説明

不織布の嵩増加方法

【課題】簡易な装置を用いて実施でき、嵩を効率良く増加させることのできる不織布の嵩増加方法、及び該方法を用いた嵩高不織布の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の不織布の嵩増加方法は、不織布1を搬送する過程においてその嵩を増加させる不織布1の嵩増加方法であり、搬送中の不織布1を、回転ドラム31の周面に複数回巻き掛け、該回転ドラム31に巻き掛けて搬送中の該不織布1に対して、該回転ドラム31の内側又は外側から熱風を吹き付けて該不織布1の嵩を増加させる。回転ドラム31の周面への不織布1の複数回の巻き掛けは、回転ドラム31の周面に巻き掛けた不織布1を、回転ドラム31の周面から一旦離間させた後、再度、同じ回転ドラムに巻き掛けることにより行うことが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布の嵩増加方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不織布の製造においては、所定の方法に従い製造した不織布をロール状に一旦巻回して保管し、これを別工程へ搬送することがしばしばある。そして別工程において、不織布はロールから繰り出され、所定の製品の製造原料等として用いられる。巻回状態にある不織布には大きな巻回圧が加わることから、巻回圧によってその嵩が減じられてしまうという不都合がある。この不都合は不織布が嵩高であるほど顕著である。
【0003】
本出願人は、巻回圧によってその嵩が減じられた不織布等のシートの嵩を回復させる嵩回復方法として、コンベアベルト上の不織布や回転ドラム上の不織布に熱風を吹き付ける嵩回復方法(特許文献1参照)や、周面に吸気口を有する回転ドラムの周面に吸着させた嵩回復性の不織布に熱風を吹き付けた後、該不織布を冷却し、前記回転ドラムから離間させる不織布の嵩回復方法(特許文献2参照)を提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−137655号公報
【特許文献2】特開2008−231609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1および特許文献2に記載の方法のように、コンベアベルト上や回転ドラムの周面で熱風処理して嵩を回復させる場合、熱風処理の時間が短く、嵩を十分に回復させることができない場合がある。搬送速度を変えることなく、熱風処理の時間を増やすには、コンベアベルト上の熱風処理装置を長くしたり、回転ドラムの径を大きくする方法があるが、装置の大型化を招く。
他方、回転ドラムを複数使用し、そのそれぞれで熱風処理を行えば、熱風処理の時間を増やすことができるが、熱風の供給配管や戻し配管なども複数必要となり、設備面での費用が増加し、また設備のコンパクト性の点も好ましくない。
【0006】
従って、本発明は、簡易な装置を用いて実施でき、嵩を効率良く増加させることのできる不織布の嵩増加方法、及び該方法を用いた嵩高不織布の製造方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、不織布を搬送する過程においてその嵩を増加させる不織布の嵩増加方法であって、搬送中の不織布を、回転ドラムの周面に複数回巻き掛け、該回転ドラムに巻き掛けて搬送中の該不織布に対して、該回転ドラムの内側又は外側から熱風を吹き付けて該不織布の嵩を増加させる、不織布の嵩増加方法を提供するものである。
【0008】
また、本発明は、前記不織布の嵩増加方法により不織布の嵩を増加させる工程を具備する嵩高不織布の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の不織布の嵩増加方法は、簡易な装置を用いて実施でき、嵩を効率良く増加させることができる。
本発明の嵩高不織布の製造方法は、効率よく不織布の嵩を増加させ、嵩高不織布を効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施形態及びそれに用いる装置を模式的に示す図である。
