説明

不織布含浸化粧料

【課題】アミノ酸、アミノ酸誘導体、ペプチド及び/又はそれらの塩からなる群から選ばれる1種以上を含有する化粧料を不織布に含浸し、色調安定性が良好でかつ使用感触に優れた不織布含浸化粧料を提供すること。
【解決手段】アミノ酸、アミノ酸誘導体、ペプチド及び/又はそれらの塩からなる群から選ばれる1種以上を0.5〜5.0質量%含有する化粧料を、ポリエチレンテレフタレート及びコットンを含む不織布に含浸させることによって、色調安定性が良好でかつ使用感触に優れた不織布含浸化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布含浸化粧料に関するものであり、より詳細には、特定の素材のシート状不織布に、特定の化粧料を含浸させた不織布含浸化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な効能を有するアミノ酸やその誘導体、ペプチドを含有する組成物、化粧料、皮膚外用剤などが知られている(例えば、特許文献1および2)。一方、様々な効能を有するアミノ酸やその誘導体、ペプチドを含有する化粧料や皮膚外用剤を不織布に含浸させたシート状皮膚外用剤についても知られている(例えば、特許文献3)。しかしながら、アミノ酸、アミノ酸誘導体、ペプチド及び/又はそれらの塩を含有する組成物を不織布に含浸させた不織布含浸化粧料は、含浸液である化粧料自体の色調安定性が良好であっても、不織布に含浸させると、高温条件もしくは長期経時で黄色もしくは茶褐色に変色し、色調安定性が損なわれるという問題があった。
【特許文献1】特許第2720258号公報
【特許文献2】特開2006−298756号公報
【特許文献3】特開2006−312603号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、アミノ酸、アミノ酸誘導体、ペプチド及び/又はそれらの塩からなる群から選ばれる1種以上を含有する化粧料を不織布に含浸し、かつ色調安定性が良好な不織布含浸化粧料を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは前記従来の問題点を解決すべく鋭意研究をした結果、アミノ酸、アミノ酸誘導体、ペプチド及び/又はそれらの塩からなる群から選ばれる1種以上を0.5〜5.0質量%含有する化粧料を、ポリエチレンテレフタレート及びコットンを含む不織布に含浸させることによって、色調安定性が良好でかつ使用感触に優れた不織布含浸化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち本発明は、アミノ酸、アミノ酸誘導体、ペプチド及び/又はそれらの塩からなる群から選ばれる1種以上を0.5〜5.0質量%含有する化粧料を、ポリエチレンテレフタレート及びコットンを含む不織布に含浸させたことを特徴とする不織布含浸化粧料に関する。
また本発明は、トラネキサム酸、トラネキサム酸誘導体、グリシルグリシン、及び/又はそれらの塩を0.5〜5.0質量%含有する化粧料を、ポリエチレンテレフタレート及びコットンを含む不織布に含浸させたことを特徴とする請求項1記載の不織布含浸化粧料に関する。
また本発明は、不織布の全質量に対し、60質量%以上のポリエチレンテレフタレート、かつ40質量%以下のコットンを含む不織布に、該化粧料を含浸させたことを特徴とする前記不織布含浸化粧料に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、アミノ酸、アミノ酸誘導体、ペプチド及び/又はそれらの塩からなる群から選ばれる1種以上を含有する化粧料を含浸し、高温や経時での変色を抑制する効果に優れ、使用感触に優れた不織布含浸化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の不織布含浸化粧料は、アミノ酸、アミノ酸誘導体、ペプチド及び/又はそれらの塩からなる群から選ばれる1種以上を含有する化粧料を含浸液とする。
【0008】
アミノ酸、アミノ酸誘導体は、従来から、保湿や肌荒れ改善、美白等の効果を目的として化粧料や洗浄料に配合されている。本発明に用いられるアミノ酸、アミノ酸誘導体としては、例えば、トラネキサム酸、グリシン、アラニン、セリン、アルギニン、リジン、ヒドロキシプロリン及びそれらの塩もしくはそれらの誘導体が挙げられる。また、本発明に用いられるペプチド及び/又はそれらの塩としては、グリシルグリシン及び/又はそれらの塩が挙げられる。
