説明

不織布及びその製造方法

【課題】例えばウレタン発泡成型体の補強材として安価で好適に用いることができ、柔軟で毛羽が少なく、嵩高性が良く、通気度を精密にコントロール可能な不織布積層体を得ることを目的とする。
【解決手段】本発明の不織布は、繊度1.1〜2.7dtexの繊維からなるウェブ(緻密層)と、繊度2.3〜8.8dtexの繊維からなるウェブ(嵩高層)とが、機械的交絡処理により積層されてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通気性コントロールが容易であり、且つ優れた柔軟性備えた不織布、及びその製造方法に関するものである。本発明は特にウレタン発泡成形用補強材に用いて好適である。
【背景技術】
【0002】
従来より、求められる機能に応じて、織物、フィルム、不織布等を組み合わせて積層した積層体が広くもちいられている。そして、採用する積層方法が積層体の性能に大きな影響を及ぼすことから、積層方法について種々の検討がなされている。
例えば、接着剤を用いた積層方法の場合では、被積層体がダメージを受け難く、また剥離強度が高くなる傾向がある。しかしこの方法の場合は、風合いが硬くなり、更に通気度が低下することから、適度な通気性、嵩高性が要求される分野においては当該積層体を用い難い。
また、ニードルパンチやウォーターパンチ等の様に、繊維の交絡を利用した積層方法の場合は、嵩高性、柔軟性を確保できる。しかしこの方法の場合では、積層体にダメージを与え、また毛羽等の原因となる。
更に、熱圧着による積層方法も知られている。しかしかかる方法は、積層体がペーパーライクになりやすい。また、被積層体が熱圧着により製造されたものである場合には、積層工程において更に熱圧着を加えて積層することになると、被積層体の熱圧着部と積層時に形成される熱圧着部が重複する箇所と、重複しない箇所とで斑が生じる。この為に、通気性コントロールや嵩高性等の品位確保が困難となる。
【0003】
特に積層体をウレタン発泡成形用補強材に用いる場合には、柔軟性、通気性、嵩高性コントロールが厳密に要求される。すなわち、柔軟性が不十分であると、成形品のなす3次元曲面状に沿い難く、また成形時に破壊され易いという問題が生じる。そして、通気性が不適切あるいは不均一であれば、ウレタン樹脂が成形品全体に、均一に浸透し難くなるという問題がある。更に嵩密度が不均一であれば、ウレタン樹脂含浸量に斑を生じ、凹凸斑等の発生原因となる。
そこでこれらような問題を解決した積層不織布が提案されている(例えば特許文献1参照)。更にこの積層不織布は、緻密層と嵩高層の2層構造を採用することによって、ウレタン樹脂染み出しを防止して、ウレタン樹脂とバネ等との擦れ防止(異音発生防止)を図っている。
【0004】
しかしながら、かかる積層不織布は、加熱圧着した緻密層と嵩高層を機械的に交絡させるので、緻密層の加熱圧着部分と非加熱圧着部分とで通気性に局所的な差を生じ、斑を生じる原因となっていた。
【0005】
【特許文献1】特開2004−353153号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述の従来技術の課題を背景になされたものであり、その目的は、嵩高性を損なわずに通気度を精密にコントロールすることができ、また優れた柔軟性を有し、加えてウレタン樹脂発泡成形用補強材に用いて好適な不織布、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意研究した結果、遂に本発明を完成するに至った。即ち本発明は以下の通りである。
【0008】
1.繊度1.1〜2.7dtexの繊維からなるウェブ(緻密層)と、繊度2.3〜8.8dtexの繊維からなるウェブ(嵩高層)とが、機械的交絡処理により積層されてなることを特徴とする不織布である。
2.前記緻密層の繊維と前記嵩高層の繊維との繊度差が、0.5dtex以上であることを特徴とする上記1に記載の不織布である。
3.前記緻密層が、ポリエステル系エラストマー繊維、又はポリウレタン繊維を主成分とすることを特徴とする上記1又は2に記載の不織布である。
4.前記緻密層が、鞘に低融点成分を配した芯鞘型複合繊維により構成されたものであることを特徴とする上記1〜3いずれかに記載の不織布である。
5.前記緻密層及び/又は前記嵩高層が、リン原子を含有量で100〜50000ppm共重合された難燃性ポリエステル繊維からなることを特徴とする上記1〜4いずれかに記載の不織布。