【図2】第1実施形態に用いた嵩増加装置の一部を示す概略斜視図である。
【図3】再供給機構の一部を構成する方向転換機構の一例を示す図である。
【図4】図3に示す方向転換機構におけるロール間の段差を示す模式図である。
【図5】図5(a)は本発明の方法の適用対象となる不織布の一例を示す斜視図であり、図5(b)は図5(a)におけるb−b線断面図である。
【図6】本発明の他の実施形態及びそれに用いる装置の一部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の嵩増加方法の第1実施形態を模式的に示す図である。
図1に示すように、第1実施形態の方法においては、不織布1がロール状に巻回されてなるロール状の原反1’から繰り出された不織布1に対し、回転ドラム31を備えた嵩増加装置3により熱風処理を施している。この熱風処理によって、巻回圧により嵩が減じられていた不織布1の嵩が増加(回復)し、嵩高な不織布1Tが得られる。なお、ロール状の原反1’は、不織布1の搬送方向において、嵩増加装置3よりも上流の位置に配置されており、該原反1’から、公知の機構により繰り出された不織布1が、送りロール2,2等を有する公知の搬送機構により搬送されて嵩増加装置3に導入される。
【0012】
嵩増加装置3は、図1に示すように、通気性の周面を有する回転ドラム31と、回転ドラム31内を減圧する減圧手段32と、回転ドラム31の周面に対して熱風を供給する熱風供給手段33と、ロール状の原反1’から繰り出されて搬送されてきた不織布1を、嵩増加装置3の所定位置から回転ドラム31の周面に導入する不織布導入手段34と、回転ドラム31の周面に巻きかけられて所定距離搬送された後の不織布1を、回転ドラム31の周面から引き離した後、その搬送方向を変えて再び回転ドラム31の周面に供給する再供給機構35と、再び回転ドラム31の周面に巻きかけられて所定距離搬送された後の不織布1Tを、回転ドラム31から引き離して次工程に送り出す導出手段36とを備えている。
【0013】
回転ドラム31は、円筒状の周面を有し、該周面に、ワイヤメッシュやパンチングメタル等の通気性材料からなる通気部がその全周に亘って形成されている。回転ドラム31は、該周面を含む外周部が図示しないモータ等の駆動源によって図中矢印A方向に回転駆動される。減圧手段32は、回転ドラム31内に開口する吸気管を備えており、該吸気管の他端に接続された減圧装置を作動させることにより、回転ドラム31内の一部、具体的には、ドラムの周面を挟んで後述する熱風供給手段33の熱風口33cと対向配置されたドラム内の仕切られた空間31H内を減圧可能になされている。減圧装置としては、吸気ファン、吸引ブロワ、真空ポンプ等の各種公知の装置を用いることができる。
【0014】
熱風供給手段33は、回転ドラム31の上部を覆うフード33aと、該フード33a内に熱風源(図示せず)から供給された熱風を供給する熱風管(図示せず)とを有している。フード33aは、回転ドラム31を覆う部分に、ドラム31の周面に向かって開口する熱風口33cを有し、熱風管からフード33a内に供給された熱風を、熱風口33cを介して、ドラム31上の不織布1に対して供給するようになされている。
不織布導入手段34は、回転ドラム31の周面に近接配置された導入ロール34aを備えおり、送りロール2,2等からなる公知の搬送手段によって搬送されてきた不織布1を、導入ロール34aにより、その向きを回転ドラム31の周面に沿う向きに変えて、該周面上に導入するようになされている。導入ロール34a、送りロール2,2は、モーター等の動力源からの動力を受けて回転駆動される駆動ロールでも、不織布1に接触して従動回転するフリーロールでも良い。
【0015】
熱風供給手段33及び減圧手段32を作動させた状態で、ロール状の原反1’から繰り出された不織布1が、不織布導入手段34により、回転ドラム31の周面上に導入されると、該不織布1は、回転ドラム31の回転によって所定距離搬送され、その搬送されている間、より具体的には、不織布1が空間31H(熱風が吸引される区域)上を通過している間に、熱風が該不織布1を厚み方向に貫通して、該不織布1に対する1回目の熱風処理が行われる。
