説明

不死化鳥類細胞系およびその用途

本発明は、テロメラーゼ逆転写酵素(TERT)を発現し、独特な生物学的物質製造パターンを示す特定の不死化鳥類細胞系に関する。より詳しくは、本発明は、フラビウイルス科を増幅可能であるが、ワクシニアウイルス株Copenhagen(VV−COP)および修飾ワクシニアウイルスAnkara(MVA)は増幅不能であるか、またはフラビウイルス科およびポックスウイルス科を両方とも増幅可能であるかのいずれかである不死化鳥類細胞系に関する。本発明は、前記不死化鳥類細胞系の使用、ならびにウイルスおよびタンパク質を含む生物学的物質を製造するための関連方法に更に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
説明
本発明は、ウイルスおよびタンパク質を含む生物学的物質を製造するための細胞系の分野に関係する。詳しくは、本発明は、テロメラーゼ逆転写酵素(TERT)を発現し、独特な生物学的物質製造パターンを示す特定の不死化鳥類細胞系に関する。より詳しくは、本発明は、フラビウイルス科を増幅可能であるが、ワクシニアウイルス株Copenhagen(VV−COP)および修飾ワクシニアウイルスAnkara(MVA)は増幅不能であるか、またはフラビウイルス科およびポックスウイルス科を両方とも増幅可能であるかのいずれかである不死化鳥類細胞系に関する。本発明は、前記不死化鳥類細胞系の使用、ならびにウイルスおよびタンパク質を含む生物学的物質を製造するための関連方法に更に関する。
【背景技術】
【0002】
鳥類細胞は、ウイルスワクチンの生産に長年使用されてきた。例えば、有胚ニワトリ卵は、特に、ヒトまたは哺乳動物細胞において複製能力を損なわせた弱毒化ウイルスを含む広範囲のヒトおよび動物ウイルスの複製を支援することができる。ヒトウイルスワクチン生産に使用される有胚ニワトリ卵は、規定された一組のウイルスおよび細菌に汚染されていないことを証明しければならない(特定病原体未感染またはSPF)。有胚ニワトリ卵は高価であり、ウイルスワクチンコストの最大40%を占める場合がある。ワクチンロットを製造するために使用される有胚ニワトリ卵用の親ニワトリが、あらゆる疾患に全く罹患していないことをSPF製造業者が検証するまで、ワクチンロットを出荷することができない。この不確実性により、多大のコストがこれらワクチン調製に上乗せされる。加えて、卵を感染させウイルス増殖を維持するための大規模プロセスは、時間がかかり、ワクチンバッチが異なると一貫性を欠くことがある。
【0003】
細胞培養技術の発達と共に、ワクチン製造業者は、有胚ニワトリ卵を単離ニワトリ胚線維芽細胞(CEF)に切り替えている。例えば、ほとんどのフラビウイルス科ワクチンは、CEFから製造されている。世界保健機構(WHO)が推奨するフラビウイルス科黄熱病ウイルスワクチンは、17D株および亜株に由来しており、それらは、ヌクレオチド配列にわずかな違いがあり、同様の免疫原性を有する(CAMACHO L.A.B. et al., Rev Saude Publica 38(5):671-8 (2004);DOS SANTOS CN., Virus Res. 35:35-41 (1995))。フラビウイルス科ウイルスの生産プロセスに関する実験により、17DDウイルス株を使用してCEFで黄熱病ウイルスワクチンを生産するための効率的方法の確立がもたらされている(FREIRE M.S., Vaccine 23, 2501-2512 (2005))。CEFの使用は、製造プロセスの安全特性、効率性、および信頼性を向上させるが、非常に時間がかかり、コストも更に増加する。CEFの製造は、実際にはSPF卵の入手可能性に依存する。CEFは、生細胞を確立および増幅するために胚を細かく刻むことにより、SPF卵から調製される。初代動物細胞に典型的なように、線維芽細胞は老化を被り、倍加時間は継代と共に増加し、最終的には全ての細胞が死滅する。このプロセスは、約20継代後に生じる。このように生存期間が制限されていることは、CEFの各ロットの安全性試験を完全に一通り実施するための制約となっている。
【0004】
上記に記載の有胚ニワトリ卵およびCEFは、ウイルスワクチン製造に制限があるため、新しい細胞培養系の探求は、過去数十年間にわたって大きな関心を集めてきた。この点で、不死化細胞系は非常に魅力的である。不死化細胞系は、生産現場でバッチからバッチに維持または凍結することができ、新しい生産プロセスに常に利用可能である。更に、不死化細胞系は生産工場に封じ込められているため、外来性夾雑物による汚染に曝される可能性がより少ない。不死化細胞系を使用することにより、生産プロセスに必要とされる手作業操作の劇的な低減が可能になる。これらの特性は全て、価格および生産プロセス期間の低減並び潜在的な汚染の減少に結び付く。更に、不死化細胞系は完全に特徴付けることができ、従って医薬品安全性試験実施基準および様々な医学機関の要求に完全に準拠することができる。例として、ベロ細胞系は、認可された有胚ニワトリ卵に代わる、フラビウイルス科ワクチン生産の代替的候補として記述されている。生弱毒化日本脳炎ウイルスワクチンであるChimeriVax(商標)−JEVは、ウシ胎仔血清で補完された培地中で培養されたベロ細胞中で増殖された(MONATH et al., Biologicals, 33:131-144 (2005))。同様に、MATEUら(Trans. R. Soc. Trop. Med. Hyg., 101 (3):289-98 (2007))およびTORINIWAら(Vaccine, 4;26(29-30):3680-9 (2008))は、それぞれ黄熱病ウイルスワクチンおよび日本脳炎ウイルスワクチンをベロ細胞系で製造させた。更に、不死化細胞系の応用は、不死化細胞系がそのために考案されているウイルスワクチンに限定されず、組換えタンパク質に拡張することができる。例えば、抗体およびインフルエンザウイルスワクチンは両方とも、PER.C6(登録商標)細胞系(ECACC番号96022940)、アデノウイルス5型のE1ミニ遺伝子での形質移入により不死化されたヒト胎児網膜芽細胞細胞系で増殖させることができる(FALLAUX F. J. et al., Hum. Gene Ther. 9 :1909-17 (1998);PAU M. G. et al., Vaccine 19, 2716-2721 (2001);YALLOP C. et al., Animal Cell Technology meets Genomics, 533-536 (2005))。
【0005】
しかしながら、代替的な不死化細胞系も依然として必要とされている。国際公開第2007/077256号には、ノバリケン(Cairina moschata)初代鳥類細胞ゲノムにTERT核酸分子を標的挿入するかまたは無作為挿入するかのいずれかによるノバリケンテロメラーゼ逆転写酵素(TERT)核酸分子での形質移入により初代鳥類細胞を不死化するための方法が提供されている。特に無作為挿入による前記方法に基づき、本発明者らは、今や互いに特性が異なる新しい不死化鳥類細胞系を特定した。
【発明の概要】
【0006】
本出願の全体にわたって使用されているように、単数についての言及(「a」および「an」)
は、状況が明白にそうではないと示さない限り、参照する要素またはステップの「少なくとも1つ」、「少なくとも第1」、「1つまたは複数」、または「複数」を意味するという意味で使用される。
【0007】
本出願の全体にわたって使用されているように、「および/または」は、本明細書の何処で使用されようとも、「および」、「または」、および「前記用語により接続される要素の全てまたは任意の他の組合せ」の意味を含む。
【0008】
本出願の全体にわたって使用されているように、「含んでいる」および「含む」は、産物、組成物、および方法が、参照されている成分またはステップを含むが、他のものを排除しないことを意味することが意図されている。「から本質的になる」が、産物、組成物、および方法を規定するために使用される場合、あらゆる本質的重要性を有する他の成分またはステップが除外されることを意味するものとする。従って、列挙された成分から本質的になる組成物は、微量夾雑物および薬学的に許容される担体を除外しないだろう。「からなる」は、他の成分またはステップの微量を超える要素を除外することを意味するものとする。
【0009】
本出願の全体にわたって使用されているように、「約」または「およそ」は、本明細書で使用される場合、所与の値または範囲の20%以内、好ましくは10%以内、より好ましくは5%以内であることを意味する。
【0010】
本出願の全体にわたって使用されているように、「不死化鳥類細胞系」は、ヘイフリック限界を超えて培養中で増殖する鳥類細胞系を指す(HAYFLICK L., Clin. Geriatr. Med. 1(1):15-27 (1985))。より詳しくは、「不死化鳥類細胞系」は、30継代を超えて培養中で増殖が可能であり、約1〜約2日間の培養で倍加時間を維持し、約6か月間を超えて連続培養される鳥類細胞系を指す。鳥類細胞系は、培養で約20〜約25継代後に不死化であるとみなされる。形質転換細胞とは異なり、不死化鳥類細胞は、増殖が停止されており(つまり、鳥類細胞はコンフルエントであり、接触阻止の影響下にある)、均質な線維芽細胞様形態を示すという点で、不死化鳥類細胞は形質転換細胞と区別される。
【0011】
本出願の全体にわたって使用されているように、用語「ウイルス増幅が可能な不死化鳥類細胞系」は、本発明の不死化鳥類細胞系が、ウイルスによる感染後に、感染細胞での生産的ウイルス複製により前記ウイルスの量を増加させることができることを意味する。用語「再生産的複製」は、入力ウイルスに対する出力ウイルスの比が1を超えて感染性子孫ウイルスが製造される程度まで、前記ウイルスが、不死化鳥類細胞系で複製するという事実を指す。言いかえれば、「ウイルス増幅が可能である」は、入力ウイルスに対する出力ウイルスの比が1を超えるべきであることを意味する。
【0012】
本出願全体にわたって使用されているように、「フラビウイルス科」には、フラビウイルス、ペスチウイルス、ヘパシウイルス、GBウイルスA、GBウイルスA様物質、GBウイルス−B、およびGBウイルス−C(G型肝炎ウイルスとも呼ばれる)が含まれる。フラビウイルス科の分類、ゲノム構成、および複製サイクルは、十分に記述されている(LINDENBACH B. D. et al., in D. M. Knipe and P.M. Howley, Fields Virology 5th Edition, Eds. Lippincott-Raven Publishers, Philadelphia (2007))。
【0013】
本出願全体にわたって使用されているように、「フラビウイルス」には、「蚊媒介性ウイルスクラスター」、「ダニ媒介性ウイルスクラスター」、および「無ベクタークラスター(no-vector cluster)」が含まれる(KUNO G. et al., J. Virol. 72, 73-83 (1998))。
【0014】
「蚊媒介性ウイルスクラスター」には、デング熱ウイルス、日本脳炎ウイルス、マリーバレー脳炎ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、西ナイルウイルス、黄熱病ウイルス、クンジンウイルス、ロシオウイルス、およびイルヘウスウイルスが含まれる。
【0015】
デング熱ウイルス(DENV)株は、4つの血清型DEN−1、DEN−2、DEN−3、およびDEN−4に分類される。DENVゲノムのヌクレオチド配列に関する情報は、GenBank等の公的にアクセス可能な遺伝子データベースから得ることもできる:DEN−1ウイルス(例えば、GenBank受託番号M23027);DEN−2ウイルス(例えば、GenBank受託番号M19197;NC−001474);DEN−3ウイルス(例えば、GenBank受託番号M93130);DEN−4ウイルス(例えば、GenBank受託番号M14931)。
【0016】
日本脳炎ウイルス(JEV)には、以下の株が含まれる:P3、SA14、S892、GP78、ThCMAr4492、ThCMAr6793、JaGAr01、Jaoars982、Subin、KE−093/83、Nakayama野生株、Nakayama−RFVL、Nakayama−Yoken、LNDG07−02、LNDG07−16、およびK94P05。JEVゲノムのヌクレオチド配列に関する情報は、GenBank等の公的にアクセス可能な遺伝子データベースから得ることもでき、例えば、GenBank受託番号AF045551がある。
【0017】
西ナイルウイルス(WNV)株は、遺伝子型NY99およびWN02を含む。WNVゲノムのヌクレオチド配列に関する情報は、GenBank等の公的にアクセス可能な遺伝子データベースから得ることもでき、例えば、GenBank受託番号M12294、NC−001563がある。
【0018】
黄熱病ウイルス(YFV)株には、以下の株が含まれる:Asibi、フランス向多臓器ウイルス(FVV、French viscerotropic virus)、B4.1、Rendu、Dak1279、17D、17DD、17D−204、Colombia88、F−204、およびC−204(HAHN et al., Proceedings of the National Academy of Sciences USA 84, 2019-2023 (1987);WANG et al., J. of Gen. Virol. 76, 2749-2755 (1995);BALLINGER-CRABTREE & MILLER, J. of Gen. Virol. 71, 2115-2121 (1990);WANG H. et al., J. of Gen. Virol. 78, 1349-1352 (1997);CAMACHO L.A.B. et al., Rev Saude Publica 38(5):671-8 (2004);DOS SANTOS CN., Virus Res. 35:35-41 (1995);GALLER R. et al., Braz. J. Med. Biol. Res. volume 30(2), 157-168 (1997))。黄熱病ウイルス(YFV)は、遺伝子レベルで研究されており(RICE et al., Science 229:726-733 (1985))、遺伝子型および表現型に関連する情報は確立されている(MARCHEVSKY et al., Am. J. Trop. Med. Hyg. 52:75-80 (1995))。YFVゲノムのヌクレオチド配列に関する情報は、GenBank等の公的にアクセス可能な遺伝子データベースから得ることもでき、例えば、GenBank受託番号X03700、NC−002031がある。
