説明

不織布およびその製造方法、吸収性物品

【課題】吸収体に吸収された液が表面側に染み出るいわゆるリウェットバックが生じるのを抑制することができる不織布およびその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の不織布1は、互いに直交するMD方向とCD方向と厚さ方向とを有していて厚さ方向には表面とその反対面である裏面とを有し、表面にはMD方向へ互いに並行して延びていてCD方向で起伏を繰り返すように交互に並ぶ山部2と谷部13aとが形成され、裏面には一面に広がる裏面部3が形成されている不織布であって、山部3は山部2の頂部2aに位置する山先端部21と、山先端部21と裏面部3とを連結する首部22とからなり、山部2のCD方向における断面で、山先端部21よりも首部22の断面幅が狭くなっており、隣接する山先端部21同士をそれぞれ支えている2つの首部22と裏面部3とによって形成された谷部13aの空間を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布およびその製造方法、その不織布を用いた吸収性物品に関し、より詳しくは使い捨ておむつや生理用ナプキンなどの使い捨ての体液吸収性物品、その体液吸収性物品の透液性シートとして使用するのに好適な不織布およびその不織布の作製に好適な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不織布は、使い捨ておむつや生理用ナプキンなどの吸収性物品に使用されており、とくにその中で、肌と接触するトップシートや、トップシートと吸収体との間に設けられるセカンドシートとして使用されている。このような吸収性物品に使用される不織布のうち、横方向で起伏を繰り返すように交互に並ぶ山部と谷部とが形成された不織布が従来技術として知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載されている不織布の山部の断面形状は略半円形状である。このような断面形状の山部により不織布と着用者の肌との間の接触面積が小さくなるため、吸収体などに一端吸収された体液が外圧下において逆戻りしたような場合、体液が着用者の肌に広く再付着することが防止される。また、谷部の底の部分の繊維密度は山部の繊維密度に比べて低く、これにより、谷部に溜まった体液は不織布を通過して速やかに吸収体に吸収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−25082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された不織布では、谷部の底の部分の繊維密度が低いため、吸収体などに一端吸収された体液が外圧下において谷部の底から逆戻りし、谷部に溜まる場合がある。このとき、着用者によって加えられる荷重によって山部がつぶれると、谷部から体液があふれ、着用者の肌に広く再付着する場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、課題を解決すため、以下の構成を採用した。すなわち、本発明の不織布は、互いに直交する縦方向と横方向と厚さ方向とを有していて厚さ方向には表面とその反対面である裏面とを有し、表面には縦方向へ互いに並行して延びていて横方向で起伏を繰り返すように交互に並ぶ山部と谷部とが形成され、裏面には一面に広がる裏面部が形成されている不織布であって、山部は山部の頂部に位置する山先端部と、山先端部と裏面部とを連結する首部とからなり、山部の横方向における断面で、山先端部よりも首部の断面幅が狭くなっており、隣接する山先端部同士をそれぞれ支えている2つの首部と裏面部とによって形成された谷部の空間を有することを特徴とする。ここで、山部の横方向の断面で、山先端部よりも首部の断面幅が狭い略Ω形状であり、山先端部が、略Ω形状のうちの略円形状の部分であることが好ましい。また、山先端部が厚み方向に加えられた任意の加重によって横方向に広がってつぶれることにより、隣接する山先端部同士が相互に密着し、谷部の空間を山先端部と首部と裏面部とで塞ぐことが可能であることが好ましい。また、首部の裏面部側に存在する繊維の多くが厚み方向に配向していてもよい。さらに、首部の繊維集合度合いは、山先端部の繊維集合度合いよりも高い方が好ましい。また、山先端部は、第1の繊維からなる第1の繊維層を有し、裏面部は、第1の繊維が捲縮を発現せず、かつ、第1の繊維の繊維交点の融着が生じない温度での加熱処理によって、捲縮を発現させた第2の繊維からなる第2の繊維層を有し、首部は、裏面部側の一部を除いて第1の繊維層を有し、裏面部側に第2の繊維層を有するようにしてもよい。本発明の他の態様は、上記不織布のいずれかを、着用者の肌に接触するシートである、トップシートもしくは、トップシートと吸収体との間に存在するシートである、セカンドシートとして使用した吸収性物品である。また、本発明のさらに別の態様は、加熱処理によって捲縮を発現する第2の繊維からなる第2のウェブを形成するウェブ形成工程と、第2の繊維が捲縮を発現する温度では、捲縮を発現せず、かつ、繊維交点の融着が生じない第1の繊維からなる第1のウェブを形成し、第2のウェブに前記第1のウェブを積層するウェブ積層工程と、第1のウェブを構成する第1の繊維および第2のウェブを構成する第2の繊維を、流体流でCD方向にかき分け、第1のウェブから第2のウェブの中に達するまでの深さの、所定の方向に並列に延びている複数の谷部を形成する谷部形成工程と、加熱によって、第2のウェブの第2の繊維に捲縮を生じさせる加熱工程と、第1の繊維の繊維交点を融着させる融着工程とを含み、谷部形成工程は、谷部により形成された山部の直下に、第2の繊維の繊維集合度合いを高めた部分を作り出し、加熱工程は、谷部により形成された山部の直下に、第2の繊維の繊維集合度合いを高めた部分に、加熱による潜在捲縮を発現させることで、山部に首部を作り出す不織布の製造方法である。ここで、加熱工程は、ウェブ積層工程で積層された第1のウェブと第2のウェブとの積層体に所定の引っ張り率の引っ張りを加え、第2の繊維が山部の直下に束ねられるように第2の繊維の収縮の作用をCD方向に選択的に及ぼすことが好ましい。また、谷部形成工程は、第1のウェブと第2のウェブとの積層体の走行方向の反対方向に、流体流を発生させる吹き出し部のノズルの吹き出し方向を傾けて、積層体の構成繊維をCD方向に配列させるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、着用者によって不織布に荷重がかけられても、吸収体に吸収された液が表面側に染み出るいわゆるリウェットバックが生じるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1(a)は本発明の一実施形態における不織布の一部分を模式的に示す斜視図であり、図1(b)は図1(a)の不織布のA−A’断面図です。
【図2】図2は、本発明の一実施形態における不織布の製造工程の一例を示す図である。
【図3】図3(a)は、第2のウェブを横方向(CD方向)に切ったときの断面の一部を縦方向(MD方向)から見たときの図であり、図3(b)は、第1のウェブおよび第2のウェブの積層体をCD方向に切ったときの断面の一部をMD方向から見たときの図であり、図3(c)は、谷部が形成された第1のウェブと第2のウェブとの積層体をCD方向に切ったときの断面の一部をMD方向から見たときの図であり、図3(d)は、加熱処理された積層体をCD方向に切ったときの断面の一部をMD方向から見たときの図である。
【図4】図4は、吹き出し部のノズルから、加熱された流体流を積層体に吹き付ける工程を説明するための図である。
【図5】図5は、吹き出し部のノズルを説明するための図である。
【図6】図6は、吹き出し部のノズルの吹き出し方向を説明するための図である。
【図7】図7は、本発明の一実施形態における不織布がリウェットバックを抑制する原理を説明するための図である。
