説明

不活性遮蔽層を有するパターン付き化学センサー

有機蒸気のような化学物質を検出するセンサー40。センサー40は、検出層48を含むと共に、変色することによって化学物質の存在に応答するフィルム本体58を含むフィルムを含む。このフィルムは遮蔽層54も含み、その遮蔽層は、第1の主表面59を有すると共に、フィルム本体58に結合しているが、検出層48に対して不活性であり、遮蔽層54及び化学物質によって、遮蔽層54の第1の主表面59と垂直な区域42内のフィルム本体58の変色を防止する。この構造を有するセンサーは、はっきり見ることができる画像をセンサー上に提供することができ、フィルターカートリッジの残存耐用期間を評価する助けとなることがある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学物質への暴露に応答して所定の可視パターンを表示できるセンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
センサーは、特定の化学物質の有無を検出する目的で広く用いられている。この目的を達成するために、既知のセンサーが様々な形状で提供されてきている。例えば、ケミカルインジケーターを含むフィルター、フィルターカートリッジ、及び呼吸マスク(レスピレーター)(例えば、米国特許第5,323,774号、同第5,297,544号、及び同第4,684,308号参照)と共に、標識及びバッジ(例えば、米国特許第6,284,198号、及び米国特許出願公開第2004/0223876A1号参照)が開発されてきた。開発されてきた1つの特定の化学センサーは、フィルム様の本体を有する受動的な耐用期間終了インジケーター(ESLI)である。このフィルム本体内には、特定の化学物質の存在を検出する検出層がある。フィルム様の受動的ESLIの例は、Rakowらの米国特許出願公開第2008/0063575A1号、及び同第2008/0063874A1号に説明されている。ESLIは、様々な有機蒸気及び反応ガスに応答するように調整してもよい。
【0003】
ESLIは、フィルターカートリッジがその耐用期間の終わりに達したときにユーザーに知らせるのを補助する目的で、フィルターカートリッジ内で用いられている。例えば、米国特許第7,442,237号、同第6,497,756号、同第5,323,774号、同第5,297,544号、同第4,684,380号、同第4,530,706号、同第4,365,627号、同第4,326,514号、及び同第4,154,586号を参照されたい。米国特許出願公開第2007/0137491号、並びに、米国特許出願第12/470,865号、同第12/470,890号、及び同第12/470,920号も、耐用期間終了インジケーターを用いるフィルターカートリッジについて説明している。ESLIは、外部から簡単に見ることができるように、ハウジングの側壁に隣接して配置される。ESLIは一般に、比色センサーになるように設計される。すなわち、ESLIは、濾過空気中の十分な量の汚染物質に暴露された後、変色する。変色及びセンサーの配置は、フィルターカートリッジが耐用期間の終わりに達したときに同時に現れる表示をもたらすように調整する。比色ESLIの1つの特定的な問題は、元の基準色がESLIの近くにない場合、いつ変色が起きたのかを知るために、着用者が元の色を覚える必要がある点である。着用者が色を覚えていない場合、着用者は、ESLIに元の色が表示されているのか、警告色が表示されているのか、確信が持てなくなる。既知のESLIは、ユーザーが元の色を覚えたり、又は元の色と警告色とを区別したりする必要があるとユーザーに警告するように構築されていないので、着用者が変色に気づかないと、安全性の問題が生じる場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、化学物質を検出する新たなセンサーを提供する。このセンサーは、検出層を含むと共に、変色することによって化学物質の存在に応答するフィルム本体を含むフィルムを含む。このフィルムは遮蔽層も含み、その遮蔽層は、第1の主表面を有すると共に、フィルム本体に結合しているが、検出層に対して不活性であり、遮蔽層及び化学物質によって、遮蔽層の第1の主表面と垂直な区域内のフィルム本体の変色を防止する。
【0005】
上記のとおり、既知のESLIでは色の全面的変化が生じ、この変化により、ユーザーは元の色と警告色とを区別しなければならなくなる。本発明は、検出層に対して不活性な遮蔽層を提供することによって、異なる色を覚えるこの必要性をなくすものである。加えて、「以前の」色と「新たな」色とが同じ一体フィルム本体内に並んで配置されるので、コントラストが正確に整列されると共に、容易に認識可能であり、これによって、様々な画像を作成可能になる。遮蔽層は検出層に対して不活性なので、遮蔽層がフィルム本体に結合していても、フィルム本体は、遮蔽層の存在に応答して顕著な変色を起こすことはない。加えて、遮蔽層がフィルム本体に結合しているので、センサーの応答する化学物質が検出層に伝わって、センサーの検出層部分で変色を起こすこともできない。すなわち、特定のセンサー区域を変色しないようにマスクして、それによって元のセンサーの色を保持する。したがって、センサーが変色すると、センサーのマスク部分は元の色を保持する一方で、他の部分は警告色を帯びる。本発明は、元の色と警告色との明確なコントラストをもたらすことができる。このため、ユーザーには、1つの特定の色、又は2つの色が混じった色ではなく、2つの別個の色領域が見える。したがって、本発明は、元の色と警告色との違いを覚える必要性をなくし、2つの異なる色領域で細い線又は明瞭な区別を作り出す機能を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
はっきり認識可能な数多くの画像をユーザーが見ることができるように、本発明に従ってフィルム本体に結合している不活性遮蔽層を様々な形体で設けてよい。不活性遮蔽層をフィルム本体に固着できることによって、良好な画像解像度が得られる。検出対象の化学物質が、フィルム本体と遮蔽層との間に有意に侵入できないからである。不活性遮蔽層によって、検出層が、センサーの検出層区域内で偽陽性を示さないようにする。したがって、ユーザーは、特定の画像を見ると、センサーが警告モードに入ったことを知る。この特徴は、耐用期間の終わりに達したフィルターカートリッジで特に有用である。センサーによって警告画像が示されると、ユーザーは、フィルターカートリッジを交換する時期であることを知ることになる。
【0007】
1つの特定的な実施形態では、残存耐用期間のレベルを示すマークを有するフィルターカートリッジ上で、本発明のセンサーを用いてよい。このマークは、例えば残存耐用期間が75、50、25、又は10%のときに提供してよい。この特徴によって、センサーは、フィルターカートリッジの残存耐用期間インジケーター、すなわち「RLI」としても機能できるようになる。
【0008】
用語解説
本書で使用する場合、
「化学物質」は、分子、原子、イオン、フリーラジカル、又はこれらのうちのいずれかの組み合わせを意味する。
「清浄な空気」は、汚染物質を取り除くために濾過された、ある体積の大気中の周囲空気を意味する。
「変色」は、ヒトの目にとって第1の色又は色相と著しく異なる第2の色又は色相を生じさせることを意味する。