【0019】
「ダニ媒介性ウイルスクラスター」は、3つの亜型:西欧亜型(中欧脳炎ウイルスとも呼ばれる)、極東亜型(ロシア春/夏脳炎ウイルスとも呼ばれる)、およびシベリア亜型を含むダニ媒介性脳炎ウイルス(TBEV)(ダニ媒介性髄膜脳炎ウイルスとも呼ばれる)を指す(KAISER and REINHARD, Infectious Disease Clinics of North America. 22(3):561-575 (2008))。TBEVゲノムのヌクレオチド配列に関する情報は、GenBank等の公的にアクセス可能な遺伝子データベースから得ることもでき、例えば、GenBank受託番号U27495、NC−001672がある。TBEVには、病原性極東ロシアTBEVのC−preM−EまたはpreM−E構造タンパク質遺伝子を、残りの非構造タンパク質遺伝子およびDEN4に由来する5’−および3’−非コード配列と共に含有するように構築された生キメラワクチン[それぞれTBEV(CME)/DEN4およびTBEV(ME)/DEN4]も含まれる(PLETNEV et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 89: 10532-10536, (1992))。
【0020】
「無ベクタークラスター」には、アポイウイルス、細胞融合媒介ウイルス(cell fusing agent virus)、サンペーリタウイルス(San Perlita virus)、フティアパウイルス(Jutiapa virus)、モンタナ筋炎白質脳炎ウイルス(Montana myotis leukoencephalitis virus)、モドックウイルス(Modoc virus)、カウボーンリッジウイルス(Cowbone Ridge virus)、サルビエジャ(Sal Vieja virus)、ブカラサコウモリウイルス(Bukalasa bat virus)、ダカールコウモリウイルス(Dakar bat virus)、リオブラボーウイルス(Rio Bravo virus)、ケアリー島ウイルス(Carey Island virus)、プノンペンコウモリウイルス(Phnom Penh bat virus)、およびバツー洞窟ウイルス(Batu Cave virus)が含まれる(KUNO G. et al., J. Virol., 72 73-83 (1998))。無ベクターウイルスゲノムのヌクレオチド配列に関する情報は、GenBank等の公的にアクセス可能な遺伝子データベースから得ることもできる。例えば、アポイウイルスについては、例えば、GenBank受託番号AF160193、NC−003676がある。
【0021】
本出願全体にわたって使用されているように、「ペスチウイルス」には、ボーダー病ウイルス(BDV)、ウシウイルス性下痢ウイルス(BVDV)、および古典的なブタコレラウイルス(CSFV)が含まれる。BDVには、3つの遺伝子型BDV−1〜3が含まれる(BECKER et al. Virology 311 96-104 (2003))。BVDVには、BVDV1型(BVDV−1)およびBVDV2型(BVDV−2)が含まれる(HEINZ et al. in Seventh Report of the International Committee on Taxonomy of Viruses, 859-868, Edited by M. H. V. Van Regenmortel, C. M. Fauquet, D. H. L. Bishop & 8 other editors. San Diego: Academic Press (2000))。
【0022】
本出願全体にわたって使用されているように、「ヘパシウイルス」には、C型肝炎ウイルス(HCV)が含まれる。HCV単離株は、広範な系統発生解析により、様々な亜型(a、b、c等)を含む6つの主な遺伝子型(1〜6)に分類されている(SIMMONS et al., Hepatology 42, 962-973 (2005))。遺伝子型1aの例示的なHCV単離株には、限定ではないが、HCV−1(CHOO et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88, 2451-2455 (1991))、−J1(OKAMOTO et al., Nucleic Acids Res. 20, 6410-6410 (1992))、および−H(INCHAUSPE et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 88, 10292-10296 (1991))が含まれる。遺伝子型1bの例示的HCV単離株には、限定ではないが、HCV―JA(KATO et al., Proc. Natl. Acad., Sci. 87, 9524-9528 (1990))およびBK(TAKAMIZAWA et al., J. Virol. 65, 1105-1113 (1991))が含まれる。遺伝子型1cの例示的なHCV単離株には、限定ではないが、HCV−G9(OKAMOTO et al., J. Gen. Virol. 45, 629-635 (1994))が含まれる。遺伝子型2aの例示的なHCV単離株には、限定ではないが、HCV−J6(OKAMOTO et al., J. Gen. Virol. 72, 2697-2704 (1991))が含まれる。遺伝子型2bの例示的なHCV単離株には、限定ではないが、HCV−J8(OKAMOTO et al..Virology 188, 331-341 (1992))が含まれる。遺伝子型2cの例示的なHCV単離株には、限定ではないが、HCV−BEBE1(NAKO et al., J. Gen. Virol. 141, 701-704 (1996))が含まれる。
遺伝子型3aの例示的なHCV単離株には、限定ではないが、HCV−NZL1(SAKAMOTO et al., J. Gen. Virol. 75, 1761-1768 (1994))が含まれる。遺伝子型3bの例示的なHCV単離株には、限定ではないが、HCV−Tr(CHAYAMA et al., J. Gen. Virol. 75, 3623-3628 (1994))が含まれる。遺伝子型4aの例示的なHCV単離株には、限定ではないが、HCV−ED43(CHAMBERLAIN et al., J. Gen. Virol. 78, 1341-5 1347 (1997))が含まれる。遺伝子型5aの例示的なHCV単離株には、限定ではないが、HCV−EUH1480(CHAMBERLAIN et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 236, 44-49 (1997))が含まれる。遺伝子型6の例示的なHCV単離株には、限定ではないが、HCV−EUHK2(ADAMS et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 234, 393-396 (1997))が含まれる。
【0023】
本出願全体にわたって使用されているように、「ポックスウイルス科」には、オルソポックスウイルス、カプリポックスウイルス、アビポックスウイルス、パラポックスウイルス、およびレポリポックスウイルス、およびそれらの誘導体が含まれる。
【0024】
オルソポックスウイルスには、水牛痘ウイルス、ラクダ痘ウイルス、牛痘ウイルス、エクトロメリアウイルス、サル痘ウイルス、ウサギ痘ウイルス、痘瘡ウイルス、ワクシニアウイルス(VV)、および例えば修飾ワクシニアウイルスAnkara(MVA)等のその誘導体が含まれる。
【0025】
カプリポックスウイルスには、ヒツジ痘ウイルス、ヤギ痘ウイルス、およびランピースキン病ウイルスが含まれる。
【0026】
アビポックスウイルスには、カナリア痘ウイルスおよび鶏痘ウイルスが含まれる。
【0027】
パラポックスウイルスには、偽牛痘、アラポックスウイルス(arapoxvirus)ovis、およびオルフウイルスが含まれる。
【0028】
レポリポックスウイルスには、粘液腫ウイルスが含まれる。
【0029】
種々のポックスウイルス科のゲノム配列は、当技術分野で入手可能であり、例えば、VV Western Reserve、VV Copenhagen、修飾ワクシニアウイルスAnkara、牛痘ウイルス、カナリア痘ウイルス、エクトロメリアウイルス、粘液腫ウイルスのゲノムは、Genbankで入手可能である(それぞれ、受託番号NC_006998、M35027、U94848、NC_003663、NC_005309、NC_004105、NC_001132)。
【0030】
本出願全体にわたって使用されているように、「ワクシニアウイルス」(VV)には、以下のVV株が含まれる:Dairen I、IHD−J、L−IPV、LC16M8、LC16MO、Lister、LIVP、Tashkent、WR65−16、Wyeth、Ankara、Copenhagen(COP)(GOEBEL et al. (1990)、Genbank受託番号M35027.1)、Tian、Tan、Western Reserve(WR)、修飾ワクシニアウイルスAnkara(MVA)、欠陥J2R遺伝子を含むVV(WEIR and MOSS 1983を参照、Genbank受託番号AAA48082)、欠陥F2L遺伝子を含むVV(国際公開第2009/065547号を参照)、欠陥I4Lおよび/またはF4L遺伝子(複数可)を含むVV(国際公開第2009/065546号を参照)、およびそれらの誘導体。
【0031】
本出願全体にわたって使用されているように、「修飾ワクシニアウイルスAnkara(MVA)」は、VV株AnkaraをCEFで連続継代することにより生成された高度に弱毒化されたVV(MAYR A. et al., Infection 3, 6-14 (1975))およびその誘導体を指す。MVAウイルスは、フランス国立微生物収集機関(CNCM、Collection Nationale de Cultures de Microorganismes)に寄託番号N I−721で寄託された。MVAは、SUTTER et MOSS(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89, 10847-10851 (1992))に十分に記述されている。MVAのゲノムは、マッピングおよび配列決定されている(ANTOINE et al., Virol. 244, 365-396 (1998)、および受託番号U94848でGenbankにて入手可能である)。
【0032】
第1の態様によれば、本発明は、ウイルスを製造する方法であって、
(a)不死化鳥類細胞系を準備し、
(b)前記不死化鳥類細胞系を、製造しようとするウイルスに感染させ、
(c)ウイルス増幅を可能にする条件下で、前記感染鳥類細胞系を培養することを含み、
前記不死化鳥類細胞系が、欧州細胞培養収集機関(ECACC、European Collection of Cell Cultures)に受託番号08060502で寄託された不死化鳥類細胞系、ECACCに受託番号08060501で寄託された不死化鳥類細胞系、およびそれらの誘導体からなる群から選択される方法に関する。
【0033】
別の態様によれば、本発明は、欧州細胞培養収集機関(ECACC)に受託番号08060502で寄託された不死化鳥類細胞系、ECACCに受託番号08060501で寄託された不死化鳥類細胞系、およびそれらの誘導体からなる群から選択される、テロメラーゼ逆転写酵素(TERT)を発現する不死化鳥類細胞系に関する。これら細胞系は、鳥類TERT核酸分子(配列番号1)をノバリケン初代鳥類細胞ゲノムに無作為挿入することにより、国際公開第2007/077256号に開示されている初代ノバリケン細胞から生成されている。驚くべきことに、トリテロメラーゼ逆転写酵素(TERT)を発現するこれら不死化鳥類細胞系は、独特な特性を有しており、より詳しくは、それらのウイルス株増幅特徴により互いに区別される。
【0034】
1つの特別の態様によれば、本発明の不死化鳥類細胞系は、少なくとも1つのフラビウイルス科株を増幅することができるが、ワクシニアウイルス株Copenhagen(VV−COP)(GOEBEL et al. 1990;Genbank受託番号M35027.1)および修飾ワクシニアウイルスAnkara(MVA)(フランス国立微生物収集機関(CNCM)の寄託番号N I−721)を増幅ことができない。
【0035】
不死化鳥類細胞系が1つの特定のウイルス株を増幅することができるかどうかを決定するために使用されるアッセイに関する詳細な情報は、下記で更に示される。
【0036】
好ましい態様によれば、少なくとも1つのフラビウイルス科株を増幅することができるが、ワクシニアウイルス株Copenhagen(VV−COP)および修飾ワクシニアウイルスAnkara(MVA)を増幅することができない本発明の不死化鳥類細胞系は、欧州細胞培養収集機関(ECACC)に受託番号08060502で寄託された、トリテロメラーゼ逆転写酵素(TERT)を発現する不死化鳥類細胞系またはその誘導体である。