【図8】図8は、不織布Aの構造を説明するための写真である。
【図9】図9は、リウェットバック試験の試料を説明するための写真である。
【図10】図10は、不織布Aの各構成部分の寸法の測定結果を示す図である。
【図11】図11は、不織布Aの谷部荷重試験の結果を示す写真である。
【図12】図12は、水平方向への空気透過容量を測定する際に用いるアクリル板等を示す斜視図である。
【図13】図13は、水平方向への空気透過容量を測定する際に用いるガーレー試験機を示す概略模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図を参照して本発明の一実施形態をより詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態における不織布1の一部分を模式的に示す斜視図である。不織布1は、略等間隔に並列に配置された複数の山部2と、該複数の山部2の基礎となる裏面部3とから構成される。山部2は、不織布1の機械方向すなわち縦方向(MD方向)に延びている。以下、縦方向をMD方向と呼ぶ。また、MD方向と直交する方向を幅方向、すなわち横方向(CD方向)と呼ぶ。なお、山部2の間隔は略等間隔である必要はなく、異なっていてもよい。不織布1の対向する2つの主要面のうち、山部2が形成されている面が不織布1の表面であり、その反対面が不織布1の裏面である。不織布1の表面には、MD方向へ互いに並行して延びていてCD方向で起伏を繰り返すように交互に並ぶように山部2と谷部13aとが形成されている。不織布1の裏面には、一面に広がる裏面部3が形成されている。
【0009】
山部2をCD方向に切断したときの断面形状は略Ω形状である。ここで、略Ω形状とは、略円形状と略矩形形状とを組み合わせた形状である。山部2の先端側の略円形状の部分を以下、山先端部21と呼び、裏面部3側の幅の狭い矩形形状の部分を首部22と呼ぶ。ここで略円形状とは、円形状のみならず楕円形状も含むものとする。また、円形状および楕円形状を偏倚させたものも含むものとする。また、略矩形形状とは、長方形、正方形、またはこれらを偏倚させた形状であり、辺が凸形状、凹形状などの曲線であるものも含む。
【0010】
不織布1の厚み方向の圧力が山部2に印加されていないとき、隣接する2つの山部2の山先端部21同士は、接していてもよいが、接していない方が好ましい。また、不織布1の厚み方向の圧力が山部2に印加されたとき、山先端部21は首部22よりも優先的に変形して扁平になり、隣接する山部2の山先端部21同士は、接するか、もしくは重なり合うことで相互に支え合うことが好ましい。さらに、厚み方向の圧力が山部2に印加されても、首部22はあまり変形しないことが好ましい。これにより、隣接する2つの首部22と裏面部3とで形成される谷部13aの空間を確保することができる。
【0011】
隣接する2つの山部2の頂部2a間の距離は、好ましくは1.00〜8.00mmであり、より好ましくは2.00〜7.00mmである。ここで、頂部2aとは、山部2をCD方向に切断したときの山部2の頂点部分である。隣接する2つの山部2の頂部2a間の距離が1.00mmより小さいと、山部2の断面の略Ω形状の形成が困難になる場合があり、8.00mmよりも大きいと、着用者の荷重によって山部2の山先端部21がCD方向に広がるようにつぶれても、隣り合う山先端部21同士が接しなくなる場合があり、谷部13aの空間を山先端部21と首部22と裏面部3とで塞ぐことができなくなる場合がある。
【0012】
隣接する2つの山部2と裏面部3とで形成される谷部13aにおいて、隣接する2つの山部2の頂部2aを結ぶ線と該谷部13aの底との間の距離、すなわち、該谷部13aの深さは、好ましくは0.40〜9.00mmであり、より好ましくは0.70〜4.50mmである。該谷部13aの深さが0.40mmより小さいと該谷部13aに体液があまり保持されない場合があり、9.00mmよりも大きいと山部2が着用者による荷重によって倒れやすくなる場合があり、この場合、該谷部13aがつぶれてしまう可能性がある。
【0013】
また、山部2のCD方向の断面で、山部2の山先端部21の断面幅は、隣接する2つの山部2の頂部2a間の距離以下であればとくに限定されないが、好ましくは1.00〜5.00mmである。山先端部21の断面幅が、隣接する2つの山部2の頂部2a間の距離よりも大きくなると、山先端部21が隣接する山部2間を覆ってしまい、隣接する2つの山部2と裏面部3とで形成される谷部13aに着用者からの体液が溜まるのを妨げてしまう場合がある。山先端部21の断面幅が1.00mmより小さいと、着用者の荷重によって山先端部21がつぶれても、隣り合う山先端部21同士が接しなくなる場合があり、谷部13aの空間を山先端部21と首部22と裏面部3とで塞ぐことができなくなる場合がある。また、山先端部21の断面幅が5.00mmよりも大きいと山部2の山先端部21が大きくつぶれて、隣接する2つの山部2と裏面部3とで形成される谷部13aを山先端部21で埋めてしまう可能性がある。
【0014】
さらに、山部2のCD方向の断面で、山部2の山先端部21よりも首部22の断面幅が狭くなっていればとくに限定されないが、山部2の首部22の断面幅は、好ましくは0.30〜4.80mmである。首部22の断面幅が、山先端部21の断面幅よりも大きくなると、山部2の略Ω形状が形成されなくなる。首部22の断面幅が0.30mmより小さいと、着用者の荷重によって首部22が倒れて、隣接する2つの山部2と裏面部3とで形成される谷部13aをつぶしてしまう場合がある。
【0015】
また、山部2のCD方向の断面で、山部2の山先端部21の断面幅の、山部2の首部22の断面幅に対する倍率は、1.04〜16.60倍であることが好ましい。この倍率が1.04倍よりも小さいと、山先端部21がつぶれて、隣接する山先端部21同士が相互に支え合ったとしても隣接する2つの山部2と裏面部3とで形成される谷部13aの空間が確保され難くなる場合がある。また。その倍率が16.60倍よりも大きくなると、隣接する2つの山部2と裏面部3とで形成される谷部13aの空間が、つぶれた山部2の山先端部21によって、小さくなりすぎてしまい、着用者の体液をあまり溜められなくなってしまう場合がある。
【0016】
さらに、山部2の頂部と不織布1の裏面(裏面部3における山部2側の反対側の面)との間の距離、すなわち、不織布1の厚みは、好ましくは0.50〜10.00mmであり、より好ましくは0.80〜5.00mmである。不織布1の厚みが0.50mmよりも小さいと、隣接する2つの山部2と裏面部3とで形成される谷部13aの空間が小さくなり、着用者の体液をあまり溜められなくなってしまう場合がある。不織布1の厚みが10.00mmよりも大きいと、不織布1全体が少し堅くなり、不織布1が着用者の肌にフィットしない場合がある。
【0017】
山部2の首部22の繊維の繊維集合度合いは、山先端部21の繊維の繊維集合度合いに比べて高いことが好ましい。これにより、着用者の荷重により、山先端部21が首部22よりも優先的につぶれるようになる。ここで、繊維集合度合いとは、単位体積当たりの繊維の占める割合の代称である。また、首部22の繊維配列は裏面部3の厚み方向であることが好ましい。首部22の繊維の繊維集合度合いが高いこと、および/または、首部22の裏面部3側の繊維配列は裏面部3の厚み方向であることによって、山部2は着用者による荷重によっても倒れにくくなり、また、首部22をつぶれにくくすることができる。
【0018】
山部2において、山先端部21と、首部22の裏面部3側の一部を除いた部分とは第1の繊維層1aから構成され、首部22における裏面部3側の一部と裏面部3とは、第2の繊維層1bから構成される。後述するように、第2の繊維層1bは第1の繊維層1aに比べて繊維集合度合いが高く剛いので、これにより着用者による荷重によっても山部2は倒れにくく、また、隣接する2つの首部22と裏面部3とで形成される谷部13aがつぶれにくくなる。
【0019】
