説明

不活性ガス回収装置

【課題】アルゴン精製時のコストを低減すると共に、回収したアルゴンガス中の一酸化炭素の除去率を高くすることができる不活性ガス回収装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る不活性ガス回収装置は、引上装置から回収される不活性ガス中の固相成分を除去する第1除去ユニット10と、これを通過した不活性ガス中に大気を導入する大気導入ユニット20と、大気が導入された不活性ガス中に含まれる固相成分を除去する第2除去ユニット30と、これを通過した不活性ガス中に少なくとも水素ガスを導入し反応させる反応ユニット40と、これを通過した不活性ガス中の水分を除去する第3除去ユニット50と、これを通過した不活性ガスを精製して不活性ガス中に含まれる窒素ガス、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス、水素ガス及び酸素ガスを除去する第4除去ユニット60と、を備える

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引上装置で使用された不活性ガスを回収し精製して再利用する不活性ガス回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
引上装置で使用されるアルゴン等の不活性ガスは高価であるため、使用された不活性ガスを回収し精製して再利用する不活性ガス回収装置が数多く提案されている。
【0003】
特許文献1には、不活性ガス中の不純物を水によって除去する液封式真空ポンプと、不活性ガスをPSA方式及び触媒方式で精製する精製ユニットとを備えた単結晶引上用不活性ガス回収装置が開示されている。
特許文献2には、深冷分離によって不純アルゴンを精留する精留手段を備えたアルゴン回収精製装置が開示されている。
更に、特許文献3には、一酸化炭素を酸素と反応させて二酸化炭素を生じさせる第1処理を実行するための第1処理槽と、前記第1処理の後に水素を酸素と反応させて水を生じさせる第2処理を実行するための第2処理槽とを含むアルゴン精製装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−89387号公報
【特許文献2】特開平9−72656号公報
【特許文献3】特開2010−180067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2に記載の装置は、アルゴンガス中に含まれる一酸化炭素(CO)はPSA方式による精製ユニット又は深冷分離による精留手段によって除去されるが、これら精製ユニット又は精留手段のみでは、その除去率に限界があるものであった。
なお、特許文献3に記載の装置は、PSA系に加え、前記第1、2処理槽を備えているため、アルゴンガス中の一酸化炭素の除去率を高くすることができる。しかしながら、本装置の場合、第1処理槽内に大量の純酸素を導入する必要があるため、アルゴン精製時のコストが増加するという問題がある。
【0006】
本発明は、上記技術的課題を解決するためになされたものであり、アルゴン等の不活性ガス精製時のコストを低減すると共に、回収したアルゴン等の不活性ガス中の一酸化炭素の除去率を高くすることができる不活性ガス回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る不活性ガス回収装置は、引上装置から回収される不活性ガス中の固相成分を除去する第1固相成分除去ユニットと、前記第1固相成分除去ユニットを通過した不活性ガス中に大気を導入する大気導入ユニットと、前記大気が導入された不活性ガス中に含まれる固相成分を除去する第2固相成分除去ユニットと、前記第2固相成分除去ユニットを通過した不活性ガス中に少なくとも水素ガスを導入し反応させることで、前記不活性ガス中に含まれる一酸化炭素を酸化して二酸化炭素と水を生成する反応ユニットと、前記反応ユニットを通過した不活性ガス中の水分を除去する水分除去ユニットと、前記水分除去ユニットを通過した不活性ガスを精製して不活性ガス中に含まれる気相成分である窒素ガス、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス、水素ガス及び酸素ガスを除去する気相成分除去ユニットと、を備えることを特徴とする。
【0008】
前記反応ユニットは、前記第2固相成分除去ユニットを通過した不活性ガス中の酸素濃度を測定し、前記酸素濃度の測定結果に基づいて新たに酸素ガスを導入し前記反応をさせることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、アルゴン等の不活性ガス精製時のコストを低減すると共に、回収したアルゴン等の不活性ガス中の一酸化炭素の除去率を高くすることができる不活性ガス回収装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る不活性ガス回収装置の系統図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る不活性ガス回収装置の系統図である。
【図3】本発明の第3の実施形態に係る不活性ガス回収装置の系統図である。
【図4】本発明の第4の実施形態に係る不活性ガス回収装置の系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る不活性ガス回収装置の実施形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る不活性ガス回収装置の系統図である。