【0037】
好ましい態様によれば、欧州細胞培養収集機関(ECACC)に受託番号08060502で寄託された不死化鳥類細胞系またはその誘導体は、黄熱病ウイルス株(YFV)および日本脳炎ウイルス株(JEV)からなる群、より詳しくはYFV 17D株(例えば、HPA培養コレクションの参照番号507)およびJEV Nakayama野生株(例えば、HPA培養コレクションの参照番号502)からなる群から選択される少なくとも1つのフラビウイルス科株を増幅することができる。
【0038】
好ましい態様によれば、欧州細胞培養収集機関(ECACC)に受託番号08060502で寄託された不死化鳥類細胞系またはその誘導体は、黄熱病ウイルス株(YFV)および日本脳炎ウイルス株(JEV)を増幅することができる。
【0039】
別の特別な態様によれば、本発明の不死化鳥類細胞系は、(i)少なくとも1つのフラビウイルス科株、および(ii)少なくとも1つのポックスウイルス科株を増幅することができる。
【0040】
好ましい態様によれば、少なくとも1つのフラビウイルス科株および少なくとも1つのポックスウイルス科株を増幅することができる本発明の不死化鳥類細胞系は、欧州細胞培養収集機関(ECACC)に受託番号08060501で寄託された、トリテロメラーゼ逆転写酵素(TERT)を発現する不死化鳥類細胞系またはその誘導体である。
【0041】
好ましい態様によれば、欧州細胞培養収集機関(ECACC)に受託番号08060501で寄託された不死化鳥類細胞系またはその誘導体は、(i)黄熱病ウイルス株(YFV)および日本脳炎ウイルス株(JEV)からなる群、より詳しくはYFV 17D株(例えば、HPA培養コレクションの参照番号507)およびJEV Nakayama野生株(例えば、HPA培養コレクションの参照番号502)からなる群から選択される少なくとも1つのフラビウイルス科株、および(ii)ワクシニアウイルス株Copenhagen(VV−COP)(GOEBEL et al. 1990;Genbank受託番号M35027.1)および修飾ワクシニアウイルスAnkara(MVA)(フランス国立微生物収集機関(CNCM)の寄託番号N I−721)からなる群から選択される少なくとも1つのポックスウイルス科株を増幅することができる。
【0042】
好ましい態様によれば、欧州細胞培養収集機関(ECACC)に受託番号08060501で寄託された不死化鳥類細胞系またはその誘導体は、黄熱病ウイルス株(YFV)および日本脳炎ウイルス株(JEV)、ワクシニアウイルス株Copenhagen(VV−COP)、および修飾ワクシニアウイルスAnkara(MVA)を増幅することができる。
【0043】
本発明の寄託ノバリケン不死化鳥類細胞系の誘導体は、例えば、以下により、寄託細胞系から誘導されたノバリケン不死化鳥類細胞系を指す:
・前記寄託ノバリケン不死化鳥類細胞系(ECACC08060502またはECACC08060501)をサブクローニングすること、
・前記寄託ノバリケン不死化鳥類細胞系(ECACC08060502またはECACC08060501)を、特定の培地(例えば、懸濁状態で細胞系の増殖を可能にする培地)および/または特定の培養条件(例えば、温度、CO%)に順応させること、
・非フコシル化タンパク質、より詳しくは非フコシル化抗体を製造するために、サッカライドフコース修飾に関与するノバリケンの1つまたは複数の遺伝子(HARUE IMAI-NISHIYA et al., BMC Biotechnology (2007))を欠失または突然変異させること(好ましい態様によれば、寄託ノバリケン不死化鳥類細胞系の前記誘導体は、α1,6−フコシルトランスフェラーゼ(FUT8)および/またはGDP−マンノース4,6−デヒドラターゼ(GMD)遺伝子の欠失または突然変異により得られる)、
・細胞系の免疫応答を低減させるために、インターフェロン耐性に関与するノバリケンの1つまたは複数の遺伝子(HARUE IMAI-NISHIYA et al., BMC Biotechnology (2007))を欠失または突然変異させること(好ましい態様によれば、寄託ノバリケン不死化鳥類細胞系の前記誘導体は、STAT1遺伝子、STAT2遺伝子、STAT3遺伝子、およびSTAT5遺伝子からなる群から選択される遺伝子(複数可)の欠失または突然変異により得られる)、
・細胞系を培養条件に対してより抵抗性にするために、特にコンフルエンスを維持するために、1つまたは複数のノバリケン抗アポトーシスの遺伝子(複数可)を過剰発現させること、または1つまたは複数の外来性抗アポトーシス遺伝子(複数可)で形質転換すること(好ましい態様によれば、前記抗アポトーシス遺伝子(複数可)は、p19E1Bヒトアデノウイルス遺伝子、bcl−2遺伝子、mcl−1遺伝子、Bcl−xL遺伝子、Bcl−w遺伝子、a1遺伝子、ICP34.5単純ヘルペスウイルス遺伝子、およびp35バキュロウイルス遺伝子からなる群から選択される)、
・増殖速度を増加させるのに好適なベクターを使用して、細胞周期の制御に関与する1つまたは複数のノバリケン遺伝子を過剰発現させること(好ましい態様によれば、細胞周期の制御に関与する前記遺伝子は、p53遺伝子、p21遺伝子、p27遺伝子、およびp57遺伝子からなる群から選択されている)、
・これらウイルスを増殖させるために、目的ウイルスの受容体をコードする1つまたは複数の遺伝子で形質転換することにより細胞系のウイルス感受性範囲を修飾すること(好ましい態様によれば、目的ウイルスの受容体をコードする前記遺伝子(複数可)は、はしかウイルスCD46受容体をコードする遺伝子(複数可)である)。
【0044】
好ましい態様によれば、前記ECACC08060502誘導体は、少なくとも1つのフラビウイルス科株を増幅することできるが、ワクシニアウイルス株Copenhagen(VV−COP)および修飾ワクシニアウイルスAnkara(MVA)を増幅することができない。
【0045】
好ましい態様によれば、前記ECACC08060501誘導体は、(i)少なくとも1つのフラビウイルス科株および(ii)少なくとも1つのポックスウイルス科株を増幅することができる。
【0046】
好ましい態様によれば、本発明の不死化鳥類細胞系は、付着細胞系である。
【0047】
別の好ましい態様によれば、本発明の不死化鳥類細胞系は、懸濁状態で、(マイクロ)キャリアの存在下で、または(マイクロ)キャリアの非存在下で増殖する非付着細胞系である。本発明により使用される(マイクロ)キャリアは、デキストラン、コラーゲン、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ゼラチン、ガラス、セルロース、ポリエチレン、および/またはプラスチックで作られていてもよい。(マイクロ)キャリアは、例えば、Cytodex(商標)マイクロキャリア(Pharmacia社製)、Cytopore(商標)マイクロキャリア(GE Healthcare Life Sciences社製)、Hillex(商標)マイクロキャリア(SoloHill Enginnering社製)、Nunc社製2D MicroHex(商標)マイクロキャリア、Nunclon(商標)(Thermo Fisher Scientific社製)、ProNectin(商標)マイクロキャリア(SoloHill Enginnering社製)、Fibra−Cell(商標)ディスク(New Brunswick Scientific社製)、BioNocll(商標)マイクロキャリア(Cesco Bioengineering社製)、およびCultiSpher−S(商標)マイクロキャリア(Percell Biolytica)等が市販されている。
【0048】
本発明は、ウイルスおよびタンパク質を製造するための本発明の不死化鳥類細胞系の使用にも関する。
【0049】
本出願の全体にわたって使用されているように、「ウイルス」には、フラビウイルス科、ポックスウイルス科、インフルエンザウイルス、パラミクソウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レトロウイルス(例えば、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)等)、ヘパドナウイルス(例えば、B型肝炎ウイルス等)、ヘルペスウイルス(例えば、HSV−1、HSV−2等)、レオウイルス(例えば、ロタウイルス等)、コロナウイルス(例えば、ヒトSARS−CoV、HCoV−NL63等)、およびアルファウイルス(例えば、チクングニヤ、ロスリバーウイルス(RRV)等)からなる群から選択されるウイルスが含まれる。ウイルスは、野生型、弱毒化、組換え、および/または温度感受性ウイルスであってもよい。
【0050】
フラビウイルス科およびポックスウイルス科は、上記に規定されている。
【0051】
本発明によると、フラビウイルス科は、野生型、弱毒化、組換え、および/または温度感受性フラビウイルス科である。
【0052】
本発明によると、ポックスウイルス科は、野生型、弱毒化、組換え、および/または温度感受性ポックスウイルス科である。
【0053】
本出願の全体にわたって使用されているように、「弱毒化ウイルス」は、目的対象体におけるその病原性が実質的に低減されるように修飾されたあらゆるウイルスを指す。好ましくは、ウイルスは、それが臨床的見地から非病原性となるまで、つまりウイルスと接触した対象体が、対照対象体と比べて統計的に有意な病理レベルの増加を示さなくなるまで弱毒化されている。野生型フラビウイルス科病原体を弱毒化するための実験手法は、幾つか記述されている(例えば、PUGACHEV et al., Int. J. Parasitol. 33:567-582 (2003)を参照)。例えば、YFVのカプシドおよび非構造タンパク質、ならびにJEV、DENV、または西ナイルウイルスの膜およびエンベロープタンパク質を含むキメラフラビウイルス科のエンベロープタンパク質のあるアミノ酸における突然変異は、内臓親和性を減少させることが見出されている(例えば、国際公開第2003/103571号および国際公開第2004/045529号を参照)。
【0054】
本出願の全体にわたって使用されているように、「組換えウイルス」は、そのゲノムに挿入された外来性配列を含むウイルスを指す。本明細書で使用される場合、「外来性配列」は、親ウイルスに天然では存在しない核酸分子を指す。「組換えウイルス」は、1つまたは複数の構造タンパク質が、真核生物、原核生物、ウイルス(例えば、第2のウイルスの構造タンパク質(複数可))由来の外来性核酸配列で置換されているウイルスからなるウイルスを指す場合がある。従って、本発明によると、「組換えウイルス」は、「キメラウイルス」または「ハイブリッドウイルス」と同義的に呼ばれる場合もある。特に、フラビウイルス科の場合、キメラフラビウイルス科は、prMおよびEタンパク質が、第2のウイルス(例えば、上記に記載のJEV、WNV、DENV、セントルイス脳炎ウイルス、またはTBEV)のprMおよびEタンパク質と置換された第1のフラビウイルス科(例えば、上記に記載のYFV 17D株等のYFV)からなる場合がある。ChimeriVax(商標)技術を使用して、医学的に重要なフラビウイルス科に対するキメラワクチン候補が生み出されている。この技術では、prM−E遺伝子が、JEV、DENV、WNV、またはセントルイス脳炎ウイルス等の異種性フラビウイルス科に由来するprM−E遺伝子と置換されたベクターとしてYFV 17Dワクチンウイルスが使用される(MONATH et al., Vaccine 20:1004-1018 (2002);PUGACHEV et al., Int. J. Parasitol. 33:567-582 (2003);GUIRAKHOO et al., J. Virol. 78:4761-4775 (2004))。SA14−14−2ウイルスに由来するprM−E遺伝子を含むChimeriVax(商標)−JEVワクチン(つまり、中国で使用される生弱毒化JEVワクチン)は、前臨床および第I相および第II相臨床試験での試験に成功した。同様に、弱毒化を増加させるために3つの特定のアミノ酸変化がEタンパク質に組み込まれた、WNV(つまり、NY99株)に由来するprM−E配列を含むChimeriVax(商標)−WNVワクチン候補を用いて実施された第I相臨床試験が成功している(ARROYO et al., J. Virol. 78:12497-12507 (2004))。他の例として、キメラフラビウイルス科は、国際公開第2006/068307号、国際公開第2002/102828号、欧州特許第0977587号、国際公開第98/37911号、国際公開第93/06214号、米国特許第7569383号、および国際公開第01/39802号に記載のキメラフラビウイルス科であってもよい。
【0055】
有利には、組換えウイルスは、外来性配列(複数可)の発現に必要なエレメントを更に含むことができる。発現に必要なエレメントは、ヌクレオチド配列のRNAへの転写およびmRNAのポリペプチドへの翻訳を可能にする一組のエレメント、特に組換えウイルスが細胞に感染するために効果的なプロモーター配列および/または制御配列、および随意に前記ポリペプチドが分泌または細胞表面に発現されることを可能にするのに必要な配列で構成される。これらエレメントは、誘導可能であってもよくまたは構成的であってもよい。勿論、プロモーターは、選択された組換えウイルスおよび宿主細胞に適用される。文献には、そのようなプロモーター配列に関する大量の情報が提供されている。加えて、必要なエレメントには、宿主細胞での外来性配列の発現またはその維持を向上させる追加的なエレメントが含まれていてもよい。特に、イントロン配列、分泌シグナル配列、核局在化配列、IRES型の翻訳再開始用内部部位、転写終止のポリA配列に言及することができる。
