説明

不純物導入層形成装置及び静電チャック保護方法

【課題】不純物導入層形成装置の静電チャックの性能劣化を抑制する。
【解決手段】静電チャック保護方法は、真空環境で揮発性を有する物質を含む異物の付着を妨げるための保護表面23を、露出されたチャック面13に提供することと、チャック面13に静電吸着された基板Wに、真空環境で揮発性を有する物質を含む表層を形成するプロセスを実行するために、保護表面23を解除することと、を含む。保護表面23は、チャック面を取りまく真空環境に低真空排気運転を実施しているときに提供されてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不純物導入層形成装置及び静電チャック保護方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、静電チャックにウェハを吸着して電子ビームで露光をする電子ビーム露光装置が記載されている。電子ビームの露光位置を補正するためのデータを収集するキャリブレーション時や、露光装置のメンテナンスのための真空解除時に、静電チャックの吸着面にカバーが吸着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−343755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体製造の工程の1つに、基板表面に不純物導入層を形成する処理がある。この処理は通常、静電チャック(ESCともいう)に基板を固定して真空環境で行われる。静電チャックの静電吸着性能は静電チャック表面への異物の付着によって低下しうる。異物付着による吸着性能の低下は、基板とチャックとの接触面積(すなわち基板とチャックとの伝熱面積)を小さくする。伝熱面積の低下は、不純物導入プロセス中の適切な基板温調の妨げとなり得る。異物の付着が更に進展した場合には、基板が静電チャックに吸着不能となることもあり得る。吸着不良や吸着不能の場合、不純物導入処理が正常に行われず、不良品を生む可能性が高まる。
【0005】
本発明のある態様の例示的な目的のひとつは、異物付着による静電チャックの性能劣化を抑制する不純物導入層形成装置及び静電チャック保護方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様の不純物導入層形成装置は、リンまたは炭素を含む不純物導入層を基板に形成するプロセスを実行するための真空処理室と、前記真空処理室に収容され、基板を吸着するためのチャック面を含む静電チャックと、を備え、前記真空処理室の表面から前記チャック面へのリンまたは炭素を含む異物の移転を抑制するために、プロセス休止期間の少なくとも一部において前記チャック面が遮蔽されるよう構成されている。
【0007】
本発明の別の態様は、静電チャック保護方法である。この方法は、リンまたは炭素を含む異物の付着を妨げるための障壁を、露出されたチャック面に提供することと、前記チャック面に静電吸着された基板にリンまたは炭素を含む不純物導入層を形成するプロセスを実行するために、前記障壁を解除することと、を含む。
【0008】
本発明の別の態様は、真空処理装置である。この装置は、真空環境で揮発性を有する物質を含む表層を基板に形成するプロセスを実行するための真空処理室と、前記真空処理室に収容され、基板を吸着するためのチャック面を含む静電チャックと、を備え、前記真空処理室の表面から前記チャック面への前記物質を含む異物の移転を抑制するために、プロセス休止期間の少なくとも一部において前記チャック面が遮蔽されると共に前記プロセスの実行中は前記チャック面の遮蔽が解除されるよう構成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、静電チャックの性能劣化が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係るイオン注入装置の一部を模式的に示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るイオン注入装置の一部を模式的に示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るプラズマ処理装置の一部を模式的に示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るプラズマ処理装置の一部を模式的に示す図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るESC保護の効果を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係るイオン注入装置1の一部を模式的に示す図である。イオン注入装置1は、イオン注入プロセスを実行するための装置である。イオン注入プロセスは、所望の不純物導入層を基板Wの表面に形成する処理の一例である。基板Wは例えばシリコンウエハである。
【0012】
一実施例においては、イオン注入プロセスは、真空環境で揮発性を有する不純物元素を基板に導入するプロセスである。不純物は例えばリンまたは炭素である。
【0013】
図1に示されるイオン注入装置1は、真空環境で基板Wを処理するための真空処理装置である。こうした真空処理装置は真空処理室(チャンバともいう)10を備える。イオン注入プロセスは、真空処理室10への基板Wの搬入工程と、基板Wへのイオン注入工程と、基板Wの搬出工程と、を含む。詳しくは後述するように、イオン注入装置1は、イオン注入プロセスが実行されていないときに、静電チャック12を保護のために待避させるESC保護動作を実行可能に構成されている。図1の左側に基板搬入工程を示し、図1の中央にイオン注入工程を示し、図1の右側にESC保護動作の一例を示す。