【0016】
再供給機構35は、1回目の熱風処理を行った後の不織布1を、該回転ドラム31の周面から一旦離間(離脱)させた後、再度、その不織布1を、同じ回転ドラム31上に供給する機構である。
再供給機構35としては、例えば、単数又は複数のターンバーにより不織布の進行方向を変換する方向転換機構を備えたものを用いることができる。図2には、複数のターンバー35a,35bからなる方向転換機構を備えたものが図示されている。
【0017】
図2に示す再供給機構35によれば、回転ドラム31の周面に巻きかけられて1回目の熱風処理を施された後の不織布1が、ターンバー35aに向かって引き出されて、一旦回転ドラム31の周面から離れる。そして、その不織布1は、ターンバー35aにより、水平方向における進行方向を90度回転させられ、更に他のターンバー35bにより、同進行方向を90度回転させられることによって、進行方向が、回転ドラム31から離れる方向から回転ドラム31に近づく方向へと転換される。そして、進行方向を回転ドラム31に近づく方向へと転換された不織布1が、回転ドラム31の近傍において、第2の導入ロール35cにより、その向きを回転ドラム31の周面に沿う向きに変更されて該周面上に導入される。
ターンバー35a,35bは、表面が平滑な回転しない円柱状の周面を有しており、不織布1が接触しない部位を支持材(図示せず)に固定されて支持されている。第2の導入ロール35cは、モーター等の動力源からの動力を受けて回転駆動される駆動ロールでも、不織布1に接触して従動回転するフリーロールでも良い。
【0018】
回転ドラム31から離れる方向に移動する不織布1の向きを、再び回転ドラム31に近づく方向に転換する方向転換機構としては、ターンバーを用いたものに代えて、図3及び図4に示すような機構を用いることもできる。
図3及び図4に示す方向転換機構は、図3に示すように、上方から鉛直方向に視て放射状ないし扇形に配置された複数の回転自在なロール37,38を有し、それらのロールは、一端に位置するロール37’から他端に位置するロール37”に向かって、1本毎に鉛直方向の高さ位置が異なっている。より具体的には、図4に示すように、高さ位置P1に配されたロール37,37’,37”と高さ位置P2に配されたロール38とを有している。そして、図4に示すように、不織布1を、高さ位置P1に配されたロール37,37’,37”については各ロールの下側、高さ位置P2に配されたロール38については各ロールの上側とを通すことによって、図3に示すように、一端のロール37’側から導入された不織布1の進行方向を180度転換させて他端のロール37”から導出するようになっている。
【0019】
このように、一方向から視て放射状ないし扇形に配され且つロール間に段差を設けた複数の回転自在なロールからなる方向転換機構を用いれば、1回目の熱風処理により厚みが増加した不織布1の厚みが減少することを軽減したり、不織布に歪みが加わるのを抑制しつつ、不織布1の搬送方向を容易に変更することができる。図3及び図4に示す方向転換機構のロールは、何れも、不織布1に接触して従動回転するフリーロールであり、回転ドラム31の回転に伴って引っ張られる不織布1と接触していることによって回転する。
【0020】
再供給機構35により、再び回転ドラム31の周面上に導入された不織布1は、再び回転ドラム31の周面上に吸着されながら所定距離搬送され、その搬送されている間、より具体的には、不織布1が空間31H上を通過している間に、熱風が再び該不織布1を厚み方向に貫通して、該不織布1に対する2回目の熱風処理が行われる。
なお、図1に示す装置における回転ドラム31内の空間31H、回転ドラム31の周面の通気部、及びフード33aの熱風口33cは、不織布に1回目の熱風処理を行う領域と2回目の熱風処理を行う領域とに跨るように、回転ドラム31の軸長方向(X方向)に連続して延びている。これらは、不織布1の幅の2倍超、より具体的には2.3倍超の長さに亘って、回転ドラム31の軸長方向に延びていることが好ましい。
【0021】
