説明

不織乾式堆積型クレープ材を形成する方法および装置

繊維材を形成する方法は、パルプ、液体、および脱結合剤の混合物を生成する工程を含む。その混合物を乾燥することによってパルプを生成し、そのパルプは、一般に、バインダ繊維と混合され、各バインダ繊維はコアおよび外層を有する。コアは第1の融解温度を有し、外層は第1の融解温度より低い第2の融解温度を有する。方法は、基礎繊維材の層を形成するために、パルプおよびバインダ繊維を乾式堆積機に提供する工程を含む。一実施形態では、バインダ繊維の外層を少なくとも部分的に融解するように基礎繊維材の層が加熱される。方法は、層に結合物質を塗布する工程と、層をクレープ加工する工程と、繊維材を形成するために層を硬化する工程とを含む。あるいは、方法は、基礎繊維材の層をエンボス処理する工程と、基礎繊維材の層に化学結合剤を噴霧する工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ペーパタオル、ティッシュペーパ、布巾、ナプキンなど様々な製品を製造するのに使用することができる不織生地、ならびにそのような生地を製造する方法に関する。
【0002】
この出願は、2005年9月1日出願の米国特許仮出願第60/713,406号、および2005年9月12日出願の米国特許仮出願第60/716,583号の利益を主張するものである。
【背景技術】
【0003】
一般に、ペーパタオルまたは布巾は、湿式堆積もしくは湿式成形過程、単式再クレープ加工(シングル・リクレーピング)および二重式再クレープ加工(ダブル・リクレーピング)として知られている湿式成形の変形形態、または乾式堆積、空気堆積、もしくは乾式成形過程のいずれを使用しても製作することができる。
【0004】
湿式堆積または成形は、水とパルプのスラリーを生成する工程を含む。スラリーは、抄紙機で布に形成される。単式再クレープ加工(「SRC」)は、湿式成形された紙のシートにバインダを含浸させる工程と、その一方の表面をクレープ加工(縮み加工、縮緬状加工)する工程とを含む。二重式再クレープ加工(「DRC」)は、湿式成形された紙のシートにバインダを含浸させる工程と、その両方の表面をクレープ加工する工程とを含む。乾式堆積または成形は、真空によって繊維をメッシュテーブルまたはコンベヤに貼り付ける工程と、次いで、生地を結合して繊維を一体に保持する工程とを含む。
【0005】
上記の過程は、いくつかの欠点を有する。一般に、湿式堆積生地は、水素結合によって一体に保持されている。しかし、水素結合は水に可溶性であるので、湿式成形生地の湿潤強度は本質的に限定されている。さらに、殆どの抄紙機は、比較的長い繊維は取り扱うことができないので、湿式成形生地に使用される繊維の長さまたは寸法は限定されている。
【0006】
SRCおよびDRCは、一般に、満足のいく最終製品を提供するが、比較的費用が嵩む。これは、一部には、SRCおよびDRCの最初の工程が、従来の湿式堆積抄紙機で製造される紙に依拠しているからである。この種の機械は、稼動および維持に費用が掛かる。
【0007】
乾式堆積過程では、不織生地の引張強度は、ラテックスなどの結合剤を適用(塗布)して生地の1つまたは複数の面に薄膜を生成することによって、増強することができる。ただし、このようにラテックスを適用すると、柔軟性および拭取り能力を減退させることがしばしばある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、ペーパタオル、布巾などに使用するのに適した生地を生成するための改良された方法および装置を有することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態では、本発明は、繊維材を形成する方法を提供する。その方法は、混合物を生成するために、脱結合パルプとバインダ繊維とを混ぜ合わせる工程と、不織布を形成するために混合物を空気カーディング機に提供する工程と、結合不織布を生成するために、不織布に加熱空気を吹き通すことによって不織布を熱的に結合する工程と、中間製品を生成するために、結合不織布の一方の面に化学結合物質を適用する工程と、中間製品をクレープ加工する工程と、中間製品を硬化処理する工程とを含む。別の形態では、工程中に、脱結合剤がセルロース(またはパルプ)に加えられる。脱結合済みのパルプを購入するより、工程中でパルプを脱結合する方がむしろ安いことがあるので、この形態を実施する費用の方が低くなり得る。さらに、工程中に脱結合過程を配置すると、全体の過程を操業しながら脱結合装置のレベルを調節することができる。代替実施形態では、第2のクレープ加工工程を布に実施することができる。さらに、結合物質は、炉に布を通すか、または類似の操作を行うことによって硬化させることができる。硬化処理に続いて、布は冷却され、ロールを生成するために巻上機に送られ得る。
【0010】
