説明

不織布の製造方法

【課題】溶剤に対する添加剤の溶出が少ない不織布を製造できる不織布の製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも1種のポリオレフィンから不織布を製造する不織布の製造方法であって、
エチレン性不飽和結合を有するモノマーの重合前又は重合中に、該エチレン性不飽和結合を有するモノマー100質量部に対して、下記一般式(1)で表されるフェノール系酸化防止剤を有機アルミニウムでマスキング処理したもの0.001〜0.03質量部、及び、リン系酸化防止剤0.001〜0.04質量部を、触媒系、重合系又は配管に添加し、該モノマーを重合させることにより得られるポリオレフィンを用いることを特徴とする不織布の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布の製造方法に関し、詳しくは、着色が少なく、溶剤に対する添加剤の溶出量が少なく、剛性に優れた不織布を製造することのできる不織布の製造方法に関する。
【0002】
不織布を得る方法としては、例えば、スパンボンド法、メルトブローン法、スパンレース法、サーマルボンド法、ケミカルボンド法、エアレイド法、ニードルパンチ法、フラッシュ紡糸等があり、種々の繊維径の繊維を用いて不織布が製造されている。
【0003】
不織布の用途としては、車、列車、航空機、劇場等の座席用シートカバー、クッション材、医療用の感染防止不織布、除菌ワイプス、生理用品、オムツ、オムツカバー等の衛生用品のトップシート、ソックス、下着、白衣、カバー、シーツ、カーテン、テーブルクロス、マット、枕カバー、トイレタリー用品、壁紙等の壁装材、ワイパー、布巾、ウェットティッシュ等の拭き布用途、コーヒー、紅茶等のティーバック形式の食品包材、ろ過用フィルター等、種々のものがあげられる。
【0004】
それらの中でも、液体ろ過用に用いられるフィルターには、耐アルカリ性、耐酸化性及び耐薬品性が良好で、かつ、安価で適度な剛性及び抗菌性に優れる、ポリオレフィンで製造されたフィルターが利用されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、メタロセン触媒で重合されたポリプロピレンホモポリマーを溶融紡糸法で成形した不織布を用いたフィルターカートリッジが開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、重量分子量分布曲線における分子量が2000以下の低分子量物及び分子量が100万以上の高分子量物の重量分率が、それぞれ1%未満で、重量平均分子量が5万〜20万のポリオレフィンを用いた不織布が開示されている。
【0007】
一般にポリオレフィンは、熱や光に対する安定性が乏しいため、高温環境や強い光に曝されると容易に酸化/劣化し製品として必要な寿命が得られない問題がある。この酸化/劣化を防止するために、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、ヒドロキシルアミン化合物、ヒンダードアミン化合物、紫外線吸収剤、酸捕捉剤等の安定剤を添加することが一般的に行われている。特に、フェノール系酸化防止剤はポリオレフィンの熱酸化に対する安定化効果が高く、貯蔵中における酸化及び変色に対する耐性をポリオレフィンに付与することができる為、ポリオレフィンの安定剤として利用価値が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開2005/084777号
【特許文献2】特開平9−296347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、フェノール系酸化防止剤はポリオレフィン中において移行性があり、溶剤にさらすとポリオレフィン樹脂中のフェノール系酸化防止剤が表面に溶出し、衛生上好ましくない問題があった。
【0010】
特許文献1及び2ではポリオレフィンの低分子量物の溶出を抑制するために、重量平均分子量が制御されたポリオレフィンを用いた不織布が提案されているが、重量平均分子量が制御されたポリオレフィンを用いても、ポリオレフィンに配合されたフェノール系酸化防止剤の溶出については解決されず、溶出した添加剤によって不織布にべたつきが生じたり、不織布に接触するものにコンタミの問題が生じたりする等、衛生上の問題があった。
【0011】
そこで本発明の目的は、溶剤に対する添加剤の溶出が少ない不織布を製造できる不織布の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、上記現状に鑑み鋭意検討を重ねた結果、特定のフェノール系酸化防止剤をエチレン性不飽和結合モノマーの重合前、又は重合中に添加することによって安定化されたポリオレフィンを用いることにより上記課題を解決しうることを見出し本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明の不織布の製造方法は、少なくとも1種のポリオレフィンから不織布を製造する不織布の製造方法であって、
エチレン性不飽和結合を有するモノマーの重合前又は重合中に、該エチレン性不飽和結合を有するモノマー100質量部に対して、下記一般式(1)で表されるフェノール系酸化防止剤を有機アルミニウムでマスキング処理したもの0.001〜0.03質量部、及び、リン系酸化防止剤0.001〜0.04質量部を、触媒系、重合系又は配管に添加し、該モノマーを重合させることにより得られるポリオレフィンを用いることを特徴とするものである。

(式中、R及びRは、各々独立して、水素原子、分岐を有してもよい炭素原子数1〜5のアルキル基、又は炭素原子数7〜9のアリールアルキル基を表し、Rは分岐を有してもよい炭素原子数1〜30のアルキル基、置換されていてもよい炭素原子数3〜12のシクロアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数6〜18のアリール基を表す。)
【0014】
本発明の不織布の製造方法においては、前記有機アルミニウム化合物が、トリアルキルアルミニウムであることが好ましい。
【0015】
本発明の不織布は、上記の不織布の製造方法で得られることを特徴とするものである。
【0016】
