説明

不織布テープ基材

【課題】屋外での使用などができるテープ基材から成り、耐水性および耐久性を有し、手切れ性、強度および凹凸面への追従性に優れている不織布テープ基材を提供すること。
【解決手段】繊維径が0.1〜30μmであり、見掛け密度が0.15〜0.50g/cm3であり、目付けが15〜150g/m2であり、長手方向の引張強力および破断伸度がそれぞれ20N/5cm以上および10%以上であり、部分熱圧着率が3〜30%であり、かつ該部分熱圧着部とは異なる長手方向に対して直交する線状または破線状の圧着部を有する合繊長繊維不織布からなることを特徴とする不織布テープ基材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐久性および手切れ性を有する不織布テープ基材に関する。さらに詳しくは、長繊維不織布に手切れ性のエンボス加工を行ない、手切れ性を改善し、且つ、潰し加工および/又は樹脂加工を行い、手切れ性および樹脂の裏抜け性を改善した不織布テープ基材に関する。
【背景技術】
【0002】
粘着テープ基材としては、和紙やクレープ紙などの紙基材が知られている。これらの紙基材を使用した粘着テープは、手で容易に切断することができる、所謂手切れ性が良好であることから、マスキングテープとして、作業性を重視する車両や建築物の塗装用やシーリング用として幅広く使用されている。最近では、曲面、粗面および凹凸面への追従性と接着性の良い物が多品種用意されている。しかしながら、紙基材のテープは、屋外で使用すると耐水性がなく、且つ、凹凸面などへの追従性および強度などが不足するなどの問題がある。
【0003】
下記特許文献1は、非破断性ステープルファイバー、バインダーファイバーおよび結合剤を含む基材にエンボス加工を行なったテープに関する。短繊維素材からなり、耐水性を付与できるが、強度および凹凸面等への追従性などが低下するなどの問題がある。
【0004】
下記特許文献2および3には、縦方向の延伸繊維層と縦方向に直交する延伸繊維層とを積層した積層体からなる基材に粘着層を形成させた粘着テープ、並びにこの直交積層不織布に樹脂加工およびエンボス加工した基材を用いた粘着テープが開示されている。しかし、手切れ性および耐水性などが優れているが、凹凸面への追従性が不足することなどの問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2003−503538号公報
【特許文献2】特開2003−193005号公報
【特許文献3】特許第4319169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、前記した従来技術の問題を解決し、手切れ性、強度および凹凸面への追従性に優れ、かつ耐水性などの耐久性にも優れた屋外での使用が可能な不織布テープ基材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、特定のエンボス加工を施すことにより、不織布をテープ状にした時に、長手方向に対して直交する方向に切断し易い、つまり、手切れ性を有する不織布となることを見出した。更に手切れ性を改善できる手段としては、潰し加工および/または樹脂加工を行なうことを見出し本発明に至った。
【0008】
即ち、本発明は、以下の通りのものである。
(1)繊維径が0.1〜30μmであり、見掛け密度が0.15〜0.50g/cm3であり、目付けが15〜150g/m2であり、長手方向の引張強力および破断伸度がそれぞれ20N/5cm以上および10%以上であり、部分熱圧着率が3〜30%であり、かつ該部分熱圧着部とは異なる長手方向に対して直交する線状または破線状の圧着部を有する合繊長繊維不織布からなることを特徴とする不織布テープ基材。
(2)前記線状または破線状の圧着部の幅が0.1〜2.0mmであり、列間隔が2.0〜10.0mmである上記1項に記載の不織布テープ基材。
(3)潰し加工および/または樹脂加工が施されている上記1または2項に記載の不織布テープ基材。
(4)前記引張強力が300N/5cm以下であり、破断伸度が80%以下である上記1〜3項のいずれか一項に記載の不織布テープ基材。
(5)前記合繊長繊維不織布の長手方向(タテ)と長手方向に直交する方向(ヨコ)の引張強力の比(タテ/ヨコ)が0.5〜3.5である上記1〜4項のいずれか一項に記載の不織布テープ基材。
