不織布、及び当該不織布の製造方法
【課題】肌触り及び伸縮性に優れ、平面方向及び厚さ方向の通気性に優れ、そして高い吸水性と速乾性とを有する不織布、及び当該不織布を製造する方法を提供する
【解決手段】伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布であって、上記不織布が、複数の凸部3及び複数の凹部2を有する第1の面と、第1の面の反対側にある第2の面とを有し、第1の面の凸部3における伸長性繊維の比率が、第1の面の凹部2における伸長性繊維の比率よりも高く、上記不織布が親水化剤でコーティングされているか、又は上記伸長性繊維及び伸縮性繊維が親水化剤を含有し、上記不織布が、吸水性試験における10mm以上の吸水高さで表わされる吸水性と、蒸散性試験における20質量%以上の蒸散率で表わされる速乾性とを有する不織布。
【解決手段】伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布であって、上記不織布が、複数の凸部3及び複数の凹部2を有する第1の面と、第1の面の反対側にある第2の面とを有し、第1の面の凸部3における伸長性繊維の比率が、第1の面の凹部2における伸長性繊維の比率よりも高く、上記不織布が親水化剤でコーティングされているか、又は上記伸長性繊維及び伸縮性繊維が親水化剤を含有し、上記不織布が、吸水性試験における10mm以上の吸水高さで表わされる吸水性と、蒸散性試験における20質量%以上の蒸散率で表わされる速乾性とを有する不織布。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面方向及び厚さ方向の通気性に優れ、そして高い吸水性と速乾性とを有する不織布、並びに当該不織布を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不織布は、吸収性物品、例えば、生理用品及び使い捨ておむつ、清掃用品、例えば、ワイパー、並びに医療用品、例えば、マスク等の製品に用いられ、これらの製品では、製品の用途、用いられる部位等に適した性能を有する不織布が採用されている。
【0003】
例えば、吸収性物品では、使用者に違和感を生じさせることなく、着用の際又は使用の際の身体の動きに合わせて伸縮する不織布が要求される。また、使い捨ておむつでは、高い伸縮性を有し且つ伸長時に破断しないような強度を有すると共に、肌触り及び通気性が良好な不織布が要求される。
【0004】
通気性に優れる不織布として、特許文献1には、第1層とこれに隣接する第2層とを有し、第1層と第2層とが所定パターンの接合部によって部分的に接合されており、該接合部間で第1層が三次元的立体形状をなし、第2層がエラストマー的挙動を示す材料で構成されており、シート全体がエラストマー的挙動を示すと共に通気性を有する立体シート材料が開示されている。特許文献1に記載の立体シート材料は、第2層を構成する繊維を、熱収縮を開始する温度以上で熱処理して、第2層を収縮させることにより、立体構造を発現させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−187228号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の立体シート材料は、第2層を収縮させることにより、立体構造を発現させているため、シート材料の平面方向の通気性に優れるが、厚さ方向の通気性に劣る傾向がある。また、特許文献1に記載の立体シート材料は、第2層を収縮させているため、特に第2層の繊維密度が高く、伸縮性を阻害しやすく、そして速乾性に関しては言及されていない。
従って、本発明は、肌触り及び伸縮性に優れ、平面方向及び厚さ方向の通気性に優れ、そして高い吸水性と速乾性とを有する不織布、及び当該不織布を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布であって、上記不織布が、複数の凸部及び複数の凹部を有する第1の面と、第1の面の反対側にある第2の面とを有し、第1の面の凸部における伸長性繊維の比率が、第1の面の凹部における伸長性繊維の比率よりも高く、上記不織布が親水化剤でコーティングされているか、又は上記伸長性繊維及び伸縮性繊維が親水化剤を含有し、上記不織布が、吸水性試験における10mm以上の吸水高さで表わされる吸水性と、蒸散性試験における20質量%以上の蒸散率で表わされる速乾性とを有することを特徴とする不織布により、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
具体的には、本発明は以下の態様に関する。
[態様1]
伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布であって、
上記不織布が、複数の凸部及び複数の凹部を有する第1の面と、第1の面の反対側にある第2の面とを有し、第1の面の凸部における伸長性繊維の比率が、第1の面の凹部における伸長性繊維の比率よりも高く、
上記不織布が親水化剤でコーティングされているか、又は上記伸長性繊維及び伸縮性繊維が親水化剤を含有し、上記不織布が、吸水性試験における10mm以上の吸水高さで表わされる吸水性と、蒸散性試験における20質量%以上の蒸散率で表わされる速乾性とを有する、
ことを特徴とする、上記不織布。
【0009】
[態様2]
第2の面が、複数の凸部及び凹部を有し、第2の面の凸部における伸長性繊維の比率が、第2の面の凹部における伸長性繊維の比率よりも高い、態様1に記載の不織布。
[態様3]
第1の面の凹部と、第2の面の凹部とを連結する、一又は複数の開孔部を有する、態様2に記載の不織布。
【0010】
[態様4]
上記不織布が親水化剤でコーティングされ且つ上記伸長性繊維が親水化剤を含有する、態様1〜3のいずれか一つに記載の不織布。
[態様5]
吸水性試験における吸水高さが18mm以上である、態様1〜4のいずれか一つに記載の不織布。
【0011】
[態様6]
蒸散性試験における蒸散率が40質量%以上である、態様1〜5のいずれか一つに記載の不織布。
[態様7]
厚さ方向の通気度が、400m3/m2/分以上であり、平面方向の通気度が、5m3/m2/分以上である、態様1〜6のいずれか一つに記載の不織布。
【0012】
[態様8]
上記伸長性繊維の材料が、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ乳酸、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される、態様1〜7のいずれか一つに記載の不織布。
[態様9]
上記伸縮性繊維の材料が、ポリウレタン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される、態様1〜8のいずれか一つに記載の不織布。
【0013】
[態様10]
上記親水化剤が、アニオン系親水化剤、カチオン系親水化剤及びノニオン系親水化剤、並びにそれらの組合せから成る群から選択される、態様1〜9のいずれか一つに記載の不織布。
【0014】
[態様11]
態様1〜10のいずれか一つに記載の不織布を製造する方法であって、
伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む、処理すべき不織布を準備するステップ、
上記伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む、処理すべき不織布を、高延伸領域と低延伸領域とを有する不織布が形成されるように不均一に延伸するステップ、
上記高延伸領域と低延伸領域とを有する不織布に、親水化剤含有溶液を塗布するステップ、そして
親水化剤が塗布された、高延伸領域と低延伸領域とを有する不織布を、支持体上に配置し、そして噴出された流体を吹き付けることにより処理し、態様1〜7のいずれか一つに記載の不織布を形成するステップ、
を含む方法。
【0015】
[態様12]
上記不均一に延伸するステップが、搬送方向と直交する回転軸線を有する一対のギアロールであって、当該ギアロールのそれぞれの外周面に配置された複数の歯を互いに噛み合わせながら回転するものの間隙に、上記伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布を通過させることにより行われる、態様11に記載の方法。
【0016】
[態様13]
上記親水化剤溶液が、親水化剤水溶液である、態様11又は12に記載の方法。
[態様14]
上記流体が、空気、水蒸気及び水から成る群から選択される、態様11〜13のいずれか一つに記載の方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明の、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布は、平面方向及び厚さ方向の通気性に優れ、そして高い吸水性と速乾性とを有する。
本発明の、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布はまた、肌触り及び伸縮性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布の実施形態の1つの模式図である。
【図2】図2は、本発明の、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布の別の態様の模式図である。
【図3】図3は、本発明の、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布のさらに別の態様の模式図である。
【図4】図4は、本発明の、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布のさらに別の態様の模式図である。
【図5】図5は、図1のX−X断面における、本発明の、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布の模式図である。
【図6】図6は、図2のX−X断面及びY−Y断面における、本発明の、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布の模式図である。
【図7】図7は、ギア延伸を説明するための模式図である。
【図8】図8は、ギア延伸を説明するための模式図である。
【図9】図9は、ギア延伸を説明するための模式図である。
【図10】図10は、コンベア上で用いられる、不織布を支持するための支持体の一例を示す図である。
【図11】図11は、図8に示す支持体を用いて形成された、凹凸を有する不織布を説明するための図である。
【図12】図12は、コンベア上で用いられる、不織布を支持するための支持体の別の例を示す図である。
【図13】図13は、実施例1で形成された不織布2の、方向MDの断面の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布、及び当該不織布を製造する方法について、以下、詳細に説明する。
【0020】
[本発明の、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布]
図1は、本発明の、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布の実施形態の1つの模式図である。図1に示される、本発明の、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布1は、第1の面2に、複数の凸部3及び複数の凹部4を有する。図1に示される、本発明の、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布1において、凸部3が伸長性繊維EXに富み、そして凹部4が伸縮性繊維ELに富むので、凸部3における伸長性繊維の比率が、凹部4における伸長性繊維の比率よりも高くなる。また、図1に示される、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布1では、凸部3及び凹部4が、それぞれ、第1の方向Aに平行であり、そして第1の方向Aと直交する方向に交互に配置されている。
なお、以下、本発明の、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布を、単に、「本発明の不織布」と称する場合がある。
【0021】
図1に示される実施形態では、凸部3において、伸長性繊維EXが、第1の方向Aに沿った配向性を有し、そして凹部4において、伸縮性繊維ELに、特に配向性は存在しない。また、図1に示される実施形態では、図示されていないが、伸長性繊維EXは、不織布1の厚さ方向に配向している。また、凸部3では、その他の場所と比較して、繊維の密集度が高い傾向がある。厚さ方向への配向性、及び繊維の密集度については、本発明の不織布の製造方法に関連して説明する。
なお、図1では、親水化剤は、示されていない。
【0022】
ここで、「伸長性繊維の比率」とは、その場所における、全ての繊維に対する伸長性繊維の質量比を意味する。当該比率は、伸長性繊維の質量比を見積もることができる方法であれば、特に制限されず、任意の方法により測定されうるが、一例として、以下の溶媒法を挙げることができる。
(1)本発明の不織布から、第1の面の凸部の繊維を採取し、質量を測定する。
(2)伸長性繊維又は伸縮性繊維のいずれか一方を溶解させることができる溶媒に、採取した繊維を溶解させ、一定時間、例えば、30分静置する。
(3)溶液をろ過し、必要に応じて残存した繊維を洗浄し、そして残存した繊維を乾燥させる。
(4)残存した繊維の乾燥質量を測定し、繊維の質量比を算出する。
【0023】
上記溶媒は、適宜選択することができるが、例えば、伸長性繊維がポリオレフィンであり且つ伸縮性繊維がポリウレタン系エラストマーである場合には、ポリウレタン系エラストマーが可溶であり且つポリオレフィンが不溶であるジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等を選択することができる。また、伸縮性繊維がポリスチレン系エラストマーである場合には、可溶な溶媒としてトルエン、キシレン等の溶媒を挙げることができる。
第1の面の凹部、並びに所望による第2の面の凸部及び凹部についても同様に、伸長性繊維の比率を測定することができる。
【0024】
上記伸長性繊維の比率を測定する別の方法として、以下の染色法を挙げることができる。
(1)本発明の不織布を、伸長性繊維に対する染色性と、伸縮性繊維に対する染色性とが異なる染料で染色する。
(2)光学顕微鏡等を用いて、第1の面の凸部の投影画像を撮影する。
(3)上記画像から、伸長性繊維の比率を目視により評価するか、又は上記画像を、伸長性繊維と伸縮性繊維とを区別するように二値化し、そして伸長性繊維の比率を計算する。
【0025】
上記染色法は、上記溶媒法が適さない不織布において、伸長性繊維の比率を測定するために好適である。
第1の面の凹部、並びに所望による第2の面の凸部及び凹部についても同様に、伸長性繊維の比率を測定することができる。
なお、上記染色法では、二値化により得られる比率は、投影画像中の面積比を意味するが、当該面積比は、ほぼ体積比に相当するので、繊維の密度を乗ずることにより、質量比を見積もることができる。
【0026】
本発明の効果、特に肌触り及び伸縮性の両立の観点から、第1の面の凸部における伸長性繊維の比率が、第1の面の凹部における伸長性繊維の比率よりも、少なくとも1質量%高いことが好ましく、少なくとも2質量%高いことがより好ましく、少なくとも3質量%高いことがさらに好ましく、そして少なくとも5質量%高いことがさらに好ましい。
【0027】
図1に示されるような、本発明の不織布は、第1の面の凸部における伸長性繊維の比率が、第1の面の凹部における伸長性繊維の比率よりも高いので、肌触りに優れ且つ伸縮性に優れる。その理由は、以下の通りである。
一般的に、伸縮性繊維は、不織布に伸縮性に付与する構成要素であるが、タック性を有する、摩擦が高い等の肌触りに劣る欠点を有し、そして伸長性繊維は、伸縮性をほとんど有しないが、肌触りに優れる。本発明の不織布は、肌触りに優れる伸長性繊維が人と接する凸部に配置され、そして、肌触りに劣る伸縮性繊維が、人が接しにくい凹部及び不織布の凸部内にほぼ均一に配置されているので、伸縮性を有しつつ、肌触りに優れる特徴を有する。
【0028】
図1に示されるような、本発明の不織布は、厚さが薄く、厚さ方向の通気抵抗が少ない凹部を第1の面に複数有するので、凹部を有しない不織布と比較して、不織布の厚さ方向の通気性に優れる。図1に示される本発明の不織布はまた、平面方向の空気の通り道となる凹部を、第1の面に複数有するので、不織布の平面方向の通気性に優れる。
【0029】
本明細書において、「伸縮性繊維」は、弾性的に伸長可能な繊維を意味する。より具体的には、上記伸縮性繊維は、形成時及び想定される使用時にかかる応力よりも大きな弾性限界を有し、形成時及び想定される使用時にかかる応力の範囲内で弾性的に伸長可能な繊維を意味する。上記伸縮性繊維の材料としては、例えば、ポリウレタン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、及びそれらの組み合わせを挙げることができる。上記伸縮性繊維としては、伸長後の歪みの少なさ、耐熱性の高さ等の観点から、ポリウレタン系エラストマーが好ましい。
【0030】
上記伸縮性繊維の繊維径は、2〜50μmの範囲内にあることが好ましく、そして15〜30μmの範囲内にあることがより好ましい。
本発明の不織布において、高い吸水性と速乾性を達成するために、伸縮性繊維が親水化剤を含有し、親水性を有することが好ましい。親水化剤を含有する伸縮性繊維としては、例えば、伸縮性繊維の材料に親水化剤を混合し、次いで、紡糸することにより形成された伸縮性繊維、いわゆる、親水化剤が練り込まれている伸縮性繊維が挙げられる。
上記伸縮性繊維が含有しうる親水化剤は、後述の不織布をコーティングする親水化剤と同一であっても、又は異なっていてもよい。
【0031】
本明細書において「伸長性繊維」は、弾性限界が上記伸縮性繊維の弾性限界より小さい繊維を意味する。より具体的には、上記伸長性繊維は、形成時にかかる応力よりも小さな弾性限界を有し、形成時にかかる応力により塑性変形しうる繊維を意味する。上記伸長性繊維は、塑性変形することにより、細く且つ長くなる。なお、本明細書において、形成時にかかる応力により塑性変形した伸長性繊維を、「伸長された伸長性繊維」と称する場合がある。伸長された伸長性繊維の例としては、均一な径を有するもの、又は不均一な径を有する、例えば、部分的に細い部分(ネッキング部)を有するものを挙げることができる。
【0032】
上記伸長性繊維の材料の例としては、ポリオレフィン、例えば、ポリエチレン及びポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ乳酸、又はそれらの組み合わせから成る繊維が挙げられる。上記伸長性繊維は、芯鞘型繊維、サイドバイサイド型繊維等の複合繊維であってもよい。また、上記伸長性繊維は、本質的に親水性を有する繊維、例えば、天然系及び/又は半天然系の繊維であってもよい。
上記伸長性繊維としては、結晶性の低さ、伸度の高さ等の観点から、ポリプロピレン及びポリエチレンを含む繊維が好ましい。
【0033】
