説明

不溶性陽極を用いる電解銅めっき方法

【課題】不溶性陽極を用いる電解銅めっき方法において、被めっき物中の非貫通孔、例えば、ビルドアッププリント配線板用の基板材料のブラインドビアホール内部を長期間安定して充填できる方法を提供する。
【解決手段】不溶性陽極を用いる電解銅めっき方法において、電解銅めっき液中の溶存酸素量を30mg/L以下に維持することを特徴とする電解銅めっき方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不溶性陽極を用いる電解銅めっき方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高性能化、小型化などに対応するために、プリント配線板の高密度化、薄型化が強く求められている。この様な要求に応えるプリント配線板の製造方法の一つとして、1層毎に導体パターンを形成し、逐次積層を行うビルドアップ工法が採用されている。斯かる方法によって形成される多層プリント配線板(ビルドアップ配線板)では、隣接する層間の電気的接続を確保するために、通常、直径100μm、深さ100μm程度の非貫通孔(マイクロブラインドビアホール:以下ビアと称する場合がある)を開け、その内壁面に銅めっきを行うのが一般的である。この場合、ビア内部の空間には、銅めっきを行った後、絶縁樹脂を充填しているが、ビアの直径が小さい場合には、完全にビア内に樹脂を充填することは困難であり、ビア内部に気泡が残る等の問題が生じ易い。このため、ビア内壁面のみに銅めっきを行い、残りの空間を絶縁樹脂にて充填する方法では、直径の小さいビアには対応できず、ビルドアップ配線板の小型化の妨げとなっている。
【0003】
このような問題に対応するために、ビア内壁面のみに導電性を持たせるのではなく、ビア内部全体を導電体で充填する、ビアフィリングと呼ばれる方法が開発され、ビルドアップ配線板の小型化に大きく貢献している。
【0004】
ビアフィリングの方法としては、ビア内部を導電性ペーストにより充填する方法があるが、この方法では、導電率の低さや、ペーストの粘性により直径の小さなビアには対応できないという問題がある。そこで、直径の小さなビアの充填には、導電性が高い金属銅を用いる方法が採用されるようになっている。金属銅による充填方法としては、無電解銅めっきによる方法と、電解銅めっきによる方法があるが、無電解銅めっきによる方法は、析出速度が遅く、ビアを完全に充填するには非常に長時間を要するという問題がある。
【0005】
これに対して、電解銅めっき法は、析出速度が速く、比較的短時間で充填を行うことが可能な方法であり、ビアの充填に適した方法といえる(例えば、下記特許文献1、2等参照)。
【0006】
電解銅めっきによるビアフィリングめっきとしては、陽極として可溶性の銅を用いる方法と、不溶性陽極を用いる方法がある。これらの内で、可溶性陽極を用いる場合には、電解により陽極の形状が変化するために、素材(被めっき物)表面の膜厚差が大きくなり易いという欠点がある。これに対して、不溶性陽極を用いる方法は、常に一定の陽極表面形状が保たれるため、素材(被めっき物)の膜厚差を小さくできるという利点がある。
【0007】
また、電解銅めっきにおけるめっき液の攪拌方法としては、ビア中への空気の巻き込み(エアートラップ)を生じることなく、ビア内部への銅イオンの供給量を増大させるために、通常、機械撹拌法が採用されており、特に、好ましい方法として、素材(被めっき物)に対して垂直方向にめっき液を流動させる噴流攪拌が採用されている。この方法では、銅めっき浴の建浴直後には、電解銅めっきによるビア内部の充填性が良好であるが、電解銅めっきを継続して行うと徐々に充填性が低下し、長期間安定して電解銅めっきによってビア内部を埋め込むことができない。
【特許文献1】特開2003−55800号公報
【特許文献2】特開2004−332094号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記した従来技術の現状鑑みてなされたものであり、その主な目的は、不溶性陽極を用いる電解銅めっき方法において、被めっき物中の非貫通孔、例えば、ビルドアップ配線板用の基板材料のブラインドビアホール内部を長期間安定して充填できる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記した目的を達成すべく鋭意研究を重ねてきた。その結果、めっき液中の溶存酸素量が、電解銅めっきによる非貫通孔の充填性に大きく影響を及ぼすという従来全く知られていない現象を見出した。そして、めっき液中の溶存酸素量を一定濃度以下に制御することによって、電解銅めっきを長時間継続する場合であっても非貫通孔の充填性を良好に維持できることを見出し、特に、溶存酸素量を一定濃度以下に維持する方法として、空気や不活性ガスによる撹拌を行う場合には、非常に簡単な方法によって電解銅めっき液中の溶存酸素量を一定濃度以下に維持することでき、被めっき物中の非貫通孔内部を長期間安定して充填することが可能となることを見出し、ここに本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、下記の電解銅めっき方法及びめっき装置を提供するものである。