導出手段36は、2回目の熱風処理を行った後の不織布1を、回転ドラム31から引き離して次工程に送り出すものである。図1に示す導出手段36は、図示しない動力源により回転駆動される一対の送りロール36a,36aからなる。
導出手段36により送り出された不織布1Tは、複数回(2回)の熱風処理によって厚みが増加(回復)している。
【0022】
このようにして、嵩が増加(回復)した不織布1は、引き続き次工程である各種加工工程に付される。この加工工程へ付す場合には、不織布1を巻き取らずに、厚みが回復した状態のままで搬送することが好ましい。加工工程としては、不織布1の用途に応じて様々な工程があるが、その典型的な一例として、生理用ナプキンや使い捨ておむつなどの吸収性物品の製造工程が挙げられる。
【0023】
第1実施形態の方法によれば、上記のようにして、その搬送中の不織布1を、回転ドラム31の周面に複数回巻き掛け、その複数回巻き掛ける不織布1に対して熱風処理を施すため、回転ドラム31の外径の増大させることなく、あるいは外径の増大を抑えつつ、不織布1に対する熱風処理の時間を容易に増やすことができる。
そのため、ロール状の原反1’における巻回圧やその他の理由によって嵩が減少していた不織布1の嵩を容易且つ効率的に増加(回復)させることができる。
【0024】
第1実施形態の方法によれば、1回目の熱風処理後の不織布1を、回転ドラム31の周面から一旦離間させた後、再度、同じ回転ドラム31に供給して2回目の熱風処理を施すようにしたため、不織布1の方向転換を容易に行うことができる。また、一旦離間させることにより、加熱された不織布を、ニップロールなどの減厚工程を経ることなく、高温状態あるいは嵩が回復し易い状態に、より長時間保持することができ、嵩がより効果的に増加(回復)する。
【0025】
また、1回目の熱風処理と2回目の熱風処理の間に、図2に示す例のように、不織布1の表裏を裏返して該不織布1に対する熱風貫通方向を入れ替えることもできる。図2に示す例では、1回目の熱風処理時には、不織布1の一面1aがフード33a側、他面1bが回転ドラム31の周面側を向いているのに対して、2回目の熱風処理時には、同じ不織布1の前記一面1aが回転ドラム31の周面側、他面1bがフード33a側を向いている。
このように、熱風を吹き付ける面ないし熱風を貫通させる方向を入れ替えることは、不織布の均等な回復につながる。特に坪量の高い不織布に一方向から熱風を供給する場合にメリットが大きい。
【0026】
なお、図2に示す例では、1回目の熱風処理を行う領域と2回目の熱風処理を行う領域とが回転ドラム31の軸長方向(X方向)に離間しているが、回転ドラム31の軸長方向における、両領域間に、熱風を供給しない領域や、ドラム周面が通気性を有しない領域、ドラム内から吸引しない領域等を設けることもできる。熱風を供給しない領域を設けることで、使用する風量の削減を図ることができる。
また、回転ドラムの軸長方向の寸法を増加させないように、1回目の熱風処理を行う領域と2回目の熱風処理を行う領域とを離間させずに隣接配置することもできる。
【0027】
厚み回復は、通気周長の合計(空間31Hの周長に相当する長さの合計)に影響を受ける。 回転ドラムの周方向における熱風処理領域(回転ドラムの外周面から熱風吸引を行う領域)の角度(前記空間31Hの角度,全周に亘って連続して吸引する場合は360°)がθ(図1参照)である場合、不織布に熱風を貫通させている間に回転ドラムが回転する回転角度(1回目の熱風処理時の回転角度と2回目以降の熱風処理時の回転角度との合計,以下、熱風処理中回転角度ともいう)は、前記角度θの1倍以上であることが好ましく、より好ましくは4/3倍以上であり、更に好ましくは5/3倍以上である。例えば、熱風処理領域の角度θが270°の場合、前記熱風処理中回転角度は、270°以上であることが好ましく、より好ましくは360°以上、更に好ましくは450°以上である。
【0028】
