説明

不発爆薬検知具および不発爆薬検知方法

【課題】簡易なツールを用い、不発爆薬の有無を直接的かつ確実に確認でき、作業も容易で低コストな不発爆薬検知具および不発爆薬検知方法を提供する。
【解決手段】コンクリート構造物に孔部を形成し、孔部に線状爆薬を設置し、込物を詰める。線状爆薬では、導爆線に沿って、本体3がビニール被覆針金である不発爆薬検知ツール1が取り付けられている。導爆線による発破を行った後、不発爆薬検知ツール1の本体3を引き抜く。そして、引き抜いた本体3の状態や、引き抜きの可否により、不発爆薬の有無を検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不発爆薬の検知を行うための不発爆薬検知具および不発爆薬検知方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築・土木工事において、少量の爆薬を用いて爆発力をある程度限定しつつ発破を行う制御爆破が実施されることがある。制御爆破は、爆破対象物を顕著に爆破破壊させるものではないため、まれに爆発しない爆薬が一部残ってしまうと、この不発爆薬の存在を外見上識別することが非常に困難である。このため、不発の可能性がある場合には、爆薬の装薬部分を穿孔するなど危険な作業を実施することになり、多大な時間と労力を伴っていた。
【0003】
穿孔等を行わず、爆破対象物の内部に挿入されている不発爆薬の有無を検知する方法として、発破後に外見上健全な状態で残された信号線の抵抗値を装薬位置毎に測定するものがある。この方法では、信号線の抵抗が無限大であれば、内部雷管が爆発していると判定する。
また、爆破対象物の内部に爆薬とともに電磁波反射部、永久磁石、検出素子等を設置し、発破後に電磁波、磁気、反射電波等の存在を確認することにより、不発爆薬を検知するものがある(例えば、特許文献1から特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−312500号公報
【特許文献2】実公昭60−39680号公報
【特許文献3】特開2000−9400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、信号線の抵抗値を測定する方法は、信号線の断線の有無のみで爆発を判定しているため、不発爆薬の有無を直接的に確認できるものではない。加えて、信号線は複雑に配線されるので、確認するにも手間がかかる。
また、電磁気的な測定により不発爆薬を検知する方法は、爆破対象物内に電磁波反射部等の部材を設置する必要があり、コストがかかる。加えて、発破後に測定器具を用いて測定を行なうため、安全確認に多くの手間と時間がかかる場合がある。
【0006】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、その目的とすることは、簡易なツールを用い、不発爆薬の有無を直接的かつ確実に確認でき、作業も容易で低コストな不発爆薬検知具および不発爆薬検知方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するための第1の発明は、爆薬体に沿って配置される本体を有し、孔部に設置された前記爆薬体による発破作業を行なった後、前記本体の引抜きを行い、不発爆薬の検知を行うことを特徴とする不発爆薬検知具である。
【0008】
前記本体の周囲は、被覆されることが望ましい。
また、前記本体の端部に、持ち手が設けられることが望ましい。
さらに、前記本体を前記爆薬体に定着させる定着部を有することが望ましい。
前記本体は、例えば、ビニールで被覆された針金とする。
【0009】
第1の発明の不発爆薬検知具は、本体が、コンクリート構造物等に形成された孔部に爆薬体とともに設置され、発破後に本体が引き抜かれる。不発爆薬検知具は、爆薬体が爆発すると、本体に破断、変色、溶融等の変状が生じるため、発破後に引き抜かれた本体を確認することにより、不発爆薬の有無が直接的かつ確実に検知できる。本体を引き抜くことができない場合は、爆薬体が爆発していないと判断できるため、不発爆薬の存在が容易に検知できる。このように、簡易な構成の不発爆薬検知具を用いることにより、不発爆薬の検知が容易かつ低コストで実施できる。
【0010】
また、本体の周囲を被覆すれば、発破時にはこれが燃焼等により溶融するので、外観より不発爆薬の有無が容易に視認できる。
また、本体の端部に、持ち手を設けることにより、検知具の引き抜きが容易になる。
さらに、爆薬体に定着させる定着部を有することにより、爆薬の不発時には検知具が引き抜けないことを確実とできるので、引き抜きできるか否かにより、確実に爆薬の有無を検知できる。