【0014】
真空処理室10は、基板Wに導入されるべき不純物の供給を受ける。イオン注入プロセスの場合、不純物はイオンビームBの形式で真空処理室10に供給される。イオン注入装置1は、真空処理室10の上流に、イオン源、質量分析器、及びビーム輸送系を備える。イオン源は、元素をイオン化するよう構成されている。質量分析器は、イオン源にてイオン化されたイオンのうち基板Wに注入すべきイオンを質量によって選別する。質量分析器の下流側には所定の質量のイオンからなるイオンビームBをビーム輸送系へと通過させるための質量分析スリットが設けられている。ビーム輸送系は、イオンビームBを、輸送し、加速し、整形し、または走査して、真空処理室10へと供給するよう構成されている。
【0015】
基板Wへと入射するイオンビームBは、ある面に沿って走査され当該面内に広がりをもつ。イオンビームBの経路を含む面は例えば水平面である。図1の中央に破線でその一部を示すように、イオンビームBの通過範囲を包囲するイオンビーム放出口11が設けられていてもよい。イオンビーム放出口11は、ビーム輸送系から真空処理室10へと突き出して設けられている。イオンビーム放出口11のイオンビームBを放出するための開口部は、基板WがイオンビームBの照射を受ける位置へと向けられている。
【0016】
静電チャック12は、チャック本体12aとチャック面13とを備える。チャック面13はチャック本体12aの表面であり、基板Wに接触して吸着固定をするための吸着面である。チャック本体12aは内部電極を含む。静電チャック12は、内部電極に電圧を印加することにより、基板Wを吸着するための静電気力を発生させる。
【0017】
静電チャック12は温調系統を備えてもよい。温調系統は、温調流体を流すためにチャック本体12aに形成された流路と、その流路を通じて温調流体を供給または循環させるための流体供給系と、を含んでもよい。基板Wは、チャック面13における基板Wとの接触領域を含む伝熱経路を通じて加熱または冷却される。温調系統は例えば基板Wを冷却するための冷媒をチャック本体12aに提供する冷却系統として構成されていてもよい。
【0018】
基板Wを保持するための基板ホルダ14が真空処理室10に収容されている。図1に例示されるイオン注入装置1はいわゆる枚葉式であり、基板ホルダ14は一枚の基板Wを保持するよう構成されている。基板ホルダ14は、その基板Wを固定するための1つの静電チャック12を備える。基板ホルダ14は、複数の基板Wを保持するために、複数の静電チャック12を備えてもよい。
【0019】
基板ホルダ14は、イオン注入プロセスの少なくともイオン注入工程において基板Wを立てて保持する。つまり、基板WはイオンビームBに交差する向きで保持される。基板WはイオンビームBに垂直に保持されていてもよい。あるいは、図示されるように、基板Wは、いわゆる斜めイオン注入を行うために、基板面がイオンビームBに垂直となる方向からいくらか(例えば20度以内)傾斜されて保持されてもよい。
【0020】
基板ホルダ14は、静電チャック12を移動可能に支持する。基板ホルダ14は、静電チャック12をイオンビームBに対して少なくとも一方向に移動するための駆動機構を備える。この駆動機構は、いわゆるメカニカルスキャンを提供する。すなわち駆動機構は、イオンビームBに交差するメカニカルスキャン方向に基板Wを往復移動させる。メカニカルスキャン方向は例えば、イオンビームBに垂直な方向である。イオンビームBの走査とメカニカルスキャンとの組み合わせ(いわゆるハイブリッドスキャン)によって、イオンビームBを基板Wの被照射領域全体にわたって照射することができる。なお、本発明の適用はこうしたハイブリッドスキャンには限定されず、その他の任意のイオンビームBと基板Wとの相対移動方式にも適用可能であることは明らかである。
【0021】
基板ホルダ14は、メカニカルスキャンのための第1駆動部16と、メカニカルスキャンとは異なる自由度で静電チャック12を移動するための第2駆動部18と、を備える。第1駆動部16はメカニカルスキャンのための第1方向の移動を提供し、第2駆動部18は第1方向とは異なる第2方向への移動を提供する。第2方向は例えば回転方向であり、その回転軸は第1方向に直交する軸である。第2駆動部18は静電チャック12を任意の回転角度へと位置決めするよう構成されている。なお第2方向は第1方向に交差する(例えば垂直な)直線方向であってもよい。
【0022】
図示の例では、第1駆動部16は基板ホルダ14の本体に搭載され、第2駆動部18は第1駆動部16に搭載されている。そのため第2駆動部18は第1駆動部16によってメカニカルスキャン方向に移動可能である。それとは逆に、第1駆動部16が第2駆動部18に搭載され、第1駆動部16が第2駆動部18によって第2方向に可動であってもよい。
【0023】
基板ホルダ14は、静電チャック12と第2駆動部18とを連結するチャック支持部材20を備える。チャック支持部材20は、第2駆動部18による静電チャック12の回転半径を定める腕部を含む。よって、静電チャック12は、その回転半径と、第2方向の回転角度とによって定まる真空処理室10内の任意の位置に位置決めされるよう構成されている。
【0024】
