説明

不燃壁装材料及びその製造方法

【課題】不燃壁装材料として製造された製品であっても、その表面に塗装を施すなど有機物が配置されることにより、それら有機物の発熱の影響を受け、発熱性試験においては20分間の総発熱量が3〜5MJ/m程度高くなって、不燃性の規格値8MJ/m以下であることの条件に適合しない課題がある。
【解決手段】防炎耐熱性薬剤と、架橋結合性を有するバインダーはシリコーン系又はアクリル酸系から選ばれる少なくとも1種の水溶性を有するポリマー又はエマルジョンと、分散安定剤とよりなる防炎耐熱性混合溶液を壁装材料に担持させた防炎耐熱性壁装材料を防火材料の表面に貼り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防炎性、耐熱性、不燃性等の機能を有する不燃壁装材料及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築基準法及び同法施行令により防火対象となる建築物を定めており、これに該当する商業施設やオフィスビル、医療・福祉施設などを中心に新築やリニューアルの際に壁、天井などの内装制限を受ける物件では、不燃材料認定の防火性能を持つ壁装材料の要求が増大している。そのため、壁装材料の中にも防炎性、耐熱性、不燃性等を有するものがいくつか提案されている。しかし、満足する防炎性、耐熱性及び不燃性等の機能と共に、安全性を有する不燃壁装材料は未だ見出されていないというのが現状である。
【0003】
例えば、特開平6−262732号広報(特許文献1)では、パネル本体の外面に接着剤にて接着した表装クロスの表面に、フッ素系樹脂のように繊維を汚れにくくする性質を有する防汚剤をコーティングして成る防汚処理部を形成する一方、表装クロスの少なくとも裏面に、臭素系化合物のように繊維を燃えにくくする性質を有する防炎剤を含浸又はコーティングして成る防炎処理部を形成した表装パネルが開示されている。この方法は、臭素系ガスを発生させて酸素を遮断してラジカルをトラップし燃焼抑制するものであるが、臭素系化合物は燃焼時に臭素系の有毒ガス、臭素系ダイオキシン類を発生する。これらの有害物質は生体蓄積性が指摘されておりEUでは使用禁止が検討されている。
【0004】
また、特開平8−13350号広報(特許文献2)では、表装用クロスの染色作業時に、臭素系化合物、塩素系化合物、またはリン化合物等の防炎剤の溶液に含浸させて防炎処理を施した後、表装用クロスを樹脂硬仕上げ加工時にアニオン性、カチオン性、非イオン系、両性等の海面活性剤からなる帯電防止剤を塗布または含浸させて帯電防止処理を施し、次いで、表装用クロスの少なくとも一方の表面に、フッ素系樹脂のように繊維を汚れにくくする性質を有する防汚剤をコーティング、またはスプレーして防汚処理を施す表装用クロスの処理方法が開示されている。この方法によれば、防炎処理剤の臭素系化合物および塩素系化合物は燃焼時に、有毒ガスあるいはダイオキシン類を発生するため使用が抑制される方向に進んでいる。また、リン化合物防炎剤は季節による湿度の変化が原因といわれる白華現象が生じやすいという問題がある。
【0005】
更に、特開2002−220782号広報(特許文献3)では、ハロゲンを含まない、合成樹脂エマルジョン又は合成樹脂溶液100重量部(固形分)に、水に不溶ないし難溶性で、かつ粒径が50μmの縮合リン酸アンモニウム、縮合リン酸メラミン、縮合リン酸アミドアンモニウムから選ばれた1種以上の縮合リン酸化合物5〜100重量部を混合して得られる加工液を、繊維製品に対して固形分で3〜100%付着させる内装用繊維製品の防炎加工方法が開示されている。
【0006】
また、防炎耐熱性薬剤のように自らが繊維などに担持できない物質を担持するする方法としては、特開2003−246985号広報(特許文献4)や特開2008−308176号広報(特許文献5)に開示されている方法が知られている。これらの方法は、高分子材料を相溶化した樹脂で担持させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−262732号広報
【特許文献2】特開平8−13350号広報
【特許文献3】特開2002−220782号広報
【特許文献4】特開2003−246985号広報
【特許文献5】特開2008−308176号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の方法により得られる防炎性、耐熱性等の機能を有する不燃壁装材料は、湿度変化により白華現象を生じたり、経年変化でバインダー等が変質して着色、あるいは部材の繊維質が黄変したりする。そのため、繊維劣化を招いてしまい、繊維や紙の風合いが悪化してしまうという課題と共に、ハロゲン系難燃剤の使用における燃焼時や成形時に発生するハロゲン系ガスの有害性の問題がある。更に、不燃壁装材料として製造された製品であっても、その表面に塗装を施すなど有機物が配置されることにより、それら有機物の発熱の影響を受けて発熱性試験では20分間の総発熱量が3〜5MJ/m程度高くなり、不燃性の規格値8MJ/m以下であることの条件に適合しなくなるなどの課題がある。
このような状況の中で、本発明は壁装材料を経年劣化や毒性ガスの問題を発生させることなく、防炎性、耐熱性等の機能を付与又は向上させて結果的に安心・安全で安定した防炎耐熱性壁装材料を防火材料の表面に貼り付けることにより不燃性(発熱性試験において20分間の総発熱量が8MJ/m以下であること)を呈する不燃壁装材料及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の不燃壁装材料は、国土交通大臣が定める不燃材料又は準不燃材料もしくはISO5660−1に基づいた発熱性試験で試験時間20分間の総発熱量が40MJ/m以下である防火材料の表面に貼り付ける壁装材料であって、
防炎性と耐熱性を有する防炎耐熱性薬剤と、架橋結合性を有するバインダーはシリコーン系又はアクリル酸系から選ばれる少なくとも1種の水溶性を有するポリマー又はエマルジョンと、分散安定剤とよりなる防炎耐熱性混合溶液を前記壁装材料に担持させた防炎耐熱性壁装材料を上記防火材料の表面に貼り付けることにより、上記発熱性試験で試験時間20分間の総発熱量が8MJ/m以下であるものである。
【0010】
