説明

不活性型潜在型TGFbの活性型TGFbへの変換を誘導できる有効成分

【課題】本発明の主要な目的は、皮膚(特に真皮)中の活性型TGFb1濃度の減少を軽減することである。
【解決手段】本発明は、不活性型潜在型TGFbの活性型TGFbへの変換を誘導できる有効成分に関する。本発明は特に、皮膚(特に真皮)中の活性型TGFb1濃度を増加させる組成物を製造するための上記有効成分の使用に関する。本発明はまた、上記使用から派生する使用、及び、上記抽出物を含む化粧組成物又は医薬組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潜在型トランスフォーミング増殖因子β1(TGFb1−L)を、TGFb1−Lの「活性」型であるトランスフォーミング増殖因子β1(TGFb1)に変換する天然抽出物、並びに、特に皮膚(特に真皮)中のTGFb1濃度を増加させるための、化粧品、皮膚薬及び医薬品におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
増殖因子及びサイトカインのうち、TGFb1は、ケラチノサイト、繊維芽細胞、白血球及び血小板等の多くの細胞によって皮膚中で分泌され、細胞代謝を変化させて細胞外マトリックスを改築するという重要な特性を持つことから、治療において最も効率のよい調節因子の1種である(非特許文献1、2)。
【0003】
人間では、TGFβファミリーにおいて4種のアイソフォームが現在までに同定されている。これらは、異なる染色体上に存在する全く異なる遺伝子から転写・翻訳される。TGF−β1は19q13染色体上に、TGF−β2は1q41染色体上に、TGFβ−3は14q24染色体上に、TGF−β4は1q42.1染色体上に位置している。
【0004】
TGF−β1は「潜在」型と称される生物学的に不活性な形態で分泌・貯蔵されており、「活性化」しなければ生物学的有効性を獲得できない。
【0005】
潜在型TGFb1は細胞外マトリックス中に貯蔵され、老齢患者においては貯蔵されるだけで使用されない。
【0006】
生体内では様々な因子により潜在型TGFb1の活性化が誘導される:
−グルコシダーゼ(エンドグリコシダーゼ−F、ノイラミニダーゼ、N−グリカナーゼ)、
−マクロファージ中で分泌されるシアリダーゼ、
−セリンプロテアーゼ(プラスミン、カテプシンD及びストロメリシン(MMP3))
−トロンボスポンジン−1(細胞表面にも細胞外マトリックスにも結合し、潜在型TGFb1の活性化において主要な生理的調節因子である付着タンパク質)。
【0007】
活性型TGFb1は皮膚の成長及びホメオスタシスにおいて最も重要な多機能型増殖因子であり、特に細胞の中で、繊維芽細胞の増殖、その化学誘引、血管新生の促進、繊維芽細胞の筋繊維芽細胞への分化、及び、繊維芽細胞の増殖の制御を誘導できると考えられる。また、細胞外マトリックス中では、コラーゲンの合成を増加させ、コラゲナーゼを減少させ、プロテアーゼ阻害剤(TIMP)の合成を増加させ、フィブロネクチンのアイソフォームの発現及びフィブロネクチン受容体の合成を増加させ、エラスチンの合成を増加させることもできる。しかしながら、プロテオグリカン及びヒアルロン酸の合成の増加にも関与している。
【0008】
真皮中で観察される活性型TGFb1濃度が減少しても、繊維芽細胞は活性型TGFb1による刺激に応答する能力を維持している。
【0009】
老化の際にこのように活性型TGFb1濃度が減少すると、繊維芽細胞の増殖の減少及び細胞外マトリックス(ECM)構成成分の合成の減少が誘導され、ECMの細胞外タンパク質の有害な活性が阻害される。
【0010】
物理処理(温度)、化学処理(酸性pH)又は酵素による活性化といった活性化法が提案されている。
【0011】
しかしながらこれらの活性法は、:
−化粧剤を合理的に使用する際に激烈過ぎたり不適当であったり(例えば、化粧品に使用するには温度が高過ぎたりpHが酸性過ぎたり)する場合、又は、
−皮膚上にアレルギー反応を引き起こす可能性があるという理由から、若しくは、分子量が非常に高いために、TGFβが不活性型で存在している真皮を含む皮膚深層へ浸透できないという理由から、化粧品にはあまり使用しない酵素を使用する場合がある。
【0012】
これらの方法では、化粧品に、皮膚科的に又は医薬品に許容される天然有効成分は得られない。
【0013】
特許文献1のみが、潜在型TGFb1を活性化できる分子について記載している。この分子はトリペプチドであるリジン−フェニルアラニン−リジン(Lys−Phe−Lys)の誘導体であり、その配列はトロンボスポンジン−1の配列中にある。しかしながら、化粧品として活性化するためには、このトリペプチドをエライジン酸と反応させ、エライジル鎖(elaidyl chain)をグラフトさせて改変しなければならない。
【0014】
この物質は、このように化学的に改変されているために、本発明の意味する天然物とは言えない。
【0015】
また、当業者であれば、プロテアーゼ活性を有する物質や強力なタンパク変性剤の使用を考えるであろう。しかしながら本発明は、化粧品に、皮膚科的に又は医薬品に許容される物質の製造において障害のある使用は行わない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】フランス特許2,810,323
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Rousselle Pら,Ed.Medias Flash(1998年)
【非特許文献2】Melissopoulos Aら,Ed.Medicales Internationales(1998年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
発明の目標
本発明の主要な目的は、皮膚(特に真皮)中の活性型TGFb1濃度の減少を軽減することである。
【0019】
本発明のある目的は、TGFb1−Lを活性型TGFb1に変換する、化粧品に、皮膚科的に又は医薬品に許容される天然有効成分を提供するという新しい技術的問題を解決することである。
【0020】
上記有効成分が化粧品に、皮膚科的に又は医薬品に許容されると本発明者らが考えるのは、第一に、皮膚を刺激したりアレルギーを引き起こしたりする際にプロテアーゼ活性を有さない場合、第二に、HCl型強酸、尿素、トレイトールの含硫黄還元剤、チオグリコール酸化合物等のタンパク質を強力に変性させるとして知られる化学物質でない場合においてである。
【0021】
有効成分が天然であると本発明者らが考えるのは、有効成分が、例えば植物界(植物、藻類等)や鉱物界に属する抽出物及び/若しくは植物(タンパク質、多糖等)から抽出された成分等の自然界からの抽出物、植物からの抽出物、動物の分泌物からの抽出物、並びに/又は、(微生物存在下での発酵により最終的に得られる)動物体や植物から単離された成分からの抽出物である場合においてである。本発明の別の目的は、局所使用でき、繊維芽細胞の増殖を促進する天然有効成分を提供するという新しい技術的な問題を解決することである。
【0022】
本発明の別の目的は、局所使用でき、活性型TGFb1の量を増加させて、その結果、細胞外マトリックス構成成分の合成を増大させて、細胞外マトリックスの細胞外タンパク質の有害な活性を阻害する天然有効成分を提供するという新しい技術的な問題を解決することである。本発明の別の目的は、局所使用でき、記載する機構により抗皺効果又は抗老化効果を有する天然有効成分を提供するという新しい技術的な問題を解決することである。
【0023】
本発明は特に、上記有効成分を含む化粧組成物、皮膚医薬組成物及び医薬組成物を提供することを含む。
【課題を解決するための手段】
【0024】
発明の要約
上記に記載した様々な問題を解決するために、本発明者らは、不活性型TGFb1−Lをin vitroにおいて活性化できる活性化法を調べた。現在のところ、TGFb1は、不活性型(TGFb1−L)である場合にLAPタンパク質(潜在的にタンパク質に結合している物質)に結合しており、TGFb1を活性化するためには、TGFb1とLAPタンパク質との結合を切断することが必要である。
【0025】
本発明者らは、TGFb1−Lを活性化する物質を明らかにして、皮膚(特に真皮)中の活性型TGFb1濃度を増大できる天然有効成分の提供を可能にするスクリーニング試験を開発した。
【0026】
この試験により、大豆、オート麦、ノコギリヤシ(dwarf palm)、トウグワ、スプリングハリシュモク(Spring restharrow)、木豆(pigeon bean)、空豆、トマト、魚卵(fish roe)、エンドウ豆、魚、小麦、マンゴー、ナツメヤシ、絹、キーウィ、ジャガイモ、グレープフルーツ、パパイヤ、パイナップル、パッションフルーツ、スクテラリア(scutellaria)、トウモロコシ、リンゴ、キノア、パセリ又はユッカの局所使用できる天然抽出物はTGFb1−Lを活性化できることが分かった。この試験は、好ましくは化粧品に及び/又は皮膚科的に許容される条件下でインキュベートした後で実施するTGFb1−L活性化反応を含む。