上記伸長性繊維の繊維径は、約1〜約40μmの範囲内にあることが好ましく、そして約5〜約25μmの範囲内にあることがより好ましい。また、上記伸長性繊維の繊維径は、上記伸縮性繊維の繊維径よりも細いことが好ましい。本発明の不織布に、柔軟性、嵩高さ、隠蔽性等を付与することができるからである。
【0034】
本発明の不織布において、高い吸水性と速乾性を達成するために、伸長性繊維が親水化剤を含有し、親水性を有することが好ましい。親水化剤を含有する伸長性繊維としては、例えば、伸長性繊維の材料に親水化剤を混合し、次いで紡糸することにより形成された伸長性繊維、いわゆる、親水化剤が練り込まれている繊維が挙げられる。
【0035】
本発明の不織布は、親水化剤でコーティングされていることができるが、本発明の不織布における、コーティングされた親水化剤の分布は、本発明の不織布が所定の吸水性と、速乾性を有する限り、特に制限されない。例えば、上記親水化剤がディップコーティング法により不織布に塗布された場合には、不織布全体、より具体的には、各繊維の表面が親水化剤で被覆されているように親水化剤が分布している一般的であり、上記親水化剤がスプレーコーティング法により不織布に塗布された場合には、不織布の表面に親水化剤が多く分布しているのが一般的であり、そして上記親水化剤がバーコーティング法により不織布に塗布された場合には、塗布された面の凹部よりも、凸部に親水化剤が多く分布しているのが一般的である。
【0036】
不織布をコーティングしうる親水化剤、並びに伸長性繊維及び伸縮性繊維が含有しうる親水化剤としては、当技術分野で、親水化剤として一般的に用いられているものであれば、特に制限なく採用することができ、例えば、アニオン系親水化剤、カチオン系親水化剤、ノニオン系親水化剤等、及びこれらの組み合わせが挙げられ、耐熱性の高さからノニオン系親水化剤が好ましい。
【0037】
不織布を親水化剤でコーティングする場合には、上記親水化剤の量は、不織布上に、約0.01〜約0.5g/m2の坪量でコーティングされていることが好ましく、より好ましくは約0.03〜約0.3g/m2、そしてさらに好ましくは約0.05〜約0.1g/m2の坪量でコーティングされている。上記坪量が、約0.01g/m2を下回ると、親水化度が不十分であり、水接触角が高くなり、吸水性及び速乾性が不十分になる傾向があり、そして上記坪量が、約0.5g/m2を上回ると、伸縮性繊維及び伸長生鮮が親水化剤により固定され、伸縮性、柔軟性等が低下する傾向がある。
【0038】
伸長性繊維及び伸縮性繊維が親水化剤を含有する場合には、上記親水化剤の量は、繊維の質量に対し、好ましくは約0.05〜約10.0質量%、より好ましくは約0.1〜約7.0質量%、そしてさらに好ましくは約0.2〜約5.0質量%の割合で含有されている。上記割合が、約0.05質量%を下回ると、親水化度が不十分であり、水接触角が高くなり、吸水性及び速乾性が不十分になる傾向があり、そして上記割合が、約10.0質量%を上回ると、伸長性繊維及び伸縮性繊維の物性が低下する場合がある。
【0039】
図1に示される、本発明の、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布1では、凸部3及び凹部4が、それぞれ、第1の方向Aに平行であり、第1の方向Aと直交する方向に交互に配置されているが、本発明の不織布では、第1の面における複数の凸部及び複数の凹部のパターンは、特に限定されず、本発明の不織布は、後述の製造方法等により、あらかじめ定められたパターンを有する、複数の凸部及び複数の凹部を、第1の面に有することができる。
【0040】
また、図1には、第1の面の反対側の第2の面が平面である実施形態が示されているが、本発明の別の実施形態として、第2の面に凹凸が存在する実施形態が挙げられる(図2に関連して、詳しく説明する)。
なお、第2の面が平面である場合には、第2の面が、他の不織布と接着する際の接着性に優れる利点を有する。
【0041】
さらに、図1には、凸部3において、伸長性繊維EXが、第1の方向Aに沿った配向性を有する実施形態が示されているが、本発明の不織布では、伸長性繊維が、特に配向性を有していなくともよい。
【0042】
図2は、本発明の不織布の別の実施形態の模式図である。図2に示される、本発明の、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布1は、第1の面2の反対側に第2の面5を有し、そして第2の面5が、複数の凸部6及び複数の凹部7を有する。図2に示される実施形態では、第1の面2は、図1に示される第1の面2と同一である。
なお、図2では、親水化剤は、示されていない。
【0043】
図2に示される、本発明の、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布1において、凸部6が伸長性繊維EXに富み、そして凹部7が伸縮性繊維ELに富むので、凸部6における伸長性繊維の比率が、凹部7における伸長性繊維の比率よりも高くなる。また、図2に示される、本発明の、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布1では、凸部6及び凹部7が、それぞれ、第2の方向Bに平行であり、第2の方向Bと直交する方向に交互に配置されている。さらに、図2に示される、本発明の、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布1では、第1の方向Aと、第2の方向Bとが、直交している。なお、図2に示される実施形態では、凸部6における伸長性繊維EX、及び凹部7における伸縮性繊維ELは、配向性を有しない。
【0044】
図2に示されるような、本発明の不織布は、第2の面の凸部における伸長性繊維の比率が、第2の面の凹部における伸長性繊維の比率よりも高いので、第1の面と同様に、肌触りに優れ且つ伸縮性に優れる。
本発明の効果、特に肌触り及び伸縮性の両立の観点から、第2の面の凸部における伸長性繊維の比率が、第2の面の凹部における伸長性繊維の比率よりも少なくとも2質量%高いことが好ましく、少なくとも4質量%高いことがより好ましく、少なくとも6質量%高いことがさらに好ましく、そして少なくとも8質量%高いことがさらに好ましい。
【0045】
なお、第2の面における伸長性繊維の比率は、第1の面の場合と同様、溶媒法、染色法等により評価することができる。
図2に示されるような、本発明の不織布はまた、厚さが薄く、厚さ方向の通気抵抗が少ない凹部を、第1の面及び第2の面に有するので、不織布の厚さ方向の通気性に優れ、そして平面方向の空気の通り道となる凹部を、第1の面及び第2の面に有するので、不織布の平面方向、特に第1の方向及び第2の方向の通気性に優れる。
【0046】
図2に示される、本発明の、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布1では、複数の凸部3及び複数の凹部4が、それぞれ、第1の方向Aに平行であり、第1の方向Aと直交する方向に交互に配置されているが、本発明の不織布では、第1の面における、複数の凸部及び複数の凹部のパターンは、特に限定されない。
【0047】
また、図2に示される、本発明の、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布1では、凸部6及び凹部7が、それぞれ、第2の方向Bに平行であり、第2の方向Bと直交する方向に交互に配置されているが、本発明の不織布では、第2の面における、複数の凸部及び複数の凹部のパターン等は、特に限定されず、本発明の不織布は、後述の製造方法等により、あらかじめ定められたパターンを有する、複数の凸部及び複数の凹部を、第2の面に有することができる。
【0048】
さらに、図2に示される実施形態では、凸部6における伸長性繊維EXの配向性、及び凹部7における伸縮性繊維ELの配向性は、特に存在しないが、本発明の不織布では、これに限定されず、凸部6において、伸長性繊維EXが、第2の方向Bに沿った配向性を有していてもよく、そして/又は凹部7において、伸縮性繊維ELが、第2の方向Bに沿った配向性を有していてもよい。
【0049】
さらに、図2に示される、本発明の、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布1では、第1の方向Aと、第2の方向Bとが直交しているが、本発明では、第1の方向と第2の方向との間の関係に、特に制限はなく、第1の方向と、第2の方向とは、任意の角度を有することができる。例えば、第1の方向と第2の方向とが平行、すなわち、それらが形成する角度が0°であることができる。そのような実施形態では、例えば、第1の方向(及び第2の方向)と直交する方向に対する伸縮性に優れ且つ平面方向、特に、第1の方向(及び第2の方向)の通気性に優れる。
【0050】
本発明の不織布としては、第1の方向と、第2の方向とが、直交していることが好ましい。さらに、本発明の不織布としては、第1の方向が搬送方向(以下、「方向MD」と称する場合がある)であり、そして第2の方向が搬送方向に直交する直交方向(以下、搬送方向に直交する直交方向を、「直交方向」又は「直交方向CD」と称する場合がある)であることがさらに好ましい。
【0051】
図3及び図4は、本発明の不織布のさらに別の実施形態の模式図である。図3及び図4に示される、本発明の、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布1は、第1の面2を有し、そして第1の面2が、第1の方向Aにそれぞれ平行な凸部3及び凹部4を、第1の方向Aと直交する方向に交互に有し、そして第2の面5が、第2の方向Bにそれぞれ平行な凸部6及び凹部7を、第2の方向Bと直交する方向に交互に有する。図3に示される、本発明の、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布1はまた、凹部4及び凹部7を連結する開孔部8を有する。
なお、図3及び図4では、親水化剤は、示されていない。
【0052】
図3に示される、本発明の、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布1の第1の面2において、凸部3が伸長性繊維EXに富み、そして凹部4が伸縮性繊維ELに富むので、凸部3における伸長性繊維の比率が、凹部4における伸長性繊維の比率よりも高くなる。凸部3では、伸長性繊維EXが、第1の方向Aに沿って配置される傾向を有する。
また、図4に示される、本発明の、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布1の第2の面5において、凸部6が伸長性繊維EXに富み、そして凹部7が伸縮性繊維ELに富むので、凸部6における伸長性繊維の比率が、凹部7における伸長性繊維の比率よりも高くなる。
さらに、図3及び図4における凹部4及び凹部7では、伸縮性繊維ELが開孔部8を囲むように配置されている。
【0053】
図3及び図4に示されるような、本発明の不織布は、厚さが薄く、厚さ方向の通気抵抗が少ない凹部を、第1の面及び第2の面に有し且つ厚さ方向の通気抵抗がほぼ0である、一又は複数の開孔部を有するので、不織布の厚さ方向の通気性に特に優れ、そして平面方向の空気の通り道となる凹部を、第1の面及び第2の面に有するので、不織布の平面方向、特に第1の方向及び第2の方向の通気性に優れる。また、図3及び図4に示されるような、本発明の不織布は、伸長時に構造を変化させることができる開孔部を有するので、初期伸長時の強度が低く、身体の動きに追従しやすい。
【0054】
なお、図3では、第1の面の凸部3及び凹部4、並びに第2の面の凸部6及び凹部7は、特定の方向に向けられているが、本発明の不織布では、これらの方向、配置等は、特に限定されない。また、伸長性繊維及び伸縮性繊維の配向性は任意であり、第1の面における複数の凸部、第1の面における複数の凹部、第2の面における複数の凸部及び/又は第2の面における複数の凹部における、伸長性繊維及び/又は伸縮性繊維は、配向性を有していてもよく、又は配向性を有していなくともよい。
【0055】
図5は、図1のX−X断面における、本発明の不織布1の模式図である。図5では、本発明の不織布の第1の面から水分を吸収するケースを説明するために、第1の面が下を向くように記載されている。また、図5では、本発明の不織布の一例として、第1の面の凸部3に、親水化剤9がコーティングされている実施形態が示されている。
【0056】
本発明の不織布が、高い吸水性と、速乾性とを有する理由は、以下のように考えられる。
本発明の、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布1では、親水化剤9がコーティングされることにより親水化されている、第1の面2の凸部3が、水分に接すると、水分を凸部3の中に迅速に取り込むことができる。凸部3は、上述のように、親水化剤により親水化されている伸長性繊維EXの比率が高いので、水分を迅速に取り込むことができる。
【0057】
次いで、凸部3において、不織布1の厚さ方向に配向している伸長性繊維ELが、吸収した水分を迅速に第2の面5側に送ることができる。第2の面5側では、各繊維が平面方向に延びているので、吸収した液体を、平面方向に迅速に拡散することができる。平面方向に拡散された液体は、第2の面全体から迅速に水分を揮発させることができると考えられる。また、第1の面に凸部3が形成されているため、本発明の、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布1では、凸部3の形成により、密度が、第1の面近傍の密度<第2の面近傍の密度の関係を有し、より具体的には、密度が、凸部3近傍の密度<凹部4近傍の密度<第2の面5近傍の密度の関係を有するため、毛細管現象で、第2の面側に水分を迅速に吸い上げることができると考えられる。
以上を簡潔にまとめると、図5に矢印で示されるように、水分は、凸部3から吸収され、迅速に第2の面5側に移行し、そして第2の面5の全体に拡散し、迅速に揮発することができると考えられる。
【0058】
なお、図2に示されるような実施形態においても、水分は、凸部3から吸収され、迅速に第2の面5側に移行し、そして凸部6及び凹部7を有し、図1に示されるようなフラットなものよりも表面積が大きい第2の面5から、迅速に揮発することができると考えられる。
【0059】
図6は、図2のX−X断面及びY−Y断面における、本発明の、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布1の模式図である。図6[a]及び[b]は、それぞれ、Y−Y断面及びX−X断面である。図6では、本発明の不織布の第2の面から水分を吸収するケースを説明するために、第2の面が下を向くように記載されている。また、図6では、本発明の不織布の一例として、第1の面の凸部3に、親水化剤9がコーティングされている実施形態が示されている。
【0060】
図6[a]に示されるように、本発明の、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布1では、親水化剤9がコーティングされることにより親水化されている、第2の面5の凸部6が、水分に接すると、水分を凸部6の中に迅速に取り込むことができる。凸部6は、上述のように、親水化剤により親水化されている伸長性繊維EXの比率が高いので、水分を迅速に取り込むことができる。
【0061】
次いで、図6[b]に示されるように、第2の面5の凸部6から吸収した水分を、第1の面2の、凸部3と、凹部4とから揮発させることができるが、凹部3は不織布の厚さが薄いので、吸収された水分を、凹部4から迅速に揮発させることができると考えられる。
以上を簡潔にまとめると、図6[b]に矢印で示されるように、凸部6から迅速に吸収した水分を、主に凹部4から、迅速に揮発させることができると考えられる。また、凸部3及び凹部4を有する第1の面2は、表面積が大きいことも、迅速な揮発に寄与すると考えられる。
【0062】
本発明の不織布は、吸水性試験において10mm以上の吸水高さにより表わされる吸水性を有するが、上記吸水性試験は、JIS L 1907:2010の「繊維製品の吸水性試験方法」の7.1.2バイレック法に準拠し、浸漬時間を5分とすることにより測定することができる。
【0063】
本発明の不織布は、吸水性試験において10mm以上の吸水高さにより表わされる吸水性を有し、好ましくは約15mm以上の吸水高さ、そしてより好ましくは約20mm以上の吸水高さにより表わされる吸水性を有する。吸水高さは、不織布の吸水性の高さを示す指標であるので、高さが高いほど好ましい。
【0064】
本発明の不織布は、蒸散性試験における20質量%以上の蒸散率で表わされる速乾性を有するが、上記蒸散性試験は、以下の通りに実施することができる。
(1)20℃60%RHの恒温室において、直径約105mmの時計皿に、生理食塩水1mLを滴下する。
(2)100mm×100mmの大きさの試料を準備する。
(3)上記時計皿及び上記試料の合計質量Wを測定する。
(3)時計皿、生理食塩水(1mL)及び上記試料の合計質量W0を測定する。
(4)時計皿に、上記試料を載せ、1mLの生理食塩水と接触させる。
(5)2時間後に、時計皿、生理食塩水(1mL)及び上記試料の合計質量Wtを測定する。
(6)以下の式(1)に基づいて、2時間後の蒸散率を測定する。
蒸散率(%)=100×(Wo−Wt)/(W0−W)
【0065】
本発明の不織布は、蒸散性試験における20質量%以上の蒸散率で表わされる速乾性を有し、好ましくは約30質量%以上の蒸散率、そしてより好ましくは約40質量%以上の蒸散率により表わされる速乾性を有する。蒸散率は、不織布の速乾性を示す指標であるので、値が大きいほど好ましい。
【0066】
[本発明の、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布を製造する方法]
本発明の、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布を製造する方法は、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む、処理すべき不織布を準備するステップを含む。
なお、本発明において、「伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む、処理すべき不織布」と称する場合には、原料としての不織布、すなわち、処理前の不織布を意味し、後述の不均一延伸ステップ、流体処理ステップ等を受けた後の、高い吸水性と、速乾性とを有する不織布(これらは、本明細書において、「本発明の、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布」、「本発明の不織布」、及び「伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布」と称されている)とは異なる。
【0067】
上記伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む、処理すべき不織布としては、上述の伸長性繊維と、上述の伸縮性繊維とを含む不織布であれば、特に制限されることなく、例えば、種々の公知の方法により製造された不織布、例えば、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、ポイントボンド不織布、スパンレース不織布、エアレイド不織布、メルトブローン不織布、ナノファイバーを含む不織布を挙げることができる。
【0068】
