説明

不燃性基材

【課題】 軽量で、不燃性能を有する基材を得る。
【解決手段】 ロックウール8重量部、ガラス繊維4重量部、水酸化アルミニウム65重量部、シラスバルーン20重量部、アクリルエマルジョン3重量部を懸濁して水性スラリーを得、これに紙力増強剤・高分子凝集剤を添加、抄造を行った後、脱水・加熱乾燥を行う。次いで、表裏両面にアクリルエマルジョンを塗布し、乾燥後、温度140℃、圧力30kg/cm、時間15分間にて熱圧成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は不燃性基材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、不燃性を有し、切断、釘打ちなどの加工性に優れる石膏系、珪酸カルシウム系、セメント系の水硬性の無機不燃基材や、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムなどを主成分とする水硬性の無機不燃基材が広く使用されている。
【0003】
更に、これらの他、ロックウールを主成分とする表層と発泡無機物よりなる中間層とをそれぞれスラリーで堆積し、脱水乾燥、熱圧成型した不燃性の複合基材や、表層と中間層とを発泡無機粉体で堆積するもの、あるいはガラス繊維を散布して複数層を構成した後、熱圧成型したものがある。
【特許文献1】特開2006−336159号公報
【特許文献2】特開2000−15719号公報
【特許文献3】特開平11−79859号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、水硬性の無機不燃基材は製造する際に注型、または圧締時間の制約で、厚みを薄くすることは極めて困難であった。
【0005】
また、ロックウールを主成分とする表層と発泡無機物よりなる中間層とを用いる方法は湿式抄造方法に類する方法であるため、厚みを薄くすることは容易であり大量生産には対応できるものの多品種少量生産には不向きであり、配合原料にスラリーの安定に適した比重制限があり、スラリーに使用する水処理にも制約があるなど製造するのにかなりの技術を要するものとなっていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はかかる状況に鑑み検討されたもので、スラリーを湿式抄造したシートを熱圧成形して得られる不燃基材であって、前記スラリー中には、(a)無機繊維と、(b)含水無機充填材と、(c)軽量骨材と、(d)樹脂エマルジョンを必須成分として含み、前記シートを熱圧成形する際には、表裏に樹脂エマルジョンが塗布・乾燥されてなることを特徴とする不燃性基材である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、軽量で高強度、しかも不燃性の基材が得られ、ホルムアルデヒドが放散されることがない。また、有機樹脂を含んでいるため、無機不燃基材に比べてカット時の不良が少ない。
以下、本発明について詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明で混抄に用いる(a)無機繊維としては、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、ロックウール、ワレストナイト及びセピオライト等の繊維が挙げられる。これらの無機繊維の混抄は基材の加湿時の剛性を向上させ、不燃性を向上させることにもなる。中でもロックウールやガラス繊維或いはこれらの併用が好ましい。無機繊維の形状は、径1〜30μm、長さ0.1〜20mmのものが好ましい。(a)成分の必須成分(a+b+c+d)中に占める割合(配合割合)は5〜25重量%とするのが好ましい。(a)成分が少なくなると不燃基材としての曲げ強度が劣りやすく、多くなると剛性が劣りやすくなる。
【0009】
(b)含水無機充填材としては、平均粒子径1〜300μm程度の水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、二水石膏が好適に用いられ、これらは高温時に分解し、吸熱、結合水を放出するため不燃性の効果の点で最適である。(b)成分の必須成分(a+b+c+d)中に占める割合(配合割合)は50〜80重量%とするのが望ましく、(b)成分が少ないと不燃性能が劣りやすく、多いと比重の増加を招く。
【0010】
本発明に用いられる(c)軽量骨材は比重を小さくして軽量化を図る目的で用いるもので、具体的にはパーライト、バーミキュライト、シラスバルーン、ガラスバルーン、フライアッシュバルーン等の微細中空微粒子が軽量化の面から好ましく、単独または複数種を併用して用いることができる。(c)軽量骨材の選定は、成型圧力、成板後の厚み、密度により粒径分布、嵩比重は適宜選定する。(c)軽量骨材の平均粒子径は1〜1000μmが好ましく、下限に満たないと、充分な軽量化の効果が得られず、上限を超えると基材が不均一なものとなる。(c)成分の必須成分(a+b+c+d)中に占める割合(配合割合)は10〜30重量%とするのが望ましく、下限未満の場合は目的とする軽量性が得られず、上限を越える場合は曲げ強度が劣りやすく好ましくない。