「汚染物質」は、気体、蒸気及び粒子(埃、霧及び煙を含む)並びに/又は一般的に気体、蒸気若しくは粒子とみなされない場合があるが、空気中に存在し、人間にとって有害であり得る他の物質を意味する。
「検出層」は、化学物質に暴露されると、光学的特性の変化を示す材料層を意味する。
「耐用期間終了インジケーター」又は「ESLI」は、濾過能力の部分的な又は完全な消尽のために、フィルターがもはや使用に好適でなくなり得る時期に関する情報を人に提供することができる装置を意味する。
「外部気体空間」は、吐き出された気体が、マスク本体及び/又は呼気弁を通過し、それらを越えた後に入る、周囲大気中の気体空間を意味する。
「フィルム」は、3次元よりも2次元の方がかなり大きい構造体を意味する。
「フィルム本体」は、フィルムの形状であると共に、化学物質の存在に応答して変色を生じさせることのできる層の組み合わせを意味する。
「フィルターカートリッジ」は、濾材又は濾過媒体を囲うように主に設計され、個人用呼吸保護装置のマスク本体に接続するように適合された構成を意味する。
「濾材」又は「濾過媒体」は、清浄な空気を提供するように適合された部品又は要素の構造又は組み合わせを意味する。
「ハウジング」は、別の品目を収容するために作られた部品の構造又は組み合わせを意味する。
「不活性」は、別の物に対して不活性であることを意味する。
「一体の」とは、当該部分が、同時に一緒に作製されるのであって、その後一緒にされる2つの別個の部品ではないことを意味する。
「内部気体空間」は、マスク本体と人の顔面との間の空間を意味する。
「並置される」又は「並列に配置される」とは、ほぼ並行な関係で配置されるが、必ずしも互いに接触しないことを意味する。
「マスク」(「マスク本体」について述べていない場合)は、物体の見え方を制限する機能を有するか、又は、物体の一部を覆うことを意味する。
「遮蔽層」は、特定の化学物質(一種又は複数種)がその層を通るのを遮る層、すなわち、その層の第1の主表面から第2の主表面に至るのを遮る層を意味する。
「ポリマー」は、規則的に又は不規則的に配置された、繰り返し化学単位を含む材料を意味する。
「残存耐用期間インジケーター」又は「RLI」は、残存濾過容量に関する情報を人に提供できる装置を意味する。
「吸着剤」は、吸収、吸着、化学吸着、分解、反応、触媒、又は他の好適な手段によって、汚染物質を捕捉、遮蔽、又は交換することができる材料を意味する。
「警告信号」は、フィルターカートリッジを交換する時期が来たことを観察者に伝える可視的な表示を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】フィルターカートリッジ12内でパターン付き化学センサー40を用いてよいレスピレーター10の斜視図。
【図2】本発明によるフィルターカートリッジ12の斜視図。
【図3】図2のフィルターカートリッジ12を直線3−3で切断した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、マスク本体14の相対する側に固定され得るフィルターカートリッジ12を有するレスピレーター10を示す。マスク本体14は、着用者の顔にぴったりと適合するように作られる。この目的のため、レスピレーター10は、マスク本体14を着用者の顔の方に引くためのハーネス16を含む。ハーネス16は、この目的のために、1つ以上のストラップ18を含み得る。ストラップ18がマスク本体14に接合されてもよく、バックル20の使用によって長さを調節され得る。フィルターカートリッジ12は、差し込み取付部21、ねじ手段又はカートリッジ12をマスク本体14に固定するための他の任意の好適な手段によって、マスク本体14に取り付けられ得る。フィルターカートリッジ12は、ハウジング22及びカバー24を有し、これはフィルターカートリッジ12を通じてマスクの内側に引かれる周囲空気を濾過するための濾過媒体を収容する。ユーザーによる呼気は、呼気弁25を通じて内部気体空間から外部気体空間へと通過する。
【0011】
図2は、フィルターカートリッジ12が、第1の外辺部28から第2の外辺部30まで延びる側壁26を有する、ハウジング22を含んでよいことを示している。カバー24は、カバー24の周辺部に沿って位置する空気処理表面32及び固定フランジ34を含み得る。カバー24は、ハウジング外辺部28で側壁26に固定され得る。カバー24は、無防備の一連の開口部36を表面32の全体に含んでよい。センサー40は、ハウジング側壁26と隣接して、ハウジング側壁26の内面に並列されていてよい。このセンサーは、有機蒸気を含む1種以上の化学物質を検出するように設計されていてよい。着用者又は別の人がセンサー40を簡単に見ることができるように、側壁26は、センサー40の区域において透明であってよい。あるいは、側壁26を通じてセンサー40及び濾過媒体が見えるように、側壁26の全体が透明であってもよい。図示されるように、センサー40は、長方形又はストライプの形を取ってよい第1の領域42及び第2の領域44を含む。第1の領域42は、センサーの元の色を示す一方で、第2の領域44は警告色を示す。センサーが検出するように設計される化学物質に、フィルターカートリッジ12が暴露される前は、センサー40全体は色42を表示することになる。センサーが検出するように意図される1種以上の化学物質に関して、フィルターカートリッジが耐用期間の終わりに達すると、領域44は、42の元の色とは異なる色に変わる。この変色は、領域44の上縁部45で開始され、この領域44を横切って第2の縁部46の方に徐々に進んでいってよい。1つ以上のマーク47を側壁26に設けて、カートリッジ内の十分な吸着力がなくなって、「そろそろ」、すなわち約60分未満に交換しなければならなくなったときに表示されるようにしてもよい。このマークは、センサー全体にわたって、又は、領域44の全体にわたって伸びていてよい。あるいは、このマークは、センサーに隣接して配置してもよい。したがって、このマークは、自動車のガス計量計の「ガス欠」早期警告信号と類似の機能を果たしてよい。追加のマークを用いて、25%、50%、若しくは75%(又は33及び66%)が消費されたことを示すこともできる。マークは、残存耐用期間がわずか10%又は5%であることを示すように構築することもできる。このように、本発明のセンサーはRLIとして機能する。
【0012】
警告マークは、センサーの変色部分にわたって耐久的又は永続的に配置された信号境界であってよい。これは、フィルターカートリッジの組み立て前に、フィルターカートリッジのハウジングを構築することを通じて実現させてよい。この構築は、一般には射出成形によって行うが、この構築によって、微細な溝のような視覚的な信号境界機構をもたらすことができる。この信号境界機構は、複数の手段によって、隆起部、又は、ハウジング表面上の異なる質感の区域間の境界線などを成形する際に作製することができる。加えて、信号境界機構は、ハウジングの側部上、又は、カートリッジ本体上にセンサーに隣接して貼られたラベル上に単に印刷することもできる。フィルターカートリッジの組み立て前に、ハウジングを作製するときに、この信号境界機構を含めることによって、センサー精度の向上及び製造コストの削減のために、信号境界機構を非常に正確かつ繰り返し配置することができる。
【0013】