中でも、トラネキサム酸、トラネキサム酸誘導体、グリシルグリシンが、特に好ましく本発明の不織布含浸化粧料に配合される。
本発明の含浸液である化粧料に、これらアミノ酸、アミノ酸誘導体、ペプチド及び/又はそれらの塩からなる群から選ばれる化合物を、単独で配合しても、または必要に応じて2種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0009】
本発明の不織布含浸化粧料におけるアミノ酸、アミノ酸誘導体、ペプチド及び/又はそれらの塩の配合量は、含浸液である化粧料全量に対して0.5〜5.0質量%であり、好ましくは0.7〜3.5質量%である。0.5質量%未満では、保湿や肌荒れ改善、美白等の効果が充分得られず、5.0質量%を超えて配合すると、べたつくなど使用性が悪くなる原因となる場合がある。
【0010】
本発明の不織布含浸化粧料には、前記の必須成分に加えて、本発明の効果を損なわない範囲内で、さらに、油、保湿剤、界面活性剤、増粘剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、消炎剤、ビタミン、ホルモンなどの薬剤、香料など通常の化粧品に配合される他の成分を配合することが可能である。
含浸液である化粧料の剤型は、水溶液系、可溶化系、乳化系、ジェル、油液系、水−油2層系、水−油−粉末3層など、任意の剤型を含む。特に好ましくは、水溶液系、可溶化系である。
【0011】
本発明の不織布含浸化粧料には、ポリエチレンテレフタレート及びコットンを含む不織布を用いる。ポリエチレンテレフタレート及びコットンを含む不織布としては、不織布の全質量に対し、60質量%以上のポリエチレンテレフタレート、かつ40質量%以下のコットンを含むものが好ましく用いられる。より好ましくは、60〜80質量%のポリエチレンテレフタレート、かつ40〜20質量%のコットンを含むものが用いられる。本発明の不織布は、前記範囲内で、他の不織布素材を含むことができる。
本発明に用いられるその他の不織布素材としては、液体を吸収し、その繊維等の間や表面に保持できるものであれば特に限定されないが、ポリプロピレン、ポリオレフィン、ポリウレタン、アクリル、ナイロン等、及びそれらの混合物が使用され得る。不織布の形状としては、楕円形、円形、ハート形、半円形、半楕円形、正方形、長方形、台形等が挙げられるが特に制限はない。また、中心部や周辺部に位置合わせや使用性改善の目的で凸部や凹部を設けてもよい。また使用部位により、基材の厚さや組成を変化させたり、別素材の繊維を後から接着させてもよい。不織布繊維の織り方式や編み方式、直線状繊維や螺旋状繊維、またはその混合繊維などの不織布三次元構造については、特に限定されるものでなく、あらゆる三次元構造の不織布を使用することができる。
【0012】
本発明の不織布含浸化粧料は、ポリエチレンテレフタレート及びコットンを含む不織布に含浸させて製造する。不織布へ含浸させる前記化粧料の量は、不織布の材質によっても異なるが、本発明においては少なくとも前記化粧料で不織布全体が濡れる程度の量が必要である。具体的には、不織布の質量に対して化粧料が1〜30倍量、好ましくは5〜20倍量である。含浸させる時期としては、使用者が使用時にその都度含浸させることもできるが、前記化粧料を製造後すぐに不織布に含浸させることが品質管理上好ましい。本発明の不織布含浸化粧料は、不織布に含浸させることにより、皮膚の単位面積当たりにより多く塗布できるようになる。また、その閉塞効果により、有効成分が十分皮膚に浸透し、効果が十分に発揮される。
【0013】
本発明の不織布含浸化粧料の不織布への含浸方法は公知の手段によることができる。例えば、滴下法、噴霧法、加圧法、ディッピング加工法が挙げられる。不織布はそのままあるいは折りたたむなどして1枚又は複数枚を用い、これに含浸させることができる。
含浸させた不織布は、直ちに気密性の高い容器に封入することが好ましく、特にアルミラミネート製包装体やポリエチレンテレフタレート(PET)で内面コートした包装体等の光を通さず、気密の良い袋等に密封装填することが、安定性上好ましい。
【0014】
本発明の不織布含浸化粧料は、顔(全体、あるいは頬部、目元部、口元部等)、腕部、脚部、胸部、腹部、首部等の全体又は局所の部位に密着させ、適当な時間放置後に剥離して使用される。本発明の不織布含浸化粧料の使用方法としては、適用部位に密着させてから1〜60分間程度放置してから剥すことが好ましい。また、使用頻度は、週1回〜1日1回程度が好ましい。