【0056】
本出願の全体にわたって使用されているように、「温度感受性ウイルス」は、野生型が正常な増殖を示すある温度以上で増殖障害を示すウイルス誘導体を指す。例として、BOYD O.ら(Virology Apr 10;399(2):221-30 (2010))、欧州特許0 157 528号(天然痘温度感受性ウイルス)、およびDRILLIEN R.ら(Virology 119, 372-381 (1982))に記載の温度感受性ウイルスを引用することができる。
【0057】
本発明によると、「フルーウイルス(Flu virus)」(インフルエンザウイルスとも呼ばれる)には、A型インフルエンザウイルスおよびその亜型、B型インフルエンザウイルス、およびC型インフルエンザウイルスが含まれる。「A型インフルエンザウイルスの亜型」には、考え得るHAおよびNAタンパク質の様々な組合せが含まれる。19種のNAタンパク質(H1〜H15に分類される)および9種のNAタンパク質(N1〜N9に分類される)が、A型インフルエンザウイルスで特定されている。例として、A型インフルエンザウイルスの亜型は、H1N1ウイルス、H1N2ウイルス、H3N2ウイルス、H3N8ウイルス、H5N1ウイルス、H7N2ウイルス、H7N3ウイルス、H7N7ウイルス、およびH9N2ウイルスであってもよい。インフルエンザウイルスゲノムのヌクレオチド配列に関する更なる情報は、www.flugenome.org/等の公的にアクセス可能な遺伝子データベースから得ることができる。A型インフルエンザウイルスゲノムのヌクレオチド配列に関する更なる情報は、GenBank、EMBL、またはLANL等の公的にアクセス可能な遺伝子データベースから取得することもでき、例えば、J02144、J02146、J02148、J02151、V00603、V01099、V01104、V01106がある。B型インフルエンザウイルスゲノムのヌクレオチド配列に関する更なる情報は、GenBank、EMBL、またはLANL等の公的にアクセス可能な遺伝子データベースから取得することもでき、例えば、J02094、J02095、J02096、K00423、K01395、M20168、M20170、M20172がある。C型インフルエンザウイルスゲノムのヌクレオチド配列に関する更なる情報は、GenBank、EMBL、またはLANL等の公的にアクセス可能な遺伝子データベースから取得することもでき、例えば、K01689、M10087、M17700がある。弱毒化インフルエンザウイルスワクチンに関する更なる情報は、HICKLING J.(A review of production for influenza virus vaccines, and their suitability for deployment in developing countries for influenza pandemic preparedness, Initiative for vaccine research、World Health Organisation (WHO) (2006);www.who.int/vaccine)およびRUDENKO L. G.ら(Vaccine 19(2-3), 308-318 (2000))に見出すことができる。例えば、FluMist(登録商標)(MedImmune社製ワクチン)等の、弱毒化低温適応および温度感受性インフルエンザウイルスワクチンに関する更なる情報は、GLEZEN W.(Expert Rev. Vaccines 3(2):131-9 (2004))に見出すことができる。
【0058】
本発明によると、「パラミクソウイルス」には、アブラウイルス、ヘニパウイルス、麻疹ウイルス、レスピロウイルス、ルブラウイルス、ニューモウイルス、およびメタニューモウイルスが含まれる。アブラウイルスには、トリパラミクソウイルスウイルス1(APMV−1)とも呼ばれるニューカッスル病ウイルス(NDV)が含まれる。ヘニパウイルスには、ヘンドラウイルス(HeV)およびニパウイルス(NiV)が含まれる。麻疹ウイルスには、以下の株のはしかウイルス(MV)が含まれる:Edmonston B株(ENDERS J. F. and T. C. PEEBLES, Proc. Soc. Exp. Biol. Med. 86:277-286 (1954))、EdmonstonAおよびB弱毒化株(GRIFFIN D. and Bellini W., in B. Fields, D. Knipe et al. (ed.), Virology, vol. 2., 1267-1312, Lippincott - Raven Publishers, Philadelphia (1996))、Schwarz/Moraten弱毒化株(GRIFFIN D. and Bellini W., Measles virus, in B. Fields, D. Knipe, et al. (ed.), Virology, vol. 2., 1267-1312, Lippincott - Raven Publishers, Philadelphia (1996);Rouvax(商標)の名称でAventis Pasteur社により商業化されている)、および欧州特許第0540135号、国際公開第2008/086042号、または国際公開第99/49017号に記載の弱毒化MV株。レスピロウイルスには、センダイウイルス(SeV、マウスパラインフルエンザウイルス1とも呼ばれる)、ウシパラインフルエンザウイルス3(BPIV−3)、ヒトパラインフルエンザウイルス1(HPIV−1)、およびヒトパラインフルエンザウイルス3(HPIV−3)が含まれる。ルブラウイルスには、ヒトパラインフルエンザウイルス2(HPIV−2)、ヒトパラインフルエンザウイルス4a(HPIV−4a)、ヒトパラインフルエンザウイルス4b(HPIV−4b)、およびおたふくかぜウイルスが含まれる。ニューモウイルスには、ヒトRSウイルスA2(HRSV−A2)、ヒトRSウイルスB1(HRSV−B1)、およびヒトRSウイルスS2(HRSV−S2)が含まれる。メタニューモウイルスには、ヒトメタニューモウイルス(HMPV)が含まれる。
【0059】
本出願の全体にわたって使用されているように、「タンパク質」には、以下のもの、それらの断片、およびそれらの組合せが含まれる:
・抗体(例えば、リツキシマブ、トラスツズマブ、セツキシマブ、ミラツズマブ、エクリズマブ、トシリズマブ、ニモツズマブ、ゴリムマブ、ラムシルマブ、バピネオズマブ、インフリキシマブ、ベバシズマブ、アダリムマブ、ラニビズマブ、パリビズマブ、オマリズマブ、ナタリズマブ、パニツムマブ、アブシキシマブ、エファリズマブ、セルトリズマブ、トシリズマブ、ウステキヌマブ(ustenkinumab))、
・受容体リガンド(例えば、ホルモン、サイトカイン、増殖因子)、
・ホルモン(例えば、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、抗利尿ホルモン(ADH、バソプレシン)、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)、カルシトニン、コレシストキニン(CCK)、副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)、グルカゴン、生殖腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)、オキシトシン、セクレチン、ソマトスタチン、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)、エリトロポイエチン(EPO)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、成長ホルモン(GH)、ヒト絨毛膜性生殖腺刺激ホルモン(HCG)、インスリン、インスリン様増殖因子−1(IGF−1)、黄体形成ホルモン(LH)、副甲状腺ホルモン(PTH)、プロラクチン(PRL)、トロンボポエチン(thrombopoitin)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、テストステロン、ジヒドロテストステロン(DHT)、アンドロステンジオン(andostenedione)、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)、テストステロン、カルシフェロール、カルシトリオール、エストラジオール、コルチゾール、アルドステロン、プロゲステロン、アドレナリン(エピネフリン)、ドーパミン、メラトニン、ノルアドレナリン(ノルエピネフリン、NE)、トリヨードサイロニン(T3)、チロキシン(T4)、セロトニン)、
・サイトカイン(例えば、インターロイキン(IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL10、IL−11、IL−12、IL13、IL−14、IL−15、IL−16、IL−17、IL−18、IL−19、IL−20、IL−21、IL−22、IL−23、IL−24、IL−25、IL−26、IL−27、IL−28、IL−29、IL−30、IL−31、IL−32、IL−33)、ケモカイン(CCケモカインリガンド1(CCL−1)、CCL−2、CCL−3(マクロファージ炎症性タンパク質1アルファ(MIP−1α)とも呼ばれる)、CCL−4(マクロファージ炎症性タンパク質1ベータ(MIP−1β)とも呼ばれる)、CCL−5(RANTESとも呼ばれる)、CCL−6、CCL−7、CCL−8、CCL−9、CCL−10、CCL−11、CCL−12、CCL−13、CCL−14、CCL−15、CCL−16、CCL−17、CCL−18、CCL−19、CCL−20、CCL−21、CCL−22、CCL−23、CCL−24、CCL−25、CCL−26、CCL−27、CCL−28、CXCケモカイン1(CXCL−1)、CXCL−2、CXCL−3、CXCL−4(血小板第4因子(PF4)とも呼ばれる)、CXCL−5、CXCL−6、CXCL−7、CXCL−8、CXCL−9、CXCL−10、CXCL−11、CXCL−12、CXCL−13、CXCL−14、CXCL−15、CXCL−16、CXCL−17、Cケモカイン1(XCL−1)、XCL−2、CXCケモカイン1(CXCL−1)、インターフェロン(IFNアルファ、IFNベータ、IFN−ガンマ)、腫瘍壊死因子(TNF−アルファ、TNF−ベータ))、
・増殖因子(例えば、上皮増殖因子(EGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、骨形態形成タンパク質(BMP)、エリトロポイエチン(EPO)、繊維芽細胞増殖因子(FGF)、果粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、ヒト多能性顆粒球コロニー刺激因子(hPG−CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、増殖分化因子−9(GDF9)、マクロファージ遊走阻止因子(MIF)、インスリン様増殖因子(IGF)、ミオスタチン(GDF−8)、神経成長因子(NGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、トロンボポイエチン(TPO)、形質転換増殖因子アルファ(TGF−α)、形質転換増殖因子ベータ(TGF−β)、胎盤増殖因子(PIGF)、抗原(例えば、MHCの抗原、白血球機能関連抗原−1(LFA−1))、
・細胞接着分子(例えば、細胞間細胞接着分子(ICAM−1)、神経細胞接着分子(NCAM)、血管細胞接着分子(VCAM−1)、血小板内皮細胞接着分子(PECAM−1)、ネクチン、シナプス細胞接着分子(SynCAM))、
・血液凝固因子(例えば、第VIII因子、第IX因子、tPA)、
・酵素(例えば、アルファアミラーゼ、ベータアミラーゼ、セルロース、ベータグルカナーゼ、ベータグルコシダーゼ、デキストラナーゼ、デキストリナーゼ、グルコアミラーゼ(dlucoamylase)、ヘミセルラーゼ(hemmicellulase)、ペントサナーゼ(pentosanase)、キシラナーゼ、インベルターゼ、ラクターゼ、ナリンギナーゼ、ペクチナーゼ、プルラナーゼ、酸プロテイナーゼ、アルカリプロテアーゼ、ブロメライン、ペプシン、アミノペプチダーゼ、エンドペプチダーゼ、サブチリシン、アミノアシラーゼ、グルタミナーゼ、リゾチーム、ペニシリンアシラーゼ、イソメラーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、カタラーゼ、クロロペルオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、アセト乳酸デカルボキシラーゼ、ヒスチダーゼ、シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼ)。
【0060】
一つの特定の態様によれば、本発明は、ウイルスおよびタンパク質を製造するための、欧州細胞培養収集機関(ECACC)に受託番号08060502で寄託された不死化鳥類細胞系およびその誘導体の使用に関する。
【0061】
好ましい態様によれば、本発明は、ウイルスを製造するための、欧州細胞培養収集機関(ECACC)に受託番号08060502で寄託された不死化鳥類細胞系およびその誘導体の使用に関し、前記ウイルスは、好ましくは、黄熱病ウイルス株(YFV)および日本脳炎ウイルス株(JEV)からなる群、より詳しくはYFV 17D株およびJEV Nakayama野生株からなる群から選択されるフラビウイルス科である。実施例3には、YFV 17D株およびJEV Nakayama野生株を製造するための好ましい方法が記載されている。
【0062】
