説明

不織ウェブ用の自己架橋型ビニルアセテート−エチレンポリマーバインダー

【課題】一般的な含浸水準で高い湿潤/乾燥抗張力比を有する自己架橋型ビニルアセテートエチレン系ポリマーバインダーを提供する。
【解決手段】ビニルアセテート、エチレン及び架橋モノマーのエマルション重合単位を含むポリマーバインダーと結合した繊維の不織ウェブを含む不織布製品の改良に向けられている。上記ポリマーは、約0.5〜3重量%の臨界ミセル濃度を有する界面活性剤で安定化されている。上記界面活性剤は、ポリマーの総重量に基づいて、1重量%未満の量において重合中で用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
不織ウェブは、ペーパータオル、紙おむつ、ろ過製品、使い捨て雑巾等を含む複数の最終用途における適用を見出している。不織製品又は布帛には、ゆるく集成させたウェブ、又は接着剤、ポリマー若しくはポリマーバインダーと結合した繊維の塊が含まれる。繊維には、セルロース又はポリマー材料、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリレート等が含まれることが多い。ポリマーバインダーが適用される不織布用繊維のベースウェブを、カーディング(carding)、ガーネッテfィング(garnetting)、エアレイイング(airlaying)、ペーパーメイキング(papermaking)手順、又は他の公知の操作により生産することができる。ポリマーバインダーと共に実施される結合繊維(bonding fiber)は、織物を製造するために一般的な紡糸及び機織を用いるのよりも非常に安価であり、そして結合された不織布を、さらに均一な構造を有し、ほつれる傾向なく、そして顕著な吸水性、多孔性及び弾力性を有する、単位重量当り、より大きな厚さの範囲で製造することができる。
【背景技術】
【0002】
許容できる不織製品をもたらす2つの主要な要因は、不織製品の湿潤抗張力及び「触感」である。パーソナルケア製品、例えば、ティッシュ、ハンドワイプ及び生理用ナプキンは、濡れた場合にそのまま残り、そして皮膚と接触した際に十分な柔軟性を残すような、十分な湿潤抗張力を有しなければならない。しかし、望ましい又は十分な湿潤抗張力を得るために、上記ポリマーの乾燥抗張力を高めること、又はポリマーバインダーのより高い含浸水準を用いることは、よく行われることである。不織製品の乾燥抗張力を高くすると、当該製品に剛性又は硬さが付与され、そして当該不織製品に接触すると不快になる傾向がある。従って、ポリマーバインダーの含浸濃度をより高くすることは、上記製品の「触感」と、より大量のポリマーバインダーを用いるコストとのために望ましくない。
【0003】
不織製品の湿潤抗張力を、その乾燥抗張力に関連して改良する産業の動きがあり、そして不織製品の乾燥抗張力は、一般的に、その湿潤抗張力に従属する。高い湿潤/乾燥抗張力比を有する製品が望ましい、というのは、それにより当該不織製品のより低いポリマー含浸水準が可能となり、そして製造コストが安くなり、湿潤抗張力が犠牲となることはない。
【0004】
自己架橋モノマーを導入した、ビニルアセテート及びエチレン主鎖に基づくポリマーバインダーが、不織産業に広く用いられている。ポリマー中のエチレンにより、製品に柔軟性が付与され、そして低コストとなる。しかし、上記製品中の柔軟性は、湿潤抗張力を犠牲にすることが多い。ポリマー中で自己架橋性モノマーの濃度を増やすことは、湿潤強度を増すための実施可能な選択肢ではないことが多い。その背景に対して、一般的な含浸水準で高い湿潤/乾燥抗張力比を有する自己架橋型ビニルアセテートエチレン系ポリマーが不織産業に望まれている。
【0005】
不織製品を製造するために用いられる種々のビニルアセテート系バインダー組成物の代表には、下記が含まれる。
米国特許第3,081,197号明細書(Adelman、1963)には、ビニルアセテートと、内部可塑剤(例えば、ブチルアクリレート及びジブチルマレエート)として好適な重合性化合物、後硬化性のコモノマー(例えば、N−メチロールアクリルアミド)とのポリマーを含む不織布用バインダーが開示されている。上記バインダーは、非イオン性、アニオン性又はカチオン性分散剤を含む水性分散系中で複数のモノマーを共重合することにより調製されうる。
【0006】
米国特許第6,562,892号明細書(Eknoianら、2003)には、水分散性を有するが、0.5%以上の無機塩を含む水溶液中で非分散性であり、そして親水性ポリマーコロイドで安定化されている、55重量%超のエチレンを有するエチレン−ビニルアセテートエマルションポリマーが開示されている。上記親水性ポリマーコロイドには、少なくとも1種の親水性モノマーが含まれる。当該親水性モノマーは、カルボン酸、例えば、カルボン酸又はジカルボン酸、スルホン酸、又はホスホン酸(phosphonic)基を含む酸性モノマーでありうる。
【0007】
米国特許第3,137,589号明細書(Mannheimら、1964)には、少なくとも1種のメチロール基及び別の不飽和の重合性化合物により、窒素上に置換されたα、β−不飽和カルボン酸アミドのコポリマーを含むバインダーが開示されている。
米国特許第3,380,851号明細書(Lindemannら、1968)には、ビニルアセテート−エチレン−N−メチロールアクリルアミドの共重合体を含むバインダーが開示されている。エチレン含有率は、5〜40重量%である。
【0008】