【実施例】
【0015】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。以下の%表示は、不織布においては不織布全量に対する質量%、含浸液である化粧料については化粧料全量に対する質量%を意味する。
【0016】
まずは、後述する実施例及び比較例の評価方法について説明する。
<色調安定性確認試験>目的の不織布含浸化粧料を50℃の恒温室に2ヶ月間放置、0℃保存品を対照として、色調安定性について以下の基準に従って視感評価した。
○:色調の変化が全く観察されない
△:僅かに色調の変化が観察される
×:やや色調の変化が観察される
××:著しく色調の変化が観察される
【0017】
<使用感触確認試験>
健常人女性25人の上腕内側に不織布含浸化粧料を15分間塗布し、塗布に伴う使用感触(柔らかさ、塗布のし易さ(伸長性)、フィット感)について、官能評価により以下の基準に従って判定を行なった。
◎:25名中20名以上が「柔からい/塗布し易い(伸長性がある)/フィット感がある」と認めた
○:25名中15名以上20名未満が「柔からい/塗布し易い(伸長性がある)/フィット感がある」と認めた
△:25名中10名以上15名未満が「柔からい/塗布し易い(伸長性がある)/フィット感がある」と認めた
×:25名中10名未満が「柔からい/塗布し易い(伸長性がある)/フィット感がある」と認めた
【0018】
次に、実施例及び比較例で用いた不織布素材の構成及び商品名について記述する。%は、不織布全量に対する質量%である。
・不織布(A)
構成:ポリエチレンテレフタレート80%・コットン 20%、商品名:日清紡社製 2ATEP2060
・不織布(B)
構成:ポリエチレンテレフタレート60%・コットン 40%、商品名:日清紡社製 4ATEP2050
・不織布(C)
構成:ポリエチレンテレフタレート100%、商品名:ダイワボウポリテック社製 JP-80
・不織布(D)
構成:コットン 100%、商品名:日清紡社製 AP2060
・不織布(E)
構成:レーヨン 100%、商品名:日清紡社製 RP2060
・不織布(F)
構成:レーヨン80%・ポリオレフィン20%、商品名:日本バイリーン社製 EW4080
・不織布(G)
構成:PET 10%・レーヨン 35%・パルプ 55%、商品名:三昭紙業社製 KP9580
【0019】
次に、含浸液として用いた化粧料の配合量、及び製造方法について記述する。配合量は、全て化粧料全量に対する質量%である。
【0020】
<化粧料1>
(1)(アクリル酸/アクリル酸アルキル(C10〜30))コポリマー(*1) 0.1
(2)カルボマー(*2) 0.1
(3)キサンタンガム(*3) 0.05
(4)グリセリン 3.0
(5)1,3−ブチレングリコール 7.0
(6)ジプロピレングリコール 5.0
(7)トラネキサム酸 2.0
(8)エタノール 3.0
(9)スクワラン 2.0
(10)ジメチルポリシロキサン(6mPa・s) 1.5
(11)デカメチルシクロペンタシロキサン 2.0
(12)PEG-60 水添ヒマシ油 0.2
(13)メチルパラベン 適量
(14)エデト酸3ナトリウム 適量
(15)ピロ亜硫酸ナトリウム 適量
(16)苛性カリ 適量
(17)精製水 残余
(*1)Pemulen TR-2、Lubrizol Advanced Materials社製
(*2)Carbopol 941、Lubrizol Advanced Materials社製
(*3)Keltrol、CP Kelco社製
【0021】
(17)に増粘剤である(1)(2)(3)を添加して十分に時間をかけて溶解し、更に(7)(14)(15)(16)を添加して溶解させる。次に、(8)に(13)を溶解させたものと(4)(5)(6)を添加して水相部を調製し、(9)(10)(11)に(12)を加熱融解させたものを添加し攪拌混合して油相部を調製、各部常温にて、徐々に油相部を水相部へ添加しながらホモミキサーで乳化混合し、ろ過して化粧料1を得た。
【0022】
<化粧料2>
(1)ヒドロキシエチルセルロース 0.05
(2)ジプロピレングリコール 5.0
(3)グリシルグリシン 1.5
(4)エタノール 5.0
(5)クエン酸 0.01
(6)クエン酸ナトリウム 0.09
(7)PEG-60 水添ヒマシ油 0.4
(8)香料 適量