【0027】
上記抽出物は、特に当業者に公知の任意の抽出方法によっても得られる。
【0028】
上記天然抽出物はTGFb1−L(潜在型TGFb1)を活性型TGFb1(TGFb1)に変換することから、とりわけ、皮膚(特に真皮)中のTGFb1濃度を増加させるための、化粧組成物、皮膚医薬組成物及び/又は医薬組成物を製造するために使用される。また、上記天然抽出物は、皮膚(特に真皮)中のTGFb1濃度を増加させることに由来する特性のためにも使用される。
【発明の効果】
【0029】
本発明の、化粧品に皮膚科的に又は医薬品に許容される天然有効成分は、TGFb1−Lを活性型TGFb1に変換する効果を有する。本発明の天然有効成分は、局所使用でき、活性型TGFb1の量を増加させて、その結果、細胞外マトリックス構成成分の合成を増大させて、細胞外マトリックスの細胞外タンパク質の有害な活性を阻害する効果を有する。さらに、本発明の天然有効成分は、記載する機構により抗皺効果又は抗老化効果を有する天然有効成分を提供するという新しい技術的な問題を解決する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施例31におけるノコギリヤシ抽出物濃度に対するエラスチン遺伝子の転写の割合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
発明の詳細な記載
本発明は主として、好ましくは酵素的に不活性であり、特にTGFb1とLAPタンパク質(潜在的にタンパク質に結合している物質)との結合を切断することによって、化粧品に、皮膚科的に及び/又は医薬品に許容される条件下でTGFb1−L(潜在型TGFb1)を活性型TGFb1(TGFb1)に変換する天然抽出物に関する。
【0032】
有利には、この植物抽出物は、大豆、オート麦、ノコギリヤシ、トウグワ、スプリングハリシュモク、木豆、空豆、トマト、魚卵、エンドウ豆、魚、小麦、マンゴー、ナツメヤシ、絹、キーウィ、ジャガイモ、グレープフルーツ、パパイヤ、パイナップル、パッションフルーツ、スクテラリア、トウモロコシ、リンゴ、キノア、パセリ又はユッカ抽出物、及び、これら抽出物の混合物のいずれか1種の中から選択される。
【0033】
本発明の化粧品に又は皮膚科的に許容される有効成分は、不活性型TGFb1−Lの活性型TGFb1への変換を、化粧品に又は皮膚科的に許容される物理化学的条件下において誘導し、また、これら有効成分は全くの天然物で、化学的改変を受けていない。
【0034】
また本発明は、上記抽出物を少なくとも1種含む化粧組成物又は医薬組成物に関する。
【0035】
有利には、上記抽出物の濃度は組成物総量に対して0.01〜10重量%である。
【0036】
有利には、上記抽出物は、局所投与経路で許容される賦形剤、特に化粧品に又は皮膚科的に許容される賦形剤との混合物である。
【0037】
これらの組成物について、上記賦形剤は、例えば、防腐剤、皮膚軟化剤、乳化剤、界面活性剤、保湿剤、濃化剤、調整剤、つや消し剤、安定剤、抗酸化剤、質感調整剤、増白剤、フィルム化剤(filmogenic agent)、可溶化剤、顔料、色素、香料及びソーラーフィルターからなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含む。これらの賦形剤は、好ましくは、アミノ酸及びその誘導体、ポリグリセリン、セルロースのエステル、ポリマー及び誘導体、ラノリン誘導体、リン脂質、ラクトフェリン、乳過酸化酵素、スクロース型安定剤、ビタミンE及びその誘導体、天然及び合成ワックス、植物油、トリグリセリド、不鹸化物、植物ステロール、植物エステル、シリコーン及びその誘導体、タンパク質加水分解物、ホホバ油及びその誘導体、脂溶性/水溶性エステル、ベタイン、アミン酸化物、植物抽出物、スクロースエステル、二酸化チタン、グリシン、並びに、パラベンからなる群より選択される。より好ましくは、ブチレングリコール、ステアレス−2、ステアレス−21、グリコール−15ステアリルエーテル、セテアリルアルコール、フェノキシエタノール、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、ブチレングリコール、天然トコフェロール、グリセリン、ジヒドロキシセチルナトリウム、イソプロピルヒドロキシセチルエーテル、ステアリン酸グリコール、トリイソノナオイン(triisononaoine)、ヤシ油脂肪酸オクチル、ポリアクリルアミド、イソパラフィン、ラウレス−7、カルボマー、プロピレングリコール、グリセリン、ビサボロール、ジメチコン、水酸化ナトリウム、PEG30−ジポリヒドロキシステアリン酸塩、カプリン/カプリル酸トリグリセリル、オクタン酸セテアリル、アジピン酸ジブチル、ブドウ種子油、ホホバ油、硫酸マグネシウム、EDTA、シクロメチコン、キサンタンガム、クエン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、ミネラルワックス及び鉱物油、イソステアリン酸イソステアリル、プロピレングリコールジペラルゴン(propylene glycol dipelargonate)、イソステアリン酸プロピレングリコール、PEG−8ミツロウ、水添パーム核脂肪酸グリセリド、水添パーム油脂肪酸グリセリド、ラノリン油、ゴマ油、乳酸セチル、ラノリンアルコール、ヒマシ油、二酸化チタン、ラクトース、スクロース、低密度ポリエチレン及び等張食塩水からなる群より選択される。
【0038】
有利には、上記組成物は、特にビン又はチューブに入れた形での、水性若しくは油性の溶液、水性クリーム、水性ゲル又は油性ゲル、特にボディソープ、シャンプー;乳液;エマルション、マイクロエマルション又はナノエマルション、特に水中油又は油中水又は多相又はシリコーン含有マイクロエマルション又はナノエマルション;ローション、特にガラスビン、プラスチックビン若しくは計量ビンに入れた形の、又は、エアゾール状のローション;アンプル;液体セッケン;皮膚科的な棒(dermatological bar);軟膏;フォーム;無水物質、好ましくは液状、ペースト状又は固体状の無水物質、例えばスティック状、特に口紅;からなる群より選択される形態で調剤される。
【0039】
また本発明は、皮膚(特に真皮)中の活性型TGFb1濃度の増加を目的とする組成物を製造するための、上記抽出物の少なくとも1種の使用に関する。
【0040】
また本発明は、繊維芽細胞の増殖の促進を目的とする組成物を製造するための、上記抽出物の少なくとも1種の使用に関する。
【0041】
また本発明は、特に、コラーゲン合成の増加により、並びに/又は、プロテアーゼ阻害剤(TIMP)合成の増加により、並びに/又は、プロテオグリカン及び/若しくはヒアルロン酸合成の増加により、並びに/又は、フィブロネクチンアイソフォームの発現及び/若しくはフィブロネクチン受容体の合成の増加により、並びに/又は、エラスチン合成の増加により、細胞外マトリックス構成成分の合成の増加を目的とする組成物を製造するための、上記抽出物の少なくとも1種の使用に関する。
【0042】
また本発明は、細胞外マトリックスの細胞外タンパク質の有害な活性の阻害を目的とする組成物を製造するための、上記抽出物の少なくとも1種の使用に関する。
【0043】
また本発明は、抗皺効果又は抗老化効果を有する組成物を製造するための、上記抽出物の少なくとも1種の使用に関する。
【0044】
本発明のある実施形態によれば、上記抽出物は溶媒抽出によって調製する。上記溶媒は、極性溶媒であってもよいし非極性溶媒であってもよい。上記溶媒は、好ましくはペンタン、デカン、シクロヘキサン、ヘキサン、石油エーテル、モノクロロメタン、ジクロロメタン、クロロホルム、イソプロパノール、プロパノール、酢酸エチル、エタノール、メタノール、アセトン、ブチレングリコール、プロピレングリコール、ペンチレングリコール、グリセリン及び水、並びに、これら溶媒のうち少なくとも2種の混合物、特に水−アルコール又は水−グリコールの混合物からなる群より選択される。
【0045】
有利には、上記抽出物は精製したものである。上記抽出物は主として水抽出によって得られるものであり、何らかの親和性の観点からMPジオール及びブチレングリコールが使用される。大豆、オート麦、エンドウ豆、小麦、トウモロコシ、キノア、及び、木豆又は空豆抽出物は種子から抽出したものであり、スプリングハリシュモク、トウグワ、ユッカ、スクテラリア及びパセリ抽出物は根から抽出したものであり、トマト、ジャガイモ、マンゴー、ナツメヤシ、キーウィ、グレープフルーツ、パパイヤ、パイナップル、パッションフルーツ、リンゴ及びノコギリヤシ抽出物は果実又は液果から抽出したものである。絹(動物由来)、魚卵及び魚は抽出、乾燥させた後に処理する。