別の実施形態で、本発明は、不織布を形成する方法を提供する。その方法は、第1の面および第2の面を有する不織基布を生成するために素材を乾式成形する工程と、印刷され、乾燥機に押し付けられるのには十分に強いが、クレープ加工中にバルク性を形成するのに十分な弱さであるように不織基布を結合する工程と、結合物質を不織基布の第1の面に適用する工程と、不織基布をクレープ加工する工程と、不織布を形成するために不織基布を硬化処理する工程とを含む。その方法はまた、脱結合パルプを用意する工程と、バインダ繊維材を用意する工程と、混合物を生成するために脱結合パルプとバインダ繊維とを組み合わせる工程と、不織基布を形成するためにその混合物を空気堆積機に提供する工程とを含み得る。代替実施形態では、第2のクレープ加工工程を布に実施することができる。さらに、結合物質は、炉に布を通すか、または類似の操作を行うことによって硬化させることができる。硬化処理に続いて、布は冷却され、ロールを生成するために巻上機に送られ得る。
【0011】
別の実施形態では、本発明は、素材から不織シートの形成機を提供する。この機械は、多数の繊維を受け入れ、繊維材のシートを生成するように構成された乾式成形機と、乾式成形機から繊維材のシートを受け取るように構成された結合装置とを備える。この機械の一実装形態では、不織基布は、印刷され、乾燥機に押し付けられるのには十分に強いが、クレープ加工中にバルク性を形成するのに十分な弱さであるように結合される。この機械は、シートの表面に結合物質を適用するように構成された結合処理ステーションまたは結合物質適用装置ステーションと、結合処理ステーションからシートを受け取り、シートにクレープを施すように構成されたクレープ加工乾燥機とを備える。機械はまた、シートに2度目のクレープを施す第2のクレープ加工乾燥機と、シートを硬化する硬化炉と、シートを冷却する冷却ロールとを備え得る。この機械はまた、生地を巻くための巻上機を備え得る。
【0012】
他の態様および実施形態が、詳細な説明および添付図面を考察することによって明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施形態が詳細に説明される前に、本発明はその適用において、以下の説明で記述され、または以下の図面に示される構成要素の構造および配置の細部に限定されないことを理解されたい。本発明では、他の実施形態が可能であり、さまざまな態様で実践または実行することができる。
【0014】
図1は、空気または乾式堆積成形ボックス即ち成形装置10を示す。成形装置10は、入口12から繊維材13が供給されるハウジング11を備える。成形ボックス10は、繊維材13がその上に空気堆積されるコンベヤテーブル14上に配置されている。成形スクリーン(たとえばコンベヤテーブル14)の下側に配置された真空ボックス15が、繊維材から布またはシート16を形成するために繊維材をコンベヤテーブル14上に引き付ける空気流を発生させる真空ファンに接続されている。コンベヤテーブル14は、網目材から成り、そうでない場合は複数の開口を備えることにより、それを通して空気を流すと共にその上に繊維材13を保持できるようにする。図1に示された成形ボックス10は、乾式成形機の構成を1つだけ示したものであり、他の構成も可能であり得ることを理解されたい。
【0015】
たとえば、湿式成形過程とは対照的に、乾式成形技法を用いると、低密度の基布またはシート16の製造が容易になる。さらに、乾式成形は、長さ約2.5cmの繊維など、より長い繊維の使用を容易にする。一部の事例では、これは湿式堆積過程で形成される布に用いられる長さの約10倍の増加に相当する。長い繊維は、布のバルク性(嵩、紙厚)および強度を増加させるのに役立つ。
【0016】
入口12を通って供給される繊維材13には、パルプまたはセルロース繊維、動物の毛、亜麻、大麻、黄麻、カラムシ、サイザル麻、綿、カポック、ガラス、古新聞紙、オオガマ(大蒲)、ミズコケ、海藻、ヤシの繊維質などからの繊維などの天然繊維が含まれ得る。加工または変性された天然繊維もまた使用され得る。合成繊維、または、天然、変性および合成繊維の組合せを使用することもまた可能である。使用することができる合成繊維には、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリル、ポリプロピレン、バイコンポーネント、バーミキュライト繊維、およびその他が含まれる。最終製品の特定の用途または所望の使用法によって、繊維または繊維の組合せは、吸湿性、柔らかさ、特定の化学反応性、強度、およびその他の所望の特性を有するように選択することができる。乾式成形の1つの利点は、比較的長い繊維を用いて布を形成することができることである。繊維が長いと、布の強度を高めるのに寄与する傾向がある。繊維または繊維材13は、入口12に供給される前に切断し寸法を揃えることができる。
【0017】
一実施形態(便宜的に「パルプ/バインダ繊維に係る実施形態」と呼ばれる)では、紙またはパルプ繊維が、シート16の主要成分として用いられる。この実施形態の一バージョンでは、パルプ繊維は、乾式堆積される前に処理または加工される。特に、繊維は、水素結合を弱めるために脱結合剤を用いて処理される。周知の通り、水素結合は、紙繊維を一体に保持する結合の一タイプである。結合の量を減らすことにより、それによって得られている紙の強度、弾性、バルク厚さ、および柔らかさに影響を与え得る。他の添加剤が、乾式堆積過程前にパルプを処理するために使用され得る。