また、本体をビニール被覆針金とすれば、爆薬の発破時には被覆が溶融して針金が露出し不発爆薬の検知が容易となるとともに、適度な強度を有するので、引き抜き時に破断することがない。また、ビニールには様々なカラー素材があるので、被覆するビニールの色を適切に選択することで、より識別しやすい検知具とすることができる。
【0011】
第2の発明は、孔部に、爆薬体と、前記爆薬体に沿って本体が配置された不発爆薬検知具とを設置する工程と、前記爆薬体による発破を行った後、前記本体の引抜きを行い、不発爆薬の検知を行う工程と、を具備することを特徴とする不発爆薬検知方法である。
【0012】
前記本体の周囲は、被覆されることが望ましい。
また、前記本体の端部に、持ち手が設けられることが望ましい。
さらに、前記不発爆薬検知具が、前記本体を前記爆薬体に定着させる定着部を有することが望ましい。
前記本体は、例えば、ビニールで被覆された針金とする。
【0013】
第2の発明の不発爆薬検知方法では、不発爆薬検知具を、コンクリート構造物等に形成された孔部に爆薬体とともに設置し、発破後に本体を引き抜く。不発爆薬検知具は、爆薬体が爆発すると、本体に破断、変色、溶融等の変状が生じるため、発破後に引き抜いた本体を確認することにより、不発爆発の有無が直接的かつ確実に検知できる。本体を引き抜くことができない場合は、爆薬体が爆発していないと判断できるため、不発爆薬の存在が容易に検知できる。このように、簡易な構成の不発爆薬検知具を用いることで、不発爆薬の検知が容易かつ低コストで実施できる。
【0014】
また、本体の周囲を被覆すれば、発破時にはこれが燃焼等により溶融するので、外観より不発爆薬の有無が容易に視認できる。
また、本体の端部に、持ち手を設けることにより、検知具の引き抜きが容易になる。
さらに、不発爆薬検知具が、本体を爆薬体に定着させる定着部を有することにより、爆薬の不発時には検知具が引き抜けないことを確実とできるので、引き抜きできるか否かにより、確実に爆薬の有無を検知できる。
また、本体をビニール被覆針金とすれば、爆薬の発破時には被覆が溶融して針金が露出し不発爆薬の検知が容易となるとともに、適度な強度を有するので、引き抜き時に破断することがない。また、ビニールには様々なカラー素材があるので、被覆するビニールの色を適切に選択することで、より識別しやすい検知具とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡易なツールを用い、不発爆薬の有無を直接的かつ確実に確認でき、作業も容易で低コストな不発爆薬検知具および不発爆薬検知方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】不発爆薬検知ツール1の概要を示す図
【図2】線状爆薬13を示す図
【図3】コンクリート構造物23の爆破対象部分の断面図
【図4】線状爆薬13を設置した孔部11の軸方向の断面図
【図5】不発爆薬検知ツール1を用いた検知の概要を示す図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明に係る不発爆薬検知ツール(不発爆薬検知具)1の概要を示す図である。図1(a)は、不発爆薬検知ツール1の立面図である。図1(b)は、図1(a)に示す矢印A−Aによる断面図である。
【0018】
図1に示すように、不発爆薬検知ツール1は、本体3、定着部7、持ち手9等からなる。本体3は線状の形状を有する。本体3としては、針金29の周囲に被覆材31としてビニールが被覆されたビニール被覆針金を用いる。定着部7は、本体3の一方の端部5aのやや幅広の部分を折り曲げたものである。図1では、図の奥行方向に折り曲げられている。持ち手9は、本体3の他方の端部5bに設けられるリング状の部材である。
【0019】
図2は、線状爆薬13を示す図である。線状爆薬13は、電気雷管15、導爆線17等からなり、装填時に、電気雷管15および導爆線17と、不発爆薬検知ツール1とがテープ10等で固定される。不発爆薬検知ツール1は、その本体3が、爆薬体である導爆線17に沿って、端部5b側で余長を残しつつ固定される。定着部7は、その折り曲げ部分が導爆線17の端部16に引掛けられ当該端部16で係止するように配置される。
【0020】
図3は、線状爆薬13により制御爆破を行う構造物の例である、コンクリート構造物23の爆破対象部分の水平方向の断面図を示す。図3に示すコンクリート構造物23は、鉄筋コンクリート柱であり、コンクリート25と、軸方向鉄筋27aと、帯筋27bとにより構成される。