1. 不溶性陽極を用いる電解銅めっき方法において、電解銅めっき液中の溶存酸素量を30mg/L以下に維持することを特徴とする電解銅めっき方法。
2. 不溶性陽極を用い、機械的撹拌下に通電する電解銅めっき方法において、電解銅めっき液中の溶存酸素量を30mg/L以下に維持することを特徴とする電解銅めっき方法。
3. 機械的撹拌が、噴流撹拌方式による撹拌である上記項2に記載の方法。
4. 空気撹拌又は不活性ガスによる撹拌によって、電解銅めっき液中の溶存酸素量を30mg/L以下に維持する上記項1〜3のいずれかに記載の方法。
5. 被めっき物が非貫通孔を有する物品である上記項1〜4のいずれかに記載の方法。
6. 非貫通孔を有するビルドアップ配線板であって、上記項1〜4のいずれかに記載の方法により製造されたビルドアップ配線板。
7. 電解めっき槽、不溶性陽極、機械的撹拌手段、及び空気又は不活性ガスによる撹拌手段を備えた、上記項4の電解銅めっき方法を実施するための電解銅めっき装置。
【0011】
本発明は、不溶性陽極を用いる電解銅めっき方法に関するものである。不溶性陽極を用いて電解銅めっきを行う場合には、陽極において水の電気分解反応が行われて、酸素が発生する。
【0012】
本発明者の研究によれば、被めっき物に非貫通孔が存在する場合に、電解銅めっき液中の溶存酸素量が、電解銅めっきによる非貫通孔の埋め込み性に大きく影響を及ぼすという、従来全く知られていない現象が明らかとなった。
【0013】
この理由については明確ではないが、不活性陽極において発生した酸素は、非常に活性であり、この様な活性な酸素の影響によって添加剤の作用が阻害されることが原因と推測される。そして、活性な酸素の影響を示す指標として、めっき液中の溶存酸素量が有効と考えられる。
【0014】
本発明の電解銅めっき方法は、この様な活性な酸素の影響を防ぐために、電解銅めっき液中の溶存酸素量を30mg/L以下に維持して電解銅めっきを行う方法である。この様な方法によれば、被めっき物中の非貫通孔内部を長期間安定して充填することが可能となる。
【0015】
銅めっき液中の溶存酸素量の増加を抑制する手段については、特に限定はなく、例えば、陽極を隔膜で分離して、めっき槽中への酸素の流入を抑制する方法も可能であるが、溶存酸素量の増加を完全に抑制することは困難である。本発明では、特に、空気又は不活性ガス(窒素、アルゴンなど)によってめっき液を撹拌する方法によれば、非常に簡単な手段によって、めっき液中の溶存酸素量を低下又は溶存酸素量の上昇を抑制することができる。
【0016】
これは、不溶性陽極を用いて連続して電解を行うと、陽極から発生する酸素によってめっき液中の酸素分圧が上昇し、溶存酸素量は酸素分圧に比例することから、溶存酸素量が増加するが、空気又は不活性ガスによる撹拌を行うと、空気又は不活性ガスの存在によってめっき液中の酸素分圧が低下し、めっき液中の溶存酸素量が低下することによるものと考えられる。例えば、空気は、主に約80%の窒素と約20%の酸素から構成されているため、窒素の存在によって、めっき液中の酸素分圧が低下することになる。
【0017】
本発明では、被めっき物は、非貫通孔を有する物品であり、本発明のめっき方法によれば、この様な被めっき物の非貫通孔を、電解銅めっきによって長期間安定して埋め込むことができる。この様な被めっき物として代表的な物品は、ビルドアップ配線板用に用いられるブラインドビアホールを有する基板材料、ダマシンプロセスに用いられるサブミクロンの溝(トレンチ)が形成されたシリコンウエハー等である。特に、ビルドアップ配線板用のブラインドビアホールを有する基板材料を被めっき物とする場合には、本発明のめっき方法によって、めっき金属によるブラインドビアホールの埋め込み、即ち、ビアフィリングを安定して行うことが可能となる。
【0018】
本発明のめっき方法では、不溶性陽極については、特に限定はなく、公知の不溶性陽極を用いることができる。この様な不溶性陽極としては、酸化イリジウム被覆チタン、白金被覆チタン、二酸化鉛被覆チタン、鉛合金、フェライト、ステンレススチールなどを例示できる。
