説明

不織布の製造方法

【課題】タテ・ヨコ強度のバランスに優れた不織布を一工程で生産できる不織布の製造方法を提供すること。
【解決手段】短繊維の繊維原料からローラルカード(梳繊式ウェブ形成機)12を用いて一枚以上のウェブを形成し、該ウェブ又は該ウェブの積層ウェブの構成繊維を交絡結合させて不織布を製造する方法。繊維原料として、捲縮がほとんどない束状の繊維(トウ(tow))からなる又は束状の繊維を主体とする第一繊維(非捲縮繊維)と、捲縮を有する繊維からなる第二繊維(捲縮繊維)とを所定比で混合してローラカード12に供給し、該ローラカード12のドッファー24、24Aから開繊(梳繊)後の繊維集合体をフライコーム26、26Aで叩きながら剥がしてウェブ28、28Aを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーディング、ガーネット等の梳繊式ウェブ形成機を用いてウェブを形成する工程を経て不織布を製造する方法に関する。さらに詳しくは、タテ・ヨコ強度の比率調整が容易な、特に、タテ・ヨコ強度比が1に近い不織布を製造するのに好適な不織布の製造方法に係る発明である。
【背景技術】
【0002】
従来から捲縮のある短繊維の合成繊維を使用した不織布は、製造方法の性質上、繊維の並び方向がタテ、あるいはヨコ方向のどちらかに秀でてしまい、タテ・ヨコ強度のバランスがうまく取れていなかった。
【0003】
それを解決するために、1)その不織布と比べ、タテ・ヨコ強度のバランスが異なる別の不織布をオンライン工程、或いはオフライン工程で貼り合わせたり、2)後工程で不織布をタテ、或いはヨコ方向に極端に引っ張ることにより繊維配向バランスを緩和させたりして、タテ・ヨコバランスを保っていた。
【0004】
しかし、上記1)の方法では生産が一工程では済まず工数が余分にかかってしまい、更には、別の不織布が必要となるためコストが嵩んでしまう。上記2)の方法では、引張りに限界があり、タテ・ヨコバランスの均一や逆転までは到底及ばないレベルであった。
【0005】
本発明の特許性に影響を与えるものではないが、タテ方向の強度にすぐれた不織布を製造する公知文献として、たとえば、特許文献1〜2等が存在する。
【特許文献1】特開平7−3604号公報(要約、特許請求の範囲等)
【特許文献2】特開昭61−70060号公報(特許請求の範囲、産業上の利用分野等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記にかんがみて、タテ・ヨコ強度のバランスに優れた不織布を一工程で生産できる不織布の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を達成すべく開発を進め、捲縮の殆どない束状の繊維からなる又は束状の繊維を主体とする非捲縮繊維と、捲縮を有する熱可塑性合成繊維等からなる捲縮繊維とを混合して、ローラカード等の梳繊式ウェブ形成機におけるドッファーに移行した梳繊(開繊)された繊維をドッファーコームでドッファーから剥がしてウェブを形成する際、ドッファーコームとしてフライコームを採用して叩くことにより、太い繊維束はヨコを向いた状態で、細かく開繊された繊維はタテを向いた状態となってウェブになり、上記の課題が解決される(タテ・ヨコバランスをコントロールした不織布を一工程で提供することができる。)ことを見出して、下記構成の本発明の方法に想到した。
【0008】
短繊維の繊維原料から梳繊式ウェブ形成機を用いて一枚以上のウェブを形成し、該ウェブ又は該ウェブの積層ウェブの構成繊維を交絡結合させて不織布を製造する方法において、
前記繊維原料として、捲縮がほとんどない束状の繊維(束ストランド又はトウ(tow))からなる又は束状の繊維を主体とする第一繊維(非捲縮繊維)と、捲縮を有する繊維からなる第二繊維(捲縮繊維)とを所定比で混合して梳繊式ウェブ形成機に供給し、該ウェブ形成機のドッファー又はシリンダーから開繊(梳繊)後の繊維集合体をフライコームで叩きながら剥がしてウェブを形成することを特徴とする。