【0046】
有利には、上記抽出物は、水、ブチレングリコール等のグリコール、水とグリコール(特にブチレングリコール)との混合物、MPジオール及びエタノールから選択される溶媒中に0.01%〜10%(w/w)に希釈する。
【実施例】
【0047】
当業者には、本発明の他の目的、特徴及び利点は、以下の実施例を参照した説明から明らかであろう。実施例は単に説明のための記載であって、本発明の範囲を何ら制限するものではない。実施例は本発明に不可欠であり、また、実施例を含む本明細書全体の中に記載される従来技術に照らして新規の特徴は全て、その機能、概略共に本発明に不可欠である。上記より、実施例は全て、一般的な範囲を示す。また、実施例において、特に指示のない限り、割合は重量で、温度は摂氏で、圧力は大気圧で表す。
【0048】
図1は、実施例31におけるノコギリヤシ抽出物濃度に対するエラスチン遺伝子の転写の割合を示す。
【実施例1】
【0049】
<大豆抽出物>
大豆のタンパク質画分を、濃縮に使用できる任意の物理的又は化学的手段によって大豆種子から濃縮する。得られたタンパク質画分を従来の任意の工業的手法によって乾燥させ、その50gを脱塩水950g中に溶解する。機械を用いて18時間撹拌した後、ろ過、遠心分離又は限外ろ過等の分離に使用できる方法により、不溶画分を可溶画分から分離する。可溶画分を、本発明の他の部分で使用する。
【実施例2】
【0050】
<オート麦抽出物>
オート麦(Avena sativa)のタンパク質画分を、濃縮に使用できる任意の物理的又は化学的手段によってオート麦種子から濃縮する。得られたタンパク質画分を従来の任意の工業的手法によって乾燥させ、その50gを脱塩水550gとブチレングリコール400gとの混合物中に溶解する。機械を用いて18時間撹拌した後、ろ過、遠心分離又は限外ろ過等の分離に使用できる方法により、不溶画分を可溶画分から分離する。可溶画分を、本発明の他の部分で使用する。
【実施例3】
【0051】
<ノコギリヤシの果実の抽出物>
ノコギリヤシ(Serenoa repens)の親油性画分(油、ステロール、ワックス等)を、濃縮に使用できる任意の物理的又は化学的手段によって果実から濃縮する。超臨界COによる抽出が好ましい。得られた脂質画分を、ろ過又は遠心分離等によって不溶画分から分離する。
【0052】
実施例3a
この物質10gをブチレングリコール990g中に溶解する。機械を用いて1時間撹拌した後、ろ過、遠心分離又は限外ろ過等の分離に使用できる方法により、不溶画分を可溶画分から分離する。可溶画分を、本発明の他の部分で使用する。
【0053】
実施例3b
この物質100gをブチレングリコール900g中に溶解する。機械を用いて1時間撹拌した後、ろ過、遠心分離又は限外ろ過等の分離に使用できる方法により、不溶画分を可溶画分から分離する。可溶画分を、本発明の他の部分で使用する。
【0054】
実施例3c
この物質300gをブチレングリコール700g中に溶解する。機械を用いて1時間撹拌した後、ろ過、遠心分離又は限外ろ過等の分離に使用できる方法により、不溶画分を可溶画分から分離する。可溶画分を、本発明の他の部分で使用する。
【実施例4】
【0055】
<絹抽出物>
絹(Morus alba)タンパク質のタンパク質加水分解物を、従来の酵素的又は化学的な加水分解によって調製する。得られたタンパク質画分を従来の任意の工業的手法によって乾燥させ、その50gを脱塩水950g中に溶解する。機械を用いて18時間撹拌した後、ろ過、遠心分離又は限外ろ過等の分離に使用できる方法により、不溶画分を可溶画分から分離する。可溶画分を、本発明の他の部分で使用する。
【実施例5】
【0056】
<トウグワ抽出物>
トウグワ(Morus alba)の根を粉砕して蒸留水中に浸漬した後、従来の任意の工業的手法によって乾燥させ、得られた物質50gを脱塩水950g中に溶解する。機械を用いて18時間撹拌した後、ろ過、遠心分離又は限外ろ過等の分離に使用できる方法により、不溶画分を可溶画分から分離する。可溶画分を、本発明の他の部分で使用する。
【実施例6】
【0057】
<スプリングハリシュモク抽出物>
スプリングハリシュモク(Ononis spinosa)の根を乾燥させ、任意の工業的手法によって粉砕した後、得られた物質50gを脱塩水950g中に溶解する。機械を用いて18時間撹拌した後、ろ過、遠心分離又は限外ろ過等の分離に使用できる方法により、不溶画分を可溶画分から分離する。可溶画分を、本発明の他の部分で使用する。
【実施例7】
【0058】
<木豆又は空豆の抽出物>
木豆又は空豆(Vicia faba)のタンパク質画分を、濃縮に使用できる任意の物理的又は化学的手段によって木豆種子又は空豆種子から濃縮する。得られたタンパク質画分を従来の任意の工業的手法によって乾燥させ、その50gを脱塩水950g中に溶解する。機械を用いて18時間撹拌した後、ろ過、遠心分離又は限外ろ過等の分離に使用できる方法により、不溶画分を可溶画分から分離する。可溶画分を、本発明の他の部分で使用する。
【実施例8】
【0059】
<トマト抽出物>
トマト(Solanum lycopersicum)の果実を乾燥させて任意の工業的手法によって粉砕した後、得られた物質10gをMPジオール990g中に溶解する。機械を用いて1時間撹拌した後、ろ過、遠心分離又は限外ろ過等の分離に使用できる方法により、不溶画分を可溶画分から分離する。可溶画分を、本発明の他の部分で使用する。
【実施例9】
【0060】
<魚卵抽出物>
サケ科魚卵は任意の従来技術によって乾燥させ、得られた物質50gを脱塩水950g中に溶解する。機械を用いて18時間撹拌した後、ろ過、遠心分離又は限外ろ過等の分離に使用できる方法により、不溶画分を可溶画分から分離する。可溶画分を、本発明の他の部分で使用する。
【実施例10】
【0061】
<エンドウ豆のタンパク質抽出物>
エンドウ豆(Pisum sativum)のタンパク質画分を、濃縮に使用できる任意の物理的又は化学的手段によってエンドウ豆種子から濃縮する。得られたタンパク質画分を従来の任意の工業的手法によって乾燥させ、その200gを無水エタノール700gと脱塩水300gとの混合物800g中に溶解する。可溶性の抽出物を任意の従来技術によって乾燥させ、得られた物質30gを脱塩水970g中に分散させる。機械を用いて18時間撹拌した後、ろ過、遠心分離又は限外ろ過等の分離に使用できる方法により、不溶画分を可溶画分から分離する。可溶画分を、本発明の他の部分で使用する。
【実施例11】
【0062】
<魚粉抽出物>
魚肉懸濁物を、調製に使用できる任意の物理的又は化学的手段によってサケ科の魚(リング(ling)、コッド(cod)、ハドック(haddock)等)から調製する。得られた画分を従来の任意の工業的手法によって乾燥させ、その50gを脱塩水950g中に分散させる。機械を用いて18時間撹拌した後、ろ過、遠心分離又は限外ろ過等の分離に使用できる方法により、不溶画分を可溶画分から分離する。可溶画分を、本発明の他の部分で使用する。
【実施例12】
【0063】
<小麦胚芽抽出物>
小麦胚芽を、小麦種子(Triticum aestivum)から機械を用いて分離し、粉砕に使用できる任意の物理的又は化学的手段によって粉砕して小麦胚芽粉末を調製する。得られた画分を従来の任意の工業的手法によって乾燥させ、その30gを脱塩水970g中に溶解する。機械を用いて18時間撹拌した後、ろ過、遠心分離又は限外ろ過等の分離に使用できる方法により、不溶画分を可溶画分から分離する。可溶画分を、本発明の他の部分で使用する。
【実施例13】
【0064】
<ジャガイモ抽出物>
ジャガイモ(Solanum tuberosum)のタンパク質画分を、デンプン抽出工程におけるジャガイモから、濃縮に使用できる任意の物理的又は化学的手段によって濃縮する。得られたタンパク質画分を従来の任意の工業的手法によって乾燥させ、その100gを脱塩水900g中に分散させる。機械を用いて18時間撹拌した後、ろ過、遠心分離又は限外ろ過等の分離に使用できる方法により、不溶画分を可溶画分から分離する。可溶画分を、本発明の他の部分で使用する。
【実施例14】
【0065】
<スクテラリア抽出物>
スクテラリア(Scutellaria baicalensis)の根を高温(50〜60℃)のエタノール溶液を用いて濃縮し、抽出する。任意の従来技術によって不溶物をろ過した後、エタノール溶液を濃縮して従来の任意の工業的手法によって乾燥させ、その10gを脱塩水990g中に溶解する。機械を用いて18時間撹拌した後、ろ過、遠心分離又は限外ろ過等の分離に使用できる方法により、不溶画分を可溶画分から分離する。可溶画分を、本発明の他の部分で使用する。
【実施例15】
【0066】
<トウモロコシ抽出物>
