不活化された内因性遺伝子座を有するトランスジェニックニワトリ
本発明は、トリPGCの長期培養物から得たトランスジェニックニワトリおよび生産技術ならびに長期PGC培養物由来のトランスジェニック鳥である。いくつかの実施形態において、これらのPGCを、遺伝子構築物でトランスフェクションしてPGCのDNAを改変する、具体的には、外因性タンパク質をコードする導入遺伝子を導入することができる。公知の手順によって宿主トリ胚と組み合わせた場合、これらの改変PGCは、生殖系列を介して伝達されてトランスジェニック子孫が産生される。本発明は、PGCの長期培養物を含む組成物および遺伝子改変されたそれらに由来する子孫を含む。遺伝子不活化を達成するためにPGCに導入された遺伝子改変は、限定されないが、ゲノムへの導入遺伝子のランダムインテグレーション、遺伝子のプロモーター領域へ挿入された導入遺伝子、ゲノム中の反復エレメントへ挿入された導入遺伝子を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
トランスジェニック動物は、抗体などの有益な医薬品の継続的生産における大幅な進歩に可能性を付与する。しかし、トランスジェニック動物の生産は、多くの技術的障害があり、そのうちの数種しか克服されていない。外因性タンパク質をコードする遺伝子改変物を別の種のDNAに組み込む能力には、いくつかの異なる技術が必要であり、この技術はそれぞれの種について開発されなければならない。動物の遺伝的および肉体的特徴を変化させる1つのアプローチは、動物のレシピエント胚に細胞を導入することである。これらの細胞は、レシピエント胚から誕生した動物の組織に寄与し、得られる動物のトランスジェニック子孫のゲノムに寄与する能力を有する。
【背景技術】
【0002】
ある場合には、細胞を、タンパク質または抗体などの外因性産物をコードするDNAを含む導入遺伝子で操作することができる。導入遺伝子は、タンパク質産生の青写真を含み、レシピエント胚への細胞の挿入から作製される動物組織中でのタンパク質発現が可能なコードエレメントおよび調節エレメントを十分に含む。いくつかの状況においては、発現は、全組織型で起こるように遍在することが望ましい。しかし、有益な抗体の回収などの有益なタンパク質が所望される多くの状況では、発現したタンパク質の回収を容易にする一定の特異的組織型に発現が制限されなければならない。例えば、ウシでは、乳中でのタンパク質発現により、単に牛乳の回収および外因性タンパク質の分離によってタンパク質を容易に回収することができる。また、ニワトリでは、卵白中の抗体の大量生産は、有益なタンパクの発現および回収のための魅力的なビヒクルを提供する。さらに、組織特異的発現がニワトリの卵管に特異的である場合、発現により、ヒト患者の治療で使用した場合に抗体の治療的有用性を増大させる一定の特異的な望ましい化学的特性を有する抗体が得られる。したがって、研究的および商業的開発の1つの特に魅力的な分野は、望ましい化学的性質を有するタンパク質の単離および回収を容易にするために卵白または卵黄のいずれかで抗体を選択的に発現する遺伝子操作ニワトリである。
【0003】
外因性抗体の産生のために、トリの生体系は、多くの利点(効率的な農場での育成、迅速な成長、および経済的な生産が含まれる)を付与する。さらに、トリの卵は、抗体の大量合成ならびに産物の単離および回収の容易さの両方に理想的な生物学的設計を付与する。さらに、下記のように、本発明の文脈では、例えば、脊椎動物、植物、または細菌の細胞系と比較したトランスジェニックニワトリ発現系の利点を容易に証明し、大量の抗体産物について固有の有利な化学的性質をもたらすために適用することができる。トランスジェニックニワトリを作製する目的は、何年にもわたって科学者が追求している。この目的は他の種(マウス、ウシ、およびブタなど)で到達しているが、レトロウイルステクノロジーまたは直接注入テクノロジーの使用による以外でトランスジェニックニワトリは作製されておらず、これらのテクノロジーは、トランスジェニック動物のDNAに導入され得る導入遺伝子のサイズの固有の限界および/または発現欠如に悩まされる。その上、ウイルスベクターは、相同組換えにより提供されるものなどのゲノムに対する部位特異的変化を必要とする適用に従わない。
【0004】
さらに、ある状況においては、動物自身の内因性遺伝子は、そのようなタンパク質を発現するように特別設計された遺伝子構築物を導入することから生じる有益なタンパク質の生産を妨げ得る。このような状況下では、理想的な解決は、動物の内因性遺伝子を不活化することである。残念なことに、ニワトリでの遺伝子工学における独特な挑戦のために、内因性遺伝子座の不活化をもたらす部位特異的改変を有するトランスジェニックニワトリは、記述されていない。またさらに、部位特異的遺伝子の不活化の導入は、内因性遺伝子機能を欠如する動物を産生し、そして、そのような動物は、そのゲノムに導入された補完的な特定の遺伝子改変を有する異なる動物と繁殖させることができる。例えば、特定の遺伝子が欠如している動物ファミリーを確立することができ、繁殖により、ヒトについての特定の遺伝子を含む動物と組み合わせることができた。この場合には、特定の動物の発現型の生産のために、または、内因性遺伝子の挿入によってコードされるタンパク質の生産のために導入されたゲノム改変のみならず、内因性遺伝子の不活化の両方を有する動物群が作製されるであろう。そのような動物は、現在、存在しないが、それは、ウイルスベクターが内因性ゲノムの部位特異的ターゲティングや組み込み事象のための選択能を可能としないからである。このように、ウイルスベクターは、内因性遺伝子座の活性化を達成することができるメカニズムを提供しない。
【0005】
細胞培養物が、大きな導入遺伝子が細胞のゲノムに組み込まれるようにするために、あるいは部位特異的変化をゲノムに導入させるために、十分に安定であるとき、任意のタンパク質の組織特異的発現をコードする導入遺伝子は、標的細胞および導入遺伝子として使用される特異的構築物に応じたいくつかの異なる技術によってトランスジェニック生物に継代され得る。同じ技術が、不活化された内因性遺伝子を有する生物を永続させるために使用され得る。全ゲノムを細胞ハイブリッド形成よって移入することができ、微小核細胞によってインタクトな染色体を移入することができ、染色体媒介性遺伝子移入によってサブ染色体セグメントを移入することができ、DNA媒介性遺伝子移入によってキロベース範囲のDNAフラグメントを移入することができる(非特許文献1)。微小核細胞媒介性染色体移入(MMCT)によってインタクトな染色体を移入することができる(MMCT)(非特許文献2)。外因性遺伝子を保有する任意のそのような導入遺伝子の特異的設計または遺伝子の不活化はまた、外因性遺伝子の内容、任意の遺伝子不活化の性質、および動物で得られる発現型の特徴も考慮しなければならない。
【0006】
導入遺伝子を慎重に設計しない限り、内因性遺伝子座を不活化する、または組織特異的発現を可能にする導入遺伝子の挿入は、細胞の多能性を脅かす可能性がある。したがって、適切な細胞株は、遺伝子を不活化するのに、あるいは必要に応じて組織特異的および高レベルの発現に必要な全てのエレメントを含めるのに十分に大きく且つ複雑な遺伝子構築物で細胞をトランスフェクトする場合、培養中に安定であり、そして多能性が維持されなければならない。得られたトランスジェニック動物では、導入遺伝子を、場合により、導入遺伝子が発現されるように設計される特定の個別の組織型において選択的に発現することができる。導入遺伝子の遺伝子含有量に応じて、動物の生存率または得られたタンパク質の有利な化学的性質が弱められる場合、導入遺伝子を他の組織で発現させることができない。
【0007】
ニワトリ始原生殖細胞は、ステージ11〜15の胚からの単離後、数時間以内にレトロウイルスベクターを使用して遺伝子改変されている(非特許文献3)。しかし、得られた改変は、ランダムに組み込まれており、導入遺伝子のサイズは、一般に約15kb未満、通常10kb未満、最も一般的には8kb未満に制限され、ゲノムの部位特異的変化をこの技術を使用して作製することができず、また、ランダム組み込みの排除に対する部位特異的改変を同定するために移入細胞を選択することもできない。培養トリPGCゲノムへの15kbを超える外因性DNAの挿入が必要な安定な遺伝子改変は、以前に報告されていない。
【0008】
長期PGC細胞培養物中に安定に導入することができる任意のDNA導入遺伝子または構築物のサイズまたは部位特異性についてのいかなる制限も、培養物中のPGCゲノムの有益な遺伝子改変を達成する能力における重要な制約であり、次に、生殖系列を介してレシピエント胚の子孫に継代することができる遺伝子改変物の型を制限する。例えば、不活化ベクター、またはトランスジェニックニワトリのゲノムへのタンパク質をコードする外因性DNAの導入は、非常に望ましい遺伝子改変である。このようなトランスジェニックニワトリ群を作製することができる場合、大量の有益なタンパク質をニワトリで発現させ、卵で回収することができる。トリの卵は、生物活性タンパク質の理想的な貯蔵所を提供し、タンパク質を単離することができる都合のよい環境を提供する。鳥類の動物は、広範な種々のトランスジェニック技術のための魅力的な候補でもある。しかし、遺伝子改変物を導入して生殖系列に伝達することができる培養細胞集団が存在しないために、トリ種への全範囲の哺乳動物トランスジェニック技術の適用は成功しなかった。最近の論文では、Sangらは、「PGCを培養物中で維持し、移入後に発生生殖腺に移動する能力を喪失することなく遺伝子ターゲティング事象を同定するために必要な長期間にわたって増殖することができる可能性は低い」と述べている(非特許文献4)。したがって、今日まで、遺伝的にトランスフェクトされたPGCは作製されておらず、トリPGCに導入された遺伝子改変物の成熟した生きている動物への伝達は証明されていない。
【0009】
始原生殖細胞(PGC)は、精子および卵子の前駆体であり、大部分の動物での発育の初期段階で、体細胞組織から分離される。本発明に従えば、ニワトリPGCは、生殖細胞系との関与を維持しながら、単離され、培養されて遺伝的に改変される。さらに、PGCは、胚生殖細胞(EGC)に分化するように誘導され、そして、体細胞組織へのそれらの関与の点でニワトリ胚幹細胞(ESC)に類似している。これらのPGCは、体細胞組織と生殖細胞系に関与して、ニワトリでのゲノム遺伝子改変に対する固有の供給源を提供する。
【0010】
遺伝子移入動物、特にマウスの生産は、哺乳類の遺伝子機能の解明にとって重要である。伝統的なアプローチは、導入遺伝子のゲノムへのランダム組み込みであるか、あるいは相同組み換えによる導入遺伝子の特異的遺伝子座への標的挿入である。
【0011】
導入遺伝子のランダム挿入には、2つの不利点がある。第1の主な不利点は、多くの遺伝子が種々の発育段階で不可欠な機能を果たし、これらの遺伝子の転写の排除が、しばしば胚の死亡を引き起こすということである。胚の死亡は、例えば、組織特異性および発生段階調節型の遺伝子発現を与えるプロモーターの管理下でのCre−loxPまたはFIp−FRTなどの特異的部位組み換えを用いて予防することができる。これらの場合、部位特異的組み換えは、そうでなければ通常動物(条件的遺伝子改変と呼ばれる)の文脈内の発育の過程での別々の細胞および/または別々の時間に遺伝子を不活化するのに使用される。例えば、Cre−loxP系は、β細胞中のインスリン受容体遺伝子を特異的に不活化するのに用いられて、2型糖尿病におけるそれと類似しているインスリン分泌欠損を作出する(非特許文献5)。初めは、DNAポリメラーゼβのヌル対立遺伝子は、ホモ接合の場合には、胚致死性であることが示された。抗原受容体遺伝子配置のための可能な要件を分析するために、条件的ノックアウト手法が使用されてT−細胞におけるDNAポリメラーゼβの欠損を作出した(非特許文献6)。
【0012】
導入遺伝子のランダム挿入および標的挿入の両方は、トランスジェニック動物における導入遺伝子からポジティブ選択カセットを切り出すことができないことで悩まされる。選択カセットの存在は、いくつかの問題(例えば、選択カセット中にしばしば存在する強力転写制御エレメントによる近隣の遺伝子座における遺伝子発現の破壊など)を引き起こす(非特許文献7;非特許文献8)。ポジティブな選択カセットの除去は、組織特異的プロモーターの管理下、部位特異的組み換え酵素を用いて達成できる。
【0013】
Creは、34の塩基対DNAエレメントである2つのloxP部位間の組み換えを触媒する組み換え酵素である。2つのloxP部位が、同じ方向にゲノム中に組み込まれるとき、Creによって触媒される組み換えは、介在DNAを切り出す。loxP部位は、ゲノムにランダムに挿入される前に導入遺伝子に組み込むことができ、あるいは、loxP部位は、ターゲティングベクターを使用して正確な位置でゲノム中に挿入することができる。介在DNAの切り出しの後で、隣接loxP部位は、単一のloxP部位に変換される。変異体のloxP部位は、Cre切り出しの後では十分に認められない産物を生成する。FIp組み換え酵素、すなわち、部位特異的組み換え酵素であるλインテグレーススーパーファミリーの別の一員は、Cre組み換え酵素と同じメカニズムのDNA組み換えを共有する。Creと同様に、FIp組み換え酵素は、2つの定義された34の塩基対の標的部位(FRT部位)でDNAを組み替える。介在DNAの切り出し後で、隣接FRT部位はまた、単一のFRT部位に変換される。
【0014】
条件的ノックアウトの用途の1つは、発育の正確なステージの特定の組織において除去されるべき細胞中の致死性産物の発現である。例えば、非特許文献9は、Cre−loxP系を使用して、マウスでの骨格筋の発育を研究するために、筋細胞中で特異的にジフテリア毒素Aフラグメントを発現させた。Creのリガンド制御形態は、インビトロで、または、インビボでの胚形成後期および/または成体組織における遺伝子変化の正確な誘導を可能とするCre−loxP系の一時的制御を加えるという目的で開発された。
【0015】
染色体再構成は、遺伝性疾患および胎児死亡の主な原因であり、ガンの進行および維持に関係していた(非特許文献10;非特許文献11)。染色体転座は、しばしば、異常な遺伝子融合をもたらし、その結果、腫瘍特異的mRNAsおよびタンパク質は、遺伝子治療の魅力的な目標である。このように、部位特異的組み換え酵素を用いて特定の切断部位で染色体再構成を操作する能力は、ヒトの病気のマウスモデルを作製するのに用いられた。例えば、ヒト再構成t(8:21)(q22;q22)およびt(9:11)(p22q23)に対応する転座は、急性白血病をモデル化するためにマウスで成功裏に誘導された(非特許文献12;非特許文献13)。ランダムな染色体欠失は、ゲノムのランダムな位置にloxP部位を挿入し、次いでCre組み換え酵素を発現させることによって発生することができる(非特許文献14)。
【0016】
条件的遺伝子改変は、細胞系統の仕様の間、遺伝子発現を操作するための強力なツールであり、細胞の運命の分析は、正常な発育の理解に貢献した。Cre−loxP系は、例えば、中脳−後脳収縮で起こるエングレイルド2−発現細胞の大人の運命を定めるように、ネズミでの系統トレーサを遺伝学的に活性化するのに使用された(非特許文献15)。このアプローチは、交配された2つのマウス株を含んだ。1匹のCre組み換え酵素マウスは、胎仔の中脳−後脳収縮領域での発現に向かうエングレイルド2−(En−2)ゲノム制御フラグメントの管理下でCreを発現し、そして、指標/レポーター・マウスは、組換えが起きたことを「示す」導入遺伝子を有し、それを相続可能な系統マーカーに変えることによって、この事象の永久的な記録を提供する。指標株は、広く発現されたひよこのβアクチン遺伝子からの制御配列により駆動された転写/翻訳−loxP−停止カセットのloxP−停止を有する。En2−Creマウスと指標マウスとの交配により、2重の組み換え体は、各導入遺伝子のコピーを保有する。En2制御要素の下でCreを発現した細胞のみが、レポーター構築物のloxP間で再構築を経て、そして、停止を切り出し、lacZ発現を可能にした。Cre媒介切り出しは、細胞遺伝性であるので、Creがもはや発現されない後でさえ、マーク細胞およびすべてのそれらの子孫は、後のステージでlacZを発現した。このように、成熟した2重トランスジェニック動物の脳におけるLacZのための染色は、中脳−後脳収縮の進展の過程で、一時的にCreを発現したすべての細胞の子孫を明らかにした。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Klobutcher,L.A.and F.H.Ruddle,Annu.Rev.Biochem.,50:533−554,1981
【非特許文献2】Fournier,R.E.and F.H.Ruddle,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,74:319−323,1977
【非特許文献3】Vickら、(1993)Proc.R.Soc.Lond.B 251,179−182
【非特許文献4】Prospects for Transgenesis in the Chick,Mechanisms of Development,121,1179−1186,(2004)
【非特許文献5】Kulkarniら、1999 Tissue−specific knockout of the insulin receptor in pancreatic beta cells creates an insulin secretory defect similar to that in type 2 diabetes.Cell 96:329−39
【非特許文献6】Guら、1994.Deletion of a DNA polymerase beta gene segment in T cells using cell type−specific gene targeting.Science265:103−106
【非特許文献7】Lernerら、1993 CD3 zeta/eta/theta locus is colinear with and transcribed antisense to the gene encoding the transcription factor Oct−1.J Immunol.151:3152−62
【非特許文献8】Ohnoら、1994 Targeted disruption of the CD3 eta locus causes high lethality in mice:modulation of Oct−1 transcription on the opposite strand.EMBO J.13:1157−65
【非特許文献9】Grieshammerら、1998 Muscle−specific cell ablation conditional upon Cre−mediated DNA recombination in transgenic mice leads to massive spinal and cranial motoneuron loss.Dev Biol.197:234−47
【非特許文献10】Ramirez−Solisら、1995 Chromosome engineering in mice.Nature 378:720−4
【非特許文献11】Rabbitteら、2001 Mouse models of human chromosomal translocations and approaches to cancer therapy.Blood Cells Mol Dis.27:249−59
【非特許文献12】Buchholzら、2000 Alteration of Cre recombinase site specificity by substrate−linked protein evolution.Nat Biotechnol.19:1047−52
【非特許文献13】Collinsら、2000 Inter−chromosomal recombination of M11 and Af9 genes mediated by cre−loxP in mouse development.EMBO Rep.1:127−32
【非特許文献14】Zhuら、2007.Efficient generation of random chromosome deletions,Biotechniques 42,572−575
【非特許文献15】Zinykら、1998 Fate mapping of the mouse midbrain−hindbrain constriction using a site−specific recombination system.Curr Biol.8:665−8
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
発明の要約
本発明は、トランスジェニックニワトリおよびトランスジェニック鳥の遺伝子工学を可能とする技術、ならびにターゲティング構築物を始原生殖細胞に相同組み込みすることから生じる不活化内因性遺伝子座を有するトランスジェニックニワトリを作出するために使用されるPGCの長期培養物を含む。これらのトランスジェニックニワトリは、内因性遺伝子座の少なくとも一部の欠失により遺伝子の不活化をもたらす相同組み換えにより、ニワトリの始原生殖細胞のゲノムに組み込まれた導入遺伝子を有する。本発明は、導入遺伝子構築物を含み、これは導入遺伝子を有する始原生殖細胞の安定培養物であり、しばしば、ノックアウトベクター、ターゲティングベクター、ノックアウト構築物などと呼ばれ、ここで、内因性遺伝子不活化のために設計された導入遺伝子は、組み換え事象を達成するために、そして、トランスフェクションされた細胞を選択するために十分な時間、培養物中に維持される始原生殖細胞のゲノムに安定して組み込まれる。
【0019】
本発明はまた、始原生殖細胞および得られるトランスジェニックニワトリを含み、そのゲノムは、内因性遺伝子座を不活化することにより改変されており、限定されないが、内因性遺伝子発現に必要な遺伝子の一部の部位特異的欠失を含むものである。前述の実施形態の全てに関して、本発明はまた、内因性ゲノムの部位特異的改変から作出されて得られるトランスジェニックニワトリを含む。本発明はまた、特定の適用において、それらの治療的有用性を強化する有利な化学的性質を有するニワトリで産生される抗体にも関する。ニワトリで産生される抗体は、脊椎動物、植物、または細菌の細胞系で産生される抗体と比較して異なるパターンの化学的改変を有するため、毒素を標的組織、例えば腫瘍に結合させることを目的として患者に投与する場合、標的組織は増大した治療有効性によって処置される。1つの実施形態において、PCGの長期培養物は、特別に設計された遺伝子構築物で操作されて鳥に遺伝子改変を導入し、それは、外因性タンパク質の組織特異的発現をもたらす導入遺伝子の挿入を含む。同じ多能性細胞での不活化遺伝子座の操作により、または、不活化内因性遺伝子座を有するトランスジェニックニワトリの別々の群の操作のいずれかにより、外因性タンパク質の発現を容易にするために挿入された導入遺伝子を有する鳥でその後に繁殖させるために、タンパク質の発現をコードする外因性DNAの組み合わせを保有するトランスジェニックニワトリは、不活化内因性遺伝子座を有するトランスジェニックニワトリと組み合わされて、外因性タンパク質を発現する動物の固有の有利な群を提供する。
【0020】
不活化された内因性遺伝子座を有するトランスジェニックニワトリはまた、遺伝子発現の研究のための、そして、選択された内因性遺伝子座を不活化させる能力なしでは可能でない固有の遺伝子機能を選択するための有益な動物モデルを提供する。同様に、内因性ニワトリ遺伝子座の不活化は、内因性免疫グロブリン遺伝子遺伝子座の特定部分(免疫グロブリン遺伝子再構築を妨げるための、また、内因性抗体発現を不活化するためのV、D、またはJ領域を含む)で行うことができる。その結果、本発明の1つの実施形態は、内因性ニワトリ免疫グロブリン遺伝子座の選択された部分で部位特異的遺伝子改変から生じる、内因性免疫グロブリン遺伝子発現および内因性免疫グロブリンタンパク質産生が実質的に欠如しているトランスジェニックニワトリを含む。好ましい実施形態では、導入遺伝子は、内因性免疫グロブリン産生をコードする軽鎖および重鎖の両方の標的不活化のために構築される。本発明のトランスジェニック鳥はまた、輸卵管で導入遺伝子由来の抗体を発現することが可能でもあり、抗体は、卵に大量に沈積する。好ましい実施形態では、外因性抗体タンパク質は、天然ヒト抗体が内因性鳥抗体産生の非存在下でニワトリ輸卵管において発現され、それによって卵からヒト抗体のみを回収する能力を作出するように、内因性抗体産生が欠如している背景で発現されるヒトDNA配列によってコードされる。
【0021】
本発明は、抗体の組織特異的発現を示す鳥群、外因性抗体発現を可能にする導入遺伝子構築物、ニワトリで産生され、特別に定義された化学的性質を有する抗体の分離された組成物、ならびに鳥の作出のための関連方法、抗体の産生、およびヒトでのそれらの治療的な使用を含む。本発明は、長期始原細胞培養物および特別な技術を用いて、長期PGC細胞培養物に由来するキメラ鳥またはトランスジェニック鳥を生産し、ここで、培養細胞の子孫が安定して組み込まれた導入遺伝子を含むように、PGCのゲノムは、外因性タンパク質を発現する安定して組み込まれた導入遺伝子を有する。宿主の鳥の胚に導入される場合、以下に記す手順によって、それらの改変されたドナー細胞は、得られる動物の特定の選ばれた体細胞組織に導入遺伝子を発現させる鳥を生産する。
【0022】
本発明はまた、トランスジェニックニワトリで発現されて、脊椎動物、植物または細菌の細胞系と比較して特定の望ましい化学的性質を有する外因性タンパク質の組成物を含む。具体的には、これらのタンパク質、特に抗体は、低濃度のフコース、ガラクトース、N−アセチルノイラミン酸、N−グリコリルノイラミン酸と高濃度のマンノースとを有する。これらの特性の一部もしくは全部を有する抗体は、ヒトに投与した場合、増加した治療的有用性を示す。具体的には、これらの抗体組成物は、増強された抗体依存性細胞障害活性(ADCC)を示す。したがって、本発明の方法は、トランスジェニックニワトリを用いて、トランスジェニックニワトリにおいて抗体を発現させることにより抗体組成物の治療的有用性をADCC効果に基づき強化することを含む。
【0023】
本発明はまた、本明細書で定義された有利な化学的性質を有する外因性抗体を、輸卵管組織において、外因性抗体が卵白において定義された量で濃縮されるように発現するトランスジェニックニワトリを含む。1つの好ましい実施形態では、外因性タンパク質は、トランスジェニック鳥のゲノムに取り込まれた導入遺伝子構築物によってコードされたヒト配列モノクローナル抗体である。ヒトモノクローナル抗体をコードするポリヌクレオチド配列は、輸卵管中での発現のために特異的に構築されており、そして組織特異的発現を容易にするための適切なプロモーターおよび調節配列を含む導入遺伝子内に含まれている。
【0024】
本発明はまた、トリ始原生殖細胞(PGC)の長期培養物に関し、いくつかのさらなる発明は、トリPGCが成長し、PGC培養物を培養物の生存能を40日、60日、80日、100日、またはそれを超えて延長するための複数回の継代によって延長することができる長期培養物の作製によって可能とするものである。本発明のPGCは、長期培養物中で成長し、レシピエント胚に注入した場合に生殖系列キメラを産生する。
【0025】
本発明はまた、望ましい結果を得るためのPGCゲノムへの遺伝物質の導入にも関する。1つの実施形態において、HS4エレメントで囲まれた遺伝子構築物は、導入遺伝子産物の生産を確実にするために、本発明のPGCに取り込まれる。別の実施形態では、遺伝子組み換えは、ニワトリゲノムの反復エレメントへの構築物の直接の挿入にインテグレースを使って実行される。別の実施形態では、選択マーカーをコードするDNAは、遺伝子産物の生産を妨げるために、ニワトリゲノム領域に挿入される。
【0026】
条件変異はニワトリ細胞で発生したが、Creを発現するトランスジェニック株が作出されたマウスとは異なり、遍在するか、組織特異性であるか、または発生段階調節型であるプロモーターの管理下でCre組み換え酵素を発現するトランスジェニックニワトリ株は作出されなかった。マウス細胞では、Cre組み換え酵素の一過性の発現(Arakirら、1997 Efficiency of recombination by Cre transient expression in embryonic stem cells:comparison of various promoters.J Biochem 122:977−82)および細胞透過性Cre組み換え酵素(Joら、2001 Epigenetic regulation of gene structure and function with a cell−permeable Cre recombinase.Nat Biotechnol.19:929−33)は、loxP部位間でDNAを切り出すのに用いられた。ニワトリDT40細胞株では、しかし、Cre組み換え酵素の一過性の発現は、loxP部位間でDNAを除去することができなかった(Fukagawaら、1999 The chicken HPRT gene:a counter selectable marker for the DT40 cell line.Nucleic Acids Research 27,1966−1969)。その後、Cre導入遺伝子は、loxPおよび/または変異体loxP部位間のDNA配列の切り出しを達成するために、DT40細胞のゲノムに取り込まれた(Fukagawaら、1999 The chicken HPRT gene:a counter selectable marker for the DT40 cell line.Nucleic Acids Research 27,1966−1969;Arakawaら、2001 Mutant loxP vectors for selectable marker recycle and conditional knockouts BMC biotechnology 1,7−14;Dharら、2001 DNA repair studies:experimental evidence in support of chicken DT40 cell line as a unique model.J.Environ Pathol Toxicol Oncol 20,273−83;Kanayamaら、2005 Reversible switching of immunoglobulin hypermutation machinery in a chicken B cell line.Biochem.Biophys.Res.Commun.327,70−75)。
【0027】
ニワトリで条件変異をもたらす能力は、有利である。例えば、loxP部位に隣接した停止コドンの存在によりサイレントであるユビキタスプロモーターの管理下でアポトーシス誘導遺伝子を用いてES細胞に実質的に由来するニワトリを作出することが可能である。この株のニワトリは、明域で発現されるプロモーターの管理下でCre組み換え酵素をコードする遺伝子を保有する鳥の株と交配させた場合、胚は発育しない。胚幹細胞をアポトーシス誘導遺伝子の発現と同時に胚に注入するならば、胚は胚幹細胞から実質的に由来し得る。
【0028】
別の適用では、選択マーカーをコードする配列を含む導入遺伝子は、loxP部位に隣接することができる。これらの導入遺伝子を保有するトランスジェニック鳥は、生殖細胞系で発現されるプロモーターの管理下でCre組み換え酵素を発現する鳥と交配させることができる。この交配から作出された鳥は、選択マーカーの切り出し後に孵化するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1Aは、54日間培養物中に維持されたPGCを示す。細胞は付着しておらず、丸い形態を維持することに注目すべきである。矢印は、この培養物中で目視できるいくつかの分裂細胞を示す。図1Bでは、長期PGC細胞培養物は、少なくとも136日間にわたって培養物中に維持された場合、安定であることが示される。これらの細胞は、照射を受けたSTO細胞のフィーダー層上で培養される。
【図2】生殖細胞マーカーCVH(Vasa)およびDazlのRT−PCRによって測定された遺伝子発現。細胞を32日間培養物中に置いた。レーン1は、PGCアリコート中のCVHおよびDazlの両方の発現を示す。レーン2中の第2サンプルは、アクチンの非存在下に測定されて、十分なmRNAを含まなかった。CES細胞も分析された;アクチンは発現されたが、cES細胞はCVHを発現せず、Dazlが弱く発現されただけであった。
【図3】166日間培養物中で維持された番号13および番号16のサンプルPGC培養物のウェスタン分析。ポジティブコントロールとして精巣を使用し、ネガティブコントロールとして肝臓を使用した。一次抗体としてウサギ抗ニワトリCVH IgGを使用した。
【図4】テロメア反復増幅プロトコル(TRAP)アッセイ。異なる希釈率の2つの異なるPGC細胞株の細胞抽出物(番号13および番号16)を、146日間培養物中で維持した。ポジティブコントロールは、形質転換ヒト腎臓細胞株293からなり、ネガティブコントロールは、テンプレートを添加しない溶解緩衝液のみであった。PGCおよびポジティブコントロールレーンでは、反復配列が認められ、これはテロメラーゼの存在を示す。
【図5】図5Aは、培養物中に維持されたPGC由来のcEG細胞を示す。図5Bは、ニワトリ胚幹細胞を示す。両細胞型における小さな細胞、大きな核(淡灰色)、および明確な核小体に留意のこと。
【図6】始原生殖細胞(PGC)株中のcx−neo導入遺伝子のサザン分析。
【図7】ニワトリ管ホモログ(CVH)および1B3に対する抗体で染色したDT40細胞(ネガティブコントロール集団)、EG細胞、ES細胞、およびPGCのFACS分析。DT40細胞、ES細胞、およびEG細胞は、両マーカーについて陰性であったが、大部分のPGCはCVHおよび1B3の両方について染色された。使用した細胞株は、PGC102;ES439およびEG455であった。
【図8】2つの始原生殖細胞PGC株におけるHS4−β−アクチン−neo導入遺伝子のサザン分析。
【図9】始原生殖細胞(PGC)株TP103におけるHS4 β−アクチン−eGFP−β−アクチン−puro導入遺伝子のサザン分析。プラスミドコントロールDNAをNotIで線状化した。内部フラグメントは、DNAをKpnIで消化して放出させた。TP103およびプラスミドの両方で、同じサイズのフラグメントが放出された。TP103のゲノムDNAの、NcoI、MfeI、およびSphIによる消化は、消化されたプラスミドDNAの対応するレーンに比べて大きいバンドを示すはずである。MfeI消化TP103ゲノムDNAのレーンにおいては、大きすぎるバンドによる可能性があるバンドは見られない。NcoIおよびSphI消化を表すレーンでは、フラグメントはプラスミドDNA中に放出されるフラグメントより実質的に大きいTP103ゲノムDNA中に放出されたが、このことは、導入遺伝子がTP103細胞株のゲノムに取り込まれることを示す。
【図10】全染色体が二倍体であることを示すG−09の核型。GGA2の1コピーでは、pアームの大部分が失われているか、別の染色体に転座している。CGA2の他のコピーは正常である。細胞は、ZZ(雄)である。
【図11】DAPIで染色した発育18日目の精巣の切片。GFP陽性生殖細胞は、細精管内で明確に見られる。
【図12】DAPI染色パネルは、E18精巣の細精管を通る切片を示す。GFP発現細胞は、細精管内に位置し、抗CVH抗体で染色される。
【図13】β−アクチン−GFP導入遺伝子で安定にトランスフェクトされたPGCを保有するキメラ由来のトランスジェニック子孫は、ステージX(EG&K)からステージ34(H&H)の間で生育する。これらの写真に示された組織の全ては、GFPの発現を示す。
【図14】組織学的試験のために調製されたβ−アクチン−GFP導入遺伝子で安定にトランスフェクトされたPGCを保有するキメラ由来の組織。青色のDAPI染色は,核の存在を明らかにし、そして、緑色蛍光は、組織の全てがGFP導入遺伝子を発現することを証明する。
【図15】クローン由来のトランスフェクトされたPGC株がキメラニワトリの生殖細胞系に寄与し、EG細胞に分化することができることを示すサザンブロット分析。上方のパネル:HS4 bactin−eGFP−bactin−puro構築物でトランスフェクトされたPGCに由来するゲノムDNA、トランスフェクトされたPGCで作製したキメラ雄ニワトリ由来の3つの胚に由来するゲノムDNA、およびトランスフェクトされたPGC由来のEG細胞に由来するゲノムDNAを、導入遺伝子挿入の内部フラグメント(KpnI)および連結点フラグメント(NcoI、AflII)を検出するために、制限酵素で消化した。消化したDNAを、0.7%アガロースゲルで分離し、ナイロン膜にブロッティングし、放射能標識eGFP配列で探索した。ハイブリッド形成フラグメントのサイズは、PGC、EC細胞、および緑色蛍光を示した2つの胚(GFP+胚)で同一であった。第3の非蛍光胚(WT胚)は、ハイブリッド形成を示さなかった。下方のパネル:構築物の概略図を示し、そして、制限部位の位置を示し、予想制限フラグメントサイズが下に示される。5.3kbフラグメントが得られる2つのKpnI部位が存在する。NcoIおよびAflIIは、構築物内を1回切断し、それによって認められる制限フラグメントは、挿入部位において隣接ゲノムDNAを構築物と連結する連結点フラグメントである。
【図16】図16Aは、本研究で使用されたランダムインテグレーション構築物の図。2種類の基本的な構築物が使われた:強力プロモーターによって駆動される選択マーカーカセット(薬剤耐性マーカーおよびEGFP)、およびHS4インスレーターの2セットに隣接する類似した構築物。使用されるプロモーターは、マウスPGK、ニワトリβ−アクチン、β−アクチン+CMVエンハンサー(CAG)またはERNIであった。構築物は以下の通りである:neoまたはpuro耐性遺伝子(一番上のライン)の発現を駆動するプロモーターからなる薬剤選択マーカーカセット;CAG−EGFP遺伝子(2番目のライン)の付加;隔離された薬剤選択マーカーのみ(3番目のライン);EGFP遺伝子(4番目のライン)を付加した同様の隔離された選択マーカーカセット;ならびにloxP部位に隣接する選択マーカーおよび対象となる特許遺伝子を有するCAG−EGFP CAG−neo構築物(星印の付いたボックス)。構築物はトランスフェクションの前に線状化され、示されたベクター構造をもたらす。図16Bは、本研究で使われるインテグレース構築物の図。左側の図では、attB含有プラスミドあり、そこでは、attB部位が上記のHS4−β−アクチン−puro構築物に付加されている。右側の図では、プラスミドが、CAGプロモーター由来細胞インテグレースを発現するのに用いられる。両方のプラスミドは、環状DNAとしてトランスフェクトされた。
【図17】attBとトランスフェクトされたPGCから得られたattL配列との配列比較。インテグレース媒介トランスフェクションに由来するPGCクローンにおけるattBプラスミドおよびゲノム配列の間の連結点が示される。一番上のラインは、コアTTGを有する野生型attB部位であり、該コアTTは、通常、下線が付された組み換えクロスオーバー点である。下には、PGCでのインテグレース媒介挿入物由来のattL配列が示される。スプライシングが、プラスミドのattBとゲノムの疑attP部位との間の何処で起きたかについて決定するために、PGC配列を、attBと比較した。PGC配列において、プラスミドによって与えられたattB配列は、小文字であり、そして、ゲノム疑attP配列は大文字および太字である。
【図18】図18Aは、PGC挿入部位由来のPO41様反復とPO41コンセンサス配列とのアラインメント。PO41様反復に挿入されたクローンの全てからのPGC隣接配列を、互いに、およびPO41コンセンサスとアラインメントした。最初から21個のヌクレオチドは、ベクター(上の配列比較に示されるように)によって付与されたattB配列であり、そして、各々のクローンからのゲノム隣接配列が続く。配列の少なくとも半分によって共有されるヌクレオチドは、黒で囲われている。Bは、attPとPO41配列とのアラインメント。attP部位の100bpを、PO41の100bp、すなわち41bpの約2.5コピーとアラインメントした。attP中のコアクロスオーバーTTGは、上付きの横線で示されている。
【図19】ニワトリIgL遺伝子のターゲティング。
【図20】図20Aは、一番上のラインは、ニワトリIgL遺伝子(IgL pKO5)のためのターゲティングベクターの図である。IgL遺伝子の2.3kbのJ−C領域をHS4インスレーターに隣接した3.1kbのHS4−ERNI−puro選択マーカーと置き換えるように設計される。2つの相同性アームは、2.3kbおよび6.3kbの長さである。3’末端において、β−アクチン−EGFP遺伝子は、標的クローンのために緑色蛍光を富化するためのpuro−耐性クローンのスクリーニングを可能にする。末端の点線は、pKOベクターバックボーン(Stratagene)である。中央のラインは、単一の可変領域遺伝子(V)、連結領域遺伝子(J)および定常領域遺伝子(C)を有する、IgL遺伝子の生殖細胞系構成の野生型対立遺伝子の図である。標的クローンのサザン分析に使用される制限部位が、図示((S、SacI;B、BstEII)され、そして、野生型フラグメントサイズが二重の矢尻でその下に示される。下方のライン上は、変異体対立遺伝子の構造であり、そこでは、JおよびC領域が欠失しており、HS4−ERNI−puroで置き換えられている。制限酵素地図が示され、下に変異体フラグメントのサイズが示されている。サザン分析において使われるプローブは両方とも、ターゲティングベクターの外側にあり、そして、それらの位置が示される。スケールバー=1kb。図20Bは、4つのクローンのサザンブロット分析。4つのピューロマイシン耐性クローンが分析され、そのうちの2つ(クローン1および2)は緑色でなくて、そして、そのうちの2つ(クローン3および4)は緑色であった。左のパネルでは、PGCクローンからのゲノムDNAは、SacIで消化されて、プローブAとハイブリダイズされてIgL遺伝子の5’部位上でターゲティングを分析した。右のパネルでは、DNAはBstEIIで消化されて、IgL遺伝子の3’部位のターゲティングのためにプローブBとハイブリダイズした。クローン2は、ヘテロ接合性の標的クローンについての予想されるサイズのフラグメントを示した。
【図21】IgLノックアウトを保有するPGCで作出されたGO雄鳥からの精液の免疫グロブリン軽鎖遺伝子の不活化のためのマーカーであるERNI−puroのPCR。精液サンプルから調製されたゲノムDNA10ngを、IgLノックアウト対立遺伝子に存在するERNI−puro選択マーカーのためにPCRで使用した。対照として、内因性ニワトリβアクチン遺伝子に対するプライマーが含まれた。ERNI−puro PCRのためのポジティブコントロールとして、IgLノックアウト対立遺伝子を有するPGCが使われた。
【図22】BN鳥のALDH3A2発現。上方のパネルは、2羽のホモ接合性BN鳥(BN/BN)、1羽のヘテロ接合性BN鳥(BN/+)および1羽の野生型鳥(+/+)から分離されたRNA上で、ALDH3A2についてのRT−PCRを示す。さらに、RT−反応(−RT−コントロール)のネガティブコントロール、ポジチィブゲノムコントロール、およびPCR反応(−コントロールPCR)に対する2つのネガティブコントロールが示される。544および680bpバンドは、第5エクソンと第6エクソンとの間にそれぞれスプライスされていないイントロンを有しないか、あるいは有するアルデヒドデヒドロゲナーゼのmRNAの存在を示す。下方のパネルの597bpバンドは、すべてのサンプルでRNAの存在を確認する。RT−PCRは、ADHがヘテロ接合性BN鳥では発現されたが、ホモ接合性BN鳥では発現されず、このことは、導入遺伝子の挿入がこの遺伝子の転写を止めたことを示した。
【図23】アルデヒドデヒドロゲナーゼ3ファミリーメンバーA2転写での野生型対立遺伝子からのRT−PCR産物の配列。産物AおよびBは、第5エクソンと第6エクソンとの間でそれぞれ、136bpのスプライスされていないイントロンを有しないか、あるいは有する転写物に由来する。
【図24】UbC−loxP−stop−loxP−Reaper導入遺伝子を保有するニワトリ。A.3つのUbC−loxP−stop−loxP−Reaperトランスジェニック株(6−03、6−51および9−51)のサザンブロット分析。G1鳥からのゲノムDNAサンプルとUbC−loxP−stop−loxP−Reaperベクターとを、SpHIまたはBclIで消化した。消化されたDNAを0.7%のアガロースゲルで分離し、ナイロン膜にブロッティングし、放射能標識されたReaper特異的プローブとハイブリダイズして連結フラグメントを同定した。ハイブリッド形成フラグメントのサイズは、ベクターに対するよりも、ゲノムDNAに対して大きく、導入遺伝子が組み込まれたことを示す。B.UbC−loxP−stop−loxP−Reaper構築物の概略図。導入遺伝子は、UbC−プロモーターとloxP−stop−loxP−Reaper導入遺伝子とから構成される。SV40ポリアデニル化信号(SV40)とブラスチシジン耐性カセット(bsd)は、UbC−loxP−stop−loxP導入遺伝子の3’側に挿入された。構築物は、5’と3’LTRに隣接した。制限酵素部位の位置が示され、予想される制限サイズが示される。