別の好ましい態様によれば、本発明は、例えば、サイトカイン、抗体、およびホルモンからなる群、更により詳しくはIL−2、リツキシマブ、およびエリトロポイエチン(EPO)からなる群から選択されるもの等のタンパク質を製造するための、欧州細胞培養収集機関(ECACC)に受託番号08060502で寄託された不死化鳥類細胞系およびその誘導体の使用に関する。IL−2を製造するための好ましい方法は、実施例5に記載されている。リツキシマブを製造するための好ましい方法は、実施例6に記載されている。EPOを製造するための好ましい方法は、実施例7に記載されている。
【0063】
別の特別な態様によれば、本発明は、ウイルスおよびタンパク質を製造するための、欧州細胞培養収集機関(ECACC)に受託番号08060501で寄託された不死化鳥類細胞系およびその誘導体の使用に関する。
【0064】
好ましい態様によれば、本発明は、ウイルスを製造するための、欧州細胞培養収集機関(ECACC)に受託番号08060501で寄託された不死化鳥類細胞系およびその誘導体の使用に関し、前記ウイルスは、好ましくは、黄熱病ウイルス株(YFV)および日本脳炎ウイルス株(JEV)からなる群、より詳しくはYFV 17D株およびJEV Nakayama野生株からなる群から選択されるフラビウイルス科である。実施例3には、YFV 17D株およびJEV Nakayama野生株を製造するための好ましい方法が記載されている。
【0065】
別の好ましい態様によれば、本発明は、ウイルスを製造するための、欧州細胞培養収集機関(ECACC)に受託番号08060501で寄託された不死化鳥類細胞系およびその誘導体の使用に関し、前記ウイルスは、好ましくは、ワクシニアウイルス株Copenhagen(VV−COP)および修飾ワクシニアウイルスAnkara(MVA)からなる群から選択されるポックスウイルス科である。実施例4には、VV−COPおよびMVAを製造するための好ましい方法が記載されている。
【0066】
別の好ましい態様によれば、本発明は、例えば、サイトカイン、抗体、およびホルモンからなる群、更により詳しくはIL−2、リツキシマブ、およびエリトロポイエチン(EPO)からなる群から選択されるもの等のタンパク質を製造するための、欧州細胞培養収集機関(ECACC)に受託番号08060501で寄託された不死化鳥類細胞系およびその誘導体の使用に関する。IL−2を製造するための好ましい方法は、実施例5に記載されている。リツキシマブを製造するための好ましい方法は、実施例6に記載されている。EPOを製造するための好ましい方法は、実施例7に記載されている。
【0067】
本発明は、以下のステップを含むウイルスを製造する方法にも関する:
a)欧州細胞培養収集機関(ECACC)に受託番号08060502で寄託された不死化鳥類細胞系を、ウイルスに感染させるステップ、および
(b)ウイルス増幅を可能にする条件下で、感染鳥類細胞系を培養するステップ。
【0068】
本発明は、野生型、弱毒化、および/または組換えオルソポックスウイルスを製造および精製する方法であって、
a)パッケージング細胞の培養を準備し、
b)パッケージング細胞培養をオルソポックスウイルスに感染させ、
c)子孫オルソポックスウイルスが製造されるまで、感染パッケージング細胞を培養し、
d)1つまたは複数のヌクレアーゼの存在下でインキュベーションし、
e)培養液上清および/またはパッケージング細胞からオルソポックスウイルスを回収し、
f)好適な条件下にてステップe)で回収されたオルソポックスウイルスに一価塩を添加して、ヌクレアーゼ(複数可)活性を阻害し、前記オルソポックスウイルスがステップg)で陰イオン交換吸着剤に吸着することを回避し、
g)ステップf)で得られた混合物を、核酸捕捉を可能にする好適な条件下で陰イオン交換吸着剤と接触させ、
h)ステップg)で得られた混合物を好適な条件下で清澄化して、細胞残屑の除去を可能にし、
i)陰イオン交換吸着剤を、好適な条件下で一価塩を含む溶液で洗浄して、通過画分に残留するオルソポックスウイルスを回収し、
j)工程h)で得られた通過画分、および工程i)で得られた通過画分を濃縮し、
k)工程j)で得られたオルソポックスウイルスを含む画分をダイアフィルトレーションすることを含み、
前記パッケージング細胞が、国際公開第2007/077256号により包含されるテロメラーゼ逆転写酵素(TERT)をコードする核酸配列を含むノバリケン不死化鳥類細胞系であり、特に、以下の不死化鳥類細胞系:
欧州細胞培養収集機関(ECACC)に受託番号08060502で寄託されているT3−17490(図2、3、および4を参照)またはその誘導体、
欧州細胞培養収集機関(ECACC)に受託番号08060501で寄託されているT6−17490(図5、6、および7を参照)またはその誘導体が好ましい方法に更に関する。
【0069】
好ましい態様によれば、ウイルスは、好ましくは、黄熱病ウイルス株(YFV)および日本脳炎ウイルス株(JEV)からなる群、より詳しくはYFV 17D株およびJEV Nakayama野生株からなる群から選択されるフラビウイルス科である。実施例3には、YFV 17D株およびJEV Nakayama野生株を製造するための好ましい方法が記載されている。
【0070】
別の特別な態様によれば、本発明は、以下の工程を含むウイルスを製造するための方法に関する:
a)欧州細胞培養収集機関(ECACC)に受託番号08060501で寄託された不死化鳥類細胞系を、ウイルスに感染させる工程、および
(b)ウイルス増幅を可能にする条件下で、感染鳥類細胞系を培養する工程。
【0071】
好ましい態様によれば、製造されるウイルスは、好ましくは、黄熱病ウイルス株(YFV)および日本脳炎ウイルス株(JEV)からなる群、より詳しくはYFV 17D株およびJEV Nakayama野生株からなる群から選択されるフラビウイルス科である。実施例3には、YFV 17D株およびJEV Nakayama野生株を製造するための好ましい方法が記載されている。
【0072】
別の好ましい態様によれば、製造されるウイルスは、好ましくは、ワクシニアウイルス株Copenhagen(VV−COP)および修飾ワクシニアウイルスAnkara(MVA)からなる群から選択されるポックスウイルス科である。実施例4には、VV−COPおよびMVAを製造するための好ましい方法が記載されている。
【0073】
本発明の鳥類細胞系は、好ましくは、実施例3および4に記載のように、30℃〜37℃を含む温度で、より好ましくは37℃で感染する。本発明の細胞系をウイルスに感染させる工程a)は、適切な細胞培地中で実施される。例えば、細胞培地は、例えば血清(例えば、ウシ胎仔血清(FCS))および/またはアミノ酸(複数可)(例えば、L−グルタミン)で随意に補完されていてもよいダルベッコ変法イーグル培地(DMEM、Invitrogen社製)または基本培地イーグル(BME、Invitrogen社製)であってもよい。また、細胞培地は、動物産物が含まれていない培地であってもよい。動物産物を含まない多くの培地が既に記述されており、例えば、293SFM II;293−F細胞、SFM適合;293−H細胞、SFM適合;293fectin(商標)形質移入試薬;CD293AGT(商標);CD293培地;FreeStyle(商標)293発現系;FreeStyle(商標)293培地;FreeStyle(商標)293−F細胞、SFM適合;VP−SFM;VP−SFM AGT(商標);PER.C6(登録商標)細胞用アデノウイルス発現培地(AEM)増殖培地;CD293 AGT(商標);CD293培地;COS−7L細胞、SFM適合;EPISERF(登録商標)培地;OptiPro(商標)SFM(全てInvitrogenから入手可能)等、それらの幾つかは市販されている。実施例3および実施例4に記載のように、本発明の鳥類細胞系の感染に使用される好ましい細胞培地は、FCSおよびL−グルタミンで補完されたBME(Invitrogen社製)である。
【0074】
本発明の細胞系は、製造されるウイルスに応じた感染多重度(MOI)でウイルスに感染させる。例えば、フラビウイルス科は、好ましくは約0.001〜0.1を含むMOIで本発明の鳥類細胞系に接種される。より詳しくは、製造されるフラビウイルス科がYFVまたはJEVである場合、MOIは、より好ましくは、実施例3、図7A、図8A、図9A、および図10Aに記載のように約0.001である。別の例として、ポックスウイルス科は、好ましくは約0.001〜0.1を含むMOIで本発明の鳥類細胞系に接種される。より詳しくは、製造されるポックスウイルス科がVV−COPである場合、MOIは、より好ましくは、実施例4、図11Bに記載のように約0.001である。製造されるポックスウイルス科がMVAである場合、MOIは、より好ましくは、実施例4、図11Aに記載のように約0.05である。
【0075】
その後、感染細胞系は、ウイルス増幅を可能にする条件下で培養され(つまり、工程b))、これは、ウイルスゲノムが転写され、ウイルスタンパク質に翻訳され、感染性ウイルス粒子へとパッケージングされることを意味する。
【0076】
感染細胞系は、表面への付着細胞としてまたは懸濁状態で、(マイクロ)キャリア(上記で規定されている)の存在下または非存在下で培養することができる。細胞系培養は、例えば、シャーレ、ローラーボトル、またはバッチ、流加バッチ、連続式、および中空繊維等を使用するバイオリアクターで実施することができる。本発明の感染鳥類細胞系は、好ましくは、実施例3および4に記載のように、30℃〜37℃を含む温度で、より好ましくは37℃で培養される。感染鳥類細胞系を培養する工程b)は、鳥類細胞系の感染に(工程a)で)使用された細胞培地と同じであってもよくまたは異なっていてもよい適切な細胞培地中で実施される。感染鳥類細胞系は、ウイルスに応じて、好ましくは1〜6日間培養される。例えば、製造されるウイルスがYFVである場合、感染鳥類細胞系は、より好ましくは、図7Aおよび図9Aに示されているように1〜3日間培養される。別の例として、製造されるウイルスがJEVである場合、感染鳥類細胞系は、より好ましくは、図8Aおよび図10Aに示されているように1〜4日間培養される。別の例として、製造されるウイルスがVV−COPまたはMVAである場合、感染鳥類細胞系は、より好ましくは、図11(A〜B)に示されているように1〜4日間培養される。
【0077】
本発明によると、工程a)の感染前に、鳥類細胞系の感染に(工程a)で)使用された細胞培地、および感染鳥類細胞系の培養に(工程b)で)使用された細胞培地と同じであってもよくまたは異なっていてもよい適切な細胞培地中で、本発明の細胞系を培養する工程を実施してもよい。鳥類細胞系は、実施例3および4に記載のように、感染前に好ましくは1〜3日間、より好ましくは1日間、30〜37℃を含む温度で、より好ましくは37℃で培養される。
【0078】
本発明によると、工程b)の感染細胞系の培養の後で、溶液中に存在する核酸(例えば、DNA、RNA)を分解するために、1つまたは複数のヌクレアーゼ(つまり、エンドヌクレアーゼまたはエキソヌクレアーゼ)の存在下でインキュベーションする工程を実施してもよい。本発明により好ましく使用されるヌクレアーゼは、エンドヌクレアーゼである。本発明により使用することができるエンドヌクレアーゼは、それらの基質に基づいて以下のように分類することができる:DNAを分解するデオキシリボヌクレアーゼ(DNase)、RNAを分解するリボヌクレアーゼ(RNase)、およびDNAおよびRNAを分解するエンドヌクレアーゼ。エンドヌクレアーゼDNasesには、これらに限定されないが、DNase I、DNase IlおよびエンドデオキシリボヌクレアーゼIVが含まれる。エンドヌクレアーゼRNaseには、これらに限定されないが、RNase I、RNase III、RNAse E、RNAse F、およびRNAse Pが含まれる。DNAおよびRNAを分解するエンドヌクレアーゼには、これらに限定されないが、Benzonase(登録商標)が含まれる。本発明により好ましく使用されるエンドヌクレアーゼは、Benzonase(登録商標)である。Benzonase(登録商標)は、特定のヌクレオチド間の内部リン酸ジエステル結合を加水分解することにより核酸(例えば、DNA、RNA)を分解する。完全に消化されると、溶液中に存在する遊離核酸(例えば、DNA、RNA)は全て、長さが3〜8個の塩基である5’末端が一リン酸のオリゴヌクレオチドに低減される。Benzonaze(登録商標)は、タンパク質分解活性を有しない。本発明により使用されるBenzonaze(登録商標)は、好ましくは薬学的に許容される。薬学的に許容されるBenzonaze(登録商標)は、市販されている(例えば、参照番号ME−0280−10のEurogentec社製;例えば、参照番号1.01653.0001のMerck社製)。本発明によると、使用されるヌクレアーゼ(複数可)の濃度は、5〜100U/mlの範囲、好ましくは5〜50U/mlの範囲、より好ましくは10U/mlである。
【0079】
その後、製造されたウイルスは、上清および/または細胞から回収される。製造されたウイルスを細胞から(つまり、細胞のみから、または細胞からおよび上清から)回収する場合、製造されたウイルスを回収する工程の前に、細胞膜の破壊を可能にする工程を実施してもよい。この工程は、細胞からウイルスを遊離させることに結び付く。細胞膜の破壊は、当業者に周知の種々の技術により引き起こすことができる。それら技術には、これらに限定されないが、凍結/融解、低浸透圧性溶解、超音波処理(ソニケーターの使用による)、および高速剪断流動処理(microfluidization)(高速剪断流動処理装置(microfluidizer)の使用による)が含まれる。ソニケーターは、例えば、Heraeus PSP社、Biologics社、Misonix社、またはGlenMills社から市販されている。本発明により使用される好ましいソニケーターは、SONITUBE 20kHz SM20−120−3型、およびSONITUBE 35kHz SM35−400−3型(Heraeus PSP社製)である。高速剪断流動処理装置は、例えば、Microfluidics Corporation社から市販されている。鳥類細胞膜は、SLM Aminco社製フレンチプレスを使用することにより破壊することもできる。細胞膜は、高速ホモジナイザーを使用することにより破壊することもできる。高速ホモジナイザーは、例えば、Silverson Machines社またはIka−Labotechnik社から市販されている。