6.前記緻密層の目付が50g/m以下、見掛け密度が0.05〜0.4g/cmであり、前記嵩高層の目付が30g/m以上、見掛け密度が0.01〜0.3g/cmであることを特徴とする上記1〜5いずれかに記載の不織布である。
7.通気度が400cc/sec./cm以下で、厚さが1.0mm以上、目付バラツキCV値が10%以下、65℃での5%伸張時のシート応力が0.5〜20N/5cm、100℃での5%伸張時のシート応力が0.25〜10N/5cmであることを特徴する上記1〜6いずれかに記載の不織布である。
8.2系列を有する紡糸工程とし、一方の系列で繊度1.1〜2.7dtexの繊維からなるウェブ(緻密層)を形成し、他方の系列で繊度2.3〜8.8dtexの繊維からなるウェブ(嵩高層)を形成し、次いで機械的交絡を施すことを特徴とする不織布の製造方法である。
9.上記1〜7いずれかに記載の不織布を用いることを特徴とするウレタン発泡成形体補強材である。
【発明の効果】
【0009】
本発明による不織布は、良好な嵩高性を示すと共に、目的に応じた適度な通気度に精密にコントロールすることができ、更には毛羽が少なく高品位である。従って、例えばウレタン発泡成形体補強材として用いた場合、反対面にウレタン樹脂が染み出すことなく、かつ全面均一にウレタン樹脂を含浸することができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の不織布は、緻密層を形成するウェブと、嵩高層を形成するウェブとが、機械的交絡処理により積層されてなることが好ましい。
エンボス加工によると、フィルム化した熱圧着部分を生じるが、本発明の不織布は、フィルム化した熱圧着部分が存在しないので、局所的に通気を遮る部分が無く、均一な通気性を発揮し、また極めて優れた柔軟性を有する。更に、機械的交絡処理が実質的に一度であることから、積層体にダメージを与えず、強力に優れ、毛羽が少ない高品位な不織布になる。なお、本発明は、通気性に大きな影響を与えない程度の弱い熱圧着を、機械的交絡処理する前に施すことを排除するものではない。上記弱い熱圧着を、ウェブ同士を仮接着する目的で行っても良い。
【0011】
機械的交絡としては、水流交絡法、ニードルパンチ法等が挙げられるが、コスト面等の理由から、ニードルパンチ加工が好ましい。
【0012】
ニードルパンチ法により積層一体化する場合、針密度は30〜80本/cmの範囲であることが好ましい。かかる範囲内であれば、積層体のダメージが小さく、かつ実用上問題なく積層できるからである。
【0013】
本発明の不織布は、前記緻密層が、繊度1.1〜2.7dtexの繊維からなることが好ましく、更に好ましくは1.1〜2.2dtexの繊維からなることである。加えて、前記嵩高層が、繊度2.3〜8.8dtexの繊維からなることが好ましい。かかる範囲であれば、毛羽等の発生が少なく、機械的交絡によって有効に積層することができるからである。
【0014】
本発明の不織布においては、前記緻密層の繊維と前記嵩高層の繊維の繊度差が、0.5dtex以上であることが好ましい。かかる繊度差を設けることにより、例えばウレタン発泡成形用シートとして用いた場合に、ウレタン樹脂の浸透を防止する層(緻密層)と、車両用シートのバネ等に接する層(嵩高層)との機能を、それぞれ発揮することができる。即ち上記の如く繊度差を設けることにより、複数層構造体としての機能を付与し易い。
【0015】
本発明の不織布は、前記緻密層の主成分が、ポリエステル系エラストマー繊維又はポリウレタン繊維が主成分であることが好ましい。本願発明の不織布に変形を加えた場合、緻密層は変形に追従し難く、大変形を加えた場合には破壊が生じやすい。しかし前記繊維を用いると、変形追従性が高くなり、深絞り成形等にも用いることができる。
【0016】
本発明の不織布は、緻密層が、鞘に低融点成分を配した芯鞘型複合繊維により構成されたものであることが好ましい。かかる繊維を用いることにより、優れた剥離強度を発揮させることが可能となる。
【0017】
本発明の不織布は、前記緻密層及び/又は前記嵩高層が、リン原子を含有量で100〜50000ppm共重合された難燃性ポリエステル繊維よりなることが好ましい。かかる繊維を用いることにより、強度等に大きな問題を与えることなしに、難燃性を付与することができ、よって用途を拡大することができるからである。
【0018】
本発明における前記難燃性共重合ポリエステルは、例えば、特公昭55−41610号公報に記載される方法で重合することができる。また共重合ポリエステルのリン原子の含有量は、100〜50000ppmであり、好ましくは500〜8000ppmである。リン含有量が少なすぎると、難燃効果が低下し好ましくなく、一方多すぎると繊維の耐久性が低下して好ましくない。