【図25】pLenti−ERNI−Cre導入遺伝子を保有するニワトリ。A.8つのERNI−Cre株のサザンブロット分析。ゲノムDNAサンプルをBglIIで消化した。消化されたDNAを0.7%のアガロースゲルで分離し、ナイロン膜にブロッティングし、放射能標識Creで探索した。ハイブリッド形成フラグメントのサイズは、予想された4.6kbであった。B.ERNI−Cre導入遺伝子の概略図。導入遺伝子は、ERNIプロモーターおよびCre導入遺伝子からなる。SV40ポリアデニル化信号(SV40)およびブラスチシジン耐性カセット(bsd)は、ERNI−Cre導入遺伝子の3’側に挿入された。構築物は、5’および3’LTRに隣接した。BglII制限酵素部位の位置が示され、予想される制限サイズが示される。
【図26】Doc−2細胞株からのGFP陽性細胞およびGFP陰性細胞のFACSソーティング。2種類の細胞が、PGCでCre組み換え酵素を発現するERNI−Cre導入遺伝子を含む環状プラスミドでDoc−2細胞株をトランスフェクトして作製された。GFP陰性細胞は、CX−eGFP遺伝子を保有するドッキング部位ベクター上のLoxP部位間の配列の切り出しの結果である。
【図27】10,652bp導入遺伝子のPGCのDoc−1株およびニワトリへの組み込みを示す2羽のひなのサザン分析。DOCl PGC株(P印のレーン)とDOCl PGC(ClおよびC2の目印のレーン)で作出されたG0キメラの繁殖に由来する2羽のひなからのゲノムDNAをBglIIまたはEcoRIで消化した。消化物をアガロースゲルで分画し、ナイロン膜に移し、放射能標識されたEGFP配列とハイブリダイズした。この分析は、ベクター組み込み部位で隣接するゲノム配列に結合したドッキング部位ベクターを含む連結フラグメントを検出する。これらの連結フラグメントのサイズは、組み込み部位に依存して変化し、PGCにおける各導入遺伝子挿入事象について診断する。この場合、BglIIフラグメントは、約12kbであり、EcoRIフラグメントは、12kbより大きい。フラグメントサイズは、PGCとそれらに由来するひなで同一であり、それは、これらのひながDOC1挿入物を保有するPGCに由来したことを示す。
【図28】pLenti−ERNI−Creトランスジェニックニワトリの10の異なる株によるReaper導入遺伝子のCre媒介組み換えに対するサザンブロットアッセイ。A.DNAのサザンブロット分析は、Cre導入遺伝子の1コピーとloxP導入遺伝子の1コピーとを保有する2重トランスジェニック胚からの脳(b)および筋肉(m)から単離されたDNAについてのサザンブロット分析。ゲノムDNAをSacIで消化した。消化されたDNAを、0.7%のアガロースゲルで分離し、ナイロン膜にブロッティングし、Reaper遺伝子とレンチウイルス・ベクター・バックボーン(ブラスチシジン遺伝子およびSV40配列)の部分からなるプローブにハイブリダイズした。このプローブは、全長および組み換えloxP−Reaper導入遺伝子の両方に等しくハイブリダイズする。組み換え導入遺伝子に対する全長(非組み換え)のバンド強度の比率は、Cre株の活性を表す。B.loxP−Reaper導入遺伝子のCre媒介組み換えの概要の説明。全長loxP−Reaper導入遺伝子は1.4kbの配列を含み、それは停止カセットと呼ばれて、同じ方向にloxP部位に隣接する。2つのloxP部位間の組み換えは、染色体から1.4kbの介在配列の切り出しをもたらし、1つのloxP部位を後に残す。切り出しの後、組み換えられたloxP−Reaper導入遺伝子は、サイズが1.4kb減少する。プローブおよびSacI制限酵素部位の位置が示され、そして、予想される制限サイズが示される。
【図29】Cre4株による3つの異なるReaper loxPカセット導入遺伝子(6−03、6−51および9−51)の組み換え。A:loxP−Reaper導入遺伝子(R)の1コピーのみを保有するトランスジェニック胚またはCre4導入遺伝子の1コピーと3つの異なるloxP−Reaper株(6−03、6−51と9−51)に対するloxP−Reaper導入遺伝子(C+R)の1コピーとを保有する2重トランスジェニック胚のサザンブロット分析。ゲノムDNAをSacIで消化した。消化されたDNAを、0.7%のアガロースゲルで分離し、ナイロン膜にブロッティングし、Reaper遺伝子とレンチウイルス・ベクター・バックボーン(ブラスチシジン遺伝子およびSV40配列)の部分からなる放射能標識プローブにハイブリダイズした。ハイブリッド形成フラグメントのサイズは、全長(非組み換え)loxP−Reaperフラグメントに関して2.8kbと予想通りであり、組み換えloxP−Reaperフラグメントに関して1.4kbであった。B:loxP−Reaper導入遺伝子のCre媒介組み換えの概要の説明。全長loxP−Reaper導入遺伝子は、1.4kbの配列(STOPカセットと呼ばれる)を含み、同じ方向にloxP部位に隣接する。2つのloxP部位の間の組み換えは、染色体から1.4kbの介在配列の切り出しをもたらし、1つのloxP部位を残す。切り出しの後、組み換えられたloxP−Reaper導入遺伝子は、サイズが1.4kb減少する。プローブおよびSacI制限酵素部位の位置が示され、そして、予想される制限サイズが示される。
【図30】非切り出しGFPに陽性のDoc2細胞株(レーン1)およびcx−GFP−cx−neo配列が欠失しているDoc2細胞(レーン2)のサザン分析。細胞は、緑色蛍光の発現に対するFACS分析によって分類された。2つの細胞集団からのゲノムDNAを調製し、HindIII制限酵素で消化し、そして、DNAは、ピューロマイシン耐性遺伝子からの放射能標識配列にハイブリダイズした。5521bpの予測されたフラグメントは、GFP陽性(非切り出し細胞)細胞中に存在し、そして、1262bpの予測されたフラグメントが切り出し細胞に存在した。この結果は、Cre−lox組み換えが、DOC2細胞中に組み込まれたドッキング部位構築物における2つのloxP部位の間に存在するCX−EGFP−CX−neo配列の欠失をもたらすことを示す。
【図31】IgL pKO5Bターゲティングベクターの図。一番上のラインは、ターゲティングベクターIgL pKO5Bの構築物を示す。このラインは、loxP部位とattP部位とを含む5’相同領域、および3’相同領域に対するベクター構築物を示す。2番目のラインは、ニワトリ野生型IgL対立遺伝子に対するターゲティングベクターの関係を示す。3番目のラインは、JおよびC遺伝子欠失または遺伝子破壊によって作出される変異体対立遺伝子を示す。
【図32】KO−07ノックアウトクローンにおけるIgL遺伝子座の欠失を示すサザンブロット分析。左側のパネル:IgL pKO5Bでトランスフェクトされた5つのクローンPGC株からのDNAを、SacIで消化して、0.5kbのSacI−BstEIIフラグメントで探索した場合の、5’相同領域に関して得られたハイブリダイゼーション。野生型IgL遺伝子座は、約10kbであり、そして、標的欠失を有する変異体フラグメントは、約4kbである。右側パネル:同じ5つのクローンからのDNAを用いて、3’相同領域について得られたハイブリダイゼーション。ゲノムDNAをBstEIIで消化して、3’の1.7kbのNsil−Mfelフラグメント(これは、ターゲティングベクターの外側にある)とハイブリダイズした。
【図33】IgLノックアウトが、7つのニワトリ胚のうちの5つ(胚2、3、4、6および7)に伝達されたことを示すサザンブロット分析。胚1および5は、野生型胚であり、これはヘテロ接合性KO−07ノックアウトPGCからの野生型IgL対立遺伝子を受け継いだ。
【発明を実施するための形態】
【0030】
発明の詳細な説明
本明細書中で使用されるように、用語「ニワトリ胚幹(cES)細胞」は、ES細胞の形態を示し、ステージX(E−G&K)の胚(マウス胚盤胞にほぼ等しい)の明域由来のレシピエント胚中の体細胞組織に寄与する細胞を意味する。CES細胞は、マウスES細胞のいくつかのインビトロ特性(SSEA−1+、EMA−1+、およびテロメラーゼ+など)を共有する。ES細胞は、全ての体細胞組織をコロニー形成する能力を有する。
【0031】
本明細書中で使用されるように、用語「始原生殖細胞(PGC)」は、PGCの形態を示し、レシピエント胚中の生殖系列に排他的に寄与する細胞を意味し、PGCは、ステージ12〜17(H&H)の胚から採取した全血に由来し得る。PGC表現型は、(1)生殖系列特異的遺伝子CVHおよびDazlがこの細胞株で強く転写されること、(2)細胞がCVHタンパク質を強く発現すること、(3)ステージXやステージ12〜17(H&H)のレシピエント胚に注入した場合に、細胞が体細胞組織に寄与しないこと、(4)細胞がEG細胞を生じること(以下を参照のこと)、または(5)ステージ12〜17(H&H)の胚に注入した場合に、細胞が生殖系列を介してPGC遺伝子型を伝達すること、によって確立することができる(Tajimaら、(1993)Theriogenology 40,509−519;Naitoら、(1994)Mol.Reprod.Dev.,39,153−161;Naitoら、(1999)J Reprod.Fert.117,291−298)。
【0032】
本明細書中で使用されるように、用語「ニワトリ胚生殖(cEG)細胞」は、PGCに由来し、機能がマウスEG細胞に類似する細胞を意味する。cEG細胞の形態は、cES細胞の形態に類似し、cEG細胞は、ステージX(E−G&K)のレシピエントに注入する場合、体細胞組織に寄与する。
【0033】
本明細書中で使用される、用語「トランスジェニック」は、その体細胞および生殖細胞中で導入遺伝子をコードし、導入遺伝子によって与えられる特徴をその子孫に伝達することができる動物を意味する。用語「トランスジェニック」は、また、内因性遺伝子座における選択部位特異的遺伝子の不活化を含む動物を意味し、限定されるものではないが、内因性遺伝子座における有限の遺伝子セグメントの欠失を含み、これは、遺伝子の文字通りの欠失、機能性の破壊、停止コドン、もしくはナンセンス配列、attP部位の挿入による遺伝子の不活化をもたらす始原生殖細胞のゲノムに組み込まれる導入遺伝子またはターゲティング構築物の使用、または部位特異的遺伝子改変による遺伝子座の機能的不活化を産む他の人工物の使用による欠失を含む。既存のレトロウイルス技術は、部位特異的改変または形質転換細胞の選別を可能としないので(つまり、PGC細胞の長期の培養を持続させる、および部位特異的改変(例えば、遺伝子不活化など)の操作能力を有しない)、用語「トランスジェニック」は、レトロウイルス系を排除する。
【0034】
しかし、選択された遺伝子の機能を変えて、遺伝子改変から望ましい表現型を与える部位特異的変更を有する動物は含まれる。これらの導入遺伝子とそれらに由来する動物は、一般に「ノック−イン」と呼ばれる。導入遺伝子は、少なくとも10tcb、望ましくは10−25’kbの内因性DNAの欠失を挿入することができ、またはさらに遺伝子のサイズおよび構成に依存してターゲティングが選択される。好ましい実施形態では、トランスジェニック鳥は、全体的または部分的欠失または他の機能破壊のための内因性遺伝子標的に対応する任意の内因性遺伝子を欠如する。
【0035】
本明細書の例では、ニワトリについて記載されているが、ウズラ、七面鳥、キジ、その他などの他の鳥の種が、不当な実験をすることなく、そして、本明細書に開示された方法の成功裏の実施を合理的に予測してニワトリと置き換えることができる。
【0036】
組織特異的発現のために設計されたDNA構築物を培養物中のES細胞へ挿入することによって、ニワトリの卵白中で、有益な医薬品(例えばモノクローナル抗体など)を発現するニワトリが作出されている。参照:PCT US03/25270 WO04/015123(Zhuら)。そのような動物のための重要な実施可能な技術は、クローン化細胞の遺伝子型が培養中で操作されるために十分に長く生存し続けることができる、真に長期間のES細胞培養物の作製および維持である。
【0037】
しかし、ES細胞と異なり、始原生殖細胞(PGC)は、短期間を基本としてのみ培養されている。一旦培養期間が短期間を超えて延長されると、これらの細胞は生殖系列に排他的に寄与する能力を失う。典型的には、現在の培養技術を使用して培養物中で維持されたPGCは、増殖および増加しない。力強く成長しない場合、培養物は、「末期」であり、無期限に維持することができない。長期にわたり、これらの末期細胞培養物は分解され、細胞はその固有のPGC形態を失い、胚生殖(EG)細胞に戻る。胚生殖細胞は、PGCと異なる形態を獲得し、生殖系列に限定されなくなり、胚発生の初期段階に注入した場合に体細胞組織に寄与する能力を得る。予め決定した遺伝子型をレシピエント胚の生殖系列に導入し、それにより、動物が所望の遺伝子型を次世代に伝達することができるようにするために、PGCは精子および卵の前駆体であることが公知であるので、PGCは非常に魅力的である。
【0038】
PGCの長期培養物は、遺伝子の不活化または外因性DNAの挿入のあるなしにかかわらず、いくつかの重要な利益(養鶏業に依存する重要なニワトリ交配株の有益な遺伝子の特徴の維持など)を提供する。現在、有益な交配株を事故または疾患による喪失から回避するために、特別な措置が取られている。これらの措置には、種畜としての多数の株メンバーの維持および世界中の複数の場所でのこれらの種畜の複製が必要である。交配株内の遺伝的多様性の保存も重要であるので、将来のために蓄えている多数の有益な動物を維持する必要がある。生きた保存種畜中よりもむしろPGC細胞培養物中のこれらの有益な交配株の遺伝的特徴の保存により、大量の保存用交配集団の費用が回避される。
【0039】
PGCの長期培養物は、van de Lavoir,M−C,Diamond,J.,Leighton,P.,Heyer,B.,Bradshaw, R.,Mather−Love,C.,Kerchner,A.,Hooi,L., Gessaro,T.,Swanberg,S.,Delany,M.,and Etches,R.J.(2006).Germline transmission of genetically modified primordial germ cells.Nature 441,766−769に記載されている。
【0040】
PGCを使用する遺伝子操作されたニワトリの生産は、PGCの遺伝子型に遺伝子改変を導入し、遺伝子改変が起きた希少細胞を分離し、分析とG0キメラを作製するためにレシピエント胚への導入に対するための遺伝子改変細胞集団の拡大を必要とする。培養物中の標的細胞の広範な遺伝子操作技術は周知である。しかし、1つの主な困難は、培養物中でPGCの遺伝子型を変化させるために、遺伝子改変物を導入し、首尾よく形質転換した細胞を選択するのに適切な期間およびトランスフェクトした細胞が培養物中で成長および増殖する間、培養物の生存を長期間維持しなければならないということである。
【0041】
増殖することができる首尾よく形質転換した細胞を、クローンまたは略クローンの誘導から数日〜数週間以内に、多数の細胞(例えば、104〜107細胞)を生成する能力によって区別する。創始細胞は、所望の遺伝子改変を保有する稀な細胞である。典型的には、これらの細胞が、周知の遺伝子改変テクノロジー(例えば、リポフェクションまたはエレクトロポレーション)の適用後に10−4〜10−7の頻度で培養物中に生成される。したがって、培養物中のPGCの産生には、細胞が増殖し、培養物中の稀な遺伝子改変された細胞を選択するのに十分な数の細胞を生成するための空間および栄養を細胞に提供するように継代することが必要である。
【0042】
そのような集団を提供するためには、培養条件は、個別の遺伝子改変細胞からインビトロでの遺伝子分析およびキメラの産生のために使用される104〜107個の細胞のコロニーへと細胞が増殖するために十分に頑強でなければならない。これらの操作されたPGCは、得られた動物において成熟時に、精原細胞または卵原細胞の初期集団(すなわち、精子および卵子)に排他的に寄与するであろう。このような得られた動物では、体細胞組織全体はレシピエント胚に由来し、生殖系列はドナー細胞およびレシピエント胚の両方からの寄与を受けるであろう。生殖系列への合わさった寄与のため、これらの動物は、「生殖系列キメラ」として公知である。キメラの範囲に応じて、生殖系列キメラの子孫は、ドナー細胞またはレシピエント胚のいずれかに由来する。
【0043】
ニワトリの生殖系列は、ステージX(E−G&K)の胚の胚盤葉上層由来の細胞として開始され、初期胚盤葉下層に入る(Kagamiら(1997)Mol Reprod Dev 48,501−510;Petitte,(2002)J Poultry Sci 39,205−228)。胚盤葉下層が前方に進行するにつれて、前始原生殖細胞は、巨大なグリコーゲン負荷細胞として同定することができる生殖三日月環に前進する。これらの形態基準による生殖系列中の細胞の最も早い同定は、インキュベーション開始から約8時間後(Hamburger and Hamilton,(1951)J Morph 88,49−92によって確立された段階別分類を使用したステージ4)である。始原生殖細胞は、これらがステージ12〜17(H&H)の間に脈管構造を介して移動するまで、ステージ4(H&H)由来の生殖三日月環に存在する。この時点で、始原生殖細胞は、約200個の細胞の小集団である。脈管構造から、始原生殖細胞が生殖隆起に移動し、性腺が分化するにつれて、卵巣または精巣に組み込まれる(Swift,(1914)Am.J.Anat.15,483−516;Meyer,(1964)Dev Biol.10,154−190;Fujimotoら、(1976)Anat.Rec.185,139−154)。
【0044】
今まで試験されてきた全ての種では、始原生殖細胞は、EG細胞に分化することなく長期培養物中で増殖しなかった。従来のエレクトロポレーションまたはリポフェクションプロトコルによって遺伝子改変または不活化を導入するのに十分な数の細胞を産生するために、長期培養が必要である。典型的には、これらのプロトコルには、105〜107個の細胞が必要であり、したがって、全ての細胞分裂が、(1)同期に起こり、そして(2)2つの生きた娘細胞を産生すると仮定すると、1つの前駆体からのこれらの細胞の産生には、17〜24回倍増する必要がある。細胞ゲノムへの遺伝子改変物の導入は、稀な事象であり、典型的には、1×104〜1×106個の細胞に1回生じる。遺伝子改変後、細胞は、遺伝子改変物を保有および/または発現する1つの細胞からコロニーを確立することができなければならない。コロニーは、PCRまたはサザン分析によって分析して導入遺伝子の信頼性を評価することができる105〜107個の細胞集団に拡大することによって十分な数の細胞が得られなければならならず、次いで、ステージ13〜15(H&H)のレシピエント胚に注入する。したがって、細胞集団を産生するために、さらに17〜24回の細胞分裂が必要であり、遺伝子改変細胞集団を産生するために全部で34〜58回倍増することが必要である。細胞周期が24時間であると仮定すると、ステージ13〜15(H&H)のレシピエント胚への注入のための遺伝子改変された始原生殖細胞を産生するために、最短で34日間、一般に58日間の培養が必要である。次いで、注入した細胞は、生殖系列をコロニー形成し、機能的配偶子を形成し、受精後に新規の個体に発育することができなければならない。
【0045】
本明細書に記載される培養物において維持されるPGCは、培養物中に維持される間、特徴のあるPGC形態を維持する。PGC形態は、直接的観察によって観察することが可能であり、培養物中の細胞成長は、細胞が培養物中で確実に増殖させるための一般的な技術によって評価される。増殖する細胞培養物は、非末期であると定義されて、2つの異なる時点のうちの後の時点の方が培養物中の細胞数が多いことが認められる。本発明の培養物中のPGCは、任意の特定の培養物中に1×105個以上の細胞を有することができ、この数は長期にわたって増加することが認められる。したがって、本発明は、培養物の寿命のうちのより早い時点と比較して、何日後、何週間後または何カ月後に多数の細胞を含む増殖PGC培養物を含む。理想的には、培養物は、少なくとも1×105個の細胞を含み、培養物の任意の成長期間後により多数の細胞を有することを認めることができる。さらにまた、PGCは、培養物中の優占種であることが認められ、それは、非ニワトリのフィーダー細胞によってなされる最小の貢献を考慮した場合、細胞培養物の増殖成分は、他のニワトリ由来細胞を実質的に排除して、本質的にニワトリ始原生殖細胞から成る。
【0046】
培養物は、また、既存の培養物由来の細胞のサンプルまたはアリコートを分離することができ、且つ、新規の培養培地中に入れた場合に強い成長を示すような継代による増殖特性も示す。定義により、細胞培養物を継代する能力は、細胞培養物が成長および増殖し、且つ末期ではないことを示す。さらに、本発明の細胞は、数回の継代後に生殖系列キメラを作製し、PGC形態を維持する能力を証明する。本明細書中に記載のように、この増殖は、外因性DNA配列の安定な組み込みに適切な任意の細胞培養物の不可欠な特徴である。
【0047】
PGCは、任意の公知の技術によって得ることができ、本明細書中に記載の培養条件で成長させることができる。しかし、全血をステージ15の胚から取り出し、下記の培養培地に直接入れることが好ましい。このアプローチは、PGCを培地に入れる前に処理および分離工程に供する文献に記載の他のアプローチと異なる。最初は培地中に共存し得る全血由来のPGCと他の細胞との間の頑強な差分成長は、本明細書中に記載の培養物中のPGCの大集団を提供する。したがって、全血から直接由来のPGCは、培養物中で大きな細胞濃縮物に成長し、無制限の回数の継代を行うことができ、培養物中のPGCが本質的に成長および増殖している細胞のみであるような頑強な成長および増殖を示す。
【0048】
本発明の1つの態様は、多数(3個超、4個超、5、10、15、および20個超が含まれる)の生殖系列キメラ動物の作製であり、これらは全てその生殖系列中に遺伝的に同一のPGC由来細胞を有する。本発明の別の態様は、年齢差を集団内で有する、その生殖系列中に遺伝的に同一のPGC由来細胞を有する生殖系列キメラ集団の作製であり、このことは、生殖系列キメラを作製するための同一の長期細胞培養物の使用を反映する。年齢差は、始原生殖細胞を長期間培養するための現在利用可能な能力を超え、それは凍結することなく190日間にもなる。したがって、本発明は、細胞を凍結することなく、40日間、60日間、80日間、100日間、190日間などまたはその間の任意の他の整数値を超えて年齢が異なる、その生殖系列中に遺伝的に同一のPGC由来細胞を有する2個以上の生殖系列キメラを含む。本発明は、また、これらの生殖系列キメラを作製するために使用される非末期PGC培養物の存在と共にその生殖系列中に遺伝的に同一のPGC由来細胞を有する性的に成熟した生殖系列キメラの存在を含み、これらからさらなる生殖系列キメラを作製することができる。
【0049】
PGCを非常に安定な様式で培養物中に維持することができるので、細胞を低温保存し、解凍して、培養物中に維持されたPGCの表現型によって定義された子孫を作製する能力を有する生殖系列キメラを作製するための長期保存方法を得ることもできる。
【0050】
多数の生殖系列キメラを産生する能力により、生殖系列キメラの子孫にPGC由来遺伝子型を伝達する能力も得られる。したがって、本発明は、生殖系列中に不活化内因性遺伝子の遺伝子座を有する遺伝的に同一のPGC由来細胞を有する生殖系列キメラの両集団を含むが、その遺伝子型および表現型が培養物中で成長したPGCの遺伝子型によって完全に決定される生殖系列キメラの子孫も含む。PGC由来ノックアウト表現型の生殖系列での取り込みが認められた。このように、本発明は、不活化内因性遺伝子座を含む始原生殖細胞の遺伝子型の生殖系列への伝達により作製される生殖系列キメラの子孫を含む。したがって、本発明は、部位特異的遺伝子不活化からなるPGCを含む始原生殖細胞培養物、同じ始原生殖細胞をその生殖系列の一部として有する生殖系列キメラ、およびノックアウト遺伝子型および表現型を有する生殖系列キメラの子孫のそれぞれの存在を含む。
【0051】
レシピエント胚中のドナー由来PGCとレシピエント由来PGCとの比を変化させて、PGC由来のキメラ中の生殖系列のコロニー形成を助けることができる。発育中のニワトリおよびウズラ胚では、ブスルファンへの曝露により、始原生殖細胞集団が生殖三日月環から生殖隆起に移動するにつれて、始原生殖細胞集団が大幅に減少するか、または消失する(Reynaud(1977a)Bull Soc.Zool.Francaise 102,417−429;Reynaud(1981)Arch Anat.Micro.Morph.Exp.70,251−258;Aige−Gil and Simkiss(1991)Res.Vet.Sci.50,139−144)。24〜30時間のインキュベーション後に、ブスルファンを卵黄に注入する場合、50〜55時間のインキュベーション後に始原生殖細胞が脈管構造に再導入され、ドナー由来始原生殖細胞と共に生殖系列が再増殖され、その後、ドナー由来配偶子が産生される(Vickら、(1993)J.Reprod.Fert.98,637−641;Breslerら、(1994)Brit.Poultry Sci.35 241−247)。
【0052】
本発明の方法は、ニワトリから(例えば、ステージ15の胚の全血などから)のPGCを得ること、PGCを培養物中に入れること、内因性遺伝子の遺伝子座の不活化を操作すること、PGCを増殖させてその数を増加させること、多数の継代を可能にすること、操作されたPGCの長期培養物から生殖系列キメラを作製すること、およびPGCで操作された遺伝子不活化を示す遺伝子型および表現型を有する生殖系列キメラの子孫を得ることを含む。本発明の方法は、また、培養物中のPGC集団に不活化遺伝子または「ノックアウト」遺伝子を挿入して、不活化された、または機能的に破壊された内因性遺伝子座を有する、安定にトランスフェクトされたPGCを作製する工程と、安定に組み込まれた導入遺伝子を保有するこの集団から細胞を選択する工程と、安定に組み込まれた導入遺伝子を保有する遺伝子改変細胞をレシピエント胚に注入する工程と、生殖系列に不活化された遺伝子座を含む生殖系列キメラに胚を発生させる工程と、生殖系列キメラを性的に成熟するまで飼育する工程と、生殖系列キメラを交配してトランスジェニック子孫を得る工程を含み、ここで、遺伝子不活化は、培養PGCに由来する。遺伝子不活性化を達成するためにPGCに導入された遺伝子改変は、限定されるものではないが、ゲノムへの導入遺伝子のランダムインテグレーション、遺伝子のプロモーター領域へ挿入された導入遺伝子、ゲノム中の反復エレメントへの導入遺伝子の挿入、インテグラーゼを用いて導入されたゲノムに対する部位特異的変化、相同組換えにより導入されたゲノムに対する部位特異的変化、およびlox部位または部位特異的組み換えの基質である他の配列に隣接したDNAを切り出すことによりゲノムに導入された条件変異を含む。
【0053】
下記するように、本発明によれば、ニワトリPGC細胞株は、ステージ14〜16(H&H)の胚から採取した血液に由来し、大きな丸い形態をしている(図1)。これらの細胞は、長期培養後のその形態およびPGC由来子孫を産出する能力によってニワトリPGCであることが確認される。さらに、PGC培養物は、生殖系列特異的遺伝子であるDazlおよびCVHを発現し(図2)、CVHタンパク質は、培養物中の細胞によって産生される(図3)。培養物中のPGCは、また、テロメラーゼも発現し(図4)、これらが不死の表現型を有することを示す。さらに、PGCは、適切な培養条件で胚生殖(EG)細胞を生じる(図5)。類似性により、マウスおよびヒトのPGCは、類似の様式で処理した場合にEG細胞を生じる。マウスEG細胞は体細胞組織に寄与し、キメラの黒色の羽の色素沈着によって示されるように、ニワトリEG細胞も体細胞組織に寄与する。ニワトリPGCは、サザン分析によって示されるように遺伝子改変されている(図6)。この実施形態では、CXプロモーターは、PGCのゲノムに安定に組み込まれ、これを使用してPGCのゲノムに共に組み込まれたアミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ(APH)をコードする遺伝子の発現を容易にし、これを使用して培養培地に添加したネオマイシンへの耐性を付与し、遺伝子改変されたPGCを選択する。
【実施例】
【0054】
(実施例1。ニワトリPGC培養物の誘導)
ステージ14〜17(H&H)の胚の終末静脈洞から採取した2〜5μLの血液を、培地(幹細胞因子(SCF;6ng/mlまたは60ng/ml)、ヒト組み換え線維芽細胞増殖因子(hrFGF;4ng/mlまたは40ng/ml)、10%ウシ胎仔血清、および80%KO−DMEM馴化培地を含む)を含む96ウェルプレート中でインキュベーションした。好ましくは、1〜3μLを、ステージ15〜16(H&H)の胚の脈管構造から採取した。96ウェルプレートのウェルに、照射STO細胞を3×104細胞/cm2の濃度で播種した。
【0055】
KO−DMEM馴化培地を、10%ウシ胎仔血清、1% pen/strep、2mMグルタミン、1mMピルビン酸塩、1×ヌクレオシド、1×非必須アミノ酸、および0.1mMβ−メルカプトエタノールで補足し、5%ウシ胎仔血清を含むDMEM中での密集までのBRL細胞の3日間の成長によって調製した。24時間後、培地を除去し、培地の新規のバッチを3日間馴化した。これを3回繰り返し、3つのバッチを合わせてPGC培養培地を作製した。
【0056】
約180日間の培養後、PGC株の1つを、40% KO−DMEM馴化培地、7.5%ウシ胎仔血清、および2.5%ニワトリ血清からなる培地中で成長させた。これらの条件下で、PGCの倍加時間は約24〜36時間であった。
【0057】
培養開始時の主な細胞型は、胎仔赤血球であった。3週間以内の主な細胞型はPGCの細胞型であった。2つのPGC細胞株は、各胚から開始された18の培養物に由来した。
【0058】
PGC株を9ヶ月にわたって培養し、丸い形状を維持し、付着しないままである(図1AおよびB)。10%血清および10% DMSOを含むCO2非依存性培地中での低温保存後に、PGCは首尾よく解凍された。
【0059】
(実施例2。培養PGCはCVHおよびDazlを発現する)
CVHは、ショウジョウバエ中の生殖系列特異的遺伝子VASAのニワトリホモログであり、その発現はニワトリの生殖系列内の細胞に限定され、生殖三日月環中の約200個の細胞によって発現される(Tsunekawa,N.,Naito,M.,Sakai,Y.,Nishida,T.&Noce,T. Isolation of chicken vasa homolog gene and tracing the origin of primordial germ cells. Development 127,2741−50.(2000)。CVH発現は、雄の生殖系列の適切な機能に必要であり、CVH機能の喪失により雄マウスが不妊症を引き起こす(Tanaka,S.S.ら、The mouse homolog of Drosophila Vasa is required for the development of male germ cells.Genes Dev 14,841−53.(2000)。Dazlの発現は、カエル(Houston,D.W.& King,M.L. A critical role for Xdazl,a germ plasm−localized RNA,in the differentiation of primordial germ cells in Xenopus. Development 127,447−56,2000)、アホロートル(Johnson,A.D.,Bachvarova,R.F.,Drum,M.& Masi,T. Expression of axolotl DAZL RNA,a marker of germ plasm:widespread maternal RNA and onset of expression in germ cells approaching the gonad. Dev Biol 234,402−15,2001)、マウス(Schrans−Stassen,B.H.,Saunders,P.T.,Cooke,H.J.& de Rooij,D.G. Nature of the spermatogenic arrest in Dazl−/−mice. Biol Reprod 65,771−776,2001)、ラット(Hamra,F.K.ら、Production of transgenic rats by lentiviral transduction of male germ−line stem cells. Proc Natl Acad Sci USA 99,14931−6,2002)、およびヒト(Lifschitz−Mercer,B.ら、Absence of RBM expression as a marker of intratubular(in situ)germ cell neoplasia of the testis. Hum Pathol 31,1116−1120,2000)中の生殖系列に制限される。Dazlの欠失により、トランスジェニックマウスの精子形成欠損が起こる(Reijo,Rら、Diverse spermatogenic defects in humans caused by Y chromosome deletions encompassing a novel RNA−binding protein gene. Nat Genet 10,383−93,1995)。
【0060】
32日後、PGCをPBSで洗浄し、ペレット化し、Oligotex Direct mRNAキット(Qiagen)を使用してmRNAを組織サンプルから単離した。次いで、First−Strand cDNA合成(Invitrogen)のためのSuperScript RT−PCRシステムを使用して、9μlのmRNAからcDNAを合成した。2μlのcDNAを、その後のPCR反応で使用した。CVH配列(アクセッション番号AB004836)、Dazl配列(アクセッション番号AY211387)、またはβ−アクチン配列(アクセッション番号NM_205518)由来のプライマー配列は、以下であった。
【0061】
【化1】
プライマーV−1およびV−2を使用して、CVH転写物から751bpのフラグメントを増幅させた。プライマーDazl−1およびDazl−2を使用して、Dazl転写物から536bpのフラグメントを増幅させた。プライマーAct−RT−1およびAct−RT−Rを使用して、内因性ニワトリβ−アクチン転写物から597bpのフラグメントを増幅させた。製造者の説明書にしたがってAmpliTaq Gold(Applied Biosystems)を使用して、PCR反応を行った(図2)。
【0062】
(実施例3.PGCはCVHタンパク質を発現する)
T−Per組織タンパク質抽出キット(Pierce)を使用して新たに単離したPGCからタンパク質を抽出した。1% NP4O、0.4%デオキシコール酸塩添加した66mM EDTA、10mM、Tris(pH7.4)中での細胞の溶解によって細胞からタンパク質を抽出した。サンプルを、4〜15% Tris−HCLレディゲル(Bio−Rad)で泳動した。膜に移した後、説明書の通りにSuper Signal West Pico化学発光基質キット(Pierce)を使用してウェスタンブロットを行った。一次抗体としてウサギ抗CVH抗体を使用し(1:300)、二次抗体としてHRP抱合ヤギ抗ウサギIgG抗体(Pierce、1:100,000)を使用した(図3)。
【0063】
(実施例4。培養PGCはテロメラーゼを発現する)
始原生殖細胞をペレット化し、PBSで洗浄し、その後、分析まで−80℃で凍結した。細胞抽出物を調製し、テロメア反復増幅プロトコル(TRAP)(Kim,N.ら、Specific association of human telomerase activity with immortal cells and cancer.Science 266,2011−2014,1994)に基づいたTRAPezeテロメラーゼ検出キット(Serologicals Corporation)を使用して、製造者の説明書にしたがって分析した。図4。
【0064】
(実施例5。胚生殖(EG)細胞は、PGC培養物に由来することができる)
細胞をプレートに接着させ、FGF、SCF、およびニワトリ血清を除去し、細胞をES細胞培養物について用いられた条件と同一の条件下で培養することによって、ニワトリEG細胞をPGCから誘導した(van de Lavoirら、2006 High Grade Somatic Chimeras from Chicken Embryonic Stem Cells,Mechanisms of Development 12,31−41;van de Lavoir and Mather−Love(2006)Chicken Embryonic Stem Cells;Culture and Chimera Production,Methods in Enzymology,印刷中)。cEG細胞の形態は、cES細胞の形態と非常に似ている(図5A、B)。cEG細胞をステージX(E−G&K)の胚に注入する場合、cEG細胞は体細胞組織をコロニー形成して、cES細胞を使用して作製されたキメラと同一と思われるキメラを幼鳥として作製する能力を有する。新規の誘導されたトランスジェニックPGC株およびクローン誘導されたトランスジェニックPGC株の両方でニワトリEG細胞が認められる。GFP陽性PGC由来のEG細胞のサザン分析により、EG細胞がPGC起源であることが証明された(図15)。
【0065】
(実施例6。培養雄PGCは、雄鶏中で機能的配偶子を生じる)
雄始原生殖細胞株を、各Barred Rock胚から誘導した。株の確立後、細胞を、ステージ13〜15(H&H)の胚に注入した。表現型的に、孵化したニワトリは、白色レグホンに類似していた。雄を性的に成熟するまで飼育し、Barred Rock雌鶏と交配させた(表1)。黒色の子孫は、注入したPGCの生殖系列伝達を示す。雄鶏の生殖系列伝達率は、1%未満から86%まで様々であった(表1)。
【0066】
【表1】
PGCを、ステージXの胚の胚下腔に注入することもできる。培養209日後に1000個または5000個のPGCを照射した胚に注入した。孵化した雄ひなを性的に成熟するまで成長させ、交配して生殖系列伝達を試験した。試験した4羽の雄鶏のうちの3羽で生殖系列伝達が認められ、その頻度は0.15〜0.45%で変化した。これは、原腸形成前に注入した場合にPGCが生殖系列をコロニー形成することができることを示す。雄PGCの生殖系列伝達は、14羽の雌キメラ由来の1,625羽の子孫で認められなかった。
【0067】
(実施例7。培養雌PGCは雌鶏で機能的配偶子を生じる)
66日間培養したBarred Rock胚由来の雌PGCを、ステージ13〜16(H&H)の白色レグホン胚に注入し、孵化した全ひなは、表現型が白色レグホンであった。雌鶏を性的に成熟するまで飼育し、Barred Rock雄鶏と交配した。雌PGCは雌キメラを介して伝達され、その頻度は最大69%であった(表2)。
【0068】
【表2】
雌PGCを、雄レシピエント白色レグホン胚にも注入した。雄キメラを性的に成熟するまで飼育し、Barred Rock雌鶏と交配した。雌PGCの生殖系列伝達は、3羽の試験雄鶏の506羽の子孫で認められなかった。
【0069】
(実施例8.PGC由来の子孫は、生殖的に正常である)
3羽の雄および4羽の雌の非トランスジェニックPGC由来の子孫を互いに交配させた。53%と100%との間の卵が受精し(表3)、79%と100%との間の受精卵から胚が孵化胚を生じ(表3)、このことはPGC由来の子孫が生殖的に正常であることを示す。
【0070】
【表3】
(実施例9)
始原生殖細胞は、ステージ14−17の胚から分離されて、生殖細胞系に貢献することが示された(参照:実施例1〜8)。この場合、PGCは、脈管系を循環している。脈管系の形成の前に、PGCは、生殖三日月環(胚体の前にある)に位置した。生殖三日月環のPGCの前駆体は、十分に分かっていないが、PGCがステージX(Eyal−Giladi and Kochav)の胚の明域にある細胞に由来すると通常、思われている(Petitte,J.N. 2002. The Avian germline and Strategies for the Production of Transgenic Chickens. Journal of Poultry Science 39,205−228)。ステージX胚にある間、PGCは、生殖三日月環でそれらの識別のために使われる古典的な形態学的基準を使って確認することができない。驚くべきことに、ステージXのBarred Rock胚からの分散細胞の配置は、PGCをもたらし、生殖細胞系列に寄与することが示された。本発明者らは、個々に胚盤葉を集めて、パスツールピペットで粉砕して機械的にそれらを分散させることによって、この原理を証明した。細胞は、洗浄し、実施例1で記載された培地を含む照射BRL細胞で先に播種された48ウェルプレートにプレート化された。培養物は、播種後、最初の期間6〜10日間、継代された。その後、継代は、存在するPGCの濃度に依存した。2つの雄細胞株(PGC−A12とPGC−B11)が確立されて、実施例6で記載したように、それぞれ培養の45日と36日後に、レシピエント胚に注入された。5つの雄キメラは、各細胞株から作出された。表4に示すように、Barred Rock表現型は、10匹の雄のうち3匹の生殖系列により伝達され、機能的なPGCになる運命にある細胞が提供された培地で培養することができたことを証明している。
【0071】
【表4】
(実施例10。ネオマイシンおよびピューロマイシンに対するPGCの感受性)
全組織中で)強く発現するCX−プロモーターの調節下で抗生物質耐性を発現する細胞の成長に必要なピューロマイシンおよびネオマイシンの濃度を確立するために、ネオマイシンおよびピューロマイシンに対するPGCの感受性を決定した。これらの実験は、全ての非トランスフェクション細胞を消失するために10日間に300μg/mlの濃度のネオマイシンが必要であることを証明した。0.5μg/mlの濃度のピューロマイシンは、7〜10日間以内にPGCを消失させるのに十分であった。
【0072】
(実施例11。PGCの遺伝子改変)
NotI線状化cx−neo導入遺伝子(図6を参照のこと)の20μg(20μl)を、167日間培養した5.8×106個のPGC集団に添加した。細胞およびDNAを、800μlのエレクトロポレーション緩衝液に再懸濁し、672ボルトおよび持続時間100秒の方形波パルスを8回印加した。10分後、細胞を培養培地中に再懸濁し、24ウェルプレートに等分した。エレクトロポレーションから2日後に、培地1mlあたり300μgのネオマイシンを添加して、cx−neo導入遺伝子を発現する細胞を選択した。細胞を、19日間選択下に維持した。19日後、細胞を選択から取り出し、分析のために拡大した。PGCの比率を、300μg/ml下にさらに31日間保持することにより、PGCが抗生物質に機能的に耐性を示すことが証明された。
【0073】
図6に関して、プラスミドコントロールのために、cx−neoプラスミドDNAをNotIで線状化し、次いで、EcoRIまたはBamHIで消化して、HindIII消化で認められたインタクトなプラスミドよりもわずかに小さなフラグメント(5kb)を産生した。約2kbのcx−neoプラスミドの内部フラグメントを、StyIまたはNcoIでの消化によって放出させた。約2.6kbのより大きな内部フラグメントを、EcoRIおよびKpnIでの消化によって放出させた。EcoRI、BamHI、およびHindIIIでのPGC株由来のゲノムDNAの消化により、6kbを超えるバンドが明らかとなり、これは、cx−neo導入遺伝子がPGCゲノムに組み込まれたことを示す。KpnIとのStyI、NcoI、およびEcoRIでの消化後にプラスミドDNA中に明らかとなった内部フラグメントは、PGCのゲノムDNA中にも存在し、cx−neo導入遺伝子が変化することなくPGCゲノムに組み込まれたことを示す。従来の導入遺伝子構築技術を使用して、さらなるエレメントを組み込むことができ、その例は、調節エレメント、組織特異的プロモーターおよびタンパク質をコードする外因性DNAである。
【0074】