本発明の衛生用布、濾布、または、フィルターは、上記不織布からなることを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明の不織布の製造方法は、少なくとも1種のポリオレフィンから不織布を製造する不織布の製造方法であって、
エチレン性不飽和結合を有するモノマーの重合前又は重合中に、該エチレン性不飽和結合を有するモノマー100質量部に対して、下記一般式(1)で表されるフェノール系酸化防止剤を有機アルミニウムでマスキング処理したもの0.001〜0.03質量部、、及び、リン系酸化防止剤0.001〜0.04質量部を、触媒系、重合系又は配管に添加し、該モノマーを重合させてポリオレフィンを得る工程、および、
得られたポリオレフィンを用いて、不織布を製造する工程、
を備えることを特徴とするものである。

(式中、R及びRは、各々独立して、水素原子、分岐を有してもよい炭素原子数1〜5のアルキル基、又は炭素原子数7〜9のアリールアルキル基を表し、Rは分岐を有してもよい炭素原子数1〜30のアルキル基、置換されていてもよい炭素原子数3〜12のシクロアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数6〜18のアリール基を表す。)
【発明の効果】
【0018】
本発明により、着色が少なく、溶剤に対する添加剤の溶出量が少なく、剛性に優れた不織布を製造することのできる不織布の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に用いられるフェノール系酸化防止剤とは、下記一般式(1)で表される化合物である。

(式中、R及びRは、各々独立して、水素原子、分岐を有してもよい炭素原子数1〜5のアルキル基、又は炭素原子数7〜9のアリールアルキル基を表し、Rは分岐を有してもよい炭素原子数1〜30のアルキル基、置換されていてもよい炭素原子数3〜12のシクロアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数6〜18のアリール基を表す。)
【0020】
上記一般式(1)中のR及びRで表される分岐を有してもよい炭素原子数1〜5のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、ペンチル、第二ペンチル、第三ペンチル等が挙げられるが、特に第三ブチル基は、フェノール系酸化防止剤の安定化効果が良好となるので好ましい。
【0021】
上記一般式(1)中のR及びRで表される炭素原子数7〜9のアリールアルキル基としては、例えば、ベンジル、1−メチル−1−フェニルエチル等が挙げられる。
【0022】
前記一般式(1)中のRで表される、分岐を有してもよい炭素原子数1〜30のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、t−ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、t−オクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等が挙げられるが、本発明においては、炭素原子数が12〜24であるものが特に好ましい。アルキル基の炭素原子数が12より少ないフェノール系酸化防止剤は揮散しやすくなる場合があり、アルキル基の炭素原子数が24を超えると、フェノール系酸化防止剤の分子量に対するフェノールの割合が低下して、安定化効果が低下する場合がある。
【0023】
上記アルキル基は、酸素原子、硫黄原子、又は、下記のアリール基で中断されていてもよく、アルキル基中の水素原子が、ヒドロキシ基、シアノ基、アルケニル基、アルケニルオキシ基等の鎖状脂肪族基、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、2H−ピラン、4H−ピラン、フェニル、ビフェニル、トリフェニル、ナフタレン、アントラセン、ピロリジン、ピリンジン、インドリジン、インドール、イソインドール、インダゾール、プリン、キノリジン、キノリン、イソキノリン、又はシクロアルキル基等の環状脂肪族基で置換されていてもよい。また、これらの中断又は置換は組み合わされていてもよい。
【0024】
上記一般式(1)中のRで表される、置換されていてもよい炭素原子数3〜12のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基等が挙げられ、シクロアルキル基中の水素原子が、アルキル基、アルケニル基、アルケニルオキシ基、ヒドロキシ基、又はシアノ基で置換されていてもよく、該アルキル基は酸素原子、又は硫黄原子で中断されていてもよい。
【0025】
上記一般式(1)中のRで表される、炭素原子数6〜18の置換基を有してもよいアリール基としては、例えば、フェニル基、メチルフェニル基、ブチルフェニル基、オクチルフェニル基、4−ヒドロキシフェニル基、3,4,5−トリメトキシフェニル基、4−t−ブチルフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ベンジル、フェニルエチル基、1−フェニル−1−メチルエチル基等が挙げられる。また、アリール基中の水素原子が、アルキル基、アルケニル基、アルケニルオキシ基、ヒドロキシ基、又はシアノ基で置換されていてもよく、該アルキル基は酸素原子、又は硫黄原子で中断されていてもよい
【0026】
上記一般式(1)で表されるフェノール系酸化防止剤の具体的な構造としては、下記化合物No.1〜No.16が挙げられる。ただし、本発明は以下の化合物により制限を受けるものではない。

【0027】
上記一般式(1)で表されるフェノール系酸化防止剤を有機アルミニウムでマスキングしたものは、エチレン性不飽和結合を有するモノマー100質量部に対して上記フェノール系酸化防止剤が、0.001〜0.03質量部、好ましくは0.005〜0.02質量部となるように添加される。
【0028】
上記一般式(1)で表されるフェノール系酸化防止剤を有機アルミニウム化合物でマスキングしたものの添加方法としては、特に限定されるものではない。好適な一形態としては、該マスキングされたフェノール系酸化防止剤を、触媒フィードタンク、重合装置および製造ラインのいずれか1カ所以上へ添加して混合することが挙げられる。
【0029】