請求項2に記載の発明の不燃壁装材料は、請求項1に記載の発明において、前記国土交通大臣が定める不燃材料は、コンクリート、れんが、瓦、陶磁器質タイル、繊維強化セメント板、厚さが3ミリメートル以上のガラス繊維混入セメント板、厚さが5ミリメートル以上の繊維混入ケイ酸カルシウム板、鉄鋼、アルミニウム、金属板、ガラス、モルタル、しっくい、石、厚さが12ミリメートル以上のせつこうボード、ロックウール、ガラスウール板から選ばれる少なくとも1種の材料であり、前記国土交通大臣が定める準不燃材料は、厚さが9mm以上のせつこうボード、厚さが15mm以上の木毛セメント板、厚さが9mm以上の硬質木片セメント板、厚さが30mm以上の木片セメント板、厚さが6mm以上のパルプセメント板から選ばれる少なくとも1種の材料であり、防炎性と耐熱性を有する防炎耐熱性薬剤は、ケイ素化合物、ホウ素化合物、リン・チッソ系化合物、リン・チッソ・ホウ素系化合物から選ばれる少なくとも1種であり、分散安定剤は炭素数11〜18の脂肪酸の金属せっけん又は金属キレートである。
【0011】
請求項3に記載の発明の不燃壁装材料は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記防炎耐熱性混合溶液の水素イオン濃度(pH)は5〜9の範囲内であるものである。
【0012】
請求項4に記載の発明の不燃壁装材料は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の発明において、前記防炎耐熱性薬剤は壁装材料の重量の3〜300重量%の範囲内で壁装材料に担持されるものである。
【0013】
請求項5に記載の発明の不燃壁装材料の製造方法は、国土交通大臣が定める不燃材料又は準不燃材料もしくはISO5660−1に基づいた発熱性試験で試験時間20分間の総発熱量が40MJ/m以下である防火材料の表面に貼り付ける壁装材料の製造方法であって、
防炎性と耐熱性を有する防炎耐熱性薬剤と、架橋結合性を有するバインダーはシリコーン系又はアクリル酸系から選ばれる少なくとも1種の水溶性を有するポリマー又はエマルジョンと、分散安定剤とよりなる防炎耐熱性混合溶液の水素イオン濃度(pH)を5〜9に調整した後、その防炎耐熱性混合溶液の防炎耐熱性薬剤は前記壁装材料の重量の3〜300重量%の範囲内で前記壁装材料に担持させた防炎耐熱性壁装材料を上記防火材料の表面に貼り付けることにより、上記発熱性試験で試験時間20分間の総発熱量が8MJ/m以下である不燃壁装材料の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、次のような効果を奏する。請求項1に記載の発明の不燃壁装材料によれば、防炎耐熱性薬剤の担持量が低下することを防止して、長期間その機能を発揮させることができると共に、風合いを損なうことのない防炎耐熱性壁装材料を防火材料表面に貼り付けることにより安心・安全な不燃壁装材料を得ることができる。
【0015】
請求項2に記載の発明の不燃壁装材料によれば、請求項1に記載の発明の効果に加えて、防炎耐熱性薬剤の機能を確実に発揮させることができるとともに、その防炎耐熱性薬剤を壁装材料に確実に担持させることができるため、その機能は長期間に亘り維持される。
【0016】
請求項3に記載の発明の不燃壁装材料によれば、請求項1又は請求項2に記載の発明の効果に加えて、安定な防炎耐熱性混合溶液を得ることができる。
【0017】
請求項4に記載の発明の不燃壁装材料によれば、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の発明の効果に加えて、防炎耐熱性薬剤の機能を十分に発揮させることができる。
【0018】
請求項5に記載の発明の不燃壁装材料の製造方法によれば、防炎耐熱性薬剤を確実に壁装材料に担持させ、その機能を発揮させることができると共に、風合いを損なうことのない防炎耐熱性壁装材料を防火材料表面に貼り付けることにより安心・安全な不燃壁装材料の製造方法を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。国土交通大臣が定める不燃材料又は準不燃材料もしくはISO5660−1に基づいた発熱性試験で試験時間20分間の総発熱量が40MJ/m以下である防火材料の表面に貼り付ける壁装材料であって、防炎性と耐熱性を有する防炎耐熱性薬剤と、架橋結合性を有するバインダーと、分散安定剤とよりなる防炎耐熱性混合溶液を壁装材料に担持させた防炎耐熱性壁装材料を防火材料に貼り付けることにより、前記発熱性試験において試験時間20分間の総発熱量が8MJ/m以下である不燃壁装材料が構成される。
【0020】
国土交通大臣が定める不燃材料は、コンクリート、れんが、瓦、陶磁器質タイル、繊維強化セメント板、厚さが3ミリメートル以上のガラス繊維混入セメント板、厚さが5ミリメートル以上の繊維混入ケイ酸カルシウム板、鉄鋼、アルミニウム、金属板、ガラス、モルタル、しっくい、石、厚さが12ミリメートル以上のせつこうボード、ロックウール、ガラスウール板から選ばれる少なくとも1種の材料であり、更に、1.不燃性試験又は発熱性試験のいずれかに合格し、かつガス有毒性試験に合格したもの、2.不燃性試験又は発熱性試験のいずれかに合格し、かつ不燃材料の基材に化粧を施したものもので、その化粧層の有機化合物の合計質量が200g/m以下のもの、及び予め基材の表面に木質系の材料等が施されている場合の化粧層の有機質は、表面に木質系部分を加味した総有機質の合計質量が400g/m以下のものである。また、前記国土交通大臣が定める準不燃材料は、厚さが9mm以上のせつこうボード、厚さが15mm以上の木毛セメント板、厚さが9mm以上の硬質木片セメント板、厚さが30mm以上の木片セメント板、厚さが6mm以上のパルプセメント板から選ばれる少なくとも1種の材料であり、さらに、1.発熱性試験又は模型箱試験のいずれかに合格し、かつガス有毒性試験に合格したもの、2.発熱性試験又は模型箱試験のいずれかに合格し、かつ不燃材料又は準不燃材料の基材に化粧を施したもので、その化粧層の有機化合物の合計質量が不燃材料の基材にあっては200g/m以下のもの、準不燃材料の基材にあっては100g/m以下のもの、及び予め基材の表面に木質系の材料等が施されている場合の化粧層の有機質は、表面に木質系部分を加味した総有機質の合計質量が400g/m以下のものである。これらを総称して防火材料という。
【0021】