上記のように、トランスジェニック動物を産生するためのPGCの遺伝子改変の能力は、非常に少数の種でのみ証明されている。類似の遺伝子操作を、マウスのES細胞を使用して行われる遺伝子操作を参照することによって、ニワトリPGC中で行うことができる。マウスでは、相同組換えの個別の使用およびその後のキメラ子孫およびトランスジェニック子孫の産生のための胚幹(mES)細胞への染色体移入は周知である。部位特異的相同組換えまたは遺伝子ターゲティングの強力な技術が開発されている(Thomas,K.R.and M.R.Capecchi, Cell 51:503−512,1987;Waldman,A.S., Crit.Rev.Oncol.Hematol.12:49−64,1992による総説を参照のこと)。クローン化DNAの挿入(Jakobovits,A.,Curr.Biol.4:761−763,1994)ならびにCre−loxP系技術による染色体フラグメントの操作および選択(Smith,A.Jら、Nat.Genet.9:376−385,1995;Ramirez−Solis,R.ら、Nature 378:720−724,1995;米国特許第4,959,317号;同第6,130,364号;同第6,130,364号;同第6,091,001号;同第5,985,614を参照のこと)は、安定な遺伝子キメラを産生するための遺伝子操作およびmES細胞への遺伝子移入に利用可能である。
【0075】
始原生殖細胞のゲノムは、一般に、静止状態にあると考えられ、したがって、クロマチンは非常に濃縮された状態であり得る。従来のエレクトロポレーションプロトコルによる広範な試験により、PGCのゲノムに遺伝子改変物を導入するためには特別な方法が必要であることが示唆される。下記のように、導入遺伝子をニワトリβ−グロビン遺伝子座由来のインスレーターエレメントで取り囲んで発現を増強することができる。β−グロビンインスレーターエレメントを含めることによって成長することができるクローンが日常的に産生され、これを分析し、レシピエント胚に注入する。
【0076】
抗生物質(例えば、ネオマイシン、ピューロマイシン、ハイグロマイシン、his−D、ブラストサイジン、ゼオシン、およびgpt)耐性遺伝子の発現を引き起こすために使用される従来のプロモーターは、遍在的に発現する。典型的には、プロモーターは、β−アクチン、CMV、またはユビキチンなどの「ハウスキーピング」遺伝子に由来する。全細胞中で典型的に高レベル発現するので構成的プロモーターが有用である一方で、これらは、ニワトリの全寿命にわたって、全組織といわないまでも、ほとんどの組織で発現し続ける。一般に、発現は、発現を必要とする組織および発生段階のみに制限されるべきである。始原生殖細胞の選択のために、発現を必要とする期間は、培地中に抗生物質が存在する場合、インビトロで存在する期間である。一旦細胞が胚に挿入されると、選択マーカー(すなわち、抗生物質耐性遺伝子)の発現が終了することが好ましい。抗生物質耐性遺伝子の発現を制限するために、「神経誘導に対する初期応答」(ERNI)プロモーターを使用する。ERNIは、発生の初期段階(例えば、ステージX(E−G&K))および培養物中で選択的に発現する遺伝子であり、したがって、このプロモーターを使用して抗生物質耐性遺伝子の発現を駆動し、遺伝子改変物を保有するPGCを選択する。発生の初期段階でERNIのみが発現するので、抗生物質耐性を付与する遺伝子は、成熟動物中で発現しない。
【0077】
(実施例12。長期PGC細胞培養物の均質性)
長期培養後のPGC培養物の均質性を決定するために、ES、EG、DT40(ニワトリB細胞株)、およびPGCを、抗CVH、ニワトリ管ホモログに対する抗体、および1B3抗体で染色した(Halfter,W.,Schurer,B.,Hasselhorn,H.M.,Christ,B.,Gimpel,E.,and Epperlein,H.H., An ovomucin−like protein on the surface of migrating primordial germ cells of the chick and rat. Development 122,915−23.1996))。CVH抗体の発現は、生殖細胞に制限され、したがって、抗CVH抗体は、生殖細胞の信頼できるマーカーである。1B3抗原は、性腺の移動およびコロニー形成の間にニワトリPGCの表面上に存在するオボムチン様タンパク質を認識する。
【0078】
細胞を、CMF/2%FBSで洗浄し、4%パラホルムアルデヒドで5分間固定し、再度洗浄した。脈管を染色すべき細胞アリコートに0.1% TritonX−100を1〜2分間浸透させた。一次抗体を20分間添加し、細胞を2回洗浄し、二次抗体(CVHおよびコントロールのためのAlexa 488抗ウサギIgGならびに1B3のためのAlexa 488抗ウサギIgM)と共に15分間インキュベートした。コントロールとして、細胞のアリコートを、二次抗体のみで染色した。さらに2回の洗浄後、FACS分析用の細胞を調製した。
【0079】
図7に関して、DT40細胞、ES細胞、およびEG細胞は、CVHおよび1B3抗体で染色した場合、全てバックグラウンドを示す。しかし、PGCは、CVH抗体および1B3抗体の両方でさらにより強く染色される。CVHおよび1B3のいずれでも染色されないPGCの小集団が存在し、細胞の小集団がPGC表現型を示さないことを示す。2つの親PGC株およびPGC13親細胞株由来の4つのトランスフェクトされた細胞株(G−09、P84、P97/6、およびP97/33)を、脈管および1B3抗体(PGC13および102)を使用して試験した。全て同一のパターンを示し、これは、種々のPGC培養物が同一の高い比率でPGC表現型を発現する細胞を含むことを示す。
【0080】
(実施例13:始原生殖細胞の遺伝子改変)
環状CX−GFPプラスミドを使用したエレクトロポレーションにより、PGCの一過性トランスフェクション率は、1〜30%の間で変動することが明らかとなった。8回の100μ秒および800Vの方形波パルスを使用して、本発明者らは、CX−neo構築物を保有するPGC細胞を得て、G−09と命名した。図6を参照のこと。サザンブロット分析を使用して、構築物の組み込みを評価した。しかし、この安定にトランスフェクトされた株の単離は、非再現性の事象であった。G−09を除き、方形波パルスおよび指数関数的減衰パルスの両方を使用した37のトランスフェクション実験における線状化構築物を使用した17×107個のPGCのエレクトロポレーション後に、PGCは安定にトランスフェクトされなかった。これらの各実験では、PGC数は、1×106〜10×106に変化した。マウス、ニワトリ、およびヒトにおけるES細胞研究で広く使用されている以下のプロモーターを試験した:CAGとも呼ばれるCXプロモーター(Niwa,H.,Yamamura,K.,and Miyazaki,J., Efficient selection for high−expression transfectants with a novel eukaryotic vector. Gene 108,193−9.1991)、CMVエンハンサーを含むニワトリβ−アクチンプロモーター、PGKプロモーター、MC1プロモーター、およびUbcプロモーターを含む。これらのプロモーターは、トランスフェクション効率を増加させなかった。選択マーカーの発現および遺伝子改変細胞株のクローン誘導を可能とするために、組み込まれた構築物と共にインスレーターを使用した。
【0081】
インスレーターは、不活性なクロマチンドメインから活性なクロマチンドメインを分離し、隣接するエンハンサーの活性化効果または隣接する凝集クロマチンのサイレンシング効果から遺伝子を隔離するDNA配列である。ニワトリでは、β−グロビン遺伝子座の5’側に存在する5’HS4インスレーターが、Felsenfeldおよび協力者によって十分に特徴づけられている(Burgess−Beusse,B.,Farrell,C.,Gaszner,M.,Litt,M.,Mutskov,V.,Recillas−Targa,F.,Simpson,M.,West,A.,and Felsenfeld,G.(2002)).The insulation of genes from external enhancers and silencing chromatin.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99 Suppl.4,16433−7。このインスレーターは、β−グロビン遺伝子座を構成的に凝縮されたクロマチンの上流領域から保護する。本発明者らは、ニワトリβ−アクチン−neoカセットの5’側および3’側の両方のインスレーターとしてニワトリβ−グロビン5’HS4配列を使用したネオマイシン耐性を引き起こすニワトリβ−アクチンプロモーターを使用して導入遺伝子を組み立てた。
【0082】
ニワトリβ−グロビン遺伝子座由来の高感度部位4の250bpコア配列を、以下のプライマー組を使用してPCR増幅した。
【0083】
【化2】
PCR産物を、pGEM−Tにクローン化し、配列決定した。HS4部位の縦列重複を、pGEMクローン中のHS4をBamHIおよびBglIIで消化して挿入物を放出させ、BglIIで消化してベクターを線状化することによって作製した。HS4フラグメントを、HS4インスレーターのコピーを含むベクターにライゲーションした。クローンをスクリーニングし、2つのHS4コピーが同一方向であるクローンを選択した。これを、2×HS4と呼ぶ。
【0084】
(実施例14:HS4β−アクチン−neoを使用したバルク選択)
β−アクチンneoを、Buerstedde(クローン574)から得て、pBluescriptに移入した。次いで、β−アクチンneoの5’末端および3’末端の両方で2×HS4をクローン化して、HS4−β−アクチンneoを産生した。この構築物を使用して、トランスフェクションを8回行った。各トランスフェクションのために、5×106個のPGCを、400μlのエレクトロポレーション緩衝液(Specialty Media)中に再懸濁し、20μgの線状化DNAを添加した。1回の指数関数的減衰(ED)パルス(200V、900〜1100μF)または8回の方形波(SW)パルス(250〜350V、100μ秒)を印加した。トランスフェクション後、細胞を数日間成長させ、その後、ネオマイシン選択剤(300μg/ml)を添加した。各画分をプールとして成長させた。5〜8個の画分から耐性細胞を単離した。
【0085】
トランスフェクション細胞の2プールに対してサザン分析を行った(図8)。PGC細胞株P84およびP85由来の2μgのゲノムDNAならびに20pgのプラスミド(HS4−β−アクチンneo)を消化した。消化物を0.7%ゲルで泳動し、10×SSC中でナイロン膜に毛細管現象によって一晩移し、Rapid Hyb(Amersham)中にて放射能標識neo遺伝子配列で2時間探索した。洗浄後、ブロットをフィルムに−80℃で一晩感光した。図8に関して、レーン1はP84であり、レーン2はP85であり、レーン3はプラスミドである。プラスミドコントロールのために、HS4−β−アクチンneoプラスミドDNAを、NotIで線状化した。2.3Kb内部フラグメントを得るために、PGC DNAおよび線状化プラスミドを、BamHIで消化した。P84およびP85の両方は、2.3Kbのサイズの内部フラグメントを示す。約2.6kbのより大きな内部フラグメントを、HindIIIでの消化によって放出させた。さらに、この内部フラグメントは、P84およびP85消化物の両方に存在する。EcoRIおよびBglIIでのP84およびP85のゲノムDNAの消化により、導入遺伝子がゲノムに組み込まれた場合、2.9Kbを超えるバンドが明らかとなるはずである。P84では、連結点フラグメントは認められず、P84がいくつかの異なるクローンの複合物であることを示す。P85では、EcoRI消化物中に4.5〜5Kbの連結点フラグメントが存在し、BglII消化物中に5Kbの連結点フラグメントが存在し、このことは、P85がゲノムに組み込まれ、培養物が実質的に1つのクローンから構成されることを示す。本実施例は、始原生殖細胞中の選択マーカーの信頼できる発現のための構築物の好ましいエレメントとしてのインスレーターの有用性を示す。
【0086】
(実施例15:遺伝子改変PGCのクローン誘導)
以下の実施例は、始原生殖細胞の遺伝子改変株をクローン的に誘導し得ることを示す。
【0087】
第1に、β−アクチン−eGFPを作製した。eGFP遺伝子を、XmnIおよびKpnIを使用してCX−eGFP−CX−puroから放出させ、EcoRIおよびXmnIを使用してHS4−β−アクチンpuroからβ−アクチンを放出させ、2つを3方向ライゲーションとしてEcoRIおよびKpnIで消化したpBluescriptにクローン化してβ−アクチンEGFPを産生した。次いで、BamHIおよびKpnIを使用してβ−アクチンeGFPを放出させ(T4 DNAポリメラーゼを使用して平滑末端化し)、BglIIおよびEcoRVで消化したHS4−β−アクチンpuroにクローン化した。
【0088】
この構築物を使用してトランスフェクションを5回行った。各トランスフェクションのために、5×106個のPGCを、400μlのエレクトロポレーション緩衝液(Specialty Media)中に再懸濁し、20μgの線状化DNAを添加した。EDパルス(150〜200V、900μF)またはSW(350V、8パルス、100μ秒)パルスを印加した。トランスフェクション後、細胞を48ウェルにそれぞれプレートし、数日間成長させた後に選択剤(0.5μg/ml)を添加した。5回のトランスフェクションのうちの4回において、全部で5つのクローンが認められた。1つのクローンTP103を、サザンによって分析した(図9)。図11に関して、プラスミドコントロールDNAを、NotIで線状化した。KpnIでのDNAの消化によって内部フラグメントを放出させた。TP103およびプラスミドの両方において、同サイズのフラグメントが放出された。NcoI、MfeI、およびSphIでのTP103のゲノムDNAの消化により、消化したプラスミドDNAの対応するレーンよりも大きなバンドが明らかとなるはずである。MfeI消化したTP103ゲノムDNAのレーンでバンドは認められず、これは、バンドが非常に大きいためである場合がある。NcoIおよびSphI消化を示すレーンでは、TP103ゲノムDNA中に、プラスミドDNA中に放出されたフラグメントより実質的に大きいフラグメントが放出され、導入遺伝子がTP103細胞株のゲノムに組み込まれたことを示す。
【0089】
HS4−β−アクチン−puroのクローン誘導
第1に、β−アクチンpuroを、CX−EGFP−CX−puro由来のpuro(XmnI−EcoRI)、pBS中のβ−アクチンneo由来のβ−アクチン(上記を参照のこと)(Sal−XmnI)、およびpBluescript(SalI−EcoRI)の3方向ライゲーションによって作製した。次に、BamHI/SAP処理2×HS4ベクターへのBamHI消化β−アクチンpuroのライゲーションによって2×HS4の2つのコピーを含むpBSにβ−アクチンpuroをクローン化した。
【0090】
この構築物を使用してトランスフェクションを3回行った。各トランスフェクションのために、4〜5×106個のPGCを、400μlのエレクトロポレーション緩衝液(Specialty Media)中に再懸濁し、20μgの線状化DNAを添加した。200V、900μFのEDパルスを印加した。トランスフェクション後、細胞を48ウェルにそれぞれプレート化し、数日間成長させた後に選択剤(0.5μg/ml)を添加した。2回のトランスフェクションでクローンは認められなかった。第3のトランスフェクションから2つのコロニーを単離した。
【0091】
HS4−cx−eGFP−cx−Puroのクローン誘導
HS4−cx−eGFP−cx−Puroを使用してトランスフェクションを3回行った。5×106個のPGCを、400μlのエレクトロポレーション緩衝液(Specialty Media)中に再懸濁し、20μgの線状化DNAを添加した。350Vで100μ秒のSWパルスを、各トランスフェクションに8回印加した。トランスフェクション後、細胞を48ウェルにそれぞれプレート化し、数日間成長させた後にピューロマイシン選択剤(0.5μg/ml)を添加した。2回のトランスフェクションから全部で16個のクローンが単離された。
【0092】
cx−neoのクローン誘導
PGC13細胞株は、cx−neo選択マーカーを保有するプラスミドを使用してエレクトロポレーションされた。ネオマイシンへの曝露後、ネオマイシンに耐性を示す細胞株(G−09)を誘導した。この細胞株の核型を決定し、全ての細胞が第2染色体のpアームを欠失していた(表5および図10)。これらのデータは、G−09が第2染色体のpアーム中にサイン欠失を保有するPGCにクローン的に由来することを証明する。
【0093】
【表5】
(実施例16:PGC中の選択マーカーの組織特異的発現)
遺伝子ERNIは、ニワトリ胚の前原始線条段階から発現し、ヘンセン結節由来のシグナルに対する初期応答遺伝子である(Streit,A.,Berliner,A.J.,Papanayotou,C.,Sirulnik,A.,and Stem,C.D.(2000).Initiation of neural induction by FGF signalling before gastrulation. Nature 406,74−8)。さらに、ERNIは、ニワトリES細胞中で発現する(Acloque,H.,Risson,V.,Birot,A.,Kunita,R.,Pain,B.,and Samarut,J.(2001). Identification of a new gene family specifically expressed in chicken embryonic stem cells and early embryo. Mech Dev 103,79−91)。ERNI遺伝子(cENS−1とも呼ばれる)は、固有の5’および3’UTR配列に加えて、1つの長い読み取り枠が486bpの直列反復配列に隣接する固有の構造を有する。この構造がレトロウイルスLTR様構造を連想させるという考えに基づいて、Acloqueら(2001)は、プロモーター/エンハンサー活性のcDNA配列の異なる部分をアッセイし、3’UTR中の固有の配列領域がプロモーターとして作用することを見出した。PCRプライマーは、Acloqueら(2001)に記載のように、本質的に設計されてERNI遺伝子の3’UTRの822bpフラグメントを増幅した。ERNI配列の増幅後、SV40ポリA部位を使用して、これらをネオマイシン耐性遺伝子の上流にクローン化して、ERNI−neo(1.8kb)を作製した。次いで、2×HS4インスレーターを、ERNI−neo選択マーカーカセットのいずれかの側にクローン化した。
【0094】
HS4−Emi−neoを使用してトランスフェクションを2回行った。5×106個のPGCを、400μlのエレクトロポレーション緩衝液(Specialty Media)中に再懸濁し、20μgの線状化DNAを添加した。第1のトランスフェクションでは、175V、900μFのEDパルスを1回印加し、第2のトランスフェクションでは、100μ秒および350VのSWパルスを8回印加した。トランスフェクション後、細胞を48ウェルにそれぞれプレート化し、数日間成長させた後にネオマイシン選択剤(300μg/ml)を添加した。第1のトランスフェクション(EDパルス)で、5つのコロニーを単離し、第2のトランスフェクション(SWパルス)で、11のコロニーを単離した。
【0095】
安定にトランスフェクトされたクローンの単離は、ERNIがPGC中で発現され、これを組織特異的プロモーターとして使用することができることを示す。
【0096】
(実施例17:生殖系列へのトランスフェクトされたPGCの寄与)
PGCをHS4−βアクチン−GFPでトランスフェクトし、ステージ13〜15(H&H)の胚の脈管構造に注入した。18日目に、性腺を取り出し、固定し、切片にし、CVH抗体で染色して生殖細胞を同定した。次いで、染色切片を、性腺中のGFP陽性細胞の存在について分析した。雄(図11)および雌の両方の性腺中でGFP陽性生殖細胞が見出された。これらの胚の脳、心筋、および肝臓の組織学的調製物試験により、1つのスライドで4つの緑色細胞のみが示された。これらのデータは、少数の培養PGCが異所で見出されたが、大部分の培養PGCは生殖系列を優先的にコロニー形成することを証明する。
【0097】
GFP陽性細胞が生殖細胞であることを決定するために、切片を抗CVH抗体で染色した。図12に認められるように、GFP陽性細胞はCVHタンパク質についても染色され、GFP陽性細胞が生殖細胞であることを示す。
【0098】
図12に関して、GFP陽性細胞がこの切片中に存在し、DAPI/GFPパネルは、これらのGFP陽性細胞が精細管内に存在することを示す。生殖細胞を抗CVH抗体で染色する場合、これらは、生殖細胞の細胞質の輪郭を描く強く赤色に染色された環を示す。DAPI/CVHパネルは、これらの細胞が精細管内に存在することを示す。最後のパネルは、GFP陽性細胞がCVHについても染色され、精細管がGFP陰性のCVH陽性生殖細胞を含むことを示す。
【0099】
(実施例18。遺伝子改変PGCの生殖系列伝達)
以下の導入遺伝子:βアクチン−neo、βアクチン−eGFP−βアクチン−puro、またはcx−eGFP−cx−puroの1つでトランスフェクトされたBarred Rock PGCを、ステージ13〜14(H&H)の胚の脈管構造に注入した。ニワトリのひなを孵化させ、雄鶏を性的に成熟するまで成長させ、Barred Rock雌鶏と交配させて導入遺伝子の生殖系列伝達を決定した。全ての黒色子孫はPGCに由来し、これらを導入遺伝子の存在について試験した(表6)。生殖系列伝達率を、羽の色をスコアリングした全ニワトリひな数で黒色ニワトリひな数を割ることによって計算した(表6)。
【0100】
【表6】
(実施例19。導入遺伝子は、メンデルの法則で遺伝する)
βアクチン−neo、βアクチン−GFP、またはcx−GFPの1つを含むように遺伝子改変されたBarred Rock PGCを保有するキメラ雄鶏の交配に由来する黒色子孫を、導入遺伝子の存在について分析した。表7に示すように、導入遺伝子は、PGC子孫の約50%に遺伝し、メンデル性遺伝を示す。
【0101】
【表7】
(実施例20:遺伝子改変PGCを保有するキメラの子孫における導入遺伝子の遍在発現)
βアクチン−GFPがゲノムに安定に組み込まれたPGCを保有するキメラを、野生型雌鶏と交配し、胚をGFPの発現についてスコアリングした。胚中の発現の例を図13に示し、これは、GFPが発生のステージ34(H&H)までのトランスジェニック子孫の全組織中で発現することを示す。より高齢の動物では、凍結切片を使用した組織学的実験のために組織を調製した。1〜2週齢のニワトリひなの膵臓、皮膚、肺、脳、卵巣、腎臓、嚢、十二指腸、胸部、心臓、肝臓、および脾臓由来の組織は、孵化後の発現が動物中に遍在したままであることを証明する(図14)。
【0102】
(実施例21:導入遺伝子を含むHS4をニワトリゲノムのプロモーター領域に挿入する)
HS4を含む構築物がサイレンシングを避けて、選択マーカーの発現を可能とするゲノムの特定領域に優先的に挿入されたかどうかを述べるために、本発明者らはクローン性トランスフェクトされたPGC株で、導入遺伝子挿入部位を確認した。ゲノムDNAを、トランスフェクトされたPGC株から抽出し、導入遺伝子を切断しない制限酵素または一度HS4エレメントを切断する制限酵素のいずれかで消化した。DNAは自己連結されて、大腸菌に形質転換された。細胞をアンピシリンプレートにプレート化し、ゲノム配列隣接ベクターに結合したプラスミドからのamp遺伝子を含むコロニーを単離した。
【0103】
プラスミドを精製し、HS4−構築物がトランスフェクトされた31のPGC株から配列決定した。本発明者らは、BLAT(UCSC Chicken Genome Browser Gateway)およびBLAST(NCBI)探索を行って挿入物の各々のゲノム位置の地図を作成した。注目すべきことに、31のHS4を含む構築物のうちの25は、CpGアイランドに挿入され、そして、それはプロモーター領域(特にハウスキーピング遺伝子領域)の近くで一般に見られる。CpGアイランドでの挿入のうち、遺伝子は、EST(表8)によって定義される既知の遺伝子または新規遺伝子のそれらのほとんど(23/25)と関係していることが分かった。CpGアイランドは、第1エクソンを経て第1イントロンに、数百の塩基対から転写開始点の上流にしばしば拡大し、そして、挿入物はこれらの領域の全てで見られた。偏りは、内因性遺伝子と比較してベクターの転写方向にはなかった。これらの遺伝子の多くは、ハウスキーピング遺伝子(例えば、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、アルデヒドデヒドロゲナーゼ、およびミトコンドリア溶質担体)としての既知の機能に基づき、PGCで発現されると予測される。挿入物のうちの7つは、ESTによって定義されるように、新規遺伝子の中にあった。これらのESTのうちの5つは、生殖腺またはPGCライブラリから当初クローン化され、これらの遺伝子は、また、本発明者らのPGC細胞株でも発現され得ることを示唆した。遺伝子への挿入物のうちの3つは、CpGアイランドにではなく、むしろより遠位のイントロンの中にあった。挿入物のうちの5つは、何らの明白な遺伝子のない領域にあった。これらの挿入物のうちの3つは、LINEまたはサテライト反復の非常に近傍にあった。
【0104】
【表8−1】
【0105】
【表8−2】
(実施例22:phiC31インテグラーゼによる効率的な組み込み)
本発明者らは、phiC31インテグラーゼ系を使用したが、この系は、attB部位とattP部位との間での部位特異的組み換えを触媒して外因性DNAをニワトリのゲノムに挿入する。phiC31 attBとattP部位の間の組み換えは、非可逆的であり、そのため、attB部位を有する環状構築物のゲノムへの挿入は、安定であり、インテグラーゼの継続した存在においてでさえ、ループを形成しない。アフリカツメガエル(Allen and Weeks 2005 Nature Methods 2,975−9.Transgenic Xenopus laevis embryos can be generated using phiC31 integrase)、マウス(Olivaresら、2002 Nature Biotechnology 20,1124−8.Site−specific genomic integration produces therapeutic Factor IX levels in mice;Beltekiら、2003 Nature Biotechnology 21,321−4.Site−specific cassette exchange and germline transmission with mouse ES cells expressing phiC31 integrase)およびヒト細胞(Grothら、2000 Proc Natl Acad Sci USA.97,5995−6000.A phage integrase directs efficient site−specific integration in human cells;Thyagarajanら、2001,Mol Cell Biol.21,3926−34.Site−specific genomic integration in mammalian cells mediated by phagephiC31 integrase)では、phiC31インテグラーゼが、attB含有プラスミドを改変されていないゲノムへの組み込みを調節し、これらの種のゲノムがインテグラーゼによって認識される細菌のattP部位と十分な配列相同性を有する偽attP部位を含むことを示すことが証明された。また、挿入されるプラスミドは、効果的な組み込みのためにattP部位よりもむしろattB部位を保有しなければならないことが示された(Beltekiら、2003;Thyagarajan 2001)。attB部位は、隔離されたHS4β−アクチンEGFP β−アクチンpuro(HS4 BGBP)構築物に付加されて、attB HS4 BGBPをもたらした。図16Bの左のパネルを参照して、この研究において使われるインテグラーゼ構築物は、att−B部位がHS4β−アクチンEGFPβ−アクチンpuro構築物に付加されたatt−B含有プラスミドを含むことが示される。図16Bの右側のパネルを参照して、CAGプロモーター由来細胞中でインテグラーゼを発現するために用いられるプラスミドが示される。インテグラーゼの2つのバージョンが作製され、1つはSV40核局在化シグナルを有するものと、1つはそれを有しないものとである。attB HS4 BGBPとCAG−インテグラーゼプラスミドDNAsは、PGCへの環状プラスミドとして、コトランスフェクションされた。非インテグラーゼの線状化HS4 BGBPと比較して、20ugの線形DNAを有する106個の細胞あたり0.3のコロニーからわずか5ugのDNAを有する106個の細胞あたり5〜10コロニーへのコロニー形成の大きな増加が認められたが、これはDNAにつきコロニーの20倍の増加を表す。インテグラーゼのNLSバージョンは、非NLSバージョンと比較して、わずかに少ないコロニーを産生した。これらのデータは、インテグラーゼがニワトリゲノム中の偽attP部位を認識することができ、そして、それがPGCでの効率的な安定したトランスフェクションのために使うことができることを示唆した。
【0106】
(実施例23:インテグラーゼクローンのための挿入部位の同定)
インテグラーゼとattBを含むプラスミドを用いる安定したトランスフェクション効率の増加は、ニワトリゲノムがphiC31インテグラーゼにより認識することができる偽attP部位を含むことを示唆した。attB HS4 BGBPプラスミドが、ベクターのランダム破壊によってではなく、インテグラーゼ媒介反応を経由して組み込まれたことを証明するために、5つの独立したPGCクローンからのゲノムDNAのサザンブロット分析が実行され、そして、無傷の全長導入遺伝子が各々のケースで観察され、attB部位(データは示されていない)経由の組み込みと一致する構造を有した。ヌクレオチドレベルで組み換えブレークポイントをさらに特徴づけるために、偽attP部位を同定するために、および挿入の染色体位置を特定するために、本発明者らのインテグラーゼPGC株のうちの12でのベクターとゲノム挿入部位との間の連結点が、クローン化されて配列決定された。プラスミドレスキューは、非インテグラーゼ株のために上記のように実行された。本発明者らは、連結点フラグメントのクローン化効率での劇的な減少を認めた;得られた大腸菌のコロニーの数は、非インテグラーゼPGC株についての形質転換につき平均69のコロニーから、形質転換あたりインテグラーゼ媒介PGC株からの3.1コロニーとなった。これの理由は不明であるが、1つの可能性は、インテグラーゼクローン(下記参照)に隣接する反復DNAを制限酵素で消化するのがより困難であったからである。プラスミドDNAは、コロニーから精製され、配列決定され、そして、attLと隣接配列が決定された(下記の表9を参照)。ゲノムDNAは、導入遺伝子内で切断する酵素で消化されたので、ベクターバックボーン上のamp遺伝子に隣接した隣接ゲノムDNAだけは、この方法で同定することができた;導入遺伝子挿入の他方の部位の隣接DNAは、分析しなかった。
【0107】
図17を参照して、インテグラーゼ媒介トランスフェクションに由来するPGCクローンでのattBプラスミドとゲノム配列の間の連結点を示す。一番上のラインは、コアTTGを有する野生型attB部位であって、該コアは、通常、下線が付された組み換えクロスオーバー点であり(配列番号9)、その下には、インテグラーゼ媒介挿入由来のattL配列が示される(配列番号10〜21)。スプライシングが、プラスミドのattBとゲノムの偽attP部位との間の何処で起きたかについて決定するために、PGC配列をattB(配列番号9)と比較した。PGC配列において、プラスミドによって与えられたattB配列は小文字で、そして、ゲノム偽attP配列は大文字および太字で表わしている。
【0108】
プラスミド上でattB配列のおよそ半分から成るattL配列は、ゲノム内で偽attP部位と結合した各々のケースで見られ、インテグラーゼが組み換え反応を媒介したことを示唆した。プラスミド由来のattBとゲノムの間の組み換えは、正確でなくて、通常attBのコアTTGヌクレオチドで起こらなかった。BLATとBLAST探索により挿入物の各々のゲノム位置の地図を作成した。注目すべきことに、マップ化することができた11の挿入のうち7つは、反復DNA配列で起きた。RepeatMasker Web Server(Institute for Systems Biology)とClustalW配列アラインメントを使って、反復が分析され、配列が先に確認されたPO41反復(Wickerら)として分類できることが判明した。図18Aに関して、PGC挿入部位からのPO41様反復とPO41コンセンサス配列(配列番号29)の配列比較が示される。PO41様反復に挿入されたクローンの全てからのPGC隣接配列は、互いにPO41コンセンサス(Wickerら、2004)を用いて配列した。始めから20のヌクレオチドは、ベクター(上記アラインメントに示されるように)によって付与されたattB配列であり、そして、各々のクローンからのゲノム隣接配列が続いた。その配列の半分より多くが共有されるヌクレオチドは、黒のボックスで囲ってある。配列アラインメントは、PGC株の2つ(2−47 配列番号23および18−5−36−2 配列番号22)が同じゲノム部位でattB HS4 BGBPの挿入物を保有することを示した。attB偽attP連結点のヌクレオチド配列が2つの間で異なるという事実で示されるように、2つの挿入は独立している。もう一つの配列(18−3−12 配列番号24)は、20bp挿入物を除いて最初の2つと同じであった。挿入物において確認されたPO41反復のいずれもが、コンセンサス配列の正確なコピーではなく、PO41コンセンサスと挿入部位反復の間の配列相同性のレベルは、47%(18−3−43)から77%(1−30)のヌクレオチド相同性の範囲であった。図18Bに関して、100bpのPO41コンセンサス反復の100bpのattPとの配列比較は、約46%の配列相同性を示したが、これはヒト細胞(Thyagarajan 2001)の偽attP部位について認められたものよりも高かった。PO41反復は、ゲノムで259の位置に存在すると考えられ(Wickerら)、各位置は、数キロベースの41bp繰り返し単位からなる。隣接ゲノムフラグメントのいくつかは、10〜12kbのサイズ範囲であった;これらのフラグメントの2つの末端が配列決定されたとき、両方とも反復的であったが、このことは、繰り返しの全体的なサイズが大きかったことを示唆した。このように、PO41配列は、phiC31インテグラーゼに対するニワトリゲノムで大きな、好ましい標的を意味する。
【0109】
残りの4つのインテグラーゼ媒介挿入物は、固有のDNA配列の中にあった。配列のうちの1つ(19−1−1 配列番号12)は、21番染色体の固有配列の遺伝子間領域にあり、1つ(1−41 配列番号10)は、5番染色体のWilm腫瘍(WT1)遺伝子のニワトリ相同分子種のプロモーター領域に挿入された。1つの配列(5−7 配列番号11)は、1番染色体の複数の場所にあり、局所的遺伝子ファミリーまたは低コピー数反復を表わすことができた。1つの配列(18−4−11 配列番号13)は、ニワトリゲノムまたは一般的な「非重複データベース」での既存配列と一致しなかったが、このように、まだ配列決定されていないゲノムの領域にあるようである。1つの最後の挿入物(2−38 配列番号21)は、偽attP部位からなる非常に短い配列のみを与え、これはデータベースで同定することができなかった。
【0110】
【表9】
(実施例23:遺伝子改変染色体の同定)
本発明者らは、位置を割り当てることができた固有配列への挿入物を含んだそれらの株について、挿入が起きた染色体に注目した。PGCへの28の独立した挿入の間で、ニワトリ核型の38の染色体のうちから、本発明者らは17の異なる染色体(表8および9)への挿入を認めた。挿入物のおよそ半分は、マクロ染色体の中にあり(染色体1〜6;13の挿入)、そして、残り半分は、マイクロ染色体(染色体7〜38;14の挿入)の中にあり、1つの挿入物は、Z染色体の中である。マクロ染色体とマイクロ染色体への挿入の比率は、ゲノムに対するそれらの物理的な寄与に比例し、組み換えに対する領域の偏りがないことを示す。
【0111】
(実施例24:遺伝子ターゲティング)
ターゲティングベクターは、相同組み換えにより内因性遺伝子座に挿入する場合、免疫グロブリン軽鎖遺伝子のJ領域およびC領域をHS4 ERNI−puro選択カセットと置き換えるように設計された(図19)。上記したように、ERNIプロモーター(ピューロマイシンカセットを引き起こす)は、初期胚で特異的に発現され(Acloqueら、2001、上記)、そして、他のプロモーターに類似した頻度でPGCにおいて薬物耐性コロニーを産出することが期待された。図20を参照して、一番上のラインは、ニワトリIgL遺伝子(IgL KO5)のためのターゲティングベクターの図である。IgL遺伝子の2.3kB)のJ−C領域を3.1kbのHS4 ERNI−puro選択マーカー(IおよびHS4インスレーターとして示される)と置き換えるように設計される。2つの相同性アームは、2.3kBと6.3kBの長さである。3’末端で、β−アクチンEGFP遺伝子は、標的クローンのために緑色蛍光を富化するためのpuro耐性クローンのスクリーニングを可能にする。末端の点線は、pKOベクターバックボーン(Stratagene)である。中央のラインは、単一の可変領域遺伝子(V)、連結領域遺伝子(J)および定常領域遺伝子(C)を有するIgL遺伝子の生殖細胞系構成の野生型対立遺伝子の図である。標的クローンのサザン分析に使用される制限部位(S、SacI;B、BstEII)が図示され、そして、野生型フラグメントサイズが二重の矢尻でその下に示される。下方のライン上は、変異体対立遺伝子の構造であり、そこでは、JとC領域が欠失しており、HS4 ERNI−puroで置換されている。制限酵素地図が示され、その下に変異体フラグメントのサイズを示す。サザン分析において使われるプローブは両方とも、ターゲティングベクターの外側にあり、それらの位置を示す。
【0112】
4つのクローンが、合計1.05×108個の細胞と線状化DNAの210μgを用いて21のトランスフェクションから単離された。クローンのうちの2つは、GFPを発現し、それらがゲノムでランダムに組み込まれてGFP遺伝子を保持したことを示す。組みこみの両側からのプローブを用いる4つのクローンのサザンブロット分析により、緑色でないクローンの1つ(クローン2)は、標的変異に対してヘテロ接合性であることを示した。図20に関して、4つのピューロマイシン耐性クローンがサザン分析された。クローン1と2は緑色ではなく、その一方、クローン3と4は、GFPを発現した。左のパネルでは、PGCクローンからのゲノムDNAをSacIで消化し、プローブAとハイブリダイズされてIgL遺伝子の5’側でターゲティング分析をした。右のパネルでは、DNAをBstEIIで消化し、IgL遺伝子の3’側のターゲティングのためにプローブBとハイブリダイズされた。クローン2は、ヘテロ接合性の、標的クローンに関して予想サイズのフラグメントを示した。
【0113】
(実施例25:J−Cノックアウトベクターを保有するG0キメラ)
実施例24で記載されたJ−Cノックアウトを保有するPGCを、ステージ13〜15(H&H)白色レグホンレシピエント胚の脈管構造に注入した。発現型的に、孵化したひなは、白色レグホンに似ていた。雄は性的に成熟するまで飼育し、精液が腹部マッサージによって集められた。そして、
【0114】
【化3】
を用いたPCR分析が、図21に示される。図21を参照して、予想される248bpサイズの増幅されたDNAは、G0キメラの少なくとも2つからの精液に存在したが、これは遺伝子的に改変された始原生殖細胞が生殖細胞系列に入ったことを示している。
【0115】
(実施例26:β−アクチン−neoのアルデヒドデヒドロゲナーゼ遺伝子座への挿入)
親細胞株13からのPGCを成長させ、400μl中の5×106個の細胞を、198Vと900μFの指数関数的減衰パルスを使用して、線状化β−アクチン−neo構築物でエレクトロポレーションし、48−1cm2ウェルにプレート化して単一のクローンを得た。細胞は、ネオマイシンの存在下で成長させてネオマイシン耐性クローンをもたらし、これは拡大するために新しいウェルに移した。細胞をサザン分析により分析して導入遺伝子の安定な組み込みを確立し、配列決定により、構築物がアルデヒドデヒドロゲナーゼ遺伝子(アルデヒド代謝に関与する酵素)のプロモーター領域で19番染色体に組み込まれた。
【0116】
β−アクチン−neo構築物を保有するPGCを成長させ、ステージ13〜16(H&H)のレシピエント胚に注入した。胚を孵化させ、そして、4羽の雄鶏を性的に成熟するまで成長させ、生殖細胞系列伝達について試験した。雄鶏の生殖細胞系列伝達率は、それぞれ0、0、0.5、および0.5%であった。これらの雄鶏のうちの1羽からのヘテロ接合性の子孫を性的に成熟するまで成長させ、交配させてホモ接合性の子孫を得た。
【0117】
【表10】
ヘテロ接合性雄鶏と雌鶏の5組の繁殖ペアは、合計73羽のひなを生産し、それらはBN導入遺伝子の存在について評価された。合計10羽(14%)のひなが野生型であり、46羽(63%)のひながヘテロ接合性であり、そして、17羽(23%)のひながホモ接合性であった(表10)。この分布は、メンデル分離(カイ二乗=6.55)から予想される18.25/36.5/18.25の分布と、有意差(P>0.01)はなかった。孵化時期の近くで死んだひなの割合は、遺伝子型の間で同じであった。これらの結果は、BN導入遺伝子の挿入が致死性表現型を誘発しなかったことを示す。
【0118】
ホモ接合の雄鶏は、性的に成熟するまで成長させて繁殖力を試験した。5羽の雄鶏が野生型雌鶏と繁殖させ、繁殖力、胚の死亡および孵化率が計算された(表11)。2羽の雄鶏の繁殖力は、比較的低かったが、これらの鳥の精液産生は弱く、したがって、授精あたりの精子の数も低かった。鳥のうちの2羽の繁殖力が非常に良好(>90%)であり、そして、1羽の鳥の繁殖力は中程度であった。すべての鳥からの受精卵の孵化率は、正常範囲内であった。合わせて考えると、これらのデータは、BN/BN鳥の繁殖機能が正常であったことを示す。
【0119】
【表11】
BN導入遺伝子が、アルデヒドデヒドロゲナーゼ遺伝子に組み込まれ、何らの効果もホモ接合性の鳥の生存率に関して見られなかったので、本発明者らはアルデヒドデヒドロゲナーゼメッセージの転写を評価した。
【0120】
mRNAは、Oligotex Direct mRNAキット(Qiagen)を使用して、2羽のBN/BNホモ接合性の鳥、1羽のBN/+ヘテロ接合性の鳥、および1羽の野生型の鳥(+/+)の血から調製された。それから、一本鎖cDNA合成のためのThermo−Script RT−PCRシステム(Invirogen)を使用して、cDNAを5mlのRNAから合成した。1mlのcDNAが、以下のプライマーを使用するその後のPCR反応に使用された:
【0121】
【化4】
ALDH3A2−3とA2−4プライマー(配列番号34、35)は、アルデヒドデヒドロゲナーゼ3のファミリーメンバーA2転写用の544bpと680bpのPCR産物を増幅するために使用した。アクチンRT−1とRT−2プライマー(配列番号36、37)をアクチン転写用の597bpのPCR産物を増幅するのに用いた。図22に示されるように、アルデヒドデヒドロゲナーゼ3のファミリーメンバーA2転写物が、ヘテロ接合性(BN/+)の鳥および野生型の鳥(+/+)で検出されたが、ホモ接合性BN鳥(BN/BN)では、検出されず、これは、βアクチン−neo導入遺伝子の挿入が、形態学的な表現型を有しないアルデヒドデヒドロゲナーゼ3遺伝子の挿入性ノックアウトを引き起こしたことを示している。
【0122】
プライマーが、アルデヒドデヒドロゲナーゼ3のファミリーメンバーA2転写物を増幅したという確証は、544bpと680bpのPCR産物の配列決定により得られた。544bp産物は、680bpのPCR産物内に全部含まれ、それは、また、エクソン5と6の間で136bpのスプライシングされていないイントロンを含む(図23)。これらの配列を発表されたニワトリゲノムのそれらと比較することにより、それらが同一であることを示した。
【0123】
(実施例27:β−アクチン−gfp−bβ−アクチン−puroの未知ESTへの挿入)
親の細胞株54からのPGCを成長させ、そして、5×106個の細胞を、線状化β−アクチン−GFP−β−アクチン−puro構築物の20μgでエレクトロポレーションし、そして、48−1cm2のウェルにプレート化して単一クローンを得た。細胞は、ピューロマイシンの存在下で成長させてピューロマイシン耐性クローンのみの成長をもたらした。耐性クローンを拡大するために新しいウェルに移した。細胞は、サザンブロット分析により分析して導入遺伝子の安定な組み込みを確立し、配列決定により、構築物が新規遺伝子(EST C0769951)の8番染色体に組み込まれた。
【0124】
PGC構築物を成長させ、ステージ13〜16(H)Hレシピエント胚の脈管構造に注入した。胚を孵化させ、8羽の雄鶏を性的に成熟するまで成長させ、生殖細胞系伝達について試験した。雄鶏の生殖細胞系列伝達率は、それぞれ0、1、11、12、13、16、28および92%であった。これらの雄鶏からのヘテロ接合性の子孫を、性的に成熟するまで成長させ、ホモ接合性の子孫を得るために交配させた(表12)。