上記マスキングは、不活性な溶媒中で有機アルミニウム化合物とフェノール系酸化防止剤とを混合・撹拌することで行うことができる。混合・攪拌により、フェノール系酸化防止剤のフェノール性ヒドロキシル基の水素が有機アルミニウム化合物に置換される。上記フェノール系酸化防止剤と有機アルミニウム化合物を混合・攪拌してから触媒系、重合系および配管のいずれか1カ所以上に添加してもよく、フェノール系酸化防止剤と有機アルミニウム化合物をそれぞれ触媒系、重合系および配管のいずれか1カ所以上に添加して混合してもよい。
【0030】
フェノール系酸化防止剤のマスキング反応において、副生した化合物がモノマーの重合反応や重合物へ影響しない場合はそのまま用いることができるが、副生した化合物が重合を阻害する場合は、該化合物を減圧留去等により取り除いてから触媒系、重合系および配管のいずれか1カ所以上に添加することが好ましい。
【0031】
上記マスキングされたフェノール系酸化防止剤は、重合後に重合触媒の失活処理として加えられる水、アルコール又は酸等の水素供与性化合物と反応してフェノールが再生できることが望ましい。
【0032】
有機アルミニウム化合物及び前記一般式(1)で表されるフェノール系酸化防止剤の混合比としては、質量比で、有機アルミニウム化合物/前記一般式(1)で表されるフェノール系酸化防止剤=1/5〜100/1が望ましい。1/5より有機アルミニウム化合物が少ないと、過剰なフェノール系酸化防止剤が触媒活性に悪影響を及ぼす問題があり、100/1より有機アルミニウム化合物が多いと、重合後に有機アルミニウム化合物が重合体に残留し、重合体の物性が低下したり、触媒金属の成分比に影響して所望の重合を行えない場合がある。
【0033】
上記有機アルミニウム化合物の好ましい例としては、アルキルアルミニウム又はアルキルアルミニウムハイドライド等が挙げられ、アルキルアルミニウムが好ましく、特に好ましくはトリアルキルアルミニウムが好ましい。トリアルキルアルミニウムとは、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−へキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウム等が挙げられ、単独の化合物又はこれらの混合物を使用することができる。また、アルキルアルミニウム又はアルキルアルミニウムハイドライドと水との反応によって得られるアルミノキサンも同様に使用することができる。
【0034】
上記不活性な溶媒としては、脂肪族及び芳香族炭化水素化合物が挙げられる。脂肪族炭化水素化合物としては、例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタンおよび精製ケロシン等の飽和炭化水素化合物、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の環状飽和炭化水素化合物等が挙げられ、芳香族炭化水素化合物としては、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン又はガソリン留分などの化合物が挙げられる。これらの化合物のうち、n−ヘキサン、n−ヘプタン又はガソリン留分であるものが好ましく用いられる。不活性な溶媒中のトリアルキルアルミニウム塩の濃度は、0.001〜0.5mol/Lの範囲が好ましく、特に好ましくは、0.01〜0.1mol/Lである。
【0035】
本発明に用いられるリン系酸化防止剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ第三ブチル−5−メチルフェニル)ホスファイト、トリス〔2−第三ブチル−4−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニルチオ)−5−メチルフェニル〕ホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、ジ(デシル)モノフェニルホスファイト、ジ(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ第三ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6−トリ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(トリデシル)イソプロピリデンジフェノールジホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4’−n−ブチリデンビス(2−第三ブチル−5−メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)−1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタントリホスファイト、テトラキス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、9,10−ジハイドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)−2−エチルヘキシルホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)−オクタデシルホスファイト、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)フルオロホスファイト、トリス(2−〔(2,4,8,10−テトラキス第三ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン−6−イル)オキシ〕エチル)アミン、2−エチル−2−ブチルプロピレングリコールと2,4,6−トリ第三ブチルフェノールのホスファイト等が挙げられる。これらのうち、トリス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ホスファイトのような重合前に添加しても重合に悪影響を与えないリン系酸化防止剤が好ましい。
上記リン系酸化防止剤の使用量は、エチレン性不飽和結合を有するモノマー100質量部に対して、0.001〜0.04重量部、好ましくは、0.005〜0.03重量部である。
【0036】
上記リン系酸化防止剤を添加工程で添加する際は、前記不活性な溶媒と混合することが好ましいが、予め前記一般式(1)で表されるフェノール系酸化防止剤と一緒に不活性な溶媒と混合してもよく、前記一般式(1)で表されるフェノール系酸化防止剤とは別に前記不活性な溶媒と混合して、重合系、触媒系又は配管に添加するものであってもよい。
