説明

不織布の製造方法および人工皮革基材の製造方法

【課題】本発明は、風合いや強度に優れるだけなく、簡便で生産安定性が高い上に、環境影響が低い不織布の製造方法および人工皮革の製造方法を提供せんとするものである。
【解決手段】本発明の極細繊維不織布の製造方法は、ASTM D1238(測定温度240℃、測定荷重2.16kg荷重)に基づいて測定されるメルトフローレート(MFR)が20〜300g/10minの脂肪族ポリエステルと、該脂肪族ポリエステルのMFRが下記関係を満たすポリアミドとを複合紡糸することにより得られた極細繊維発生型複合繊維からなる不織布を、アルカリ溶液処理して該脂肪族ポリエステルを抽出除去することを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来の不織布や人工皮革基材の製造方法に比べ、簡便で安定性が高く、環境影響の小さい不織布の製造方法および人工皮革基材不織布の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
不織布に高分子弾性体を付与した人工皮革は、これまで様々なタイプのものが検討されてきた。例えばポリエチレンテレフタレート(PET)や、ポリブチレンテレフタレート(PBT)に代表されるポリエステルやナイロン6(N6)やナイロン66(N66)に代表される重縮合系ポリマーは適度な力学特性と耐熱性を有するため、衣料、インテリア、車両内装、産業資材用途などの人工皮革に好適に用いられてきた。
【0003】
人工皮革の基材としては極細繊維からなる不織布が広く使用されているが、極細繊維を得る方法としては、直接紡糸により得る方法、分割型複合紡糸した糸条を分割処理する方法、海島型複合紡糸した糸条から海成分を抽出除去する方法等が一般的である。
例えば、人工皮革に使用するに適したポリエステル超極細繊維に関する技術は既に知られている(特許文献1参照)。この技術によれば、人工皮革に用いた際に、優れた耐摩耗性を発揮するとのことである。しかしながら、極細繊維の直接紡糸は生産安定性が低く、また極細化についても単繊維繊度0.1デシテックス程度を下回る紡糸は非常に困難であるという問題点があった。
【0004】
また、極細繊維発生型複合繊維として、海成分にポリスチレンを使用してなる複合繊維からなる人工皮革に関する技術も既に知られている(特許文献2参照)。当該技術によれば、人工皮革の基材となる極細繊維を、安定的に生産可能なものと思われるが、例えばポリスチレンを海成分とした場合、海成分の抽出除去にはトリクロロエチレンのような有機溶剤が必要であり、環境影響の非常に大きい製法であった。さらに、極細繊維発生型複合繊維として、海成分にアルカリ溶出可能なポリエチレンテレフタレートを使用してなる複合繊維からなる皮革様シート状物に関する技術も知られている(特許文献3参照)。しかしながら、抽出除去して廃棄されるポリエチレンテレフタレートは、いわゆる石油系原料を使用してなるものであり、環境影響の小さいものではなかった。
【0005】
またさらに、水で処理することにより得られる極細繊維よりなる人工皮革も知られている(特許文献4参照)。当該技術によれば、前述のような化学薬品を使用することなく極細繊維を得ることが可能であり、環境影響が小さい製法ということができる。しかしながら、ポリマーの選択や紡糸の安定性等を考慮すると、簡便な製法ではなかった。
【0006】
さらにまた、アルカリ処理により極細繊維を発現する長繊維不織布、およびそれを用いてなる人工皮革の製造方法が知られており、当該技術の一例として、アルカリ処理により加水分解する繊維としてポリ乳酸繊維が記載されている(特許文献5参照)。しかしながら、ここでは、ポリ乳酸繊維がアルカリ処理により加水分解する繊維として使用することができることが示めされているにすぎず、ポリ乳酸と複合紡糸をするに相応しいポリマーの種類や特性について何ら記載されていない。ポリ乳酸は高温では熱分解しやすいため、複合紡糸をする場合、複合紡糸するポリマーは、その融点や紡糸可能温度が適正なものから選定する必要がある。また、特に極細繊維を紡糸する場合には、複合状態を制御するため、組み合わせるポリマーの溶融粘度等の特性の選定が重要である。しかしながら、複合繊維化する際の問題点については、何ら記載されていない。
【特許文献1】特開2003−41432号公報
【特許文献2】特開2004−52120号公報
【特許文献3】特開2004−100051号公報
【特許文献4】特開2003−328276号公報
【特許文献5】特開2004−84076号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、風合いや強度に優れるだけなく、簡便で生産安定性が高い上に、環境影響が低い不織布の製造方法および、人工皮革の製造方法を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明の極細繊維不織布の製造方法は、ASTM D1238(測定温度240℃、測定荷重2.16kg荷重)に基づいて測定されるメルトフローレート(MFR)が20〜300g/10minの脂肪族ポリエステルと、MFRが下記関係を満たすポリアミドとを複合紡糸することにより得られた極細繊維発生型複合繊維からなる不織布を、アルカリ溶液処理して該脂肪族ポリエステルを抽出除去することを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の人工皮革基材の製造方法は、ASTM D1238(測定温度240℃、測定荷重2.16kg荷重)に基づいて測定されるメルトフローレート(MFR)が20〜300g/10minの脂肪族ポリエステルと、MFRが下記関係を満たすポリアミドとを複合紡糸することにより得られた極細繊維発生型複合繊維からなる不織布を、アルカリ溶液処理により該脂肪族ポリエステル成分を抽出除去する前かまたはその後に、高分子弾性体を付与することを特徴とするものである。