本発明に関連するフィルターカートリッジの製造中、フィルターカートリッジハウジング、濾過媒体及びカバーは、現在既知の、又は将来開発される技術を用いて製造され得る。フィルターカートリッジのハウジング及びカバーは、射出成形作業を用いて作製してよい。濾材を組み込む前に、第1のスクリムをベースプレナムの最上部に配置してよい。濾材は、気体又は蒸気汚染物質を除去し、1つ以上の望ましくない汚染物質を吸着することができる活性粒子を含む、濾材であり得る。吸着媒体は、活性炭及びアルミナなどの、様々な活性粒子を含み得る。Breyらの米国特許第7,309,513号、Senkusらの同第5,696,199号、Ablerらの同第5,496,785号、及びBraunらの同第5,078,132号には、例えば、本発明のフィルターカートリッジで用いることができる様々な種類の活性粒子が説明されている。活性粒子は、当該活性粒子の充填床又は結合床の形状であってよい(例えば、Braunらの米国特許第5,033,465号、及びSenkusの同第6,391,429号参照)。センサー40は、活性粒子を組み込む前に、ハウジング側壁26の内側表面に対して配置してよい。フィルターの耐用期間が終了したときに、ハウジング側壁26を通じて適切な変色が見えるように、センサー40は、y寸法に対して適切に配置する必要がある。配置の位置が少しでもずれると、反応信号に大きな差が生じる場合がある。第2スクリムが濾材の上流表面に配置されてもよい。上流スクリムは、活性粒子を適所に保持することを助け、それを通じた低い圧力低下を提供し、これを通過する空気を適切に分配することを助ける、好適な繊維性媒体を含み得る。スクリムに用いてよい材料の例としては、不織布ポリエステル及び不織布ポリプロピレン、例えばスパンボンドウェブが挙げられる。濾材及びスクリムをカートリッジハウジング22内に適切に配置した後、カートリッジカバー24をハウジング側壁26に固定してもよい。この固定は、例えば溶接又は接着剤結合を含む機械的、化学的、若しくは物理的手段、又はその他のいずれかの好適な手段によって、外辺部28及びフランジ34で行ってよい。
【0014】
フィルターカートリッジは、吸着活性粒子に加えて、粒子を除去するように構築された濾過媒体層も1つ以上含んでよい。繊維性粒子フィルターは、粒子汚染物質を周囲空気から取り除くために、活性粒子の上流又は下流で使用され得る。様々な繊維性ウェブは、粒子フィルターのために好適であり得る。これらのウェブは典型的には、Van A.Wente,Superfine Thermoplastic Fibers,48 INDUS.ENGN.CHEM.1342〜46、及びReport No.4364 of the Naval Research Laboratories(1954年5月25日出版、表題Manufacture of Super Fine Organic Fibers、Van A.Wenteら著)に記載されているようなエアレイド法、ウェットレイド法、水流絡合、スパンボンド法、及びメルトブローン法のような技法から作製することができる不織布繊維性構造体である。この繊維ウェブは、上記の技術を組み合わせたもの、及び上記の繊維を組み合わせたものを用いて作製することができる。マイクロファイバー、特にメルトブロウンマイクロファイバーは、フィルターとして使用される繊維ウェブに特に好適に使用される。本書で使用する場合、「マイクロファイバー」は、有効直径が約35マイクロメートル以下の繊維(単一又は複数)を意味する。有効繊維直径は、Davies,C.N.,The Separation of Airborne Dust and Particles,INST.MECH.ENGN.,LONDON PROC.1B(1952)の等式12を用いて算出され得る。濾過用途の場合、マイクロファイバーは、典型的に約30マイクロメートル未満、より典型的には約1〜約15マイクロメートルの有効繊維直径を有する。フィブリル化フィルムから作製された繊維が使用されてもよい。例えば、米国特許第RE30,782号、同第RE32,171号、同第3,998,916号、及び同第4,178,157号(Van Turnout)を参照。また、短繊維は、マイクロファイバーと組み合わされ、ウェブロフトを改善できる、すなわち、その密度を減少できる。短繊維を含有するウェブの例が、ハウサー(Hauser)に対する米国特許第4,118,531号に開示されている。
【0015】
図3に示されるように、センサー40は、レスピレーターのフィルターカートリッジの気体入口から気体出口に流れる対象化学物質を検出できる薄膜多層構造を含んでよい。このような受動的センサーは典型的に、多孔質検出層48、半反射性層50、及び反射性層52を含む。多孔質検出層48は、特定の化学物質の存在下で変化することになる光学的厚みを有する(物理的厚みは必ずしも変化しない)。半反射性層50は、カートリッジの外部から見ることができ、一般的には蒸気が透過しない。反射性層52は一般的に、当該化学物質に対して透過性である共に、当該化学物質(蒸気など)が反射性層を通じて検出層48の中に入り、半反射性層50を通じて見たときに、インジケーターの外観の視覚的に認識可能な変化をもたらすほど十分に、検出層の光学的厚みを変化させることができるように、反射性層52は濾過媒体に十分に近接している。接着剤53を用いて、センサー40をハウジング側壁26の内側表面に固定してよい。
【0016】
遮蔽層54を第2の領域44の対向側部上に配置してよく、領域44は、1種以上の化学物質への暴露に応答して変色する。遮蔽層54は、境界面56において反射性層52に固着してよい。境界面56は、検出層48に対して不活性な接着層であってよい。あるいは、遮蔽層54自体が、検出層48に対して不活性な接着層であってもよい。遮蔽層54を反射性層52に固着すると、検出層48は、領域42において実質的な光学的変化を起こさない。フィルム本体58に固着された不活性な遮蔽層54がないと、フィルム本体58は通常、センサー40の外側主表面に対して垂直にフィルム本体を見ている人が見ることのできる変色を起こす。つまり、遮蔽層54の第1の主表面59に垂直なx方向でフィルムを見ると、センサーの領域42において、可視的な変色は見えない。したがって、第1の領域42は変色せず、第2の領域44は、x方向でセンサー40を見ているユーザーが見ることのできる顕著な変色を起こす。領域42及び44は、異なる色又は色相を示すが、これらの領域は、フィルム本体58において互いに対して一体的である。化学物質が濾過媒体60を通っているとき、ユーザーは、濾過媒体の上側から下側に移動する漸進的な変色に気づくことができる。
【0017】
本発明と関連して用いられるセンサーは、剛性であっても可撓性あってもよい。センサーは、接着剤、物理的手段、充填技術、又は機械的嵌合のような様々な手段によって、ハウジング側壁26に固定することができる。可撓性インジケーターは望ましくは、これらが1つ以上のロール処理工程を使用して作製され得るために、破断することなく十分に屈曲可能である。
【0018】