(6)前記合繊長繊維不織布がポリエステル系繊維、ポリオレフイン系繊維およびポリアミド系繊維から選ばれた少なくとも1種類からなる上記1〜5項のいずれか一項に記載の不織布テープ基材。
(7)前記合繊長繊維不織布が繊維径0.1〜7μmの極細繊維層(M)と該極細繊維層の上下に積層された繊維径10〜30μm合成繊維層(S)とからなる上記1〜6項のいずれか一項に記載の不織布テープ基材。
(8)繊維径が0.1〜30μm、目付けが15〜150g/m2、部分熱圧着率が3〜30%の長繊維不織布に、長手方向に対して直交する方向に線状または破線状の圧着部を設けるエンボス加工を行ない、次いで、潰し加工および/または樹脂加工を行なうことからなる上記1項に記載の不織布テープ基材の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の不織布テープ基材は、屋外で使用できる耐水性などの耐久性を有し、且つ、十分な強度、手切れ性および凹凸面への追従性に優れる柔軟性を有している。従って、車両及び建築物などの塗装用、シーリング用、マスキングテープ、及び養生シートの固定用などに用いる粘着テープ用の基材、粘着テープとフイルムとを付けた養生用マスカーテープなどに広く用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】手切れ性付与破線状圧着部を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明に用いられる不織布は、機械的強度を付与するための部分熱圧着加工と、手切れ性を付与するための部分熱圧着加工と異なるエンボス加工が施されている。更に、構成繊維の配列が均等化され、長手方向(タテ)と長手方向に対して直交する方向(ヨコ)の引張強力の比(タテ/ヨコ)が特定範囲に入っている不織布が特に好ましい。本発明に用いる不織布は、スパンボンド法の長繊維不織布が薄くて、長手方向に高い強力が得られることから好ましい。
【0012】
本発明に用いる不織布を構成する合成繊維としては、繊維径が0.1〜30μm、好ましくは1〜25μm、より好ましくは2〜20μmである。30μm以下の細い繊維構成にすることで、不織布の表面層に樹脂加工する時に樹脂の浸透を防止でき、かつ、構成繊維の熱圧着による接着力を大きくできる。また、0.1μm以上の繊維構成にすることで、不織布の強力を強くできる。本発明に用いる不織布は、同一の繊維径を有する繊維で構成されていてもよいし、または極細繊維と太い繊維などの異なる繊維径を有する繊維の1層、又は多層の積層などから目的に応じて選択してもよい。例えば、繊維径が10〜30μの合繊繊維層(S)と、繊維径が0.5〜7μの極細繊維層(M)との積層がSM、SMS、SMMS、SMSMSなどの多層積層である層構成から選択できる。特に、多層構成とすると、繊維同士の接合を強固にできること、高い繊維の分散性が得られこと、隠蔽性が向上できること、および樹脂の裏抜けが少なくできることなどの特徴を有しており好ましい。
【0013】
不織布の目付けは15〜150g/m2、好ましく20〜120g/m2、更に好ましくは25〜100g/m2であり、見掛け密度は0.15〜0.50g/cm3、好ましくは0.18〜0.45g/cm3、より好ましくは0.20〜0.45g/cm3である。
目付けが15g/m2以下、見掛け密度が0.15g/cm3以下では、強度が低下し、構成繊維の間隙が大きくなり、粘着剤などの裏抜けが多くなる。一方、目付けが150g/m2以上、見掛け密度が0.5g/cm3以上では、強度が高くなり、構成繊維の間隙が小さくなり、樹脂などの加工剤などの裏抜けが少なくなるが、剛性が増して凹凸面への追従性及び手切れ性が低下する。
【0014】
本発明に用いる合成繊維としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、共重合ポリエステル、ポリ乳酸および脂肪族ポリエステルなどのポリエステル系繊維、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、共重合ポリエチレンおよび共重合ポリプロピレンなどのオレフイン系繊維、ナイロン−6、ナイロン−66および共重合ポリアミドなどのポリアミド系繊維が好ましい。更に、芯鞘構造およびサイドバイサイドなどの2成分から成る複合繊維、例えば、芯が高融点で鞘が低融点の複合繊維で、具体的には、芯がポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、共重合ポリエステル、ナイロン−6、ナイロン−66および共重合ポリアミドなどの高融点繊維、鞘が低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、共重合ポリエチレン、共重合ポリプロピレン、共重合ポリエステルおよび脂肪族ポリエステルなどの低融点繊維などの合成繊維が好ましく用いられる。
