説明

不織布およびその製造方法、並びに拭き取り材

【課題】高い意匠性と良好な強度特性とを兼ね備えた不織布およびその製造方法、ならびに当該不織布を用いた拭き取り材を提供する。
【解決手段】本発明の不織布は、構成繊維が交絡された繊維ウェブの前記構成繊維の一部が水流交絡により再配列されて形成された、各々規則的な模様を有し且つ相互に離間したストライプを複数有することにより、ストライプ模様を呈しており、前記ストライプの幅が4mm〜50mmである。ストライプの長手方向は、不織布のMD方向(縦方向)と平行であると好ましい。構成繊維に、5質量%〜40質量%の熱融着された熱融着繊維が含まれていると好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布およびその製造方法、並びに拭き取り材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、不織布に様々な機能を与えるために、用途に応じた模様等が与えられた不織布が提案されている。特許文献1には、例えば包帯等に使用され、多数の開孔がほぼ全面に形成された不織布が開示されている。この多数の開孔には、体液等が通過しにくいよう、大きさおよび/または形状が種々様々な開孔が混在している。特許文献2には、例えば拭き取り材としての機能を向上させる工夫がなされた不織布が開示されている。この不織布には、貫通した開孔が連続的に連なった開孔列と、非開孔列が交互に存在している。
【特許文献1】特開昭63−182460号公報
【特許文献2】特開2000−45161号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般に、不織布を10%伸張させるために要する応力(以下「10%伸長時応力」と略する。)は、例えば軟質包装体や、プラスチック製ボトル状包装体から、不織布を取り出す際に不織布に加わる応力に相当すると考えられている。不織布に関して、10%伸長時応力は非常に重要視されている物性値であり、この10%伸長時応力が小さいと、包装体から不織布を取り出す時に不織布が伸びて模様が変形し、模様がもたらす効果が十分発揮されない場合がある。
【0004】
特許文献1に開示された不織布は、その10%伸長時応力が、例えば同じ目付の開孔を有していない、いわゆる無地の不織布と比較すると小さい傾向にある。そのため、特許文献1に開示された不織布は、無地の不織布よりも包装体から不織布を取り出したときに伸び易く、開孔の形状が意図した形状から変化し易く、その結果、多数の開孔が目的とする機能が十分に発揮されない恐れがある。
【0005】
特許文献2に開示された不織布については、開孔列中の開孔の列数がn=1〜4程度であり、開孔列の幅が狭い。そのため、開孔列を形成することによりもたらされる意匠性及び、拭き取り性等の性能の向上は十分とはいえない。
【0006】
このように、高い意匠性を有しながらも、無地の不織布のように強度特性が良好な不織布が得られていないのが実情である。
【0007】
本発明では、高い意匠性と良好な強度特性とを兼ね備えた不織布およびその製造方法、並びに当該不織布を用いた拭き取り材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の不織布は、構成繊維が交絡された繊維ウェブの前記構成繊維の一部が水流交絡により再配列されて形成された、各々規則的な模様を有し、且つ相互に離間したストライプを複数有することにより、ストライプ模様を呈しており、前記ストライプの幅が4mm〜50mmである。
【0009】
本発明の不織布の製造方法は、繊維ウェブの構成繊維を交絡(第1交絡)させた後、前記繊維ウェブの前記構成繊維の一部を、規則的な模様を有する所定の支持体上で水流交絡させることにより、前記構成繊維の一部を再配列させて、規則的な模様を有する複数のス
トライプを発現させることにより、ストライプ模様を形成する工程を含み、各ストライプの幅が4mm〜50mmである。
【0010】
本発明の拭き取り材は、本発明の不織布を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高い意匠性と良好な強度特性とを兼ね備えた不織布およびその製造方法、並びに当該不織布を用いた拭き取り材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の不織布の一例を示す概念図である。
【図2】図2は、本発明の不織布の他の一例を示す概念図である。
【図3】図3は、本発明の不織布の他の一例の拡大模式図である。
【図4】図4は、本発明の不織布の他の一例の拡大模式図である。
【図5】図5は、本発明の不織布の他の一例の拡大模式図である。
【図6】図6は、本発明の不織布の他の一例の拡大模式図である。
【図7】図7は、本発明の不織布の他の一例の概念図である。
【図8】図8は、本発明の不織布の他の一例の概念図である。
【図9】図9は、本発明の不織布の製造に用いられる支持体の一例の模式図である。
【図10】図10は、本発明の不織布の製造に用いられる支持体の一例の模式図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明において、ストライプとは、ストライプ模様を構成する構成単位である。本発明の不織布では、構成繊維の一部が水流交絡されることにより再配列されて形成された規則的な模様を有するストライプ(以下、単に「ストライプA」と称する場合もある。)の幅が4mm〜50mmであることを要する。上記ストライプAの幅が4mm未満であり、または、50mmを超えると、意匠性の向上効果が不十分となる。また、ストライプAの幅が50mmを超えると、10%伸長時応力が低下する。高い意匠性を得るために、隣り合うストライプAの間隔、すなわち、ストライプAに隣接するストライプBの幅も4mm〜50mmであると好ましい。なお、ストライプBは、いわゆる無地であってもよいし、ストライプAの模様とは異なる模様を有していてもよい。
【0014】
本件において、無地の不織布とは、意図的に模様を付与された不織布以外の不織布のことである。ただし、生産上不可抗力的なノズル筋や地合いムラは本発明の模様とは区別され無地の範疇に入る。具体的には、肉眼において意匠性を感じない模様、より具体的には、凸部、凹部、開孔等について一番長い所を測定した場合に、その長さが0.2mm以下である場合は無地の範疇に入る。なお、色模様を有していても、構成繊維の一部が水流交絡により再配列されて形成された模様を有しない場合は無地である。
【0015】
本発明の不織布では、各ストライプAおよび各ストライプBの幅が、5mm〜35mmであるとより好ましく、5mm〜24mmであるとさらに好ましい。各ストライプAおよび各ストライプBの幅が5mm〜24mmであると、MD方向(縦方向)の10%伸長時応力のみならず、CD方向(横方向)の10%伸長時応力についても、ほぼ全面に多数の開孔等の模様(ストライプAにおける模様と同じ模様)が形成された不織布より大きい傾向にあるので、高い意匠性とさらに良好な強度特性とを兼ね備えた不織布を提供できる。そのため、人間の手によって不織布を、MD方向またはCD方向に若干引っ張って0〜10%伸長される時の応力が大きいので、取り扱い性がよい。
【0016】
ストライプAの幅とストライプBの幅は、同じである必要はなく、異なっていてもよい
。また、複数のストライプAの幅はそれぞれ同じである必要はない。複数のストライプBの幅もそれぞれ同じである必要はない。本発明の不織布が有する複数のストライプの幅は、不織布の意匠性を高めるために、不織布のCD方向(横方向)またはMD方向(縦方向)に沿って除々に大きくなっていてもよい。
【0017】
また、例えば、図7に示されるように、本発明の不織布の一例が有するストライプ模様において、複数のストライプAの幅がその長手方向と直交する方向に向かって順次大きくなる繰り返し単位が、複数回繰り返されたものであってもよい。複数のストライプBの幅についてもその長手方向と直交する方向に向かって順次大きくなる繰り返し単位が、複数回繰り返されていてもよい。不織布を拭き取り材として用いた場合に、ストライプAの幅により、捕捉されやすいダストの粒径、ダストの種類が異なることから、上記のように不織布が幅の異なるストライプAを有していると、様々な種類のダストを捕集でき、好ましい。