第1の繊維層1aと第2の繊維層1bとの境界1abから山部2と裏面部3との境界4までの距離が、山部2の頂部2aから、山部2と裏面部3との境界4までの距離の、好ましくは25.00%以下、より好ましくは5.00〜20.00%である。25.00%よりも大きいと、不織布1全体が少し堅くなり、着用者の肌に不織布1がフィットしづらくなったり不織布1のクッション性が低下したりする場合がある。
【0020】
なお、第1の繊維層1aによっては、山部2を第1の繊維層1aのみで構成し、裏面部3を第2の繊維層1bのみで構成するようにしてもよい。さらに、第1の繊維層1aによっては、山部2と裏面部3の山部2側の一部とを第1の繊維層1aで構成し、残りの裏面部3を第2の繊維層1bで構成するようにしてもよい。また、山先端部21を第1の繊維層1aのみで構成し、首部22を第2の繊維層1bのみで構成するようにしてもよい。
【0021】
第1の繊維層1aは、繊維同士の交点が熱融着される繊維を含む。このような繊維には、たとえば、熱可塑性ポリマー材料からなる繊維があり、ポリエチレンおよびポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリアミドなどがある。また、このような繊維に、複数の熱可塑性ポリマー材料の組み合わせからなる芯鞘型やサイド・バイ・サイド型の複合繊維を使用してもよい。
【0022】
第1の繊維層1aは、不織布1を作製するときの加熱処理工程で実質的に加熱による潜在捲縮を発現しないか、または、後述の第2の繊維層1bが加熱による潜在捲縮を発現する温度で実質的に加熱による潜在捲縮を発現しないことが好ましい。また、第1の繊維層1aは、熱収縮を起こす場合であっても、後述の第2の繊維層に比べて熱収縮が小さいことが好ましい。
【0023】
第2の繊維層1bは、加熱処理によって構成繊維のコイル状の三次元捲縮を発現させた繊維層である。このような潜在捲縮性を有する繊維を使用することにより、加熱処理によって、第2の繊維層1bとなるウェブを容易に収縮させ、第2の繊維層1bの繊維集合度合いを容易に高めることができる。第2の繊維層1bに好適な、三次元捲縮を生ずる繊維には、たとえば、収縮率の異なる2種類の熱可塑性樹脂を成分とする偏心芯鞘型複合繊維またはサイド・バイ・サイド型複合繊維などがある。
【0024】
第1の繊維層1aおよび第2の繊維層1bの繊維の繊維径(繊度)は、好ましくは0.7〜20.0dtexであり、より好ましくは2.2〜6.6dtexである。繊維径が0.7dtexよりも小さいとカードによるウェブ形成が難しくなり、繊維径が20.0dtexよりも大きくなると単位体積当たりの繊維本数が少なくなるので、この場合もウェブ形成が困難になる場合がある。
【0025】
第1の繊維層1aおよび第2の繊維層1bの繊維の繊維長は、繊維がランダム配列しやすくし、ウェブの収縮を極力CD方向に仕向けるために、好ましくは20〜80mmである。繊維長が20mmよりも短いとカード適正が悪くウェブの形成が難しくなる場合があり、繊維長が80mmよりも長いと、ウェブ状態での繊維同士の絡み力が強いため、後述の谷部を形成する工程(工程C)での繊維再配列効率が低下し、山部2の形成が難しくなる場合がある。
【0026】
第1の繊維層1aおよび第2の繊維層1bの繊維坪量は、好ましくは5〜50g/m2であり、より好ましくは10〜30g/m2である。繊維坪量が5g/m2よりも小さいと、吸収体などに一端吸収された体液が外圧下において逆戻りしやすくなる場合があり、繊維坪量が50g/m2より大きいと、第1の繊維層1aおよび第2の繊維層1bの液透過性が悪くなる場合がある。なお、第1の繊維層1aの繊維坪量と第2の繊維層1bの繊維坪量とを同じにしてもよいし異なるようにしてもよい。
【0027】
次に、本発明の一実施形態における不織布1の好適な製造方法について図2を参照しながら説明する。なお、この製造方法は、本発明の製造方法の一例であり、本発明の製造方法を限定するものではない。
【0028】
図2は、本発明の一実施形態における不織布1の製造工程の一例を示す図である。不織布1の製造工程は、工程A〜Eにより構成される。
【0029】
工程A
工程Aでは、ローラーカード100を使用して第2の繊維層1bを形成するための第2のウェブを作製する。第2の繊維層1bを形成するための短繊維は、開俵、解繊、混繊などの準備工程を経た後、フィーダー101に送られ、フィーダー101からローラーカード100に供給される。フィーダー101では、ローラーカード101に供給される短繊維の重量および/または容量が一定になるように短繊維の供給量が調整される。
【0030】
ローラーカード100に供給された短繊維は、ローラーカード100で開繊されてランダム配列になり、第2のウェブになる。ローラーカード100は、シリンダー102、ウォーカー103、ドッファー104およびコンデンス105を有し、短繊維の開繊は、主にシリンダー102とウォーカー103との間で行われ、開繊されシート化された短繊維、すなわちウェブはドッファー104に搬送される。その後、ウェブは、ドッファー104およびコンデンス105における短繊維の受け渡しでさらにランダム配列にされた後、コンベア106に搬送され、そして、コンベア601上に搬送される。コンベア601上に配置された第2のウェブ12を図3(a)に示す。図3(a)は、このウェブ12をCD方向に切ったときの断面の一部をMD方向から見たときの図である。
【0031】
工程B
工程Bでは、ローラーカード200を使用して第1の繊維層1aを形成するための第1のウェブを作製する。工程Bにおける第1のウェブの作製は、工程Aにおける第2のウェブの作製と同様な方法で行われるので、ウェブ作製の説明は省略する。工程Bで作製された第1のウェブは、コンベア601上にある第2のウェブ12に積層され、第2のウェブ12と一緒に工程Cへ搬送される。第2のウェブ12に第1のウェブ11を積層したものを以下、積層体と呼ぶ。積層体13を図3(b)に示す。図3(b)は、積層体13をCD方向に切ったときの断面の一部をMD方向から見たときの図である。
【0032】
工程C
工程Cでは、積層体13の第1のウェブ11側の表面に、MD方向に延び、CD方向に略等間隔に並列に配置された谷部を形成する。なお、場合によっては、谷部の間隔を略等間隔にしなくてもよい。また、複数の谷部について、深さが一定でもよいし、深さが異なっていてもよい。
【0033】
図2に示すように、第1のウェブ11および第2のウェブ12から成る積層体13は、コンベア601からサンクションドラム301に搬送される。そして、図4に示すように、吹き出し部302のノズルから、加熱された流体流303を吹き付けて積層体13の第1のウェブの繊維11と第2のウェブ12の一部とをかき分け、谷部13aを形成する。流体流303により形成される谷部13aの状態について、図3(c)を参照して説明する。図3(c)は、谷部13aが形成された積層体13をCD方向に切ったときの断面の一部をMD方向から見たときの図である。流体流303によりCD方向にかき分けられた繊維は、谷部13aの底側の側面、つまり、山部13bの直下に集まり、このため、谷部13aの底側の側面付近、すなわち山部13bの直下の繊維集合度合いは高くなる。上述したように、第2のウェブ12の一部もかき分けられているので、かき分けられた第2のウェブ12の構成繊維も谷部13aの底側の側面、つまり、山部13bの直下に集まっている。これにより、後述の加熱処理によって山部13bの根本側の収縮が大きくなる。したがって、山先端と第2の繊維層の厚み方向での中間部分に首部22が形成され易くなる。なお、図2に示すように、吹き出し部302は3つ設けられているが、説明しやすくするために、図4では、1つの吹き出し部302のみを示す。
【0034】
積層体13の谷部13aは、第2のウェブ12の中まで達している。
【0035】
工程Cでは、流体流303の吹きつけによる繊維の移動、および、この繊維の移動による山谷構造形成を主な目的としており、後述の加熱処理時の第2のウェブの収縮力を阻害しないために、流体流303の吹きつけによる繊維の交絡および融着を低く抑えるようにすることが望ましい。