また、回転ドラムに対する不織布の巻掛け角度(不織布が回転ドラムの周面に接触してから該周面から離れる迄の回転ドラムの回転角度)は、1枚目の巻掛けの際の巻掛け角度とそれ以降の巻掛け角度との合計である総巻き掛け角度が、回転ドラムの軸方向への拡大を防ぐ観点からは、900°(捲き掛け2.5回相当)以下、特に720°(捲き掛け2回)以下であることが好ましい。
【0029】
なお、1回目の巻き掛けと2回目の巻き掛けとで巻き掛け角度は同じでも異なっていても良い。
また、1回目の巻き掛けとそれ以降の巻き掛けの何れにおいても、不織布が回転ドラムの周面に接触してから該周面から離れるまでの全接触時間のうちの全体において熱風が不織布に吹き付けるようにしても良いし、前記全接触時間のうちの一定の間のみにおいて熱風が不織布に吹き付けるようにしても良い。何れの場合も、回転ドラムが、前記の好ましい総巻き掛け角度と同じ角度回転している間、不織布に対して熱風が吹き付けられるようにすることが好ましい。図1に示す実施形態では、不織布1は、回転ドラム31の回転軸とは直角に交差している。
【0030】

図5(a)及び(b)は、本発明の方向で嵩を増加(回復)させる対象の不織布1Aの一例を示す図である。
不織布1Aは、図示のごとく、嵩高な三次元形状のものであり、第1層11及びこれに隣接する第2層12を備えている2層からなる多層構造のものである。第1層11と第2層12とは多数の接合部13において部分的に接合されている。接合部13は全体として菱形格子状のパターンを形成している。接合部13は圧密化されており、不織布1Aにおける他の部分に比べて厚みが小さく且つ密度が大きくなっている。
【0031】
不織布1Aは、前記の菱形格子状のパターンからなる接合部13によって取り囲まれて形成された閉じた領域を多数有している。この閉じた領域において、第1層11は凸状の三次元的な立体形状をなしている。この立体形状をなしている部分はドーム状の形状をしている。一方、第2層12はほぼ平坦な形状となっている。そして不織布1A全体としてみると、その第2層12側の外面が平坦であり且つ第1層11側の外面に多数の凸部を有している構造となっている。
【0032】
第1層11は、捲縮を有する熱可塑性繊維(以下、単に捲縮繊維という)を含む層である。捲縮繊維としては、機械捲縮によって二次元的にジグザグ状に捲縮した繊維や、螺旋状に三次元捲縮した繊維などを用いることができる。第1層11は、捲縮繊維100%から構成されていてもよく、或いは捲縮繊維に加えて熱融着性繊維、例えば芯鞘型複合繊維やサイド・バイ・サイド型複合繊維を含むこともできる。第1層11に用いる繊維は、実質的に熱収縮性を有しないか、又は後述する第2層12に含まれる熱収縮性繊維の熱収縮温度以下で熱収縮しないものが好ましい。一方、第2層12は熱収縮性繊維を含む層である。第2層12に含まれる熱収縮性繊維は熱収縮によって螺旋状に三次元捲縮した繊維であることが好ましい。
【0033】
不織布1Aの製造方法及びその構成繊維等の詳細については、本出願人の先の出願に係る特開2002−187228号公報に記載されている。製造方法について簡単に述べると、先ず捲縮繊維を含む繊維原料を用いて第1層のカードウエブを製造する。これとは別に、熱収縮性繊維を含む繊維原料を用いて第2層のカードウエブを製造する。第2層のカードウエブ上に第1層のカードウエブを重ね合わせ、両者を所定パターンからなる接合部において部分的に接合する。接合には例えば超音波エンボスが用いられる。次いで、第2層のカードウエブに含まれている熱収縮性繊維の熱収縮開始温度以上で、エアスルー方式によって熱風を吹き付ける熱処理を行い、第2層を熱収縮させると共に接合部によって取り囲まれた閉じた領域に位置する第1層を凸状に突出させ三次元立体形状を形成する。更に、構成繊維の交点を熱融着させる。これによって不織布が1Aが得られる。斯かる製造方法で製造された不織布1Aは、一旦ロール状に巻回され原反となされて保管される。
【0034】
不織布1Aは、巻回圧等によって嵩が減少する。本発明によれば、例えば、このような不織布1Aにおける減少していた嵩を効率よく回復させることができる。
