説明

不織布及びその製造方法

【課題】耐熱性、耐薬品性に優れるとともに、地合良好な不織布とその製造方法を提供する。
【解決手段】不織布は、310℃以上での溶融粘度が20Pa・s以下である溶融液晶形成性全芳香族ポリエステルを主成分とし、平均繊維径が1〜15μmであるフィラメントから形成される。前記不織布は、10cm×8cmのサンプル片に対して、透過光を照射した際のサンプル片の画像データ(0.026mm/画素;256階調)と、サンプル片を配置しないブランクの画像データとの差をTOKS法で2値化することにより得られた地合指数の標準偏差が、5.0以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性、耐薬品性に優れるとともに、地合良好な不織布とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不織布は、各種産業用資材や建設資材などとして、多種多様な分野において重用されている。しかし、一般に用いられている不織布原料は、綿、レーヨン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ナイロンなどであり、これらの原料から製造される不織布は、満足な耐熱性や耐薬品性を示さないため、耐熱、耐薬品性等が要求される特殊な用途に用いることができない。
【0003】
例えば、特許文献1(特開平7−228718)には、超高分子量ポリオレフィンを10重量%以上含有するポリオレフィン組成物からなるポリオレフィン微多孔膜であって、ミクロな三次元網状構造の貫通孔を形成していることを特徴とするポリオレフィン微多孔膜が開示されている。この文献には、ミクロな三次元網状構造の貫通孔を形成しているため、このような微多孔膜はリチウム二次電池セパレータに好適である旨が記載されている。しかしながら、特許文献1に記載されたようなポリオレフィンで形成された微多孔膜では、この微多孔膜をセパレータとして用いた場合、ポリオレフィンの低い耐熱性に起因して、微多孔膜が160℃以上で収縮してしまう。
【0004】
微多孔膜の収縮などによりセパレータが損傷した場合、セパレータが電池の正極と負極とをへだてる機能を果たせなくなり、その結果、正極と負極の短絡(内部短絡)が生じてしまう。そして、このような短絡は、電池などの異常発熱や発火現象につながり、電池の安全性を大きく低下させる。
【0005】
耐熱性を向上した不織布として、特許文献2(特開平5−335005)には、全芳香族ポリアミドの重合体であるアラミド繊維からなる不織布などが開示されている。この文献には、この不織布をセパレータとして用いた場合、電池が充電された状態で外部から異常に加熱されても、電池容器から、電解液の分解ガスが急激に噴出しにくい旨が記載されている。しかし、アラミド樹脂は、吸湿性を有するため、電気機器類への使用において、信頼性が低い。さらに、この文献では、アラミド樹脂に対して抄紙法を用いて不織布を作製しているため、厚みのある不織布しか作製できず、その結果セパレータを薄型化することができず、電池の内部抵抗を低減できない。
【0006】
また、特許文献3(特開平10−64502)には、ポリフェニレンサルファイド繊維からなる湿式不織布であり、かつ、JIS L−1096に規定されたバイレック法に準じて測定したとき、30重量%水酸化カリウム水溶液の吸液速度が10mm/30分以上で、かつ、保液率が100%以上であることを特徴とする電池セパレータが開示されている。しかし、ポリフェニレンサルファイド繊維からなる不織布では、電池が異常発熱した際の180℃以上の高温下で、セパレータとしての機能を発揮し続けることは困難である。
【0007】
一方、特許文献4(特開2002−061064)には、メルトブローン法により得られた溶融液晶形成性全芳香族ポリエステル不織布をロールプレス加工により製造する方法が提案されている。しかしながら、この方法で得られる不織布は、繊維の粗密差が大きくなる場合があり、用途によっては繊維の粗部分が欠点となる。
【0008】
【特許文献1】特開平7−228718号公報
【特許文献2】特開平5−335005号公報
【特許文献3】特開平10−64502号公報