【0019】
前記難燃性共重合ポリエステルを得る際に用いることのできるリン化合物は、ポリエステルの構成成分であるジカルボン酸やジオールと反応してポリエステルに共重合することができる化合物である。このリン化合物のうちでも好ましい化合物としては、ポリエステルの側鎖又は/及び末端にリン原子を導入することができる化合物であり、側鎖にリン原子を導入できる化合物が好ましい。このリン化合物の例としては、下記一般式(1)で示される化合物があげられる。
【0020】
【化1】

【0021】
式(1)中、Rは同一又は異なって、1価のエステル形成性官能基である。R、Rは同じか又は異なる基であって、それぞれハロゲン原子、炭素原子数1〜10の炭化水素基、上記Rよりなる群から選ばれる。Aは2価もしくは3価の有機残基を表す。また、n1は1又は2である。n2、n3はそれぞれ0〜4の整数を表す。
【0022】
本発明の不織布は、前記緻密層の目付が50g/m以下で、見掛け密度が0.05〜0.4g/cmであり、前記嵩高層の目付が30g/m以上で、見掛け密度が0.01〜0.3g/cmであることが好ましい。かかる範囲であれば、有効に機械的交絡処理することが可能となり、かつ複数層構造の長所を発揮し易いからである。
なお、緻密層の目付の下限は特に限定されないが、通常10g/m以上である。また、嵩高層の目付の上限についても特に限定されないが、通常300g/m以下である。
【0023】
本発明の不織布は、通気度が400cc/sec./cm以下で、厚さが1.0mm以上、目付バラツキCV値が10%以下、65℃での5%伸張時のシート応力が0.5〜20N/5cm、100℃での5%伸張時のシート応力が0.25〜10N/5cmであることが好ましい。かかる範囲内であれば、ウレタン樹脂発泡成形用補強材として用いた場合に、成形品のなす3次元曲面形状に沿いやすく、また深絞り成形が可能となり、更にウレタン樹脂を成形品全面に均一に浸透させることができるからである。
【0024】
本発明の不織布は、2系列を有する紡糸工程とし、一方の系列で緻密層を形成し、他方の系列で嵩高層を形成し、次いで機械的交絡処理を施すことによって製造することが好ましい。すなわち、不織布製造工程において、紡糸口を複数列配し、それぞれ異なる樹脂吐出量、牽引速度等の条件を設定することにより、繊度が異なる繊維層として積層し、次いで機械的交絡を施す。この方法によれば、不織布製造工程のみで複数層の不織布構造体が得られ、且つそのようにして得られた積層体は極めて柔軟で、毛羽が少ない高品位なものとなる。
【0025】
本発明の不織布は、ウレタン樹脂発泡成形用補強材として用いてもよい。本発明の不織布を用いれば、緻密層の働きにより、樹脂注入口とは反対側へ樹脂が浸透することが防止される。仮に樹脂が反対側に浸透すると、この浸透した樹脂とバネ等との擦れにより異音が発生することとなるが、本発明では上記の如く樹脂浸透が防止されているので、この異音発生が生じ難くなる。また本発明の不織布は嵩高性が均一であるので、成型品全面に均一に樹脂が浸透し、よって凹凸斑等の発生が防止される。
【実施例】
【0026】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。もっとも本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお以下の実施例などについての評価及び特性値は、下記の測定法により行った。
【0027】
(1)目付(g/m)及びCV値(%)
サンプルサイズ:5cm巾×20cm。原反巾方向に5cm間隔で10点サンプリングすることとし、長さ方向については前記原反巾方向のサンプリングを1000m各間隔で10ヶ所行った(計100点)。このサンプル100点について目付を求め、下式によりCV値を求めた。
CV値=(標準偏差/平均値)×100(%)
【0028】
(2)厚さ(mm)
上記サンプルサイズのサンプルについて、その中央(巾方向中央且つ長さ方向中央)付近において厚さを測定する。上記と同様に100点のサンプルを採取してそれぞれ測定し、その平均値を厚さとした。尚、厚さ測定に際しての荷重は0.020N/cm(荷重面積4cm)である。
【0029】
(3)見かけ密度(g/cm
下式を用いて求めた。
見掛け密度=目付(g/m)/(上記厚さ(cm)×100×100)
【0030】
(4)熱時強度(ST5)(N/5cm)
