説明

不織布および不織布の製造方法

【課題】イオン交換速度の高い不織布および不織布の製造方法を提供すること。
【解決手段】プロトン伝導性ポリマーから成り、構成する繊維の平均繊維径が3μm以下であり、実質的に10μm以上の繊維径をもつ繊維が存在しない、実質的に60μm以下の繊維長を有する繊維が存在しない不織布。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は不織布および不織布の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン交換樹脂は、水処理から有価物の回収、精製など広く利用されている。イオン交換樹脂の形状としては、粒子状のものが一般に利用されており、粒径を小さくすることによってイオン交換速度を高めることが出来ることが知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
イオン交換樹脂を利用する際のイオン交換樹脂の固定化方法として、繊維状に成型する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかし、これら通常の方法で作製される繊維状イオン交換樹脂は繊維径が大きいため、十分なイオン交換速度を出すために、より繊維径の小さい繊維状イオン交換樹脂が望まれていた。
【0004】
一方、繊維径の小さい繊維構造体を製造する方法として、静電紡糸法は公知である(例えば、特許文献2および3参照)。静電紡糸法は、液体、例えば繊維形成物質を含有する溶液等を電場内に導入し、これにより液体を電極に向かって曳かせ、繊維状物質を形成させる工程を包含する。普通、繊維形成物質は溶液から曳き出される間に硬化させる。硬化は、例えば冷却(例えば、紡糸液体が室温で固体である場合)、化学的硬化(例えば、硬化用蒸気による処理)、または溶媒の蒸発などにより行われる。また、得られる繊維状物質は、適宜に配置した受容体上に捕集され、必要ならばそこから剥離することも出来る。
【0005】
【非特許文献1】「プラスチック・機能性高分子材料事典」産業調査会事典出版センター、2004年2月20日、701頁
【特許文献1】特開2001−181965号公報
【特許文献2】特開昭63−145465号公報
【特許文献3】特開2002−249966号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記従来技術が有していた問題を解決し、イオン交換速度の高い不織布および不織布の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記従来技術に鑑み鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明の目的は、
プロトン伝導性ポリマーから成り、構成する繊維の平均繊維径が3μm以下であり、実質的に10μm以上の繊維径をもつ繊維が存在しない、実質的に60μm以下の繊維長を有する繊維が存在しない不織布によって達成される。
【0008】
更に、本発明の他の目的は、
プロトン伝導性ポリマーを含む溶液に繊維形成性の有機高分子を添加する段階と、前記繊維形成性の有機高分子を添加した溶液を静電紡糸法にて紡糸する段階と、前記紡糸によって捕集基板に累積される繊維構造体を得る段階と、前記繊維構造体に含まれる繊維形成性の有機高分子を除去する段階を含む、不織布の製造方法によって達成することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明により得られる不織布は、構成する繊維の繊維径が小さく、イオン交換速度に優れることから、イオン交換樹脂成形として有効である。また、得られる不織布はそのまま使用することも出来るし、また取り扱い性やその他の要求事項に合わせて他の部材と組み合わせて用いることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の不織布は、プロトン伝導性ポリマーから成り、構成する繊維の平均繊維径が3μm以下であり、実質的に10μm以上の繊維径をもつ繊維が存在しない、実質的に60μm以下の繊維長を有する繊維が存在しないことが必要である。
【0011】
ここで、プロトン伝導性ポリマーとして、イオノマーが好ましく用いられるが、ここで、イオノマーとは無機塩の基が結合した分子鎖をもつポリマーの総称である。イオノマーの典型的な構造としては下式で表される構造が挙げられ、