米国特許第4,449,978号明細書(Iacoviello、1984)には、ビニルアセテート、エチレン、N−メチロールアクリルアミド及びアクリルアミドモノマーの共重合体を含むバインダーと結合した繊維の不織ウェブから製造した不織製品が開示されている。上記不織製品は、残余の遊離のホルムアルデヒド含有率が少ないことと、良好な引張特性を有することとが報告されている。
【0009】
米国特許第5,540,987号明細書(Mudgeら、1996)には、不織製品用の、ホルムアルデヒドフリー及びホルムアルデヒドが少ないビニルアセテート−エチレンバインダーの生成が開示されている。これらのバインダーは、有機過酸化物及びアスコルビン酸に基づく開始剤系を用いたエマルション重合により製造されている。架橋剤は、ホルムアルデヒドが少ない不織布用にはN−メチロールアクリルアミド、そしてホルムアルデヒドフリーの不織布用にはN−イソ−ブトキシメチルアクリルアミドであることができる。
【0010】
米国特許出願公開第2003/0232559号明細書(Goldsteinら、2003)には、ビニルアセテート、エチレン、塩化ビニル、及び自己架橋型モノマーの重合単位を含むポリマーが含まれる接着剤ポリマーバインダーが開示されている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、エマルション重合法により製造した、ビニルアセテート、エチレン、及び架橋モノマーが含まれるポリマーバインダーと結合した繊維の不織ウェブが含まれる改良された不織製品に向けられている。
改良された湿潤抗張力をもたらす当該不織製品中の改良には、下記が含まれる:上記エマルション重合法中で安定化剤として、約0.5〜3重量%、好ましくは約1〜2重量%の臨界ミセル濃度(CMC)を有する界面活性剤を用いること。好ましい実施態様では、上記界面活性剤は、上記ポリマーの総重量に基づいて、一般的に1重量%未満の量で、上記エマルション重合法において用いられる。
【0012】
大きな優位性は、少ない界面活性剤、ビニルアセテート/エチレン系エマルションポリマーを導入するこれらの不織製品を用いて得ることができ、そしてこれらは、下記を含む;
不織製品向けの現行のエマルション重合された架橋性ビニルアセテート−エチレンエマルションポリマー技術を改良できること、ここで、セルロース含有ウェブ中で優れた吸収速度と共に、高い湿潤抗張力が、妥当なコーティング重量において与えられる:及び
紙用途向けに、自己架橋型ビニルアセテート−エチレン−塩化ビニルバインダーを適用することにより、現行のエマルション重合された架橋性ビニルアセテート−エチレンエマルションポリマー技術を改良できること。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、自己保持型(self−sustaining)ウェブを製造するためにエマルション重合により製造された十分な量のポリマーバインダーと結合した繊維の不織ウェブを含む不織製品の改良に向けられている。上記ポリマーバインダーには、ビニルアセテート、エチレン、及び架橋モノマーの重合単位が含まれる。上記不織製品の改良は、ポリマーバインダーにあり、そこでは、当該ポリマーのエマルション重合に用いられる安定化剤は、0.5〜3重量%、そして好ましくは約1〜2重量%のCMCを有する界面活性剤である。CMCは、ミセルが生成する上記溶液中の界面活性剤の濃度である。
【0014】
好ましい実施形態では、上記エマルション重合中の界面活性剤は、ポリマーの総重量に基づいて、一般的に1重量%未満、好ましくは0.8重量%未満の量で用いられる。より高濃度、例えば、上記ポリマーの総重量に基づいて、最大2〜2.5重量%の界面活性剤を用いることができるが、より高濃度は、より高いコストに寄与する一方で、大きな優位性を提供しない。
【0015】
上記ビニルアセテート系エマルションポリマーは、3%〜30重量%の範囲にわたるエチレンの重合単位、1%〜10重量%(好ましくは、3%〜6重量%)の架橋モノマーの重合単位、及びビニルアセテートである残余のポリマーを一般的に含む。概して、上記ポリマー中のエチレンの水準は、約5〜20℃の、上記ポリマーのガラス転移温度を提供する水準である。
【0016】
上記ポリマー又はポリマーバインダーを生成させるために好適な架橋モノマーには、N−メチロールアクリルアミド(NMA)、概して50/50のモル比におけるNMA及びアクリルアミドの混合物(MAMDと称されることが多い);アクリルアミドブチルアルデヒド、ジメチルアセタール、ジエチルアセタール、アクリルアミドグリコール酸、メチルアクリルアミドグリコレートメチルエーテル、イソブチルメチロールアクリルアミド等が含まれる。NMA及びMAMDは、市販の選択の架橋剤である。
【0017】
他のコモノマーを、本明細書に記載される不織商品用の、ポリマーのエマルション重合に用いることができる。上記ポリマー中に導入することができる他のコモノマーの量の例は、上記ポリマーの総重量に基づいて、約0.5〜10重量%及び3〜8重量%である。コモノマーの例には、塩化ビニル、C1〜8(メタ)アクリレート、例えば、ブチル及び2−エチルヘキシルアクリレート、ビニルC8〜12脂肪族エステル、例えば、ビニルバーサテート;及びカルボン酸、例えば、(メタ)アクリル酸が含まれる。1種又は2種以上のモノマーが用いられる場合には、塩化ビニルは好ましいコモノマーである。というのは、塩化ビニルは、不織製品内でより高い湿潤抗張力を提供し、そしてまた、一部耐燃性を提供するからである。
【0018】