トウモロコシ(Zea mays)のタンパク質画分を、濃縮に使用できる任意の物理的又は化学的手段によってトウモロコシ種子から濃縮する。得られたタンパク質画分を従来の任意の工業的手法によって乾燥させ、その30gを脱塩水970g中に分散させる。機械を用いて18時間撹拌した後、ろ過、遠心分離又は限外ろ過等の分離に使用できる方法により、不溶画分を可溶画分から分離する。可溶画分を、本発明の他の部分で使用する。
【実施例16】
【0067】
<バイオテクノロジーにより改変したマンゴーの抽出物>
マンゴー(Mangifera indica)の粗抽出物を、抽出物の調製に使用できる任意の物理的又は化学的手段によって果実から調製する。得られた粗抽出物を従来の任意の工業的手法によって乾燥させ、その100gを脱塩水900g中に溶解し、ここに乳酸菌(Lactobacillus plantarum)を添加する。72時間発酵させた後、ろ過、遠心分離又は限外ろ過等の分離に使用できる方法により、不溶画分を可溶画分から分離する。可溶画分を、本発明の他の部分で使用する。
【実施例17】
【0068】
<バイオテクノロジーにより改変したナツメヤシの抽出物>
ナツメヤシ(Phoenix dactilifera)の粗抽出物を、抽出物の調製に使用できる任意の物理的又は化学的手段によって果実から調製する。得られた粗抽出物を従来の任意の工業的手法によって乾燥させ、その100gを脱塩水900g中に溶解し、ここに乳酸菌(Lactobacillus plantarum)を添加する。72時間発酵させた後、ろ過、遠心分離又は限外ろ過等の分離に使用できる方法により、不溶画分を可溶画分から分離する。可溶画分を、本発明の他の部分で使用する。
【実施例18】
【0069】
<バイオテクノロジーにより改変したキーウィの抽出物>
キーウィ(Actinidia chinensis)の粗抽出物を、抽出物の調製に使用できる任意の物理的又は化学的手段によって果実から調製する。得られた粗抽出物を従来の任意の工業的手法によって乾燥させ、その100gを脱塩水900g中に溶解し、ここに乳酸菌(Lactobacillus casei rhamnosus)を添加する。72時間発酵させた後、ろ過、遠心分離又は限外ろ過等の分離に使用できる方法により、不溶画分を可溶画分から分離する。可溶画分を、本発明の他の部分で使用する。
【実施例19】
【0070】
<バイオテクノロジーにより改変したパパイヤの抽出物>
パパイヤ(Carica papaya)の粗抽出物を、抽出物の調製に使用できる任意の物理的又は化学的手段によって果実から調製する。得られた粗抽出物を従来の任意の工業的手法によって乾燥させ、その100gを脱塩水900g中に溶解し、ここにビール酵母(Saccharomyces cerevisiae)を添加する。72時間発酵させた後、ろ過、遠心分離又は限外ろ過等の分離に使用できる方法により、不溶画分を可溶画分から分離する。可溶画分を、本発明の他の部分で使用する。
【実施例20】
【0071】
<バイオテクノロジーにより改変したリンゴの抽出物>
リンゴ(Malus pumila)の粗抽出物を、抽出物の調製に使用できる任意の物理的又は化学的手段によって果実から調製する。得られた粗抽出物を従来の任意の工業的手法によって乾燥させ、その100gを脱塩水900g中に溶解し、ここに乳酸菌(Lactobacillus acidophilus)を添加する。72時間発酵させた後、ろ過、遠心分離又は限外ろ過等の分離に使用できる方法により、不溶画分を可溶画分から分離する。可溶画分を、本発明の他の部分で使用する。
【実施例21】
【0072】
<キノア種子粉末の抽出物>
キノア(Chenopodium quinoa)の粗抽出物を、抽出物の調製に使用できる任意の物理的又は化学的手段によって種子から調製する。得られた粗抽出物を従来の任意の工業的手法によって乾燥させ、その50gを脱塩水950g中に溶解する。機械を用いて18時間撹拌した後、ろ過、遠心分離又は限外ろ過等の分離に使用できる方法により、不溶画分を可溶画分から分離する。可溶画分を、本発明の他の部分で使用する。
【実施例22】
【0073】
<パセリ根の抽出物>
パセリ根(Petroselinum sativum)を乾燥させて、任意の工業的手法によって微細に粉砕し、その50gを脱塩水950g中に溶解する。機械を用いて18時間撹拌した後、ろ過、遠心分離又は限外ろ過等の分離に使用できる方法により、不溶画分を可溶画分から分離する。可溶画分を、本発明の他の部分で使用する。
【実施例23】
【0074】
<パイナップル抽出物>
パイナップル(Ananas comosus)の粗抽出物を、抽出物の調製に使用できる任意の物理的又は化学的手段によって果実から調製する。得られた粗抽出物を従来の任意の工業的手法によって乾燥させ、その50gを脱塩水950g中に溶解する。機械を用いて18時間撹拌した後、ろ過、遠心分離又は限外ろ過等の分離に使用できる方法により、不溶画分を可溶画分から分離する。可溶画分を、本発明の他の部分で使用する。
【実施例24】
【0075】
<バイオテクノロジーにより改変したパッションフルーツの抽出物>
パッションフルーツ(Passiflora edulis)の粗抽出物を、抽出物の調製に使用できる任意の物理的又は化学的手段によって果実から調製する。得られた粗抽出物を従来の任意の工業的手法によって乾燥させ、その100gを脱塩水900g中に溶解し、ここに乳酸菌(Lactobacillus plantarum)を添加する。72時間発酵させた後、ろ過、遠心分離又は限外ろ過等の分離に使用できる方法により、不溶画分を可溶画分から分離する。可溶画分を、本発明の他の部分で使用する。
【実施例25】
【0076】
<ユッカ抽出物>
ユッカ(Yucca schidigera)の乾燥粗抽出物を、抽出物の調製に使用できる任意の物理的又は化学的手段によって植物体の地上部分から調製し、得られた物質10gをブチレングリコール990g中に溶解する。機械を用いて1時間撹拌した後、ろ過、遠心分離又は限外ろ過等の分離に使用できる方法により、不溶画分を可溶画分から分離する。可溶画分を、本発明の他の部分で使用する。
【実施例26】
【0077】
<グレープフルーツ抽出物>
グレープフルーツ(Citrus grandis)の粗抽出物を、抽出物の調製に使用できる任意の物理的又は化学的手段によって果実から調製し、得られた物質をブチレングリコールと水との混合物中に溶解する。機械を用いて1時間撹拌した後、ろ過、遠心分離又は限外ろ過等の分離に使用できる方法により、不溶画分を可溶画分から分離する。可溶画分を、本発明の他の部分で使用する。
【実施例27】
【0078】
<スクリーニング試験>
上記TGFb1−Lを活性化できる物質を明らかにできるスクリーニング試験を開発した。すなわち、活性化されたTGFb1−Lの割合を調べるために、活性型TGFb1酵素標識試験によって測定した。実験はヒト組み換えTGFb1より行った。HCl溶液(1N)40μlを、有効成分なしで4℃において18時間インキュベートしたTGFb1−L溶液(0.1μg/ml)200μlに添加する。ホモジナイズした後、試料を常温で10分間インキュベートし、NaOH(1.2N)/HEPES(1M)溶液40μlを加えて中和する。
【0079】
活性型TGFb1の含有量を、下記のELISA法によって測定する。この値は放出されたTGFb1の最大値と一致するが、このような酸性pHにおける活性化は、化粧品又は皮膚医薬品に許容される条件には相当しない。
【0080】
試験する有効成分50μlを、チューブ中のTGFb1−L(0.1μg/ml)950μlに添加して混合した後、試料を4℃において18時間インキュベートする。スクリーニングした抽出物を5%水溶液の状態で試験した。
【0081】
<活性化されたTGFb1の測定>
次に、活性型TGFb1を、ヒト活性型TGFb1に対して高感度で特異的なELISA試験(酵素結合免疫吸着測定法)により反応媒体中で定量する。TGFb1が結合するII型TGFb1受容体を96ウェルプレート上にあらかじめ固定し、標準品及び試料をウェル中に注入すると、存在しているTGFb1は上記固定した受容体に結合する。結合していない物質を数回洗浄して除去した後、TGFb1に特異的な酵素結合ポリクローナル抗体をウェル中に添加する。その後、過剰な抗体を除去して、上記酵素の基質を含む溶液をウェル中に注入する。この基質が酵素によって変換されると着色した物質が生成する。硫酸溶液を用いて酵素反応を停止する。得られた色の強度を分光光度計によって450nmにおいて測定する。この値は試験した試料によって活性化されたTGFb1の量に比例する。
【0082】
従って標準範囲から、OD測定値に対して、反応媒体中の活性化されたTGFb1の濃度(pg/ml)を計算できる。
[TGFb1]=f(OD試料−ODコントロール)。
【実施例28】
【0083】
<実施例1〜26に記載された抽出物の実施例27のスクリーニングによる結果>
次の表は5%水溶液の状態で試験した優良な物質のリストである。
【0084】
【表1】