【0080】
本発明の特別の態様によれば、回収されたウイルスは、その後精製される。製造されたウイルスの精製は、例えば、以下の工程の1つまたは複数を含んでいてもよい:
・好適な条件下で細胞残屑の除去を可能にする清澄化工程。前記清澄化は、例えば、深層ろ過により実施することができる。深層ろ過には、これらに限定されないが、以下のもの等の1つまたは複数の市販製品の使用が含まれる:Sartorius社製のSartopure(登録商標)フィルター(例えば、Sartopure(登録商標)PP2)、CUNO社製Incorporated APシリーズ深層フィルター(例えば、AP01)、CUNO社製Incorporated CPシリーズ深層フィルター(例えば、CP10、CP30、CP50、CP60、CP70、CP90)、CUNO社製Incorporated HPシリーズ深層フィルター(例えば、HP10、HP30、HP50、HP60、HP70、HP90)、CUNO社製Incorporated Calif.シリーズ深層フィルター(例えば、CA10、CA30、CA50、CA60、CA70、CA90)、CUNO社製Incorporated SPシリーズ深層フィルター(例えば、SP10、SP30、SP50、SP60、SP70、SP90)、CUNO社製DelipidおよびDelipid Plusフィルター、Millipore Corporation社製CEシリーズ深層フィルター(例えば、CE15、CE20、CE25、CE30、CE35、CE40、CE45、CE50、CE70、CE75)、Millipore Corporation社製DEシリーズ深層フィルター(例えば、DE25、DE30、DE35、DE40、DE45、DE50、DE55、DE560、DE65、DE70、DE75)、Millipore Corporation社製HCフィルター(例えば、A1HC、B1HC、COHC)、CUNO社製PolyNet(商標)フィルター(例えば、PolyNet(商標)PB P050、P100、P200、P300、P400、P500、P700)、Millipore社製ClarigardおよびPolygardフィルター、CUNO社製Life Assure フィルター、ManCel Associates社製深層フィルター(例えば、PR12UP、PR12、PR5UP)、およびPALL社製またはSeitzSchenk社製Incorporatedフィルター。入手可能な深層ろ過ユニットの清澄化能力を向上させるためには、細孔径が減少する2つ以上のユニットを結合させることが有用である場合がある。この実施形態では、混合物は、第1の深層ろ過ユニットを通過して清澄化され、そこに最も大きな夾雑物が残留し、その後第2の深層ろ過ユニットに通される。この点で、清澄化は、好ましくは深層ろ過により、より好ましくは、5μmの細孔径を有するフィルターに結合された8μmの細孔径を有するフィルターで実施される。本発明により使用される8μmおよび5μmの細孔径を有する好ましいフィルターは、Sartorius社から市販されているSartopure(登録商標)フィルター(Sartopure(登録商標)PP2)である。深層ろ過は、好ましくは1L/分の流速で実施される。
・例えば、精密ろ過または限外ろ過により実施することができる濃縮工程。精密ろ過は、大型分子を濃縮および精製する圧力駆動膜プロセスである。より具体的には、溶液は、ウイルスが残留画分に残留し、小型分子(例えば、タンパク質)がフィルターを通過して透過画分に達することを可能にするように、その細孔径が選択されたフィルターに通される。精密ろ過は、抽出溶液の容積を低減する。本発明により使用されるフィルターは、好ましくは、例えばProstak精密ろ過モジュール(Millipore社製)等の、オートクレーブ可能な市販のフィルターである。
・精密ろ過(上記に記載のような)を向上させ、ウイルスを含む前記画分を溶液で希釈して、前記画分中の不純物濃度の低減を達成すること伴うダイアフィルトレーション工程。ウイルスを含む画分を希釈することにより、前記画分に由来する不純物をより多く洗い流すことが可能になる。ダイアフィルトレーションは、バッチ法、半連続法、または連続法で実施することできることが理解される。有利には、ダイアフィルトレーションを使用して、ウイルスが含まれる緩衝液を変更することができる。例えば、精製プロセスで使用される緩衝液を、薬学的に許容される緩衝液に交換することが有用である場合がある。本発明によりダイアフィルトレーションに使用されるフィルターは、ウイルスが残留画分に残留し、小型分子(例えば、タンパク質)がフィルターを通過して透過画分に達することを可能にする。そのようなフィルターは、好ましくは、例えばProstak精密ろ過モジュール(Millipore社製)等の、オートクレーブ可能な市販のフィルターである。
・陽イオンまたは陰イオン交換吸着剤、好ましくは陰イオン交換吸着剤を使用するクロマトグラフィー工程。陰イオン交換吸着剤の官能基は、例えば、ジメチルアミノエチル(DMAE)、ジエチルアミノエチル(DEAE)、トリメチルアミノエチル(TMAE)、トリエチルアミノエチル(TEAE)、−R−CH(OH)−CH−N−(CH基(Q基とも称される;Streamline(登録商標)レジン、Pharmacia社製を参照)、または例えば7.0〜9.0のpH範囲で形式陽電荷を既に有しているかもしくは有することになるポリエチレンイミン(PEI)等の他の基等の、一級、二級、三級、または四級アミノ基であってもよい。陰イオン交換吸着剤は、これらに限定されないが、例えば、ビーズ形態のマトリックスまたは膜で構成されていてもよい。陰イオン交換吸着剤がビーズ形態のマトリックスで構成されている場合、マトリックスは、例えば、アガロース、親水性ポリマー、セルロース、デキストラン、またはシリカであってもよい。鎖(例えば、デキストラン鎖)は、マトリックスに結合されている。上記に記載のような官能基は、化学的に安定した結合(例えば、エーテル結合)で鎖に結合されている。本発明により使用されるビーズ形態のマトリックスで構成される陰イオン交換吸着剤は、例えば、UNOsphere(登録商標)Q(BioRad社製)、UNOsphere(登録商標)S(BioRad社製)、STREAMLINE(商標)Q Sepharose(登録商標)XL(Amersham Biosciences社製)、STREAMLINE(商標)SP Sepharose(登録商標)XL(Amersham Biosciences社製)、またはBioSepra(登録商標)Q hyperZ(Pall Corporation社製)等、好ましくはオートクレーブ可能である。陰イオン交換吸着剤が膜で構成されている場合、使用される膜は、ウイルスのサイズより小さな細孔径を有する。
【0081】
製造された野生型、弱毒化、組換え、および/または温度感受性ウイルスは、外側ビリオンコートは無傷のままであるが複製機能が破壊されるように、更に不活化することができる。前記「全死滅ウイルス」の調製は、加熱または化学薬品により実施することができる。使用される化学薬品には、ホルムアルデヒドまたはベータ−プロビオラクトン、およびホルマリンが含まれる(CHERTOVA E. et al., AIDS Vaccine (2001))。
【0082】
1つの特別な態様によれば、本発明は、以下の工程を含む、タンパク質を製造するための方法に関する:
a)欧州細胞培養収集機関(ECACC)に受託番号08060502で寄託された不死化鳥類細胞系を、少なくとも1つのタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む少なくとも1つの組換えベクターと接触させる工程、および
b)タンパク質の製造を可能にする条件下で鳥類細胞系を培養する工程。
【0083】
別の特別な態様によれば、本発明は、以下の工程を含む、タンパク質を製造するための方法に関する:
a)欧州細胞培養収集機関(ECACC)に受託番号08060501で寄託された不死化鳥類細胞系を、タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む組換えベクターと接触させる工程、および
b)タンパク質の製造を可能にする条件下で鳥類細胞系を培養する工程。
【0084】
本発明によると、組換えベクターは、プラスミドまたはウイルス由来であってもよく、それが適切な場合は、形質移入効率および/またはベクターの安定性を向上させる1つまたは複数の物質と混合されてもよい。これら物質は、当業者が入手可能な文献に広く記載されている(例えば、FEIGNER et al., Proc. West. Pharmacol. Soc. 32,115-121 (1987);HODGSON and SOLAIMAN, Nature Biotechnology 14, 339-342 (1996);REMY et al., Bioconjugate Chemistry, 5, 647-654 (1994)を参照)。本発明によると、組換えベクターは、発現ベクターである。一般的に、それらは当業者に公知であり、それらの多くは市販されており、遺伝子操作の技術を使用して、それらを構築または修飾することも可能である。
【0085】
本発明の好ましい態様によれば、組換えベクターは、プラスミドである。好ましくは、本発明の状況で使用されるプラスミドは、複製開始点を含有している。プラスミドは、形質移入された細胞の選択または識別を可能にする選択遺伝子を更に含むことができる(栄養素要求性突然変異、抗生物質に対する耐性をコードする遺伝子の補完)。プラスミドは、本発明の不死化鳥類細胞系中でのその維持および/またはその安定性を向上させる更なるエレメントを含有することができる。プラスミドの例は、実施例5、6、および7に記載されている。
【0086】
本発明の好ましい態様によれば、製造されるタンパク質は、サイトカイン、より詳しくはインターロイキン、更により詳しくはIL−2である。IL−2を製造するための好ましい方法は、実施例5に記載されている。
【0087】
本発明の別の好ましい態様によれば、製造されるタンパク質は、抗体、より詳しくはリツキシマブである。リツキシマブ(Rituxan(登録商標)またはMabThera(登録商標))は、キメラマウス/ヒト抗CD20モノクローナル抗体である。リツキシマブを製造するための好ましい方法は、実施例6に記載されている。
【0088】
本発明の別の好ましい態様によれば、製造されるタンパク質は、ホルモン、より詳しくはエリトロポイエチン(EPO)である。EPOを製造するための好ましい方法は、実施例7に記載されている。
【0089】
本発明の好ましい態様によれば、タンパク質およびウイルスを製造するための方法は、動物産物(本発明の鳥類細胞系を除く)を含んでおらず、ワクチンの無菌性に関する規制要件の完全な遵守を保証する無菌工業規模製造プロセスに好適である。本出願の全体にわたって使用されているように、「動物産物」は、生物の動物細胞中でまたは動物細胞により製造される任意の化合物または一群の化合物を指す。
【0090】
本発明は、上記に記載の方法により得られる、精製された野生型、弱毒化、組換え、および/または温度感受性ウイルスにも関する。
【0091】
本発明は、上記に記載の方法により得られる、精製された全死滅ウイルスに関する。
【0092】
本発明は、上記に記載の方法により得られる、精製されたタンパク質に関する。
【0093】
本発明は、医薬組成物、より詳しくは、上記に記載の方法により得られる、精製された野生型、弱毒化、組換え、温度感受性、および/または全死滅ウイルスを含むワクチンにも関する。
【0094】
本発明は、上記に記載の方法により得られる精製されたタンパク質を含む医薬組成物にも関する。
【0095】
本明細書で使用される場合、「医薬組成物」は、薬学的に許容される担体を含む組成物を指す。前記薬学的に許容される担体は、好ましくは、等張性、低張性、または弱高張性であり、例えばスクロース溶液等、比較的低いイオン強度を有する。更に、そのような担体は、任意の溶媒、または非発熱性滅菌水等の水性または部分的に水性の液体を含有してもよい。加えて、医薬組成物のpHは、in vivoでの使用要件を満たすように調整および緩衝化されている。また、医薬組成物には、薬学的に許容される希釈液、アジュバント、または賦形剤、ならびに可溶化剤、安定化剤、および保存剤が含まれていてもよい。注射可能な投与の場合、水性、非水性、または等張性溶液中の製剤が好ましい。製剤は、使用時に適切な希釈液で再構成することができる液体または乾燥形態(粉末および凍結乾燥物等)で単用量または複数用量で提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】ノバリケン不死化鳥類細胞系ECACC08060502(継代39)の光学顕微鏡画像を示す図である。
【図2】ノバリケン不死化鳥類細胞系ECACC08060502の増殖曲線(継代7〜継代75)を示す図である。
【図3】ノバリケン不死化鳥類細胞系ECACC08060502の集団倍加時間推移(継代7〜継代75)を示す図である。
【図4】ノバリケン不死化鳥類細胞系ECACC08060501(継代45)の光学顕微鏡画像を示す図である。
【図5】ノバリケン不死化鳥類細胞系ECACC08060501の増殖曲線(継代15〜継代51)を示す図である。
【図6】ノバリケン不死化鳥類細胞系ECACC08060501の集団倍加時間推移(継代16〜継代51)を示す図である。