【0009】
上記構成において、前記繊維原料として、前記第一繊維/前記第二繊維=30/70〜90/10の質量混合比であるものとするとともに、ウェブ(一枚)の目付量を20〜100g/m2とすることが望ましい。第一繊維が過少であると、不織布のヨコ強度を確保し難く、他方、第二繊維が過少であると繊維同士は交絡結合しないのでウェブの形成が困難となる。
【0010】
前記第一繊維を構成する束状の繊維の束繊維数が1k〜100kのチョップドストランドとすることが望ましい。束繊維数が過少であると、コームで叩き落とす際にヨコ(CD)を向き難く、不織布のヨコ強度を確保し難く、他方、過多であると、第二繊維が相対的に過少となり易く、上記理由と同様にしてウェブの形成が困難となる。
【0011】
前記第一繊維の材質を無機系繊維とし、前記第二繊維の材質を熱可塑性合成繊維とすることが望ましい。無機系繊維は、撚り加工されていないチョップドストランドが主流であり、また、強度の大きなものが多いためである。また、熱可塑性合成繊維は撚り加工されているものが主流であり、選択の幅がひろい。
【0012】
また、上記熱可塑性合成繊維は、熱融着成分からなる又は熱融着成分を含む接着繊維を50%以上含むものとすることが望ましい。不織布製造時に熱処理工程含む場合、又は、不織布を熱成型する場合、強度の高い不織布や成型品が得られる。
【0013】
そして、上記各製造方法は、前記不織布のタテ/ヨコ強度比を25/75〜90/10の範囲に調整して製造する方法に適用できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、非捲縮繊維と捲縮繊維を混合して、非捲縮繊維(チョップドストランド)の繊維束を敢えて残した状態でドッファーに移行させ、該繊維束をフライコーム(ドッファーコーム)により叩くことにより繊維配向が横方向(CD)になる。この状態でドッファーから剥がしてウェブを形成するため、一工程でタテとヨコの繊維配向性に優れた不織布を得ることが可能となる。
【0015】
すなわち、本発明の不織布の製造方法は、梳繊式ウェブ形成機においてドッファーを残っている繊維束をフライコームによって叩くことによりヨコを向かせて、繊維束の残っていないものについては、タテを向いたままの状態で剥がしてウェブとする。こうして調製したウェブをそのまま又は2枚以上重ねることにより構成繊維を交絡結合させることによりタテ・ヨコバランスの優れた不織布を製造できる。
【0016】
本発明の不織布は、機械的な条件を変更するだけで、一工程の中で任意のタテ・ヨコバランスの優れた不織布を得ることができ、多種多様な製品への展開が期待できるとともにコストパフォーマンス(対比費用効果)に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施の形態に基づいて詳細に説明する。なお、以下の説明で配合単位(「%」、「比率」等)は、特に断らない限り質量(重量)単位とする。また、本実施形態は、ドッファーから繊維集合体をドッファーコーム(フライコーム)で剥がす場合を例に採り説明するが、ドッファーを介さずにメインシリンダーから直接フライコームで剥がす場合にも適用できる。
【0018】
本発明の不織布の製造方法は、短繊維の繊維原料から梳繊式ウェブ形成機を用いて一枚以上のウェブを形成し、該ウェブ又は該ウェブの積層ウェブの構成繊維を交絡結合させて不織布を製造する方法を前提とし、該方法において、繊維原料として、捲縮がほとんどない束状の繊維(トウ(tow))からなる又は束状の繊維を主体(50%以上含む)とする第一繊維と、捲縮繊維からなる第二繊維とを所定比で混合して梳繊式ウェブ形成機に供給し、該ウェブ形成機におけるドッファーに移行した繊維(集合体)をドッファーコームで叩きながら剥がしてウェブを形成することを特徴とする。
【0019】