本発明と関連して用いてよいセンサーは好ましくは、空気から濾過されることが望まれる気体蒸気を吸収又は吸着する受動センサーである。本発明のセンサーは、フィルターがその耐用期間の終わりに達したという適切な指示をレスピレーター着用者に提供することができる、本質的にあらゆる既知の装置又は将来開発される装置(受動又は能動装置)であってよい。受動センサーの例は、Rakowらの米国特許出願公開第2008/0063575A1号、及び同第2008/0063874A1号に記載されている。Rakowらの米国特許第7,449,146B2号、並びに、Wendlandらの米国特許出願第61/180,483号、及びRakowらの同第61/180,492号も参照されたい。用いてよいセンサーとしては、有機蒸気、反応ガス、例えば、酸性ガス(例えば、SO、Cl、HCl、ClO2、HCN、HF、HS、及び窒素酸化物)、並びに塩基性ガス(例えば、アンモニア、メチルアミン)、更には、塩化シアン、及びホルムアルデヒドに応答するESLIが挙げられる。
【0019】
センサーは、1つ以上のロール処理工程で扱うことができるガラス又は可撓性プラスチックフィルムのような任意の基材を含んでよい。この基材は望ましくは、対象化学物質が検出層を透過して出入りすることがないように、十分に低い蒸気透過性を有する。センサーを側壁に取り付ける接着剤は、検出層を汚染しないように、不活性でなければならない。また、多孔質基材を反射性層と吸着媒体との間に配置してもよい。対象化学物質は、吸着媒体から透過性基材及び反射性層を通って、検出層に至るようにすることができる。センサーの総厚(基材を除く)は、約0.5〜2マイクロメートル(μm)であってよい。
【0020】
半反射性層及び反射性層はそれぞれ、拡散又は好ましい鏡面性の光反射をもたらす様々な材料から作製され得、これらは適当に離間したとき協調して、容易に視覚的に知覚可能なインジケーターの外観の変化をもたらす。好適な半反射性層材料及び反射性層材料としては、アルミニウム、クロム、金、ニッケル、シリコン、銀、パラジウム、白金、チタン、及このような金属を含有する合金などの金属、酸化クロム、酸化チタン、及び酸化アルミニウムなどの金属酸化物、並びに、米国特許第5,699,188号(Gilbertら)、同第5,882,774号(Jonzaら)、同第6,049,419号(Wheatleyら)、及び国際公開第97/01778号(Ouderkirkら)に記載されている多層光学フィルム(複屈折性多層光学フィルムを包む)が挙げられる。半反射性層及び反射性層は、同じてあっても、異なっていてもよい。米国特許出願第11/530,619号、表題「Permeable Nanoparticle Reflector」に記載されているように、金属ナノ粒子コーティング(例えば、金属ナノ粒子インク)を用いて、反射性層を形成してもよい。
【0021】
半反射性層は一般に、反射性層よりも反射性が低く、一部の入射光を透過する。例えば、半反射性層の物理的厚みは約2〜約50ナノメートル(nm)であってよく、500nmにおける光透過性は約10〜約80%であってよく、500nmにおける反射性は約80〜約20%であってよい。半反射性層は、それ自体が化学物質に対して不透過性であってよく(その場合、半反射性層は望ましくは連続的である)、任意により、好適な基材上にコーティングするか、又は別の方法で好適な基材に隣接させる。また、半反射性層は、化学物質に対して透過性であってもよく(その場合、例えば、非連続的であっても、半連続的であってもよい)、好適に蒸気不透過性の基材上にコーティングするか、又は別の方法でこの基材に隣接させる。検出層に隣接する、半反射性層の面は、望ましくは約±20nm以内の精度で平坦である。
【0022】
反射性層は、例えば、約1〜約500nmの物理的厚さ、500nmにおいて約0〜約80%の光透過性、及び500nmにおいて約100〜20%の反射性を有し得る。反射性層は好ましくは、多孔質、パターン付き、非連続的、半連続的、又は別の方法により、蒸気が吸着媒体から反射性層を通って検出層へと入ることができるように十分な透過性を有する。
【0023】
検出層の混合物は、均質、又は不均質であってよく、例えば、無機化合物の混合物、有機化合物の混合物、又は無機及び有機化合物の混合物から作製することが可能である。構成成分の混合物から作られた検出層は、検体群の検出の向上をもたらすことがある。検出層は望ましくは、吸着媒体の収着特性と同様の収着特性をもたらすように選択された孔径又は表面積の範囲を有する。好適な多孔性は、米国特許第6,573,305 B1号(Thunhorstら)に記載されるものなどのような、高内相エマルションから作製されるフォームなどの多孔質材料を使用して得ることができる。多孔性はまた、ミクロ孔質材料を作製するために二酸化炭素のフォーミングを介して(「Macromolecules」、2001、34巻、pp.8792〜8801を参照)又はポリマーブレンドのナノ相分離(「Science」、1999、283巻、p.520参照)によって得ることもできる。一般的に、孔の直径は、好ましくは、望ましいインジケーター着色のピーク波長よりも小さい。ナノ寸法の孔が好ましく、例えば、平均孔径は約0.5〜約20nm、0.5〜約10nm、又は0.5〜約5nmである。
【0024】
代表的な無機検出層材料としては、光学的干渉によって色、又は比色分析の変化を生じるために適当な厚さの、透明及び多孔質の層に形成され得る多孔質シリカ、金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物、及び他の無機材料を含む。例えば、無機検出層材料は、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、窒化チタン、酸窒化チタン、酸化スズ、酸化ジルコニウム、ゼオライト、又はこれらの組み合わせであってよい。多孔質シリカは、堅牢性及び湿式エッチング処理との適合性のために、特に望ましい無機検出層材料である。
【0025】
代表的な多孔質シリカ材料は、OgawaらのChem.Commun.pp.1149〜1150(1996)、KresgeらのNature,Vol.359,pp.710〜712(1992)、JiaらのChemistry Letters,Vol.33(2),pp.202〜203(2004)、及び米国特許第5,858,457号(Brinkerら)に記載されている。様々な有機分子も、有機テンプレートとして使用することができる。例えば、多孔質シリケートを生成するための有機テンプレートとして、グルコース及びマンノースなどの糖類を使用してもよい(Weiら、Adv.Mater.1998,Vol.10,p.313(1998)を参照)。
【0026】