【0010】
かかる極細繊維不織布、さらには人工皮革基材の製造方法の好ましい態様は、
(1)前記ポリアミドと脂肪族ポリエステルからなる極細繊維発生型複合繊維が、分割型繊維、海島型繊維および混合型繊維から選ばれた少なくとも1種の繊維であること、
(2)前記不織布が短繊維不織布であること、
(3)前記不織布が長繊維不織布であることである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡便で生産安定性が高いだけでなく、環境影響の低い、不織布、人工皮革を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、前記課題、つまり風合いや強度に優れるだけなく、簡便で生産安定性が高い上に、環境影響が低い不織布の製造方法について、鋭意検討し、特定なメルトフローレート(MFR)を有する脂肪族ポリエステルを用いることと、この脂肪族ポリエステルに対惹して特定なMFR関係を満たすポリアミドを選択して、この特定なポリアミドを前記特定な脂肪族ポリエステルとを複合させて極細繊維発生型複合繊維を用いて不織布を製造してみたところ、かかる課題を一挙に解決することを究明したものである。
【0013】
本発明の極細繊維発生型複合繊維は、ポリアミドと脂肪族ポリエステルを複合紡糸することにより得られる。本発明におけるポリアミドとしては、アミド結合(−CONH−)を有する合成高分子で繊維化可能なものであれば何ら限定されないが、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6−10、ナイロン12、あるいはこれらの共重合体や変性物を、単独またはブレンドして用いることができる。ポリアミドの選定にあたっては、脂肪族ポリエステルとの融点差の少ないものを選ぶことが好ましい。なお前記ポリアミドに結晶核剤や艶消し剤、顔料、防カビ剤、抗菌剤、難燃剤、帯電防止剤、親水剤、滑剤等を、本発明の効果を損なわない範囲で添加してもよい。
【0014】
また本発明における脂肪族ポリエステルはアルカリ溶液により加水分解するものであれば特に限定されないが、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシブチレートバリレート、あるいはこれらの共重合体や変成物を、単独またはブレンドして用いることができる。なかでも紡糸性、が良好であり、かつ植物由来のデンプンからの合成が可能であるため環境影響が小さい、ポリ乳酸系樹脂が最も好ましいものである。
【0015】
かかるポリ乳酸系樹脂としては、ポリ(D−乳酸)と、ポリ(L−乳酸)と、D−乳酸とL−乳酸の共重合体、あるいはこれらのブレンド体(ステレオコンプレックスを含む)が好ましいものである。かかるポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量は5万〜30万が好ましく、より好ましくは7万〜30万である。重量平均分子量が5万を下回る場合は、繊維の強力が低くなる傾向があり、また、重量平均分子量が30万を越える場合は、粘度が高いためノズルから押し出したポリマーの曳糸性が乏しく、高速延伸ができにくくなり、究極的には未延伸状態になり、十分な繊維強度を得ることができない傾向がでてくる。なお前記脂肪族ポリエステルに結晶核剤や艶消し剤、顔料、防カビ剤、抗菌剤、難燃剤、帯電防止剤、親水剤、滑剤等を、本発明の効果を損なわない範囲で添加してもよい。
【0016】
さらに本発明の脂肪族ポリエステルのメルトフローレート(MFR)は20〜300g/10minであり、前記ポリアミドのMFRと脂肪族ポリエステルのMFRの数値の関係が、(脂肪族ポリエステルのMFR)/(ポリアミドのMFR)=0.3〜3.0の範囲であることが重要である。
【0017】
かかる脂肪族ポリエステルのMFRが20を下回ると、ポリマーの曳糸性が悪化する傾向であり好ましくなく、MFRが300を超えると、糸条の強度が低下する傾向であり好ましくない。より好ましい脂肪族ポリエステルのMFRは25〜280g/10min、特に好ましくは30〜250g/10minの範囲である。
【0018】
また、前記ポリアミドと脂肪族ポリエステルのMFRの数値の関係((脂肪族ポリエステルのMFR)/(ポリアミドのMFR))が0.3〜3.0の範囲内であれば、ポリアミドと脂肪族ポリエステルを複合紡糸する際の紡糸性も良好となる傾向であり、また得られる極細繊維不織布、および人工皮革基材の強度も十分となる傾向であり好ましい。より好ましい(脂肪族ポリエステルのMFR)/(ポリアミドのMFR)の数値は0.5〜2.8であり、さらに好ましくは0.8〜2.5の範囲である。
【0019】
なお、本発明の脂肪族ポリエステルとポリアミドのMFRは、ASTM D1238(測定温度240℃、測定荷重2.16kg荷重)に基づいて測定されるものであり、各試料につき10回の測定を実施し、平均値を小数点以下第一位を四捨五入して得られるものである。