加熱テンシロン機を用い、チャック間距離10cm、ヘッドスピード10cm/minで評価した。測定条件は下記(a)、(b)の通りである。
(a)温度:65℃×1min、100℃×1min
(b)ST5:5%伸長時の強度
【0031】
(5)通気度(cc/cm・sec)
JIS L−1096に準じ、フラジール通気度測定機によって行った。
【0032】
(実施例1)
実施例1は、スパンボンド法により製造された2層(緻密層と嵩高層)からなるスパンボンド不織布であり、該不織布における一方の層(緻密層)は、2.2dtexのリン原子含有共重合ポリエステル繊維よりなるランダムループ組織のウェッブである。このウェッブの目付は40g/mである。また、上記リン原子含有共重合ポリエステル繊維は、下記[化2]で表されるリン含有化合物を、リン原子の含有量が緻密層として300ppmとなるように、共重合させたものである。
上記不織布における他方の層(嵩高層)は、3.9dtexのリン原子含有共重合ポリエステル繊維よりなるランダムループ組織のウェッブである。このウェッブの目付は60g/mである。この他方の層のリン原子含有共重合ポリエステル繊維も、下記[化2]で表されるリン含有化合物を、リン原子の含有量が嵩高層として300ppmとなるように、共重合させたものである。
上記両ウェッブを紡糸工程中で積層し、170℃の熱ロールによるカレンダー加工で仮圧着し、シート状物を得た。この積層体(シート状物)を、さらにニードルパンチ機を用いて一体化し(ニードルパンチの条件:針密度50本/cm)、嵩高積層構造不織布(実施例1)を得た。
【0033】
【化2】

【0034】
(実施例2)
実施例2は、スパンボンド法により製造された2層からなるスパンボンド不織布であり、該不織布における一方の層(緻密層)は、2.2dtexのポリエチレンテレフタレート繊維よりなるランダムループ組織の目付40g/m2のウェッブである。他方の層(嵩高層)は、3.9dtexのポリエチレンテレフタレート繊維よりなるランダムループ組織の目付60g/mのウェッブである。
これら両ウェッブを紡糸工程中で積層し、170℃の熱ロールによるカレンダー加工で加熱圧着し、シート状物を得た。この積層体(シート状物)を、さらにニードルパンチ機を用いて一体化し(ニードルパンチの条件:針密度50本/cm)、嵩高積層構造不織布(実施例2)を得た。
【0035】
(実施例3)
実施例3は、スパンボンド法により製造された2層からなるスパンボンド不織布であり、該不織布における一方の層(緻密層)は、2.2dtexのポリトリメチレンテレフタレート繊維よりなるランダムループ組織の目付40g/m2のウェッブである。他方の層(嵩高層)は、3.9dtexのポリエチレンテレフタレート繊維よりなるランダムループ組織の目付60g/m2のウェッブである。
これら両ウェッブを紡糸工程中で積層し、170℃の熱ロールによるカレンダー加工で加熱圧着し、シート状物を得た。この積層体(シート状物)をさらにニードルパンチ機を用いて一体化し(ニードルパンチの条件:針密度50本/cm)、嵩高積層構造不織布(実施例3)を得た。
【0036】
(実施例4)
実施例4は、スパンボンド法により製造された2層からなるスパンボンド不織布であり、該不織布における一方の層(緻密層)は、2.2dtexのポリブチレンテレフタレート繊維よりなるランダムループ組織の目付40g/mのウェッブである。他方の層(嵩高層)は、3.9dtexのポリエチレンテレフタレート繊維よりなるランダムループ組織の目付60g/mのウェッブである。
これら両ウェッブを紡糸工程中で積層し170℃の熱ロールによるカレンダー加工で加熱圧着し、シート状物を得た。この積層体(シート状物)をさらにニードルパンチ機を用いて一体化し(ニードルパンチの条件:針密度50本/cm)、嵩高積層構造不織布(実施例4)を得た。
【0037】
(比較例1)
比較例1は、スパンボンド法により製造された2層からなるスパンボンド不織布であり、該不織布における両層はいずれも、3.9dtexのポリエチレンテレフタレート繊維よりなるランダムループ組織の目付50g/mのウェッブである。
この2つのウェッブを紡糸工程中で積層し、170℃の熱ロールによるカレンダー加工で加熱圧着し、シート状物を得た。この積層体(シート状物)をさらにニードルパンチ機を用いて一体化し(ニードルパンチ条件:針密度50本/cm)、嵩高積層構造不織布(比較例1)を得た。
【0038】
(比較例2)
比較例2は、スパンボンド法により製造された2層からなるスパンボンド不織布であり、該不織布における両層はいずれも、3.9dtexのポリエチレンテレフタレート繊維よりなるランダムループ組織の目付65g/mのウェッブである。