【0125】
【表12】
ヘテロ接合性雄鶏と雌鶏の8組の繁殖ペアは、合計298羽のひなを産み、それらはBGBP導入遺伝子の存在について評価された。合計90羽(30%)のひなが野生型であり、128羽(46%)のひながヘテロ接合性であり、そして、80羽(25%)のひながホモ接合性であった。これらの結果は、25%の野生型子孫、50%のヘテロ接合性子孫、および25%のホモ接合性子孫の予想と一致し、このことは、導入遺伝子がメンデル機能で引き継がれたことを示す。大多数のホモ接合性子孫は、6週令までに孵化時に、または孵化時期の近くで全死亡のうちの95%が死亡した。これらの結果は、BGBP導入遺伝子の挿入が生存に必須の遺伝子機能的ノックアウトをもたらしたことを示す。
【0126】
この問題を回避するために、コントロールされていないランダムな挿入よりもむしろ予め定められた位置に導入遺伝子を挿入することが有利である。導入遺伝子をゲノム中の既知の位置に挿入する能力は、ランダムな挿入よりも更なる潜在的な利点を有する。タンパク質産物の過剰発現の目的で挿入された導入遺伝子は、発現の高水準を可能とすることが公知の、そして異質染色質の侵害によるサイレンシングを受けない場所に挿入することができる。さらにまた、導入遺伝子の挿入は、ヘテロ接合性状態であるかホモ接合性状態のいずれかでの動物または細胞株に有害な影響を引き起こさないことが予測され得る。したがって、多数の異なるランダム挿入をスクリーニングして高水準の発現を有するものを見つけることは不必要となり、そして、それは重要な内因性遺伝子を妨げない。
【0127】
(実施例28。条件つきのアポトーシス誘導遺伝子(Reaper)を保有するトランスジェニック鳥の作出)。
【0128】
Reaper導入遺伝子の設計
Reaper導入遺伝子(loxP−stop−loxP−Reaper構築物)を以下のようにして生成した。Reaper cDNAをD.melanogaster胚のポリ(A)+RNAおよびREAPER F1
(CAC CAG AAC AAA GTG AAC GA 配列番号38)プライマーおよびReaper F2(TGT TTG ACA AAA AAT TGA TGC)プライマー(配列番号39)を用いてRT−PCRによりクローン化した。Reaper cDNAは、CX−Reaper構築物を生成するCX−バックボーンのRI部位に挿入された。KpnI部位を、部位特異的変異により開始コドンのReaper cDNAの3’側に挿入した。pBS302(Gibco/BRL)からの1.5kbのloxP−stop−loxPカセットを、KpnI部位でクローン化してCX−LoxP−stop−loxP−Reaperを生成した。loxP−stop−loxP−Reaperフラグメントを、RIとNotI部位を用いてpENTRB2クローン(Invitrogen)に挿入した。次いで、loxP−stop−loxP−ReaperフラグメントをUbC−loxP−stop−loxP−Reaper構築物を作るpLenti6/UbC/V5−DEST(Invitrogen社のpLenti Gateway ベクター)に組み換えた。
【0129】
ViraPowerレンチウイルス発現システムを用いるトランスジェニック鳥の生産
loxP−stop−loxP−Reaper導入遺伝子を保有するレンチウイルスを作出するために、ViraPowerレンチウイルス発現システム(Invitrogen)を使用し、4.8×109cfu/mlまでの高力価が生成された。ウイルス生産のために、293T細胞が、UbC−loxP−stop−loxP−Reaper構築物とプラスミドをコードするVSV−Gを含むvirapower packing mixで、リポフェクタミンを使用してコトランスフェクションされた。ウイルス上澄液をトランスフェクションの24時間後に回収し、遠心分離によって濃縮した。ウイルス力価は、HT1080細胞をウイルス上澄みで形質導入することにより測定した。高力価を得て高い形質導入と生殖細胞系列伝達効率を確実とした。
【0130】
ニワトリ胚をウイルスに感染させるために、濃縮ウイルス溶液の1.5ulを、ステージX胚の胚下腔に注入した。37.5〜38℃で3日間インキュベーションした後、胚を別の代理棚に移し、孵化するまで37.5〜38℃、50%湿度でインキュベーションした。合計398の胚に、UbC−loxP−stop−loxP−Reaper導入遺伝子を保有するウイルスを注入した。155羽の鳥が孵化し、導入遺伝子の存在および性別について、鶏冠組織から分離されたDNAのPCRにより分析した。13羽の雄のひなは、UbC−loxP−stop−loxP−Reaper導入遺伝子に対して陽性であった。また、それらのうちの10羽は、精液から分離されたDNAのPCRにより、UbC−loxP−stop−loxP−Reaper導入遺伝子に対して陽性であった。3羽の雄(6−03、6−51および9−51のG0ファウンダー雄)は、導入遺伝子を次世代に伝達した。6−03、6−51および9−51についての伝達頻度は、それぞれ、0.32%、0.26%および0.16%であった(表13)。
【0131】
【表13】
G0ファウンダー雄(6−03、6−51および9−51、異なる挿入物を保有)は、繁殖用雌鶏まで飼育された。そして、それらのG1子孫は、導入遺伝子の存在と導入遺伝子の組み込み部位について分析された。個々の鳥からのゲノムDNAをサザンブロット分析により分析した。ゲノムサンプルとUbC−loxP−stop−loxP−Reaperベクター(対照)をSphIまたはBc1Iで消化した。消化されたDNAを0.7%アガロースゲルで分離し、ナイロン膜にブロッティングし、放射能標識Reaper特異的プローブで探索して連結点フラグメントを同定した。図24に示すように、ハイブリダイジング・ゲノム・フラグメントのサイズは、対照よりも大きく、これは導入遺伝子が組み込まれたことを示す。6−03、6−51および9−51株のためのハイブリダイジング・ゲノム・フラグメントは、異なるサイズを有したが、このことは6−03、6−51および9−51が独立した株であることを示す。
【0132】
(実施例29。Cre−組み換え酵素を保有するニワトリの作出)
Cre導入遺伝子の設計と組み立て
ニワトリでCre組み換え酵素を発現するために、Cre遺伝子がニワトリERNIプロモーターの転写調節の下に置かれた導入遺伝子が作出された。ERNI遺伝子(cENS−1としても知られている)は、初期ニワトリ胚(ほぼステージX、すなわち、新たに産まれた卵の段階で、胚が原腸形成前の細胞未分化シートであるとき)および神経組織で発現される。このように、Cre導入遺伝子は、初期胚で発現されるように設計され、そこでは、それがloxP−Reaper導入遺伝子のloxP部位またはゲノムに配置された他のloxP含有導入遺伝子の組み換えを触媒する。Creは初期段階で発現されるので、得られた発育するニワトリは、組み換えられた導入遺伝子を体の全胚葉と全細胞に保有しているはずである。
【0133】
Cre導入遺伝子をニワトリ生殖細胞系列に導入するために、レンチウイルス・ベクター・アプローチが取られた。レンチウイルス導入遺伝子は、Invitrogen pLenti6−V5 Destレンチウイルスベクターに基づいて構築された。pLenti6−V5 Destのレンチウイルスベクター要素は、ERNI−Cre遺伝子と結合されてpLenti−ERNI−Cre構築物を生成する。レンチウイルスが産生されて、初期胚を感染させるために使用され、そこでは、それは安定してゲノムに組み込まれた。pLenti−ERNI−Cre導入遺伝子を保有する約20羽のトランスジェニックファウンダー鳥が作出された。
【0134】
ニワトリERNIプロモーターは、以下のプライマーを用いてPCR増幅された。
【0135】
【化5】
822bpのPCR産物は、pGEM T−easy(Promega)にクローン化し、配列決定した。次いで、ERNIプロモーターをSacII(その後、T4 DNAポリメラーゼで平滑末端化する)とSpeIで消化してベクターから放出した。CMVプロモーターをClaI(その後、T4 DNAポリメラーゼで平滑末端化する)とSpeIで消化してレンチウイルスベクターpLenti6 V5−Dest(Invitrogen)から除去した。次いで、ERNIプロモーターをpLenti6 V5−Destレンチウイルス・ベクター・バックボーンにライゲーションし、その中のERNIプロモーターをCMVプロモーターと置き換えて、pLenti−ERNIをもたらした。
【0136】
Creの遺伝子は、N−末端とクローニング(5’末端でのBglIIおよび3’末端でのEcoRI)のための便利な制限部位にあるSV40核局在配列により、以下のプライマーを用いてPCR増幅された。
【0137】
【化6】
1040bpのPCR産物は、BglIIとEcoRIとで消化し、ゲルを精製した。シャトルベクターpENTR 2B(Invitrogen)をBamHIとEcoRIで消化し、ベクターバックボーンをゲル精製した。CrePCR産物をpENTR 2Bにライゲーションし、クローンを得た。Cre遺伝子が予想されたものであり、PCR増幅の間、何らの変異も獲得しなかったことを決定するために、クローンの配列決定がされた。
【0138】
Cre遺伝子をpLenti−ERNI構築物に再結合して、ERNIプロモーターの転写調節の下にそれを配置するために、LRクロナーゼ反応(Invitrogen)が、Cre遺伝子源としてのpENTR 2B−CreクローンおよびレシピエントとしてのpLenti−ERNIベクターを使用して実行された。最終的な構築物(pLenti−ERNI−Cre(8408bp))がこのようにして得られ、そして、それはERNI−Cre導入遺伝子を保有するレンチウイルスを産生するのに用いられた。
【0139】
pLenti−ERNI−Cre導入遺伝子を保有するトランスジェニック鳥の生産
pLenti−ERNI−Creレンチウイルスが293FT細胞で産生された。レンチウイルスを生産するために293FT細胞へのトランスフェクションごとに、75%集密度の800万個の293FT細胞が、リポフェクタミン試薬(Invitrogen)を使用して環状pLenti−ERNI−CreプラスミドDNAの3ugでトランスフェクションされた。Virapower packaging mix(Invitrogen)が、293FT細胞中でレンチウイルスを作るのに必要なウイルスタンパク質を発現するために使用された。レンチウイルスを含む細胞培養上澄みは、トランスフェクションの2日後に集められ、細胞破片を除去し、レンチウイルス粒子を48,000g、90分間の遠心分離によって濃縮した。ウイルスペレットを培養上澄みの開始容量の1/200に再懸濁し、40ulの分割量を−80℃で凍結した。
【0140】
レンチウイルスストックの各バッチの感染力価は、ウイルスストック10−4〜10−8を段階希釈し、ポリブレンの1ulをHT1080の培養物に添加することによりHT1080細胞で測定された。レンチウイルスの添加2日後に、ブラスチシジン選択(5ug/ml)を開始した。細胞がブラスチシジン毒性で死亡するので、培養基は2日おきに取り換えた。ブラスチシジン選択を開始して10日後に、コロニーはクリスタルバイオレットで染色し、計数し、そして、力価が算出された。108〜2×109の力価を得た。ニワトリ胚をウイルスで感染させるために、濃縮ウイルス溶液1.5ulをステージX胚の胚下腔に注入した。37.5〜38℃で3日間インキュベーションした後、胚を別の代理棚に移し、37.5〜38℃、50%湿度で孵化するまでインキュベーションした。合計310の胚に、Erni−Cre導入遺伝子を保有するウイルスを注入した。96羽のひなが孵化し、導入遺伝子の存在および性別について、鶏冠組織から分離されたDNAのPCRにより分析された。8羽の雄のひなは、Erni−Cre導入遺伝子に対して陽性であった。また、13羽の雄は、精液から分離されたDNAのPCRにより、Erni−Cre導入遺伝子に対して陽性であった。試験された6羽の雄のうち4羽は、Erni−Cre導入遺伝子を次世代に伝達した。Erni−Cre G0雄鶏についての生殖細胞系列伝達頻度は、0.24〜1.32%の間で変動した(表14)。
【0141】
【表14】
pLenti−ERNI−Cre導入遺伝子を保有するトランスジェニックニワトリ
pLenti−ERNI−Cre導入遺伝子がニワトリゲノムに完全に組み込まれたことを実証するために、サザンブロット分析を使用した。Cre導入遺伝子を保有することがPCRによって最初に同定されたニワトリからのゲノムDNAは、全長の完全な導入遺伝子が観察されるように、抽出し、ウイルスの5’および3’LTR配列を切断する酵素(BglII)で消化した。導入遺伝子の異なる、独立した挿入を有する鳥が、分析のために選択された。ゲノムDNAをBglII酵素で消化し、ナイロン膜に移し、放射能標識Cre遺伝子で探索した。図25は、8つのERNI−Cre株の代表的なサザンブロティングを示す。試験された11の株のうち、10株は予想された4.6kbのERNI−Cre導入遺伝子バンドを含み、ゲノムに完全に組み込まれたことを示した。1つの株は、より小さなバンドを示し、導入遺伝子の欠失または再構成を示した。
【0142】
(実施例30。導入遺伝子の部位特異的組み込みを可能とする細胞株の確立)
ホストゲノムの予め定められた位置に外部DNAを挿入するためには、2つの主要な方法がある:相同組み込み(遺伝子ターゲティング)またはattPなどの認識部位への部位特異的組み換え。相同組み換えは、大部分の脊椎動物の細胞型では効率が悪く、通常、多くのクローンを選別して、望ましい挿入を有する1つまたは少数のクローンを同定することが要求される。部位特異的組み換えは、多数のクローンを選別することなく外部のDNAを予め定められた部位に挿入するために使用することができる、高再現性で非常に効率的なプロセスである。部位特異的挿入は、attB含有構築物をゲノム中の固有のattP部位または偽attP部位に挿入するためのphiC31インテグラーゼの使用に依存する。ゲノムに配置された真正のattP部位をドッキング部位として使うために、attP部位は、好ましい、予め定められた位置に配置されなければならない。attP部位は、ランダム挿入または相同組み換えによってゲノムの中のそのような好ましい位置に入れられる。認識部位が、ランダム挿入によってゲノムに入れられるならば、挿入位置は重要な遺伝子が破壊されなかったことを確実とするために確認しなければならない。次に、ゲノムに入れられた認識部位は、phiC31インテグラーゼを用いる導入遺伝子の挿入のための「ドッキング部位」として用いられる。
【0143】
特にドッキング部位でのインテグラーゼ媒介導入遺伝子挿入のために選択するために、選択マーカーシステムは、正しい挿入を選択するのに使用される。attP部位が薬物選択マーカー(例えば、ピューロマイシン耐性遺伝子)にプロモーターなしで隣接するように、ドッキング部位は設計される。ドッキング部位を保有する細胞は、このようにピューロマイシンを用いた薬物選択に感受性である。ドッキング部位に挿入される導入遺伝子は、そのattB部位に隣接したプロモーターを含むが、選択マーカーを含まない。導入遺伝子のドッキング部位への挿入は、選択マーカーの上流にプロモーターを置き、そして、その転写を活性化し、ピューロマイシン耐性を与える。ゲノムの他の位置への導入遺伝子の挿入は、薬物耐性に至らず、そのような挿入は、薬物選択によって除かれる。
【0144】
attPドッキング部位構築物は、プロモーターのない薬物選択マーカー(例えば、ピューロマイシン耐性など)に隣接して置かれたattP部位から成る。ピューロマイシン耐性遺伝子は、発現されないので、別の選択マーカー(例えば、ネオマイシン選択マーカーを引き起こすβ−アクチンプロモーターなど)もまた含まれなければならない。EGFP遺伝子を含むこともできる。これらの要素の隣接する各側は、近隣のクロマチンから構築物を隔離するためのβ−グロビンHS4インスレーターの2つのコピーである。構築物のβ−アクチンneoとEGFP部分の将来的な除去のために、loxP部位はこれらの要素に隣接して置かれる。構築物のこれらの部分の全ては、ゲノムへの真正なattP部位への送達のための伝達手段として用いられる。DNAエレメントの順序は、以下の通りである:HS4;attP;プロモーターのないピューロマイシン耐性遺伝子;loxP;β−アクチンまたはCAGプロモーター;EGFP;β−アクチンまたはCAGプロモーター;ネオマイシン耐性遺伝子;HS4;プラスミドバックボーン(pBluescript)。構築物は、線状化され、培養PGCにトランスフェクションされ、そして、薬物耐性コロニーを得る。これらのコロニーは、さらなる分析のために拡大される。
【0145】
ゲノムでのドッキング部位が、どこに位置しているかを知ることは重要であるので、各々のクローンのドッキング部位構築物の染色体挿入部位が決定される。隣接ゲノムDNAを得て、配列決定し、ニワトリ・ゲノム・データベースと比較する。大部分のクローンがCpGアイランドに挿入されるのが分かり、それは通常、遺伝子、特にハウスキーピング遺伝子または遍在遺伝子のプロモーター領域と関連したゲノム領域である。さらにまた、大部分の挿入物は、遺伝子のプロモーター領域、遺伝子の第1エクソン、または第1イントロンにあることが決定される。このように、挿入の多くは、これらの遺伝子の機能を損なうと予測される(実施例29;表8を参照)。これらの遺伝子は、発現配列タグ(EST)配列に基づく既知の遺伝子か、あるいは予測された遺伝子である。好ましい細胞株は、DOC1またはDOC33などの遺伝子を破壊しないように見える株である。
【0146】
ドッキング部位のCAG−EGFP−CAG−neo部分は、Cre−lox組み換えによって欠失させることができる。Cre−lox組み換えの後、ドッキング部位に残るすべては、HS4インスレーター、attP部位、およびプロモーターのないpuro遺伝子である。これは、細胞とトランスジェニックニワトリで生産される外部タンパク質(これは、特にCAGまたはβ−アクチンなどの強力プロモーターから偏在的に発現される場合、ニワトリの健康に影響を及ぼす場合がある)の数を減少させる。Cre−lox組み換えは、環状Cre発現ベクターによるドッキング部位クローンの一過性のトランスフェクションによって、細胞培養物中で行うことができる。数日後に、培養は、CAG−EGFP遺伝子の切り出しに起因するEGFP発現の喪失に関してモニタリングされる。細胞の約50%は、もはやEGFPを発現せず、そして、これらの細胞は、それらを精製するためにフローサイトメトリで分類することができる(図26)。
【0147】
あるいは、Cre組み換えは、ドッキング部位構築物を保有するトランスジェニックニワトリをERNI−Cre導入遺伝子を保有するニワトリ(Cre4鳥)と交配させることにより行うことができる。
【0148】
これらのドッキング部位組み込みを有するトランスジェニックニワトリが作出される場合、得られるホモ接合性ニワトリは、遺伝子に挿入物を有するにもかかわらず、健康で、繁殖力がある。そのような株の一例は、TP85株(BNとも呼ばれる;実施例26を参照)であり、それは、ニワトリ19番染色体上でアルデヒドデヒドロゲナーゼ3ファミリーメンバーA2をコードする遺伝子への挿入である。構築物は、HS4−遮断β−アクチンネオ導入遺伝子であり、遺伝子の転写開始点のおよそ10bp以内のプロモーター領域に挿入された。挿入物に対してホモ接合性の鳥は、健康で、繁殖力がある。
【0149】
しかし、場合によっては、挿入は悪影響(例えば、発育障害、解剖学的または生理学的障害、不妊など)もたらす場合がある。実施例27を参照されたい。したがって、動物で何らの悪影響も引き起こさないことを確認するためにランダムに挿入されたドッキング部位挿入を確認することは重要である。
【0150】
(実施例31:発現DNAの10.5kb超からなるドッキング細胞株の確立)
Doc−1細胞株は、HS4;attP;プロモーターのないピューロマイシン耐性遺伝子;loxP;CAGプロモーター;EGFP;CAGプロモーター;ネオマイシン耐性遺伝子;HS4(実施例29を参照)からなる導入遺伝子を保有する。構築物は、線状化され、培養PGCにトランスフェクションされて、薬物耐性コロニーが得られた。これらのコロニーは、さらなる分析のために拡大された。Doc−1細胞株をレシピエント胚に注入し、G0キメラひなを孵化させた。雄鶏を性的に成熟するまで成長させ、それらの精子を、GFP陽性精液の存在についてのFACS分析によって分析した。2羽の雄鶏は繁殖のために選択され、その生殖細胞系列伝達率は、3%と8%であった。血液がGFP陽性のひなから採取され、サザン分析によって分析されてドッキング部位の存在を確認した。
【0151】
(実施例32:ドッキング部位の標的挿入)
遺伝子のCpGアイランドへの真正attP部位の配置を回避するために、遺伝子ターゲティングを使用してattP部位をニワトリゲノム中の予め定められた部位に配置することは可能である。ゲノムの領域が選択され、相同アームが、正確性の高いPCRまたはプラスミドベクター中でのゲノムクローニングによって調製され、ターゲティングベクターがPGCクローンのトランスフェクションまたは選択のための選択マーカーを用いて組み立てられる。
【0152】
(実施例33:ドッキング部位を保有する細胞株への部位特異的挿入)
ドッキング部位への挿入のために、attB部位を含む環状構築物が構築される。attB部位含有構築物は、上記実施例で使用されたものと類似しており、重要な違いは、選択マーカーがないことである。その代わりに、プロモーター(例えば、ERNIプロモーターなど)は、ドッキング部位への組み込みの際に、プロモーターがドッキング部位での選択マーカーの発現を引き起こす位置に配置されるように、attB部位に隣接して配置される。
【0153】
プロモーターattBバックボーンは、attP−プロモーターのないpuroドッキング部位への挿入のために選択することに使用される。attB構築物は、例えば、抗体などの医薬タンパク質をコードする遺伝子の発現を引き起こす組織特異的プロモーターなどの関心のある他の遺伝子を保有する。
【0154】
ドッキング部位の機能性およびドッキング部位での組み込み効率は、ドッキング部位を含むPGC細胞株で試験された。5×106個の細胞をErni−attBを含む構築物の0.5μgとインテグラーゼを発現する環状構築物の0.5μgでコトランスフェクションした。エレクトロポレーション後、細胞を48−1cm2ウェルに再プレート化して単一コロニーを得た。48ウェルのうち42ウェルで、コロニーが認められた。
【0155】
ERNI−attB構築物が、attPでのattBの組み換えによって生み出されるattL部位の増幅によってドッキング部位に正しく組み込まれたことをPCRは明らかにした。1つのプライマーは、ERNI配列中にあり、1つのプライマーは、ピューロマイシン配列中にあり、そして、ERNIプロモーターが、ピューロマイシン遺伝子の上流に組み込まれた場合にのみ増幅が起こり得る。3つのプライマーセットが使われ、そして、すべてが陽性結果をもたらした:
ERNI−37F+puro−8R 生成物サイズ152bp
ERNI−133F+puro−8R 生成物サイズ248bp
ERNI−342F+puro−83R 生成物サイズ522bp
【0156】
【化7】
DOC2細胞へトランスフェクションされたERNI−attBからの4つの独立したクローンは、PCRによって試験され、そして、4つの全てが3つのプライマーセットですべて正しいサイズの増幅生成物を示した。Erni−133F(配列番号32)+puro−8R(配列番号33)プライマーで生成したPCR産物は、クローン化され、配列決定されてPCR産物が正しかったことを証明した。配列は予想されたattL配列(attBとattPの組み合わせ)に完全に合致して、予想される部分的なERNI配列とピューロマイシン配列を含んだ。インテグラーゼ媒介組み換えクロスオーバー事象が、このようにattBとattP部位の正しいコアヌクレオチドで起き、真正なものとして実証された。
【0157】
(実施例34:Creは、ニワトリ胚でLoxP部位を効率的に組み換える)
完全なpLenti−ERNI−Cre導入遺伝子(および再編成されたERNI−Cre導入遺伝子を有する1つの株)を有する10個のCre株が、Cre組み換え酵素活性について試験された。ERNIプロモーターは、初期胚でCre組み換え酵素の高水準発現を引き起こすことが予想されたが、もし導入遺伝子がゲノムの好ましからぬ領域(「位置効果」として知られている現象)に偶然組み込まれる場合には、導入遺伝子は発現することができない。したがって、望ましいレベルの活性を有する1つまたは複数の株を選択するために、本発明者らのCre株の全てでCre組み換え酵素の活性を測定することは重要であった。
【0158】
本発明者らのCre導入遺伝子の活性レベルを測定するために、Cre導入遺伝子の1つのコピーとloxP導入遺伝子の1つのコピーを保有する2重トランスジェニック胚でloxP−Reaper導入遺伝子の組み換えを触媒するCreの能力が、サザンブロットによって分析された。loxP−Reaper導入遺伝子は、1.4kbの配列を含み、それは、STOPカセットと呼ばれ、同じ方向にloxP部位と隣接している。2つのloxP部位の間の組み換えは、染色体から1.4kbの介在配列の切り出しをもたらし、単一のloxP部位を後に残す。それから、介在配列は染色体にはもはや結合されないので、介在配列は失われる。切り出し後、loxP−Reaper導入遺伝子は、大きさが1.4kb減少する。サザンブロット分析評価が展開されて、そこでは、loxP−Reaper導入遺伝子の大きさの減少は、Cre組み換え酵素活性を測定するために用いられる。Reaper遺伝子とレンチウイルス・ベクター・バックボーン(ブラスチシジン遺伝子とSV40配列)の部分からなるプローブとハイブリダイズしたとき、制限酵素SacIによる消化は、約2.8kbの全長(非組み換え)のloxP−Reaperフラグメントを生産する。1.4kbのSTOP配列のCre媒介組み換えと切り出しの際、同じプローブとハイブリダイズした場合、SacIフラグメントの大きさは約1.4kbに減少する。プローブは、Cre組み換えに影響を受けない配列とハイブリダイズし、したがって、それは全長の、そして組み換えられたloxP−Reaper導入遺伝子の両方と等しくハイブリダイズする。
【0159】
いろいろなpLenti−ERNI−Creトランスジェニック株により発現されたCre活性のレベルを推定するために、全長(非組み換え)の、および組み換えられた導入遺伝子のバンド強度の比率を測定する。Creが活性でないならば、組み換えReaperは、ほとんどまたは全く観察されず、全長だけが観察される。Creが適度に活性である場合、両方のSacIフラグメントが観察され、組み換えがいくらかの細胞では起きたが、他の細胞では起きなかったことを示す。Creが非常に活性であるならば、loxP−Reaper導入遺伝子のみが観察されたが、それは組み換えloxP−Reaper導入遺伝子があらゆる細胞で組み換えられたからである。
【0160】
Cre株の活性をまとめたデータが、図28に示される。試験された11株のCre活性は、株の間で非常に可変性であり、いくつかのケースでは、株内でも同様に変動した。11の株のうち1つだけが、loxP−Reaper導入遺伝子(Cre4株)の100%組み換えを触媒した。この株では、試験されたすべての胚(18中18)は、100%組み換えを示した。他の株では、組み換えレベルは、約5%から最大約80%に変動した。これらの株(Cre1、Cre2、Cre11およびCre20)のいくつかに関して胚から胚で組み換えのレベルでかなりの可変性があった。例えば、Cre11とCre20は、いくつかの胚で約10%組み換えだけを触媒したが、他の胚では、最高60%組み換えを触媒した。大部分の胚について、脳と骨格筋組織が分析され、そして、組み換えのレベルは、あらゆる場合に両組織で同様であった。ERNIプロモーターは、神経組織で活性であると考えられるので、おそらく、脳が組み換えの増加したレベルを示すと予想されたが、しかし、脳と筋肉の組み換えは、常にほぼ同じであった。観察されるCre組み換え酵素活性における変化が、Cre発現のレベルにおける変化に、または、Cre活性が発現される時間の長さにおける変化に起因するかどうかは不明である。例えば、Cre4株では、Creが低レベルで絶え間なく発現され、100%発育の15日目まで蓄積された組み換えに至るが、一方、組み換えがあらゆる細胞で起こる前に、他の株は初期の時期にCre発現をしない可能性がある。あるいはまた、Cre4は、初期の発育にだけ非常に高レベルのCreタンパク質の発現をすることができ、100%の組み換えを触媒する。
【0161】
組み換えを示さなかった唯一の株は、再編成または欠失導入遺伝子を有する株であった。
【0162】
(実施例35:異なるreaper挿入物を保有する3羽のニワトリ株の成功した組み換え)
pLenti−ERNI−Creトランスジェニックニワトリ中のCre組み換え酵素が、異なるloxP基質の組み換えを触媒することができることを示すために、Cre4株を3つの異なるloxP−Reaper株(6−03、6−51および9−51と呼ばれる)と交配した。以前に100%の組み換えを示したので、Cre4株が選択された。loxP−Reaper導入遺伝子の1つとCre4導入遺伝子のコピーを受け継いだ胚が選択された。
【0163】
3つのloxP−Reaper導入遺伝子の組み換えレベルを測定するために、Cre4導入遺伝子の1コピーとloxP−Reaper導入遺伝子の1コピーとを保有する2重トランスジェニック胚の組み換えを触媒するCreの能力をサザンブロットによって分析した。loxP−Reaper導入遺伝子は、1.4kbの配列(STOPカセットとも呼ばれる)を含み、同じ方向に隣接している。2つのloxP部位の間の組み換えは、染色体から1.4kbの介在配列の切り出しをもたらし、後に単一のloxP部位を残す。次いで、介在配列は、染色体にはもはや結合されないので、介在配列は失われる。切り出し後、loxP−Reaper導入遺伝子は、大きさが1.4kb減少する。サザンブロットアッセイが展開されて、そこでは、loxP−Reaper導入遺伝子の大きさの減少は、Cre組み換え酵素活性を測定するために用いられる。Reaper遺伝子とレンチウイルス・ベクター・バックボーン(ブラスチシジン遺伝子とSV40配列)の部分からなるプローブにハイブリダイズしたとき、制限酵素SacIによる消化は、約2.8kbの全長(非組み換え)のloxP−Reaperフラグメントを産生する。1.4kbのSTOP配列のCre媒介組み換えと切り出しの際、同じプローブにハイブリダイズした場合、Reaper SacIフラグメントの大きさは約1.4kbに減少する。プローブは、Cre組み換えに影響を受けない配列とハイブリダイズし、したがって、それは全長の、そして組み換えられたloxP−Reaper導入遺伝子の両方と等しくハイブリダイズする。
【0164】
LoxP−Reaper株の各々のCre−lox組み換え量を評価するために、全長(非組み換え)の組み換え導入遺伝子に対するバンド強度の比率を測定する。Cre4が,3つのすべてのReaper株においてSTOPカセットを切り出すことが可能であるならば、そのときには、組み換えReaperバンドのみが観察されるが、これは、LoxP−Reaper導入遺伝子が全ての細胞において組み換えられたからである。結果が図29に示され、これは、3つのすべてのReaper株が、Cre4導入遺伝子の存在下、STOPカセットの100%の切り出しを受けることを示す。
【0165】
(実施例37:ニワトリゲノムに組み込まれたドッキング部位からのEGFPとneoのCre媒介切り出し)
Cre組み換えは、培養PGC中、インビトロで、また同様にトランスジェニック鳥で行うことができる。培養PGC中で、Cre−lox組み換えを実行するために、細胞をCre発現ベクターで一時的にトランスフェクトする。
【0166】
DOC2細胞が、Cre発現ベクターでトランスフェクトするために使われた。このPGC株は、PrkzといくつかのESTに結合したCpGアイランドで21番染色体に組み込まれたドッキング部位構築物を保有する。開始DOC2培養物中の細胞の全ては、緑色蛍光であったが、これは細胞がドッキング部位構築物中にCX−EGFP遺伝子を保有するからである。2つのCre発現ベクターを使用した:ヒトCMVプロモーターの転写管理下のCre遺伝子を有するpBS185、またはERNIプロモーターがCre発現を引き起こすERNI−Cre構築物。
【0167】
Cre発現構築物を、DOC2細胞に一時的にトランスフェクトした。数日後に、培養物は緑色蛍光の喪失についてモニタリングされ、そして、それは細胞がCre構築物を取り上げ、Creを発現し、CreがCX−EGFP−CX−neoを含む、ドッキング部位ベクター上のloxP部位間の配列の切り出しを引き起こしたインジケータとみなされた。Creトランスフェクション後、培養物は緑色の細胞と緑色でない細胞とから成るものであった。2つの集団を精製するために、培養物を緑色蛍光に基づきフローサイトメトリによって分類した。各集団(緑色および緑色でない)の数百万個の細胞を回収した。
【0168】
EGFP遺伝子が細胞の緑色でない集団に切り出されたことを証明するために、サザンブロット分析を使用した(参照:図30)。細胞(緑色および緑色でない)の2つの集団からのゲノムDNAを調製し、HindIII制限酵素で消化した。DNAをアガロースゲルで分画し、ナイロン膜に移し、ドッキング部位に存在するピューロマイシン耐性遺伝子からの放射能標識配列にハイブリダイズした。puro遺伝子は、Cre−lox組み換えによって切り出されないドッキング部位構築物の領域にあり、したがって、puroプローブは、DOC2切り出し細胞および非切り出し細胞の両方からのゲノムDNAのフラグメントを検出する。予測サイズのHindIIIフラグメントは、以下の通りである:EGFP+(非切り出し)、5521bp;EGFP−(切り出し)、1262のbp。予想フラグメントが観察され、非緑色細胞中で、Cre−lox組み換えが、DOC2細胞に組み込まれたドッキング部位構築物における2つのloxP部位間に存在するCX−EGFP−CX−neo配列の欠失をもたらしたことを示した。
【0169】
(実施例38:IgL pKO5Bターゲティングベクターの調製)
ニワトリIgL遺伝子座を標的とするために、目標とした組み換えの際に、遺伝子座の内因性J領域とC領域を欠失したターゲティングベクターが調製された(図31)。選択マーカーが変わったこと以外は、ベクターは先に記載したIgL pKO5と同じであった。ベクターの5’側の相同領域は、IgL V領域の近傍の2327bpフラグメントから成り、3’側の相同領域は、C領域の下流からの6346bpフラグメントから成るものであった。相同アームは、ターゲティングトランスフェクションの際に使われる細胞株から得られた同質遺伝子系統DNAからクローン化された。ターゲティング構築物は、発現を妨げる1つ以上の方法(例えば、停止コドン、ナンセンス配列、attP部位またはそれらの組み合わせ)を含んだ。ベクターは、また、選択可能なマーカー遺伝子と部位特異的組み換え部位を含んだ。
HS4 ERNI−neo:804bpネオマイシン耐性遺伝子を、PGCにおける発現のために、800bpのERNIプロモーターの転写管理の下に置いた。ニワトリでのERNI発現は、非常に初期の胚に限られ、そのために、選択マーカーは成熟したニワトリでは発現しないはずである。ニワトリβ−グロビン遺伝子座からの250bpのコアHS4インスレーター要素は、タンデム複製され、複製されたインスレーターは、ERNI−neo選択マーカーの両側に配置された。単一のloxP部位(Cre媒介組み換えのための)は、HS4−ERNI−neoの上流でクローン化された。
【0170】
【化8】
attP−puro:600bpのpuro遺伝子は、プロモーターなしで、43bpのattP部位(phiC31媒介組み換えのための)に連結された。それから、attP−puroは、HS4−ERNI−neoの下流でクローン化された。合わせて、loxP−HS4−ERNI−neo−attP−puro選択マーカーカセットは、4089bpである。
【0171】
【化9】
5’相同アーム:2327bpのフラグメントは、
【0172】
【化10】
を用いて、PGC35ゲノムDNAから複製された、PGC35 IgL SacIクローン+333bpのNotI−Ncol PCR産物からの1994bp NcoI−BamHIフラグメントをライゲーションすることにより生成される。PCRフラグメントは、2つのフラグメントを結合する重複ゲノムNcoI部位を含んだ。
【0173】
得られた2327bpフラグメントは、pKOベクターバックボーンへのクローニングのためのNotIとBamHIを用いてHS4 ERNI−puroの上流で放出された。NotI部位は、ゲノム中には存在せず、PCRによって付加された。
3’−相同アーム:6346kbのSpeI−BglIIフラグメントが、一緒に以下の3つのフラグメントをライゲーションすることにより生成された:SacIゲノムクローンからのSpeI−EcoRIフラグメント、およびEcoRI−MfeIゲノムクローンからのEcoRI−ApaLIクローン、およびEcoRI−MfeIクローンから複製された300bpのApaLI−BglII PCRフラグメント
【0174】
【化11】
BglII部位は、ゲノムに存在しなかったが、PCRによって付加された。3’−相同アームは、HS4 ERNI−puroとHS4 b−アクチンEGFPの間でpKOベクターバックボーンにクローン化された。
HS4 b−アクチンEGFP:1.3kbのニワトリb−アクチンプロモーターは、700bpのEGFP遺伝子の発現を引き起こすために使用された。複製されたHS4インスレーターの1コピーが、末端に付加されて、位置効果からランダムに挿入されたターゲティングベクターを隔離して、EGFP発現を可能とした。
【0175】
最終的なIgL pKO5Bターゲティングベクターは、17,681bpのサイズを有し、PGCにトランスフェクトする前にNotIで線状化した。
【0176】
(実施例39:PGCのトランスフェクションとKO−07 IgLノックアウトPGC細胞株の生成)
エレクトロポレーション緩衝液(AmaxaからのV緩衝液)のl00μlの5x106個の細胞の38アリコートを、各l0μgのDNAでトランスフェクトした。すべてのアリコートを、Amaxa nucleofector pulse A33(Amaxa)でエレクトロポレーションした。9つのクローンが得られ、そのうちの4つは、GFP陽性であり、さらには追跡しなかった。5つのGFP非発現クローンが、サザン分析のために拡大され、KO−07、08、09、10および11と命名された。
【0177】
(実施例40:サザンブロット分析)
相同組み換えの5’側について、IgL pKO5Bでトランスフェクトされた5つのクローン性PGC株からのゲノムDNAを、SacI制限酵素で消化して、0.7%アガロースゲルで分画した。DNAをナイロン膜に移し、相同アーム(すなわち、外因性プローブ)として使われる領域からの上流で、ニワトリIgL遺伝子座からのプローブにハイブリダイズした。プローブは、0.5kbのSacI−BstEIIフラグメントであり、約10kbの野生型フラグメントと約4kbの変異体フラグメントを検出する(図32、左のパネル)。ターゲティングの3’側に関して、ゲノムDNAをBstEIIで消化し、ブロットを3’側の1.7kbのNsiI−MfeIフラグメント(また、ターゲティングベクターの外側にある)にハイブリダイズさせた(図32、右側パネル)。
【0178】
(実施例41:生殖細胞系列キメラの生産)
3000個のPGCを、ステージ15〜16(Hamburger&Hamilton)の胚毎に背側大動脈へ注入した。胚を代理棚でインキュベートした。孵化したひなを性的に成熟するまで成長させた。
【0179】
キメラ雄鶏を、人工授精によって野生型Barred Rock雌鶏と交配させた。精液を9羽の雄鶏から集めて、雌鶏を授精させた。雄鶏のうちの6羽は、黒い羽の表現型を子孫に伝達し、そして、IgLノックアウトPGCの生殖細胞系列伝達を示した(表1)。雄鶏(IV75−41)のうちの1羽は、50%を超える割合で伝達した。
【0180】
【表15】
(実施例42:ノックアウト胚のサザンブロット分析)
発育14日目の黒色羽毛の胚を安楽死させ、ゲノムDNAを骨格筋から調製した。サザンブロットが実行されて、ノックアウトが、実験で試験された7つの胚の5つに伝達されたことを示す(胚2,3、4、6および7)。胚1と胚5は、野生型胚であり、これらは、ヘテロ接合性の目標とされたKO−07ノックアウトPGCから野生型IgL対立遺伝子を受け継いだ(図33)。
【図1A】
【図1B】
【技術分野】
【0001】
トランスジェニック動物は、抗体などの有益な医薬品の継続的生産における大幅な進歩に可能性を付与する。しかし、トランスジェニック動物の生産は、多くの技術的障害があり、そのうちの数種しか克服されていない。外因性タンパク質をコードする遺伝子改変物を別の種のDNAに組み込む能力には、いくつかの異なる技術が必要であり、この技術はそれぞれの種について開発されなければならない。動物の遺伝的および肉体的特徴を変化させる1つのアプローチは、動物のレシピエント胚に細胞を導入することである。これらの細胞は、レシピエント胚から誕生した動物の組織に寄与し、得られる動物のトランスジェニック子孫のゲノムに寄与する能力を有する。
【背景技術】
【0002】
ある場合には、細胞を、タンパク質または抗体などの外因性産物をコードするDNAを含む導入遺伝子で操作することができる。導入遺伝子は、タンパク質産生の青写真を含み、レシピエント胚への細胞の挿入から作製される動物組織中でのタンパク質発現が可能なコードエレメントおよび調節エレメントを十分に含む。いくつかの状況においては、発現は、全組織型で起こるように遍在することが望ましい。しかし、有益な抗体の回収などの有益なタンパク質が所望される多くの状況では、発現したタンパク質の回収を容易にする一定の特異的組織型に発現が制限されなければならない。例えば、ウシでは、乳中でのタンパク質発現により、単に牛乳の回収および外因性タンパク質の分離によってタンパク質を容易に回収することができる。また、ニワトリでは、卵白中の抗体の大量生産は、有益なタンパクの発現および回収のための魅力的なビヒクルを提供する。さらに、組織特異的発現がニワトリの卵管に特異的である場合、発現により、ヒト患者の治療で使用した場合に抗体の治療的有用性を増大させる一定の特異的な望ましい化学的特性を有する抗体が得られる。したがって、研究的および商業的開発の1つの特に魅力的な分野は、望ましい化学的性質を有するタンパク質の単離および回収を容易にするために卵白または卵黄のいずれかで抗体を選択的に発現する遺伝子操作ニワトリである。
【0003】
外因性抗体の産生のために、トリの生体系は、多くの利点(効率的な農場での育成、迅速な成長、および経済的な生産が含まれる)を付与する。さらに、トリの卵は、抗体の大量合成ならびに産物の単離および回収の容易さの両方に理想的な生物学的設計を付与する。さらに、下記のように、本発明の文脈では、例えば、脊椎動物、植物、または細菌の細胞系と比較したトランスジェニックニワトリ発現系の利点を容易に証明し、大量の抗体産物について固有の有利な化学的性質をもたらすために適用することができる。トランスジェニックニワトリを作製する目的は、何年にもわたって科学者が追求している。この目的は他の種(マウス、ウシ、およびブタなど)で到達しているが、レトロウイルステクノロジーまたは直接注入テクノロジーの使用による以外でトランスジェニックニワトリは作製されておらず、これらのテクノロジーは、トランスジェニック動物のDNAに導入され得る導入遺伝子のサイズの固有の限界および/または発現欠如に悩まされる。その上、ウイルスベクターは、相同組換えにより提供されるものなどのゲノムに対する部位特異的変化を必要とする適用に従わない。
【0004】
さらに、ある状況においては、動物自身の内因性遺伝子は、そのようなタンパク質を発現するように特別設計された遺伝子構築物を導入することから生じる有益なタンパク質の生産を妨げ得る。このような状況下では、理想的な解決は、動物の内因性遺伝子を不活化することである。残念なことに、ニワトリでの遺伝子工学における独特な挑戦のために、内因性遺伝子座の不活化をもたらす部位特異的改変を有するトランスジェニックニワトリは、記述されていない。またさらに、部位特異的遺伝子の不活化の導入は、内因性遺伝子機能を欠如する動物を産生し、そして、そのような動物は、そのゲノムに導入された補完的な特定の遺伝子改変を有する異なる動物と繁殖させることができる。例えば、特定の遺伝子が欠如している動物ファミリーを確立することができ、繁殖により、ヒトについての特定の遺伝子を含む動物と組み合わせることができた。この場合には、特定の動物の発現型の生産のために、または、内因性遺伝子の挿入によってコードされるタンパク質の生産のために導入されたゲノム改変のみならず、内因性遺伝子の不活化の両方を有する動物群が作製されるであろう。そのような動物は、現在、存在しないが、それは、ウイルスベクターが内因性ゲノムの部位特異的ターゲティングや組み込み事象のための選択能を可能としないからである。このように、ウイルスベクターは、内因性遺伝子座の活性化を達成することができるメカニズムを提供しない。