上記伸長性繊維及び伸縮性繊維は、上述の繊維から選択することができ、そして伸長性繊維は、続くステップにより繊維径が細くなることを考慮して繊維径を選択することが好ましい。
上記繊維としては、その繊維長に特に制限はなく、例えば、ステープルファイバ及び連続フィラメントを挙げることができる。2種以上の繊維を混合する場合には、それらの繊維の繊維長は同一でもよく、又は異なっていてもよい。
【0069】
本発明の方法は、上記伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む、処理すべき不織布を、高延伸領域と低延伸領域とを有する不織布が形成されるように不均一に延伸するステップ(以下、「不均一延伸ステップ」と称する場合がある)を含む。
上記不均一延伸ステップは、上記伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む、処理すべき不織布において、部分的に、(i)不織布内の繊維の各接合点を破壊し、固定されていた繊維を部分的にウェブ状態とし、そして/又は(ii)不織布内の繊維の各接合点の間で、伸長された伸長性繊維を形成するために行われる。上記伸長された伸長性繊維は、流体で処理する際に移動しやすくなるので、不織布に凹凸を形成しやすくなる。
なお、上記伸縮性繊維は、不均一延伸ステップの際にかかる応力よりも高い弾性限界を有するので、不均一延伸ステップの際に、一時的に伸長された伸縮性繊維は、その後、元の長さに戻ることができる。
【0070】
上記接合点としては、エアスルー不織布の場合には、熱融着点が挙げられ、スパンボンド不織布及びポイントボンド不織布の場合には熱圧着点が挙げられ、そしてスパンレース不織布の場合には繊維交絡点が挙げられる。
【0071】
本明細書において、「高延伸領域」は、伸長された伸長性繊維の伸長度が、低延伸領域よりも高くなるように延伸された領域を意味し、そして「低延伸領域」は、伸長された伸長性繊維の伸長度が、高延伸領域よりも低くなるように延伸された領域を意味し、伸長された伸長性繊維が形成されていない領域、すわなち、未延伸領域を含む。
本明細書において、「不均一に延伸する」とは、高延伸領域と低延伸領域とを有する不織布が形成されるように延伸することを意味し、すなわち、部位によって、伸長された伸長性繊維の伸長度が異なる不織布が形成されるように延伸することを意味する。
【0072】
上記不均一延伸ステップは、高延伸領域と低延伸領域とを有する不織布を形成することができる手段であれば、特に制限されず、任意の手段により実施することができるが、例えば、搬送方向と直交する回転軸線を有する一対のギアロールであって、当該ギアロールのそれぞれの外周面に配置された複数の歯を互いに噛み合わせながら回転するものの間隙に、上記伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む、処理すべき不織布を通過させること(以下、「ギア延伸」と称する場合がある)により行うことができる。
【0073】
図7は、ギア延伸を説明するための模式図である。図7に示されるギア延伸装置11は、一対のギアロール12及び12’を有する。ギアロール12及び12’の外周面13及び13’には、それぞれ、複数の歯14及び14’が配置されている。また、図7に示すギア延伸装置11では、ギアロール12及び12’の回転軸線は、それぞれ、不織布の搬送方向MDと垂直である。さらに、複数の歯14及び14’は、それぞれ、上記回転軸線と平行に、外周面13及び13’に配置されている。
【0074】
図7に示すギア延伸装置11では、一対のギアロール12及び12’のロール間隙に、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む、処理すべき不織布15を通し、ギアロール12及び12’を通過する際に、互い噛み合うギアロール12及び12’の複数の歯14及び14’により、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む、処理すべき不織布15を、三点曲げの原理で延伸し、高延伸領域と低延伸領域とを有する不織布16を形成する。高延伸領域と低延伸領域とを有する不織布16は、直交方向に平行な高延伸領域と低延伸領域とを、搬送方向MDに交互に有する。
【0075】
伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む、処理すべき不織布15において、複数の歯14及び14’の先端部に接する領域では、不織布の生地が固定されるため、あまり又は実質的に延伸されず、低延伸領域が形成される。一方、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む、処理すべき不織布15において、複数の歯14及び14’の先端部に接しない領域、すなわち、歯14の先端部と、歯14’の先端部との間の領域は、大きく延伸され、高延伸領域が形成される。
【0076】
ギア延伸はまた、図8に示されるようなギア延伸装置を用いて行うことができる。
図8は、ギア延伸を説明するための模式図である。図8に示されるギア延伸装置11は、一対のギアロール12及び12’を有する。ギアロール12及び12’の外周面13及び13’には、それぞれ、複数の歯14及び14’が配置されている。また、図8に示されるギア延伸装置11では、複数の歯14及び14’が、それぞれ、ギアロール12及び12’の回転軸線と垂直に、それぞれ、外周面13及び13’に配置されている。複数の歯14及び14’をこのように回転軸線と垂直に配置することにより、搬送方向MDとそれぞれ平行な高延伸領域と低延伸領域とを、直交方向CDに交互に有する不織布を形成することができる。
【0077】
さらに、ギア延伸は、図9に示されるような、複数の歯が、ギアロールの外周面に、ギアロールの回転軸線に対して傾斜して配置されているギア延伸装置を用いて実施することができる。図9は、ギア延伸を説明するための模式図である。図9に示されるギア延伸装置11は、一対のギアロール12及び12’を有し、ギアロール12及び12’の外周面13及び13’には、それぞれ、複数の歯14及び14’が配置されている。また、図9に示すギア延伸装置11では、ギアロール12及び12’の回転軸線は、それぞれ、不織布の搬送方向MDと垂直である。さらに、複数の歯14及び14’は、それぞれ、回転軸線に対して一定の角度θを有するように、外周面13及び13’に配置されている。
なお、図9に示されるようなギア延伸装置では、θの角度及びギアピッチによっては、ギアロール12及び12’の外周面13及び13’に、それぞれ、1枚の歯14及び1枚の歯14’が配置されている場合もある。
【0078】
上記ギア延伸装置は、形成すべき不織布に所望の性能に応じて、適宜選択することができる。
また、高い伸縮性が必要である場合には、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む、処理すべき不織布を、図7〜図9に示すようなギア延伸装置を用いて、複数回、延伸することができる。
【0079】
上記ギア延伸装置において、ギアピッチは、約1〜約10mmが好ましく、そして約2〜約6mmがより好ましい。ギアピッチが約1mmを下回ると、ギアの刃を薄くする必要があり、不織布が部分的に切断される場合があり、そしてギアピッチが約10mmを上回ると、延伸倍率が低く、伸長性繊維が伸長されにくい場合がある。
ギアピッチは、図8において、符号17により表わされる、ある歯から次の歯の間の間隔を意味する。
【0080】
上記ギア延伸装置において、ギア噛込深さは、約0.5mm以上であることが好ましい。ギア噛込深さが約0.5mmを下回ると、不織布の延伸が不十分となり、伸長性繊維が伸長されにくい場合がある。
ギア噛込深さは、図8において、符号18により表わされる、上のギアロールの歯と、下のギアロールの歯とが重複する部分の深さを意味する。
【0081】
高延伸領域と低延伸領域とを有する不織布において、ギア延伸1回当たりの延伸倍率は、約30〜約400%であることが好ましく、そして約50〜約200%であることがより好ましい。延伸倍率が約30%を下回ると、伸長性繊維が伸長されない場合があり、そして延伸倍率が約400%を上回ると、高延伸領域と低延伸領域とを有する不織布の強度が弱く、延長された伸長性繊維が主に脱落しやすくなり、搬送が困難になる場合があり、そして/又は伸長性繊維が破断する場合がある。
【0082】
本明細書において、「延伸倍率」は、ギアピッチをPとし、そしてギア噛込深さをDとした場合に、次の式:
【数1】
により算出される値を意味する。
【0083】
伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む、処理すべき不織布の巻出速度は、所望の延伸倍率等によっても変化するが、例えば、約10m/分以上である。高延伸領域と低延伸領域とを交互に有する不織布の巻取速度は、延伸倍率等によって変化し、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む、処理すべき不織布が搬送方向に延伸された場合には、巻出速度に延伸倍率をかけた値が巻取速度の目安となるであろう。
【0084】
本発明の方法は、上記高延伸領域と低延伸領域とを有する不織布に、親水化剤含有溶液を塗布するステップ(以下、「親水化剤塗布ステップ」と称する場合がある)を含む。
【0085】
上記不均一延伸ステップにおいて形成された、高延伸領域と低延伸領域とを有する不織布に、親水化剤含有溶液を塗布する方法としては、特に制限されるものではないが、例えば、スプレーコーティング法、カーテンコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、ロールコーティング法、スピンコーティング法等が挙げられる。
上記親水化剤塗布ステップを、支持体上で実施し、そのまま、次の流体処理ステップに移行してもよい。例えば、支持体上に配置されている高延伸領域と低延伸領域とを有する不織布に、上記親水化剤溶液をスプレーすることにより、上記親水化剤塗布ステップを実施することができる。
【0086】
上記親水化剤含有溶液では、上述の親水化剤を、溶媒、例えば、有機溶媒、例えば、エタノール、メチルエチルケトン、水等に溶解させた溶液が挙げられ、安全性の高さから水が好ましい。
上記溶媒は、比較的沸点の高いものであってもよい。親水化剤塗布ステップの後に、後述の、加熱空気等を吹き付ける流体処理ステップが実施されるので、上記溶媒が揮発しやすいからである。
【0087】
本発明の方法は、親水化剤が塗布された、高延伸領域と低延伸領域とを有する不織布を、支持体上に配置し、そして噴出された流体を吹き付けることにより処理し、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布を形成するステップ(以下、「流体処理ステップ」と称する場合がある)を含む。
【0088】
不均一延伸ステップにおいて形成された、高延伸領域に存在するウェブ状態の繊維及び/又は伸長された伸長性繊維の少なくとも一部は、流体が衝突する面(以下、「流体衝突面」と称する)では、噴出された流体が衝突し、次いで跳ね返ることに伴って、平面方向、例えば、直交方向に選り分けられる。より具体的には、噴出された流体が吹き付けられた部分では、伸長された伸長性繊維が他に移動し、主に伸縮性繊維が残ることにより、第1の面に複数の凹部が形成される。
【0089】
伸縮性繊維は、流体の衝突により力を受けるが、弾性限界未満の応力が加わるに留まるので、流体が吹きつけられた後は、元の場所に戻るものが多い。従って、第1の面における複数の凹部では、伸縮性繊維に富むが、繊維の密集度は低い。伸長された伸長性繊維は、第1の面における複数の凹部の両端に凸部を形成する。従って、第1の面における複数の凸部では、伸長性繊維に富み、そして選り分けられた伸長性繊維が密集するので、繊維の密集度が高くなる。なお、流体衝突面は、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布の第1の面に相当し、そして流体が吹き付けられた軌跡の方向が、第1の方向に相当する場合がある。
【0090】
また、流体衝突面と反対側の面(以下、「非流体衝突面」と称し、第2の面に相当する)では、ウェブ状態の繊維及び/又は伸長された伸長性繊維の少なくとも一部が、不織布を通過する流体の流れに沿って移動する。
【0091】
上記流体処理ステップにおいて用いられる流体としては、空気、例えば、加熱された空気、水蒸気、又は水、例えば、熱水が挙げられる。
上記流体を、親水化剤が塗布された、高延伸領域と低延伸領域とを有する不織布に、固定された流体ノズルから吹き付けることができ、又は直交方向に往復する流体ノズルから吹き付けることができる。また、上記流体を、親水化剤が塗布された、高延伸領域と低延伸領域とを有する不織布に、連続的、又は間欠的に流体ノズルから吹き付けることができる。これらを組み合わせることにより、あらかじめ定められたパターンを含む、種々のパターンを有する、複数の凸部及び複数の凹部を、第1の面に形成することができる。
【0092】
上記流体は、親水化剤が塗布された、高延伸領域と低延伸領域とを有する不織布の状態によって、適宜選択することができる。例えば、ギアピッチが小さく、延伸倍率が大きい不織布を処理する場合には、比較的低いエネルギーで、伸長された伸長性繊維を主に移動させることができるため、流体として空気又は水蒸気を選択することが好ましい。また、ギアピッチが大きく、低延伸領域が多い不織布を用いる場合には、各繊維の接合点が多いので、伸長された伸長性繊維を移動させるために比較的高いエネルギーが必要であるため、流体として水又は水蒸気を選択することが好ましく、そして水蒸気がより好ましい。というのは、繊維量が多い部分に水分が残存しにくく、繊維量が多い部分の接合点を破壊することが少なく、そして移動すべき部分の、伸長された伸長性繊維を簡易に移動させることができるからである。
【0093】
上記流体処理ステップは、当技術分野で公知の装置を用い、そして公知の方法で行うことができる。
本発明の方法の実施形態の1つでは、高延伸領域と低延伸領域とを有する不織布を支持するために用いられる支持体は、当技術分野で通常用いられている支持体、例えば、金属、プラスチック製のコンベアネット、抄紙網等であることができる。上記支持体は、流体透過性を有するのが一般的である。
【0094】
本発明の方法の別の実施形態では、不織布の通気性、肌触り(例えば、低接触面積)、液引込性等をさらに向上させるために、突状部と窪み部とを有する支持体を用いることができる。
本発明において、「突状部」は、不織布の第2の面に複数の凹部を形成するために用いられる部分であり、そして「窪み部」は、不織布の第2の面に複数の凸部を形成するために用いられる部分である。
【0095】
図10は、コンベア上で用いられる支持体の一例を示す図である。
図10において、支持体19は、直交方向CDに平行な、突状部20と窪み部21とを有し、そして突状部20と、窪み部21とが、搬送方向MDに交互に配置されている。図10にはまた、流体ノズル22が示され、そして支持体19の下の、流体ノズル22の直下に、流体を受け入れるサクション部(図示せず)が設けられている。図10に示される支持体19では、突状部20及び窪み部21は、立方体形状を有し、そして交互に配列されている。
【0096】
図10では、突状部20と、窪み部21とは、直交方向CDに平行であり且つ搬送方向MDに交互に配置されているが、本発明の方法では、突状部及び窪み部の形状、配列等は、特に制限されず、例えば、突状部及び窪み部は、(i)搬送方向にそれぞれ平行な突状部及び窪み部であって、直交方向に交互に配置されているものであってもよく、又は(ii)搬送方向に対してそれぞれ傾斜を有する突状部及び窪み部であって、当該傾斜の方向と直交する方向に交互に配置されているものであってもよく、あるいは(iii)あらかじめ定められた形状(例えば、立方体形状、円柱形状、半球形状等)の突状部及び/又は窪み部が、あらかじめ定められた配列(例えば、ハート型、星型等の配列)で配置されているものであってもよい。
【0097】
突状部と窪み部とを有する支持体を用いると、突状部及び窪み部を有しない支持体を用いる場合よりも、大きな複数の凸部と、深い複数の凹部(場合によっては、一又は複数の開孔部)とを有する不織布を形成することができる。
【0098】
上記現象を、図10を用いて具体的に説明する。流体ノズル22から噴出された流体は、突状部20と衝突すると、窪み部21に回り込んで流れる。その結果、自由度の高い、伸長された伸長性繊維が、流体の流れに沿って窪み部21の方に移動するので、流体と突状部20とが交差する場所には、主に伸縮性繊維のみが残り、繊維の密集度が下がり、第2の面5に複数の凹部が形成される。伸縮性繊維は、流体の力により一時的に伸長するものの、弾性限界未満の応力が加わるに留まる場合には、流体がなくなり、応力が加わらなくなった後は、原則として元に戻る。従って、第2の面5における複数の凹部では、伸縮性繊維に富む。流体を吹き付ける力が強い場合には、伸縮性繊維もある程度移動し、第1の面2の凹部と、第2の面5の凹部とを連結する、一又は複数の開孔部が形成される。
【0099】
流体と窪み部21が交差する場所には、伸長された伸長性繊維が集まるので、繊維が密集し、第2の面5に複数の凸部を形成し、そして第2の面5における複数の凸部は、伸長性繊維に富む。図10の場合には、第2の方向は、突状部20及び窪み部21の方向、すなわち、直交方向CDである。第2の面5における複数の凸部では、不織布の厚さ方向に、伸長された伸長性繊維が立ち上がる傾向があるため、不織布に耐圧縮性が付与され、さらに液引込性が向上する。また、図10に示される、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布1は、第2の面5に複数の凸部を有することから、通気性、特に平面方向の通気性に優れ、さらに接触面積が少なくなることから肌触りに優れる。
【0100】
突状部と窪み部とを有する支持体を用いて形成された不織布は、それを用いないで形成された場合と比較して、第2の面に高さの高い複数の凸部と、深さの深い複数の凹部とを有するので、通気性、特に平面方向の通気性、耐圧縮性、液引込性、肌触りに優れる。第2の面における複数の凸部は、比較的繊維強度の高い伸長性繊維から主に構成されるため、強度が高く、潰れにくい。突状部と窪み部とを有する支持体を用いて形成された不織布が、一又は複数の開孔部を有する場合には、厚さ方向の通気性に優れる。
なお、図10に示されるような支持体を用いて形成された不織布は、平面方向の通気性の中で、特に直交方向の通気性に優れる。上記不織布のうち、支持体の突状部(不織布の第2の面の凹部)に対応する場所が、気体の通路となり得るからである。
【0101】
上記突状部は、窪み部の流体透過性よりも、低い流体透過性を有することが好ましい。突状部が低い流体透過性を有することにより、突状部に衝突した流体が、窪み部の方に流れ、本発明の方法により形成された、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布の第2の面に、より高さの高い、複数の凸部を形成することができるからである。
上記突状部の素材としては、金属、プラスチック等が挙げられるであろう。
【0102】
上記突状部及び窪み部は、特に制限されないが、例えば、流体透過性の支持体として通常用いられている金属、プラスチック製等のコンベアネット、抄紙網、パンチングプレート等の上に、立方体形状、筒状等の金属を、一定の間隔を保持する等、あらかじめ定められた配列で配置することにより形成することができる。