【0018】
また、全面が無地または多数の開孔等の模様がほぼ全面に形成された、従来の拭き取り材では、拭き取り材のうちの、床等の被拭き取り面と接する面の縁部でダストが集中的に捕集されるため、拭き取り材の被拭き取り面と接する面の中央部を、拭き取りのために効果的に使えなかった。しかし、ストライプ模様が、複数のストライプAの幅がその長手方向と直交する方向に向かって順次大きくなる繰り返し単位が複数回繰り返されたものである、本発明の不織布の一例では、下記の理由により、不織布の被拭き取り面と接する面の中央部におけるダスト捕集能が従来の不織布製の拭き取り材のそれより高い。
【0019】
上述のとおり、ストライプの幅が異なると、捕捉されやすいダストの粒径、ダストの種類が異なる。そのため、拭き取り材のうちの、床等の被拭き取り面と接する面の縁部に位置するストライプで捕捉されなかったダストは、縁部よりも内側に入り込み、縁部に位置するストライプよりも内側に位置する、幅の異なるストライプで捕捉され、このストライプでも捕捉されなかったダストは、さらに内側に位置する幅の異なるストライプで捕捉される。よって、ストライプ模様が、ストライプAの幅がその長手方向と直交する方向に向かって順次大きくなる繰り返し単位が複数回繰り返されたものである、本発明の不織布の一例は、複数のストライプAの幅が等しい不織布よりも、ダスト捕集能がよい。
【0020】
また、本発明の不織布は、幅が4mm〜50mmのストライプAを複数有することによりストライプ模様が呈され、かつ、本発明の効果が損なわれない限りにおいて、図8に示されるように、当該ストライプ模様を構成する複数のストライプに、構成繊維の一部が水流交絡により再配列されて形成されストライプAと同じ模様を有し、かつ、その幅が4mm未満であるか又は50mmを超える、ストライプCが含まれていてもよい。幅が4mm未満であるか又は50mmを超えるストライプCは、ストライプAと同じ模様を有していてもよい。具体的には、例えば、MD方向(縦方向)の10%伸長時応力が、ほぼ全面にストライプAにおける模様と同じ模様が形成された不織布のそれよりも大きく、好ましくは、MD方向(縦方向)の10%伸長時応力およびCD方向(縦方向)の10%伸長時応力が、ほぼ全面にストライプAにおける模様と同じ模様が形成された不織布のそれらよりも大きければ、ストライプ模様を構成する複数のストライプに上記ストライプCが含まれていてもよい。その場合、ストライプAの本数はストライプCの本数と等しいかそれよりも多い。
【0021】
本発明の不織布における上記ストライプの長手方向は、十分な10%伸長時応力が確保される限りにおいて、MD方向およびCD方向のうちのいずれと平行であってもよいが、MD方向と平行であると好ましい。通常、不織布の製造過程において繊維ウェブにはMD方向のテンションがかかっているので、ストライプをMD方向に沿って形成する場合、所望の模様を安定して形成できる。
【0022】
上記ストライプAの厚みとストライプBの厚みの比(ストライプAの厚み/ストライプ
Bの厚み)は、その値が大きいとダスト捕集性能がより向上するという理由から、1.03以上であると好ましく、1.08以上であるとより好ましく、1.15以上であると更に好ましい。また、比(ストライプAの厚み/ストライプBの厚み)の上限について特に
制限はないが、製造の容易性の観点から、4.0以下であると好ましく、3.0以下であるとより好ましく、2.0以下であると更に好ましい。
【0023】
本発明の不織布の一例では、構成繊維が熱融着繊維を含んでおり、それらが隣り合う繊維と熱融着していると好ましい。この場合、不織布の形状安定性が向上し、使用に伴う厚みの低下も抑制される。このような不織布は、伸びにくいのでワイパーに適しており、よって、構成繊維が熱融着繊維を含む本発明の不織布の一例を用いれば、拭き易く、力を加えずに軽く拭けるワイパーを提供できる。このような不織布は、所定の規則的な模様を有するストライプを発現させる工程後に、繊維ウェブを熱処理することにより構成繊維の少なくとも一部を融着して構成維同士を融着させることにより得られる。構成繊維には、熱融着繊維が5質量%〜40質量%含まれていると好ましい。熱融着繊維の含有量が上記範囲内にあると、形状安定性が良好であり、かつ、毛羽立ちが少なくよれにくい不織布を提供できる。
【0024】
上記規則的な模様を構成する構成単位としては、例えば、凹凸及び開孔からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。上記模様は、例えば、ドット(円、楕円、三角形、多角形等)模様、杉綾模様、市松模様、格子模様、千鳥模様、およびジグザグ模様等があげられる。
【0025】
各規則的な模様には様々な機能や効果がある。例えば、開孔が所定の間隔で形成されたドット模様などは掻き取り性の向上に寄与し、皮膚と接触させた時などは接触面積が小さくなるため皮膚に貼り付きにくくなるという効果をもたらす。杉綾模様では、繊維の密度が相対的に高い部分と低い部分とが小さい周期で繰り返されているので、毛細管現象などを起こしやすく、不織布の吸水性を向上させる。よって複数種の模様を付与すれば、複数の機能を有する不織布を提供できる。
【0026】
上記規則的な模様の構成単位が開孔である場合、開孔の面積および開孔間距離w3(図3および図4参照)が下記範囲にあると、ダスト捕集性の優れた拭き取り材に好適な不織布を提供できる。開孔の面積は0.5mm2〜6.0mm2であると好ましく、3.0mm2〜5.5mm2であるとより好ましい。相互に最も近接した開孔間の距離については1.0mm〜3.0mmであると好ましく、1.5mm〜3.0mmであるとより好ましい。
【0027】
不織布は単層にかぎらず、例えば親水性繊維を主として含む層と、分割型複合繊維を主として含む層とを含む、2または3層以上の積層構造をしていてもよい。親水性繊維を主として含む層に薬液等を保持させれば、分割型複合繊維が持つ特有の性質、たとえば優れた掻き取り性および柔軟性等とあいまって、高品質のウェットワイパー、ウェットティッシュ、または使い捨ておしぼりなどの湿潤性拭き取り材を提供できる。特に、不織布が3層以上の積層構造をしており、パルプなどの親水性繊維を主として含む層を中間層として含む場合は、親水性繊維を主として含む層が保液層となり、液を表面に徐々に出すことが出来るので、好ましい。また、パルプなどの親水性繊維を主として含む層を中間層として含む場合は、ストライプ模様が鮮明になるので、好ましい。ここで、「主として」とは、親水性繊維を主として含む層において、親水性繊維が主成分として50質量%以上含まれ、分割型複合繊維を主として含む層において、分割型複合繊維が主成分として50質量%以上含まれことを意味する。
【0028】
本発明の不織布の一例では、上記のとおり所定の模様を有するストライプAに接するストライプBは、いわゆる無地であってもよいし、ストライプAの模様とは異なる規則的な模様を有していてもよい。すわなち、本発明の不織布の一例のストライプ模様は、模様が異なるストライプを2種以上有していてもよい。この場合、より意匠性及び機能性の優れた不織布を提供できる。このような不織布は、例えば、下記のようにして形成できる。
【0029】
まず、繊維ウェブの構成繊維を交絡(以下、「第1交絡」と称する場合もある。この第1交絡は水流交絡(第2交絡)により繊維を再配列させて規則的な模様を有するストライプを複数形成することによりストライプ模様を形成する前に行われる。)させた後、繊維ウェブの構成繊維の一部を所定の模様を有する支持体上で水流交絡(第2交絡)させることにより、例えば、支持体の模様に対応する所定の模様を有する複数のストライプAを発現させ、ストライプ模様を形成する。次いで、この工程の後に、繊維ウェブの、上記隣り合うストライプA間に存在する構成繊維を、上記工程で用いた支持体とは異なる模様を有する支持体上で水流交絡(第4交絡)させて、上記所定の模様とは異なる模様を、ストライプA間に発現させる。この場合、上記隣り合うストライプA間に存在する構成繊維の全部を水流交絡させてもよいし、上記隣り合うストライプA間に存在する構成繊維の一部を水流交絡させてもよい。すなわち、第4交絡による構成繊維の再配列によって形成されるストライプの幅を、隣り合うストライプA間の間隔と等しくして、隣り合うストライプA間にストライプAとは異なる模様を有する1本のストライプを形成してもよいし、隣り合うストライプA間の間隔よりも細くして、隣り合うストライプA間に、無地のストライプに挟まれた、ストライプAとは異なる模様を有する1本のストライプを形成してもよい。この場合、無地のストライプに挟まれたストライプの幅は、4〜50mmであると好ましく、5mm〜35mmであるとより好ましく、5mm〜24mmであるとさらに好ましい。