防炎性と耐熱性を有する防炎耐熱性薬剤としては、ケイ素化合物、ホウ素化合物、リン・チッソ系化合物、リン・チッソ・ホウ素系化合物から選ばれる少なくとも1種を使用するのが好ましい。ケイ素化合物の防炎耐熱性薬剤としては、例えば、一酸化ケイ素、二酸化ケイ素、ケイ酸、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ケイ酸塩、四塩化ケイ素、シラン、シリコーン、ケイ素樹脂、環状シロキサンが挙げられる。また、ホウ素化合物の防炎耐熱性薬剤としては、例えば、ホウ酸、四ホウ酸ナトリウム、ホウ酸トリアルキル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリプロピルが挙げられる。次に、リン・チッソ系化合物の防炎耐熱性薬剤としては、例えば、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸アミド、ポリリン酸アミドアンモニウム、ポリリン酸メラミン、メラミン変性ポリリン酸アンモニウム、メラミン変性ポリリン酸アミド、メラミン変性ポリリン酸アミドアンモニウム及びリン酸グアニジン、アルキル酸性リン酸エステル、リン酸1アンモニウム、リン酸2アンモニウム等が挙げられる。更に、リン・チッソ・ホウ素系化合物の防炎耐熱性薬剤としては、例えば、ポリリン酸アンモニウムとホウ酸と四ホウ酸ナトリウムの複合溶液、メラミン変性ポリリン酸アンモニウムとホウ酸と四ホウ酸ナトリウムの複合溶液が挙げられる。これらの中から選ばれる少なくとも1種が使用される。
【0022】
防炎性、耐熱性を有する防炎耐熱性薬剤は、防炎耐熱性混合溶液の全体重量に対し、5〜80重量%の範囲内で含有されるのが好ましく、10〜50重量%の範囲内で含有されるのが特に好ましい。含有量が5重量%未満では、十分な防炎性と耐熱性を発揮させることができず好ましくない。一方、80重量%を越えると、固着性不良及び白華現象の原因となる。更には、防炎性と耐熱性が十分に発揮できているため、それ以上含有しても製造コストの上昇を招くだけで好ましくない。
【0023】
架橋接合性を有するバインダーとしては、シリコーン系又はアクリル酸系から選ばれる少なくとも1種の水溶性を有するポリマー又はそれらをエマルジョン化したものを使用するのが好ましい。シリコーン系のバインダーとしては、例えば、ジメチルシリコーン、アミノ基含有シリコーン、エポキシ基含有シリコーン、エポキシ基とポリエーテル基含有シリコーン、メタクリル基含有シリコーン、メルカブト基含有シリコーン、フェニル基含有シリコーン、長鎖アルキル基含有シリコーン、水素基含有シリコーン、反応型含有シリコーン、メチル系シリコーンレジン、フェニル基含有シリコーンレジンが挙げられる。アクリル酸系のバインダーとしては、例えば、アクリル酸エステル共重合樹脂、アクリル酸エステル共重合体、エチレン/酢ビ/アクリル酸エステル共重合樹脂が挙げられる。
【0024】
これらの架橋接合性を有するバインダーは、防炎耐熱性混合溶液の全体重量に対し、2〜50重量%の範囲内で含有されるのが好ましく、3〜30重量%の範囲内で含有されるのが特に好ましい。含有量が2重量%未満では架橋接合性を発揮させることができず好ましくない。一方、50重量%を越えると、防炎耐熱性薬剤の機能性を損なう恐れと共に、架橋接合性を十分に発揮できるため、それ以上含有しても製造コストの上昇を招くだけで好ましくない。
【0025】
防炎耐熱性薬剤の分散安定剤としては、炭素数11〜18の脂肪酸の金属せっけん、硫酸エステル、金属キレート又は金属化合物が使用され、防炎耐熱性薬剤を確実に分散させ防炎耐熱性混合溶液を確実に調整するために金属せっけん、硫酸エステル又は金属キレートを使用するのが好ましい。前記炭素数11〜18の脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、セチル酸、ステアリン酸、パルミチン酸及びオレイン酸から選ばれる少なくとも1種が使用され、それらのアルコールでも良い。
【0026】
炭素数11〜18の脂肪酸の金属キレートとしては、ステアリン酸クロミッククロリド、ラウリン酸クロミッククロリド等が挙げられる。金属化合物としては、ナトリウム、カリウム、亜鉛等の塩が挙げられ、ステアリン酸亜鉛を使用するのが好ましい。
【0027】
分散安定剤は、防炎耐熱性薬剤の全体重量に対し、0.001〜3重量%の範囲内で添加されるのが好ましく、0.1〜1重量%の範囲内で添加されるのが特に好ましい。添加量が0.001重量%未満では防炎耐熱性薬剤を十分に分散させることができず好ましくない。一方、3重量%を越えると泡立ちが激しく液面の制御などができず、得られる防炎耐熱性混合溶液の均一な塗工安定性が得られず好ましくない。分散安定剤は防炎耐熱性薬剤の防炎耐熱性混合溶液中での粒子の安定性ばかりでなく、防炎耐熱性混合溶液の塗工後の防炎耐熱性壁装材料の着色を防止する効果も得られる。
【0028】
本発明の効果を阻害しない範囲で、付加効果を発揮する浸透剤を含んでも良い。
浸透剤は、防炎耐熱性壁装材料を得るための壁装材料となる例えば、紙、突き板、天然植物繊維、織物、編物、不織布、それらの組合せ、それらの積層体、それらの表面に貼付するフィルムなどへの防炎耐熱性薬剤の含浸を促進する効果を有する。
このような浸透剤としては、炭素数3〜11のアルジトールのようなポリオール、ポリフェノール類、界面張力を低下させる作用のある界面活性剤。エチレングリコール、プロピレングリコールのようなジオール。グリセリンのようなトリオールなどが挙げられる。これらの中でエチレングリコールが特に好ましい。浸透剤の添加量は、0.05〜10重量%程度、0.5〜2重量%がより好ましい。
【0029】
本発明の防炎耐熱性混合溶液を、壁装材料となる例えば、紙、突き板、天然植物繊維、織物、編物、不織布、それらの組合せ、それらの積層体、それらの表面に貼付するフィルムに担持し、次に乾燥させることにより防炎性と耐熱性を得た壁装材料は、防炎耐熱性壁装材料になり、防火材料の表面に貼り付けることで不燃壁装材料の製造方法が提供される。
【0030】
防火材料の表面に貼り付ける壁装材料としては、紙、突き板、天然植物繊維、織物、編物、不織布、それらの組合せ、それらの積層体、それらの表面に貼付するフィルムが含まれており、それらの壁装材料には防炎耐熱性混合溶液の防炎耐熱性薬剤が夫々の壁装材料の重量の3〜300重量%の範囲内で担持することにより防炎性と耐熱性を有する防炎耐熱性壁装材料を得ることができる。
【0031】