代表的な有機検出層材料には、疎水性アクリレート及びメタクリレート、二官能性モノマー、ビニルモノマー、炭化水素モノマー(オレフィン)、シランモノマー、フッ素化モノマー、ヒドロキシル化モノマー、アクリルアミド、無水物、アルデヒド官能化モノマー、アミン官能化若しくはアミン塩官能化モノマー、酸官能化モノマー、エポキシド官能化モノマー、並びにこれらの混合物又は組み合わせを包含するモノマーのクラスから調製した又は調製可能な、ポリマー、コポリマー(ブロックコポリマーを包含する)、及びこれらの混合物が挙げられる。米国特許出願公開第2004/0184948 A1号には、かかるモノマーの広範なリストが記載されている。固有ミクロ孔質を有する上述のポリマー(PIMs)は、特に望ましい検出層を提供する。PIMsは典型的には、ミクロ孔質の固体を形成する非網状ポリマーである。これらの典型的に、高度に剛性で回旋状の分子構造のために、PIMsは、空間を有効に満たすことができず、したがって開示されるミクロ構造を提供する。好適なPIMsには、Buddらの「Polymers of intrinsic microporosity(PIMs):robust,solution−processable,organic microporous materials」(Chem.Commun.,2004,pp.230〜231)に開示されたポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。更なるPIMsは、BuddらのJ.Mater.Chem.,2005,15,pp.1977〜1986、McKeownらのChem.Eur.J.2005,11,No.9,2610〜2620、及び公開済み国際公開第2005/012397 A2号(McKeownら)に開示されている。
【0027】
本発明の化学センサーフィルム用の遮蔽層は好ましくは、パターニングしやすく、化学的透過性が低いか又は無く、及び、センサーの中まで滲出できると共に、マスク区域の隣接部分、すなわち、遮蔽層の主表面と垂直な区域で、望ましくない変色を起こす場合のある有機小分子の汚染物質を含まないか、又は最小限の量しか含まない。センサーが検体に暴露される前は、遮蔽層によってマスクされた領域は理想的には、非マスク区域に対して視覚的に目立たない。
【0028】
1つの実施形態では、感圧性接着剤を遮蔽層として用いてよい。これらの層用としては、特にその高い純度から、ポリイソブチレン(PIB)接着剤が有用な材料である。イソブチレンモノマーからポリマーを調製して、その調製物中のいずれの残留物も、フィルム本体によって吸着できる蒸気ではなく、気体になるようにする。ポリイソブチレン材は、複数のメーカーから市販されている。ホモポリマーは、例えばOPPANOL(例えば、OPPANOL B15、B30、B50、B100、B150、及びB200)という商品名で、BASF Corp.(Florham Park,NJ)から市販されている。これらのポリマーの重量平均分子量は、約40,000〜4,000,000グラム/モルであることが多い。更に他の代表的なホモポリマーは、United Chemical Products(UCP)(St.Petersburg,Russia)から、広範な分子量で市販されている。例えば、UCPからSDGという商品名で市販されているホモポリマーの粘度平均分子量は、約35,000〜65,000グラム/モルの範囲である。UCPからEFROLENという商品名で市販されているホモポリマーの粘度平均分子量は、約480,000〜約4,000,000グラム/モルの範囲である。UCPからJHYという商品名で市販されているホモポリマーの粘度平均分子量は、約3,000〜約55,000グラム/モルの範囲である。これらのホモポリマーは典型的には、反応性二重結合を有さない。
【0029】
その他の好適なポリイソブチレンホモポリマーは、GLISSOPAL(例えば、GLISSOPAL 1000、1300、及び2300)という商品名で、BASF Corp.(Florham Park,NJ)から市販されている。これらのポリイソブチレン材は通常、末端二重結合を有し、反応性ポリイソブチレン材とみなされる。これらのポリマーの数平均分子量は、約500〜約2,300グラム/モルの範囲であることが多い。重量平均分子量の数平均分子量に対する比は典型的には、約1.6〜2.0の範囲である。
【0030】
少量の別のモノマー、例えば、スチレン、イソプレン、ブテン、又はブタジエンなどの存在下でイソブチレンを重合することによって、ポリイソブチレンコポリマーを調製してよい。これらのコポリマーは典型的には、そのモノマー混合物中のモノマーの重量比ベースで、イソブチレンを少なくとも70重量パーセント、少なくとも75重量パーセント、少なくとも80重量パーセント、少なくとも85重量パーセント、少なくとも90重量パーセント、又は少なくとも95重量パーセント含むモノマー混合物から調製する。好適なイソブチレン/イソプレンコポリマーは、EXXON BUTYL(例えば、EXXON BUTYL 065、068、及び268)という商品名でExxon Mobil Corp.から市販されている。これらの材料の不飽和度は、約1.05〜約2.30モルパーセントである。その他の代表的なイソブチレン/イソプレンコポリマーは、United Chemical Products(St.Petersburg,Russia)から、不飽和度が約1.7モルパーセントのBK−1675Nなどが市販されている。更に他の代表的なイソブチレン/イソプレンコポリマーは、LANXESS(Sarnia、Ontario,Canada)から、不飽和度が約1.85モルパーセントのLANXESS BUTYL 301、不飽和度が約1.75モルパーセントのLANXESS BUTYL 101〜3、及び不飽和度が約2.25重量パーセントのLANXESS BUTYL 402などが市販されている。好適なイソブチレン/スチレンブロックコポリマーは、SIBSTARという商品名でKaneka(Osaka,Japan)から市販されている。これらの材料は、コポリマーの重量ベースでスチレン含有率が約15〜30重量%と様々であるジブロック及びトリブロック双方として入手可能である。エチレン−オクテンブロックコポリマー(Dow ChemicalからINFUSEという商品名で市販されている)のようなポリオレフィンエラストマーも、センサーのマスクキング用に用いてよい。Engage(Dow Chemical、Midland,MI)という商品名のエチレン−オクテンコポリマーも、センサーのマスキング用に用いてよい。C2〜C12のモノ不飽和炭化水素から合成されるポリマー、ブレンド、又はコポリマーを含め、粘着に関するダルキスト基準(Dahlquist Criterion)を満たすその他のポリオレフィン、特にポリヘキセン及びポリオクテンを用いてよい。素練りゴム又は粘着性ゴムのように、環状ポリオレフィンも、センサーのマスキングに有用である。
【0031】
フィルム本体のマスキングに有用な他の感圧性接着剤としては、アクリル系接着剤が挙げられる。多くのアクリル系接着剤は、センサーの中に移動して、望ましくない変色をもたらす高レベルの残留溶媒及び/又はモノマーを有する。しかし、センサーに付着する前に、これらの残留物を接着剤から排出する場合には、アクリル接着剤は、優れた遮蔽層として機能することができる。望ましくない変色をセンサーの色にもたらさないアクリル系PSAの例は、例えば、Linered Polyester Tape 6690及びVery Low Outgassing High Shear Polyester Tape 8439に見られる3M(商標)Very Low Outgassingという接着剤、並びに、3M(商標)Optically Clear Adhesive 8172である。
【0032】