【0005】
細胞培養物が、大きな導入遺伝子が細胞のゲノムに組み込まれるようにするために、あるいは部位特異的変化をゲノムに導入させるために、十分に安定であるとき、任意のタンパク質の組織特異的発現をコードする導入遺伝子は、標的細胞および導入遺伝子として使用される特異的構築物に応じたいくつかの異なる技術によってトランスジェニック生物に継代され得る。同じ技術が、不活化された内因性遺伝子を有する生物を永続させるために使用され得る。全ゲノムを細胞ハイブリッド形成よって移入することができ、微小核細胞によってインタクトな染色体を移入することができ、染色体媒介性遺伝子移入によってサブ染色体セグメントを移入することができ、DNA媒介性遺伝子移入によってキロベース範囲のDNAフラグメントを移入することができる(非特許文献1)。微小核細胞媒介性染色体移入(MMCT)によってインタクトな染色体を移入することができる(MMCT)(非特許文献2)。外因性遺伝子を保有する任意のそのような導入遺伝子の特異的設計または遺伝子の不活化はまた、外因性遺伝子の内容、任意の遺伝子不活化の性質、および動物で得られる発現型の特徴も考慮しなければならない。
【0006】
導入遺伝子を慎重に設計しない限り、内因性遺伝子座を不活化する、または組織特異的発現を可能にする導入遺伝子の挿入は、細胞の多能性を脅かす可能性がある。したがって、適切な細胞株は、遺伝子を不活化するのに、あるいは必要に応じて組織特異的および高レベルの発現に必要な全てのエレメントを含めるのに十分に大きく且つ複雑な遺伝子構築物で細胞をトランスフェクトする場合、培養中に安定であり、そして多能性が維持されなければならない。得られたトランスジェニック動物では、導入遺伝子を、場合により、導入遺伝子が発現されるように設計される特定の個別の組織型において選択的に発現することができる。導入遺伝子の遺伝子含有量に応じて、動物の生存率または得られたタンパク質の有利な化学的性質が弱められる場合、導入遺伝子を他の組織で発現させることができない。
【0007】
ニワトリ始原生殖細胞は、ステージ11〜15の胚からの単離後、数時間以内にレトロウイルスベクターを使用して遺伝子改変されている(非特許文献3)。しかし、得られた改変は、ランダムに組み込まれており、導入遺伝子のサイズは、一般に約15kb未満、通常10kb未満、最も一般的には8kb未満に制限され、ゲノムの部位特異的変化をこの技術を使用して作製することができず、また、ランダム組み込みの排除に対する部位特異的改変を同定するために移入細胞を選択することもできない。培養トリPGCゲノムへの15kbを超える外因性DNAの挿入が必要な安定な遺伝子改変は、以前に報告されていない。
【0008】
長期PGC細胞培養物中に安定に導入することができる任意のDNA導入遺伝子または構築物のサイズまたは部位特異性についてのいかなる制限も、培養物中のPGCゲノムの有益な遺伝子改変を達成する能力における重要な制約であり、次に、生殖系列を介してレシピエント胚の子孫に継代することができる遺伝子改変物の型を制限する。例えば、不活化ベクター、またはトランスジェニックニワトリのゲノムへのタンパク質をコードする外因性DNAの導入は、非常に望ましい遺伝子改変である。このようなトランスジェニックニワトリ群を作製することができる場合、大量の有益なタンパク質をニワトリで発現させ、卵で回収することができる。トリの卵は、生物活性タンパク質の理想的な貯蔵所を提供し、タンパク質を単離することができる都合のよい環境を提供する。鳥類の動物は、広範な種々のトランスジェニック技術のための魅力的な候補でもある。しかし、遺伝子改変物を導入して生殖系列に伝達することができる培養細胞集団が存在しないために、トリ種への全範囲の哺乳動物トランスジェニック技術の適用は成功しなかった。最近の論文では、Sangらは、「PGCを培養物中で維持し、移入後に発生生殖腺に移動する能力を喪失することなく遺伝子ターゲティング事象を同定するために必要な長期間にわたって増殖することができる可能性は低い」と述べている(非特許文献4)。したがって、今日まで、遺伝的にトランスフェクトされたPGCは作製されておらず、トリPGCに導入された遺伝子改変物の成熟した生きている動物への伝達は証明されていない。
【0009】
始原生殖細胞(PGC)は、精子および卵子の前駆体であり、大部分の動物での発育の初期段階で、体細胞組織から分離される。本発明に従えば、ニワトリPGCは、生殖細胞系との関与を維持しながら、単離され、培養されて遺伝的に改変される。さらに、PGCは、胚生殖細胞(EGC)に分化するように誘導され、そして、体細胞組織へのそれらの関与の点でニワトリ胚幹細胞(ESC)に類似している。これらのPGCは、体細胞組織と生殖細胞系に関与して、ニワトリでのゲノム遺伝子改変に対する固有の供給源を提供する。
【0010】
遺伝子移入動物、特にマウスの生産は、哺乳類の遺伝子機能の解明にとって重要である。伝統的なアプローチは、導入遺伝子のゲノムへのランダム組み込みであるか、あるいは相同組み換えによる導入遺伝子の特異的遺伝子座への標的挿入である。
【0011】
導入遺伝子のランダム挿入には、2つの不利点がある。第1の主な不利点は、多くの遺伝子が種々の発育段階で不可欠な機能を果たし、これらの遺伝子の転写の排除が、しばしば胚の死亡を引き起こすということである。胚の死亡は、例えば、組織特異性および発生段階調節型の遺伝子発現を与えるプロモーターの管理下でのCre−loxPまたはFIp−FRTなどの特異的部位組み換えを用いて予防することができる。これらの場合、部位特異的組み換えは、そうでなければ通常動物(条件的遺伝子改変と呼ばれる)の文脈内の発育の過程での別々の細胞および/または別々の時間に遺伝子を不活化するのに使用される。例えば、Cre−loxP系は、β細胞中のインスリン受容体遺伝子を特異的に不活化するのに用いられて、2型糖尿病におけるそれと類似しているインスリン分泌欠損を作出する(非特許文献5)。初めは、DNAポリメラーゼβのヌル対立遺伝子は、ホモ接合の場合には、胚致死性であることが示された。抗原受容体遺伝子配置のための可能な要件を分析するために、条件的ノックアウト手法が使用されてT−細胞におけるDNAポリメラーゼβの欠損を作出した(非特許文献6)。
【0012】
導入遺伝子のランダム挿入および標的挿入の両方は、トランスジェニック動物における導入遺伝子からポジティブ選択カセットを切り出すことができないことで悩まされる。選択カセットの存在は、いくつかの問題(例えば、選択カセット中にしばしば存在する強力転写制御エレメントによる近隣の遺伝子座における遺伝子発現の破壊など)を引き起こす(非特許文献7;非特許文献8)。ポジティブな選択カセットの除去は、組織特異的プロモーターの管理下、部位特異的組み換え酵素を用いて達成できる。
【0013】
Creは、34の塩基対DNAエレメントである2つのloxP部位間の組み換えを触媒する組み換え酵素である。2つのloxP部位が、同じ方向にゲノム中に組み込まれるとき、Creによって触媒される組み換えは、介在DNAを切り出す。loxP部位は、ゲノムにランダムに挿入される前に導入遺伝子に組み込むことができ、あるいは、loxP部位は、ターゲティングベクターを使用して正確な位置でゲノム中に挿入することができる。介在DNAの切り出しの後で、隣接loxP部位は、単一のloxP部位に変換される。変異体のloxP部位は、Cre切り出しの後では十分に認められない産物を生成する。FIp組み換え酵素、すなわち、部位特異的組み換え酵素であるλインテグレーススーパーファミリーの別の一員は、Cre組み換え酵素と同じメカニズムのDNA組み換えを共有する。Creと同様に、FIp組み換え酵素は、2つの定義された34の塩基対の標的部位(FRT部位)でDNAを組み替える。介在DNAの切り出し後で、隣接FRT部位はまた、単一のFRT部位に変換される。
【0014】
条件的ノックアウトの用途の1つは、発育の正確なステージの特定の組織において除去されるべき細胞中の致死性産物の発現である。例えば、非特許文献9は、Cre−loxP系を使用して、マウスでの骨格筋の発育を研究するために、筋細胞中で特異的にジフテリア毒素Aフラグメントを発現させた。Creのリガンド制御形態は、インビトロで、または、インビボでの胚形成後期および/または成体組織における遺伝子変化の正確な誘導を可能とするCre−loxP系の一時的制御を加えるという目的で開発された。
【0015】
染色体再構成は、遺伝性疾患および胎児死亡の主な原因であり、ガンの進行および維持に関係していた(非特許文献10;非特許文献11)。染色体転座は、しばしば、異常な遺伝子融合をもたらし、その結果、腫瘍特異的mRNAsおよびタンパク質は、遺伝子治療の魅力的な目標である。このように、部位特異的組み換え酵素を用いて特定の切断部位で染色体再構成を操作する能力は、ヒトの病気のマウスモデルを作製するのに用いられた。例えば、ヒト再構成t(8:21)(q22;q22)およびt(9:11)(p22q23)に対応する転座は、急性白血病をモデル化するためにマウスで成功裏に誘導された(非特許文献12;非特許文献13)。ランダムな染色体欠失は、ゲノムのランダムな位置にloxP部位を挿入し、次いでCre組み換え酵素を発現させることによって発生することができる(非特許文献14)。
【0016】
条件的遺伝子改変は、細胞系統の仕様の間、遺伝子発現を操作するための強力なツールであり、細胞の運命の分析は、正常な発育の理解に貢献した。Cre−loxP系は、例えば、中脳−後脳収縮で起こるエングレイルド2−発現細胞の大人の運命を定めるように、ネズミでの系統トレーサを遺伝学的に活性化するのに使用された(非特許文献15)。このアプローチは、交配された2つのマウス株を含んだ。1匹のCre組み換え酵素マウスは、胎仔の中脳−後脳収縮領域での発現に向かうエングレイルド2−(En−2)ゲノム制御フラグメントの管理下でCreを発現し、そして、指標/レポーター・マウスは、組換えが起きたことを「示す」導入遺伝子を有し、それを相続可能な系統マーカーに変えることによって、この事象の永久的な記録を提供する。指標株は、広く発現されたひよこのβアクチン遺伝子からの制御配列により駆動された転写/翻訳−loxP−停止カセットのloxP−停止を有する。En2−Creマウスと指標マウスとの交配により、2重の組み換え体は、各導入遺伝子のコピーを保有する。En2制御要素の下でCreを発現した細胞のみが、レポーター構築物のloxP間で再構築を経て、そして、停止を切り出し、lacZ発現を可能にした。Cre媒介切り出しは、細胞遺伝性であるので、Creがもはや発現されない後でさえ、マーク細胞およびすべてのそれらの子孫は、後のステージでlacZを発現した。このように、成熟した2重トランスジェニック動物の脳におけるLacZのための染色は、中脳−後脳収縮の進展の過程で、一時的にCreを発現したすべての細胞の子孫を明らかにした。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Klobutcher,L.A.and F.H.Ruddle,Annu.Rev.Biochem.,50:533−554,1981
【非特許文献2】Fournier,R.E.and F.H.Ruddle,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,74:319−323,1977
【非特許文献3】Vickら、(1993)Proc.R.Soc.Lond.B 251,179−182
【非特許文献4】Prospects for Transgenesis in the Chick,Mechanisms of Development,121,1179−1186,(2004)
【非特許文献5】Kulkarniら、1999 Tissue−specific knockout of the insulin receptor in pancreatic beta cells creates an insulin secretory defect similar to that in type 2 diabetes.Cell 96:329−39
【非特許文献6】Guら、1994.Deletion of a DNA polymerase beta gene segment in T cells using cell type−specific gene targeting.Science265:103−106
【非特許文献7】Lernerら、1993 CD3 zeta/eta/theta locus is colinear with and transcribed antisense to the gene encoding the transcription factor Oct−1.J Immunol.151:3152−62
【非特許文献8】Ohnoら、1994 Targeted disruption of the CD3 eta locus causes high lethality in mice:modulation of Oct−1 transcription on the opposite strand.EMBO J.13:1157−65
【非特許文献9】Grieshammerら、1998 Muscle−specific cell ablation conditional upon Cre−mediated DNA recombination in transgenic mice leads to massive spinal and cranial motoneuron loss.Dev Biol.197:234−47
【非特許文献10】Ramirez−Solisら、1995 Chromosome engineering in mice.Nature 378:720−4
【非特許文献11】Rabbitteら、2001 Mouse models of human chromosomal translocations and approaches to cancer therapy.Blood Cells Mol Dis.27:249−59
【非特許文献12】Buchholzら、2000 Alteration of Cre recombinase site specificity by substrate−linked protein evolution.Nat Biotechnol.19:1047−52
【非特許文献13】Collinsら、2000 Inter−chromosomal recombination of M11 and Af9 genes mediated by cre−loxP in mouse development.EMBO Rep.1:127−32
【非特許文献14】Zhuら、2007.Efficient generation of random chromosome deletions,Biotechniques 42,572−575
【非特許文献15】Zinykら、1998 Fate mapping of the mouse midbrain−hindbrain constriction using a site−specific recombination system.Curr Biol.8:665−8
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
発明の要約
本発明は、トランスジェニックニワトリおよびトランスジェニック鳥の遺伝子工学を可能とする技術、ならびにターゲティング構築物を始原生殖細胞に相同組み込みすることから生じる不活化内因性遺伝子座を有するトランスジェニックニワトリを作出するために使用されるPGCの長期培養物を含む。これらのトランスジェニックニワトリは、内因性遺伝子座の少なくとも一部の欠失により遺伝子の不活化をもたらす相同組み換えにより、ニワトリの始原生殖細胞のゲノムに組み込まれた導入遺伝子を有する。本発明は、導入遺伝子構築物を含み、これは導入遺伝子を有する始原生殖細胞の安定培養物であり、しばしば、ノックアウトベクター、ターゲティングベクター、ノックアウト構築物などと呼ばれ、ここで、内因性遺伝子不活化のために設計された導入遺伝子は、組み換え事象を達成するために、そして、トランスフェクションされた細胞を選択するために十分な時間、培養物中に維持される始原生殖細胞のゲノムに安定して組み込まれる。
【0019】
本発明はまた、始原生殖細胞および得られるトランスジェニックニワトリを含み、そのゲノムは、内因性遺伝子座を不活化することにより改変されており、限定されないが、内因性遺伝子発現に必要な遺伝子の一部の部位特異的欠失を含むものである。前述の実施形態の全てに関して、本発明はまた、内因性ゲノムの部位特異的改変から作出されて得られるトランスジェニックニワトリを含む。本発明はまた、特定の適用において、それらの治療的有用性を強化する有利な化学的性質を有するニワトリで産生される抗体にも関する。ニワトリで産生される抗体は、脊椎動物、植物、または細菌の細胞系で産生される抗体と比較して異なるパターンの化学的改変を有するため、毒素を標的組織、例えば腫瘍に結合させることを目的として患者に投与する場合、標的組織は増大した治療有効性によって処置される。1つの実施形態において、PCGの長期培養物は、特別に設計された遺伝子構築物で操作されて鳥に遺伝子改変を導入し、それは、外因性タンパク質の組織特異的発現をもたらす導入遺伝子の挿入を含む。同じ多能性細胞での不活化遺伝子座の操作により、または、不活化内因性遺伝子座を有するトランスジェニックニワトリの別々の群の操作のいずれかにより、外因性タンパク質の発現を容易にするために挿入された導入遺伝子を有する鳥でその後に繁殖させるために、タンパク質の発現をコードする外因性DNAの組み合わせを保有するトランスジェニックニワトリは、不活化内因性遺伝子座を有するトランスジェニックニワトリと組み合わされて、外因性タンパク質を発現する動物の固有の有利な群を提供する。
【0020】
不活化された内因性遺伝子座を有するトランスジェニックニワトリはまた、遺伝子発現の研究のための、そして、選択された内因性遺伝子座を不活化させる能力なしでは可能でない固有の遺伝子機能を選択するための有益な動物モデルを提供する。同様に、内因性ニワトリ遺伝子座の不活化は、内因性免疫グロブリン遺伝子遺伝子座の特定部分(免疫グロブリン遺伝子再構築を妨げるための、また、内因性抗体発現を不活化するためのV、D、またはJ領域を含む)で行うことができる。その結果、本発明の1つの実施形態は、内因性ニワトリ免疫グロブリン遺伝子座の選択された部分で部位特異的遺伝子改変から生じる、内因性免疫グロブリン遺伝子発現および内因性免疫グロブリンタンパク質産生が実質的に欠如しているトランスジェニックニワトリを含む。好ましい実施形態では、導入遺伝子は、内因性免疫グロブリン産生をコードする軽鎖および重鎖の両方の標的不活化のために構築される。本発明のトランスジェニック鳥はまた、輸卵管で導入遺伝子由来の抗体を発現することが可能でもあり、抗体は、卵に大量に沈積する。好ましい実施形態では、外因性抗体タンパク質は、天然ヒト抗体が内因性鳥抗体産生の非存在下でニワトリ輸卵管において発現され、それによって卵からヒト抗体のみを回収する能力を作出するように、内因性抗体産生が欠如している背景で発現されるヒトDNA配列によってコードされる。
【0021】
本発明は、抗体の組織特異的発現を示す鳥群、外因性抗体発現を可能にする導入遺伝子構築物、ニワトリで産生され、特別に定義された化学的性質を有する抗体の分離された組成物、ならびに鳥の作出のための関連方法、抗体の産生、およびヒトでのそれらの治療的な使用を含む。本発明は、長期始原細胞培養物および特別な技術を用いて、長期PGC細胞培養物に由来するキメラ鳥またはトランスジェニック鳥を生産し、ここで、培養細胞の子孫が安定して組み込まれた導入遺伝子を含むように、PGCのゲノムは、外因性タンパク質を発現する安定して組み込まれた導入遺伝子を有する。宿主の鳥の胚に導入される場合、以下に記す手順によって、それらの改変されたドナー細胞は、得られる動物の特定の選ばれた体細胞組織に導入遺伝子を発現させる鳥を生産する。
【0022】
本発明はまた、トランスジェニックニワトリで発現されて、脊椎動物、植物または細菌の細胞系と比較して特定の望ましい化学的性質を有する外因性タンパク質の組成物を含む。具体的には、これらのタンパク質、特に抗体は、低濃度のフコース、ガラクトース、N−アセチルノイラミン酸、N−グリコリルノイラミン酸と高濃度のマンノースとを有する。これらの特性の一部もしくは全部を有する抗体は、ヒトに投与した場合、増加した治療的有用性を示す。具体的には、これらの抗体組成物は、増強された抗体依存性細胞障害活性(ADCC)を示す。したがって、本発明の方法は、トランスジェニックニワトリを用いて、トランスジェニックニワトリにおいて抗体を発現させることにより抗体組成物の治療的有用性をADCC効果に基づき強化することを含む。
【0023】
本発明はまた、本明細書で定義された有利な化学的性質を有する外因性抗体を、輸卵管組織において、外因性抗体が卵白において定義された量で濃縮されるように発現するトランスジェニックニワトリを含む。1つの好ましい実施形態では、外因性タンパク質は、トランスジェニック鳥のゲノムに取り込まれた導入遺伝子構築物によってコードされたヒト配列モノクローナル抗体である。ヒトモノクローナル抗体をコードするポリヌクレオチド配列は、輸卵管中での発現のために特異的に構築されており、そして組織特異的発現を容易にするための適切なプロモーターおよび調節配列を含む導入遺伝子内に含まれている。
【0024】
本発明はまた、トリ始原生殖細胞(PGC)の長期培養物に関し、いくつかのさらなる発明は、トリPGCが成長し、PGC培養物を培養物の生存能を40日、60日、80日、100日、またはそれを超えて延長するための複数回の継代によって延長することができる長期培養物の作製によって可能とするものである。本発明のPGCは、長期培養物中で成長し、レシピエント胚に注入した場合に生殖系列キメラを産生する。
【0025】
本発明はまた、望ましい結果を得るためのPGCゲノムへの遺伝物質の導入にも関する。1つの実施形態において、HS4エレメントで囲まれた遺伝子構築物は、導入遺伝子産物の生産を確実にするために、本発明のPGCに取り込まれる。別の実施形態では、遺伝子組み換えは、ニワトリゲノムの反復エレメントへの構築物の直接の挿入にインテグレースを使って実行される。別の実施形態では、選択マーカーをコードするDNAは、遺伝子産物の生産を妨げるために、ニワトリゲノム領域に挿入される。
【0026】
条件変異はニワトリ細胞で発生したが、Creを発現するトランスジェニック株が作出されたマウスとは異なり、遍在するか、組織特異性であるか、または発生段階調節型であるプロモーターの管理下でCre組み換え酵素を発現するトランスジェニックニワトリ株は作出されなかった。マウス細胞では、Cre組み換え酵素の一過性の発現(Arakirら、1997 Efficiency of recombination by Cre transient expression in embryonic stem cells:comparison of various promoters.J Biochem 122:977−82)および細胞透過性Cre組み換え酵素(Joら、2001 Epigenetic regulation of gene structure and function with a cell−permeable Cre recombinase.Nat Biotechnol.19:929−33)は、loxP部位間でDNAを切り出すのに用いられた。ニワトリDT40細胞株では、しかし、Cre組み換え酵素の一過性の発現は、loxP部位間でDNAを除去することができなかった(Fukagawaら、1999 The chicken HPRT gene:a counter selectable marker for the DT40 cell line.Nucleic Acids Research 27,1966−1969)。その後、Cre導入遺伝子は、loxPおよび/または変異体loxP部位間のDNA配列の切り出しを達成するために、DT40細胞のゲノムに取り込まれた(Fukagawaら、1999 The chicken HPRT gene:a counter selectable marker for the DT40 cell line.Nucleic Acids Research 27,1966−1969;Arakawaら、2001 Mutant loxP vectors for selectable marker recycle and conditional knockouts BMC biotechnology 1,7−14;Dharら、2001 DNA repair studies:experimental evidence in support of chicken DT40 cell line as a unique model.J.Environ Pathol Toxicol Oncol 20,273−83;Kanayamaら、2005 Reversible switching of immunoglobulin hypermutation machinery in a chicken B cell line.Biochem.Biophys.Res.Commun.327,70−75)。
【0027】
ニワトリで条件変異をもたらす能力は、有利である。例えば、loxP部位に隣接した停止コドンの存在によりサイレントであるユビキタスプロモーターの管理下でアポトーシス誘導遺伝子を用いてES細胞に実質的に由来するニワトリを作出することが可能である。この株のニワトリは、明域で発現されるプロモーターの管理下でCre組み換え酵素をコードする遺伝子を保有する鳥の株と交配させた場合、胚は発育しない。胚幹細胞をアポトーシス誘導遺伝子の発現と同時に胚に注入するならば、胚は胚幹細胞から実質的に由来し得る。
【0028】
別の適用では、選択マーカーをコードする配列を含む導入遺伝子は、loxP部位に隣接することができる。これらの導入遺伝子を保有するトランスジェニック鳥は、生殖細胞系で発現されるプロモーターの管理下でCre組み換え酵素を発現する鳥と交配させることができる。この交配から作出された鳥は、選択マーカーの切り出し後に孵化するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1Aは、54日間培養物中に維持されたPGCを示す。細胞は付着しておらず、丸い形態を維持することに注目すべきである。矢印は、この培養物中で目視できるいくつかの分裂細胞を示す。図1Bでは、長期PGC細胞培養物は、少なくとも136日間にわたって培養物中に維持された場合、安定であることが示される。これらの細胞は、照射を受けたSTO細胞のフィーダー層上で培養される。
【図2】生殖細胞マーカーCVH(Vasa)およびDazlのRT−PCRによって測定された遺伝子発現。細胞を32日間培養物中に置いた。レーン1は、PGCアリコート中のCVHおよびDazlの両方の発現を示す。レーン2中の第2サンプルは、アクチンの非存在下に測定されて、十分なmRNAを含まなかった。CES細胞も分析された;アクチンは発現されたが、cES細胞はCVHを発現せず、Dazlが弱く発現されただけであった。
【図3】166日間培養物中で維持された番号13および番号16のサンプルPGC培養物のウェスタン分析。ポジティブコントロールとして精巣を使用し、ネガティブコントロールとして肝臓を使用した。一次抗体としてウサギ抗ニワトリCVH IgGを使用した。
【図4】テロメア反復増幅プロトコル(TRAP)アッセイ。異なる希釈率の2つの異なるPGC細胞株の細胞抽出物(番号13および番号16)を、146日間培養物中で維持した。ポジティブコントロールは、形質転換ヒト腎臓細胞株293からなり、ネガティブコントロールは、テンプレートを添加しない溶解緩衝液のみであった。PGCおよびポジティブコントロールレーンでは、反復配列が認められ、これはテロメラーゼの存在を示す。
【図5】図5Aは、培養物中に維持されたPGC由来のcEG細胞を示す。図5Bは、ニワトリ胚幹細胞を示す。両細胞型における小さな細胞、大きな核(淡灰色)、および明確な核小体に留意のこと。
【図6】始原生殖細胞(PGC)株中のcx−neo導入遺伝子のサザン分析。
【図7】ニワトリ管ホモログ(CVH)および1B3に対する抗体で染色したDT40細胞(ネガティブコントロール集団)、EG細胞、ES細胞、およびPGCのFACS分析。DT40細胞、ES細胞、およびEG細胞は、両マーカーについて陰性であったが、大部分のPGCはCVHおよび1B3の両方について染色された。使用した細胞株は、PGC102;ES439およびEG455であった。
【図8】2つの始原生殖細胞PGC株におけるHS4−β−アクチン−neo導入遺伝子のサザン分析。
【図9】始原生殖細胞(PGC)株TP103におけるHS4 β−アクチン−eGFP−β−アクチン−puro導入遺伝子のサザン分析。プラスミドコントロールDNAをNotIで線状化した。内部フラグメントは、DNAをKpnIで消化して放出させた。TP103およびプラスミドの両方で、同じサイズのフラグメントが放出された。TP103のゲノムDNAの、NcoI、MfeI、およびSphIによる消化は、消化されたプラスミドDNAの対応するレーンに比べて大きいバンドを示すはずである。MfeI消化TP103ゲノムDNAのレーンにおいては、大きすぎるバンドによる可能性があるバンドは見られない。NcoIおよびSphI消化を表すレーンでは、フラグメントはプラスミドDNA中に放出されるフラグメントより実質的に大きいTP103ゲノムDNA中に放出されたが、このことは、導入遺伝子がTP103細胞株のゲノムに取り込まれることを示す。
【図10】全染色体が二倍体であることを示すG−09の核型。GGA2の1コピーでは、pアームの大部分が失われているか、別の染色体に転座している。CGA2の他のコピーは正常である。細胞は、ZZ(雄)である。
【図11】DAPIで染色した発育18日目の精巣の切片。GFP陽性生殖細胞は、細精管内で明確に見られる。
【図12】DAPI染色パネルは、E18精巣の細精管を通る切片を示す。GFP発現細胞は、細精管内に位置し、抗CVH抗体で染色される。
【図13】β−アクチン−GFP導入遺伝子で安定にトランスフェクトされたPGCを保有するキメラ由来のトランスジェニック子孫は、ステージX(EG&K)からステージ34(H&H)の間で生育する。これらの写真に示された組織の全ては、GFPの発現を示す。
【図14】組織学的試験のために調製されたβ−アクチン−GFP導入遺伝子で安定にトランスフェクトされたPGCを保有するキメラ由来の組織。青色のDAPI染色は,核の存在を明らかにし、そして、緑色蛍光は、組織の全てがGFP導入遺伝子を発現することを証明する。
【図15】クローン由来のトランスフェクトされたPGC株がキメラニワトリの生殖細胞系に寄与し、EG細胞に分化することができることを示すサザンブロット分析。上方のパネル:HS4 bactin−eGFP−bactin−puro構築物でトランスフェクトされたPGCに由来するゲノムDNA、トランスフェクトされたPGCで作製したキメラ雄ニワトリ由来の3つの胚に由来するゲノムDNA、およびトランスフェクトされたPGC由来のEG細胞に由来するゲノムDNAを、導入遺伝子挿入の内部フラグメント(KpnI)および連結点フラグメント(NcoI、AflII)を検出するために、制限酵素で消化した。消化したDNAを、0.7%アガロースゲルで分離し、ナイロン膜にブロッティングし、放射能標識eGFP配列で探索した。ハイブリッド形成フラグメントのサイズは、PGC、EC細胞、および緑色蛍光を示した2つの胚(GFP+胚)で同一であった。第3の非蛍光胚(WT胚)は、ハイブリッド形成を示さなかった。下方のパネル:構築物の概略図を示し、そして、制限部位の位置を示し、予想制限フラグメントサイズが下に示される。5.3kbフラグメントが得られる2つのKpnI部位が存在する。NcoIおよびAflIIは、構築物内を1回切断し、それによって認められる制限フラグメントは、挿入部位において隣接ゲノムDNAを構築物と連結する連結点フラグメントである。
【図16】図16Aは、本研究で使用されたランダムインテグレーション構築物の図。2種類の基本的な構築物が使われた:強力プロモーターによって駆動される選択マーカーカセット(薬剤耐性マーカーおよびEGFP)、およびHS4インスレーターの2セットに隣接する類似した構築物。使用されるプロモーターは、マウスPGK、ニワトリβ−アクチン、β−アクチン+CMVエンハンサー(CAG)またはERNIであった。構築物は以下の通りである:neoまたはpuro耐性遺伝子(一番上のライン)の発現を駆動するプロモーターからなる薬剤選択マーカーカセット;CAG−EGFP遺伝子(2番目のライン)の付加;隔離された薬剤選択マーカーのみ(3番目のライン);EGFP遺伝子(4番目のライン)を付加した同様の隔離された選択マーカーカセット;ならびにloxP部位に隣接する選択マーカーおよび対象となる特許遺伝子を有するCAG−EGFP CAG−neo構築物(星印の付いたボックス)。構築物はトランスフェクションの前に線状化され、示されたベクター構造をもたらす。図16Bは、本研究で使われるインテグレース構築物の図。左側の図では、attB含有プラスミドあり、そこでは、attB部位が上記のHS4−β−アクチン−puro構築物に付加されている。右側の図では、プラスミドが、CAGプロモーター由来細胞インテグレースを発現するのに用いられる。両方のプラスミドは、環状DNAとしてトランスフェクトされた。
【図17】attBとトランスフェクトされたPGCから得られたattL配列との配列比較。インテグレース媒介トランスフェクションに由来するPGCクローンにおけるattBプラスミドおよびゲノム配列の間の連結点が示される。一番上のラインは、コアTTGを有する野生型attB部位であり、該コアTTは、通常、下線が付された組み換えクロスオーバー点である。下には、PGCでのインテグレース媒介挿入物由来のattL配列が示される。スプライシングが、プラスミドのattBとゲノムの疑attP部位との間の何処で起きたかについて決定するために、PGC配列を、attBと比較した。PGC配列において、プラスミドによって与えられたattB配列は、小文字であり、そして、ゲノム疑attP配列は大文字および太字である。
【図18】図18Aは、PGC挿入部位由来のPO41様反復とPO41コンセンサス配列とのアラインメント。PO41様反復に挿入されたクローンの全てからのPGC隣接配列を、互いに、およびPO41コンセンサスとアラインメントした。最初から21個のヌクレオチドは、ベクター(上の配列比較に示されるように)によって付与されたattB配列であり、そして、各々のクローンからのゲノム隣接配列が続く。配列の少なくとも半分によって共有されるヌクレオチドは、黒で囲われている。Bは、attPとPO41配列とのアラインメント。attP部位の100bpを、PO41の100bp、すなわち41bpの約2.5コピーとアラインメントした。attP中のコアクロスオーバーTTGは、上付きの横線で示されている。
【図19】ニワトリIgL遺伝子のターゲティング。
【図20】図20Aは、一番上のラインは、ニワトリIgL遺伝子(IgL pKO5)のためのターゲティングベクターの図である。IgL遺伝子の2.3kbのJ−C領域をHS4インスレーターに隣接した3.1kbのHS4−ERNI−puro選択マーカーと置き換えるように設計される。2つの相同性アームは、2.3kbおよび6.3kbの長さである。3’末端において、β−アクチン−EGFP遺伝子は、標的クローンのために緑色蛍光を富化するためのpuro−耐性クローンのスクリーニングを可能にする。末端の点線は、pKOベクターバックボーン(Stratagene)である。中央のラインは、単一の可変領域遺伝子(V)、連結領域遺伝子(J)および定常領域遺伝子(C)を有する、IgL遺伝子の生殖細胞系構成の野生型対立遺伝子の図である。標的クローンのサザン分析に使用される制限部位が、図示((S、SacI;B、BstEII)され、そして、野生型フラグメントサイズが二重の矢尻でその下に示される。下方のライン上は、変異体対立遺伝子の構造であり、そこでは、JおよびC領域が欠失しており、HS4−ERNI−puroで置き換えられている。制限酵素地図が示され、下に変異体フラグメントのサイズが示されている。サザン分析において使われるプローブは両方とも、ターゲティングベクターの外側にあり、そして、それらの位置が示される。スケールバー=1kb。図20Bは、4つのクローンのサザンブロット分析。4つのピューロマイシン耐性クローンが分析され、そのうちの2つ(クローン1および2)は緑色でなくて、そして、そのうちの2つ(クローン3および4)は緑色であった。左のパネルでは、PGCクローンからのゲノムDNAは、SacIで消化されて、プローブAとハイブリダイズされてIgL遺伝子の5’部位上でターゲティングを分析した。右のパネルでは、DNAはBstEIIで消化されて、IgL遺伝子の3’部位のターゲティングのためにプローブBとハイブリダイズした。クローン2は、ヘテロ接合性の標的クローンについての予想されるサイズのフラグメントを示した。
【図21】IgLノックアウトを保有するPGCで作出されたGO雄鳥からの精液の免疫グロブリン軽鎖遺伝子の不活化のためのマーカーであるERNI−puroのPCR。精液サンプルから調製されたゲノムDNA10ngを、IgLノックアウト対立遺伝子に存在するERNI−puro選択マーカーのためにPCRで使用した。対照として、内因性ニワトリβアクチン遺伝子に対するプライマーが含まれた。ERNI−puro PCRのためのポジティブコントロールとして、IgLノックアウト対立遺伝子を有するPGCが使われた。
【図22】BN鳥のALDH3A2発現。上方のパネルは、2羽のホモ接合性BN鳥(BN/BN)、1羽のヘテロ接合性BN鳥(BN/+)および1羽の野生型鳥(+/+)から分離されたRNA上で、ALDH3A2についてのRT−PCRを示す。さらに、RT−反応(−RT−コントロール)のネガティブコントロール、ポジチィブゲノムコントロール、およびPCR反応(−コントロールPCR)に対する2つのネガティブコントロールが示される。544および680bpバンドは、第5エクソンと第6エクソンとの間にそれぞれスプライスされていないイントロンを有しないか、あるいは有するアルデヒドデヒドロゲナーゼのmRNAの存在を示す。下方のパネルの597bpバンドは、すべてのサンプルでRNAの存在を確認する。RT−PCRは、ADHがヘテロ接合性BN鳥では発現されたが、ホモ接合性BN鳥では発現されず、このことは、導入遺伝子の挿入がこの遺伝子の転写を止めたことを示した。
【図23】アルデヒドデヒドロゲナーゼ3ファミリーメンバーA2転写での野生型対立遺伝子からのRT−PCR産物の配列。産物AおよびBは、第5エクソンと第6エクソンとの間でそれぞれ、136bpのスプライスされていないイントロンを有しないか、あるいは有する転写物に由来する。
【図24】UbC−loxP−stop−loxP−Reaper導入遺伝子を保有するニワトリ。A.3つのUbC−loxP−stop−loxP−Reaperトランスジェニック株(6−03、6−51および9−51)のサザンブロット分析。G1鳥からのゲノムDNAサンプルとUbC−loxP−stop−loxP−Reaperベクターとを、SpHIまたはBclIで消化した。消化されたDNAを0.7%のアガロースゲルで分離し、ナイロン膜にブロッティングし、放射能標識されたReaper特異的プローブとハイブリダイズして連結フラグメントを同定した。ハイブリッド形成フラグメントのサイズは、ベクターに対するよりも、ゲノムDNAに対して大きく、導入遺伝子が組み込まれたことを示す。B.UbC−loxP−stop−loxP−Reaper構築物の概略図。導入遺伝子は、UbC−プロモーターとloxP−stop−loxP−Reaper導入遺伝子とから構成される。SV40ポリアデニル化信号(SV40)とブラスチシジン耐性カセット(bsd)は、UbC−loxP−stop−loxP導入遺伝子の3’側に挿入された。構築物は、5’と3’LTRに隣接した。制限酵素部位の位置が示され、予想される制限サイズが示される。
【図25】pLenti−ERNI−Cre導入遺伝子を保有するニワトリ。A.8つのERNI−Cre株のサザンブロット分析。ゲノムDNAサンプルをBglIIで消化した。消化されたDNAを0.7%のアガロースゲルで分離し、ナイロン膜にブロッティングし、放射能標識Creで探索した。ハイブリッド形成フラグメントのサイズは、予想された4.6kbであった。B.ERNI−Cre導入遺伝子の概略図。導入遺伝子は、ERNIプロモーターおよびCre導入遺伝子からなる。SV40ポリアデニル化信号(SV40)およびブラスチシジン耐性カセット(bsd)は、ERNI−Cre導入遺伝子の3’側に挿入された。構築物は、5’および3’LTRに隣接した。BglII制限酵素部位の位置が示され、予想される制限サイズが示される。
【図26】Doc−2細胞株からのGFP陽性細胞およびGFP陰性細胞のFACSソーティング。2種類の細胞が、PGCでCre組み換え酵素を発現するERNI−Cre導入遺伝子を含む環状プラスミドでDoc−2細胞株をトランスフェクトして作製された。GFP陰性細胞は、CX−eGFP遺伝子を保有するドッキング部位ベクター上のLoxP部位間の配列の切り出しの結果である。
【図27】10,652bp導入遺伝子のPGCのDoc−1株およびニワトリへの組み込みを示す2羽のひなのサザン分析。DOCl PGC株(P印のレーン)とDOCl PGC(ClおよびC2の目印のレーン)で作出されたG0キメラの繁殖に由来する2羽のひなからのゲノムDNAをBglIIまたはEcoRIで消化した。消化物をアガロースゲルで分画し、ナイロン膜に移し、放射能標識されたEGFP配列とハイブリダイズした。この分析は、ベクター組み込み部位で隣接するゲノム配列に結合したドッキング部位ベクターを含む連結フラグメントを検出する。これらの連結フラグメントのサイズは、組み込み部位に依存して変化し、PGCにおける各導入遺伝子挿入事象について診断する。この場合、BglIIフラグメントは、約12kbであり、EcoRIフラグメントは、12kbより大きい。フラグメントサイズは、PGCとそれらに由来するひなで同一であり、それは、これらのひながDOC1挿入物を保有するPGCに由来したことを示す。
【図28】pLenti−ERNI−Creトランスジェニックニワトリの10の異なる株によるReaper導入遺伝子のCre媒介組み換えに対するサザンブロットアッセイ。A.DNAのサザンブロット分析は、Cre導入遺伝子の1コピーとloxP導入遺伝子の1コピーとを保有する2重トランスジェニック胚からの脳(b)および筋肉(m)から単離されたDNAについてのサザンブロット分析。ゲノムDNAをSacIで消化した。消化されたDNAを、0.7%のアガロースゲルで分離し、ナイロン膜にブロッティングし、Reaper遺伝子とレンチウイルス・ベクター・バックボーン(ブラスチシジン遺伝子およびSV40配列)の部分からなるプローブにハイブリダイズした。このプローブは、全長および組み換えloxP−Reaper導入遺伝子の両方に等しくハイブリダイズする。組み換え導入遺伝子に対する全長(非組み換え)のバンド強度の比率は、Cre株の活性を表す。B.loxP−Reaper導入遺伝子のCre媒介組み換えの概要の説明。全長loxP−Reaper導入遺伝子は1.4kbの配列を含み、それは停止カセットと呼ばれて、同じ方向にloxP部位に隣接する。2つのloxP部位間の組み換えは、染色体から1.4kbの介在配列の切り出しをもたらし、1つのloxP部位を後に残す。切り出しの後、組み換えられたloxP−Reaper導入遺伝子は、サイズが1.4kb減少する。プローブおよびSacI制限酵素部位の位置が示され、そして、予想される制限サイズが示される。
【図29】Cre4株による3つの異なるReaper loxPカセット導入遺伝子(6−03、6−51および9−51)の組み換え。A:loxP−Reaper導入遺伝子(R)の1コピーのみを保有するトランスジェニック胚またはCre4導入遺伝子の1コピーと3つの異なるloxP−Reaper株(6−03、6−51と9−51)に対するloxP−Reaper導入遺伝子(C+R)の1コピーとを保有する2重トランスジェニック胚のサザンブロット分析。ゲノムDNAをSacIで消化した。消化されたDNAを、0.7%のアガロースゲルで分離し、ナイロン膜にブロッティングし、Reaper遺伝子とレンチウイルス・ベクター・バックボーン(ブラスチシジン遺伝子およびSV40配列)の部分からなる放射能標識プローブにハイブリダイズした。ハイブリッド形成フラグメントのサイズは、全長(非組み換え)loxP−Reaperフラグメントに関して2.8kbと予想通りであり、組み換えloxP−Reaperフラグメントに関して1.4kbであった。B:loxP−Reaper導入遺伝子のCre媒介組み換えの概要の説明。全長loxP−Reaper導入遺伝子は、1.4kbの配列(STOPカセットと呼ばれる)を含み、同じ方向にloxP部位に隣接する。2つのloxP部位の間の組み換えは、染色体から1.4kbの介在配列の切り出しをもたらし、1つのloxP部位を残す。切り出しの後、組み換えられたloxP−Reaper導入遺伝子は、サイズが1.4kb減少する。プローブおよびSacI制限酵素部位の位置が示され、そして、予想される制限サイズが示される。