【化1】

(m、nは1以上の整数)
【化2】

(m、nは1以上の整数)
【0012】
更に好ましくは、化学的安定性の高いフッ素含有樹脂が好ましく、更に好ましくは、下式で表される「ナフィオン」が好ましい。
【化3】

(m、nは1以上の整数)
【0013】
次に、構成する繊維の平均繊維径が3μm以下であることについて説明する。
本発明の不織布を形成する繊維の平均径が3μmを越えると、繊維の比表面積が小さくなり、イオン交換効率が低くなる。また、繊維の平均径は0.1μm以上あれば、得られる不織布の強度は十分なものとなる。不織布を構成する繊維の平均径は好ましくは、0.1〜1μmの範囲にあることである。
【0014】
次に、実質的に10μm以上の繊維径をもつ繊維が存在しないことについて説明する。
実質的に存在しないとは、電子顕微鏡観察において、任意の点で上記範囲の繊維径をもつ繊維が観察されないことを指す。また、本発明の不織布を形成する繊維に繊維径が10μmを越える繊維が含まれると、繊維の比表面積が小さくなり、イオン交換効率が低くなるため好ましくないだけではなく、不織布の柔軟性が損なわれることからも好ましくない。また、本不織布の性能を発揮するためには、5μm以上の繊維径をもつ繊維が存在しないことがより好ましい。
【0015】
次に、実質的に60μm以下の繊維長を有する繊維が存在しないことについて説明する。ここで、実質的に存在しないとは、任意の点を中心とした2000倍の電子顕微鏡観察において、繊維の両端が観察されないことを指す。また、本発明の不織布を形成する繊維に繊維長が60μm以下の繊維が含まれると、繊維同士の交絡が弱くなり、不織布の強度が低下するため好ましくない。
【0016】
本発明の不織布を製造するには、前述の要件を同時に満足するような不織布が得られる手法であればいずれも採用することができるが、プロトン伝導性ポリマーを含む溶液に繊維形成性の有機高分子を添加する段階と、前記繊維形成性の有機高分子を添加した溶液を静電紡糸法にて紡糸する段階と、前記紡糸によって捕集基板に累積される繊維構造体を得る段階と、前記繊維構造体に含まれる繊維形成性の有機高分子を除去することが製造方法の好ましい一態様として挙げることができる。
【0017】
まず、静電紡糸法について説明する。
静電紡糸法とは繊維形成性の基質を溶解させた溶液を電極間で形成された静電場中に吐出し、溶液を電極に向けて曳糸し、形成される繊維状物質を捕集基板上に累積することによって繊維構造体を得る方法であって、繊維状物質とは、繊維形成性の基質を溶解させた溶媒が留去して繊維積層体となっている状態のみならず、前記溶媒が繊維状物質に含まれている状態も示している。
【0018】
次いで、静電紡糸法で用いる装置について説明する。
前述の電極は、金属、無機物、または有機物のいかなるものでも導電性を示しさえすれば用いることができ、また、絶縁物上に導電性を示す金属、無機物、または有機物の薄膜を持つものであっても良い。
【0019】
また、静電場は一対又は複数の電極間で形成されており、いずれの電極に高電圧を印加しても良い。これは、例えば電圧値が異なる高電圧の電極が2つ(例えば15kVと10kV)と、アースにつながった電極の合計3つの電極を用いる場合も含み、または3つを越える数の電極を使う場合も含むものとする。
【0020】
次に静電紡糸法による本発明の不織布を構成する繊維構造体の製造手法について順を追って説明する。
まず、プロトン伝導性ポリマーを含む溶液に繊維形成性の有機高分子を添加するが、本発明の製造方法における溶液中の溶媒に対するプロトン伝導性ポリマーの濃度は0.5〜30重量%であることが好ましい。プロトン伝導性ポリマーの基質の濃度が0.5重量%より小さいと、濃度が低すぎるため繊維を形成することが困難となり好ましくない。また、30重量%より大きいと得られる繊維の繊維径が大きくなり好ましくない。より好ましい溶液中の溶媒に対するプロトン伝導性ポリマーの濃度は2〜20重量%であり、より好ましくは3〜10重量%である。
【0021】