不織商品の湿潤抗張力を高めるためのキーの一つは、エマルション重合されたポリマーバインダーの生成に用いられる安定化系にある。一方、エマルション重合されたビニルアセテート系ポリマーを生成させる従来様式において、種々の界面活性剤、例えば、非イオン性、アニオン性及びカチオン性界面活性剤が用いられ、これらの界面活性剤を高濃度、例えば、上記ポリマーの総重量に基づいて、2〜3重量%で用いることが伝統的である。ビニルアセテート系ポリマーのエマルション重合の実施において、0.5〜3重量%(好ましくは約1〜2重量%)の界面活性剤のCMCを有する界面活性剤を用いると、得られる不織製品に大きな利益が得られることが見出された。約1重量%未満の界面活性剤を用いることがまた好ましい。界面活性剤の量はまた、上記エマルション重合中のポリマーの総重量に基づいて、0.8重量%未満か、又は0.4〜0.8重量%であることができる。
【0019】
上記エマルション重合中で用いられる安定化剤の最小量は、安定なエマルションを生成させるために十分な量であるべきである。記載されるCMCを有する界面活性剤を使用することにより、安定性を犠牲にすることなくエマルション重合においてより少ない界面活性剤を用いることが可能となり、そして上記不織製品により高い湿潤強度を与えることができるポリマーの製造が可能となる。
0.5〜3重量%のCMCを有する界面活性剤の例には、スルホコハク酸ナトリウム、2−エチルヘキシル硫酸ナトリウム、イソブチルスルホコハク酸ナトリウム、ジアミルスルホコハク酸ナトリウム、ジシクロヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、及びジイソプロピルナフタレンスルホコハク酸ナトリウムのジヘキシルエステルが含まれる。スルホコハク酸ナトリウムのジヘキシルエステルが、好ましい界面活性剤である。
【0020】
また、上記重合法において、あらかじめ記載された界面活性剤を用いることに加えて、上記ポリマーに共重合性の安定化モノマーを導入することが好ましい。安定化モノマーの例には、官能性モノマー、例えば、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)又はビニルスルホン酸ナトリウム(SVS)が含まれる。上記共重合性の安定化モノマーを、上記ポリマーの重量に基づいて、0.5〜5wt%、好ましくは0.5〜2wt%の範囲の濃度において用いることができる。
【0021】
不織製品の形成において、始動層又は塊は、繊維を、ウェブ又は層に堆積又は配列させるための一般的技法の一つにより形成されうる。これらの技法には、カーディング、ガーネッティング、エアレイイング等が含まれる。1種又は2種以上のこれらの技法により形成された個々のウェブ又は薄層をまた、布帛に転換するためのより厚い層を提供するために積層することができる。概して、繊維は、多孔質の開口構造を形成するために、お互いにオーバーラップし、交差し、そして支持する布帛の大部分の面と一般的に一直線となって複数の異なる方向に伸びている。「セルロース」繊維が参照された場合、主にC6105基を含むセルロース繊維を意味する。従って、始動層に用いるべき繊維の例は、天然セルロース繊維、例えば、木材パルプ、綿及び麻、並びに合成セルロース繊維、例えば、レーヨン及び再生セルロースである。
【0022】
繊維の始動層は、少なくとも50%のセルロース繊維を含むか、あるいはそれらは、天然若しくは合成又はそれらの組み合わせであることが多い。上記始動層中の繊維は、天然繊維、例えば、羊毛又はジュート;人造繊維、例えば、セルロースアセテート;合成繊維、例えば、ポリアミド、ナイロン、ポリエステル、アクリル、ポリオレフィン、すなわち、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン等を、単独又はお互い組み合わせて含むことができる場合が多い。上記繊維の始動層は、自己保持型ウェブを生成させるために、個々の繊維を共に固定するいくつかの型の結合操作の少なくとも1つを受ける。さらに良好な公知の結合方法のいくつかは、一般的に上記ウェブを横断するか又はダイアゴナルに伸び、そしてさらに必要に応じて上記ウェブに沿って伸びるバインダーの断続的又は連続的な直線若しくは破線又は面積と共に、上記ウェブを印刷するか又は全体的に含浸させることである。
【0023】
上記繊維の始動ウェブに適用されるポリマーバインダーの、乾燥基準に対して計算される量は、一般的に約3重量%以上であり、そして所望の特性によっては、当該始動ウェブの約10重量%〜約100重量%又はそれ超、好ましくは当該始動ウェブの約10〜約30重量%である。次いで、含浸させたウェブを乾燥させ、そして硬化させる。従って、コーティングされたウェブは、空気炉等を通し、次いで硬化炉を通すことにより好適に乾燥される。最適な架橋を得るための典型的な条件は、十分な時間及び温度である、例えば、65℃〜90℃で、4〜6分間乾燥させ、次いで150℃〜155℃で3〜5分間又はそれ以上硬化させる。しかし、当業界に周知の他の温度−時間関係式を用いることができ、より高温でより短時間、又はより低温でより長時間が用いられる。
【0024】
次の例は、本発明の種々の実施形態を具体的に説明するために提供され、そしてそれらの範囲を制限することを目的とするものではない。
【実施例】
【0025】
例1
スルホコハク酸ナトリウムのジヘキシルエステル界面活性剤を用いた、ビニルアセテート、エチレン及びNMAの不織布用バインダー
下記の混合物を、1ガロンのステンレス鋼圧力反応器に充填した。
【0026】
【表1】