静電チャック12のチャック面13への異物の付着を防ぐためのシャッタ部材22が真空処理室10に収容されている。シャッタ部材22は、真空処理室10の内部に固定されている。シャッタ部材22は、シャッタ本体22aと保護表面23とを備える。保護表面23はシャッタ本体22aの表面であり、静電チャック12のチャック面13を遮蔽するための表面である。シャッタ部材22は、例えば金属の板状部材である。保護表面23はチャック面13と同一の形状及び寸法を有するか、あるいはチャック面13を包含する面積を有する。保護表面23は、1つの平面であってもよいし、段差、凹凸、または開口を含む面(例えば金網面)であってもよい。
【0025】
シャッタ部材22は、静電チャック12に待避位置を提供するために設けられている。そのために、シャッタ部材22は、第2駆動部18による静電チャック12の移動経路に配置されている。シャッタ部材22は、静電チャック12が待避位置に位置決めされたときにシャッタ部材22と静電チャック12とが対向または接触する位置に取り付けられている。待避位置における静電チャック12のチャック面13と保護表面23とが平行になるように、シャッタ部材22の向きが定められている。
【0026】
また、シャッタ部材22は、真空処理室10においてイオンビームBの経路外に位置する。すなわちシャッタ部材22は、真空処理室10の壁面とイオンビームBとの間に位置する。シャッタ部材22は、イオンビーム放出口11と真空処理室10の壁面との間に設けられていてもよい。保護表面23は、プロセス中の汚染を避けるために、イオンビームBの経路に比べて相対的に不純物密度の低い領域に向けられていてもよい。保護表面23は例えば、真空処理室10の壁面を向き、イオンビームBから離れる方向に向けられていてもよい。
【0027】
他の一実施例においては、シャッタ部材22を移動させるためのシャッタ移動機構が真空処理室10に設けられていてもよい。シャッタ部材22は、静電チャック12を遮蔽するための遮蔽位置と、イオン注入プロセスの際の待機位置と、を移動可能に構成されていてもよい。シャッタ部材22が遮蔽位置にあるときに、シャッタ部材22は、待避位置にある静電チャック12に対向または接触する。シャッタ部材22の待機位置は、真空処理室10の内部であってもよいし、真空処理室10の外部であってもよい。このようにすれば、保護表面23への異物の到達が最小限に抑制される位置にシャッタ部材22の待機位置を定めることができる。
【0028】
真空処理室10には、イオン注入プロセスのための所望の真空環境を真空処理室10に提供するための真空排気系24が設けられている。真空排気系24は例えば、クライオポンプ等の高真空ポンプと、高真空ポンプの作動圧力まで粗引きをするための粗引きポンプとを備える。真空排気系24は、真空ポンプを真空処理室10に接続または遮断するためのゲートバルブを備えてもよい。
【0029】
イオン注入プロセスを開始するためには、真空処理室10が所望の真空度にあることが求められる。そのため、次回のプロセスの開始準備のために、プロセスを行っていない期間においても真空排気系24が作動され真空処理室10の真空排気は継続されている。その間、装置のメンテナンス等の真空を解除すべきときを除いて、真空処理室10の真空気密は保たれている。
【0030】
図1に示されるイオン注入装置1は、イオン注入プロセスを制御するための制御装置26を備える。制御装置26は、イオン注入装置1の各構成要素を制御する。制御装置26は、例えば、静電チャック12、基板ホルダ14、及び真空排気系24の動作を制御するよう構成されている。また、制御装置26は、静電チャック12、基板ホルダ14、及び真空排気系24の稼働状況を監視するよう構成されている。制御装置26は、イオン注入プロセスに加えて、静電チャック12を遮蔽するためのESC保護動作を制御するよう構成されている。
【0031】
イオン注入プロセスにおいては、図1の左側に示されるように、まず基板Wが真空処理室10に搬入される。基板Wは、例えば基板搬送装置(図示せず)によって真空処理室10の外部から搬入される。このとき、基板ホルダ14の静電チャック12は、チャック面13が水平となる初期位置に第1駆動部16及び第2駆動部18によって位置決めされている。第2駆動部18は、チャック面13を水平とする第1角度に静電チャック12を配置する。静電チャック12の吸着動作は停止されている。静電チャック12のチャック面13は、基板Wを受け取るために露出されている。
【0032】
基板Wは、露出されているチャック面13に直に載置される。静電チャック12は、載置された基板Wの吸着動作を開始する。静電チャック12の電極に電圧が印加され、基板Wがチャック面13に静電吸着により固定される。こうして、真空処理室10への基板搬入工程が完了する。基板搬入工程においては、イオンビームBは停止されている。あるいは、イオンビームBは、図示されないビーム計測のための検出器へと導かれて当該検出器に照射されていてもよい。
【0033】
次に、図1の中央に示されるイオン注入工程が実行される。基板ホルダ14は、静電チャック12に固定された基板Wを照射位置へと移動させる。照射位置において基板Wは、イオンビームBの入射方向に対し立てて保持される。基板Wは、第1駆動部16の走査移動方向に平行に保持される。第2駆動部18は、第1駆動部16の走査移動方向に平行に基板Wを保持する第2角度に静電チャック12を配置する。
【0034】
イオンビームBの照射が開始される。あるいは、イオンビームBは、ビーム計測のための検出器への照射から基板Wへの照射に切り替えられる。イオンビームBと基板Wとの揺動が行われる。図示の例ではイオンビームBは紙面に垂直な方向に走査され、基板Wは矢印方向に走査(往復移動)される。こうして基板Wを包含する照射領域にイオンビームBが照射され、結果として基板WにイオンビームBが照射される。