【0019】
本発明めっき方法の対象となるめっき液は、電解銅めっき液である。具体的な組成については、特に限定はなく、例えば、硫酸銅めっき液、ピロリン酸銅めっき液、シアン化銅めっき液等を挙げることができる。特に、硫酸銅めっき液を対象とする場合に良好な効果を得ることができる。以下、硫酸銅めっき液の組成の具体例を示す。
*硫酸銅めっき液
硫酸銅5水塩 50〜250g/L(好ましくは150〜220g/L)
硫酸 30〜300g/L(好ましくは40〜150g/L)
塩素イオン 5〜100mg/L(好ましくは30〜80mg/L)
上記した組成の硫酸銅めっき液には、通常、ビアフィリングめっき用の添加剤が添加される。この様な添加剤としては、塩素イオンとの相互作用により陰極界面に単分子膜を形成して銅の析出を幅広く抑制するポリマー、電析作用を促進するブライトナー、凸部の電析反応を抑制するレベラーなどがあり、目的に応じて、公知の添加剤成分を適宜選択して用いることができる。
【0020】
本発明のめっき方法では、電解銅めっきを行う際に、電解銅めっき液中の溶存酸素量を30mg/L程度以下に維持することが必要であり、20mg/L程度以下に維持することが好ましい。溶存酸素量を所定量以下に維持するための具体的な手段としては、上述した様に、隔膜によって不溶性陽極を分離して、めっき液中の溶存酸素量の増加を抑制する方法、空気又は不活性ガスによる撹拌などの手段を採用できる。特に、溶存酸素量の低減には、不活性ガスによる撹拌が効果的であるが、空気撹拌は、低コストで容易に実施可能であることから、溶存酸素量を低濃度に維持する方法として非常に有効な手段である。
【0021】
空気撹拌を行う場合には、具体的な撹拌条件については、めっき液の組成、めっき装置の構造などに応じて適宜決めればよいが、溶存酸素量の抑制には、空気撹拌量は多いほど効果的であり、気泡は小さいほど有効である。通常は、めっき槽の底部に設置した空気導入配管(空気撹拌パイプ)に空気を供給してめっき液を撹拌すればよい。この場合、めっき槽内を均一に撹拌できるように、空気の吹き出し穴をほぼ等間隔で設けることが好ましい。空気の供給量は、特に限定的ではなく、めっき液の組成、めっき条件などによって適宜決めればよいが、通常、めっき液1Lに対して、0.05L/分程度以上とすることが好ましく、0.3L/分以上とすることがより好ましい。
【0022】
その他のめっき方法、めっき条件などについては特に限定はなく、被めっき物の種類、めっき液の組成等に応じて適宜決めればよい。
【0023】
被めっき物が、ビルドアップ配線板用のブラインドビアホールを有する基板材料である場合には、めっき液の撹拌方法として、機械撹拌と空気撹拌を併用することが好ましい。空気撹拌のみを行う場合には、めっき液中の溶存酸素量を低下させることは可能であるが、ビア内部へ空気が巻き込まれ易く、これによって、銅めっきによるビアホールの埋め込み性が劣るものとなり易い。このため、機械撹拌によって、ビアホール内部に十分のめっき液を供給し、同時に空気撹拌によって、溶存酸素量を30mg/L以下、特に、20mg/L以下に維持しながら電解銅めっきを行う方法が好ましい。機械撹拌の方法としては、ビアホールの内部まで十分にめっき液が供給されるように、撹拌されためっき液が、被めっき物の表面に対してできるだけ垂直方向から吹き付けられる方法が好ましい。特に、機械撹拌の方法としては、めっき液を循環させる噴流撹拌法によって、被めっき物のビアホール面に対してほぼ垂直方向からめっき液を吹き付ける方法が好ましい。
【0024】
電解銅めっきのその他のめっき条件については、特に限定はなく、例えば、硫酸銅めっき液を用いる場合には、液温10〜40℃程度、陰極電流密度0.1〜10.0A/dmの範囲内でめっき条件を適宜決めればよい。
【0025】
本発明のめっき方法は、溶存酸素量を30mg/L以下に維持するための手段に応じて、必要な機構を有するめっき装置を用いて実施することができる。例えば、不溶性陽極を隔膜によって分離することによって、溶存酸素量を30mg/L以下に維持する場合には、例えば、隔膜として、耐酸性のイオン非透過性膜(中性膜)等を用いて、不溶性陽極を被めっき物(陰極)から分離した構造としためっき槽を用いることができる。
【0026】