【0085】
以下の実施例において、ノコギリヤシ抽出物は実施例3によって得られる。
【実施例29】
【0086】
<本発明の物質の投与量効果:ノコギリヤシ抽出物>
【0087】
【表2】

【実施例30】
【0088】
<ノコギリヤシ抽出物がフィブロネクチンの合成に及ぼす効果>
フィブロネクチンの合成に関する研究は次の三つの段階を含む:TGFb1−Lを活性化すること、活性化されたTGFb1−Lを単層正常ヒト真皮繊維芽細胞上でインキュベートすること、及び、合成されたフィブロネクチンを培地から測定すること。
【0089】
実験はヒト組み換えTGFb1−Lより行った。TGFb1−L溶液を濃度8μg/mlに調製する。TGFb1−L(8μg/ml)をPBS 1X中に8倍希釈し、1μg/mlにおけるTGFb1−Lの活性化を試験する。ノコギリヤシ抽出物10μlをTGFb1−L(1μg/ml)990μlに添加して撹拌した後、4℃において18時間インキュベートする。
【0090】
次に、活性化されたTGFb1の溶液を、FBM血清(Promocell社、ドイツ)を含まない培地中に10倍希釈する。実験コントロールを調製する:FBMコントロール及びTGFb1−Lコントロールのネガティブコントロール2種、並びに、FBM中に10ng/ml及び1ng/mlに希釈した活性型TGFb1ポジティブコントロール(シグマ社、フランス)。各溶液は、2ml/ウェルの割合で、6ウェルプレート中のコンフルエントになった単層培養繊維芽細胞上に注入する。5%COを含む雰囲気下で、37℃において48時間インキュベートして培養する。その後、フィブロネクチンを、ヒトフィブロネクチンに対して高感度で特異的なEIA試験(酵素免疫定量法)により培地中で定量する。フィブロネクチンが結合するフィブロネクチン受容体を96ウェルプレート上にあらかじめ固定し、標準品及び試料をウェル中に注入すると、存在しているフィブロネクチンは上記固定した受容体に結合する。結合していない物質を数回洗浄して除去した後、フィブロネクチンに特異的な酵素結合ポリクローナル抗体をウェル中に添加する。その後、過剰な抗体を除去して、上記酵素の基質を含む溶液をウェル中に注入する。硫酸溶液を用いて酵素反応を停止する。得られた色の強度を分光光度計によって450nmにおいて測定する。この値は合成されたフィブロネクチンの量に比例する。
【0091】
結果を、TGFb1−Lネガティブコントロールに対する割合で示す。この結果からTGFb1−Lコントロールがフィブロネクチンの合成を促進していると考えられ、このことは、繊維芽細胞がTGFb1−Lを活性化できることから説明できる。このパラメーターは、有効成分によって活性化されたTGFb1−Lの存在下で細胞により合成されたフィブロネクチンの量を、TGFb1−Lの存在下で細胞により合成されたフィブロネクチンの量と比較することによって除外されている。
【0092】
【表3】