【0035】
必要とされるドーズ量の不純物が注入された基板Wは、真空処理室10から搬出される。基板Wの搬出は、上記の搬入とは逆の動作で行われる。イオンビームBの走査及びメカニカルスキャンが終了され、基板W及び静電チャック12は当初の位置に停止される。第2駆動部18は第2角度から第1角度へと静電チャック12を回転させる。静電チャック12の吸着動作が停止され、基板Wの固定は解除される。基板Wは基板搬送装置によって静電チャック12から取り外され、真空処理室10の外部へと搬出される。静電チャック12のチャック面13は露出される。
【0036】
イオンビームBと基板Wとはプロセス中に相対移動され、イオンビームBの照射領域は基板外にも広がっている。イオンビームB中の不純物は大半が基板Wに注入されるが、その一部は基板Wには到達せずに周辺に堆積し不純物膜を形成することになる。そうした不純物は、例えば真空処理室10の内壁や、真空処理室10に収容されている構成要素の表面に付着し、これら表面を汚染する。
【0037】
プロセス中においては静電チャック12のチャック面13は基板Wに被覆されているため、汚染されることがない。しかし、プロセス休止期間においては基板Wが取り外されチャック面13は露出される。チャック面13に到達した微粒子は異物としてチャック面13に付着しうる。
【0038】
本発明者は、不純物としてリンを用いる場合に、オイル状の物質(薄膜)が静電チャック12のチャック面13に広く分布して付着することを観察した。そうした異物付着はプロセスの休止期間をある程度(例えば数日間)継続したときに顕著であった。真空処理室10は気密に保持されているから、この異物は外部から侵入したものではない。オイル状薄膜はチャック面13に若干の光沢感を与える程度のものにすぎないが、静電チャック12の性能に大きな影響を与え得ることが確認された。
【0039】
その影響は第1に、基板Wとチャック面13との接触面積が小さくなり、基板Wとチャック面13との間の伝熱量が低下することにある。それにより、静電チャック12の冷却系統を通じた基板冷却効果が小さくなる。その結果、プロセス中に基板温度が通常よりも上昇し、基板Wに塗布されているパターニング用のレジストが硬化するおそれがある。レジストが剥離されにくくなり、不良品を生むおそれがある。第2に、オイル状薄膜が形成されることよって基板Wとチャック面13との間隔が大きくなり、基板Wの静電吸着が不能となる。
【0040】
本発明者の考察によれば、こうした現象は、ボロンに比べてリンが高い蒸気圧を有する物質であることに起因する。ある実験データまたは計算値によると、リンは常温付近(約300K)において10Paのオーダという高い蒸気圧をもつ。そのため、プロセスによって生じた真空処理室10のリン付着物からリン蒸気が盛んに放出される。既存の真空排気系24は、多量に再蒸発したリンを完全に排出するようには必ずしも設計されていない。
【0041】
よって、リン付着物は、二次的な汚染放出源とみなされる。同様に、真空中での蒸気圧がボロンよりも高い物質(例えば、蒸気圧が1×10−2Paとなる温度が1000K以下である物質)も、二次的な汚染放出源とみなされる。そのような物質には例えば、As、Bi、Cd、Cs、Ga、In、K、Li、Na、Pb、Rd、Se、Te、Zn、Tlが含まれる。こうした物質は、真空環境で揮発性を有すると言える。また、炭素を用いるプロセスにおいても、チャック面13の二次的な汚染が生じることが想定される。炭素の蒸気圧はボロンと同程度であるが、炭素は真空中で昇華性を有するからである。真空中で昇華性を有する物質も、真空環境で揮発性を有すると言える。
【0042】
最近では省エネルギーのために、プロセス休止期間に真空排気系24を停止させるか、または真空排気系24の排気能力をプロセス中よりも低下させることがある。このとき、真空処理室10は真空状態に保持されている。二次汚染源はそうした低真空排気運転中(真空排気停止中を含む)に真空を劣化させる。真空処理室10には二次汚染源から再蒸発した汚染物質が充満しうる。気化した汚染物質によって、露出されているチャック面13の汚染が進行する。
【0043】
二次汚染は、プロセス間のインターバルにおいても懸念される。一般に、連続的に複数枚の基板を処理しているときの今回のプロセスと次回のプロセスとの間のインターバルはごく短時間である。よって、一度のインターバルでの汚染量は十分に小さいと考えられる。しかし、多数枚の基板を処理するにつれてチャック面13に汚染が蓄積され得る。
【0044】
汚染によるチャック性能の劣化を完全に解消するには、チャック面13に付着したオイル状薄膜を除去するだけではなく、真空処理室10内部の各所に付着した二次汚染源をも取り除く必要がある。そのためには、真空処理装置を止めて真空処理室10の清掃をすることを要する。真空処理装置の稼働率が低下することになる。
【0045】
なお、典型的な不純物であるボロンのプロセスにおいては、こうした汚染問題は生じることはない。ボロンの蒸気圧がきわめて低いからである。例えば約1500Kの高温でのボロンの蒸気圧は1×10−6Pa程度である。常温でのボロンの蒸気圧は、実質的にゼロであるとみなされる。よって、ボロンが真空処理室10に付着したとしても、その再蒸発による影響はきわめて軽微であるか、存在しない。つまり、ボロン付着物は事実上、汚染放出源ではあり得ない。
【0046】
本発明の一実施形態においては、ESC保護運転が行われる。真空処理室10の表面からチャック面13への高蒸気圧物質(例えばリンまたは炭素)を含む異物の移転を抑制するために、チャック面13が遮蔽される。図1の右側には、ESC保護運転の一例であるチャック待機状態を示す。