壁装材料として最も多く用いられている不織布は、より良い性能を維持するために、その1m当たりの繊維の重さを示す米坪量が5g/m以上のものが好ましく、20〜100g/mの範囲内のものが好ましい。また、繊維と繊維の理論空間距離が少なくとも防炎耐熱性薬剤の粒子径以上であるために、その見掛け密度が0.02g/cm以上のものが好ましい。
【0032】
更に、防炎耐熱性混合溶液の不織布への含浸工程において、不織布の工程通過性を得るためや最終用途での取り扱いの点から、水に浸漬した時の引っ張り強度を示す湿潤時強力は、不織布が15mm幅で0.5kgf以上であるものが好ましい。
【0033】
その不織布は湿式抄紙法により得られる紙又はニードルパンチ法、スパンボンド法、水流絡合法、メルトブロー法等により得られる乾式不織布である。前記紙としては、例えば繊維を水分散系からシート化する手漉紙、機械抄紙当が挙げられる。その紙の原料としては楮、三椏、雁皮、マニラ麻、ケナフ等の非木材繊維や針葉樹や広葉樹などから得られる晒し、未晒しパルプ等の天然繊維を用いることもできる。さらに、再生セルロース繊維又はそのフィブリル状のもの、合成繊維としてのポリビニルアルコールからなるビニロン繊維、ポリアクリロニトリル系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ブニリデン系、ポリアミド系の繊維が使用される。難燃性を付与したポリエステル系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ブニリデン系、ポリアミド系の繊維又はそのフィブリル状のもの、更に、共重合した変性ポリマー繊維、芯鞘型の複合繊維も用いることができる。当然これら化合繊維、合成繊維は天然繊維と混合して使うこともできる。
【0034】
次に、ロール状の不織布に防炎耐熱性混合溶液を含浸塗工する工程について述べる。含浸塗工において、まず、不織布ロールを送り出し機構の付いたアンリールロールへセットする。そして、その不織布を張力補償機能付きロールにより、一定張力で防炎耐熱性混合溶液貯蔵タンクへ送り出す。前記防炎耐熱性混合溶液貯蔵タンクには防炎耐熱性混合溶の粘度を一定に保つための温度制御装置と撹拌装置とが備えられている。そして、その防炎耐熱性混合溶液貯蔵タンクに不織布を含浸させた後、防炎耐熱性混合溶液の不織布への付着量を規制するために絞りを数段階で行い、防炎耐熱性混合溶液の含浸量を適量に調節して防炎耐熱性不織布壁装材料を得る。
【0035】
乾燥方法は、予備的に遠赤外線などで防炎耐熱性不織布壁装材料の表面乾燥を行い、更に、その防炎耐熱性不織布壁装材料を熱ロールへ接触させて乾燥させる。その他に、熱風炉や遠赤外線炉を通して不織布壁装材料を乾燥させる方法によって行っても良い。乾燥におけるその加熱温度は60〜200℃が好ましい。
【0036】
このようにして、防炎耐熱性不織布壁装材料が得られ防炎耐熱性薬剤は不織布壁装材料の重量に対して3〜300重量%の範囲内で不織布壁装材料に担持されている。不織布壁装材料が防炎耐熱性不織布壁装材料として巻き取られて、連続防炎耐熱性不織布壁装材料を得ることができる。これらの防炎耐熱性壁装材料はエンボスやフィルムの張り合わせ等複合化して使用することもできる。そして、得られた防炎耐熱性壁装材料を国土交通大臣が定める不燃材料又は準不燃材料もしくはISO5660−1に基づいた発熱性試験で試験時間20分間の総発熱量が40MJ/m以下である防火材料の表面に貼り付け、その表面の防汚処理など必要な仕上げ加工の終了後に測定する前記ISO5660−1に基づいた発熱性試験で試験時間20分間の総発熱量が8MJ/m以下である不燃壁装材料の製造方法である。
【0037】
前記の実施形態によって発揮される効果について以下に記載する。
(1)防炎耐熱性混合溶液は防炎耐熱性薬剤と、架橋結合性を有するバインダーと、分散安定剤とより調整され、その防炎耐熱性混合溶液を壁装材料に含浸させて防炎耐熱性壁装材料が製造される。防炎耐熱性混合溶液の壁装材料への含浸時に、架橋結合性を有するバインダーにより防炎耐熱性薬剤が壁装材料に強固に担持される。したがって防炎耐熱性薬剤と架橋結合性を有するバインダーとはその物性が似ているため得られる防炎耐熱性壁装材料の風合いを損なうのを防止することができる。
(2)壁装材料に防炎耐熱性混合溶液を含浸するのみで防炎耐熱性壁装材料を製造することができる。このとき従来の設備を利用することができるので製造コストが嵩むのを防止することができる。
(3)防炎耐熱性混合溶液中の架橋結合性を有するバインダーは防炎耐熱性薬剤の全体重量の2〜50重量%の範囲内で含有される。
(4)分散安定剤は防炎耐熱性薬剤の全体重量の0.001〜3重量%の範囲内で添加される。そのためその配合が容易で安定した防炎耐熱性混合溶液を得ることができる。
(5)防炎耐熱性薬剤は壁装材料の重量に対して3〜300重量%の範囲内で担持されるよう設定されている。そのため防炎耐熱性壁装材料の防炎性と耐熱性の機能を維持することができる。
(6)分散安定剤により防炎耐熱性薬剤を防炎耐熱性混合溶液中に均一に分散して、防炎耐熱性壁装材料に均一に防炎耐熱性薬剤を分散させることができる。
(7)防炎耐熱性混合溶液のpHは5〜9の範囲内に調整される。そのため、防炎耐熱性混合溶液を安定した状態にすることができる。
(8)前記の手段により製造された防炎耐熱性壁装材料を不燃材料の表面に貼り付けることにより、発熱性試験で試験時間20分間の総発熱量が8MJ/m以下である前記防炎耐熱性壁装材料を用いた不燃壁装材料が製造できる。
(9)前記の手段により製造された防炎耐熱性壁装材料を準不燃材料の表面に貼り付けることにより、発熱性試験で試験時間10分間の総発熱量が8MJ/m以下である前記防炎耐熱性壁装材料を用いた準不燃壁装材料が製造できる。
(10)前記の手段により製造された防炎耐熱性壁装材料を難燃材料の表面に貼り付けることにより、発熱性試験で試験時間5分間の総発熱量が8MJ/m以下である前記防炎耐熱性壁装材料を用いた難燃壁装材料が製造できる。
【0038】
次に、本発明を実施例及び比較例に基づいて具体的に説明する。なを、各例における発熱性試験は国土交通大臣が認定しているISO5660−1に準拠して実施した。なを、発熱性試験機は東洋精機製作所製のコーンカロリーメーターを用いて測定した。評価方法は、夫々の試料を試験時間20分間とし、測定値の総発熱量が8MJ/m以下であれば○印で合格とし、測定値の総発熱量が8MJ/mを超えるものは×印で不合格とする。しかしながら試料の作成方法が異なることによる誤差を防ぐため、次の施工手段で統一して夫々の試料を作成した。