尚、前記繊維に、目的を損ねない範囲で、耐光剤、艶消し剤、顔料、柔軟剤および帯電防止剤などを添加してもよい。
【0015】
本発明の不織布テープ基材の製造方法を具体的に説明する。
本発明に用いる不織布は、特に、薄くて、長手方向に高い強度を有しているスパンボンド法が好ましい。
本発明に用いられる不織布は、テープ状にした場合、長手方向(タテ)に対して直交する方向(ヨコ)に手で容易に切れる、手切れ性が良いことが必要である。従って、手切れ性を良好にする条件として、第一には、部分熱圧着と、部分熱圧着と異なるエンボス加工が施されていることであり、第二には、不織布の構成繊維の配列が特定範囲にあることである。
【0016】
尚、合繊長繊維不織布の部分熱圧着は、不織布の機械的強度が高められ、不織布の後加工の生産性が高められるので好ましい。また、長手方向に対して直交する方向に切断し難い、手切れ性に逆効果の部分熱圧着は避けることが好ましく、例えば、1個当たりの圧着面積をできるだけ小さくすること、長手方向に平行する圧着部を設けないことなどが重要である。合繊長繊維不織布の部分熱圧着は、機戒的強度を得ることができ、且つ、後に行う手切れ性を付与するための部分熱圧着と異なるエンボス加工、潰し加工、樹脂加工などの加工を良好に行ない、生産性を高めるために必要である。そこで、部分熱圧着としては、1個当たりのエンボス面積が10mm2以下、好ましくは0.2〜6mm2の比較的小さい圧着部が不織布全体に均等に配置され、1個の形状としては、例えば線状、丸状、台形状、菱形状、楕円状または多角形状が挙げられるが、これらに限定されるものではない。1個の形状が、菱形状、楕円状または多角形状の場合は、端部が90度以上の角度を有することが好ましい。
不織布全体の表面積当たりの部分熱圧着率が3〜30%、好ましくは4〜25%の範囲にすることが好ましい。何故ならば、不織布が手切れ性を付与するためのエンボス加工をできる程度の強度を有していれば、最初の不織布の生産時に行う部分熱圧着率は小さい程、手切れ性を損なわないからである。
【0017】
第一に挙げたエンボス加工は、部分熱圧着と異なるエンボス加工であり、テープ基材にした場合、長手方向(タテ)に高い強度を有して、長手方向に対して直交する方向(ヨコ)の切断が容易にできること、つまり、エンボス加工された圧縮部に沿って手で容易に切断でき、且つ、長手方向に裂けるかぎ裂きまたは斜め裂きなどが生じ難いことが重要である。更に、テープとして使用後に、剥離する時にテープの層間剥離が生じないことが重要である。従って、手切れ性を付与するための部分熱圧着と異なるエンボス加工においては、線状または破線状の凹部形状の圧着部を熱圧着面積率が2〜20%、好ましくは3〜15%で不織布に設けることで、長手方向に対して直交する方向に切断し易い、つまり手切れ性を良くする効果が得られる。
【0018】
手切れ性を付与する具体的なエンボス模様の形状としては、長手方向(タテ)に対して直交する方向(ヨコ)に線状または破線状である。例えば、凹部が線状のエンボス加工としては、凹部(エンボス部)の幅が0.1〜2.0mm、好ましくは0.12〜1.0mm、より好ましくは0.15〜0.7mmであり、列間隔(ピッチ)が2〜10mm、好ましくは2.5〜8mm、より好ましくは3〜6mmである。凹部の幅が2mm以上、エンボスの列間隔が2mm以下では、手切れ性が良くなるが、長手方向の引張強度が低下し、且つエンボスロールの回転軸方向の磨耗による耐久性が低下する。一方、凹部の幅が0.1mm以下、エンボスの列間隔が10mm以上では、長手方向の引張強度が高くでき、且つ磨耗による耐久性が向上するが、手切れ性が低下する。
【0019】
図1は破線状の圧縮部を有するエンボス加工の説明図である。