【0020】
本発明の極細繊維発生型複合繊維は、ポリアミド成分と脂肪族ポリエステル成分とからなるものであるが、かかるポリアミド成分と脂肪族ポリエステル成分が、分割型、海島型、および混合型から選ばれた少なくとの1種の複合繊維であるものが好ましい中でも製造が簡便で生産安定性が高いことから、分割型複合繊維を用いるのが最も好ましいものである。
【0021】
これら複合繊維から脂肪族ポリエステル成分をアルカリ加工により溶出した後のポリアミド繊維の単繊維繊度は、1デシテックス以下であることが好ましい。ポリアミド繊維の単繊維繊度が、1デシテックスを超える場合、特に人工皮革の基材として不織布を用いた際に人工皮革の風合いが硬くなる傾向があるため好ましくない方向である。より好ましいポリアミド繊維の単繊維繊度は0.5デシテックス以下であり、さらに好ましくは0.3デシテックス以下のものである。
なお本発明における単繊維繊度は、試料からランダムに小片サンプル10個を採取し、走査型電子顕微鏡等で500〜3000倍の写真を撮影し、各サンプルから10本ずつ、計100本の繊維の断面積を測定して、それらの平均値を算出し、これを円形繊維の繊維径に換算し、ポリマーの密度で補正して求められるものである。
【0022】
また本発明の複合繊維におけるポリアミド成分と脂肪族ポリエステル成分の重量割合は、ポリアミド:脂肪族ポリエステル=20:80〜80:20の範囲であることが好ましい。ポリアミド成分の重量割合が20重量%を下回る場合、溶出成分の割合が多いため生産性が低く好ましくない方向である。ポリアミド成分の重量割合が80重量%を超える場合、ポリアミド繊維としての極細化が不十分となる傾向であり好ましくない方向である。より好ましいポリアミド成分と脂肪族ポリエステル成分の重量割合は、ポリアミド:脂肪族ポリエステル=25:75〜75:20、最も好ましくはポリアミド:脂肪族ポリエステル=30:60〜60:30の範囲である。
【0023】
本発明の極細繊維発生型複合繊維からなる不織布の製法は、何ら限定されるものではないが、製造方法が簡便であり、生産能力に優れ、かつ得られる人工皮革機材の強度に優れる点から短繊維不織布、あるいは長繊維不織布からなることが好ましい形態である。
【0024】
本発明でいう短繊維不織布は、溶融したポリマーをノズルより押し出し、冷却した後、一旦巻き取って未延伸糸条とし、あるいは一旦巻き取ることなく連続して、これに1段または2段以上で冷延伸または熱延伸した後、カットして短繊維とし、カーディング、クロスラッピング等により得られたウェブにニードルパンチ処理等の機械的絡合を施すことにより一体化された不織布シートとする短繊維不織布が好ましい。
【0025】
また、かかる短繊維は、カットする前にスタフィングボックス法や押し込み加熱ギア法により、所定の捲縮加工を加えることができる。また、乾式法にて短繊維不織布を製造する場合には、短繊維の捲縮数は5〜50個/25mmが好ましく、より好ましくは10〜30個/25mmであり、また短繊維のカット長は10〜80mmが好ましく、より好ましくは20〜60mmである。すなわち、かかる捲縮数が5個/25mm未満の場合、開繊時に未開繊が生じやすく好ましくなく、また捲縮数が50個/25mmを越えると、均一な開繊が得られない場合があり、好ましくない。
【0026】
また、抄紙法にて短繊維不織布を製造する場合には、かかる短繊維のカット長は1〜25mmが好ましく、より好ましくは3〜15mmである。かかるカット長が1mmを下回る場合は、抄紙が困難となり、またカット長が25mmを越えると、抄紙により均一な不織布を得ることが困難となる場合があるので好ましくない。
【0027】
またさらに、本発明でいう長繊維不織布は、特に限定されるものではないが、溶融したポリマーをノズルより押し出し、これを高速吸引ガスにより紡糸速度1000〜5000m/minで紡糸し、吸引延伸した後、公知の開繊装置により繊維を開繊させ、移動コンベア上に繊維を捕集してウェブとし、これをニードルパンチ処理等によって機械的に絡合させることにより一体化された不織布シートとする、いわゆるスパンボンド法により製造されたものが好ましい。スパンボンド法により製造された長繊維不織布は、機械的強度に優れる点から加工安定性が高く、最も適した形態といえる。
【0028】
本発明のおける短繊維不織布、長繊維不織布におけるニードルパンチ処理は、針本数200〜8000本/cmであることが好ましい。かかる針本数が200本/cm未満では、表面繊維の緻密性に劣ることにより、所望の高精度の仕上げを得ることができず、8000本/cmを越えると、加工性の悪化を招くとともに繊維損傷が大きく、強度低下につながるため好ましくない。より好ましい針本数は500〜7000本/cm、最も好ましくは1000〜6000本/cmの範囲である。
【0029】
また、かかるニードルパンチ後の不織布の繊維密度は、表面繊維本数の緻密化の観点から、0.2〜0.5g/cmであることが好ましい。かかる繊維密度が0.2g/cmを下回る場合は、シートの表面平滑性に劣る傾向となり好ましくない方向であり、かかる繊維密度が0.5g/cmを超える場合は、不織布がペーパーライクになる傾向であり、風合いも硬くなり好ましくない方向である。より好ましい繊維密度は0.25〜0.4g/cmである。さらに前記ニードルパンチ処理の前後で、さらにウォータージェットパンチ処理を実施することも、繊維の絡合性を向上させる点で好ましいものである。かかるウォータージェットパンチ処理としては、5〜20MPaの水圧で、表裏両面を、それぞれ1回以上処理することが好ましい。かかる処理水圧が5〜20MPaの範囲であれば、絡合も適切に行われ不織布の強度も十分となる傾向がある。
