説明

不燃遮断熱材及び不燃遮断熱材評価装置

【課題】不燃性が不十分である。評価装置は光量を変化した測定ができない。
【解決手段】シラスバルーン(A)、雲母(B)、珪藻土(C)及びバインダー樹脂(D)を含有した塗料3を発泡プラスチック材2に塗布した不燃遮断熱材1である。塗料1は、造膜助剤(E)を含有することが好ましい。更に、塗料1は、増粘剤(F)を含有することが好ましい。発泡プラスチック材2は、ポリスチレンを主要材料とすることが好ましい。評価装置には、光量を変化させるボリュームを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物又は建造物等に使用する不燃遮断熱材及び不燃遮断熱材評価装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物又は建造物の屋根及び外壁への塗装用に好適な遮熱塗料組成物に関する発明として特開2006−45447号公報(特許文献1)が存在する。特許文献1には、中空球状又は鱗片状の低熱伝導体(シラス、雲母等)、構造助剤及びシランカップリング剤を含有することを特徴とする遮熱塗料組成物が記載されている。
【0003】
一方、特開2005−24252号公報(特許文献2)には試験用遮熱塗膜を、いかなる場所においても迅速かつ需要者に対して直感的に判り易く展示することができる遮熱塗膜の評価装置が記載されている。特許文献2によると、持ち運び可能な箱型ケースであって、蓋部を略90度開き、蓋部最上部から水平に伸びる腕部に光源を保持し、水平に載置した遮熱塗膜塗装板を照射し、塗装板の裏側に取付けた温度センサと、これに接続した温度表示装置により、温度上昇及び飽和温度を測定することを特徴とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−45447号公報
【特許文献2】特開2005−24252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1による遮熱塗料組成物の塗布式断熱材では、不燃性が不十分であるという問題がある。また、特許文献2による遮熱塗膜の評価装置では、光源からの光量が一定であるため、光量を変化した測定ができないという問題があった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、不燃性に優れた塗料を塗布した不燃遮断熱材を提供することにある。更に、本発明の解決しようとする課題は、光源からの光量を可変とする不燃遮断熱材評価装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための不燃遮断熱材に関する発明は、セラミック、ガラス、磁器、陶器、コンクリート、金属、ダンボール等の紙類、合板、木材、プラスチックスのうちいずれか一又は複数の複合体からなる基材に、シラスバルーン(A)、雲母(B)、珪藻土(C)及びバインダー樹脂(D)を含有した塗料を塗布したことを特徴とする不燃遮断熱材である。
また前記基材は、板状の発泡プラスチック材であることを特徴とする不燃遮断熱材である。
更に、前記発泡プラスチック材は、ポリスチレンを主要材料とすることを特徴とする不燃遮断熱材である。
【0008】
本発明に関する基材に塗布する塗料は、造膜助剤(E)を含有してなることが好ましい。また、造膜助剤(E)が、(ポリ)エチレングリコールアルキルエーテル、(ポリ)エチレングリコールアルキルエーテルカルボン酸エステル、(ポリ)プロピレングリコールアルキルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールフェニルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールアルキルエーテルカルボン酸エステル及びカルボン酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0009】
本発明に関する基材に塗布する塗料は、シラスバルーン(A)、雲母(B)、珪藻土(C)及びバインダー樹脂(D)の重量に基づいて、シラスバルーン(A)の含有量が10〜30重量%、雲母(B)の含有量が0.5〜3重量%、珪藻土(C)の含有量が10〜40重量%、バインダー樹脂(D)の含有量が30〜70重量%であることが好ましい。また、造膜助剤(E)の含有量が、シラスバルーン(A)、雲母(B)、珪藻土(C)及びバインダー樹脂(D)の重量に基づいて、2〜30重量%であることが好ましい。更にまた、増粘剤(F)として、プライマル2020を添加することが好ましい。
【0010】