凹部が破線状のエンボス加工としては、図1に示すように、エンボス部の凹部(エンボス部)Aと非エンボス部Bとが交互に形成され、ミシン目状となる。例えば、凹部(エンボス部)Aと非エンボス部Bの長さの比率(A/B)が1.0〜3.0、好ましくは1.1〜2.5、特に好ましくは1.2〜2.0である。1.0以上であれば、圧着部分の密度が高く、非圧着部分の密度が低いため、手で切断した時に切断しやすく、手切れ性が良好になる。逆に3.0以上であると、切れ易くなりすぎ、手切れ操作以外でも切断してしまうことがあり好ましくない。
また、凹部Aの幅は0.1〜2.0mm、好ましくは0.12〜1.0mm、より好ましくは0.15〜0.7mmであり、列間隔(ピッチ)Yは2〜10mm、好ましくは2.5〜8mm、より好ましくは3〜6mmである。凹部の幅が2mm以上、エンボスの列間隔が2mm以下では、手切れ性が良くなるが、長手方向の引張強度が低下し、且つ彫刻部の磨耗性による耐久性が低下する。一方、凹部の幅が0.1mm以下、エンボスの列間隔が10mm以上では、長手方向の引張強度が高くでき、且つ磨耗による耐久性が向上するが、手切れ性が低下する。
【0020】
手切れ性を付与するための部分熱圧着と異なるエンボス加工は、エンボスロールと平滑ロールの一対のロール間で行なわれる。エンボスロールの表面温度は常温(20℃)から不織布の融点以下、好ましくは50℃から不織布の融点より20℃低い温度、より好ましくは70℃から不織布の融点より50℃低い温度である。圧力は10〜1000N/cm、好ましくは20〜700N/cm、より好ましくは50〜500N/cmである。エンボス加工条件としては、エンボスロール表面温度が常温(20℃)以下、圧力が10N/cm以下では、手切れ性が低下して好ましくない。一方、不織布の融点以上、圧力が1000N/cm以上では、手切れ性は向上するが、熱ロールに融着するなどのエンボス加工性が低下して好ましくない。
【0021】
第二に挙げた不織布の構成繊維の配列に関しては、テープ状にした時に、長手方向に構成繊維の配列が多い場合は、長手方向に対して直交する方向に破れ難くなる。従って、不織布の構成繊維の配列が均等化されていることが好ましい、具体的には、長手方向(タテ)と長手方向に対して直交する方向(ヨコ)の引張強力の比(タテ/ヨコ)が0.5〜3.5であることが好ましく、さらに好ましくは0.7〜3.0、特に好ましくは0.8〜2.6である。引張強力の比が0.5以下では、長手方向に配列する繊維比率が低下するため強度が低下する。一方、引張強力の比が3.5以上では、長手方向の強度を高くできるが、手切れ性が低下する。
【0022】
本発明に用いられる不織布の手切れ性を一層良好にさせる方法として、更に、潰し加工および/または樹脂加工を行うことが挙げられる。つまり、手切れ性を付与するためのエンボス加工をした上に、潰し加工または樹脂加工のどちらかを行なうか、潰し加工と樹脂加工の両方を行なうことでより手切れ性を向上することができる。
潰し加工は、不織布の繊維密度を高くし、且つ、構成繊維の自由度を抑制させ、手切れ性を向上させることができる。潰し加工は、金属ロールと金属ロール、金属ロールと樹脂ロール、金属ロールとペーパーロール、および金属ロールとコットンロールなどの一対の平滑ロールを供えた装置を用いて、常温(20℃)から不織布の融点より20℃低い温度、好ましくは50℃から不織布の融点より40℃低い温度範囲で、10〜1000N/cm好ましくは20〜700N/cmの圧力範囲で平坦化加工を行なう。
【0023】
樹脂加工を行なうと、構成繊維の接着および繊維間隙の目止めをすることができ、手切れ性が更に向上する。また、樹脂加工を行なった不織布テープ基材は、粘着テープ用の粘着剤の塗布および離形剤の塗布などの時に、粘着剤および離形剤などの裏抜け防止ができて、テープ基材としてより好ましい。
【0024】
樹脂加工剤としては、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、スチレン−ブタジエンのゴム系樹脂、スチレンーブタジエンースチレンのゴム系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリビニル系樹脂、エチレレン−酢酸ビニル系共重合樹脂、塩化ビニル系樹脂およびウレタン系樹脂などの水分散性樹脂または溶剤分散性樹脂の1種または2種以上を組み合わせ、更に、目的に応じて次の添加剤、例えば、浸透剤、架橋剤、硬化剤、顔料および充填剤などを配合して用いられる。充填剤としては、例えば、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、珪藻土、タルク、ゼオライト、酸化チタンおよびシリカなどの1種または2種以上が混合して用いられる。