【図30】非切り出しGFPに陽性のDoc2細胞株(レーン1)およびcx−GFP−cx−neo配列が欠失しているDoc2細胞(レーン2)のサザン分析。細胞は、緑色蛍光の発現に対するFACS分析によって分類された。2つの細胞集団からのゲノムDNAを調製し、HindIII制限酵素で消化し、そして、DNAは、ピューロマイシン耐性遺伝子からの放射能標識配列にハイブリダイズした。5521bpの予測されたフラグメントは、GFP陽性(非切り出し細胞)細胞中に存在し、そして、1262bpの予測されたフラグメントが切り出し細胞に存在した。この結果は、Cre−lox組み換えが、DOC2細胞中に組み込まれたドッキング部位構築物における2つのloxP部位の間に存在するCX−EGFP−CX−neo配列の欠失をもたらすことを示す。
【図31】IgL pKO5Bターゲティングベクターの図。一番上のラインは、ターゲティングベクターIgL pKO5Bの構築物を示す。このラインは、loxP部位とattP部位とを含む5’相同領域、および3’相同領域に対するベクター構築物を示す。2番目のラインは、ニワトリ野生型IgL対立遺伝子に対するターゲティングベクターの関係を示す。3番目のラインは、JおよびC遺伝子欠失または遺伝子破壊によって作出される変異体対立遺伝子を示す。
【図32】KO−07ノックアウトクローンにおけるIgL遺伝子座の欠失を示すサザンブロット分析。左側のパネル:IgL pKO5Bでトランスフェクトされた5つのクローンPGC株からのDNAを、SacIで消化して、0.5kbのSacI−BstEIIフラグメントで探索した場合の、5’相同領域に関して得られたハイブリダイゼーション。野生型IgL遺伝子座は、約10kbであり、そして、標的欠失を有する変異体フラグメントは、約4kbである。右側パネル:同じ5つのクローンからのDNAを用いて、3’相同領域について得られたハイブリダイゼーション。ゲノムDNAをBstEIIで消化して、3’の1.7kbのNsil−Mfelフラグメント(これは、ターゲティングベクターの外側にある)とハイブリダイズした。
【図33】IgLノックアウトが、7つのニワトリ胚のうちの5つ(胚2、3、4、6および7)に伝達されたことを示すサザンブロット分析。胚1および5は、野生型胚であり、これはヘテロ接合性KO−07ノックアウトPGCからの野生型IgL対立遺伝子を受け継いだ。
【発明を実施するための形態】
【0030】
発明の詳細な説明
本明細書中で使用されるように、用語「ニワトリ胚幹(cES)細胞」は、ES細胞の形態を示し、ステージX(E−G&K)の胚(マウス胚盤胞にほぼ等しい)の明域由来のレシピエント胚中の体細胞組織に寄与する細胞を意味する。CES細胞は、マウスES細胞のいくつかのインビトロ特性(SSEA−1+、EMA−1+、およびテロメラーゼ+など)を共有する。ES細胞は、全ての体細胞組織をコロニー形成する能力を有する。
【0031】
本明細書中で使用されるように、用語「始原生殖細胞(PGC)」は、PGCの形態を示し、レシピエント胚中の生殖系列に排他的に寄与する細胞を意味し、PGCは、ステージ12〜17(H&H)の胚から採取した全血に由来し得る。PGC表現型は、(1)生殖系列特異的遺伝子CVHおよびDazlがこの細胞株で強く転写されること、(2)細胞がCVHタンパク質を強く発現すること、(3)ステージXやステージ12〜17(H&H)のレシピエント胚に注入した場合に、細胞が体細胞組織に寄与しないこと、(4)細胞がEG細胞を生じること(以下を参照のこと)、または(5)ステージ12〜17(H&H)の胚に注入した場合に、細胞が生殖系列を介してPGC遺伝子型を伝達すること、によって確立することができる(Tajimaら、(1993)Theriogenology 40,509−519;Naitoら、(1994)Mol.Reprod.Dev.,39,153−161;Naitoら、(1999)J Reprod.Fert.117,291−298)。
【0032】
本明細書中で使用されるように、用語「ニワトリ胚生殖(cEG)細胞」は、PGCに由来し、機能がマウスEG細胞に類似する細胞を意味する。cEG細胞の形態は、cES細胞の形態に類似し、cEG細胞は、ステージX(E−G&K)のレシピエントに注入する場合、体細胞組織に寄与する。
【0033】
本明細書中で使用される、用語「トランスジェニック」は、その体細胞および生殖細胞中で導入遺伝子をコードし、導入遺伝子によって与えられる特徴をその子孫に伝達することができる動物を意味する。用語「トランスジェニック」は、また、内因性遺伝子座における選択部位特異的遺伝子の不活化を含む動物を意味し、限定されるものではないが、内因性遺伝子座における有限の遺伝子セグメントの欠失を含み、これは、遺伝子の文字通りの欠失、機能性の破壊、停止コドン、もしくはナンセンス配列、attP部位の挿入による遺伝子の不活化をもたらす始原生殖細胞のゲノムに組み込まれる導入遺伝子またはターゲティング構築物の使用、または部位特異的遺伝子改変による遺伝子座の機能的不活化を産む他の人工物の使用による欠失を含む。既存のレトロウイルス技術は、部位特異的改変または形質転換細胞の選別を可能としないので(つまり、PGC細胞の長期の培養を持続させる、および部位特異的改変(例えば、遺伝子不活化など)の操作能力を有しない)、用語「トランスジェニック」は、レトロウイルス系を排除する。
【0034】
しかし、選択された遺伝子の機能を変えて、遺伝子改変から望ましい表現型を与える部位特異的変更を有する動物は含まれる。これらの導入遺伝子とそれらに由来する動物は、一般に「ノック−イン」と呼ばれる。導入遺伝子は、少なくとも10tcb、望ましくは10−25’kbの内因性DNAの欠失を挿入することができ、またはさらに遺伝子のサイズおよび構成に依存してターゲティングが選択される。好ましい実施形態では、トランスジェニック鳥は、全体的または部分的欠失または他の機能破壊のための内因性遺伝子標的に対応する任意の内因性遺伝子を欠如する。
【0035】
本明細書の例では、ニワトリについて記載されているが、ウズラ、七面鳥、キジ、その他などの他の鳥の種が、不当な実験をすることなく、そして、本明細書に開示された方法の成功裏の実施を合理的に予測してニワトリと置き換えることができる。
【0036】
組織特異的発現のために設計されたDNA構築物を培養物中のES細胞へ挿入することによって、ニワトリの卵白中で、有益な医薬品(例えばモノクローナル抗体など)を発現するニワトリが作出されている。参照:PCT US03/25270 WO04/015123(Zhuら)。そのような動物のための重要な実施可能な技術は、クローン化細胞の遺伝子型が培養中で操作されるために十分に長く生存し続けることができる、真に長期間のES細胞培養物の作製および維持である。
【0037】
しかし、ES細胞と異なり、始原生殖細胞(PGC)は、短期間を基本としてのみ培養されている。一旦培養期間が短期間を超えて延長されると、これらの細胞は生殖系列に排他的に寄与する能力を失う。典型的には、現在の培養技術を使用して培養物中で維持されたPGCは、増殖および増加しない。力強く成長しない場合、培養物は、「末期」であり、無期限に維持することができない。長期にわたり、これらの末期細胞培養物は分解され、細胞はその固有のPGC形態を失い、胚生殖(EG)細胞に戻る。胚生殖細胞は、PGCと異なる形態を獲得し、生殖系列に限定されなくなり、胚発生の初期段階に注入した場合に体細胞組織に寄与する能力を得る。予め決定した遺伝子型をレシピエント胚の生殖系列に導入し、それにより、動物が所望の遺伝子型を次世代に伝達することができるようにするために、PGCは精子および卵の前駆体であることが公知であるので、PGCは非常に魅力的である。
【0038】
PGCの長期培養物は、遺伝子の不活化または外因性DNAの挿入のあるなしにかかわらず、いくつかの重要な利益(養鶏業に依存する重要なニワトリ交配株の有益な遺伝子の特徴の維持など)を提供する。現在、有益な交配株を事故または疾患による喪失から回避するために、特別な措置が取られている。これらの措置には、種畜としての多数の株メンバーの維持および世界中の複数の場所でのこれらの種畜の複製が必要である。交配株内の遺伝的多様性の保存も重要であるので、将来のために蓄えている多数の有益な動物を維持する必要がある。生きた保存種畜中よりもむしろPGC細胞培養物中のこれらの有益な交配株の遺伝的特徴の保存により、大量の保存用交配集団の費用が回避される。
【0039】
PGCの長期培養物は、van de Lavoir,M−C,Diamond,J.,Leighton,P.,Heyer,B.,Bradshaw, R.,Mather−Love,C.,Kerchner,A.,Hooi,L., Gessaro,T.,Swanberg,S.,Delany,M.,and Etches,R.J.(2006).Germline transmission of genetically modified primordial germ cells.Nature 441,766−769に記載されている。
【0040】
PGCを使用する遺伝子操作されたニワトリの生産は、PGCの遺伝子型に遺伝子改変を導入し、遺伝子改変が起きた希少細胞を分離し、分析とG0キメラを作製するためにレシピエント胚への導入に対するための遺伝子改変細胞集団の拡大を必要とする。培養物中の標的細胞の広範な遺伝子操作技術は周知である。しかし、1つの主な困難は、培養物中でPGCの遺伝子型を変化させるために、遺伝子改変物を導入し、首尾よく形質転換した細胞を選択するのに適切な期間およびトランスフェクトした細胞が培養物中で成長および増殖する間、培養物の生存を長期間維持しなければならないということである。
【0041】
増殖することができる首尾よく形質転換した細胞を、クローンまたは略クローンの誘導から数日〜数週間以内に、多数の細胞(例えば、104〜107細胞)を生成する能力によって区別する。創始細胞は、所望の遺伝子改変を保有する稀な細胞である。典型的には、これらの細胞が、周知の遺伝子改変テクノロジー(例えば、リポフェクションまたはエレクトロポレーション)の適用後に10−4〜10−7の頻度で培養物中に生成される。したがって、培養物中のPGCの産生には、細胞が増殖し、培養物中の稀な遺伝子改変された細胞を選択するのに十分な数の細胞を生成するための空間および栄養を細胞に提供するように継代することが必要である。
【0042】
そのような集団を提供するためには、培養条件は、個別の遺伝子改変細胞からインビトロでの遺伝子分析およびキメラの産生のために使用される104〜107個の細胞のコロニーへと細胞が増殖するために十分に頑強でなければならない。これらの操作されたPGCは、得られた動物において成熟時に、精原細胞または卵原細胞の初期集団(すなわち、精子および卵子)に排他的に寄与するであろう。このような得られた動物では、体細胞組織全体はレシピエント胚に由来し、生殖系列はドナー細胞およびレシピエント胚の両方からの寄与を受けるであろう。生殖系列への合わさった寄与のため、これらの動物は、「生殖系列キメラ」として公知である。キメラの範囲に応じて、生殖系列キメラの子孫は、ドナー細胞またはレシピエント胚のいずれかに由来する。
【0043】
ニワトリの生殖系列は、ステージX(E−G&K)の胚の胚盤葉上層由来の細胞として開始され、初期胚盤葉下層に入る(Kagamiら(1997)Mol Reprod Dev 48,501−510;Petitte,(2002)J Poultry Sci 39,205−228)。胚盤葉下層が前方に進行するにつれて、前始原生殖細胞は、巨大なグリコーゲン負荷細胞として同定することができる生殖三日月環に前進する。これらの形態基準による生殖系列中の細胞の最も早い同定は、インキュベーション開始から約8時間後(Hamburger and Hamilton,(1951)J Morph 88,49−92によって確立された段階別分類を使用したステージ4)である。始原生殖細胞は、これらがステージ12〜17(H&H)の間に脈管構造を介して移動するまで、ステージ4(H&H)由来の生殖三日月環に存在する。この時点で、始原生殖細胞は、約200個の細胞の小集団である。脈管構造から、始原生殖細胞が生殖隆起に移動し、性腺が分化するにつれて、卵巣または精巣に組み込まれる(Swift,(1914)Am.J.Anat.15,483−516;Meyer,(1964)Dev Biol.10,154−190;Fujimotoら、(1976)Anat.Rec.185,139−154)。
【0044】
今まで試験されてきた全ての種では、始原生殖細胞は、EG細胞に分化することなく長期培養物中で増殖しなかった。従来のエレクトロポレーションまたはリポフェクションプロトコルによって遺伝子改変または不活化を導入するのに十分な数の細胞を産生するために、長期培養が必要である。典型的には、これらのプロトコルには、105〜107個の細胞が必要であり、したがって、全ての細胞分裂が、(1)同期に起こり、そして(2)2つの生きた娘細胞を産生すると仮定すると、1つの前駆体からのこれらの細胞の産生には、17〜24回倍増する必要がある。細胞ゲノムへの遺伝子改変物の導入は、稀な事象であり、典型的には、1×104〜1×106個の細胞に1回生じる。遺伝子改変後、細胞は、遺伝子改変物を保有および/または発現する1つの細胞からコロニーを確立することができなければならない。コロニーは、PCRまたはサザン分析によって分析して導入遺伝子の信頼性を評価することができる105〜107個の細胞集団に拡大することによって十分な数の細胞が得られなければならならず、次いで、ステージ13〜15(H&H)のレシピエント胚に注入する。したがって、細胞集団を産生するために、さらに17〜24回の細胞分裂が必要であり、遺伝子改変細胞集団を産生するために全部で34〜58回倍増することが必要である。細胞周期が24時間であると仮定すると、ステージ13〜15(H&H)のレシピエント胚への注入のための遺伝子改変された始原生殖細胞を産生するために、最短で34日間、一般に58日間の培養が必要である。次いで、注入した細胞は、生殖系列をコロニー形成し、機能的配偶子を形成し、受精後に新規の個体に発育することができなければならない。
【0045】
本明細書に記載される培養物において維持されるPGCは、培養物中に維持される間、特徴のあるPGC形態を維持する。PGC形態は、直接的観察によって観察することが可能であり、培養物中の細胞成長は、細胞が培養物中で確実に増殖させるための一般的な技術によって評価される。増殖する細胞培養物は、非末期であると定義されて、2つの異なる時点のうちの後の時点の方が培養物中の細胞数が多いことが認められる。本発明の培養物中のPGCは、任意の特定の培養物中に1×105個以上の細胞を有することができ、この数は長期にわたって増加することが認められる。したがって、本発明は、培養物の寿命のうちのより早い時点と比較して、何日後、何週間後または何カ月後に多数の細胞を含む増殖PGC培養物を含む。理想的には、培養物は、少なくとも1×105個の細胞を含み、培養物の任意の成長期間後により多数の細胞を有することを認めることができる。さらにまた、PGCは、培養物中の優占種であることが認められ、それは、非ニワトリのフィーダー細胞によってなされる最小の貢献を考慮した場合、細胞培養物の増殖成分は、他のニワトリ由来細胞を実質的に排除して、本質的にニワトリ始原生殖細胞から成る。
【0046】
培養物は、また、既存の培養物由来の細胞のサンプルまたはアリコートを分離することができ、且つ、新規の培養培地中に入れた場合に強い成長を示すような継代による増殖特性も示す。定義により、細胞培養物を継代する能力は、細胞培養物が成長および増殖し、且つ末期ではないことを示す。さらに、本発明の細胞は、数回の継代後に生殖系列キメラを作製し、PGC形態を維持する能力を証明する。本明細書中に記載のように、この増殖は、外因性DNA配列の安定な組み込みに適切な任意の細胞培養物の不可欠な特徴である。
【0047】
PGCは、任意の公知の技術によって得ることができ、本明細書中に記載の培養条件で成長させることができる。しかし、全血をステージ15の胚から取り出し、下記の培養培地に直接入れることが好ましい。このアプローチは、PGCを培地に入れる前に処理および分離工程に供する文献に記載の他のアプローチと異なる。最初は培地中に共存し得る全血由来のPGCと他の細胞との間の頑強な差分成長は、本明細書中に記載の培養物中のPGCの大集団を提供する。したがって、全血から直接由来のPGCは、培養物中で大きな細胞濃縮物に成長し、無制限の回数の継代を行うことができ、培養物中のPGCが本質的に成長および増殖している細胞のみであるような頑強な成長および増殖を示す。
【0048】
本発明の1つの態様は、多数(3個超、4個超、5、10、15、および20個超が含まれる)の生殖系列キメラ動物の作製であり、これらは全てその生殖系列中に遺伝的に同一のPGC由来細胞を有する。本発明の別の態様は、年齢差を集団内で有する、その生殖系列中に遺伝的に同一のPGC由来細胞を有する生殖系列キメラ集団の作製であり、このことは、生殖系列キメラを作製するための同一の長期細胞培養物の使用を反映する。年齢差は、始原生殖細胞を長期間培養するための現在利用可能な能力を超え、それは凍結することなく190日間にもなる。したがって、本発明は、細胞を凍結することなく、40日間、60日間、80日間、100日間、190日間などまたはその間の任意の他の整数値を超えて年齢が異なる、その生殖系列中に遺伝的に同一のPGC由来細胞を有する2個以上の生殖系列キメラを含む。本発明は、また、これらの生殖系列キメラを作製するために使用される非末期PGC培養物の存在と共にその生殖系列中に遺伝的に同一のPGC由来細胞を有する性的に成熟した生殖系列キメラの存在を含み、これらからさらなる生殖系列キメラを作製することができる。
【0049】
PGCを非常に安定な様式で培養物中に維持することができるので、細胞を低温保存し、解凍して、培養物中に維持されたPGCの表現型によって定義された子孫を作製する能力を有する生殖系列キメラを作製するための長期保存方法を得ることもできる。
【0050】
多数の生殖系列キメラを産生する能力により、生殖系列キメラの子孫にPGC由来遺伝子型を伝達する能力も得られる。したがって、本発明は、生殖系列中に不活化内因性遺伝子の遺伝子座を有する遺伝的に同一のPGC由来細胞を有する生殖系列キメラの両集団を含むが、その遺伝子型および表現型が培養物中で成長したPGCの遺伝子型によって完全に決定される生殖系列キメラの子孫も含む。PGC由来ノックアウト表現型の生殖系列での取り込みが認められた。このように、本発明は、不活化内因性遺伝子座を含む始原生殖細胞の遺伝子型の生殖系列への伝達により作製される生殖系列キメラの子孫を含む。したがって、本発明は、部位特異的遺伝子不活化からなるPGCを含む始原生殖細胞培養物、同じ始原生殖細胞をその生殖系列の一部として有する生殖系列キメラ、およびノックアウト遺伝子型および表現型を有する生殖系列キメラの子孫のそれぞれの存在を含む。
【0051】
レシピエント胚中のドナー由来PGCとレシピエント由来PGCとの比を変化させて、PGC由来のキメラ中の生殖系列のコロニー形成を助けることができる。発育中のニワトリおよびウズラ胚では、ブスルファンへの曝露により、始原生殖細胞集団が生殖三日月環から生殖隆起に移動するにつれて、始原生殖細胞集団が大幅に減少するか、または消失する(Reynaud(1977a)Bull Soc.Zool.Francaise 102,417−429;Reynaud(1981)Arch Anat.Micro.Morph.Exp.70,251−258;Aige−Gil and Simkiss(1991)Res.Vet.Sci.50,139−144)。24〜30時間のインキュベーション後に、ブスルファンを卵黄に注入する場合、50〜55時間のインキュベーション後に始原生殖細胞が脈管構造に再導入され、ドナー由来始原生殖細胞と共に生殖系列が再増殖され、その後、ドナー由来配偶子が産生される(Vickら、(1993)J.Reprod.Fert.98,637−641;Breslerら、(1994)Brit.Poultry Sci.35 241−247)。
【0052】
本発明の方法は、ニワトリから(例えば、ステージ15の胚の全血などから)のPGCを得ること、PGCを培養物中に入れること、内因性遺伝子の遺伝子座の不活化を操作すること、PGCを増殖させてその数を増加させること、多数の継代を可能にすること、操作されたPGCの長期培養物から生殖系列キメラを作製すること、およびPGCで操作された遺伝子不活化を示す遺伝子型および表現型を有する生殖系列キメラの子孫を得ることを含む。本発明の方法は、また、培養物中のPGC集団に不活化遺伝子または「ノックアウト」遺伝子を挿入して、不活化された、または機能的に破壊された内因性遺伝子座を有する、安定にトランスフェクトされたPGCを作製する工程と、安定に組み込まれた導入遺伝子を保有するこの集団から細胞を選択する工程と、安定に組み込まれた導入遺伝子を保有する遺伝子改変細胞をレシピエント胚に注入する工程と、生殖系列に不活化された遺伝子座を含む生殖系列キメラに胚を発生させる工程と、生殖系列キメラを性的に成熟するまで飼育する工程と、生殖系列キメラを交配してトランスジェニック子孫を得る工程を含み、ここで、遺伝子不活化は、培養PGCに由来する。遺伝子不活性化を達成するためにPGCに導入された遺伝子改変は、限定されるものではないが、ゲノムへの導入遺伝子のランダムインテグレーション、遺伝子のプロモーター領域へ挿入された導入遺伝子、ゲノム中の反復エレメントへの導入遺伝子の挿入、インテグラーゼを用いて導入されたゲノムに対する部位特異的変化、相同組換えにより導入されたゲノムに対する部位特異的変化、およびlox部位または部位特異的組み換えの基質である他の配列に隣接したDNAを切り出すことによりゲノムに導入された条件変異を含む。
【0053】
下記するように、本発明によれば、ニワトリPGC細胞株は、ステージ14〜16(H&H)の胚から採取した血液に由来し、大きな丸い形態をしている(図1)。これらの細胞は、長期培養後のその形態およびPGC由来子孫を産出する能力によってニワトリPGCであることが確認される。さらに、PGC培養物は、生殖系列特異的遺伝子であるDazlおよびCVHを発現し(図2)、CVHタンパク質は、培養物中の細胞によって産生される(図3)。培養物中のPGCは、また、テロメラーゼも発現し(図4)、これらが不死の表現型を有することを示す。さらに、PGCは、適切な培養条件で胚生殖(EG)細胞を生じる(図5)。類似性により、マウスおよびヒトのPGCは、類似の様式で処理した場合にEG細胞を生じる。マウスEG細胞は体細胞組織に寄与し、キメラの黒色の羽の色素沈着によって示されるように、ニワトリEG細胞も体細胞組織に寄与する。ニワトリPGCは、サザン分析によって示されるように遺伝子改変されている(図6)。この実施形態では、CXプロモーターは、PGCのゲノムに安定に組み込まれ、これを使用してPGCのゲノムに共に組み込まれたアミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ(APH)をコードする遺伝子の発現を容易にし、これを使用して培養培地に添加したネオマイシンへの耐性を付与し、遺伝子改変されたPGCを選択する。
【実施例】
【0054】
(実施例1。ニワトリPGC培養物の誘導)
ステージ14〜17(H&H)の胚の終末静脈洞から採取した2〜5μLの血液を、培地(幹細胞因子(SCF;6ng/mlまたは60ng/ml)、ヒト組み換え線維芽細胞増殖因子(hrFGF;4ng/mlまたは40ng/ml)、10%ウシ胎仔血清、および80%KO−DMEM馴化培地を含む)を含む96ウェルプレート中でインキュベーションした。好ましくは、1〜3μLを、ステージ15〜16(H&H)の胚の脈管構造から採取した。96ウェルプレートのウェルに、照射STO細胞を3×104細胞/cm2の濃度で播種した。
【0055】
KO−DMEM馴化培地を、10%ウシ胎仔血清、1% pen/strep、2mMグルタミン、1mMピルビン酸塩、1×ヌクレオシド、1×非必須アミノ酸、および0.1mMβ−メルカプトエタノールで補足し、5%ウシ胎仔血清を含むDMEM中での密集までのBRL細胞の3日間の成長によって調製した。24時間後、培地を除去し、培地の新規のバッチを3日間馴化した。これを3回繰り返し、3つのバッチを合わせてPGC培養培地を作製した。
【0056】
約180日間の培養後、PGC株の1つを、40% KO−DMEM馴化培地、7.5%ウシ胎仔血清、および2.5%ニワトリ血清からなる培地中で成長させた。これらの条件下で、PGCの倍加時間は約24〜36時間であった。
【0057】
培養開始時の主な細胞型は、胎仔赤血球であった。3週間以内の主な細胞型はPGCの細胞型であった。2つのPGC細胞株は、各胚から開始された18の培養物に由来した。
【0058】
PGC株を9ヶ月にわたって培養し、丸い形状を維持し、付着しないままである(図1AおよびB)。10%血清および10% DMSOを含むCO2非依存性培地中での低温保存後に、PGCは首尾よく解凍された。
【0059】
(実施例2。培養PGCはCVHおよびDazlを発現する)
CVHは、ショウジョウバエ中の生殖系列特異的遺伝子VASAのニワトリホモログであり、その発現はニワトリの生殖系列内の細胞に限定され、生殖三日月環中の約200個の細胞によって発現される(Tsunekawa,N.,Naito,M.,Sakai,Y.,Nishida,T.&Noce,T. Isolation of chicken vasa homolog gene and tracing the origin of primordial germ cells. Development 127,2741−50.(2000)。CVH発現は、雄の生殖系列の適切な機能に必要であり、CVH機能の喪失により雄マウスが不妊症を引き起こす(Tanaka,S.S.ら、The mouse homolog of Drosophila Vasa is required for the development of male germ cells.Genes Dev 14,841−53.(2000)。Dazlの発現は、カエル(Houston,D.W.& King,M.L. A critical role for Xdazl,a germ plasm−localized RNA,in the differentiation of primordial germ cells in Xenopus. Development 127,447−56,2000)、アホロートル(Johnson,A.D.,Bachvarova,R.F.,Drum,M.& Masi,T. Expression of axolotl DAZL RNA,a marker of germ plasm:widespread maternal RNA and onset of expression in germ cells approaching the gonad. Dev Biol 234,402−15,2001)、マウス(Schrans−Stassen,B.H.,Saunders,P.T.,Cooke,H.J.& de Rooij,D.G. Nature of the spermatogenic arrest in Dazl−/−mice. Biol Reprod 65,771−776,2001)、ラット(Hamra,F.K.ら、Production of transgenic rats by lentiviral transduction of male germ−line stem cells. Proc Natl Acad Sci USA 99,14931−6,2002)、およびヒト(Lifschitz−Mercer,B.ら、Absence of RBM expression as a marker of intratubular(in situ)germ cell neoplasia of the testis. Hum Pathol 31,1116−1120,2000)中の生殖系列に制限される。Dazlの欠失により、トランスジェニックマウスの精子形成欠損が起こる(Reijo,Rら、Diverse spermatogenic defects in humans caused by Y chromosome deletions encompassing a novel RNA−binding protein gene. Nat Genet 10,383−93,1995)。
【0060】
32日後、PGCをPBSで洗浄し、ペレット化し、Oligotex Direct mRNAキット(Qiagen)を使用してmRNAを組織サンプルから単離した。次いで、First−Strand cDNA合成(Invitrogen)のためのSuperScript RT−PCRシステムを使用して、9μlのmRNAからcDNAを合成した。2μlのcDNAを、その後のPCR反応で使用した。CVH配列(アクセッション番号AB004836)、Dazl配列(アクセッション番号AY211387)、またはβ−アクチン配列(アクセッション番号NM_205518)由来のプライマー配列は、以下であった。
【0061】
【化1】
プライマーV−1およびV−2を使用して、CVH転写物から751bpのフラグメントを増幅させた。プライマーDazl−1およびDazl−2を使用して、Dazl転写物から536bpのフラグメントを増幅させた。プライマーAct−RT−1およびAct−RT−Rを使用して、内因性ニワトリβ−アクチン転写物から597bpのフラグメントを増幅させた。製造者の説明書にしたがってAmpliTaq Gold(Applied Biosystems)を使用して、PCR反応を行った(図2)。
【0062】
(実施例3.PGCはCVHタンパク質を発現する)
T−Per組織タンパク質抽出キット(Pierce)を使用して新たに単離したPGCからタンパク質を抽出した。1% NP4O、0.4%デオキシコール酸塩添加した66mM EDTA、10mM、Tris(pH7.4)中での細胞の溶解によって細胞からタンパク質を抽出した。サンプルを、4〜15% Tris−HCLレディゲル(Bio−Rad)で泳動した。膜に移した後、説明書の通りにSuper Signal West Pico化学発光基質キット(Pierce)を使用してウェスタンブロットを行った。一次抗体としてウサギ抗CVH抗体を使用し(1:300)、二次抗体としてHRP抱合ヤギ抗ウサギIgG抗体(Pierce、1:100,000)を使用した(図3)。
【0063】
(実施例4。培養PGCはテロメラーゼを発現する)
始原生殖細胞をペレット化し、PBSで洗浄し、その後、分析まで−80℃で凍結した。細胞抽出物を調製し、テロメア反復増幅プロトコル(TRAP)(Kim,N.ら、Specific association of human telomerase activity with immortal cells and cancer.Science 266,2011−2014,1994)に基づいたTRAPezeテロメラーゼ検出キット(Serologicals Corporation)を使用して、製造者の説明書にしたがって分析した。図4。
【0064】
(実施例5。胚生殖(EG)細胞は、PGC培養物に由来することができる)
細胞をプレートに接着させ、FGF、SCF、およびニワトリ血清を除去し、細胞をES細胞培養物について用いられた条件と同一の条件下で培養することによって、ニワトリEG細胞をPGCから誘導した(van de Lavoirら、2006 High Grade Somatic Chimeras from Chicken Embryonic Stem Cells,Mechanisms of Development 12,31−41;van de Lavoir and Mather−Love(2006)Chicken Embryonic Stem Cells;Culture and Chimera Production,Methods in Enzymology,印刷中)。cEG細胞の形態は、cES細胞の形態と非常に似ている(図5A、B)。cEG細胞をステージX(E−G&K)の胚に注入する場合、cEG細胞は体細胞組織をコロニー形成して、cES細胞を使用して作製されたキメラと同一と思われるキメラを幼鳥として作製する能力を有する。新規の誘導されたトランスジェニックPGC株およびクローン誘導されたトランスジェニックPGC株の両方でニワトリEG細胞が認められる。GFP陽性PGC由来のEG細胞のサザン分析により、EG細胞がPGC起源であることが証明された(図15)。
【0065】
(実施例6。培養雄PGCは、雄鶏中で機能的配偶子を生じる)
雄始原生殖細胞株を、各Barred Rock胚から誘導した。株の確立後、細胞を、ステージ13〜15(H&H)の胚に注入した。表現型的に、孵化したニワトリは、白色レグホンに類似していた。雄を性的に成熟するまで飼育し、Barred Rock雌鶏と交配させた(表1)。黒色の子孫は、注入したPGCの生殖系列伝達を示す。雄鶏の生殖系列伝達率は、1%未満から86%まで様々であった(表1)。
【0066】
【表1】
PGCを、ステージXの胚の胚下腔に注入することもできる。培養209日後に1000個または5000個のPGCを照射した胚に注入した。孵化した雄ひなを性的に成熟するまで成長させ、交配して生殖系列伝達を試験した。試験した4羽の雄鶏のうちの3羽で生殖系列伝達が認められ、その頻度は0.15〜0.45%で変化した。これは、原腸形成前に注入した場合にPGCが生殖系列をコロニー形成することができることを示す。雄PGCの生殖系列伝達は、14羽の雌キメラ由来の1,625羽の子孫で認められなかった。
【0067】
(実施例7。培養雌PGCは雌鶏で機能的配偶子を生じる)
66日間培養したBarred Rock胚由来の雌PGCを、ステージ13〜16(H&H)の白色レグホン胚に注入し、孵化した全ひなは、表現型が白色レグホンであった。雌鶏を性的に成熟するまで飼育し、Barred Rock雄鶏と交配した。雌PGCは雌キメラを介して伝達され、その頻度は最大69%であった(表2)。
【0068】
【表2】
雌PGCを、雄レシピエント白色レグホン胚にも注入した。雄キメラを性的に成熟するまで飼育し、Barred Rock雌鶏と交配した。雌PGCの生殖系列伝達は、3羽の試験雄鶏の506羽の子孫で認められなかった。
【0069】
(実施例8.PGC由来の子孫は、生殖的に正常である)
3羽の雄および4羽の雌の非トランスジェニックPGC由来の子孫を互いに交配させた。53%と100%との間の卵が受精し(表3)、79%と100%との間の受精卵から胚が孵化胚を生じ(表3)、このことはPGC由来の子孫が生殖的に正常であることを示す。
【0070】
【表3】
(実施例9)
始原生殖細胞は、ステージ14−17の胚から分離されて、生殖細胞系に貢献することが示された(参照:実施例1〜8)。この場合、PGCは、脈管系を循環している。脈管系の形成の前に、PGCは、生殖三日月環(胚体の前にある)に位置した。生殖三日月環のPGCの前駆体は、十分に分かっていないが、PGCがステージX(Eyal−Giladi and Kochav)の胚の明域にある細胞に由来すると通常、思われている(Petitte,J.N. 2002. The Avian germline and Strategies for the Production of Transgenic Chickens. Journal of Poultry Science 39,205−228)。ステージX胚にある間、PGCは、生殖三日月環でそれらの識別のために使われる古典的な形態学的基準を使って確認することができない。驚くべきことに、ステージXのBarred Rock胚からの分散細胞の配置は、PGCをもたらし、生殖細胞系列に寄与することが示された。本発明者らは、個々に胚盤葉を集めて、パスツールピペットで粉砕して機械的にそれらを分散させることによって、この原理を証明した。細胞は、洗浄し、実施例1で記載された培地を含む照射BRL細胞で先に播種された48ウェルプレートにプレート化された。培養物は、播種後、最初の期間6〜10日間、継代された。その後、継代は、存在するPGCの濃度に依存した。2つの雄細胞株(PGC−A12とPGC−B11)が確立されて、実施例6で記載したように、それぞれ培養の45日と36日後に、レシピエント胚に注入された。5つの雄キメラは、各細胞株から作出された。表4に示すように、Barred Rock表現型は、10匹の雄のうち3匹の生殖系列により伝達され、機能的なPGCになる運命にある細胞が提供された培地で培養することができたことを証明している。
【0071】
【表4】
(実施例10。ネオマイシンおよびピューロマイシンに対するPGCの感受性)
全組織中で)強く発現するCX−プロモーターの調節下で抗生物質耐性を発現する細胞の成長に必要なピューロマイシンおよびネオマイシンの濃度を確立するために、ネオマイシンおよびピューロマイシンに対するPGCの感受性を決定した。これらの実験は、全ての非トランスフェクション細胞を消失するために10日間に300μg/mlの濃度のネオマイシンが必要であることを証明した。0.5μg/mlの濃度のピューロマイシンは、7〜10日間以内にPGCを消失させるのに十分であった。
【0072】
(実施例11。PGCの遺伝子改変)
NotI線状化cx−neo導入遺伝子(図6を参照のこと)の20μg(20μl)を、167日間培養した5.8×106個のPGC集団に添加した。細胞およびDNAを、800μlのエレクトロポレーション緩衝液に再懸濁し、672ボルトおよび持続時間100秒の方形波パルスを8回印加した。10分後、細胞を培養培地中に再懸濁し、24ウェルプレートに等分した。エレクトロポレーションから2日後に、培地1mlあたり300μgのネオマイシンを添加して、cx−neo導入遺伝子を発現する細胞を選択した。細胞を、19日間選択下に維持した。19日後、細胞を選択から取り出し、分析のために拡大した。PGCの比率を、300μg/ml下にさらに31日間保持することにより、PGCが抗生物質に機能的に耐性を示すことが証明された。
【0073】
図6に関して、プラスミドコントロールのために、cx−neoプラスミドDNAをNotIで線状化し、次いで、EcoRIまたはBamHIで消化して、HindIII消化で認められたインタクトなプラスミドよりもわずかに小さなフラグメント(5kb)を産生した。約2kbのcx−neoプラスミドの内部フラグメントを、StyIまたはNcoIでの消化によって放出させた。約2.6kbのより大きな内部フラグメントを、EcoRIおよびKpnIでの消化によって放出させた。EcoRI、BamHI、およびHindIIIでのPGC株由来のゲノムDNAの消化により、6kbを超えるバンドが明らかとなり、これは、cx−neo導入遺伝子がPGCゲノムに組み込まれたことを示す。KpnIとのStyI、NcoI、およびEcoRIでの消化後にプラスミドDNA中に明らかとなった内部フラグメントは、PGCのゲノムDNA中にも存在し、cx−neo導入遺伝子が変化することなくPGCゲノムに組み込まれたことを示す。従来の導入遺伝子構築技術を使用して、さらなるエレメントを組み込むことができ、その例は、調節エレメント、組織特異的プロモーターおよびタンパク質をコードする外因性DNAである。
【0074】
上記のように、トランスジェニック動物を産生するためのPGCの遺伝子改変の能力は、非常に少数の種でのみ証明されている。類似の遺伝子操作を、マウスのES細胞を使用して行われる遺伝子操作を参照することによって、ニワトリPGC中で行うことができる。マウスでは、相同組換えの個別の使用およびその後のキメラ子孫およびトランスジェニック子孫の産生のための胚幹(mES)細胞への染色体移入は周知である。部位特異的相同組換えまたは遺伝子ターゲティングの強力な技術が開発されている(Thomas,K.R.and M.R.Capecchi, Cell 51:503−512,1987;Waldman,A.S., Crit.Rev.Oncol.Hematol.12:49−64,1992による総説を参照のこと)。クローン化DNAの挿入(Jakobovits,A.,Curr.Biol.4:761−763,1994)ならびにCre−loxP系技術による染色体フラグメントの操作および選択(Smith,A.Jら、Nat.Genet.9:376−385,1995;Ramirez−Solis,R.ら、Nature 378:720−724,1995;米国特許第4,959,317号;同第6,130,364号;同第6,130,364号;同第6,091,001号;同第5,985,614を参照のこと)は、安定な遺伝子キメラを産生するための遺伝子操作およびmES細胞への遺伝子移入に利用可能である。
【0075】
始原生殖細胞のゲノムは、一般に、静止状態にあると考えられ、したがって、クロマチンは非常に濃縮された状態であり得る。従来のエレクトロポレーションプロトコルによる広範な試験により、PGCのゲノムに遺伝子改変物を導入するためには特別な方法が必要であることが示唆される。下記のように、導入遺伝子をニワトリβ−グロビン遺伝子座由来のインスレーターエレメントで取り囲んで発現を増強することができる。β−グロビンインスレーターエレメントを含めることによって成長することができるクローンが日常的に産生され、これを分析し、レシピエント胚に注入する。
【0076】
抗生物質(例えば、ネオマイシン、ピューロマイシン、ハイグロマイシン、his−D、ブラストサイジン、ゼオシン、およびgpt)耐性遺伝子の発現を引き起こすために使用される従来のプロモーターは、遍在的に発現する。典型的には、プロモーターは、β−アクチン、CMV、またはユビキチンなどの「ハウスキーピング」遺伝子に由来する。全細胞中で典型的に高レベル発現するので構成的プロモーターが有用である一方で、これらは、ニワトリの全寿命にわたって、全組織といわないまでも、ほとんどの組織で発現し続ける。一般に、発現は、発現を必要とする組織および発生段階のみに制限されるべきである。始原生殖細胞の選択のために、発現を必要とする期間は、培地中に抗生物質が存在する場合、インビトロで存在する期間である。一旦細胞が胚に挿入されると、選択マーカー(すなわち、抗生物質耐性遺伝子)の発現が終了することが好ましい。抗生物質耐性遺伝子の発現を制限するために、「神経誘導に対する初期応答」(ERNI)プロモーターを使用する。ERNIは、発生の初期段階(例えば、ステージX(E−G&K))および培養物中で選択的に発現する遺伝子であり、したがって、このプロモーターを使用して抗生物質耐性遺伝子の発現を駆動し、遺伝子改変物を保有するPGCを選択する。発生の初期段階でERNIのみが発現するので、抗生物質耐性を付与する遺伝子は、成熟動物中で発現しない。
【0077】
(実施例12。長期PGC細胞培養物の均質性)
長期培養後のPGC培養物の均質性を決定するために、ES、EG、DT40(ニワトリB細胞株)、およびPGCを、抗CVH、ニワトリ管ホモログに対する抗体、および1B3抗体で染色した(Halfter,W.,Schurer,B.,Hasselhorn,H.M.,Christ,B.,Gimpel,E.,and Epperlein,H.H., An ovomucin−like protein on the surface of migrating primordial germ cells of the chick and rat. Development 122,915−23.1996))。CVH抗体の発現は、生殖細胞に制限され、したがって、抗CVH抗体は、生殖細胞の信頼できるマーカーである。1B3抗原は、性腺の移動およびコロニー形成の間にニワトリPGCの表面上に存在するオボムチン様タンパク質を認識する。
【0078】
細胞を、CMF/2%FBSで洗浄し、4%パラホルムアルデヒドで5分間固定し、再度洗浄した。脈管を染色すべき細胞アリコートに0.1% TritonX−100を1〜2分間浸透させた。一次抗体を20分間添加し、細胞を2回洗浄し、二次抗体(CVHおよびコントロールのためのAlexa 488抗ウサギIgGならびに1B3のためのAlexa 488抗ウサギIgM)と共に15分間インキュベートした。コントロールとして、細胞のアリコートを、二次抗体のみで染色した。さらに2回の洗浄後、FACS分析用の細胞を調製した。
【0079】
図7に関して、DT40細胞、ES細胞、およびEG細胞は、CVHおよび1B3抗体で染色した場合、全てバックグラウンドを示す。しかし、PGCは、CVH抗体および1B3抗体の両方でさらにより強く染色される。CVHおよび1B3のいずれでも染色されないPGCの小集団が存在し、細胞の小集団がPGC表現型を示さないことを示す。2つの親PGC株およびPGC13親細胞株由来の4つのトランスフェクトされた細胞株(G−09、P84、P97/6、およびP97/33)を、脈管および1B3抗体(PGC13および102)を使用して試験した。全て同一のパターンを示し、これは、種々のPGC培養物が同一の高い比率でPGC表現型を発現する細胞を含むことを示す。
【0080】
(実施例13:始原生殖細胞の遺伝子改変)
