説明

不活性耐摩耗性フッ素系固体潤滑剤、その製造方法、及び利用方法

本発明は、フッ素ポリマー系材料、フッ素ポリマー系材料の製造方法、フッ素ポリマー系材料を使用する方法などを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、本明細書中にその全体が参照として包含される、2008年11月17日に出願された米国仮出願第61/115251号「INERTWEAR RESISTANT PTFE−BASED SOLID LUBRICANT」の優先権を主張する。
【0002】
連邦政府の委託研究又は開発に関する声明
本発明は、政府支援の、米国空軍/空軍科学研究局によって授与されたグラント番号FA9550−04−1―0367の下で行われた。
政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0003】
本開示は、不活性なフッ素ベースの低摩耗性材料に関する。
【背景技術】
【0004】
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、低摩擦性、高い融解温度及び化学的不活性を含む、所望のトライボロジー特性を示す。これらの特性に基づき、PTFEは充填材料とマトリックス材料の両方として頻繁に使用される固体潤滑剤である。充填剤なしでは、しかしながら、PTFEは比較的高い摩耗率を被り、軸受材料としての使用を含む、摩擦用途における使用が、一般的に妨げられる。
【0005】
マトリックス材料として、PTFEは、アルミナ、ジンカ(zinca)、及びカーボンナノチューブを含む様々なナノ粒子によって、成功裏に充填される。アルミナ充填に関して、Sawyer等(Sawyer,W.G.,Freudenburg,K.D.,Bhimaraj,P.,and Schadler,L.S.,(2003),“A Study on the Friction and Wear of PTFE Filled with Alumina Nanoparticles,” Wear,254,pp.573−580)は、PTFEの摩耗性能を向上させるための、38nmの実質的に球形のAl充填剤粒子を開示している。このナノ複合材料の耐摩耗性は、重量%の増加と共に、単調に増加することが報告された。20重量%Alの添加において、充填されていないPTFEの最終的に600倍以上の耐摩耗性であった。Sawyer等によって開示されたPTFE/アルミナナノ複合材料で提供される耐摩耗性能は、PTFEを超える主要な改善を示したが、所望の摩耗のレベルに到達するために必要な高い充填率は、ナノ複合材料のコストを大幅に増加させる。また、あるアプリケーションのためには、PTFEの600倍よりも低い摩耗率が望ましく、又はPTFE/Alによって達成される摩耗率よりも低い摩耗率が望ましい。したがって、耐摩耗性が改善される一方で、同時にSawyer等が開示したPTFEのナノ複合材料と比較して低い充填率を必要とするPTFEナノ複合材料が必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の態様は、フッ素系材料、フッ素系材料の製造方法、及びフッ素系材料を使用する方法などを含む。
【0007】
一態様において、フッ素系材料は、フッ素反応性化合物からなる副相(minor phase)を含む、主相(major phase)を構成するフッ素ポリマーを含み、ここでフッ素系材料は不活性である。
【0008】
一態様において、フッ素ポリマー系材料を製造する方法は、フッ素ポリマーとフッ素反応性化合物を混合すること、及び前記混合物を加熱して、フッ素ポリマーの主相とフッ素反応性化合物を含む副相とが混在しているフッ素ポリマー系材料を形成することが含まれ、ここでフッ素ポリマー系材料は不活性である。
【0009】
本発明の機能とその利点の十分な理解は、添付図面と共に、以下の詳細な説明の参照によって達成される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本明細書で提供される実施例に記載された本開示による、PTFE系材料の摩擦試験及び摩耗試験のために使用される摩擦計の概略図である。
【図2】図2は、ニッケルを充填したPTFEの摩耗率と摩擦係数を、PTFE中のNi重量%に対してプロットした図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示をより詳細に説明する前に、本開示は、記載された特定の態様に限定されないこと、つまり、異なる場合があることを、理解すべきである。本明細書で用いられる用語は、特定の態様を説明する目的のためだけであり、制限するためのものではない。したがって、本開示の範囲は特許請求の範囲によってのみ制限される。
【0012】
値の範囲が提供されている場合、その範囲の上限と下限の間の、下限値の単位の10分の1(文脈から明らかに異なる場合でない限り)の、中間の値、及びその規定された範囲の他の規定された値又は中間の値のそれぞれが包含されていると理解される。これらのより小さい範囲の上限及び下限は、独立してより小さい範囲に含めることができ、及び本開示にも包含され、既定の範囲内の特定の除外された何らかの限界に従う。規定の範囲が制限のいずれか又は両方の限界値を含む場合、これらの限界値の範囲のいずれかを除く、又は両方を除く範囲も、該開示に含まれる。