【特許文献4】特開2002−061064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、耐熱性および耐薬品性に優れるだけでなく、薄くても地合が良好である不織布を提供することにある。
本発明の別の目的は、目付の大きさにかかわらず、繊維の粗密の差が少ない不織布を提供することにある。
本発明のさらに別の目的は、上述のような優れた特性を有する不織布を、効率よく製造するための方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記した従来技術の問題点を解決すべく、鋭意検討を重ねた結果、310℃での溶融粘度が20Pa・s以下である溶融液晶形成性全芳香族ポリエステルポリマーを高温高速流体とし、その高温高速流体を、所定の捕集距離で、冷却された金属ロール上へ吹付けて冷却固化捕集することにより、取り扱い性の困難な溶融液晶形成性全芳香族ポリエステルポリマーであっても、繊維の分散性を向上させつつ簡便に加工することができ、その結果、繊維の粗密差が少なく地合良好であるとともに、耐熱性、耐薬品性に優れた不織布を得ることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、上記の検討結果に基づいてなされた本発明は、310℃以上での溶融粘度が20Pa・s以下である溶融液晶形成性全芳香族ポリエステルを主成分とし、平均繊維径が1〜15μmであるフィラメントからなる不織布であって、前記不織布では、10cm×8cmのサンプル片に対して透過光を照射した際のサンプル片の画像データ(0.026mm/画素;256階調)と、サンプル片を配置しないブランクの画像データとの差をTOKS法で2値化することにより得られた地合指数の標準偏差が、5.0以下である。
【0012】
前記不織布においては、厚みが薄くとも、不織布の地合が良好で地合指数の標準偏差が小さいため、例えば、不織布の厚みが20〜200μm程度であってもよく、不織布の厚み(μm)と地合指数の標準偏差との積は、90〜900程度であってもよい。
【0013】
また、前記不織布は、目付の大きさにかかわらず、地合を良好にすることができるため、下記式(1)を満たす不織布であってもよい。
8≦(B×C)/A≦15 (1)
[式中、A:不織布の目付(g/m)、B:不織布の厚み(μm)、C:地合指数の標準偏差をあらわす。]
【0014】
このような不織布は、メルトブローン法により製造するのが好ましく、不織布は、310℃での溶融粘度が20Pa・s以下である溶融液晶形成性全芳香族ポリエステルを、紡糸温度310〜360℃、熱風温度310〜380℃、ノズル1m幅当りのエアー量10〜50Nmの高温高速流体として、捕集距離2〜20cmで冷却金属ロール上へ吹付け捕集することにより製造できる。
【0015】
さらに、前記製造方法では、吹付け捕集した不織布を、さらに固相重合させ、不織布の強度を向上させてもよい。
【0016】
なお、明細書中において、「溶融液晶形成性全芳香族ポリエステル」とは、溶融相で光学的異方性(液晶性)を示す全芳香族ポリエステル樹脂を意味する。前記液晶性は、ホットステージ上の試料を窒素雰囲気下で昇温し、その透過光を観察することにより容易に認定することができる。
【0017】
また、「地合指数」とは、不織布に対して透過照明をあてて得られる不織布の画像データ(0.026mm/画素;256階調)を、不織布を配置せずに同様に透過照明をあてて得られるブランクの画像データ(0.026mm/画素;256階調)から減じて標準化した後、この標準化した画像データをTOKS法により2値化することにより得られた画素当りの濃度値(0〜255の256段階)を意味する。すなわち、不織布の地合が均一であるほど、地合指数の標準偏差は低い値となり、不織布の地合が不均一であるほど、地合指数の標準偏差は高い値となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、耐熱性および耐薬品性に優れる溶融液晶形成性全芳香族ポリエステルを、特定の製造方法で加工することにより、地合が良好で、繊維の粗密差の少ない不織布を得ることができる。
また、本発明の不織布は、耐熱性や耐薬品性などに優れるだけでなく、不織布の厚みが薄く、目付が小さくとも、地合の均一性を保つことができる。
【0019】