【0030】
本発明の極細繊維発生型複合繊維不織布をアルカリ溶液処理により脂肪族ポリエステル成分を溶出除去することにより、極細繊維不織布を得ることができる。また、アルカリ溶液処理をした後に、極細繊維の絡合をより高め、緻密化させること及び極細繊維の開繊性を高め、平滑性を向上させるという点から、ウオータージェットパンチ処理等の高速流体流処理や、液流染色機、ウィンス染色機、ジッガー染色機、タンブラー、リラクサー等を用いた揉み処理を適宜組み合わせて実施しても良い。かかる高速流体流処理と揉み処理を組み合わせて行う場合には、揉み加工時の寸法変動を抑える点から、高速流体流処理を行った後に揉み処理を行うことが好ましい。かかる高速流体流処理としては、作業環境の点で水流を使用するウオータージェットパンチ処理が好ましく使用される。
【0031】
本発明の人工皮革の製造方法は、かかる極細繊維発生型複合繊維不織布を用いて、これをアルカリ溶液処理することにより脂肪族ポリエステル成分を溶出除去する前または後に、高分子弾性体を付与させるものである。さらに、アルカリ溶液処理をする前に高分子弾性体を一旦付与させ、アルカリ溶液処理した後、さらに高分子弾性体を付与させる方法も好ましい。かかる高分子弾性体は、表面凹凸や振動吸収のためのクッション、繊維形態保持などの役割を有する。
【0032】
本発明で用いる高分子弾性体は、特に限定はないが、例えば、ポリウレタンエラストマー、ポリウレアエラストマー、ポリウレタン・ポリウレアエラストマー、ポリアクリル酸樹脂、アクリロニトリル・ブタジエンエラストマー、スチレン・ブタジエンエラストマーなどを用いることができるが、中でもポリウレタンエラストマー、ポリウレタン・ポリウレアエラストマーなどのポリウレタン系エラストマーが好ましい。
【0033】
かかるポリウレタンとしては、ポリオール成分にポリエステル系、ポリエーテル系、ポリカーボネート系のジオールを用いたものを使用可能である。
【0034】
上記ポリエステル系ジオールとしては、アルカンジオールとジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とを通常のポリエステル生成反応に採用される条件下に反応させることによって得られる。かかるアルカンジオールの例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオールおよび1,10−デカンジオールなどが挙げられる。また、かかるジカルボン酸の代表例としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸など脂肪族ジカルボン酸、フタル酸、テレフタル酸およびイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。これらのジカルボン酸は単独または2種以上の混合物で使用される。中でも脂肪族ジカルボン酸が好適に用いられる。これらジカルボン酸はエステル形成性誘導体の形で用いてもかまわない。その際の代表例としては、上記例示のジカルボン酸のメチル、エチルエステルなどの低級アルキルエステルなどが挙げられる。上記のジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体は単独または2種以上の混合物で使用されてもかまわない。
【0035】
また、ポリラクトンジオールを用いることもでき、ポリ−ε−カプロラクトンジオールやポリ−β−メチル−d−バレロラクトンジオールなどが挙げられる。これらポリラクトンジオールは、アルキレングリコール等を開始剤として用いて、ラクトンを開環重合させることによって製造される。
【0036】
次に、前記ポリエーテル系ジオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどを繰り返し単位とするものが挙げられるが特に制限されない。
【0037】
また、前記ポリカーボネート系ジオールとしては、例えばアルキレングリコールと炭酸エステルとのエステル交換反応、あるいはホスゲンまたはクロル蟻酸エステルとアルキレングリコールとの反応などによって製造したものを使用することができる。
【0038】
かかるアルキレングリコールとしては、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールなどの直鎖アルキレングリコールや、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,8オクタンジオール、2,7−ジメチル−1,8−オクタンジオールおよび2,8−ジメチル−1,9−ノナンジオールなどの分岐アルキレングリコールを用いることができる。また、炭酸エステルの代表例としては、ジフェニルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネートおよびプロピレンカーボネートなどが挙げられる。
【0039】