この2つのウェッブを紡糸工程中で積層し、170℃の熱ロールによるカレンダー加工で加熱圧着し、シート状物を得た。この積層体(シート状物)をさらにニードルパンチ機を用いて一体化し(ニードルパンチの条件:針密度50本/cm)、嵩高積層構造不織布(比較例2)を得た。
【0039】
【表1】

【0040】
表1は、上記実施例や上記比較例における評価等をまとめたものである。
上記実施例及び比較例をウレタン発泡成形用補強材として用いたところ、得られたウレタン発泡成形体において、実施例1〜3では、発泡したウレタンの滲み出しがなかった。これに対して、比較例1では、目付が実施例1〜3と同等であるにも関わらず、ウレタンの滲み出しが確認された。また比較例2はウレタンの滲み出しは少なかったものの、実施例と比較して約3割目付が高い。
尚、実施例、比較例の不織布を補強材として用いてウレタン発泡成形体を作製するにあたっては、まず上記実施例等の不織布を発泡成形用金型内にセットし(この際、嵩高層側を金型上面、即ち空気抜き孔方向に向け、緻密層側を発泡ウレタン樹脂添加側に向ける)、常法の通り、発泡ウレタン樹脂を添加し、加熱、加圧下でポリウレタンの発泡成形を行い、軟質ポリウレタンフォーム型内発泡成形品を作製した。
上記表から分かるように、難燃性(FMVSS)について、リンを添加する事により良好な結果が得られている。
コスト面に関しては、紡糸工程で2層を複合しているので、大きな生産性の向上が見られ、製造コストの低減が図られる。
なお、不織布の発泡体成形型への追随性を考慮すると、成形型の深さの違いによって適当な柔軟性を発揮する不織布を用いるのが良く、この観点から、緻密層や嵩高層の使用素材に関しては、成形深さによって使い分けすると良い。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の不織布は、柔軟で毛羽が少なく、嵩高性が良く、通気性を精密にコントロールすることのできる積層体である。従って、例えばウレタン発泡成型体用の補強材として安価で好適に用いることができ、産業界に寄与すること大である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊度1.1〜2.7dtexの繊維からなるウェブ(緻密層)と、繊度2.3〜8.8dtexの繊維からなるウェブ(嵩高層)とが、機械的交絡処理により積層されてなることを特徴とする不織布。
【請求項2】
前記緻密層の繊維と前記嵩高層の繊維の繊度差が、0.5dtex以上であることを特徴とする請求項1に記載の不織布。
【請求項3】
前記緻密層が、ポリエステル系エラストマー繊維、又はポリウレタン繊維を主成分とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の不織布。
【請求項4】
前記緻密層が、鞘に低融点成分を配した芯鞘型複合繊維により構成されたものであることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の不織布。
【請求項5】
前記緻密層及び/又は前記嵩高層が、リン原子を含有量で100〜50000ppm共重合された難燃性ポリエステル繊維からなることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の不織布。
【請求項6】
前記緻密層の目付が50g/m以下、見掛け密度が0.05〜0.4g/cmであり、
前記嵩高層の目付が30g/m以上、見掛け密度が0.01〜0.3g/cmであることを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の不織布。
【請求項7】
通気度が400cc/sec./cm以下で、
厚さが1.0mm以上、
目付バラツキCV値が10%以下、
65℃での5%伸張時のシート応力が0.5〜20N/5cm、
100℃での5%伸張時のシート応力が0.25〜10N/5cmであることを特徴する請求項1〜6いずれかに記載の不織布。
【請求項8】
2系列を有する紡糸工程とし、一方の系列で繊度1.1〜2.7dtexの繊維からなるウェブ(緻密層)を形成し、他方の系列で繊度2.3〜8.8dtexの繊維からなるウェブ(嵩高層)を形成し、
次いで機械的交絡を施すことを特徴とする不織布の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜7いずれかに記載の不織布を用いることを特徴とするウレタン発泡成形体補強材。