また、上記課題を解決するための不燃遮断熱材評価装置に関する発明は、一対の試料載置台と、伸縮自在の支柱に支持され、前記試料載置台から所定の距離隔てた一対の熱源と、前記一対の熱源の熱量を電気的に変化させる一対のボリュームと、前記一対の試料載置台に載置された試料の裏面の温度を検出する1対の温度センサと、前記温度センサの検出した試料の温度を表示する1対の表示部とからなり、これらをケースに収納可能としたことを特徴とする不燃遮断熱材評価装置である。
【発明の効果】
【0011】
上記構成を有する本発明の不燃遮断熱材によれば、不燃性に優れた不燃遮断熱材を達成することができる。即ち、建物等の内壁及び外壁、屋根等に設置すれば、炎の建物内部への進入を効率的に遮断することができる。更に、不燃性に優れるため、火災の発生を防止できるだけでなく、隣家の火災による延焼等も効率的に防ぐことができる。
【0012】
更に、上記構成を有する本発明の不燃遮断熱材評価装置によれば、光源からの光量を可変とする不燃遮断熱材評価装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施の形態に関する不燃遮断熱材1を示す断面図である。
【図2】第1の実施の形態に関する不燃遮断熱材1を建屋4の断熱部材として適用した事例を示す説明図である。
【図3】第2の実施の形態に関する不燃遮断熱材21を示す断面図である。
【図4】第2の実施の形態に関する不燃遮断熱材21の製造方法を示す説明図である。
【図5】不燃遮断熱材評価装置100の外観図である。
【図6】不燃遮断熱材評価装置100の熱源カバー41の支持構造を示す説明図である。
【図7】不燃遮断熱材評価装置100の温度センサ37の支持構造を示す説明図である。
【図8】不燃遮断熱材評価装置100の感熱板55とテストピース33の接触状態を示す説明図である。
【図9】不燃遮断熱材評価装置100に関する回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(不燃遮断熱材の発明に関する第1の実施の形態)
以下、本発明の第1の実施の形態に関する不燃遮断熱材について説明する。不燃遮断熱材の基材に塗布する塗料については、本特許出願人により別途、特願2010−204991(発明の名称「塗料」)によって特許出願中である。第1の実施の形態に関する不燃遮断熱材の基材に塗布する塗料は、シラスバルーン(A)、雲母(B)、珪藻土(C)及びバインダー樹脂(D)を含有したことを特徴とする。
【0015】
本発明において、不燃とは、建築資材の耐火防火性能を表す際に用いられる不燃を意味し、更に、準不燃、難燃を含む燃えにくいこと一般を意味する。また、断熱とは熱エネルギーの移動を遮断することを意味する。更に、遮熱とは太陽光などの光エネルギーを反射することを意味する。従って、本発明に関する不燃遮断熱材とは、不燃、断熱及び遮熱という性質を兼ね備えたものである。
【0016】
以下基材に塗布する塗料について説明する。シラスバルーン(A)とは、火山灰(主に九州シラス台地から産出するシラス)を原料とした0.1mm以下の微細な中空ガラス球を意味する。
シラスバルーン(A)の重量平均粒子径(μm)は、14〜300が好ましく、最も好ましくは60〜70である。この範囲であると、不燃性がさらに良好となる。
【0017】
シラスバルーン(A)は、市場から容易に入手でき、たとえば、ウインライト(株式会社アクシーズの登録商標)MSB−301、MSB−3011、MSB−5011、MSB−5021、SC−50(株式会社アクシーズケミカル)等が挙げられる。
【0018】
雲母(B)としては、黒雲母、白雲母、金雲母等が挙げられる。雲母(B)は複数種類の雲母の混合体でも良いが、白雲母を含むことが好ましく、特に好ましくは白雲母だけからなることである。
【0019】
雲母(B)の体積平均粒子径(μm)は、1〜60が好ましく、最も好ましくは5〜25である。この範囲であると不燃性がさらに良好となる。
【0020】
雲母(B)は、市場から容易に入手でき、たとえば、マイカ100MESH(株式会社東京興業貿易商会):Aシリーズ、グローバルバリューシリーズ、Bシリーズ、Cシリーズ、Yシリーズ、SAシリーズ、FKシリーズ、CTシリーズ(株式会社山口雲母工業所)等が挙げられる。
【0021】
珪藻土(C)とは、珪藻(藻類の一種)の殻の化石が堆積したものであり、二酸化ケイ素を主成分とするものを意味する。
【0022】
珪藻土(C)の体積平均粒子径(μm)は、0.5〜200が好ましく、最も好ましくは5〜25である。この範囲であると不燃性がさらに良好となる。
【0023】