環状CX−GFPプラスミドを使用したエレクトロポレーションにより、PGCの一過性トランスフェクション率は、1〜30%の間で変動することが明らかとなった。8回の100μ秒および800Vの方形波パルスを使用して、本発明者らは、CX−neo構築物を保有するPGC細胞を得て、G−09と命名した。図6を参照のこと。サザンブロット分析を使用して、構築物の組み込みを評価した。しかし、この安定にトランスフェクトされた株の単離は、非再現性の事象であった。G−09を除き、方形波パルスおよび指数関数的減衰パルスの両方を使用した37のトランスフェクション実験における線状化構築物を使用した17×107個のPGCのエレクトロポレーション後に、PGCは安定にトランスフェクトされなかった。これらの各実験では、PGC数は、1×106〜10×106に変化した。マウス、ニワトリ、およびヒトにおけるES細胞研究で広く使用されている以下のプロモーターを試験した:CAGとも呼ばれるCXプロモーター(Niwa,H.,Yamamura,K.,and Miyazaki,J., Efficient selection for high−expression transfectants with a novel eukaryotic vector. Gene 108,193−9.1991)、CMVエンハンサーを含むニワトリβ−アクチンプロモーター、PGKプロモーター、MC1プロモーター、およびUbcプロモーターを含む。これらのプロモーターは、トランスフェクション効率を増加させなかった。選択マーカーの発現および遺伝子改変細胞株のクローン誘導を可能とするために、組み込まれた構築物と共にインスレーターを使用した。
【0081】
インスレーターは、不活性なクロマチンドメインから活性なクロマチンドメインを分離し、隣接するエンハンサーの活性化効果または隣接する凝集クロマチンのサイレンシング効果から遺伝子を隔離するDNA配列である。ニワトリでは、β−グロビン遺伝子座の5’側に存在する5’HS4インスレーターが、Felsenfeldおよび協力者によって十分に特徴づけられている(Burgess−Beusse,B.,Farrell,C.,Gaszner,M.,Litt,M.,Mutskov,V.,Recillas−Targa,F.,Simpson,M.,West,A.,and Felsenfeld,G.(2002)).The insulation of genes from external enhancers and silencing chromatin.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99 Suppl.4,16433−7。このインスレーターは、β−グロビン遺伝子座を構成的に凝縮されたクロマチンの上流領域から保護する。本発明者らは、ニワトリβ−アクチン−neoカセットの5’側および3’側の両方のインスレーターとしてニワトリβ−グロビン5’HS4配列を使用したネオマイシン耐性を引き起こすニワトリβ−アクチンプロモーターを使用して導入遺伝子を組み立てた。
【0082】
ニワトリβ−グロビン遺伝子座由来の高感度部位4の250bpコア配列を、以下のプライマー組を使用してPCR増幅した。
【0083】
【化2】
PCR産物を、pGEM−Tにクローン化し、配列決定した。HS4部位の縦列重複を、pGEMクローン中のHS4をBamHIおよびBglIIで消化して挿入物を放出させ、BglIIで消化してベクターを線状化することによって作製した。HS4フラグメントを、HS4インスレーターのコピーを含むベクターにライゲーションした。クローンをスクリーニングし、2つのHS4コピーが同一方向であるクローンを選択した。これを、2×HS4と呼ぶ。
【0084】
(実施例14:HS4β−アクチン−neoを使用したバルク選択)
β−アクチンneoを、Buerstedde(クローン574)から得て、pBluescriptに移入した。次いで、β−アクチンneoの5’末端および3’末端の両方で2×HS4をクローン化して、HS4−β−アクチンneoを産生した。この構築物を使用して、トランスフェクションを8回行った。各トランスフェクションのために、5×106個のPGCを、400μlのエレクトロポレーション緩衝液(Specialty Media)中に再懸濁し、20μgの線状化DNAを添加した。1回の指数関数的減衰(ED)パルス(200V、900〜1100μF)または8回の方形波(SW)パルス(250〜350V、100μ秒)を印加した。トランスフェクション後、細胞を数日間成長させ、その後、ネオマイシン選択剤(300μg/ml)を添加した。各画分をプールとして成長させた。5〜8個の画分から耐性細胞を単離した。
【0085】
トランスフェクション細胞の2プールに対してサザン分析を行った(図8)。PGC細胞株P84およびP85由来の2μgのゲノムDNAならびに20pgのプラスミド(HS4−β−アクチンneo)を消化した。消化物を0.7%ゲルで泳動し、10×SSC中でナイロン膜に毛細管現象によって一晩移し、Rapid Hyb(Amersham)中にて放射能標識neo遺伝子配列で2時間探索した。洗浄後、ブロットをフィルムに−80℃で一晩感光した。図8に関して、レーン1はP84であり、レーン2はP85であり、レーン3はプラスミドである。プラスミドコントロールのために、HS4−β−アクチンneoプラスミドDNAを、NotIで線状化した。2.3Kb内部フラグメントを得るために、PGC DNAおよび線状化プラスミドを、BamHIで消化した。P84およびP85の両方は、2.3Kbのサイズの内部フラグメントを示す。約2.6kbのより大きな内部フラグメントを、HindIIIでの消化によって放出させた。さらに、この内部フラグメントは、P84およびP85消化物の両方に存在する。EcoRIおよびBglIIでのP84およびP85のゲノムDNAの消化により、導入遺伝子がゲノムに組み込まれた場合、2.9Kbを超えるバンドが明らかとなるはずである。P84では、連結点フラグメントは認められず、P84がいくつかの異なるクローンの複合物であることを示す。P85では、EcoRI消化物中に4.5〜5Kbの連結点フラグメントが存在し、BglII消化物中に5Kbの連結点フラグメントが存在し、このことは、P85がゲノムに組み込まれ、培養物が実質的に1つのクローンから構成されることを示す。本実施例は、始原生殖細胞中の選択マーカーの信頼できる発現のための構築物の好ましいエレメントとしてのインスレーターの有用性を示す。
【0086】
(実施例15:遺伝子改変PGCのクローン誘導)
以下の実施例は、始原生殖細胞の遺伝子改変株をクローン的に誘導し得ることを示す。
【0087】
第1に、β−アクチン−eGFPを作製した。eGFP遺伝子を、XmnIおよびKpnIを使用してCX−eGFP−CX−puroから放出させ、EcoRIおよびXmnIを使用してHS4−β−アクチンpuroからβ−アクチンを放出させ、2つを3方向ライゲーションとしてEcoRIおよびKpnIで消化したpBluescriptにクローン化してβ−アクチンEGFPを産生した。次いで、BamHIおよびKpnIを使用してβ−アクチンeGFPを放出させ(T4 DNAポリメラーゼを使用して平滑末端化し)、BglIIおよびEcoRVで消化したHS4−β−アクチンpuroにクローン化した。
【0088】
この構築物を使用してトランスフェクションを5回行った。各トランスフェクションのために、5×106個のPGCを、400μlのエレクトロポレーション緩衝液(Specialty Media)中に再懸濁し、20μgの線状化DNAを添加した。EDパルス(150〜200V、900μF)またはSW(350V、8パルス、100μ秒)パルスを印加した。トランスフェクション後、細胞を48ウェルにそれぞれプレートし、数日間成長させた後に選択剤(0.5μg/ml)を添加した。5回のトランスフェクションのうちの4回において、全部で5つのクローンが認められた。1つのクローンTP103を、サザンによって分析した(図9)。図11に関して、プラスミドコントロールDNAを、NotIで線状化した。KpnIでのDNAの消化によって内部フラグメントを放出させた。TP103およびプラスミドの両方において、同サイズのフラグメントが放出された。NcoI、MfeI、およびSphIでのTP103のゲノムDNAの消化により、消化したプラスミドDNAの対応するレーンよりも大きなバンドが明らかとなるはずである。MfeI消化したTP103ゲノムDNAのレーンでバンドは認められず、これは、バンドが非常に大きいためである場合がある。NcoIおよびSphI消化を示すレーンでは、TP103ゲノムDNA中に、プラスミドDNA中に放出されたフラグメントより実質的に大きいフラグメントが放出され、導入遺伝子がTP103細胞株のゲノムに組み込まれたことを示す。
【0089】
HS4−β−アクチン−puroのクローン誘導
第1に、β−アクチンpuroを、CX−EGFP−CX−puro由来のpuro(XmnI−EcoRI)、pBS中のβ−アクチンneo由来のβ−アクチン(上記を参照のこと)(Sal−XmnI)、およびpBluescript(SalI−EcoRI)の3方向ライゲーションによって作製した。次に、BamHI/SAP処理2×HS4ベクターへのBamHI消化β−アクチンpuroのライゲーションによって2×HS4の2つのコピーを含むpBSにβ−アクチンpuroをクローン化した。
【0090】
この構築物を使用してトランスフェクションを3回行った。各トランスフェクションのために、4〜5×106個のPGCを、400μlのエレクトロポレーション緩衝液(Specialty Media)中に再懸濁し、20μgの線状化DNAを添加した。200V、900μFのEDパルスを印加した。トランスフェクション後、細胞を48ウェルにそれぞれプレート化し、数日間成長させた後に選択剤(0.5μg/ml)を添加した。2回のトランスフェクションでクローンは認められなかった。第3のトランスフェクションから2つのコロニーを単離した。
【0091】
HS4−cx−eGFP−cx−Puroのクローン誘導
HS4−cx−eGFP−cx−Puroを使用してトランスフェクションを3回行った。5×106個のPGCを、400μlのエレクトロポレーション緩衝液(Specialty Media)中に再懸濁し、20μgの線状化DNAを添加した。350Vで100μ秒のSWパルスを、各トランスフェクションに8回印加した。トランスフェクション後、細胞を48ウェルにそれぞれプレート化し、数日間成長させた後にピューロマイシン選択剤(0.5μg/ml)を添加した。2回のトランスフェクションから全部で16個のクローンが単離された。
【0092】
cx−neoのクローン誘導
PGC13細胞株は、cx−neo選択マーカーを保有するプラスミドを使用してエレクトロポレーションされた。ネオマイシンへの曝露後、ネオマイシンに耐性を示す細胞株(G−09)を誘導した。この細胞株の核型を決定し、全ての細胞が第2染色体のpアームを欠失していた(表5および図10)。これらのデータは、G−09が第2染色体のpアーム中にサイン欠失を保有するPGCにクローン的に由来することを証明する。
【0093】
【表5】
(実施例16:PGC中の選択マーカーの組織特異的発現)
遺伝子ERNIは、ニワトリ胚の前原始線条段階から発現し、ヘンセン結節由来のシグナルに対する初期応答遺伝子である(Streit,A.,Berliner,A.J.,Papanayotou,C.,Sirulnik,A.,and Stem,C.D.(2000).Initiation of neural induction by FGF signalling before gastrulation. Nature 406,74−8)。さらに、ERNIは、ニワトリES細胞中で発現する(Acloque,H.,Risson,V.,Birot,A.,Kunita,R.,Pain,B.,and Samarut,J.(2001). Identification of a new gene family specifically expressed in chicken embryonic stem cells and early embryo. Mech Dev 103,79−91)。ERNI遺伝子(cENS−1とも呼ばれる)は、固有の5’および3’UTR配列に加えて、1つの長い読み取り枠が486bpの直列反復配列に隣接する固有の構造を有する。この構造がレトロウイルスLTR様構造を連想させるという考えに基づいて、Acloqueら(2001)は、プロモーター/エンハンサー活性のcDNA配列の異なる部分をアッセイし、3’UTR中の固有の配列領域がプロモーターとして作用することを見出した。PCRプライマーは、Acloqueら(2001)に記載のように、本質的に設計されてERNI遺伝子の3’UTRの822bpフラグメントを増幅した。ERNI配列の増幅後、SV40ポリA部位を使用して、これらをネオマイシン耐性遺伝子の上流にクローン化して、ERNI−neo(1.8kb)を作製した。次いで、2×HS4インスレーターを、ERNI−neo選択マーカーカセットのいずれかの側にクローン化した。
【0094】
HS4−Emi−neoを使用してトランスフェクションを2回行った。5×106個のPGCを、400μlのエレクトロポレーション緩衝液(Specialty Media)中に再懸濁し、20μgの線状化DNAを添加した。第1のトランスフェクションでは、175V、900μFのEDパルスを1回印加し、第2のトランスフェクションでは、100μ秒および350VのSWパルスを8回印加した。トランスフェクション後、細胞を48ウェルにそれぞれプレート化し、数日間成長させた後にネオマイシン選択剤(300μg/ml)を添加した。第1のトランスフェクション(EDパルス)で、5つのコロニーを単離し、第2のトランスフェクション(SWパルス)で、11のコロニーを単離した。
【0095】
安定にトランスフェクトされたクローンの単離は、ERNIがPGC中で発現され、これを組織特異的プロモーターとして使用することができることを示す。
【0096】
(実施例17:生殖系列へのトランスフェクトされたPGCの寄与)
PGCをHS4−βアクチン−GFPでトランスフェクトし、ステージ13〜15(H&H)の胚の脈管構造に注入した。18日目に、性腺を取り出し、固定し、切片にし、CVH抗体で染色して生殖細胞を同定した。次いで、染色切片を、性腺中のGFP陽性細胞の存在について分析した。雄(図11)および雌の両方の性腺中でGFP陽性生殖細胞が見出された。これらの胚の脳、心筋、および肝臓の組織学的調製物試験により、1つのスライドで4つの緑色細胞のみが示された。これらのデータは、少数の培養PGCが異所で見出されたが、大部分の培養PGCは生殖系列を優先的にコロニー形成することを証明する。
【0097】
GFP陽性細胞が生殖細胞であることを決定するために、切片を抗CVH抗体で染色した。図12に認められるように、GFP陽性細胞はCVHタンパク質についても染色され、GFP陽性細胞が生殖細胞であることを示す。
【0098】
図12に関して、GFP陽性細胞がこの切片中に存在し、DAPI/GFPパネルは、これらのGFP陽性細胞が精細管内に存在することを示す。生殖細胞を抗CVH抗体で染色する場合、これらは、生殖細胞の細胞質の輪郭を描く強く赤色に染色された環を示す。DAPI/CVHパネルは、これらの細胞が精細管内に存在することを示す。最後のパネルは、GFP陽性細胞がCVHについても染色され、精細管がGFP陰性のCVH陽性生殖細胞を含むことを示す。
【0099】
(実施例18。遺伝子改変PGCの生殖系列伝達)
以下の導入遺伝子:βアクチン−neo、βアクチン−eGFP−βアクチン−puro、またはcx−eGFP−cx−puroの1つでトランスフェクトされたBarred Rock PGCを、ステージ13〜14(H&H)の胚の脈管構造に注入した。ニワトリのひなを孵化させ、雄鶏を性的に成熟するまで成長させ、Barred Rock雌鶏と交配させて導入遺伝子の生殖系列伝達を決定した。全ての黒色子孫はPGCに由来し、これらを導入遺伝子の存在について試験した(表6)。生殖系列伝達率を、羽の色をスコアリングした全ニワトリひな数で黒色ニワトリひな数を割ることによって計算した(表6)。
【0100】
【表6】
(実施例19。導入遺伝子は、メンデルの法則で遺伝する)
βアクチン−neo、βアクチン−GFP、またはcx−GFPの1つを含むように遺伝子改変されたBarred Rock PGCを保有するキメラ雄鶏の交配に由来する黒色子孫を、導入遺伝子の存在について分析した。表7に示すように、導入遺伝子は、PGC子孫の約50%に遺伝し、メンデル性遺伝を示す。
【0101】
【表7】
(実施例20:遺伝子改変PGCを保有するキメラの子孫における導入遺伝子の遍在発現)
βアクチン−GFPがゲノムに安定に組み込まれたPGCを保有するキメラを、野生型雌鶏と交配し、胚をGFPの発現についてスコアリングした。胚中の発現の例を図13に示し、これは、GFPが発生のステージ34(H&H)までのトランスジェニック子孫の全組織中で発現することを示す。より高齢の動物では、凍結切片を使用した組織学的実験のために組織を調製した。1〜2週齢のニワトリひなの膵臓、皮膚、肺、脳、卵巣、腎臓、嚢、十二指腸、胸部、心臓、肝臓、および脾臓由来の組織は、孵化後の発現が動物中に遍在したままであることを証明する(図14)。
【0102】
(実施例21:導入遺伝子を含むHS4をニワトリゲノムのプロモーター領域に挿入する)
HS4を含む構築物がサイレンシングを避けて、選択マーカーの発現を可能とするゲノムの特定領域に優先的に挿入されたかどうかを述べるために、本発明者らはクローン性トランスフェクトされたPGC株で、導入遺伝子挿入部位を確認した。ゲノムDNAを、トランスフェクトされたPGC株から抽出し、導入遺伝子を切断しない制限酵素または一度HS4エレメントを切断する制限酵素のいずれかで消化した。DNAは自己連結されて、大腸菌に形質転換された。細胞をアンピシリンプレートにプレート化し、ゲノム配列隣接ベクターに結合したプラスミドからのamp遺伝子を含むコロニーを単離した。
【0103】
プラスミドを精製し、HS4−構築物がトランスフェクトされた31のPGC株から配列決定した。本発明者らは、BLAT(UCSC Chicken Genome Browser Gateway)およびBLAST(NCBI)探索を行って挿入物の各々のゲノム位置の地図を作成した。注目すべきことに、31のHS4を含む構築物のうちの25は、CpGアイランドに挿入され、そして、それはプロモーター領域(特にハウスキーピング遺伝子領域)の近くで一般に見られる。CpGアイランドでの挿入のうち、遺伝子は、EST(表8)によって定義される既知の遺伝子または新規遺伝子のそれらのほとんど(23/25)と関係していることが分かった。CpGアイランドは、第1エクソンを経て第1イントロンに、数百の塩基対から転写開始点の上流にしばしば拡大し、そして、挿入物はこれらの領域の全てで見られた。偏りは、内因性遺伝子と比較してベクターの転写方向にはなかった。これらの遺伝子の多くは、ハウスキーピング遺伝子(例えば、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、アルデヒドデヒドロゲナーゼ、およびミトコンドリア溶質担体)としての既知の機能に基づき、PGCで発現されると予測される。挿入物のうちの7つは、ESTによって定義されるように、新規遺伝子の中にあった。これらのESTのうちの5つは、生殖腺またはPGCライブラリから当初クローン化され、これらの遺伝子は、また、本発明者らのPGC細胞株でも発現され得ることを示唆した。遺伝子への挿入物のうちの3つは、CpGアイランドにではなく、むしろより遠位のイントロンの中にあった。挿入物のうちの5つは、何らの明白な遺伝子のない領域にあった。これらの挿入物のうちの3つは、LINEまたはサテライト反復の非常に近傍にあった。
【0104】
【表8−1】
【0105】
【表8−2】
(実施例22:phiC31インテグラーゼによる効率的な組み込み)
本発明者らは、phiC31インテグラーゼ系を使用したが、この系は、attB部位とattP部位との間での部位特異的組み換えを触媒して外因性DNAをニワトリのゲノムに挿入する。phiC31 attBとattP部位の間の組み換えは、非可逆的であり、そのため、attB部位を有する環状構築物のゲノムへの挿入は、安定であり、インテグラーゼの継続した存在においてでさえ、ループを形成しない。アフリカツメガエル(Allen and Weeks 2005 Nature Methods 2,975−9.Transgenic Xenopus laevis embryos can be generated using phiC31 integrase)、マウス(Olivaresら、2002 Nature Biotechnology 20,1124−8.Site−specific genomic integration produces therapeutic Factor IX levels in mice;Beltekiら、2003 Nature Biotechnology 21,321−4.Site−specific cassette exchange and germline transmission with mouse ES cells expressing phiC31 integrase)およびヒト細胞(Grothら、2000 Proc Natl Acad Sci USA.97,5995−6000.A phage integrase directs efficient site−specific integration in human cells;Thyagarajanら、2001,Mol Cell Biol.21,3926−34.Site−specific genomic integration in mammalian cells mediated by phagephiC31 integrase)では、phiC31インテグラーゼが、attB含有プラスミドを改変されていないゲノムへの組み込みを調節し、これらの種のゲノムがインテグラーゼによって認識される細菌のattP部位と十分な配列相同性を有する偽attP部位を含むことを示すことが証明された。また、挿入されるプラスミドは、効果的な組み込みのためにattP部位よりもむしろattB部位を保有しなければならないことが示された(Beltekiら、2003;Thyagarajan 2001)。attB部位は、隔離されたHS4β−アクチンEGFP β−アクチンpuro(HS4 BGBP)構築物に付加されて、attB HS4 BGBPをもたらした。図16Bの左のパネルを参照して、この研究において使われるインテグラーゼ構築物は、att−B部位がHS4β−アクチンEGFPβ−アクチンpuro構築物に付加されたatt−B含有プラスミドを含むことが示される。図16Bの右側のパネルを参照して、CAGプロモーター由来細胞中でインテグラーゼを発現するために用いられるプラスミドが示される。インテグラーゼの2つのバージョンが作製され、1つはSV40核局在化シグナルを有するものと、1つはそれを有しないものとである。attB HS4 BGBPとCAG−インテグラーゼプラスミドDNAsは、PGCへの環状プラスミドとして、コトランスフェクションされた。非インテグラーゼの線状化HS4 BGBPと比較して、20ugの線形DNAを有する106個の細胞あたり0.3のコロニーからわずか5ugのDNAを有する106個の細胞あたり5〜10コロニーへのコロニー形成の大きな増加が認められたが、これはDNAにつきコロニーの20倍の増加を表す。インテグラーゼのNLSバージョンは、非NLSバージョンと比較して、わずかに少ないコロニーを産生した。これらのデータは、インテグラーゼがニワトリゲノム中の偽attP部位を認識することができ、そして、それがPGCでの効率的な安定したトランスフェクションのために使うことができることを示唆した。
【0106】
(実施例23:インテグラーゼクローンのための挿入部位の同定)
インテグラーゼとattBを含むプラスミドを用いる安定したトランスフェクション効率の増加は、ニワトリゲノムがphiC31インテグラーゼにより認識することができる偽attP部位を含むことを示唆した。attB HS4 BGBPプラスミドが、ベクターのランダム破壊によってではなく、インテグラーゼ媒介反応を経由して組み込まれたことを証明するために、5つの独立したPGCクローンからのゲノムDNAのサザンブロット分析が実行され、そして、無傷の全長導入遺伝子が各々のケースで観察され、attB部位(データは示されていない)経由の組み込みと一致する構造を有した。ヌクレオチドレベルで組み換えブレークポイントをさらに特徴づけるために、偽attP部位を同定するために、および挿入の染色体位置を特定するために、本発明者らのインテグラーゼPGC株のうちの12でのベクターとゲノム挿入部位との間の連結点が、クローン化されて配列決定された。プラスミドレスキューは、非インテグラーゼ株のために上記のように実行された。本発明者らは、連結点フラグメントのクローン化効率での劇的な減少を認めた;得られた大腸菌のコロニーの数は、非インテグラーゼPGC株についての形質転換につき平均69のコロニーから、形質転換あたりインテグラーゼ媒介PGC株からの3.1コロニーとなった。これの理由は不明であるが、1つの可能性は、インテグラーゼクローン(下記参照)に隣接する反復DNAを制限酵素で消化するのがより困難であったからである。プラスミドDNAは、コロニーから精製され、配列決定され、そして、attLと隣接配列が決定された(下記の表9を参照)。ゲノムDNAは、導入遺伝子内で切断する酵素で消化されたので、ベクターバックボーン上のamp遺伝子に隣接した隣接ゲノムDNAだけは、この方法で同定することができた;導入遺伝子挿入の他方の部位の隣接DNAは、分析しなかった。
【0107】
図17を参照して、インテグラーゼ媒介トランスフェクションに由来するPGCクローンでのattBプラスミドとゲノム配列の間の連結点を示す。一番上のラインは、コアTTGを有する野生型attB部位であって、該コアは、通常、下線が付された組み換えクロスオーバー点であり(配列番号9)、その下には、インテグラーゼ媒介挿入由来のattL配列が示される(配列番号10〜21)。スプライシングが、プラスミドのattBとゲノムの偽attP部位との間の何処で起きたかについて決定するために、PGC配列をattB(配列番号9)と比較した。PGC配列において、プラスミドによって与えられたattB配列は小文字で、そして、ゲノム偽attP配列は大文字および太字で表わしている。
【0108】
プラスミド上でattB配列のおよそ半分から成るattL配列は、ゲノム内で偽attP部位と結合した各々のケースで見られ、インテグラーゼが組み換え反応を媒介したことを示唆した。プラスミド由来のattBとゲノムの間の組み換えは、正確でなくて、通常attBのコアTTGヌクレオチドで起こらなかった。BLATとBLAST探索により挿入物の各々のゲノム位置の地図を作成した。注目すべきことに、マップ化することができた11の挿入のうち7つは、反復DNA配列で起きた。RepeatMasker Web Server(Institute for Systems Biology)とClustalW配列アラインメントを使って、反復が分析され、配列が先に確認されたPO41反復(Wickerら)として分類できることが判明した。図18Aに関して、PGC挿入部位からのPO41様反復とPO41コンセンサス配列(配列番号29)の配列比較が示される。PO41様反復に挿入されたクローンの全てからのPGC隣接配列は、互いにPO41コンセンサス(Wickerら、2004)を用いて配列した。始めから20のヌクレオチドは、ベクター(上記アラインメントに示されるように)によって付与されたattB配列であり、そして、各々のクローンからのゲノム隣接配列が続いた。その配列の半分より多くが共有されるヌクレオチドは、黒のボックスで囲ってある。配列アラインメントは、PGC株の2つ(2−47 配列番号23および18−5−36−2 配列番号22)が同じゲノム部位でattB HS4 BGBPの挿入物を保有することを示した。attB偽attP連結点のヌクレオチド配列が2つの間で異なるという事実で示されるように、2つの挿入は独立している。もう一つの配列(18−3−12 配列番号24)は、20bp挿入物を除いて最初の2つと同じであった。挿入物において確認されたPO41反復のいずれもが、コンセンサス配列の正確なコピーではなく、PO41コンセンサスと挿入部位反復の間の配列相同性のレベルは、47%(18−3−43)から77%(1−30)のヌクレオチド相同性の範囲であった。図18Bに関して、100bpのPO41コンセンサス反復の100bpのattPとの配列比較は、約46%の配列相同性を示したが、これはヒト細胞(Thyagarajan 2001)の偽attP部位について認められたものよりも高かった。PO41反復は、ゲノムで259の位置に存在すると考えられ(Wickerら)、各位置は、数キロベースの41bp繰り返し単位からなる。隣接ゲノムフラグメントのいくつかは、10〜12kbのサイズ範囲であった;これらのフラグメントの2つの末端が配列決定されたとき、両方とも反復的であったが、このことは、繰り返しの全体的なサイズが大きかったことを示唆した。このように、PO41配列は、phiC31インテグラーゼに対するニワトリゲノムで大きな、好ましい標的を意味する。
【0109】
残りの4つのインテグラーゼ媒介挿入物は、固有のDNA配列の中にあった。配列のうちの1つ(19−1−1 配列番号12)は、21番染色体の固有配列の遺伝子間領域にあり、1つ(1−41 配列番号10)は、5番染色体のWilm腫瘍(WT1)遺伝子のニワトリ相同分子種のプロモーター領域に挿入された。1つの配列(5−7 配列番号11)は、1番染色体の複数の場所にあり、局所的遺伝子ファミリーまたは低コピー数反復を表わすことができた。1つの配列(18−4−11 配列番号13)は、ニワトリゲノムまたは一般的な「非重複データベース」での既存配列と一致しなかったが、このように、まだ配列決定されていないゲノムの領域にあるようである。1つの最後の挿入物(2−38 配列番号21)は、偽attP部位からなる非常に短い配列のみを与え、これはデータベースで同定することができなかった。
【0110】
【表9】
(実施例23:遺伝子改変染色体の同定)
本発明者らは、位置を割り当てることができた固有配列への挿入物を含んだそれらの株について、挿入が起きた染色体に注目した。PGCへの28の独立した挿入の間で、ニワトリ核型の38の染色体のうちから、本発明者らは17の異なる染色体(表8および9)への挿入を認めた。挿入物のおよそ半分は、マクロ染色体の中にあり(染色体1〜6;13の挿入)、そして、残り半分は、マイクロ染色体(染色体7〜38;14の挿入)の中にあり、1つの挿入物は、Z染色体の中である。マクロ染色体とマイクロ染色体への挿入の比率は、ゲノムに対するそれらの物理的な寄与に比例し、組み換えに対する領域の偏りがないことを示す。
【0111】
(実施例24:遺伝子ターゲティング)
ターゲティングベクターは、相同組み換えにより内因性遺伝子座に挿入する場合、免疫グロブリン軽鎖遺伝子のJ領域およびC領域をHS4 ERNI−puro選択カセットと置き換えるように設計された(図19)。上記したように、ERNIプロモーター(ピューロマイシンカセットを引き起こす)は、初期胚で特異的に発現され(Acloqueら、2001、上記)、そして、他のプロモーターに類似した頻度でPGCにおいて薬物耐性コロニーを産出することが期待された。図20を参照して、一番上のラインは、ニワトリIgL遺伝子(IgL KO5)のためのターゲティングベクターの図である。IgL遺伝子の2.3kB)のJ−C領域を3.1kbのHS4 ERNI−puro選択マーカー(IおよびHS4インスレーターとして示される)と置き換えるように設計される。2つの相同性アームは、2.3kBと6.3kBの長さである。3’末端で、β−アクチンEGFP遺伝子は、標的クローンのために緑色蛍光を富化するためのpuro耐性クローンのスクリーニングを可能にする。末端の点線は、pKOベクターバックボーン(Stratagene)である。中央のラインは、単一の可変領域遺伝子(V)、連結領域遺伝子(J)および定常領域遺伝子(C)を有するIgL遺伝子の生殖細胞系構成の野生型対立遺伝子の図である。標的クローンのサザン分析に使用される制限部位(S、SacI;B、BstEII)が図示され、そして、野生型フラグメントサイズが二重の矢尻でその下に示される。下方のライン上は、変異体対立遺伝子の構造であり、そこでは、JとC領域が欠失しており、HS4 ERNI−puroで置換されている。制限酵素地図が示され、その下に変異体フラグメントのサイズを示す。サザン分析において使われるプローブは両方とも、ターゲティングベクターの外側にあり、それらの位置を示す。
【0112】
4つのクローンが、合計1.05×108個の細胞と線状化DNAの210μgを用いて21のトランスフェクションから単離された。クローンのうちの2つは、GFPを発現し、それらがゲノムでランダムに組み込まれてGFP遺伝子を保持したことを示す。組みこみの両側からのプローブを用いる4つのクローンのサザンブロット分析により、緑色でないクローンの1つ(クローン2)は、標的変異に対してヘテロ接合性であることを示した。図20に関して、4つのピューロマイシン耐性クローンがサザン分析された。クローン1と2は緑色ではなく、その一方、クローン3と4は、GFPを発現した。左のパネルでは、PGCクローンからのゲノムDNAをSacIで消化し、プローブAとハイブリダイズされてIgL遺伝子の5’側でターゲティング分析をした。右のパネルでは、DNAをBstEIIで消化し、IgL遺伝子の3’側のターゲティングのためにプローブBとハイブリダイズされた。クローン2は、ヘテロ接合性の、標的クローンに関して予想サイズのフラグメントを示した。
【0113】
(実施例25:J−Cノックアウトベクターを保有するG0キメラ)
実施例24で記載されたJ−Cノックアウトを保有するPGCを、ステージ13〜15(H&H)白色レグホンレシピエント胚の脈管構造に注入した。発現型的に、孵化したひなは、白色レグホンに似ていた。雄は性的に成熟するまで飼育し、精液が腹部マッサージによって集められた。そして、
【0114】
【化3】
を用いたPCR分析が、図21に示される。図21を参照して、予想される248bpサイズの増幅されたDNAは、G0キメラの少なくとも2つからの精液に存在したが、これは遺伝子的に改変された始原生殖細胞が生殖細胞系列に入ったことを示している。
【0115】
(実施例26:β−アクチン−neoのアルデヒドデヒドロゲナーゼ遺伝子座への挿入)
親細胞株13からのPGCを成長させ、400μl中の5×106個の細胞を、198Vと900μFの指数関数的減衰パルスを使用して、線状化β−アクチン−neo構築物でエレクトロポレーションし、48−1cm2ウェルにプレート化して単一のクローンを得た。細胞は、ネオマイシンの存在下で成長させてネオマイシン耐性クローンをもたらし、これは拡大するために新しいウェルに移した。細胞をサザン分析により分析して導入遺伝子の安定な組み込みを確立し、配列決定により、構築物がアルデヒドデヒドロゲナーゼ遺伝子(アルデヒド代謝に関与する酵素)のプロモーター領域で19番染色体に組み込まれた。
【0116】
β−アクチン−neo構築物を保有するPGCを成長させ、ステージ13〜16(H&H)のレシピエント胚に注入した。胚を孵化させ、そして、4羽の雄鶏を性的に成熟するまで成長させ、生殖細胞系列伝達について試験した。雄鶏の生殖細胞系列伝達率は、それぞれ0、0、0.5、および0.5%であった。これらの雄鶏のうちの1羽からのヘテロ接合性の子孫を性的に成熟するまで成長させ、交配させてホモ接合性の子孫を得た。
【0117】
【表10】
ヘテロ接合性雄鶏と雌鶏の5組の繁殖ペアは、合計73羽のひなを生産し、それらはBN導入遺伝子の存在について評価された。合計10羽(14%)のひなが野生型であり、46羽(63%)のひながヘテロ接合性であり、そして、17羽(23%)のひながホモ接合性であった(表10)。この分布は、メンデル分離(カイ二乗=6.55)から予想される18.25/36.5/18.25の分布と、有意差(P>0.01)はなかった。孵化時期の近くで死んだひなの割合は、遺伝子型の間で同じであった。これらの結果は、BN導入遺伝子の挿入が致死性表現型を誘発しなかったことを示す。
【0118】
ホモ接合の雄鶏は、性的に成熟するまで成長させて繁殖力を試験した。5羽の雄鶏が野生型雌鶏と繁殖させ、繁殖力、胚の死亡および孵化率が計算された(表11)。2羽の雄鶏の繁殖力は、比較的低かったが、これらの鳥の精液産生は弱く、したがって、授精あたりの精子の数も低かった。鳥のうちの2羽の繁殖力が非常に良好(>90%)であり、そして、1羽の鳥の繁殖力は中程度であった。すべての鳥からの受精卵の孵化率は、正常範囲内であった。合わせて考えると、これらのデータは、BN/BN鳥の繁殖機能が正常であったことを示す。
【0119】
【表11】
BN導入遺伝子が、アルデヒドデヒドロゲナーゼ遺伝子に組み込まれ、何らの効果もホモ接合性の鳥の生存率に関して見られなかったので、本発明者らはアルデヒドデヒドロゲナーゼメッセージの転写を評価した。
【0120】
mRNAは、Oligotex Direct mRNAキット(Qiagen)を使用して、2羽のBN/BNホモ接合性の鳥、1羽のBN/+ヘテロ接合性の鳥、および1羽の野生型の鳥(+/+)の血から調製された。それから、一本鎖cDNA合成のためのThermo−Script RT−PCRシステム(Invirogen)を使用して、cDNAを5mlのRNAから合成した。1mlのcDNAが、以下のプライマーを使用するその後のPCR反応に使用された:
【0121】
【化4】
ALDH3A2−3とA2−4プライマー(配列番号34、35)は、アルデヒドデヒドロゲナーゼ3のファミリーメンバーA2転写用の544bpと680bpのPCR産物を増幅するために使用した。アクチンRT−1とRT−2プライマー(配列番号36、37)をアクチン転写用の597bpのPCR産物を増幅するのに用いた。図22に示されるように、アルデヒドデヒドロゲナーゼ3のファミリーメンバーA2転写物が、ヘテロ接合性(BN/+)の鳥および野生型の鳥(+/+)で検出されたが、ホモ接合性BN鳥(BN/BN)では、検出されず、これは、βアクチン−neo導入遺伝子の挿入が、形態学的な表現型を有しないアルデヒドデヒドロゲナーゼ3遺伝子の挿入性ノックアウトを引き起こしたことを示している。
【0122】
プライマーが、アルデヒドデヒドロゲナーゼ3のファミリーメンバーA2転写物を増幅したという確証は、544bpと680bpのPCR産物の配列決定により得られた。544bp産物は、680bpのPCR産物内に全部含まれ、それは、また、エクソン5と6の間で136bpのスプライシングされていないイントロンを含む(図23)。これらの配列を発表されたニワトリゲノムのそれらと比較することにより、それらが同一であることを示した。
【0123】
(実施例27:β−アクチン−gfp−bβ−アクチン−puroの未知ESTへの挿入)
親の細胞株54からのPGCを成長させ、そして、5×106個の細胞を、線状化β−アクチン−GFP−β−アクチン−puro構築物の20μgでエレクトロポレーションし、そして、48−1cm2のウェルにプレート化して単一クローンを得た。細胞は、ピューロマイシンの存在下で成長させてピューロマイシン耐性クローンのみの成長をもたらした。耐性クローンを拡大するために新しいウェルに移した。細胞は、サザンブロット分析により分析して導入遺伝子の安定な組み込みを確立し、配列決定により、構築物が新規遺伝子(EST C0769951)の8番染色体に組み込まれた。
【0124】
PGC構築物を成長させ、ステージ13〜16(H)Hレシピエント胚の脈管構造に注入した。胚を孵化させ、8羽の雄鶏を性的に成熟するまで成長させ、生殖細胞系伝達について試験した。雄鶏の生殖細胞系列伝達率は、それぞれ0、1、11、12、13、16、28および92%であった。これらの雄鶏からのヘテロ接合性の子孫を、性的に成熟するまで成長させ、ホモ接合性の子孫を得るために交配させた(表12)。
【0125】
【表12】
ヘテロ接合性雄鶏と雌鶏の8組の繁殖ペアは、合計298羽のひなを産み、それらはBGBP導入遺伝子の存在について評価された。合計90羽(30%)のひなが野生型であり、128羽(46%)のひながヘテロ接合性であり、そして、80羽(25%)のひながホモ接合性であった。これらの結果は、25%の野生型子孫、50%のヘテロ接合性子孫、および25%のホモ接合性子孫の予想と一致し、このことは、導入遺伝子がメンデル機能で引き継がれたことを示す。大多数のホモ接合性子孫は、6週令までに孵化時に、または孵化時期の近くで全死亡のうちの95%が死亡した。これらの結果は、BGBP導入遺伝子の挿入が生存に必須の遺伝子機能的ノックアウトをもたらしたことを示す。
【0126】
この問題を回避するために、コントロールされていないランダムな挿入よりもむしろ予め定められた位置に導入遺伝子を挿入することが有利である。導入遺伝子をゲノム中の既知の位置に挿入する能力は、ランダムな挿入よりも更なる潜在的な利点を有する。タンパク質産物の過剰発現の目的で挿入された導入遺伝子は、発現の高水準を可能とすることが公知の、そして異質染色質の侵害によるサイレンシングを受けない場所に挿入することができる。さらにまた、導入遺伝子の挿入は、ヘテロ接合性状態であるかホモ接合性状態のいずれかでの動物または細胞株に有害な影響を引き起こさないことが予測され得る。したがって、多数の異なるランダム挿入をスクリーニングして高水準の発現を有するものを見つけることは不必要となり、そして、それは重要な内因性遺伝子を妨げない。
【0127】
(実施例28。条件つきのアポトーシス誘導遺伝子(Reaper)を保有するトランスジェニック鳥の作出)。
【0128】
Reaper導入遺伝子の設計
Reaper導入遺伝子(loxP−stop−loxP−Reaper構築物)を以下のようにして生成した。Reaper cDNAをD.melanogaster胚のポリ(A)+RNAおよびREAPER F1
(CAC CAG AAC AAA GTG AAC GA 配列番号38)プライマーおよびReaper F2(TGT TTG ACA AAA AAT TGA TGC)プライマー(配列番号39)を用いてRT−PCRによりクローン化した。Reaper cDNAは、CX−Reaper構築物を生成するCX−バックボーンのRI部位に挿入された。KpnI部位を、部位特異的変異により開始コドンのReaper cDNAの3’側に挿入した。pBS302(Gibco/BRL)からの1.5kbのloxP−stop−loxPカセットを、KpnI部位でクローン化してCX−LoxP−stop−loxP−Reaperを生成した。loxP−stop−loxP−Reaperフラグメントを、RIとNotI部位を用いてpENTRB2クローン(Invitrogen)に挿入した。次いで、loxP−stop−loxP−ReaperフラグメントをUbC−loxP−stop−loxP−Reaper構築物を作るpLenti6/UbC/V5−DEST(Invitrogen社のpLenti Gateway ベクター)に組み換えた。
【0129】
ViraPowerレンチウイルス発現システムを用いるトランスジェニック鳥の生産
loxP−stop−loxP−Reaper導入遺伝子を保有するレンチウイルスを作出するために、ViraPowerレンチウイルス発現システム(Invitrogen)を使用し、4.8×109cfu/mlまでの高力価が生成された。ウイルス生産のために、293T細胞が、UbC−loxP−stop−loxP−Reaper構築物とプラスミドをコードするVSV−Gを含むvirapower packing mixで、リポフェクタミンを使用してコトランスフェクションされた。ウイルス上澄液をトランスフェクションの24時間後に回収し、遠心分離によって濃縮した。ウイルス力価は、HT1080細胞をウイルス上澄みで形質導入することにより測定した。高力価を得て高い形質導入と生殖細胞系列伝達効率を確実とした。
【0130】
ニワトリ胚をウイルスに感染させるために、濃縮ウイルス溶液の1.5ulを、ステージX胚の胚下腔に注入した。37.5〜38℃で3日間インキュベーションした後、胚を別の代理棚に移し、孵化するまで37.5〜38℃、50%湿度でインキュベーションした。合計398の胚に、UbC−loxP−stop−loxP−Reaper導入遺伝子を保有するウイルスを注入した。155羽の鳥が孵化し、導入遺伝子の存在および性別について、鶏冠組織から分離されたDNAのPCRにより分析した。13羽の雄のひなは、UbC−loxP−stop−loxP−Reaper導入遺伝子に対して陽性であった。また、それらのうちの10羽は、精液から分離されたDNAのPCRにより、UbC−loxP−stop−loxP−Reaper導入遺伝子に対して陽性であった。3羽の雄(6−03、6−51および9−51のG0ファウンダー雄)は、導入遺伝子を次世代に伝達した。6−03、6−51および9−51についての伝達頻度は、それぞれ、0.32%、0.26%および0.16%であった(表13)。
【0131】
【表13】