また、噴流撹拌と空気撹拌を併用する場合には、例えば、図1に模式的に示すめっき装置1を用いて、本発明方法を実施することができる。図1の装置では、めっき槽2の両端に不溶性陽極3a、3bが設置され、不溶性陽極3a、3b間には、被めっき物4の設置部が設けられている。更に、設置される被めっき物4の両側に位置するように、噴流撹拌装置5a、5bが設置される。該噴流撹拌装置5a、5bは、めっき槽2内のめっき液を循環させて、被めっき物4に噴射することができる構造であり、めっき液の噴出孔6は、被めっき物4の表面にめっき液を噴射することができるように配置されている。該めっき槽2には、更に、空気撹拌のための空気撹拌パイプ7a、7bが設置され、めっき槽外の空気供給ポンプ8から供給された空気によってめっき液を撹拌できる構造となっており、これによって電解銅めっき液中の溶存酸素量を低下させることができる。
【0027】
図2は、本発明方法を実施するためのめっき装置のその他の例の概略図である。図2の装置では、不溶性陽極3a、3b、被めっき物4の設置部、噴流撹拌装置5a、5b等の設置方法は、図1の装置と同様であり、更に、金属銅を補給するための銅塩溶解槽9が設置されている。めっき槽2と銅塩溶解槽9の間には、めっき液の循環のための経路10が設置されており、めっきの進行によって減少した金属銅は、銅塩溶解槽において銅塩を溶解することによって補給される。更に、銅塩溶解槽9には、空気撹拌のための空気導入配管が設置されており、槽外に設置した空気供給ポンプ8から供給された空気によって、銅塩溶解槽9中においてめっき液を撹拌できる構造となっており、これによって電解銅めっき液中の溶存酸素量を低下させることが可能である。めっき槽2と銅塩溶解槽9との間のめっき液の循環量は、めっき条件などに応じて、適正な金属銅濃度と溶存酸素量が維持されるように適宜決めればよいが、通常、めっき槽2の総液量に対して1時間当たり3〜5回程度の循環量とすればよい。
【0028】
図1及び図2に示すめっき装置において、隔膜を用いて、不溶性陽極をその他の部分から分離してもよく、これによって、溶存酸素量を更に減少させることができる。
【0029】
更に、図2に示すめっき装置において、銅塩溶解槽9の他に、空気導入配管をめっき槽2にも設置してよい。これによって、効率よく溶存酸素量の上昇を抑制することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の電解銅めっき方法によれば、非貫通孔を有する物品、例えば、ビルドアップ配線板用のブラインドビアホールを有する基板材料を被めっき物とする場合に、長期間安定して銅めっきによって非貫通孔を埋め込むことができる。従って、本発明のめっき方法を採用することによって、例えば、ビアフィリングによるビルドアップ配線板の製造を長期間安定して行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、試験例及び実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【0032】
試験例1(電解における溶存酸素量変化)
下記組成の電解銅めっき液について、陽極として酸化イリジウム被覆チタン材、陰極として銅板を用いて、連続して電解を行い、東亜ディーケーケー(株)製のポータブル溶存酸素計(DO−24P)を用いて溶存酸素量の変化を測定した。結果を下記表1に示す。
*電解銅めっき液組成
硫酸銅:200g/L
硫酸:50g/L
塩素イオン:50mg/L
添加剤:ルチナFA(商標名)、奥野製薬工業株式会社製
*めっき条件
陰極電流密度:1.5A/dm
液温度:23℃
撹拌:スターラー
【0033】
【表1】

【0034】
以上の結果より、電解銅めっきを連続して行うと、めっき液中の溶存酸素量が増加することが判る。
【0035】
試験例2(溶存酸素量とめっき後のビア部の凹みの深さの関係)
以下の方法で、めっき液中の溶存酸素量とめっき後のビア部の凹みの深さとの関係について測定した。
【0036】
実験方法としては、試験例1と同様の条件で連続して電解銅めっきの電解を行い、東亜ディーケーケー(株)製のポータブル溶存酸素計(DO−24P)を用いて溶存酸素量を測定し、溶存酸素量が一定量に達したところで電解を停止し、直径100μm、深さ60μmの多数のビアを有するビルドアップ基板を被めっき物として、下記条件で電解銅めっきを行い、ビアの最大凹みの深さを測定した。結果を下記表2に示す。
*めっき条件
陰極電流密度:1.5A/dm
めっき時間:75分(めっき厚約25μm)
液温度:23℃
陽極:酸化イリジウム被覆チタン
撹拌:スターラー
【0037】
【表2】

【0038】
以上の結果から明らかなように、めっき液中の溶存酸素量が増加すると、ビア部の凹み量が多くなり、ビアの埋め込み性が低下する傾向が認められる。
【0039】
試験例3(撹拌方法による溶存酸素量の変化の確認試験)