本実施形態に係る不活性ガス回収装置1Aは、図1に示すように、第1固相成分除去ユニット10(以下、第1除去ユニット10という)と、大気導入ユニット20と、第2固相成分除去ユニット30(以下、第2除去ユニット30という)と、反応ユニット40と、水分除去ユニット50(以下、第3除去ユニット50という)と、気相成分除去ユニット60(以下、第4除去ユニット60という)と、を備えることを特徴とする。
【0012】
第1除去ユニット10は、引上装置5から回収される不活性ガス中の固相成分を除去する。
前記第1除去ユニット10は、具体的には、引上装置5から不活性ガスを真空引きして回収すると共に、前記回収した不活性ガス中の固相成分を水によって除去する液封式真空ポンプ12で構成されている。
【0013】
大気導入ユニット20は、前記第1除去ユニット10を通過した不活性ガス中に大気を導入する。
前記大気導入ユニット20は、具体的には、手動又は電磁的操作により大気ブローを行って、不活性ガス中に大気を導入する大気導入部(例えば、導入弁)22で構成されている。
前記大気導入ユニット20により大気が導入された不活性ガスは、一時的に、ガスフォルダ25に収容され、圧縮器Pmによって、ガスフォルダ25から平均的なガス量が吸引され、第2除去ユニット30へ送られる。
【0014】
第2除去ユニット30は、前記大気が導入された不活性ガス中に含まれる固相成分を除去する。
前記第2除去ユニット30は、具体的には、大気中に含まれる比較的程度の大きな粉塵等を除去する周知のフィルタ30A、30Bが並列に配置され、かつ、これらより比較的程度の小さな粉塵等を除去する周知のフィルタ30Cが直列に配置された構造で構成されている。
前記第2除去ユニット30を通過した不活性ガスは、ブロワ35により加熱されて反応ユニット40に送られる。
【0015】
反応ユニット40は、前記第2除去ユニット30を通過した不活性ガス中に少なくとも水素ガスを導入し反応させることで、前記不活性ガス中に含まれる一酸化炭素を酸化して二酸化炭素と水を生成する。
前記反応ユニット40は、具体的には、大気が導入され、第2除去ユニット30を通過した不活性ガスを一時的に収容すると共に、水素導入部(例えば、水素ボンベ)42により水素を導入して反応させる反応塔44で構成されている。
【0016】
前記反応ユニット40は、前記第2除去ユニット30を通過した不活性ガス中の酸素濃度を測定し、前記酸素濃度の測定結果に基づいて新たに酸素ガスを導入し前記反応をさせることが好ましい。
前記反応ユニット40は、具体的には、前記第2除去ユニット30を通過した不活性ガス中の酸素濃度を測定する酸素濃度測定部(例えば、酸素濃度計)46と、前記酸素濃度を測定した不活性ガス中に酸素を導入する酸素導入部(例えば、酸素ボンベ)48と、を更に備えることが好ましい。
例えば、精製した不活性ガス中に一酸化炭素が残存してしまう場合には、大気導入ユニット20から導入された大気中に含まれる酸素量では反応塔44での除去が追いつかないということになる。従って、酸素濃度測定部46により反応塔44に入る前の不活性ガス中の酸素濃度を測定し、酸素濃度が低い(一酸化炭素の除去率が小さい)と判断される酸素量である場合には、酸素導入部48から新たに酸素を導入することで、確実に、一酸化炭素を除去することができる。
【0017】
第3除去ユニット50は、前記反応ユニット40を通過した不活性ガス中の水分を除去する。
前記第3除去ユニット50は、具体的には、前記反応ユニット40を通過した不活性ガスを脱湿する並列に配置された複数の脱湿塔50A,50Bで構成されている。
【0018】
第4除去ユニット60は、前記第3除去ユニット50を通過した不活性ガスを精製して不活性ガス中に含まれる気相成分である窒素ガス、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス、水素ガス及び酸素ガスを除去する。
前記第4除去ユニット60は、具体的には、前記第3除去ユニット50を通過した不活性ガスをPSA方式で精製して窒素ガス、一酸化炭素ガス及び二酸化炭素ガスを除去するPSA方式精製ユニット63と、PSA方式精製ユニット63を通過した不活性ガスを触媒方式で精製して水素ガス及び酸素ガスを不活性ガスから分離精製する触媒方式精製ユニット67とで構成されている。PSA方式精製ユニット63は、例えば、並列に配置された複数のPSA精製装置63A、63B、63C、63Dで構成されている。触媒方式精製ユニット67は、例えば、並列に配置された複数の触媒精製装置67A,67Bで構成される。
【0019】
前記第4除去ユニット60を通過した不活性ガスは、最終フィルタ73を通した後、バッファータンク75に回収され、不活性ガス供給部(例えば、不活性ガスボンベ)77からバッファータンク75に純アルゴンが供給されることで、前記バッファータンク75に回収された不活性ガスを引上装置5に供給して再利用する。
【0020】
また、前記第3除去ユニット50と前記第4除去ユニット60との間には、前記第4除去ユニット60に導入される不活性ガスの導入量を調整する不活性ガス導入量調整部80が設けられている。
不活性ガス導入量調整部80は、前記第4除去ユニット60に入りきれない不活性ガスを一時的に収容するオフガスタンク85を備える。オフガスタンク85に収容された不活性ガスは大気パージされ、前記第1除去ユニット10を通過した不活性ガス中に混合され、再度、回収装置内を循環し精製される。
【0021】
本発明に係る不活性ガス回収装置によれば、上述したような構成を備えているため、大量の純酸素を導入する必要が無く、アルゴン等の不活性ガス精製時のコストを低減することができる。また、反応ユニット40と第4除去ユニット60を備えているため、回収した不活性ガス中の一酸化炭素の除去率を高くすることができる。
【0022】
(第2の実施形態)
図2は本発明の第2の実施形態に係る不活性ガス回収装置の系統図である。
本実施形態に係る不活性ガス回収装置1Bは、図1に示す第4除去ユニット60を第4除去ユニット90に置き換えた構造を有している。その他は、第1の実施形態と同様であるため説明を省略する。