また、本発明の不織布の製造方法では、このように優れた特性を有する不織布を、効率よく大量生産することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
この発明は、添付の図面を参考にした以下の好適な実施形態の説明から、より明瞭に理解される。図面は必ずしも一定の縮尺で示されておらず、本発明の原理を示す上で誇張したものになっている。また、添付図面において、複数の図面における同一の部品番号は、同一部分を示す。
【0021】
[不織布]
本発明の不織布は、310℃以上での溶融粘度が20Pa・s以下である溶融液晶形成性全芳香族ポリエステルを主成分とし、平均繊維径が1〜15μmであるフィラメントで構成される。また、この不織布は地合が良好であるため、不織布に光を透過させて得られる地合指数の均一性が高く、地合指数の標準偏差が小さい。
【0022】
図1は、本発明の不織布の地合指数の測定方法を示す概略図である。光源1からの出射光は、光源1の上方15cmに配設された透明なサンプル台2の上のサンプル片3(8cm×10cm)を透過する。サンプル片3の上方20cmに配設されたCCDカメラ10(ソニー(株)製、XC−75;0.026mm/画素)を用いて、光が透過しているサンプル片3の画像を撮影し256階調の画像データとして、この画像データ(A)を画像処理装置20に取り込む。
【0023】
一方、ブランクとして、サンプル片を配置しない以外は同様にして、CCDカメラ10でブランクの画像データ(B)を画像処理装置20に取り込む。画像処理装置20では、画像データ(B)から画像データ(A)を減算した後、この減算した画像データをTOKS法により2値化し、サンプル片の地合指数の標準偏差を算出する。なお、このような画像処理は、例えば、東洋紡績(株)社製「image analyzer V10」を用いて行うことができる。
【0024】
この方法により、従来識別不可能であった不織布の地合の程度を数値化し、不織布の地合の均一性を、得られた地合指数の標準偏差から判断することができる。
【0025】
不織布の地合指数の標準偏差が5.0以下であれば地合は良好であり、前記標準偏差は、好ましくは1.0〜4.9程度であり、より好ましくは4.85以下であってもよい。
【0026】
本発明の不織布は、用途に応じて任意の厚みを選択できるが、例えば、軽量化の観点から、不織布の厚みは、好ましくは20〜200μm程度、より好ましくは30〜150μm程度である。
【0027】
また、本発明の不織布は、厚みが薄くとも良好な地合を達成することができるため、厚みと地合指数の標準偏差の積を小さくすることができる。例えば、不織布の厚み(μm)と地合指数の標準偏差との積は、90〜900程度が好ましい。
【0028】
さらに、本発明の不織布は、目付が小さくとも、良好な地合を達成することができ、本発明の不織布は、下記式(1)を満たすことが好ましい。
8≦(B×C)/A≦15 (1)
[式中、A:不織布の目付(g/m)、B:不織布の厚み(μm)、C:地合指数の標準偏差をあらわす。]
さらに、本発明の不織布は、下記式(2)を満たすことが好ましい。
10≦(B×C)/A≦14 (1)
[式中、A,B,Cは、式(1)と同じ]
【0029】
(溶融液晶形成性全芳香族ポリエステル)
本発明の不織布で使用される溶融液晶形成性全芳香族ポリエステルは、310℃における熔融粘度が20Pa・s以下であれば特に限定されないが、例えば、p-ヒドロキシ安息香酸と1,6-ヒドロキシナフトエ酸の縮合体やその共重合体等、また、下記の化学式に示す如き構成単位を有するポリエステルを例示することができる。
【0030】
【化1】

【0031】
310℃での溶融粘度が20Pa・sを超える全芳香族ポリエステルは、極細繊維化が困難であったり、重合時のオリゴマーの発生、重合時や造粒時のトラブル発生などの理由から好ましくない。一方、溶融粘度が低すぎる場合も繊維化が困難であり、好ましくは310℃において5Pa・s以上の溶融粘度を示すことが望ましい。また、本質粘度で表した場合、本発明で使用する全芳香族ポリエステルは6.0以下、好ましくは3.0〜6.0の本質粘度(ηinh)を有していることが望ましい。かかる溶融粘度を有する溶融液晶形成性全芳香族ポリエステルは、従来公知の全芳香族ポリエステルの重合技術によって製造することができ、また、ポリプラスッチクス社から「ベクトラ」(登録商標)A,Lタイプ等で