図1に梳繊式ウェブ形成機を備えた不織布製造装置の流れ図を示す。
【0020】
ここでは梳繊式ウェブ形成機として、ローラカード12を例に採るが、ガーネット機も代替使用できる。また、繊維交絡を熱接着交絡で行う熱溶融炉(乾燥炉)13を備えたものを例に採るが、熱溶融炉13の代わりにニードルロック等の機械的交絡装置に代替したり併用したりすることも勿論可能である。機械的交絡装置は、通常、熱溶融炉例の手前に配する。
【0021】
ホッパー14に所定比率の混合状態で供給された原料繊維は、フィーダ18からテーカインロール19及びトランスファーロール20を介して、ローラカード12のメインシリンダー16へ供給される。そして、メインシリンダー16は外周には、ストリッパ(stripper)21/ウォーカ(worker)22が複数組(図例では3組)配され、ウォーカ22とメインシリンダー16との間で繊維(集合体)はカーディング(梳繊:梳面)される。即ち、メインシリンダー16上の繊維(集合体)のストリッパ21/ウォーカ22への移行及び該ウォーカ22からメインシリンダー16への戻しを繰り返すことにより、繊維(集合体)の梳繊(開繊)が行われる。
【0022】
(1)上記第一繊維(束状の非捲縮繊維)としては、いわゆるチョップドストランド(裁断されたトウ)と称されるものを使用する。繊維束(トウ)の構成繊維数が1K(1000本)〜100K(100000本)の範囲に、更には、3k〜24kの範囲にあることが望ましく、カット長については、20〜70mmの範囲に、更には、35〜60mmの範囲にあることが望ましい。
【0023】
また、第一繊維の特性(トウ)は、引張強度(JIS L1015;以下同じ):1〜7GPa、更には0.3〜0.8GPa、曲弾性率(JIS L1015;以下同じ):100〜1000GPa、更には200〜500GPa、平均繊度:1〜100dtex、更には3〜12dtexのものを使用することが望ましい。
【0024】
第一繊維(非捲縮繊維)の材質は、上記特性を満足させるものであれば、材質に限定されず、有機合成繊維であってもよいが、それらの特性を得やすい、カーボン繊維(炭素繊維)、ガラス繊維、バサルト繊維、アルミナ繊維等の無機繊維が望ましい。
【0025】
(2)第二繊維(捲縮繊維)としては、捲縮度5〜20ケ/inch、更には8〜13ケ/inchのものを使用する。そして、第二繊維の他の特性は、カード通過性等の見地から、引張強度:0.1〜1GPa、更には0.3〜0.8GPa、曲弾性率:0.4〜20GPa、更には2〜10GPa、平均繊度:1〜100dtex、更には3〜12dtexのものを使用することが望ましい。
【0026】
第二繊維の材質は、上記特性を有するものなら特に限定されないが、通常、捲縮品が容易に得られるポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエステル(PET)、ナイロン、アラミド等の熱可塑性合成繊維を使用する。また、カット長としては21〜200mmの範囲が、更には、51〜76mmの範囲が望ましい。
【0027】
通常、ローラカード12のシリンダー16からドッファー24へ移行し剥ぎ取り位置であるフライコーム26へ来る繊維(集合体)の配向は、ローラカードをマシンダイレクト方向に見てほとんどタテを向いている。つまり、ドッファー24から剥ぎ取られた(紡出された)はウェブをそのまま熱接着交絡結合及び/又は機械的交絡結合(ニードルパンチング)して調製した不織布は、その繊維配向に従いタテ(経)、もしくはヨコ(緯)の引張強度どちらかにのみ秀でたものになってしまう。
【0028】
しかし、捲縮繊維(第二繊維)に非捲縮繊維(第一繊維)からなる混合原料繊維を、軽く開繊させて混合分散させてホッパー14を経てローラカード12に投入した場合、引張り強度のバランスの採れた不織布を得ることができる。その理由は、下記の如くであると推定される。
【0029】