【0047】
制御装置26は、プロセス休止期間の少なくとも一部においてESC保護運転を実行する。制御装置26は、プロセス休止期間における任意の時点でESC保護運転を開始してもよい。同様に、制御装置26は、プロセス休止期間における任意の時点でESC保護運転を終了してもよい。
【0048】
プロセス休止期間は、低真空排気運転の実施期間を含む。低真空排気運転は、真空排気系24を停止した状態で不純物導入層形成装置の運転を継続することと、真空排気系24の排気能力をプロセス中よりも低下させた状態で装置の運転を継続することと、を含む。このとき、真空処理室10は、気密に保持されることにより、真空に保たれていてもよい。低真空排気運転中には真空環境の汚染物質濃度が高まる。低真空排気運転中にESC保護の動作を行うことによって、チャック面13を効果的に保護することができる。
【0049】
また、プロセス休止期間は、アイドルタイムを含んでもよい。アイドルタイムは不純物導入層形成装置の遊休時間である。アイドルタイムにおいては例えば、直ちにプロセスに復帰可能な状態でプロセスが一時的に停止されている。アイドルタイムは、例えば基板交換のためのプロセス間インターバルを含む。
【0050】
プロセス休止期間は、エージングタイムを含んでもよい。エージングは、不純物導入層形成装置の(例えばビーム状態の)安定化のためのいわば空焚き運転または慣らし運転である。真空処理室10に基板Wを搬入しない状態で、例えば数時間から一日程度装置が運転される。エージングは、不純物導入層形成装置の据え付け時や、メンテナンス終了後に行われる。
【0051】
プロセス休止期間は、不純物導入層形成装置の運転が停止されている期間を含んでもよい。運転停止期間には真空処理室10の真空は解除されていてもよい。こうした運転停止中に、真空処理室10の清掃を含む装置のメンテナンスが実行されてもよい。
【0052】
ESC保護運転は、チャック面13の遮蔽動作と、プロセスへの復帰動作と、を含む。遮蔽動作は、露出されたチャック面13に、リンまたは炭素を含む異物の付着を妨げるための障壁を提供することを含む。障壁を提供することは、静電チャック12の静電吸着が解除された状態で、静電チャック12のための保護部材と静電チャック12とを近接または接触させることを含んでもよい。保護部材は例えばシャッタ部材22またはダミー基板である。復帰動作は、プロセスを開始するために、障壁を解除することを含む。復帰動作は、チャック面13に静電吸着された基板Wにリンまたは炭素を含む不純物導入層を形成するプロセスを実行するために行われる。
【0053】
また、本発明の一実施例によれば、真空処理室10で使用される静電チャック12を保護するための方法が提供される。この方法は、チャック面13に静電吸着された基板Wにリンまたは炭素を含む不純物を導入するプロセス運転のために、真空処理室10に不純物を供給する工程と、プロセス運転の休止期間の少なくとも一部において、真空処理室10におけるリンまたは炭素を含む付着物のチャック面13への移転を妨げるための障壁をチャック面13に提供する工程と、を備えてもよい。
【0054】
図1に示されるように、ESC保護運転は、例えばイオン注入プロセス後に行われる。制御装置26は、基板搬出工程に続いてESC保護運転を実行する。制御装置26は、静電チャック12を待避位置に移動させるよう基板ホルダ14を制御する。具体的には、基板ホルダ14の第1駆動部16は第1方向の設定位置へと第2駆動部18及び静電チャック12を移動する。第2駆動部18は静電チャック12を上記の第1角度及び第2角度とは異なる第3角度へと回転する。こうして待避位置に位置決めされた静電チャック12のチャック面13は、シャッタ部材22の保護表面23に平行に対向する。チャック面13は保護表面23で覆われる。このようにして、異物付着を妨げるための障壁がチャック面13に提供される。
【0055】
チャック面13と保護表面23とは近接しており、チャック面13と保護表面23との間隔は例えば1cm以内、好ましくは5mm以内である。チャック面13と保護表面23とを隔てることにより、両者の干渉または衝突の可能性が低減される。また、両者の接触による保護表面23自体からチャック面13へのパーティクルの付着を防ぐことができる。
【0056】
制御装置26は、ESC保護運転を終了する際には、静電チャック12を待避位置から移動させるよう基板ホルダ14を制御する。静電チャック12は例えば、次に処理される基板Wを受け取るための位置に移動される。その場合、第2駆動部18は静電チャック12を第3角度から第1角度へと回転する。このようにして、チャック面13に提供された障壁が解除される。上記のイオン注入プロセスを再び実行することができる。
【0057】
ESC保護運転においてチャック面13と保護表面23とは接触させてもよい。保護表面23にチャック面13を密着させることにより、リン等の気化した汚染物質のチャック面13への到達をより確実に妨げることができる。チャック面13の保護をより確実にすることができる。
【0058】
静電チャック12は、チャック面13の遮蔽中、停止されていることが好ましい。すなわち、シャッタ部材22は静電チャック12に触れているか、または間隙を有して配置されているにすぎず、静電チャック12はシャッタ部材22を固定しない。ESC保護運転はある程度(例えば数日間)の長期間に及ぶことがある。一般に静電チャック12への電圧印加時間の長期化は、分極の定着によるデチャック性能の低下を招き得る。静電チャック12を作動しないことにより、デチャック性能の低下を防ぐことができる。