【0103】
あらかじめ定められた形状(例えば、立方体形状、円柱形状、半球形状等)の突状部及び/又は窪み部が、あらかじめ定められた配列(例えば、ハート型、星型等の配列)で配置されている支持体としては、例えば、パンチングプレート上に、半球型の形状の金属が、あらかじめ定められた配列(例えば、ハート型)で配置されたものが挙げられる。当該支持体を用いると、第2の面にあらかじめ定められたパターン(例えば、ハート型)の凹部を有する不織布を形成することができる。
また、例えば、パンチングプレート上に、半球型の窪み形状が、あらかじめ定められた配列(例えば、ハート型)で配置された、突状部と窪み部とを有する支持体を用いると、第2の面にあらかじめ定められたパターン(例えば、ハート型)の、複数の凸部を有する不織布を形成することができる。
【0104】
流体処理ステップが、ロール上で行われる場合には、ロール状の支持体であって、その外周がメッシュ等の流体透過性材料で構成され且つ外周面に、あらかじめ定められた形状及び配列の突状部及び窪み部が配置されているものを用いることができる。当該あらかじめ定められた形状及び配列としては、上述の形状及び配列を挙げることができる。
【0105】
図11は、図10に示される支持体19を用いて形成された、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布1を示す図である。図11は、図10にZ−Zで示される断面に相当する。図11では、支持体19の窪み部21に、第2の面5の凸部6が形成され、そして支持体19の突状部20に、第2の面5の凹部7が形成されている。
【0106】
本発明のさらに別の実施形態では、図12に示される支持体19を用いることができる。図12に示す支持体19では、突状部20及び窪み部21が、それぞれ、立方体形状及び格子形状を有し、そして突状部20が、搬送方向及び直交方向に一定の間隔をあけた配列で配置されている。
図12に示されるような支持体を用いた場合には、第2の面に、複数の凸部6と、1つの凹部7とが形成される。
【0107】
突状部と窪み部とを有する支持体において、それらの幅は、形成すべき不織布に必要な特性等によって異なるが、例えば、図10に示される支持体において、突状部の幅は、約0.5〜約10mmの範囲にあることが好ましく、窪み部の幅は、約1〜約10mmの範囲にあることが好ましい。
【0108】
上記伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布は、厚さ方向の通気度が、約400m3/m2/分以上であることが好ましく、約600m3/m2/分以上であることがより好ましく、そして約1000m3/m2/分以上であることが最も好ましい。厚さ方向の通気度が高いほど、人体に接する部位に用いられた場合等にムレにくくなる。
また、上記伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布は、平面方向の通気度が、約5m3/m2/分以上であることが好ましく、約10m3/m2/分以上であることがより好ましく、そして約15m3/m2/分以上であることがさらに好ましい。水平方向の通気度が高いほど、湿度が高い空気が肌の近くに滞留しにくく、外部に排出されやすくなる。
【0109】
本発明の不織布は、吸収性物品、例えば、生理用品及び使い捨ておむつ、清掃用品、例えば、ワイパー、並びに医療用品、例えば、マスク等に有用である。
また、使い捨ておむつの外装シートに、伸縮性不織布が用いられている場合があるが、伸縮性繊維を含む、本発明の不織布は、伸縮性を有するので、上記伸縮性不織布の代わりに、外装シートとして用いられうる。本発明の不織布を使い捨ておむつの外装シートとして用いると、外装シートが高い吸水性と速乾性とを有するので、ユーザーがかいた汗を、外装シートから迅速に吸収し、そして使い捨ておむつの外に蒸散させることができ、その結果、使い捨てオムツ内の環境を良好に保つことができる。
【実施例】
【0110】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例において評価された項目の、測定条件は、以下の通りである。
【0111】
[坪量]
坪量は、JIS L 1906の5.2に従って測定する。
[嵩]
嵩は、(株)大栄科学精器製作所製 THICKNESS GAUGE UF−60を用いて測定する。
【0112】
[通気度]
通気度は、カトーテック株式会社のKES−F8−AP1通気性試験器を用いて測定し、単位を「m3/m2/分」に換算する。
不織布の厚さ方向の通気度は、100mm×100mmの大きさにカットした不織布を、通気性試験器にセットして測定する。
不織布の平面方向の通気度は、100mm×100mmの大きさにカットした不織布を、通気性試験器にセットし、100mm×100mmの大きさのアクリル板をその上にさらにセットし、3.5mN/cm2の加重下で測定する。
【0113】
[伸縮特性]
(株)島津製作所製のオートグラフ型引張試験機 形式AG−1KNIを用いて、下記サイクルで測定する。
−50%伸長時強度−
幅50mmmの試料を、チャック間距離100mmでチャックに固定し、2つのチャックの先端に目印を付ける。次いで、試料を、100mm/分の速度で伸度100%まで伸長(行き)し、100mm/分の速度で元の長さまで戻す(戻り)(以上、1サイクル)。行きの50%伸長時の、幅50mm当たりの強度を、50%伸長時強度として評価する。
【0114】
−1サイクル後回復率−
上記サイクルを、1回実施した後の、目印間の長さL(mm)を測定し、1サイクル後回復率を、以下の式に従って算出する。
1サイクル後回復率(%)=100×[100−(L−100)]/100
【0115】
上記50%伸長時強度は、約10N以下であることが好ましい。当該強度が約10Nを超えると、例えば、使い捨ておむつに用いられた場合に、装着時におむつが広げにくく、はかせにくくなることが考えられる。なお、本明細書において、幅50mm当たりの強度(N)を、N/50mmと略記する。
上記1サイクル後回復率は、約50%以上であることが好ましい。使い捨ておむつ等に用いられた場合に、上記1サイクル後回復率の値が小さいと、使い捨ておむつ等に用いられた場合に、使用と共に、不織布の伸縮性がなくなり、使い捨ておむつがずれ落ちる場合があるからである。
【0116】
[伸長性繊維の比率]
不織布を50mm×50mmのサイズに切断し、そこから、第2の面の凸部の頂部付近の繊維(以下、「凸部の繊維」と称する)を、カッターで切り分ける。次いで、凸部の繊維を計量し、20mLのジメチルアセトアミドに浸漬し、室温で30分間静置する。次いで、残存した繊維をろ過し、エタノールで洗浄し、そして乾燥させる。残存した繊維の乾燥質量から、伸長性繊維の比率を算出する。
また、同様に、第2の面の凹部の底部付近の繊維に関しても、伸長性繊維の比率を算出する。
【0117】
[製造例1]
−不織布の製造−
伸長性繊維としてポリプロピレン繊維を含み且つ伸縮性繊維としてポリウレタンエラストマー繊維を含むスパンボンド不織布を購入した。ポリプロピレン繊維は、繊維径約21μmであり、そしてポリウレタンエラストマー繊維は、繊維径約25μmであり、そしてポリプロピレン繊維と、ポリウレタン繊維との質量比は、約50:50であった。なお、上記ポリプロピレン繊維は、紡糸時に、ノニオン系親水化剤が、ポリプロピレン繊維の質量に対して0.3質量%混合されることにより親水化されているが、ポリウレタンエラストマー繊維は、親水化されていない。
上記スパンボンド不織布の特性を、表1に示す。
【0118】
−ギア延伸処理−
上記スパンボンド不織布を、30m/分の速度で巻き出し、図7に示すギア延伸装置(ギアピッチ:4.9mm,ギア噛込深さ:7.0mm,ギア先端幅:0.2mm,ギア温度:55℃)を用いて、延伸倍率203%まで、搬送方向MDの方向にギア延伸し、高延伸領域と低延伸領域とを有する不織布を形成した。
上記高延伸領域と低延伸領域とを有する不織布において、歯の先端部に接していた低延伸領域では、エンボス部分が残存していた。また、歯の先端部に接しなかった高延伸領域では、エンボス部分が一部破壊され、ウェブ領域を形成していた。
上記高延伸領域と低延伸領域とを有する不織布の特性を、表1に示す。
【0119】
−親水化剤処理−
上記高延伸領域と低延伸領域とを有する不織布を、丸穴60°千鳥型のパンチングプレート(φ:3.0mm、MDピッチ:6.93mm、CDピッチ:4.0mm、厚さ:1.0mm)からなる支持体の上に載せ、上記高延伸領域と低延伸領域とを有する不織布に、親水化剤含有溶液としての、ショ糖脂肪酸エステルの2.5質量%水溶液を、ショ糖脂肪酸エステルの坪量が約0.1g/m2となるようにスプレー塗装した。
【0120】
−水蒸気処理−
次いで、親水化剤が塗布された、高延伸領域と低延伸領域とを有する不織布を、1.0mmの間隔で、複数のノズル(φ:0.5mm)を備える水蒸気処理システム(噴出圧力:0.25Mpa,水蒸気温度:約125℃)に、ノズル及び支持体間距離を4.0mmに保ちながら、30m/分の速度で通し、不織布1を得た。
不織布1の特性を表1に示す。
【0121】
[製造例2及び3]
当初のスパンボンド不織布の坪量が異なる以外は、製造例1と同様にして、不織布2及び3を得た。不織布2及び3の特性を表1に示す。
[参考製造例1]
親水化剤処理を行わなかった以外は、製造例1と同様にして、不織布4を得た。不織布4の特性を表1に示す。
【0122】
[比較製造例1]
当初のスパンボンドにおいて、ポリプロピレン繊維が親水化剤を含有せず且つ坪量が異なり、そして親水化剤処理を行わなかった以外は、製造例1と同様にして、不織布5を得た。不織布5の特性を表1に示す。
[比較製造例2]
特許文献1に記載の方法に従って、不織布6を形成した。不織布6の特性を表1に示す。
【0123】
[実施例1〜3,参考例1,並びに比較例1及び2]
不織布1〜6に、吸水性試験を実施し、吸水高さを測定した。吸水性試験は、上述の記載に従って実施された。結果を表1に示す。
次いで、不織布1〜6に、蒸散性試験を実施し、蒸散率を測定した。蒸散性試験は、上述の記載に従って実施された。なお、上記蒸散性試験において、不織布は、不織布の、支持体側の面が生理食塩水に接触するように、時計皿に置かれた。結果を表1に示す。
【0124】
【表1】
【0125】
実施例1〜3の不織布1〜3は、平面方向及び厚さ方向の通気性に優れ、そして高い吸水性と速乾性とを有することが分かる。
また、親水化剤がコーティングされている不織布1〜3は、参考例1の不織布、すなわち、伸長性繊維にのみ親水化剤が含まれる不織布と比較して、高い吸水性と速乾性とを有することが分かる。
【0126】
[実施例4]
[伸長性繊維の比率の測定]
−不織布の製造−
伸長性繊維としてのポリオレフィン繊維(繊維径約21μm)と、伸縮性繊維としてのポリウレタン繊維(繊維径25μm)とを、約50:50の比率で含むスパンボンド不織布を購入した。
【0127】
−ギア延伸処理−
上記スパンボンド不織布を、10m/分の速度で巻き出し、80℃に予熱された4本の予熱ロールに通し、図8に示すギア延伸装置(ギアピッチ:2.5mm,ギア噛込深さ:3.0mm,延伸倍率:160%)でギア延伸し、次いで、図7に示すギア延伸装置(ギアピッチ:4.9mm,ギア噛込深さ:7.0mm,延伸倍率:202%)でギア延伸して、高延伸領域と低延伸領域とを有する不織布を形成した。2つのギア延伸装置のギアの温度は、55℃であった。
上記高延伸領域と低延伸領域とを有する不織布において、歯の先端部に接していた低延伸領域では、エンボス部分が残存していた。また、歯の先端部に接しなかった高延伸領域では、エンボス部分が一部破壊され、ウェブ領域を形成していた。
【0128】
−水蒸気処理−
上記高延伸領域と低延伸領域とを有する不織布を、図10に示すような、直交方向にそれぞれ平行な突状部と窪み部とを、搬送方向に交互に有する支持体の上に載せた。突状部は、流体を透過しないものであり、その幅及び高さは、それぞれ、3mm及び5mmであった。窪み部の幅は2mmであった。次いで、上記ギア処理された不織布を、2.0mmの間隔で、複数のノズル(φ0.5mm)を備える水蒸気処理システムに5m/分の速度で通し、不織布7〜9を得た。不織布7〜9は、複数の開孔部を有していた。
【0129】
なお、伸長性繊維の比率を評価するに当たって、親水化剤塗布ステップは省略された。親水化剤塗布ステップの有無により、伸長性繊維の比率は変わらないと考えられ、そして不織布に親水化剤がコーティングされていることにより、伸長性繊維の比率の測定に誤差が生ずる場合もあると考えられるからである。
【0130】
水蒸気処理システムにおける、圧力及び水蒸気温度の条件を、以下の表2に示し、不織布7〜9の特性を併せて表2に示す。
【0131】
【表2】
【0132】
不織布7〜9における、伸長性繊維としてのポリオレフィン繊維の比率を、染色法により評価した。
ポリウレタン繊維を赤色に染色し且つポリオレフィン繊維を染色しない染料で、不織布7〜9を染色し、光学顕微鏡により目視で評価した。その結果、不織布7〜9の全てに関して、第1の面及び第2の面において、それぞれ、図3及び4に示すように、伸長性繊維としてのポリオレフィン繊維と、伸縮性繊維としてのポリウレタン繊維とが偏在していることが確認された。より具体的には、第1の面の凸部におけるポリオレフィン繊維の比率が、第1の面の凹部におけるポリウレタン繊維の比率よりも高く、そして第2の面の凸部におけるポリオレフィン繊維の比率が、第2の面の凹部におけるポリウレタン繊維の比率よりも高いことが確認された。
【0133】
さらに、不織布9の、第2の面の凸部及び第2の面の凹部のポリオレフィン繊維の比率を溶媒法により評価した。第2の面の凸部及び第2の面の凹部を、それぞれ、67.7mg及び39.8mg採取し、溶媒としてジメチルアセトアミド20mLを用いて評価したところ、第2の面の凸部及び第2の面の凹部のポリオレフィン繊維の比率が、それぞれ、54質量%及び43質量%であった。当該結果より、不織布9において、第2の面の凸部におけるポリオレフィン繊維の比率が、第2の面の凹部におけるポリオレフィン繊維の比率よりも高いことが確認された。
なお、スパンボンド不織布のポリオレフィン繊維の比率を測定したところ、50質量%であった。
不織布7のMD方向の断面の電子顕微鏡写真を図13に示す。
【0134】
搬送方向MDの断面である図13には、凸部6と、凹部7とが示され、凸部6では、単位面積当たりの繊維量が多く且つ繊維が立っていることが分かり、そして凹部7では、単位面積当たりの繊維量が少なく且つ繊維が寝ていることが分かる。
【符号の説明】
【0135】
1 伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布
2 第1の面
3 凸部
4 凹部
5 第2の面
6 凸部
7 凹部
8 開孔部
9 親水化剤
11 ギア延伸装置
12,12’ ギアロール
13,13’ 外周面
14,14’ 複数の歯
15 伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む、処理すべき不織布
16 高延伸領域と低延伸領域とを有する不織布
17 ギアピッチ
18 ギア噛込深さ
19 支持体
20 突状部
21 窪み部
22 流体ノズル
EX 伸長性繊維
EL 伸縮性繊維
A 第1の方向
B 第2の方向
MD 搬送方向
CD 直交方向
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面方向及び厚さ方向の通気性に優れ、そして高い吸水性と速乾性とを有する不織布、並びに当該不織布を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不織布は、吸収性物品、例えば、生理用品及び使い捨ておむつ、清掃用品、例えば、ワイパー、並びに医療用品、例えば、マスク等の製品に用いられ、これらの製品では、製品の用途、用いられる部位等に適した性能を有する不織布が採用されている。
【0003】
例えば、吸収性物品では、使用者に違和感を生じさせることなく、着用の際又は使用の際の身体の動きに合わせて伸縮する不織布が要求される。また、使い捨ておむつでは、高い伸縮性を有し且つ伸長時に破断しないような強度を有すると共に、肌触り及び通気性が良好な不織布が要求される。
【0004】
通気性に優れる不織布として、特許文献1には、第1層とこれに隣接する第2層とを有し、第1層と第2層とが所定パターンの接合部によって部分的に接合されており、該接合部間で第1層が三次元的立体形状をなし、第2層がエラストマー的挙動を示す材料で構成されており、シート全体がエラストマー的挙動を示すと共に通気性を有する立体シート材料が開示されている。特許文献1に記載の立体シート材料は、第2層を構成する繊維を、熱収縮を開始する温度以上で熱処理して、第2層を収縮させることにより、立体構造を発現させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−187228号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の立体シート材料は、第2層を収縮させることにより、立体構造を発現させているため、シート材料の平面方向の通気性に優れるが、厚さ方向の通気性に劣る傾向がある。また、特許文献1に記載の立体シート材料は、第2層を収縮させているため、特に第2層の繊維密度が高く、伸縮性を阻害しやすく、そして速乾性に関しては言及されていない。
従って、本発明は、肌触り及び伸縮性に優れ、平面方向及び厚さ方向の通気性に優れ、そして高い吸水性と速乾性とを有する不織布、及び当該不織布を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布であって、上記不織布が、複数の凸部及び複数の凹部を有する第1の面と、第1の面の反対側にある第2の面とを有し、第1の面の凸部における伸長性繊維の比率が、第1の面の凹部における伸長性繊維の比率よりも高く、上記不織布が親水化剤でコーティングされているか、又は上記伸長性繊維及び伸縮性繊維が親水化剤を含有し、上記不織布が、吸水性試験における10mm以上の吸水高さで表わされる吸水性と、蒸散性試験における20質量%以上の蒸散率で表わされる速乾性とを有することを特徴とする不織布により、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
具体的には、本発明は以下の態様に関する。
[態様1]
伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布であって、
上記不織布が、複数の凸部及び複数の凹部を有する第1の面と、第1の面の反対側にある第2の面とを有し、第1の面の凸部における伸長性繊維の比率が、第1の面の凹部における伸長性繊維の比率よりも高く、
上記不織布が親水化剤でコーティングされているか、又は上記伸長性繊維及び伸縮性繊維が親水化剤を含有し、上記不織布が、吸水性試験における10mm以上の吸水高さで表わされる吸水性と、蒸散性試験における20質量%以上の蒸散率で表わされる速乾性とを有する、
ことを特徴とする、上記不織布。
【0009】
[態様2]
第2の面が、複数の凸部及び凹部を有し、第2の面の凸部における伸長性繊維の比率が、第2の面の凹部における伸長性繊維の比率よりも高い、態様1に記載の不織布。