混合原料繊維を、第一繊維の繊維束が殆ど残った状態でローラカード12(テーカインロール19、トランスファーロール20を介してメインシリンダー16)に投入することにより、メインシリンダー16からドッファー24(24A)に移行した繊維集合体中は、梳繊(開繊)後も、捲縮のないタテ方向(MD:machine direction)を向いて繊維束が残存している。なお、このドッファー24(24A)上にあるタテ方向の非捲縮繊維の繊維束をフライコーム26(26A)はで叩くことにより繊維束がヨコを向いた状態になりドッファー24(24A)から剥ぎ取られて(紡出されて)ウェブ28(28A)となる。
【0030】
即ち、捲縮繊維ならば、その繊維のデニールやカット長、供給量によって違いはあるが、カーディング(梳繊)の工程中に繊維の塊がほとんど消えて繊維が1本ずつになる程度まで開繊され、それぞれが軽く絡み合いウェブ状となってドッファー24(24A)へ移行する。しかし、非捲縮繊維は、その剛直性の故に、繊維同士が絡み合うことなく、単独でほとんど浮いた状態の繊維束として残存している。この浮いた繊維束をフライコームで叩くことによりMDの繊維束が横方向(CD:cross direction)に向く。このCDに向く現象は繊維束が太いほど顕著に発生する。
【0031】
つまりヨコのバランスを稼ぎたいときには、トウ(繊維束)の構成繊維数の大きいものを選択して、カードから剥ぎ取られる(紡出される)際に繊維束の太いものを多く残してやることによりヨコを向く繊維を多くしてやる。但し、カード投入前の予備開繊の状態やカード内部のアクションの状態によっても繊維束の太さをコントロール(調節)することができる。
【0032】
なお、上記のカーディングに用いるローラカードは、合成繊維をカーディングできるものであれば特に限定されない。少なくともトランスファーロール20、メインシリンダー16、ドッファー24、24Aを備えているのが望ましい。また使用するドッファーコームは、フライコーム26、26Aでなければならない。ロータリーコームとすると、繊維束はそのままタテを向いた状態で排出されてしまう。
【0033】
なお、フライコーム26(26A)とは、図2に示すようなもので、遥動回転する回転軸35に平行に先端側が波状とされたコーム板36が複数本(図例では4本)のアーム37を介して取り付けたものである。図例中、38はフライコーム26(26A)の遥動アーム取り付けブロックである。
【0034】
また、ローラカード12は、シングルドッファー型、ダブルドッファー型、トリプルドッファー型、又は2系列ストレートカードにすることにより、繊維配向性の異なるウェブをそれぞれ形成(紡出)できる。
【0035】
図1に示すダブルドッファー型のローラカード12の場合を例に採り説明をする。
【0036】
第一ドッファー24には第一繊維(非捲縮繊維)が太い繊維束の状態で移行するため、第一ドッファー24からはヨコを向いた第一繊維が多い状態のウェブが形成される。また、第二ドッファー24Aには第一繊維の開繊が進んだ細い繊維束の状態で移行するため、第二ドッファー24Aからは第一繊維(非捲縮繊維)がタテを向いた第一繊維が多い状態のウェブが形成される。第一ドッファーと第二ドッファーの間でも開繊が進むためである。
【0037】
つまり、2枚のウェブを同時に重ねることにより繊維配向性のタテ・ヨコのバランスが採れた見かけ上1枚のウェブを手に入れることができる。
【0038】
なお、ダブルドッファーの方がシングルドッファーに、比して、開繊度が相違するウェブを重ね合わせるため、タテ・ヨコバランスが採り易くなるとともに、生産性も2倍近く向上する。
【0039】