珪藻土(C)は、市場から容易に入手でき、たとえば、ダイアフィル(DiaFil)シリーズ(株式会社東京興業貿易商会)等が挙げられる。
【0024】
バインダー樹脂(D)としては、アクリル樹脂およびウレタン樹脂等が含まれる。アクリル樹脂としては、公知のアクリル樹脂エマルション等が使用でき、
【0025】
ウレタン樹脂としては、公知のウレタン樹脂エマルション等が使用できる。
【0026】
バインダー樹脂(D)として樹脂エマルションを用いる場合、バインダー樹脂(D)の含有量(重量%)はバインダー樹脂及び溶剤(水等)の重量に基づいて、20〜65が好ましく、特に好ましくは45〜55である。
【0027】
バインダー樹脂(D)は、市場から容易に入手でき、たとえば、プライマル(ロームエンド ハースコムパニーの登録商標)JP−120S、同2949、同AS−300等(ローム・アンド・ハース・ジャパン株式会社製アクリル樹脂エマルション)等が挙げられる。
【0028】
シラスバルーン(A)の含有量(重量%)は、シラスバルーン(A)、雲母(B)、珪藻土(C)及びバインダー樹脂(D)の重量に基づいて、10〜30が好ましく、特に好ましくは14〜25である。
【0029】
雲母(B)の含有量(重量%)は、シラスバルーン(A)、雲母(B)、珪藻土(C)及びバインダー樹脂(D)の重量に基づいて、0.5〜3が好ましく、特に好ましくは1〜1.5である。
【0030】
珪藻土(C)の含有量(重量%)は、シラスバルーン(A)、雲母(B)、珪藻土(C)及びバインダー樹脂(D)の重量に基づいて、10〜40が好ましく、特に好ましくは20〜30である。
【0031】
バインダー樹脂(D)の含有量(重量%)は、シラスバルーン(A)、雲母(B)、珪藻土(C)及びバインダー樹脂(D)の重量に基づいて、30〜70が好ましく、特に好ましくは45〜55である。これらの範囲であると、不燃性がさらに良好となる。
【0032】
本実施の形態に関する不燃遮断熱材の基材に塗布する塗料には、さらに造膜助剤(E)を含有することが好ましい。造膜助剤を含有すると不燃性がさらに良好となる。これは、シラスバルーン(A)、雲母(B)及び珪藻土(C)が沈降等により偏在することを防止する機能を有するからであると考えられる。また、バインダー樹脂(D)として樹脂エマルションを用いる場合、造膜助剤(E)は大部分の水が蒸発した後も塗膜中に残って、エマルション粒子同士の融合を促進させる機能を有し、さらに、シラスバルーン(A)、雲母(B)及び珪藻土(C)が沈降等により偏在することを防止する機能を有すると考えられる。
【0033】
造膜助剤(E)としては、沸点が少なくとも100℃の有機化合物が含まれ、(ポリ)エチレングリコールアルキルエーテル等が使用できる。
【0034】
造膜助剤(E)を含有する場合、造膜助剤(E)の含有量(重量%)は、シラスバルーン(A)、雲母(B)、珪藻土(C)及びバインダー樹脂(D)の重量に基づいて、20〜30が好ましく、特に好ましくは8〜15である。この範囲であると、不燃性がさらに良好となる。
【0035】
バインダー樹脂(D)として樹脂エマルションを用いることが好ましく、バインダー樹脂(D)として樹脂エマルションを用いた場合、本発明の不燃遮断熱材の基材に塗布する塗料に含有する水は、バインダー樹脂(B)として用いた樹脂エマルションに含まれる水以外に、さらに水を含有させてもよい。本発明の不燃遮断熱材の基材に塗布する塗料に含有する水の含有量(重量%)は、シラスバルーン(A)、雲母(B)、珪藻土(C)及びバインダー樹脂(D)の重量に基づいて、30〜170が好ましく、特に好ましくは50〜70である。この範囲であると、不燃性がさらに良好となる。
【0036】
本発明の不燃遮断熱材の基材に塗布する塗料には、塗料としての各種機能を付与させるために、さらにその他の添加剤{顔料、染料、消泡剤、レベリング剤、粘弾性調整剤(増粘剤及び減粘剤等)、分散剤、防かび剤、防腐剤、紫外線吸収剤、沈降防止剤、防錆剤、つや消し剤及び酸化防止剤等}を含有させてもよい。
【0037】
本発明の不燃遮断熱材の基材に塗布する塗料は、シラスバルーン(A)、雲母(B)、珪藻土(C)及びバインダー樹脂(D)、並びに必要により、造膜助剤(E)、水及び/又はその他の添加剤を均一混合することにより容易に得られる。均一混合の方法は、公知の塗料を得る方法と同様である。
【0038】
本発明の不燃遮断熱材の基材に塗布する塗料は、セラミック、ガラス、磁器、陶器、コンクリート、金属、ダンボール等の紙類、合板、木材、プラスチックス及びこれらの複合体等に適用でき、建築用の折板、トタン板、瓦棒、スレートACL板、コンクリート及びカラーベスト等や産業用のダクト配管、サイロ、貯蔵タンク、制御盤、配電盤、コンテナ、保冷車、冷凍車及びその他熱が発生する装置(洗浄機等)等に好適である。塗装に際しては、基材に直接塗装することもできるし、何らかの表面処理(シーラー、サーフェーサー又はフィラー等による下地処理等)を施した上に塗装することができる。