以降、コンクリート構造物23の爆破対象部分において、線状爆薬13を複数装填して制御爆破を行い、発破後に不発爆薬検知ツール1により不発爆薬の検知を行なう例について説明する。
【0021】
コンクリート構造物23を制御爆破する際には、図3に示すように、爆破対象部分において、ハンマードリル等を用いてコンクリート25の外面から内部へと穿孔し、複数の孔部11を適切な間隔をあけて形成する。孔部11は、軸方向鉄筋27aや帯筋27bに干渉しないように設ける。
【0022】
次に、不発爆薬検知ツール1を取り付けた図2に示す状態の線状爆薬13を各孔部11に設置する。線状爆薬13は、各孔部11でコンクリート25の外面から所定距離離れた位置に設置する。孔部11において、線状爆薬13の外側(開口側)には、砂等の込物19を詰め、孔部11の開口側でタンピングを行う。不発爆薬検知ツール1の持ち手9は孔部11の外に露出させる。
そして、線状爆薬13の電気雷管15(図2参照)の脚線等を、孔部11の外で結線して、複数の電気雷管15と発破器21が直列に接続された直列回路を形成する。その後、防爆シート等で発破箇所を覆い、制御爆破の準備を完了する。
【0023】
図4は、線状爆薬13を設置した孔部11の軸方向の断面図を示す。図4は、図3に示す範囲Bの拡大図である。電気雷管15、脚線等の図示は省略している。図4に示すように、不発爆薬検知ツール1は、本体3の端部5aの定着部7で導爆線17の端部16に定着され、本体3の端部5bの持ち手9が孔部11から露出する。不発爆薬検知ツール1の本体3の長さは、上述した状態で配置できるように適切に設定する。
【0024】
線状爆薬13については、予め火薬工場等で製作することもできるし、現場での発破結果を確認しながら現場内の火工所でも容易に作成できる。爆薬量は、導爆線17の長さを調節することにより、コンクリート強度や、鉄筋・鉄骨量などの断面性状や穿孔位置等に応じて必要な発破エネルギー量を算出して適切に設定する。
【0025】
図5は、不発爆薬検知ツール1を用いた不発爆薬の検知の概要を示す図である。図5(a)は、発破後の孔部11付近を示す図であり、図5(b)は、不発爆薬検知ツール1を引き抜いた後の孔部11付近を示す図である。図5(c)は、引き抜き後の不発爆薬検知ツール1の立面図を、図5(d)は、引き抜き後の不発爆薬検知ツール1の断面図を示す。図5(d)は、図5(c)に示す矢印D−Dによる断面図である。
【0026】
図3に示すコンクリート構造物23では、制御爆破の準備が完了した後、発破を行う。そして、発破後、コンクリート25が外見上健全な状態で残った箇所について、不発爆薬検知ツール1の持ち手9を持って、図5(a)の矢印Cに示す方向に本体3を引き抜く。
【0027】
図5(b)に示すように不発爆薬検知ツール1を引き抜くことができれば、不発爆薬検知ツール1の本体3の状態を確認する。不発爆薬検知ツール1は、導爆線17が爆発した場合、図5(d)等に示すように、導爆線17に対応する位置において、本体3の被覆材31が燃焼し溶融して針金29が露出する。そのため、引き抜いた不発爆薬検知ツール1の本体3の針金29の露出を確認すれば、導爆線17が爆発したことが確実に検知できる。また、発破時には本体3が破断することもあるので、本体3が破断されていた場合も、導爆線17が爆発したことが検知できる。
【0028】
なお、不発爆薬検知ツール1の本体3は、定着部7(とテープ10)で導爆線17に定着されているので、発破後、不発爆薬検知ツール1を引き抜くことができなかった場合は、導爆線17が図4に示す状態で残っている、すなわち不発爆薬が存在すると判断できる。
【0029】
以上説明したように、本実施形態では、不発爆薬検知ツール1を、コンクリート構造物23に形成された孔部11に導爆線17とともに設置し、発破後に本体3を引き抜く。そして、引き抜いた不発爆薬検知ツール1の本体3の状態や、不発爆薬検知ツール1の引き抜きの可否を確認する。
【0030】
本体3にビニール被覆針金を用いた不発爆薬検知ツール1は、導爆線17が爆発すると本体3の被覆材31が燃焼して針金29が露出する。そのため、発破後に引き抜いた本体3の状態を確認することにより、不発爆発の有無が確実に検知できる。その他、本体3の破断等によっても、不発爆薬の有無が検知できる。
不発爆薬検知ツール1の本体3は、定着部7等で導爆線17に取り付けられているので、本体3を引き抜くことができない場合には、導爆線17が爆発しておらず不発爆薬が存在していることが容易に判断できる。このような簡易なツールを用いることにより、不発爆薬の検知が容易かつ低コストで実施できる。
【0031】