更にはそのウェブの後工程でも大きく繊維配向が変わってくる。ウェブ排出後、一般的なクロスレイヤーでウェブを積層させニードルパンチにより繊維を交絡させシート状にする。この工法は、カーディング工程で排出されたウェブ状態では非捲縮繊維束はヨコを向いて排出されているが、クロスレイヤーで積層することによりその繊維束の向きがニードルパンチングマシンのダイレクト方向(送り方向)に見ると向きがタテ方向に逆転され、更にはニードルパンチング工程中の引張によって、大きくタテ方向に強度を持たせることが可能となる。この工法においては、カーディング工程の繊維配向とニードルパンチング工程の組み合わせにより、タテ・ヨコバランスを自由自在に調節することが可能となる。
【0040】
ただし、この工法においては、第一繊維(非捲縮繊維)の多い(繊維束の多い)ウェブは、繊維同士の絡みが弱い為、ウェブ自体は強度が弱くスケが多いのでクロスレイヤ―で積層させるウェブの枚数をある程度多くしてやる必要がある。このため、目付が100g/m2程度より低い目付の不織布の生産は非常に難しくなる。
【0041】
そこで別の工法としてカードから排出されたウェブをクロスレイヤ―で積層させた後、ニードルパンチングにより機械的交絡結合させるのではなく、図1に示す如く、熱溶融、冷却固化する工法がある。
【0042】
これは、第二繊維(捲縮繊維)の構成繊維である熱可塑性合成繊維の半分以上を接着繊維とするものである。接着繊維としては、単一型熱融着繊維、複合型熱融着繊維のどちらでもよい。単一型熱融着繊維としてポリプロピレン(PP)繊維やポリエチレン(PE)繊維を好的に使用できる。また、複合型熱融着繊維とは、融点の異なるポリマーで所定横断面を有する繊維で、芯鞘型(コア・シースタイプ)、並列型(サイド・バイ・サイドタイプ)等がある。この複合型熱融着繊維にはPP/PE、PP/EVA、PET/PE、PET/PET等が知られている。
【0043】
第一繊維(非捲縮繊維)と第二繊維(捲縮繊維)とは、通常、前者/後者=30/70〜90/10、望ましくは、50/50〜70/30の混合比で混合する。第二繊維(捲縮繊維)の割合が過少であると、繊維相互の熱接着交絡点が少なく、不織布に十分な強度を得難い。他方、第一繊維(非捲縮繊維)の割合を過少であると、ローラカードからドッファー上の移行するウェブ状のヨコを向く繊維束が少なくなってしまい、タテ・ヨコ強度の調節が困難となる。またウェブ(一枚)の目付においては30〜100g/m2望ましい。
【0044】
この工法の場合、カードから排出されたウェブをそのままシート状にする為、カードの能力により上限目付の限界がある(例えば、100g/m2)。目付けが上限限界を超えると、極端に分散性が落ち、塊ムラやカードの破損につながるおそれがある。
【0045】
上記の熱溶融・固化させてシートを得るには、接着繊維(熱溶融接着成分)を含むウェブ28、28Aを、挟圧コンベア32、32で挟んだ状態で熱溶融炉13を通過させて加熱し、その挟んだ状態のまま冷却炉15で冷却させる。
【0046】
ここで挟圧コンベア32、32は、耐熱性フッ素樹脂でコーティングされたガラスクロスベルトや、表面をフッ素樹脂でコーティングされたガラス繊維、またはアラミド繊維を使用したメッシュ状ベルトを好適に使用できる。これらのベルト類をフッ素樹脂でコーティングしていないと溶融樹脂がベルト表面に付着し離型が不可能になり熱接着不織布を得ることができない。
【0047】
この際の加熱温度は、接着繊維の溶融成分が溶融する温度以上であり、溶融成分がポリプロピレンの場合は180℃以上が望ましい。
【0048】
この場合はウェブ積層体28、28Aは加熱、冷却が連続しているので、接着繊維から熱溶融成分のウェブ積層体の界面への移行が円滑に行われ、さらに、加熱から冷却までの温度変化にタイムラグがあるので、プレスによる溶融成分の溶け込みが容易になり、強度の強いシートを得ることが可能になる。
【実施例】
【0049】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。なお、実施例中の引張強度(引張強さ)は「JIS L−1085」に規定される方法に準じて測定した。
【0050】