[態様3]
第1の面の凹部と、第2の面の凹部とを連結する、一又は複数の開孔部を有する、態様2に記載の不織布。
【0010】
[態様4]
上記不織布が親水化剤でコーティングされ且つ上記伸長性繊維が親水化剤を含有する、態様1〜3のいずれか一つに記載の不織布。
[態様5]
吸水性試験における吸水高さが18mm以上である、態様1〜4のいずれか一つに記載の不織布。
【0011】
[態様6]
蒸散性試験における蒸散率が40質量%以上である、態様1〜5のいずれか一つに記載の不織布。
[態様7]
厚さ方向の通気度が、400m3/m2/分以上であり、平面方向の通気度が、5m3/m2/分以上である、態様1〜6のいずれか一つに記載の不織布。
【0012】
[態様8]
上記伸長性繊維の材料が、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ乳酸、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される、態様1〜7のいずれか一つに記載の不織布。
[態様9]
上記伸縮性繊維の材料が、ポリウレタン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される、態様1〜8のいずれか一つに記載の不織布。
【0013】
[態様10]
上記親水化剤が、アニオン系親水化剤、カチオン系親水化剤及びノニオン系親水化剤、並びにそれらの組合せから成る群から選択される、態様1〜9のいずれか一つに記載の不織布。
【0014】
[態様11]
態様1〜10のいずれか一つに記載の不織布を製造する方法であって、
伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む、処理すべき不織布を準備するステップ、
上記伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む、処理すべき不織布を、高延伸領域と低延伸領域とを有する不織布が形成されるように不均一に延伸するステップ、
上記高延伸領域と低延伸領域とを有する不織布に、親水化剤含有溶液を塗布するステップ、そして
親水化剤が塗布された、高延伸領域と低延伸領域とを有する不織布を、支持体上に配置し、そして噴出された流体を吹き付けることにより処理し、態様1〜7のいずれか一つに記載の不織布を形成するステップ、
を含む方法。
【0015】
[態様12]
上記不均一に延伸するステップが、搬送方向と直交する回転軸線を有する一対のギアロールであって、当該ギアロールのそれぞれの外周面に配置された複数の歯を互いに噛み合わせながら回転するものの間隙に、上記伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布を通過させることにより行われる、態様11に記載の方法。
【0016】
[態様13]
上記親水化剤溶液が、親水化剤水溶液である、態様11又は12に記載の方法。
[態様14]
上記流体が、空気、水蒸気及び水から成る群から選択される、態様11〜13のいずれか一つに記載の方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明の、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布は、平面方向及び厚さ方向の通気性に優れ、そして高い吸水性と速乾性とを有する。
本発明の、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布はまた、肌触り及び伸縮性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布の実施形態の1つの模式図である。
【図2】図2は、本発明の、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布の別の態様の模式図である。
【図3】図3は、本発明の、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布のさらに別の態様の模式図である。
【図4】図4は、本発明の、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布のさらに別の態様の模式図である。
【図5】図5は、図1のX−X断面における、本発明の、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布の模式図である。
【図6】図6は、図2のX−X断面及びY−Y断面における、本発明の、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布の模式図である。
【図7】図7は、ギア延伸を説明するための模式図である。
【図8】図8は、ギア延伸を説明するための模式図である。
【図9】図9は、ギア延伸を説明するための模式図である。
【図10】図10は、コンベア上で用いられる、不織布を支持するための支持体の一例を示す図である。
【図11】図11は、図8に示す支持体を用いて形成された、凹凸を有する不織布を説明するための図である。
【図12】図12は、コンベア上で用いられる、不織布を支持するための支持体の別の例を示す図である。
【図13】図13は、実施例1で形成された不織布2の、方向MDの断面の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布、及び当該不織布を製造する方法について、以下、詳細に説明する。
【0020】
[本発明の、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布]
図1は、本発明の、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布の実施形態の1つの模式図である。図1に示される、本発明の、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布1は、第1の面2に、複数の凸部3及び複数の凹部4を有する。図1に示される、本発明の、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布1において、凸部3が伸長性繊維EXに富み、そして凹部4が伸縮性繊維ELに富むので、凸部3における伸長性繊維の比率が、凹部4における伸長性繊維の比率よりも高くなる。また、図1に示される、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布1では、凸部3及び凹部4が、それぞれ、第1の方向Aに平行であり、そして第1の方向Aと直交する方向に交互に配置されている。
なお、以下、本発明の、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布を、単に、「本発明の不織布」と称する場合がある。
【0021】
図1に示される実施形態では、凸部3において、伸長性繊維EXが、第1の方向Aに沿った配向性を有し、そして凹部4において、伸縮性繊維ELに、特に配向性は存在しない。また、図1に示される実施形態では、図示されていないが、伸長性繊維EXは、不織布1の厚さ方向に配向している。また、凸部3では、その他の場所と比較して、繊維の密集度が高い傾向がある。厚さ方向への配向性、及び繊維の密集度については、本発明の不織布の製造方法に関連して説明する。
なお、図1では、親水化剤は、示されていない。
【0022】
ここで、「伸長性繊維の比率」とは、その場所における、全ての繊維に対する伸長性繊維の質量比を意味する。当該比率は、伸長性繊維の質量比を見積もることができる方法であれば、特に制限されず、任意の方法により測定されうるが、一例として、以下の溶媒法を挙げることができる。
(1)本発明の不織布から、第1の面の凸部の繊維を採取し、質量を測定する。
(2)伸長性繊維又は伸縮性繊維のいずれか一方を溶解させることができる溶媒に、採取した繊維を溶解させ、一定時間、例えば、30分静置する。
(3)溶液をろ過し、必要に応じて残存した繊維を洗浄し、そして残存した繊維を乾燥させる。
(4)残存した繊維の乾燥質量を測定し、繊維の質量比を算出する。
【0023】
上記溶媒は、適宜選択することができるが、例えば、伸長性繊維がポリオレフィンであり且つ伸縮性繊維がポリウレタン系エラストマーである場合には、ポリウレタン系エラストマーが可溶であり且つポリオレフィンが不溶であるジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等を選択することができる。また、伸縮性繊維がポリスチレン系エラストマーである場合には、可溶な溶媒としてトルエン、キシレン等の溶媒を挙げることができる。
第1の面の凹部、並びに所望による第2の面の凸部及び凹部についても同様に、伸長性繊維の比率を測定することができる。
【0024】
上記伸長性繊維の比率を測定する別の方法として、以下の染色法を挙げることができる。
(1)本発明の不織布を、伸長性繊維に対する染色性と、伸縮性繊維に対する染色性とが異なる染料で染色する。
(2)光学顕微鏡等を用いて、第1の面の凸部の投影画像を撮影する。
(3)上記画像から、伸長性繊維の比率を目視により評価するか、又は上記画像を、伸長性繊維と伸縮性繊維とを区別するように二値化し、そして伸長性繊維の比率を計算する。
【0025】
上記染色法は、上記溶媒法が適さない不織布において、伸長性繊維の比率を測定するために好適である。
第1の面の凹部、並びに所望による第2の面の凸部及び凹部についても同様に、伸長性繊維の比率を測定することができる。
なお、上記染色法では、二値化により得られる比率は、投影画像中の面積比を意味するが、当該面積比は、ほぼ体積比に相当するので、繊維の密度を乗ずることにより、質量比を見積もることができる。
【0026】
本発明の効果、特に肌触り及び伸縮性の両立の観点から、第1の面の凸部における伸長性繊維の比率が、第1の面の凹部における伸長性繊維の比率よりも、少なくとも1質量%高いことが好ましく、少なくとも2質量%高いことがより好ましく、少なくとも3質量%高いことがさらに好ましく、そして少なくとも5質量%高いことがさらに好ましい。
【0027】
図1に示されるような、本発明の不織布は、第1の面の凸部における伸長性繊維の比率が、第1の面の凹部における伸長性繊維の比率よりも高いので、肌触りに優れ且つ伸縮性に優れる。その理由は、以下の通りである。
一般的に、伸縮性繊維は、不織布に伸縮性に付与する構成要素であるが、タック性を有する、摩擦が高い等の肌触りに劣る欠点を有し、そして伸長性繊維は、伸縮性をほとんど有しないが、肌触りに優れる。本発明の不織布は、肌触りに優れる伸長性繊維が人と接する凸部に配置され、そして、肌触りに劣る伸縮性繊維が、人が接しにくい凹部及び不織布の凸部内にほぼ均一に配置されているので、伸縮性を有しつつ、肌触りに優れる特徴を有する。
【0028】
図1に示されるような、本発明の不織布は、厚さが薄く、厚さ方向の通気抵抗が少ない凹部を第1の面に複数有するので、凹部を有しない不織布と比較して、不織布の厚さ方向の通気性に優れる。図1に示される本発明の不織布はまた、平面方向の空気の通り道となる凹部を、第1の面に複数有するので、不織布の平面方向の通気性に優れる。
【0029】
本明細書において、「伸縮性繊維」は、弾性的に伸長可能な繊維を意味する。より具体的には、上記伸縮性繊維は、形成時及び想定される使用時にかかる応力よりも大きな弾性限界を有し、形成時及び想定される使用時にかかる応力の範囲内で弾性的に伸長可能な繊維を意味する。上記伸縮性繊維の材料としては、例えば、ポリウレタン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、及びそれらの組み合わせを挙げることができる。上記伸縮性繊維としては、伸長後の歪みの少なさ、耐熱性の高さ等の観点から、ポリウレタン系エラストマーが好ましい。
【0030】
上記伸縮性繊維の繊維径は、2〜50μmの範囲内にあることが好ましく、そして15〜30μmの範囲内にあることがより好ましい。
本発明の不織布において、高い吸水性と速乾性を達成するために、伸縮性繊維が親水化剤を含有し、親水性を有することが好ましい。親水化剤を含有する伸縮性繊維としては、例えば、伸縮性繊維の材料に親水化剤を混合し、次いで、紡糸することにより形成された伸縮性繊維、いわゆる、親水化剤が練り込まれている伸縮性繊維が挙げられる。
上記伸縮性繊維が含有しうる親水化剤は、後述の不織布をコーティングする親水化剤と同一であっても、又は異なっていてもよい。
【0031】
本明細書において「伸長性繊維」は、弾性限界が上記伸縮性繊維の弾性限界より小さい繊維を意味する。より具体的には、上記伸長性繊維は、形成時にかかる応力よりも小さな弾性限界を有し、形成時にかかる応力により塑性変形しうる繊維を意味する。上記伸長性繊維は、塑性変形することにより、細く且つ長くなる。なお、本明細書において、形成時にかかる応力により塑性変形した伸長性繊維を、「伸長された伸長性繊維」と称する場合がある。伸長された伸長性繊維の例としては、均一な径を有するもの、又は不均一な径を有する、例えば、部分的に細い部分(ネッキング部)を有するものを挙げることができる。
【0032】
上記伸長性繊維の材料の例としては、ポリオレフィン、例えば、ポリエチレン及びポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ乳酸、又はそれらの組み合わせから成る繊維が挙げられる。上記伸長性繊維は、芯鞘型繊維、サイドバイサイド型繊維等の複合繊維であってもよい。また、上記伸長性繊維は、本質的に親水性を有する繊維、例えば、天然系及び/又は半天然系の繊維であってもよい。
上記伸長性繊維としては、結晶性の低さ、伸度の高さ等の観点から、ポリプロピレン及びポリエチレンを含む繊維が好ましい。
【0033】
上記伸長性繊維の繊維径は、約1〜約40μmの範囲内にあることが好ましく、そして約5〜約25μmの範囲内にあることがより好ましい。また、上記伸長性繊維の繊維径は、上記伸縮性繊維の繊維径よりも細いことが好ましい。本発明の不織布に、柔軟性、嵩高さ、隠蔽性等を付与することができるからである。
【0034】
本発明の不織布において、高い吸水性と速乾性を達成するために、伸長性繊維が親水化剤を含有し、親水性を有することが好ましい。親水化剤を含有する伸長性繊維としては、例えば、伸長性繊維の材料に親水化剤を混合し、次いで紡糸することにより形成された伸長性繊維、いわゆる、親水化剤が練り込まれている繊維が挙げられる。
【0035】
本発明の不織布は、親水化剤でコーティングされていることができるが、本発明の不織布における、コーティングされた親水化剤の分布は、本発明の不織布が所定の吸水性と、速乾性を有する限り、特に制限されない。例えば、上記親水化剤がディップコーティング法により不織布に塗布された場合には、不織布全体、より具体的には、各繊維の表面が親水化剤で被覆されているように親水化剤が分布している一般的であり、上記親水化剤がスプレーコーティング法により不織布に塗布された場合には、不織布の表面に親水化剤が多く分布しているのが一般的であり、そして上記親水化剤がバーコーティング法により不織布に塗布された場合には、塗布された面の凹部よりも、凸部に親水化剤が多く分布しているのが一般的である。
【0036】
不織布をコーティングしうる親水化剤、並びに伸長性繊維及び伸縮性繊維が含有しうる親水化剤としては、当技術分野で、親水化剤として一般的に用いられているものであれば、特に制限なく採用することができ、例えば、アニオン系親水化剤、カチオン系親水化剤、ノニオン系親水化剤等、及びこれらの組み合わせが挙げられ、耐熱性の高さからノニオン系親水化剤が好ましい。
【0037】
不織布を親水化剤でコーティングする場合には、上記親水化剤の量は、不織布上に、約0.01〜約0.5g/m2の坪量でコーティングされていることが好ましく、より好ましくは約0.03〜約0.3g/m2、そしてさらに好ましくは約0.05〜約0.1g/m2の坪量でコーティングされている。上記坪量が、約0.01g/m2を下回ると、親水化度が不十分であり、水接触角が高くなり、吸水性及び速乾性が不十分になる傾向があり、そして上記坪量が、約0.5g/m2を上回ると、伸縮性繊維及び伸長生鮮が親水化剤により固定され、伸縮性、柔軟性等が低下する傾向がある。
【0038】
伸長性繊維及び伸縮性繊維が親水化剤を含有する場合には、上記親水化剤の量は、繊維の質量に対し、好ましくは約0.05〜約10.0質量%、より好ましくは約0.1〜約7.0質量%、そしてさらに好ましくは約0.2〜約5.0質量%の割合で含有されている。上記割合が、約0.05質量%を下回ると、親水化度が不十分であり、水接触角が高くなり、吸水性及び速乾性が不十分になる傾向があり、そして上記割合が、約10.0質量%を上回ると、伸長性繊維及び伸縮性繊維の物性が低下する場合がある。
【0039】
図1に示される、本発明の、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布1では、凸部3及び凹部4が、それぞれ、第1の方向Aに平行であり、第1の方向Aと直交する方向に交互に配置されているが、本発明の不織布では、第1の面における複数の凸部及び複数の凹部のパターンは、特に限定されず、本発明の不織布は、後述の製造方法等により、あらかじめ定められたパターンを有する、複数の凸部及び複数の凹部を、第1の面に有することができる。
【0040】
また、図1には、第1の面の反対側の第2の面が平面である実施形態が示されているが、本発明の別の実施形態として、第2の面に凹凸が存在する実施形態が挙げられる(図2に関連して、詳しく説明する)。
なお、第2の面が平面である場合には、第2の面が、他の不織布と接着する際の接着性に優れる利点を有する。
【0041】
さらに、図1には、凸部3において、伸長性繊維EXが、第1の方向Aに沿った配向性を有する実施形態が示されているが、本発明の不織布では、伸長性繊維が、特に配向性を有していなくともよい。
【0042】
図2は、本発明の不織布の別の実施形態の模式図である。図2に示される、本発明の、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布1は、第1の面2の反対側に第2の面5を有し、そして第2の面5が、複数の凸部6及び複数の凹部7を有する。図2に示される実施形態では、第1の面2は、図1に示される第1の面2と同一である。
なお、図2では、親水化剤は、示されていない。
【0043】
図2に示される、本発明の、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布1において、凸部6が伸長性繊維EXに富み、そして凹部7が伸縮性繊維ELに富むので、凸部6における伸長性繊維の比率が、凹部7における伸長性繊維の比率よりも高くなる。また、図2に示される、本発明の、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布1では、凸部6及び凹部7が、それぞれ、第2の方向Bに平行であり、第2の方向Bと直交する方向に交互に配置されている。さらに、図2に示される、本発明の、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布1では、第1の方向Aと、第2の方向Bとが、直交している。なお、図2に示される実施形態では、凸部6における伸長性繊維EX、及び凹部7における伸縮性繊維ELは、配向性を有しない。