【0027】
硫酸鉄(II)アンモニウム(ferrous ammonium sulfate)及びビニルアセテートの添加前に、酢酸を添加してpHを4.5に調整した。
【0028】
下記遅延添加(delay)混合物を利用した。
【0029】
【表2】

【0030】
窒素雰囲気生成装置(nitrogen blanket)と共に、300rpmで撹拌を開始した。次いで、撹拌を900rpmまで速め、そして上記反応器を55℃まで加熱した。225gのエチレンを用いて上記反応器を加圧(675psig;4755kPa)した後、平衡時間が続き、0.40g/分における過硫酸ナトリウムと、0.40g/分におけるエリソルビン酸ナトリウム溶液とを添加して、重合を開始させた。開始のところで、8.8g/分でビニルアセテート遅延添加を開始し、2.16g/分でNMA遅延添加を開始し、そして次の30分間にわたり、反応器温度を、85℃まで上げた。上記過硫酸ナトリウム及びエリソルビン酸ナトリウムレドックス速度を、相当の重合速度が維持されるように調整した。上記ビニルアセテート及びNMA遅延添加が完了した後、未反応のビニルアセテート濃度を2wt%未満にするように、段階において上記レドックス速度を増加させた。上記ビニルアセテート遅延添加が完了した5分後、反応器温度を、25分にわたり、55℃まで下げた。次いで、当該反応器含有物を脱泡容器に移動させ、そして1gのコロイド675消泡剤を添加した。得られたエマルションポリマーの下記の特性を評価した。
【0031】
【表3】