【0013】
異なる定義をしない限り、本明細書中で使用するすべての技術用語及び科学用語は、一般的に、本開示が属する技術分野の当業者によって理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されたものと類似の又は同等の任意の方法及び材料は、本開示の実施又は実験でも使用することができるが、好ましい方法及び材料を以下に説明する。
【0014】
本明細書中の全ての刊行物及び特許は、それぞれの個々の刊行物及び特許が具体的かつ個別に参照により本明細書に組み込まれるかのように、参照により本明細書中に包含され、また、参照により本明細書に組み込まれて、文献が引用される事柄に関連して、方法及び/又は材料を開示し、及び記述する。任意の出版物の引用は、出願日前のその開示に対してであり、本開示が、先行する開示を理由とするそのような刊行物に先行する資格がないことを認めるものとして解釈されるべきではない。さらに、提供された出版の日付は、実際の発行日とは異なる可能性があり、個別に確認する必要がある可能性がある。
【0015】
本開示を読めば当業者には明らかであろうが、本明細書中で説明及び図示される個々の態様の各々は、本開示の範囲又は精神から容易に逸脱することなく、他のいくつかの態様の特徴のいかなるものとも容易に分離又は結合し得る、個々の構成要素と特徴を有する。任意の列挙された方法は、列挙された事象の順序、又は論理的に可能であるこれ以外の順序で行うことができる。
【0016】
本開示の態様は、特に記載のない限り、当業者の技量の範囲内の化学、合成有機化学、生化学、生物学、分子生物学などの手法を、採用する。このような技術は、文献中で十分に説明されている。
【0017】
以下の実施例は、本明細書中に開示及び主張される方法、及び組成物及び化合物を使用する方法についての完全な開示及び説明を、当業者に提供するために提示される。数字(例えば、量、温度など)に関して正確さを確保するための努力がなされたが、いくつかの誤差及び偏差を考慮する必要がある。特に記載のない限り、部は重量部であり、温度は℃であり、圧力は大気圧又は大気圧近傍である。標準温度及び圧力は、20℃、1気圧として定義される。
【0018】
本開示の態様を詳細に説明する前に、特に断らない限り、本開示は、変更することが可能であるという理由から、特定の材料、試薬、反応材料、製造プロセスなどに限定されないことを理解すべきである。本明細書で用いられる用語は、特定の態様のみを説明する目的のためにのみ使用されているのであり、限定することを意図したものではないことも理解される。本開示において、論理的に可能である場合には、ステップが異なる順序で実行できることも可能である。明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されている単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈から明らかに異なる場合でない限り、複数形を含んでいることに留意しなければならない。
【0019】
従って、例えば、「支持物(a support)」への言及は、複数の支持物を含む。本明細書とこれに続く特許請求の範囲において、反対の意図が明らかでない限り、以下の意味を有するように定義される、多くの用語を指す。
【0020】
考察
本開示の態様は、フッ素ポリマー系材料、フッ素ポリマー系材料の製造方法、フッ素ポリマー系材料を使用する方法などを含む。本開示の態様は、低荷重で強化された耐摩耗性を有し、類似の材料と比べて安価な、フッ素ポリマー系材料を提供する。
【0021】
フッ素ポリマー系材料の態様(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)系の材料)は、フッ素反応性化合物と混合されたフッ素ポリマー(例えば、PTFE)を含むことができる。フッ素反応性化合物は、単一の反応性の化合物、又は反応性化合物の組み合わせを含むことができる。フッ素反応性化合物はそれ自体では不活性ではないが、フッ素ポリマーとの反応後に不活性フッ素ポリマー系材料になる。フッ素ポリマー系材料を指すときの用語「不活性」は、「不活性フッ素ポリマー系材料」がそのPTFE前駆体の固有の不活性を保持していることを意味する。これは、材料が安定しており、また空気、水、酸、塩基、及び他の有機材料の環境への曝露で、反応又は劣化しないことを意味する。フッ素ポリマー系材料の態様は、約10−3〜10−9mm/(Nm)、約10−5〜10−9mm/(Nm)、又は約5×10−6〜10−9mm/(Nm)の摩耗率を有することができる。摩擦係数は、0.10未満から変化することができ、及び0.35超まで増すことができる。一態様において、摩擦係数は、約0.01〜0.45、約0.05〜0.4、又は約0.1〜0.35である。
【0022】
一態様において、フッ素ポリマー(例えば、PTFE)は、最終フッ素ポリマー系材料(例えば、PTFE系材料)の主相であり得、該フッ素ポリマーはフッ素反応性化合物を含む副相と混在されて、不活性フッ素ポリマー系の低摩耗複合材料をもたらす。主相は、複合材料の約90〜99.99重量%とすることができる一方で、副相は、複合材料の約1〜10重量%未満とすることができる。