【0044】
図2に示されるような、本発明の不織布は、第2の面の凸部における伸長性繊維の比率が、第2の面の凹部における伸長性繊維の比率よりも高いので、第1の面と同様に、肌触りに優れ且つ伸縮性に優れる。
本発明の効果、特に肌触り及び伸縮性の両立の観点から、第2の面の凸部における伸長性繊維の比率が、第2の面の凹部における伸長性繊維の比率よりも少なくとも2質量%高いことが好ましく、少なくとも4質量%高いことがより好ましく、少なくとも6質量%高いことがさらに好ましく、そして少なくとも8質量%高いことがさらに好ましい。
【0045】
なお、第2の面における伸長性繊維の比率は、第1の面の場合と同様、溶媒法、染色法等により評価することができる。
図2に示されるような、本発明の不織布はまた、厚さが薄く、厚さ方向の通気抵抗が少ない凹部を、第1の面及び第2の面に有するので、不織布の厚さ方向の通気性に優れ、そして平面方向の空気の通り道となる凹部を、第1の面及び第2の面に有するので、不織布の平面方向、特に第1の方向及び第2の方向の通気性に優れる。
【0046】
図2に示される、本発明の、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布1では、複数の凸部3及び複数の凹部4が、それぞれ、第1の方向Aに平行であり、第1の方向Aと直交する方向に交互に配置されているが、本発明の不織布では、第1の面における、複数の凸部及び複数の凹部のパターンは、特に限定されない。
【0047】
また、図2に示される、本発明の、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布1では、凸部6及び凹部7が、それぞれ、第2の方向Bに平行であり、第2の方向Bと直交する方向に交互に配置されているが、本発明の不織布では、第2の面における、複数の凸部及び複数の凹部のパターン等は、特に限定されず、本発明の不織布は、後述の製造方法等により、あらかじめ定められたパターンを有する、複数の凸部及び複数の凹部を、第2の面に有することができる。
【0048】
さらに、図2に示される実施形態では、凸部6における伸長性繊維EXの配向性、及び凹部7における伸縮性繊維ELの配向性は、特に存在しないが、本発明の不織布では、これに限定されず、凸部6において、伸長性繊維EXが、第2の方向Bに沿った配向性を有していてもよく、そして/又は凹部7において、伸縮性繊維ELが、第2の方向Bに沿った配向性を有していてもよい。
【0049】
さらに、図2に示される、本発明の、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布1では、第1の方向Aと、第2の方向Bとが直交しているが、本発明では、第1の方向と第2の方向との間の関係に、特に制限はなく、第1の方向と、第2の方向とは、任意の角度を有することができる。例えば、第1の方向と第2の方向とが平行、すなわち、それらが形成する角度が0°であることができる。そのような実施形態では、例えば、第1の方向(及び第2の方向)と直交する方向に対する伸縮性に優れ且つ平面方向、特に、第1の方向(及び第2の方向)の通気性に優れる。
【0050】
本発明の不織布としては、第1の方向と、第2の方向とが、直交していることが好ましい。さらに、本発明の不織布としては、第1の方向が搬送方向(以下、「方向MD」と称する場合がある)であり、そして第2の方向が搬送方向に直交する直交方向(以下、搬送方向に直交する直交方向を、「直交方向」又は「直交方向CD」と称する場合がある)であることがさらに好ましい。
【0051】
図3及び図4は、本発明の不織布のさらに別の実施形態の模式図である。図3及び図4に示される、本発明の、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布1は、第1の面2を有し、そして第1の面2が、第1の方向Aにそれぞれ平行な凸部3及び凹部4を、第1の方向Aと直交する方向に交互に有し、そして第2の面5が、第2の方向Bにそれぞれ平行な凸部6及び凹部7を、第2の方向Bと直交する方向に交互に有する。図3に示される、本発明の、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布1はまた、凹部4及び凹部7を連結する開孔部8を有する。
なお、図3及び図4では、親水化剤は、示されていない。
【0052】
図3に示される、本発明の、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布1の第1の面2において、凸部3が伸長性繊維EXに富み、そして凹部4が伸縮性繊維ELに富むので、凸部3における伸長性繊維の比率が、凹部4における伸長性繊維の比率よりも高くなる。凸部3では、伸長性繊維EXが、第1の方向Aに沿って配置される傾向を有する。
また、図4に示される、本発明の、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布1の第2の面5において、凸部6が伸長性繊維EXに富み、そして凹部7が伸縮性繊維ELに富むので、凸部6における伸長性繊維の比率が、凹部7における伸長性繊維の比率よりも高くなる。
さらに、図3及び図4における凹部4及び凹部7では、伸縮性繊維ELが開孔部8を囲むように配置されている。
【0053】
図3及び図4に示されるような、本発明の不織布は、厚さが薄く、厚さ方向の通気抵抗が少ない凹部を、第1の面及び第2の面に有し且つ厚さ方向の通気抵抗がほぼ0である、一又は複数の開孔部を有するので、不織布の厚さ方向の通気性に特に優れ、そして平面方向の空気の通り道となる凹部を、第1の面及び第2の面に有するので、不織布の平面方向、特に第1の方向及び第2の方向の通気性に優れる。また、図3及び図4に示されるような、本発明の不織布は、伸長時に構造を変化させることができる開孔部を有するので、初期伸長時の強度が低く、身体の動きに追従しやすい。
【0054】
なお、図3では、第1の面の凸部3及び凹部4、並びに第2の面の凸部6及び凹部7は、特定の方向に向けられているが、本発明の不織布では、これらの方向、配置等は、特に限定されない。また、伸長性繊維及び伸縮性繊維の配向性は任意であり、第1の面における複数の凸部、第1の面における複数の凹部、第2の面における複数の凸部及び/又は第2の面における複数の凹部における、伸長性繊維及び/又は伸縮性繊維は、配向性を有していてもよく、又は配向性を有していなくともよい。
【0055】
図5は、図1のX−X断面における、本発明の不織布1の模式図である。図5では、本発明の不織布の第1の面から水分を吸収するケースを説明するために、第1の面が下を向くように記載されている。また、図5では、本発明の不織布の一例として、第1の面の凸部3に、親水化剤9がコーティングされている実施形態が示されている。
【0056】
本発明の不織布が、高い吸水性と、速乾性とを有する理由は、以下のように考えられる。
本発明の、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布1では、親水化剤9がコーティングされることにより親水化されている、第1の面2の凸部3が、水分に接すると、水分を凸部3の中に迅速に取り込むことができる。凸部3は、上述のように、親水化剤により親水化されている伸長性繊維EXの比率が高いので、水分を迅速に取り込むことができる。
【0057】
次いで、凸部3において、不織布1の厚さ方向に配向している伸長性繊維ELが、吸収した水分を迅速に第2の面5側に送ることができる。第2の面5側では、各繊維が平面方向に延びているので、吸収した液体を、平面方向に迅速に拡散することができる。平面方向に拡散された液体は、第2の面全体から迅速に水分を揮発させることができると考えられる。また、第1の面に凸部3が形成されているため、本発明の、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布1では、凸部3の形成により、密度が、第1の面近傍の密度<第2の面近傍の密度の関係を有し、より具体的には、密度が、凸部3近傍の密度<凹部4近傍の密度<第2の面5近傍の密度の関係を有するため、毛細管現象で、第2の面側に水分を迅速に吸い上げることができると考えられる。
以上を簡潔にまとめると、図5に矢印で示されるように、水分は、凸部3から吸収され、迅速に第2の面5側に移行し、そして第2の面5の全体に拡散し、迅速に揮発することができると考えられる。
【0058】
なお、図2に示されるような実施形態においても、水分は、凸部3から吸収され、迅速に第2の面5側に移行し、そして凸部6及び凹部7を有し、図1に示されるようなフラットなものよりも表面積が大きい第2の面5から、迅速に揮発することができると考えられる。
【0059】
図6は、図2のX−X断面及びY−Y断面における、本発明の、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布1の模式図である。図6[a]及び[b]は、それぞれ、Y−Y断面及びX−X断面である。図6では、本発明の不織布の第2の面から水分を吸収するケースを説明するために、第2の面が下を向くように記載されている。また、図6では、本発明の不織布の一例として、第1の面の凸部3に、親水化剤9がコーティングされている実施形態が示されている。
【0060】
図6[a]に示されるように、本発明の、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布1では、親水化剤9がコーティングされることにより親水化されている、第2の面5の凸部6が、水分に接すると、水分を凸部6の中に迅速に取り込むことができる。凸部6は、上述のように、親水化剤により親水化されている伸長性繊維EXの比率が高いので、水分を迅速に取り込むことができる。
【0061】
次いで、図6[b]に示されるように、第2の面5の凸部6から吸収した水分を、第1の面2の、凸部3と、凹部4とから揮発させることができるが、凹部3は不織布の厚さが薄いので、吸収された水分を、凹部4から迅速に揮発させることができると考えられる。
以上を簡潔にまとめると、図6[b]に矢印で示されるように、凸部6から迅速に吸収した水分を、主に凹部4から、迅速に揮発させることができると考えられる。また、凸部3及び凹部4を有する第1の面2は、表面積が大きいことも、迅速な揮発に寄与すると考えられる。
【0062】
本発明の不織布は、吸水性試験において10mm以上の吸水高さにより表わされる吸水性を有するが、上記吸水性試験は、JIS L 1907:2010の「繊維製品の吸水性試験方法」の7.1.2バイレック法に準拠し、浸漬時間を5分とすることにより測定することができる。
【0063】
本発明の不織布は、吸水性試験において10mm以上の吸水高さにより表わされる吸水性を有し、好ましくは約15mm以上の吸水高さ、そしてより好ましくは約20mm以上の吸水高さにより表わされる吸水性を有する。吸水高さは、不織布の吸水性の高さを示す指標であるので、高さが高いほど好ましい。
【0064】
本発明の不織布は、蒸散性試験における20質量%以上の蒸散率で表わされる速乾性を有するが、上記蒸散性試験は、以下の通りに実施することができる。
(1)20℃60%RHの恒温室において、直径約105mmの時計皿に、生理食塩水1mLを滴下する。
(2)100mm×100mmの大きさの試料を準備する。
(3)上記時計皿及び上記試料の合計質量Wを測定する。
(3)時計皿、生理食塩水(1mL)及び上記試料の合計質量W0を測定する。
(4)時計皿に、上記試料を載せ、1mLの生理食塩水と接触させる。
(5)2時間後に、時計皿、生理食塩水(1mL)及び上記試料の合計質量Wtを測定する。
(6)以下の式(1)に基づいて、2時間後の蒸散率を測定する。
蒸散率(%)=100×(Wo−Wt)/(W0−W)
【0065】
本発明の不織布は、蒸散性試験における20質量%以上の蒸散率で表わされる速乾性を有し、好ましくは約30質量%以上の蒸散率、そしてより好ましくは約40質量%以上の蒸散率により表わされる速乾性を有する。蒸散率は、不織布の速乾性を示す指標であるので、値が大きいほど好ましい。
【0066】
[本発明の、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布を製造する方法]
本発明の、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布を製造する方法は、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む、処理すべき不織布を準備するステップを含む。
なお、本発明において、「伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む、処理すべき不織布」と称する場合には、原料としての不織布、すなわち、処理前の不織布を意味し、後述の不均一延伸ステップ、流体処理ステップ等を受けた後の、高い吸水性と、速乾性とを有する不織布(これらは、本明細書において、「本発明の、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布」、「本発明の不織布」、及び「伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布」と称されている)とは異なる。
【0067】
上記伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む、処理すべき不織布としては、上述の伸長性繊維と、上述の伸縮性繊維とを含む不織布であれば、特に制限されることなく、例えば、種々の公知の方法により製造された不織布、例えば、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、ポイントボンド不織布、スパンレース不織布、エアレイド不織布、メルトブローン不織布、ナノファイバーを含む不織布を挙げることができる。
【0068】
上記伸長性繊維及び伸縮性繊維は、上述の繊維から選択することができ、そして伸長性繊維は、続くステップにより繊維径が細くなることを考慮して繊維径を選択することが好ましい。
上記繊維としては、その繊維長に特に制限はなく、例えば、ステープルファイバ及び連続フィラメントを挙げることができる。2種以上の繊維を混合する場合には、それらの繊維の繊維長は同一でもよく、又は異なっていてもよい。
【0069】
本発明の方法は、上記伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む、処理すべき不織布を、高延伸領域と低延伸領域とを有する不織布が形成されるように不均一に延伸するステップ(以下、「不均一延伸ステップ」と称する場合がある)を含む。
上記不均一延伸ステップは、上記伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む、処理すべき不織布において、部分的に、(i)不織布内の繊維の各接合点を破壊し、固定されていた繊維を部分的にウェブ状態とし、そして/又は(ii)不織布内の繊維の各接合点の間で、伸長された伸長性繊維を形成するために行われる。上記伸長された伸長性繊維は、流体で処理する際に移動しやすくなるので、不織布に凹凸を形成しやすくなる。
なお、上記伸縮性繊維は、不均一延伸ステップの際にかかる応力よりも高い弾性限界を有するので、不均一延伸ステップの際に、一時的に伸長された伸縮性繊維は、その後、元の長さに戻ることができる。
【0070】
上記接合点としては、エアスルー不織布の場合には、熱融着点が挙げられ、スパンボンド不織布及びポイントボンド不織布の場合には熱圧着点が挙げられ、そしてスパンレース不織布の場合には繊維交絡点が挙げられる。
【0071】
本明細書において、「高延伸領域」は、伸長された伸長性繊維の伸長度が、低延伸領域よりも高くなるように延伸された領域を意味し、そして「低延伸領域」は、伸長された伸長性繊維の伸長度が、高延伸領域よりも低くなるように延伸された領域を意味し、伸長された伸長性繊維が形成されていない領域、すわなち、未延伸領域を含む。
本明細書において、「不均一に延伸する」とは、高延伸領域と低延伸領域とを有する不織布が形成されるように延伸することを意味し、すなわち、部位によって、伸長された伸長性繊維の伸長度が異なる不織布が形成されるように延伸することを意味する。
【0072】
上記不均一延伸ステップは、高延伸領域と低延伸領域とを有する不織布を形成することができる手段であれば、特に制限されず、任意の手段により実施することができるが、例えば、搬送方向と直交する回転軸線を有する一対のギアロールであって、当該ギアロールのそれぞれの外周面に配置された複数の歯を互いに噛み合わせながら回転するものの間隙に、上記伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む、処理すべき不織布を通過させること(以下、「ギア延伸」と称する場合がある)により行うことができる。
【0073】
図7は、ギア延伸を説明するための模式図である。図7に示されるギア延伸装置11は、一対のギアロール12及び12’を有する。ギアロール12及び12’の外周面13及び13’には、それぞれ、複数の歯14及び14’が配置されている。また、図7に示すギア延伸装置11では、ギアロール12及び12’の回転軸線は、それぞれ、不織布の搬送方向MDと垂直である。さらに、複数の歯14及び14’は、それぞれ、上記回転軸線と平行に、外周面13及び13’に配置されている。
【0074】
図7に示すギア延伸装置11では、一対のギアロール12及び12’のロール間隙に、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む、処理すべき不織布15を通し、ギアロール12及び12’を通過する際に、互い噛み合うギアロール12及び12’の複数の歯14及び14’により、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む、処理すべき不織布15を、三点曲げの原理で延伸し、高延伸領域と低延伸領域とを有する不織布16を形成する。高延伸領域と低延伸領域とを有する不織布16は、直交方向に平行な高延伸領域と低延伸領域とを、搬送方向MDに交互に有する。
【0075】
伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む、処理すべき不織布15において、複数の歯14及び14’の先端部に接する領域では、不織布の生地が固定されるため、あまり又は実質的に延伸されず、低延伸領域が形成される。一方、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む、処理すべき不織布15において、複数の歯14及び14’の先端部に接しない領域、すなわち、歯14の先端部と、歯14’の先端部との間の領域は、大きく延伸され、高延伸領域が形成される。
【0076】
ギア延伸はまた、図8に示されるようなギア延伸装置を用いて行うことができる。
図8は、ギア延伸を説明するための模式図である。図8に示されるギア延伸装置11は、一対のギアロール12及び12’を有する。ギアロール12及び12’の外周面13及び13’には、それぞれ、複数の歯14及び14’が配置されている。また、図8に示されるギア延伸装置11では、複数の歯14及び14’が、それぞれ、ギアロール12及び12’の回転軸線と垂直に、それぞれ、外周面13及び13’に配置されている。複数の歯14及び14’をこのように回転軸線と垂直に配置することにより、搬送方向MDとそれぞれ平行な高延伸領域と低延伸領域とを、直交方向CDに交互に有する不織布を形成することができる。