【0032】
ポリマーの総重量に基づくそれぞれの成分のパーセンテージは、ビニルアセテート82.7%、エチレン10.9%、NMA4.2%、AMPS2.2%及び界面活性剤0.4%と計算された。
【0033】
例2
スルホコハク酸ナトリウムのジオクチルエステルにおけるビニルアセテート、エチレン及びNMAの不織布用バインダー
比較の目的で、ポリマーバインダーの製造において、Aerosol MA−80−I界面活性剤を、Aerosol (商標)A−102界面活性剤及びRhodacal(商標)DS10界面活性剤に置換したことを除いて、例1の手順を繰り返した。Aerosol A−102界面活性剤及びRhodacal DS10界面活性剤は、不織製品向けに好適なビニルアセテート系ポリマーを調製するために一般的に用いられ、そして約0.08〜0.12重量%のCMCを有する。
【0034】
下記混合物を、1ガロンのステンレス鋼圧力反応器に充填した。
【0035】
【表4】

【0036】
硫酸鉄(II)アンモニウム及びビニルアセテートの添加前に、酢酸を添加してpHを4.5に調整した。
下記遅延添加混合物を利用した。
【0037】
【表5】

【0038】
窒素雰囲気生成装置と共に、300rpmで撹拌を開始した。次いで、撹拌を900rpmまで速め、そして上記反応器を55℃まで加熱した。225gのエチレンを用いて上記反応器を加圧(741psig;5211kPa)した後、平衡時間が続き、0.40g/分における過硫酸ナトリウムと、0.40g/分におけるエリソルビン酸ナトリウム溶液とを添加して、重合を開始させた。開始のところで、10.6g/分でビニルアセテート遅延添加を開始し、2.49g/分でNMA遅延添加を開始し、そして次の30分間にわたり、反応器温度を85℃まで上げた。上記過硫酸ナトリウム及びエリソルビン酸ナトリウムレドックス速度を、相当の重合速度が維持されるように調整した。上記ビニルアセテート及びNMA遅延添加が完了した後、未反応のビニルアセテート濃度を2wt%未満にするように、段階において上記レドックス速度を増加させた。上記ビニルアセテート遅延添加が完了した5分後、反応器温度を、25分にわたり、55℃まで下げた。次いで、当該反応器含有物を脱泡容器に移動させ、そして1gのRhodoline 675消泡剤を添加した。得られたエマルションポリマーの下記の特性を評価した。
【0039】
【表6】

【0040】
ポリマーの総重量に基づくそれぞれの成分のパーセンテージは、ビニルアセテート82.2%、エチレン11.8%、NMA4.0%、AMPS2.0%及び界面活性剤0.9%と計算された。
【0041】
例3
スルホコハク酸ナトリウムのジヘキシルエステル界面活性剤を用いた、ビニルアセテート、エチレン、塩化ビニル及びNMAの不織布用バインダー
【0042】
上記エマルション重合に塩化ビニルが含まれることを除いて、例1の手順を繰り返した。この例の目的は、上記ポリマー中の塩化ビニル包含物が不織製品に用いられると、湿潤/乾燥強度を改良する上で有効であるか決定するためである。
下記の混合物を、1ガロンのステンレス鋼圧力反応器に充填した。
【0043】
【表7】

【0044】
硫酸鉄(II)アンモニウム、ビニルアセテート及び塩化ビニルの添加前に、酢酸を添加してpHを4.5に調整した。
下記遅延添加混合物を利用した。
【0045】
【表8】