また、溶媒は一種を単独で用いても良く、複数の溶媒を組み合わせても良い。前記溶媒としては、プロトン伝導性ポリマーと繊維形成性の有機高分子を溶解可能で、かつ静電紡糸法にて紡糸する段階で蒸発し、繊維を形成可能なものであれば特に限定されず、例えば、アセトン、クロロホルム、エタノール、イソプロパノール、メタノール、トルエン、テトラヒドロフラン、水、ベンゼン、ベンジルアルコール、1,4−ジオキサン、プロパノール、塩化メチレン、四塩化炭素、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、フェノール、ピリジン、トリクロロエタン、酢酸、蟻酸、ヘキサフルオロイソプロパノール、ヘキサフルオロアセトン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、N−メチルモルホリン−N−オキシド、1,3−ジオキソラン、メチルエチルケトン、上記溶媒の混合溶媒等が挙げられる。
【0022】
これらのうち、取り扱い性や物性などから、脂肪族アルコール、水、塩化メチレン、クロロホルムとそれらの混合溶媒を用いることが好ましく、より好ましくは、脂肪族アルコールと水との混合溶媒を用いることが好ましい。
【0023】
また、繊維形成性の有機高分子としては、プロトン伝導性ポリマーを含む溶液に添加可能で、静電紡糸に必要な粘度を与える有機高分子であれば限定されないが、繊維形成性の有機高分子の分子量は1,000,000以上であることが好ましい。分子量が1,000,000以下であると、静電紡糸に必要な粘度を与えるために、添加する添加する量が増えることにより繊維径が太くなることや、プロトン伝導性ポリマーに対する繊維形成性の有機高分子の割合が高くなるために、不織布のイオン伝導性が低下するため好ましくない。より好ましくは、分子量が2,000,000以上であることが好ましい。
【0024】
また、プロトン伝導性ポリマーに対する繊維形成性の有機高分子の割合が少ないほど好ましいことから、繊維形成性の有機高分子の濃度としては、1重量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5重量%以下である。
【0025】
また、繊維形成性の有機高分子としては、プロトン伝導性ポリマーを含む溶液に添加可能で、静電紡糸に必要な粘度を与える有機高分子であれば限定されないが、繊維形成性の有機高分子は脂肪族アルコールと水との混合溶媒に溶解することが好ましく、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリビニルエステル、ポリビニルエーテル、ポリビニルピリジン、ポリアクリルアミド、エーテルセルロース、ペクチンなどが挙げられる。
これらのうち、取り扱いなどの点よりポリエチレンオキシドがより好ましい。
【0026】
次いで、捕集基板に累積される繊維構造体を得る段階について説明する。
本発明の製造方法では、静電紡糸法によって紡糸を行うため、繊維構造体は捕集基板である電極上に積層される。捕集基板に平面を用いれば平面状の不織布が得られるが、捕集基板の形状を変えることによって、所望の形状の構造体を作製することも出来る。
また、繊維構造体が基板上の一箇所に集中して積層されるなど、均一性が低い場合には、基板を揺動させたり、回転させたりすることも可能である。
【0027】
次に、前記繊維構造体に含まれる繊維形成性の有機高分子を除去する段階について説明する。前記繊維構造体に含まれる繊維形成性の有機高分子を除去する方法であれば、いずれも適用できるが、好ましい方法として、繊維形成性の有機高分子を溶解するが前記プロトン伝導性ポリマーを溶解しない溶媒に前記繊維構造体を浸漬させる方法が挙げられる。前記溶媒として、水が好ましく、必要に応じて無機塩を添加したり、pHを調整したりすることが出来る。
【0028】
また、前記繊維形成性の有機高分子を含有する繊維構造体または前記繊維形成性の有機高分子を除去した繊維構造体について、熱処理などを行うことも可能である。熱処理によって、プロトン伝導性ポリマーの結晶化度を高めたり、プロトン伝導性ポリマーを熱変性させたりすることが出来る。
【0029】
また、本発明により得られる不織布の用途は、イオン交換樹脂用の部材に限定されるものではなく、各種フィルター、触媒担持基材、電池セパレーター部材など各種用途に用いることが出来る。
【実施例】
【0030】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例により何等限定を受けるものではない。また以下の各実施例、比較例における評価項目は以下のとおりの手法にて実施した。
また実施例中における各値は下記の方法で求めた。
平均繊維径:
得られた繊維構造体の表面を走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製S−2400)により撮影(倍率2000倍)して得た写真から無作為に20箇所を選んで繊維の径を測定し、すべての繊維径(n=20)の平均値を求めて、平均繊維径とした。
【0031】
[実施例1]
「ナフィオン」溶液(「Nafion」 perfluorinated ion−exchange resin,5wt% solution in a mixture of lower aliphatic alcohols and water,d0.874、シグマアルドリッチ)100重量部とポリエチレンオキシド(和光純薬工業、平均分子量4,000,000)0.01重量部を室温(25℃)で混合し溶液を作製した。図1に示す装置を用いて紡糸を行い繊維構造体を得た。噴出ノズル1の内径は0.6mm、電圧は15kV、噴出ノズル1から電極4までの距離は15cmであった。得られた繊維構造体を構成する繊維の平均径は1.2μmであった。繊維構造体の電子顕微鏡写真を図2に示す。
【0032】
[実施例2]
「ナフィオン」溶液(「Nafion」 perfluorinated ion−exchange resin,5wt% solution in a mixture of lower aliphatic alcohols and water,d0.874、シグマアルドリッチ)100重量部とポリエチレンオキシド(和光純薬工業、平均分子量4,000,000)0.05重量部を室温(25℃)で混合し溶液を作製した。図1に示す装置を用いて紡糸を行い繊維構造体を得た。噴出ノズル1の内径は0.6mm、電圧は15kV、噴出ノズル1から電極4までの距離は15cmであった。得られた繊維構造体を構成する繊維の平均径は0.9μmであった。繊維構造体の電子顕微鏡写真を図3に示す。
【0033】
[実施例3]
「ナフィオン」溶液(「Nafion」 perfluorinated ion−exchange resin,5wt% solution in a mixture of lower aliphatic alcohols and water,d0.874、シグマアルドリッチ)100重量部とポリエチレンオキシド(和光純薬工業、平均分子量4,000,000)0.1重量部を室温(25℃)で混合し溶液を作製した。図1に示す装置を用いて紡糸を行い繊維構造体を得た。噴出ノズル1の内径は0.6mm、電圧は15kV、噴出ノズル1から電極4までの距離は15cmであった。得られた繊維構造体を構成する繊維の平均径は1.1μmであった。繊維構造体の電子顕微鏡写真を図4に示す。
【0034】
[実施例4]
「ナフィオン」溶液(「Nafion」 perfluorinated ion−exchange resin,5wt% solution in a mixture of lower aliphatic alcohols and water,d0.874、シグマアルドリッチ)100重量部とポリエチレンオキシド(和光純薬工業、平均分子量4,000,000)0.2重量部を室温(25℃)で混合し溶液を作製した。図1に示す装置を用いて紡糸を行い繊維構造体を得た。噴出ノズル1の内径は0.6mm、電圧は15kV、噴出ノズル1から電極4までの距離は15cmであった。得られた繊維構造体を構成する繊維の平均径は2.0μmであった。繊維構造体の電子顕微鏡写真を図5に示す。
【0035】
[実施例5]
「ナフィオン」溶液(「Nafion」 perfluorinated ion−exchange resin,5wt% solution in a mixture of lower aliphatic alcohols and water,d0.874、シグマアルドリッチ)100重量部とポリエチレンオキシド(シグマアルドリッチ、平均分子量8,000,000)0.15重量部を室温(25℃)で混合し溶液を作製した。図1に示す装置を用いて紡糸を行い繊維構造体を得た。噴出ノズル1の内径は0.6mm、電圧は15kV、噴出ノズル1から電極4までの距離は15cmであった。得られた繊維構造体を構成する繊維の平均径は3.8μmであった。繊維構造体の電子顕微鏡写真を図6に示す。
【0036】
[実施例6]