【0036】
吹き出し部302のノズルから吹き出される流体流303の温度は100〜350℃であることが好ましい。流体流の温度が100℃よりも低いと、繊維があまり軟化しないため、繊維の移動が小さくなる場合がある他、賦型形状を熱によって補形することができなくなる場合があり、350℃よりも高いとその熱により繊維の交絡および融着が進んでしまい、後述の加熱処理時の第2のウェブの収縮力を阻害されてしまう場合がある。
【0037】
図5に示すように、吹き出し部302のノズル302aのノズルホールピッチ(符号a参照)は2.0mm以上、10.0mm以下であることが好ましい。ノズルホールピッチが2.0mmよりも小さいと、積層体13に形成される谷部13aのCD方向の単位長さ当たりの数が増加することとなり、結果的に1つ当たりの山部2の首部22に集結させる繊維量が減少するため、後述する加熱処理後の山部2が略Ω形状をなさなくなる場合がある。また、ノズルホールピッチが10.0mmよりも大きいと、山部2のCD方向の幅が広くなりすぎてしまう場合がある。
【0038】
吹き出し部302のノズル302aから吹き出される流体流303の流量は、1つのノズルホール当たり8〜11リットル/分であることが好ましい。流体流303の流量が、1つのノズルホール当たり8リットル/分よりも小さいと、積層体13に十分な深さの谷部13aを形成することができない場合があり、流体流303の流量が、1つのノズルホール当たり11リットル/分よりも大きいと、流体流によってウェブ(積層体13)の地合いを乱してしまう場合がある。
【0039】
吹き出し部302のノズル302aから吹き出される流体流303は、空気や水蒸気のような気体であってもよいし、水などの液体であってもよい。また、気体に固体もしくは液体の微粒子が含まれるエーロゾルでもよい。
【0040】
工程D
工程Dでは、まず、第1のウェブ11の構成繊維が捲縮を発現せず、繊維交点の融着が生じない温度での加熱処理で、第2のウェブ12の構成繊維の潜在捲縮を発現させて第2のウェブ12を熱収縮させ、その後、さらに高い温度の加熱処理で、第1のウェブ11および第2のウェブ12または第1のウェブ11の構成繊維の繊維交点を融着させる。図2に示すように、積層体13の加熱処理は、熱処理機400の中で行う。熱処理機400は4つの熱処理室401〜404を有し、積層体13は、コンベア405によってそれぞれの熱処理室401〜404を移動する。各処理室401〜404では、所定の温度の加熱空気を積層体13に向けて吹きつけている。
【0041】
工程Cで谷部13aが形成された積層体13は、コンベア602によって熱処理機400に搬送される。そして、積層体13は、コンベア405によって熱処理室401,402の中に搬送される。熱処理室401,402では、積層体13を加熱して第2のウェブの構成繊維の潜在捲縮繊維の捲縮を発現させる(熱処理機入口工程)。このときの加熱処理の温度は、第1のウェブ11の熱融着可能成分の融点以下であり、かつ、第2のウェブの構成繊維が潜在捲縮を発現する温度である。たとえば、熱処理室401,402における加熱処理の温度は、90〜130℃である。
【0042】
第2のウェブ12を構成する、加熱によって潜在捲縮を発現する繊維のウェブ収縮率は、下記の方法で測定し、少なくとも40%以上のものを使用するのが好ましい。
ウェブの面積収縮率
(1)測定する繊維100%で200g/mのウェブを作成する。
(2)所定の長さおよび幅にカットし、面積を測定する。このとき測定の誤差を少なくするために250mm×250mm程度にカットすることが望ましい。測定された収縮前の面積をaとする。
(3)145℃に調整されたオーブン内に、カットしたウェブを5分放置する。
(4)熱処理したウェブの収縮後の長さおよび幅を測定し面積を算出する。測定された収縮後の面積をbとする。
(5)熱収縮前後の面積から、次式に基づき、面積収縮率を算出する。
面積収縮率(%)=(a−b)/a×100
【0043】
この加熱処理によって発現する第2のウェブの潜在捲縮により、積層体13はCD方向に収縮する。一方、第1のウェブ11自体は、ほとんどもしくは全く収縮しないが、第2のウェブ12の収縮力によって、第1のウェブ11と第2のウェブ12との境界付近がCD方向に収縮するように変形される。上述したように、かき分けられた第2のウェブ12の構成繊維が谷部13aの底側の側面に集まっているため、谷部13aの底付近の収縮がとくに大きくなり、更に、加熱工程内でシートに所定の引っ張り力が加わることで繊維が山部直下に束ねられ、収縮の作用をCD方向に選択的に及ぼすため、谷部13aにより形成される山部の断面形状が略Ω形状になる。また、第2のウェブ12の繊維集合度合いは、この熱収縮と引っ張り作用により、第1のウェブ11に比べて非常に高くなる。
【0044】
CD方向に収縮した積層体13は、コンベア405によって熱処理室403,404の中に搬送される。熱処理室403,404では、加熱処理を行って、第1のウェブ11の構成繊維の繊維交点を融着させる(熱処理機出口工程)。このときの加熱処理温度は、第1のウェブの構成繊維が融着する温度であればとくに限定されないが、たとえば、130〜150℃である。
【0045】
なお、ウェブの構成繊維の繊維交点を融着させる工程は、加熱処理による融着に限定されず、ウェブの構成繊維の繊維交点を接着させる工程に、ケミカルボンド、ニードルパンチ、ウォータージェットパンチおよびステッチボンドなどの他のウェブのボンディング技術を用いてもよい。
【0046】
工程Dで加熱処理された積層体13を図3(d)に示す。図3(d)は、加熱処理された積層体13をCD方向に切ったときの断面の一部をMD方向から見たときの図である。工程Dにおける積層体13では、谷部13aにより形成される山部の断面が略Ω形状である。また、積層体13に形成された谷部13aは、第2のウェブ12の中にまで達している。第2のウェブ12は繊維集合度合いが高く剛いので、このように谷部13aをウェブ12の中に達するようにすることで、谷部13aにより形成される山部の根本部分が頑強になる。また、第2のウェブ12の収縮力によって、第1のウェブ11と第2のウェブ12との界面近傍にある繊維の繊維配列が変わり、第1のウェブ11と第2のウェブ12との界面近傍にある繊維の多くが積層体13の厚み方向に配向する。
【0047】
加熱処理された積層体13は、図1に示す不織布1に対応し(図1参照)、第1のウェブ11は第1の繊維層1aに対応し、第2のウェブ12は第2の繊維層1bに対応する。谷部13aによって形成された山部は山部2に対応し、第2のウェブ12で谷部13aが達していない部分は裏面部3に対応する。
【0048】
工程E
工程Eでは、作製された不織布1を巻取りドラム500で巻き取る。
【0049】
本発明の一実施形態における不織布1の好適な製造方法について、以下の製造条件をさらに変更することができる。
【0050】
引っ張り比率
引っ張り比率とは、直前の工程の速度を100%とした場合の、後ろ工程の速度であり、たとえば、引っ張り比率が10%であれば、直前の工程の速度に対して、後ろ工程の速度が110%であることを意味する。ここで、さらに、第2のウェブ12の構成繊維が山部13bの直下に束ねられるようにして、第2のウェブ12の潜在捲縮繊維の捲縮発現をCD方向に最大限発揮させるために、以下のようにしてもよい。ローラーカード100のドッファー104およびコンデンス105(図2参照)で第2のウェブ12を詰め込ませ、MD方向に繊維が配列された第2のウェブ12を予めランダム配列にする。そして、第2のウェブ12をあまり引っ張らずに工程Bから工程Dへと進めて行く。このようにすることで、第2のウェブ12の潜在捲縮繊維がランダム配列に保たれた状態で、積層体13は工程Dの加熱処理工程へと移ることができる。
【0051】