【0030】
また、上記隣り合うストライプA間に存在する構成繊維のみを水流交絡させることに代えて、上記工程で用いた支持体とは異なる模様を有する支持体上で繊維ウェブの全面を水流交絡(第5交絡)させてもよい。この場合、第5交絡によりストライプAが消えてしまうことがないように、第5交絡は、第2交絡の際に用いた高圧水流よりも低い水圧の水流を用いて行う。すなわち、相対的に交絡が強く所定の規則的な模様を有する繊維交絡部と、相対的に交絡が弱く所定の規則的な模様とは異なる模様を有する繊維交絡部とを各々所定の幅で形成して、ストライプ模様を呈するようにする。
【0031】
また、規則的な模様を有する複数のストライプを有し、ストライプ模様を呈する、本発明の不織布の一例は、下記の方法(1)〜(3)にて製造することもできる。
【0032】
(1)まず、繊維ウェブの構成繊維を第1交絡させた後、繊維ウェブの構成繊維の一部を所定の模様を有する支持体上で水流交絡させることにより、例えば、支持体の模様に対応する所定の模様を有する複数のストライプ(ストライプD)を発現させ、ストライプ模様を形成する。次いで、この工程の後に、繊維ウェブの、上記隣り合うストライプD間に存在する構成繊維を、上記工程で用いた支持体とは異なる模様を有する支持体上で水流交絡させる。この際、ストライプDの一部も水流交絡させる。この場合、ストライプDのうちの水流交絡されなかった残余の部分からなるストライプの幅、および/または、隣り合う、水流交絡されなかった残余の部分からなるストライプ間のストライプの幅が、4〜50mmであればよい。
【0033】
(2)まず、繊維ウェブの構成繊維を第1交絡させた後、繊維ウェブの構成繊維の一部を所定の模様を有する支持体上で水流交絡させることにより、例えば、支持体の模様に対応する所定の模様を有する複数のストライプ(ストライプD)を発現させ、ストライプ模様を形成する。次いで、この工程の後に、ストライプDを構成する構成繊維の全部を、ス
トライプDの形成に用いた支持体とは異なる模様を有する支持体上で水流交絡(第6交絡)させ、当該構成繊維を再配列させて、ストライプDの上にストライプDと同じ幅のストライプDとは異なる模様のストライプを形成する。この場合、ストライプDおよびストライプDの上に形成されるストライプの幅が4〜50mmであればよい。また、第6交絡による構成繊維の再配列によって形成されるストライプの幅は、ストライプDCの幅より小さくしてもよい。この場合、第6交絡による構成繊維の再配列によって形成されるストライプ、またはストライプDのうちの第6交絡による構成繊維が再配列されなかった残余の部分からなるストライプの幅が4〜50mmであればよい。第6交絡による構成繊維の再配列によって形成されるストライプの幅は、ストライプDの幅よりおおきくてもよく、第6交絡による構成繊維の再配列によって形成されるストライプは、ストライプDを完全に覆うように形成されてもよい。この場合、第6交絡によって形成されるストライプの幅が4〜50mmであればよい。
【0034】
(3)まず、繊維ウェブの構成繊維を第1交絡させた後、当該繊維ウェブの構成繊維を、規則的な模様を有する所定の支持体(第1支持体)上で水流交絡させて、規則的な模様を上記繊維ウェブのほぼ全面に形成する。次いで、上記模様がほぼ全面に形成された繊維ウェブの構成繊維の一部を、上記所定の支持体(第1支持体)とは異なる支持体(第2支持体)上で水流交絡させることにより再配列させて、当該一部における規則的な模様を消し、複数の無地のストライプを発現させる。複数の無地のストライプを形成する際、隣り合う無地のストライプ間の距離が4mm〜50mmとなるようにする。このような方法でも、構成繊維が交絡された繊維ウェブの当該構成繊維の一部が水流交絡により再配列されて形成され、各々規則的な模様を有し且つ相互に離間した、ストライプを複数有し、各ストライプの幅が4mm〜50mmの不織布を製造できる。
【0035】
本発明の不織布の製造方法の一例では、ノズルに形成された複数のオリフィスから噴射された高圧水流によって水流交絡を行う。この場合、オリフィスの孔径が、0.05〜0.3mmであり、オリフィスと繊維ウェブとの距離が7mm〜30mmであり、さらに好ましくは6〜20mmであると、不織布の地合いの均一性が良好でかつ鮮明な模様を有するストライプを形成可能であるので好ましい。また、複数のオリフィスが、複数群に分かれており、各群の長手方向の長さ(例えば、CD方向と同方向の長さ)は、4〜50mmが適切であり、5〜35mmであるとこのましく、5〜24mmであるとより好ましい。また、隣り合う群間の距離も、4〜50mmが適切であり、5〜35mmであるとこのましく、5〜24mmであるとより好ましい。
【0036】
以下、本発明の一例についてより詳細に説明する。
【0037】
本発明の不織布の一例の模式図を図1および図2に示す。図1に示された不織布1は、無地のストライプ2と規則的な模様を有するストライプ3とが交互に配置されることにより、ストライプ模様を呈している。図2に示された不織布10は、規則的な模様からなるストライプ30aと、上記所定の模様とは異なる、別の規則的な模様を有するストライプ30bとが交互に配置されることにより、全体としてストライプ模様を呈している。
【0038】
図1に示された不織布1は、例えば、以下のようにして作製できる。まず、繊維ウェブの構成繊維を第1交絡させる。次いで、繊維ウェブを所定のパターン(模様)を有する支持体上に配置した後、繊維ウェブの一部に対して高圧水流を噴射し、その部分の構成繊維同士を第2交絡させるとともに、構成繊維を再配列させて、ストライプ模様を形成する。繊維ウェブの高圧水流を受けた部分が、規則的な模様からなるストライプ3となる。
【0039】
図2に示した不織布10は、例えば、以下のようにして作製できる。ストライプ30aは、図1に示した規則的な模様を有するストライプ3と同様にして形成できる。ストライ
プ30aが形成された不織布を、ストライプ30aの形成に用いた所定の支持体とは異なるパターン(模様)を有する支持体上に配置した後、不織布のストライプ30aが形成された部分以外の箇所、即ち、無地部分のみに対して高圧水流を噴射し、その部分の構成繊維同士を交絡(第4交絡)させるとともに、構成繊維を再配列させる。このようにすれば、相互に模様が異なる2種以上のストライプを有する不織布を作製できる。すなわち、繊維ウェブのストライプ30a間に存在する構成繊維を、上記所定の支持体とは異なる模様を有する支持体上で水流交絡(第4交絡)させることにより、ストライプ30aが有する規則的な模様とは異なる模様を、ストライプ30a間に発現させることにより2種以上のストライプを有する不織布を作製できる。
【0040】
第1交絡時に繊維ウェブ全面に対して支持体を用い高圧水流により所定の模様を形成した後か、または、第1交絡されることにより得られた無地の繊維ウェブの全面に対して、支持体を用い高圧水流(「第3交絡」と称する場合もある。)により所定の模様を形成した後に、この模様の形成に用いた支持体とは別の支持体を用いて、水流交絡(第2交絡)によりストライプ模様を形成してもよい。すなわち、第1交絡の後、第2交絡を行う前に、第3交絡を行って、繊維ウェブの全面に模様を形成してから、第2交絡によりストライプ模様を形成してもよい。または、繊維ウェブの構成繊維を第1交絡させると同時にその全面に模様を形成した後、当該繊維ウェブを所定のパターン(模様)を有する支持体上に配置し、次いで、繊維ウェブの一部に対して高圧水流を噴射し、その部分の構成繊維同士を交絡(第2交絡)させて、ストライプ模様を形成してもよい。
【0041】
支持体の形態について、特に制限はないが、モノフィラメントまたは金属線が織成されて形成されたパターンネットや、突起物が設けられたロール等、汎用されているものを任意に使用できる。具体的には、平織り、杉綾織り、綾織り、スパイラル織りなどのパターンネットや、開口プレート、開口ロールなどが挙げられる。