【0025】
樹脂加工剤の塗布方法は、前記樹脂および添加剤などを配合し、粘度調整した後に、浸漬方式、グラビア方式、グラビアオフセット方式、ロールコーテング方式、コンマコーテング方式およびナイフコーテング方式などの塗布方法で塗布される。その際の塗布量としては、不織布の重量に対して5〜80質量%、好ましくは10〜60質量%、より好ましくは15〜50質量%である。
【0026】
本発明の不織布テープ基材は、長手方向に高い強力を有して、切断し難く、且つ、テープの切断が手で容易に切断できる手切れ性を有していることと、凹凸のある壁面などに追従して接着できることが望まれる。従って、本発明に用いる不織布の長手方向の引張強力が20N/5cm以上、破断伸度が10%以上、好ましくは引張強力が20〜300N/5cm、破断伸度が10〜80%、より好ましくは引張強力が25〜260N/5cm、破断伸度が15〜60%である。引張強力が20N/5cm以下の場合は、施工加工時および再剥離加工時のテープ切断が生じ易くなる。破断伸度が10%以下の場合は、固定部の伸びが少なくできるが、凹凸面などへの追従性が低下する。
【0027】
本発明の不織布テープ基材は屋外に使用できる耐久性を有していることが好ましく、例えば、屋外で作業し、工事期間中でもテープ基材として強度保持されていることが好ましい。従って、屋外使用における簡易な耐久性評価として、促進試験方法のフエードメーターによる紫外線照射を、温度63℃で20時間行い、長手方向の引張強力の保持率を測定した。引張強力の保持率が50%以上であれば好ましく、さらに好ましくは60〜100%、特に好ましくは65〜100%である。保持率が50%未満の場合は、屋外に使用した場合に劣化し易いことと成る。
【実施例】
【0028】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。本発明における各特性値の測定方法は以下のとおりである。
(1)目付(g/m2):縦20cm×横25cmの試料を3カ所切り取り、重量を測定し、その平均値を単位当たりの質量に換算して求めた(JIS−L−1913)。
(2)繊維径(μm):顕微鏡で500倍の拡大写真を取り、任意の10本の直径を測定し、平均値で示した。
(3)厚み(mm):荷重10kPa下で任意に10箇所測定し、その平均値を厚みとした。
(4)見掛け密度(g/cm3):目付けと厚みから計算して求めた(目付け/厚み)。
【0029】
(5)引張強力(N/5cm)および破断伸度(%):JIS−L−1913に準じて、定長引張試験機を用いて測定した。幅5cm長さ30cmの試料を長手方向(機戒流れ方向)に3枚採取し、つかみ間隔20cmおよび引張速度10cm/minで、引張強力および破断伸度を求め、平均値で示した。
【0030】
(6)引裂強力(N):6.3cm×10cmの試験片を長手方向(機戒流れ方向)に5枚採取し、JIS−L−1913のペンジュラム法に準じてエレメンドルフ試験機を用いて測定し、その平均値で示した。
【0031】
(7)手切れ性:下記基準で判定した。
◎:テープ状にして、線状または破線状圧縮部に沿って容易に切断できる。
○:テープ状にして、線状または破線状圧縮部に沿って切断できる。
△:テープ状にして、線状または破線状圧縮部に対して、やや斜め方向に切断できる。
×:テープ状にして、線状または破線状圧縮部に沿って切断でき難く、長手方向のカギ裂けとなる。
【0032】
(8)凹凸追従性:下記基準で判定した。
◎:凹凸部の形状に馴染み、追従性が良好である。
○:凹凸部の形状に殆ど追従し、問題とならない程度である。
△:柔軟性、伸度がやや低く、凹凸部の形状に追従しない部分がある。
×:柔軟性、伸度が低く、凹凸部の形状に殆ど追従しない。
(9)耐久性:フエードメーターを用いて、紫外線を温度65℃で20時間照射後の長手方向(タテ)の引張強力を測定し、照射前の物性に対する保持率(%)で示した。
【0033】
[実施例1]
ポリプロピレン樹脂(MFR=400g/10分)を原料にしたメルトブロン繊維ウエブ(目付け3g/m2、繊維径4μm)の両面にポリプロピレン樹脂(MFR=12g/10分)を原料としたスパンボンド繊維ウエブ(目付け11g/m2、繊維径18μm)をネットコンベア上で積層し、一対のエンボスロール間で熱圧着して、部分熱圧着率7%のポリプロピレン不織布を得た(目付け25g/m2)。