【0023】
用語「フッ素ポリマー」は、少なくとも一つのフッ素含有モノマーを含むことができ、またホモポリマー、コポリマー、及びターポリマー、並びにそれぞれの誘導体、並びにそれぞれの複合材料、並びにこれらの組み合わせであることができる。フッ素ポリマーの態様は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、パーフルオロアルコキシポリマー樹脂(PFA)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、テトラフルオロエチレン―エチレン共重合樹脂(ETFE)、フルオロエチレンプロピレンエーテル樹脂(EPE)、それぞれの共重合体、それぞれのターポリマーなどを含むが、これらに限定されない。一態様において、フッ素ポリマーはPTFE、PFA、FEP、それぞれの共重合体、それぞれのターポリマー、又はこれらの組み合わせであって、ここでPTFE、PFA、及びFEPはテフロン(登録商標)を形成するのに使用することができる化学物質を指す。一態様において、フッ素ポリマーはPTFEである。
【0024】
本明細書において、用語「PTFE」はポリテトラフルオロエチレンだけでなく、その誘導体、複合材料及びコポリマーを含み、ここでバルクの共重合体材料は、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロ(プロピルビニルエーテル)との共重合体、テトラフルオロエチレンとパーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソールとの共重合体、及びテトラフルオロエチレンとフッ化ビニルとの共重合体を含む、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ(フッ化ビニル)、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリクロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニル/フッ化ビニリデン共重合体、フッ化ビニリデン/ ヘキサフルオロエチレン共重合体、パーフルオロアルコキシポリマー樹脂(PFA)、及び/又はフッ素化エチレン−プロピレン(FEP)であり得る。上記で列挙したポリマーの一つと共重合しているポリテトラフルオロエチレンを記述するために、用語「PTFE」が本明細書で使用される場合、共重合体中の実際のポリテトラフルオロエチレン含有量は、約80%又はそれ以上であり得るが、低い含量も、最終PTFE系複合材の所望の特性に応じて企図される。
【0025】
フッ素反応性化合物は、得られた材料を不活性材料として維持する一方で、フッ素ポリマー(例えば、PTFE)のフッ素と反応することができる様々な材料であることができる。フッ素反応性化合物は、粉末、粒子、蒸気、液体、又はこれらの組み合わせの形態であることができる。一態様において、フッ素反応性化合物は、ナノ粒子や微粒子の表面上に配置されたフッ素反応性化合物を有する、ナノ粒子又はミクロ粒子を含むことができる。
【0026】
一態様において、フッ素反応性化合物は、リチウム、カリウム、及び/又はルビジウムを含む、アルカリ金属、アルカリ金属の化合物、及びアルカリ金属の合金を含むことができる。
【0027】
別の態様において、フッ素反応性化合物は、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、及び/又はラジウムを含む、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属の化合物、及びアルカリ土類金属の合金を含むことができる。
【0028】
別の態様において、フッ素反応性化合物は、フッ素反応性化合物として、鉄及び鉄系化合物、ニッケル及びニッケル系化合物などを含む、他の金属、及び/又は金属系化合物を含むことができる。
【0029】
別の態様において、フッ素反応性化合物は、酸化物等の、不活性であるが、PTFEに対していくらかの好ましい反応性を有する材料、例えばシリカ、アルミナ等などから得ることができ、それらの材料は、次いで、フッ素ポリマー(例えば、PTFE)のフッ素と反応性になるように処理される。これらの不活性材料は、約1nm〜1000nmの直径を有することができる。
【0030】
一態様において、不活性な化合物は、それらの粒子を、フッ素反応性材料(例えば、上記のようなアルカリ金属、アルカリ土類金属など)でコーティングされた粒子を含むことができ、それによって得られた粒子が、フッ素ポリマーと反応することができる。不活性化合物及びフッ素反応性コーティングの様々な組み合わせを、得られるフッ素ポリマー系複合材の所望の特性を含む、いくつかの異なる要因に基づいて、用いることができる。具体例としては、シロキサン又はフッ素ポリマーと反応性の成分を含む処理剤で処理した非反応性粒子が含まれる。
【0031】
複合材料中のフッ素反応性化合物の量は、例えば、使用目的によって変化させることができる。一態様において、フッ素反応性化合物は、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9又は約10重量%などの、複合材料の約10重量%以下であることができる。一態様において、フッ素反応性化合物は、複合材料の約1重量%未満とすることができる。しかしながら、本開示は、結果として得られるフッ素ポリマー系複合材の所望の特性を含む、いくつかの異なる要因の数に基づいて、フッ素反応性化合物の他の使用量を企図する。