G0ファウンダー雄(6−03、6−51および9−51、異なる挿入物を保有)は、繁殖用雌鶏まで飼育された。そして、それらのG1子孫は、導入遺伝子の存在と導入遺伝子の組み込み部位について分析された。個々の鳥からのゲノムDNAをサザンブロット分析により分析した。ゲノムサンプルとUbC−loxP−stop−loxP−Reaperベクター(対照)をSphIまたはBc1Iで消化した。消化されたDNAを0.7%アガロースゲルで分離し、ナイロン膜にブロッティングし、放射能標識Reaper特異的プローブで探索して連結点フラグメントを同定した。図24に示すように、ハイブリダイジング・ゲノム・フラグメントのサイズは、対照よりも大きく、これは導入遺伝子が組み込まれたことを示す。6−03、6−51および9−51株のためのハイブリダイジング・ゲノム・フラグメントは、異なるサイズを有したが、このことは6−03、6−51および9−51が独立した株であることを示す。
【0132】
(実施例29。Cre−組み換え酵素を保有するニワトリの作出)
Cre導入遺伝子の設計と組み立て
ニワトリでCre組み換え酵素を発現するために、Cre遺伝子がニワトリERNIプロモーターの転写調節の下に置かれた導入遺伝子が作出された。ERNI遺伝子(cENS−1としても知られている)は、初期ニワトリ胚(ほぼステージX、すなわち、新たに産まれた卵の段階で、胚が原腸形成前の細胞未分化シートであるとき)および神経組織で発現される。このように、Cre導入遺伝子は、初期胚で発現されるように設計され、そこでは、それがloxP−Reaper導入遺伝子のloxP部位またはゲノムに配置された他のloxP含有導入遺伝子の組み換えを触媒する。Creは初期段階で発現されるので、得られた発育するニワトリは、組み換えられた導入遺伝子を体の全胚葉と全細胞に保有しているはずである。
【0133】
Cre導入遺伝子をニワトリ生殖細胞系列に導入するために、レンチウイルス・ベクター・アプローチが取られた。レンチウイルス導入遺伝子は、Invitrogen pLenti6−V5 Destレンチウイルスベクターに基づいて構築された。pLenti6−V5 Destのレンチウイルスベクター要素は、ERNI−Cre遺伝子と結合されてpLenti−ERNI−Cre構築物を生成する。レンチウイルスが産生されて、初期胚を感染させるために使用され、そこでは、それは安定してゲノムに組み込まれた。pLenti−ERNI−Cre導入遺伝子を保有する約20羽のトランスジェニックファウンダー鳥が作出された。
【0134】
ニワトリERNIプロモーターは、以下のプライマーを用いてPCR増幅された。
【0135】
【化5】
822bpのPCR産物は、pGEM T−easy(Promega)にクローン化し、配列決定した。次いで、ERNIプロモーターをSacII(その後、T4 DNAポリメラーゼで平滑末端化する)とSpeIで消化してベクターから放出した。CMVプロモーターをClaI(その後、T4 DNAポリメラーゼで平滑末端化する)とSpeIで消化してレンチウイルスベクターpLenti6 V5−Dest(Invitrogen)から除去した。次いで、ERNIプロモーターをpLenti6 V5−Destレンチウイルス・ベクター・バックボーンにライゲーションし、その中のERNIプロモーターをCMVプロモーターと置き換えて、pLenti−ERNIをもたらした。
【0136】
Creの遺伝子は、N−末端とクローニング(5’末端でのBglIIおよび3’末端でのEcoRI)のための便利な制限部位にあるSV40核局在配列により、以下のプライマーを用いてPCR増幅された。
【0137】
【化6】
1040bpのPCR産物は、BglIIとEcoRIとで消化し、ゲルを精製した。シャトルベクターpENTR 2B(Invitrogen)をBamHIとEcoRIで消化し、ベクターバックボーンをゲル精製した。CrePCR産物をpENTR 2Bにライゲーションし、クローンを得た。Cre遺伝子が予想されたものであり、PCR増幅の間、何らの変異も獲得しなかったことを決定するために、クローンの配列決定がされた。
【0138】
Cre遺伝子をpLenti−ERNI構築物に再結合して、ERNIプロモーターの転写調節の下にそれを配置するために、LRクロナーゼ反応(Invitrogen)が、Cre遺伝子源としてのpENTR 2B−CreクローンおよびレシピエントとしてのpLenti−ERNIベクターを使用して実行された。最終的な構築物(pLenti−ERNI−Cre(8408bp))がこのようにして得られ、そして、それはERNI−Cre導入遺伝子を保有するレンチウイルスを産生するのに用いられた。
【0139】
pLenti−ERNI−Cre導入遺伝子を保有するトランスジェニック鳥の生産
pLenti−ERNI−Creレンチウイルスが293FT細胞で産生された。レンチウイルスを生産するために293FT細胞へのトランスフェクションごとに、75%集密度の800万個の293FT細胞が、リポフェクタミン試薬(Invitrogen)を使用して環状pLenti−ERNI−CreプラスミドDNAの3ugでトランスフェクションされた。Virapower packaging mix(Invitrogen)が、293FT細胞中でレンチウイルスを作るのに必要なウイルスタンパク質を発現するために使用された。レンチウイルスを含む細胞培養上澄みは、トランスフェクションの2日後に集められ、細胞破片を除去し、レンチウイルス粒子を48,000g、90分間の遠心分離によって濃縮した。ウイルスペレットを培養上澄みの開始容量の1/200に再懸濁し、40ulの分割量を−80℃で凍結した。
【0140】
レンチウイルスストックの各バッチの感染力価は、ウイルスストック10−4〜10−8を段階希釈し、ポリブレンの1ulをHT1080の培養物に添加することによりHT1080細胞で測定された。レンチウイルスの添加2日後に、ブラスチシジン選択(5ug/ml)を開始した。細胞がブラスチシジン毒性で死亡するので、培養基は2日おきに取り換えた。ブラスチシジン選択を開始して10日後に、コロニーはクリスタルバイオレットで染色し、計数し、そして、力価が算出された。108〜2×109の力価を得た。ニワトリ胚をウイルスで感染させるために、濃縮ウイルス溶液1.5ulをステージX胚の胚下腔に注入した。37.5〜38℃で3日間インキュベーションした後、胚を別の代理棚に移し、37.5〜38℃、50%湿度で孵化するまでインキュベーションした。合計310の胚に、Erni−Cre導入遺伝子を保有するウイルスを注入した。96羽のひなが孵化し、導入遺伝子の存在および性別について、鶏冠組織から分離されたDNAのPCRにより分析された。8羽の雄のひなは、Erni−Cre導入遺伝子に対して陽性であった。また、13羽の雄は、精液から分離されたDNAのPCRにより、Erni−Cre導入遺伝子に対して陽性であった。試験された6羽の雄のうち4羽は、Erni−Cre導入遺伝子を次世代に伝達した。Erni−Cre G0雄鶏についての生殖細胞系列伝達頻度は、0.24〜1.32%の間で変動した(表14)。
【0141】
【表14】
pLenti−ERNI−Cre導入遺伝子を保有するトランスジェニックニワトリ
pLenti−ERNI−Cre導入遺伝子がニワトリゲノムに完全に組み込まれたことを実証するために、サザンブロット分析を使用した。Cre導入遺伝子を保有することがPCRによって最初に同定されたニワトリからのゲノムDNAは、全長の完全な導入遺伝子が観察されるように、抽出し、ウイルスの5’および3’LTR配列を切断する酵素(BglII)で消化した。導入遺伝子の異なる、独立した挿入を有する鳥が、分析のために選択された。ゲノムDNAをBglII酵素で消化し、ナイロン膜に移し、放射能標識Cre遺伝子で探索した。図25は、8つのERNI−Cre株の代表的なサザンブロティングを示す。試験された11の株のうち、10株は予想された4.6kbのERNI−Cre導入遺伝子バンドを含み、ゲノムに完全に組み込まれたことを示した。1つの株は、より小さなバンドを示し、導入遺伝子の欠失または再構成を示した。
【0142】
(実施例30。導入遺伝子の部位特異的組み込みを可能とする細胞株の確立)
ホストゲノムの予め定められた位置に外部DNAを挿入するためには、2つの主要な方法がある:相同組み込み(遺伝子ターゲティング)またはattPなどの認識部位への部位特異的組み換え。相同組み換えは、大部分の脊椎動物の細胞型では効率が悪く、通常、多くのクローンを選別して、望ましい挿入を有する1つまたは少数のクローンを同定することが要求される。部位特異的組み換えは、多数のクローンを選別することなく外部のDNAを予め定められた部位に挿入するために使用することができる、高再現性で非常に効率的なプロセスである。部位特異的挿入は、attB含有構築物をゲノム中の固有のattP部位または偽attP部位に挿入するためのphiC31インテグラーゼの使用に依存する。ゲノムに配置された真正のattP部位をドッキング部位として使うために、attP部位は、好ましい、予め定められた位置に配置されなければならない。attP部位は、ランダム挿入または相同組み換えによってゲノムの中のそのような好ましい位置に入れられる。認識部位が、ランダム挿入によってゲノムに入れられるならば、挿入位置は重要な遺伝子が破壊されなかったことを確実とするために確認しなければならない。次に、ゲノムに入れられた認識部位は、phiC31インテグラーゼを用いる導入遺伝子の挿入のための「ドッキング部位」として用いられる。
【0143】
特にドッキング部位でのインテグラーゼ媒介導入遺伝子挿入のために選択するために、選択マーカーシステムは、正しい挿入を選択するのに使用される。attP部位が薬物選択マーカー(例えば、ピューロマイシン耐性遺伝子)にプロモーターなしで隣接するように、ドッキング部位は設計される。ドッキング部位を保有する細胞は、このようにピューロマイシンを用いた薬物選択に感受性である。ドッキング部位に挿入される導入遺伝子は、そのattB部位に隣接したプロモーターを含むが、選択マーカーを含まない。導入遺伝子のドッキング部位への挿入は、選択マーカーの上流にプロモーターを置き、そして、その転写を活性化し、ピューロマイシン耐性を与える。ゲノムの他の位置への導入遺伝子の挿入は、薬物耐性に至らず、そのような挿入は、薬物選択によって除かれる。
【0144】
attPドッキング部位構築物は、プロモーターのない薬物選択マーカー(例えば、ピューロマイシン耐性など)に隣接して置かれたattP部位から成る。ピューロマイシン耐性遺伝子は、発現されないので、別の選択マーカー(例えば、ネオマイシン選択マーカーを引き起こすβ−アクチンプロモーターなど)もまた含まれなければならない。EGFP遺伝子を含むこともできる。これらの要素の隣接する各側は、近隣のクロマチンから構築物を隔離するためのβ−グロビンHS4インスレーターの2つのコピーである。構築物のβ−アクチンneoとEGFP部分の将来的な除去のために、loxP部位はこれらの要素に隣接して置かれる。構築物のこれらの部分の全ては、ゲノムへの真正なattP部位への送達のための伝達手段として用いられる。DNAエレメントの順序は、以下の通りである:HS4;attP;プロモーターのないピューロマイシン耐性遺伝子;loxP;β−アクチンまたはCAGプロモーター;EGFP;β−アクチンまたはCAGプロモーター;ネオマイシン耐性遺伝子;HS4;プラスミドバックボーン(pBluescript)。構築物は、線状化され、培養PGCにトランスフェクションされ、そして、薬物耐性コロニーを得る。これらのコロニーは、さらなる分析のために拡大される。
【0145】
ゲノムでのドッキング部位が、どこに位置しているかを知ることは重要であるので、各々のクローンのドッキング部位構築物の染色体挿入部位が決定される。隣接ゲノムDNAを得て、配列決定し、ニワトリ・ゲノム・データベースと比較する。大部分のクローンがCpGアイランドに挿入されるのが分かり、それは通常、遺伝子、特にハウスキーピング遺伝子または遍在遺伝子のプロモーター領域と関連したゲノム領域である。さらにまた、大部分の挿入物は、遺伝子のプロモーター領域、遺伝子の第1エクソン、または第1イントロンにあることが決定される。このように、挿入の多くは、これらの遺伝子の機能を損なうと予測される(実施例29;表8を参照)。これらの遺伝子は、発現配列タグ(EST)配列に基づく既知の遺伝子か、あるいは予測された遺伝子である。好ましい細胞株は、DOC1またはDOC33などの遺伝子を破壊しないように見える株である。
【0146】
ドッキング部位のCAG−EGFP−CAG−neo部分は、Cre−lox組み換えによって欠失させることができる。Cre−lox組み換えの後、ドッキング部位に残るすべては、HS4インスレーター、attP部位、およびプロモーターのないpuro遺伝子である。これは、細胞とトランスジェニックニワトリで生産される外部タンパク質(これは、特にCAGまたはβ−アクチンなどの強力プロモーターから偏在的に発現される場合、ニワトリの健康に影響を及ぼす場合がある)の数を減少させる。Cre−lox組み換えは、環状Cre発現ベクターによるドッキング部位クローンの一過性のトランスフェクションによって、細胞培養物中で行うことができる。数日後に、培養は、CAG−EGFP遺伝子の切り出しに起因するEGFP発現の喪失に関してモニタリングされる。細胞の約50%は、もはやEGFPを発現せず、そして、これらの細胞は、それらを精製するためにフローサイトメトリで分類することができる(図26)。
【0147】
あるいは、Cre組み換えは、ドッキング部位構築物を保有するトランスジェニックニワトリをERNI−Cre導入遺伝子を保有するニワトリ(Cre4鳥)と交配させることにより行うことができる。
【0148】
これらのドッキング部位組み込みを有するトランスジェニックニワトリが作出される場合、得られるホモ接合性ニワトリは、遺伝子に挿入物を有するにもかかわらず、健康で、繁殖力がある。そのような株の一例は、TP85株(BNとも呼ばれる;実施例26を参照)であり、それは、ニワトリ19番染色体上でアルデヒドデヒドロゲナーゼ3ファミリーメンバーA2をコードする遺伝子への挿入である。構築物は、HS4−遮断β−アクチンネオ導入遺伝子であり、遺伝子の転写開始点のおよそ10bp以内のプロモーター領域に挿入された。挿入物に対してホモ接合性の鳥は、健康で、繁殖力がある。
【0149】
しかし、場合によっては、挿入は悪影響(例えば、発育障害、解剖学的または生理学的障害、不妊など)もたらす場合がある。実施例27を参照されたい。したがって、動物で何らの悪影響も引き起こさないことを確認するためにランダムに挿入されたドッキング部位挿入を確認することは重要である。
【0150】
(実施例31:発現DNAの10.5kb超からなるドッキング細胞株の確立)
Doc−1細胞株は、HS4;attP;プロモーターのないピューロマイシン耐性遺伝子;loxP;CAGプロモーター;EGFP;CAGプロモーター;ネオマイシン耐性遺伝子;HS4(実施例29を参照)からなる導入遺伝子を保有する。構築物は、線状化され、培養PGCにトランスフェクションされて、薬物耐性コロニーが得られた。これらのコロニーは、さらなる分析のために拡大された。Doc−1細胞株をレシピエント胚に注入し、G0キメラひなを孵化させた。雄鶏を性的に成熟するまで成長させ、それらの精子を、GFP陽性精液の存在についてのFACS分析によって分析した。2羽の雄鶏は繁殖のために選択され、その生殖細胞系列伝達率は、3%と8%であった。血液がGFP陽性のひなから採取され、サザン分析によって分析されてドッキング部位の存在を確認した。
【0151】
(実施例32:ドッキング部位の標的挿入)
遺伝子のCpGアイランドへの真正attP部位の配置を回避するために、遺伝子ターゲティングを使用してattP部位をニワトリゲノム中の予め定められた部位に配置することは可能である。ゲノムの領域が選択され、相同アームが、正確性の高いPCRまたはプラスミドベクター中でのゲノムクローニングによって調製され、ターゲティングベクターがPGCクローンのトランスフェクションまたは選択のための選択マーカーを用いて組み立てられる。
【0152】
(実施例33:ドッキング部位を保有する細胞株への部位特異的挿入)
ドッキング部位への挿入のために、attB部位を含む環状構築物が構築される。attB部位含有構築物は、上記実施例で使用されたものと類似しており、重要な違いは、選択マーカーがないことである。その代わりに、プロモーター(例えば、ERNIプロモーターなど)は、ドッキング部位への組み込みの際に、プロモーターがドッキング部位での選択マーカーの発現を引き起こす位置に配置されるように、attB部位に隣接して配置される。
【0153】
プロモーターattBバックボーンは、attP−プロモーターのないpuroドッキング部位への挿入のために選択することに使用される。attB構築物は、例えば、抗体などの医薬タンパク質をコードする遺伝子の発現を引き起こす組織特異的プロモーターなどの関心のある他の遺伝子を保有する。
【0154】
ドッキング部位の機能性およびドッキング部位での組み込み効率は、ドッキング部位を含むPGC細胞株で試験された。5×106個の細胞をErni−attBを含む構築物の0.5μgとインテグラーゼを発現する環状構築物の0.5μgでコトランスフェクションした。エレクトロポレーション後、細胞を48−1cm2ウェルに再プレート化して単一コロニーを得た。48ウェルのうち42ウェルで、コロニーが認められた。
【0155】
ERNI−attB構築物が、attPでのattBの組み換えによって生み出されるattL部位の増幅によってドッキング部位に正しく組み込まれたことをPCRは明らかにした。1つのプライマーは、ERNI配列中にあり、1つのプライマーは、ピューロマイシン配列中にあり、そして、ERNIプロモーターが、ピューロマイシン遺伝子の上流に組み込まれた場合にのみ増幅が起こり得る。3つのプライマーセットが使われ、そして、すべてが陽性結果をもたらした:
ERNI−37F+puro−8R 生成物サイズ152bp
ERNI−133F+puro−8R 生成物サイズ248bp
ERNI−342F+puro−83R 生成物サイズ522bp
【0156】
【化7】
DOC2細胞へトランスフェクションされたERNI−attBからの4つの独立したクローンは、PCRによって試験され、そして、4つの全てが3つのプライマーセットですべて正しいサイズの増幅生成物を示した。Erni−133F(配列番号32)+puro−8R(配列番号33)プライマーで生成したPCR産物は、クローン化され、配列決定されてPCR産物が正しかったことを証明した。配列は予想されたattL配列(attBとattPの組み合わせ)に完全に合致して、予想される部分的なERNI配列とピューロマイシン配列を含んだ。インテグラーゼ媒介組み換えクロスオーバー事象が、このようにattBとattP部位の正しいコアヌクレオチドで起き、真正なものとして実証された。
【0157】
(実施例34:Creは、ニワトリ胚でLoxP部位を効率的に組み換える)
完全なpLenti−ERNI−Cre導入遺伝子(および再編成されたERNI−Cre導入遺伝子を有する1つの株)を有する10個のCre株が、Cre組み換え酵素活性について試験された。ERNIプロモーターは、初期胚でCre組み換え酵素の高水準発現を引き起こすことが予想されたが、もし導入遺伝子がゲノムの好ましからぬ領域(「位置効果」として知られている現象)に偶然組み込まれる場合には、導入遺伝子は発現することができない。したがって、望ましいレベルの活性を有する1つまたは複数の株を選択するために、本発明者らのCre株の全てでCre組み換え酵素の活性を測定することは重要であった。
【0158】
本発明者らのCre導入遺伝子の活性レベルを測定するために、Cre導入遺伝子の1つのコピーとloxP導入遺伝子の1つのコピーを保有する2重トランスジェニック胚でloxP−Reaper導入遺伝子の組み換えを触媒するCreの能力が、サザンブロットによって分析された。loxP−Reaper導入遺伝子は、1.4kbの配列を含み、それは、STOPカセットと呼ばれ、同じ方向にloxP部位と隣接している。2つのloxP部位の間の組み換えは、染色体から1.4kbの介在配列の切り出しをもたらし、単一のloxP部位を後に残す。それから、介在配列は染色体にはもはや結合されないので、介在配列は失われる。切り出し後、loxP−Reaper導入遺伝子は、大きさが1.4kb減少する。サザンブロット分析評価が展開されて、そこでは、loxP−Reaper導入遺伝子の大きさの減少は、Cre組み換え酵素活性を測定するために用いられる。Reaper遺伝子とレンチウイルス・ベクター・バックボーン(ブラスチシジン遺伝子とSV40配列)の部分からなるプローブとハイブリダイズしたとき、制限酵素SacIによる消化は、約2.8kbの全長(非組み換え)のloxP−Reaperフラグメントを生産する。1.4kbのSTOP配列のCre媒介組み換えと切り出しの際、同じプローブとハイブリダイズした場合、SacIフラグメントの大きさは約1.4kbに減少する。プローブは、Cre組み換えに影響を受けない配列とハイブリダイズし、したがって、それは全長の、そして組み換えられたloxP−Reaper導入遺伝子の両方と等しくハイブリダイズする。
【0159】
いろいろなpLenti−ERNI−Creトランスジェニック株により発現されたCre活性のレベルを推定するために、全長(非組み換え)の、および組み換えられた導入遺伝子のバンド強度の比率を測定する。Creが活性でないならば、組み換えReaperは、ほとんどまたは全く観察されず、全長だけが観察される。Creが適度に活性である場合、両方のSacIフラグメントが観察され、組み換えがいくらかの細胞では起きたが、他の細胞では起きなかったことを示す。Creが非常に活性であるならば、loxP−Reaper導入遺伝子のみが観察されたが、それは組み換えloxP−Reaper導入遺伝子があらゆる細胞で組み換えられたからである。
【0160】
Cre株の活性をまとめたデータが、図28に示される。試験された11株のCre活性は、株の間で非常に可変性であり、いくつかのケースでは、株内でも同様に変動した。11の株のうち1つだけが、loxP−Reaper導入遺伝子(Cre4株)の100%組み換えを触媒した。この株では、試験されたすべての胚(18中18)は、100%組み換えを示した。他の株では、組み換えレベルは、約5%から最大約80%に変動した。これらの株(Cre1、Cre2、Cre11およびCre20)のいくつかに関して胚から胚で組み換えのレベルでかなりの可変性があった。例えば、Cre11とCre20は、いくつかの胚で約10%組み換えだけを触媒したが、他の胚では、最高60%組み換えを触媒した。大部分の胚について、脳と骨格筋組織が分析され、そして、組み換えのレベルは、あらゆる場合に両組織で同様であった。ERNIプロモーターは、神経組織で活性であると考えられるので、おそらく、脳が組み換えの増加したレベルを示すと予想されたが、しかし、脳と筋肉の組み換えは、常にほぼ同じであった。観察されるCre組み換え酵素活性における変化が、Cre発現のレベルにおける変化に、または、Cre活性が発現される時間の長さにおける変化に起因するかどうかは不明である。例えば、Cre4株では、Creが低レベルで絶え間なく発現され、100%発育の15日目まで蓄積された組み換えに至るが、一方、組み換えがあらゆる細胞で起こる前に、他の株は初期の時期にCre発現をしない可能性がある。あるいはまた、Cre4は、初期の発育にだけ非常に高レベルのCreタンパク質の発現をすることができ、100%の組み換えを触媒する。
【0161】
組み換えを示さなかった唯一の株は、再編成または欠失導入遺伝子を有する株であった。
【0162】
(実施例35:異なるreaper挿入物を保有する3羽のニワトリ株の成功した組み換え)
pLenti−ERNI−Creトランスジェニックニワトリ中のCre組み換え酵素が、異なるloxP基質の組み換えを触媒することができることを示すために、Cre4株を3つの異なるloxP−Reaper株(6−03、6−51および9−51と呼ばれる)と交配した。以前に100%の組み換えを示したので、Cre4株が選択された。loxP−Reaper導入遺伝子の1つとCre4導入遺伝子のコピーを受け継いだ胚が選択された。
【0163】
3つのloxP−Reaper導入遺伝子の組み換えレベルを測定するために、Cre4導入遺伝子の1コピーとloxP−Reaper導入遺伝子の1コピーとを保有する2重トランスジェニック胚の組み換えを触媒するCreの能力をサザンブロットによって分析した。loxP−Reaper導入遺伝子は、1.4kbの配列(STOPカセットとも呼ばれる)を含み、同じ方向に隣接している。2つのloxP部位の間の組み換えは、染色体から1.4kbの介在配列の切り出しをもたらし、後に単一のloxP部位を残す。次いで、介在配列は、染色体にはもはや結合されないので、介在配列は失われる。切り出し後、loxP−Reaper導入遺伝子は、大きさが1.4kb減少する。サザンブロットアッセイが展開されて、そこでは、loxP−Reaper導入遺伝子の大きさの減少は、Cre組み換え酵素活性を測定するために用いられる。Reaper遺伝子とレンチウイルス・ベクター・バックボーン(ブラスチシジン遺伝子とSV40配列)の部分からなるプローブにハイブリダイズしたとき、制限酵素SacIによる消化は、約2.8kbの全長(非組み換え)のloxP−Reaperフラグメントを産生する。1.4kbのSTOP配列のCre媒介組み換えと切り出しの際、同じプローブにハイブリダイズした場合、Reaper SacIフラグメントの大きさは約1.4kbに減少する。プローブは、Cre組み換えに影響を受けない配列とハイブリダイズし、したがって、それは全長の、そして組み換えられたloxP−Reaper導入遺伝子の両方と等しくハイブリダイズする。
【0164】
LoxP−Reaper株の各々のCre−lox組み換え量を評価するために、全長(非組み換え)の組み換え導入遺伝子に対するバンド強度の比率を測定する。Cre4が,3つのすべてのReaper株においてSTOPカセットを切り出すことが可能であるならば、そのときには、組み換えReaperバンドのみが観察されるが、これは、LoxP−Reaper導入遺伝子が全ての細胞において組み換えられたからである。結果が図29に示され、これは、3つのすべてのReaper株が、Cre4導入遺伝子の存在下、STOPカセットの100%の切り出しを受けることを示す。
【0165】
(実施例37:ニワトリゲノムに組み込まれたドッキング部位からのEGFPとneoのCre媒介切り出し)
Cre組み換えは、培養PGC中、インビトロで、また同様にトランスジェニック鳥で行うことができる。培養PGC中で、Cre−lox組み換えを実行するために、細胞をCre発現ベクターで一時的にトランスフェクトする。
【0166】
DOC2細胞が、Cre発現ベクターでトランスフェクトするために使われた。このPGC株は、PrkzといくつかのESTに結合したCpGアイランドで21番染色体に組み込まれたドッキング部位構築物を保有する。開始DOC2培養物中の細胞の全ては、緑色蛍光であったが、これは細胞がドッキング部位構築物中にCX−EGFP遺伝子を保有するからである。2つのCre発現ベクターを使用した:ヒトCMVプロモーターの転写管理下のCre遺伝子を有するpBS185、またはERNIプロモーターがCre発現を引き起こすERNI−Cre構築物。
【0167】
Cre発現構築物を、DOC2細胞に一時的にトランスフェクトした。数日後に、培養物は緑色蛍光の喪失についてモニタリングされ、そして、それは細胞がCre構築物を取り上げ、Creを発現し、CreがCX−EGFP−CX−neoを含む、ドッキング部位ベクター上のloxP部位間の配列の切り出しを引き起こしたインジケータとみなされた。Creトランスフェクション後、培養物は緑色の細胞と緑色でない細胞とから成るものであった。2つの集団を精製するために、培養物を緑色蛍光に基づきフローサイトメトリによって分類した。各集団(緑色および緑色でない)の数百万個の細胞を回収した。
【0168】
EGFP遺伝子が細胞の緑色でない集団に切り出されたことを証明するために、サザンブロット分析を使用した(参照:図30)。細胞(緑色および緑色でない)の2つの集団からのゲノムDNAを調製し、HindIII制限酵素で消化した。DNAをアガロースゲルで分画し、ナイロン膜に移し、ドッキング部位に存在するピューロマイシン耐性遺伝子からの放射能標識配列にハイブリダイズした。puro遺伝子は、Cre−lox組み換えによって切り出されないドッキング部位構築物の領域にあり、したがって、puroプローブは、DOC2切り出し細胞および非切り出し細胞の両方からのゲノムDNAのフラグメントを検出する。予測サイズのHindIIIフラグメントは、以下の通りである:EGFP+(非切り出し)、5521bp;EGFP−(切り出し)、1262のbp。予想フラグメントが観察され、非緑色細胞中で、Cre−lox組み換えが、DOC2細胞に組み込まれたドッキング部位構築物における2つのloxP部位間に存在するCX−EGFP−CX−neo配列の欠失をもたらしたことを示した。
【0169】
(実施例38:IgL pKO5Bターゲティングベクターの調製)
ニワトリIgL遺伝子座を標的とするために、目標とした組み換えの際に、遺伝子座の内因性J領域とC領域を欠失したターゲティングベクターが調製された(図31)。選択マーカーが変わったこと以外は、ベクターは先に記載したIgL pKO5と同じであった。ベクターの5’側の相同領域は、IgL V領域の近傍の2327bpフラグメントから成り、3’側の相同領域は、C領域の下流からの6346bpフラグメントから成るものであった。相同アームは、ターゲティングトランスフェクションの際に使われる細胞株から得られた同質遺伝子系統DNAからクローン化された。ターゲティング構築物は、発現を妨げる1つ以上の方法(例えば、停止コドン、ナンセンス配列、attP部位またはそれらの組み合わせ)を含んだ。ベクターは、また、選択可能なマーカー遺伝子と部位特異的組み換え部位を含んだ。
HS4 ERNI−neo:804bpネオマイシン耐性遺伝子を、PGCにおける発現のために、800bpのERNIプロモーターの転写管理の下に置いた。ニワトリでのERNI発現は、非常に初期の胚に限られ、そのために、選択マーカーは成熟したニワトリでは発現しないはずである。ニワトリβ−グロビン遺伝子座からの250bpのコアHS4インスレーター要素は、タンデム複製され、複製されたインスレーターは、ERNI−neo選択マーカーの両側に配置された。単一のloxP部位(Cre媒介組み換えのための)は、HS4−ERNI−neoの上流でクローン化された。
【0170】
【化8】
attP−puro:600bpのpuro遺伝子は、プロモーターなしで、43bpのattP部位(phiC31媒介組み換えのための)に連結された。それから、attP−puroは、HS4−ERNI−neoの下流でクローン化された。合わせて、loxP−HS4−ERNI−neo−attP−puro選択マーカーカセットは、4089bpである。
【0171】
【化9】
5’相同アーム:2327bpのフラグメントは、
【0172】
【化10】
を用いて、PGC35ゲノムDNAから複製された、PGC35 IgL SacIクローン+333bpのNotI−Ncol PCR産物からの1994bp NcoI−BamHIフラグメントをライゲーションすることにより生成される。PCRフラグメントは、2つのフラグメントを結合する重複ゲノムNcoI部位を含んだ。
【0173】
得られた2327bpフラグメントは、pKOベクターバックボーンへのクローニングのためのNotIとBamHIを用いてHS4 ERNI−puroの上流で放出された。NotI部位は、ゲノム中には存在せず、PCRによって付加された。
3’−相同アーム:6346kbのSpeI−BglIIフラグメントが、一緒に以下の3つのフラグメントをライゲーションすることにより生成された:SacIゲノムクローンからのSpeI−EcoRIフラグメント、およびEcoRI−MfeIゲノムクローンからのEcoRI−ApaLIクローン、およびEcoRI−MfeIクローンから複製された300bpのApaLI−BglII PCRフラグメント
【0174】
【化11】
BglII部位は、ゲノムに存在しなかったが、PCRによって付加された。3’−相同アームは、HS4 ERNI−puroとHS4 b−アクチンEGFPの間でpKOベクターバックボーンにクローン化された。
HS4 b−アクチンEGFP:1.3kbのニワトリb−アクチンプロモーターは、700bpのEGFP遺伝子の発現を引き起こすために使用された。複製されたHS4インスレーターの1コピーが、末端に付加されて、位置効果からランダムに挿入されたターゲティングベクターを隔離して、EGFP発現を可能とした。
【0175】
最終的なIgL pKO5Bターゲティングベクターは、17,681bpのサイズを有し、PGCにトランスフェクトする前にNotIで線状化した。
【0176】
(実施例39:PGCのトランスフェクションとKO−07 IgLノックアウトPGC細胞株の生成)
エレクトロポレーション緩衝液(AmaxaからのV緩衝液)のl00μlの5x106個の細胞の38アリコートを、各l0μgのDNAでトランスフェクトした。すべてのアリコートを、Amaxa nucleofector pulse A33(Amaxa)でエレクトロポレーションした。9つのクローンが得られ、そのうちの4つは、GFP陽性であり、さらには追跡しなかった。5つのGFP非発現クローンが、サザン分析のために拡大され、KO−07、08、09、10および11と命名された。
【0177】
(実施例40:サザンブロット分析)
相同組み換えの5’側について、IgL pKO5Bでトランスフェクトされた5つのクローン性PGC株からのゲノムDNAを、SacI制限酵素で消化して、0.7%アガロースゲルで分画した。DNAをナイロン膜に移し、相同アーム(すなわち、外因性プローブ)として使われる領域からの上流で、ニワトリIgL遺伝子座からのプローブにハイブリダイズした。プローブは、0.5kbのSacI−BstEIIフラグメントであり、約10kbの野生型フラグメントと約4kbの変異体フラグメントを検出する(図32、左のパネル)。ターゲティングの3’側に関して、ゲノムDNAをBstEIIで消化し、ブロットを3’側の1.7kbのNsiI−MfeIフラグメント(また、ターゲティングベクターの外側にある)にハイブリダイズさせた(図32、右側パネル)。
【0178】
(実施例41:生殖細胞系列キメラの生産)
3000個のPGCを、ステージ15〜16(Hamburger&Hamilton)の胚毎に背側大動脈へ注入した。胚を代理棚でインキュベートした。孵化したひなを性的に成熟するまで成長させた。
【0179】
キメラ雄鶏を、人工授精によって野生型Barred Rock雌鶏と交配させた。精液を9羽の雄鶏から集めて、雌鶏を授精させた。雄鶏のうちの6羽は、黒い羽の表現型を子孫に伝達し、そして、IgLノックアウトPGCの生殖細胞系列伝達を示した(表1)。雄鶏(IV75−41)のうちの1羽は、50%を超える割合で伝達した。
【0180】
【表15】
(実施例42:ノックアウト胚のサザンブロット分析)
発育14日目の黒色羽毛の胚を安楽死させ、ゲノムDNAを骨格筋から調製した。サザンブロットが実行されて、ノックアウトが、実験で試験された7つの胚の5つに伝達されたことを示す(胚2,3、4、6および7)。胚1と胚5は、野生型胚であり、これらは、ヘテロ接合性の目標とされたKO−07ノックアウトPGCから野生型IgL対立遺伝子を受け継いだ(図33)。
【図1A】
【図1B】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内因性遺伝子座の選択された部分の欠失を含むトランスジェニックニワトリ。
【請求項2】
破壊された内因性遺伝子が、免疫グロブリン遺伝子座である請求項1に記載のトランスジェニックニワトリ。
【請求項3】
前記破壊された内因性遺伝子が、免疫グロブリン重鎖遺伝子座である請求項2に記載のトランスジェニックニワトリ。
【請求項4】
前記破壊された内因性遺伝子が、免疫グロブリン軽鎖遺伝子座である請求項2に記載のトランスジェニックニワトリ。
【請求項5】
前記破壊された内因性遺伝子が、V−遺伝子セグメント、J−遺伝子セグメント、およびC−遺伝子セグメント、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される遺伝子セグメントの検出を含む請求項2に記載のトランスジェニックニワトリ。
【請求項6】
破壊された内因性遺伝子座が、ターゲティング構築物を含む請求項1に記載のトランスジェニックニワトリ。
【請求項7】
ターゲティング構築物が、停止コドン、att−p部位、ナンセンス配列またはそれらの組み合わせを内因性遺伝子座に挿入する請求項1に記載のトランスジェニックニワトリ。
【請求項8】
前記ターゲティング構築物が、内因性遺伝子座に対する2つの相同領域および相同領域間に位置する選択マーカーから構成される請求項6に記載のトランスジェニックニワトリ。
【請求項9】
重鎖の内因性免疫グロブリン重鎖遺伝子および内因性免疫グロブリン軽鎖遺伝子の両方の機能性破壊を含む請求項2に記載のトランスジェニックニワトリ。
【請求項10】
前記内因性遺伝子座の欠失部分が、少なくとも10kbを含む請求項1に記載のトランスジェニックニワトリ。
【請求項11】
トランスジェニックニワトリを生産する方法であって、ターゲティング構築物が細胞のゲノムへの安定した組み込みによって内因性遺伝子の少なくとも一部を破壊するようにターゲティング構築物をニワトリ始原生殖細胞に組み込み、始原生殖細胞をニワトリ胚に挿入し、胚からトランスジェニックニワトリを孵化させることを含み、ここで、該ニワトリは、内因性遺伝子の機能的な破壊を含む方法。
【請求項12】
前記内因性遺伝子が、免疫グロブリン遺伝子である請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記免疫グロブリン遺伝子が、軽鎖遺伝子である請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記免疫グロブリン遺伝子が、重鎖遺伝子である請求項12に記載の方法。
【請求項15】
ターゲティング構築物が、V−遺伝子セグメント、J−遺伝子セグメント、およびC−遺伝子セグメント、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択されるセグメントを欠失する請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記ターゲティング構築物が、停止コドン、ナンセンス配列、att−p部位またはそれらの組み合わせを挿入する請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記ターゲティング構築物が、内因性遺伝子に対して少なくとも2つの相同領域から構成される請求項11に記載の方法。
【請求項18】
細胞ゲノムへの前記ターゲティング構築物の組み込みが、2つの相同領域の間に位置する選択マーカーをターゲティング構築物と内因性遺伝子との間に配置する請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ターゲティング構築物が、ポジティブ選択マーカーから構成される請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記ターゲティング構築物が、ネガティブ選択マーカーから構成される請求項11に記載の方法。
【請求項1】
内因性遺伝子座の選択された部分の欠失を含むトランスジェニックニワトリ。
【請求項2】
破壊された内因性遺伝子が、免疫グロブリン遺伝子座である請求項1に記載のトランスジェニックニワトリ。
【請求項3】
前記破壊された内因性遺伝子が、免疫グロブリン重鎖遺伝子座である請求項2に記載のトランスジェニックニワトリ。
【請求項4】
前記破壊された内因性遺伝子が、免疫グロブリン軽鎖遺伝子座である請求項2に記載のトランスジェニックニワトリ。
【請求項5】
前記破壊された内因性遺伝子が、V−遺伝子セグメント、J−遺伝子セグメント、およびC−遺伝子セグメント、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される遺伝子セグメントの検出を含む請求項2に記載のトランスジェニックニワトリ。
【請求項6】
破壊された内因性遺伝子座が、ターゲティング構築物を含む請求項1に記載のトランスジェニックニワトリ。
【請求項7】
ターゲティング構築物が、停止コドン、att−p部位、ナンセンス配列またはそれらの組み合わせを内因性遺伝子座に挿入する請求項1に記載のトランスジェニックニワトリ。
【請求項8】
前記ターゲティング構築物が、内因性遺伝子座に対する2つの相同領域および相同領域間に位置する選択マーカーから構成される請求項6に記載のトランスジェニックニワトリ。
【請求項9】
重鎖の内因性免疫グロブリン重鎖遺伝子および内因性免疫グロブリン軽鎖遺伝子の両方の機能性破壊を含む請求項2に記載のトランスジェニックニワトリ。
【請求項10】
前記内因性遺伝子座の欠失部分が、少なくとも10kbを含む請求項1に記載のトランスジェニックニワトリ。
【請求項11】
トランスジェニックニワトリを生産する方法であって、ターゲティング構築物が細胞のゲノムへの安定した組み込みによって内因性遺伝子の少なくとも一部を破壊するようにターゲティング構築物をニワトリ始原生殖細胞に組み込み、始原生殖細胞をニワトリ胚に挿入し、胚からトランスジェニックニワトリを孵化させることを含み、ここで、該ニワトリは、内因性遺伝子の機能的な破壊を含む方法。
【請求項12】
前記内因性遺伝子が、免疫グロブリン遺伝子である請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記免疫グロブリン遺伝子が、軽鎖遺伝子である請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記免疫グロブリン遺伝子が、重鎖遺伝子である請求項12に記載の方法。
【請求項15】
ターゲティング構築物が、V−遺伝子セグメント、J−遺伝子セグメント、およびC−遺伝子セグメント、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択されるセグメントを欠失する請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記ターゲティング構築物が、停止コドン、ナンセンス配列、att−p部位またはそれらの組み合わせを挿入する請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記ターゲティング構築物が、内因性遺伝子に対して少なくとも2つの相同領域から構成される請求項11に記載の方法。
【請求項18】
細胞ゲノムへの前記ターゲティング構築物の組み込みが、2つの相同領域の間に位置する選択マーカーをターゲティング構築物と内因性遺伝子との間に配置する請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ターゲティング構築物が、ポジティブ選択マーカーから構成される請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記ターゲティング構築物が、ネガティブ選択マーカーから構成される請求項11に記載の方法。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図18A】
【図18B】
【図26】
【図30】
【図17】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図27】
【図28】
【図29】
【図31】
【図32】
【図33】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図18A】
【図18B】
【図26】
【図30】
【図17】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図27】
【図28】
【図29】
【図31】
【図32】
【図33】
【公表番号】特表2010−536346(P2010−536346A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−521188(P2010−521188)
【出願日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際出願番号】PCT/US2008/073214
【国際公開番号】WO2009/023800
【国際公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(510041016)オリジェン セラピューティクス, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際出願番号】PCT/US2008/073214
【国際公開番号】WO2009/023800
【国際公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(510041016)オリジェン セラピューティクス, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
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