【0018】
一実施形態では、乾燥した直接投入再生パルプを使用することができる。このパルプを脱結合するために、脱結合剤が過程中の多数の箇所で適用され得る。たとえば、液体脱結合剤が、噴霧ブースまたはステーション内でパルプに適用され得、その例が下記に示される。液体脱結合剤で処理された後、パルプは、成形ヘッドへ導かれる前に、乾燥機中で乾燥され得る。複数ヘッド成形機を使用するとき、粗い傾向のある再生パルプは中央に配置されたヘッドまたはボックスに取り入れ、バージン繊維は、外側のヘッドまたはボックスに取り入れることが可能である。このように繊維を混合すると、柔らかさが増す傾向にある。
【0019】
パルプ/バインダ繊維に係る実施形態の別の成分は、合成繊維またはバインダ繊維である。パルプ繊維が、乾式堆積の前にバインダ繊維と混合され得る。名前が示すように、バインダ繊維は、シート中の他の繊維を結合し一体に保持するのに役立つ。バインダ繊維はまた、弾性および強度などある種の特性を付与することができる。例示的バインダ繊維20が図2に示されている。繊維20は、コア21と、鞘状外層22とを有する。一実施形態では、外層22は、第1の融解温度を有し、コア21は、第1の融解温度より高い第2の融解温度を有する。その結果、繊維20が加熱されると、外層22がコア21より先に融解することになる。繊維20を備えるバインダ繊維が、紙繊維またはセルロースと混合される。その混合物が、シートに形成され、加熱される。シートを加熱することにより、繊維20の外層22が融解され、それにより、シート中に夥しい数の熱による結合が生成される。この過程のさらに詳細が、下記に説明される。一部の市販のバインダ繊維は、約93.3℃(約200°F)を超える温度で融解することになる材料から製作された鞘状外層を備える。
【0020】
繊維材13は、塊でハウジング11中に供給することが可能である。配置19に組み合わされたスパイクローラ17およびベルトスクリーン18が、ハウジング11中に備えられて、繊維材13をコンベヤテーブル14上に実質的に均一に分散させるのを助けるために繊維材13の塊をばらばらにし、または引き裂くことができる。図示された特定のバージョンでは、成形装置10は、2列のスパイクローラを備える。繊維材13が、真空状態15によりコンベヤテーブル14に向かって下方に吸われるので、繊維材は、スパイクローラ17の第1の列、ベルトスクリーン18、およびスパイクローラ17の第2の列を通過する。
【0021】
図3は、成形装置10で形成されたシート16が強化され、次いでクレープ加工ライン26に送られるシステム25を示す。コンベヤテーブル14上で最初に形成されたときは、シート16中の繊維は緩く結合されており、シート16は、一般に、ペーパタオルなどの最終製品に使用できる状態ではない。一部の実施形態では、シートに接着剤、ラテックス、水または他の物質を塗布するために使用することができる噴霧ステーション27を通過させることができる。ステーション27は、噴霧ステーションと呼ばれるが、物質は、ミスト、気化物質、煙霧、水蒸気、または他の状態で噴霧または塗布することができる。水蒸気は、シートを加熱し、後続の工程で行われる高温または加熱硬化過程を補強するのに役立つので、いくぶん有利である。
【0022】
噴霧ステーション27で処理するのに加えて、またはその代わりに、シート16を、炉29または類似の装置を通過させて加熱することができる。炉29は、布またはシート16に加熱空気を押し通すまたは吹き抜けさせるように構成することができる。パルプ/バインダ繊維に係る実施形態では、シート中のバインダ繊維が融解して、融解した繊維を他の繊維と連結または接着してシート16を強化する熱による結合を生成する。噴霧ステーション27および炉29が、この詳細な説明では乾式成形シート生地を結合する1つの方式として説明されているが、緩結合空気堆積シートを強化する他の技法を用いることも可能である。たとえば、シートに接着剤を噴霧または他の方式で塗布し、UV硬化性物質をシートに混入させ、シートをUV光線下で硬化し、または、最初に空気堆積された後は、一般に、真空作用力によって成形装置10上に一体に保持されているシート中の繊維を他の方式で結合することが可能である。
【0023】
一部の実施形態では、シート16は、印刷がされ、乾燥機に押し付けられるのには十分に強いが、クレープ加工中にバルク性を形成するのに十分な弱さであるように、炉29中で結合される。これは、十分なバインダ繊維を加え、シート16を加熱結合して、その引張強度を少なくとも約110グラム/cm(280グラム/インチ)まで増加することによって達成される。
【0024】