【0032】
一態様において、材料は処理されてフッ素反応性化合物をもたらすことができ、前記フッ素反応性化合物はその後、フッ素ポリマー(例えば、PTFE)で処理されて、不活性フッ素ポリマー系の低摩耗複合材料をもたらすことができる。特定の処理ステップを変更することができ、焼結、熱処理、及び/又は加圧処理を含むことができる。例えば、金属前駆体(例えば、チタン系及び/又はスズ系の化合物)は、酸化剤で処理されて、フッ素反応性化合物をもたらし、前記フッ素反応性化合物はその後、フッ素ポリマーで処理されて、不活性フッ素ポリマー系低磨耗性複合材料をもたらす。例示的な態様は、粉末を処理して、フッ素反応性化合物を提供することを含むことができる。しかし、本開示は、これらの材料の一つ又はそれ以上の蒸気を処理して、そしてこれらをフッ素ポリマーと混合して、不活性フッ素ポリマー系低摩耗複合材料をもたらすことを含む、他の処理技術を企図する。
【0033】
さらに別の態様において、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム及び/又は酸化アルミニウム(例えば、アルミナ)を包含するが、これらに限定されない金属を含む酸化物は、フッ素ポリマー(例えば、PTFE)及び/又は例示的な態様におけるフッ素反応性化合物と混合されて、そして、上記の技術を含む、様々な方法で処理されることができる。一態様において、α相のアルミナを、フッ素ポリマーと混合して、不活性フッ素ポリマー系の低摩耗複合材料を得ることができる。
【0034】
フッ素反応性化合物のために使用され、及び/又はフッ素反応性化合物と共にフッ素ポリマー(例えば、PTFE)を処理するため使用される粒子の特定の形状は、実質的に変えることができ(例えば、約70、80、90、95%)球形の粒子、不規則な形の粒子、及びこれら2つの組み合わせを含む。本明細書において、用語「不規則な形状」は、破砕操作又は粉砕操作によって生成される形状などの、非球形粒子を指す。不規則な形状の粒子は、したがって、凹凸、ポイント、エッジだけでなく、いくつかの平坦な領域を持つことができる。このような粒子は、Nanophase Technologies Corporation(Romeoville,IL)又はAlfa−Aesar(Ward Hill,MA)などから市販されており、又は粉砕によって形成することができる。一態様において、球形や不規則な形状の粒子の組み合わせを、フッ素反応性化合物として使用することができ、ここでそれぞれの割合(例えば、約90:10〜10:90の比(球形粒子に対する不規則な形の粒子))は、結果として得られたフッ素系化合物の所望の特性を含む、いくつかの異なる要因に基づき得る。フッ素反応性化合物の粒子の特定のサイズや直径は、フッ素系化合物の所望の特性を含む、いくつかの要因に基づいて変更することができ、そして均一又は異なっていることができる。一態様において、直径(又は粒子間の最も長い寸法の長さ)は、約1nm〜1000nm、又は約10nm〜250nmであることができる。
【0035】
一態様において、結果として得られるフッ素系複合材は、フッ素ポリマーの高度な非反応性の性質に部分的に由来して、非常に化学的に不活性である。例えば、それ自体は不活性ではないが、フッ素ポリマーとの反応後に不活性な化合物をもたらすフッ素反応性化合物を用いることができる。
【0036】
非常に腐食性の環境では、非常に急速に磨耗し、頻繁に交換する必要がある、フッ素ポリマー(例えば、PTFE)の使用を必要とする場合がある。例示的な態様による複合材料へのフッ素反応性粒子の添加は、化学的不活性を損なうことなく、フッ素ポリマーの耐摩耗性を向上させることができる。ナノ粒子は、非摩損性、及び低い充填重量率で、高い数密度を持つことができるという利点を有することができる。
【0037】
例示的な態様は、継手、ブッシング、及びバルブなどの、摩擦が発生し、腐食性の化学物質が使用される、多種多様の用途に有用である。半導体業界は、フッ素ポリマーが、現在、エッチング化学物質のために、多額の費用をかけて使用されるプロセスを有する。
【0038】
開発されたフッ素ポリマー(例えば、PTFE)ナノ複合材料について、図1に示す直線往復摩擦計を利用して例示的な態様の材料と手法を使用して、摩耗試験及び摩擦試験を行うことができる。テスト面は、電解研磨、ラッピング、水研ぎ(wet−sanding)、及び空研ぎ(dry−sanding)などの、様々な仕上げ処理を含むことができる。電解研磨された試料は、600グリット炭化ケイ素紙で水研ぎすること、続いて粗研磨すること、最後に電解研磨することによって調製することができる。同様に、粗研磨されたサンプルは、先ず600グリット炭化ケイ素紙で水研ぎし、続いて粗研磨することができる。水研ぎされたサンプルは、600グリット炭化ケイ素紙にのみ触れさせることができる。空研ぎされたサンプルは、最初に水砥ぎした後、80グリットの「粗い」炭化ケイ素紙で粗化することができる。