【実施例31】
【0093】
<エラスチンをコードする遺伝子の転写に及ぼすノコギリヤシ抽出物の投与量効果>
エラスチンをコードする遺伝子の転写に関する研究は次の三つの段階を含む:TGFb1−Lを活性化すること、活性化されたTGFb1を単層正常ヒト真皮繊維芽細胞上でインキュベートすること、及び、細胞層から抽出したRNA(リボ核酸)量をRT−PCR(逆転写ポリメラーゼ連鎖反応)によって測定すること。
【0094】
実験はヒト組み換えTGFb1−Lより行った。TGFb1−L溶液を濃度8μg/mlに調製する。TGFb1−L(8μg/ml)をPBS 1X中に8倍希釈し、1μg/mlにおけるTGFb1−Lの活性化を試験する。TGFb1−L(1μg/ml)1mlを、チューブ中の必要量のノコギリヤシ抽出物に添加することにより、次の濃度で試験できる:0.01%、0.1%、1%及び3%。この混合物を4℃において18時間インキュベートし、活性化されたTGFb1−Lの溶液をFBM血清(Promocell社、ドイツ)を含まない培地中に希釈する。
【0095】
実験コントロールを調製する:FBMコントロール及びTGFb1−Lコントロールのネガティブコントロール2種、並びに、FBM中に1ng/mlに希釈した活性型TGFb1ポジティブコントロール(シグマ社、フランス)1種。各溶液を、1ml/ウェルの割合で、24ウェルプレート中のコンフルエントになった単層培養繊維芽細胞上に注入する。5%COを含む雰囲気下で、37℃において24時間インキュベートして培養する。培地を除去して細胞層を洗浄した後、総RNAを細胞から抽出する。抽出は、正に荷電しているシリカカラムを用いて細胞を溶解することにより行う。これによって負に荷電しているRNAはカラム上に保持され、96ウェルプレート中に溶出される。
【0096】
抽出したRNAの定量及び純度測定を、分光光度計を用いた260/280nmにおける値を読み取ることにより行う。RNA溶液の濃度を最終濃度5ng/mlになるように調整し、96ウェルPCRプレート中へ、1枚のプレートに測定する遺伝子(エラスチン)を、もう1枚のプレートにハウスキーピング遺伝子(アクチン)を10μl/ウェルずつ等分に注入する。RT−PCR測定により、参照とする遺伝子アクチンと比較してエラスチン遺伝子のRNAを増幅できる。この測定には、Quantitech Sybergreen RT−PCRキット(Qiagen社、フランス)及び増幅された遺伝子に特異的なプライマーを使用する。逆転写酵素活性化の段階(50℃、30分)、逆転写酵素の変性及びポリメラーゼ活性化の段階(95℃、15分)、並びに、開鎖(95℃、15秒)、プライマーの固定(60℃、30秒)及びポリメラーゼの作動(72℃、30秒)を含む50サイクルのプログラムを作成する。得られた結果(図1)は、0.01の蛍光で読み取ったサイクル番号に相当する。
【0097】
図1は、ノコギリヤシ抽出物濃度に対するエラスチン遺伝子の転写の割合を示す。横軸はノコギリヤシ抽出物の試験濃度(重量百分率)、縦軸はエラスチン遺伝子の転写の重量百分率を示す。
【0098】
各試料の比率は、エラスチンで読み取ったサイクル番号と、アクチンで読み取ったサイクル番号から計算する。
【0099】
ノコギリヤシ抽出物は、0.1%の濃度でエラスチン遺伝子の転写を2倍に、1%で2.8倍に、最終的に3%で3.7倍に増加させる。従って投与量効果が顕著である:ノコギリヤシ抽出物の濃度が増加すると、遺伝子の転写が増加し、かつ、顕著になる。
【実施例32】
【0100】
<コラーゲンの合成に及ぼすノコギリヤシ抽出物の効果>
この実験は、活性化された又は活性化されていないTGFb1−Lの、新たに合成されたタンパク質中の3Hプロリンの取り込みに及ぼす効果を調べるために行った。コラーゲンの合成に関する研究は次の三つの段階を含む:TGFb1−Lを活性化すること、活性化された又は活性化されていないTGFb1−Lを単層正常ヒト真皮繊維芽細胞上でインキュベートすること、及び、プロリンを取り込ませて取り込まれた放射能を解析すること。
【0101】
実験は、ヒト組み換えTGFb1−Lより、10ng/ml、100ng/ml及び1000ng/mlの濃度で使用して行った。ノコギリヤシ抽出物10μlをチューブ中のTGFb1−L溶液990μlにそれぞれ添加し、混合する。その後、試料を4℃において18時間インキュベートし、活性化されたTGFb1−Lの溶液を、FCS(ウシ胎仔血清)1%を含むDMEM培地(Invitrogen社、フランス)中に10倍希釈する。実験コントロールを調製する:DMEMコントロール及びTGFb1−Lコントロールのネガティブコントロール2種、並びに、DMEM中に20μg/mlに希釈したビタミンC及び10ng/mlに希釈した活性型TGFb1(シグマ社、フランス)のポジティブコントロール2種。各溶液を、96ウェルプレート中のコンフルエントになった単層培養正常ヒト真皮繊維芽細胞上に注入する。5%COを含む雰囲気下で、37℃において72時間インキュベートして培養する。インキュベーションの最後の24時間は、42Ci/mmolの3H標識プロリン(アマシャムバイオサイエンス社、フランス)の存在下で行う。
【0102】
取り込まれた放射能の解析は、TCA(トリクロロ酢酸)沈殿を行ってろ紙上に集めたものをTCA及び70?エタノールで洗浄し、最後に液体シンチレーション法で計数することにより行った。
【0103】
ノコギリヤシ抽出物は、注入したタンパク質の画分に及ぼすTGFb1−Lの効果を増大させた。この効果は、100及び1000ng/mlのTGFb1−L存在下において明らかである。
【0104】
【表4】