形成され結合された後、シート16は、第1の結合物質塗布ステーション即ち輪転グラビア印刷機28を通過し、そこで、液体結合物質30などのさらなる結合物質が、ロール34中または上のパターンに対応する微細なパターンでシート16の第1の面32に塗布される。液体結合物質30は、液体ラテックスであり得る。シート16の第2の面35もまた、以下に記載のように、変性され得る。一部の実施形態では、結合物質30は、基準重量に対して1対1のオンス/インチ引張強度比を形成するようにシート16の第1の面32上に塗布される。一部の実施形態では、シート16の基準重量は、約9.07から約90.7kg/連(リーム(ream))(約20から約200ポンド/連)((278.7平方メートルの連(3000平方フィートの連)に対し)である。一部の実施形態では、印刷機を使用することにより、主に印刷機の溝の深さを調節することによって、結合物質がシート16に浸透する深さを調節することができるようになる。浸透の深さを調節することができることにより、所望の特性を有するシートの製造での融通性が具わる。たとえば、浸透を少なくすると、通常、バルク性が増すが、強度は低下する結果になる。他方、浸透を増やすと、通常、強度が増すが、バルク性は減退する。浸透の深さを調節することに加えて、たとえば、印刷のパターンを調節することによって、結合物質が塗布される表面積もまた調節することができる。一部の実施形態では、所望の吸収性および望ましい乾燥拭取り特性を実現するために、シートの表面積の僅か40〜50パーセントだけが結合物質で覆われている。
【0025】
結合物質30がシート16に塗布されるにつれて、シートの含水量が増加する。シート16は、乾燥機または加熱ドラム(クレープ加工またはヤンキー式乾燥機としても知られている)38へ送られまたは通過させられる。シート16は、プレスロール39によって、ドラム38に接着接触するように押し付けられる。結合物質30は、シート16の、結合物質30が塗布されている部分だけをドラム38に強く接着させる。
【0026】
シート16は、シート16をドラム38に強く接着させるのに足りるように結合物質30を加熱しシートを乾燥させる(またはその含水量を減らす)のに十分な距離だけドラム38の表面上で運ばれる。シート16は、クレープ加工ブレード40によってドラム38から取り外される。周知の通り、ブレード40は、シート16の方向を極めて素早く強制的に変えさせる。この急激な方向変化の間、シート16はクレープ加工ブレードに衝接し、瞬間的に停止し、アコーディオン状に折り畳まれまたは曲げられて、シート16中に第1の、パターンを制御されたクレープを形成する。
【0027】
シート16は、1対の被駆動引張ロール41を介してクレープ加工ブレード40から引き離され、次いで、方向転換ロール44および46を廻って、第2の印刷機または物質塗布ステーション48へ進む。一部の実施形態では、引張ロール41は、任意選択的であり、したがってシート16は、ステーション48、乾燥機ドラム(下記で説明)、またはその両方の作用によって引っ張られる。ステーション48は、溝槽56から第2の結合物質53を引き出すように配置された第1のロール50と、パターンロール58とを備える。一部の実施形態では、ステーション48は、ステーション28と同一または実質的に同様である。同様に、結合物質53は、結合物質30と同じであり得る。ステーション48では、結合物質が、あるパターン配置でシート16の第2の表面35上に塗布され、そのパターン配置は、第1の結合物質のパターンと同じであり得るが、別のパターンを使用することもできる。
【0028】
第2の結合物質をシート16に塗布した後、シート16は、第2の乾燥機または加熱ドラム60へ送られ、プレスロール65によってドラム60に接着接触するように押し付けられる。シート16は、第2のドラム60の表面上である距離だけ運ばれ、次いで、第2のクレープ加工ブレード67の働きによって取り外される。第2のドラム60および第2のクレープ加工ブレード67は、第2の、パターンを制御されたクレープ加工作業をシート16上にまたはそれに対して実施する。
【0029】
次いで、シート16は、第2の組の被駆動引張ロール70によってクレープ加工ブレード67から引き離され、次いで、硬化ステーション72へ進む。一部の実施形態では、引張ロール70は任意選択であり、シート16は、硬化ステーション中の構成要素または後続の構成要素の働きによって、クレープ加工ブレード67から硬化ステーション72へ直接進められる。シート16は、結合物質30および56を硬化するのに十分な温度まで、硬化ステーション中で加熱される。一実施形態では、シートは、約193℃(約380°F)の温度まで加熱される。シート16は、次いで、シートの温度を下げるために大冷却ロール75へ移動される。シートは、ロール77および79によって大冷却ロール75に押し付けられる。シートは、次いで、ロール(しばしば親ロールと呼ばれる)82に巻かれる。
【0030】
一部の実施形態では、クレープ加工ライン26にシート16を送り出す前に、それに処理を施す。特に、乾式成形機または成形装置10をクレープ加工ライン26の速度より速い速度で動かすことによって、シート16にクレープ加工と同等の処置を行うことができる。この先行処理は、とりわけ、最終製品の吸収性を向上させることができる。