第2のウェブ12の構成繊維のランダム配列が保たれるためには、工程B〜Dの各工程および工程B〜D間の搬送における引っ張り比率を−5.0〜+5.0%としたライン条件にしてもよい。引っ張り比率が−5.0%よりも小さいと、積層体13がMD方向に詰め込まれ過ぎて積層体13のシートが垂れてしまい、+5.0%よりも大きいと、工程Dの加熱によって潜在捲縮を発現する第2のウェブの構成繊維がMD方向に配列してしまうため、加熱処理時のCD方向の収縮が小さくなる場合がある。
【0052】
さらに、積層体13が熱処理機400を出て、巻取りドラム500で巻き取られるまでの間、CD方向への収縮を選択的に仕向けるために、602コンベアに対し、巻取りドラム500の引っ張り比率を、たとえば、3.0〜20.0%にしてもよい。引っ張り比率が3.0%よりも小さいと第2のウェブが山部直下に束ねられなくなり、結果的に山部のCD方向の断面が略Ω状にならないという問題が生じ、引っ張り比率が20.0%よりも大きいとシートが切れてしまうという問題が生じる場合がある。
【0053】
吹き出し部のノズルの吹き出し方向
MD方向に配列された積層体13の構成繊維をランダムに配列させ、さらに積層体13の構成繊維をよりCD方向に配列させるために、積層体13の構成繊維がMD方向に配列しようとするのに対抗する方向、すなわち、積層体13がサンクションドラム301によって移動される方向(巻取りドラム500の方向、すなわち積層体13の走行方向)の反対方向に、吹き出し部302のノズル302aの吹き出し方向を少し向けるようにしてもよい。
【0054】
たとえば、吹き出し部のノズルの吹き出し方向を図6に示すような方向にしてもよい。図6で、符号301aはサンクションドラム301の軸中心を示し、符号303は吹き出し部302のノズルから吹き出し方向に伸ばした線304と積層体13の表面との交点を示す。サンクションドラム301の中心301aと交点303とを結んだ線305と、上記線304との間の角度θ(以下、ノズル傾け角度と呼ぶ)が1〜5°になるように吹き出し部302のノズルの吹き出し方向を積層体13の移動方向の反対方向に傾けるようにしてもよい。ノズル傾け角度が1°よりも小さいと、第1のウェブ11の構成繊維をCD方向に配列させる効果が小さくなり、ノズル傾け角度が5°よりも大きいと、第1のウェブの地合いを乱してしまい、不織布として構造体を成すことができなくなる場合がある。
【0055】
加熱処理工程(工程D)における加熱空気の吹きつけ速度
工程Dの加熱処理工程では、第2のウェブ12のランダムに配列させた潜在捲縮繊維の加熱処理による潜在捲縮発現度合いを最大限に発揮させるため、熱処理室401〜404における加熱空気の吹きつけ速度を0.1〜2.0m/秒にしてもよい。加熱空気の吹きつけ速度が0.1m/秒よりも小さいと、第2のウェブに熱エネルギーを伝えることができなくなるため、第2のウェブ12の加熱による繊維の捲縮が発現しにくくなり、また、加熱空気の吹きつけ速度が2.0m/秒よりも大きくなると、第2のウェブ12の潜在捲縮繊維が捲縮を発現する際、風圧の影響を受けて、CD方向への収縮移動が起こりにくくなる場合がある。なお、熱処理室401〜404における加熱空気の吹きつけ速度は、全ての熱処理室401〜404で同じにしてもよいし、熱処理室401〜404によって異なるようにしてもよい。
【0056】
以上のように作製された不織布1は、吸収性物品の透液性シートとして使用するのに好適であるが、とくに、使い捨ておむつや生理用ナプキン、失禁患者用の体液吸収性物品などの吸収性物品のトップシートやセカンドシートとして使用するのに好適である。
【0057】
ここで、トップシートとは、吸収性物品において着用者の肌に接触するシートであり、セカンドシートとは、吸収性物品において、トップシートと吸収体との間に存在するシートである。
【0058】
以上の不織布1によって、吸収体に吸収された液が表面側に染み出るいわゆるリウェットバックが生じるのを抑制することができるのは、以下の原理であると考えられる。しかし、この原理により本発明は限定されないことに留意すべきであり、本発明の一実施形態でリウェットバックを抑制できるのは別の原理である可能性もある。
【0059】
図7(a)に示すように、不織布1に荷重がかけられていないとき、隣接する2つの山部2と裏面部3とによって形成される谷部の空間5は、山先端部21側で解放されている。これにより、着用者からの体液を谷部の空間5で溜めることができる。一方、図7(b)に示すように、不織布1に荷重Pがかけられているとき、山先端部21が横方向に広がってつぶれることで、変形した隣接する山先端部21同士が相互に支え合いながら隣接する2つの首部と裏面部とによって形成される谷部の空間が保持される。これにより、吸収体に吸収された体液が荷重Pにより逆戻りした場合であっても、体液が空間に一時的に受け入れられる。したがって、吸収性物品のトップシートおよびセカンドシートとして不織布1を用いると、逆戻りした体液がトップシートの表面に到達し難くなり、逆戻りした体液が着用者の肌に触れるのを防止することができる。
【実施例】
【0060】
実施例1
以下の実施例で、本発明の一実施形態における不織布の評価結果を示す。なお、下記の実施例は本発明を限定するものではない。
【0061】
不織布の作製
下記の評価を行うために、図2に示す工程にしたがって、本発明の一実施形態に係る不織布Aを作製した。
工程Aでは、ポリプロピレン/ポリオレフィンポリプロピレン共重合体潜在捲縮性サイド・バイ・サイド型複合繊維を構成繊維とする第2のウェブを作製した。この第2のウェブの構成繊維の繊維径は2.2dtexであり、繊維長は51mmであり、厚みは10.0mmであり、坪量は20g/m2であった。この第2のウェブの繊維は、ウェブの面積収縮率が80%になる。
【0062】
次に、工程Bでは、ポリエステル/ポリエチレン芯鞘型複合繊維を構成繊維とする第1のウェブを作製し、第2のウェブに積層した。この第1のウェブの構成繊維の繊維径は3.3dtexであり、繊維長は51mmであり、厚みは10.0mmであり、坪量は20g/m2であった。この第1のウェブは、上述の第2のウェブが潜在捲縮を発現する温度で加熱処理しても、潜在捲縮を発現せず、収縮しない。また、工程BからCの引っ張り比率は1.0%、工程Cから工程Dの引っ張り比率は1.0%に設定した。
【0063】
工程Cでは、上述の第1ウェブおよび第2のウェブの積層体の第1のウェブ側の表面に、MD方向に延び、CD方向に略等間隔に並列に配置された谷部を形成した。この際、MD方向に配列された積層体13の構成繊維をランダムに配列させ、さらに積層体13の構成繊維をよりCD方向に配列させるために、積層体13の構成繊維がMD方向に配列しようとするのに対抗する方向、すなわち、積層体13がサンクションドラム301によって移動される方向(巻取りドラム500の方向)の反対方向に、吹き出し部302のノズル302aの吹き出し方向を3°傾けた。吹き出し部のノズルのノズルホールピッチは3.0mmであった。吹き出し部のノズルから吹き出される空気からなる熱風の温度は140℃であり、吹き出し部のノズルから吹き出される空気から成る熱風の流量は、1つのノズルホール当たり10リットル/分であった。
【0064】
工程Dでは、110℃の温度、0.7m/秒の加熱空気の吹きつけ速度の加熱処理で第2のウェブの構成繊維の潜在捲縮を発現させた後、140℃の温度、1.2m/秒の加熱空気の吹きつけ速度の加熱処理で第1のウェブの構成繊維の繊維交点を融着させた。更に、形成した山部直下に繊維を束ね、収縮の作用をCD方向に選択的に及ぼすために、加熱処理工程内でシートに引っ張り力を加えた。このときの引っ張り力は図2の602コンベアに対し、巻取りドラム500の引っ張りが10.0%となるようにした。そして、工程Eで、作製された不織布Aを巻取りドラム500で巻き取った。
【0065】
不織布の構造
以上のようにして作製した不織布AのCD方向の断面を、キーエンスデジタルマイクロスコープVHX−100を使用して倍率25倍で撮影して、不織布Aの構造を調べた。結果を図8に示す。