【0039】
塗装方法としては、ハケ塗り、スプレー塗装、ローラー塗装、ロールコーター、フローコーター塗装、浸漬塗装及びプレコート塗装等が適用できる。塗装した塗膜は、自然乾燥又は低温度(およそ100℃以下)で強制乾燥させることができる。
【0040】
<塗料としての実施例>
シラスバルーン(A)(ウィンライトMSB−5011、株式会社アクシーズケミカル、平均粒子径70μm)19重量部、雲母(B)(100MESH、株式会社東京興業貿易商会)1.5重量部、珪藻土(C)(ダイアフィルD110、株式会社東京興業貿易商会)27重量部及びバインダー樹脂(D)(プライマルJP−120S、ローム・アンド・ハース・ジャパン株式会社、アクリル・シリコンエマルション、固形分50重量%、最低造膜温度25℃、粒子径70nm)105重量部を均一混合して、評価塗料を得た。
【0041】
床下地用合板(50cm×50cm×15mm)の裏表両面に、評価塗料を乾燥厚で0.4mmになるように重ね塗りし(はけ塗り)、約25℃で2日間乾燥して、評価用合板を得た。評価用合板を垂直に立て、評価用合板の重心とイワタニカセットガストーチバーナー(岩谷産業株式会社)のノズル先端との距離を約30cmとして、評価用合板の中央面にほぼ垂直に炎(火炎温度約1400℃)を3分間当て続けて、その間の状態を評価したところ、「評価用合板に引火しなかった」という結果を得た。
【0042】
<基材>
次に、第1の実施の形態に関する基材について説明する。基材は、合成樹脂材としての板状の発泡プラスチック材を用いるのが好ましい。ここで、発泡プラスチックとはポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン等の樹脂を発泡成分により所定の倍率に発泡させたものある。発泡プラスチック材は板状の断熱材としての用途が知られている。その材料は要求される断熱性能等から任意のものを選択できるが、断熱性能、燃焼時の安全性及び用途として板状である必要性の観点からポリスチレンを主要材料とするものが好ましい。
【0043】
図1は第1の実施の形態に関する不燃遮断熱材1を示す断面図である。不燃遮断熱材1は、基材としての板状の発泡プラスチック材2に塗料3が塗布されることにより形成される。発泡プラスチック材2は、その厚さは用途により種々あるが、強度を考慮すると例えば20mm〜30mmであることが好ましい。塗料3は、発泡プラスチック材2の片面に例えば厚さ2mm〜3mm塗布することにより形成される。塗料3を塗布する面は、熱源があると想定した面であるので、必要により両面に形成する。
【0044】
次に、第1の実施の形態に関する不燃遮断熱材1の製造方法について説明する。まず、基材としての発泡プラスチック材2は、例えば縦1800mm、横900mmのものを準備する。発泡プラスチック材2を表面又は裏面を上側にして水平に置く。そして、ヘラ又はスポンジローラを使用して塗料3を発泡プラスチック材2の上面に塗布する。発泡プラスチック材2の上面に均一に塗布した後、塗料3を温風乾燥させる。温風乾燥は20分〜30分間行う。こうして不燃遮断熱材1が完成する。必要により所定の寸法に裁断することができる。裁断は図示しない通常のカッターナイフで容易に行うことができる。
【0045】
図2は第1の実施の形態に関する不燃遮断熱材1を建屋4の断熱部材として適用した事例を示す説明図である。建屋4の屋根5の内側には、屋根用不燃遮断熱材1−1が配置される。屋根用不燃遮断熱材1−1は、図示はしないが、屋根5の野地板と瓦との間に配置してもよい。また、天井板6の屋根裏7側には、天井板用不燃遮断熱材1−2が配置される。更に、壁8の居室9側には、壁用不燃遮断熱材1−3が配置される。壁用不燃遮断熱材1−3は、図示はしないが、壁8の外側又は図示しない外壁と内壁の間に配置してもよい。更に、図示しない床には、床の上下又は中間に配置してもよい。屋根用不燃遮断熱材1−1、天井板用不燃遮断熱材1−2及び壁用不燃遮断熱材1−3は、発泡プラスチック材2の両面に前記塗料3を塗布した不燃遮断熱材1である。ただし、屋根用不燃遮断熱材1−1及び壁用不燃遮断熱材1−3は、外気の向きに片面だけ前記塗料3を塗布した不燃遮断熱材1でもよい。
【0046】