【0077】
さらに、ギア延伸は、図9に示されるような、複数の歯が、ギアロールの外周面に、ギアロールの回転軸線に対して傾斜して配置されているギア延伸装置を用いて実施することができる。図9は、ギア延伸を説明するための模式図である。図9に示されるギア延伸装置11は、一対のギアロール12及び12’を有し、ギアロール12及び12’の外周面13及び13’には、それぞれ、複数の歯14及び14’が配置されている。また、図9に示すギア延伸装置11では、ギアロール12及び12’の回転軸線は、それぞれ、不織布の搬送方向MDと垂直である。さらに、複数の歯14及び14’は、それぞれ、回転軸線に対して一定の角度θを有するように、外周面13及び13’に配置されている。
なお、図9に示されるようなギア延伸装置では、θの角度及びギアピッチによっては、ギアロール12及び12’の外周面13及び13’に、それぞれ、1枚の歯14及び1枚の歯14’が配置されている場合もある。
【0078】
上記ギア延伸装置は、形成すべき不織布に所望の性能に応じて、適宜選択することができる。
また、高い伸縮性が必要である場合には、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む、処理すべき不織布を、図7〜図9に示すようなギア延伸装置を用いて、複数回、延伸することができる。
【0079】
上記ギア延伸装置において、ギアピッチは、約1〜約10mmが好ましく、そして約2〜約6mmがより好ましい。ギアピッチが約1mmを下回ると、ギアの刃を薄くする必要があり、不織布が部分的に切断される場合があり、そしてギアピッチが約10mmを上回ると、延伸倍率が低く、伸長性繊維が伸長されにくい場合がある。
ギアピッチは、図8において、符号17により表わされる、ある歯から次の歯の間の間隔を意味する。
【0080】
上記ギア延伸装置において、ギア噛込深さは、約0.5mm以上であることが好ましい。ギア噛込深さが約0.5mmを下回ると、不織布の延伸が不十分となり、伸長性繊維が伸長されにくい場合がある。
ギア噛込深さは、図8において、符号18により表わされる、上のギアロールの歯と、下のギアロールの歯とが重複する部分の深さを意味する。
【0081】
高延伸領域と低延伸領域とを有する不織布において、ギア延伸1回当たりの延伸倍率は、約30〜約400%であることが好ましく、そして約50〜約200%であることがより好ましい。延伸倍率が約30%を下回ると、伸長性繊維が伸長されない場合があり、そして延伸倍率が約400%を上回ると、高延伸領域と低延伸領域とを有する不織布の強度が弱く、延長された伸長性繊維が主に脱落しやすくなり、搬送が困難になる場合があり、そして/又は伸長性繊維が破断する場合がある。
【0082】
本明細書において、「延伸倍率」は、ギアピッチをPとし、そしてギア噛込深さをDとした場合に、次の式:
【数1】
により算出される値を意味する。
【0083】
伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む、処理すべき不織布の巻出速度は、所望の延伸倍率等によっても変化するが、例えば、約10m/分以上である。高延伸領域と低延伸領域とを交互に有する不織布の巻取速度は、延伸倍率等によって変化し、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む、処理すべき不織布が搬送方向に延伸された場合には、巻出速度に延伸倍率をかけた値が巻取速度の目安となるであろう。
【0084】
本発明の方法は、上記高延伸領域と低延伸領域とを有する不織布に、親水化剤含有溶液を塗布するステップ(以下、「親水化剤塗布ステップ」と称する場合がある)を含む。
【0085】
上記不均一延伸ステップにおいて形成された、高延伸領域と低延伸領域とを有する不織布に、親水化剤含有溶液を塗布する方法としては、特に制限されるものではないが、例えば、スプレーコーティング法、カーテンコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、ロールコーティング法、スピンコーティング法等が挙げられる。
上記親水化剤塗布ステップを、支持体上で実施し、そのまま、次の流体処理ステップに移行してもよい。例えば、支持体上に配置されている高延伸領域と低延伸領域とを有する不織布に、上記親水化剤溶液をスプレーすることにより、上記親水化剤塗布ステップを実施することができる。
【0086】
上記親水化剤含有溶液では、上述の親水化剤を、溶媒、例えば、有機溶媒、例えば、エタノール、メチルエチルケトン、水等に溶解させた溶液が挙げられ、安全性の高さから水が好ましい。
上記溶媒は、比較的沸点の高いものであってもよい。親水化剤塗布ステップの後に、後述の、加熱空気等を吹き付ける流体処理ステップが実施されるので、上記溶媒が揮発しやすいからである。
【0087】
本発明の方法は、親水化剤が塗布された、高延伸領域と低延伸領域とを有する不織布を、支持体上に配置し、そして噴出された流体を吹き付けることにより処理し、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布を形成するステップ(以下、「流体処理ステップ」と称する場合がある)を含む。
【0088】
不均一延伸ステップにおいて形成された、高延伸領域に存在するウェブ状態の繊維及び/又は伸長された伸長性繊維の少なくとも一部は、流体が衝突する面(以下、「流体衝突面」と称する)では、噴出された流体が衝突し、次いで跳ね返ることに伴って、平面方向、例えば、直交方向に選り分けられる。より具体的には、噴出された流体が吹き付けられた部分では、伸長された伸長性繊維が他に移動し、主に伸縮性繊維が残ることにより、第1の面に複数の凹部が形成される。
【0089】
伸縮性繊維は、流体の衝突により力を受けるが、弾性限界未満の応力が加わるに留まるので、流体が吹きつけられた後は、元の場所に戻るものが多い。従って、第1の面における複数の凹部では、伸縮性繊維に富むが、繊維の密集度は低い。伸長された伸長性繊維は、第1の面における複数の凹部の両端に凸部を形成する。従って、第1の面における複数の凸部では、伸長性繊維に富み、そして選り分けられた伸長性繊維が密集するので、繊維の密集度が高くなる。なお、流体衝突面は、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布の第1の面に相当し、そして流体が吹き付けられた軌跡の方向が、第1の方向に相当する場合がある。
【0090】
また、流体衝突面と反対側の面(以下、「非流体衝突面」と称し、第2の面に相当する)では、ウェブ状態の繊維及び/又は伸長された伸長性繊維の少なくとも一部が、不織布を通過する流体の流れに沿って移動する。
【0091】
上記流体処理ステップにおいて用いられる流体としては、空気、例えば、加熱された空気、水蒸気、又は水、例えば、熱水が挙げられる。
上記流体を、親水化剤が塗布された、高延伸領域と低延伸領域とを有する不織布に、固定された流体ノズルから吹き付けることができ、又は直交方向に往復する流体ノズルから吹き付けることができる。また、上記流体を、親水化剤が塗布された、高延伸領域と低延伸領域とを有する不織布に、連続的、又は間欠的に流体ノズルから吹き付けることができる。これらを組み合わせることにより、あらかじめ定められたパターンを含む、種々のパターンを有する、複数の凸部及び複数の凹部を、第1の面に形成することができる。
【0092】
上記流体は、親水化剤が塗布された、高延伸領域と低延伸領域とを有する不織布の状態によって、適宜選択することができる。例えば、ギアピッチが小さく、延伸倍率が大きい不織布を処理する場合には、比較的低いエネルギーで、伸長された伸長性繊維を主に移動させることができるため、流体として空気又は水蒸気を選択することが好ましい。また、ギアピッチが大きく、低延伸領域が多い不織布を用いる場合には、各繊維の接合点が多いので、伸長された伸長性繊維を移動させるために比較的高いエネルギーが必要であるため、流体として水又は水蒸気を選択することが好ましく、そして水蒸気がより好ましい。というのは、繊維量が多い部分に水分が残存しにくく、繊維量が多い部分の接合点を破壊することが少なく、そして移動すべき部分の、伸長された伸長性繊維を簡易に移動させることができるからである。
【0093】
上記流体処理ステップは、当技術分野で公知の装置を用い、そして公知の方法で行うことができる。
本発明の方法の実施形態の1つでは、高延伸領域と低延伸領域とを有する不織布を支持するために用いられる支持体は、当技術分野で通常用いられている支持体、例えば、金属、プラスチック製のコンベアネット、抄紙網等であることができる。上記支持体は、流体透過性を有するのが一般的である。
【0094】
本発明の方法の別の実施形態では、不織布の通気性、肌触り(例えば、低接触面積)、液引込性等をさらに向上させるために、突状部と窪み部とを有する支持体を用いることができる。
本発明において、「突状部」は、不織布の第2の面に複数の凹部を形成するために用いられる部分であり、そして「窪み部」は、不織布の第2の面に複数の凸部を形成するために用いられる部分である。
【0095】
図10は、コンベア上で用いられる支持体の一例を示す図である。
図10において、支持体19は、直交方向CDに平行な、突状部20と窪み部21とを有し、そして突状部20と、窪み部21とが、搬送方向MDに交互に配置されている。図10にはまた、流体ノズル22が示され、そして支持体19の下の、流体ノズル22の直下に、流体を受け入れるサクション部(図示せず)が設けられている。図10に示される支持体19では、突状部20及び窪み部21は、立方体形状を有し、そして交互に配列されている。
【0096】
図10では、突状部20と、窪み部21とは、直交方向CDに平行であり且つ搬送方向MDに交互に配置されているが、本発明の方法では、突状部及び窪み部の形状、配列等は、特に制限されず、例えば、突状部及び窪み部は、(i)搬送方向にそれぞれ平行な突状部及び窪み部であって、直交方向に交互に配置されているものであってもよく、又は(ii)搬送方向に対してそれぞれ傾斜を有する突状部及び窪み部であって、当該傾斜の方向と直交する方向に交互に配置されているものであってもよく、あるいは(iii)あらかじめ定められた形状(例えば、立方体形状、円柱形状、半球形状等)の突状部及び/又は窪み部が、あらかじめ定められた配列(例えば、ハート型、星型等の配列)で配置されているものであってもよい。
【0097】
突状部と窪み部とを有する支持体を用いると、突状部及び窪み部を有しない支持体を用いる場合よりも、大きな複数の凸部と、深い複数の凹部(場合によっては、一又は複数の開孔部)とを有する不織布を形成することができる。
【0098】
上記現象を、図10を用いて具体的に説明する。流体ノズル22から噴出された流体は、突状部20と衝突すると、窪み部21に回り込んで流れる。その結果、自由度の高い、伸長された伸長性繊維が、流体の流れに沿って窪み部21の方に移動するので、流体と突状部20とが交差する場所には、主に伸縮性繊維のみが残り、繊維の密集度が下がり、第2の面5に複数の凹部が形成される。伸縮性繊維は、流体の力により一時的に伸長するものの、弾性限界未満の応力が加わるに留まる場合には、流体がなくなり、応力が加わらなくなった後は、原則として元に戻る。従って、第2の面5における複数の凹部では、伸縮性繊維に富む。流体を吹き付ける力が強い場合には、伸縮性繊維もある程度移動し、第1の面2の凹部と、第2の面5の凹部とを連結する、一又は複数の開孔部が形成される。
【0099】
流体と窪み部21が交差する場所には、伸長された伸長性繊維が集まるので、繊維が密集し、第2の面5に複数の凸部を形成し、そして第2の面5における複数の凸部は、伸長性繊維に富む。図10の場合には、第2の方向は、突状部20及び窪み部21の方向、すなわち、直交方向CDである。第2の面5における複数の凸部では、不織布の厚さ方向に、伸長された伸長性繊維が立ち上がる傾向があるため、不織布に耐圧縮性が付与され、さらに液引込性が向上する。また、図10に示される、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布1は、第2の面5に複数の凸部を有することから、通気性、特に平面方向の通気性に優れ、さらに接触面積が少なくなることから肌触りに優れる。
【0100】
突状部と窪み部とを有する支持体を用いて形成された不織布は、それを用いないで形成された場合と比較して、第2の面に高さの高い複数の凸部と、深さの深い複数の凹部とを有するので、通気性、特に平面方向の通気性、耐圧縮性、液引込性、肌触りに優れる。第2の面における複数の凸部は、比較的繊維強度の高い伸長性繊維から主に構成されるため、強度が高く、潰れにくい。突状部と窪み部とを有する支持体を用いて形成された不織布が、一又は複数の開孔部を有する場合には、厚さ方向の通気性に優れる。
なお、図10に示されるような支持体を用いて形成された不織布は、平面方向の通気性の中で、特に直交方向の通気性に優れる。上記不織布のうち、支持体の突状部(不織布の第2の面の凹部)に対応する場所が、気体の通路となり得るからである。
【0101】
上記突状部は、窪み部の流体透過性よりも、低い流体透過性を有することが好ましい。突状部が低い流体透過性を有することにより、突状部に衝突した流体が、窪み部の方に流れ、本発明の方法により形成された、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布の第2の面に、より高さの高い、複数の凸部を形成することができるからである。
上記突状部の素材としては、金属、プラスチック等が挙げられるであろう。
【0102】
上記突状部及び窪み部は、特に制限されないが、例えば、流体透過性の支持体として通常用いられている金属、プラスチック製等のコンベアネット、抄紙網、パンチングプレート等の上に、立方体形状、筒状等の金属を、一定の間隔を保持する等、あらかじめ定められた配列で配置することにより形成することができる。
【0103】
あらかじめ定められた形状(例えば、立方体形状、円柱形状、半球形状等)の突状部及び/又は窪み部が、あらかじめ定められた配列(例えば、ハート型、星型等の配列)で配置されている支持体としては、例えば、パンチングプレート上に、半球型の形状の金属が、あらかじめ定められた配列(例えば、ハート型)で配置されたものが挙げられる。当該支持体を用いると、第2の面にあらかじめ定められたパターン(例えば、ハート型)の凹部を有する不織布を形成することができる。
また、例えば、パンチングプレート上に、半球型の窪み形状が、あらかじめ定められた配列(例えば、ハート型)で配置された、突状部と窪み部とを有する支持体を用いると、第2の面にあらかじめ定められたパターン(例えば、ハート型)の、複数の凸部を有する不織布を形成することができる。
【0104】
流体処理ステップが、ロール上で行われる場合には、ロール状の支持体であって、その外周がメッシュ等の流体透過性材料で構成され且つ外周面に、あらかじめ定められた形状及び配列の突状部及び窪み部が配置されているものを用いることができる。当該あらかじめ定められた形状及び配列としては、上述の形状及び配列を挙げることができる。
【0105】
図11は、図10に示される支持体19を用いて形成された、伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布1を示す図である。図11は、図10にZ−Zで示される断面に相当する。図11では、支持体19の窪み部21に、第2の面5の凸部6が形成され、そして支持体19の突状部20に、第2の面5の凹部7が形成されている。
【0106】
本発明のさらに別の実施形態では、図12に示される支持体19を用いることができる。図12に示す支持体19では、突状部20及び窪み部21が、それぞれ、立方体形状及び格子形状を有し、そして突状部20が、搬送方向及び直交方向に一定の間隔をあけた配列で配置されている。
図12に示されるような支持体を用いた場合には、第2の面に、複数の凸部6と、1つの凹部7とが形成される。
【0107】
突状部と窪み部とを有する支持体において、それらの幅は、形成すべき不織布に必要な特性等によって異なるが、例えば、図10に示される支持体において、突状部の幅は、約0.5〜約10mmの範囲にあることが好ましく、窪み部の幅は、約1〜約10mmの範囲にあることが好ましい。
【0108】
上記伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布は、厚さ方向の通気度が、約400m3/m2/分以上であることが好ましく、約600m3/m2/分以上であることがより好ましく、そして約1000m3/m2/分以上であることが最も好ましい。厚さ方向の通気度が高いほど、人体に接する部位に用いられた場合等にムレにくくなる。
また、上記伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布は、平面方向の通気度が、約5m3/m2/分以上であることが好ましく、約10m3/m2/分以上であることがより好ましく、そして約15m3/m2/分以上であることがさらに好ましい。水平方向の通気度が高いほど、湿度が高い空気が肌の近くに滞留しにくく、外部に排出されやすくなる。
【0109】
本発明の不織布は、吸収性物品、例えば、生理用品及び使い捨ておむつ、清掃用品、例えば、ワイパー、並びに医療用品、例えば、マスク等に有用である。
また、使い捨ておむつの外装シートに、伸縮性不織布が用いられている場合があるが、伸縮性繊維を含む、本発明の不織布は、伸縮性を有するので、上記伸縮性不織布の代わりに、外装シートとして用いられうる。本発明の不織布を使い捨ておむつの外装シートとして用いると、外装シートが高い吸水性と速乾性とを有するので、ユーザーがかいた汗を、外装シートから迅速に吸収し、そして使い捨ておむつの外に蒸散させることができ、その結果、使い捨てオムツ内の環境を良好に保つことができる。
【実施例】
【0110】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例において評価された項目の、測定条件は、以下の通りである。
【0111】
[坪量]
坪量は、JIS L 1906の5.2に従って測定する。
[嵩]
嵩は、(株)大栄科学精器製作所製 THICKNESS GAUGE UF−60を用いて測定する。
【0112】
[通気度]
通気度は、カトーテック株式会社のKES−F8−AP1通気性試験器を用いて測定し、単位を「m3/m2/分」に換算する。
不織布の厚さ方向の通気度は、100mm×100mmの大きさにカットした不織布を、通気性試験器にセットして測定する。
不織布の平面方向の通気度は、100mm×100mmの大きさにカットした不織布を、通気性試験器にセットし、100mm×100mmの大きさのアクリル板をその上にさらにセットし、3.5mN/cm2の加重下で測定する。
【0113】
[伸縮特性]
(株)島津製作所製のオートグラフ型引張試験機 形式AG−1KNIを用いて、下記サイクルで測定する。
−50%伸長時強度−
幅50mmmの試料を、チャック間距離100mmでチャックに固定し、2つのチャックの先端に目印を付ける。次いで、試料を、100mm/分の速度で伸度100%まで伸長(行き)し、100mm/分の速度で元の長さまで戻す(戻り)(以上、1サイクル)。行きの50%伸長時の、幅50mm当たりの強度を、50%伸長時強度として評価する。