【0066】
不織布Aの山部の断面形状が略Ω形状であることを確認できた。また、隣接する2つの山部と裏面部とにより略Ω形状を逆さにした形状(略逆Ω形状)の空間が形成されることが確認できた。さらに山部の根本部分が、山部の中で最も繊維集合度合いが高く、山部の根本部分の繊維の多くが厚み方向に配向していることが確認できた。これは、山部の真下の第2の繊維層のCD方向への収縮により生じたものと考えられる。このような山部の根本部分の繊維配列により、山部は上からの圧縮に対して強固な構造となっている。
【0067】
また、山部は、先端側よりも裏面部側の方が、繊維集合度合いが高くなっている。これにより、山部の根本部分が変形し難い強固な構造になるとともに、山部の先端側から荷重がかかった場合、山先端部が優先的に変形する構造となる。したがって、隣接する2つの山部と裏面部とによって形成された谷部の空間は荷重下においても確保されるようになる。
【0068】
また、山部の山先端部に荷重がかかった場合、山先端部が扁平に変形し、同じく扁平に変形した隣接する2つの山先端部と接し合うか重なり合うことで、互いにもたれる構造となり、平面方向への変形が所定以上進行しなくなる。このため、山部が厚さ方向に所定以上つぶれないものと考えられる。また、山部のCD方向でもっともくびれた部分に挟まれた部分が、略逆Ω形状の空間のCD方向で幅がもっとも広くなっている。
【0069】
リウェットバック試験
本発明の一実施形態における不織布のリウェットバックを抑制する効果を確認するために不織布Aについてリウェットバック試験を行った。また、リウェットバックを抑制する効果について、従来の不織布と比較するため、比較例についてもリウェットバック試験を行った。評価したのは以下の試料である。
【0070】
(1)不織布A
不織布Aは、本発明の一実施形態における不織布である。不織布AのCD方向の断面を図9(a)に示す。
隣接する2つの山部の頂部間の距離は2.11mmであった。隣接する2つの山部と裏面部とにより形成される谷部の深さは1.70mmであった。山部の山先端部21のCD方向の幅の最大幅は1.76mmであった。山部の首部のCD方向の幅の最小幅は0.56mmであった。山部の山先端部のCD方向の幅の最大幅の山部の首部のCD方向の幅の最小幅に対する倍率は3.14倍であった。山部の頂部からの不織布Aの厚みは2.70mmであった。第1の不織布1aと第2の不織布1bとの境界1abから山部2と裏面部3との境界4までの距離が、山部2の頂部2aから、山部2と裏面部3との境界4までの距離の9.62%であった。不織布Aの構造の測定結果をまとめたものを図10に示す。
【0071】
(2)比較例A
比較例Aは、第1の不織布1aのみで山部を形成した不織布であり、従来の山部を形成した不織布である。山部の断面形状は略半円形状である。比較例AのCD方向の断面を図9(b)に示す。
隣接する2つの山部の頂部同士の距離は3.40mmであった。隣接する2つの山部とベースとで形成される谷部の深さは0.80mmであった。山部の頂部からの比較例Aの厚みは1.60mmであった。
【0072】
(3)比較例B
比較例Bは、表面が平らな不織布である。比較例BのCD方向の断面を図9(c)に示す。比較例Bの厚みは1.00mmであった。
【0073】
以下の手順でリウェットバック試験を行った。
(i)試料を350mm×150mmの大きさに切断する。
(ii)吸収体は市販の新生児用オムツ(ユニ・チャーム(株)製、ムーニー生まれたて仕立て)の表面シートを外したものを使用し、その上に切断した試料を固定する。不織布Aおよび比較例Aでは、山部が形成されている面を上にする。
(iii)80ミリリットルの人工尿(イオン交換水10リットルに、尿素200g、塩化ナトリウム80g、硫酸マグネシウム80g、塩化カルシウム8g及び色素:青色1号約1gを溶解させた水溶液)を10秒で滴下する。
(iv)人工尿が透過して試料の表面に人工尿が残らなくなるまで放置する。
ここまでを2回行い、計160ミリリットル滴下した後、
(v)人工尿が透過した試料の上にろ紙(東洋濾紙株式会社製、定性濾紙No.2)を載せ、さらに重りを載せて35g/cmの荷重をかけた。
(vi)荷重をかけてから60秒経過後、ろ紙を取り出し、重さを測定した。
(vii)試料の上に載せる前と載せた後のろ紙の重さを比較することによって、リウェットバックした人工尿の重さを算出した。
【0074】
以上のようにして実施されたリウェットバック試験の結果は以下のようになった。不織布Aのリウェットバックした人工尿の重さは10.78gであった。一方、比較例Aのリウェットバックした人工尿の重さは16.32gであり、比較例Bのリウェットバックした人工尿の重さは31.34gであった。これより、本発明の一実施形態の不織布である不織布Aのリウェットバックを抑制する効果は、従来の不織布(比較例A,B)に比べて非常に高いことを確認できた。
【0075】
谷部荷重試験
着用者によって不織布1に荷重をかけられたとき、山部と裏面部とによって形成される不織布の谷部の空間がつぶれてしまう場合がある。その場合に、着用者の荷重により逆戻りした体液を溜めるための空間がないために、不織布の表面から体液が染み出てしまう場合がある。したがって、着用者によって不織布に荷重をかけられたときであっても、谷部の空間が確保される必要がある。そこで、上記の不織布Aについて、荷重がかけられたときも谷部の空間が確保されるかを調べた。
【0076】
不織布Aの上に下面が平らな重りを載せ、不織布の横方向CDの断面を撮影して、不織布の谷部のつぶれ具合を調べた。そして、単位面積当たりの荷重が、35、70、105および140g/cmになるように重りの重さを変えて、単位面積当たりの荷重による不織布の谷部のつぶれ具合の変化も調べた。不織布Aの結果を図11に示す。
【0077】
図11に示すように、不織布Aは、140g/cmの単位面積当たりの荷重でも(図11(e)参照)、谷部の空間は確保されていた。また、図11(b)〜(e)に示すように、荷重によって山部の山先端部は変形するが、首部はあまり変形しないことがわかった。
【0078】
着用者の非常に大きな荷重が吸収性物品にかかる例として、生理用ナプキンを着用した着用者が自転車に乗車しているときが挙げられる。着用者が自転車に乗車しているとき、自転車のサドルから着用者の肌に印加される圧力は、100g/cmを超える。上述のように、不織布Aは、140g/cmの単位面積当たりの荷重でも、谷部の空間を確保できるので、吸収性物品のトップシートやセカンドシートに不織布Aを使用した場合、着用者が自転車に乗車してもリウェットバックが生じないことが予想される。また、谷部の空間は、不織布AのMD方向でつながっているので、谷部の空間によって通気性を確保することが可能で、着用者が自転車に乗車しているときの着用者の肌と吸収性物品との間の蒸れを防止することができる。以上より、着用者の非常に大きな荷重が吸収性物品にかかる場合(たとえば、自転車の乗車時)であっても、不織布Aの谷部の空間が確保されることを確認できた。
【0079】
実施例2
本発明の一実施形態における不織布は、水平方向(不織布Aの厚み方向に直交する方向)に対する空気の流通性が、所定圧力での加圧下においても維持されるものである。具体的には、本発明の不織布シートは、30g/cm圧力下における水平方向への空気透過容量が200mL/cm秒以上であり、より好ましくは300〜1000mL/cm秒である。
【0080】
30g/cm圧力下における水平方向への空気透過容量を200mL/cm秒以上とすることにより、吸収性物品の着用中における蒸れの発生を効果的に防止でき、蒸れによる不快感や痒み・カブレ等の皮膚トラブルを確実に防止できる。すなわち、吸収性物品の着用中に、表面シートが加圧されて着用者の身体に密着した場合においても、水平方向(不織布の厚み方向に直交する方向)に対する空気の流通性を充分確保することにより、着用中の排泄及び発汗等による着装内の湿度上昇を抑えることができ、ゆえに、常に蒸れ・カブレのない快適な装着感を提供できる。実施例2では、本発明の実施形態における不織布の、水平方向に対する空気の流通性を確認した。