【実施例33】
【0105】
<ノコギリヤシ抽出物は、経皮浸透した後でもTGFb1−Lを活性化できる>
経皮浸透に関する研究は次の三つの段階を含む:ノコギリヤシ抽出物の経皮浸透、浸透物によるTGFb1−Lの活性化、及び、活性化されたTGFb1−Lの測定。
【0106】
経皮浸透実験は、フランツセルの供与液区画と受理液区画との間にラット皮膚生検を挿入して行う。ノコギリヤシ抽出物1gをラット皮膚上、PBSバッファーを含む受理液に塗布する。コントロールセルは有効成分なしで調製した。有効成分の経皮浸透を24時間測定し、その後ノコギリヤシ抽出物を含む浸透物を回収する。この浸透物について、TGFb1−Lを活性化する能力を測定する。これを行うに当たり、HCl溶液(1N)40μlを、有効成分なしで4℃において18時間インキュベートしたTGFb1−L溶液(0.1μg/ml)200μl中に添加する。ホモジナイズした後、試料を常温で10分間インキュベートし、NaOH(1.2N)/HEPES(1M)溶液40μlを加えて中和する。
【0107】
活性型TGFb1の含有量を上記ELISA法によって測定する。この値は放出されたTGFb1の最大値と一致するが、このような酸性pHにおける活性化は、化粧品又は皮膚医薬品に許容される条件には相当しない。
【0108】
浸透物100μlをチューブ中のTGFb1−L溶液(0.1μg/ml)900μlに添加して混合後、4℃において18時間インキュベートする。次に、活性型TGFb1を、ヒト活性型TGFb1に対して高感度で特異的なELISA試験(酵素結合免疫吸着測定法)により反応媒体中で定量する。TGFb1が結合するII型TGFb1受容体を96ウェルプレート上にあらかじめ固定し、標準品及び試料をウェル中に注入すると、存在しているTGFb1は上記固定した受容体に結合する。結合していない物質を数回洗浄して除去した後、TGFb1に特異的な酵素結合ポリクローナル抗体をウェル中に添加する。その後、過剰な抗体を除去して、上記酵素の基質を含む溶液をウェル中に注入する。この基質が酵素によって変換されると着色した物質が生成する。硫酸溶液を用いて酵素反応を停止する。得られた色の強度を分光光度計によって450nmにおいて測定する。この値は試験した試料によって活性化されたTGFb1の量に比例する。
【0109】
従って標準範囲から、OD測定値に対して、反応媒体中の活性化されたTGFb1の濃度(pg/ml)を計算できる。
[TGFb1]=f(OD試料−ODコントロール)。
【0110】
【表5】

【実施例34】
【0111】
<水中油エマルション型の化粧又は医薬製剤における本発明の物質の使用>
「製剤34a」

水 qsp 100
ブチレングリコール 2
グリセリン 3
ジヒドロキシセチルリン酸ナトリウム・ 2
イソプロピルヒドロキシセチルエーテル

ステアリン酸グリコールSE 14
トリイソノナオイン 5
ヤシ油脂肪酸オクチル 6

pH5.5に調整したブチレングリコール、 2
メチルパラベン、
エチルパラベン、プロピルパラベン

本発明の物質 0.01〜10%
【0112】
「製剤34b」

水 qsp 100
ブチレングリコール 2
グリセリン 3
ポリアクリルアミド、イソパラフィン、ラウレス−7 2.8

ブチレングリコール、 2
メチルパラベン、
エチルパラベン、プロピルパラベン
フェノキシエタノール、 2
メチルパラベン、
プロピルパラベン、ブチルパラベン、
エチルパラベン
ブチレングリコール 0.5