【0037】
本発明に用いられるエチレン性不飽和結合を有するモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロアルカン、スチレンあるいはこれらの誘導体等が挙げられる。
【0038】
本発明において用いられるエチレン性不飽和結合を有するモノマーは1種であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよいが、エチレン、プロピレン、又はα−オレフィンモノマーの組合せであるものが好ましい。例えば、エチレン単独、プロピレン単独、エチレン−プロピレンの組み合わせ、エチレン−プロピレン−ブテンの組み合わせ等が挙げられ、更にα−オレフィンモノマーと非共役ジエンモノマーとの組み合わせであってもよい。
【0039】
上記重合は、重合触媒の存在下で、窒素等の不活性ガス雰囲気中にて行われるが、上記の不活性な溶媒中で行ってもよい。また、重合を阻害しない範囲で、活性水素化合物、微粒子状担体、有機アルミニウム化合物、イオン交換性層状化合物、無機珪酸塩を添加してもよい。
【0040】
上記重合触媒は、特に限定するものではなく、公知の重合触媒を利用可能であり、例えば、周期表第3〜11族の遷移金属(例えば、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、鉄、ニッケル、鉛、白金、イットリウム、サマリウム等)の化合物があり、代表的なものとしては、チーグラー触媒、チタン含有固体状遷移金属成分と有機金属成分からなるチーグラー・ナッタ触媒、窒素、酸素、硫黄、リンなどのヘテロ原子が周期表第4〜第10族の遷移金属と結合した化合物であるブルックハート触媒、少なくとも一個のシクロペンタジエニル骨格を有する周期表第4族〜第6族の遷移金属化合物と助触媒成分からなるメタロセン触媒が挙げられるが、電子供与化合物を使用すると高品質の重合体が得られるので好ましい。
【0041】
上記電子供与性化合物としては、エーテル系化合物、エステル系化合物、ケトン系化合物、アルコキシシラン系化合物等が挙げられる。上記電子供与化合物は、単独の化合物を添加してもよく、必要に応じて複数の化合物を添加してもよい。
【0042】
上記エーテル系化合物としては、例えば、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、エチレンオキシド、テトラヒドロフラン、2,2,5,5−テトラメチルテトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられる。
【0043】
上記エステル系化合物としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸−n−プロピル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸−n−プロピル、フェニル酢酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸フェニル、トルイル酸メチル、トルイル酸エチル、アニス酸メチル、アニス酸エチル、メトキシ安息香酸メチル、メトキシ安息香酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジヘキシル、γ−ブチロラクトン、エチルセロソルブ等が挙げられる。
【0044】
上記ケトン系化合物としては、例えば、アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、アセトフェノン等が挙げられる。
【0045】
上記アルコキシシラン系化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、i−ブチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジプロピルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、t−ブチルメチルジメトキシシラン、t−ブチルエチルジメトキシシラン、t−ブチル−n−プロピルジメトキシシラン、t−ブチルイソプロピルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、t−ブチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、ジイソプロピルジエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、t−ブチルメチルジエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシラン等が挙げられる。
【0046】
重合反応を行う方法としては、エチレン性不飽和結合を有するモノマーの重合反応において通常用いられている方法を採用することができる。例えば、重合触媒の存在下、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、イソオクタンなどの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素、ガソリン留分、水素化ジーゼル留分などの不活性溶媒の存在下に液相で重合を行う方法、液化したエチレン性不飽和結合を有するモノマー自身を媒体とする重合方法、液相が実質的に存在しない条件下、気相で重合を行う方法、又はこれらを2種以上組み合わせた重合方法も使用可能である。また、重合は、回文式、連続式の何れでもよく、一段重合法又は多段重合法であってもよい。
【0047】
上記重合反応で用いられる重合槽としては、既存の重合設備における連続反応槽をそのまま使用すればよく、サイズ、形状、材質など本発明が従来の重合設備に対して特に限定されることはない。
【0048】
エチレン性不飽和結合を有するモノマーの重合は、重合を阻害しない範囲で、上記重合触媒以外の触媒構成成分、例えば担体等を含んでいてもよい。担体上に触媒を担持した場合、ポリオレフィンの粉体性状が向上し、造粒工程を省略することができる。
上記担体は種類に制限ないが、例えば、無機酸化物等の無機担体、多孔質ポリオレフィンなどの有機担体があげられ、複数を併用したものであってもよい。