得られたポリプロピレン不織布に長手方向に対して直交する方向に破線状の手切れ性を付与するエンボス加工を、温度110℃/100℃、圧力250N/cmの加工条件で行なった(エンボス模様:凹部の幅0.2mm、凹部の間隔3mm、1個の凹部の長さ2mm;凹部(エンボス部)と非エンボス部の長さ比率(エンボス部/非エンボス部):2/1;熱圧着面積率:3%)。
次いで、潰し加工および樹脂加工をこの順で行った。潰し加工としては、一対の金属平滑ロールと樹脂ロール間で、温度100℃/90℃、圧力200N/cmで平坦化加工した。樹脂加工としは、水溶性のアクリル酸エステルエマルジョン(DIC製ボンコートR3380)および浸透剤(イソプロピルアルコール)を用いて、樹脂塗布量が5g/m2になるように調液し、浸漬方法で塗布し、脱水、乾燥して本発明の不織布テープ基材を得た。得られた不織布テープ基材の特性を表1に示した。
本発明の不織布テープ基材は、手切れ性、強度および凹凸面への追従性に優れている不織布テープ基材であった。
【0034】
[実施例2]
ポリプロピレン樹脂(MFR=400g/10分)を原料にしたメルトブロン繊維ウエブ(目付け4g/m2、繊維径4μm)の両面にポリプロピレン樹脂(MFR=12g/10分)を原料としたスパンボンド繊維ウエブ(目付け18g/m2、繊維径18μm)をネットコンベア上で積層し、一対のエンボスロール間で熱圧着して、部分熱圧着率7%のポリプロピレン不織布を得た(目付け40g/m2)。
得られたポリプロピレン不織布に長手方向に対して直交する方向に線状の手切れ性のエンボス加工を、温度110℃/100℃、圧力250N/cmの加工条件で行なった(エンボス模様:幅0.25mm、線状の間隔3mm;熱圧着面積率:5%)。
次いで、潰し加工および樹脂加工をこの順で行った。潰し加工としては、一対の金属平滑ロールと樹脂ロール間で、温度100℃/90℃、圧力200N/cmで平坦化加工した。樹脂加工としては、水溶性のアクリル酸エステルエマルジョン(DIC製ボンコートAN200)および浸透剤(イソプロピルアルコール)を用いて、樹脂塗布量が7g/m2になるように調液して、浸漬方法で塗布し、脱水、乾燥して本発明の不織布テープ基材を得た。得られた不織布テープ基材の特性を表1に示した。
本発明の不織布テープ基材は、手切れ性、強度および凹凸面への追従性に優れている不織布テープ基材であった。
【0035】
[実施例3]
ポリプロピレン樹脂(MFR=12g/10分)を原料としたスパンボンド繊維ウエブ(目付け50g/m2、繊維径20μm)をネットコンベア上に堆積し、一対のエンボスロール間で熱圧着して、部分熱圧着率15%のポリプロピレン不織布を得た。次いで、手切れ性を付与するためのエンボス加工、潰し加工および樹脂加工を実施例1と同様に行なった。得られた不織布テープ基材の特性を表1に示した。
本発明の不織布テープ基材は、手切れ性、強度および凹凸面への追従性に優れている不織布テープ基材であった。
【0036】
[実施例4]
ポリプロピレン樹脂(MFR=12g/10分)を原料としたスパンボンド繊維ウエブ(目付け70g/m2、繊維径20μm)をネットコンベア上に堆積し、一対のエンボスロール間で熱圧着して、部分熱圧着率15%のポリプロピレン不織布を得た。次いで、手切れ性付与のためのエンボス加工、潰し加工および樹脂加工を実施例2と同様に行なった。得られた不織布テープ基材の特性を表1に示した。
本発明の不織布テープ基材は、手切れ性、強度および凹凸面への追従性に優れている不織布テープ基材であった。
【0037】
[実施例5]
ポリエチレンテレフタレート(溶液粘度(ηsp/c)0.50)をメルトブロー用噴射口金から紡糸温度300℃で320℃、1000Nm3/hrの加熱エアを用いて紡糸したメルトブロン繊維ウエブ(目付け5g/m2、繊維径2μm)の両面にポリエチレンテレフタレート(PET、融点265℃)をスパンボンド用紡糸口金から紡糸温度300℃で紡糸したスパンボンド繊維ウエブ(目付け10g/m2、繊維径14μm)をネットコンベア上で積層し、一対のエンボスロール間で熱圧着して、部分熱圧着率20%のポリエステル不織布を得た(目付け30g/m2)。