本発明の物質 0.01〜10%
【0113】
「製剤34c」

水 qsp 100
カルボマー 0.50
プロピレングリコール 3
グリセリン 5

ヤシ油脂肪酸オクチル 5
ビサボロール 0.30
ジメチコン 0.30

水酸化ナトリウム 1.60

フェノキシエタノール、 0.50
メチルパラベン、
プロピルパラベン、ブチルパラベン、
エチルパラベン

香料 0.30

本発明の物質 0.01〜10%
【実施例35】
【0114】
<油中水型の製剤における本発明の物質の使用>

PEG30−ジポリヒドロキシステアリン酸 3
カプリン酸トリグリセリド 3
オクタン酸セテアリル 4
アジピン酸ジブチル 3
ブドウ種子油 1.5
ホホバ油 1.5
フェノキシエタノール、 0.5
メチルパラベン、
プロピルパラベン、ブチルパラベン、
エチルパラベン

水 qsp 100
グリセリン 3
ブチレングリコール 3
硫酸マグネシウム 0.5
EDTA 0.05

シクロメチコン 1
ジメチコン 1

香料 0.3

本発明の物質 0.01〜10%
【実施例36】
【0115】
<シャンプー又はボディソープ状の製剤における本発明の物質の使用>

水 qsp 100
キサンタンガム 0.8

ブチレングリコール、 0.5
メチルパラベン、
エチルパラベン、プロピルパラベン
フェノキシエタノール、 0.5
メチルパラベン、
プロピルパラベン、ブチルパラベン、
エチルパラベン

クエン酸 0.8

ラウレス硫酸ナトリウム 40.0

本発明の物質 0.01〜10%
【実施例37】
【0116】
<口紅等の無水製品状の製剤における本発明の物質の使用>

ミネラルワックス 17.0
イソステアリン酸イソステアリル 31.5
プロピレングリコールジペラルゴン 2.6
イソステアリン酸プロピレングリコール 1.7
PEG−8ミツロウ 3.0
水添パーム核油脂肪酸グリセリド、 3.4
水添パーム油脂肪酸グリセリド
ラノリン油 3.4
ゴマ油 1.7
乳酸セチル 1.7
鉱物油、ラノリンアルコール 3.0

ヒマシ油 qsp 100
二酸化チタン 3.9
CI 15850:1 0.616
CI 45410:1 0.256
CI 19140:1 0.048
CI 77491 2.048

本発明の物質 0.01〜5%
【実施例38】
【0117】
<水性ゲル(アイライナー、痩身剤等)の製剤における本発明の物質の使用>

水 qsp 100
カルボマー 0.5
ブチレングリコール 15
フェノキシエタノール、メチルパラベン、 0.5
プロピルパラベン、ブチルパラベン、
エチルパラベン

本発明の物質 0.01〜10%
【実施例39】
【0118】
<本発明の物質を含む製剤の化粧品としての許容性の評価>
実施例2によって得られた化合物について、これを0.5%キサンタンゲル中に10%配合して使用し、ウサギにおける眼刺激試験、ラットに1回経口投与した際に異常毒性がないことの確認試験、及び、モルモットにおける感作性試験によって毒性試験を行った。
【0119】
<ウサギの皮膚における一次刺激の評価>
上記製剤を、ウサギ3匹の皮膚に、≪皮膚に対する急性刺激/腐食性≫の研究に関するOECD推奨の方法に従って、希釈せずに0.5mlずつ塗布した。上記物質を、1982年2月21日のフランス共和国の公式機関紙(「JORF」)で公表された、1982年2月1日の決議の中で定義された基準に従って分類した。この試験結果から、試験した製剤は、純粋な状態で希釈せずに使用した場合、91/326のEEC指令書の意義において、皮膚に対して刺激がないものとして分類されることが分かる。
【0120】
<ウサギにおける眼刺激試験>
上記製剤を純粋な状態で、≪眼に対する急性刺激/腐食性≫の研究に関して1987年2月24日にOECD指令書405番によって推奨されている方法に従い、0.1mlを1回でウサギ3匹の眼中に滴下した。この試験の結果から、これらの製剤は、純粋な状態で希釈せずに使用した場合、91/326のEEC指令書の意義において、眼に対して刺激がないものと考えられる。
【0121】
<ラットに1回経口投与した際に異常毒性がないことの確認試験>
上記製剤を、1987年2月24日のOECD指令書401番から着想して化粧品に適用したプロトコールに従って、雄ラット5匹及び雌ラット5匹に、2g/体重1kgの量を1回で経口投与した。LD0及びLD50は、2000mg/kgを超えることが分かった。従って、試験した製剤は、経口摂取が危険な製剤には分類されない。
【0122】
<モルモットにおける潜在的皮膚感作性試験>
上記製剤に対して、OECD406番の指令書に従ったプロトコールであるMagnusson−Kligmann極大試験を行った。これらの製剤は、皮膚との接触において感作性がないものとして分類される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真皮中の活性型TGFb1濃度を増加させる化粧組成物を製造するための、潜在型TGFβ−1(TGFb1−L)を活性型TGFβ−1(活性型TGFb1)に変換する、化粧品に許容される天然抽出物の少なくとも1種の使用であって、
前記天然抽出物が、ノコギリヤシ(dwarf palm)(Serenoa repens)の果実抽出物の脂質画分である
ことを特徴とする使用。
【請求項2】
前記組成物が繊維芽細胞の増殖を促進するためのものである、請求項1記載の使用。
【請求項3】
前記組成物がコラーゲン合成の増加、並びに/又は、プロテアーゼ阻害剤(TIMP)合成の増加、並びに/又は、プロテオグリカン及び/若しくはヒアルロン酸合成の増加、並びに/又は、フィブロネクチンのアイソフォームの発現及び/若しくはフィブロネクチン受容体の合成の増加、並びに/又は、エラスチン合成の増加によって、細胞外マトリックス(ECM)構成成分の合成を増加させるためのものである、請求項1記載の使用。
【請求項4】
前記組成物が抗皺効果又は抗老化効果を有するものである、請求項1記載の使用。
【請求項5】
化粧品に許容される条件下で、TGFb1−Lを活性型TGFb1に変換するための、化粧品に許容される天然抽出物を含むことを特徴とする化粧組成物であって、
前記天然抽出物が、ノコギリヤシ(dwarf palm)(Serenoa repens)の果実抽出物の脂質画分である
ことを特徴とする化粧組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2009−292846(P2009−292846A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−219137(P2009−219137)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【分割の表示】特願2004−316504(P2004−316504)の分割
【原出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(500226948)ビーエーエスエフ ビューティ ケア ソリューションズ フランス エスエーエス (21)
【住所又は居所原語表記】32 rue Saint Jean−de−Dieu 69007 LYON, FRANCE
【出願人】(504404146)
【Fターム(参考)】