上記無機担体としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄、酸化カルシウム、酸化亜鉛等が挙げられる。またこの他の無機担体としては塩化マグネシウム、臭化マグネシウム等のハロゲン化マグネシウム、マグネシウムエトキシドなどのマグネシウムアルコキシドなどが挙げられる。
【0049】
また、他の無機担体としては、イオン交換性層状化合物が挙げられる。イオン交換性層状化合物とはイオン結合等によって構成される面が、互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造を有するもので、含有するイオンが交換可能なものを言う。これらの具体例としてはカオリン、ベントナイト、タルク、カオリナイト、バーミキュライト、モンモリロナイト群、雲母群、α−Zr(HAsO・HO、α−Zr(HPO・HO、α−Sn(HPO・HO、γ−Ti(NHPO・HOなどがあげられる。
【0050】
上記有機担体としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートのようなポリエステル、ポリ塩化ビニル等であり、これらは例えばスチレン−ジビニルベンゼン共重合体のように架橋していてもかまわない。またこれら有機担体上に触媒が化学結合したものも使用可能である。
【0051】
これら担体の粒径は一般に0.1〜300μmであり、好ましくは1〜200μm、更に好ましくは10〜100μmの範囲である。粒径が小さいと微粉状の重合体となり、また大きすぎると粗大粒子が生成するなど粉体の取扱いが容易となる。
【0052】
これら担体の細孔容積は通常0.1〜5cm/gであり、好ましくは0.3〜3cm/gである。細孔容積は例えばBET法や水銀圧入法などにより測定できる。
【0053】
上記重合により得られたポリオレフィンには、必要に応じてさらに他の通常の他の添加剤を配合することができる。他の添加剤は、重合を阻害するものでなければ、エチレン性不飽和結合を有するモノマーの重合時に添加することができる。また、その他の配合方法としては、他の添加剤を目的に応じた配合量で上記ポリオレフィンと混合して押出機などの成形加工機で溶融混錬して造粒、成形する方法が挙げられる。
【0054】
他の添加剤としては、例えば、リン系酸化防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン化合物、重金属不活性化剤、造核剤、難燃剤、金属石鹸、ハイドロタルサイト、充填剤、滑剤、帯電防止剤、顔料、染料、可塑剤等が挙げられる。
【0055】
上記紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、5,5’−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)等の2−ヒドロキシベンゾフェノン類;2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−第三オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ第三ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−第三オクチル−6−ベンゾトリアゾリルフェノール)、2−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾールのポリエチレングリコールエステル、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−アクリロイルオキシエチル)−5−メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−5−第三ブチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−5−第三オクチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−5−第三ブチルフェニル〕−5−クロロベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−第三アミル−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−(3−メタクリロイルオキシプロピル)フェニル〕−5−クロロベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシメチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシプロピル)フェニル〕ベンゾトリアゾール等の2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類;2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシロキシフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−C12〜13混合アルコキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル〕−4,6−ビス(4−メチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2,4−ジヒドロキシ−3−アリルフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−ヘキシロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン等の2−(2−ヒドロキシフェニル)−4,6−ジアリール−1,3,5−トリアジン類;フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4−ジ第三ブチルフェニル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、オクチル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、ドデシル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、テトラデシル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、ヘキサデシル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、オクタデシル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、ベヘニル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート等のベンゾエート類;2−エチル−2’−エトキシオキザニリド、2−エトキシ−4’−ドデシルオキザニリド等の置換オキザニリド類;エチル−α−シアノ−β,β−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレート等のシアノアクリレート類;各種の金属塩、又は金属キレート、特にニッケル、クロムの塩、又はキレート類等が挙げられる。