1つの実施形態では、感圧性接着剤は、感圧性テープの形状でフィルム本体に貼り付けられ、この場合、接着剤は、ライナーフィルム上にコーティングし、小片に切断してから、センサーフィルムに貼り付ける。この実現態様では、上記のライナーは、蒸気がセンサーの中に透過しないようにする追加的なバリアをもたらすことが多いので、このライナーは典型的には、貼り付け後も接着剤に取り付けたままである。ある類似の方法では、裏材を用いて、それによってマスキングテープをもたらしてもよい。テープ又は接着剤は、剥離力の異なる2つのライナーの間、裏材とライナーとの組み合わせ、又は、粘着性の低いバックサイズ(backsize)を有する単一の裏材に位置することができる。ライナーは、化学的剥離性、及び、オンス/インチ(oz/in)又はニュートン/デシメートル(N/dM)で測定される剥離力の値に従って選択することができる。理想的には、センサーを汚染したり、又は、少量でも接着剤に移ったりすることによって、センサーフィルムに対する剥離性の値を変化させる場合のある化学的剥離性を回避することになる。本発明は、支持体又は裏材上に配置された上記の感圧性接着剤の層を含むテープなどの接着性マスキング物品も提供する。この支持体は、いわゆる転写テープを提供するための剥離基材又はライナーであってよく、この場合、露出した接着剤は、基材又は表面と接触させて配置してよく、剥離ライナーはその後、接着剤から剥がして、別の基材又は表面に固着するための接着剤の別の部分を露出させる。上記の接着性物品は、接着剤組成物を裏材層の上に押し出すか、コーティングするか、又はスプレーするなど、様々な既知の方法のうちのいずれかによって調製することができるテープ又は接着シートとして提供してよい。感圧性接着テープ又はシートは、表面又はフィルム本体の上に積層することができる。このテープ又はシートは、いずれかの所望の形にダイカットすることもできる。好適な基材の例としては、剥離ライナー(例えば、シリコーン剥離ライナー)、及びテープ裏材(下塗りしているか又は下塗りしていない紙又はプラスチックであってよい)が挙げられる。
【0033】
ライナーの例としては、CP Films(St.Louis,MO)のT−シリーズのライナーが挙げられる。裏材に適した材料としては、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリ(フッ化ビニリデン)、セルロース、及びセルロース誘導体が挙げられる。
【0034】
溶液を含まないホットメルト接着剤をマスキング材として塗布することができる。これらの材料は、高温(典型的には少なくとも華氏150度)でセンサーフィルム上に塗布してから冷やして、固体の遮蔽層を残す。好ましいホットメルト接着剤は、センサーを汚染することのある小分子共添加剤(coadditive)を含まない。例としては、3M CompanyのScotch Weld(商標)Hot Melt接着剤、例えば、Scotch Weld Adhesive 3779及び3789が挙げられる。これらの接着剤は、加熱すると流体になり、数秒で冷えて固まる100%固形熱可塑性及び熱硬化性樹脂である。これらの接着剤は、Stanley Bostitch SBGR−30Kというグルーガンのようなホットメルトグルーガン、又は、3M Scotch Weld(商標)の製品ファミリーのホットメルトアプリケーターを用いて、フィルム本体に塗布することができる。この材料を室温まで冷やしてから、センサーを用いる。
【0035】
ポリマー材を遮蔽層として用いて、フィルム本体の領域をマスキングすることもできる。1つの実施形態では、フィルム本体のマスキング用に水溶性ポリマーを用いる。マスキングに有用な水性ポリマーの例としては、ポリ(ビニルアルコール)、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びポリ(エチレングリコール)が挙げられるが、これらに限定されない。ビニルアルコール、ビニルフェノール、エチレングリコール、エチレンオキシドという種類のモノマーから調製されるポリマー及びコポリマーも用いてよい。典型的には、これらのポリマーは、水溶液中で調製してから、フィルム本体に塗布してコンフォーマルコーティングを付与し、所望の領域においてフィルム本体をマスキングする。塗布は、溶液コーティング技術によって行うことができ、この技術としては、スワビング、スピンコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、グラビアコーティング、ダイコーティング、インクジェット印刷、及びスクリーン印刷が挙げられるが、これらに限定されない。ポリマー溶液は、シリンジ又はピペットを用いて、フィルム本体の上にスポッティングしてもよい。コーティングしたフィルム本体は、使用の前に、周囲温度又は高温のいずれかで乾燥させる。
【0036】
別の代表的な種類のポリマー遮蔽層としては、エポキシが挙げられる。典型的には、エポキシ材は、UV又は熱のいずれかによって硬化させる。このプロセスの要件は、ベースのエポキシポリマーが、フィルム本体中に滲出しないように分子レベルで十分に大きいこと、プロセスが無溶剤であること、及び、フィルム本体にエポキシを塗布後、エポキシを素早く硬化させることである。エポキシは、上記の材料と同様の塗布法で塗布することができ、塗布後に硬化させるサイクルを用いる。このようなエポキシの例は、Momentive(商標)UV9500という無溶剤の光硬化性エポキシシリコーンポリマーである。
【0037】
フィルム本体のマスキングには、感熱印刷で用いられるろう又は樹脂、例えば、有機材料を用いてもよい。これらとしては、感熱印刷プロセスで用いられるろう及び樹脂が挙げられるが、これらに限定されない。市販品の例としては、Tektronix,Inc.のColorStixという材料、及びXerox Inc.のSolid Inkという材料が挙げられる。
【0038】
無機材料も遮蔽層用に用いてよい。このような材料としては金属が挙げられ、アルミニウム、クロム、金、ニッケル、シリコン、銀、白金、及びパラジウムが挙げられるが、これらに限定されない。金属酸化物及び半金属酸化物、例えばシリコン、チタン、及びクロムの酸化物、窒化物、炭化物、リン化物、及び硫化物も用いてよく、あるいは、これらの材料の混合物も用いてよい。これらは、真空コーティング技術、例えばスパッタリング、蒸発コーティング、化学気相堆積、又はプラズマ蒸着によって、フィルム本体の所定の区域に塗布することができる。これらのコーティング法では、マスクを用いて、コーティング源又はコーティング対象を覆って、センサー基材上に所望の堆積パターンを作るようにしてよい。例えば、一連のスロットを含むマスクは、センサー基材上に線を含む遮蔽層を作り出すことになる。溶液コーティング技術(スワビング、スピンコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、グラビアコーティング、ダイコーティング、インクジェット印刷、及びスクリーン印刷が挙げられるが、これらに限定されない)を用いて、無機材料又はそれらの前駆体を堆積させてもよい。例えば、無機ゾル−ゲル法を用いて、堆積後に反応して、無機酸化物又はその他の無機材を作り出す無機前駆体を堆積してもよい。
【0039】
上記のような遮蔽層をセンサーに付けて、化学的表示に有用な多種多様な可視的パターンを作製してもよい。化学検体に暴露されると現れるパターンとしては、形、文字、ロゴ、残存濾過能力の表示、メッセージ、指示、又はユーザーに対するその他の表示を挙げてよい。
【0040】