【0059】
一実施例においては、静電チャック12は、チャック面13の外側に設けられている係合部を備えてもよい。この係合部はチャック本体12aからチャック面13よりも突き出している。係合部が保護表面23に当接されることにより、チャック面13と保護表面23との間に所定の間隔を保つことが保証される。係合部はチャック面13を包囲する周壁部を含んでもよい。周壁部が保護表面23に当接されることにより、チャック面13と保護表面23との間に閉鎖空間が形成されてもよい。このようにしても、気化した汚染物質のチャック面13への到達をより確実に妨げることができる。
【0060】
シャッタ部材22が静電チャック12の移動経路に配置されていることは、静電チャック12の移動機構をチャック面13の遮蔽動作に共用することができるという点で有利である。真空処理室10の気密性を保ちつつ(真空解除を要することなく)、簡単な操作で静電チャック12を保護することができる。
【0061】
上述の実施例においては、第2駆動部18による静電チャック12の可動範囲の末端に待避位置が設定されている。それに代えて、静電チャック12の待避位置は、第1駆動部16の可動範囲の末端に設定されてもよい。待避位置は例えば、メカニカルスキャンのための静電チャック12の移動範囲を超える位置に設定される。シャッタ部材22は、上述の実施例と同様に、静電チャック12に対向する位置に設けられる。
【0062】
図2は、ESC保護運転の他の一実施例を示す。真空処理室10に設けられているシャッタ部材22に代えて、ダミー基板DWが保護部材として使用される点で、図2に示す実施例は図1に示す実施例と異なる。ダミー基板DWは、プロセスに使用されないウエハであってもよいし、チャック面13の保護のための専用の部材であってもよい。制御装置26は、ダミー基板DWによってチャック面13を被覆するESC保護運転を制御する。制御装置26は、ダミー基板DWの真空処理室10への搬入及び搬出を制御する。
【0063】
ダミー基板DWは、通常の基板Wと同様に操作される。ダミー基板DWは基板搬送装置によって真空処理室10に搬入される。静電チャック12は、チャック面13を水平とするように位置決めされている。チャック面13は、ダミー基板DWを受け取るために露出されている。静電チャック12の吸着動作は停止されている。ダミー基板DWはチャック面13に載置される。静電チャック12はチャック面13を水平とする位置に保持される。このようにして、異物付着を妨げるための障壁がチャック面13に提供される。
【0064】
ダミー基板DWの載置後も、デチャック性能の低下を防ぐために、静電チャック12の吸着動作は停止されていることが好ましい。あるいは、ダミー基板DWのチャック面13における位置を安定させるために通常のプロセス中の静電吸着力よりも弱い吸着力で、静電チャック12はダミー基板DWを固定してもよい。
【0065】
ESC保護運転を終了する際には、チャック面13から基板搬送装置によってダミー基板DWが回収される。ダミー基板DWが静電チャック12に吸着されている場合には、搬出前に静電吸着が解除される。このようにして、チャック面13に提供された障壁が解除される。イオン注入プロセスを再開することができる。なおダミー基板DWの収納場所は真空処理室10の内部に設けられていてもよい。
【0066】
上述のように、ダミー基板DWによるESC保護は、静電チャック12のチャック面13を水平に保持可能である構成に好適である。一方、真空処理室10に設けられているシャッタ部材22によるESC保護は、静電チャック12のチャック面13を水平面に対し傾斜させて保持可能である構成に好適である。
【0067】
図3及び図4は、本発明の一実施形態に係るプラズマ処理装置2の一部を模式的に示す図である。図3及び図4に例示するプラズマ処理装置2は、図1に示すイオン注入装置1と同様に、静電チャック12を収容する真空処理室10を備える。静電チャック12は基板ホルダ(図示せず)に固定されている。
【0068】
プラズマ処理装置2は、プラズマドーピングを実行するための装置である。プラズマドーピングは所望の不純物導入層を基板Wの表面に形成する処理の一例である。不純物は例えばリンまたは炭素である。プラズマ処理装置2は、原料ガスを制御された流量で供給するための気体供給部と、供給された気体のプラズマを発生させるためのプラズマ源と、を備える。真空処理室10には、例えばターボ分子ポンプを含む真空排気系24が設けられている。
【0069】
真空処理室10は、ESC保護機構30を備える。ESC保護機構30は操作者が手動で操作するよう構成されている。図3にはESC保護機構30がプロセス中の待機位置にある状態を示し、図4にはESC保護機構30が静電チャック12の遮蔽位置にある状態を示す。図3は、静電チャック12のチャック面13を上から(チャック面13側から)見た上面図であり、図4は、その側面図である。
【0070】
ESC保護機構30は保護カバー32を備える。保護カバー32は保護表面23を備える。保護表面23は、プロセス中の待機位置とチャック面13を覆う遮蔽位置とに移動可能に構成されている。真空処理室10は、静電チャック12及び保護カバー32を外部から見るための窓部を備えてもよい。
【0071】
ESC保護機構30は、真空処理室10の外部で操作者が操作するための把持具としての操作部34と、操作部34を保護カバー32に連結する部材である導入棒36と、を備える。導入棒36の一端に操作部34が固定され、他端に保護カバー32がヒンジ38を介して回動可能に取り付けられている。導入棒36は、真空処理室10の壁面に形成された導入開口40に遊挿されている。