不織布1Aに熱風を供給することによる嵩の増加(回復)性能の向上は、第1層11に含まれている捲縮繊維の熱風による嵩の回復が主要な要因の一つである。この観点からは、不織布1Aに吹き付ける熱風は、捲縮繊維の融点(以下mpという)未満で且つmp−50℃以上とすることが好ましい。不織布1Aの嵩を一層効果的に増加(回復)させる観点から、熱風の温度はmp−50℃以上で且つmp−3℃以下、特にmp−30℃以上で且つmp−5℃以下であることが好ましい。
【0035】
また、熱風を供給することによる嵩の回復(回復)性能の向上の他の要因としては、不織布を構成する捲縮繊維外の繊維、あるいは繊維どうしの交点等が軟化し、変形し易くなることがあげられる。この観点からも、不織布1Aに吹き付ける熱風の温度は、不織布に含まれる熱可塑性繊維の融点に対して、特にmp−30℃以上で且つmp−5℃以下であることが好ましい。
【0036】
本発明で嵩を増加させる対象の不織布は、図5(a)及び(b)に示すものに限られず、捲縮繊維を含む単層、多層構造のものや、捲縮繊維及び熱収縮性繊維を含む単層、多層構造のものであってもよい。例えば、3層以上の多層構造からなり、その一方又は双方の最外層に捲縮繊維が含まれており且つ最外層間の内層に熱収縮性繊維が含まれている不織布であってもよい。
また、捲縮繊維を含まないものであっても良く、加熱によってその長さが伸びる繊維(以下、この繊維を熱伸長性繊維という)を含む不織布であってもよい。
【0037】
熱伸長性繊維を含む不織布としては、例えば、熱伸長性繊維を用いて製造した単層の繊維ウエブに対して、ヒートシール、超音波シール、高周波シール等によりエンボス部を格子状に形成し、次いで、熱風貫通処理、熱風吹き付け処理等の熱風処理を施し熱伸長性繊維を伸長させてなるものを用いることができる。また、熱伸長性繊維を用いて製造した繊維ウエブを、それとは別に製造した繊維ウエブや不織布に積層した後、それらの積層体に対して、同様にして格子状のエンボスを形成し熱風処理を施したものを用いることもできる。このような不織布は、片面又は両面におけるエンボス部間に熱伸長性繊維が伸長して形成された凸部を有している。また、エンボス部以外の部分に、熱伸長性繊維どうしの交点が熱融着した繊維接合部を有するものが好ましい。熱伸長性繊維は、好ましくは温度が90℃以上で伸長し、より好ましくは、110℃〜140℃で伸長する。熱伸長性繊維としては、例えば加熱により樹脂の結晶状態が変化して伸びたり、あるいは捲縮加工が施された繊維であって捲縮が解除されて見かけの長さが伸びる繊維が挙げられる。熱伸長性繊維を含む繊維層と他の繊維層とが積層された多層構造の不織布である場合、該他の繊維層は、熱伸長性を有しない熱融着性繊維のみで構成されていても良いし、熱伸長性繊維を含む繊維層よりも低い割合で熱伸長性繊維を含む層から構成されていても良い。熱伸長性繊維として、配向指数が20〜80%(より好ましくは40〜70%)の第1樹脂成分と、該第1樹脂成分の融点より低い融点又は軟化点を有し且つ配向指数が10〜80%(より好ましくは20〜60%)の第2樹脂成分とからなり、第2樹脂成分が繊維表面の少なくとも一部を長さ方向に連続して存在している複合繊維を用いることもできる。
【0038】
嵩を増加させる対象の不織布としては、各種製法による不織布を挙げることができる。本発明で嵩を増加させる不織布は、特に制限なく、例えばスパンボンド不織布やスパンレース不織布、レジンボンド不織布、ニードルパンチ不織布を用いてもよいが、嵩高い不織布が得られ且つ嵩の回復及び増加率の高い製造方法であるエアスルー方式で製造された(エアースルー不織布)ものが特に好ましい。エアースルー不織布は、カード法又はエアレイ法により形成した繊維ウエブをエアースルー法による熱風処理等により不織布化して得られるものである。また、樹脂フィルムとラミネートされた不織布の嵩増加を行うこともできる。
【0039】
また、本発明は、巻回圧等により嵩が減少していた不織布の嵩の回復に限られず、当初厚みが薄かった不織布の嵩を増加させるために用いることもできる。
例えば、前述の熱収縮性繊維を含む不織布の嵩増加や回復の他、熱伸張性繊維を含む不織布の熱伸長による嵩増加処理等に用いることもできる。