【0046】
窒素雰囲気生成装置と共に、300rpmにおける撹拌を開始した。次いで、撹拌を900rpmまで速め、そして上記反応器を55℃まで加熱した。225gのエチレンを用いて上記反応器を加圧(691psig;4866kPa)した後、平衡時間が続き、0.40g/分における過硫酸ナトリウムと、0.40g/分におけるエリソルビン酸ナトリウム溶液とを添加して、重合を開始させた。開始のところで、10.8g/分でビニルアセテート遅延添加を開始し、2.46g/分でNMA遅延添加を開始し、1.2g/分で塩化ビニル遅延添加を開始し、そして次の30分間にわたり、反応器温度を、85℃まで上げた。上記過硫酸ナトリウム及びエリソルビン酸ナトリウムレドックス速度を、相当の重合速度が維持されるように調整した。上記ビニルアセテート、NMA及び塩化ビニル遅延添加が完了した後、未反応のビニルアセテート濃度を2wt%未満にするように、段階において上記レドックス速度を増加させた。上記ビニルアセテート遅延添加が完了した20分後、反応器温度を、25分にわたり、55℃まで下げた。次いで、当該反応器含有物を脱泡容器に移動させ、そして1gのRhodoline 675消泡剤を添加した。得られたエマルションポリマーの下記の特性を評価した。
【0047】
【表9】

【0048】
ポリマーの総重量に基づくそれぞれの成分のパーセンテージは、ビニルアセテート75.1%、エチレン10.8%、塩化ビニル8.1%、NMA4.8%、AMPS1.1%及び界面活性剤0.6%と計算された。
【0049】
例4
スルホコハク酸ナトリウムのジヘキシルエステル界面活性剤を用いた、ビニルアセテート、エチレン、塩化ビニル及びNMAの不織布用バインダー
全てのVCIを、反応内で遅延添加させたことを除き、例3の手順を繰り返した。VCIはバッチ処理しないが、例1では、一部のVCIをバッチ処理した。
下記の混合物を、1ガロンのステンレス鋼圧力反応器に充填した。
【0050】
【表10】

【0051】
硫酸鉄(II)アンモニウム及びビニルアセテートの添加前に、酢酸を添加してpHを4.5に調整した。
下記遅延添加混合物を利用した。
【0052】
【表11】

【0053】
窒素雰囲気生成装置と共に、300rpmで撹拌を開始した。次いで、撹拌を900rpmまで速め、そして上記反応器を55℃まで加熱した。250gのエチレンを用いて上記反応器を加圧(749psig;5266kPa)した後、平衡時間が続き、0.40g/分における過硫酸ナトリウムと、0.40g/分におけるエリソルビン酸ナトリウム溶液とを添加して、重合を開始させた。開始のところで、10.8g/分でビニルアセテート遅延添加を開始し、2.46g/分でNMA遅延添加を開始し、1.2g/分で塩化ビニル遅延添加を開始し、そして次の30分間にわたり、反応器温度を、85℃まで上げた。
【0054】
上記過硫酸ナトリウム及びエリソルビン酸ナトリウムレドックス速度を、相当の重合速度が維持されるように調整した。上記ビニルアセテート、NMA及び塩化ビニル遅延添加が完了した後、未反応のビニルアセテート濃度を2wt%未満にするように、段階において上記レドックス速度を増加させた。上記ビニルアセテート遅延添加が完了した25分後、反応器温度を、25分にわたり、50℃まで下げた。次いで、当該反応器含有物を脱泡容器に移動させ、そして1gのRhodoline 675消泡剤を添加した。得られたエマルションポリマーの下記の特性を評価した。
【0055】
【表12】