次いで、得られたポリエステル不織布に長手方向に対して直交する方向に破線状の手切れ性付与のためのエンボス加工を、温度180℃/170℃、圧力250N/cmの加工条件で行なった(エンボス模様:凹部の幅0.2mm、凹部の間隔3mm、1個の凹部の長さ2mm;凹部と非エンボス部の長さ比率:2/1;熱圧着面積率:3%)。
次いで、潰し加工および樹脂加工をこの順で行った。潰し加工としては、一対の金属平滑ロールと樹脂ロール間で、温度210℃/200℃、圧力200N/cmで平坦化加工した。樹脂加工としては、水溶性のアクリル酸エステルエマルジョン(DIC製ボンコートR3380)および浸透剤(イソプロピルアルコール)を用いて、樹脂塗布量が5g/m2になるように調液して、浸漬方法で塗布し、脱水、乾燥して本発明の不織布テープ基材を得た。得られた不織布テープ基材の特性を表1に示した。
本発明の不織布テープ基材は、手切れ性、強度および凹凸面への追従性に優れている不織布テープ基材であった。
【0038】
[実施例6]
ポリエチレンテレフタレート(PET、融点265℃)をスパンボンド用紡糸口金から紡糸温度300℃で紡糸し、延伸した後、長手方向(機戒の流れ方向)および長手方向に対して直交する方向の繊維配列を均等化させるような開繊装置を用いて開繊し、その後繊維ウエブ(目付50g/m2、繊維径15μm)をネットコンベア上に堆積した。次いで、一対のエンボスロール間で熱圧着して、部分熱圧着率12%のポリエステル不織布を得た。
得られたポリエステル不織布に長手方向に対して直交する方向に線状の手切れ性を付与するためのエンボス加工を、温度180℃/170℃、圧力250N/cmの加工条件で行なった(エンボス模様:幅0.25mm、線状の間隔3mm;熱圧着面積率:5%)。
次いで、潰し加工および樹脂加工をこの順で行った。潰し加工としては、一対の金属平滑ロールと樹脂ロール間で、温度210℃/200℃、圧力200N/cmで平坦化加工した。樹脂加工としては、水溶性のアクリル酸エステルエマルジョン(DIC製ボンコートAN200)および浸透剤(イソプロピルアルコール)を用いて、樹脂塗布量が10g/m2になるように調液して、浸漬方法で塗布し、脱水、乾燥して本発明の不織布テープ基材を得た。得られた不織布テープ基材の特性を表1に示した。
本発明の不織布テープ基材は、手切れ性、強度および凹凸面への追従性に優れている不織布テープ基材であった。
【0039】
[実施例7]
ポリエチレンテレフタレート(PET、融点265℃)をスパンボンド用紡糸口金から紡糸温度300℃で紡糸し、延伸した後、長手方向(機戒の流れ方向)および長手方向に対して直交する方向の繊維配列を均等化させるような開繊装置を用いて開繊し、その後繊維ウエブ(目付け70g/m2、平均繊維径15μm)をネットコンベア上に堆積した。次いで、一対のエンボスロール間で熱圧着して、部分熱圧着率20%のポリエステル不織布を得た。
次いで、手切れ性を付与するためのエンボス加工を実施例5と同様に行なった。得られた不織布テープ基材の特性を表1に示した。
本発明の不織布テープ基材は、手切れ性、強度および凹凸面への追従性に優れている不織布テープ基材であった。
【0040】
[実施例8]
ポリエチレンテレフタレート(PET、融点265℃)をスパンボンド用紡糸口金から紡糸温度300℃で紡糸し、延伸した後、長手方向(機戒の流れ方向)および長手方向に対して直交する方向の繊維配列を均等化させるような開繊装置を用いて開繊し、その後繊維ウエブ(目付け70g/m2、繊維径15μm)をネットコンベア上に堆積した。次いで、一対のエンボスロール間で熱圧着して、部分熱圧着率20%のポリエステル不織布を得た。
次いで、手切れ性を付与するためのエンボス加工及び樹脂加工を実施例5と同様に行なった。得られた不織布テープ基材の特性を表1に示した。
本発明の不織布テープ基材は、手切れ性、強度および凹凸面への追従性に優れている不織布テープ基材であった。
【0041】
[実施例9]
ポリエチレンテレフタレート(PET、融点265℃)をスパンボンド用紡糸口金から紡糸温度300℃で紡糸し、延伸した後、長手方向(機戒の流れ方向)および長手方向に対して直交する方向の繊維配列を均等化させるような開繊装置を用いて開繊し、その後繊維ウエブ(目付け70g/m2、平均繊維径15μm)をネットコンベア上に堆積した。次いで、一対のエンボスロール間で熱圧着して、部分熱圧着率20%のポリエステル不織布を得た。