提供されている。
【0032】
なお、前記溶融液晶形成性全芳香族ポリエステルは、必要に応じて、その強力が実質的に低下しない範囲で、他のポリマーや添加剤等を加えて用いてもよい。例えば、添加剤としては、安定化剤(例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤など)、滑剤、難燃剤、帯電防止剤、分散剤、流動化剤などが挙げられる。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0033】
[不織布の製造方法]
本発明の不織布は、前記溶融液晶形成性全芳香族ポリエステルを用いて、フラッシュ紡糸法、メルトブローン法等を利用して製造できる。極細繊維からなる不織布の製造が比較的容易にでき、紡糸時に溶剤を必要とせず環境への影響を最小限とすることができる点からメルトブローン法が好ましい。
【0034】
図2は、本発明の不織布のメルトブローン法による製造工程の概要を示す。まず、溶融液晶形成性全芳香族ポリエステル4は、押出機により溶融され、溶融状態となりノズル5へと向かう。一方、ノズル5の両側に設けられた熱風噴射溝6,6からは加熱された熱風が噴射され、前記ポリエステルを高温高速流体7とする。この高温高速流体7は、表面が平滑な冷却金属ロール8上へ吹き付けられた後、引取ロール9により引き取られ、巻取ロール10により巻き取られる。
【0035】
例えば、前記溶融液晶形成性全芳香族ポリエステルは、紡糸温度310℃〜360℃、熱風温度(一次エアー温度)310℃〜380℃、ノズル1m幅当りのエアー量10〜50Nmの紡糸条件で高温高速流体7となり、ノズル5から冷却金属ロール8上へ、捕集距離2〜20cm(好ましくは、2.5〜13cm程度)で吹き付けられる。この金属ロールは、公知または慣用の冷却手段により、その表面が冷却された状態となっている。金属ロールがノズルに対して所定の距離を介して配置されているとともに、金属ロールが冷却されているため、高温で加熱された溶融液晶形成性全芳香族ポリエステルであっても、極めて均一に繊維を分散できるとともに速やかに冷却固化することができ、不織布の地合を良好にすることができる。
【0036】
このような製法で形成されるため、本発明の不織布は、実質的に連続したフィラメントから形成される。また、不織布のウェブ形成の観点から、平均繊維径は1〜15μm程度であることが必要であり、好ましくは3〜10μm程度である。なお、本発明において平均繊維径は、不織布を走査型電子顕微鏡で拡大撮影し、任意の100本の繊維の径を測定した値の平均値を指すものである。
【0037】
さらに、本発明の製造方法では、不織布の強度を向上させるため、得られた不織布を、さらに熱処理し繊維状での固相重合を進めてもよい。本発明の不織布は、極細繊維で構成され比表面積が著しく増大しているため、重合の進捗に伴って生成する副生物が容易に離脱して、重合反応を極めて効率的に行うことができる。
【0038】
固相重合に当たっては、用いる熔融液晶形成性ポリエステルの特性により、窒素などの不活性気体を用いたり、空気中での処理を行ったり、また最初は不活性気体中で固相重合を行い、更に空気中で固相重合を完結させるなど、適宜選択することが可能である。
【0039】
特に熔融液晶形成性ポリエステルは、空気中で固相重合を進めると、脱水素反応や酸素架橋などの架橋反応を生ずる場合が多く、不織布の耐薬品性、耐水性および耐熱性をより向上させることができる。これらの反応を期待する場合は、初期に不活性気体中で固相重合を進め、分子量を増大させた後、空気中で反応を進めるのが好ましい。
【0040】
必要に応じて、酸素濃度を管理し、例えば酸素濃度10%の空気中での反応を選択するなどの方法も選択肢の一つとして例示することができる。また、初期には窒素などの不活性気体中で固相重合反応を進め、重合度が上がった段階で有酸素雰囲気とし、更に反応を進め、架橋や炭化などの反応を進める事も可能である。
【0041】
本発明の不織布は、特定の溶融液晶形成性全芳香族ポリエステルを主成分とするため、耐熱性、耐薬品性に優れる。さらに、特定の製造方法により作製されるため、不織布の厚みが薄くとも地合を良好にすることができる。また、不織布の目付が小さくとも、均一性の高い地合を不織布に付与することができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