上記紫外線吸収剤の使用量は、前記ポリオレフィン100質量部に対して、0.001〜5質量部、より好ましくは0.005〜0.5質量部である。
【0056】
上記ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルステアレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,4,4−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−ブチル−2−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノ−ル/コハク酸ジエチル重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−モルホリノ−s−トリアジン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−第三オクチルアミノ−s−トリアジン重縮合物、1,5,8,12−テトラキス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,5,8,12−テトラキス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕−1,5,8−12−テトラアザドデカン、1,6,11−トリス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕アミノウンデカン、1,6,11−トリス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕アミノウンデカン、ビス{4−(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル)ピペリジル}デカンジオナート、ビス{4−(2,2,6,6−テトラメチル−1−ウンデシルオキシ)ピペリジル)カーボナート、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製TINUVIN NOR 371等が挙げられる。
上記ヒンダードアミン系光安定剤の使用量は、前記ポリオレフィン100質量部に対して、0.001〜5質量部、より好ましくは0.005〜0.5質量部である。
【0057】
上記重金属不活性化剤としては、サリチルアミド−1,2,4−トリアゾール−3−イ ル、ビスサリチル酸ヒドラジド、ドデカンジオイルビス(2−(2−ヒドロキシベンゾイル)ヒドラジド)、ビス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸)ヒドラジド等が挙げられ、上記ポリオレフィン100質量部に対して、好ましくは0.001〜10質量部、より好ましくは、0.05〜5質量部が用いら れる。
【0058】
上記造核剤としては、例えば、安息香酸ナトリウム、4−第三ブチル安息香酸アルミニウム塩、アジピン酸ナトリウム及び2ナトリウムビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボキシレート等のカルボン酸金属塩、ナトリウムビス(4−第三ブチルフェニル)ホスフェート、ナトリウム−2,2’−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)ホスフェート及びリチウム−2,2’−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)ホスフェート等のリン酸エステル金属塩、ジベンジリデンソルビトール、ビス(メチルベンジリデン)ソルビトール、ビス(p−エチルベンジリデン)ソルビトール、及びビス(ジメチルベンジリデン)ソルビトール等の多価アルコール誘導体、N,N’,N”−トリス[2−メチルシクロヘキシル]―1,2,3−プロパントリカルボキサミド(RIKACLEAR PC1)、N,N’,N”−トリシクロヘキシルー1,3,5−ベンゼントリカルボキミド、N,N’−ジシクロヘキシル−ナフタレンジカルボキサミド、1,3,5−トリ(ジメチルイソプロポイルアミノ)ベンゼン等のアミド化合物等が挙げられる。
上記造核剤の使用量は、前記ポリオレフィン100質量部に対して、0.001〜10質量部、より好ましくは0.005〜5質量部である。
【0059】
上記難燃剤としては、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジル−2,6−キシレニルホスフェート及びレゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)等の芳香族リン酸エステル、フェニルホスホン酸ジビニル、フェニルホスホン酸ジアリル及びフェニルホスホン酸(1−ブテニル)等のホスホン酸エステル、ジフェニルホスフィン酸フェニル、ジフェニルホスフィン酸メチル、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド誘導体等のホスフィン酸エステル、ビス(2−アリルフェノキシ)ホスファゼン、ジクレジルホスファゼン等のホスファゼン化合物、リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラム、ポリリン酸アンモニウム、リン含有ビニルベンジル化合物及び赤リン等のリン系難燃剤、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、エチレンビス(ペンタブロモフェニル)、エチレンビステトラブロモフタルイミド、1,2−ジブロモ−4−(1,2−ジブロモエチル)シクロヘキサン、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリスチレン及び2,4,6−トリス(トリブロモフェノキシ)−1,3,5−トリアジン、トリブロモフェニルマレイミド、トリブロモフェニルアクリレート、トリブロモフェニルメタクリレート、テトラブロモビスフェノールA型ジメタクリレート、ペンタブロモベンジルアクリレート、及び、臭素化スチレン等の臭素系難燃剤等が挙げられる。