【0081】
本発明の実施形態における不織布の30g/cm圧力下における水平方向への空気透過容量は、以下の方法により測定される。まず、30g/cm圧力下における、不織布の厚みT1を測定する。そして、図12に示すように、不織布サンプル601を一辺50mmの正方形状に裁断する。得られた不織布サンプル601を第1アクリル板602と第2アクリル板603との間に、不織布サンプル601の着用者の肌側に向けられる面を第1アクリル板602側にして挟む。第1アクリル板は正方形状であり、第1アクリル板の寸法は50mm×50mm×3mmであり、中央に一辺10mmの正方形状の開口部621を有する。第2アクリル板603は、開口部を有しない以外は第1アクリル板602と同一構成である。また、空気の流通性を測定するとき、導入した空気が外に漏れるのを防ぐための第1アクリル板602とアダプタープレート706(図13参照)の間に位置する第1アクリル板602の上面に一辺10mmの正方形状の開口部671を中央に有するシリコン板607(硬度50)を積層した。以下、シリコン板607、第1アクリル板602、不織布サンプル601および第2アクリル板603を積層したものを積層体610と呼ぶ。
【0082】
図13に示すように、積層体610を、テスター産業株式会社PA-301 ガーレー式デンソメーターB型700のアダプタープレート706の下に、シリコン板607側を上に向けてセットする。ガーレー式デンソメーターB型700は、容量プレート701、マイクロフォト702、マイクロフォト支柱703、マイクロフォト支柱受704、内筒705、アダプタープレート706、グランピングプレート707、レベル脚708、および水準器709を有する。不織布サンプル601が上記厚みT1となるまでクランピングプレート707を上げてクリアランスを調整する。次いで、厚みをT1に維持した不織布サンプル601の中央部に、上記開口部621を介して空気を導入して300mLの空気を導入するのに要した時間をテスター産業株式会社PA-302 デジタルオートカウンター710を用いて計測する。デジタルオートカウンター710は、カウンター711、リセットスイッチ712、パイロットランプ713、容量切替スイッチ714、および電源スイッチ715を有する。そして、開口部621の単位面積(1cm)×1秒当たりの空気導入量(mL)を算出して、荷重30g/cm圧力下における水平方向への空気透過容量とする。
【0083】
30g/cm圧力下における、不織布の厚みT1は以下のようにして測定することができる。厚みT1を測定するのに使用する厚さ測定器(不図示)は、厚さを0.01mmまで測定できる二つの円形水平盤をスタンドに取り付けた構造の厚さ測定器である。上側円形水平板は、水平面に対して垂直に動かすことができ、直径が44mmであり、下側円形水平板は、直径100mmで表面が平滑なものである。不織布を50mm×50mmの寸法で(この寸法に採取できない場合は、45mm×45mm以上であればよい)無作為に10枚採取する。30g/cm2の圧力がかかるように、厚さ測定器の上側円形水平板の荷重を調整し、ゼロ点をセットする。厚さ測定器を用いて、不織布に30g/cm2の圧力を10秒間かけて、厚さを0.01mmまで測定する。残りの不織布についても同様に測定し、その平均値を求めて、30g/cm圧力下におけるシートの厚みT1とする。
【0084】
本発明の実施形態の不織布ある上述の不織布Aの30g/cm2圧力下における水平方向への空気透過容量は、391mL/cm2秒であり、空気透過容量が高かった。比較のために、上述の比較例Aおよび比較例Bについても空気透過容量を測定した。比較例Aの30g/cm2圧力下における水平方向への空気透過容量は、86mL/cm2秒であり、不織布Bの30g/cm2圧力下における水平方向への空気透過容量は、8mL/cm2秒であった。これより、不織布Aの水平方向への空気透過容量は、比較例A,Bに比べて非常に高いことがわかった。これは、着用者の圧力が本発明の実施形態における不織布Aに加わり密着したときでも、水平方向への空気透過容量が高く、蒸れ・カブレ等の肌トラブルを防止することができることを示している。
【0085】
以上の一実施形態による不織布1は次のような作用効果を奏する。
(1)互いに直交するMD方向とCD方向と厚さ方向とを有していて厚さ方向には表面とその反対面である裏面とを有し、表面にはMD方向へ互いに並行して延びていてCD方向で起伏を繰り返すように交互に並ぶ山部2と谷部13aとが形成され、裏面には一面に広がる裏面部3が形成されている不織布であって、山部3は山部2の頂部2aに位置する山先端部21と、山先端部21と裏面部3とを連結する首部22とからなり、山部2のCD方向における断面で、山先端部21よりも首部22の断面幅が狭くなっており、隣接する山先端部21同士をそれぞれ支えている2つの首部22と裏面部3とによって形成された谷部13aの空間を有するようにした。これにより、着用者によって不織布1に荷重がかけられても、吸収体に吸収された液が表面側に染み出るいわゆるリウェットバックが生じるのを抑制することができる。
【0086】
(2)山部2のCD方向の断面で、山先端部21よりも首部22の断面幅が狭い略Ω形状であり、山先端部21が、略Ω形状のうちの略円形状の部分であるようにした。これにより、山先端部21は、厚み方向の応力によってCD方向に広がってつぶれやすくなる。
【0087】
(3)山先端部21が厚み方向に加えられた任意の加重によってCD方向に広がってつぶれることにより、隣接する山先端部21同士が相互に密着し、谷部13aの空間を山先端部21と首部22と裏面部3とで塞ぐことが可能であるようにした。これにより、リウェットバックが生じるのをさらに抑制することができる。
【0088】
(4)首部22の裏面部側に存在する繊維の多くが厚み方向に配向しているようにした。これにより、首部22は、不織布の厚み方向の応力に対してつぶれにくくなる。
【0089】
(5)首部22の繊維集合度合いは、山先端部21の繊維集合度合いよりも高くなるようにした。これにより、山先端部21が首部22よりも先につぶれるようにすることができ、隣接する2つの首部22と裏面部3とよって形成される谷部の空間がつぶれた山先端部21によって荷重下でもつぶれるのを抑制する構造を、実現することができる。
【0090】
(6)山先端部21は、第1の繊維からなる第1の繊維層1aを有し、裏面部3は、第1の繊維が捲縮を発現せず、かつ、第1の繊維の繊維交点の融着が生じない温度での加熱処理によって、捲縮を発現させた第2の繊維からなる第2の繊維層1bを有し、首部22は、裏面部3側の一部を除いて第1の繊維層1aを有し、裏面部3側に第2の繊維層1bを有するようにした。これにより、略Ω形状の断面形状を有する山部2を不織布1に容易に形成することができる。
【0091】
(7)不織布の製造方法で、加熱処理によって捲縮を発現する第2の繊維からなる第2のウェブ12を形成するウェブ形成工程と、第2の繊維が捲縮を発現する温度では、捲縮を発現せず、かつ、繊維交点の融着が生じない第1の繊維からなる第1のウェブ11を形成し、第2のウェブ12に第1のウェブ11を積層するウェブ積層工程と、第1のウェブ11を構成する繊維および前記第2のウェブ12を構成する繊維を、流体流でCD方向にかき分け、第1のウェブ11から第2のウェブ12の中に達するまでの深さの、所定の方向に並列に延びている複数の谷部13aを形成する谷部形成工程と、加熱によって、第2のウェブ12の第2の繊維に捲縮を生じさせる加熱工程と、第1の繊維の繊維交点を融着させる融着工程とを含み、谷部形成工程は、谷部13aにより形成された山部13bの直下に、第2の繊維の繊維集合度合いを高めた部分を作り出し、加熱工程は、谷部13aにより形成された山部13bの直下に、第2の繊維の繊維集合度合いを高めた部分の潜在捲縮を発現させることで、山部13bに首部を作り出すようにした。これにより、略Ω形状の断面形状を有する山部2を不織布1に容易に形成することができる。