1.試料を貼る不燃材料は、御影石と定め寸法は縦99mm、横99mm、厚み20mmの表面が鏡面仕上げを施したもの。
2.試料は御影石の鏡面仕上げを施した面に貼る。御影石の表面に塗布する接着剤は、ラテックス系熱硬化性接着剤とする。
3.試料の接着面側に塗布する接着剤は、ラテックス系熱硬化性接着剤とする。
4.不燃材料に試料を貼り付ける手段は、ホットプレスにて貼着する。
5.試料を貼り付けた後の表面処理は、アクリル系クリア塗料の1回塗工とする。
上記の規定に準じて夫々の実施例を実施するものとする。
【実施例1】
【0039】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
防炎耐熱性薬剤として、ケイ素化合物である二酸化ケイ素(和光純薬社製)粉末を20%分散液となるようにイオン交換水を加え3000rpmの回転数でミキサーにより10分間撹拌して分散させた。この時のpHは6.9であった。次に、この二酸化ケイ素水溶液を容量1000mlのビーカーに移して、500rpmの回転数でホットスターラーにて撹拌しながら、架橋結合性バインダーとしてのフェニル基含有シリコーンレジン(信越化学製 商品名X−52−8148)を二酸化ケイ素の全体量に対して30重量%となるようにゆっくりと添加した。更に、撹拌を継続しながら二酸化ケイ素粉末の分散安定剤としてのステアリン酸亜鉛を、まず、温水と中性洗剤のアルキルベンゼンスルフォン酸ナトリウムとにより乳化し、それを二酸化ケイ素の全体重量に対して0.1重量%となるように添加した。その結果、ケイ素化合物防炎耐熱性混合溶液を得ることができ、この時のpHは6.7であり、このケイ素化合物防炎耐熱性混合溶液を15分間静置しておいても分離沈降は見られず安定であった。
(#1試料の作成)パルプ60%、ポリエステル繊維40%の壁紙に1m当たり100gになる量のケイ素化合物防炎耐熱性混合溶液を塗布した後、乾燥を待って、上記記載の施工手段に基づき作製し、#1試料不燃壁装材料を得た。なを、比較対照のためにパルプ60%、ポリエステル繊維40%の未処理の壁紙を上記記載の施工手段に基づき作製し、#1試料比較不燃壁装材料を得た。試験結果は表1に記載。
【実施例2】
【0040】
防炎耐熱性薬剤として、ケイ素化合物である二酸化ケイ素(和光純薬社製)粉末を20%分散液となるようにイオン交換水を加え3000rpmの回転数でミキサーにより10分間撹拌して分散させた。この時のpHは6.9であった。次に、この二酸化ケイ素水溶液を容量1000mlのビーカーに移して、500rpmの回転数でホットスターラーにて撹拌しながら、架橋結合性バインダーとしての自己架橋性であるエチレン/酢ビ/アクリル酸エステル共重合樹脂(昭和高分子社製 商品名ポリゾールF−390)を二酸化ケイ素の全体重量に対して30重量%となるように撹拌しながら加えた。さらに、二酸化ケイ素粉末の分散安定剤としてのラウリル硫酸エステルを、まず、水にて溶解し、それを二酸化ケイ素の全体重量に対して0.1重量%になるように添加した。その結果、ケイ素化合物防炎耐熱性混合溶液を得ることができ、そのpHは6.8であった。このケイ素化合物防炎耐熱性混合溶液を15分間静置しておいても分離沈降は見られず安定であった。
(#2試料の作成)厚みが0.2mmの檜の突き板に1m当たり100gになる量のケイ素化合物防炎耐熱性混合溶液を塗布した後、乾燥を待って、上記記載の施工手段に基づき作製し、#2試料不燃壁装材料を得た。なを、比較対照のために厚みが0.2mmの未処理の檜の突き板を上記記載の施工手段に基づき作製し、#2試料比較不燃壁装材料を得た。試験結果は表1に記載。
【実施例3】
【0041】
防炎耐熱性薬剤として、ホウ素化合物の水溶液を調合した。まず、容量1000mlのビーカーに沸騰水700gを入れてホットスターラーで温度指定100℃、回転数800rpmで撹拌しながら、ホウ酸(和光純薬社製)150gをゆっくりと入れ、しばらく撹拌を継続していると濁りのない溶液になった。さらに撹拌を継続しながらこの溶液中に今度は、四ホウ酸ナトリウム(和光純薬社製)150gをゆっくり添加し、さらに撹拌を継続したところ清澄な溶液が得られた。この状態で添加したホウ酸と四ホウ酸ナトリウムが完全に溶解しホウ素化合物粒子含有量30%のホウ素化合物を得た。この溶液を20℃程度になるまで室温で放置した後、再度撹拌を始めてゆっくりと架橋結合性バインダーとしてのエポキシ基とポリエーテル基含有シリコーン(信越化学製 商品名Polon MF−13)をホウ素化合物粒子の全体量に対して30重量%となるように添加した。更に、ホウ素化合物粒子の分散安定剤としてのステアリン酸亜鉛をまず、温水と中性洗剤のアルキルベンゼンスルフォン酸ナトリウムとにより乳化し、それをホウ素化合物粒子の全体重量に対して0.1重量%となるように添加した。その結果、ホウ素化合物防炎耐熱性混合溶液を得ることができ、pHは7.2であった。このホウ素化合物防炎耐熱性混合溶液を15分間静置しておいても分離沈降は見られず安定であった。
(#3試料の作成)パルプ60%、ポリエステル繊維40%の壁紙に1m当たり100gになる量のホウ素化合物防炎耐熱性混合溶液を塗布した後、乾燥を待って、上記記載の施工手段に基づき作製し、#3試料不燃壁装材料を得た。なを、比較対照のためにパルプ60%、ポリエステル繊維40%の未処理の壁紙を上記記載の施工手段に基づき作製し、#3試料比較不燃壁装材料を得た。試験結果は表1に記載。
【実施例4】
【0042】
防炎耐熱性薬剤として、ホウ素化合物の水溶液を調合した。まず、容量1000mlのビーカーに沸騰水600gを入れてホットスターラーで温度指定100℃、回転数800rpmで撹拌しながら、ホウ酸(和光純薬社製)200gをゆっくりと入れ、しばらく撹拌を継続していると濁りのない溶液になった。さらに撹拌を継続しながらこの溶液中に今度は、四ホウ酸ナトリウム(和光純薬社製)200gをゆっくり添加し、さらに撹拌を継続したところ清澄な溶液が得られた。この状態で添加したホウ酸と四ホウ酸ナトリウムが完全に溶解しホウ素化合物粒子含有量40%のホウ素化合物を得た。この溶液を20℃程度になるまで室温で放置した後、再度撹拌しながら、架橋結合性バインダーとしてのアクリル酸エステル共重合体(昭和高分子社製 商品名ポリゾールAM−961)をホウ素化合物粒子の全体量に対して30重量%となるように添加した。更に、ホウ素化合物粒子の分散安定剤としてのラウリル硫酸エステルを、まず、水にて溶解し、それをホウ素化合物粒子の全体重量に対して0.1重量%になるように添加した。その結果、ホウ素化合物防炎耐熱性混合溶液を得ることができ、そのpHは6.9であった。このホウ素化合物防炎耐熱性混合溶液を15分間静置しておいても分離沈降は見られず安定であった。