【図7A】ノバリケン不死化鳥類細胞系ECACC08060502(図7A)およびベロ細胞系(図7B)のフラビウイルス科製造特性(黄熱病ウイルス17D(MoI 0.001))を示す図である。
【図7B】ノバリケン不死化鳥類細胞系ECACC08060502(図7A)およびベロ細胞系(図7B)のフラビウイルス科製造特性(黄熱病ウイルス17D(MoI 0.001))を示す図である。
【図8A】ノバリケン不死化鳥類細胞系ECACC08060502(図8A)およびベロ細胞系(図8B)のフラビウイルス科製造特性(日本脳炎ウイルスNakayama野生株(MoI 0.001))を示す図である。
【図8B】ノバリケン不死化鳥類細胞系ECACC08060502(図8A)およびベロ細胞系(図8B)のフラビウイルス科製造特性(日本脳炎ウイルスNakayama野生株(MoI 0.001))を示す図である。
【図9A】ノバリケン不死化鳥類細胞系ECACC08060501(図9A)およびベロ細胞系(図9B)のフラビウイルス科製造特性(黄熱病ウイルス17D(MoI 0.001))を示す図である。
【図9B】ノバリケン不死化鳥類細胞系ECACC08060501(図9A)およびベロ細胞系(図9B)のフラビウイルス科製造特性(黄熱病ウイルス17D(MoI 0.001))を示す図である。
【図10A】ノバリケン不死化鳥類細胞系ECACC08060501(図10A)およびベロ細胞系(図10B)のフラビウイルス科製造特性(日本脳炎ウイルスNakayama野生株(MoI 0.001))を示す図である。
【図10B】ノバリケン不死化鳥類細胞系ECACC08060501(図10A)およびベロ細胞系(図10B)のフラビウイルス科製造特性(日本脳炎ウイルスNakayama野生株(MoI 0.001))を示す図である。
【図11A】ノバリケン不死化鳥類細胞系ECACC08060501のポックスウイルス科製造特性(ワクシニアウイルス株Copenhagen(VV−COP)(図11B)および修飾ワクシニアウイルスAnkara(MVA)(図11A))を示す図である。
【図11B】ノバリケン不死化鳥類細胞系ECACC08060501のポックスウイルス科製造特性(ワクシニアウイルス株Copenhagen(VV−COP)(図11B)および修飾ワクシニアウイルスAnkara(MVA)(図11A))を示す図である。
【図12A】ノバリケン不死化鳥類細胞系ECACC08060501(図12C)およびCHO K1細胞系(図12A)およびCHO DG44細胞系(図12B)からのリツキシマブ製造を示す図である。
【図12B】ノバリケン不死化鳥類細胞系ECACC08060501(図12C)およびCHO K1細胞系(図12A)およびCHO DG44細胞系(図12B)からのリツキシマブ製造を示す図である。
【図12C】ノバリケン不死化鳥類細胞系ECACC08060501(図12C)およびCHO K1細胞系(図12A)およびCHO DG44細胞系(図12B)からのリツキシマブ製造を示す図である。
【図13】ノバリケン不死化鳥類細胞系ECACC08060502(T3)およびECACC08060501(T6)からのエリトロポイエチン(EPO)製造を示す図である。
【0097】
本発明を例示するために、以下の例を提供する。これら例は、いかなる点でも本発明の範囲を制限するとは意図されていない。
【実施例】
【0098】
実施例1:不死化ノバリケン細胞系ECACC08060502
ノバリケン細胞ECACC08060502(継代39)は、均質な線維芽細胞様形態を示す(図1)。静的単層は、100%コンフルエンスまで安定しており、接触阻止の影響下にある。細胞を検査し、マイコプラズマ汚染は陰性であり、同様に微生物汚染も陰性だった。細胞系増殖曲線(継代7〜継代75)(図2)は、継代19から継代75まで連続的な指数増殖期を示す。集団倍加時間(PDT)の推移に注目すると、漸進的な安定化および減少が観察され、特にPDTが、最後の10継代中は48時間の目盛より低く安定していることに留意することができる(図3)。対応する集団倍加数(集団倍加レベル、PDL)を、2つの指数増殖期を累積することにより計算し、75継代中、細胞は少なくとも147回の集団倍加(PD)を起こした。初代細胞が老化状態に入る前に起こすことができる集団倍加数は、組織および種に依存する上限は50〜60PDであることが一般的に認められている。従って、ノバリケン細胞系ECACC08060502は、ヘイフリック限界をはるかに超えており、従って不死化細胞系とみなされる。
【0099】
N.B.:
・集団倍加レベル(PDL)は、細胞世代(生物量2倍増)の回数を指す。PDL計算:PDL=Ln(最終/初期細胞数)/Ln(2);
・集団倍加時間(PDT)は、世代時間とも呼ばれ、1回の集団倍加に必要な時間である。PDT計算:PDT=Δt*Ln(2)/Ln(最終/初期細胞数)。
【0100】
実施例2:不死化ノバリケン細胞系ECACC08060501
ノバリケン細胞ECACC08060501(継代45)は、均質な線維芽細胞様形態を示す(図4)。静的単層は、100%コンフルエンスまで安定しており、接触阻止の影響下にある。細胞を検査し、マイコプラズマ汚染び陰性であり、同様に微生物汚染にも陰性だった。細胞系増殖曲線(継代15〜継代51)(図5)は、継代19から連続的な指数増殖期を示す。この期間中、測定された集団倍加時間(PDT)は、次第に減少した。平均PDTは、94時間(継代20〜35)から52時間(継代36〜51)へと推移した(図6)。51継代に対応する計算集団倍加数(PDL)は、少なくとも71回の集団倍加である。従って、ノバリケン細胞系ECACC08060501は、ヘイフリック限界をはるかに超えており、従って不死化細胞系とみなされる。
【0101】
N.B.:
・集団倍加レベル(PDL)は、細胞世代(生物量2倍増)の回数を指す。PDL計算:PDL=Ln(最終/初期細胞数)/Ln(2);
・集団倍加時間(PDT)は、世代時間とも呼ばれ、1回の集団倍加に必要な時間である。PDT計算:PDT=Δt*Ln(2)/Ln(最終/初期細胞数)。
【0102】
実施例3:フラビウイルス科の製造
3.1 黄熱病ウイルス(YFV)の製造
ノバリケン不死化鳥類細胞系ECACC08060502および08060501のYFV増幅能力を評価し、フラビウイルス科増殖の基準であるベロ細胞系と比較した。ノバリケン細胞系を、10%ウシ胎仔血清(FCS)および4mM L−グルタミンで補完された基本培地イーグル(Invitrogen社製)中で増殖させ、ベロ細胞系を、5%FCSで補完されたダルベッコ変法イーグル培地(Invitrogen社製)中で増殖させる。感染は、同じ培地中で実施した。黄熱17Dワクチン株(YFV 17D)(Stamaril(商標)、Sanofi Pasteur社製)を、この実験で評価した。ノバリケン不死化鳥類細胞系ECACC08060502および08060501ならびにベロを、それぞれ4.10、2.10、および6.10細胞で6穴プレートに播種し、37℃、5%COの多湿雰囲気で24時間培養した。その後、培地を除去し、培地で希釈された250μLのYFV 17Dウイルスを細胞にMOI 0.0001で感染させた。1時間の吸収工程後、残存ウイルス懸濁液を除去し、細胞をPBSで3回洗浄し、2mLの培地を各ウエルに添加した。ウイルスを、37℃、5%COで感染の24、48、および72時間後に上清から回収し、滴定のために清澄化した。感染細胞層をトリプシンで分離し、洗浄し、スライド上で固定した。感染細胞の割合を決定するために、間接免疫蛍光分析をスライド上で実施した。
【0103】
滴定は、対数的ウイルス希釈物で感染させたベロ細胞に対する免疫組織化学的アッセイにより実施した。感染の5日後、細胞を固定し、特異的ポリクローナルIA(免疫腹水)と共にインキュベートし、ペルオキシダーゼで標識された二次抗体で検出した。DAB基質を使用して比色定量反応を得た。感染の染色フォーカスを観察および計数し、ウイルス力価を、1ml当たりのフォーカス形成単位(FFU)として計算した。
【0104】
結果:図7(A〜B)に示されているように、わずか24時間後にノバリケン不死化鳥類細胞系ECACC08060502(図7A)を用いてYFV 17Dについて得られたウイルス性力価は、ベロ細胞系(図7B)で得られたウイルス力価より、3logを超えて高い。図9(A〜B)に示されているように、わずか24時間および48時間後にノバリケン不死化鳥類細胞系ECACC08060501(図9A)を用いてYFV 17Dについて得られたウイルス性力価は、ベロ細胞系(図9B)で得られたウイルス力価より4log高い。
【0105】
3.2 日本脳炎ウイルス(JEV)の製造
ノバリケン不死化鳥類細胞系ECACC08060502および08060501のJEV増幅能力を評価し、フラビウイルス科増殖の基準であるベロ細胞系と比較した。ノバリケン細胞系を、10%ウシ胎仔血清(FCS)および4mM L−グルタミンで補完された基本培地イーグル(Invitrogen社製)中で増殖させ、ベロ細胞系を、5%FCSで補完されたダルベッコ変法イーグル培地(Invitrogen社製)中で増殖させる。感染は、同じ培地中で実施した。日本脳炎Nakayama野生株(フランス国立科学研究センター(CNRS)のコレクション)を、この実験で評価した。ノバリケン不死化鳥類細胞系ECACC08060502および08060501ならびにベロを、それぞれ4.10、2.10、および6.10細胞で6穴プレートに播種し、37℃、5%COの多湿雰囲気で24時間培養した。その後、培地を除去し、培地で希釈された250μLのJEV Nakayama野生株に細胞をMOI 0.0001で感染させた。1時間の吸収工程後、残存ウイルス懸濁液を除去し、細胞をPBSで3回洗浄し、2mLの培地を各ウエルに添加した。ウイルスを、37℃、5%COで感染の24、48、および72時間後に上清から回収し、滴定のために清澄化した。感染細胞層をトリプシンで分離し、洗浄し、スライド上で固定した。感染細胞の割合を決定するために、間接免疫蛍光分析をスライド上で実施した。
【0106】
滴定は、対数的ウイルス希釈物で感染させたベロ細胞に対する免疫組織化学的アッセイにより実施した。感染の5日後、細胞を固定し、特異的ポリクローナルIA(免疫腹水)と共にインキュベートし、ペルオキシダーゼで標識された二次抗体で検出した。DAB基質を使用して比色定量反応を得た。感染の染色フォーカスを観察および計数し、ウイルス力価を、1ml当たりのフォーカス形成単位(FFU)として計算した。
【0107】
結果:図8(A〜B)に示されているように、96時間後にノバリケン不死化鳥類細胞系ECACC08060502(図8A)を用いてJEV Nakayama野生株について得られたウイルス性力価は、ベロ細胞系(図8B)で得られたウイルス力価より3logを超えて高い。図10(A〜B)に示されているように、72時間および96時間後にノバリケン不死化鳥類細胞系ECACC08060501(図10A)を用いてJEV Nakayama野生株について得られたウイルス性力価は、ベロ細胞系(図10B)で得られたウイルス力価より、それぞれ1logおよび4log高い。
【0108】
実施例4:ポックスウイルス科の製造
4.1 修飾ワクシニアウイルスAnkara(MVA)の製造
ノバリケン不死化鳥類細胞系ECACC08060502および08060501のMVA増幅能力を評価し、MVA製造の基材として通常使用される初代ニワトリ胚線維芽細胞(CEF)と比較した。ウイルス増殖を促進するために、eGFPを発現するMVA(フランス国立微生物収集機関(CNCM)にN602 I−721で寄託)を選択し、経過を観察し、滴定した。ノバリケン不死化鳥類細胞系ECACC08060502および08060501ならびにCEFを、2.10細胞で25cmのTフラスコに播種し、37℃、5%COの多湿雰囲気で24時間培養した。その後、培地(10%ウシ胎仔血清(FCS)および4mM L−グルタミンで補完された基本培地イーグル(BME))を除去し、細胞を、PBS 1%陽イオン、1%FCSで希釈された500μLのMVAウイルスにMOI 0.05で感染させた。30分の吸着工程後、残存ウイルス懸濁液を除去し、細胞をPBSで1回洗浄し、その後5mLのBME 10%FCSを各フラスコに添加した。37℃、5%COで感染の0、24、48、72、および96時間後に、凍結融解工程により細胞および上清からウイルスを回収した。凝集体を回避するために、回収されたウイルス懸濁液を滴定前に超音波処理した。
【0109】
滴定は、6cmの培養皿に播種されたCEFに対して三重反復で実施し、対数的ウイルス希釈物で感染させ、寒天で表面を覆った。eGFPを発現するMVAのプラーク形成単位は、蛍光双眼顕微鏡で視覚化し、72時間後に計数した。ノバリケン不死化鳥類細胞系ECACC08060502は、MVAを増幅しなかった。
【0110】
結果:図11Aに示されているように、ノバリケン不死化鳥類細胞系ECACC08060501は、古典的CEF基材で得られたものと同等のMVA増幅を可能にする。ノバリケン不死化鳥類細胞系ECACC08060501およびCEFは両方とも、感染の48時間後に最も高いウイルス力価に達した。それと一致して、明らかな細胞変性効果が、両細胞で観察された(データ非表示)。
【0111】
4.2 ワクシニアウイルス株Copenhagen(VV−COP)の製造