このような不織布は、耐熱性、耐薬品性に優れ、しかも地合良好で繊維の粗部分が少ないため、高周波回路基板の補強材として有用であるほか、各種フィルターや、各種電池用セパレータ、各種キャパシタ用セパレータなどとしても有用である。
【実施例】
【0043】
以下に本発明を実施例にてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定
されるものではない。不織布の物性は以下の測定方法により測定した。
【0044】
(溶融粘度 Pa・s)
東洋精機キャピログラフ1B型を用いて、温度310℃、剪断速度r=1000−1の条件下で測定した。
【0045】
(耐薬品性の評価)
o-クロロフェノールに30℃で24時間浸漬し、目視にて溶解の程度を確認した。さらに1規定の水酸化ナトリウム水溶液中で沸騰処理1時間を行い、重量減少率を確認した。なお、本発明において、実質的に溶剤に不溶であるとは、o-クロロフェノールに不溶であること、また1規定の水酸化ナトリウム水溶液中で沸騰処理1時間を行っても、重量減少率が10%以下であることをいう。
【0046】
(耐熱性の評価)
100℃の熱風を不織布に通過させ、形状変化の有無を目視により確認した。形状変化しなかった場合、耐熱性が良好であると判断し、形状変化した場合、耐熱性が不良であると判断した。
【0047】
(熱変形温度の測定)
島津製作所製TMA−50を用いて、試料長を20mmとし、被測定試料重量1g当たり1gを付与し、昇温速度5℃/minにて室温から昇温し、急激な伸びが発生する温度を熱変形温度とする。該温度は、温度−伸度カーブより接線の交点をもって定義した。
【0048】
(厚み μm)
試料長さ方向より、100×100mmの試験片を採取し、ダイヤルシックネスゲージで測定した。
【0049】
(平均繊維径 μm)
試料長さ方向より、100×100mmの試験片を採取し、得られた試験片を走査型電子顕微鏡で拡大撮影し、任意の100本の繊維の径を測定した後、これらの平均値を算出した。
【0050】
(目付 g/m
試料長さ方向より、100×100mmの試験片を採取し、水分平衡状態の質量を測定し、1m当りに換算して求めた。
【0051】
(地合指数の標準偏差)
まず、不織布の地合指数を以下のように測定した。すなわち、図1に示すように、光源1(松下電工(株)製、FCL32ECW/30)からの出射光を、光源1の上方15cmに配設された透明なサンプル台2の上のサンプル片3(8cm×10cm)に対して出射させた。
サンプル片3の上方20cmに配設されたCCDカメラ11(ソニー(株)製、XC−75;0.026mm/画素)により、光が透過しているサンプル片3の画像を撮影し、256階調の画像データとして、この画像データ(A)を画像処理装置20(東洋紡績(株)社製、image analyzer V10)に取り込んだ。一方、サンプル片をセットさせないブランク画像のデータも、サンプル片をセットしない以外は上記と同様にしてCCDカメラ11により撮影し、画像データ(B)として画像処理装置20に取り込んだ。
得られた画像データ(B)から画像データ(A)を減算し、この減算したデータを、TOKS法により2値化して画像解析した後、サンプルの地合指数の標準偏差を算出した。
【0052】
(実施例1)
液晶形成性全芳香族ポリエステル(ポリプラスチックス社製 VECTRA−Aタイプ;310℃での溶融粘度10Pa・s、本質粘度5.8)を、低露点エアー式乾燥機にて十分に乾燥し、二軸押出機により押し出し、幅1m、ホール数1000のノズルを有するメルトブローン不織布製造装置に供給した。メルトブローン装置にて、単孔吐出量0.3g/min、樹脂温度320℃、熱風温度320℃、ノズル1m幅当りのエアー量30Nにて、捕集距離3cmで水冷パイプで冷却した冷却金属ロール上へ吹付け、冷却固化し、メルトブローン不織布を得た。得られた不織布は、表1に示す特性を有していた。
【0053】
(実施例2)
目付を25g/mとする以外は、実施例1と同様にしてメルトブローン不織布を得た。得られた不織布は、表1に示す特性を有していた。
【0054】
(実施例3)