本実施形態に係る不活性ガス回収装置1Bにおける第4除去ユニット90は、図2に示すように、前記第3除去ユニット50を通過した不活性ガスを冷却して精留分離により不活性ガス中に含まれる低沸点成分(窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、水素及び酸素)を除去する深冷分離ユニットであることを特徴とする。
第4除去ユニット90は、具体的には、前記第3除去ユニット50を通過した不活性ガスを冷却する熱交換器93と、冷却した不活性ガスを深冷分離作用により不活性ガス中の低沸点成分を分離する精留塔95とを備えている。精留塔95で低沸点成分が分離されたアルゴンガスは、前記第3除去ユニット50を通過し、精留塔95を通過前のアルゴンガスと熱交換器93内で熱交換され常温となり、最終フィルタ73に流れていく。
本実施形態に係る不活性ガス回収装置1Bは、上述したような構成を備えているため、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0023】
(第3の実施形態)
図3は本発明の第3の実施形態に係る不活性ガス回収装置の系統図である。
本実施形態に係る不活性ガス回収装置1Cは、図1に示す第1除去ユニット10が第1除去ユニット10Aに置き換えた構造を有している。その他は、第1の実施形態と同様であるため説明を省略する。
本実施形態に係る不活性ガス回収装置1Cにおける第1除去ユニット10Aは、図3に示すように、引上装置5から不活性ガスを真空引きして回収する真空オイルポンプ12Aと、真空オイルポンプ12Aにより回収した不活性ガス中に含まれるオイル成分を不活性ガスから分離するオイルセパレータ15と、オイルセパレータ15を通過した不活性ガス中に含まれる固相成分を除去する活性炭フィルタ17とで、構成されていることを特徴とする。
本実施形態に係る不活性ガス回収装置1Cは、上述したような構成を備えているため、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0024】
(第4の実施形態)
図4は本発明の第4の実施形態に係る不活性ガス回収装置の系統図である。
本実施形態に係る不活性ガス回収装置1Dは、図2に示す第1除去ユニット10が第1除去ユニット10Aに置き換えた構造を有している。その他は、第2の実施形態と同様であり、また、第1除去ユニット10Aは第3の実施形態で説明したのと同様であるため、説明を省略する。
本実施形態に係る不活性ガス回収精製装置1Dは、上述したような構成を備えているため、第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【実施例】
【0025】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明は、下記実施例により限定解釈されるものではない。
(実施例)
図1から図4に示す不活性ガス回収装置1A、1B、1C、1Dを使用して、引上装置5で各々直径200mmの太陽電池用シリコンインゴットを引上げ、引上げ時に使用された使用済み不活性ガス(アルゴンガス)を回収し、精製した。この際、各々の不活性ガス回収装置内の定点ポイントA、Bにおけるアルゴンガス以外の不純物濃度(ppm)を、引上げ開始後、30分毎に複数回測定した。
本実施例における測定結果を表1に示す。
【0026】
【表1】

【0027】
表1から分かるように、図1から図4の不活性ガス回収装置のいずれにおいても一酸化炭素を完全に除去した不活性ガスを精製することができ、更には、大気導入ユニット20で不活性ガス中に大気を導入しても、大気中に含まれる窒素を除去した不活性ガスを精製することができる。
【符号の説明】
【0028】
10 第1除去ユニット
20 大気導入ユニット
30 第2除去ユニット
40 反応ユニット
50 第3除去ユニット
60 第4除去ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
引上装置から回収される不活性ガス中の固相成分を除去する第1固相成分除去ユニットと、
前記第1固相成分除去ユニットを通過した不活性ガス中に大気を導入する大気導入ユニットと、
前記大気が導入された不活性ガス中に含まれる固相成分を除去する第2固相成分除去ユニットと、
前記第2固相成分除去ユニットを通過した不活性ガス中に少なくとも水素ガスを導入し反応させることで、前記不活性ガス中に含まれる一酸化炭素を酸化して二酸化炭素と水を生成する反応ユニットと、
前記反応ユニットを通過した不活性ガス中の水分を除去する水分除去ユニットと、
前記水分除去ユニットを通過した不活性ガスを精製して不活性ガス中に含まれる気相成分である窒素ガス、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス、水素ガス及び酸素ガスを除去する気相成分除去ユニットと、
を備えることを特徴とする不活性ガス回収装置。
【請求項2】
前記反応ユニットは、前記第2固相成分除去ユニットを通過した不活性ガス中の酸素濃度を測定し、前記酸素濃度の測定結果に基づいて新たに酸素ガスを導入し前記反応をさせることを特徴とする請求項1に記載の不活性ガス回収装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−140254(P2012−140254A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292275(P2010−292275)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(507182807)コバレントマテリアル株式会社 (506)