ノバリケン不死化鳥類細胞系ECACC08060502および08060501のVV−COP増幅能力を評価し、VV−COP製造の基材として通常使用される初代ニワトリ胚線維芽細胞(CEF)と比較した。欠陥J2R遺伝子(WEIR and MOSS 1983を参照;Genbank受託番号AAA48082)を含むVV−COP株(GOEBEL et al. 1990;Genbank受託番号M35027.1)を、この実験に使用した。ノバリケン不死化鳥類細胞系ECACC08060502および08060501ならびにCEFを、14.10細胞で175cmのTフラスコに播種し、37℃、5%COの多湿雰囲気で24時間培養した。その後、培地(10%ウシ胎仔血清(FCS)および4mM L−グルタミンで補完された基本培地イーグル(BME))を除去し、細胞を、PBS 1%陽イオン、1%FCSで希釈された5mLのVV−COPウイルスにMOI 0.0001で感染させた。30分間の吸着工程後、35mLのBME 10%FCSを各フラスコに添加した。37℃、5%COで感染の24、48、72、および96時間後に、凍結融解工程により細胞および上清からウイルスを回収した。凝集体を回避するために、回収されたウイルス懸濁液を滴定前に超音波処理した。
【0112】
滴定は、6穴プレートに接種されたBHK21細胞に対して三重反復で実施した。対数的ウイルス希釈物で細胞を感染させ、1時間のウイルス吸収後に液体培地を添加した。24時間後に培地を除去し、クリスタルバイオレットおよびレッドナチュラル(red neutral)の混合物で細胞の表面を覆った。細胞を後染した色、ウイルスのプラーク形成単位を双眼顕微鏡で視覚化し、計数した。ノバリケン不死化鳥類細胞系ECACC08060502は、VV−COPを増幅しなかった。
【0113】
結果:図11Bに示されているように、ノバリケン不死化鳥類細胞系ECACC08060501は、古典的CEF基材で得られた増幅と比較してあまり効率的でないとしても、VV−COP増幅を可能である。
【0114】
実施例5:IL−2の製造
ノバリケン不死化鳥類細胞系ECACC08060502および08060501に由来する上清を、IL−2(CMVプロモーター)発現プラスミド(pTG8363:pCiNeoプラスミドにクローニングされたヒトIL2、CMVプロモーター)で一過性に形質移入した。24、48、72、および96時間後に上清を収集した。IL−2は、ELISA(Quantikine、RD Systems社製)で定位量化し、機能性はCTLLアッセイで決定した。
【0115】
結果:細胞系ECACC08060502および08060501は両方とも、機能的なIL−2を製造した。量的には両細胞系とも同様だった。更に、製造レベルは、使用した形質移入の方法とは無関係であり、4865IU/mL(CTLL)および23.1IU/ngの比活性に相当する211ng/mL(ELISA)〜5672IU/mL(CTLL)および18.4IU/ngの比活性に相当する308ng/mLの範囲であった。従って、この細胞系で製造されたIL−2の測定比活性は、少なくとも、IL−2のWHO国際基準である13.16IU/ng(ヒト、ジャーカット由来)と同等である。
【0116】
実施例6:リツキサンの製造
重鎖および軽鎖をGeneArtで合成し、pCI−Neoベクター(Promega社製)に基づいて、対応する発現プラスミドを構築した。一過性の遺伝子発現は、特定の「低IgG FCS」で実施した。ノバリケン不死化鳥類細胞系ECACC08060502および08060501を、古典的FCSと対比して10%低IgG FCSで5日間増殖した。細胞増殖に対する負の効果は観察されなかった。細胞系ECACC08060502および08060501に由来する上清を収集し、モノクローナル抗体の量を、IgG ELISA(全ヒトIgG、Bethyl社製)を使用して評価した。
【0117】
結果:一過性の非最適化条件下で、最大0.5μg/mlが、細胞系ECACC08060502で製造され、最大2.5μg/mlが、細胞系ECACC08060501で製造された。CHO標準細胞系(CHO K1(図12A)およびCHO DG44(図12B)、ジヒドロ葉酸還元酵素欠損CHOクローン)、または細胞系ECACC08060501(図12C)のいずれかで一過性に製造されたリツキサンを、対応するグリコシル化パターンを分析および比較するために精製した。質量分析(図12(A〜C))は、CHOで発現されたリツキサンと、細胞系ECACC08060501で発現されたリツキサンとの間で、フコシル化に違いがないことを示す。
【0118】
実施例7:エリトロポイエチン(EPO)の製造
発現一過性アッセイを、Invitrogen社から得られた市販のプラスミド(GeneStorm(登録商標)ヒトクローン、参照番号HK1000 RG001720、Invitrogen社製)を使用して実施し、このプラスミドでは、ヒトEPOはpCMVプロモーターの制御下にあった。
3つの形質移入試薬:Lipofectamine2000(Invitrogen社製)、Superfect(Qiagen社製)、およびFugene6(Roche社製)、ならびにエレクトロポレーション装置(Nucleofector、基本線維芽細胞キット、Amaxa社製)を、製造業者の説明書に従って評価した。ノバリケン不死化鳥類細胞系ECACC08060502および08060501に由来する上清を、48、72、および96時間後に収集し、ELISAによりヒトEPOを定量化した。
【0119】
結果:両細胞系では、最大発現レベルは、Fugene6形質移入試薬を使用し、その後Nucleofectorシステムを使用して、96時間後に得られた(図13)。一過性の非最適化条件下で、最大0.5μg/mlが製造された。
【0120】
上記の明細書に引用された文書(例えば、特許、特許出願、出版物)は全て、引用することにより本明細書の一部とされる。当業者であれば、本発明の範囲および趣旨から逸脱しない、本発明の種々の改変および変異は、明白であろう。本発明は、特定の好ましい実施形態に関して記述されているが、特許請求された発明は、そのような特定の実施形態に不当に制限されるべきでないことが理解されるべきである。実際、当業者にとって明白である、本発明を実施するために記載した様式の種々の改変は、添付の特許請求の範囲内であることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルスを製造する方法であって、
(a)不死化鳥類細胞系を準備し、
(b)前記不死化鳥類細胞系を、製造しようとするウイルスに感染させ、かつ
(c)前記感染鳥類細胞系を、ウイルス増幅を可能にする条件下で培養すること
を含んでなり、
前記不死化鳥類細胞系が、欧州細胞培養収集機関(ECACC)に受託番号08060502で寄託された不死化鳥類細胞系、ECACCに受託番号08060501で寄託された不死化鳥類細胞系、およびそれらの誘導体からなる群から選択される、方法。
【請求項2】
少なくとも1つのフラビウイルス科株を増幅することができ、ワクシニアウイルス株Copenhagen(VV−COP)および修飾ワクシニアウイルスAnkara(MVA)を増幅することができない、不死化鳥類細胞系。
【請求項3】
欧州細胞培養収集機関(ECACC)に受託番号08060502で寄託されてなる、請求項2に記載の不死化鳥類細胞系およびその誘導体。
【請求項4】
前記フラビウイルス科株が、黄熱病ウイルス株(YFV)および日本脳炎ウイルス株(JEV)からなる群、より詳しくはYFV 17D株およびJEV Nakayama野生株からなる群から選択される、請求項2に記載の不死化鳥類細胞系。
【請求項5】
(i)少なくとも1つのフラビウイルス科株、および(ii)少なくとも1つのポックスウイルス科株を増幅することができる、不死化鳥類細胞系。
【請求項6】
欧州細胞培養収集機関(ECACC)に受託番号08060501で寄託されてなる、請求項5に記載の不死化鳥類細胞系。
【請求項7】
(i)前記フラビウイルス科株が、黄熱病ウイルス株(YFV)および日本脳炎ウイルス株(JEV)からなる群、より詳しくはYFV 17D株およびJEVNakayama野生株からなる群から選択され、(ii)前記ポックスウイルス科株が、ワクシニアウイルス株Copenhagen(VV−COP)および修飾ワクシニアウイルスAnkara(MVA)からなる群から選択される、請求項5に記載の不死化鳥類細胞系。
【請求項8】
前記不死化鳥類細胞系が、付着細胞系である、請求項2または5に記載の不死化鳥類細胞系。
【請求項9】
前記不死化鳥類細胞系が、懸濁状態で、(マイクロ)キャリアの存在下または非存在下で増殖する非付着細胞系である、請求項2または5に記載の不死化鳥類細胞系。
【請求項10】
ウイルスおよびタンパク質を製造するための、欧州細胞培養収集機関(ECACC)に受託番号08060502で寄託された不死化鳥類細胞系の使用。
【請求項11】
ウイルスおよびタンパク質を製造するための、欧州細胞培養収集機関(ECACC)に受託番号08060501で寄託された不死化鳥類細胞系の使用。
【請求項12】
前記ウイルスが、フラビウイルス科、ポックスウイルス科、インフルエンザウイルス、パラミクソウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レトロウイルス、ヘパドナウイルス、ヘルペスウイルス、レオウイルス、コロナウイルス、アルファウイルス、およびそれらの断片からなる群から選択される、請求項10または11に記載の使用。
【請求項13】
前記ウイルスが、野生型、弱毒化、組換え、および/または温度感受性ウイルスである、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記ウイルスが、好ましくは、黄熱病ウイルス株(YFV)および日本脳炎ウイルス株(JEV)からなる群、より詳しくはYFV 17D株およびJEV Nakayama野生株からなる群から選択されるフラビウイルス科である、請求項10または11に記載の使用。
【請求項15】
前記ウイルスが、好ましくは、ワクシニアウイルス株Copenhagen(VV−COP)および修飾ワクシニアウイルスAnkara(MVA)からなる群から選択されるポックスウイルス科である、請求項11に記載の使用。
【請求項16】
前記タンパク質が、抗体、受容体リガンド、ホルモン、サイトカイン、増殖因子、細胞接着分子、血液凝固因子、酵素、それらの断片、およびそれらの組合せからなる群、より詳しくはサイトカイン、抗体、およびホルモンからなる群、更により詳しくはIL−2、リツキシマブ、およびエリトロポイエチン(EPO)からなる群から選択される、請求項10または11に記載の使用。
【請求項17】
ウイルスを製造するための方法であって、
a)欧州細胞培養収集機関(ECACC)に受託番号08060502で寄託された不死化鳥類細胞系を、ウイルスに感染させ、かつ/または
(b)ウイルス増幅を可能にする条件下で、前記感染鳥類細胞系を培養すること
を含む、方法。
【請求項18】
ウイルスを製造する方法であって、
a)欧州細胞培養収集機関(ECACC)に受託番号08060501で寄託された不死化鳥類細胞系を、ウイルスに感染させ、かつ/または
(b)ウイルス増幅を可能にする条件下で、前記感染鳥類細胞系を培養すること
を含む、方法。
【請求項19】
前記ウイルスが、野生型、弱毒化、組換え、および/または温度感受性ウイルスである、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記ウイルスが、好ましくは、黄熱病ウイルス株(YFV)および日本脳炎ウイルス株(JEV)からなる群、より詳しくはYFV 17D株およびJEV Nakayama野生株からなる群から選択されるフラビウイルス科である、請求項17または18に記載の方法。
【請求項21】
前記ウイルスが、好ましくは、ワクシニアウイルス株Copenhagen(VV−COP)および修飾ワクシニアウイルスAnkara(MVA)からなる群から選択されるポックスウイルス科である、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
タンパク質を製造する方法であって、
a)欧州細胞培養収集機関(ECACC)に受託番号08060502で寄託された不死化鳥類細胞系を、前記タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む組換えベクターと接触させ、かつ/または
b)前記タンパク質の製造を可能にする条件下で、前記鳥類細胞系を培養すること
を含む、方法。
【請求項23】
タンパク質を製造する方法であって、
a)欧州細胞培養収集機関(ECACC)に受託番号08060501で寄託された不死化鳥類細胞系を、前記タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む組換えベクターと接触させ、かつ/または
b)前記タンパク質の製造を可能にする条件下で、前記鳥類細胞系を培養すること
を含む、方法。
【請求項24】
前記タンパク質が、抗体、受容体リガンド、ホルモン、サイトカイン、増殖因子、細胞接着分子、血液凝固因子、酵素、それらの断片、およびそれらの組合せからなる群、より詳しくはサイトカイン、抗体、およびホルモンからなる群、更により詳しくはIL−2、リツキシマブ、およびエリトロポイエチン(EPO)からなる群から選択される、請求項22または23に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図13】
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【公表番号】特表2012−526532(P2012−526532A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510278(P2012−510278)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【国際出願番号】PCT/EP2010/056497
【国際公開番号】WO2010/130756
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(599082883)トランジェーヌ、ソシエテ、アノニム (32)
【氏名又は名称原語表記】TRANSGENE S.A.
【Fターム(参考)】