このように配置することにより、夏場において、太陽光による屋根5及び壁8からの放射エネルギーは、屋根用不燃遮断熱材1−1及び壁用不燃遮断熱材1−3によって熱遮断され、屋根裏7及び居室9の温度上昇が抑えられる。特に天井板6に天井板用不燃遮断熱材1−2を設ければ、屋根5からの放射エネルギーを居室9へ伝達するのを遮断することができる。同時に、室内を冷房している場合、居室9内の冷気は、壁用不燃遮断熱材1−3及び天井板用不燃遮断熱材1−2によって、外部へ伝達するのを遮断することができる。
【0047】
また、冬場において、屋根5及び壁8の外部からの冷気は、屋根用不燃遮断熱材1−1及び壁用不燃遮断熱材1−3によって熱遮断され、屋根裏7及び居室9の温度下降が抑えられる。特に天井板6に天井板用不燃遮断熱材1−2を設ければ、屋根5からの冷気を居室9へ伝達するのを遮断することができる。同時に、室内を暖房している場合、居室9内の暖気は、壁用不燃遮断熱材1−3及び天井板用不燃遮断熱材1−2によって、外部へ伝達するのを遮断することができる。
【0048】
前記第1の実施の形態に関する不燃遮断熱材1は、基材が板状の発泡プラスチック材2である場合を説明したが、これに限らない。基材としては、セラミック、ガラス、磁器、陶器、コンクリート、金属、ダンボール等の紙類、合板、木材、プラスチックスのうちいずれか一又は複数の複合体でもよい。
【0049】
以上第1の実施の形態によれば、不燃性に優れた不燃遮断熱材1を提供することができる。特に、建物等の内壁、外壁及び屋根5等に不燃遮断熱材1を配置すれば、炎の建物内部への進入を効率的に遮断することができる。不燃性に優れるため、火災の発生を防止できるだけでなく、隣家の火災による延焼等も効率的に防ぐことができる。
【0050】
(不燃遮断熱材の発明に関する第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態に関する不燃遮断熱材21について説明する。前記第1の実施の形態に関する不燃遮断熱材21は、基材が板状の発泡プラスチック材2であったが、第2の実施の形態に関する不燃遮断熱材21は、基材が可撓性を有する可撓性合成樹脂材22にシラスバルーン(A)、雲母(B)、珪藻土(C)及びバインダー樹脂(D)を含有した塗料3を塗布するものである。
【0051】
第2の実施の形態に関する不燃遮断熱材21の可撓性合成樹脂材22に塗布する塗料3については、第1の実施の形態に関する塗料3と同じであるので説明を省略する。第2の実施の形態に関する不燃遮断熱材21の可撓性合成樹脂材22は、可撓性を有する発泡プラスチック材(例えば発泡ポリエチレンシート)又は合成樹脂繊維からなる不織布(例えばスパンボンド不織布)である。
【0052】
図3は第2の実施の形態に関する不燃遮断熱材21を示す断面図である。不燃遮断熱材21は、可撓性を有する基材としての可撓性合成樹脂材22に塗料3が塗布されることにより形成される。合成樹脂材22は可撓性を有し、その厚さは用途により種々あるが、強度を考慮すると例えば2mm〜3mmであることが望ましい。塗料3は、可撓性を有する合成樹脂材22の片面に例えば厚さ2mm〜3mm塗布することにより形成される。塗料3を塗布する面は、熱源があると想定した面であるので、必要により両面に形成する。
【0053】
次に、第2の実施の形態に関する不燃遮断熱材21の製造方法について説明する。図4は第2の実施の形態に関する不燃遮断熱材21の製造方法を示す説明図である。長尺状に形成された可撓性合成樹脂材22は、送りロール24とスポンジロール25に挟持される。スポンジロール25は周囲をスポンジで形成され、上方には塗料3をスポンジロール25へ供給するノズル26が配置されている。従ってスポンジロール25は塗料3で満たされている。
【0054】
時計方向に回転する送りロール24と半時計方向に回転するスポンジロール25は所定の圧力で押圧されている。可撓性合成樹脂材22はその間を通過すると、スポンジロール25側の面に塗料3は塗布された状態で、不燃遮断熱材21は次工程へ送られる。次工程は、所定の温度に保たれた乾燥室27であり、不燃遮断熱材21を約1分間乾燥させる。その後、不燃遮断熱材21は巻取ロール21に巻き取られる。必要に応じて所定の長さに裁断される。
【0055】
以上、第2の実施の形態に関する不燃遮断熱材21の基材としての可撓性合成樹脂材22は、可撓性を有する発泡プラスチック材(例えば発泡ポリエチレンシート)又は合成樹脂繊維からなる不織布(例えばスパンボンド不織布)について説明したが、これに限らない。即ち、織物及び編物でもよい。以上第2の実施の形態によれば、不燃性に優れた可撓性ある不燃遮断熱材21を提供することができる。
【0056】
(第2の実施の形態の変形例)