【0056】
ポリマーの総重量に基づくそれぞれの成分のパーセンテージは、ビニルアセテート75.6%、エチレン12.1%、塩化ビニル7.0%、NMA4.1%、AMPS1.1%及び界面活性剤0.6%と計算された。
【0057】
例5
不織ウェブ内のポリマーバインダーの評価
【0058】
例1〜例4のバインダーを、不織セルロース基布で伸縮性能を評価し、そして市販のビニルアセテート系ポリマー、すなわち、不織製品を製造するために商業的に用いられているAIRFLEX(商標)192ポリマーエマルションと比較した。AIRFLEX 192は、例1のポリマーと類似のVAE/NMA組成の自己架橋型ビニルアセテート−エチレン(VAE)ポリマーエマルションであり、約10〜12℃のTgを有する。AIRFLEX192ポリマーエマルションに用いられる安定化剤は、上記ポリマーの重量に基づいて、約2〜2.5%の量で用いられる界面活性剤を含み、そして約0.08〜0.12重量%のCMCを有する。
【0059】
高性能の不織ウェブを生成させる方法には、下記段階;
水性ポリマーエマルションを、セルロース系不織ウェブに、スプレー適用又は印刷適用法のいずれかで適用する段階;
過剰の水を除去する段階;そして
架橋性ポリマーを、有効量のアンモニウムクロリド触媒と架橋させ、そして加熱し、完全な反応を確保する段階:
が含まれる。
続いて、結合された基布を調整し、均一なストリップに切断し、そして乾燥及び湿潤引張特性の両方に関して、引張試験機、例えば、Instronで試験した。
【0060】
次の手順を、本明細書に記載される材料の評価に用いた。バインダー配合物は、本明細書に記載されるエマルションポリマー組成物、水、自己架橋反応用の触媒としての1%(固形分に対する固形分)のアンモニウムクロリド(NH4Cl)、及び少量の湿潤界面活性剤を含んでいた。上記バインダー組成物を、固形分10%まで希釈し、そしてセルロースと低融点複合繊維との85:15ブレンドのエアレイドウェブ(供給時、基本重量75g/m2)に均一にスプレーした。バインダーの目標となる含浸重量は、20wt%+/−2wt%であった。スプレーされたウェブを乾燥し、そして160℃で3分間、空気炉を通し、Mathis LTE内で硬化させた。
【0061】
業界標準と同様の試験方法、例えば、ASTM−D1117(紙及び板紙の強度の機械的引張試験)、TAPPI T−494(乾燥抗張力)及びTAPPI T−456(Finchカップ装置を用いた湿潤抗張力の測定)を用いて、抗張力を評価した。
【0062】
湿潤抗張力を評価するための特有の手順は、次の通りである。最終の(結合した)乾燥かつ硬化したエアレイドウェブを、基布の幅方向に5cm幅のストリップに切断した。当該ストリップを、湿潤抗張力流体(脱イオン水か、又は少量の湿潤剤、例えば、0.5%(固形分に対する固形分)Aerosol−OT、市販のジオクチルスルホコハク酸ナトリウム界面活性剤を有する脱イオン水のどちらかを添加した)で満たしたFinchカップの周りに巻きつけた。次いで、TAPPI T−456法の手順を続けた。Instron Model 1122引張試験機を用いて、乾燥及び湿潤抗張力を測定した。当該抗張力は、5cm当りのグラム数において報告される(g/5cm)。
【0063】
データを、表1に説明する。この表において、湿潤及び乾燥抗張力の両方の値の平均を採った。上記湿潤抗張力は、対照のパーセンテージとして特徴付けた(AIRFLEX 192 VAEの湿潤抗張力の値で割った具体的な例の湿潤%の値)。例及びAIRFLEX 192 VAE対照に関する絶対値は、試験間の時間差により代表となるものではない。各実施の間の比較を行う目的で、湿潤%/AIRFLEX 192 VAEの値を用いなければならない。
【0064】
【表13】