サンプルは、走査型白色光干渉計(scanning white light interferometer)で調べることができる。様々な他の技術及び装置が、参照により本明細書中に包含され、2007年05月10日に公表されたSawyer等の米国特許出願公開第200701005726号に記載された技術、材料、及び、部品に基づいて、例示的なフッ素系複合材の試験のために、及び/又は、これらの化合物を形成するために、利用することができる。さらに、本開示は、技術、材料、及びその開示が参照により本明細書中に包含されるSawyer等(Sawyer,W.G.,Freudenburg,K.D.,Bhimaraj,P.,and Schadler,L.S.,(2003),“A Study on the Friction and Wear of PTFE Filled with Alumina Nanoparticles,”Wear,254,pp.573−580)に記載されている、構成要件を利用できる。
【0039】
一態様において、エッチングプロセスを、フッ素ポリマー系材料の形成を促進するために用いることができる。例えば、フッ素ポリマーを、化学的及び/又は機械的にエッチングすることができる。一態様において、フッ素ポリマーの表面は、ナトリウム、リチウム、マグネシウム及び/又は他の例示的な態様に関して説明したような他の化合物を含むフッ素反応性化合物を、その上に有する、スライド式の硬質対向面(sliding rigid counterface)を用いてエッチングすることができる。他の機械式エッチング装置及び/又は技術を、化学エッチング手法と同様に、用いることができる。
【実施例】
【0040】
図2は、ニッケル充填したPTFEの、PTFE中の重量%Niに対してプロットした、摩耗率及び摩擦係数のグラフである。表1は、ニッケル充填したPTFEの、様々なニッケルの重量割合についての、摩耗率及び摩擦係数を示す。
【表1】

【0041】
比、濃度、量、及び他の数値データは、範囲形式でここに表現され得ることに留意すべきである。このような範囲形式は、利便性及び簡便性のために使用され、したがって、このような範囲形式は、明示的に記載されている数値を範囲の限界値として含むだけでなく、柔軟な様式で解釈されるべきであり、それぞれの数値及びサブ範囲が明確に記載されているかのように、その範囲に包含されるすべての個々の数値又はサブ範囲が含まれる。例えば、濃度範囲「約0.1%〜約5%」は、明示的に列挙された約0.1重量%〜約5重量%の濃度だけでなく、個々の濃度(例えば、1%、2%、3%、及び4%)及び指定された範囲内のサブ範囲(例えば、0.5%、1.1%、2.2%、3.3%、4.4%)を含むと解釈されるべきである。用語「約」は、±1%、±2%、±3%、±4%、±5%、±6%、±7%、±8%、±9%、又は±10%、又はそれ以上の、変更された数値を含むことができる。また、表現「約“X”〜“Y”」は、「約“X”〜約“Y”」を含む。
【0042】
本発明の上記の態様は、単なる実施が可能な具体例であり、開示の原則を明確に理解するためにのみ記載されていることが強調されるべきである。開示の精神と原則から大幅に逸脱することなく、本開示の上記の態様に、多くの変形及び変更を行うことができる。すべてのそのような改変及び変形は、本開示の範囲内で、本明細書に含まれることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素反応性化合物からなる副相を含む主相を構成するフッ素ポリマーを含むフッ素ポリマー系材料であって、前記フッ素系ポリマー材料は不活性である、材料。
【請求項2】
前記フッ素ポリマーはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である、請求項1又は3〜12のいずれか1項に記載の材料。
【請求項3】
前記フッ素反応性化合物は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む、請求項1〜2又は11のいずれか1項に記載の材料。
【請求項4】
前記フッ素反応性化合物は、鉄系化合物、シリカ系化合物、アルミナ系化合物、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1〜3又は7のいずれか1項に記載の材料。
【請求項5】
前記フッ素反応性化合物は、表面にフッ素反応性化合物が配置されたナノ粒子を有する不活性化合物を含む、請求項1、2、又は7のいずれか1項に記載の材料。
【請求項6】
前記ナノ粒子は、金ナノ粒子、シリカナノ粒子、ニッケルナノ粒子、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1、2、又は7のいずれか1項に記載の材料。
【請求項7】
前記副相は、フッ素系ポリマー材料の10重量%未満を構成する、請求項1〜6又は8〜12のいずれか1項に記載の材料。
【請求項8】
前記フッ素反応性化合物は、バリウム、カルシウム、及び鉄の少なくとも1つを含む、請求項1、2、又は7のいずれか1項に記載の材料。
【請求項9】
前記フッ素反応性化合物は、リチウム及びナトリウムの少なくとも1つを含む、請求項1、2、又は7のいずれか1項に記載の材料。
【請求項10】