【0031】
図4は、強度、バルク厚さ、柔軟性などの所望の特性を達成する、繊維材から不織布を形成する過程を示すフローチャートである。図4の過程は、木材、再生材、または他の繊維源から原料を得る工程によって開始される(工程100)。工程105で、スラリーが形成され、水素結合が繊維間に生成される。所望なら、添加剤をスラリーに加えることができる。工程107は、脱結合剤の添加を示し、工程108は、ある場合には、脱結合剤は添加されない、または必要ないことを示す。工程107に従った場合には、脱結合パルプまたは繊維が生成される。脱結合剤はセルロース、繊維、またはパルプに少なくとも3つの方式で塗布することができることは明らかである。すなわち、1)パルプ処理中にそれらが作られているとき行う、2)成形ヘッドに取り込まれる前に、空気堆積ラインの繊維準備部分でそれらが処理されているとき、噴霧ブースまたは乾燥機を使用して行う、および、3)布が成形ヘッドによってまたはその中で形成された後、ただし布が炉中で処理される前に布上に噴霧することである。
【0032】
スラリー中の水を蒸発させ(すなわちスラリーを乾燥する)、乾燥パルプが、工程110で生成される。工程115に示されるように、工程110で生成されたパルプに他の繊維を加えることができる。これらの繊維には、セルロース(工程116)、合成繊維(工程117)、バインダ繊維(工程118)またはそれらの組合せなどの繊維が含まれ得る。上記で言及したように、一実施形態では、バインダ繊維は重要な役割を果たす。
【0033】
繊維の組合せは、工程120に示すように、混合され、または開繊(オープンファイバ)と呼ばれる方式で処理される。混合され、または開繊された繊維は、乾式成形機に供給され、乾式成形機には乾式カーディング(梳綿、梳毛)機(工程122)、または乾式堆積もしくは成形機(工程124)が含まれ得る。乾式成形機は繊維を布に形成する。布には、所望なら、工程125に示されるように、カレンダ処理(たとえば、厚さを調整するため)またはエンボス処理(たとえば、布上にパターンを付けるため)を行うことができる。化学薬品(工程127)、水(工程128)、脱結合剤(工程129)または水蒸気(工程130)などのバインダまたはバインディング剤を、乾式成形機中で形成(先行する工程120または122において)された布に添加することができるが、工程131に示されるように、そのようなバインダは必要とされず、使用されるとは限らない。シートは、次いで、炉または他の装置中で結合または硬化される(工程133)。たとえば、一例として化学バインダが添加された場合、工程133での結合処理は添加された化学バインダのタイプに対応する。ただし、工程118でバインダ繊維が添加され、工程131でバインダが添加されなかった場合、工程133では、バインダ繊維を融解するために炉が使用される。任意選択的に、工程133を、硬化過程に水蒸気を導入することによって改変することができる。たとえば、水蒸気を炉に導入することができる。エンボス処理およびカレンダ処理はまた、硬化工程133の後に実施(工程134)することができる。
【0034】
図4を考察すると、多数の他の組合せが可能であることが、当業者にとって明らかである。可能な組合せの1つでは、乾式堆積布またはシートは、水素結合のみで結合される。バインダ繊維、化学的バインダ剤、および水または水蒸気を、個々にまたは組み合わせて使用することによって布を生成することもまた可能である。しかし、多くの実施形態では、使用される結合剤または技法に拘らず、上記で言及したように、印刷され乾燥機に押し付けられるのには十分に強いが、クレープ加工中にバルク性を形成するのに十分な弱さであるように、不織基布を形成することが望ましい。
【0035】
シートは、工程133で結合されると、クレープ加工過程(工程135)へ送られる。クレープ加工過程135は、図3およびクレープ加工ライン26に関して上記で説明した諸工程を含む。シートの第1の面が、ラテックスなどの化学結合物質で所定のパターンに印刷される(工程150において)。層の第1の面上の結合物質の量および印刷されるパターンは、一般に、層に特定の特性を付与するように制御される。シートは、次いで、クレープを施される(工程155)。所望なら、シートの第2の面を結合物質で処理し(工程160)、第2またはダブルクレープ加工を実施することができる(工程165)。次いで、結合物質が硬化される(工程170)。シートが冷却され(工程175)、次いで、ドラムに巻かれて、親ロールを生成する(工程180)。
【0036】