「ナフィオン」溶液(「Nafion」 perfluorinated ion−exchange resin,20wt% solution in a mixture of lower aliphatic alcohols and water,d0.976、シグマアルドリッチ)100重量部とポリエチレンオキシド(和光純薬工業、平均分子量4,000,000)0.01重量部を室温(25℃)で混合し溶液を作製した。図1に示す装置を用いて紡糸を行い繊維構造体を得た。噴出ノズル1の内径は0.6mm、電圧は15kV、噴出ノズル1から電極4までの距離は15cmであった。得られた繊維構造体を構成する繊維の平均径は1.6μmであった。繊維構造体の電子顕微鏡写真を図7に示す。
【0037】
[比較例1]
「ナフィオン」溶液(「Nafion」 perfluorinated ion−exchange resin,5wt% solution in a mixture of lower aliphatic alcohols and water,d0.874、シグマアルドリッチ)100重量とポリエチレンオキシド(和光純薬工業、平均分子量4,000,000)0.005重量部を室温(25℃)で混合し溶液を作製した。図1に示す装置を用いて紡糸を行った。噴出ノズル1の内径は0.6mm、電圧は15kV、噴出ノズル1から電極4までの距離は15cmであった。得られた構造物を電子顕微鏡で観察したところ、繊維構造体は確認されなかった。電子顕微鏡写真を図8に示す。
【0038】
[比較例2]
「ナフィオン」溶液(「Nafion」 perfluorinated ion−exchange resin,5wt% solution in a mixture of lower aliphatic alcohols and water,d0.874、シグマアルドリッチ)100重量部とポリエチレンオキシド(和光純薬工業、平均分子量4,000,000)0.25重量部を室温(25℃)で混合したところ、ポリエチレンオキシドが完全に溶解せず、均一な溶液が作製できなかった。
【0039】
[比較例3]
「ナフィオン」溶液(「Nafion」 perfluorinated ion−exchange resin,5wt% solution in a mixture of lower aliphatic alcohols and water,d0.874、シグマアルドリッチ)100重量とポリエチレンオキシド(シグマアルドリッチ、平均分子量8,000,000)0.015重量部を室温(25℃)で混合し溶液を作製した。図1に示す装置を用いて紡糸を行った。噴出ノズル1の内径は0.6mm、電圧は15kV、噴出ノズル1から電極4までの距離は15cmであった。得られた構造物を電子顕微鏡で観察したところ、繊維構造体は確認されなかった。電子顕微鏡写真を図9に示す。
【0040】
[比較例4]
「ナフィオン」溶液(「Nafion」 perfluorinated ion−exchange resin,5wt% solution in a mixture of lower aliphatic alcohols and water,d0.874、シグマアルドリッチ)100重量とポリエチレンオキシド(和光純薬工業、平均分子量200,000)0.1重量部を室温(25℃)で混合し溶液を作製した。図1に示す装置を用いて紡糸を行った。噴出ノズル1の内径は0.6mm、電圧は15kV、噴出ノズル1から電極4までの距離は15cmであった。得られた構造物を電子顕微鏡で観察したところ、繊維構造体は確認されなかった。電子顕微鏡写真を図10に示す。
【0041】
[比較例5]
「ナフィオン」溶液(「Nafion」 perfluorinated ion−exchange resin,5wt% solution in a mixture of lower aliphatic alcohols and water,d0.874、シグマアルドリッチ)を溶液とし、図1に示す装置を用いて紡糸を行った。噴出ノズル1の内径は0.6mm、電圧は15kV、噴出ノズル1から電極4までの距離は15cmであった。得られた構造物を電子顕微鏡で観察したところ、繊維構造体は確認されなかった。電子顕微鏡写真を図11に示す。
【0042】
[比較例6]