次に、第2の実施の形態の変形例について説明する。第2の実施の形態に関する不燃遮断熱材21は、基材としての可撓性合成樹脂材22にシラスバルーン(A)、雲母(B)、珪藻土(C)及びバインダー樹脂(D)を含有した塗料3を塗布するものであったが、本変形例は、塗料3そのものが基材を兼ねるものである。即ち、図3において、可撓性合成樹脂材22の換わりに、塗料3をその分厚く形成したものである。塗料3のみから形成された不燃遮断熱材21である。
【0057】
塗料3のみからなる不燃遮蔽材21の製造方法は、図示しない台に塗料3を厚さ5mm〜10mm程度に塗布し、温風にて10分〜20分間乾燥させる。これにより可撓性ある不燃遮断熱材21を達成することができる。
【0058】
(不燃遮断熱材評価装置に関する実施の形態)
次に、不燃遮断熱材評価装置に関する実施の形態について説明する。本実施の形態は、第1の実施の形態に関する不燃遮断熱材1の評価装置に関するものである。図5は不燃遮断熱材評価装置100の外観図である。不燃遮断熱材評価装置100はスーツケースのように持ち運び可能な箱型ケースに収容され、本体としての下部31と、蓋としての上部32からなる。上部32は、下部31から開閉可能となっており、開状態のとき、上部32は下部31から略90度開いた状態となる。下部31には、複数のテストピース33、34を載置可能とする複数の試料載置台としての載置台35、36が固定して配設されている。テストピース33、34は一方が評価のための不燃遮断熱材1であり、他方が比較用のテストピースである。載置台35、36には後述する温度センサ37、38が配置され、テストピース33、34の裏面の接触温度を検知するようになっている。
【0059】
上部32の裏側に、後述する熱源としての光源40と、複数の熱源カバー41、42とが設置される。光源40は後述する電源50に接続され、電源50との間にはそれぞれ光源40の光量を調整する調光器(以下ボリュームという)43、44が接続されている。更に、温度センサ37、38に対応した温度表示部45,46及びタイマ表示部47が、蓋である上部32の裏側に着脱自在に設けられている。
【0060】
図6は不燃遮断熱材評価装置100の熱源カバー41の支持構造を示す説明図である。同図は一方の熱源カバー41の支持構造を示すが、他方の熱源カバー42の支持構造についても同様である。不燃遮断熱材評価装置100の上部32の裏側に着脱自在に設けられる。即ち、上部32には複数のフック51が設けられ、複数の孔を有する支持板52の孔に係合することにより、支持板52が固定される。支持板52には、リンク機構からなるアーム53が設けられ、アーム53の先端には光源40と熱源カバー41が設けられる。アーム53のリンク機構によって、熱源カバー41は矢印Aに示す上下方向及び矢印Bに示す前後方向に移動可能となっている。これによりテストピース33から光源40の距離Hは、任意の高さに調整可能である。これは、テストピース33の厚さのばらつきに対して、距離Hを調整可能とするためである。
【0061】
熱源カバー41の内部には光源40が設けられ、光源40の光線が効率よくテストピース33に照射するよう熱源カバー41は円錐状に形成される。テストピース33の大きさは10〜15cm平方が好ましく、熱源カバー41はテストピース33の真上に置き、距離Hは5〜10cmが好ましい。なお、光源40の図示しない電気コードは、アーム53を経由して電源50に接続される。
【0062】
図7は不燃遮断熱材評価装置100の温度センサ37の支持構造を示す説明図である。同図は一方の載置台35が一方の温度センサ37を支持する構造を示すが、他方の載置台36が一方の温度センサ38を支持する構造についても同様である。載置台35は円筒状であり、載置台35の上端は、中心軸に対して垂直に形成された円周状の載置部35−1である。当該載置部35−1にテストピース33が載置される。
【0063】
載置台35の上方は、温度センサ37が4本のスプリング54によって吊られている。即ち、スプリング54の一端54−1は、円筒状の載置台35の内面に固定され、他端54−2は、温度センサ37を支持している。従って、温度センサ37は4本のスプリング54によって支持されおり、矢印に示すように上下方向に移動可能となっている。なお、温度センサ37は上下方向に移動可能に支持されていればよく、スプリング54の本数に制限はない。
【0064】
温度センサ37の上部には、アーチ状の感熱板55が設けられる。温度センサ37とアーチ状の感熱板55のうち少なくとも感熱板55は、次に説明するように、載置台35の載置部35−1より上方に突出している。
【0065】