センサーは、所望に応じて追加の層又は要素を含んでもよい。例えば、吸着剤充填コンポジットの多孔質層(例えば、上記の米国特許第4,208,194号などに記載されるフィブリル化されたPTFEのマトリックスに含まれる、活性炭粒子のウェブ)が、反射性層と吸着媒体との間に配置されて、インジケーター内に浸透する蒸気を均質化するか、ないしは別の方法で吸着媒体における状態に対するインジケーターの反応を和らげる。センサーの一部が、フィルターカートリッジを交換すべきであることを示す色又は色相を変化させたとき、このような外観の変化は、フィルターカートリッジの交換を必要とする特定の吸着剤消耗レベルを反映している。換言すれば、フィルターカートリッジの製造者は、特定のセンサーの選択を調節して、特定の吸着剤消耗レベルを達成できるようにしてよい。吸着剤消耗レベルの選択は、フィルターカートリッジの交換が必要であると確認されるときに、吸着剤が100%消耗していないようにするのに十分な緩衝剤をもたらすことを含む様々な要因に左右される場合がある。センサーが十分な反応信号又はカートリッジの交換の必要性を示す変色を起こしたことに着用者が気づくために十分な時間を有するように、吸着剤消耗レベルは例えば、1〜3時間の更なる使用をもたらすように特定してよい。
【0041】
本発明は着用者の鼻、口及び目を被覆するフルフェースの呼吸マスクを使用して例示されてきたが、本発明はまた、着用者の鼻及び口のみを被覆するハーフマスクに関連して使用され得る。更に、本発明に関連して使用されるフィルターカートリッジは、マスク本体に恒久的に又は取り外し可能に取り付けられ得る。ハーネスはまた様々な構成を有してもよく、着用者の頭部にレスピレーターを指示するためにクラウン部材などの追加的な部品を含んでもよい。したがって、センサー、及びフィルターカートリッジ上に配置されたセンサーを有する呼吸マスクを提供するとき、本発明によって様々な実施形態が考えられる。
【実施例】
【0042】
以下の例示的な実施例において本発明を更に例示するが、実施例では、全ての部及び百分率は、別段の指示がない限りは重量基準である。実施例の説明においては、表1に示される略語を用いる。
【0043】
【表1】

【0044】
(実施例1)
センサーフィルム中に、4つの材料層を構築することによって、本発明の1つの例を作製した。センサーフィルムの層は、(1)半反射性層、(2)多孔質検出層、(3)反射性層、及び(4)遮蔽層からなるものであった。
【0045】
センサーフィルムの構築は、半反射性層を作ることによって開始した。この半反射性層は、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(Melinex ST505という透明PET、[Dupont Teijin Films]、[Hopewell,VA])の一方の表面上にニッケルをコーティングすることによって作製した。ニッケルは、真空下で熱蒸発を用いてPETに付着させた(底面圧10−5トール(0.0013Pa))。2つのTemescal Simba 2という電子ビーム源(Edwards Corporation、Tewksbury,MA)を用いて、黒鉛るつぼ中のニッケルを加熱し、27%という標的光透過性に達するまで(約10nmの厚みに対応する)、ニッケルを堆積した。
【0046】
センサーフィルムの第2の層は、半反射性層のNiをコーティングした側に設けたが、この第2の層は、固有ミクロ孔質のポリマー(PIM)層であった。PIM材は、BuddらによってAdvanced Materials,2004,Vol.16,No.5,pp.456〜459に報告されている手順に概ね定められているように、モノマーから調製した。5.28gのFAを有する9.0グラムのBC、18.0gの炭酸カリウム、及び120ミリリットルのDMFを混合することによって、PIM材を形成した。続いて、この混合物を70℃で24時間反応させた。次いで、得られたポリマーをTHFに溶解させ、メタノールから3回沈殿させ、真空下、室温で乾燥させた。この手順によって、分子量(Mw)が61,800である固体の黄色ポリマー生成物を得た。続いて、スロットダイ堆積を用いて、このPIM材を半反射性層のNi表面上に、PIM材の4%クロロベンゼン溶液を用いて、溶液コーティングした。121℃で3分間乾燥後、得られたPIMコーティングの厚みは約650マイクロメートル(μm)であった。
【0047】
センサーフィルムの第3の層である反射性層は、PIM材の層の上に形成されたナノシルバーの層であった。ナノシルバーは、ナノシルバー懸濁液(DGP−40LT−15C、Advanced Nanoproducts、Chungcheongbuk−do,Korea)と1−メトキシ−2−プロパノールとの1:1.5溶液を用いて、PIM層の上に溶液コーティングした。スロットダイ堆積を用いて、この溶液をPIM材の層の上にコーティングし、続いて、130℃で12時間加熱して銀粒子を焼結し、その結果、厚みが約150μmの反射性層を得た。
【0048】
フィルムセンサーの第4かつ最後の層である遮蔽層をナノシルバー反射性層に設けて、遮蔽区域と非遮蔽区域からなる、所望の形体のパターンを作製した。ポリイソブチレンブレンド(PIB)接着剤(Oppanol、タイプB80及びB15、BASF、Florham Park,NJ)を遮蔽材として用いて、フィルム剥離ライナー(T−30、CP Films、St.Louis,MO)を利用して、露出した反射性層に取り付けた。Oppsnolタイプの接着剤は、その高い純度と低い有機蒸気残留物から、この用途用に選択した。接着層は、B80及びB15接着剤をそれぞれトルエンに溶解させた11.1%固体溶液の4:1ブレンドをコーティングすることによって調製した。この溶液を剥離ライナー上にコーティングして、70℃で30分間乾燥させ、その結果、接着剤の厚みは0.025mmとなった。続いて、剥離ライナーの一方はそのままの状態にして、この接着剤を所望のパターンで反射性層に塗布し、遮蔽層を形成させた。
【0049】
透明な壁を有する密閉チャンバーの内側表面にセンサーフィルムの小片を貼り付け、周囲圧力で送達される空気中500パーツパーミリオン(ppm)のオクタンをそのチャンバーに一気に流入させることによって、センサーフィルムの機能を評価した。次いで、センサーフィルムの非遮蔽部分と上記流入との間が平衡に達した後に、センサーフィルムの色を観察した。評価のために、転写接着剤(8172、3M Company、St.Paul,MN)を用いて、体積が105立方センチメートルの密閉チャンバーの内壁に、幅3mm×長さ10mmの長い非遮蔽の長方形ストリップパターンを中央に有する1.5cm×1.0cmのセンサーフィルム片を貼り付けた。この非遮蔽パターンの長さをフィルム片の短い方の寸法と平行に配向すると共に、チャンバーの壁に貼り付けるために、転写接着剤をフィルムセンサーの半反射性層に塗布した。センサーフィルム片をチャンバーの壁に貼り付けた状態で、上記流入を毎分32.0リットルの容積量で行った。センサーフィルム及び流入の温度は約25℃であった。センサーフィルムの非遮蔽ストリップが流入と平衡になるために十分な時間を取った後、チャンバーの透明な壁を通じて、フィルムセンサーの遮蔽部分及び非遮蔽部分の色を観察した。非遮蔽ストリップは、際立った赤色を有する一方で、遮蔽部分は、センサーフィルムの元の緑色の外観を保っていたことが分かった。センサーフィルムの赤色部分と緑色部分との間の色の解像度又は忠実度は、鮮やかかつ明白であった。