前記フッ素反応性化合物は、ストロンチウム、カリウム、マグネシウム、及びバリウムの少なくとも1つを含む、請求項1、2、又は7のいずれか1項に記載の材料。
【請求項11】
前記フッ素反応性化合物は、ナノ粒子を含み、及び前記ナノ粒子の少なくとも一部分は球形である、請求項1、2、又は7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記フッ素反応性化合物は、バリウム、カルシウム、鉄、リチウム、ナトリウム、ストロンチウム、カリウム、及びマグネシウムの少なくとも1つを含む、請求項1、2、又は7のいずれか1項に記載の材料。
【請求項13】
フッ素ポリマー系材料を作る方法であって、
フッ素ポリマーとフッ素反応性化合物とを混合すること、
前記混合物を加熱して、フッ素反応性化合物を含む副相が混在するフッ素ポリマーの主相を有するフッ素ポリマー系材料を形成することであって、前記フッ素ポリマー系材料は不活性であること、
を含む、方法。
【請求項14】
前記フッ素ポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である、請求項13又は15〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記フッ素反応性化合物は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む、請求項13、14、19、又は25〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記フッ素反応性化合物は、鉄系化合物、シリカ系化合物、アルミナ系化合物、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項13、14、19、又は25〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
不活性化合物のナノ粒子へフッ素反応性コーティングを施与することにより、フッ素反応性化合物を形成することをさらに含む、請求項13、14、19、又は25〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記ナノ粒子は、金ナノ粒子、シリカナノ粒子、ニッケルナノ粒子、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項13、14、19、又は25〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記副相は、前記フッ素ポリマー系材料の10重量%未満を構成する、請求項13〜18又は20〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記フッ素反応性化合物は、バリウム、カルシウム、及び鉄の少なくとも1つを含有する、請求項13、14、19、又は25〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記フッ素ポリマー系材料は、リチウム、及びナトリウムの少なくとも1つを含む、請求項13、14、19、又は25〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記フッ素反応性化合物は、ストロンチウム、カリウム、マグネシウム、及びバリウムの少なくとも一つを含む、請求項13、14、19、又は25〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
不活性化合物を処理して、フッ素反応性化合物を形成することをさらに含み、前記不活性化合物は高い耐摩耗性を有する、請求項13、14、19、又は25〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記加熱することは、圧縮成形することを含む、請求項13、14、19、又は25〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記混合することは、ジェットミルによって実行される、請求項13、14、19、又は25〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
フッ素ポリマーに適用されるエッチングプロセスを用いて、フッ素ポリマーとフッ素反応性化合物とを混合することをさらに含む、請求項13、14、19、又は25〜26のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2012−509367(P2012−509367A)
【公表日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536588(P2011−536588)
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【国際出願番号】PCT/US2009/064739
【国際公開番号】WO2010/057163
【国際公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(507371168)ユニバーシティ オブ フロリダ リサーチ ファンデーション インコーポレーティッド (38)
【Fターム(参考)】