【0114】
−1サイクル後回復率−
上記サイクルを、1回実施した後の、目印間の長さL(mm)を測定し、1サイクル後回復率を、以下の式に従って算出する。
1サイクル後回復率(%)=100×[100−(L−100)]/100
【0115】
上記50%伸長時強度は、約10N以下であることが好ましい。当該強度が約10Nを超えると、例えば、使い捨ておむつに用いられた場合に、装着時におむつが広げにくく、はかせにくくなることが考えられる。なお、本明細書において、幅50mm当たりの強度(N)を、N/50mmと略記する。
上記1サイクル後回復率は、約50%以上であることが好ましい。使い捨ておむつ等に用いられた場合に、上記1サイクル後回復率の値が小さいと、使い捨ておむつ等に用いられた場合に、使用と共に、不織布の伸縮性がなくなり、使い捨ておむつがずれ落ちる場合があるからである。
【0116】
[伸長性繊維の比率]
不織布を50mm×50mmのサイズに切断し、そこから、第2の面の凸部の頂部付近の繊維(以下、「凸部の繊維」と称する)を、カッターで切り分ける。次いで、凸部の繊維を計量し、20mLのジメチルアセトアミドに浸漬し、室温で30分間静置する。次いで、残存した繊維をろ過し、エタノールで洗浄し、そして乾燥させる。残存した繊維の乾燥質量から、伸長性繊維の比率を算出する。
また、同様に、第2の面の凹部の底部付近の繊維に関しても、伸長性繊維の比率を算出する。
【0117】
[製造例1]
−不織布の製造−
伸長性繊維としてポリプロピレン繊維を含み且つ伸縮性繊維としてポリウレタンエラストマー繊維を含むスパンボンド不織布を購入した。ポリプロピレン繊維は、繊維径約21μmであり、そしてポリウレタンエラストマー繊維は、繊維径約25μmであり、そしてポリプロピレン繊維と、ポリウレタン繊維との質量比は、約50:50であった。なお、上記ポリプロピレン繊維は、紡糸時に、ノニオン系親水化剤が、ポリプロピレン繊維の質量に対して0.3質量%混合されることにより親水化されているが、ポリウレタンエラストマー繊維は、親水化されていない。
上記スパンボンド不織布の特性を、表1に示す。
【0118】
−ギア延伸処理−
上記スパンボンド不織布を、30m/分の速度で巻き出し、図7に示すギア延伸装置(ギアピッチ:4.9mm,ギア噛込深さ:7.0mm,ギア先端幅:0.2mm,ギア温度:55℃)を用いて、延伸倍率203%まで、搬送方向MDの方向にギア延伸し、高延伸領域と低延伸領域とを有する不織布を形成した。
上記高延伸領域と低延伸領域とを有する不織布において、歯の先端部に接していた低延伸領域では、エンボス部分が残存していた。また、歯の先端部に接しなかった高延伸領域では、エンボス部分が一部破壊され、ウェブ領域を形成していた。
上記高延伸領域と低延伸領域とを有する不織布の特性を、表1に示す。
【0119】
−親水化剤処理−
上記高延伸領域と低延伸領域とを有する不織布を、丸穴60°千鳥型のパンチングプレート(φ:3.0mm、MDピッチ:6.93mm、CDピッチ:4.0mm、厚さ:1.0mm)からなる支持体の上に載せ、上記高延伸領域と低延伸領域とを有する不織布に、親水化剤含有溶液としての、ショ糖脂肪酸エステルの2.5質量%水溶液を、ショ糖脂肪酸エステルの坪量が約0.1g/m2となるようにスプレー塗装した。
【0120】
−水蒸気処理−
次いで、親水化剤が塗布された、高延伸領域と低延伸領域とを有する不織布を、1.0mmの間隔で、複数のノズル(φ:0.5mm)を備える水蒸気処理システム(噴出圧力:0.25Mpa,水蒸気温度:約125℃)に、ノズル及び支持体間距離を4.0mmに保ちながら、30m/分の速度で通し、不織布1を得た。
不織布1の特性を表1に示す。
【0121】
[製造例2及び3]
当初のスパンボンド不織布の坪量が異なる以外は、製造例1と同様にして、不織布2及び3を得た。不織布2及び3の特性を表1に示す。
[参考製造例1]
親水化剤処理を行わなかった以外は、製造例1と同様にして、不織布4を得た。不織布4の特性を表1に示す。
【0122】
[比較製造例1]
当初のスパンボンドにおいて、ポリプロピレン繊維が親水化剤を含有せず且つ坪量が異なり、そして親水化剤処理を行わなかった以外は、製造例1と同様にして、不織布5を得た。不織布5の特性を表1に示す。
[比較製造例2]
特許文献1に記載の方法に従って、不織布6を形成した。不織布6の特性を表1に示す。
【0123】
[実施例1〜3,参考例1,並びに比較例1及び2]
不織布1〜6に、吸水性試験を実施し、吸水高さを測定した。吸水性試験は、上述の記載に従って実施された。結果を表1に示す。
次いで、不織布1〜6に、蒸散性試験を実施し、蒸散率を測定した。蒸散性試験は、上述の記載に従って実施された。なお、上記蒸散性試験において、不織布は、不織布の、支持体側の面が生理食塩水に接触するように、時計皿に置かれた。結果を表1に示す。
【0124】
【表1】
【0125】
実施例1〜3の不織布1〜3は、平面方向及び厚さ方向の通気性に優れ、そして高い吸水性と速乾性とを有することが分かる。
また、親水化剤がコーティングされている不織布1〜3は、参考例1の不織布、すなわち、伸長性繊維にのみ親水化剤が含まれる不織布と比較して、高い吸水性と速乾性とを有することが分かる。
【0126】
[実施例4]
[伸長性繊維の比率の測定]
−不織布の製造−
伸長性繊維としてのポリオレフィン繊維(繊維径約21μm)と、伸縮性繊維としてのポリウレタン繊維(繊維径25μm)とを、約50:50の比率で含むスパンボンド不織布を購入した。
【0127】
−ギア延伸処理−
上記スパンボンド不織布を、10m/分の速度で巻き出し、80℃に予熱された4本の予熱ロールに通し、図8に示すギア延伸装置(ギアピッチ:2.5mm,ギア噛込深さ:3.0mm,延伸倍率:160%)でギア延伸し、次いで、図7に示すギア延伸装置(ギアピッチ:4.9mm,ギア噛込深さ:7.0mm,延伸倍率:202%)でギア延伸して、高延伸領域と低延伸領域とを有する不織布を形成した。2つのギア延伸装置のギアの温度は、55℃であった。
上記高延伸領域と低延伸領域とを有する不織布において、歯の先端部に接していた低延伸領域では、エンボス部分が残存していた。また、歯の先端部に接しなかった高延伸領域では、エンボス部分が一部破壊され、ウェブ領域を形成していた。
【0128】
−水蒸気処理−
上記高延伸領域と低延伸領域とを有する不織布を、図10に示すような、直交方向にそれぞれ平行な突状部と窪み部とを、搬送方向に交互に有する支持体の上に載せた。突状部は、流体を透過しないものであり、その幅及び高さは、それぞれ、3mm及び5mmであった。窪み部の幅は2mmであった。次いで、上記ギア処理された不織布を、2.0mmの間隔で、複数のノズル(φ0.5mm)を備える水蒸気処理システムに5m/分の速度で通し、不織布7〜9を得た。不織布7〜9は、複数の開孔部を有していた。
【0129】
なお、伸長性繊維の比率を評価するに当たって、親水化剤塗布ステップは省略された。親水化剤塗布ステップの有無により、伸長性繊維の比率は変わらないと考えられ、そして不織布に親水化剤がコーティングされていることにより、伸長性繊維の比率の測定に誤差が生ずる場合もあると考えられるからである。
【0130】
水蒸気処理システムにおける、圧力及び水蒸気温度の条件を、以下の表2に示し、不織布7〜9の特性を併せて表2に示す。
【0131】
【表2】
【0132】
不織布7〜9における、伸長性繊維としてのポリオレフィン繊維の比率を、染色法により評価した。
ポリウレタン繊維を赤色に染色し且つポリオレフィン繊維を染色しない染料で、不織布7〜9を染色し、光学顕微鏡により目視で評価した。その結果、不織布7〜9の全てに関して、第1の面及び第2の面において、それぞれ、図3及び4に示すように、伸長性繊維としてのポリオレフィン繊維と、伸縮性繊維としてのポリウレタン繊維とが偏在していることが確認された。より具体的には、第1の面の凸部におけるポリオレフィン繊維の比率が、第1の面の凹部におけるポリウレタン繊維の比率よりも高く、そして第2の面の凸部におけるポリオレフィン繊維の比率が、第2の面の凹部におけるポリウレタン繊維の比率よりも高いことが確認された。
【0133】
さらに、不織布9の、第2の面の凸部及び第2の面の凹部のポリオレフィン繊維の比率を溶媒法により評価した。第2の面の凸部及び第2の面の凹部を、それぞれ、67.7mg及び39.8mg採取し、溶媒としてジメチルアセトアミド20mLを用いて評価したところ、第2の面の凸部及び第2の面の凹部のポリオレフィン繊維の比率が、それぞれ、54質量%及び43質量%であった。当該結果より、不織布9において、第2の面の凸部におけるポリオレフィン繊維の比率が、第2の面の凹部におけるポリオレフィン繊維の比率よりも高いことが確認された。
なお、スパンボンド不織布のポリオレフィン繊維の比率を測定したところ、50質量%であった。
不織布7のMD方向の断面の電子顕微鏡写真を図13に示す。
【0134】
搬送方向MDの断面である図13には、凸部6と、凹部7とが示され、凸部6では、単位面積当たりの繊維量が多く且つ繊維が立っていることが分かり、そして凹部7では、単位面積当たりの繊維量が少なく且つ繊維が寝ていることが分かる。
【符号の説明】
【0135】
1 伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布
2 第1の面
3 凸部
4 凹部
5 第2の面
6 凸部
7 凹部
8 開孔部
9 親水化剤
11 ギア延伸装置
12,12’ ギアロール
13,13’ 外周面
14,14’ 複数の歯
15 伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む、処理すべき不織布
16 高延伸領域と低延伸領域とを有する不織布
17 ギアピッチ
18 ギア噛込深さ
19 支持体
20 突状部
21 窪み部
22 流体ノズル
EX 伸長性繊維
EL 伸縮性繊維
A 第1の方向
B 第2の方向
MD 搬送方向
CD 直交方向
【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布であって、
前記不織布が、複数の凸部及び複数の凹部を有する第1の面と、第1の面の反対側にある第2の面とを有し、第1の面の凸部における伸長性繊維の比率が、第1の面の凹部における伸長性繊維の比率よりも高く、
前記不織布が親水化剤でコーティングされているか、又は前記伸長性繊維及び伸縮性繊維が親水化剤を含有し、前記不織布が、吸水性試験における10mm以上の吸水高さで表わされる吸水性と、蒸散性試験における20質量%以上の蒸散率で表わされる速乾性とを有する、
ことを特徴とする、前記不織布。
【請求項2】
第2の面が、複数の凸部及び凹部を有し、第2の面の凸部における伸長性繊維の比率が、第2の面の凹部における伸長性繊維の比率よりも高い、請求項1に記載の不織布。
【請求項3】
第1の面の凹部と、第2の面の凹部とを連結する、一又は複数の開孔部を有する、請求項2に記載の不織布。
【請求項4】
前記不織布が親水化剤でコーティングされ且つ前記伸長性繊維が親水化剤を含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の不織布。
【請求項5】
吸水性試験における吸水高さが18mm以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の不織布。
【請求項6】
蒸散性試験における蒸散率が40質量%以上である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の不織布。
【請求項7】
厚さ方向の通気度が、400m3/m2/分以上であり、平面方向の通気度が、5m3/m2/分以上である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の不織布。
【請求項8】
前記伸長性繊維の材料が、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ乳酸、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の不織布。
【請求項9】
前記伸縮性繊維の材料が、ポリウレタン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の不織布。
【請求項10】
前記親水化剤が、アニオン系親水化剤、カチオン系親水化剤及びノニオン系親水化剤、並びにそれらの組合せから成る群から選択される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の不織布。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の不織布を製造する方法であって、
伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む、処理すべき不織布を準備するステップ、
前記伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む、処理すべき不織布を、高延伸領域と低延伸領域とを有する不織布が形成されるように不均一に延伸するステップ、
前記高延伸領域と低延伸領域とを有する不織布に、親水化剤含有溶液を塗布するステップ、そして
親水化剤が塗布された、高延伸領域と低延伸領域とを有する不織布を、支持体上に配置し、そして噴出された流体を吹き付けることにより処理し、請求項1〜7のいずれか一項に記載の不織布を形成するステップ、
を含む方法。
【請求項12】
前記不均一に延伸するステップが、搬送方向と直交する回転軸線を有する一対のギアロールであって、当該ギアロールのそれぞれの外周面に配置された複数の歯を互いに噛み合わせながら回転するものの間隙に、前記伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布を通過させることにより行われる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記親水化剤溶液が、親水化剤水溶液である、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記流体が、空気、水蒸気及び水から成る群から選択される、請求項11〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項1】
伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布であって、
前記不織布が、複数の凸部及び複数の凹部を有する第1の面と、第1の面の反対側にある第2の面とを有し、第1の面の凸部における伸長性繊維の比率が、第1の面の凹部における伸長性繊維の比率よりも高く、
前記不織布が親水化剤でコーティングされているか、又は前記伸長性繊維及び伸縮性繊維が親水化剤を含有し、前記不織布が、吸水性試験における10mm以上の吸水高さで表わされる吸水性と、蒸散性試験における20質量%以上の蒸散率で表わされる速乾性とを有する、
ことを特徴とする、前記不織布。
【請求項2】
第2の面が、複数の凸部及び凹部を有し、第2の面の凸部における伸長性繊維の比率が、第2の面の凹部における伸長性繊維の比率よりも高い、請求項1に記載の不織布。
【請求項3】
第1の面の凹部と、第2の面の凹部とを連結する、一又は複数の開孔部を有する、請求項2に記載の不織布。
【請求項4】
前記不織布が親水化剤でコーティングされ且つ前記伸長性繊維が親水化剤を含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の不織布。
【請求項5】
吸水性試験における吸水高さが18mm以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の不織布。
【請求項6】
蒸散性試験における蒸散率が40質量%以上である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の不織布。
【請求項7】
厚さ方向の通気度が、400m3/m2/分以上であり、平面方向の通気度が、5m3/m2/分以上である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の不織布。
【請求項8】
前記伸長性繊維の材料が、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ乳酸、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の不織布。
【請求項9】
前記伸縮性繊維の材料が、ポリウレタン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、及びそれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の不織布。
【請求項10】
前記親水化剤が、アニオン系親水化剤、カチオン系親水化剤及びノニオン系親水化剤、並びにそれらの組合せから成る群から選択される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の不織布。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の不織布を製造する方法であって、
伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む、処理すべき不織布を準備するステップ、
前記伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む、処理すべき不織布を、高延伸領域と低延伸領域とを有する不織布が形成されるように不均一に延伸するステップ、
前記高延伸領域と低延伸領域とを有する不織布に、親水化剤含有溶液を塗布するステップ、そして
親水化剤が塗布された、高延伸領域と低延伸領域とを有する不織布を、支持体上に配置し、そして噴出された流体を吹き付けることにより処理し、請求項1〜7のいずれか一項に記載の不織布を形成するステップ、
を含む方法。
【請求項12】
前記不均一に延伸するステップが、搬送方向と直交する回転軸線を有する一対のギアロールであって、当該ギアロールのそれぞれの外周面に配置された複数の歯を互いに噛み合わせながら回転するものの間隙に、前記伸長性繊維と伸縮性繊維とを含む不織布を通過させることにより行われる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記親水化剤溶液が、親水化剤水溶液である、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記流体が、空気、水蒸気及び水から成る群から選択される、請求項11〜13のいずれか一項に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−184525(P2012−184525A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48298(P2011−48298)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】
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