本発明のポリウレタンを構成する、かかるポリマージオールと組み合わせる有機ジイソシアネートとしては、特に制限されることはなく、例えば耐熱性を重視する場合は、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートを使用することができるし、NOxや光による黄変を抑制したい場合は、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートやイソホロンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネートを用いることができる。さらに目的に応じてこれらのジイソシアネートを複数組み合わせて用いることもできる。
【0040】
また、上記ポリマージオール、ジイソシアネートと反応させる鎖伸長剤も特に制限されることもなく、有機ジオール、有機ジアミンおよびヒドラジン誘導体などを用いることができる。
【0041】
かかる有機ジオールの例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、メチルペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオールおよび1,10−デカンジオールなどの脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジオールや水添キシリレングリコールなどの脂環式ジオール、キシレングリコールなどを挙げることができる。
【0042】
かかる有機ジアミンの例としては、エチレンジアミン、イソホロンジアミン、キシレンジアミン、フェニルジアミンおよび4,4’−ジアミノジフェニルメタンなどを挙げることができる。ヒドラジン誘導体の例としては、ヒドラジン、アジピン酸ヒドラジドおよびイソフタル酸ヒドラジドなどを挙げることができる。
【0043】
本発明においては、さらに、かかる高分子弾性体には必要に応じて、着色剤、酸化防止剤、帯電防止剤、分散剤、柔軟剤、凝固調整剤、難燃剤、抗菌剤、防臭剤などの添加剤が配合されていてもよい。
【0044】
また、かかる高分子弾性体に用いる溶媒としては、N,N’−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等を好ましく用いることができる。また、水中にエマルジョンとして分散させた水系ポリウレタンを用いてもよい。
【0045】
かかる高分子弾性体の付与量は、人工皮革の柔軟性、表面タッチ、染色均一性などを考慮し、固形分として対極細繊維重量比で5〜75重量%の範囲が好ましい。より好ましい高分子弾性体の付与量は7〜70重量%、最も好ましくは10〜65重量%である。
【0046】
また、本発明の人工皮革基材の表面に、スプレーによる造面、グラビアによる造面、乾式造面等の方法によって表面被覆層を設けると、極細繊維層の効果により天然皮革調の表面感を有したシートを得ることができる。さらに、本発明の人工皮革基材の表面に、バフィング等の起毛処理を行うことによって、スエード調あるいはヌバック調のシートを得ることもできる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0048】
また実施例で用いた評価法とその測定条件について以下に説明する。
【0049】
(1)ポリマーの粘度MFR(メルトフローレート:g/10min)
脂肪族ポリエステルとポリアミドのMFRは、ASTM D1238(測定温度240℃、測定荷重2.16kg荷重)に基づいて測定したものであり、各試料につき10回の測定を実施し、平均値を小数点以下第一位を四捨五入したものを、それぞれのポリマーのMFRとした。
【0050】
(2)重量平均分子量
ポリ乳酸樹脂の重量平均分子量は以下の方法で求めた。
試料のクロロホルム溶液にテトラヒドロフランを混合し測定溶液とし、これをWaters社製ゲルパーミテーションクロマトグラフ(GPC)Waters2690を用いて、25℃で測定し、ポリスチレン換算で重量平均分子量を求めた。各試料につき3回の測定を行い、平均値を算出し、千の位を四捨五入してそれぞれの重量平均分子量とした。
【0051】
(3)融点
PerkinElmer DSC−7を用いて2nd runでポリマーの溶融を示すピークトップ温度をポリマーの融点とした。このときの昇温速度は16℃/分、サンプル量は10mgとした。
【0052】
(4)単繊維繊度(デシテックス)
不織布を構成する繊維の単繊維繊度は、以下の方法で求めた。
不織布からランダムに小片サンプル10個を採取し、走査型電子顕微鏡等で500〜3000倍の写真を撮影し、各サンプルから10本ずつ、計100本の繊維の断面積を測定してそれらの平均値を算出し、これを円形繊維の繊維径に換算し、ポリマーの密度で補正して求めた。
【0053】
(5)目付(g/m):
不織布から縦50cm×横50cmのサイズの試料を3個採取して、各重量をそれぞれ測定し、得られた値の平均値を単位面積当たりに換算、小数点以下第一位を四捨五入して算出した。
【0054】
(6)紡糸性
不織布製造のためポリマーを溶融紡糸する際の紡糸性について、目視にて評価を実施した。糸切れやポリマーの複合状態に異常のないものを合格(○)、異常のみられたものを不合格(×)とした。
【0055】
(7)引張強力(N/cm)
サンプルサイズ、幅1cm×長さ20cmの試料をつかみ間隔10cm、引張速度10cm/minの条件でシート縦方向、横方向とも20個のサンプルについて定速伸長型引張試験機にて引張試験を行い、サンプルが破断するまで引っ張ったときの最大強力を引張強力とし、シート縦方向、横方向それぞれの平均値について小数点以下第一位を四捨五入して算出した。