図8は不燃遮断熱材評価装置100の感熱板55とテストピース33の接触状態を示す説明図である。テストピース33を載置していない状態においては、温度センサ37のアーチ状の感熱板55は二点鎖線で示す載置部35−1より、高さhだけ突出している。アーチ状の感熱板55は長方形でかつ可撓性を有する金属板からなり、上方から圧力がかかると若干撓むことになる。そこで、テストピース33を載置台35の載置部35−1に載置すると、テストピース33の自重で感熱板55に圧力がかかる。感熱板55が撓んだ結果、感熱板55とテストピース33との接触部分は、長方形の幅×長さdの平面となる。仮に感熱板55が撓まない場合の接触部分は、長方形の幅の分の線接触であるのに比較し、面接触を得ることができることになる。即ち、感熱板55が撓むことにより、感熱板55とテストピース33との接触面積を広くすることができる。よって、温度センサ37の感度のよい出力を得ることができる。
【0066】
図9は不燃遮断熱材評価装置100に関する回路図である。電源50はAC100Vで外部から供給される。電源50はメインスイッチSWの一端と接続されている。メインスイッチSWの他端は、並列にボリューム43、44と夫々接続されている。ボリューム43、44の先は光源40−1、40−2に夫々接続されている。ボリューム43、44は光源40−1、40−2の出力を調整するためにある。光源40は、白熱電灯で50W〜100Wでよい。又は、光源40はレフランプでもよい。載置台35、36の内部に設置された温度センサ37、38は、温度表示部45、46に接続されている。これらの電源は内部電源としての電池である。またタイマ表示部47の電源も電池である。
【0067】
次に操作方法について説明する。操作者は不燃遮断熱材評価装置100の上部32を開ける。熱源カバー41、42の支持板52を上部32の複数のフック51に係合し、熱源カバー41、42と光源40−1、40−2を上部32に固定する。テストピース33、34を載置台35、36に載置し、テストピース33、34と光源40−1、40−2との距離Hを図示しないメジャーで計測する。両者の距離Hが一致するよう、リンク状のアーム53を調整して、熱源カバー41、42を移動させる。
【0068】
両者が一致すると、操作者は一旦テストピース33、34を載置台35、36から外し、スイッチSWをONし、両者の光源40−1、40−2を点灯させる。その後、操作者は温度センサ37、38の温度表示部45、46を見ながら、両者の表示が一致するようボリューム43、44を操作する。これにより光源40−1、40−2の特性のばらつきを修正することができる。
【0069】
両者の環境が一致すると、操作者はテストピース33,34を再度載置台35、36に載置する。その際、評価用のテストピース33として、例えば第1の実施の形態に関する不燃遮断熱材1を載置台35に載置し、比較例としてのテストピース34を載置台36に載置する。そして操作者は、タイマ表示部47の図示しないスイッチをONする。これにより、テストピース33、34の表面は光源40によって熱せられる。温度センサ37、38はテストピース33、34の裏面の温度を計測し、温度表示部45、46はテストピース33、34の裏面の温度を表示する。図5に示すように、タイマ表示部47が5分20秒経過の時点で、テストピース33の裏面は温度表示部45によると30度であり、一方テストピース34の裏面は温度表示部46によると50度であることを示す。
【0070】
なお、テストピース33、34と光源40−1、40−2との距離Hを図示しないメジャーで計測することとしたが、これに限らない。即ち、距離Hの長さの図示しない棒状の冶具を熱源カバー41、42に固定し、熱源カバー41、42を下方に移動して、棒状の冶具をテストピース33、34に突き当てることにより、両者の距離Hが一致するようにしてもよい。
【0071】
本実施の形態に関する不燃遮断熱材評価装置100によれば、持ち運び容易なケースに収容されているため、いかなる場所でも不燃遮断熱材1の評価が可能である。一人での輸送が可能であり、かつ需要先で簡単に装置を組み立て、評価試験を行うことができるため、不燃遮断熱材1の性能評価等に有効である。更に、光源40の位置を調整可能とし、またボリューム43、44を設けたことにより光源40からの光量を可変とすることができるので、複数のテストピース33、34について同じ環境に置くことができる。よって、複数のテストピース33、34を同時に試験し、これらを比較することができる不燃遮断熱材評価装置100を得ることができる。
【0072】
本実施の形態に関する説明において、不燃遮断熱材評価装置100のテストピースを前記第1の実施の形態に関する不燃遮断熱材1を例に説明したが、これに限らない。即ち、通常の断熱材をテストピースとして、断熱材評価装置とすることも適用可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 不燃遮断熱材