本発明の嵩増加方法あるいは嵩高不織布の製造方法で得られた嵩高な不織布は、上述したように、典型的な一例では、熱風処理により嵩を増加させた後、生理用ナプキンや使い捨ておむつなどの吸収性物品の製造工程に送られる。
【0040】
生理用ナプキンや使い捨ておむつなどの吸収性物品は、液透過性の表面シート、液不透過性の裏面シート及び両シート間に介在配置された液保持性の吸収体を有している。更に、表面シートと吸収体との間に液透過性のサブレイヤーシートが介在配置された吸収性物品も知られている。このような構成を有する吸収性物品においては、先に説明した図5(a)及び(b)に示す構造の嵩高な不織布1Aを表面シート又はサブレイヤーシートとして用いると、その嵩高さの故に、液戻り量が少なく、また液の横方向への拡散が少なくスポット吸収が可能となる。更に液残りが少なく、そのうえ高粘性液の透過が良好となる。特に上述した不織布1Aは、図5(a)及び図5(b)に示すように三次元的な立体形状をなし、嵩高のものであるから、嵩の回復によって該不織布1Aが本来有している嵩高感を感触的にも視覚的にもアピールすることができる。このような吸収性物品を製造するには、不織布1Aを吸収性物品に組み込むに先立ち、先ずロール状に巻回された原反1’の状態となっている不織布1Aを該原反1’から繰り出す。繰り出された不織布1Aは、嵩増加装置3に導入して嵩を回復させる。引き続き、不織布1Aを、搬送方向の下流に設置されている吸収性物品の加工機(図示せず)に導入し、公知の方法に従い吸収性物品を製造する。加工機においては、例えばニップロールによる挟圧加工など、不織布1Aの嵩が減じられる可能性のある加工が施される場合が多いが、前述の方法に従って嵩が一旦回復した不織布1Aは、そのような挟圧加工等に付されても嵩が大きく減じられることはない。
【0041】
次に、本発明の第2実施形態について、図6を参照しながら説明する。第2実施形態については、第1実施形態と異なる点についてのみ説明し、特に説明しない点については、第1実施形態に関して詳述した説明が適宜適用される。
第2実施形態の方法においては、回転ドラム31の回転方向に対して斜めに不織布1を巻き掛ける。これにより、第1実施形態のように、回転ドラム31の周面から一旦離間(離脱)させることなく、該不織布1に対して、長時間の熱風処理を施すことができる。
【0042】
図6に示す第2実施形態のように、不織布1を、回転ドラム31の回転方向に対して斜めに巻き掛け、不織布1を、回転ドラム31の周面から一旦離間(離脱)させることなく該不織布1に長めの熱風処理を行う場合においても、回転ドラムの回転方向における熱風処理領域の角度がθである場合、不織布に熱風を貫通させている間に回転ドラムが回転する回転角度は、前記角度θの1倍以上であることが好ましく、より好ましくは4/3倍以上であり、更に好ましくは5/3倍以上である。
また、回転ドラムに対する不織布の巻掛け角度(不織布が回転ドラムの周面に接触してから該周面から離れる迄の回転ドラムの回転角度)は、360°以上であることが好ましく、回転ドラムの軸方向への拡大を防ぐ観点からは、900°(捲き掛け2.5回相当)以下、特に720°(捲き掛け2回)以下であることが好ましい。
【0043】
図6に示す第2実施形態のように、不織布1を、回転ドラム31の回転方向に対して斜めに巻き掛け、不織布1を、回転ドラム31の周面から一旦離間(離脱)させることなく該不織布1に長めの熱風処理を行う場合においても、回転ドラムの周方向における熱風処理領域の角度がθ(外周面から熱風吸引を行う領域)図1参照)である場合、不織布に熱風を貫通させている間に回転ドラムが回転する回転角度が、厚み回復は、通気周長の合計(空間31Hの周長に相当する長さの合計)に影響を受ける。回転ドラムの周方向における熱風処理領域(回転ドラムの外周面から熱風吸引を行う領域)の角度(前記空間31Hの角度)がθ(図1参照)である場合、不織布に熱風を貫通させている間に回転ドラムが回転する回転角度(1回目の熱風処理時の回転角度と2回目以降の熱風処理時の回転角度との合計,以下、熱風処理中回転角度ともいう)は、前記角度θの1倍以上であることが好ましく、より好ましくは4/3倍以上であり、更に好ましくは5/3倍以上である。例えば、熱風処理領域の角度θが270°の場合、前記熱風処理中回転角度は、270°以上であることが好ましく、より好ましくは360°以上、更に好ましくは450°以上である。