【0042】
図1または図2に示されるように、本発明の不織布の一例は、その長手方向がMD方向と同方向であり、所定の幅を有しかつ規則的な模様を有するストライプを複数有することにより、ストライプ模様を呈しているので、意匠性が優れている。さらに、規則的な模様を有するストライプAの幅w1が4mm〜20mmであるので、後述する実施例の結果に示されるように、全面に多数の開孔等の模様が形成された不織布(ストライプAの模様と同じ模様が全面に形成された不織布)よりも、MD方向の10%伸長時応力が大きい。ストライプの幅w1が、4mm〜20mmであると、MD方向の10%伸長時応力のみならず、CD方向の10%伸長時応力についても、全面に多数の開孔等の模様が形成された不織布(ストライプAの模様と同じ模様が全面に形成された不織布)のそれより大きい。さらに、その理由については明らかではないが、ストライプの幅w1が5mm〜15mmであると、CD方向の10%伸長時応力が、無地の不織布のそれよりも大きいので、高い意匠性とさらに良好な強度特性とを兼ね備えた不織布を提供できる。
【0043】
このように本発明の不織布において10%伸長時応力が大きくなる理由は明らかではないが、その製造過程で、4mm〜20mmの比較的幅広い部分で、構成繊維の一部が水流により再度交絡され再配列されるので、構成繊維が再配列された幅広部分(ストライプ)の強度が増し、その結果、不織布全体の初期(0〜10%伸張時)の強度が向上したものと推測される。
【0044】
尚、図1に示した例では、無地のストライプ2の幅w2と規則的な模様を有するストライプ3の幅w1が等しいが、ストライプ3の幅w1が4mm〜50mmである限り、本発明の不織布はこれに限定されない。
【0045】
規則的な模様の構成単位は、上記のとおり、凹凸及び開孔からなる群から選ばれる少な
くとも1種等が挙げられる。模様の態様について、特に制限はないが、凹凸及び開孔からなる群から選ばれる少なくとも1種が多数形成されることにより得られる、例えば、ドット模様(例えば、図3、図4参照)、杉綾模様(例えば、図5参照)、市松模様、格子模様、千鳥模様、およびジグザグ模様(例えば、図6参照)等のあらゆる模様が挙げられる。
【0046】
ここで、凹凸とは、例えば、図5および図6に示すように、凸部を肉眼で見た場合に繊維が存在しない部分がなく、凸部4における厚みをT1と、凹部5における厚みT2とすると、T1/T2が1.3以上であるものをいう。だだし、凹部に開孔(ここでの開孔の面積は0.5mm2以上である場合もあるし、0.5mm2未満である場合もある。)がある場合は、繊維が存在する部分の厚みをT2とする。また、厚みムラが大きい不織布に関しては(具体的には、T1av10/T2av10が2を超える不織布、ただし、T1av10、T2av10は、T1、T2の10点の平均値)、凸凹は、T1av5/T2av5が1.3以上(T1av5、T2av5は、T1、T2の5点の平均値)であるものをいう。
【0047】
T1およびT2は、不織布を剃刀で厚み方向に切断して得られる断面から電子顕微鏡を用いて測定される。厚みの決定に際して不織布の毛羽などは考慮にいれない。
【0048】
開孔6は、例えば、図3および図4に示すように、不織布の表面から裏面にかけて繊維の存在しない部分が一部でもある貫通した開孔であり、肉眼でみることができ、より具体的には、面積が0.5mm2以上であれば開孔とみなされる。
【0049】
ジグザグ模様とは、図6に示すように、上記凸凹の凸の部分が連なって畝のようになり、さらに、その畝が、ジグザグに周期的に角度を変えたことによって形成された模様である。
【0050】
例えば、模様が、多数の開孔が千鳥状に配置されたドット模様(図4参照)である場合、拭き取り方向に対して、前列の開孔で捕捉されずに通過したダストを後列で捕捉できるので、拭き取り性の優れた不織布を得ることができる。このような、ドット模様は、例えば、支持体として、ナックル部が千鳥状に配列された平織りネットや、千鳥状に配列された複数の突起を有する板状体等を用いれば容易に得られる。
【0051】
例えば、模様が、杉綾模様である場合、繊維の密度が相対的に高い部分と低い部分とが小さい周期で繰り返されているので、毛細管現象を利用した吸水性に優れる不織布を得ることが出来る。また、斜め方向に凹凸が走っているので、拭き取り時は、より拭き取り面の中央部までダストを取り込むことができ、拭き取り面全体でダストを捕らえることができ、好ましい。杉綾模様は、例えば、支持体として、綾織ネットを用いれば容易に得られる。
【0052】
例えば、図5に示すように、杉綾模様では、MD方向に対して所定の角度に傾斜した線条aと、この線条aと線対称な線条bとが、CD方向沿って交互に繰り返されている。この場合、上記所定の角度θが5〜60°であると、不織布を清拭布として用いた場合のダストの捕集性、および滑り性が良くなるので好ましい。
【0053】
例えば、模様が、ジグザグ模様である場合は、例えば、図6に示すように、ジグザグ模様の凸部4の高さを大きくすれば、その凸部4に水分や薬液などを比較的たくさん蓄えることができ、好ましい。ジグザグ模様は、例えば、支持体として、経糸が2本引きそろえられた平織りネットを用い、または、ジグザグの模様が付与されたパンチングプレート等を用いれば容易に得られる。
【0054】
開孔の形状について、特に制限はないが、例えば、円状、楕円状、長方形状、菱形状等が挙げられる。規則的な模様が、例えば、複数の開孔から形成される場合、複数の開孔の、大きさは同一であってもよいし異なっていてもよい。開孔の大きさが大小異なっていると種々の大きさの汚れを補捉できるので好ましい。
【0055】
本発明の不織布の製造に用いられる繊維ウェブの構成繊維の形状については、特に限定されず、単一繊維、鞘芯型複合繊維、分割型複合繊維あるいは異形断面を有する繊維等が挙げられる。
【0056】
繊維ウェブの構成繊維の材料は、1種または2種以上の材料を含む。構成繊維が2種以上の材料からなる場合(繊維ウェブが1種の構成繊維からなりその構成繊維自体が2種以上の材料からなる場合と繊維ウェブが材料の異なる2種以上の構成繊維からなる場合とを含む。)、2種以上の材料のうちの少なくとも1種については、他の材料よりも相対的に融点が低い材料を含んでいると、規則的な模様を良好に保持しながら構成繊維同士を融着させることができ好ましい。
【0057】
構成繊維の繊度は、繊維に悪影響をもたらすことなく鮮明な模様を形成可能であるという理由から、0.1dtex以上6.6dtex以下が好ましく、0.25dtex以上3.3dtex以下がより好ましい。
【0058】
構成繊維の材料としては、例えば、コットン、絹、パルプ等の天然繊維、レーヨン(溶剤紡糸型やビスコースレーヨン等)等の再生繊維、アセテート、アクリル系樹脂、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン等が挙げられる。
【0059】
本発明の不織布を拭き取り材として使用する場合、拭き取り材の用途によって、使用する繊維の種類や繊度、不織布の目付などは適宜設定すればよいが、例えば、本発明の不織布が、細かな埃、ごみなどを拭き取ることを目的とするフローリング用ワイパーや精密ワイパーなどの乾式拭き取り材として使用される場合には、不織布は、非相溶性の2成分からなり、繊維断面において少なくとも1成分が2個以上に分割されてなる分割型複合繊維を50質量%以上含んでいると好ましく、70質量%以上含んでいるとより好ましい。2成分の組み合わせとしては、例えば、ナイロン/ポリエステル、ポリエステル/ポリプロピレン、エチレン−ビニルアルコール共重合体/ポリプロピレン、ポリエステル/ポリエチレン等が挙げられる。これらの繊維の繊度は、拭き取り性が良く、液のこり性が少なくなるという理由から水流交絡性がよく、模様が出やすい傾向にあるという理由から、3.5dtex以下であると好ましい。
【0060】
分割型複合繊維の他に不織布に含まれる繊維としては、単一成分からなる合成繊維が挙げられるが、なかでも、繊度が6.6dtex以下のポリエステル繊維やレーヨン繊維が好ましい。
【0061】