【0092】
(8)加熱工程は、ウェブ積層工程で積層された第1のウェブ11と第2のウェブ12との積層体13に所定の引っ張り率の引っ張りを加え、第2の繊維が山部13bの直下に束ねられるように第2の繊維の収縮の作用をCD方向に選択的に及ぼすようにした。これにより、第2のウェブ12のCD方向の収縮が大きくなり、略Ω形状の断面形状を有する山部2を不織布1に確実に形成することができる。
【0093】
(9)谷部形成工程は、第1のウェブ11と第2のウェブ12との積層体13の走行方向の反対方向に、流体流303を発生させる吹き出し部302のノズルの吹き出し方向を傾けて、積層体13の構成繊維をCD方向に配列させるようにした。これにより、第2のウェブ12のCD方向の収縮が大きくなり、略Ω形状の断面形状を有する山部2を不織布1に確実に形成することができる。
【0094】
(10)山先端部21に厚さ方向から応力をかけても、隣接するCD方向に変形した山先端部21同士が接しているだけではなく、相互に力をCD方向におよぼし合っているので、山先端部21は、完全に厚さ方向につぶれない。このため、山先端部21は、首部22の堅い感触を着用者に感じさせないための緩衝材として作用することができる。
【0095】
以上の一実施形態による不織布1を次のようにさらに変形することができる。
(1)山部2の山先端部21が横方向に広がってつぶれ、変形した隣接する山先端部21同士が相互に支え合いながら隣接する2つの首部と裏面部とによって形成される谷部の空間が保持されるものであれば、山部2の断面形状は略Ω形状に限定されない。たとえば、山先端部21が横方向につぶれて非常に広がるように構成されている場合、山部2の断面形状を矩形形状にしてもよい。また、山先端部21の形状を傘のような形状にして、山部2の断面形状をキノコ形状としてもよい。
【0096】
(2)着用者によって不織布1に荷重がかけられたとき、吸収体に吸収された液が表面側に染み出るいわゆるリウェットバックが生じるのを抑制することができれば、一部の山部2の山先端部21が横方向に広がってつぶれるようにしてもよいし、全部が広がってつぶれるようにしてもよい。
【0097】
実施形態と変形例の一つ、もしくは複数を組み合わせることも可能である。変形例同士をどのように組み合わせることも可能である。
【0098】
以上の説明はあくまで一例であり、発明は、上記の実施形態に何ら限定されるものではない。
【符号の説明】
【0099】
1 不織布
1a 第1の繊維層
1b 第2の繊維層
1ab 第1の繊維層と第2の繊維層との境界
2 山部
3 裏面部
4 山部と裏面部との境界
11 第1のウェブ
12 第2のウェブ
13 積層体
13a 谷部
13b 山部
21 山先端部
22 首部
100,200 ローラーカード
101,201 フィーダー
102,202 シリンダー
103,203 ウォーカー
104,204 ドッファー
105,205 コンデンス
106,206,405,601,602 コンベア
301 サンクションドラム
302 吹き出し部
302a ノズル
303 流体流
400 熱処理機
401〜404 熱処理室
500 巻取りドラム
601 不織布サンプル
602 第1アクリル板
603 第2アクリル板
607 シリコン板
610 積層体
700 ガレー式デンソメーター
706 アダプタープレート
707 クランピングプレート
710 デジタルオートカウンター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交する縦方向と横方向と厚さ方向とを有していて前記厚さ方向には表面とその反対面である裏面とを有し、前記表面には前記縦方向へ互いに並行して延びていて前記横方向で起伏を繰り返すように交互に並ぶ山部と谷部とが形成され、前記裏面には一面に広がる裏面部が形成されている不織布であって、
前記山部は前記山部の頂部に位置する山先端部と、前記山先端部と前記裏面部とを連結する首部とからなり、
前記山部の前記横方向における断面で、山先端部よりも前記首部の断面幅が狭くなっており、隣接する前記山先端部同士をそれぞれ支えている2つの首部と前記裏面部とによって形成された谷部の空間を有することを特徴とする不織布。
【請求項2】
前記山部の前記横方向の断面で、前記山先端部よりも前記首部の断面幅が狭い略Ω形状であり、
前記山先端部が、前記略Ω形状のうちの略円形状の部分である請求項1に記載の不織布。
【請求項3】
前記山先端部が前記厚み方向に加えられた任意の加重によって前記横方向に広がってつぶれることにより、隣接する前記山先端部同士が相互に密着し、前記谷部の空間を前記山先端部と首部と裏面部とで塞ぐことが可能な請求項1または2に記載の不織布。
【請求項4】
前記首部の前記裏面部側に存在する繊維の多くが前記厚み方向に配向している請求項1乃至3のいずれかに記載の不織布。
【請求項5】
前記首部の繊維集合度合いは、前記山先端部の繊維集合度合いよりも高い請求項1乃至4のいずれか1項に記載の不織布。
【請求項6】
前記山先端部は、第1の繊維からなる第1の繊維層を有し、
前記裏面部は、前記第1の繊維が捲縮を発現せず、かつ、前記第1の繊維の繊維交点の融着が生じない温度での加熱処理によって、捲縮を発現させた第2の繊維からなる第2の繊維層を有し、
前記首部は、前記裏面部側の一部を除いて前記第1の繊維層を有し、前記裏面部側に前記第2の繊維層を有する請求項1乃至5のいずれか1項に記載の不織布。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の不織布を、着用者の肌に接触するシートである、トップシートもしくは、トップシートと吸収体との間に存在するシートである、セカンドシートとして使用した吸収性物品。
【請求項8】
加熱処理によって捲縮を発現する第2の繊維からなる第2のウェブを形成するウェブ形成工程と、
前記第2の繊維が捲縮を発現する温度では、捲縮を発現せず、かつ、繊維交点の融着が生じない第1の繊維からなる第1のウェブを形成し、前記第2のウェブに前記第1のウェブを積層するウェブ積層工程と、
前記第1のウェブを構成する第1の繊維および前記第2のウェブを構成する第2の繊維を、流体流でCD方向にかき分け、前記第1のウェブから第2のウェブの中に達するまでの深さの、所定の方向に並列に延びている複数の谷部を形成する谷部形成工程と、
加熱によって、前記第2のウェブの第2の繊維に捲縮を生じさせる加熱工程と、
前記第1の繊維の繊維交点を融着させる融着工程とを含み、
前記谷部形成工程は、前記谷部により形成された山部の直下に、前記第2の繊維の繊維集合度合いを高めた部分を作り出し、
前記加熱工程は、前記谷部により形成された山部の直下に、前記第2の繊維の繊維集合度合いを高めた部分に、加熱による潜在捲縮を発現させることで、前記山部に首部を作り出す不織布の製造方法。
【請求項9】
前記加熱工程は、前記ウェブ積層工程で積層された前記第1のウェブと前記第2のウェブとの積層体に所定の引っ張り率の引っ張りを加え、前記第2の繊維が前記山部の直下に束ねられるように前記第2の繊維の収縮の作用をCD方向に選択的に及ぼすようにした請求項8に記載の不織布の製造方法。
【請求項10】
前記谷部形成工程は、前記第1のウェブと前記第2のウェブとの積層体の走行方向の反対方向に、前記流体流を発生させる吹き出し部のノズルの吹き出し方向を傾けて、該積層体の構成繊維をCD方向に配列させる請求項8または9に記載の不織布の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−52256(P2012−52256A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194621(P2010−194621)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】