上記難燃剤の使用量は、前記ポリオレフィン100質量部に対して、1〜70質量部、より好ましくは、10〜30質量部である。
【0060】
上記充填剤としては、例えば、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、ガラス粉末、ガラス繊維、クレー、ドロマイト、マイカ、シリカ、アルミナ、チタン酸カリウムウィスカー、ワラステナイト、繊維状マグネシウムオキシサルフェート等が好ましい。これらの充填剤において、平均粒径(球状乃至平板状のもの)又は平均繊維径(針状乃至繊維状)が5μm以下のものが好ましい。
上記充填剤の使用量は、本発明を阻害しない範囲で適宜使用できる。
【0061】
上記滑剤は、成形体表面に滑性を付与し傷つき防止効果を高める目的で加えられる。滑剤としては、例えば、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド等の不飽和脂肪酸アミド;ベヘン酸アミド、ステアリン酸アミド等の飽和脂肪酸アミド等が挙げられる。これらは1種または2種以上併用して用いてもよい。
上記滑剤の添加量は、前記ポリオレフィン100質量部に対し、0.03〜2質量部、より好ましくは0.04〜1質量部の範囲である。0.03質量部未満では、所望の滑性が得られない場合があり、2質量部を超えると滑剤成分が重合体の成形品表面にブリードしたり、物性低下の原因となる場合がある。
【0062】
上記帯電防止剤は、成形品の帯電性の低減化や、帯電による埃の付着防止の目的で加えられる。帯電防止剤としては、カチオン系、アニオン系、非イオン系等、種々多様にある。好ましい例としては、ポリオキシエチレンアルキルアミンやポリオキシエチレンアルキルアミドないしそれらの脂肪酸エステル、グリセリンの脂肪酸エステル等が挙げられる。これらは1種または2種以上併用して用いてもよい。また、帯電防止剤の添加量は、前記ポリオレフィン100質量部に対し、好ましくは0.03〜2質量部、より好ましくは0.04〜1質量部である。帯電防止剤が過少の場合、帯電防止効果が不足し、一方過多であると、表面へのブリード、ポリオレフィンの物性低下を引き起こす場合がある。
【0063】
上記ポリオレフィンを用いて不織布を得る方法としては公知の方法を採用することができる。例えば、スパンボンド法、メルトブローン法(メルトブロー法)、スパンレース法、サーマルボンド法、ケミカルボンド法、エアレイド法、ニードルパンチ法、フラッシュ紡糸等が挙げられる。これらのうち、メルトブローン法またはスパンボンド法が好ましい。
【0064】
本発明の製造方法により得られる不織布は、その他の樹脂を芯成分とし、鞘成分として本発明にかかるポリプロピレンとした複合繊維からなる不織布であってもよい。その他の樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂や、ポリアミド、ナイロン、本発明にかかるポリオレフィンとは異なるポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。
【0065】
本発明の製造方法により得られる不織布の用途は特に限定されず、従来、不織布が用いられる用途全般に利用することができる。例えば、車、列車、航空機、劇場等の座席用シートカバー、クッション材、医療用の感染防止不織布、除菌ワイプス、生理用品、オムツ、オムツカバー等の衛生用品のトップシート、ソックス、下着、白衣、カバー、シーツ、カーテン、テーブルクロス、マット、枕カバー、トイレタリー用品、壁紙等の壁装材、ワイパー、布巾、ウェットティッシュ等の拭き布用途、コーヒー、紅茶等のティーバック形式の食品包材、ろ過用フィルター等の用途に利用することができる。これらの中でも、ろ過用フィルターとして好適に用いることができる。
【実施例】
【0066】
以下、実施例、比較例をもって本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例等によって制限を受けるものではない。なお、実施例・比較例における物性値は以下の方法により測定した。
【0067】
(溶出試験)
下記の方法で得られた不織布を10g切り取り、ステンレス製の容器に入れ、エタノール100mlを加えて密封し、70℃のオーブンに6時間静置させた。6時間経過後、オーブンからステンレス製の容器を取り出して室温まで冷却後、エタノールに抽出された添加剤及び樹脂について下記の方法で定量分析をした。
【0068】
(定量分析)
ガスクロマトグラフィー{装置:株式会社島津製作所製ガスクロマトグラフィーGC2010、カラム:SGE社製BPX5(30m×0.25mmlD×0.25μm)、インジェクション温度:330℃、検出器温度:330℃、測定条件:昇温速度15℃/min}にて、配合した添加剤をクロロホルムで溶かしたもので検量線を作成し、エタノールに抽出された添加剤の定量分析をした。溶出した樹脂の定量は、全溶出量から添加剤の溶出分の差を取り、樹脂の溶出量(mg)とした。
【0069】
(引張強さ)
JIS L1906の一般長繊維不織布試験方法に沿って、長手方向(マシンライン方向)の引張強さを測定した。シート状の不織布から5×30cmの矩形に切り出して試験試料とし、つかみ間隔20cm、10cm/minの引張速度で試験片を引張り、試験片が切断された時の荷重を引張強さとした。
【0070】
(紡糸時の糸切れ)
紡糸の際、紡糸ノズル近傍で後方から光を照らし、糸切れ状況(糸切れ発生の有無)を目視で観察した。
【0071】
(シートピンホール)
不織布の後方から、蛍光灯の均一な光を照らし、ピンホールの有無を確認した。
【0072】
(不織布の黄色度;Y.I.)