【0065】
AIRFLEX 192 VAEと、例1のポリマーとを比較することにより、AIRFLEX 192 VAE(当該界面活性剤は、臨界ミセル濃度が低い)と比較して高い臨界ミセル濃度の界面活性剤の存在下で重合を実施すると、湿潤抗張力が約18%高くなることができることが示された。塩化ビニルを上記ポリマーに導入すると、湿潤抗張力は、約30%高くなることができる(例3及び例4)。
【0066】
一方、例2のポリマーにより、0.08〜0.1重量%の範囲の臨界ミセル濃度を有する乳化剤を選択した上記不織製品の湿潤抗張力は、対照であるAIRFLEX 192 VAEと比較して改良されなかったことが示された。安定化コモノマーを用いているが、上記エマルション重合においてAerosol A−102を用いて製造した例2のポリマーにより、AIRFLEX 192 VAE対照に実質的に等価の不織製品が生じた。また、上記エマルション重合において、AIRFLEX 192 VAE対照内で用いられたのよりも、低濃度の界面活性剤を用いた事実は、当該界面活性剤の減量が、湿潤抗張力を優位に改良しなかったことを示している。
【0067】
上述のように、上記ポリマーに少量の塩化ビニルを導入した例3及び例4の結果は、対照であるAIRFLEX 192 VAEと比較して、湿潤抗張力に大きな改良を示した。従って、低濃度の界面活性剤と、界面活性剤の種類と、上記ポリマー中の塩化ビニルとの組み合わせにより、不織製品の改良がもたらされた。
例1、例3及び例4のポリマーはまた、優れた吸収速度を示し、そして対照のAIRFLEX 192 VAEポリマーバインダーに匹敵した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己保持型ウェブを生成させるために十分な量のポリマーバインダーと結合させた繊維の不織ウェブを含む不織製品であって、
前記ポリマーバインダーは、ビニルアセテート、エチレン及び架橋モノマーを含み、
前記ポリマーバインダーは、エマルション重合により生成し、
改良は下記を含む:
前記エマルション重合において0.5〜3重量%の臨界ミセル濃度を有する界面活性剤を用いること。
【請求項2】
前記ポリマーのエチレン含有率が、前記ポリマーの総重量に基づいて、約3〜30重量%である、請求項1に記載の不織製品。
【請求項3】
前記架橋モノマーが、前記ポリマーの総重量に基づいて、1〜10重量%の量で前記ポリマー中に存在する、請求項2に記載の不織製品。
【請求項4】
前記界面活性剤が、前記ポリマーバインダーの1重量%未満の量で前記エマルション重合において用いられた、請求項2に記載の不織製品。
【請求項5】
前記ポリマーが、前記ポリマーの総重量に基づいて、0.5〜5%の共重合性の安定化モノマーを含む、請求項3に記載の不織製品。
【請求項6】
前記共重合性の安定化モノマーが、ビニルスルホン酸ナトリウム及び2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸から成る群から選択される、請求項5に記載の不織製品。
【請求項7】
前記界面活性剤の臨界ミセル濃度が、約1〜2重量%である、請求項6に記載の不織製品。
【請求項8】
前記エマルション重合において用いられる界面活性剤が、スルホコハク酸ナトリウム、2−エチルヘキシル硫酸ナトリウム、イソブチルスルホコハク酸ナトリウム、ジアミルスルホコハク酸ナトリウム、ジシクロヘキシルスルホコハク酸ナトリウム及びジイソプロピルナフタレンスルホコハク酸ナトリウムのジヘキシルエステルから成る群から選択される、請求項7に記載の不織製品。
【請求項9】
前記ポリマーのTgが5〜20℃である、請求項8に記載の不織製品。
【請求項10】
前記ポリマーが、前記ポリマーの総重量に基づいて、0.5〜10重量%の塩化ビニルを含む、請求項9に記載の不織製品。
【請求項11】
前記ポリマーが、前記ポリマーの総重量に基づいて、3〜8重量%の塩化ビニルを含む、請求項9に記載の不織製品。
【請求項12】
前記ポリマーが、ポリマーの総重量に基づいて、0.5〜10重量%のビニルバーサテートを含む、請求項9に記載の不織製品。
【請求項13】
自己保持型ウェブを生成させるために十分な量のポリマーバインダーと結合させた繊維の不織ウェブを含む不織製品であって、
前記ポリマーバインダーは、5〜20℃のガラス転移温度を有するポリマーを含み、
前記ポリマーは、ビニルアセテート、エチレン及び架橋モノマーの重合単位を含み、
前記ポリマーは、エマルション重合により生成し、
ここで、1〜2重量%の臨界ミセル濃度を有する界面活性剤が前記エマルション重合において用いられ、そして前記界面活性剤は、前記ポリマーの0.4〜0.8重量%の量で、前記エマルション重合において用いられる。
【請求項14】
前記エマルション重合において用いられる界面活性剤が、スルホコハク酸ナトリウムのジヘキシルエステルである、請求項13に記載の不織製品。
【請求項15】
前記ポリマーがまた、ビニルスルホン酸ナトリウム及び2−アクリルアミド−2メチルプロパンスルホン酸から成る群から選択される共重合性の安定化モノマーを、前記ポリマーの重量に基づいて0.5〜2重量%含む、請求項14に記載の不織製品。
【請求項16】
前記ポリマーがまた、前記ポリマーの総重量に基づいて、3〜8重量%の塩化ビニルを含む、請求項14に記載の不織製品。