【0056】
(8)風合い
10人のパネラーが官能評価で、○:柔らかくて良好、△:やや硬い、×:硬くて不良、の判定基準で評価し、6人以上が○としたものを合格とした。
【0057】
(実施例1)
融点170℃、MFRが155g/10minのポリ(L−乳酸)(PLA、光学純度99.5%以上)(50重量%)と、融点215℃でMFRが92g/10minのナイロン6(N6、50重量%)を原料とし、PLAは235℃、N6は240℃でそれぞれエクストルーダーにて溶融し、口金温度240℃で16分割型口金より紡出した後、エジェクターにより紡糸速度2500m/分で紡糸し、移動するネットコンベアー上に捕集し得られたウェブを、圧着面積が10%となるようなエンボスロールとフラットロールで、温度85℃、線圧30kg/cmの条件で熱処理し、仮接着シートを得た。
【0058】
次いで、この仮接着シートに脂肪酸の金属塩とシリコーンを主成分とする油剤を、繊維重量に対して1.5wt%付与した後、1バーブのニードル針を植え込んだニードルパンチ機にて針深度8mmにて3000本/cmでニードルパンチを行い、絡合不織布を得た。
【0059】
この不織布を液温約85℃、濃度約12%のポリビニルアルコール溶液に含浸させ、ニップロールで窄液し、繊維重量に対して固形分で20%のポリビニルアルコールを付与した後、乾燥した。その後、このシート状物をポリエステル・ポリエーテル系のポリウレタンのDMF溶液に含浸、ニップロールで窄液し、N6の繊維重量に対して固形分で30%のポリウレタンを付与し、液温35℃の30%DMF水溶液でポリウレタンを凝固させ、約85℃の熱水でDMFおよびポリビニルアルコールを除去した。該シート状物の表面をサンドペーパーにて研削し立毛を形成させた。
【0060】
立毛を形成させた該シート状物を80℃の4%水酸化ナトリウム水溶液にて30分処理し、乾燥させることでPLAを溶出させ、N6からなる極細繊維を発生させ人工皮革を得た。得られたN6からなる極細繊維の単繊維繊度は0.2デシテックスであり、人工皮革の目付は230g/mであった。
【0061】
(実施例2)
実施例1と同様の方法で得た仮接着シートに、脂肪酸の金属塩とシリコーンを主成分とする油剤を、繊維重量に対して1.5wt%付与した後、1バーブのニードル針を植え込んだニードルパンチ機にて針深度8mmにて1800本/cmでニードルパンチを行い、その後ウォータージェットパンチ処理を通過速度3m/minにて、表面から5MPaで1回、15MPaで表裏それぞれ1回、交互に処理して絡合不織布を得た。
【0062】
この絡合不織布を、液温約85℃、濃度約12%のポリビニルアルコール溶液に含浸させ、ニップロールで窄液し、繊維重量に対して固形分で20%のポリビニルアルコールを付与した後、乾燥した。次いで、得られたシート状物を80℃の4%水酸化ナトリウム水溶液にて30分処理し、乾燥させることでPLAを溶出させ、N6からなる極細繊維を発生させ、極細繊維不織布を得た。
【0063】
この極細繊維不織布を、ポリエステル・ポリエーテル系のポリウレタンのDMF溶液に含浸、ニップロールで窄液し、繊維重量に対して固形分で30%のポリウレタンを付与し、液温35℃の30%DMF水溶液でポリウレタンを凝固させ、約85℃の熱水でDMFおよびポリビニルアルコールを除去した。該シート状物の表面をサンドペーパーにて研削し立毛を形成させ、人工皮革を得た。得られたN6からなる極細繊維の単繊維繊度は0.2デシテックスであり、人工皮革の目付は230g/mであった。
【0064】
(実施例3)
実施例1と同様のN6(50重量%)とPLA(50重量%)を原料とし、PLAは235℃、N6は240℃で、それぞれエクストルーダーにて溶融し、口金温度240℃で中空16分割型口金より紡出した後、エジェクターにより紡糸速度2300m/分で紡糸し、移動するネットコンベアー上に捕集し得られたウェブを、圧着面積が10%となるようなエンボスロールとフラットロールで、温度85℃、線圧30kg/cmの条件で熱処理し、仮接着シートを得た。
【0065】
次いで、この仮接着シートを実施例2と同様の方法で、ニードルパンチ加工、ウォータージェットパンチ加工を行い、絡合不織布を得た。
【0066】
この絡合不織布を、ポリエーテル系水系ポリウレタンエマルジョンに含浸、ニップロールで窄液し、N6の繊維重量に対して固形分で40%のポリウレタンを付与し、感熱ゲル化凝固を行い、その後、このシート状物を80℃の4%水酸化ナトリウム水溶液にて30分処理し、乾燥させることでPLAを溶出させ、N6からなる極細繊維を発生させ、極細繊維不織布を得た。該極細繊維不織布の表面をサンドペーパーにて研削し立毛を形成させ、人工皮革を得た。得られたN6からなる極細繊維の単繊維繊度は0.1デシテックスであり、人工皮革の目付は245g/mであった。
【0067】
(実施例4)
実施例1と同様のN6(50重量%)とPLA(50重量%)を原料とし、PLAは235℃、N6は240℃でそれぞれエクストルーダーにて溶融し、口金温度240℃で16分割型口金より紡出し、油剤を付与した後、紡糸速度900m/minで紡糸し、未延伸糸を一旦巻き取った。これを90℃の加熱ロールで3.8倍に熱延伸し、得られた延伸糸条にスタフィングボックスを用いて14個/25mmの機械捲縮を付与し、長さ51mmに切断して短繊維を得た。この短繊維を原綿とし、カーディング、クロスラッピングを施してウェブを作製し、次いで、1バーブのニードル針を植え込んだニードルパンチ機にて針深度8mmにて3000本/cmでニードルパンチを行い絡合不織布を得た。