本発明の殆どの実施形態およびそれによって製造される製品は、湿式堆積二重式再クレープ加工過程によって製造される製品のプラス面の特性と共に、長めの繊維を使用することができることによる強度向上という付加的長所を併せて示すと考えられる。しかし、湿式堆積成形の短所は、湿式堆積過程の代わりに乾式成形過程が用いられるので、減少する。さらに、バインダ繊維などの使用による原料における費用増加は、湿式堆積過程が無くなることによって相殺されると考えられる。また、本明細書の一部の実施形態で記述したように、乾式成形過程をクレープ加工過程と組み合わせると、ある種の乾式成形過程、特に、素材から乾式堆積された布の表面に薄膜を生成するために接着剤などが塗布される、化学結合式乾式成形過程よりも利点が生じると考えられる。脱結合剤処理されたセルロースはまた、柔らかい、織物のような製品を生成するのに使用することができる。
【0037】
さらに、少なくとも1つの実施形態は、比較的大きな柔軟性を発揮する。たとえば、後続のクレープ加工に適した乾式成形基シートが、バインダ繊維、水、または水蒸気を用いて結合され得る。さらに、一部の実施形態は、強度、吸収性、バルク性、および望ましい手触り感の向上を実現させる。強度は、基布上に接着剤をあるパターンで印刷すること、およびバインダの深さを制御することに加えて長めの繊維を使用することにより向上する。吸湿性は、従来の空気堆積生地とは対照的に向上する。というのは、基布全体を覆う接着剤の薄膜を用いるのとは対照的に、接着剤は、一部の実施形態では、布の表面の僅か約30〜約50パーセントを覆うように、布上に印刷されるからである。バルク性は、一部の実施形態で実施されるクレープ加工過程によって向上し、望ましい手触り感または柔らかさは、接着剤が印刷されまたは塗布される表面積を抑えることによって達成される。一部の実施形態は、湿式堆積技法に比較して低い設備費、運転費、労働費、光熱費、および水の必要量によって、湿式堆積過程よりも有利になる。さらに、湿潤強度およびバルク性が、一般に、湿式堆積過程を用いて製造された布に比較して向上する。一般に、本明細書に記載されたクレープ加工過程は、長めの繊維および少な目のバインダを使用することに、少なくとも部分的に起因して、湿式堆積クレープ加工過程に比較して費用の低減、バルク性の向上、および強度の向上を示す。最後に、一部の実施形態では、空気堆積過程は、より長い繊維を使用することができるので、空気カーディング過程よりも有利である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】素材から不織布を形成するために使用される乾式成形機、特に空気カーディング機を例示する図である。
【図2】バインダ繊維を例示する図である。
【図3】乾式成形不織布が結合され、クレープを施されるシステムを例示する図である(特に二重式再クレープ加工として示されている)。
【図4】乾式成形の不織クレープ生地を生成する過程を例示するフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維材を形成する方法において、
混合物を生成するために、セルロースパルプとバインダ繊維とを混合する工程と、
不織基布を形成するために、前記混合物を乾式堆積機に提供する工程と、
前記不織基布を結合する工程と、
前記不織基布に結合物質を適用する工程と、
前記不織基布をクレープ加工する工程と、
前記繊維材を形成するために、前記不織基布を硬化処理する工程とを含む、方法。
【請求項2】
第2の混合物を生成するために、パルプを水および脱結合剤と混合する工程と、
脱結合パルプを形成するために、前記第2の混合物を乾燥する工程とをさらに含み、
混合物を生成するために、セルロースパルプとバインダ繊維とを共に混合する前記工程が、脱結合パルプとバインダ繊維とを混合する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記不織基布を結合する工程が、前記不織基布上に化学結合剤を噴霧する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
パルプとバインダ繊維とを混合する工程が、第1の融解温度を有するコアと、前記第1の融解温度より低い第2の融解温度を有する外層とを有するバインダ繊維を提供する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記不織基布を結合する工程が、前記不織基布に加熱空気を吹き通す工程と、前記バインダ繊維の外層の少なくとも一部を少なくとも部分的に融解する工程とを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
寸法が揃ったパルプを形成するために、セルロースパルプを切断し寸法を揃える工程と、
脱結合剤処理パルプを形成するために、前記寸法が揃ったパルプに液体脱結合剤を適用する工程と、
乾燥パルプを形成するために、前記脱結合剤処理パルプを乾燥する工程とをさらに含み、
混合物を生成するために、セルロースパルプとバインダ繊維とを共に混合する前記工程が、前記乾燥パルプとバインダ繊維とを混合する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記結合物質を適用する工程が、
一対のロールを提供する工程であって、前記一対のロールの少なくとも1つが複数の溝を備える、工程と、
前記溝に前記結合物質を供給する工程と、
前記不織基布を前記対のロールに提供する工程と、