「ナフィオン」溶液(「Nafion」 perfluorinated ion−exchange resin,20wt% solution in a mixture of lower aliphatic alcohols and water,d0.976、シグマアルドリッチ)を溶液とし、図1に示す装置を用いて紡糸を行った。噴出ノズル1の内径は0.6mm、電圧は15kV、噴出ノズル1から電極4までの距離は15cmであった。得られた構造物を電子顕微鏡で観察したところ、繊維構造体は確認されなかった。電子顕微鏡写真を図12に示す。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の製造方法を行うための製造装置を模式的に示した図である。
【図2】実施例1の操作で得られた繊維の表面を走査型電子顕微鏡で撮影(2000倍)して得られた写真図である。
【図3】実施例2の操作で得られた繊維の表面を走査型電子顕微鏡で撮影(2000倍)して得られた写真図である。
【図4】実施例3の操作で得られた繊維の表面を走査型電子顕微鏡で撮影(2000倍)して得られた写真図である。
【図5】実施例4の操作で得られた繊維の表面を走査型電子顕微鏡で撮影(2000倍)して得られた写真図である。
【図6】実施例5の操作で得られた繊維の表面を走査型電子顕微鏡で撮影(2000倍)して得られた写真図である。
【図7】実施例6の操作で得られた繊維の表面を走査型電子顕微鏡で撮影(2000倍)して得られた写真図である。
【図8】比較例1の操作で得られた構造体を走査型電子顕微鏡で撮影(2000倍)して得られた写真図である。
【図9】比較例3の操作で得られた構造体を走査型電子顕微鏡で撮影(2000倍)して得られた写真図である。
【図10】比較例4の操作で得られた構造体を走査型電子顕微鏡で撮影(2000倍)して得られた写真図である。
【図11】比較例5の操作で得られた構造体を走査型電子顕微鏡で撮影(2000倍)して得られた写真図である。
【図12】比較例6の操作で得られた構造体を走査型電子顕微鏡で撮影(2000倍)して得られた写真図である。
【符号の説明】
【0044】
1 溶液噴出ノズル
2 溶液
3 溶液保持槽
4 電極
5 高電圧発生器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロトン伝導性ポリマーから成り、構成する繊維の平均繊維径が3μm以下であり、実質的に10μm以上の繊維径をもつ繊維が存在しない、実質的に60μm以下の繊維長を有する繊維が存在しない不織布。
【請求項2】
前記プロトン伝導性ポリマーがイオノマーである、請求項1記載の不織布。
【請求項3】
前記イオノマーが下記一般式(I)で表される構造を有する、請求項2記載の不織布。
【化1】

(m、nは1以上の整数)
【請求項4】
プロトン伝導性ポリマーを含む溶液に繊維形成性の有機高分子を添加する段階と、前記繊維形成性の有機高分子を添加した溶液を静電紡糸法にて紡糸する段階と、前記紡糸によって捕集基板に累積される繊維構造体を得る段階と、前記繊維構造体に含まれる繊維形成性の有機高分子を除去する段階を含む、不織布の製造方法。
【請求項5】
プロトン伝導性ポリマーがイオノマーである、請求項4記載の製造方法。
【請求項6】
イオノマーが下記一般式(I)で表される構造を有する、請求項5記載の製造方法。
【化2】

(m、nは1以上の整数)
【請求項7】
前記プロトン伝導性ポリマーを含む溶液が揮発性有機溶媒から成る溶液である、請求項4記載の製造方法。
【請求項8】
前記揮発性有機溶媒が脂肪族アルコールと水との混合溶媒である、請求項7記載の製造方法。
【請求項9】
前記繊維形成性の有機高分子が熱可塑性ポリマーである、請求項4記載の製造方法。
【請求項10】
前記熱可塑性ポリマーがポリエチレンオキシドである、請求項9記載の製造方法。
【請求項11】
前記繊維形成性の有機高分子の分子量が1,000,000以上である、請求項4記載の製造方法。
【請求項12】
前記繊維構造体から繊維形成性の有機高分子を除去する段階が、該有機高分子を溶解可能な溶媒中に前記繊維構造体を浸漬させることによって行われる、請求項4記載の製造方法。
【請求項13】
前記繊維構造体を浸漬させる溶媒が水である、請求項5記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−233355(P2006−233355A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−49064(P2005−49064)
【出願日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】