【0011】
(b)+(c)の配合割合は(a+b+c+d)の必須成分中73〜91重量%、(b):(c)の配合割合を重量比で1:0.13〜0.58とすると本発明の不燃性を有し、軽量な不燃性基材を得ることができる。
【0012】
本発明に用いられるバインダー成分として機能する(d)樹脂エマルジョンとしては、アクリル系エマルジョン、酢ビ系エマルジョン、合成ゴム系エマルジョンより選ばれる1種もしくは2種以上の樹脂エマルジョンの混合液などが挙げられる。耐光性の点からはアクリル系エマルジョンが好ましい。アクリル系樹脂はガラス転移点が常温〜100℃で、常温以上の温度域で柔軟性を有するメチルアクリレート、メチルメタアクリレートとアルキルアクリレートとの共重合体からなるアクリル系樹脂が該当し、固形分20重量%以上含有の水性エマルジョンタイプのものが使用できる。必須成分(a+b+c+d)中に占める(d)の割合(配合割合)は固形分で1〜5重量%の範囲の配合割合とするのが好ましく、(d)成分が少ないとバインダー成分が少なくなるため、不燃性基材としての強度が劣りやすくなり、多いと不燃性能が低下しやすくなる。
【0013】
本発明の不燃基材は、前記(a)〜(d)を必須成分とする混合物を水中に懸濁して水性スラリーを得、紙力増強剤・高分子凝集剤を添加し、湿式抄造した後に表裏に樹脂エマルジョン、特にアクリルエマルジョンを塗布・乾燥して、熱圧成形すると強度が向上したものとなる。樹脂エマルジョンは前記と同様のものが使用できる。熱圧条件は、温度120〜150℃、圧力10〜50kg/cm、時間5〜30分とする。
【実施例1】
【0014】
水800mlに対し、前記必須成分(a)〜(d)(ロックウール:径7μm以下、8重量部、ガラス繊維:径13.5μm×長さ6mm、4重量部、水酸化アルミニウム:平均粒子径15〜25μm、65重量部、シラスバルーン:平均粒子径35〜45μm、20重量部、アクリルエマルジョン:ガラス転移温度50℃、3重量部)を懸濁して水性スラリーを得た。これに紙力増強剤・高分子凝集剤を添加、抄造を行った後、脱水・加熱乾燥を行った。得られた基材に対して、表裏両面にアクリルエマルジョンの塗工を行った。塗布に使用したエマルジョンは固形分25%、片面当たり300g/mの塗工を行った。乾燥後、温度140℃、圧力30kg/cm、時間15分間にて熱圧成形を行い、目的の不燃基材を得た。
【実施例2】
【0015】
表1に示す配合にて実施例1と同様に製造した。
【実施例3】
【0016】
表1に示す配合にて実施例1と同様に製造した。
【実施例4】
【0017】
表1に示す配合にて実施例1と同様に製造した。
【実施例5】
【0018】
表1に示す配合にて実施例1と同様に製造した。
【実施例6】
【0019】
表1に示す配合にて実施例1と同様に製造した。
【実施例7】
【0020】
表1に示す配合にて実施例1と同様に製造した。
【実施例8】
【0021】
表1に示す配合にて実施例1と同様に製造した。
【実施例9】
【0022】
表1に示す配合にて実施例1と同様に製造した。
【実施例10】
【0023】
表1に示す配合にて実施例1と同様に製造した。
【実施例11】
【0024】
表1に示す配合にて実施例1と同様に製造した。
実施例11のパーライトは、ハットリ株式会社の服部パーライトN−3号(粒度1.20mmの篩通過重量100%)を用いた。
【実施例12】
【0025】
表1に示す配合にて実施例1と同様に製造した。
実施例12のフライアッシュは、巴工業株式会社のセノライトSA(平均粒子径85.06μm)を用いた。
【0026】
比較例1
表1に示す配合にて実施例1と同様に製造した。
比較例1の炭酸カルシウムは丸尾カルシウム株式会社の重炭N−35(平均粒子径17μmを用いた。
【0027】
比較例2
表1に示す配合にて実施例1と同様に製造した。
【0028】
【表1】

配合割合の数値は固形分値である。
【0029】
試験方法は以下の通りとした。
曲げ強さ[MPa]:JIS K 6902;1998(熱硬化性樹脂高圧化粧板試験方法)に基づいて測定した。
弾性率[GPa]:JIS K 6902;1998(熱硬化性樹脂高圧化粧板試験方法)に基づいて測定した。
総発熱量[MJ/m]:不燃性:ISO5660に準拠したコーンカロリーメーターによる20分試験の発熱性試験により測定した。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラリーを湿式抄造したシートを熱圧成形して得られる不燃基材であって、前記スラリー中には、(a)無機繊維と、(b)含水無機充填材と、(c)軽量骨材と、(d)樹脂エマルジョンを必須成分として含み、前記シートを熱圧成形する際には、表裏に樹脂エマルジョンが塗布・乾燥されてなることを特徴とする不燃性基材。


【公開番号】特開2012−207312(P2012−207312A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71259(P2011−71259)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【Fターム(参考)】