次いで、手切れ性を付与するためのエンボス加工及び潰し加工を実施例5と同様に行なった。得られた不織布テープ基材の特性を表1に示した。
本発明の不織布テープ基材は、手切れ性、強度および凹凸面への追従性に優れている不織布テープ基材であった。
【0042】
[比較例1]
実施例1と同様にして得られた部分熱圧着されたポリプロピレン不織布だけの特性を測定し、表1に示した。この不織布は、手切れ性を付与するためのエンボス加工、潰し加工および樹脂加工がないため、長手方向に裂けるかぎ裂き状となり、手切れ性が悪く、テープとしての特性に問題があった。
【0043】
[比較例2]
実施例4と同様の部分熱圧着されたポリプロピレン不織布だけの特性を測定し、表1に示した。この不織布は、手切れ性を付与するためのエンボス加工、潰し加工および樹脂加工がないため、長手方向に裂けるかぎ裂き状となり、手切れ性が悪く、テープとしての特性に問題があった。
【0044】
[比較例3]
実施例7と同様の部分熱圧着されたポリエステル不織布だけの特性を測定し、表1に示した。この不織布は、手切れ性を付与するためのエンボス加工、潰し加工および樹脂加工がないため、長手方向に裂けるかぎ裂き状となり、手切れ性が悪く、テープとしての特性に問題があった。
【0045】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の不織布テープ基材は、屋外で使用できる耐水性などの耐久性を有し、且つ、十分な強度、手切れ性および凹凸面への追従性に優れる柔軟性を有している。従って、車両及び建築物などの塗装用、シーリング用、マスキング用などのテープ基材、特に、壁材の凹凸粗面などのマスキングテープに用いられる。更に、粘着テープ用の基材、及び、粘着テープとフイルムとを一体化した養生用マスカーテープなどに広く用いられる。
【符号の説明】
【0047】
A エンボス部
B 非エンボス部
Y エンボス部の列間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維径が0.1〜30μmであり、見掛け密度が0.15〜0.50g/cm3であり、目付けが15〜150g/m2であり、長手方向の引張強力および破断伸度がそれぞれ20N/5cm以上および10%以上であり、部分熱圧着率が3〜30%であり、かつ該部分熱圧着部とは異なる長手方向に対して直交する線状または破線状の圧着部を有する合繊長繊維不織布からなることを特徴とする不織布テープ基材。
【請求項2】
前記線状または破線状の圧着部の幅が0.1〜2.0mmであり、列間隔が2.0〜10.0mmである請求項1に記載の不織布テープ基材。
【請求項3】
潰し加工および/または樹脂加工が施されている請求項1または2に記載の不織布テープ基材。
【請求項4】
前記引張強力が300N/5cm以下であり、破断伸度が80%以下である請求項1〜3のいずれか一項に記載の不織布テープ基材。
【請求項5】
前記合繊長繊維不織布の長手方向(タテ)と長手方向に直行する方向(ヨコ)の引張強力の比(タテ/ヨコ)が0.5〜3.5である請求項1〜4のいずれか一項に記載の不織布テープ基材。
【請求項6】
前記合繊長繊維不織布がポリエステル系繊維、ポリオレフイン系繊維およびポリアミド系繊維から選ばれた少なくとも1種類からなる請求項1〜5のいずれか一項に記載の不織布テープ基材。
【請求項7】
前記合繊長繊維不織布が繊維径0.1〜7μmの極細繊維層(M)と該極細繊維層の上下に積層された繊維径10〜30μm合成繊維層(S)とからなる請求項1〜6のいずれか一項に記載の不織布テープ基材。
【請求項8】
繊維径が0.1〜30μm、目付けが15〜150g/m2、部分熱圧着率が3〜30%の長繊維不織布に、長手方向に対して直交する方向に線状または破線状の圧着部を設けるエンボス加工を行ない、次いで、潰し加工および/または樹脂加工を行なうことからなる請求項1に記載の不織布テープ基材の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−180615(P2012−180615A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44200(P2011−44200)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(303046303)旭化成せんい株式会社 (548)
【Fターム(参考)】