(#4試料の作成)厚みが0.2mmの檜の突き板に1m当たり100gになる量のホウ素化合物防炎耐熱性混合溶液を塗布した後、乾燥を待って、上記記載の施工手段に基づき作製し、#4試料不燃壁装材料を得た。なを、比較対照のために厚みが0.2mmの未処理の檜の突き板を上記記載の施工手段に基づき作製し、#4試料比較不燃壁装材料を得た。試験結果は表1に記載。
【実施例5】
【0043】
防炎耐熱性薬剤として、リン・チッソ系化合物(丸菱油化社製 商品名ノンネン600・有効成分40%)を回転数800rpmでホットスターラーにより撹拌している中へ、架橋結合性バインダーとしてのアクリル酸エステル共重合樹脂(昭和高分子社製 商品名ポリゾールAT−860)をリン・チッソ系化合物微粒子の全体量に対して30重量%となるように添加した。さらに、撹拌を継続しながらリン・チッソ系化合物微粒子の分散安定剤としてのステアリン酸亜鉛をまず、温水と中性洗剤のアルキルベンゼンスルフォン酸ナトリウムとにより乳化し、それをリン・チッソ系化合物微粒子の全体重量に対して0.1重量%となるように添加した。その結果、リン・チッソ系化合物防炎耐熱性混合溶液を得ることができ、pHは6.2であった。このリン・チッソ系化合物防炎耐熱性混合溶液を15分間静置しておいても分離沈降は見られず安定であった。
(#5試料の作成)パルプ60%、ポリエステル繊維40%の壁紙に1m当たり100gになる量のリン・チッソ系化合物防炎耐熱性混合溶液を塗布した後、乾燥を待って、上記記載の施工手段に基づき作製し、#5試料不燃壁装材料を得た。なを、比較対照のためにパルプ60%、ポリエステル繊維40%の未処理の壁紙を上記記載の施工手段に基づき作製し、#5試料比較不燃壁装材料を得た。試験結果は表1に記載。
【実施例6】
【0044】
防炎耐熱性薬剤として、リン・チッソ系化合物(丸菱油化社製 商品名ノンネンPN−1・有効成分42%)を回転数800rpmでホットスターラーにて撹拌している中へ、架橋結合性バインダーとしてのアクリル酸エステル共重合樹脂(昭和高分子社製 商品名ポリゾールAT−860)をリン・チッソ系化合物微粒子の全体量に対して30重量%となるように添加した。さらに、撹拌を継続しながらリン・チッソ系化合物微粒子の分散安定剤としてのラウリル硫酸エステルを、まず、水にて溶解し、それをホウ素化合物粒子の全体重量に対して0.1重量%になるように添加した。その結果、リン・チッソ系化合物防炎耐熱性混合溶液を得ることができ、そのpHは7.3であり、このリン・チッソ系化合物防炎耐熱性混合溶液を15分間静置しておいても分離沈降は見られず安定であった。
(#6試料の作成)厚みが0.2mmの檜の突き板に1m当たり100gになる量のリン・チッソ系化合物防炎耐熱性混合溶液を塗布した後、乾燥を待って、上記記載の施工手段に基づき作製し、#6試料不燃壁装材料を得た。なを、比較対照のために厚みが0.2mmの未処理の檜の突き板を上記記載の施工手段に基づき作製し、#6試料比較不燃壁装材料を得た。試験結果は表1に記載。
【実施例7】
【0045】
防炎耐熱性薬剤として、リン・チッソ・ホウ素化合物の水溶液を調合した。まず、容量1000mlのビーカーに沸騰水200gを入れてホットスターラーで温度指定100℃、回転数800rpmで撹拌しながら、ホウ酸(和光純薬社製)150gをゆっくりと入れ、しばらく撹拌を継続していると濁りのない溶液になった。さらに撹拌を継続しながらこの溶液中に今度は、四ホウ酸ナトリウム(和光純薬社製)150gをゆっくり添加し、さらに撹拌を継続したところ清澄な溶液が得られた。この状態で添加したホウ酸と四ホウ酸ナトリウムが完全に溶解しホウ素化合物粒子含有量60%のホウ素化合物を得た。この溶液を20℃程度になるまで室温で放置した。20℃になったところで再度撹拌を開始し、その中へ、別に計り置いたリン・チッソ系化合物(丸菱油化社製 商品名ノンネン600・有効成分40%)500gをゆっくりと加えて1000gのリン・チッソ・ホウ素化合物の混合水溶液を得た。この混合水溶液の防炎耐熱性粒子の含有量は50%であり、pHは6.4であった。更に撹拌を継続しながら架橋結合性バインダーとしてのアクリル酸エステル共重合体(昭和高分子社製 商品名ポリゾールAM−961)をリン・チッソ・ホウ素化合物粒子の全体量に対して30重量%となるように添加した。更に、リン・チッソ・ホウ素化合物粒子の分散安定剤としてのラウリル硫酸エステルを、まず、水にて溶解し、それをリン・チッソ・ホウ素化合物粒子の全体重量に対して0.1重量%になるように添加した。その結果、リン・チッソ・ホウ素化合物防炎耐熱性混合溶液を得ることができ、そのpHは6.6になっていた。このリン・チッソ・ホウ素化合物防炎耐熱性混合溶液を15分間静置しておいても分離沈降は見られず安定であった。
(#7試料の作成)パルプ60%、ポリエステル繊維40%の壁紙に1m当たり100gになる量のリン・チッソ・ホウ素化合物防炎耐熱性混合溶液を塗布した後、乾燥を待って、上記記載の施工手段に基づき作製し、#7試料不燃壁装材料を得た。なを、比較対照のためにパルプ60%、ポリエステル繊維40%の未処理の壁紙を上記記載の施工手段に基づき作製し、#7試料比較不燃壁装材料を得た。試験結果は表1に記載。
【実施例8】
【0046】