繊維ウェブとしては、カードウェブ、エアレイウェブ、湿式抄紙ウェブ、長繊維ウェブ(例えばスパンボンドウェブ)、メルトブローンウェブなどが挙げられ、水流交絡により再配列が可能なウェブ形態であれば特に限定されない。
【0062】
本発明の不織布の用途が、ウェットワイパー、ウェットティッシュ、あるいは使い捨ておしぼりなどの湿潤性拭き取り材等である場合には、不織布は、綿、絹、パルプ等の天然繊維、レーヨン(溶剤紡糸型やビスコースレーヨン等)等の再生繊維、アセテート等の半合成繊維、アクリル系繊維などの親水性繊維を含んでいると好ましい。特に、親水性繊維
が、レーヨン、パルプおよびコットンからなる群から選ばれる少なくとも1種のセルロース繊維を含んでいると、例えば、不織布が、ポリエステルやポリプロピレン等の吸水性が無いか無いに等しい合成繊維のみからなる場合よりも、不織布の吸水性が高く、かつ10%伸長時応力が大きいので、好ましい。構成繊維は、親水性繊維を30質量%以上含んでいると好ましく、50質量%以上含んでいるとより好ましい。親水性繊維を含んでいると鮮明な模様が形成され易い点でも好ましい。親水性繊維の含有量の上限は、十分な破断強力を確保するという理由から90質量%以下が好ましい。
【0063】
第1交絡された繊維ウェブの目付け量は、鮮明な模様が形成可能であるという理由から、20〜300g/m2であると好ましく、20〜100g/m2であるとより好ましい。
【0064】
繊維ウェブの第1交絡は、例えば、生産性の観点からニードルパンチング法、水流交絡法、エンボス処理法等のいずれの方法により行われてもよいが、構成繊維の一部を水流交絡により再配列して、ストライプ模様を形成するために行われる第2交絡が水流交絡法により行われるため、水流交絡法により行われると好ましい。
【0065】
第1交絡を水流交絡にて行う場合、その際に使用される支持体の形態について、特に制限はなく、従来から知られた支持体を用いればよいが、例えば、経糸の線径が0.05mm〜1.5mm、緯糸の線径が0.05mm〜1.5mm、メッシュ数が15〜110メッシュの平織りネットが適当である。第1交絡により無地の繊維ウェブを得るためには、例えば、経糸の線径が0.05mm〜0.2mm、緯糸の線径が0.05mm〜0.2mm、メッシュ数が70〜110メッシュの平織りネットを用いると好ましい。
【0066】
繊維ウェブの構成繊維を再配列させる際に用いられる水流の圧力(水供給器の設定値、以下、いずれの水流の圧力にいても同様。)は、通常、1〜14MPaが好ましく、2〜10MPaがより好ましい。
【0067】
第1交絡を行う際の水流の圧力は、例えば、20〜300g/m2の繊維ウェブを処理
する場合、繊維の交絡性および交絡の均一性を向上させる観点から、1〜12MPaが好ましく、2〜9MPaがより好ましい。
【0068】
本発明の不織布の一例の製造過程で第3交絡が行われる場合、第3交絡を行う際の水流の圧力は、処理する繊維ウェブの目付や、形成される模様等に応じて設定すればよいが、例えば、20〜300g/m2の繊維ウェブを処理する場合、1〜14MPaが好ましく
、2〜10MPaがより好ましい。
【0069】
上述のとおり、本発明の不織布の製造方法の一例では、第1交絡および/または第3交絡された繊維ウェブの一部に対して高圧水流を噴射する。高圧水流の噴射は、繊維ウェブの構成繊維が再配列されて不織布に開孔や凹凸などが形成されるような条件で行う。
【0070】
本発明の不織布の一例の製造過程で第2交絡が行われる場合、第2交絡を行う際の水流の圧力は、処理する繊維ウェブの目付や、形成される模様等に応じて設定すればよいが、例えば、20〜300g/m2の繊維ウェブを処理する場合、支持体を損傷させることな
く鮮明な模様を形成可能であるという理由から、1〜14MPaが好ましく、2〜10MPaがより好ましい。
【0071】
本発明の不織布の一例の製造過程で第4交絡が行われる場合、第4交絡を行う際の水流の圧力は、処理する繊維ウェブの目付や、形成される模様等に応じて設定すればよいが、例えば、20〜300g/m2の繊維ウェブを処理する場合、1〜14MPaが好ましく
、2〜10MPaがより好ましい。
【0072】
本発明の不織布の一例の製造過程で第5交絡が行われる場合、第5交絡を行う際の水流の圧力は、処理する繊維ウェブの目付や、形成される模様等に応じて設定すればよいが、例えば、20〜300g/m2の繊維ウェブを処理する場合、1〜12MPaが好ましく
、2〜9MPaがより好ましい。
【0073】
本発明の不織布の一例の製造過程で第6交絡が行われる場合、第6交絡を行う際の水流の圧力は、処理する繊維ウェブの目付や、形成される模様等に応じて設定すればよいが、例えば、20〜300g/m2の繊維ウェブを処理する場合、1〜14MPaが好ましく
、2〜10MPaがより好ましい。
【0074】
高圧水流の供給には、例えば、その長手方向が、繊維ウェブの進行方向と直交するように配置され、複数のオリフィス(開口)を有するノズルを1個以上用いることができる。オリフィスの口径は、鮮明な模様を形成可能であるという理由から、0.05mm以上であると好ましく、繊維ウェブを乱すことなく地合いを整えることが可能であるという理由から0.5mm以下であると好ましい。隣り合うオリフィスの間隔は0.3mm〜1.5mmが適当である。
【0075】
ノズルにおけるオリフィスの形成場所、隣り合うオリフィスの間隔等についは、繊維ウェブに形成される模様に応じて、適宜設定されるが、複数のオリフィスは、複数群に分かれて形成される。隣り合う群間の距離は5〜50mmが適当である。また、各群において隣り合うオリフィス間の距離は、0.3〜1.5mmであると、模様を鮮明に出すことが出来るため、好ましい。
【0076】
また、上記オリフィスと、繊維ウェブとの距離は、鮮明な模様が形成可能であるという理由から、7〜30mmが好ましく、10〜25mmがより好ましい。
【実施例】
【0077】
以下、本発明の内容について実施例を挙げて説明する。なお、得られた不織布の厚み、破断強力、破断伸度、10%伸長時応力、開孔面積、および隣り合う開孔間距離は、以下の通り測定した。また、比(ストライプAの厚み(模様のある部分)/ストライプB(無地の部分)の厚み)は以下のようにして得た。
【0078】
[厚み]
不織布の厚み測定機(商品名:THICKNESS GAUGE モデル CR-60A 株式会社大栄科学精器製作所製)を用い、JIS L 1096に準じて試料1cm2あたり3gの荷重を加え
た状態で測定した。
【0079】
[破断強力、破断伸度]
JIS L 1096に準じ、幅5cm、長さ15cmの試料片をチャックの間隔が10cmとなるように把持し、定速伸長型引張試験機(商品名:テンシロン UCT−1T
オリエンテック株式会社製)を用いて引張速度30cm/分で試料片を伸長し、破断時の荷重値および伸長率をそれぞれ破断強力、破断伸度として測定した。
【0080】
[10%伸張時応力]
破断強力測定時の10%伸長時における荷重値、すなわち、測定開始地点から1cm伸張させたときの荷重値(チャック間の間隔(10cm)が11cmになったときの荷重値)を10%伸張時応力として測定した。
【0081】
[開孔面積]
温度および湿度が一定に保たれた環境下で、実体顕微鏡(商品名:SZX12 オリンパス株式会社製)を用いて不織布表面を拡大観察(拡大倍率50倍)し、得られた画像を普通紙にプリントし、上記普通紙から、任意の5つの開孔に対応する部分を切り抜いた。切り抜いた普通紙の目付(単位面積当たりの質量)から開孔面積を算出し、それらの値の平均値を観察した拡大倍率で除することにより開孔面積を得た。
【0082】
[隣り合う開孔間距離]
実体顕微鏡(商品名:SZX12 オリンパス株式会社製)を用い不織布表面を拡大観察し(拡大倍率50倍)、得られた画像より定規で隣り合う開孔間距離10点を計測し、その平均値を観察した拡大倍率で除することにより隣り合う開孔間距離を算出した。ただし、開孔間距離は隣り合う開孔同士の中心間距離とした。
【0083】
[比(ストライプAの厚み/ストライプBの厚み)]
不織布から、ストライプA(模様のある部分)と、隣り合うストライプA間に配置されたストライプB(無地の部分)とに切り分け、各々5枚重ねたもの厚みを、JIS L 1096に準じて、試料1cm2あたり3gの荷重を加えた状態で測定した。測定には、