下記において、加熱溶融手段である、熱溶融炉13は、270℃の熱媒オイルの循環で加熱された熱交換器を通過した熱風が循環するものを使用した。ウェブを積層圧着させる挟圧コンベア32、32は、フッ素樹脂でコーティングしたアラミド製のメッシュコンベアを使用した。
【0051】
<実施例1>
不織布に使用する繊維として、非捲縮繊維が炭素繊維(トウの繊維本数:12K、繊維長:35mm、混合割合:50%)、熱可塑性合成繊維がポリプロピレン短繊維(融点:170℃、繊度:6.6dtex、繊維長:51mm、混合割合:50重量%)をそれぞれブレンダーに供給して混綿した。
【0052】
そしてこの混合綿をホッパー14に投入し、フィーダ18から、巾2000mmのテーカインロール19、トランスファ−ロール20を介して、メインシリンダー16、第一・第二ドッファー24、24A、フライコーム(ドッファーコーム)26、26Aを備えたローラカード12にフィーダ18により連続的に供給した。
【0053】
ローラカード12で調製したウェブ28、28Aをそのまま連続的に積層しながら、押圧コンベア32、32に挟みこみ、熱溶炉の中に送りこみ溶融させた。その時の材温をサーモラベルで確認すると185℃を示していた。さらにそのまま熱溶融に連続して常温の空気が循環する冷却炉を通過させて、固化を行った後挟圧コンベア32、32から分離し、目付50g/m2の不織布を調製した。
【0054】
該不織布の引張強さを測定したところ、タテが30N/5cm、ヨコが24N/5cmであった。
【0055】
<実施例2>
実施例1において、メインシリンダー16の回転速度を25%速くする以外は実施例1と同様にして調製した。該不織布の引張強さを測定したところ、タテが42N/5cm、ヨコが15N/5cmであった。
【0056】
<実施例3>
不織布に使用する繊維として、非捲縮繊維がバサルト繊維(トウの数:6K、繊維長:50mm、混合割合:70重量%)、熱可塑性合成繊維がポリエステル短繊維(繊度:3.3dtex、繊維長:51mm、混合割合:30%)をそれぞれブレンダーに供給して混綿した後、この混綿(繊維集合体)をホッパーに供給する際に通過する開繊機のシリンダー回転数を機械の能力の最低条件120min-1まで下げて、バサルト繊維の開繊状態を抑えた。
【0057】
この混合綿を巾1300mmのテーカインロール19、トランスファーロール20、メインシリンダー16、3組のストリッパ21/ウォーカ22、第一ドッファー24、フライコーム26を備えたローラカード12に連続的に供給した。このときのメインシリンダー16の速度は機械能力の最低条件(200min-1)まで落としてバサルト繊維の開繊状態を抑えた。
【0058】
カードから得られたウェブをそのままクロスレイヤーに投入してウェブを積層させた。更に得られたウェブシートをドラフター工程で1本目ロールと最終ロールの速度差を160%つけて引っ張り、ニードルパンチ加工を施して不織布を調製した。このときのニードルポイントは100ポイント/cm2とした。
【0059】
該不織布の目付は300g/m2であった。また、該不織布の引張強さを測定したところ、タテが216N/5cm、ヨコが208N/5cmであった。
【0060】
<実施例4>
実施例3において、ホッパーに供給する際の開繊機のシリンダー回転速度を50%速くするとともに、カードのメインシリンダーの回転速度を50%速くし、ドラフター工程の速度差を110%にする以外は実施例3と同様にして調製した。
【0061】
該不織布の引張強さを測定したところ、タテが134N/5cm、ヨコが329N/5cmであった。
【0062】
<比較例1>
実施例1において、使用する繊維を熱可塑性合成繊維であるポリプロピレンの混合割合を100%にする以外は実施例1と同様にして不織布を調製した。
【0063】
該不織布の引張強さを測定したところ、タテが48N/5cm、ヨコが8N/5cmであり、繊維配向のバランスが大きくタテを向く結果となった。
【0064】
<比較例2>