【0072】
ESC保護機構30は、導入開口40を気密に封じるためのベローズ42及び真空シール44を備える。ベローズ42の一端は操作部34に取り付けられ、真空処理室10から外部に突き出している導入棒36の部分がベローズ42に収容されている。ベローズ42の他端は真空シール44を介して、導入開口40を画定する真空処理室10の壁部分に取り付けられている。ベローズ42は、導入棒36に沿う方向に伸縮可能であり、当該方向に垂直な方向にもいくらか変形可能である。
【0073】
ESC保護機構30は、プロセス中に保護カバー32に異物が付着することを抑制するために、カバーケース46を備えてもよい。カバーケース46は、待機位置にある保護カバー32を収容する大きさをもつ。カバーケース46には、保護カバー32を出し入れするためのカバー出入口48が形成されている。カバー出入口48は、静電チャック12に近接するカバーケース46の部位に形成されている。
【0074】
本実施例においてもESC保護動作が行われる。真空処理室10の表面からチャック面13へのリンまたは炭素を含む異物の移転を抑制するために、プロセス休止期間にチャック面13がカバーされる。操作者は、プロセス休止期間における任意の時点でESC保護動作を開始し、終了することができる。操作者は例えば、真空排気系24を停止した状態でプラズマ処理装置2の運転を継続しているとき、または、真空排気系24の排気能力をプロセス中よりも低下させた状態で装置の運転を継続しているときに、ESC保護動作を行う。このとき、真空処理室10は、気密に保持されることにより、真空に保たれている。
【0075】
プラズマドーピング処理がなされた基板がプラズマ処理装置2から搬出された後に、チャック面13の遮蔽動作が行われる。操作者は、操作部34を操作することにより、ベローズ42を変形させながら、待機位置にある保護カバー32をチャック面13の遮蔽位置へと移動させる。操作者は、チャック面13を保護カバー32で蓋をするように保護カバー32の保護表面23をチャック面13に接触させる。保護カバー32と操作部34とを連結するヒンジ38が回転することにより、保護表面23をチャック面13に完全に接触させることができる。チャック面13は上方のプラズマ空間50から遮蔽される。このようにして、異物付着を妨げるための障壁がチャック面13に提供される。
【0076】
また、操作者は、遮蔽動作とは逆の操作で保護カバー32をチャック面13から待機位置へと戻す。このようにして、チャック面13に提供された障壁が解除される。プラズマドーピングのプロセスを再び実行することができる。
【0077】
なお、手動に代えて、ESC保護機構30は、操作部34または保護カバー32を移動するための移動装置を備えてもよい。また、図2に示す実施例と同様に、プラズマ処理装置2においても、ダミー基板を使用してチャック面13を保護してもよい。
【0078】
図5は、本発明の一実施形態に係るESC保護の効果を説明するための図である。図5は、静電チャック12に一度吸着不良が生じた後に再び吸着不良が発生するまでのウエハ処理枚数を示す。プラズマ処理装置2において吸着不良を生じた静電チャック12にESCクリーニングを適用したうえで、ダミー基板を使用するESC保護を行った。ESCクリーニングは、静電チャック12の表面を清掃する処理である。ウエハ枚数計測のための運転条件は、平日はプロセス休止時間を1日10時間以上とし、週末は2日間をプロセス休止時間とした。プロセス休止時間にダミー基板でESC保護を行った。
【0079】
図5には、比較例として、一度吸着不良が生じた後に次の4つの対処方法のそれぞれを適用した場合を示す。すなわち、チャンバ10のメンテナンスをした場合(比較例1)、ESCクリーニングのみをした場合(比較例2)、コンディショニングをした場合(比較例3)、プラズマリチャージをした場合(比較例4)の4つである。
【0080】
比較例1のメンテナンスは、チャンバ10を大気開放したうえで全体(静電チャック12を含む)を洗浄することを含む大がかりな処理である。比較例2は、そうしたチャンバメンテナンスをすることなく、静電チャック12のみの清掃をした場合である。比較例3のコンディショニングは、真空処理室10の内部全体を不純物(リン)でコーティングをする処理である。比較例4のプラズマリチャージは、静電チャック12の表面を(例えばヘリウムの)プラズマに晒す処理であり、ESC表面を軽くクリーニングする効果と表面電荷を除去する効果があるとされている。
【0081】
図示されるように、それぞれの対処方法を施した後に静電チャック12に再び吸着不良が起こるまでのウエハ処理枚数は、比較例1では約700枚、比較例2では数枚ないし数十枚、比較例3では対処直後から不良発生、比較例4では数十枚ないし約500枚であった。
【0082】
比較例1で処理枚数が多いのは、メンテナンス完了後のチャンバ内壁への不純物付着量がない状態からプラズマドーピング処理を再開しているから、当然である。比較例2に効果がないのは、上述のように、ESC以外のチャンバ表面に付着した不純物が再蒸発して静電チャック12に付着するからである。静電チャック12のみを清掃してもあまり意味がない。比較例3は、チャンバ内壁表面に敢えて不純物膜を付ける処理であり、効果がない。比較例4もそれほどの効果はない。比較例4において枚数にバラツキが大きいのは、ESC表面のクリーニング効果とチャンバ壁からの放出量とのせめぎ合いの結果であると考えられる。
【0083】