防炎耐熱性薬剤として、リン・チッソ・ホウ素化合物の水溶液を調合した。まず、容量1000mlのビーカーに沸騰水200gを入れてホットスターラーで温度指定100℃、回転数800rpmで撹拌しながら、ホウ酸(和光純薬社製)150gをゆっくりと入れ、しばらく撹拌を継続していると濁りのない溶液になった。さらに撹拌を継続しながらこの溶液中に今度は、四ホウ酸ナトリウム(和光純薬社製)150gをゆっくり添加し、さらに撹拌を継続したところ清澄な溶液が得られた。この状態で添加したホウ酸と四ホウ酸ナトリウムが完全に溶解しホウ素化合物粒子含有量60%のホウ素化合物を得た。この溶液を20℃程度になるまで室温で放置した。20℃になったところで再度撹拌を開始し、その中へ、別に計り置いたリン・チッソ系化合物(丸菱油化社製 商品名ノンネンPN−1・有効成分42%)500gをゆっくりと加えて1000gのリン・チッソ・ホウ素化合物の混合水溶液を得た。この混合水溶液の防炎耐熱性粒子の含有量は51%であり、pHは7.3であった。更に撹拌を継続しながら架橋結合性バインダーとしてのアクリル酸エステル共重合樹脂(昭和高分子社製 商品名ポリゾールAT−860)をリン・チッソ・ホウ素化合物微粒子の全体量に対して30重量%となるように添加した。更に、リン・チッソ・ホウ素化合物粒子の分散安定剤としてのステアリン酸亜鉛をまず、温水と中性洗剤のアルキルベンゼンスルフォン酸ナトリウムとにより乳化し、それをリン・チッソ・ホウ素化合物微粒子の全体量に対して0.1重量%となるように添加した。その結果、リン・チッソ・ホウ素化合物防炎耐熱性混合溶液を得ることができ、pHは7.2であった。このリン・チッソ・ホウ素化合物防炎耐熱性混合溶液を15分間静置しておいても分離沈降は見られず安定であった。
(#8試料の作成)厚みが0.2mmの檜の突き板に1m当たり100gになる量のリン・チッソ・ホウ素化合物防炎耐熱性混合溶液を塗布した後、乾燥を待って、上記記載の施工手段に基づき作製し、#8試料不燃壁装材料を得た。なを、比較対照のために厚みが0.2mmの未処理の檜の突き板を上記記載の施工手段に基づき作製し、#8試料比較不燃壁装材料を得た。試験結果は表1に記載。
(比較例1)
【0047】
比較例1では、分散安定剤を省略して防炎耐熱性混合溶液を調製した。まず、実施例1と同様の方法、同一の条件で防炎耐熱性薬剤として、ケイ素化合物である二酸化ケイ素(和光純薬社製)粉末を20%分散液となるようにイオン交換水を加え3000rpmの回転数でミキサーにより10分間撹拌して分散させた。この時のpHは6.9であった。次に、この二酸化ケイ素水溶液を容量1000mlのビーカーに移して、500rpmの回転数でホットスターラーにて撹拌しながら、架橋結合性バインダーとして、フェニル基含有シリコーンレジン(信越化学製 商品名X−52−8148)を二酸化ケイ素の全体量に対して30重量%となるようにホットスターラーで撹拌しながら緩やかに加えた。この結果分散安定剤を含まない防炎耐熱性混合溶液を得た。この時のpHは6.8であった。この防炎耐熱性混合溶液を15分間静置しておいた結果、明らかな沈降現象が起きたため、再度ホットスターラーで撹拌を施したが停止すると、たちまち沈降し防炎耐熱性混合溶液としては採用できない状態になった。したがって、試料は作成しない。
(比較例2)
【0048】
比較例2では、分散安定剤を省略して防炎耐熱性混合溶液を調製した。まず、実施例3と同様の方法、同一の条件で防炎耐熱性薬剤として、ホウ素化合物の水溶液を調合した。まず、容量1000mlのビーカーに沸騰水700gを入れてホットスターラーで温度指定100℃、回転数800rpmで撹拌しながら、ホウ酸(和光純薬社製)150gをゆっくりと入れ、しばらく撹拌を継続していると濁りのない溶液になった。さらに撹拌を継続しながらこの溶液中に今度は、四ホウ酸ナトリウム(和光純薬社製)150gをゆっくり添加し、さらに撹拌を継続したところ清澄な溶液が得られた。この状態で添加したホウ酸と四ホウ酸ナトリウムが完全に溶解しホウ素化合物粒子含有量30%のホウ素化合物を得た。この溶液を20℃程度になるまで室温で放置した後、再度撹拌を始めてゆっくりと架橋結合性バインダーとしてのエポキシ基とポリエーテル基含有シリコーン(信越化学製 商品名Polon MF−13)をホウ素化合物粒子の全体量に対して30重量%となるように添加し防炎耐熱性混合溶液を得た。この時のpHは7.1であった。この結果、分散安定剤を含まない防炎耐熱性混合溶液を得た。ところが、得られた防炎耐熱性混合溶液はお粥状から徐々に硬くなり、豆腐のようなゲル状物となり防炎耐熱性混合溶液としては使用できなかった。したがって、試料は作成しない。
(比較例3)
【0049】
比較例3では、分散安定剤を省略して防炎耐熱性混合溶液を調製した。まず、実施例5と同様の方法、同一の条件で防炎耐熱性薬剤として、リン・チッソ系化合物(丸菱油化社製 商品名ノンネン600・有効成分40%)を回転数800rpmでホットスターラーにより撹拌している中へ、架橋結合性バインダーとしてのアクリル酸エステル共重合樹脂(昭和高分子社製 商品名ポリゾールAT−860)をリン・チッソ系化合物微粒子の全体量に対して30重量%となるように添加して分散安定剤を含まない防炎耐熱性混合溶液を得た。この時のpHは6.3であった。この防炎耐熱性混合溶液を15分間静置しておいたところ白色の凝集物が目視できるようになった。4時間後には完全に白色凝集物は分離沈降して使用できない状態になった。したがって、試料は作成しない。
(比較例4)
【0050】
比較例4では、分散安定剤を省略して防炎耐熱性混合溶液を調製した。まず、実施例7と同様の方法、同一の条件で防炎耐熱性薬剤として、リン・チッソ・ホウ素化合物の水溶液を調合した。まず、容量1000mlのビーカーに沸騰水200gを入れてホットスターラーで温度指定100℃、回転数800rpmで撹拌しながら、ホウ酸(和光純薬社製)150gをゆっくりと入れ、しばらく撹拌を継続していると濁りのない溶液になった。さらに撹拌を継続しながらこの溶液中に今度は、四ホウ酸ナトリウム(和光純薬社製)150gをゆっくり添加し、さらに撹拌を継続したところ清澄な溶液が得られた。この状態で添加したホウ酸と四ホウ酸ナトリウムが完全に溶解しホウ素化合物粒子含有量60%のホウ素化合物を得た。この溶液を20℃程度になるまで室温で放置した。20℃になったところで再度撹拌を開始し、その中へ、別に計り置いたリン・チッソ系化合物(丸菱油化社製 商品名ノンネン600・有効成分40%)500gをゆっくりと加えて1000gのリン・チッソ・ホウ素化合物の混合水溶液を得た。この混合水溶液の防炎耐熱性粒子の含有量は50%であり、pHは6.4であった。更に撹拌を継続しながら架橋結合性バインダーとしてのアクリル酸エステル共重合体(昭和高分子社製 商品名ポリゾールAM−961)をリン・チッソ・ホウ素化合物粒子の全体量に対して30重量%となるように添加した。このようにして分散安定剤を含まない防炎耐熱性混合溶液を得た。この時のpHは7.1であった。ところが、得られた防炎耐熱性混合溶液はお粥状から徐々に硬くなり、豆腐のようなゲル状物となり防炎耐熱性混合溶液としては使用できなかった。したがって、試料は作成しない。
【0051】