実施例1において、カードの巾が1500mm、フライコームを使用せずにロータリ―コームを使用する以外は実施例1と同様にして不織布を調製した。
【0065】
該不織布の引張強さを測定したところ、タテが53N/5cm、ヨコが11N/5cmであり、繊維配向のバランスが大きくタテを向く結果となった。
【0066】
<比較例3>
実施例1において、使用する熱炉のメッシュコンベアの材質をフッ素樹脂加工の施していないステンレス製のコンベアを使用する以外は実施例1と同様にして不織布の調製を試みた。
【0067】
しかし、固化した溶融樹脂がコンベア表面に付着したまま離型することができず不織布を調製できなかった。
【0068】
<結果・考察>
上記各実施例・比較例の試験結果を表1に示す。
【0069】
表1から、各実施例の方法は、タテ/ヨコ強度バランスの優れているものを(実施例1・3)、又は、タテ/ヨコ強度バランスが所定範囲にあって(3/1〜1/3)、タテ強度がヨコ強度より高いもの(実施例2)、ヨコ強度がタテ強度より高いもの(実施例4)を得られることが分かる。これに対して、比較例1・2の方法で得られる不織布は、いずれもタテ強度がヨコ強度に比して格段に高いバランスのとれていないタテ配向の極端に高い不織布であることが分かる。
【0070】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の不織布の製造方法に使用する装置の一例を示す流れ図である。
【図2】図1に示す装置におけるフライコームの斜視図である。
【符号の説明】
【0072】
12 ローラカード
13 熱溶融炉
14 ホッパー
16 シリンダー
24 第一ドッファー
24A 第二ドッファー
26、26A フライコーム
28、28 ウェブ
30 不織布


【特許請求の範囲】
【請求項1】
短繊維の繊維原料から梳繊式ウェブ形成機を用いて一枚以上のウェブを形成し、該ウェブ又は該ウェブの積層ウェブの構成繊維を交絡結合させて不織布を製造する方法において、
前記繊維原料として、捲縮がほとんどない束状の繊維(束ストランド又はトウ(tow))からなる又は束状の繊維を主体とする第一繊維(非捲縮繊維)と、捲縮を有する繊維からなる第二繊維(捲縮繊維)とを所定比で混合して梳繊式ウェブ形成機に供給し、該ウェブ形成機のドッファー又はシリンダーから開繊(梳繊)後の繊維集合体をフライコームで叩きながら剥がしてウェブを形成することを特徴とする不織布の製造方法。
【請求項2】
前記繊維原料として、第一繊維/第二繊維=30/70〜90/10の混合比であるものとするとともに、ウェブ(一枚)の目付量を20〜100g/m2とすることを特徴とする請求項1記載の不織布の製造方法。
【請求項3】
前記第一繊維を構成する束状の繊維の束繊維数が1k〜100kであるチョップドストランドとすることを特徴とする請求項2記載の不織布の製造方法。
【請求項4】
前記第一繊維の材質を無機系繊維とし、前記第二繊維の材質を熱可塑性合成繊維とすることを特徴とする請求項1、2又は3記載の不織布の製造方法。
【請求項5】
前記熱可塑性合成繊維を、熱融着成分からなる又は熱融着成分を含む接着繊維を50%以上含むものとすることを特徴とする請求項4記載の不織布の製造方法。
【請求項6】
前記不織布のタテ/ヨコ強度比を25/75〜90/10の範囲に調整することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の不織布の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−31569(P2008−31569A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−203295(P2006−203295)
【出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【出願人】(000149446)株式会社オーツカ (7)
【Fターム(参考)】