不織布の厚み測定機(商品名:THICKNESS GAUGE モデル CR-60A 株式会社大栄科学精器製作所製)を用いた。得られたストライプA5枚分の厚みとストライプB5枚分の厚みとを用いて、比(ストライプAの厚み/ストライプBの厚み)をもとめた。
【0084】
[実施例1〜12]
溶剤紡糸型レーヨン繊維(繊度1.7dtex、繊維長40mm リヨセル レンチング社製)80質量%と、第1成分をポリエチレンテレフタレート(融点253℃)とし、第2成分を高密度ポリエチレン(融点132℃)とした放射状に8分割された断面形状を有する分割型複合繊維(繊度2.2dtex、繊維長51mm 商品名DFS(SH) ダイワボウポリテック(株)製)10質量%と、鞘成分をポリエチレン(融点132℃)、芯成分をポリプロピレン(融点160℃ 商品名 NBF(H) 大和紡績株式会社製)とする芯鞘型複合繊維(繊度2.2dtex、繊維長51mm)10質量%とを混綿し、得られた結果物に対して、ローラー型パラレルカードを用いてカードして、目付けが50g/m2のカードウェブを作製した。
【0085】
次いで、カードウェブを第1交絡用のネット上に載置し、速度4m/minで進行させながら、カードウェブの表面に対して、ノズルに孔径0.13mmのオリフィスが0.6mm間隔で設けられている水供給器を用いて、水圧3MPaの柱状水流を噴射した後、裏面に対して、同様の水供給器を用いて、水圧2.5MPaの柱状水流を噴射した。カードウェブの表面とオリフィスとの距離は15mmとした。以上のようにして第1交絡された繊維ウェブを得た。上記第1交絡用のネットには、経糸の線径が0.132mm、緯糸の線径が0.132mm、メッシュ数が90メッシュの平織りPETネットを用いた。
【0086】
次に、下記のネットA〜Fを支持体として用いて、繊維ウェブの表面側から第2交絡を行い、規則的な模様を有し、MD方向と平行なストライプを複数形成した。次いで、雰囲気温度が140℃の乾燥機内で乾燥及び熱処理して表1に示した実施例1〜12、16〜22の不織布を得た。
【0087】
第2交絡を行う際、第1交絡を行う時に用いた水供給器を用いたが、複数のオリフィスのうちの一部のオリフィスについては水流がでないように塞いで用いた。進行速度は4m/minとし、第2交絡を行う際の水圧は4.5MPaとし、繊維ウェブの表面とオリフィスとの距離は15mmとした。水供給器における複数のオリフィスの配置は、これを用いて第2交絡の際に形成される規則的な模様を有するストライプの幅が、6mm、12mm、24mm、第2交絡の際に形成されるストライプ間の距離が、6mm、12mm、2
4mmとなるようにした。
【0088】
[ネットA]経糸の線径が0.132mm、緯糸の線径が0.132mm、メッシュ数が25メッシュの平織りネット
[ネットB]経糸の線径が1.2mm、緯糸の線径が1.2mm、経糸密度12本/インチ、緯糸密度12本/インチの平織りネット
[ネットC]経糸の線径が0.4mm、緯糸の線径が0.8mm、織り密度68/18本/インチの3/1杉綾織りネット
[ネットD]経糸の線径が0.9mm、緯糸の線径が1.0mm、経糸密度9本/イン
チ、緯糸密度10本/インチ、経糸が二本引き揃えられた平織りネット
[ネットE]経糸の線径が1.2mm、緯糸の線径が1.2mm、経糸密度6.5本/インチ、緯糸密度5.5本/インチの平織りネット
[ネットF]経糸の線径が0.8mm、緯糸の線径が0.8mm、経糸密度8.5本/インチ、緯糸密度9本/インチの平織りネット
[実施例13]
実施例1〜12と同様にして、第1交絡された繊維ウェブを得た。次に、上記ネットCを用いて裏面から水流交絡(第3交絡)を行い、規則的な模様を繊維ウェブ全面に形成した。次に、規則的な模様を全面に有する繊維ウェブに対して、上記ネットAを用いて第2交絡を行い、MD方向と平行なストライプを複数形成した。第2交絡を行う際、第1交絡および第3交絡を行う際に用いた水供給器を用いたが、複数のオリフィスのうちの一部のオリフィスについては水流がでないように塞いで用い、幅が12mmのストライプを形成した。第3交絡を行う際の水圧は3.0MPaとし、繊維ウェブの表面とオリフィスとの距離は15mmとした。第2交絡を行う際の水圧は4.5MPaとし、繊維ウェブの表面とオリフィスとの距離は15mmとした。次いで、雰囲気温度が140℃の乾燥機内で乾燥及び熱処理して表1に示した実施例13の不織布を得た。
【0089】
[実施例14]
実施例5における無地部分を6mmとしたこと以外は実施例5と同様にして実施例14の不織布を得た。
【0090】
[実施例15]
実施例5における無地部分を24mmとしたこと以外は実施例5と同様にして実施例14の不織布を得た。
【0091】
[比較例1]
実施例1〜12と同様にして、カードウェブを第1交絡させて繊維ウェブを得た。得られた繊維ウェブの裏面に対して、ノズルに、孔径0.13mmのオリフィスが0.6mm間隔で設けられている水供給器を用いて、水圧2.5MPaの柱状水流をいずれのオリフィスをふさぐことなく全面に噴射した。繊維ウェブの表面とオリフィスとの距離は15mmとした。次いで、実施例1と同様に、雰囲気温度が140℃の乾燥機内で乾燥及び熱処理して比較例1の不織布を得た。
【0092】
[比較例2〜5、7、8]
実施例1〜12と同様にして、カードウェブを第1交絡させて繊維ウェブを得た。得られた繊維ウェブを、ネットA〜Fの上に配置し、繊維ウェブの全面に対して、ノズルに、口径0.13mmのオリフィスが0.6mm間隔で設けられている水供給器を用いて、水圧4.5MPaの柱状水流をいずれのオリフィスをふさぐことなく噴射した。繊維ウェブの表面とオリフィスとの距離は15mmとした。次いで、実施例1と同様に、雰囲気温度が140℃の乾燥機内で乾燥及び熱処理して比較例2〜5、7、8の不織布を得た。
【0093】
[比較例6]
規則的な模様を有するストライプの幅を2mm、無地ストライプの幅を40mmとしたこと以外は、実施例1と同様にして不織布を得た。
【0094】
【表1】

【0095】
【表2】

【0096】
表2に示されるように、比較例2〜5、7、8の不織布は、比較例1の無地の不織布よりも、MD方向の破断強力およびCD方向の破断強力が高いが、MD方向の10%伸張応力およびCD方向の10%伸長時応力は小さい。これに対して、実施例1〜22の不織布は、無地の不織布よりも、MD方向の破断強力およびCD方向の破断強力が高いばかりで
なく、MD方向の10%伸張時応力が、同じネットを用いて全面に多数の開孔が形成された比較例2〜5、7、8の不織布のそれよりも大きい。さらに、構成繊維が水流交絡により再配列されて形成されたストライプの幅が6mm、12mmの実施例1〜8、13〜17、19、20については、CD方向の10%伸長時応力が比較例1の無地の不織布のそれよりも大きい。
【0097】
以上のことから、実施例1〜22の不織布は、比較例2〜5、7、8の不織布との比較において、意匠性および強度特性が優れていることが確認できた。特に、実施例1〜8、13〜17、19、20の不織布については、CD方向の10%伸長時応力が比較例1の無地の不織布よりも高いので、ストライプの幅を6mm〜12mmとすれば、高い意匠性とさらに良好な強度特性とを兼ね備えた不織布を提供でき、拭き取り等の用途に特に適した不織布を提供できることが確認できた。よって、構成繊維が水流交絡により再配列されて形成された所定の模様を有するストライプの幅を5mm〜15mmとすれば、人間の手によって不織布を、上記ストライプの長手方向と直交する方向に若干引っ張って0〜10%伸長される時の応力が大きいので、不織布の取り扱い性がよくなる。
【0098】
なお、ネットE,Fを用いて所定の模様を有するストライプが形成された実施例16〜21の不織布では、凸凹の凸の部分が連なって畝のようになり、さらに、その畝が、曲がりくねっているような凹凸模様が観察される。
【0099】
[実施例23]
溶剤紡糸型レーヨン繊維(繊度1.7dtex、繊維長38mm リヨセル レンチング社製)60質量%と、鞘成分をポリエチレン(融点132℃)、芯成分をポリプロピレン(融点160℃ 商品名 NBF(H) 大和紡績株式会社製)とする芯鞘型複合繊維(繊度1.7dtex、繊維長51mm)40質量%とを混綿し、得られた結果物に対して、ローラー型パラレルカードを用いてカードして、目付けが27g/m2カードウェブ