こうした比較例に対して、本発明の一実施形態に係るESC保護方法によれば、再度の吸着不良を生じることなく1665枚のウエハを処理することができた。その時点で枚数計測を終了しているが、吸着不良を生じていないので、引き続いてさらに多数枚のウエハを処理可能である。本発明の一実施形態によれば、静電チャックを保護部材で遮蔽するという簡単な操作で、大がかりなチャンバメンテナンスを超える処理枚数を実現できるという顕著な効果を得ることができる。本発明の一実施形態に係るESC保護は、真空処理装置の稼働率向上に大きく寄与する。
【0084】
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。
【0085】
本発明の一実施形態に係る静電チャック保護機構または静電チャック保護方法は、真空環境で揮発性を有する物質を含む表層(例えばリンまたは炭素を含む層)を基板に形成するプロセスを実行するための真空処理室を備える真空処理装置に適用することができる。こうした真空処理装置の一例は、上述のイオン注入装置1、及びプラズマ処理装置2である。真空処理装置の他の例として、CVD(化学蒸着)またはPVD(物理蒸着)等の成膜処理を基板に行うための成膜装置が挙げられる。
【0086】
一実施形態に係る静電チャック保護方法は、真空環境で揮発性を有する物質を含む異物の付着を妨げるための障壁を、露出されたチャック面に提供することを含んでもよい。この方法は、チャック面に静電吸着された基板に、真空環境で揮発性を有する物質を含む表層を形成するプロセスを実行するために、提供された障壁を解除することを含んでもよい。
【符号の説明】
【0087】
1 イオン注入装置、 2 プラズマ処理装置、 10 真空処理室、 12 静電チャック、 13 チャック面、 14 基板ホルダ、 16 第1駆動部、 18 第2駆動部、 22 シャッタ部材、 23 保護表面、 24 真空排気系、 26 制御装置、 30 ESC保護機構、 32 保護カバー、 50 プラズマ空間、 B イオンビーム、 DW ダミー基板、 W 基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンまたは炭素を含む不純物導入層を基板に形成するプロセスを実行するための真空処理室と、
前記真空処理室に収容され、基板を吸着するためのチャック面を含む静電チャックと、を備え、
前記真空処理室の表面から前記チャック面へのリンまたは炭素を含む異物の移転を抑制するために、プロセス休止期間の少なくとも一部において前記チャック面が遮蔽されるよう構成されていることを特徴とする不純物導入層形成装置。
【請求項2】
前記真空処理室を排気するための真空排気系をさらに備え、
前記プロセス休止期間の少なくとも一部は、前記真空処理室が真空に保たれておりかつ前記真空排気系が停止されている期間を含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記静電チャックは、前記チャック面の遮蔽中、吸着動作が停止されていることを特徴とする請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記真空処理室は、前記チャック面を遮蔽するための保護表面を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
前記プロセス中に基板を立てて保持するように前記静電チャックを支持する基板ホルダをさらに備え、前記基板ホルダは、前記保護表面に前記チャック面を近接または接触させるよう前記静電チャックを移動可能に支持することを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記保護表面は、前記プロセス中の待機位置と前記チャック面を遮蔽する遮蔽位置とに移動可能に構成されていることを特徴とする請求項4または5に記載の装置。
【請求項7】
前記チャック面を保護部材によって遮蔽する保護動作を制御する制御部をさらに備えることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
リンまたは炭素を含む異物の付着を妨げるための障壁を、露出されたチャック面に提供することと、
前記チャック面に静電吸着された基板にリンまたは炭素を含む不純物導入層を形成するプロセスを実行するために、前記障壁を解除することと、を含むことを特徴とする静電チャック保護方法。
【請求項9】
前記障壁は、前記チャック面を取りまく真空環境に低真空排気運転を実施しているときに提供されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
真空環境で揮発性を有する物質を含む表層を基板に形成するプロセスを実行するための真空処理室と、
前記真空処理室に収容され、基板を吸着するためのチャック面を含む静電チャックと、を備え、
前記真空処理室の表面から前記チャック面への前記物質を含む異物の移転を抑制するために、プロセス休止期間の少なくとも一部において前記チャック面が遮蔽されると共に前記プロセスの実行中は前記チャック面の遮蔽が解除されるよう構成されていることを特徴とする真空処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−25864(P2013−25864A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156015(P2011−156015)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【出願人】(000183196)株式会社SEN (31)
【Fターム(参考)】