試験例1と同様の条件で連続して電解銅めっきの電解を行い、めっき液中の溶存酸素量がほぼ飽和状態に達した後、電解を停止した。
【0040】
この電解銅めっき液に、空気、窒素又は酸素を0.3L/分・Lの流量で吹き込んで、溶存酸素量を経時的に測定した。結果を下記表3に示す。
【0041】
【表3】

【0042】
以上の結果から明らかなように、空気又は窒素を吹き込むことによって、めっき液中の溶存酸素量を大きく低減できることが判る。
【0043】
試験例4(空気撹拌量と溶存酸素量との関係)
試験例1と同様の条件で連続して電解銅めっきの電解を行い、めっき液中の溶存酸素量がほぼ飽和状態に達した後、電解を停止した。
【0044】
この電解銅めっき液に、0.05L/分・L〜1L/分・Lの範囲の流量で空気を吹き込み、溶存酸素量を経時的に測定した。結果を下記表4に示す。
【0045】
【表4】

【0046】
以上の結果から、空気流量が0.05L/分・L以上の場合に、溶存酸素量を低減することが可能であり、空気流量が多くなると短時間で溶存酸素量を低減できることが判る。
【0047】
実施例1
図1に示された構造のめっき装置(容量400L)を用い、直径100μm、深さ60μmの多数のビアを有する基板を被めっき物として、噴流撹拌のみを行った場合と、噴流撹拌と空気撹拌を併用した場合について、下記条件で電解銅めっきを行って溶存酸素量とビア部の凹み量を測定した。結果を下記表5に示す。
*電解銅めっき液組成:
硫酸銅(5水塩)200g/L
硫酸50g/L
塩素イオン50mg/L
添加剤:ルチナFA(奥野製薬工業(株)製)
*めっき条件:
電流密度:1.5A/dm2
めっき時間:75分
液温:23℃
陽極:酸化イリジウム
隔膜:耐酸中性膜
【0048】
【表5】

【0049】
以上の結果から明らかなように、噴流撹拌のみを行った場合には、電解開始から約8時間後において埋め込み性の低下が認められた。これに対して、噴流撹拌と空気撹拌を併用した場合には、電解開始から72時間経過後にも埋め込み性の低下は認められなかった。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明方法で使用するめっき装置の一例の概略図。
【図2】本発明方法で使用するめっき装置のその他の例の概略図。
【符号の説明】
【0051】
1:めっき装置、 2:めっき槽、
3a,3b:不溶性陽極、 4:被めっき物、
5a、5b:噴流撹拌装置、 6:めっき液の噴出孔、
7a、7b:空気撹拌パイプ、 8:空気供給ポンプ、
9:銅塩溶解槽、 10:めっき液循環経路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
不溶性陽極を用いる電解銅めっき方法において、電解銅めっき液中の溶存酸素量を30mg/L以下に維持することを特徴とする電解銅めっき方法。
【請求項2】
不溶性陽極を用い、機械的撹拌下に通電する電解銅めっき方法において、電解銅めっき液中の溶存酸素量を30mg/L以下に維持することを特徴とする電解銅めっき方法。
【請求項3】
機械的撹拌が、噴流撹拌方式による撹拌である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
空気撹拌又は不活性ガスによる撹拌によって、電解銅めっき液中の溶存酸素量を30mg/L以下に維持する請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
被めっき物が非貫通孔を有する物品である請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
非貫通孔を有するビルドアップ配線板であって、請求項1〜4のいずれかに記載の方法により製造されたビルドアップ配線板。
【請求項7】
電解めっき槽、不溶性陽極、機械的撹拌手段、及び空気又は不活性ガスによる撹拌手段を備えた、請求項4の電解銅めっき方法を実施するための電解銅めっき装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−169700(P2007−169700A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−367643(P2005−367643)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【出願人】(591021028)奥野製薬工業株式会社 (132)
【出願人】(000222624)株式会社アルメックス (6)
【Fターム(参考)】