(上層)を作製した。
【0100】
また上記カードウェブと同じもの(下層)をもう一枚作成した。さらに、パルプ繊維100質量%からなるティッシュ(目付17g/m2、ハビックス(株)製)を用意した。
【0101】
上記上層、中層、および下層をこの順に積層し、得られた3層構造の積層体に対して柱状水流を噴射して、第1交絡された繊維ウェブを得た。なお、カードウェブの表面に対して供給される柱状水流の水圧は3.0MPa、裏面に対して供給される柱状水流の水圧は3.0MPaとした。第1交絡を行う際のそれ以外の条件は実施例1の不織布を作製する場合と同じである。
【0102】
次に、下記のネットBを支持体として用いて、繊維ウェブの表面側から第2交絡を行い、規則的な模様を有し、MD方向と平行なストライプを複数形成した。
【0103】
第2交絡を行う際の水圧は3.0MPaとした。第2交絡の際に形成される規則的な模様を有するストライプの幅が、20mm、第2交絡の際に形成されるストライプ間の距離(ストライプB(無地部分)の幅)が、5mmとなるようにした。第2交絡を行う際の繊維ウェブの表面とオリフィスとの距離、第2交絡後に行われる乾燥および熱処理条件は実施例1の不織布を作製する場合と同じである。
【0104】
このようにして作製された実施例23の不織布では、第2交絡を行う際の水圧が比較的低いので、はっきりとした開孔は形成されておらず、第2交絡により形成されるストライプには、複数の窪みが観察され、凹凸模様が観察された。
【0105】
[比較例9]
実施例23と同様にして、3層構造の積層体を第1交絡させて繊維ウェブを得た。得られた繊維ウェブの裏面に対して、比較例1の不織布の作製の際に行ったのと同じ条件で、繊維ウェブの全面に柱状水流を噴射した。次いで、比較例1と同様に、雰囲気温度が140℃の乾燥機内で乾燥及び熱処理して比較例9の不織布を得た。
【0106】
[比較例10]
実施例23と同様にして、3層構造の積層体を第1交絡させて繊維ウェブを得た。得られた繊維ウェブ繊維ウェブを、ネットBの上に配置し、繊維ウェブの全面に対して、比較例3の不織布の作製の際に行ったのと同じ条件で、柱状水流を噴射した。次いで、比較例3と同様に、雰囲気温度が140℃の乾燥機内で乾燥及び熱処理して比較例10の不織布を得た。
【0107】
表3に示されるように、比較例10の不織布(全面模様)は、比較例9の不織布(全面無地)よりも、MD方向の10%伸張応力およびCD方向の10%伸長時応力は小さい。これに対して、実施例23の不織布は、比較例10の不織布(全面模様)および比較例9の不織布(全面無地)よりも、CD方向の10%伸長時応力が大きい。実施例23の不織布のMD方向の10%伸張応力については、比較例9の不織布(全面無地)のそれよりも小さいが、比較例10の不織布(全面模様)のそれよりも大きい。また、実施例23の不織布では、中間層として、親水性繊維であるパルプ繊維100質量%からなるティッシュが用いられているためか、規則的な模様を有するストライプの形成の際にネットBが用いられた実施例2、6、10の不織布と比較して、第2交絡により形成された模様が鮮明である。
【0108】
[実施例24〜29]
実施例24〜29の不織布を、下記の方法にて作製した。第2交絡を行う際に使用する支持体には、下記の支持体(a)(ネットB)、支持体(b)(スパイラルネット)、または支持体(c)(開口金属プレート)を用いた。図9に示されるように、支持体(b)は、スパイラル線の線径が0.92mm、ロット線の線径が0.85mm、ロットピッチが5mmからなる、ポリエステルモノフィラメント製のスパイラルネットである。スパイラル線の1インチ当たりの本数は11本である。図10に示されるように、支持体(c)は、約4mm四方の正方形の孔が形成された、厚みが0.32mmの、開口金属プレートである。隣り合う正方形の孔間の距離は約1mmである。また、下記のようにして、カードウェブを作製した後、下記の製法(i)または製法(ii)行った。
【0109】
ポリエチレンテレフタレート(PET)単一繊維(繊度1.45dtex、繊維長51mm 東レ社製)85質量%と、鞘成分をポリエチレン(融点132℃)、芯成分をポリプロピレン(融点160℃ 商品名 NBF(H) 大和紡績株式会社製)とする芯鞘型複合繊維(繊度1.7dtex、繊維長51mm)15質量%とを混綿し、得られた結果物に対して、ローラー型パラレルカードを用いてカードして、目付けが50g/m2のカ
ードウェブを作製した。
【0110】
[製法(i)]
上記カードウェブに対して柱状水流を噴射して、第1交絡された繊維ウェブを得た。なお、カードウェブの表面に対して供給される柱状水流の水圧は2.5MPa、裏面に対して供給される柱状水流の水圧は3.0MPaとした。第1交絡を行う際のそれ以外の条件は実施例1の不織布を作製する場合と同じである。
【0111】
次に、上記支持体(a)、支持体(b)、または支持体(c)を用いて、繊維ウェブの表面側から第2交絡を行い、規則的な模様を有し、MD方向と平行なストライプを複数形
成した。
【0112】
第2交絡を行う際の水圧は、支持体(a)を用いた場合は2.5MPaとし、支持体(b)を用いた場合は3.0MPaとし、または支持体(c)を用いた場合は3.5MPaとした。第2交絡の際に形成される規則的な模様を有するストライプの幅は、いずれも12mm、第2交絡の際に形成されるストライプ間の距離(ストライプB(無地部分)の幅)は、いずれも12mmとなるようにした。第2交絡を行う際の繊維ウェブの表面とオリフィスとの距離、第2交絡後に行われる乾燥および熱処理条件は実施例1の不織布を作製する場合と同じである。
【0113】
[製法(ii)]
上記カードウェブに対して柱状水流を噴射して、第1交絡された繊維ウェブを得た。なお、カードウェブの表面に対して供給される柱状水流の水圧は2.5MPaとし、裏面に対しては、柱状水流を噴射しなかった。第1交絡を行う際のそれ以外の条件は実施例1の不織布を作製する場合と同じである。
【0114】
次に、第1交絡された繊維ウェブを、支持体(a)、支持体(b)、または支持体(c)上に載置し、速度4m/minで進行させながら、第1交絡された繊維ウェブの表面の全面に対して、ノズルに孔径0.13mmのオリフィスが0.6mm間隔で設けられている水供給器を用いて、柱状水流を噴射した。この水流交絡を行う際、第1交絡を行う時に用いた水供給器を用いた。この水流交絡を行う際の水圧は、支持体(a)を用いた場合は2.0MPaとし、支持体(b)を用いた場合は3.0MPaとし、または支持体(c)を用いた場合は3.5MPaとした。繊維ウェブの表面とオリフィスとの距離は15mmとした。
【0115】
次に、第1交絡の際に用いた第1交絡用のネット上に、支持体(a)、支持体(b)、または支持体(c)上で水流交絡された繊維ウェブを載置し、繊維ウェブ表面に対して柱状水流を噴射して、MD方向と平行であり、かつ、支持体(a)、支持体(b)、または支持体(c)上で水流交絡された時に形成された模様がわずかに残ってはいるがほぼ無地のストライプを複数形成した。上記柱状水流の水圧は3.5MPaとした。無地のストライプを形成するに際、各無地のストライプの幅が12mm、隣り合う無地のストライプ間の距離(すなわち、所定の模様を有するストライプの幅がいずれも12mmとなるようにした。
【0116】
実施例24〜29の不織布について、上記記載の方法にしたがって、比(ストライプAの厚み/ストライプBの厚み)を測定し、下記表3にした。表3に示されるように、製法(i)を採用して作製した不織布よりも製法(ii)を採用して作製した不織布の方が、比
(ストライプAの厚み/ストライプBの厚み)が大きかった。
【0117】
また、支持体として支持体(a)を用い、上記製法(i)により作製した実施例24、
25の不織布では、第2交絡を行う際の水圧が比較的低いので、はっきりとした開孔は形成されておらず、第2交絡により形成されるストライプには、複数の窪みが観察され、凹凸模様が観察された。
【0118】