【0044】
第2実施形態の方法によれば、回転ドラムへの巻き掛けはらせん形状をとる。不織布の回転ドラムへの導入と、回転ドラムからの導出の方向は、回転ドラムの回転軸に対して、角度を持つため、軸方向に大きな設備になる。
【0045】
上述した本発明の嵩増加方法の第1及び第2実施形態は、嵩高な不織布1Tを製造する観点からは本発明は嵩高不織布の製造方法の実施形態でもある。本発明の嵩高不織布の製造方法における嵩高不織布は、回転ドラムに最初に導入する不織布と比較して嵩高となっていれば良い。
【0046】
以上、本発明の好ましい幾つかの実施態様について説明したが、本発明は上記の実施態様に制限されず適宜変更可能である。
例えば、上述した実施態様では、回転ドラム31の周面に巻き掛けた不織布1を、回転ドラム31の外側から内側に吹き付けた熱風により処理したが、同不織布1を、回転ドラム31の内側から外側に吹き出させた熱風により処理することもできる。
【0047】
また、回転ドラム内の減圧する空間31Hは、回転ドラム内の一部に代えて全体であっても良い。また、図1に示す装置における回転ドラム31内の空間31Hやフード33a内に仕切り壁を設ける等により、1回目の熱風処理と2回目の熱風処理とで、熱風の温度や熱風の吹きつけ条件を異ならせることもできる。
【0048】
また、第1実施形態においては、不織布1を回転ドラム31に対して最初に導入する際も再供給機構により再度導入する際も、不織布1を、回転ドラム31の周方向と平行にして導入したが、1回目及び2回目の何れについても、不織布1を回転ドラム31の周方向に対して斜めに導入しても良い。
また、第1実施形態における嵩増加装置3に再供給機構35を複数設け、2回目の熱風処理後の不織布に対して、更に1回又はそれ以上の熱風処理を行っても良い。
【0049】
上述した一の実施形態における説明省略部分及び一の実施形態のみが有する要件は、それぞれ他の実施形態に適宜適用することができ、また、各実施形態における要件は、適宜、実施形態間で相互に置換可能である。
【符号の説明】
【0050】
1,1A 不織布
1’ 原反
11 第1層
12 第2層
1T 嵩が増加(回復)した不織布
2 送りロール
3 嵩増加装置
31 回転ドラム
32 減圧手段
33 熱風供給手段
34 不織布導入手段
35 再供給機構
36 導出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布を搬送する過程においてその嵩を増加させる不織布の嵩増加方法であって、
搬送中の不織布を、回転ドラムの周面に複数回巻き掛け、該回転ドラムに巻き掛けて搬送中の該不織布に対して、該回転ドラムの内側又は外側から熱風を吹き付けて該不織布の嵩を増加させる、不織布の嵩増加方法。
【請求項2】
回転ドラムの周面への不織布の複数回の巻き掛けは、回転ドラムの周面に巻き掛けた不織布を、該回転ドラムの周面から一旦離間させた後、再度、同じ回転ドラムに巻き掛けることにより行う、請求項1記載の不織布の嵩増加方法。
【請求項3】
回転ドラムの周面への不織布の複数回の巻き掛けは、不織布を、回転ドラムの回転方向に対して斜めに巻き掛けることにより行う、請求項1記載の不織布の嵩増加方法。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の不織布の嵩増加方法により不織布の嵩を増加させる工程を具備する嵩高不織布の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−84848(P2011−84848A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−239774(P2009−239774)
【出願日】平成21年10月16日(2009.10.16)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】