2 発泡プラスチック材
3 塗料
21 不燃遮断熱材
22 可撓性合成樹脂材
100 不燃遮断熱材評価装置



【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック、ガラス、磁器、陶器、コンクリート、金属、ダンボール等の紙類、合板、木材、プラスチックスのうちいずれか一又は複数の複合体からなる基材に、シラスバルーン(A)、雲母(B)、珪藻土(C)及びバインダー樹脂(D)を含有した塗料を塗布したことを特徴とする不燃遮断熱材。
【請求項2】
前記基材は、板状の発泡プラスチック材であることを特徴とする請求項1記載の不燃遮断熱材。
【請求項3】
前記発泡プラスチック材は、ポリスチレンを主要材料とすることを特徴とする請求項2記載の不燃遮断熱材。
【請求項4】
前記塗料は、造膜助剤(E)を含有してなることを特徴とする請求項1乃至3いずれか一記載の不燃遮断熱材。
【請求項5】
前記造膜助剤(E)は、(ポリ)エチレングリコールアルキルエーテル、(ポリ)エチレングリコールアルキルエーテルカルボン酸エステル、(ポリ)プロピレングリコールアルキルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールフェニルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールアルキルエーテルカルボン酸エステル及びカルボン酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1乃至4いずれか一記載の不燃遮断熱材。
【請求項6】
シラスバルーン(A)、雲母(B)、珪藻土(C)及びバインダー樹脂(D)の重量に基づいて、シラスバルーン(A)の含有量が10〜30重量%、雲母(B)の含有量が0.5〜3重量%、珪藻土(C)の含有量が10〜40重量%、バインダー樹脂(D)の含有量が30〜70重量%であることを特徴とする請求項1乃至5いずれか一記載の不燃遮断熱材。
【請求項7】
造膜助剤(E)の含有量が、シラスバルーン(A)、雲母(B)、珪藻土(C)及びバインダー樹脂(D)の重量に基づいて、2〜30重量%であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一記載の不燃遮断熱材。
【請求項8】
織物、編物又は不織布いずれか一からなる可撓性基材に、シラスバルーン(A)、雲母(B)、珪藻土(C)及びバインダー樹脂(D)を含有した塗料を塗布したことを特徴とする不燃遮断熱材。
【請求項9】
シラスバルーン(A)、雲母(B)、珪藻土(C)及びバインダー樹脂(D)を含有した塗料を硬化し、板状にしたことを特徴とする不燃遮断熱材。
【請求項10】
複数の試料載置台と、
前記試料載置台から所定の距離隔てた複数の熱源と、
前記複数の熱源の熱量を電気的に変化させる複数のボリュームと、
前記複数の試料載置台に載置された試料の裏面の温度を検出する複数の温度センサと、
前記温度センサの検出した試料の温度を表示する複数の表示部とからなり、これらをケースに収納可能としたことを特徴とする不燃遮断熱材評価装置。
【請求項11】
前記試料載置台は円筒からなり、円筒の上端は前記試料を載置する円周状の載置部であり、
前記円筒の内面に一端が固定されたスプリングを有し、
前記温度センサは前記スプリングによって支持され、かつ前記温度センサの一部が前記載置部より突出して設けられることを特徴とする請求項10記載の不燃遮断熱材評価装置。
【請求項12】
前記試料載置台は円筒からなり、円筒の上端は前記試料を載置する円周状の載置部であり、
前記温度センサは、可撓性のアーチ状の感熱板を有し、前記温度センサの前記アーチ状の感熱板が前記載置部より突出して設けられ、
前記試料が前記載置部に載置されると前記アーチ状の感熱板が撓むことにより前記試料と接触する面積を広くすることを特徴とする請求項10記載の不燃遮断熱材評価装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−95073(P2013−95073A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240802(P2011−240802)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(510247319)
【出願人】(510247320)
【Fターム(参考)】