前記結合物質を前記不織基布の第1の面に堆積させる工程とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
第2の結合物質を前記不織基布の第2の面に適用する工程をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の結合物質を適用する工程が、
第2の一対のロールを提供する工程であって、前記第2の一対のロールの少なくとも1つが複数の溝を備える、工程と、
前記溝に前記第2の結合物質を供給する工程と、
前記不織基布を前記第2の一対のロールに提供する工程と、
前記第2の結合物質を前記不織基布の第2の面に堆積させる工程とを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
不織布を形成する方法において、
不織基布を生成するために素材を乾式成形する工程と、
印刷され、乾燥機に押し付けられるのには十分に強いが、クレープ加工中にバルク性を形成するのに十分な弱さである結合布を生成するように、前記不織基布を結合する工程と、
結合剤処理布を生成するために、前記結合布の第1の面に結合剤を適用する工程と、
クレープ布を形成するために、前記結合剤処理布をクレープ加工する工程と、
前記不織布を形成するために、前記クレープ布を硬化処理する工程とを含む、方法。
【請求項11】
前記素材を乾式成形する工程が、
混合物を生成するために、パルプとバインダ繊維とを混合する工程と、
前記不織基布を形成するために、前記混合物を乾式堆積機に提供する工程とを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
第2の混合物を生成するために、パルプを水および脱結合剤と混合する工程と、
脱結合パルプを生成するために、前記第2の混合物を乾燥する工程とをさらに含み、
混合物を生成するために、パルプとバインダ繊維とを混合する工程が、前記脱結合パルプとバインダ繊維とを混合する工程を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
各バインダ繊維が、第1の融解温度を有するコアと、前記第1の融解温度より低い第2の融解温度を有する外層とを備える、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記乾式堆積機が空気カーディング機である、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記不織基布を結合する工程が、前記バインダ繊維の外層を少なくとも部分的に融解するために、前記不織基布を第1の温度から、前記第1の温度より高い第2の温度まで加熱する工程を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
結合物質を適用する工程が、
一対のロールを提供する工程であって、前記一対のロールの少なくとも1つが複数の溝を備える、工程と、
前記溝に前記結合物質を供給する工程と、
前記結合布を前記一対のロールに提供する工程と、
前記結合物質を前記溝から前記結合布の第1の面に堆積させる工程とを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記クレープ布を硬化処理する工程が、
不織布を形成するために、前記結合物質を硬化するのに十分な温度まで前記クレープ布の温度を上げる工程と、
続いて、前記不織布を冷却する工程とを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
第2の結合物質を前記不織布の第2の面に適用する工程をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
不織布を形成する方法において、
第1の面および第2の面を有する不織基布を生成するために、素材を乾式成形する工程と、
前記不織基布の引張強度を少なくとも約112g/cm(約10オンス/インチ)まで高めるために、前記不織基布を結合する工程と、
結合物質を前記不織基布の前記第1の面に適用する工程と、
前記不織基布をクレープ加工する工程と、
前記不織布を形成するために、前記不織基布を硬化処理する工程とを含む、方法。
【請求項20】
前記素材を乾式成形する工程が、
混合物を生成するために、パルプとバインダ繊維とを混合する工程と、
前記不織基布を形成するために、前記混合物を乾式堆積機に提供する工程とを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
第2の混合物を生成するために、パルプを水および脱結合剤と混合する工程と、
前記第2の混合物を乾燥する工程とをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