【0050】
比較例1(固着されていないマスク)
センサーを準備して、センサーマスクが、Scotch(商標)テープを用いて貼られたPETフィルムであった以外は、実施例1に説明されているのと同様にして、センサーをチャンバーの透明な壁に取り付けた。直径8mmの皮膚パンチ(Miltex、York,PA)を用いて、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(Melinex ST505という透明PET、Dupont Teijin Films、Hopewell,VA)の2.0cm×1.5cmの小片の中央に穴を配置した。チャンバー内のセンサーフィルムの上にこのPETフィルムを配置して、中央の穴が、センサーの反射性層の中央部分にかぶさるようにした。感圧性接着テープ(Magic(商標)Tape 810、3M、St.Paul,MN)を用いて、PETフィルムをチャンバーの壁に貼り付けた。周囲圧力で送達される空気中500パーツパーミリオン(ppm)のオクタンをそのチャンバーに一気に流入させることによって、マスクしたセンサーフィルムの機能を評価した。センサーフィルム片をチャンバーの壁に貼り付けた状態で、上記流入を毎分32.0リットルの容積量で行った。センサーフィルムと流入蒸気の温度は約25℃であった。センサーフィルムが流入と平衡になるために十分な時間を取った後、チャンバーの透明な壁を通じて、フィルムセンサーの遮蔽部分及び非遮蔽部分の色差を観察した。非遮蔽センサー部分及び遮蔽部分の大半の双方が際立った赤色を有する一方で、遮蔽部分のわずかな部分が、センサーフィルムの元の緑色の外観を保っていたことが分かった。センサーフィルムの赤色部分と緑色部分との間の色の解像度又は忠実度が低いため、明確な形又はパターンを判別することはできなかった。
【0051】
比較例2(不活性でないマスク)
実施例1で説明されているように、センサーフィルムの1.5cm×1.0cmの小片を準備した。感圧性接着テープ(Magic(商標)Tape 810、3M、St.Paul,MN)の0.75cm×1.0cmの小片をセンサーの反射性層に貼り付けることによって、センサーの半分をマスキングした。12時間、約25℃で静置したところ、センサーのマスク部分は際立った赤色を帯びた一方で、センサーの非マスク部分は緑色のままであった。これは、テープマスクが、上で用いたPIM系検出層に対して不活性でなかったことを示している。この評価によって、810テープの汚染作用が示され、特定の接着剤中に存在することのある揮発性有機残留物に対する感受性を持つ検出層のために、検出の偽陽性が出た。
本発明は、その趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な変形及び変更を加えられてもよい。したがって、本発明は、上記に限定されないが、以下の請求項及び全てのその等価物に詳述する制限によって規制される。
【0052】
本発明はまた、本明細書に具体的に開示されないいずれかの要素がない場合でも、好適に実施されることがある。
【0053】
上記の全ての特許及び特許出願は、「背景技術」部分のものを含め、全体的に参考として本明細書に組み込まれる。そのような組み込まれる文献の開示と上記明細書との間に不一致又は矛盾がある限りにおいては、上記明細書が優先される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学物質を検出するセンサーであって、
検出層を含むと共に、変色することによって化学物質の存在に応答するフィルム本体を含むフィルムを含み、
前記フィルムが遮蔽層も含み、前記遮蔽層が、第1の主表面を有すると共に、前記フィルム本体に結合しているが、前記検出層に対して不活性であり、前記遮蔽層及び前記化学物質によって、前記遮蔽層の前記第1の主表面と垂直な区域内の前記フィルム本体の変色を防止する、センサー。
【請求項2】
前記遮蔽層が接着剤を含む、請求項1に記載のセンサー。
【請求項3】
前記遮蔽層が感圧性接着剤(PSA)を含む、請求項2に記載のセンサー。
【請求項4】
前記遮蔽層がPSAであり、前記センサーが有機蒸気を検出する、請求項3に記載のセンサー。
【請求項5】
前記PSAが、ポリイソブチレン、ポリイソブチレンコポリマー、アクリル、又はこれらの組み合わせを含む、請求項3に記載のセンサー。
【請求項6】
前記PSAが、ポリイソブチレン、ポリイソブチレンコポリマー、若しくはアクリルポリマー、又はこれらの組み合わせを含む、請求項4に記載のセンサー。
【請求項7】
前記遮蔽層がホットメルト接着剤を含む、請求項2に記載のセンサー。
【請求項8】
前記遮蔽層が、水溶性ポリマー又はコポリマーを含む、請求項1に記載のセンサー。
【請求項9】
前記遮蔽層がエポキシを含む、請求項1に記載のセンサー。
【請求項10】
前記遮蔽層がろうを含む、請求項1に記載のセンサー。
【請求項11】
前記遮蔽層が樹脂を含む、請求項1に記載のセンサー。
【請求項12】
耐用期間終了インジケーターである、請求項1に記載のセンサー。
【請求項13】
残存耐用期間インジケーターである、請求項1に記載のセンサー。
【請求項14】
ハウジング、前記ハウジング内に配置された濾過媒体、及び前記ハウジングの側壁を通じて見ることのできる請求項1に記載のセンサーを含むフィルターカートリッジ。
【請求項15】
前記フィルターカートリッジが、フィルターカートリッジの残存耐用期間を示す1つ以上のマークを含む、請求項14に記載のフィルターカートリッジ。
【請求項16】
前記マーク(単一又は複数)が、前記カートリッジハウジングの前記側壁に成形される、請求項15に記載のセンサー。
【請求項17】
マスク本体と、請求項14に記載の1つ以上のフィルターカートリッジと、を含むレスピレーター。
【請求項18】
(a)化学物質の存在を検出するセンサーと、
(b)側壁を含むハウジングと、
(c)前記側壁の第1の外辺部に固定されたカバーと、
(d)前記ハウジング内に配置された濾過媒体と、を含み、
前記センサーが、前記ハウジング側壁の内側表面に対して並列に配置されており、前記ハウジング側壁が少なくとも、前記センサーが位置する区域において透明であり、前記ハウジング側壁が、前記カートリッジの残存耐用期間をユーザーに伝える1つ以上のマークを含む、フィルターカートリッジ。
【請求項19】
前記マークが、前記ハウジング側壁に成形される、請求項18に記載のフィルターカートリッジ。
【請求項20】
マスク本体と、前記マスク本体に固定されたハーネスと、前記マスク本体に取り付け可能である請求項18に記載の1つ以上のカートリッジと、を含むレスピレーター。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2013−508082(P2013−508082A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535255(P2012−535255)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/052790
【国際公開番号】WO2011/049822
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】