また、支持体として支持体(b)を用いて作製された実施例26、27の不織布に観察される所定の模様を有するストライプには、その製造過程において、繊維ウェブのうちのスパイラル線上およびロット線上に配置された部分が凹部となり、繊維ウェブのうちの隣り合うスパイラル線間の空間上に配置された部分が凸部となることにより形成された、杉綾模様に近似した凹凸模様が観察された。
【0119】
また、支持体として支持体(c)を用いて作製された実施例28、29の所定の模様を有するストライプには、その製造過程において、繊維ウェブのうちの正方形の孔に対応する箇所に配置された部分が凸部となることにより形成された凹凸模様が観察された。
【0120】
【表3】

【0121】
【表4】

【0122】
次に、実施例1〜22、24〜29および比較例1〜5、7、8の不織布について、下記に示す方法で拭き取り特性を評価した。
【0123】
[拭き取り特性]
ガラス面(20cm×20cm)上にJISダスト7種を10cm×30cmの広さに均一に0.50g分散し、あらかじめ質量を測定しておいた、実施例1〜22、24〜29および比較例1〜5、7、8の不織布(縦7cm、横12cm)で、上記ダストを拭き取った。拭き取りは、拭き取りに寄与する面積が35cm2となるように不織布をスポン
ジに取付け、500gの加重をかけた状態で行った。2往復させた後の不織布の質量を測定し、下記(式1)によりダスト吸着率を算出し、下記基準に従った拭き取り特性について評価した。その結果を表5〜表7に示している。
【0124】
ダスト吸着率(%)=(拭き取り後質量−拭き取り前質量)/0.5×100(式1)
[拭き取り特性評価基準]
×:ダスト吸着率が12%未満
△:ダスト吸着率が12%〜15%
○:ダスト吸着率が16%〜19%
◎:ダスト吸着率が20%以上
【0125】
【表5】

【0126】
【表6】

【0127】
【表7】

【0128】
表5および表6に記載の結果から分かるように、ネットA〜Fを用いて規則的な模様を有するストライプが形成された不織布については、ストライプの幅が12mmの場合に、ダスト吸着率が最も高い。このことから、ストライプの幅が10〜15mmの場合に、ストライプの幅が10mm未満、または15mmを超える不織布よりも、ダスト吸着率が高
いことが推測される。
【0129】
また、ネットBまたはネットEを用いて規則的な模様を有するストライプが形成された不織布については、ストライプの幅が12〜24mmである場合に、ネットA、C、DまたはFを用いて規則的な模様を有するストライプが形成された不織布よりも、ダスト吸着率が高い。
【0130】
ネットBを用いて規則的な模様を有するストライプが形成された不織布については、開孔の面積が比較的大きく、不織布のうちの開孔の近傍に位置し水流の噴射方向に突出した部分の面積が大きい。より詳細に説明すると、開孔の面積が大きいと、開孔を形成するために押しのけられた繊維の量が多く、その分、開孔の近傍では、開孔が形成されていない部分よりも盛り上がった状態になっている。そのため、不織布のうちの開孔の近傍と当該近傍よりも開孔から離れた開孔が形成されていない部分との段差が大きくなっている。このように、規則的な模様を有するストライプ部分では、無地部分よりも平坦性が低いことから、開口を複数有するストライプにより比較的大きなダストが捕捉され、無地のストライプにより細かなダストが捕捉されることにより、ダスト吸着率が高くなっているものと推測される。
【0131】
これに対して、比較例1の不織布については、ダストを吸着する空隙が小さいため、比較的大きなダストを捕捉できず、ダスト吸着率が低くなっているものと推測される。比較例3の不織布については、ネットBを用いて開孔がほぼ全面に形成されているので、ダストの捕捉面積が小さく、ダスト吸着率が低くなっているものと推測される。
【0132】
また、表7に示されるように、支持体(a)〜(c)を用いて規則的な模様を有するストライプ(幅12mm)が形成された実施例24〜29不織布については、規則的な模様を有するストライプの当該模様が、凹部と凸部との段差が比較的大きい凹凸模様であることから、ダスト吸着率高くなっていると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明の不織布は、吸収性物品の表面シート、ガーゼなどのメディカル資材、テーブルクロス等にも有用であり、特に精密ワイパー、清掃用ワイパー、ウェットワイパー、ふきんなどの拭き取り材に好適である。本発明の不織布は、構成繊維が親水性繊維を30質量%含む場合は、ウェットワイパー、ウェットティッシュ、あるいは使い捨ておしぼりなどの湿潤性拭き取り材に好適である。また、非相溶性の2成分の樹脂からなり、繊維断面において少なくとも1成分が2個以上に分割されてなる分割型複合繊維を50質量%以上含む場合、本発明の不織布は、OA機器用ワイパー、精密ワイパーなどの高性能拭き取り材に好適である。
【符号の説明】
【0134】
1、10 不織布
2 無地のストライプ(ストライプB)
3 所定の模様を有するストライプ(ストライプA)
3a ストライプC
30a 所定の模様を有するストライプ(ストライプA)
30b 所定の模様を有するストライプ(ストライプB)
4 凸部
5 凹部
6 開孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成繊維が交絡された繊維ウェブの前記構成繊維の一部が水流交絡により再配列されて形成され、各々規則的な模様を有し且つ相互に離間した、ストライプを複数有することにより、ストライプ模様を呈しており、前記ストライプの幅が4mm〜50mmである不織布。
【請求項2】
前記ストライプの長手方向は、前記不織布のMD方向(縦方向)と平行である請求項1に記載の不織布。
【請求項3】
前記構成繊維に、5質量%〜40質量%の熱融着された熱融着繊維が含まれている請求項1又は2に記載の不織布。
【請求項4】
前記構成繊維が、親水性繊維を30質量%以上含む請求項1〜3のいずれかの項に記載の不織布。
【請求項5】
前記規則的な模様の構成単位が、開孔であり、各開孔の面積は0.5mm2〜6.0m
2であり、相互に最も近接した開孔の中心間の距離が1.0〜3.0mmである請求項
1〜4のいずれかの項に記載の不織布。
【請求項6】
前記規則的な模様とは異なる模様を、隣り合う1対の前記ストライプ間に有する請求項1〜5のいずれかの項に記載の不織布。
【請求項7】
前記規則的な模様を有する、隣り合う1対の前記ストライプ間は無地である請求項1〜5のいずれかの項に記載の不織布。
【請求項8】
繊維ウェブの構成繊維を交絡(第1交絡)させた後、前記繊維ウェブの前記構成繊維の一部を、規則的な模様を有する所定の支持体上で水流交絡させることにより、前記構成繊維の一部を再配列させて、規則的な模様を有する複数のストライプを発現させることにより、ストライプ模様を形成する工程を含み、各ストライプの幅が4mm〜50mmである不織布の製造方法。
【請求項9】
前記繊維ウェブを熱処理することにより前記構成繊維の少なくとも一部を融解して構成維同士を融着させる工程をさらに含む、請求項8に記載の不織布の製造方法。
【請求項10】
前記第1交絡された繊維ウェブは、無地である請求項8又は9に記載の不織布の製造方法。
【請求項11】
前記第1交絡と同時に、または、前記第1交絡の後、前記水流交絡を行う前に、前記繊維ウェブの全面に前記規則的な模様とは異なる模様を形成する請求項8または9に記載の不織布の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜7のいずれかの項に記載の不織布を含む拭き取り材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−64226(P2013−64226A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−281498(P2012−281498)
【出願日】平成24年12月25日(2012.12.25)
【分割の表示】特願2009−109959(P2009−109959)の分割
【原出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(000002923)ダイワボウホールディングス株式会社 (173)
【出願人】(300049578)ダイワボウポリテック株式会社 (120)
【Fターム(参考)】