各バインダ繊維が、第1の融解温度を有するコアと、前記第1の融解温度より低い第2の融解温度を有する外層とを備える、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記乾式堆積機が空気カーディング機である、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記不織基布を硬化処理する工程が、
前記不織基布の温度を約193℃(約380°F)まで上昇させる工程と、
続いて、前記不織布を冷却する工程とを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
繊維材を形成する方法において、
パルプと液体の混合物を生成する工程と、
前記混合物に脱結合剤を加える工程と、
パルプを生成するために、前記混合物を乾燥する工程と、
パルプとバインダ繊維とを混合する工程であって、各バインダ繊維がコアと外層とを有し、前記コアは第1の融解温度を有し、前記外層は前記第1の融解温度より低い第2の融解温度を有する、工程と、
基礎繊維材の層を形成するために、前記パルプおよびバインダ繊維を乾式堆積機に提供する工程と、
結合布を形成するために、前記バインダ繊維の外層を少なくとも部分的に融解するように、前記基礎繊維材の層を加熱する工程と、
結合物質処理布を形成するために、前記結合布の第1の面に第1の結合物質を適用する工程と、
クレープ布を形成するために、前記結合物質処理布をクレープ加工する工程と、
二重の結合物質処理布を形成するために、第2の結合物質を前記クレープ布の第2の面に適用する工程と、
二重クレープ布を形成するために、前記二重の結合物質処理布をクレープ加工する工程と、
前記二重クレープ布を硬化処理する工程と、
冷却布を生成するために、前記二重クレープ布を冷却する工程とを含む、方法。
【請求項26】
親ロールを生成するために前記冷却布を巻く工程をさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
第1の結合物質を前記結合布の第1の面に適用する工程が、前記結合布上に化学結合剤を噴霧する工程を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記乾式堆積機が空気カーディング機である、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記二重クレープ布を硬化処理する工程が、前記第1および第2の結合物質を硬化するのに十分な温度まで、前記二重クレープ布を加熱する工程を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
不織シート材の形成機において、
多数の繊維を受け入れ、繊維材のシートを生成するように構成された乾式成形機と、
前記乾式成形機から前記繊維材のシートを受け取り、前記繊維材を結合するように構成された結合装置と、
前記シートの表面に結合物質を適用するように構成された結合処理ステーションと、
前記結合処理ステーションから前記シートを受け取り、当該シートにクレープ加工を施すように構成されたクレープ加工乾燥機とを備える、不織シート材の形成機。
【請求項31】
前記シートの第2の面に第2の結合物質を適用するように構成された第2の結合処理ステーションをさらに備える、請求項30に記載の形成機。
【請求項32】
前記第2の結合処理ステーションから前記繊維材のシートを受け取り、前記シートにクレープ加工を施すように構成された第2のクレープ加工乾燥機をさらに備える、請求項31に記載の形成機。
【請求項33】
前記繊維材のシートを第1の温度で受け取り、前記第1の温度より高い第2の温度まで前記シートを加熱するように構成された硬化ステーションをさらに備える、請求項30に記載の形成機。
【請求項34】
前記第2の温度が約193℃(約380°F)である、請求項33に記載の形成機。
【請求項35】
前記硬化ステーションから前記シートをほぼ前記第2の温度で受け取り、前記第2の温度より低い第3の温度まで前記シートを冷却するように構成された冷却ロールをさらに備える、請求項34に記載の形成機。
【請求項36】
前記繊維材のシートに物質を適用するように構成された噴霧ステーションをさらに備える、請求項35に記載の形成機。
【請求項37】
エンボス加工装置をさらに備える、請求項36に記載の形成機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−507141(P2009−507141A)
【公表日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−529358(P2008−529358)
【出願日】平成18年9月1日(2006.9.1)
【国際出願番号】PCT/US2006/034419
【国際公開番号】WO2007/028124
【国際公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(508065710)セラーズ・アブソーベント・マテリアルズ・インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】