【0068】
この不織布を液温約85℃、濃度約12%のポリビニルアルコール溶液に含浸させ、ニップロールで窄液し、繊維重量に対して固形分で30%のポリビニルアルコールを付与した後、乾燥した。次いで、得られたシート状物を80℃の4%水酸化ナトリウム水溶液にて30分処理し、乾燥させることでPLAを溶出させ、N6からなる極細繊維を発生させ、極細繊維不織布を得た。
【0069】
この極細繊維不織布を、ポリエステル・ポリエーテル系のポリウレタンのDMF溶液に含浸、ニップロールで窄液し、繊維重量に対して固形分で30%のポリウレタンを付与し、液温35℃の30%DMF水溶液でポリウレタンを凝固させ、約85℃の熱水でDMFおよびポリビニルアルコールを除去した。該シート状物の表面をサンドペーパーにて研削し立毛を形成させ人工皮革を得た。得られたN6からなる極細繊維の単繊維繊度は0.2デシテックスであり、人工皮革の目付は250g/mであった。
【0070】
(実施例5)
融点170℃、MFRが105g/10minのPLA(光学純度99.5%以上)(60重量%)を海成分とし、融点215℃でMFRが92g/10minのN6(40重量%)を島成分として、PLAは235℃、N6は240℃でそれぞれエクストルーダーにて溶融し、口金温度240℃で36島の海島型口金より紡出し、油剤を付与した後、紡糸速度900m/minで紡糸し、未延伸糸を一旦巻き取った。これを90℃の加熱ロールで3.8倍に熱延伸し、得られた延伸糸条にスタフィングボックスを用いて14個/25mmの機械捲縮を付与し、長さ51mmに切断して短繊維を得た。この短繊維を原綿とし、カーディング、クロスラッピングを施してウェブを作製し、次いで、1バーブのニードル針を植え込んだニードルパンチ機にて針深度8mmにて3000本/cmでニードルパンチを行い絡合不織布を得た。
【0071】
この不織布を液温約85℃、濃度約12%のポリビニルアルコール溶液に含浸させ、ニップロールで窄液し、繊維重量に対して固形分で30%のポリビニルアルコールを付与した後、乾燥した。次いで、得られたシート状物を80℃の4%水酸化ナトリウム水溶液にて30分処理し、乾燥させることでPLAを溶出させ、N6からなる極細繊維を発生させ、極細繊維不織布を得た。
【0072】
この極細繊維不織布を、ポリエステル・ポリエーテル系のポリウレタンのDMF溶液に含浸、ニップロールで窄液し、繊維重量に対して固形分で30%のポリウレタンを付与し、液温35℃の30%DMF水溶液でポリウレタンを凝固させ、約85℃の熱水でDMFおよびポリビニルアルコールを除去し人工皮革基材を得た。得られた人工皮革基材の表面をサンドペーパーにて研削し立毛を形成させ人工皮革を得た。得られたN6からなる極細繊維の単繊維繊度は0.01デシテックスであり、人工皮革の目付は210g/mであった。
【0073】
(実施例6)
実施例5と同様の手法で得た、極細繊維の単繊維繊度0.01デシテックス、目付180g/mの人工皮革基材の片面に、離型紙造面により白顔料で着色した厚み50μmのポリウレタンフィルムを二液型ウレタン系接着剤を使用して貼り合わせ、100℃で1分間乾燥後、架橋反応を十分に行った後、離型紙を剥ぎ取り、目付213g/mの人工皮革を得た。
【0074】
【表1】

【0075】
得られた人工皮革の特性等は表1に示した通りであるが、実施例1、3〜5の人工皮革の製造においては、複合するポリマーの組み合わせが適切であるため、いずれも良好な紡糸性を示した。また実施例1〜6で得られたいずれの人工皮革も、環境影響の低いポリ乳酸樹脂を原料として使用しているにも関わらず、引張強力は縦、横いずれも50N/cm以上と優れた値を示し、かつモニターによる風合い評価も優れたものであった。
【0076】
(比較例1)
実施例1で使用したPLA(30重量%)と、融点215℃でMFRが32g/10minのナイロン6(N6、70重量%)を原料とし、PLAは235℃、N6は240℃でそれぞれエクストルーダーにて溶融し、口金温度240℃で16分割型口金より紡出した後、エジェクターにより紡糸速度2800m/分で紡糸したところ、糸切れが多発し、製糸性不良のためシートを採取できなかった。
【0077】
(比較例2)
島成分としてポリエチレンテレフタレート(PET、55重量%)、海成分としてポリスチレン(45重量%)を原料とし、いずれも285℃でエクストルーダーにて溶融し、口金温度285℃で36島の海島型口金より紡出し、油剤を付与した後、紡糸速度1200m/minで紡糸し、未延伸糸を一旦巻き取った。これを90℃の加熱ロールで2.8倍に熱延伸し、得られた延伸糸条にスタフィングボックスを用いて14個/25mmの機械捲縮を付与し、長さ51mmに切断して短繊維を得た。この短繊維を原綿とし、カーディング、クロスラッピングを施してウェブを作製し、次いで、1バーブのニードル針を植え込んだニードルパンチ機にて針深度8mmにて2500本/cmでニードルパンチを行い絡合不織布を得た。
【0078】
この絡合不織布を液温約85℃、濃度約12%のポリビニルアルコール溶液に含浸させ、ニップロールで窄液し、繊維重量に対して固形分で30%のポリビニルアルコールを付与した後、乾燥した。次いで、得られたシート状物をトリクロロエチレン溶液で処理することでポリスチレンを溶出させ、PETからなる極細繊維不織布を得た。