実施例1、3、5、7においては、パルプ60%、ポリエステル繊維40%の防炎耐熱性壁装材料に壁紙を採用し、実施例2、4、6、8においては檜の突き板を採用して試料を作成した。これらの試料作成に用いた壁装材料は比較的多く使われている材料である。なを、比較例1〜4は、防炎耐熱性混合溶液に不具合があり試料の作成は行わなかった。
以下は、実施例の試験結果表である。(○印=合格 ×印=不合格 燃焼=炎の視認を意味する)
【0052】
【表1】

【0053】
上記実施例の試験結果表が示すように、実施例1〜2においては、#1〜#2試料比較不燃壁装材料の不合格は想定していたが、#1試料不燃壁装材料が10.8MJ/m、#2試料不燃壁装材料が12.3MJ/mであり、不燃性の規格値8MJ/m以下であることの規格外となり少なからず衝撃を受けた。これは発明が解決しようとする課題に記載しているように頭では分かっていたことなのである。原因は、防炎耐熱性薬剤としてのケイ素化合物からなる防炎耐熱性混合溶液の調合方法とともに、防炎耐熱性混合溶液を壁装材料に担持させた防炎耐熱性壁層材料を防火材料に貼り付けるときに用いる接着剤と、貼り付けてから仕上げに塗装する塗料の影響の大きさを示している。この結果から今後の対策として防炎耐熱性薬剤の含有量を増やす等、機能性の安全率を大きくする必要性を痛感した。実施例3〜8では、#3〜#8試料比較不燃壁装材料の不合格は想定通りであり#3試料不燃壁装材料〜#8試料不燃壁装材料の結果も不燃性の規格値8MJ/m以下であることを大きく下回って納得の結果となった。
【0054】
本発明は、防炎耐熱性薬剤とバインダーと分散安定剤からなる3種類の主要な組成物で構成されている。これは低コストで製造するための必要最小限の必需品である。よりコストダウンを図るために、比較例1〜比較例4では分散安定剤を含まず、防炎耐熱性薬剤とバインダーのみで防炎耐熱性混合溶液を調合した。その結果は、4例ともに分離、沈降、ゲル化など何らかの異常が発生して安定な溶液を作ることはできなかった。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上詳述したように本発明は、不燃壁装材料及びその製造方法に係わるものであり、本発明により、(1)防炎性と耐熱性のない紙、突き板、天然植物繊維、織物、編物、不織布、それらの組合せ、それらの積層体、それらの表面に貼付するフィルムなどからなる壁装材料に防炎耐熱性混合溶液を担持させて防炎耐熱性壁装材料に改質し、防火材料の表面に貼り付けることによる不燃壁装材料を製造し、提供することができる。(2)本発明の防炎耐熱性混合溶液あるいは不燃壁装材料は、低コストで製造でき、エネルギーを必要とせず、メンテナンスフリーである。(3)更に、防炎耐熱性混合溶液は、不燃壁装材料の製造だけに限らず、衣装、家具など様々な生活用品に応用でき、着衣着火や火災を抑制する作用効果を有しているため、これらの技術分野で種々の用途に利用することができる。(4)上記(1)〜(3)により、防炎耐熱性を有する新規防炎耐熱性混合溶液及びそれを用いた製品を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
国土交通大臣が定める不燃材料又は準不燃材料もしくはISO5660−1に基づいた発熱性試験で試験時間20分間の総発熱量が40MJ/m以下である防火材料の表面に貼り付ける壁装材料であって、
防炎性と耐熱性を有する防炎耐熱性薬剤と、架橋結合性を有するバインダーはシリコーン系又はアクリル酸系から選ばれる少なくとも1種の水溶性を有するポリマー又はエマルジョンと、分散安定剤とよりなる防炎耐熱性混合溶液を前記壁装材料に担持させた防炎耐熱性壁装材料を上記防火材料の表面に貼り付けることにより、上記発熱性試験で試験時間20分間の総発熱量が8MJ/m以下であることを特徴とする不燃壁装材料。
【請求項2】
前記国土交通大臣が定める不燃材料は、コンクリート、れんが、瓦、陶磁器質タイル、繊維強化セメント板、厚さが3ミリメートル以上のガラス繊維混入セメント板、厚さが5ミリメートル以上の繊維混入ケイ酸カルシウム板、鉄鋼、アルミニウム、金属板、ガラス、モルタル、しっくい、石、厚さが12ミリメートル以上のせつこうボード、ロックウール、ガラスウール板から選ばれる少なくとも1種の材料であり、前記国土交通大臣が定める準不燃材料は、厚さが9mm以上のせつこうボード、厚さが15mm以上の木毛セメント板、厚さが9mm以上の硬質木片セメント板、厚さが30mm以上の木片セメント板、厚さが6mm以上のパルプセメント板から選ばれる少なくとも1種の材料であり、防炎性と耐熱性を有する防炎耐熱性薬剤は、ケイ素化合物、ホウ素化合物、リン・チッソ系化合物、リン・チッソ・ホウ素系化合物から選ばれる少なくとも1種であり、分散安定剤は炭素数11〜18の脂肪酸の金属せっけん又は金属キレートである請求項1に記載の不燃壁装材料。
【請求項3】
前記防炎耐熱性混合溶液の水素イオン濃度(pH)は5〜9の範囲内である請求項1又は請求項2に記載の不燃壁装材料。
【請求項4】
前記防炎耐熱性混合溶液の防炎耐熱性薬剤は、壁装材料の重量の3〜300重量%の範囲内で壁装材料に担持される請求項1〜請求項3のいずれかに記載の不燃壁装材料。
【請求項5】
国土交通大臣が定める不燃材料又は準不燃材料もしくはISO5660−1に基づいた発熱性試験で試験時間20分間の総発熱量が40MJ/m以下である防火材料の表面に貼り付ける壁装材料の製造方法であって、
防炎性と耐熱性を有する防炎耐熱性薬剤と、架橋結合性を有するバインダーはシリコーン系又はアクリル酸系から選ばれる少なくとも1種の水溶性を有するポリマー又はエマルジョンと、分散安定剤とよりなる防炎耐熱性混合溶液の水素イオン濃度(pH)を5〜9に調整した後、その防炎耐熱性混合溶液の防炎耐熱性薬剤は前記壁装材料の重量の3〜300重量%の範囲内で前記壁装材料に担持させた防炎耐熱性壁装材料を上記防火材料の表面に貼り付けることにより、上記発熱性試験で試験時間20分間の総発熱量が8MJ/m以下であることを特徴とする不燃壁装材料の製造方法。

【公開番号】特開2010−196247(P2010−196247A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−38738(P2009−38738)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(598163857)有限会社総合技研 (10)
【Fターム(参考)】