JIS K7105に準拠し、分光測色計(SC−P;スガ試験機株式会社製)にて、不織布の黄色度(Y.I.)を測定した。
【0073】
[実施例1、2及び比較例1]
(フェノール系酸化防止剤のマスキング)
トルエン50mlにトリイソブチルアルミニウムと下記表1記載の安定剤(フェノール系酸化防止剤)を、官能基のモル比で2:1となるように合計で5.0g加え、室温で30分撹拌することにより、重合触媒に対して不活性化した安定剤溶液を得た。
【0074】
(重合)
窒素置換した1000mlオートクレーブにトルエン300mlを加えた。メチルアルミノキサン(東ソー・ファインケム社製MMAO−3A:アルミニウムとして9mmol)、1.28mgのエチレンビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロライドを溶解したトルエン溶液2mlおよび表1記載の安定剤溶液を順次加えた。オートクレーブ内をプロピレン雰囲気に置換し、プロピレンで6kgf/cmGの圧力をかけ、50℃で1時間重合反応を行った。反応液にエタノール10mlを加え重合反応を停止させた後、減圧脱溶媒をおこない、次いで、真空中、60℃でポリマーを一昼夜乾燥することにより、ポリプロピレンパウダーを得た。
【0075】
(不織布の製造)
上記のポリプロピレンパウダー100質量部に対して、ステアリン酸カルシウム0.05質量部を添加・混合後、単軸押出機(装置:株式会社東洋精機製作所製ラボプラストミルマイクロ、押出温度250℃、スクリュー回転速度50rpm)で混練し、紡糸機(ノズル(0.45mmΦ、ノズル30ホール、吐出量1.0g/min、エアー供給圧:0.7kg/cm)を用いてメルトブロー法により紡糸し、30g/m目付の不織布を製造した。
【0076】
[比較例2〜4]
上記実施例1の重合において、安定剤溶液を重合時に加えず、造粒時に加えた以外は、上記実施例1と同様の手順でポリプロピレンパウダーを得た。
【0077】
【表1】

1)AO−1:3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−N−オクタデシルプロピオンアミド
2)AO−2:テトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン
3)P−1:トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト
4)重合時:オレフィン系モノマーの重合時に安定剤を添加
5)造粒時:オレフィン系モノマーの重合後、安定剤を添加・混合し、250℃で混練して造粒した。
6)添加剤の溶出量比とは、比較例1の酸化防止剤の溶出量を1としたときの、各配合における酸化防止剤の溶出量の比率を表す。
【0078】
上記比較例1及び2より、安定剤を合計0.1質量部配合したものは、製糸の糸切れやシートピンホールがなく、安定化された不織布を製造できたが、不織布をエタノールに晒すと添加剤が溶出した。また0.1質量部の配合量では、重合時と造粒時の添加方法の違いについては影響が見られなかった。
また、比較例3及び4より、安定剤の合計0.1質量部を0.02質量部に低減した場合、エタノールによる添加剤の溶出は抑制したものの、安定化効果を損ない、製糸の糸切れやシートピンホールが多発するようになり、不織布の安定生産が困難なものになった。また、溶出試験においても樹脂の溶出量が多く、衛生面の観点から問題が大きいことが確認できた。
【0079】
これらに対し、実施例1及び2より本願発明で製造された不織布は、不織布を溶剤にさらしても安定剤や樹脂の溶出がなく、また製糸の糸切れやシートピンホールの発生がなく、安定して不織布を製造できた。
本発明で得られる不織布は、衛生面に優れるため、ろ過用フィルター等で好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のポリオレフィンから不織布を製造する不織布の製造方法であって、
エチレン性不飽和結合を有するモノマーの重合前又は重合中に、該エチレン性不飽和結合を有するモノマー100質量部に対して、下記一般式(1)で表されるフェノール系酸化防止剤を有機アルミニウムでマスキング処理したもの0.001〜0.03質量部、及び、リン系酸化防止剤0.001〜0.04質量部を、触媒系、重合系又は配管に添加し、該モノマーを重合させることにより得られるポリオレフィンを用いることを特徴とする不織布の製造方法。

(式中、R及びRは、各々独立して、水素原子、分岐を有してもよい炭素原子数1〜5のアルキル基、又は炭素原子数7〜9のアリールアルキル基を表し、Rは分岐を有してもよい炭素原子数1〜30のアルキル基、置換されていてもよい炭素原子数3〜12のシクロアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数6〜18のアリール基を表す。)
【請求項2】
前記有機アルミニウム化合物が、トリアルキルアルミニウムである請求項1記載の不織布の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の不織布の製造方法で得られることを特徴とする不織布。
【請求項4】
請求項3記載の不織布からなることを特徴とする衛生用布、濾布、または、フィルター。
【請求項5】
少なくとも1種のポリオレフィンから不織布を製造する不織布の製造方法であって、
エチレン性不飽和結合を有するモノマーの重合前又は重合中に、該エチレン性不飽和結合を有するモノマー100質量部に対して、下記一般式(1)で表されるフェノール系酸化防止剤を有機アルミニウムでマスキング処理したもの0.001〜0.03質量部、、及び、リン系酸化防止剤0.001〜0.04質量部を、触媒系、重合系又は配管に添加し、該モノマーを重合させてポリオレフィンを得る工程、および、
得られたポリオレフィンを用いて、不織布を製造する工程、
を備えることを特徴とする不織布の製造方法。

(式中、R及びRは、各々独立して、水素原子、分岐を有してもよい炭素原子数1〜5のアルキル基、又は炭素原子数7〜9のアリールアルキル基を表し、Rは分岐を有してもよい炭素原子数1〜30のアルキル基、置換されていてもよい炭素原子数3〜12のシクロアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数6〜18のアリール基を表す。)
【請求項6】
前記有機アルミニウム化合物が、トリアルキルアルミニウムである請求項5記載の不織布の製造方法。

【公開番号】特開2012−107354(P2012−107354A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256326(P2010−256326)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】