【0079】
この極細繊維不織布を、ポリエステル・ポリエーテル系のポリウレタンのDMF溶液に含浸、ニップロールで窄液し、繊維重量に対して固形分で23%のポリウレタンを付与し、液温35℃の30%DMF水溶液でポリウレタンを凝固させ、約85℃の熱水でDMFおよびポリビニルアルコールを除去した。該シート状物の表面をサンドペーパーにて研削し立毛を形成させ人工皮革を得た。得られたPETからなる極細繊維の単繊維繊度は0.01デシテックスであり、人工皮革の目付は210g/mであった。
【0080】
(比較例3)
実施例1で使用したN6を島成分(60重量%)とし、ポリエチレンを海成分(40重量%)として、混合して270℃でエクストルーダーにて溶融し、口金温度270℃で丸形孔口金より紡出し、油剤を付与した後、紡糸速度500m/minで紡糸し、未延伸糸を一旦巻き取った。これを90℃の加熱ロールで2.8倍に熱延伸し、得られた延伸糸条にスタフィングボックスを用いて14個/25mmの機械捲縮を付与し、長さ51mmに切断して短繊維を得た。この短繊維を原綿とし、カーディング、クロスラッピングを施してウェブを作製し、次いで、1バーブのニードル針を植え込んだニードルパンチ機にて針深度8mmにて1800本/cmでニードルパンチを行い絡合不織布を得た。
【0081】
この絡合不織布を、ポリエステル・ポリエーテル系のポリウレタンのDMF溶液に含浸、ニップロールで窄液し、N6繊維重量に対して固形分で40%のポリウレタンを付与し、液温35℃の30%DMF水溶液でポリウレタンを凝固させ、約85℃の熱水でDMFを除去した。、その後、このシート状物を85℃のトルエン溶液で処理しポリエチレンを溶出させ、N6からなる極細繊維を発生させ、人工皮革基材を得た。この基材表面をサンドペーパーにて研削し立毛を形成させ、人工皮革を得た。得られたN6からなる極細繊維の単繊維繊度は0.002デシテックスであり、人工皮革の目付は225g/mであった。
【0082】
得られた人工皮革の特性等は表1に示した通りであるが、比較例1については、選択したPLAとN6の粘度の組み合わせが不適切であったため紡糸性が不良であり、シート採取ができなかった。比較例2、3の人工皮革は紡糸性を始め操業上の問題はなく、強度や風合いも良好なものであったが、比較例2ではポリスチレンを溶出除去するのに有機溶剤であるトリクロロエチレンを使用する必要があり、環境負荷の高いものであった。また、比較例3ではポリエチレンを溶出除去するのに高温のトルエンを使用する必要があり、環境負荷が大きいものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ASTM D1238(測定温度240℃、測定荷重2.16kg荷重)に基づいて測定されるメルトフローレート(MFR)が20〜300g/10minの脂肪族ポリエステルと、MFRが下記関係を満たすポリアミドとを複合紡糸することにより得られた極細繊維発生型複合繊維からなる不織布を、アルカリ溶液処理して該脂肪族ポリエステルを抽出除去することを特徴とする極細繊維不織布の製造方法。
(脂肪族ポリエステルのMFR)/(ポリアミドのMFR)=0.3〜3.0
【請求項2】
前記ポリアミドと脂肪族ポリエステルからなる極細繊維発生型複合繊維が、分割型繊維、海島型繊維および混合型繊維から選ばれた少なくとも1種の繊維であることを特徴とする請求項1記載の不織布の製造方法。
【請求項3】
前記不織布が、短繊維不織布または長繊維不織布であることを特徴とする請求項1または2に記載の不織布の製造方法。
【請求項4】
ASTM D1238(測定温度240℃、測定荷重2.16kg荷重)に基づいて測定されるメルトフローレート(MFR)が20〜300g/10minの脂肪族ポリエステルと、MFRが下記関係を満たすポリアミドとを複合紡糸することにより得られた極細繊維発生型複合繊維からなる不織布を、アルカリ溶液処理により該脂肪族ポリエステル成分を抽出除去した後に、さらに高分子弾性体を付与することを特徴とする人工皮革基材の製造方法。
(脂肪族ポリエステルのMFR)/(ポリアミドのMFR)=0.3〜3.0
【請求項5】
ASTM D1238(測定温度240℃、測定荷重2.16kg荷重)に基づいて測定されるメルトフローレート(MFR)が20〜300g/10minの脂肪族ポリエステルと、MFRが下記関係を満たすポリアミドとを複合紡糸することにより得られた極細繊維発生型複合繊維からなる不織布に、高分子弾性体を付与した後、アルカリ溶液処理により該脂肪族ポリエステル成分を抽出除去することを特徴とする人工皮革基材の製造方法。
(脂肪族ポリエステルのMFR)/(ポリアミドのMFR)=0.3〜3.0
【請求項6】
前記ポリアミドと脂肪族ポリエステルからなる極細繊維発生型複合繊維が、分割型繊維、海島型繊維および混合型繊維から選ばれた少なくとも1種の繊維であることを特徴とする請求項4または5記載の人工皮革基材の製造方法。
【請求項7】
前記不織布が、短繊維不織布または長繊維不織布であることを特徴とする請求項4〜6いずれかに記載の人工皮革基材の製造方法。

【公開番号】特開2008−69463(P2008−69463A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−246385(P2006−246385)
【出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】