また、本体3には込物19による拘束力が働き、本体3は、これに抗して引き抜きを行うことになるが、本体3にビニール被覆針金を用いた不発爆薬検知ツール1は、適度な強度を有し、引き抜き時に破断が起こることがない。
また、本実施形態では針金29をビニールにより被覆したが、これに限らず、発破時に除去されるような被覆材31であればよい。但し、ビニールには様々なカラー素材があるので、被覆するビニールの色を適切に選択することで、より識別しやすい検知ツールとすることができる。
【0032】
さらに、不発爆薬検知ツール1の本体3には、針金に限らず、他の材料を適用してもよい。ただし、上記のように、引き抜きを行う際に破断することがないよう、発破後でも適度な強度を有するものであることが望ましい。
なお、本体3に被覆なしの針金を用いることも可能である。この場合、爆発体が爆発すると本体3が破断もしくは燃焼により変色するため、発破後に引き抜いた本体3の状態を確認することにより、不発爆発の有無を検知できる。ただし、本実施形態のように本体3の周囲を被覆した方が、不発爆薬の有無を不発爆薬検知ツール1の外観より視認しやすくなる。
【0033】
また、本実施形態では、定着部7、持ち手9を有する不発爆薬検知ツール1を例示したが、定着部7、持ち手9は必須ではなく省略することも可能である。ただし、持ち手9を設けることにより、引き抜き作業が容易になり、定着部7で導爆線17に定着することで、引き抜きできるか否かにより不発爆薬の有無を確実に検知できるようになる。なお、定着部や持ち手を設ける場合、形状は本実施形態で示したものに限らず、適宜定めることが可能である。
【0034】
また、本実施形態では、コンクリート構造物23を制御爆破し、不発爆薬の検知を行う例を示したが、これに限らず、孔部に爆薬体を装填して行う発破作業全般において、本発明の不発爆薬検知ツール1を爆薬体に取り付けて不発爆薬の検知に用いることが可能である。
【0035】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0036】
1………不発爆薬検知ツール
3………本体
5a、5b、16………端部
7………定着部
9………持ち手
11………孔部
13………線状爆薬
15………電気雷管
17………導爆線
23………コンクリート構造物
29………針金
31………被覆材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
爆薬体に沿って配置される本体を有し、
孔部に設置された前記爆薬体による発破作業を行なった後、前記本体の引抜きを行い、不発爆薬の検知を行うことを特徴とする不発爆薬検知具。
【請求項2】
前記本体の周囲が被覆されることを特徴とする請求項1記載の不発爆薬検知具。
【請求項3】
前記本体の端部に、持ち手が設けられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の不発爆薬検知具。
【請求項4】
前記本体を前記爆薬体に定着させる定着部を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の不発爆薬検知具。
【請求項5】
前記本体が、ビニールで被覆された針金であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の不発爆薬検知具。
【請求項6】
孔部に、爆薬体と、前記爆薬体に沿って本体が配置された不発爆薬検知具とを設置する工程と、
前記爆薬体による発破を行った後、前記本体の引抜きを行い、不発爆薬の検知を行う工程と、
を具備することを特徴とする不発爆薬検知方法。
【請求項7】
前記本体の周囲が被覆されることを特徴とする請求項6記載の不発爆薬検知方法。
【請求項8】
前記本体の端部に、持ち手が設けられることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の不発爆薬検知方法。
【請求項9】
前記不発爆薬検知具が、前記本体を前記爆薬体に定着させる定着部を有することを特徴とする請求項6から請求項8のいずれかに記載の不発爆薬検知方法。
【請求項10】
前記本体が、ビニールで被覆された針金であることを特徴とする請求項6から請求項9のいずれかに記載の不発爆薬検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−87954(P2013−87954A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225404(P2011−225404)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)