出し検知機能付き無線周波識別タグ。
【請求項3】
磁気方式ワイヤーが、その両端に互いに対をなす接続手段を有する請求項1に記載の不正持出し検知機能付き無線周波識別タグ。
【請求項4】
無線周波識別タグが、基体と無線周波識別ラベルとでパウチ構造を形成したものである請求項1に記載の不正持出し検知機能付き無線周波識別タグ。
【請求項5】
無線周波識別タグが、基体と無線周波識別ラベルとでラミネート構造を形成したものである請求項1に記載の不正持出し検知機能付き無線周波識別タグ。
【請求項6】
磁気方式ワイヤーによる基体と識別対象物との接続形態が、下げ札形態である請求項1に記載の不正持出し検知機能付き無線周波識別タグ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−3674(P2006−3674A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−180505(P2004−180505)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成16年3月2日から3月5日 株式会社日本経済新聞社主催の「SECURITY SHOW 2004」において発表
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】