(9)フェノキシエタノール 適量
(10)エデト酸3ナトリウム 適量
(11)ピロ亜硫酸ナトリウム 適量
(12)精製水 残余
【0023】
(2)に(1)を湿潤し、85℃に加熱した(12)に攪拌混合して完全に溶解させた状態で、(3)(5)(6)(10)(11)を添加して溶解させる。更に、(4)に(7)を融解したものと(8)(9)を加えたものを添加し、攪拌混合して室温に冷却、ろ過して化粧料2を得た。
【0024】
縦15cm 横5cmに切った不織布(A)〜(G)に、化粧料1・化粧料2を不織布重量の9倍量含浸させて不織布含浸化粧料を調製し、前記の評価基準に基づき、色調安定性確認試験、使用感触確認試験で評価を行なった。結果を表1に示す。
【0025】
【表1】

【0026】
レーヨンを含む不織布に色調変化が観察された。また、レーヨンに加えパルプを含む不織布に著しい色調変化が観察された。表1に示されているように、「60質量%以上のポリエチレンテレフタレート、かつ40質量%以下のコットンを含む不織布」を用いた不織布含浸化粧料が、変色を抑制する効果に優れ、使用感触に優れていることが分かる。
【0027】
以下に、本発明の不織布含浸化粧料の処方例を実施例として示す。
【0028】
実施例5
(化粧料の処方)
(1)グリセリン 5.0
(2)ポリオキシエチレンメチルグルコシド 1.0
(3)トラネキサム酸メチルアミド塩酸塩 0.7
(4)エタノール 10.0
(5)クエン酸 0.02
(6)クエン酸ナトリウム 0.08
(7)PEG-60 水添ヒマシ油 0.2
(8)黄色203号 適量
(9)メチルパラベン 適量
(10)エデト酸3ナトリウム 適量
(11)精製水 残余
(不織布)日清紡社製 2ATEP2080
(含浸倍率)9.0倍
(製法)(11)に(3)(5)(6)(10)を添加して溶解し、次に、(7)を融解したものと(9)とを(4)に加えて攪拌溶解したものを添加する。更に、(1)(2)(8)を添加し、十分に攪拌混合した後ろ過して化粧料を得た。上記不織布に対し9.0倍の含浸倍率になるよう本化粧料を含浸させ、僅かに黄色を呈する不織布含浸化粧料を得た。
【0029】
実施例6
(化粧料の処方)
(1)カルボマー(*2) 0.20
(2)4−メトキシサリチル酸カリウム塩 1.0
(3)1,3−ブチレングリコール 8.0
(4)PEG/PPG−14/7ジメチルエーテル 1.0
(5)トラネキサム酸 2.0
(6)グリシルグリシン 1.5
(7)エタノール 3.0
(8)ピロ亜硫酸ナトリウム 適量
(9)フェノキシエタノール 適量
(10)エデト酸3ナトリウム 適量
(11)精製水 残余
(不織布)日清紡社製 2ATEP2080
(含浸倍率)9.0倍
(製法)(11)に増粘剤である(1)を添加して十分に時間をかけて溶解し、次に、(2)(3)(4)(5)(6)(8)(10)を添加して溶解させる。更に、(7)と(9)を攪拌混合させたものを添加し、ろ過して化粧料を得た。上記不織布に対し9.0倍の含浸倍率になるよう本化粧料を含浸させ、目的の不織布含浸化粧料を得た。
【0030】
これら実施例5〜6は、いずれも色調安定性に優れ、使用感触(柔らかさ・塗布のし易さ(伸長性)・フィット感)に優れていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ酸、アミノ酸誘導体、ペプチド及び/又はそれらの塩からなる群から選ばれる1種以上を0.5〜5.0質量%含有する化粧料を、ポリエチレンテレフタレート及びコットンを含む不織布に含浸させたことを特徴とする不織布含浸化粧料。
【請求項2】
トラネキサム酸、トラネキサム酸誘導体、グリシルグリシン、及び/又はそれらの塩を0.5〜5.0質量%含有する化粧料を、ポリエチレンテレフタレート及びコットンを含む不織布に含浸させたことを特徴とする請求項1記載の不織布含浸化粧料。
【請求項3】
不織布の全質量に対し、60質量%以上のポリエチレンテレフタレート、かつ40質量%以下のコットンを含む不織布に、化粧料を含浸させたことを特徴とする請求項1又は2記載の不織布含浸化粧料。

【公開番号】特開2009−19008(P2009−19008A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−182739(P2007−182739)
【出願日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】