目付を15g/mとする以外は、実施例1と同様にしてメルトブローン不織布を得た。得られた不織布は、表1に示す特性を有していた。
【0055】
(比較例1)
実施例1で行った捕集方法である水冷パイプで冷却した冷却金属ロール上へ吹付けて捕集するのに代えて、捕集距離15cmでネット上で吸引して捕集する方法を採用した以外は、実施例1と同様にして不織布を得た。得られた不織布は、表1に示す特性を有していた。
【0056】
(比較例2)
実施例2で行った捕集方法である水冷パイプで冷却した冷却金属ロール上へ吹付けて捕集するのに代えて、捕集距離15cmでネット上で吸引して捕集する方法を採用した以外は、実施例2と同様にして不織布を得た。得られた不織布は、表1に示す特性を有していた。
【0057】
【表1】

【0058】
表1に示すように、実施例1から3で得られた不織布は、厚みが薄くとも、地合指数の標準偏差が小さく、地合の均一性を向上できるとともに、厚み(B)と地合指数の標準偏差(C)との積、すなわち(B)×(C)を小さくできた。また、目付が小さくとも、地合の均一性に優れるため、目付(A)に対する、前記厚みと地合指数の標準偏差との積、すなわち(B)×(C)/(A)も小さくすることができた。さらに、前記不織布は、耐薬品性、耐熱性にも優れていた。
【0059】
一方、比較例1および2で得られた不織布は、耐薬品性、耐熱性、誘電特性は実施例と同程度であるものの、地合が実施例ほど均一ではないため、地合指数の標準偏差が大きくなった。また、前記厚み(B)と地合指数の標準偏差(C)との積[(B)×(C)]や、[(B)×(C)/(A)]の値も、実施例より大きくなった。
【0060】
以上のとおり、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の追加、変更または削除が可能であり、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の不織布の地合指数の測定方法を示す概略図である。
【図2】本発明の不織布をメルトブローン法で製造する工程を示す概略図である。
【符号の説明】
【0062】
1…光源
2…サンプル台
3…サンプル片
4…溶融された溶融液晶形成性全芳香族ポリエステル
5…ノズル
6…熱風噴射溝
7…高温高速流体
8…冷却金属ロール
9…引取ロール
10…巻取ロール
11…CCDカメラ
20…画像処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
310℃以上での溶融粘度が20Pa・s以下である溶融液晶形成性全芳香族ポリエステルを主成分とし、平均繊維径が1〜15μmであるフィラメントからなる不織布であって、
10cm×8cmのサンプル片に対して透過光を照射した際のサンプル片の画像データ(0.026mm/画素;256階調)と、サンプル片を配置しないブランクの画像データとの差をTOKS法で2値化することにより得られた地合指数の標準偏差が、5.0以下である不織布。
【請求項2】
請求項1において、不織布の厚みが20〜200μmであり、且つ不織布の厚み(μm)と地合指数の標準偏差との積が、90〜900である不織布。
【請求項3】
請求項1または2において、下記式(1)を満たす不織布。
8≦(B×C)/A≦15 (1)
[式中、A:不織布の目付(g/m)、B:不織布の厚み(μm)、C:地合指数の標準偏差をあらわす。]
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項において、不織布がメルトブローン法により製造された不織布。
【請求項5】
310℃での溶融粘度が20Pa・s以下である溶融液晶形成性全芳香族ポリエステルを、紡糸温度310〜360℃、熱風温度310〜380℃、ノズル1m幅当りのエアー量10〜50Nmの高温高速流体として、捕集距離2〜20cmで冷却金属ロール上へ吹付け捕集する請求項1〜4のいずれか一項に記載の不織布の製造方法。
【請求項6】
請求項5において、吹付け捕集された不織布をさらに固相重合させる製造方法。

【図1】
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【図2】
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